3. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
個別の臓器でありながら,相互関連した多くの
異なる機能を遂行する.
肝臓に異常が生じた際に,特に肝臓の重要な双合
機能が明らかになる.
本章で取り上げる肝臓の主な機能
1. 血液の濾過と貯留
2. CHO,蛋白,脂質,ホルモン,外来化合物の代謝
3. 胆汁酸の生成
4. vitamin,鉄の貯蔵
5. 凝固因子の生成
肝臓の機能
4. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
体内最大臓器,体重の2%をしめ平均的な成
人の場合約1.5kg
基本的な機能単位は,liver lobule肝小葉
⾧さ数mm,径0.8-2mmの円柱形
人の肝には,lobuleが5~10万個存在
生理学的解剖
5. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝小葉 liver lobule
毛細胆管
内皮細胞
類洞毛細血管
門脈
肝動脈
胆管
中心静脈
Kupffer細胞
リンパ管
終末リンパ管
Disse腔
♣ 肝小葉は,下大静脈に入る
肝静脈に灌ぐ中心静脈周囲
に構築されている.
♣ 図中に,肝細胞索liver cell
plateの内の二つが表示され
ている.
♣ 肝細胞索は,車輪のスポー
クのように中心静脈から放射
状に伸びている.
♣ 各肝細胞索は,通常2細胞
分の厚さがあり,隣接する細
胞の間に,胆管に灌ぐ毛細胆
管が位置する.
肝細胞索
6. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝小葉 liver lobule
毛細胆管
内皮細胞
類洞毛細血管
門脈
肝動脈
胆管
中心静脈
Kupffer細胞
リンパ管
終末リンパ管
Disse腔
♣ 細い門脈細静脈が,消化管
の静脈流出路から門脈を介
して静脈血を受け取り,ここか
ら肝細胞索間にある類洞毛
細血管に灌ぎ,中心静脈に至
る.
♣ よって,肝細胞は,持続的に
門脈静脈血に曝される.
肝細胞索
7. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝小葉 liver lobule
毛細胆管
内皮細胞
類洞毛細血管
門脈
肝動脈
胆管
中心静脈
Kupffer細胞
リンパ管
終末リンパ管
Disse腔
♣ 小葉間腔には,肝細動脈が
存在し,隣接する小葉間の中
隔組織に動脈血を供給.
♣ 多くの小さな細動脈からも
肝類洞に直接灌がれ,小葉間
中隔から約1/3の距離にある
ものに灌がれることが最も多
い.
肝細胞索
8. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝小葉 liver lobule
毛細胆管
内皮細胞
類洞毛細血管
門脈
肝動脈
胆管
中心静脈
Kupffer細胞
リンパ管
終末リンパ管
Disse腔
♣ 類洞毛細血管は,肝細胞に
加えて,二つの別の細胞に裏
打ちされている.
1. 内皮細胞
2. Kupffer細胞(細網内
皮細胞),類洞を裏打ちする
土着のmacrophageで,類
洞血液内の細菌や他の外来
物を貪食することが出来る.
肝細胞索
9. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝小葉 liver lobule
毛細胆管
内皮細胞
類洞毛細血管
門脈
肝動脈
胆管
中心静脈
Kupffer細胞
リンパ管
終末リンパ管
Disse腔
♣ 内皮細胞による類洞の裏打ちに
は,非常に大きな孔poreが存在し,
ものによっては径が約1μmに及ぶ.
♣ この裏打ちの下で,肝細胞と内
皮細胞との間にDisse腔(類洞周
囲腔)と呼ばれる狭い組織腔が存
在.
♣ 数百万のDisse腔がリンパ管と
結合し,過剰な液体が処理されて
いる.
♣ 内皮の孔が大きいため,血漿内
物質は,自由にDisse腔に移動可
能で,蛋白も自由に拡散.
肝細胞索
11. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝血流量は多く,血管抵抗は低い
門脈から類洞へ約1050mL/分の血流がある.
肝動脈から類洞へはさらに300mL/分の血流があ
る.
合計1350mL/分,心拍出量の27%に相当
肝臓に灌ぐ門脈の圧は,平均約9mmHg
肝から下大静脈に灌ぐ肝静脈圧は,約
0mmHg.
この圧較差(Δ9mmHg)は,肝類洞の血管抵抗
が非常に低いことを示す.
門脈と肝動脈を介した肝血流
12. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝実質細胞が破壊され,繊維組織に置き換わり血
管周囲で収縮すると,門脈血流の抵抗が著明に上
昇する→肝硬変症
原因:
慢性的アルコール摂取
脂肪の過剰な蓄積
肝炎の後遺症
nonalcoholic steatohepatitis, HASH
多くの工業国で最も多い肝疾患の原因で,通常肥
満,Ⅱ型糖尿病が関与.
