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49 somatic sensations ii. pain, headache, and thermal sensations 14th

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O
Osamu Yamaguchi

Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Edition

Health & Medicine
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49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 49章 体性感覚 II.疼痛,頭痛,温度覚 UNIT IX. 神経系:A.全体の原理と感覚の生理
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みと,遅い痛みの性質
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 別名 sharp pain 鋭い痛み pricking pain 刺す痛み acute pain 急性の痛み electric pain 電気的痛み 針刺し,切創,急性熱傷,電気ショックなどの痛み 体の深部組織では,感じられない 速い痛み
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 別名 ゆっくりした燃えるような痛み うずく痛み ずきんずきんする痛み 催吐性の痛み 慢性的な痛み 通常,組織の破壊に関連 遷延して,耐えがたい苦痛となる可能性がある 皮膚にも,深部組織にも起こりうる. 遅い痛み
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 痛みの受容器とその刺激
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 機械的,温度,化学的 速い疼痛は,機械,温度により刺激され,遅い疼 痛は,全てのタイプの刺激により誘発される. 化学的刺激を誘発する化学物質 bradykinin,serotonin,histamine,K+,酸, acetylcholine,蛋白分解酵素 prostaglandin, substance Pは,疼痛終末の感 受性を高めるが,直接興奮させることはない. 化学物質は,組織損傷の後におこるゆっくりした疼 痛の刺激において重要. 疼痛刺激のタイプ
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 他の感覚受容器と違い,疼痛受容器はほとんど 順応しないか,全く順応しない. 逆に,ある条件下では,特に持続性のゆっくりし た疼痛,催吐性の痛みでは,疼痛線維の興奮は むしろ,次第に大きくなる. hyperalgesia 痛覚過敏 順応しないことにより,組織損傷の可能性のあ る刺激が続いていることを通告し続ける 疼痛受容器の非順応性
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 疼痛刺激と組織損傷の速さ 被検者の数 温度 (゜C) ♣ 平均的な人は,皮膚の温度が 45゜Cを超えると痛みとして感じ る. ♣ この温度以上で,熱による組 織損傷が起こり始めることを意 味する. ♣ 熱による疼痛は,組織損傷の 速さに比例していて,すでに起 きてしまった全体の損傷に比例 するわけはない. ♣ 熱以外,細菌感染,組織虚血, 挫傷などによる組織損傷の速 度も,疼痛強度に比例.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 損傷を受けた組織からの抽出物質を,正常な 皮膚に注入すると強い痛みを惹起する. bradykininは,最も強力な痛み誘発物質. 局所のK+濃度の増加,神経終末を直接破壊し て,神経の膜のイオンに対する透過性を増して 疼痛を誘発する蛋白分解酵素の増加により疼 痛強度が増す. 化学的疼痛刺激の重要性
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 虚血に陥ると,数分以内に強い疼痛が起こる. 組織の代謝が速いほど,痛みの出現は早くなる. 血圧計のカフを上腕に巻いて動脈血流が止むまで 加圧すると,前腕の運動により15~20秒以内に筋肉 痛を誘発する. 筋肉への血流がゼロであり続けても,筋の運動が無 ければ, 3-4分間は疼痛が出現しない可能性があ る. 虚血の際の疼痛の原因は,大量の乳酸の蓄積. bradykinin,蛋白分解酵素も原因となり得る. 痛みの原因としての虚血
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 筋攣縮が,疼痛の原因となる事は多い. 多くの臨床的疼痛症候群の基礎. 筋攣縮が,直接,機械的疼痛受容器を刺激す るのが一因. 筋攣縮により,血管が圧迫され虚血を起こすこ とも間接的な一因. 筋攣縮が,筋の代謝を亢進して相対的な虚血 を惹起し,化学的な疼痛誘発物質の放出を来 す事も一因. 痛みの原因としての筋攣縮
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 疼痛信号を,中枢神経系に 伝達する二重経路
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速くて鋭利な疼痛信号は,機械的疼痛刺激か温 度疼痛刺激のいずれかにより誘発される. 末梢神経から脊髄まで,細いAδ型線維で6~30m/秒の 速さで伝達される. 疼痛源からの速やかな退避のために重要. 遅い慢性型の疼痛は,ほとんどの場合,化学的な疼 痛刺激により誘発されるが,時に持続する機械刺 激や温度刺激によることもある. C型線維で0.5~2m/秒の速さで脊髄に伝達される. 次第に痛みが増強し,耐えがたいものとなるため,人は 痛みの原因を除くことを試みる. 末梢疼痛線維 “速い”,“遅い”線維
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みと遅い痛みの伝達 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 脊髄後根から入った痛みの線維は,後角の中継ニューロンで終わる. ♣ Aδ繊維が速い鋭利な痛みを伝播し,C線維が遅い慢性痛を伝える. ♣ Aδ繊維は,主に辺縁板lamina marginalisに終わり,新脊髄視床路のニューロンを興 奮させる. Ad C
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みと遅い痛みの伝達 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 新脊髄視床路のニューロンは,前交連を介して反対側に交差し後 前外側経路を上行 Ad C
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 新脊髄視床路の脳幹,視床における終点 体性感覚野へ 視床 視床髄板 内核 早い疼痛 線維 遅い疼痛 線維 網様体 腹底側核 および 後方核群 疼痛路 ♣ 新脊髄路のいくつかの線 維は脳幹の網様体に終わ るが,多くは触覚の後柱ｰ内 側毛帯路に沿って,視床の 腹底側核に終わる. ♣ いくつかの線維は,視床の 後方核群にも終わる. ♣ さらに視床から,脳の基底 部分,体性感覚皮質野に 信号が伝播される.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みは,遅い慢性痛より正確に局在化する ことができる. 痛みの受容器だけが刺激され,触覚受容器が刺激 されない場合は,局在化が不正確となり,刺激を受 けた部分の10cm以内程度になる. 触覚受容器が刺激を受け後柱ｰ内側毛帯システム を興奮させると,局在化は正確になる. 神経系は,速い痛みを局在化できる
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. glutamateグルタミン酸塩が,Aδ型疼痛神経 線維の終末から分泌されている神経伝達物質 と信じられている. 中枢神経系で最も広く使用されている興奮性伝達 物質. 通常,活動持続時間はわずか数msec. Aδ型速い痛み線維の伝達物質としてのグルタミン酸塩
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. ゆっくりした慢性疼痛を伝える旧脊髄視床路 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 旧脊髄視床路は,主に末梢の遅い慢性C型疼痛線維からの痛みを伝達する ♣ 一部Aδ型線維からの信号も伝達する. ♣ ほとんどが後角のlamina II,IIIに終わり,まとめて膠様質substantia gelatinosaと呼ばれる. Ad C
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. ゆっくりした慢性疼痛を伝える旧脊髄視床路 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 前交連を介して反対側へ移動し,前外側経路を上行して脳に至 る. Ad C
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. C型疼痛線維端末は,脊髄に入りglutamateと substance Pを放出する. glutamateは,直ちに活性を発揮し持続はわずか 数msec. substance Pは,ゆっくり放出され,数秒から数分の 間に濃度を上げる. pinprickの痛みが,2相性に感じるのは,はじめに glutamateが速い痛みを伝え,substance Pが遅 い痛みを伝えることを示唆している. C型線維終末からの伝達物質,Substance P
