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第3世代の行動療法のエビデンス

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2017年1月段階での第3世代の行動療法のエビデンスについて

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第3世代の行動療法のエビデンス

  1. 1. 第3世代の行動療法 のエビデンス 立命館大学 総合心理学部 准教授 三田村 仰 心理職のための「エビデンスにもとづく実践」入門:その基礎と実際 2017年1月22日(日)10:00-17:00 同志社大学今出川キャンパス 主催:同志社大学実証に基づく心理・社会的研究センター(WEST) 同志社大学心理学会
  2. 2. 本日の内容 1. 第3世代の行動療法とは 2. 各セラピーの紹介とメタ分析の結果 3. コクランライブラリー他による評価 4. 「エビデンスに基づく心理学的実践」 とさまざまなエビデンスの必要性 2
  3. 3. 1. 第3世代の行動療法とは その歴史的経緯と5つの特徴
  4. 4. 認知療法 認知行動 療法 米国の 行動療法 (応用行動 分析学) 英国の 行動療法 臨床行動分析 ・ACT,DBT, FAP, BA 第1世代 第2世代 第3世代 • マインドフルネ ス認知療法など (1950年代) (1970年代) (1990年代) 認知行動療法の発展 三田村(2014)を一部改変
  5. 5. 第3世代の行動療法 もしくは「文脈的認知行動療法(文脈的CBT)」 ① 文脈と機能を重視する ② 診断横断的に人間の機能を高める ③ 理論や技法はセラピスト側にも向けら れる ④ 従来のCBTの延長線上に位置づけら る ⑤ 人間における大きなテーマについても 積極的に扱う 5(Hayes, 2004; Hayes et al, 2011)
  6. 6. ① 文脈と機能を重視する 従来のCBTの発想 • 問題や症状の除去もしくは緩和を目指す 認知療法の発想 • ネガティブな思考の内容を変える 第3世代の発想 • 症状そのもの(第1水準)よりも 生活・人生(第2水準)の変化を目指す • 思考が生活に及ぼす影響(機能) を変えようとする 6
  7. 7. ② 診断横断的に人間の 機能を高める • 従来のCBT • DSMのカテゴリーごとの介入法 • 第3世代 • 心理的柔軟性の問題全般を対象 • 環境を工夫する方法としては,すでに応 用行動分析がある 7
  8. 8. ③ 理論や技法はセラピスト側 にも向けられる • セラピストは客観的な第3者ではない • セラピスト自身もクライエントと同様に “人間として”,苦しみを抱えた存在 • セラピストの存在は,それ自体がセラピーの 道具である • セラピストの振る舞いそのものが,クライエント の行動の維持要因でもありうるし,セラピー要 因となる 8
  9. 9. ④ 従来のCBTの延長線上に 位置づけらる • 従来のCBTを否定するものではない • 認知・行動的アプローチは実証的な基盤を もとに知見を積み上げてきている • 第3世代では,これまでの研究知見や技法 の積み上げを活用 • エクスポージャー,行動活性化,行動・思考記 録,スキルトレーニングなど 9
  10. 10. ⑤ 人間における大きなテーマに ついても積極的に扱う • 価値,自己,スピリチュアリティー,慈しみ, 共感なども積極的に扱う • 他のセラピーのオリエンテーションの技法 も積極的に援用 • ゲシュタルト療法,力動的精神療法,フォーカシ ング,家族療法,禅など 10
  11. 11. 第3世代を論じる際の注意点 • 第3世代の定義は必ずしも具体ではない • 第3世代とそれ以外との境界は不明瞭 • 第3世代のもつメッセージ性は重要だが, 具体的な議論をするなら分けて考えるべき • 特に,エビデンスに関しては, 一緒くたに論じるのは適切でない • 介入パッケージ毎,対象毎に精査すべき 11 *これはいわゆる「マインドフルネス」を論じる際にも当てはまる
  12. 12. 2. 各セラピーの紹介 とメタ分析の結果 12
  13. 13. 代表的な第3世代の行動療法 • マインドフルネス認知療法 (Mindfulness-based cognitive therapy ; MBCT) • 弁証法的行動療法 (Dialectical behavior therapy; DBT) • 機能分析心理療法 (Functional analytic psychotherapy; FAP) • 行動活性化 (Behavioral activation; BA) • アクセプタンス&コミットメント・セラピー (Acceptance and commitment therapy; ACT) 13
