日本の無業社会 
2014年10月16日 
情報化の挑戦を受ける日本に関する研究(Kapro)研究会 
@NIRA 
西田亮介 
立命館大学大学院先端総合学術研究科 
特別招聘准教授 
ryosukenishida@gmail.com
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自己紹介 
• 立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。 
• 国際大学GLOCOM客員研究員。北海道大学大学院公共政策学連携研究部附属公共 
政策学研究センター研究員等。 
• 専門は情報社会論と公共政策。情報化と社会変容、情報と政治(ネット選挙)、社会起 
業家の企業家精神醸成過程や政策としての「新しい公共」、地域産業振興、協働推進 
等を研究。 
• 1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科 
修士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。 
• 同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報 
センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デジタルハリウッド大学大学院非常勤 
講師等を経て現職。 
• 著書に『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)「ネット選挙と 
デジタル・デモクラシー」(NHK出版)。共編著・共著に『無業社会 働くことができない若 
者たちの未来』(朝日新聞出版)『「統治」を創造する』(春秋社)『大震災後の社会学』 
(講談社)ほか。
社会問題と政治参加を 
同時に問い直す 
• 『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(2014年, 
朝日新聞出版) 
• 『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(2013年, 
東洋経済新報社) 
• 『ネット選挙とデジタル・デモクラシー』(2013年,NHK出版) 
• 問題意識:なぜ、現代において、社会問題と政治参加を同 
時に問いなおす作業が必要なのか。 
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無業社会 
• 誰もが無業になりうる可能性があるにもかか 
わらず、無業状態から抜け出しにくい社会。 
– 自己責任としての「無業」 
– スティグマとしての「無業」 
– 他人事としての「無業」 
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無業社会の実情 
• 内閣府『平成25年版 子ども・子育て白書』 
– 15歳〜34歳の若年無業者の数:約63万人。 
– 人口に占める割合:2.3% 
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無業社会の実情 
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図表1:内閣府『平成25年版 子ども・子育て白書』p.37より引用。
世代別完全失業率 
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12.0 
10.0 
8.0 
6.0 
4.0 
2.0 
0.0 
Total 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
years 
old 
and 
over 
総 数 
15~19歳 
20~24歳 
25~29歳 
30~34歳 
35~39歳 
40~44歳 
45~49歳 
50~54歳 
55~59歳 
60~64歳 
65歳以上 
図表2:2007年〜2013年の日本の世代別完全失業率。 
『平成25年 労働力調査年報』より筆者作成。
日本の無業社会とその意味 
• 日本の完全失業率は、世界的に見ると低い。 
• 世界的にはグローバル化に伴う流動性の向上や、情報社会論的な 
「機械との競争」が課題に。 
• しかし、そのことと問題の質的重要性は別。 
– 人口ボリュームやラベリングの観点を加味すると、「深刻さ」の程度は 
必ずしも比較できない。 
– 無業と社会関係資本喪失のポジティブ・フィードバック 
– 無業期間の長期化。 
– 課題先進国のなかの無業社会。東アジアの共通課題としての無業社 
会。 
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無業社会とその「誤解」 
• 「無業の大半は、働く意欲が乏しい」 
• 「無業の原因は、怠惰である」 
• 「無業は、大学生とは無縁である」 
12
無業社会とその現代的意味 
• 1990年代後半以後、就労の問題が社会問題として顕在化。 
• 社会学者、経済学者、当事者が議論を活発に展開。 
– 佐藤俊樹,2000,『不平等社会日本――さよなら総中流』中央公論新社. 
– 玄田有史・曲沼美恵,2004,『ニート――フリーターでも失業者でもなく』幻冬舎. 
– 本田由紀・後藤和智・内藤朝雄,2006,『「ニート」って言うな!』光文社. 
– 橘木俊詔,2006,『格差社会――何が問題なのか』岩波書店. 
– 赤木智弘,2007,『若者を見殺しにする国――私を戦争に向かわせるものは何 
か』双風社. 
– NHK,2010,「無業社会」.2011、「孤族の国」 
– 城繁幸,2012,『若者を殺すのは誰か?』扶桑社. 
– 玄田有史,2013,『孤立無業(SNEP)』日本経済新聞社. 
