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最近の公共政策における
「nudge」の流行と
社会的な論点
西田亮介
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
パネルディスカッション②「変貌する社会経済システム」
国際公共経済学会 第32回研究大会@立教大学
2017/12/09
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自己紹介
• 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。博士(政策・メディア)。
• 専門は社会学、公共政策学、情報社会論、ジャーナリズム研究。情報化と社会変容、情報
と政治(ネット選挙)、社会起業家の企業家精神醸成過程や政策としての「新しい...
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報告の概要
• 近年、法と経済学、公共政策学、公共政策的実践のみならず、2017年のリチャード・セイラーのノーベル経
済学賞受賞等によって、日本でも頻繁に目にするようになった「Nudge」と行動経済学。
• 合理的で費用対効果の高い政策形成に貢...
Nudgeとはなにか①
• Nudge: 軽く、肘でつつく、押す。
「仕掛け」「仕掛け学」
「ちょっとした「仕掛け」がちょっとした意識や行動の変化を生み、それが大きな社会的イン
パクトをもたらすことがあります。「仕掛学」では、そのような社会...
Nudgeとはなにか②
• 公共政策、経営等における「リバタリアン・パターナリズム」の実体化、
具体化手法のひとつ。
「選択をする人が、自分にとってよりよい結果になるであろう決定を、
選択者自身の判断に基いてするように、選択に影響を与える」
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Ex.)
• SMART 401k
 給料上昇に応じて拠出率を自動で引き上げられる個人向け年金プログラム(米)。
“You have too much at stake to ignore your retirement savings.”
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Nudgeとはなにか③
• 具体的な政策手法(Cass R.Sunstein『THE ETHICS OF INFLUENCE』26-7より引用)
• Disclosure of factual information
• Simprificat...
Nudgeとはなにか④
• Nudge: libertarian paternalism. Influences choices but let people go
as they see fit. Cafeteria design (Less...
Nudgeとはなにか⑤
• ナッジ(Nudge)──直接的に選択アーキテクチャー(choice architecture)──選
択肢の背後に存在する社会環境や構造のことを指すが、しばしば不可視な
状態になっているとされる。
• 選択アーキテク...
Libertarian Paternalism①
• 選択の自由と政府の介入をいかにして論理的に両立させるか。
「『人は一般に自分がしたいと思うことをして、望ましくない取り決めを拒否し
たいのなら、オプト・アウト(拒絶の選択)する自由を与えられ...
Libertarian Paternalism ②
• (主にアメリカにおける)リバタリアンとパターナリズムの深刻な乖離
と両者の折衷、架橋の可能性。二大政党制下における国民の分断
と調停への関心?
「リバタリアン・パターナリズムは相対的に弱く...
Simpler– simple or complex?
• サンスティンの2009年〜2012のOIRA(White House Office of Information and
Regulatory Affairs)室長(administr...
公共政策で活用される「nudge」と
社会理論の接続に向けて?①
• Libertarian Paternalism
• 法学、法哲学、経済学等での検討がなされているが、社会理論との接続、
検討は十分になされているとは言い難い。
EX.)
• ...
公共政策で活用される「nudge」と
社会理論の接続に向けて?①
• 「nudge」の倫理的、規範的、社会的性質。財政的に強い制約がある社会
(たとえば日本)においても、政府は公正に社会的な利益と厚生を追求す
る「リバタリアン・パターナリズム」...
公共政策で活用される「nudge」と
社会理論の接続にむけて?②
• 「第三の道(the third way)」「条件整備国家(the enabling state)」に対する
賞賛と批判。歴史的観点
• 本パネルとの関連性?
97年〜200...
公共政策で活用される「nudge」と
社会理論の接続に向けて?③
• ブレア政権後の展開と「新自由主義化」、リバタリアン・パターナリズムは新自
由主義的な概念?
ブレア政権以後、ブラウン、そして保守党キャメロン政権下でも基本構想は「Big S...
若干のその他の論点
• “Regulatory moneyball”(Simpler p.4) vs Old Politics
透明化、合理化、効率化は、古典的な政治に打ち勝つことができるか
非効率の廃止≒既得権益の喪失、族議員等の利益喪失...
