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UX研究のテーマとアプローチ~ 混合研究法によるUX研究の事例

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2015年2月17日 ヒューマンインタフェース学会ユーザエクスペリエンスとサービスデザイン研究会 キックオフ談話会での話題提供@NEC本社

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UX研究のテーマとアプローチ~ 混合研究法によるUX研究の事例

  1. 1. Copyright © Masaya Ando 千葉工業大学 デザイン科学科 Chiba Institute of Technology Department of Design 安藤 昌也 masaya.ando@it-chiba.ac.jp UX研究のテーマとアプローチ ~  混合研究法によるUX研究の事例 ヒューマンインタフェース学会 SIG-UXSDキックオフ談話会 2015年2月17日
  2. 2. Copyright © Masaya Ando 2 千葉工業大学  工学部  デザイン科学科 准教授 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。NTTデータ通信(現、NTTデータ)を経て、 1998年 アライド・ブレインズ株式会社の取締役シニアコンサルタント。早稲田大学、 国立情報学研究所、産業技術大学院大学など経て、2011年より現職。博士(学術)。 専門は、人間中心デザイン。UX(ユーザ体験)の研究者。
 人間工学ISOの国内委員、人間中心設計推進機構 (HCD-net)理事を務める。
 認定人間中心設計専門家 / 認定専門社会調査士 安藤 昌也 ANDO Masaya, Ph.D.
  3. 3. Copyright © Masaya Ando 4 UX UXD SD 顧客の主観的な体験  ∼提供体を通して精緻化される経験価値が重要 経験価値を軸とした顧客の体験の計画  ∼経験価値に着眼して新たな経験を創ることが重要 新たな提供体の全体的・組織的な計画  ∼提供体を効果的かつ継続性を勘案することが重要   ∼従業員をも ユーザー と見なす視点が重要 組織の計画中に 新しい体験の提案が 生まれることも UXとUXDとサービスデザイン Service Design = UXD + 全体的・組織的な計画
  4. 4. Copyright © Masaya Ando 5 研究テーマとしてのUX・UXD UX UXD ユーザが何をどう感じるか? 心理構造の解明 結果としてユーザを喜ばせるため の考え方・デザインの方法・組織 たとえばUXDのための評価法を考えるにせよ ユーザー体験そのものの研究が不可欠
  5. 5. Copyright © Masaya Ando 6 コンテキスト UXそのものを捉える難しさ〜UXとユーザビリティ インタラクティブ 製品 相互作用 モノサイド ユーザサイド 有効さ・効率     ユーザビリティ      満足度   ユーザエクスペリエンス
  6. 6. Copyright © Masaya Ando 7 UXそのものを捉える難しさ〜様々な期間におけるUX (出所:2011年2月:User Experience White Paper, HCD Value: “UX白書の翻訳と概要”資料) n この図は、ユーザーが感じる体験評価のメカニズムが 期間ごとに異なることを示している。
  7. 7. Copyright © Masaya Ando 8 研究法とパラダイムビュー (Creswell,  2010) ポスト実証主義 • 決定論 • 還元主義 • 実証的観察と測定 • 理論の検証 構築主義 • 理解 • 多元的意味 • 社会的・歴史的構築 • 理論の生成 アドボカシー / 参加型 • 政治性 • エンパワーメント • 協働性 • 変革志向 プラグマティズム • 行為の帰結 • 問題中心 • 多元性 • 実践的志向 量 質 質//量 混合法
  8. 8. Copyright © Masaya Ando 9 混合研究法 n 何を混合研究法と呼ぶかなど議論はあるものの、複雑 な社会を理解するためには不可欠なアプローチ。 Quantitative Data Qualitative Data MethodologyMethod Paradigm Perspective Using mixed methods in other designs Mixed Methods (Creswell, 2010)
  9. 9. Copyright © Masaya Ando 10 混合研究法の3つの基本パターン (Creswell,  2010) データ集結型 QUAL 質的 Results QUAN 量的 データ連結型 QUAL 質的 QUAN 量的 Results 順番はいろいろ データ埋込み型 QUAN 質的データ QUAL 量的データ