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無業社会と日本型システム 
• 日本型システムの機能不全と、その機能不全 
– 日本的経営と雇用システム 
– 日本型福祉国家 
– 中央集権の意思決定と資源の再分配システム 
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日本的経営と無業社会 
• 日本的経営とその特徴 
– 新卒一括採用とメンバーシップ 
– 終身雇用、年功序列型賃金とジョブ・ローテーション 
– 企業別組合 
※参入離脱コストの高いシステム 
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日本型福祉国家と無業社会 
• 福祉国家と日本型福祉国家 
– 第2次世界大戦後の世界のなかの福祉国家 
– 1970年代のオイルショックと、福祉国家の危機を経た構造転換と新自由主義。 
– 「新しい社会民主主義」と「第3の道」 
– 後進国としての日本の社会保障システムの構築 
– 「経済成長を背景にした福祉、その福祉を背景にしたいっそうの経済成長」 
  (田中角栄,1972,『日本列島改造論』日刊工業新聞社.) 
– 個人、国家、企業協働の中負担、中福祉構想とその限界。 
– 理念なき福祉。GHQの社会福祉指令、福祉3法、福祉6法、ゴールドプラン、介護保険法。場当たり的改革。 
※日本型雇用の機能不全と、日本型福祉国家は前提を供給していたため、同時期に限界が露呈。 
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弱者としての若者 
• 就職氷河期、出生率減少を経て、「弱者として 
の若者」の社会的認知拡大と、政治的介入の活 
発化。 
– 2003年 内閣府、文科省、厚労省、経産省「若者自 
立・挑戦戦略会議」 
– 2004年 経産省「ジョブカフェ」 
– 2006年 厚労省「地域若者サポートステーション」 
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労働市場への再参入とコスト試算 
• 厚労省は、2012年に、25歳を起点に、社会保障費を生涯 
受給した場合と、労働市場へ再参入した場合のコスト 
ギャップを試算(厚労省,2012,「生活保護を受給した場 
合と就業した場合の社会保障等に与える影響について」)。 
– 両者のコストギャップは、約1億5千万円。税・社会保障費は約 
1億円。 
– 潜在的な最大数が約400万人(『OECD若年者雇用レビュー』)。 
掛け合わせると、約400兆円の社会保障費が必要に。 
– 憲法25条は生存権を保障。放置は不可能。 
– 自己責任論の不可能性。合理的かつ効果的な対応策が必要。 
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支援施策を考えるヒント 
• 包摂性 
• 連続性 
• 再挑戦の支援 
• キャス・サンスティーン「ミニマリスト/トリマー」 
(『Conspiracy 
Theory 
and 
Other 
Dangerous 
Ideas』)。 
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無業社会と政治参加 
• 無業社会は、実践と民間の自助努力で解決 
すべき? 
– 政治は信頼できない。 
– 雇用は民間で創出される。 
– 財政支出の増加は、必ずしも望ましくない。 
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「日本の無業社会」20141016総合研究開発機構(kapro)

  • 1.
    日本の無業社会 2014年10月16日 情報化の挑戦を受ける日本に関する研究(Kapro)研究会 @NIRA 西田亮介 立命館大学大学院先端総合学術研究科 特別招聘准教授 ryosukenishida@gmail.com
  • 2.
    2 自己紹介 •立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。 • 国際大学GLOCOM客員研究員。北海道大学大学院公共政策学連携研究部附属公共 政策学研究センター研究員等。 • 専門は情報社会論と公共政策。情報化と社会変容、情報と政治(ネット選挙)、社会起 業家の企業家精神醸成過程や政策としての「新しい公共」、地域産業振興、協働推進 等を研究。 • 1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科 修士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。 • 同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報 センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デジタルハリウッド大学大学院非常勤 講師等を経て現職。 • 著書に『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)「ネット選挙と デジタル・デモクラシー」(NHK出版)。共編著・共著に『無業社会 働くことができない若 者たちの未来』(朝日新聞出版)『「統治」を創造する』(春秋社)『大震災後の社会学』 (講談社)ほか。
  • 3.
    社会問題と政治参加を 同時に問い直す •『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(2014年, 朝日新聞出版) • 『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(2013年, 東洋経済新報社) • 『ネット選挙とデジタル・デモクラシー』(2013年,NHK出版) • 問題意識:なぜ、現代において、社会問題と政治参加を同 時に問いなおす作業が必要なのか。 3
  • 4.
  • 5.
    無業社会 • 誰もが無業になりうる可能性があるにもかか わらず、無業状態から抜け出しにくい社会。 – 自己責任としての「無業」 – スティグマとしての「無業」 – 他人事としての「無業」 5
  • 6.
    無業社会の実情 • 内閣府『平成25年版子ども・子育て白書』 – 15歳〜34歳の若年無業者の数:約63万人。 – 人口に占める割合:2.3% 6
  • 7.
    無業社会の実情 7 図表1:内閣府『平成25年版子ども・子育て白書』p.37より引用。
  • 8.
    世代別完全失業率 8 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 Total years old years old years old years old years old years old years old years old years old years old years old and over 総 数 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65歳以上 図表2:2007年〜2013年の日本の世代別完全失業率。 『平成25年 労働力調査年報』より筆者作成。
  • 9.