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20171209国際公共経済学会「最近の公共政策における「nudge」の流行と 社会的な論点」

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20171209国際公共経済学会パネルディスカッション②「変貌する社会経済システム」国際公共経済学会 第32回研究大会@立教大学

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20171209国際公共経済学会「最近の公共政策における「nudge」の流行と 社会的な論点」

  1. 1. 最近の公共政策における 「nudge」の流行と 社会的な論点 西田亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授 パネルディスカッション②「変貌する社会経済システム」 国際公共経済学会 第32回研究大会@立教大学 2017/12/09 ryosukenishida@gmail.com
  2. 2. 自己紹介 • 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。博士(政策・メディア)。 • 専門は社会学、公共政策学、情報社会論、ジャーナリズム研究。情報化と社会変容、情報 と政治(ネット選挙)、社会起業家の企業家精神醸成過程や政策としての「新しい公共」、地 域産業振興等を研究。 • 1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修 士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。2014年に慶應 義塾大学にて、博士(政策・メディア)取得。同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究 奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デ ジタルハリウッド大学大学院非常勤講師、立命館大大学院特別招聘准教授等を経て、 2015年9月より東京工業大学大学マネジメントセンター准教授。2016年4月より現職 • 単著に『マーケティング化する民主主義』(イースト・プレス)、『メディアと自民党』(角川書 店)、『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、「ネット選挙とデジ タル・デモクラシー」(NHK出版)。 • (共)編著・共著に『民主主義 〈一九四八‐五三〉中学・高校社会科教科書エッセンス復刻版』 (幻冬舎)、『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(朝日新聞出版)、『「統治」を創 造する』(春秋社)『大震災後の社会学』(講談社)ほか。 2
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  4. 4. 報告の概要 • 近年、法と経済学、公共政策学、公共政策的実践のみならず、2017年のリチャード・セイラーのノーベル経 済学賞受賞等によって、日本でも頻繁に目にするようになった「Nudge」と行動経済学。 • 合理的で費用対効果の高い政策形成に貢献する可能性を秘める一方で、「自律性」「権力(政治)監視の 問題意識」の毀損等、政治学的、社会学的な社会の持続可能性への影響が懸念される。 • 「変貌する社会経済システム」というときに、「nudge」のような費用対効果の高い政策形成の理論と手法と どのように向き合う(べき)か、伝統的な社会理論はどのように扱う(べき)か、という規範的問いを提起して 話題提供としたい。 • 改めて、公共政策における「nudge」の議論を整理しつつ、主にサンスティーンの「Simpler」「minimalist / trimmer」「Libertarian Paternalism」等の概念を紹介手がかりに議論の接続を試みたい。 4
  5. 5. Nudgeとはなにか① • Nudge: 軽く、肘でつつく、押す。 「仕掛け」「仕掛け学」 「ちょっとした「仕掛け」がちょっとした意識や行動の変化を生み、それが大きな社会的イン パクトをもたらすことがあります。「仕掛学」では、そのような社会現象、具体的には人の意 識や行動を変えるための「仕掛け」とその「効果」を体系的に明らかにすることを目指してい ます」 「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行 動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する」 5 「2015年度人工知能学会全国大会オーガナイズドセッション「仕掛学」」より引用 リチャード・セイラー/キャス・サンスティーン,2009,『実践 行動経済学』日経BP社.P.17より引用。
  6. 6. Nudgeとはなにか② • 公共政策、経営等における「リバタリアン・パターナリズム」の実体化、 具体化手法のひとつ。 「選択をする人が、自分にとってよりよい結果になるであろう決定を、 選択者自身の判断に基いてするように、選択に影響を与える」 6 リチャード・セイラー,2016,『行動経済学の逆襲』早川書房.P.449より引用。原著では下線部は傍点。