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 旧脊髄視床路のの脳幹,視床への投影 体性感覚野へ 視床 視床髄板 内核 早い疼痛 線維 遅い疼痛 線維 網様体 腹底側核 および 後方核群 疼痛路 ♣ 遅い慢性的な脊髄視床路は, 脳幹の広い部分に終了. ♣ 10-20%の線維が視床に到達 するのみ. ♣ 残りのほとんどは,以下の三領 域に終わる. 1. 延髄,橋,中脳の網様体核 2. 上丘,下丘の深部にある 中脳の蓋領域 3. Sylvius水道の周囲の中 脳水道周囲灰白質
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 旧脊髄視床路のの脳幹,視床への投影 体性感覚野へ 視床 視床髄板 内核 早い疼痛 線維 遅い疼痛 線維 網様体 腹底側核 および 後方核群 疼痛路 ♣ これらの部分は,痛みの感触 を知る上で重要. ♣ 脳幹の痛みの領域から,複数 の短い線維のニューロンが,視 床の髄板内核,腹外側核およ び視床下部,脳の基底部へ痛 みの信号を中継
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 旧脊髄視床路で伝達される痛みの局在性は, 不正確 痛みの局在は,一本の腕や脚で,その腕や脚のどこ かは同定できない この伝達路が,複数のシナプスを持ち,接続が拡散 している. 慢性型の痛みの源が,何処にあるかを識別するの が困難な訳. 遅い慢性経路で伝えられる疼痛の源の 局在を正確に覚知するのは不可
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 大脳皮質の体性感覚野を完全に摘出しても, 痛みの覚知を妨げない. 痛みのインパルスが,脳幹の網様体,視床その他の 低位脳中枢に入ることにより痛みを感じる. 大脳が,痛みを理解する上で何もしていないことを 示すものではない. 大脳皮質を電気的に刺激すると,刺激された約3% で中等度の痛みを感じる. 痛みの覚知は,おもに下位脳中枢(脳幹網様体,視 床など)で行われているが,痛みの質の判断では大 脳皮質が重要な役割を演じている. 痛みの理解と網様体,視床,大脳皮脂の機能
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳幹の網様野および視床の髄内板核(遅い痛 みの神経がおわる部分)を電気刺激すると,全 脳的に覚醒効果を呈する. これら二カ所が,脳の主要な覚醒系を占める. ひどい痛みを感じている人が睡眠をとれないのは,こ のため 脳全体を覚醒する疼痛信号の特別な能力
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 治療しがたい強い痛み(急速に拡大する癌の様な)があ る場合,緩和する必要がある. 痛みの緩和のために,疼痛経路をどこかで遮断すること が可能.  痛みが下半身にある場合,胸髄レベルで脊髄切断術を行う と,数週から数ヶ月,痛みを緩和できる.  脊髄遮断術を行う際には,前外側感覚経路を遮断するため に,痛みと反対側の前外側1/4を切断する.  脊髄遮断術は,二つの理由により,不成功となることがある. 1. 上半身からの多くの神経は,脳に至るまで反対側に交差 しない. 2. もともとはほとんど機能していない経路(背外側索のよう な)が感作されて,痛みが数ヶ月後に再出現する. 疼痛経路の外科的遮断
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 三つの構成成分からなる 1. 中脳の中脳水道周囲灰白 質と脳室周囲領域および Sylvius水道を囲む橋の上部, 第三脳室,第四脳室部分. 2. これらの領域から,橋の下部, 延髄の上部の中心にある薄い 大縫線核raphe magnus nuclreusおよび延髄の外側 にある外側巨細胞性網様体 傍核nucleus reticularis paragigantocellularisに信 号が送られる.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 三つの構成成分からなる 3. これらの核から,脊髄の背外 側柱を下行して脊髄後角にあ る疼痛抑制複合体に二次信 号が伝達される. 此処で鎮痛 信号が,脳に中継される疼痛 信号を阻止する.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 中脳水道周囲灰白質ないし 大縫線核を電気的に刺激する と,脊髄背側からの強い痛みの 信号を抑制する事ができる. ♣ 中脳水道周囲灰白質を刺激 するより高いレベルの脳を刺激し ても痛みを抑制できる. 1. 第三脳室近傍の視床にあ る室周囲核 2. 内側前脳束
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 伝達物質は,enkephalin, serotonin ♣ 室周囲核,中脳水道周囲灰白質 領域からの神経は,端末から enkephalinを分泌する. ♣ 大縫線核に終わる多くの線維は,刺 激を受けるとenkephalinを放出. ♣ 大縫線核から脊髄後角へ信号をお くる線維は,終端でserotoninを分 泌. serotoninが局所のニューロン にenkephalinの分泌を促す. ♣ enkephalinが脊髄後角でシナプ スを形成するC型ないしAδ型線維の 節前,節後抑制を起こす.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 50年以上前に, 第三脳室の周りにある室周囲核 や脳幹の中脳水道周囲灰白質領域へ少量の morphineを注入すると,極度の鎮痛が得られるこ とが発見された. morphine類似物質,大部分は麻薬,が鎮痛系内 の別の多くの場所で作用することが判明. 自然のmorphine類似物質は,以下の三つの大き な蛋白分子の分解産物 proopinomelanocortin proenkephalin prodynorphin 脳のオピオイドシステム- EndorphinsとEnkephalins
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 重要なmorphine類似物質 β-endorphine met-enkephalin leu-enkephalin dynorphin enkephalinは鎮痛系内の脳幹,脊髄で発見,β- endorphineは,視床下部,下垂体で,dynorphin は,enkephalinと同じ場所で発見されたが量的には はるかに少量. 脳のオピオイドシステム- EndorphinsとEnkephalins
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 末梢の接触感覚受容体からの大型Aβ感覚線 維の刺激が,同じ身体領域からの疼痛信号の 伝達を抑制する. おそらく脊髄内での局所的な側方抑制の結果. 痛みを感じている部分の近くを撫でると,痛みが緩 和する訳 打撲傷,捻挫用擦剤linimentが有用な理由. 鍼療法は,この仕組みと,同時に精神的に中枢神経 系の鎮痛系を賦活ことで除痛が得られる. 接触感覚信号による疼痛伝達抑制
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. Liniment 擦剤(訳注)
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 電気刺激による除痛法が,いくつか開発されて きた. 皮膚のある部分に刺激用電極を設置 脊髄に埋め込んで,背側感覚柱を刺激 視床の髄内板核,間脳の室周囲核,中脳水道周囲 灰白質領域に,低位的に電極を留置 刺激の強度は,患者自身が調節可能 人によっては,劇的な除痛. わずか数分の刺激で,⾧いと24時間も鎮痛効 果が持続 電気刺激による除痛
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 関連痛 Referred Pain
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 関連痛の仕組み 内臓神経 線維 皮膚神経 線維 ♣ 内臓の疼痛線維が,皮膚からの疼痛信号 を受ける2次ニューロンとシナプスを形成 ♣ 内臓疼痛神経が刺激されると,疼痛信号 は,皮膚の疼痛を伝達するニューロンにも伝 達されるため,皮膚の痛みを感じる.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 腹腔,胸腔の異なる臓器の痛みは,臓器の炎症,感 染その他の疾病の診断基準の一つ. 内臓は,痛み以外の感覚受容器を持たない. 内臓痛は,体表の痛みといくつかの重要な点で異 なる.  非常に局所的な内臓の損傷では,めったに激痛を起こ さない.  外科医は,覚醒している患者の腸を,著明な痛み無し に切断することが可能.  広範な疼痛神経終末を刺激する場合は,激痛をおこ す.  血流閉塞による広範な腸管虚血は,極度の痛みを呈 する. 内臓痛
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 広範囲の疼痛神経端末を興奮させる何らかの 刺激が内臓痛を惹起する. 内臓組織の虚血 内臓表面の化学的損傷 中空臓器の平滑筋の攣縮 中空臓器の過度な拡張 内臓周囲ないし内部の結合組織の伸展 腹腔,胸腔の内臓痛は,すべて小さなC型疼痛 線維によって伝播されるので,慢性的にうずくよ うな痛みの型 真の内臓痛の原因
