14. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
ATPからのエネルギー無しには,筋収縮は起き
ない.
筋繊維の重要な収縮蛋白であるmyosinは,ATP
をADP(adenosine diphosphate)に分解する酵
素として作用し,収縮に要するエネルギーを放出する.
筋収縮が起こらない場合には,わずかな量のATPし
か分解されないが,短時間の筋収縮の群発時には,
安静時の少なくとも150倍のATPが利用される.
ATPによる筋収縮
15. 6 Contraction of Skeletal Muscle
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
myosinとactinとを結ぶ架橋cross-
bridgeの引力による.
弛緩時は,この力は働いていない.
筋線維に沿って,活動電位が移動する際に,筋
小胞体から大量のCa2+が放出され
myofibrilを取り囲む.
このCa2+が,myosinとactinの吸引力を活
性化し,収縮が開始される.
そのためのエネルギーは,ATP分子の高エネル
ギー結合に由来する.
何がactin filamentをスライドさせているか?
16. 6 Contraction of Skeletal Muscle
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
myosin filamentを構成するmyosin分子
• 分子量約480,000
• 分子量約20万の二つのheavy chainと,分子量約2万の四つのlight
chainからなるポリペプチド鎖.
• heavy chainは,お互いに絡み合い,二重らせん状のtailを構成
• 一側端は,対称的に折りたたまれてheadを構成
17. 6 Contraction of Skeletal Muscle
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
Myosin filaments
• myosin filamentは,myosin分子200以上から構成される.
• myosinのtailの束が,filamentのbodyを形成.
• myosinのheadは,filamentのbodyから突き出て,cross bridgeを構成.
• cross bridgeは,蝶番hingeでつながれ,屈曲可能
• myosin filament の全⾧は,同一でほとんど正確に1.6μm
• myosin filamentの中央にはcross bridge の無い部分が0.2μm存在.
• myosin filament はねじれていて,隣接するcross-bridgeは120度軸がずれ
る
18. 6 Contraction of Skeletal Muscle
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
Myosin headは,筋収縮に不可欠な,
ATPase活性を有する.
ATPをADPに変換して,高エネルギー結合を得
て,筋収縮のエネルギーを供することができる.
Myosin headのATPase活性
19. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
膜を介した電解質,栄養素の能動輸送,腎尿細
管,胃腸管から血中への能動輸送
多くの電解質,glucose,アミノ酸,アセト酢酸などの
能動輸送は,電気化学的勾配に逆らって起こる.
通常の自然な拡散は,電気化学的勾配に準じて起
こる.
勾配に逆らうためには,ATPから供されるエネルギー
が必要.
ATPエネルギーによる膜を介した能動輸送
20. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
濃度勾配に逆らった物質の吸収と同じ原則が,
物質を分泌する腺細胞にもあてはまり,物質を
濃縮するためにはエネルギーが必要となる.
さらに,有機化合物を合成するためにも,エネル
ギーが必要.
ATPエネルギーによる腺分泌
21. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
神経インパルスの伝播に供されるエネルギーは,神
経細胞膜を介したイオン濃度差による膜電位エネ
ルギーに由来する.
神経細胞内の高濃度のK+,外の低濃度のK+がネル
ギー貯留の一つの型を形成.
Na+が細胞外に多く,細胞内に少ないことも一方のエネ
ルギー貯留の型.
神経線維に沿った活動電位の伝播には,これらの貯留
エネルギーを利用しており,少量のK+が細胞外へ,N+が
細胞内へ移動する.
ATPによりエネルギーを得た能動輸送系が,各々のイオ
ンを元に戻す.
ATPエネルギーによる神経伝達
22. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
ATPは,エネルギー運搬の共役物質として最重要だが,
細胞内で最多の高エネルギーリン酸結合の貯蔵庫と
言うわけではない.
phosphocreatineも,高エネルギーリン酸結合を持
ち,ATPの3~8倍豊富.