  7. 7. Ex.) • SMART 401k  給料上昇に応じて拠出率を自動で引き上げられる個人向け年金プログラム(米)。 “You have too much at stake to ignore your retirement savings.”  セイラーとベルナルチが関与。 • BIT(The Behavioural INSIGHTS TEAM)(英)  making public services more cost-effective and easier for citizens to use;  improving outcomes by introducing a more realistic model of human behaviour to policy; and wherever possible,  enabling people to make ‘better choices for themselves’  “The Behavioural Insights Team (BIT), also known unofficially as the "Nudge Unit””  2010年に内閣府(Cabinet Office)に設置されたが、2013年にジョイント・ベンチャーとして独立。政府機関 等とのコラボレーションを通じて政策の合理化、イノベーションにコミット。  設置にセイラー/サンスティンのNudgeが大きな影響を与えたとされる。(セイラー『行動経済学の逆襲』)  初代室長で心理学者のディヴィッド・ハルパーンは、ブレア政権の戦略ユニットのチーフアナリスト。 7 SMART 401k( https://www.smart401k.com/# )より引用
  8. 8. Nudgeとはなにか③ • 具体的な政策手法(Cass R.Sunstein『THE ETHICS OF INFLUENCE』26-7より引用) • Disclosure of factual information • Simprification • Warning, graphic, or other wise • Reminders • Increase in ease and convenience • Personalization • Framing and timing • Increase in salience • Uses of social norms • Nonmonetary rewards, such as public recgnition • Active choosing • Precommitment strategies 8
  9. 9. Nudgeとはなにか④ • Nudge: libertarian paternalism. Influences choices but let people go as they see fit. Cafeteria design (Lesson: small changes can have big effects) • Choice architecture. All of our choices have architecture behind them. (Same lesson) • Simpler: Complexity is surprisingly harmful (for both private and public sectors) (Lesson: make it easy and intuitive) 9 Sunstein, Cass, and Richard Thaler. “Nudge.” The politics of libertarian paternalism. New Haven (2008).より引用。 下線、強調は引用者による。
  10. 10. Nudgeとはなにか⑤ • ナッジ(Nudge)──直接的に選択アーキテクチャー(choice architecture)──選 択肢の背後に存在する社会環境や構造のことを指すが、しばしば不可視な 状態になっているとされる。 • 選択アーキテクト(choice architect)──選択アーキテクチャーを実装する主体 のこと。本書では「人々を『ナッジ』する」と表現されている。 • デフォルトルール(default rule)──積極的な選択をしない状態で推奨される、 いわば初期設定の選択肢のこと。 • シンプルにすること/簡素化(simpler)──本書の中核となる概念で、人々が 選択に際して直面する複雑さを極力低減するアプローチのこと。サンス ティーンは民間部門、公的部門を問わず、選択における複雑さを有害視する 傾向にある。 10 西田亮介「『シンプルな政府』解説」 (http://webmag.nttpub.co.jp/webmagazine/1063/)より引用
  11. 11. Libertarian Paternalism① • 選択の自由と政府の介入をいかにして論理的に両立させるか。 「『人は一般に自分がしたいと思うことをして、望ましくない取り決めを拒否し たいのなら、オプト・アウト(拒絶の選択)する自由を与えられるべきである』 ――。このストレートな主張がわれわれの戦略のリバタリアン的側面である。 (中略) 『人々がより長生きし、より健康で、より良い暮らしを送れるようにするため に、選択アーキテクトが人々の行動に影響を与えようとするのは当然であ る』――。これがわれわれの戦略のパターナリズム的な側面である。」 11 リチャード・セイラー/キャス・サンスティーン,2009,『実践 行動経済学』日経BP社.P.16より引用。