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 虚血 酸性代謝産物 bradykinin,蛋白分解酵素などの組織変性産物, その他の疼痛神経端末を刺激する物質 化学的疼痛 消化管内から腹腔へ損傷物質が漏出. 胃十二指腸穿孔により,蛋白分解性酸性胃液が 漏出し,疼痛線維を広範に刺激.通常,激痛. 真の内臓痛の原因
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 中空臓器の攣縮 消化管,胆嚢,胆管,尿管その他の中空臓器は,疼 痛神経終末の機械的刺激で痛みを生じる. 攣縮による筋への血流消失,筋の代謝需要亢進な どが重篤な疼痛の原因になり得る. ときにcramp痙攣状態となり,非常な激痛になった り和らいだりする. 症状は,数分ごとに繰り返す. 繰り返しのサイクルは,平滑筋の収縮間隔に依存. 虫垂炎,胃消化管の炎症,便秘,月経,分娩,胆嚢 疾患,尿管閉塞などで発生 真の内臓痛の原因
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 中空臓器の過剰な拡張 中空臓器の,極端な詰め込み過ぎによる疼痛 おそらく,組織の過剰な伸展が原因 臓器を取り巻く血管の虚脱から,虚血痛を誘発している 要素もある. 無感覚な臓器 いくつかの内臓領域は,いかなるタイプの疼痛に対して も,ほぼ完全に無感覚 肝実質,肺胞など ただし肝の被包は直接的な外傷や伸展に非常に過敏 で,胆管も痛みに感受性を持つ. 肺胞は,無感覚でも,気管支,壁側胸膜は,非常に疼痛 に敏感. 真の内臓痛の原因
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 内臓器疾患により,病変が壁側腹膜,胸膜,心 膜に及ぶことがある. これらの壁側面は,皮膚と同様に,末梢脊髄神 経から潤沢な疼痛神経支配を受けている. 臓器を覆う壁側面からの痛みは,しばしば鋭い. 壁側腹膜を貫いたナイフの切創は,非常に痛いが, 臓側腹膜の切断や消化管壁を貫く切断は,それほど ひどく痛まない 内臓疾患による”壁側痛”
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 異なる内臓の痛みの局在を覚知するのは困難. 1. 患者の脳は,異なる内臓器の存在を直接知ることが 出来ない.内臓からのどんな痛みも,全体として局在を 覚知するのみ. 2. 腹腔,胸腔からの感覚は,二つの経路を介してCNSに 伝播される.  true visceral pathway:自立神経束内の疼痛感 覚線維を介して伝播. 痛みの感覚は,痛みの基に なっている臓器から離れた体表に感じる.  parietal pathway:壁側腹膜,胸膜,心膜から局所 の脊髄神経に直接伝播される.これらの感覚は,通常 疼痛領域に直接局在している. “内臓”痛と”壁”側痛の伝播経路
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 内臓の痛みが,体表に放散する場合,その部位は, その内臓器が胎生期に起源をもつ皮膚分節に現 れ,必ずしもその内臓器が現在ある場所とは限らな い 心臓.頚部,上部胸郭に起源があり,心臓の内臓痛線維 は,交感神経感覚線維を上行して,C3とT5の間で脊髄 に入る. 心臓からの痛みは,首の横,肩の上,胸筋,腕,上胸部胸 骨下に放散する. これらの部分は,自身の体性感覚神経線維をC3から T5の脊髄セグメントに送っている. 心臓の左側は,右側より頻回に冠動脈疾患の冒され るため,痛みも左の体表に出現する. visceral pathwayで伝播される関連痛の局在
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 関連痛 幽門 臍 虫垂および 小腸 右腎臓 左腎臓 結腸 尿管 心臓 食道 胃 肝臓と 胆嚢 ♣ 心臓:C3-T5.頚部の 横,肩の上,胸筋の上,腕, 前胸部胸骨下 ♣ 胃:T7-T9.心窩部から 臍部.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 腹部,胸部の痛みの壁側伝播経路 内臓痛 壁側痛 ♣ 内臓からの痛みは, 関連内臓経路と直 接壁側経路の二重 伝達路のために,しば しば体表で2カ所に 感じられる.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 腹部,胸部の痛みの壁側伝播経路 内臓痛 壁側痛 ♣ 虫垂炎の場合 1. 交換神経束内の内 臓疼痛神経線維を 介して脊髄のT10,11 レベルに到達.臍部の 痙攣性の痛みと感じ る. 2. 炎症を起こしている 虫垂に接している壁 側腹膜からの鋭い痛 みを右下腹部に感じ られる.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 痛みに関するいくつかの臨床的異常, その他の体性感覚
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 疼痛神経経路の興奮性が,異常に亢進 “疼痛過敏” 一次的疼痛過敏:疼痛受容器の過剰な感受性 日焼けした皮膚:histamine,prostaglandinなど による疼痛端末の感作の結果 二次的疼痛過敏:感覚伝播の促進 脊髄,視床などの障害 疼痛過敏
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. herpesvirusが,脊髄後根の神経節に感染. 体の半周をまわる皮膚分節セグメントに激痛 皮膚の発疹を伴うため,帯状疱疹 Herpes Zoster (Shingles,L.cingulum,girdle) virusは,神経細胞の末梢軸索を通って皮膚の 起源に運ばれ,ここで,数日以内に水疱を形成し, さらに数日以内にかさぶたを引き起こす発疹を 起こす. 全て感染した後根が支配する皮膚領域内で発 生. 帯状疱疹 Herpes Zoster(Shingles)
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.  裂くような痛み,刺すような痛みが,顔の半側の第V脳神経,第IX脳神 経の感覚領域に出現. Tic Douloureux,三叉神経痛,舌咽神経痛  電気ショックのような痛みで,持続はわずか数秒の場合もあれば持続 性の場合も.  トリガーポイントの機械的刺激ではじまる  例:ものを,飲み込む際に,食物が口蓋垂に接触すると,裂くような 痛みが,第V神経の下顎部分に発生  通常,外科的に疼痛過敏領域からの末梢神経を切断することにより 阻止可能.  第V脳神経が,頭蓋内に入ったところで,運動神経と,感覚神経に 分かれるので,しっかり剥離してから感覚枝を切断する必要がある.  この処置により,顔半分の麻酔状態が残存して,不快となることも.  手術が不成功な場合,痛みの原因が末梢神経では無く,脳幹の 感覚核にある可能性を示している. Tic Douloureux
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.  脊髄を完全に切断すると,その部位より末梢の全ての感覚, 運動神経機能は遮断される.  脊髄神経の一側だけが切断された場合は,Brown- Suquard Syndromeがおこる.  切断側の運動神経は,切断部位以下で阻止される.  ある種の感覚だけが,切断側で失われる.  別の種の感覚は,反対側で失われる.  脊髄視床路で運ばれる疼痛,温冷覚は,反対側の切断部位より 2~6区分下の全ての区分で消失.  後柱,後外側柱だけで運ばれる運動感覚,位置覚,振動覚,局在 の分別覚,2点分別覚などは切断側の切断レベル以下で喪失.  軽い接触を感知する感覚は,主たる経路が後柱で,横切開された 側がしょうがいされる.  粗な接触は,部分的に反対側の脊髄視床路を伝達するために,残 存. Brown-Sequard Syndrome
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脊髄の横断面 下行路 上行路 外側 皮質脊髄路 脊髄中脳蓋路 背側 脊髄小脳路 腹側 脊髄小脳路 外側 脊髄視床路 腹側脊髄視床路 薄束 楔状束 前庭脊髄路 腹側 皮質脊髄路 視蓋脊髄路 オリーブ脊髄路 赤核脊髄路
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 頭痛
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 頭蓋円蓋部の疼痛感受性領域 脳組織は,ほとんど痛みに非感受性.大脳皮質の感 覚野を切断したり電気刺激しても,希に疼痛を起こ すのみ 頭痛の痛みは,脳組織の損傷によるものでは無い. 静脈洞の牽引やtentoriumの損傷,脳底部の硬膜 の牽引などは強い痛みを誘発し,頭痛と認識される. 髄膜の血管に対する牽引刺激,外傷,破砕は頭痛 を生じる.とくに感受性の高いのは,中髄膜動脈で, 外科医は,この動脈を注意深く麻酔する. 頭蓋内が起源の頭痛
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 異なる原因による頭痛の領域 大脳円蓋 頭痛 副鼻腔,眼性 頭痛 脳幹および 小脳円蓋 頭痛 ♣ 頭蓋円蓋の中で,テン トより上にある痛み受 容器への刺激は,三叉 神経の大脳部分に痛 みのインパルスを送るた め,関連痛が,三叉神経 の支配している頭の前 半分に起こる.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 異なる原因による頭痛の領域 大脳円蓋 頭痛 副鼻腔,眼性 頭痛 脳幹および 小脳円蓋 頭痛 ♣ テント下のからの痛み インパルスは,舌咽神経, 迷走神経,第二頚髄神 経を介する.これらの神 経は頭蓋の頭頂,喉頭, 耳のやや下方を支配し ているため,頭の後頭部 に関連痛を起こす.