標準状態で8,500cal./mole, 生体内で
13,000cal./moleのエネルギーを有し,ATPの高エネル
ギーリン酸結合一つ分より若干多い.
エネルギー備蓄庫としてのphosphocreatine
23. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
ATPと違うのは,食物と機能している細胞系との間で,
直接エネルギー変換の共役物質として作用する事は
なく,ATPとの間で,エネルギーを相互変換する点であ
る.
細胞内に利用可能な余剰ATPが存在するときには,そのエ
ネルギーの多くは,phosphocreatine合成に使用され,この
貯蔵庫を作成する.
ATPが使用されきってしまったら,このphosphocreatineの
エネルギーが急速にATPに変換され,さらに各細胞の機能系
へ移される.
エネルギー備蓄庫としてのphosphocreatine
24. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
ATPよりphosphocreatineの方が高エネルギーリン
酸結合のもつエネルギーが100-1500cal./mole多い
ため,ATPがよそで少量消費される毎に,
phosphocreatineとADPから新たなATPを生成する
反応が速やかに進行する.
この作用により,phosphocreatineが残っている限り,細胞
内のATP濃度は,ほぼ一定に保たれる.
→ATP-phosphocreatine systemを
ATP“buffer” systemと称する.
ほぼ全ての代謝反応速度は,ATP濃度に依存している点,
重要.
エネルギー備蓄庫としてのphosphocreatine
25. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
嫌気エネルギー
酸素を使用せずに食物から作られたエネルギー
好気エネルギー
食物から,酸化代謝によってのみ作られたエネルギー
CHO,脂質,蛋白いずれもATP合成のために酸化されうるが,CHOだけは酸素無
しにエネルギー供与が可能
glucoseの解糖あるいはglycogenからピルビン酸への変換により可能.
glucose1モルからピルビン酸とATP2モルが生成.
貯蔵されているglycogenがピルビン酸に分割されるとglycogen内の
glucose1モルあたりATP3モルが生成される.
このATP数の差は,遊離glucoseが細胞内に入ると,分解される前に1モ
ルのATPを使用してリン酸化される必要があるため. glycogen由来の
glucoseの場合は,すでにリン酸化されたglycogenから分離するため,
さらなるATP消費が無い.→嫌気的条件下では,貯蔵されている
glycogenをエネルギー源とするのが最良.
嫌気エネルギー対好気エネルギー
26. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
嫌気的エネルギー利用の好例は,急性低酸素
状態で出現する.
呼吸を停止すると,すでに肺内に貯留されている酸
素と,血液内のHb.内に予備の酸素がある.
これらの酸素は,代謝過程を約2分間だけ機能させ
るのには十分.
この2分間を超えて生活を持続させるためには,追
加のエネルギー源が必要で,glycogenがピルビン
酸に分裂し,ピルビン酸が乳酸になり,細胞外に拡散
することにより1分ほどは得られる.
低酸素時の嫌気的エネルギー利用
27. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
骨格筋は,数秒間に限り筋肉の極端な離れ業
を遂行可能だが,その遷延した活動は,困難.
この運動の群発時に必要な,余分のエネルギを
酸化過程から得るのは,反応が遅すぎて困難.
代わりに,嫌気的供給源からの余分なエネル
ギーが供給される.
1. 筋肉内にすでに存在するATP
2. 細胞内のphosphocreatine
3. glycogenから解糖により乳酸に分解され放出さ
れる嫌気的エネルギー
猛烈な運動時の嫌気性代謝は,解糖による
28. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
解糖によるエネルギー放出は,酸化的な放出よりはるか
に速やか
5~10秒以上,1~2分以内の猛烈な運動のために必要な
余分なエネルギーの多くは,嫌気的解糖に由来する.
結果として,その間に筋肉内のglycogenは減少し,血中の
乳酸濃度は上昇する.