  14. 14. マインドフルネス認知療法 (MBCT) Segal, Williams, & Teasdale (2001) 主な対象:うつ病寛解期の患者への再発予防 構造:最大12名の集団で8セッション 内容:マインドフルネス瞑想が中心 理論:「相互作用的認知下位システム (Interacting Cognitive Subsystems; ICS)」 (Teasdale & Barnard, 1993) 14
  15. 15. MBCTのエビデンス ー Kuyken et al (2016)によるメタ分析 • うつ病再発予防に対する効果 • 9つのRCT,1,329名の参加者 • 60週間後のフォローアップの結果 表1 うつ病再発のハザード比 • 抑うつが重度になるほどMBCTで大きな効果が見 られる傾向にあった 15 非MBCT 介入群 active treatments ハザード比 0.69 0.79 (95% CI) (0.58 – 0.82) (0.64 – 0.97)
  16. 16. 弁証法的行動療法 (DBT) Linehan (1993) 主な対象:境界性パーソナリティ障害 構造:個別セッション+グループセッション+ 電話コンサルテーション+グループSV 内容:マインドフルネス,苦痛耐性, 情動調節,対人的効果性 理論:生物社会モデル,弁証法,禅, 行動分析学,認知行動的モデル, 情動調節 16
  17. 17. DBTのエビデンス • Kliem, Kroger, & Kosfelder (2010) • 表 全般的な効果指標(RCTのみを抜粋) 17 対照群 Post vs Follow-up 対照群 (BPD限定) Hedges’ g 0.39 -0.20 0.51 (95% CI) (0.10 – 0.68) (-0.25- 10.15) (0.38-0.64) RCTの数 8 5 2 参加者数 (脱落後) 553 (post: 391) 255 (post: 203 → follow: 190)
  18. 18. 機能分析心理療法 (FAP) Kohlenberg & Tsai (1991) 主な対象:ー 構造:1対1の個別面接 内容:セラピー関係を活用する,他のセラピー と組合せ可能 理論:徹底的行動主義,スキナーの言語行動 18
  19. 19. FAPのエビデンス • 現段階ではRCTは1件程度 • ACTと組み合わせてのRCT(Gifford et al, 2011) • 単一事例やプロセス研究が中心 • <本日は詳細は割愛> 19
  20. 20. 行動活性化 (BA) 主な対象:うつ病 いくつかの種類がある • Martell, Addis, & Jacobson (2001) 通称 “機能的アセスメントに基づく活性化” • Lejuez, Hopko, & Hopko (2001) 通称 “単純活性化” 構造:基本的に個別式 内容:機能的アセスメント,セルフモニタリング, 活動シュケジューリング 理論:行動理論 or 行動分析学 20
  21. 21. BAのエビデンス Ekers et al (2014)によるメタ分析 • ここでの「BA」:セルフモニタリングと活動ス ケジューリングを鍵とする行動的なセラピー • 26のRCT, 1524名の参加者 表1 対照群と薬物療法群との比較 21 対照群 薬物療法 Hedges’ g (95%CI) 0.74 (0.56 - 0.91) 0.42 (0.00 - 0.83) RCTの数 25 4 参加者数 1088 283
  22. 22. アクセプタンス&コミットメント・セラピー (ACT) Hayes, Strosahl, & Willson (1999) 主な対象:心理的非柔軟性の問題 (診断横断的アプローチ) 構造:集団,1対1などさまざま 内容:アクセプタンス系+コミットメント系のケー スフォーミュレーションと介入 理論:心理的柔軟性モデル 22
  23. 23. ACTのエビデンス • A-Tjak et al (2015)によるメタ分析 表 対照群ごとの効果量 23 統制群 全般 待機群 心理的 プラセボ TAU CBT など Hedges’ g (95%CI) 0.57 (0.40 - 0.74) 0.82 (0.54 - 1.09) 0.51 (0.26 - 0.77) 0.64 (0.28 - 1.00) 0.32 (-1.10 - 0.74) RCTの数 39 9 5 12 9 参加者数 1,821 346 238 457 456
  24. 24. ACTのエビデンス • A-Tjak et al (2015)によるメタ分析 表 対象ごとの効果量 24 うつと不安 嗜癖 身体的 訴え その他の 精神障害 Hedges’ g (95%CI) 0.37 (0.04 – 0.70) 0.40 (0.15 - 0.66) 0.58 (0.33 - 0.84) 0.92 (0.35 - 0.84) RCTの数 8 8 15 8 参加者数 378 503 683 258
  25. 25. 3. コクラン・ライブラリー 他による評価 25