  10. 10. Copyright © Masaya Ando 11 混合研究法の課題 n 研究者として、背景哲学に関わらず適切な手法を組み 合わせることは当然のスタンス。 実利用環境におけるユーザー体験 l  コンテクストの複雑性 文化、社会、環境、立場、役割、関係性、 経験値、、、 l  利用経験の継続性 高頻度・長期間、低頻度・長期間、
 高頻度・短期間、低頻度・短期間、、、 混合研究法はいわば  “試行錯誤”  をよく言っただけ UXを捉えるのに適切な研究アプローチの模索は不可欠
  11. 11. 12 Copyright © Masaya Ando 研究の事例〜安藤のケース 一部未発表のものも、努力中のものもあります
  12. 12. Copyright © Masaya Ando 13 UX研究として〜混合研究法の例 長期的なユーザー体験そのものを捉える 1.  インタラクティブ製品の利用意欲と製品評価構造 •  qual → QUAL+ quan → QUAN 特定のフィールドでのユーザー体験を捉える 2.  HDDレコーダの利用体験のその実態把握 •  QUAN → QUAL 3.  車載機器の利用体験とその相互関係 •  QUAL + QUAN 4.  デジタルネイティブ世代のSNSの利用と心理 •  QUAL + QUAN
  13. 13. Copyright © Masaya Ando 14 UX研究として〜その他のアプローチ例 質的研究のみでアプローチする研究 5.  スマートハウス居住者の評価構造と変化 (未発表・査読中) •  QUAN → QUAN(テキストマイニング等) 心理実験を組み込んだアプローチの研究   6.  看護現場等を想定した音声メモメディアの記憶補完効果 •  実験 7.  システムの違いによる援助行動の意欲の違い(未発表・研究中) •  実験 → (QUAL) → (QUAN?) 混合研究法+数学的モデリングを組み込んだ研究 8.  ホテルサービスの適応的接客に関するモデル研究 • QUAN → QUAL → 数学的モデリング
  14. 14. Copyright © Masaya Ando 15 事例1 質①  製品評価のプロセスモデル n  ユーザが長く使う製品は、 当初から関心があり、問 題があっても、何とか使 おうと努力する。 n  製品評価は、“満足 感”として感じられる。 n  そして、長期利用の結果 として“愛着”を感じるよ うになる。 (安藤・黒須, 2008)
  15. 15. Copyright © Masaya Ando 16 事例1  質②  製品利用におけるユーザの心理的要因 利用行動 インタラクティブ製品の 利用意欲の形成 利用対象製品 の方向づけ ①インタラクティブ製品の 利用に対する自己効力感 ② 利用対象製品への 関与 ※自己効力感 「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく 成し遂げるための能力についての個々の信念」(Bandura,1977) (安藤, 2010)
  16. 16. Copyright © Masaya Ando 17 事例1  量①-1  自己効力感を測定する尺度 n  大規模調査に基づき、ユーザの「自己効力感」を測定できる質問 紙(20問)を作成。 ・調査サンプル:1,200件 ・調査法:訪問留置法 ・対象者:全国15~79歳 ・サンプリング:層別二段割当法 ・有効回答:1031件 調査方法 1. 電子機器をよりよく使うために、自分なりに利用法を工夫したりする 2. やりたいことがあれば、自分からすすんで機能や使い方を探す 3. 電子機器がそなえている機能のうち、どの機能を使えばやりたいことが できるか、だいたいわかる 4. トラブルが起こった時、あわてずに原因を推測して、対処のしかたを考 える 5. 機能や操作がわからなくなった時は、自分で取扱説明書やマニュアル を読んで理解できると思う 6. もっと効率的な方法や使い方ができないか、調べたり考えたりする 7. どんな電子機器であっても、自分がやりたいことは操作できる自信があ る 8. 電子機器を使うこと自体が、楽しいと感じる方だ 9. どのボタンを操作すればどうなるかが、だいたいわかるので、操作に不 安は感じない 10. 自分には操作が難しいと感じても、あきらめないで、できるまでがんばる 得点分布 項目例 (安藤・黒須・高橋, 2008)