運動が終わると,蓄積した乳酸の4/5をglucoseに再変
換するために酸化的代謝が利用される.
残りの乳酸は,ピルビン酸となりクエン酸回路で分解,酸
化を受ける.
乳酸からglucoseへの再変換は,肝臓内で行わ
れ,glucoseは,血中から筋肉へ返送され,再び
glycogenの形で貯蔵される.
猛烈な運動時の嫌気性代謝は,解糖による
29. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
激しい運動後,人は激しい呼吸を続け,少なくとも
数分間,ときに1時間もの間,大量の酸素を消費し
続ける.
この追加の酸素は,以下の目的に使用
1. 運動中に蓄積した乳酸をglucoseに再変換
2. AMPとADPをATPに再変換する.
3. creatineとリン酸をphosphocreatineに再変換
4. Hb.とmyoglobinに結合する酸素量を正常化
5. 肺内酸素量を正常化
運動後の余分な酸素消費は,酸素債務の返済
repaying of oxygen debtと呼ばれる.
余分な酸素消費で,運動後の負債を返済
30. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
エネルギー変換の概略図
アミノ酸の
脱アミノ
乳酸
以下のためのエネルギー
1.合成,成⾧
2.筋収縮
3.腺分泌
4.神経伝播
5.能動的吸収
6.その他
31. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
酵素触媒反応の速度調節
ある酵素が一つの化学反応を触媒するメカニズムは,
酵素が反応基質と疎に結合することにより始まる.
この疎な結合は基質表面の結合力を,その他の基質と
も反応するに十分となるように変化させる.
したがって,全体の化学反応速度は,酵素と基質の濃度
により決まる.この概念を式に表すと,
反応速度=
× 酵素 × 基質
基質
Michaelis-Mentenの式
エネルギー放出の制御
32. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
基質,酵素濃度と反応速度
基質濃度
基質濃度
反応速度
反応速度
酵素濃度
酵素濃度
基質濃度
反応速度
酵素濃度
♣ 基質濃度が十分高い場合(図右半分)には,反応速度は完全に酵素濃度
で決まる.
♣ DM患者で,大量のglucoseが尿細管に入った場合,さらにglucoseが尿
細管に流入しても移送酵素が飽和しているために,再吸収量は増加しない.
♣ この場合は,尿細管の移送酵素が律速因子.
33. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
基質,酵素濃度と反応速度
基質濃度
基質濃度
反応速度
反応速度
酵素濃度
酵素濃度
基質濃度
反応速度
酵素濃度
♣ 基質濃度が非常に少なく,必要な酵素量がわずかな場合,反
応速度は酵素濃度とともに,直接基質濃度に比例する.
♣ 消化管や腎尿細管で,基質濃度が低い場合が,これに相当
34. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
生体の化学反応の,殆ど全ては直列に起こる.
一つの反応の産物が,次の反応の基質になるなど.
一連の化学反応全体の速度は,そのシリーズの
もっとも遅い反応段階で決まる.
rate-limiting step 律速段階
直列反応の場合の速度制限
35. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
安静時の,細胞内ADP濃度は,非常に僅かなので,基質の
一つであるADPに依存する化学反応は,非常に遅い.
食物からエネルギーを放出する全ての酸化的代謝経路および体
内でエネルギーを放出する他の全ての代謝経路がこれに相当.
ADP濃度は,体内のほぼ全てのエネルギー代謝の律速因子
細胞の活性が高まると,ATPはADPに変換されるので,細
胞の活性度に直接比例して細胞内ADP濃度が上昇する.
このADP濃度上昇が,自動的に食物からエネルギーを放出す
る代謝反応速度を速める.
細胞から放出されるエネルギー量は,細胞の活性度により調節
されている.
細胞の活動がない場合には,全てのADPが直にATPに変化し
てしまうために,エネルギーの放出は停止される.
