私の近くにいるスタートアップの CEO やスタートアップで働く方々は、その多くが働きすぎじゃないかと思うぐらい、昼夜問わずに働いています。そんな彼らに健康であり続けてほしいと思うので、参考情報を中心に書きました。
多くのCEOが同じような不安や抱えていることを知り、またそれを克服する方法がある程度あるということを知っているのは、長期的に見てスタートアップの成功に利するものかと思います。
Author Kevin Hale from San Francisco, CA, United States
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Paul_Graham_talking_about_Prototype_Day_at_Y_Combinator_Summer_2009.jpg
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Kick off meeting @ Y Combinator
Spark: The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain
http://www.amazon.com/dp/0316113514/
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Naperville の学校が運動を取り入れて世界一位に
有名な実例 (Naperville, Illinois)
小学校の0時限目として、体育を実施。最大心拍数 (220 –
年齢) の 80 ~ 90% の間で有酸素運動をさせたところ、そ
うでないグループに比べて有意に成績が向上した。また、
運動の効果が続いている2時限目と、そうでない8時限目
に授業を受けたところ、2時限目に授業を受けたクラスの
ほうが良い成績を出した。
その後 Naperville は TIMSS (国際数学・理科教育動向調
査) の理科のテストで、他の国々を抑えて世界一位になっ
た(アメリカのほかの地域はもっと下のランク)。
運動に関する研究
様々な実験から、運動をすると認知能力や生産性が高まることが分かっている。
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運動をするとパフォーマンスが向上する
運動は注意力や推論能力を高め、スピードを速
めるということが実証されている。
Smith, P. J. et al. “Aerobic Exercise and Neurocognitive
Performance: A Meta-Analytic Review of Randomized
Controlled Trials.”
最大心拍数の60 – 70%で 35 分間走ったグループ
とそうでないグループとでテストを受けたとこ
ろ、運動したほうのグループの答える速度や認
識の柔軟性が向上した。
Spark: The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain
認知能力が高まる 短い運動時間でも効果あり
一日の途中で運動をすると、モチベーションと
生産性が高まる。
Del Giomo JV. Et al. “Cognitive function during acute exercise: a
test of the transient hypofrontality theory”
筋力はストレス対策になる 生産性が上がる
筋力が強いと、ストレスによる気分低下に伴って生
じる有害なタンパク質を体から追い出しやすくなる。
Agudelo, L.Z. et al. “Skeletal Muscle PGC-1α1 Modulates
Kynurenine Metabolism and Mediates Resilience to Stress-
Induced Depression”
スプリント期間中に不健康になるデメリット
Product/Market Fit 前のスプリント期間中に不健康になるデメリットは計り知れない。
一人が不健康になって働けなくなった時の影響が大きい
• スタートアップ初期は業務が構造化&共有されていないケースが多く、全員が Single
Point of Failure。誰かが倒れたらその時点で仕事が止まる。
• 大企業ではカバーできる人員がいるかもしれないが、スタートアップでは致命的
不健康になればやる気を失う=スタートアップが死ぬ
• スタートアップが死ぬのはやる気(モチベーション)を失うから。不健康になると鬱症
状が出やすくなり、CEO がやる気を失った時点でスタートアップは死ぬ (Paul Graham,
How not to Die)
• また不健康になれば、起業家にとって重要なスキルである粘り強さを失いかねない。
スタートアップは創業者が抜けた途端に崩壊する傾向にある
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スタートアップの CEO に不健康になっている暇はない
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Photo by Dave Thomas,
released under the Attribution Creative Commons license,
from http://www.paulgraham.com/bio.html
http://paulgraham.com/before.html
「スタートアップの始め
方」は、君が解くべき
もっと大きな問題、つまり
いかにして良い人生
を送るかという問題の一
部でしかない
運動による幸福度の上昇についての研究
様々な研究から、運動が幸福度に役立ち、また不健康は幸福に対して悪い影響を与えるこ
とが分かっている。
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運動や健康は幸福度の向上に役立つ
20 分間運動すれば、2 時間後から 12 時間後にい
たるまで、いつもよりよい気分で過ごせる。
Mayo Clinic (2008). Moderate Exercise. Mayo Clinic
Health Letter, 26(1). 1-3.
20分間の運動で数時間気分がよくなる研究結果
が出ている。
Helimich, N. (2009, June 2). Good mood can run a long
time after workout. USA Today.