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 髄膜炎 最も重篤な頭痛の一つ. 硬膜,静脈洞の痛み感受性の部分が含まれる. 髄膜炎による著明な損傷は,激烈な痛みを来す. 脳脊髄圧低下の痛み CSFをわずか20mL除去しただけでも,立位でいる と強い痛みを生じる. 脳が浮遊する余地が減少するため 脳の重さが,様々な部分の硬膜表明を伸展,ゆがめ るために痛みを誘発する. 頭蓋内頭痛のタイプ
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 片頭痛 migraine headache  正確な仕組みは不明だが,血管機能の異常  前駆症状をともなう 嘔気,視野の一部の欠損,視覚前兆,その他の幻覚 頭痛開始の30-60分前におこる  原因の一説:情緒不安,緊張の遷延からある動脈の血管攣縮を 来す. 血管攣縮による虚血が前駆症状の原因. 虚血の結果,血管壁に何かが発生,平滑筋収縮の破綻により,血 管の緊張消失.血管拡張,壁の過進展が側頭動脈にまで及び実 際の片頭痛をおこす.  他の原因:皮質の広範な抑制,精神的異常,細胞外液の過剰 なK+.  家族歴がある例が65-90%にのぼり,遺伝的優位性が示唆され ている.  女性は,男性の2倍多い. 頭蓋内頭痛のタイプ
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. アルコール性頭痛 過剰なアルコール摂取後 アルコールは,組織に有毒で,髄膜を直接刺激し頭 蓋内の痛みを起こす. アルコール過飲後の脱水も関与している可能性.飲 水により緩和するが,頭痛やその他の二日酔い症状 を消失はしない. 頭蓋内頭痛のタイプ
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 筋の攣縮による頭痛 情緒的な緊張が,頭の多くの筋肉の痙縮を来す.特に 頭蓋に付着している筋や後頭部に付着している頚部筋 が痙縮する.これらが,頭痛の原因と考えられている. 鼻および付随する構造物の刺激が原因の頭痛 鼻の粘膜が,痛みに対して敏感 感染や,その他の刺激的要素が鼻腔構造物に拡大した 場合,頭痛となり,眼の背部に放散したり,前頭洞の感染 の場合には,前頭部の前表面に痛みを感じる. 上顎洞などの場合は,顔に痛みを感じる. 頭蓋外が原因の頭痛
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 眼の異常による頭痛  焦点を合わせるのが困難な場合に,毛様体筋の収縮が過 剰になる. 筋自体は,非常に小さいが,その収縮が眼球後方の痛みの 原因と考えられている.  過剰な合焦動作は,反射的な顔面,外眼筋の攣縮を来し, 頭痛の原因になり得る.  明るい光線や紫外線に過剰に暴露された場合に頭痛を起こ す.太陽の直視,アーク溶接のアーク光を数秒見ただけで,頭 痛が24~48時間持続する.  結膜が,化学的に刺激された場合に痛みを生じ,頭表,眼球 後部に放散する.  アーク光や太陽などの強い光に焦点を合わせると,網膜の熱 傷を来し,頭痛の原因になり得る. 頭蓋外が原因の頭痛
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温度感覚
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 冷たさから熱さへの勾配 凍るような冷たさ→冷たい→ひんやり→区別がつかな い→暖かい→熱い→焼けるほど熱い 温度勾配を判別する受容器の三つの型 冷感受容器,温感受容器,疼痛受容器 疼痛受容器は,凍るような冷たさ,焼けるような熱さの 場合にのみ反応. 冷感受容器,温感受容器は,皮膚の直下の別々の点に 存在. 体の多くの場所で,冷点は,温点の3~10倍分布 口唇の冷点は25/cm2,手指は3-5/cm2,体幹の広い部 分は1未満/cm2 温度受容器とその興奮
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温感受容器: 自由神経終末 主に無髄C型神経線維 伝達速度 0.4~2m/sec. 冷感受容器: 小さなAδ型有髄神経終末で数回枝分かれする. 終末端は,上皮細胞の基部に突き出ている. 伝達速度 約20m/sec. 一部の冷感覚はC型神経線維を伝播する事から,いく つかの自由神経終末も,冷感受容器として機能してい ると推察される. 温度受容器とその興奮
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温感受容器の刺激 一秒あたりのインパルス数 温度 (゜C) 冷たい痛み 熱い痛み 冷感受容器 温感 受容器
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 冷感受容器が,急に温度の低下を感知した場合, 当初,強い刺激を発するが,数秒で急速に刺激強 度が減退し,さらにその後の30分以上の間に,刺激 強度がゆっくり減退する. 受容体は,かなり順応するが,決して100%順応するわけ では無い. 皮膚の温度が,実際に低下しつつあるときは,温度が同 じレベルにあるときよりも,冷たく感じる. 皮膚温が上昇しつつあるときは,皮膚の温度が変わらな いときより,暖かく感じる. 熱い浴槽に入った時の熱さや,寒い日に,暖かい室 内から戸外に出たときの極端な冷たさの感じ 温度の変動刺激-温度受容器の順応
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温度受容器は,代謝速度の変化により刺激を 受ける. 温度変化は,10゜C毎に細胞内の化学的反応を倍 以上変化させる. 温度が,受容器の終末を化学的に刺激しているの であって,物理的に熱や冷感が神経終末に作用して いるわけでは無い. 温度受容器の仕組み
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 冷感受容器,温感受容器いずれの端末数も, 体表のある一面ではわずかで,せまい皮膚面が 刺激されても,温度の変化を判定するのは,困 難. 広範囲の皮膚が,同時に刺激を受けると,全体 の信号が,累積される. わずか0.01゜Cの急速な変化でも,体表面全体に同 時に影響すれば,感知可能. 影響を受ける皮膚面積が,わずか1cm2しかない場 合には,100倍体温が変化しても感知できない. 温度感覚の空間的合算
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 通常,疼痛信号と並行して伝播される. 脊髄に入るところで,数セグメント分Lissauer 路内を上下行し,後角のI,II,II層に終わる(痛み と同様). 一つ以上の脊髄神経による処理を受けた後に, 信号は,⾧い,上行性の温度線維に入り,反対 側に交差して前外側感覚路を上行して以下の 2カ所に終わる. 1. 脳幹の網様部分 2. 視床の腹底側核群 温度信号の伝播
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温度信号のいくつかは,腹底側核から,大脳体 性感覚皮質野に中継される. 微小電極による研究によれば,大脳皮質の体 性感覚野Iは,皮膚の特異的部分の冷刺激,温 刺激いずれによっても直接反応する. 大脳皮質の中心後回の皮質を,全て除去して も,温度変化の勾配の判別能力が低下はする が,消失はしない. 温度信号の伝播
49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 49章 体性感覚 II.疼痛,頭痛,熱感覚 UNIT IX. 神経系:A.全体の原理と感覚の生理

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  • 4. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 別名 sharp pain 鋭い痛み pricking pain 刺す痛み acute pain 急性の痛み electric pain 電気的痛み 針刺し,切創,急性熱傷,電気ショックなどの痛み 体の深部組織では,感じられない 速い痛み
  • 5. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 別名 ゆっくりした燃えるような痛み うずく痛み ずきんずきんする痛み 催吐性の痛み 慢性的な痛み 通常,組織の破壊に関連 遷延して,耐えがたい苦痛となる可能性がある 皮膚にも,深部組織にも起こりうる. 遅い痛み
  • 6. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 痛みの受容器とその刺激
  • 7. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 機械的,温度,化学的 速い疼痛は,機械,温度により刺激され,遅い疼 痛は,全てのタイプの刺激により誘発される. 化学的刺激を誘発する化学物質 bradykinin,serotonin,histamine,K+,酸, acetylcholine,蛋白分解酵素 prostaglandin, substance Pは,疼痛終末の感 受性を高めるが,直接興奮させることはない. 化学物質は,組織損傷の後におこるゆっくりした疼 痛の刺激において重要. 疼痛刺激のタイプ
  • 8. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 他の感覚受容器と違い,疼痛受容器はほとんど 順応しないか,全く順応しない. 逆に,ある条件下では,特に持続性のゆっくりし た疼痛,催吐性の痛みでは,疼痛線維の興奮は むしろ,次第に大きくなる. hyperalgesia 痛覚過敏 順応しないことにより,組織損傷の可能性のあ る刺激が続いていることを通告し続ける 疼痛受容器の非順応性
  • 9. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 疼痛刺激と組織損傷の速さ 被検者の数 温度 (゜C) ♣ 平均的な人は,皮膚の温度が 45゜Cを超えると痛みとして感じ る. ♣ この温度以上で,熱による組 織損傷が起こり始めることを意 味する. ♣ 熱による疼痛は,組織損傷の 速さに比例していて,すでに起 きてしまった全体の損傷に比例 するわけはない. ♣ 熱以外,細菌感染,組織虚血, 挫傷などによる組織損傷の速 度も,疼痛強度に比例.