ADP濃度が,エネルギー放出の律速因子
36. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
Metablic Rate 代謝率
37. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
食物内のエネルギーは,全てATPに変換される
のでは無く,かなりの量が熱になる.
食物エネルギーの約35%が,ATP生成の間に熱に
なる.
ATPから機能している細胞にエネルギーが変換され
る際にも付加的に熱が生じる
食物からのエネルギーで,最終的に細胞機能のため
のエネルギーに供されるのは27%以内に留まる.
その27%のエネルギーも,細胞の機能系に至った後
には,最終的に熱に変化する.
熱は,放出されたエネルギーの終末産物
38. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
蛋白合成の場合の放熱例
大量のATPがペプチド結合形成のために使用される.
エネルギーは,このペプチド結合内に貯蔵される.
蛋白は,持続的に代謝回転を受けており,分解される際にペ
プチド結合内のエネルギーが体内に熱の形で放出される.
筋収縮時のエネルギー
筋収縮時のエネルギーは,筋ないし組織の粘性に打ち勝って
四肢を動かすことが可能になる.この粘着性の運動が組織
内の摩擦を起こし,熱を発生する.
心筋の血液拍出時のエネルギー
血液が動脈系を拡張し,この拡張が潜在エネルギーの蓄積
となる.末梢血管を血液が流れる際に,血液の異なる層との
間の摩擦および血液と血管壁との間の摩擦,いずれもが熱
を発生する.
熱は,放出されたエネルギーの終末産物
39. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
Calorie:食物から放出されるか,体の異なる機
能的過程で消費されるエネルギー量を表す単
位として使用.
1 calorie:gram calorieとも.1gの水の温度
を1゜C上昇させるのに必要な熱量.対何のエネ
ルギーに関することに使用するには小さすぎる.
Calorieは,kilocalorieとも記載さ
れ,1kirocalorieは1000caloriesに相当し,エ
ネルギー代謝の議論に使用される.
エネルギーを表す単位
40. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
人が外向きの仕事をしていない場合には,その人の
体から放たれる一定時間内の全熱量を測定すれ
ば,全身の代謝率が測定可能.
本法で測定するには,特別に作られた大きな
calorimeter内で熱量を測定
熱を漏らさないチャンバー内に人が入り,体から発散さ
れる熱がチャンバー内の空気を暖める.
冷たい水槽からのpipeを流すことによりチャンバー内の
温度を一定に保つ.
水槽の温度上昇から,人が放射した熱量が測定可能.
物理的に実行が困難で,研究目的にのみ使用されてい
る.
直接熱量測定
41. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
体で消費されるエネルギーの95%以上は,酸素と食物と
の反応によるので,代謝率は,酸素利用率から非常に正
確に計算可能
glucoseと1Lの酸素が代謝されると,5.01Cal.のエネルギー
が放出される.澱粉との代謝では5.06Cal.,脂肪との代謝で
あれば4.70Cal.,蛋白とであれば4.6Cal.に相当.
これらの数字は,1Lあたりの酸素が消費された際に放出され
るエネルギー量が,ほぼ,異なる栄養素が代謝された時のエネ
ルギー量と等しいことを示している.
平均的な食事の場合,1Lの酸素を利用した場合のエネル
ギー放出量は約4.825Cal.で酸素のエネルギー当量
energy equivalent of oxygenと呼ぶ.
一定時間内に利用された酸素量から,非常に正確に放熱量
が計算可能
間接熱量測定
42. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
計測中に,CHOのみを代謝している場合には,
酸素の平均的エネルギー当量(4.825Cal./L)を
基に計算したエネルギー量は約4%程過小評価
する事になる.
殆どのエネルギーを脂肪から得ている場合には,
計算値は,逆に約4%程過大評価することにな
る.
間接熱量測定
43. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
体重が安定している健康成人の場合,エネルギー
の摂取と消費は平衡している.