  17. 17. Copyright © Masaya Ando 18 43.8   39.2   38.1   35.9   34.7   31.6   31.4   26.6   6 12 18 24 30 36 42 48 54 60 パ ソ コ ン 携 帯 電 話 デ ジ タ ル カ メ ラ デ ジ タ ル レ コ ダ 携 帯 音 楽 プ レ ヤ 携 帯 ゲ ム 機 カ ナ ビ P D A 事例1  量①-2  製品関与を測定する尺度 n  Web調査をベースに、対象製品の「製品関与」を測定できる質問 紙(10項目)を作成。 調査方法 ・有効回答:600件 ・調査法:ウェブ調査 ・対象者:18~69歳 ・サンプリング:パネルから人口構成比 に基づく性・年代割り付け ・調査製品:10種類 ・傾向スコア法による偏りの補正 得点分布 尺度項目 使 う 楽 し さ (1) この製品を使うことが、楽しいと感じる (2) 自分の趣味や興味に関するものである (3) 自分が積極的に使いこなしたり、活用したりする様子 を想像できる (4) 自分らしさが反映できる 情 報 感 度 (5) 新しい機種が出たら、ほしいと思う (6) 新しい機種が出ると、とても気になる (7) 新しい機種に搭載されている機能について、だいたい 知っている 利 用 効 果 の 認 識 (8) この製品を使うとどんな効果が得られるか、想像でき ない (9) 使い方や利用のしかたが、わからない (10) どんな風に使えば、自分のためになるか、想像できな い l  利用対象のインタラクティブ製品について、 知覚した対象製品の利用効果と、ユーザ自 身の目的や価値感などとの関連の強度を示 したものであり、感情的側面、情報的側面、 認知的側面からその度合いを測定。 (安藤, 2008)
  18. 18. Copyright © Masaya Ando 19 ユーザの心理的要因 実利用環境における製品評価 自己効力感 (尺度得点) e1 製品関与 (尺度得点) 使う喜び・ 愛着感 顧客満足 e2 e3 e4 e5 .26*** .49*** -­‐.21*** -­‐.31*** CS1 CS2 CS3 e6 e7 e8 -­‐.19*** .42*** .37*** .30*** 不満感 .26*** .47*** 利用期間 ユーザビリティ評価 .16** -­‐.13* -­‐.10* .84 .84*** .84*** -­‐.29 (*** p <  .001,  ** p <  .01,  *  p <  .05) 事例1  量②  iPod  nanoユーザの評価構造 χ2 = 21.8 df = 19 p = .30 GFI = .98 AGFI = .96 RMSEA = .02 (安藤, 2008)
  19. 19. Copyright © Masaya Ando 20 事例3  質:エスノグラフィ A 40代・男・会社員 50代・女・主婦 30代・男・運転手 20代・女・主婦 エステマ・新車 ステアリングスイッチを使う 几帳面で家族思い プリウス・新車 エコモニターを見ながら 運転を楽しむ 取説を読んで使う Sm art・中古 何のボタンかわからない が気にしてない オーディオの電源の切り方 が分からない ムーブ・中古 オーディオの電源の切り方 が分からない PNDでナビは信頼できな いと感じている 40代・女・主婦 シルビア・中古 異常だとわかるが意味 はよくわからない 車をイジルのは息子と の共通の趣味 B C A B - C 高 低 高 低 操 作 ナビ興味
  20. 20. Copyright © Masaya Ando 21 事例3  質:エスノグラフィ結果モデル図  M-GTA 本 質 的 ー   顕 在 化 ー 潜 在 的 ー I3:同乗者を 喜ばせる価値 I1:運転中の時間を 有効に過ごす価値 O3:とりあえずでも 最低限のことは できる価値 O4:基本的な操作 性(ユーザビリ ティ)が良い価値 O1:快適な車室内 環境で移動する価値 O5:同乗者(家族)と 安全に乗れる価値 O2:いつも通りの環 境で車に乗れる価値 I2:車と共に安全に うまく運転できる価値 P1:車が必要な行動 を教えてくれる価値 P4:車を「もっと使いた い」と思える価値 P3:車の機能を 使いこなせる価値 P2:車の情報・仕組み への理解が深まる 価値 操作性・わかりやすさ系環境・音楽・AV系 家族・同乗者系 有能感
  21. 21. Copyright © Masaya Ando 22 本 質 的 ー   顕 在 化 ー 潜 在 的 ー I3:同乗者を 喜ばせる価値 I1:運転中の時間を 有効に過ごす価値 O3:とりあえずでも 最低限のことは できる価値 O4:基本的な操作 性(ユーザビリ ティ)が良い価値 O1:快適な車室内 環境で移動する価値 O5:同乗者(家族)と 安全に乗れる価値 O2:いつも通りの環 境で車に乗れる価値 I2:車と共に安全に うまく運転できる価値 P1:車が必要な行動 を教えてくれる価値 P4:車を「もっと使いた い」と思える価値 P3:車の機能を 使いこなせる価値 P2:車の情報・仕組み への理解が深まる 価値 操作性・わかりやすさ系環境・音楽・AV系 家族・同乗者系 有能感 I3:同乗者を 喜ばせる価値 I1:運転中の時間を 有効に過ごす価値 O3:とりあえずでも 最低限のことは できる価値 O4:基本的な操作 性(ユーザビリ ティ)が良い価値 O1:快適な車室内 環境で移動する価値 O5:同乗者(家族)と 安全に乗れる価値 O2:いつも通りの環 境で車に乗れる価値 I2:車と共に安全に うまく運転できる価値 P1:車が必要な行動 を教えてくれる価値 