その他 四塩化炭素,感染性肝炎,胆管閉塞,胆管炎
肝硬変は,血管抵抗を著増
13. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
門脈ないしその主要な枝に発生する大きな血
餅によって,しばしば血流が阻止される.
突然の遮断は,腸および脾臓から肝臓門脈系を
通って体循環に血液が戻るのが妨げられる.
この抵抗により,門脈圧亢進症が発生.
腸壁の毛細血管圧が通常より15-20mmHg高くな
る.
閉塞が緩和されない場合,毛細血管から腸の内腔
および壁への体液の過剰な喪失のために,患者は
数時間以内に死亡する可能性がある.
門脈圧亢進症
14. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝臓は,膨張可能な臓器なので,大量の血液が,
肝臓の血管内に貯蔵可能.
肝臓の正常血液量は,静脈,類洞を含めって約
450mLで全身の血液量の約10%を占める.
右房圧が上昇し,肝臓がうっ血すると,肝臓は膨張
して0.5~1.0の過剰血液が貯留する.
末梢がうっ血している心不全患者で特に顕著.
血液が過剰な場合は,貯蔵庫として,血液量が不足
しているときには,供給源として機能できる.
血液貯蔵庫としての肝機能
15. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝の類洞の孔poreは,非常に透過性が高く,
液でも蛋白でも容易にDisse腔に通過させる.
肝臓から流入するリンパ液の蛋白濃度は約6g/dL
で,血漿蛋白質濃度をわずかに下回る程度.
類洞上皮の透過性が高いため,大量のリンパの生
成を可能にしている.
安静時に生成されるリンパの約半分は,肝臓に由来
する.
肝臓のリンパ流は,非常に速い
16. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝静脈圧が正常よりわずか3-7mmHg上回っ
ただけで,過剰な液がリンパや腹腔に漏出し始
める.
この液は,ほぼ純粋な血漿液で,正常血漿の80-
90%の蛋白を含む.
下大静脈圧が10-15mmHgの時,肝リンパ流は正
常時の20倍に増加し,肝表面からの”発汗”が貯蔵
し大量の腹水が発生する.
肝を通る門脈流の阻害も消化管の門脈系の毛細
血管圧を上昇させ,腸管の浮腫と腸管漿膜から腹
腔への液の漏出を増し,腹水を生じる.
腹水-肝,門脈からの漏出
17. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝臓は,相当量の組織喪失後も,めざましい再生
能力を持つ
肝部分切除後
70%の肝切除後でも,残存組織が元のサイズまで増
大する.
再生速度は,速やかでratではわずか5-7日で達成.
合併症が無いウイルス感染や炎症などの急性肝障害
後
肝細胞は,再生中に一度ないし二度複製され,元
のサイズにまで復元されると,元の無活動状態に復
帰する.
肝質量の調節-再生
18. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
hepatocyte growth factor(HGF)が重要な
役割を果たしている可能性.
HGFは,肝臓およびその他の間葉細胞によって産
生され肝細胞から産生されるわけではない.
肝部分切除後,血中HGF濃度は20倍以上に上昇
有糸分裂反応は,肝臓だけに現れることから,HGF
は影響を受けた臓器だけで活性化されると示唆さ
れる.
他の成⾧因子(上皮増殖因子),tumor necrosis
factorやinterleukin 6のようなcytokineも肝細
胞の再生刺激に関与している可能性がある.
肝質量の調節-再生
19. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝が元の大きさに復帰すると,肝細胞分裂の過程
は終了.
終了過程の詳細は不明
肝細胞から分泌されるtransforming growth
factor-βと呼ばれるcytokineは,強力な肝細胞増殖
抑制因子で,肝臓再生終了の主役と目されてきた.
生理学的実験によれば,肝細胞増殖は,体格に関係し
た未知のシグナルと密接に連携していて,最適な体重と
肝臓の重さの比が,最適な代謝機能のために維持され
ている.
線維化,炎症,ウイルス感染などの肝疾患では,肝再生
過程が厳しく障害され,肝機能が悪化する.
肝質量の調節-再生
20. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
腸管毛細血管を流れる血液は,様々な細菌を腸管内か
ら拾い上げる.
実際,肝臓に入る前の門脈血を培養すると,ほとんど常に腸
内細菌が培養されるのに,体循環血液からは腸内細菌が培
養で陽性になることは非常に稀.
