日本心理学会第84回大会 (2020年) の公募シンポジウム「心理統計の学習方略を議論する：統計とうまくつきあえるユーザーを増やしていくために」より，徳岡 大 先生 (高松大学) による話題提供スライドです。

1. データの要約から考える心理統計
との付き合い方
徳岡 大（高松大学）
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心理統計の学習方略を議論する
――統計とうまくつきあえるユーザーを増やしていくために――
＠第84回日本心理学会

2. おしながき
• 自己紹介
• 心理統計を学んだ足跡
• 学部時代
• 大学院時代
• 就職後
• 心理統計を自分なりに整理
• データ要約とユーザーが統計を学ぶ意義
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3. 自己紹介
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4. 自己紹介
• 徳岡 大（とくおか まさる，1987年11月生）
• 専門：教育心理学
• 他者のためにもなると思うことによる行動量の増加の実証（徳岡他，2018）
• 興味：データ分析，行動データの取得と解析
• 歴代M-1でもっともおもしろいコンビは誰かを採点データに基づいて
推定（徳岡，2018）
• 子どもの動きの大きさを加速度計で測定し，特徴を示唆（山森他，2018）
• 現在のお仕事の状況
• 教員・保育士養成系の大学で心理学関連の事柄を担当
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5. 心理統計を学んだ足跡
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6. 学部：教育として受けた内容
• 大学2年生のときの心理学研究法1コマ
• 基礎統計量，検定の原理，t検定，分散分析，
相関分析など
• ちゃんと理解できていたかはかなり怪しい
• 卒業論文で2時点の縦断調査データの
解析
• 探索的因子分析，2要因混合計画の分散分
析などが必要になり学ぶ
• 大学院入試勉強のために学ぶ
当時のバイブルたち（特に，よく
わかる心理統計にはお世話にな
りました）
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7. 大学院修士課程：主に教育として受けた内容
• 修士1年：1セメスターに1コマずつ
• 前期：基礎的な解析について，学生が紹介するという方式（当時はまだマルチ
レベル分析は発展的な扱いで触り程度の説明）
• 後期：SPSSのシンタックス（CUI）との出会い，重回帰分析の交互作用の存在
を認識する機会となった
• 先行研究に高度な解析を扱ったものがあり，論文を読むためには心理
統計を知る必要があった
• 論文やネットの記事を検索して読む日々
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8. 大学院博士課程：勉強会等で学習
• 他研究科のD生と勉強会を開始
• テーマを決めて関連する解析の前提や中身を書籍，
論文，ネット，ゲストから情報収集
• RやMplusでサンプルデータとコードを用意して
ハンズオン形式でCUIに慣れる
• 資料はWebにアップしてより多くの人の目に触れ
られるようにしておく（個人Webサイト ，
slideshare など）
• 他の勉強会にも参加，発表
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影響を受けた本

9. 就職後：勉強会の参加と研究の必要性に応じて
• 授業を使って得られるデータを最大限生かせる方法を探す
• 例：担当授業の試験得点の分析
• 共同研究の中で，解析の提案，意義の説明，解析の実施
• 査読や査読対応の中で自分なりの理解を正確な表現にするために学習
• Webで検索（論文，技術系ブログ）
• 手元にある本をもう一度読む
• サンプルデータを作って試す
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10. 心理統計を自分なりに整理
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11. なぜ自分なりの分類や理解をまとめるか
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• 解析の数は膨大に思えて，個別に理解しようとすると，今自分が
何をしているのかわからなくなる
• 自分の研究との関連性や必要性もわからなくなる
• 心理統計関連書籍を読むときの章間の関連性がわからなくってなげだ
したくなる or 各章がなんのためにあるのか理解できない
• Webで様々な技術系ブログを読むときに，何をしているのかイメージ
できなくなる
• この解析なんのためにあるの？自分が知っているやつじゃだめな
の？？他の解析との関係性は？？？推定方法を知ると何の役に立
つの？？？？この処理はいったい何をしようとしているの？？？