P4:車を「もっと使いた い」と思える価値 P3:車の機能を 使いこなせる価値 P2:車の情報・仕組み への理解が深まる 価値 有能感 O3:とりあえずでも 最低限のことは できる価値 O1:快適な車室内 環境で移動する価値 I3:同乗者を 喜ばせる価値 I1:運転中の時間を 有効に過ごす価値 I2:車と共に安全に うまく運転できる価値 O4:基本的な操作 性(ユーザビリ ティ)が良い価値 O5:同乗者(家族)と 安全に乗れる価値 O2:いつも通りの環 境で車に乗れる価値 同乗者を 喜ばせる価値 運転中の時間を 有効に過ごす 安全に車を信用 して運転できる 有能感 同乗者を 喜ばせる価値 運転中の時間を 有効に過ごす 安全に車を信用 して運転できる 同乗者を 喜ばせる価値 運転中の時間を 有効に過ごす 安全に車を信用 して運転できる 有能感 同乗者を 喜ばせる価値 運転中の時間を 有効に過ごす 安全に車を信用 して運転できる .83*** .88*** .64*** -.45** .39*** .17 n.s. 有能感 χ2 = 123.0, df = 59, p = .000, GFI = .954, AGFI = .930, RESEA = .052 上記に示す指標から判断し、分析結果は統計的に妥当である *** p <.001, ** p < .01 -1.0      0      1.0 矢印は影響の因果関係を示す 数値の見方 強い負の 相関関係 強い正の 相関関係 相関関係 はない 事例3  量 モデルの検証〜因果推定 SEM
  22. 22. Copyright © Masaya Ando 23 事例5    質 スマートハウス居住者の評価構造 n スマートハウス実験棟 の長期居住者家族へ のインタビューを毎月 繰り返し、その評価構 造の全体を分析 n このモデルがあれば 評価尺度を作れる n 今後、経時的な発話 分析を行うことで、評 価が時間的にどう変 化してきたかを分析予 定 投稿中のため非公開
  23. 23. Copyright © Masaya Ando 24 n  援助依頼がメッセージ方式か掲示板方式かの違いだけで、人の 援助行動の判断が異なることを発見。 メッセージ方式の方が依頼内容を無視しない=確認する ** * * χ2 = 22.0, df = 6, p < .01 * p < .05 ** p < .01 事例7 システムの違いで援助行動の意欲の違い 未発表のため非公開
  24. 24. 25 Copyright © Masaya Ando UX研究の課題と期待
  25. 25. Copyright © Masaya Ando 26 UXをデザインするためには〜UXデザインの諸手法 ユーザーの体験価値 を探索するフェーズ 企図した体験を 実現するフェーズ 実現すべきユーザー体験と その効果の可視化 l  ユーザー行為の観察・インタビュー l  エスノグラフィ l  KA法による価値モデリング、上位下位分析 l  ペルソナ/問題シナリオ l  製品・サービスアイディア l  バリューシナリオ、ストーリーテリング l  アクティングアウトによる体験のスケッチ l  アクティビティシナリオ l  ユーザージャーニーマッピング、UXマップ l  プロトタイピング/モックアップ l  サービスブループリント l  ユーザーテスト コンセプトアイディア UXの研究成果を待たずとも様々な実践が行われているが
  26. 26. Copyright © Masaya Ando 27 UX研究の課題 n よいUXをデザインするためには、学術的な UX研究は不可欠。圧倒的な研究/研究者不足 –  作って確かめる系の研究は多いが、体験そのもののメカニズ ムや応用を意識したユーザーモデル研究が非常に少ない –  UXデザインの評価法に期待するのであれば、UXの研究が不 可欠。例えば、これまでの認知研究との関連性や発展的研究 を模索するなど、広げていく取り組みが必要。 n 製品開発に関する特定フィールドの研究だけでなく、 UXそのものを発見的にアプローチする研究が必要 –  既存の製品利用環境を念頭においた研究は多い。UX研究が 分野として確立していくためには、UXそのものを発見的にアプ ローチするような、UXそのものを提案するような研究も必要だ ろう。そのための研究法や実験法への挑戦は重要。
  27. 27. Copyright © Masaya Ando 28 私のビジョン n 利他的UX研究 –  他者を援助する行動を、いかに引き出すか、またそれらをよい 体験と認識させるためには何が必要か。 –  社会性の中に存在する製品(例えば複合機)で、利他性を活 かした機能をいかに創り出せるか。 n UXデザインの評価法研究 –  形成的評価としての、UXデザイン評価はいかに可能か。 n エージェント等によるユーザーシミュレーション –  経時的な変化を伴うユーザーの心理や行動を、シミュレーショ ン可能か。

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