肝静脈洞を裏張りする大きな貪食細胞であるKupffer
細胞の動きを超高速度撮影すると,同細胞が,静脈洞を
通る血液を効果的に浄化しているのが判る.
細菌がKupffer細胞と接触すると,0.01秒以内に細菌が
Kupffer細胞内に取り込まれ,中で消化されるまで閉じ込め
られる.
おそらく,腸管から門脈に入った細菌の内,体循環に通り抜け
る事ができる細菌は1%に満たない.
肝macrophage系の血液浄化機能
21. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝臓は,代謝速度の速い,大きな,細胞の化学
反応プール
これらの細胞は,一つの代謝系が別の代謝系と基
質やエネルギーを分け合い,体の別の部分に移送さ
れ幾多の代謝機能を果たす複数の基質を合成して
いる.
主要な生化学的大部分は,肝臓での代謝反応によ
る.
肝臓の代謝機能
22. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝臓は,以下の機能を果たす
1. 大量のglycogenの貯蔵
2. glucoseをgalactose,fructoseへ変換
3. 糖新生
4. 炭水化物代謝の中間産物から多くの化合物を生成.
血糖値を正常に維持する上で重要で,glycogenの貯蔵は,
過剰なglucoseを血液から除去し血糖が低い時には,血液
にそれを戻すため,肝臓のglucose緩衝機能と呼ばれる.
肝機能障害の人が,炭水化物に富んだ食事の接種後は,血糖値
が,正常の人の血糖値の2,3倍高くなる.
糖新生は,glucose濃度が正常以下に低下した際にかなり
の程度行われ重要.大量のアミノ酸,triglycerideに由来する
glycerolがglucoseに変換され,血糖値を正常に維持する.
炭水化物代謝
23. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
体内の多くの細胞で脂質は代謝されるが,脂質
代謝のある側面は,主に肝臓でなされる.
肝臓が行う脂質代謝の特異的機能
1. 脂肪酸を酸化して,体内の他の機能が必要とする
エネルギーを供給
2. 大量のcholesterol,phospholipid,多くの
lipoproteinを合成
3. 蛋白,炭水化物から脂質を合成
脂質代謝
24. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
1. 中性脂肪からエネルギーを引き出すためには,脂肪を
glycerolと脂肪酸に分ける.
2. 脂肪酸は,β酸化により2炭素のアセチル基に分解され
acetyl-CoAを形成.
3. acetyl-CoAは,クエン酸回路に入り,酸化されて多量のエネ
ルギーを放出
β酸化は,体内の全ての細胞で起こるが,肝細胞で特に急速に起
こる.
4. acetyl-CoA2分子の縮合によりアセト酢酸に変換
5. アセト酢酸は,肝細胞から細胞外液に移動し,身体全体に
輸送されて,他の組織に吸収される高溶解性の酸で,組織
はアセト酢酸をacetyl-CoAに再変換して,通常の方法で
酸化する.
肝臓は,脂肪の代謝の大部分を担っている.
脂質代謝
25. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝臓で合成されたcholesterolの約80%は,胆汁
酸塩bile saltに変換され、胆汁に分泌される.
残りは,lipoprotein内で血中から組織細胞に輸
送される.
phospholipidも,肝で合成され,おもに
lipoproteinで輸送される.
cholesterol,phospholipidいずれも細胞によっ
て使用され,膜,細胞内構造および細胞機能にとっ
て重要な複数の化学物質を形成
CHO,蛋白からの脂肪合成は,すべて肝で行わ
れ,lipoproteinの形で脂肪組織に輸送され保存
される.
脂質代謝
26. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
人の身体は,蛋白代謝に対する肝臓の寄与を無く
しては,死ぬこと無く数日以上を過ごすことは不可
能.
蛋白代謝上,もっとも大事な肝臓の機能は以下の
通り,
1. アミノ酸の脱アミノ
2. 体液からammoniaを除くためのurea尿素の生成
3. 血漿蛋白の生成
4. 様々なアミノ酸の相互変換とアミノ酸から他の化合
物を合成
蛋白代謝
27. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
脱アミノ
アミノ酸をエネルギーに供したり,CHO,脂質に変換するには,アミノ
酸の脱アミノ化が必要
脱アミノ化は,腎臓でも多少起きるが,肝臓の脱アミノ化ほどの重
要性はない
尿素の生成
体液からammoniaを除去
脱アミノ過程で大量のammoniaが生成され,さらに細菌によって
腸管内で持続的にammoniaが生成され血中に吸収されている.
もし,肝臓がureaを生成しない場合,血漿ammonia濃度は急上
昇し,肝性昏睡から死に至る.
