NHN Japan
                                HCD特別シンポジウム
                                   2010年2月5日

     顧客満足度向上のためのHCDに向けて




                            安藤 昌也
                            ando-m@aiit.ac.jp
Copyright ©   Masaya Ando
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   自己紹介
    安藤 昌也                   UX Scientist
         –     1997年        早稲田大学政治経済学部 卒
         –     1997年        NTTデータ通信
         –     1998年        アライド・ブレインズ株式会社 取締役
         –     2007年~       国立情報学研究所 特任研究員
         –     2008年~       産業技術大学院大学 創造技術専攻 助教
         –     2009年        総合研究大学院大学メディア社会文化専攻修了     博士(学術)

          ●ユーザビリティ・アクセシビリティ等に関する公的活動
              2001~2004年 JIS X8341-3(Webアクセシビリティ)委員
              2006年~     ISO/TC159国内対策委員会委員
                                  ・WG5(アクセシビリティ)
                                  ・WG6(人間中心設計)
              2009年~         人間中心設計推進機構 理事
              2009年~         JIS X8341-6 原案作成委員会 幹事

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                             なぜ企業はHCDに
                            取り組むのでしょうか?




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   UXへの認識と顧客満足
    “ビジネスのサービス化”が拡大するにつれ、ユーザ体
     験(UX)をよいものにし、顧客満足を高めることが重要
     なビジネス課題となっている。




       現在のUXは、ユーザの利用状況を考えたデザインのこと。
         顧客満足を高める考え方にはまだ昇華できていない。
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                            ものを作って届けることの
                            意味を、今一度考えてみる




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   質問①
    目の前に真っ赤な熟れた、おいしそうなリンゴが2つ並
     んでいます。品質はまったく同じ、価格も同じです。まる
     でクローンリンゴです。




                            さて、あなたはどちらを選びますか?



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   質問②
    今度は選べるでしょうか?




                              どうして選べたでしょうか?
                            食べたら美味しいと感じたでしょうか?
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   ものを作って届けるのに必要なこと
    安全な果物を食べたいと願っているあなたの「潜在ニー
     ズを満足させる商品」になったから、選べたはずだ。



        安全なリンゴを作ろう              無農薬でつくる   シールでアピールしよう
               1.商品企画           2.商品設計    3.市場導入計画



                            ?   UXD、HCD       ?

          食べて美味しい(=利用体験)の前段階にもリッチな体験
          がある。この体験はユーザの“期待・関心”を醸成する。

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   「期待・関心」は顧客満足を増強させる
    同じユーザであっても、購入前の製品関与が高いと、満
     足度は有意に高くなる。
                                      I Pod ユーザの顧客満足度
                                             ***
                                7.8


                                7.6


                                7.4
                            満
                            足   7.2
                            度
                            (
                            平    7
                            均
                            )   6.8


                                6.6


                                6.4


                                6.2
                                        低          高    *** p<.001

                                            製品関与
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   購入後の“使う意欲”も顧客満足に影響
    インタラクティブ製品の利用意欲は、2つの要因で構成
     される(安藤, 2008)。



               製品ジャンルへの                            操作することへの

              興味・知識                              積極性・自信



        利用対象製品に対する                             インタラクティブ操作に対する
                製品関与                           利用自己効力感

                            ※自己効力感 「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく
                             成し遂げるための能力についての個々の信念」(Bandura,1977)
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   ユーザの使う意欲を高めるとは?
    ユーザをうまく導けば、UIを使う意欲が高まる。
              – 例: デジタルテレビのデータ放送




                                    すごいニコニコ
                                   使ってる感いっぱい


                                   “日立いいわ”
     “使えるじゃん!”という経験により、使う意欲を高め
       製品をより良く・愛着をもって使ってもらえる
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   ユーザの使う意欲を高めるとは?
    iPhoneのAPPを自慢する人は、製品を使う意欲が高
     まっている状態だと言える。
                             思いがけないAPPを発見する楽しさ
                              =製品関与の向上