12. 徳岡なりの解析の分類
何をしたいのか，しているのかを意識することが重要
• 変数の関連を要約したい
• 相関，回帰系（OLS，GLM，GLMMなど），媒介分析，潜在曲線モデル，分散分析など
• 人を分類して要約したい
• クラスター分析，潜在クラス分析など
• 得られた得点をより精緻なものを抽出して要約したい
• 因子分析，項目反応理論，傾向スコア分析，duffsionモデル，状態空間モデルなど
※より正確な値を算出したい（上記の解析で用いる手法，推定法）
• 最小二乗法，主因子法，最尤法，ベイズ推定など
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13. 徳岡なりの解析発展の理解
１．一般線形モデル
• 従属変数が正規分布にしたがってデータ生成されると仮定した線形回帰
２A．一般化線形モデル（Generalized Liner Model: GLM）
• 従属変数が正規分布以外の発生メカニズムをもつと仮定する線形回帰：正規分布
しないデータの記述が可能に
２B．一般線形混合モデル（Liner Mixed Model: LMM）
• 従属変数が複数のグループによってデータ生成の仕方が異なることを仮定した線
形回帰：個人差に構造を加える
３．一般化線形混合モデル（Generalized Liner Mixed Model:GLMM）
４．数理モデリング
• 分布を規定するパラメタにデータ生成メカニズムを含むモデル：線型性からの解放13

14. データの要約とユーザーが
統計を学ぶ意義
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15. 徳岡なりの要約統計量の理解
• ある集団の代表値を知りたい/ばらつきを知りたい
• 平均，中央値，最頻値，など /分散，標準偏差など
• ある集団のパラメタはどのくらい幅におさまるのか
安定性を知りたい
• 信頼区間，信頼帯など
• ある集団でどのように分布しているか知りたい
• ヒストグラム，カーネル密度，散布図など
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小
大
情
報
量
データの特徴や伝えたい情報によって重視する統計量は変わる

16. データの可視化や要約の重要性
• 折り鶴の作成数データ（徳岡他，2018）
• このデータは正規分布？
• 正規分布に基づく平均にはバイアスが含
まれ，データの要約として不適切な値で
比較する可能性がある
• 代表値としてより適切な値に
• 今考えると，ゼロ過剰モデルがよりよい
かもしれない
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• 正規分布の平均0: 1.95, 1: 6.50
• 負の二項分布の平均0: 1.68, 1: 5.83

17. ユーザーが複雑そうな解析を学び使う意義
• 現実や仮説の記述にもっとも適している解析を使うだけで，たまたま
GLMMや潜在変数を使っているだけ
• 慣例のみ基づく解析は，過去との比較を可能にする一方で，データの性質によっては
データの要約として不適切な可能性がある
• データの特徴に合わせて使わないと，現実からの乖離がより悪化する
• データのどのような面を要約したいのかを意識して解析を用いることが必要
• 状況によっては基礎的な解析でも問題はないが，どの解析手法を用いるとしても，
その解析で何をしているのか理解し，説明することが必要
• 使える道具（解析）が多いと自然と道具の違いにも注目しやすくなるし，
研究の着想にもつながるかも
• 例：複数集団のデータの場合，集団をつぶす？そのまま使う？集団間の差異をみる？17

18. どこまで学ぶべきか
• 心理統計の知見はユーザー目線からすると膨大
• 自分の研究とのバランスをどのようにとるべきか
• 無理ない範囲でできる限り追いかける
• 良書にあたる
• 自分よりも心理統計に詳しい人との接点をなくさないようにする
• 自分よりも若手に教わる
• 方法の洗練は，慣例による解析から，データの性質により着目するように
なり，再現性の確保や結果的に新たな発見につながりやすいと考える
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19. 学習方法まとめ：いつから始めても大丈夫！
• 本を読む（和書にも良書はたくさんあります）
• 学会のシンポジウムを聞く（本シンポジウムはいかがでしょうか）
• 勉強会等で発表する（勉強会を作る，Webで発信するのもよいですよ）
• 自分のデータで試しに使ってみる（授業のデータ解析は授業改善にも役立ちます）
• 共同研究者に説明する，相談する，時に頼る（研究と心理統計を結び付けて考え
やすい，共通言語があるために相互に理解しやすい状況を作りやすくなります）
• 集合知に頼る（身近にいなくても心理統計に詳しい人はネットにも偏在しています）
• 自分の持っていない知識をもつコミュニティから離れない（私はこれに非常
に助けられています）
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