More Related Content
Similar to 20140529毎日新聞社メディアカフェ講演「インターネットは政治を変えるか?―立命館大、毎日新聞共同研究が明らかにした可能性」 (20)
20140529毎日新聞社メディアカフェ講演「インターネットは政治を変えるか?―立命館大、毎日新聞共同研究が明らかにした可能性」
- 2. 2
自己紹介
• 立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。
• 国際大学GLOCOM客員研究員。北海道大学大学院公共政策学連携研究部附属公共
政策学研究センター研究員等。
• 専門は情報社会論と公共政策。情報化と社会変容、情報と政治(ネット選挙)、社会起
業家の企業家精神醸成過程や政策としての「新しい公共」、地域産業振興、協働推進、
日本のサーフカルチャーの変遷等を研究。
• 1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科
修士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。
• 同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報
センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デジタルハリウッド大学大学院非常勤
講師等を経て現職。
• 著書に『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)「ネット選挙と
デジタル・デモクラシー」(NHK出版)。共編著・共著に『「統治」を創造する』(春秋社)『大
震災後の社会学』(講談社)ほか。
- 5. 5
ネット選挙解禁の結末
• 投票率をあげる?
– 都議選54.9%(史上2番めの低さ)
– 福岡県中間市43.64%(史上最低)
– 2013年参院選52.61%(史上3番目の低さ)
• 金のかからない選挙?
– 選挙コストの追加的増大
• なりすましと誹謗中傷の問題の非顕在化。当初、ネット選挙関連の公選法違
反での摘発は無し(警告事例はあり)
- 6. 6
ネット選挙解禁の評価
• 理念なき解禁
– 公選法の「目的」を伴わない改正
– 当初目的すら達成できていない。公選法改正案には、目的があったという指
摘もあるが、法律の建付からして当たり前。公選法自体の「目的」を改正で
きるかどうかが問題
• 競合する「公平な均質性と漸進的改良主義」
– 公選法のみの改正と、その他の文書図画における制限列挙の残存
– インターネット・サービスの設計思想との齟齬
• 迷走するネット選挙への評価
– ネットは政治を変えたのか、否か。
– ステイクホルダーによって異なる。投票結果には顕著な貢献をしていない。
– 分析視点の不在
- 9. 分析の視座
• データ駆動の政治(poliGcs
by
data)
– 選挙への動員と共感
– 政治マーケティング手法の高度化
• データを用いた政治参加(parGcipaGon
by/as/for
data)
– オープンガバメント、オープンデータ
– Code
for…
– hackGvism
• データによる透明化(transparency
by
data)
– データ・ジャーナリズム
– ネット選挙報道
9
- 11. 公職選挙法
• 文書図画規制・・・
– 選挙運動における、ポスター、ビラ、パンフレット、看板、
のぼり、書籍等の頒布、掲示を規制。
– それに加えて、おもに、下記5つのアプローチでネット選挙
を解禁。
• ウェブサイト等を利用する方法による文書図画の頒布
• 電子メールを利用する方法による文書図画の頒布
• インターネット等を利用する方法による候補者の氏名等を表示し
た有料広告の禁止等
• インターネット等を利用する方法により当選を得させないための
活動に使用する文書図画を頒布する者の表示義務
• 選挙に関するインターネット等の適正な利用
11
- 12.