                             自分に適したニーズのAPPを入れてカ
                              スタムする喜び
                              =自己効力感の向上

                             これらを手軽に体験できる経済性と
                              UIデザイン

                            意欲が低いユーザにも、敷居を低くし
                             ユーザを導くデザインがポイント
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   意欲を高める研究の応用
    モチベーションの一種である自己効力感は、『社会的学
     習理論』の研究分野で、自己効力感を高める研究と実
     践がなされており、これらの知見の応用が可能。
      例: エージェントによる代理学習による自己効力感向上効果(槻館 et al, 2007)




                               人が失敗するところを見ると
                                自己効力感が高まる

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   ユーザの選択と評価モデル -黒須・安藤(2008)
                                    購入前行動(消費者)                           購入後行動(ユーザ)




                                                  ユーザ
                                                  - 特性 (生物学的、心理学的、社会的)
                                  漠然とした感覚         - 状況 (心理的、社会的、その他)
                                                  - 態度                      人工物の利用
                                 (動機づけ, 動因)
                                                  - 感受性
                                                  - 期待

                                                    価値観                       評価
                                  目標の同定             --- 機能的
                                                    --- 使用性
                                                    --- 審美的
                                                   Criteria
                                                    --- 感性的
                                                    --- 経済的
                             関連する人工物の               --- 品質的                   結果      否定的
                                探索                  --- 倫理的
                                                                           肯定的
                                                   記憶(長期記憶, 順応水準)
                                                   -ユーザエクスペリエンス                  問題の解決方法の
                                 人工物の発見            -顧客満足度                           探索


                                                                                            発見できず
                                                  人工物
                                                  - 品質 (使用性, 機能性、など)                結果
                                    評価            - 費用 (初期費用、維持費用)
                                                  - 美的水準                     発見
                                                  - 入手容易性
                                                  - メンテナンス・サービス

                                    結果                                                   その人工物の利用を
                                                                           問題を解決
                                                 社会                                         中止
                            棄却                   - 文化・伝統
                                         受容
                                                 - 斉一性
                                                 - 伝統回帰
                                                 - 歴史的背景


              使う前後のユーザの気持ちを、いかにデザインするかが
                                  購入・入手



                   顧客満足を高めるには極めて重要
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   User Experience Supply Chainの構築
    顧客とのコンタクトポイントで、どのように意欲を高める
     か。組織的にトータルにコーディネートすることが重要。
                                 製品の購入前                    使用後

                            広告    Web     店頭    取説   UIデザイン   コンテンツ    コールセンタ

                                                         より関心をもって
      製品関与
       PI                   使用前関与を高める                   使い続けてもらえる
                                                          サービス提供
                                                使いやすさをよくし               トラブル時も
   自己効力感                    自分が使えるイメージを持         SEを高める                 SEを下げな
     SE                     たせることが、SEをアップさ     導入時の評価を上げる                 い対応
                            せることにもつながる


               デザインチームだけでなくビジネス全体をHCDに
              対応させることは、HCD導入の効率化・最適化になる
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   ISO13407が示す人間中心設計プロセス


                                 分析




                            評価

                                 設計・実装


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   まとめ
                HCDの概念をビジネス全体に取り入れることは
                効率的に顧客満足を向上させる有効な手法である

        1. UXデザインは、ユーザの利用体験をより良くする
           重要な手法。
        2. 総合的な顧客満足を向上させるためには、利用前
           の購買行動からユーザの心理を考え、関心や意欲
           を高めるよう、コンタクトポイントのデザインが重要。
        3. HCDの概念は、何もデザインだけに適用するもの
           ではない。ビジネス全体をユーザ中心にする努力を
           することが、最も重要であり、効果的である。
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   連絡先


                             公立大学法人 首都大学東京
                              産業技術大学院大学
                                電話: 03-3472-7831 (代表)
                                FAX: 03-3472-2790