  • 10. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 損傷を受けた組織からの抽出物質を,正常な 皮膚に注入すると強い痛みを惹起する. bradykininは,最も強力な痛み誘発物質. 局所のK+濃度の増加,神経終末を直接破壊し て,神経の膜のイオンに対する透過性を増して 疼痛を誘発する蛋白分解酵素の増加により疼 痛強度が増す. 化学的疼痛刺激の重要性
  • 11. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 虚血に陥ると,数分以内に強い疼痛が起こる. 組織の代謝が速いほど,痛みの出現は早くなる. 血圧計のカフを上腕に巻いて動脈血流が止むまで 加圧すると,前腕の運動により15~20秒以内に筋肉 痛を誘発する. 筋肉への血流がゼロであり続けても,筋の運動が無 ければ, 3-4分間は疼痛が出現しない可能性があ る. 虚血の際の疼痛の原因は,大量の乳酸の蓄積. bradykinin,蛋白分解酵素も原因となり得る. 痛みの原因としての虚血
  • 12. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 筋攣縮が,疼痛の原因となる事は多い. 多くの臨床的疼痛症候群の基礎. 筋攣縮が,直接,機械的疼痛受容器を刺激す るのが一因. 筋攣縮により,血管が圧迫され虚血を起こすこ とも間接的な一因. 筋攣縮が,筋の代謝を亢進して相対的な虚血 を惹起し,化学的な疼痛誘発物質の放出を来 す事も一因. 痛みの原因としての筋攣縮
  • 13. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 疼痛信号を,中枢神経系に 伝達する二重経路
  • 14. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速くて鋭利な疼痛信号は,機械的疼痛刺激か温 度疼痛刺激のいずれかにより誘発される. 末梢神経から脊髄まで,細いAδ型線維で6~30m/秒の 速さで伝達される. 疼痛源からの速やかな退避のために重要. 遅い慢性型の疼痛は,ほとんどの場合,化学的な疼 痛刺激により誘発されるが,時に持続する機械刺 激や温度刺激によることもある. C型線維で0.5~2m/秒の速さで脊髄に伝達される. 次第に痛みが増強し,耐えがたいものとなるため,人は 痛みの原因を除くことを試みる. 末梢疼痛線維 “速い”,“遅い”線維
  • 15. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みと遅い痛みの伝達 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 脊髄後根から入った痛みの線維は,後角の中継ニューロンで終わる. ♣ Aδ繊維が速い鋭利な痛みを伝播し,C線維が遅い慢性痛を伝える. ♣ Aδ繊維は,主に辺縁板lamina marginalisに終わり,新脊髄視床路のニューロンを興 奮させる. Ad C
  • 16. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みと遅い痛みの伝達 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 新脊髄視床路のニューロンは,前交連を介して反対側に交差し後 前外側経路を上行 Ad C
  • 17. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 新脊髄視床路の脳幹,視床における終点 体性感覚野へ 視床 視床髄板 内核 早い疼痛 線維 遅い疼痛 線維 網様体 腹底側核 および 後方核群 疼痛路 ♣ 新脊髄路のいくつかの線 維は脳幹の網様体に終わ るが,多くは触覚の後柱ｰ内 側毛帯路に沿って,視床の 腹底側核に終わる. ♣ いくつかの線維は,視床の 後方核群にも終わる. ♣ さらに視床から,脳の基底 部分,体性感覚皮質野に 信号が伝播される.
  • 18. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 速い痛みは,遅い慢性痛より正確に局在化する ことができる. 痛みの受容器だけが刺激され,触覚受容器が刺激 されない場合は,局在化が不正確となり,刺激を受 けた部分の10cm以内程度になる. 触覚受容器が刺激を受け後柱ｰ内側毛帯システム を興奮させると,局在化は正確になる. 神経系は,速い痛みを局在化できる
  • 19. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. glutamateグルタミン酸塩が,Aδ型疼痛神経 線維の終末から分泌されている神経伝達物質 と信じられている. 中枢神経系で最も広く使用されている興奮性伝達 物質. 通常,活動持続時間はわずか数msec. Aδ型速い痛み線維の伝達物質としてのグルタミン酸塩
  • 20. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. ゆっくりした慢性疼痛を伝える旧脊髄視床路 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 旧脊髄視床路は,主に末梢の遅い慢性C型疼痛線維からの痛みを伝達する ♣ 一部Aδ型線維からの信号も伝達する. ♣ ほとんどが後角のlamina II,IIIに終わり,まとめて膠様質substantia gelatinosaと呼ばれる. Ad C
  • 21. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. ゆっくりした慢性疼痛を伝える旧脊髄視床路 Lissauer 路 早く鋭い 疼痛線維 遅い慢性疼 痛線維 辺縁板 膠様質 前外側 経路 脊髄 神経 ♣ 前交連を介して反対側へ移動し,前外側経路を上行して脳に至 る. Ad C
  • 22. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. C型疼痛線維端末は,脊髄に入りglutamateと substance Pを放出する. glutamateは,直ちに活性を発揮し持続はわずか 数msec. substance Pは,ゆっくり放出され,数秒から数分の 間に濃度を上げる. pinprickの痛みが,2相性に感じるのは,はじめに glutamateが速い痛みを伝え,substance Pが遅 い痛みを伝えることを示唆している. C型線維終末からの伝達物質,Substance P
  • 23. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 旧脊髄視床路のの脳幹,視床への投影 体性感覚野へ 視床 視床髄板 内核 早い疼痛 線維 遅い疼痛 線維 網様体 腹底側核 および 後方核群 疼痛路 ♣ 遅い慢性的な脊髄視床路は, 脳幹の広い部分に終了. ♣ 10-20%の線維が視床に到達 するのみ. ♣ 残りのほとんどは,以下の三領 域に終わる. 1. 延髄,橋,中脳の網様体核 2. 上丘,下丘の深部にある 中脳の蓋領域 3. Sylvius水道の周囲の中 脳水道周囲灰白質
  • 24. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 旧脊髄視床路のの脳幹,視床への投影 体性感覚野へ 視床 視床髄板 内核 早い疼痛 線維 遅い疼痛 線維 網様体 腹底側核 および 後方核群 疼痛路 ♣ これらの部分は,痛みの感触 を知る上で重要. ♣ 脳幹の痛みの領域から,複数 の短い線維のニューロンが,視 床の髄板内核,腹外側核およ び視床下部,脳の基底部へ痛 みの信号を中継