2013年公選法改正以前
(ネット選挙解禁以前)
2013年公選法改正後
(ネット選挙解禁後)
文書
図画
頒布
ウェブサービス
個別サイト、ブログ、
twitter、facebookなど
× 利用が認められない文書図画
※ただし一般有権者のソーシャルメ
ディア利用などは、実際に行われてお
り、改正以前も取り締まられていな
かった。
○ SNSでは個別アカウント宛のメッセージも利
用可
電子メール
候補者
△
政党
△
一般有権者
×
バナー広告
×
○
×
インターネットメディア
○放送法の規制も受けない
パンフレット・書籍
○ ただし、届け出の必要や内容への規制もあり、頒布可能なのは選挙事務所内、演
説会会場、街頭演説場所のみ。
通常葉書・届け出たビラ
○ 候補者一人当たりの枚数は衆院選、参院選では以下のとおり。都道府県知事、地
方議員など選挙によって条件は異なる。また、証紙貼付などの規制もある。
衆院小選挙区(葉書:3万5000枚、ビラ:7万枚)
参院比例代表(葉書:15万枚、ビラ25万枚)
参院小選挙区(当該都道府県の区域内の衆院小選挙区の数が1の場合、葉書:3
万5000枚、ビラ10万枚。1を超える場合、1増すごとに葉書:2500枚、ビラ1万5000枚加
える)
掲示
立札、ちょうちん、看板
○ 選挙事務所の表示、選挙カー・船舶、演説会の開催中会場表示。ただし大きさや
枚数は規定される。
ポスター
○ 上記立札等と同様の条件に加え、衆院小選挙区・参院選挙区・都道府県知事候
補者の個人演説会告知、ほか選挙運動のために使用するもの。ただし、表面への「掲
示責任者・印刷者の氏名・住所」記載、「証票」貼付など細かな条件に則ったもののみ。
候補者たすき、胸・腕章
○
アドバルーン、ネオン・サ
イン、電光による表示、映
写等
×
テレビ・ラジオ
× 放送時間や扱いに不平等のないよう注意深く番組制作・報道が行われる。放送法
によっても規制されている。
新聞・雑誌
× 「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて」の報道、評論を掲載するこ
とはできない、とする規制に従う。
電話
― 規制の範囲外にあるとして、利用されている
戸別訪問
× ただし、数軒おきの訪問は、実質的には行われていることもある
(注)1. 公職選挙法の規制の下で、◯は「利用可能」 ☓は「利用不可」、もしくは「実質的に利用不可」、△は「制限付き利用可能」。
2. ―は公職選挙法の「規制の範囲外」。
12
- 13. 政治資金規正法
• 1980年代の政治腐敗(1976年ロッキード事件、1988年リクルート事件、1992年佐川急便事件)を背景とし
た、政治改革の一環として、情報公開と適正な政治資金の管理等を要請。
• 現行法への改正は、1994年の細川内閣における政治改革四法(公職選挙法の一部を改正する法律、衆
議院議員選挙区画定審議会設置法、政治資金規正法の一部を改正する法律、政党助成法)のひとつ。
• 政治家への寄付(寄附)の原則禁止と、政治団体を中心とした「例外的」な適用。
• ネット選挙解禁との整合性
(目的)
第一条 この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候
補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監
視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに
政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公
明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第二条 この法律は、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにか
んがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、いやしくも政治資
金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切に運用されなければならない。
2 政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たつては、いやしくも国民の疑惑を招くことの
ないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければならない。
13
- 14. 14
ネット選挙と整合性の課題
――政治資金規正法
(会社等の寄附の制限)
第二十一条
会社、労働組合(労働組合法 (昭和二十四年法律第百七十四号)第二
条 に規定する労働組合をいう。第三項並びに第二十一条の三第一項及
び第二項において同じ。)、職員団体(国家公務員法 (昭和二十二年
法律第百二十号)第百八条の二 又は地方公務員法 (昭和二十五年法律
第二百六十一号)第五十二条 に規定する職員団体をいう。第三項並び
に第二十一条の三第一項及び第二項において同じ。)その他の団体は、
政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をし
てはならない。
2 前項の規定は、政治団体がする寄附については、適用しない。
3 何人も、会社、労働組合、職員団体その他の団体(政治団体を除
く。)に対して、政治活動に関する寄附(政党及び政治資金団体に対す
るものを除く。)をすることを勧誘し、又は要求してはならない。
- 15. 15
ネット選挙と整合性の課題
――政治資金規正法
• (公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)
第二十一条の二 何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除
く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対
するものを除く。)をしてはならない。
2 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。
• (同一の者に対する寄附の制限)
第二十二条 政党及び政治資金団体以外の政治団体のする政治活動に関
する寄附は、各年中において、政党及び政治資金団体以外の同一の政治
団体に対しては、五千万円を超えることができない。
2 個人のする政治活動に関する寄附は、各年中において、政党及び政
治資金団体以外の同一の者に対しては、百五十万円を超えることができ
ない。
3 前項の規定は、資金管理団体の届出をした公職の候補者が当該資金
管理団体に対してする寄附及び遺贈によつてする寄附については、適用
しない。
- 17. 政治資金規正法と
ネット選挙
• クラウドファンディングとの整合性
• 「オバマの選挙」モデルと日本国内の現行法との整合性
• クレジットカードを用いたオンライン寄附サービスの存在
• 楽天政治「LOVE
JAPAN」
• Yahoo!みんなの政治
– 寄付者個人に関する情報を送信することで対応。
• 他方、政治資金規正法の理念、目的に照らして、ネット
を通じた資金調達は資金調達の手段としてどうか。
17
- 19. 19
毎日新聞・立命館大
共同研究
• TwiXer上の候補者、有権者ツイートの分析
• 候補者アカウントを特定した、全ツイート抽出からの定量分析(ツ
イート数×RT数)
• 候補者アカウントと特定した、全ツイート抽出からのテキスト分析
(頻出語句等)
• 世論調査、ボートマッチサイト「えらぼーと」との比較検討
• 新聞社資料、取材情報と結合した分析、コンテンツ化
– 2013年参院選
– 2014年東京都知事選
– 2014年毎日新聞デジタル報道センター ?