                             安藤個人宛 連絡先
                                Mail: masaya.ando@gmail.com



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顧客満足度向上のためのHCDに向けて

  • 1.
    NHN Japan HCD特別シンポジウム 2010年2月5日 顧客満足度向上のためのHCDに向けて 安藤 昌也 ando-m@aiit.ac.jp Copyright © Masaya Ando
  • 2.
    1 自己紹介 安藤 昌也 UX Scientist – 1997年 早稲田大学政治経済学部 卒 – 1997年 NTTデータ通信 – 1998年 アライド・ブレインズ株式会社 取締役 – 2007年~ 国立情報学研究所 特任研究員 – 2008年~ 産業技術大学院大学 創造技術専攻 助教 – 2009年 総合研究大学院大学メディア社会文化専攻修了 博士(学術) ●ユーザビリティ・アクセシビリティ等に関する公的活動 2001~2004年 JIS X8341-3(Webアクセシビリティ)委員 2006年~ ISO/TC159国内対策委員会委員 ・WG5(アクセシビリティ) ・WG6(人間中心設計) 2009年~ 人間中心設計推進機構 理事 2009年~ JIS X8341-6 原案作成委員会 幹事 Copyright © Masaya Ando
  • 3.
    2 なぜ企業はHCDに 取り組むのでしょうか? Copyright © Masaya Ando
  • 4.
    3 UXへの認識と顧客満足  “ビジネスのサービス化”が拡大するにつれ、ユーザ体 験(UX)をよいものにし、顧客満足を高めることが重要 なビジネス課題となっている。 現在のUXは、ユーザの利用状況を考えたデザインのこと。 顧客満足を高める考え方にはまだ昇華できていない。 Copyright © Masaya Ando
  • 5.
    4 ものを作って届けることの 意味を、今一度考えてみる Copyright © Masaya Ando
  • 6.
    5 質問①  目の前に真っ赤な熟れた、おいしそうなリンゴが2つ並 んでいます。品質はまったく同じ、価格も同じです。まる でクローンリンゴです。 さて、あなたはどちらを選びますか? Copyright © Masaya Ando
  • 7.
    6 質問②  今度は選べるでしょうか? どうして選べたでしょうか? 食べたら美味しいと感じたでしょうか? Copyright © Masaya Ando
  • 8.
    7 ものを作って届けるのに必要なこと  安全な果物を食べたいと願っているあなたの「潜在ニー ズを満足させる商品」になったから、選べたはずだ。 安全なリンゴを作ろう 無農薬でつくる シールでアピールしよう 1.商品企画 2.商品設計 3.市場導入計画 ? UXD、HCD ? 食べて美味しい(=利用体験)の前段階にもリッチな体験 がある。この体験はユーザの“期待・関心”を醸成する。 Copyright © Masaya Ando
  • 9.
    8 「期待・関心」は顧客満足を増強させる  同じユーザであっても、購入前の製品関与が高いと、満 足度は有意に高くなる。 I Pod ユーザの顧客満足度 *** 7.8 7.6 7.4 満 足 7.2 度 ( 平 7 均 ) 6.8 6.6 6.4 6.2 低 高 *** p<.001 製品関与 Copyright © Masaya Ando
  • 10.
    9 購入後の“使う意欲”も顧客満足に影響  インタラクティブ製品の利用意欲は、2つの要因で構成 される(安藤, 2008)。 製品ジャンルへの 操作することへの 興味・知識 積極性・自信 利用対象製品に対する インタラクティブ操作に対する 製品関与 利用自己効力感 ※自己効力感 「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく 成し遂げるための能力についての個々の信念」(Bandura,1977) Copyright © Masaya Ando
  • 11.
    10 ユーザの使う意欲を高めるとは?  ユーザをうまく導けば、UIを使う意欲が高まる。 – 例: デジタルテレビのデータ放送 すごいニコニコ 使ってる感いっぱい “日立いいわ” “使えるじゃん!”という経験により、使う意欲を高め 製品をより良く・愛着をもって使ってもらえる Copyright © Masaya Ando