    日本の無業社会とその意味 • 日本の完全失業率は、世界的に見ると低い。 • 世界的にはグローバル化に伴う流動性の向上や、情報社会論的な 「機械との競争」が課題に。 • しかし、そのことと問題の質的重要性は別。 – 人口ボリュームやラベリングの観点を加味すると、「深刻さ」の程度は 必ずしも比較できない。 – 無業と社会関係資本喪失のポジティブ・フィードバック – 無業期間の長期化。 – 課題先進国のなかの無業社会。東アジアの共通課題としての無業社 会。 9
  • 10.
  • 11.
  • 12.
    無業社会とその「誤解」 • 「無業の大半は、働く意欲が乏しい」 • 「無業の原因は、怠惰である」 • 「無業は、大学生とは無縁である」 12
  • 13.
    無業社会とその現代的意味 • 1990年代後半以後、就労の問題が社会問題として顕在化。 • 社会学者、経済学者、当事者が議論を活発に展開。 – 佐藤俊樹,2000,『不平等社会日本――さよなら総中流』中央公論新社. – 玄田有史・曲沼美恵,2004,『ニート――フリーターでも失業者でもなく』幻冬舎. – 本田由紀・後藤和智・内藤朝雄,2006,『「ニート」って言うな!』光文社. – 橘木俊詔,2006,『格差社会――何が問題なのか』岩波書店. – 赤木智弘,2007,『若者を見殺しにする国――私を戦争に向かわせるものは何 か』双風社. – NHK,2010,「無業社会」.2011、「孤族の国」 – 城繁幸,2012,『若者を殺すのは誰か?』扶桑社. – 玄田有史,2013,『孤立無業(SNEP)』日本経済新聞社. 13
  • 14.
    無業社会と日本型システム • 日本型システムの機能不全と、その機能不全 – 日本的経営と雇用システム – 日本型福祉国家 – 中央集権の意思決定と資源の再分配システム 14
  • 15.
    日本的経営と無業社会 • 日本的経営とその特徴 – 新卒一括採用とメンバーシップ – 終身雇用、年功序列型賃金とジョブ・ローテーション – 企業別組合 ※参入離脱コストの高いシステム 15
  • 16.
    日本型福祉国家と無業社会 • 福祉国家と日本型福祉国家 – 第2次世界大戦後の世界のなかの福祉国家 – 1970年代のオイルショックと、福祉国家の危機を経た構造転換と新自由主義。 – 「新しい社会民主主義」と「第3の道」 – 後進国としての日本の社会保障システムの構築 – 「経済成長を背景にした福祉、その福祉を背景にしたいっそうの経済成長」   (田中角栄,1972,『日本列島改造論』日刊工業新聞社.) – 個人、国家、企業協働の中負担、中福祉構想とその限界。 – 理念なき福祉。GHQの社会福祉指令、福祉3法、福祉6法、ゴールドプラン、介護保険法。場当たり的改革。 ※日本型雇用の機能不全と、日本型福祉国家は前提を供給していたため、同時期に限界が露呈。 16
  • 17.
    弱者としての若者 • 就職氷河期、出生率減少を経て、「弱者として の若者」の社会的認知拡大と、政治的介入の活 発化。 – 2003年 内閣府、文科省、厚労省、経産省「若者自 立・挑戦戦略会議」 – 2004年 経産省「ジョブカフェ」 – 2006年 厚労省「地域若者サポートステーション」 17
  • 18.
    労働市場への再参入とコスト試算 • 厚労省は、2012年に、25歳を起点に、社会保障費を生涯 受給した場合と、労働市場へ再参入した場合のコスト ギャップを試算(厚労省,2012,「生活保護を受給した場 合と就業した場合の社会保障等に与える影響について」)。 – 両者のコストギャップは、約1億5千万円。税・社会保障費は約 1億円。 – 潜在的な最大数が約400万人(『OECD若年者雇用レビュー』)。 掛け合わせると、約400兆円の社会保障費が必要に。 – 憲法25条は生存権を保障。放置は不可能。 – 自己責任論の不可能性。合理的かつ効果的な対応策が必要。 18
  • 19.
    支援施策を考えるヒント • 包摂性 • 連続性 • 再挑戦の支援 • キャス・サンスティーン「ミニマリスト/トリマー」 (『Conspiracy Theory and Other Dangerous Ideas』)。 19
  • 20.
    無業社会と政治参加 • 無業社会は、実践と民間の自助努力で解決 すべき? – 政治は信頼できない。 – 雇用は民間で創出される。 – 財政支出の増加は、必ずしも望ましくない。 20