• 「従来メディアの強みを活かしたデータ・ジャーナリズム」とは?
- 24. 24
ネット選挙で
「勝てる」のか
• 2014年東京都知事選挙における家入一真候補(88,936票)
– 唯一の若年世代候補等の影響
– 過去の選挙におけるネットを背景にした候補との比較
• 2010年参院選:三橋貴明候補(自民党比例区)42,246票
• 2007年参院選:神田 敏晶候補(無所属東京選挙区)
11,222票
• 「ネット候補」:10万票と得票率2%の壁:選挙区、比例区問
わず、知名度と基盤を持たない候補では三宅のみ。
- 26. 26
ネット選挙で
「勝てる」のか
• 鈴木寛候補、山本太郎候補(552,714票、666,684票)
の評価困難
– 現職候補とテレビタレントとしての認知度
– 三宅洋平、伊藤洋介の落選(176,970票、37,423票)
• ただし、三宅洋平は新しい政治コミュニケーション
を展開、その効果は要検討?
• 宮城選挙区
- 27. 27
政党とネット選挙
• ガバナンスとの連動
– 現在ほぼ自民党のみ対応
– 2000年代からの政治マーケティングの高度化(雑誌等への広告出稿
等の分析)、2004年頃からの党改革検証・推進委員会を通じた手法
の高度化と埼玉8区補選での勝利。
– トゥルースチーム、研修等を通じた「情報収集→分析→フィードバッ
ク→発信」のサイクルを回している
– とはいえ、東京都連でも十分ではない現状
– ネット選挙についての積極的な取り組み
- 28. 28
地方選挙における
ネット選挙
• 若年世代の人口が多く、インターネットの
普及率が高く、話題性の高い政令指定都市
レベルの都市部の地方選挙から影響?
– 2013年の地方選挙では話題にはなるも、強い影響は
観察できず。
– リスティング広告利用の活発化
• 2016年の国政選挙前にネット選挙の手法
を試す必要あり。
• 2015年の統一地方選が本番?
- 30. 30
情報伝達の経路と
メディアの「信頼」
• 日本におけるメディア状況の特殊性
– テレビ視聴率1% 50万人∼100万人
– 全国紙3社の新聞発行部数(2012年)
• 読売新聞:約 1000万部
• 朝日新聞 :約750万部
• 毎日新聞:約350万部
• 世界の新聞発行部数1位、2位、4位
– 影響力の(過剰に)大きいマスメディア
が複数存在
- 31. 31
情報伝達の経路と
メディアの「信頼」
• 「Blogosphere」の未形成
– アメリカ中心にネットメディアとそこでの議論が「信頼に足
る」という規範が醸成。
– 日本の状況。
• 「情報の信頼度の高さ」は「テレビ(NHK)」
(47.3%)「新聞」(44.1%)「インターネット」
(7.8%)(日本新聞協会,2011,『2011年全国メディ
ア接触・評価調査報告書』.)
• ただし、実用性に関するスコアでは拮抗している。
– そのような状況で、どのようにして政治や社会に関する主題
について啓発を行うのか。
• ネット「でも」必要だが、それだけでは不十分。マスメ
ディアやセミナー形式等、複数チャネルの使い分けが必
要?
- 36. 課題と展望
• ネット選挙解禁後のデータ・セットでの再分析
• 日本的な好ましい選挙制度と情報技術の関係とはど
のようなものか?
• 公選法、政治資金規正法、放送法を横断した、情報
社会に適した選挙制度とはどのようなものか
• データ・ジャーナリズムと政治マーケティング、民主主
義の改善のあいだの関係性
36
- 37.
マスメディア
ネットメディア
従来型選挙運動
メリット
・高インパクト
・即効性
・波及効果
・少ない制限と
試行錯誤の余地
・他メディアへの
波及効果(条件付)
・将来の影響力
・安定感
デメリット
・高コスト
・将来性
・即効性
・効果測定の困難
動員のためのネット選挙と
ポートフォリオ