  • 25. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 旧脊髄視床路で伝達される痛みの局在性は, 不正確 痛みの局在は,一本の腕や脚で,その腕や脚のどこ かは同定できない この伝達路が,複数のシナプスを持ち,接続が拡散 している. 慢性型の痛みの源が,何処にあるかを識別するの が困難な訳. 遅い慢性経路で伝えられる疼痛の源の 局在を正確に覚知するのは不可
  • 26. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 大脳皮質の体性感覚野を完全に摘出しても, 痛みの覚知を妨げない. 痛みのインパルスが,脳幹の網様体,視床その他の 低位脳中枢に入ることにより痛みを感じる. 大脳が,痛みを理解する上で何もしていないことを 示すものではない. 大脳皮質を電気的に刺激すると,刺激された約3% で中等度の痛みを感じる. 痛みの覚知は,おもに下位脳中枢(脳幹網様体,視 床など)で行われているが,痛みの質の判断では大 脳皮質が重要な役割を演じている. 痛みの理解と網様体,視床,大脳皮脂の機能
  • 27. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳幹の網様野および視床の髄内板核(遅い痛 みの神経がおわる部分)を電気刺激すると,全 脳的に覚醒効果を呈する. これら二カ所が,脳の主要な覚醒系を占める. ひどい痛みを感じている人が睡眠をとれないのは,こ のため 脳全体を覚醒する疼痛信号の特別な能力
  • 28. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 治療しがたい強い痛み(急速に拡大する癌の様な)があ る場合,緩和する必要がある. 痛みの緩和のために,疼痛経路をどこかで遮断すること が可能.  痛みが下半身にある場合,胸髄レベルで脊髄切断術を行う と,数週から数ヶ月,痛みを緩和できる.  脊髄遮断術を行う際には,前外側感覚経路を遮断するため に,痛みと反対側の前外側1/4を切断する.  脊髄遮断術は,二つの理由により,不成功となることがある. 1. 上半身からの多くの神経は,脳に至るまで反対側に交差 しない. 2. もともとはほとんど機能していない経路(背外側索のよう な)が感作されて,痛みが数ヶ月後に再出現する. 疼痛経路の外科的遮断
  • 29. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 三つの構成成分からなる 1. 中脳の中脳水道周囲灰白 質と脳室周囲領域および Sylvius水道を囲む橋の上部, 第三脳室,第四脳室部分. 2. これらの領域から,橋の下部, 延髄の上部の中心にある薄い 大縫線核raphe magnus nuclreusおよび延髄の外側 にある外側巨細胞性網様体 傍核nucleus reticularis paragigantocellularisに信 号が送られる.
  • 30. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 三つの構成成分からなる 3. これらの核から,脊髄の背外 側柱を下行して脊髄後角にあ る疼痛抑制複合体に二次信 号が伝達される. 此処で鎮痛 信号が,脳に中継される疼痛 信号を阻止する.
  • 31. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 中脳水道周囲灰白質ないし 大縫線核を電気的に刺激する と,脊髄背側からの強い痛みの 信号を抑制する事ができる. ♣ 中脳水道周囲灰白質を刺激 するより高いレベルの脳を刺激し ても痛みを抑制できる. 1. 第三脳室近傍の視床にあ る室周囲核 2. 内側前脳束
  • 32. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脳の鎮痛系 第三 脳室 室周 囲核 中脳 Enkephalin ニューロン 橋 大縫線核 延髄 大縫線核からのセロトニ ン作動性ニューロン Enkephalin ニューロン 疼痛受容 ニューロン 視床に投影している前外側システム の2次ニューロン 第四脳室 中脳水道 中脳水道周囲灰白質 ♣ 伝達物質は,enkephalin, serotonin ♣ 室周囲核,中脳水道周囲灰白質 領域からの神経は,端末から enkephalinを分泌する. ♣ 大縫線核に終わる多くの線維は,刺 激を受けるとenkephalinを放出. ♣ 大縫線核から脊髄後角へ信号をお くる線維は,終端でserotoninを分 泌. serotoninが局所のニューロン にenkephalinの分泌を促す. ♣ enkephalinが脊髄後角でシナプ スを形成するC型ないしAδ型線維の 節前,節後抑制を起こす.
  • 33. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 50年以上前に, 第三脳室の周りにある室周囲核 や脳幹の中脳水道周囲灰白質領域へ少量の morphineを注入すると,極度の鎮痛が得られるこ とが発見された. morphine類似物質,大部分は麻薬,が鎮痛系内 の別の多くの場所で作用することが判明. 自然のmorphine類似物質は,以下の三つの大き な蛋白分子の分解産物 proopinomelanocortin proenkephalin prodynorphin 脳のオピオイドシステム- EndorphinsとEnkephalins
  • 34. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 重要なmorphine類似物質 β-endorphine met-enkephalin leu-enkephalin dynorphin enkephalinは鎮痛系内の脳幹,脊髄で発見,β- endorphineは,視床下部,下垂体で,dynorphin は,enkephalinと同じ場所で発見されたが量的には はるかに少量. 脳のオピオイドシステム- EndorphinsとEnkephalins
  • 35. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 末梢の接触感覚受容体からの大型Aβ感覚線 維の刺激が,同じ身体領域からの疼痛信号の 伝達を抑制する. おそらく脊髄内での局所的な側方抑制の結果. 痛みを感じている部分の近くを撫でると,痛みが緩 和する訳 打撲傷,捻挫用擦剤linimentが有用な理由. 鍼療法は,この仕組みと,同時に精神的に中枢神経 系の鎮痛系を賦活ことで除痛が得られる. 接触感覚信号による疼痛伝達抑制
  • 36. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. Liniment 擦剤(訳注)
  • 37. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 電気刺激による除痛法が,いくつか開発されて きた. 皮膚のある部分に刺激用電極を設置 脊髄に埋め込んで,背側感覚柱を刺激 視床の髄内板核,間脳の室周囲核,中脳水道周囲 灰白質領域に,低位的に電極を留置 刺激の強度は,患者自身が調節可能 人によっては,劇的な除痛. わずか数分の刺激で,⾧いと24時間も鎮痛効 果が持続 電気刺激による除痛
  • 38. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 関連痛 Referred Pain
  • 39. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 関連痛の仕組み 内臓神経 線維 皮膚神経 線維 ♣ 内臓の疼痛線維が,皮膚からの疼痛信号 を受ける2次ニューロンとシナプスを形成 ♣ 内臓疼痛神経が刺激されると,疼痛信号 は,皮膚の疼痛を伝達するニューロンにも伝 達されるため,皮膚の痛みを感じる.