門脈と下大静脈との間シャントが出来て,肝臓を通過する血
液量が著明に減少すると,血中のammoniaが過剰となり,有
毒な状態に陥る.
蛋白代謝
28. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
gamma globulinの一部を除けば,基本的に全ての血
漿蛋白は,肝細胞で生成され,その量は全血漿蛋白の約
90%に相当.
残りのgamma globulinは,おもにリンパ組織内の形質
細胞により生成される抗体.
肝臓は,最大15-50g/日の血漿蛋白生成能を有する.
血漿蛋白の半分が体内から失われたとしても,1~2週間で補
充が可能
血漿蛋白の不足は,急速な肝細胞の有糸分裂を起こし肝
臓を増大させ,血漿蛋白濃度が正常化するまで蛋白を放出
し続けること.
肝硬変のような慢性肝疾患では,albuminのような血漿蛋
白が非常に減少し,全身浮腫,腹水が発生する.
蛋白代謝
29. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
アミノ酸の合成能,およびアミノ酸から他の化学
物質を合成する機能
非必須アミノ酸は,全て肝臓で合成可能
この機能を実行するために,形成されるアミノ酸と
同じ化学組成(ケト酸素を除く)を有するケト酸が
合成される.
次に,アミノ基は利用可能なアミノ酸からケト酸へ
のアミノ基転移のいくつかの段階を経て,ケト酸素
のかわりに移動する.
蛋白代謝
31. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝臓は,vitaminを貯蔵する傾向があり,患者
治療の際の優れたvitaminの源として知られて
いる.
もっとも大量に貯蔵されているのはVit.Aだが
Vit.D,Vit.B12も同様に貯蔵されている.
Vit.Aは,その欠乏10ヶ月分が貯蔵されている.
Vit.Dは,3-4ヶ月分
Vit.B12は,少なくとも1年,おそらく数年分が貯蔵され
ている.
vitamin類の貯蔵庫
32. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
血色素の中の鉄を別にすれば,はるかに大量の鉄
が,肝臓でferritinの形で貯蔵されている.
肝細胞は,apoferritinと呼ばれる蛋白を大量に含む.
apoferritinは,可逆的に鉄を結合可能
体液の鉄が過剰になると,apoferritinと結合して
ferritinを形成し,他の場所で必要になるまで,肝細胞
内で貯蔵される.
循環血液内の鉄が不足すると,ferritinが鉄を放出.
肝臓のapoferritin-ferritin systemが鉄貯蔵媒
体であるとともに血中鉄緩衝系を形成している.
鉄をferritinとして貯蔵
33. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
fibrinogen,prothrombin, accelerator
globulin,factor VII
Vit.Kは,これらの物質の生成に必要.とくに
prothrombin,factorsVII,X.の生成に.
Vit.Kが不足すると,これらの物質の濃度が著
明に低下し,血液凝固を阻害.
血液凝固に使われる物質を生成
34. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
多くの薬物を解毒,胆汁排泄する
sulfonamide, penicillin, ampicillin,
erythromycin
内分泌腺から分泌されたいくつかのホルモンが,
化学的に変更されて肝臓から排泄される
thyroxine,steroid(estrogen, cortisol,
addosterone)
肝障害により,これらのホルモンが体内に蓄積しホル
モン系の過剰な活性を呈する場合がある.
calciumの主要な排泄経路は,胆汁.
薬物,ホルモン,その他の物質の除去,排泄
35. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
多くの物質が胆汁内に排泄され,便中から排除
される.
緑黄色素birilubinも,その物質の一つ
血色素hemoglobinの分解産物
溶血性疾患や様々なタイプの肝疾患の有益な診断ツール.
胆汁内bilirubin測定
36. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
RBCは,寿命に至ると破裂して貪食される
不安定な赤血球
非抱合型bilirubin
1. RBCが寿命(平均120日)に達す
ると,循環系に存在し続けるには不
安定となり,細胞膜が破裂して,組織
macrophage
(reticuloendothelial system 細
網内皮系とも称される)に貪食され
る.
血漿内
37. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
不安定な赤血球
非抱合型bilirubin
hemeから遊離鉄と非結合bilirubinに
2. 当初,globinとhemeに分離し,heme輪は,
開かれて
① 遊離鉄は,transferrinによって体内を
輸送される.
② 四つのpyrrole核の直鎖は,bilirubin
代謝産物の基質となる.ひとつは
biliverdinで速やかに還元され遊離
bilirubin(非抱合型bilirubin)とな
り,macrophageから徐々に放出される.
これは,albuminと強固に結合して全身
の血中,間質液中に移送される.