  26. 26. Hunot et al (2013) Third wave' cognitive and behavioural therapies versus other psychological therapies for depression • 分析対象: ACT 2件,BA 1件 • “Plain Language summary”より抜粋 • 「この結果は,第3世代のCBTとCBTはうつの治療 に対し等しく効果的であった。しかし,エビデンスの 質は非常に低かった。その理由は,質の低い少数 の研究しか集まらなかったからである。そのため, 第3世代のCBTが,短期的および長期的に見て, 他の心理療法と比べ,より効果的でより受け入れ られるものであるかについては結論づけることが できない」(三田村 訳) 26http://www.cochrane.org/ja/CD008704/utubing-nidui-surudi-3shi-dai-third-wave- ren-zhi-xing-dong-liao-fa-tota-noxin-li-liao-fa
  27. 27. Churchill et al (2013) Third wave' cognitive and behavioural therapies versus treatment as usual for depression. • 分析対象:ACT 1件,BA 2件, competitive memory training 1件 • “Plain Language summary”より抜粋 • 「この結果は,短期的な期間で見たときに,第3世代の CBTがうつ病の治療に効果的であることを示唆した。し かし,エビデンスの質は非常に低かった。その理由は, 研究の数や参加者が少なかったからであり,同時に, さまざまなクライエント集団,介入群と対照群が用いら れており,介入群に対する研究者における忠誠効果 の可能性も考えられる。そのため,なんらかの確信を もって結論を持ちびくことは難しい。」(三田村 訳) 27 http://www.cochrane.org/ja/CD008705/yu-bing-nidui-surudi-3shi-dai-third-wave-ren-zhi-xing- dong-liao-fa-totong-chang-zhi-liao-fa
  28. 28. Stoffers et al (2012) Psychological therapies for borderline personality disorder • 分析対象:境界性パーソナリティ障害に対するさま ざまな介入法についての28のRCT(参加者1804 名) • ここでは,DBTについてを抜粋 • “Plain Language summary”より抜粋 • 「この結果からは,弁証法的行動療法は境界性 パーソナリティ障害を抱える人々にとって有用であ ることが示唆された。その効果としては不適切な 怒りの減少,自傷行為の減少,そして全般的な機 能の改善が含まれる。」 28 http://www.cochrane.org/CD005652/BEHAV_psychological-therapies-for-borderline- personality-disorder
  29. 29. NREPPによるACTの評価 Outcome Reliability of Measures Validity of Measur es Fideli ty Missi ng Data/ Attriti on Confo undin g Variab les Data Anal ysis Overal l Rating 1: OCD symptom severity 4.0 4.0 3.5 4.0 2.5 4.0 3.7 2: Depression symptoms 4.0 4.0 3.5 4.0 2.5 4.0 3.7 3: Rehospitalization 2.5 2.5 1.5 2.0 3.0 4.0 2.6 4: General mental health 4.0 4.0 2.0 2.0 4.0 4.0 3.3 「2.Rehospitalization」を除けば,研究の質は高い(0.0-4.0で評価される) Review Date: July 2010 http://nrepp.samhsa.gov/AllPrograms.aspx
  30. 30. ACTにおける普及への準備性 Readiness for Dissemination Ratings by Criteria (0.0-4.0 scale) Implementati on Materials Training and Support Resources Quality Assurance Procedures Overall Rating 4.0 4.0 3.9 4.0 30 Review Date: July 2010 *DBTも掲載されているがここでは割愛 http://nrepp.samhsa.gov/AllPrograms.aspx