  • 40. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 腹腔,胸腔の異なる臓器の痛みは,臓器の炎症,感 染その他の疾病の診断基準の一つ. 内臓は,痛み以外の感覚受容器を持たない. 内臓痛は,体表の痛みといくつかの重要な点で異 なる.  非常に局所的な内臓の損傷では,めったに激痛を起こ さない.  外科医は,覚醒している患者の腸を,著明な痛み無し に切断することが可能.  広範な疼痛神経終末を刺激する場合は,激痛をおこ す.  血流閉塞による広範な腸管虚血は,極度の痛みを呈 する. 内臓痛
  • 41. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 広範囲の疼痛神経端末を興奮させる何らかの 刺激が内臓痛を惹起する. 内臓組織の虚血 内臓表面の化学的損傷 中空臓器の平滑筋の攣縮 中空臓器の過度な拡張 内臓周囲ないし内部の結合組織の伸展 腹腔,胸腔の内臓痛は,すべて小さなC型疼痛 線維によって伝播されるので,慢性的にうずくよ うな痛みの型 真の内臓痛の原因
  • 42. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 虚血 酸性代謝産物 bradykinin,蛋白分解酵素などの組織変性産物, その他の疼痛神経端末を刺激する物質 化学的疼痛 消化管内から腹腔へ損傷物質が漏出. 胃十二指腸穿孔により,蛋白分解性酸性胃液が 漏出し,疼痛線維を広範に刺激.通常,激痛. 真の内臓痛の原因
  • 43. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 中空臓器の攣縮 消化管,胆嚢,胆管,尿管その他の中空臓器は,疼 痛神経終末の機械的刺激で痛みを生じる. 攣縮による筋への血流消失,筋の代謝需要亢進な どが重篤な疼痛の原因になり得る. ときにcramp痙攣状態となり,非常な激痛になった り和らいだりする. 症状は,数分ごとに繰り返す. 繰り返しのサイクルは,平滑筋の収縮間隔に依存. 虫垂炎,胃消化管の炎症,便秘,月経,分娩,胆嚢 疾患,尿管閉塞などで発生 真の内臓痛の原因
  • 44. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 中空臓器の過剰な拡張 中空臓器の,極端な詰め込み過ぎによる疼痛 おそらく,組織の過剰な伸展が原因 臓器を取り巻く血管の虚脱から,虚血痛を誘発している 要素もある. 無感覚な臓器 いくつかの内臓領域は,いかなるタイプの疼痛に対して も,ほぼ完全に無感覚 肝実質,肺胞など ただし肝の被包は直接的な外傷や伸展に非常に過敏 で,胆管も痛みに感受性を持つ. 肺胞は,無感覚でも,気管支,壁側胸膜は,非常に疼痛 に敏感. 真の内臓痛の原因
  • 45. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 内臓器疾患により,病変が壁側腹膜,胸膜,心 膜に及ぶことがある. これらの壁側面は,皮膚と同様に,末梢脊髄神 経から潤沢な疼痛神経支配を受けている. 臓器を覆う壁側面からの痛みは,しばしば鋭い. 壁側腹膜を貫いたナイフの切創は,非常に痛いが, 臓側腹膜の切断や消化管壁を貫く切断は,それほど ひどく痛まない 内臓疾患による”壁側痛”
  • 46. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 異なる内臓の痛みの局在を覚知するのは困難. 1. 患者の脳は,異なる内臓器の存在を直接知ることが 出来ない.内臓からのどんな痛みも,全体として局在を 覚知するのみ. 2. 腹腔,胸腔からの感覚は,二つの経路を介してCNSに 伝播される.  true visceral pathway:自立神経束内の疼痛感 覚線維を介して伝播. 痛みの感覚は,痛みの基に なっている臓器から離れた体表に感じる.  parietal pathway:壁側腹膜,胸膜,心膜から局所 の脊髄神経に直接伝播される.これらの感覚は,通常 疼痛領域に直接局在している. “内臓”痛と”壁”側痛の伝播経路
  • 47. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 内臓の痛みが,体表に放散する場合,その部位は, その内臓器が胎生期に起源をもつ皮膚分節に現 れ,必ずしもその内臓器が現在ある場所とは限らな い 心臓.頚部,上部胸郭に起源があり,心臓の内臓痛線維 は,交感神経感覚線維を上行して,C3とT5の間で脊髄 に入る. 心臓からの痛みは,首の横,肩の上,胸筋,腕,上胸部胸 骨下に放散する. これらの部分は,自身の体性感覚神経線維をC3から T5の脊髄セグメントに送っている. 心臓の左側は,右側より頻回に冠動脈疾患の冒され るため,痛みも左の体表に出現する. visceral pathwayで伝播される関連痛の局在
  • 48. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 関連痛 幽門 臍 虫垂および 小腸 右腎臓 左腎臓 結腸 尿管 心臓 食道 胃 肝臓と 胆嚢 ♣ 心臓:C3-T5.頚部の 横,肩の上,胸筋の上,腕, 前胸部胸骨下 ♣ 胃:T7-T9.心窩部から 臍部.
  • 49. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 腹部,胸部の痛みの壁側伝播経路 内臓痛 壁側痛 ♣ 内臓からの痛みは, 関連内臓経路と直 接壁側経路の二重 伝達路のために,しば しば体表で2カ所に 感じられる.
  • 50. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 腹部,胸部の痛みの壁側伝播経路 内臓痛 壁側痛 ♣ 虫垂炎の場合 1. 交換神経束内の内 臓疼痛神経線維を 介して脊髄のT10,11 レベルに到達.臍部の 痙攣性の痛みと感じ る. 2. 炎症を起こしている 虫垂に接している壁 側腹膜からの鋭い痛 みを右下腹部に感じ られる.
  • 51. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 痛みに関するいくつかの臨床的異常, その他の体性感覚
  • 52. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 疼痛神経経路の興奮性が,異常に亢進 “疼痛過敏” 一次的疼痛過敏:疼痛受容器の過剰な感受性 日焼けした皮膚:histamine,prostaglandinなど による疼痛端末の感作の結果 二次的疼痛過敏:感覚伝播の促進 脊髄,視床などの障害 疼痛過敏
  • 53. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. herpesvirusが,脊髄後根の神経節に感染. 体の半周をまわる皮膚分節セグメントに激痛 皮膚の発疹を伴うため,帯状疱疹 Herpes Zoster (Shingles,L.cingulum,girdle) virusは,神経細胞の末梢軸索を通って皮膚の 起源に運ばれ,ここで,数日以内に水疱を形成し, さらに数日以内にかさぶたを引き起こす発疹を 起こす. 全て感染した後根が支配する皮膚領域内で発 生. 帯状疱疹 Herpes Zoster(Shingles)
  • 54. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.  裂くような痛み,刺すような痛みが,顔の半側の第V脳神経,第IX脳神 経の感覚領域に出現. Tic Douloureux,三叉神経痛,舌咽神経痛  電気ショックのような痛みで,持続はわずか数秒の場合もあれば持続 性の場合も.  トリガーポイントの機械的刺激ではじまる  例:ものを,飲み込む際に,食物が口蓋垂に接触すると,裂くような 痛みが,第V神経の下顎部分に発生  通常,外科的に疼痛過敏領域からの末梢神経を切断することにより 阻止可能.  第V脳神経が,頭蓋内に入ったところで,運動神経と,感覚神経に 分かれるので,しっかり剥離してから感覚枝を切断する必要がある.  この処置により,顔半分の麻酔状態が残存して,不快となることも.  手術が不成功な場合,痛みの原因が末梢神経では無く,脳幹の 感覚核にある可能性を示している. Tic Douloureux
  • 55. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.  脊髄を完全に切断すると,その部位より末梢の全ての感覚, 運動神経機能は遮断される.  脊髄神経の一側だけが切断された場合は,Brown- Suquard Syndromeがおこる.  切断側の運動神経は,切断部位以下で阻止される.  ある種の感覚だけが,切断側で失われる.  別の種の感覚は,反対側で失われる.  脊髄視床路で運ばれる疼痛,温冷覚は,反対側の切断部位より 2~6区分下の全ての区分で消失.  後柱,後外側柱だけで運ばれる運動感覚,位置覚,振動覚,局在 の分別覚,2点分別覚などは切断側の切断レベル以下で喪失.  軽い接触を感知する感覚は,主たる経路が後柱で,横切開された 側がしょうがいされる.  粗な接触は,部分的に反対側の脊髄視床路を伝達するために,残 存. Brown-Sequard Syndrome
  • 56. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 脊髄の横断面 下行路 上行路 外側 皮質脊髄路 脊髄中脳蓋路 背側 脊髄小脳路 腹側 脊髄小脳路 外側 脊髄視床路 腹側脊髄視床路 薄束 楔状束 前庭脊髄路 腹側 皮質脊髄路 視蓋脊髄路 オリーブ脊髄路 赤核脊髄路
  • 57. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 頭痛
  • 58. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 頭蓋円蓋部の疼痛感受性領域 脳組織は,ほとんど痛みに非感受性.大脳皮質の感 覚野を切断したり電気刺激しても,希に疼痛を起こ すのみ 頭痛の痛みは,脳組織の損傷によるものでは無い. 静脈洞の牽引やtentoriumの損傷,脳底部の硬膜 の牽引などは強い痛みを誘発し,頭痛と認識される. 髄膜の血管に対する牽引刺激,外傷,破砕は頭痛 を生じる.とくに感受性の高いのは,中髄膜動脈で, 外科医は,この動脈を注意深く麻酔する. 頭蓋内が起源の頭痛
  • 59. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 異なる原因による頭痛の領域 大脳円蓋 頭痛 副鼻腔,眼性 頭痛 脳幹および 小脳円蓋 頭痛 ♣ 頭蓋円蓋の中で,テン トより上にある痛み受 容器への刺激は,三叉 神経の大脳部分に痛 みのインパルスを送るた め,関連痛が,三叉神経 の支配している頭の前 半分に起こる.