血漿内
38. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
非結合から結合型bilirubinへ
♣ 非抱合型bilirubinは,数時間以内に肝細胞膜から吸収される.
♣ 細胞膜内では,albuminと乖離し80%はglucuronic acidと抱合し
bilirubin glucuronideを,10%はsulfateと結合してbilirubin sulfateを,残
り10%は他の多くの物質と結合
消化管内容物 尿中
抱合型bilirubin
39. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
肝細胞から毛細胆管を経て腸管へ
♣ bilirubinは,肝細胞から,能動輸送過程を経て,毛細胆管に至り,
その後消化管に移動する.
消化管内容物 尿中
抱合型bilirubin
40. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
urobilinogenの生成とその後
♣ 消化管の抱合型bilirubinの半数は,細菌の活動により高度に可溶性の
urobilinogenに変換される.urobilinogenの一部は腸粘膜から血中に吸収
され,肝臓から腸に再排泄される.
消化管内容物 尿中
抱合型bilirubin
41. 71 The Liver
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Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
urobilinogenの生成とその後
♣ urobilinogenの約5%は尿中に排泄される.尿が,空気に暴露される
と,urobilinogenは酸化されてurobilinへ変化. 便中では,酸化されて
stercobilinに変化.
消化管内容物 尿中
抱合型bilirubin
42. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
体組織の黄変
原因は,細胞外液中の大量のbilirubinの存在
非結合型,結合型いずれも
血漿内は,ほぼ完全に非抱合型bilirubinで平均
0.5mg/dL.
ある種の異常状態では,この値が40mg/dLにまで
上昇しうるが,その多くは結合型.
黄疸は,bilirubin濃度が,正常の3倍,すなわち
1.5mg/dLに至ると出現.
黄疸 細胞外液中の過剰なbilirubin
43. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
1. RBCの破壊が増加して,血中にbilirubinが
急速に放出される.→溶血性黄疸
2. 胆汁管のの閉塞ないし肝細胞の損傷により
通常量のbilirubinでさえ消化管内へ排泄で
きない状態.→閉塞性黄疸
黄疸の主たる原因
44. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
bilirubin排泄能は,障害されていないが,RBC
の溶血が早すぎて,bilirubinの排泄が追いつ
かない状態.
血漿中の非抱合型bilirubin濃度が,正常値
以上に上昇.
腸管内のurobilinogenの生成速度も上昇し,
多くが血中に吸収され,のちに尿中に排泄され
る.
溶血性黄疸
45. 71 The Liver
O.Yamaguchi
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胆管の閉塞(総胆管を閉塞する胆石,悪性腫瘍が
多い)か,肝細胞障害(肝炎など)が原因
bilirubin生成速度は正常だが,生成された
bilirubinが血中から消化管に移動できない状態.
非抱合型bilirubinが肝細胞に入り続け,いつも通
りに結合を受ける.
この抱合型bilirubinが血中にもどる.
一部は,うっ血した細胆管の破裂により,肝臓からリン
パ管に直接流入.
閉塞型黄疸では,血漿bilirubinの多くが抱合型.
閉塞性黄疸
46. 71 The Liver
O.Yamaguchi
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溶血性黄疸では,ほぼ全てのbilirubinが非抱
合型
閉塞性黄疸では,おもに抱合型bilirubin.
両型を診断するのに,van den Bergh反応が
使用される.
診断上の溶血性,閉塞性黄疸の差異
47. 71 The Liver
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
胆汁の流れが完全に遮断されると、bilirubin
が腸に到達して細菌によってurobilinogenに
変換されることが無い.
よって, urobilinogenが血液に再吸収されるこ
とはなく、腎臓から尿中に排泄されることもない.
その結果、完全閉塞性黄疸では、尿中の
urobilinogenは完全に陰性.
また、stercobilinや他の胆汁色素が不足している
ため、便は粘土色になる.
診断上の溶血性,閉塞性黄疸の差異
48. 71 The Liver
O.Yamaguchi
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腎臓は少量の高溶解性抱合型ビリルビンを排泄
できるが、アルブミン結合型非抱合型ビリルビンは
排泄できない
したがって、重度の閉塞性黄疸では、かなりの量
の抱合型ビリルビンが尿中に出現.
この現象は、尿を振って泡を観察するだけで証明できる.
泡は濃い黄色に変色
したがって、肝臓によるビリルビン排泄の生理学を
理解し、いくつかの簡単なテストを使用することに
よって、複数のタイプの溶血性疾患と肝疾患を区
別し、疾患の重症度を判断することが可能.
抱合型,非抱合型bilirubinの違い