運動すると良い気分が続く 短時間運動でも気分が良くなる効果あり
心理学のテストで高い幸福度だった人は、そう
でない人に比べ、インフルエンザワクチンに対
する抗体が 50% 高かった
不健康は幸福度を下げる 逆に幸福な人は病気になりにくい
健康の自己評価が 20% 低下すると、平均的な幸
福度は 100 ポイント尺度で 6 ポイント低下する。
しかし、医師の診断結果は患者の自己評価と弱
い関係しかなく、患者の幸福感とはかなり小さ
な関係しかないことが分かっている。
Happiness: The Science Behind Your Smile (2005)
仲間と一緒に運動をするため
運動に即効性はないので、運動はまず何よりも継続が大事。Wing らの研究によれば、良
く知っている友人や同僚で 3 人組を作って減量プログラムなどを一緒に実施すると、十か
月後まで体重を維持できる確率は 66% まで上昇するという研究結果がある。
これは下記のような背景からと想定される。
Wing RR, and Jeffery RW. “Benefits of recruiting participants with friends and increasing social support for weight loss and maintenance.”
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10028217
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運動を継続するためには仲間が必要
ネットワーク効果 コミットメントと一貫性 他人と関わることの幸福
月に一度同好の集まりに出席す
るか、もしくは月に一回ボラン
ティア活動に参加するだけで、
所得が倍増するのと同じくらい
幸福感を高める (Putnum. The social
context of well-being) ことから、他
人との運動も幸福度を高めると
推定される。これがインセン
ティブになっている可能性があ
る。
人は一貫性を保つ傾向にある。
一貫性を保ったほうが社会的に
も高い評価を行われるし、心理
的にもコミットメントを裏切る
のは大変(だから愚かな判断を
する場合もある)。
誰かを運動に引き込めば「運動
をする」ということをコミット
メントした、ということになり、
長続きしやすい。
Cialdini “Influence” など
3人による三角形のネットワー
クは二人のネットワークに比べ
て分断されにくく、関係性が続
きやすい。
増田「なぜ3人いると噂が広まるのか」
三角形あり 三角形なし
誰かと運動をする継続性以外でのメリット
人がいきいきとした一日を過ごすためには、
誰かほかの人と一緒に過ごす時間が6時間必
要である。
また人と過ごす時間が多いほどストレスも
減ると言われている。
Social Time Crucial to Daily Emotional Wellbeing in U.S. 48
誰かとの時間を過ごすことが幸福につながる
人とかかわる活動に積極的に参加している
人は、一人で過ごす時間が多い人と比べて、
記憶力の低下が半分以下になる。
(50歳以上の約 15,000 人に調査)
Ertel, K.A., Glymour, M.M., Berkman, L.F. (2008). Effects of social integration on preserving memory function in a
nationally representative US elderly population. American Public Health Associatoins, 98 (7). 1215-1220
自分だけでなく周りも幸福になるメリット
12,000 人を対象に、30 年以上にわたって行った
Christakis @ Harvard University らの追跡調査によれば、
幸福な人々に囲まれている人ほど将来幸福になりやすい。
ただし3人分離れた人までしか効果は得られない。(友
人の友人の友人という距離まで)
近隣に住んでいる友人は自分を将来幸福にしてくれる可
能性が高い。同居する配偶者、1マイル以内の範囲に住
んでいる兄弟・姉妹、隣人、もまた同じような効果を及
ぼす。会社の同僚からは得られない。
幸福の伝染は、距離が離れるほど減っていき、時間が
経ってもまた減っていく(1年前に幸福だった人の方が3年
前に幸福だった人よりも、その人につながりがある人に
対して幸福感をもたらす)
Fowler, J.H., & Christakis, N.A. (2008). Dynamic spread of happiness in a large social network: longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study. BMJ, 337, a2338+ 50
周囲が幸福だと自分も幸せを感じる可能性が15%高まる
計測の効果
UCL の Michie らは健康的な食事と運動に関する100以上の研究を集約し、26の手法(単な
る激励や時間管理、不健康の危険性の警告)をすべて試したところ、一つだけぬきんでた
成果をあげたのは「セルフモニタリング」だった。
別の研究では被験者にウォーキングを促進させるために万歩計を持たせることで、自己認
識を高め、ウォーキングを継続させることができた。
近年、レコーディングダイエットが日本でも流行り、実際に高い効果が出たケースも多
かった。これは計測することで自己効力感が高まるためだと考えられる。
Michie, S., C. Abraham, C. Whittington, J. McAteer, and S. Gupta. “Effective Techniques in Healthy Eating
and Physical Activity Interventions: A Meta-regression.” Health Psychology 28, no. 6 (2009): 690.
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計測すること自体に効果がある: self-monitoring
記録するデバイスやアプリの活用
必要であれば Fitbit や Microsoft Band などのウェアラブルデバイスを付けることや、アプ
リ (Nike Run や RunKeeper) を活用することなどを検討しても良い。
計測のポイント
• 激しい運動を行う場合は、時間や負荷よりも「心拍数が十分高まるか」に着目する。最
大心拍数の 80 – 90% 程度にすると激しい運動と呼べる。大人の最大心拍数は「220 – 年
齢」を目安にすること。
• 時間や負荷に関して完璧を求めず、できる範囲で行う
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運動を記録するために