  12. 12. Libertarian Paternalism ② • (主にアメリカにおける)リバタリアンとパターナリズムの深刻な乖離 と両者の折衷、架橋の可能性。二大政党制下における国民の分断 と調停への関心? 「リバタリアン・パターナリズムは相対的に弱く、ソフトで、押し付け的で はない形のパターナリズムである。選択の自由が妨げられているわけ でも、選択肢が制限されているわけでも、選択が大きな負担になるわ けでもない。」 12 リチャード・セイラー/キャス・サンスティーン,2009,『実践 行動経済学』日経BP社.P.17より引用。
  13. 13. Simpler– simple or complex? • サンスティンの2009年〜2012のOIRA(White House Office of Information and Regulatory Affairs)室長(administrator)経験を踏まえて書かれた Simpler。 ”OIRA is the United States Government’s central authority for the review of Executive Branch regulations, approval of Government information collections, establishment of Government statistical practices, and coordination of federal privacy policy.” • 政治、統治、政策に関する二分法と分断 Ex.) 資本主義/社会主義 大きい政府/小さい政府etc • 手垢がついた対立軸から新たな提案: “Simple” / “complex” “simpler” “minimalist” / “trimmer” 13 OIRA(https://www.whitehouse.gov/omb/oira)より引用
  14. 14. 公共政策で活用される「nudge」と 社会理論の接続に向けて?① • Libertarian Paternalism • 法学、法哲学、経済学等での検討がなされているが、社会理論との接続、 検討は十分になされているとは言い難い。 EX.) • 森村進,2008,「キャス・サンスティーンとリチャード・セイラーの『リバータリアン・パターナ リズム』」『一橋法学』7(3): 1087-97. • 那須耕介,2016,「リバタリアン・パターナリズムとその10年」『社会システム研究』19: 1- 35. • 公共政策と社会の動態的性質 14
  15. 15. 公共政策で活用される「nudge」と 社会理論の接続に向けて?① • 「nudge」の倫理的、規範的、社会的性質。財政的に強い制約がある社会 (たとえば日本)においても、政府は公正に社会的な利益と厚生を追求す る「リバタリアン・パターナリズム」の実践者たるtrimmer足りえるのか。 「自律性」「権力監視の問題意識」  関連して、Jonathan Zittrain「Engineering an Election」論文、そして同論文提起の「Digital gerrymandering」概念の近年の展開を参照のこと。 歳出削減の強力な動機付けに、倫理的、パターナリズム的特質は勝利できるのか デフォルトがcomplexな状況にある制度、政策、施策をsimplerにできるか。いかにし て可能か 15
  16. 16. 公共政策で活用される「nudge」と 社会理論の接続にむけて?② • 「第三の道(the third way)」「条件整備国家(the enabling state)」に対する 賞賛と批判。歴史的観点 • 本パネルとの関連性? 97年〜2007年までのブレア新生労働党政権における、新しい社会民主主義的改 革。 「保守的な革新」と「革新的な保守」の対立に伴う政治的機能不全とその解消を目 指した。  Ex.) 雇用政策 就労訓練への不参加に対するペナルティの導入 公共サービスのNPO等を活用した民営化: 雇用確保とコストカットの両立。PPP等と の共通性。 16
  17. 17. 公共政策で活用される「nudge」と 社会理論の接続に向けて?③ • ブレア政権後の展開と「新自由主義化」、リバタリアン・パターナリズムは新自 由主義的な概念? ブレア政権以後、ブラウン、そして保守党キャメロン政権下でも基本構想は「Big Society」 等として継承。 nudge的なものとの相性の良さ(サンスティン「Nudges. gov」)。イギリスにおけるBIT等の 歓迎ぶりを想起せよ。 ただし、「第三の道」は「社会投資国家(social investment state)」という言い方で、ここで の比較でいえばnudge的なものよりはパターナリズム的色彩が強かった一方で、新自由 主義的であるとして強い批判に晒された。 17 BIT(http://www.behaviouralinsights.co.uk/about-us/ )より引用 Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Behavioural_Insights_Team )より引用
  18. 18. 若干のその他の論点 • “Regulatory moneyball”(Simpler p.4) vs Old Politics 透明化、合理化、効率化は、古典的な政治に打ち勝つことができるか 非効率の廃止≒既得権益の喪失、族議員等の利益喪失に。 行政組織の現状維持バイアス • 日本における「矮小化」問題? • 環境省は日本版ナッジユニットの実証実験に着手した(「平成二九年度低炭素型の 行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」)。だが、 果たして「日本版nudge unit」なのか? 18

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