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    11 ユーザの使う意欲を高めるとは?  iPhoneのAPPを自慢する人は、製品を使う意欲が高 まっている状態だと言える。  思いがけないAPPを発見する楽しさ =製品関与の向上  自分に適したニーズのAPPを入れてカ スタムする喜び =自己効力感の向上  これらを手軽に体験できる経済性と UIデザイン 意欲が低いユーザにも、敷居を低くし ユーザを導くデザインがポイント Copyright © Masaya Ando
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    12 意欲を高める研究の応用  モチベーションの一種である自己効力感は、『社会的学 習理論』の研究分野で、自己効力感を高める研究と実 践がなされており、これらの知見の応用が可能。 例: エージェントによる代理学習による自己効力感向上効果(槻館 et al, 2007) 人が失敗するところを見ると 自己効力感が高まる Copyright © Masaya Ando
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    13 ユーザの選択と評価モデル -黒須・安藤(2008) 購入前行動(消費者) 購入後行動(ユーザ) ユーザ - 特性 (生物学的、心理学的、社会的) 漠然とした感覚 - 状況 (心理的、社会的、その他) - 態度 人工物の利用 (動機づけ, 動因) - 感受性 - 期待 価値観 評価 目標の同定 --- 機能的 --- 使用性 --- 審美的 Criteria --- 感性的 --- 経済的 関連する人工物の --- 品質的 結果 否定的 探索 --- 倫理的 肯定的 記憶(長期記憶, 順応水準) -ユーザエクスペリエンス 問題の解決方法の 人工物の発見 -顧客満足度 探索 発見できず 人工物 - 品質 (使用性, 機能性、など) 結果 評価 - 費用 (初期費用、維持費用) - 美的水準 発見 - 入手容易性 - メンテナンス・サービス 結果 その人工物の利用を 問題を解決 社会 中止 棄却 - 文化・伝統 受容 - 斉一性 - 伝統回帰 - 歴史的背景 使う前後のユーザの気持ちを、いかにデザインするかが 購入・入手 顧客満足を高めるには極めて重要 Copyright © Masaya Ando
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    14 User Experience Supply Chainの構築  顧客とのコンタクトポイントで、どのように意欲を高める か。組織的にトータルにコーディネートすることが重要。 製品の購入前 使用後 広告 Web 店頭 取説 UIデザイン コンテンツ コールセンタ より関心をもって 製品関与 PI 使用前関与を高める 使い続けてもらえる サービス提供 使いやすさをよくし トラブル時も 自己効力感 自分が使えるイメージを持 SEを高める SEを下げな SE たせることが、SEをアップさ 導入時の評価を上げる い対応 せることにもつながる デザインチームだけでなくビジネス全体をHCDに 対応させることは、HCD導入の効率化・最適化になる Copyright © Masaya Ando
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    15 ISO13407が示す人間中心設計プロセス 分析 評価 設計・実装 Copyright © Masaya Ando
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    16 まとめ HCDの概念をビジネス全体に取り入れることは 効率的に顧客満足を向上させる有効な手法である 1. UXデザインは、ユーザの利用体験をより良くする 重要な手法。 2. 総合的な顧客満足を向上させるためには、利用前 の購買行動からユーザの心理を考え、関心や意欲 を高めるよう、コンタクトポイントのデザインが重要。 3. HCDの概念は、何もデザインだけに適用するもの ではない。ビジネス全体をユーザ中心にする努力を することが、最も重要であり、効果的である。 Copyright © Masaya Ando
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    17 連絡先  公立大学法人 首都大学東京 産業技術大学院大学 電話: 03-3472-7831 (代表) FAX: 03-3472-2790  安藤個人宛 連絡先 Mail: masaya.ando@gmail.com Copyright © Masaya Ando