  • 60. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 異なる原因による頭痛の領域 大脳円蓋 頭痛 副鼻腔,眼性 頭痛 脳幹および 小脳円蓋 頭痛 ♣ テント下のからの痛み インパルスは,舌咽神経, 迷走神経,第二頚髄神 経を介する.これらの神 経は頭蓋の頭頂,喉頭, 耳のやや下方を支配し ているため,頭の後頭部 に関連痛を起こす.
  • 61. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 髄膜炎 最も重篤な頭痛の一つ. 硬膜,静脈洞の痛み感受性の部分が含まれる. 髄膜炎による著明な損傷は,激烈な痛みを来す. 脳脊髄圧低下の痛み CSFをわずか20mL除去しただけでも,立位でいる と強い痛みを生じる. 脳が浮遊する余地が減少するため 脳の重さが,様々な部分の硬膜表明を伸展,ゆがめ るために痛みを誘発する. 頭蓋内頭痛のタイプ
  • 62. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 片頭痛 migraine headache  正確な仕組みは不明だが,血管機能の異常  前駆症状をともなう 嘔気,視野の一部の欠損,視覚前兆,その他の幻覚 頭痛開始の30-60分前におこる  原因の一説:情緒不安,緊張の遷延からある動脈の血管攣縮を 来す. 血管攣縮による虚血が前駆症状の原因. 虚血の結果,血管壁に何かが発生,平滑筋収縮の破綻により,血 管の緊張消失.血管拡張,壁の過進展が側頭動脈にまで及び実 際の片頭痛をおこす.  他の原因:皮質の広範な抑制,精神的異常,細胞外液の過剰 なK+.  家族歴がある例が65-90%にのぼり,遺伝的優位性が示唆され ている.  女性は,男性の2倍多い. 頭蓋内頭痛のタイプ
  • 63. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. アルコール性頭痛 過剰なアルコール摂取後 アルコールは,組織に有毒で,髄膜を直接刺激し頭 蓋内の痛みを起こす. アルコール過飲後の脱水も関与している可能性.飲 水により緩和するが,頭痛やその他の二日酔い症状 を消失はしない. 頭蓋内頭痛のタイプ
  • 64. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 筋の攣縮による頭痛 情緒的な緊張が,頭の多くの筋肉の痙縮を来す.特に 頭蓋に付着している筋や後頭部に付着している頚部筋 が痙縮する.これらが,頭痛の原因と考えられている. 鼻および付随する構造物の刺激が原因の頭痛 鼻の粘膜が,痛みに対して敏感 感染や,その他の刺激的要素が鼻腔構造物に拡大した 場合,頭痛となり,眼の背部に放散したり,前頭洞の感染 の場合には,前頭部の前表面に痛みを感じる. 上顎洞などの場合は,顔に痛みを感じる. 頭蓋外が原因の頭痛
  • 65. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 眼の異常による頭痛  焦点を合わせるのが困難な場合に,毛様体筋の収縮が過 剰になる. 筋自体は,非常に小さいが,その収縮が眼球後方の痛みの 原因と考えられている.  過剰な合焦動作は,反射的な顔面,外眼筋の攣縮を来し, 頭痛の原因になり得る.  明るい光線や紫外線に過剰に暴露された場合に頭痛を起こ す.太陽の直視,アーク溶接のアーク光を数秒見ただけで,頭 痛が24~48時間持続する.  結膜が,化学的に刺激された場合に痛みを生じ,頭表,眼球 後部に放散する.  アーク光や太陽などの強い光に焦点を合わせると,網膜の熱 傷を来し,頭痛の原因になり得る. 頭蓋外が原因の頭痛
  • 66. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温度感覚
  • 67. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 冷たさから熱さへの勾配 凍るような冷たさ→冷たい→ひんやり→区別がつかな い→暖かい→熱い→焼けるほど熱い 温度勾配を判別する受容器の三つの型 冷感受容器,温感受容器,疼痛受容器 疼痛受容器は,凍るような冷たさ,焼けるような熱さの 場合にのみ反応. 冷感受容器,温感受容器は,皮膚の直下の別々の点に 存在. 体の多くの場所で,冷点は,温点の3~10倍分布 口唇の冷点は25/cm2,手指は3-5/cm2,体幹の広い部 分は1未満/cm2 温度受容器とその興奮
  • 68. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温感受容器: 自由神経終末 主に無髄C型神経線維 伝達速度 0.4~2m/sec. 冷感受容器: 小さなAδ型有髄神経終末で数回枝分かれする. 終末端は,上皮細胞の基部に突き出ている. 伝達速度 約20m/sec. 一部の冷感覚はC型神経線維を伝播する事から,いく つかの自由神経終末も,冷感受容器として機能してい ると推察される. 温度受容器とその興奮
  • 69. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温感受容器の刺激 一秒あたりのインパルス数 温度 (゜C) 冷たい痛み 熱い痛み 冷感受容器 温感 受容器
  • 70. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 冷感受容器が,急に温度の低下を感知した場合, 当初,強い刺激を発するが,数秒で急速に刺激強 度が減退し,さらにその後の30分以上の間に,刺激 強度がゆっくり減退する. 受容体は,かなり順応するが,決して100%順応するわけ では無い. 皮膚の温度が,実際に低下しつつあるときは,温度が同 じレベルにあるときよりも,冷たく感じる. 皮膚温が上昇しつつあるときは,皮膚の温度が変わらな いときより,暖かく感じる. 熱い浴槽に入った時の熱さや,寒い日に,暖かい室 内から戸外に出たときの極端な冷たさの感じ 温度の変動刺激-温度受容器の順応
  • 71. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温度受容器は,代謝速度の変化により刺激を 受ける. 温度変化は,10゜C毎に細胞内の化学的反応を倍 以上変化させる. 温度が,受容器の終末を化学的に刺激しているの であって,物理的に熱や冷感が神経終末に作用して いるわけでは無い. 温度受容器の仕組み
  • 72. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 冷感受容器,温感受容器いずれの端末数も, 体表のある一面ではわずかで,せまい皮膚面が 刺激されても,温度の変化を判定するのは,困 難. 広範囲の皮膚が,同時に刺激を受けると,全体 の信号が,累積される. わずか0.01゜Cの急速な変化でも,体表面全体に同 時に影響すれば,感知可能. 影響を受ける皮膚面積が,わずか1cm2しかない場 合には,100倍体温が変化しても感知できない. 温度感覚の空間的合算
  • 73. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 通常,疼痛信号と並行して伝播される. 脊髄に入るところで,数セグメント分Lissauer 路内を上下行し,後角のI,II,II層に終わる(痛み と同様). 一つ以上の脊髄神経による処理を受けた後に, 信号は,⾧い,上行性の温度線維に入り,反対 側に交差して前外側感覚路を上行して以下の 2カ所に終わる. 1. 脳幹の網様部分 2. 視床の腹底側核群 温度信号の伝播
  • 74. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 温度信号のいくつかは,腹底側核から,大脳体 性感覚皮質野に中継される. 微小電極による研究によれば,大脳皮質の体 性感覚野Iは,皮膚の特異的部分の冷刺激,温 刺激いずれによっても直接反応する. 大脳皮質の中心後回の皮質を,全て除去して も,温度変化の勾配の判別能力が低下はする が,消失はしない. 温度信号の伝播
  • 75. 49 Somatic Sensations II. Pain, Headache, and Thermal Sensations O.Yamaguchi Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed. 49章 体性感覚 II.疼痛,頭痛,熱感覚 UNIT IX. 神経系:A.全体の原理と感覚の生理