REQUIRE研究会 (http://blue.zero.jp/yokumura/workshop.html)
認知行動療法などの介入の「効果」を測定するために,患者報告式アウトカム尺度 (Patient-Reported Outcome measures: PROMs) を活用することは広く行われている。例えば,うつ病の重症度を測定するためには,自己記入式尺度であればベック抑うつ質問票,他者評定式尺度であればハミルトンうつ病評価尺度を用いることが多い。PROMsは,精神医学・臨床心理学の領域では,古くから臨床と研究の両場面で活用されている。しかし,「臨床に役立つPROMsの科学的評価」に関しては,リウマチ研究やがん研究の領域ほどの進展がみられてないのが現状である。例えば,ある患者のベック抑うつ質問票の得点が,介入前後で20点から18点に下がったとする。この2点の変化を「意味のある変化である」あるいは「偶然により生じうる変化である」と,判断する根拠を持っているだろうか。
本講演では,(1) PROMsの選び方,(2) PROMsの臨床的意味のある変化の定め方,(3) PROMsを活用した臨床データベース構築について,「臨床に役立つPROMsの科学的評価」という観点から教育講演を行う。具体的には,リサーチ・クエスチョンの定め方,コアアウトカム,COSMINチェックリスト,分布に基づく方法による臨床的有意性の定め方,アンカーに基づく方法による臨床的有意性の定め方,臨床データベースの活用事例に関する話題を取り上げる。
日常臨床において適切に計画したPROMsの科学的評価は,患者本人の利益に繋がるだけではなく,将来の患者の利益にも繋がりうると考えている。研究場面でのPROMsは,当該研究だけでしか利用されないなど,不毛な文化が蔓延している。臨床場面でのPROMsの活用が,研究に繋がるための方針を提案したい。