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20150321豊橋市青年会議所「ネット選挙と若年世代にとっての可能性と課題」
- 2. 2
自己紹介
• 立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。博士(政策・メディア)
• 国際大学GLOCOM客員研究員。北海道大学大学院公共政策学連携研究部附属公
共政策学研究センター研究員等。総合研究開発機構客員研究員。毎日新聞社客員研
究員。認定NPO法人育て上げネットフェロー。
• 専門は情報社会論と公共政策。情報化と社会変容、情報と政治(ネット選挙)、社会起
業家の企業家精神醸成過程や政策としての「新しい公共」、地域産業振興、協働推進
等を研究。
• 1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科
修士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。
• 同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報
センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デジタルハリウッド大学大学院非常勤
講師等を経て現職。
• 著書に『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)「ネット選挙と
デジタル・デモクラシー」(NHK出版)。共編著・共著に『無業社会 働くことができない若
者たちの未来』(朝日新聞出版)『「統治」を創造する』(春秋社)『大震災後の社会学』
(講談社)ほか。
- 7.
2013年公選法改正以前
(ネット選挙解禁以前)
2013年公選法改正後
(ネット選挙解禁後)
文書
図画
頒布
ウェブサービス
個別サイト、ブログ、
twitter、facebookなど
× 利用が認められない文書図画
※ただし一般有権者のソーシャルメ
ディア利用などは、実際に行われてお
り、改正以前も取り締まられていな
かった。
○ SNSでは個別アカウント宛のメッセージも利
用可
電子メール
候補者
△
政党
△
一般有権者
×
バナー広告
×
○
×
インターネットメディア
○放送法の規制も受けない
パンフレット・書籍
○ ただし、届け出の必要や内容への規制もあり、頒布可能なのは選挙事務所内、演
説会会場、街頭演説場所のみ。
通常葉書・届け出たビラ
○ 候補者一人当たりの枚数は衆院選、参院選では以下のとおり。都道府県知事、地
方議員など選挙によって条件は異なる。また、証紙貼付などの規制もある。
衆院小選挙区(葉書:3万5000枚、ビラ:7万枚)
参院比例代表(葉書:15万枚、ビラ25万枚)
参院小選挙区(当該都道府県の区域内の衆院小選挙区の数が1の場合、葉書:3
万5000枚、ビラ10万枚。1を超える場合、1増すごとに葉書:2500枚、ビラ1万5000枚加
える)
掲示
立札、ちょうちん、看板
○ 選挙事務所の表示、選挙カー・船舶、演説会の開催中会場表示。ただし大きさや
枚数は規定される。
ポスター
○ 上記立札等と同様の条件に加え、衆院小選挙区・参院選挙区・都道府県知事候
補者の個人演説会告知、ほか選挙運動のために使用するもの。ただし、表面への「掲
示責任者・印刷者の氏名・住所」記載、「証票」貼付など細かな条件に則ったもののみ。
候補者たすき、胸・腕章
○
アドバルーン、ネオン・サ
イン、電光による表示、映
写等
×
テレビ・ラジオ
× 放送時間や扱いに不平等のないよう注意深く番組制作・報道が行われる。放送法
によっても規制されている。
新聞・雑誌
× 「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて」の報道、評論を掲載するこ
とはできない、とする規制に従う。
電話
― 規制の範囲外にあるとして、利用されている
戸別訪問
× ただし、数軒おきの訪問は、実質的には行われていることもある
(注)1. 公職選挙法の規制の下で、◯は「利用可能」 ☓は「利用不可」、もしくは「実質的に利用不可」、△は「制限付き利用可能」。
2. ―は公職選挙法の「規制の範囲外」。
7
- 10. 情報技術(IT)と「合理的楽観主義」
• 情報技術の合理的楽観主義。
– 「漸進的改良主義」
• 「カリフォルニアン・イデオロギー」。シリコンバレー特有の文化的特性が、開発者、
ITサービスの設計思想に色濃く反映。ただし、それらは日本政治や選挙との相性
を念頭に置いたものではない。
• 選挙運動が表現の自由と密接に関連すると考えられている≒したがって極力規
制を設けない英米圏との差異。アメリカはとくに1987年に公正原則も撤廃。
– 1950年に選挙に関する法律を集約して産まれた公選法。
– 制度設計は、韓国と近い。韓国は盧武鉉の大統領選挙からネット選挙を導入
– ネット選挙で有名なエストニアは、旧ソ連からの独立時に、ITの徹底を国是に。
– アメリカ型の選挙制度が必ずしも、良いというわけではない。過剰な政治化、総力戦、マーケ
ティングのF1としての大統領選挙、国民感情の分断。
• 日本政治との相性と、ネット選挙解禁に対する多くの期待と「誤解」。
10
- 12. 12
ネット選挙解禁の
「誤解」と「理念なき解禁」
• 投票率の向上?
– 福岡県中間市43.64%(戦後最低)
– 2013年参院選52.61%(戦後3番目の低さ)
– 2014年衆院選52.66%(戦後最低)
• ITに特化した候補者の相次ぐ落選
• 金のかからない選挙?
• 変化仮説or正常化仮説(平準化仮説or通常化仮説)
• なりすましと誹謗中傷の問題。他方、ネット選挙関連
の公選法違反は無し
- 21. ネット選挙とその展望
• (情報)技術だけが、投票行動を規定するわけではない。
• 政局、既存の政治習慣(経路依存性)、政治の力学、複合的な情報
環境、有権者のメディアへの信頼等が投票行動に影響。
• 制度に目を向けても、本来、公職選挙法、放送法、政治資金規正法、
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報
の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)が影響。
• 情報と政治の関係を理解するためには、技術に加えて、政治、社会、
メディア、文化への目配りが不可欠。
• 情報化時代のスピンドクターと「イメージ政治」に、(ジャーナリズムは、
そして有権者は)いかに対峙するか。
• 投票年齢の引き下げとリテラシーの醸成をいかに実現できるか。
• 日本型のネット選挙のあり方を改めて構想できるか。
21