  31. 31. APA第12部会による評価 旧「経験に支持された心理療法Empirically Supported Treatments; ESTs」のリストに以下が挙げられている • ACT:慢性疼痛,うつ病, (種々の)不安症,OCD, 精神病性障害 • BA:うつ病 • DBT:境界性パーソナリティ障害 2017年1月現在http://www.div12.org/psychological-treatments/disorders/
  32. 32. 4. 「エビデンスに基づく 心理学的実践」とさまざ まなエビデンスの必要性 RCTによる介入効果のエビデンスが すべてではない
  33. 33. エビデンスに基づく心理学的実践 (Evidence-based practice in psychology; EBPP) 「患者の特徴,文化,意向という文脈に おいて,その時点で手に入る最良の研 究成果を,臨床技能に統合すること」 (APA,2006;斎藤(2012a)訳,p.174) 33
  34. 34. エビデンスに基づく心理学的実践 • 大切なのは,「単にESTsを使うこと」ではなく これらを統合すること 34 患者の特徴,文化, 意向という文脈 その時点で手に入る 最良の研究成果 臨床技能
  35. 35. 最良のエビデンス Best Available Research Evidence • 多用なエビデンス • 介入の方略,アセスメント,臨床上の問題 • 多用な研究デザイン • 問いの種類に応じた種々の研究デザインが認めら れる • RCTから質的研究まで • 実験デザインによる効果検証がまだなされて いない ≠ 効果がない介入法( p.274) 35
  36. 36. 臨床技能 Clinical Expertise •アセスメント,診断的判断,系統だった ケースフォーミュレーション, トリートメント計画の立案 •臨床的な意思決定,トリートメントの実行, クライエントの進展のモニタリング •対人的技能 •継続的な自己内省,スキルの習得 36
  37. 37. 患者の特徴,文化,意向という文脈 Patient Characteristics, Culture, and Preferences •個人差(発達,性格,人種,価値観,世 界観,介入に対する態度など) •社会的文脈(家族,社会的階層,経済 状況,文化) 37
  38. 38. EBPPはESTsを内包する •トリートメント:ESTs •アセスメント •ケースフォーミュレー ション •関係性:ESRs •原理:Principles of therapeutic change 38APA (2006, p. 273) EBPP
  39. 39. 「経験に基づく関係性 (Empirically Supported Therapy Relationships;ESRs)」 •(米国心理学会 臨床心 理部会タスクフォー ス,2001) •Norcross, J. C. (2002). Psychotherapy relationships that work. NY: Oxford University Press. 39
  40. 40. ESRs特別委員会の結論 関係性の要素 明らかに効果的 Demonstrably effective 個人心理療法での同盟 青年との心理療法での同盟 家族療法での同盟 集団療法での凝集性 クライエントからフィードバックを得ること 恐らく効果的 Probably effective 目標へのコンセンサス 協同 肯定的配慮 見込みはあるが判 断するには研究が 不十分 自己一致/純粋性 破たんしそうな同盟の修復 逆転移のマネジメント 40 Norcross (2002, p. 424)
  41. 41. 「経験に基づく治療的変化の原則 (Empirically Based Principles of therapeutic change)」 •(米国心理学会 臨床心理部会と北 米心理療法研究 協会の共同タスク フォース,2006) • Castonguay, L. G., & Beutler, L. E. (2006). Principles of therapeutic change that work. Oxford University Press. 41
  42. 42. ESTsとEBPPの方向性の相違 42 ESTs EBPP クライ エント この介入技法はあ る障害に効果があ るか? どのエビデンスが実践 家が最善の結果をも たらすのに有用か? 特定の 介入技法 APA (2006, p. 273)
  43. 43. EBPPはさまざまなエビデンスを意 思決定プロセスに活用する 43 EBPP RCT 単一事例 デザイン 質的研究 調査研究 APA (2006, p. 273)
  44. 44. まとめ • 第3世代は,概して一定程度の介入効果の エビデンスを有するが,研究の質について は改善途上である(2017年1月段階) • また,これについてはセラピーや対象ごとに 分けて見ていくべきである • 単により強いエビデンスを求めるのではなく, それを使いこなすことこそが実践家には 重要(エビデンスに基づく心理学的実践)! 44

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