平均的なアメリカ人の場合のエネルギー摂取
CHO 45%
脂肪 40%
蛋白 15%
消費エネルギー
1. 基礎代謝
2. 身体運動
3. 消化,吸収,粉砕
4. 体温保持
エネルギー出力に影響する因子
44. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
体重70kgの平均的な男性が,ベッドで終日臥
床している場合,1650Kcal.を消費
食事摂取,消化活動で,さらに200kcal.以上を
使用.
終日ベッドで過ごし,食事を摂る人は,約
1850kcal.を使用
同一人物が,運動せずに,終日座位の場合
2000~2250kcal/日が必要
座りっぱなしで,必須の動きしかしない人では約
2000kcal.
日々の活動におけるエネルギー需要
45. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
毎日の身体活動の遂行には,全エネルギー消
費量の約25%が使われる.
個人差が大きく,実行される身体運動のタイプ,量に
より異なる.
階段を上る動作は,ベッドで睡眠をとるエネルギーの
約17倍を要する.
一般に,重労働者は6000~7000kcal.のエネルギー
を消費し,運動しない人の3.5倍のエネルギーを消
費する.
日々の活動におけるエネルギー需要
46. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
完全に静止状態の人でも,体の化学反応遂行
のためにかなりのエネルギーを要している.
この生存のための最小エネルギー必要量を,
basal metabolic rate (BMR)基礎代謝量と
呼ぶ.
座りっぱなしの人のエネルギー消費量の50~70%
がBMRで占められる.
基礎代謝率
47. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
平均的エネルギー消費の区分
覚醒時
睡眠時
代謝
速度
安静時
エネルギー
消費量
(60%)
運動性,および非運動性身体活動
による発熱(32%)
食物の熱効果 (8%)
日毎エネルギー消費量
(カロリー/日)
48. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
身体的活動は,個人差が大きいため,他人との間
の代謝率を比較するためにはBMRを測定するの
が有用.
BMRの測定条件
1. 少なくとも12時間,絶食
2. 一晩の安静睡眠後にBMRを決定
3. テストの少なくとも1時間前までは,激しい運動を控え
る.
4. あらゆる精神的,身体的興奮を除外
5. 室温は,快適で68゜F(20゜C)と80゜F(26.7゜C)との間
6. テスト中,体を動かさない
基礎代謝率
49. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
平均的な70kg男性の場合
正常平均BMR 65-70kcal/hr
CNS,心,腎その他の臓器の基本的活性で占められ
る.
個人差は,骨格筋量,体のサイズによる
骨格筋は,安静時でもBMRの20-30%を占める
その,補正目的でkcal/hr/m2で表記される
基礎代謝率
50. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
年齢と正常BMR
♣ 加齢と共にBMRが減少するのは,筋肉量の
減少と,それに置き換わる代謝量の少ない脂
肪組織のため.
♣ 女性のBMRが,男性より少ないのは筋肉量
が少ないことと脂肪組織の%が大きいため
51. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
甲状腺が,最大量のthyroxineを分泌すると,代謝
率は正常値を50-100%上回る.
甲状腺分泌が,完全に消失すると,代謝率は正常
の40-60%にまで低下
thyroxineは,体内の多くの細胞の化学反応速度
を速め,代謝率を上昇させる.
低い気温で分泌が増し,暑い気温では分泌量が
減少する甲状腺の順応性は,異なる地域で暮らす
人々の間でBMRが異なることの一因となっている.
北極圏に住んでいる人のBMRは,熱帯地方に住んでい
る人よりBMR が10-20%高い
甲状腺ホルモンが,代謝率を増加
52. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
testosteroneは,代謝率を約10-15%高める.
女性ホルモンも,BMRを若干増やすかもしれな
いが,通常有意ではない.
男性ホルモンのこの効果の多くは,骨格筋量を
増す同化作用anabolic effectに関連
男性ホルモンが,代謝率を高める
53. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
成⾧ホルモンは,細胞代謝を刺激し,骨格筋量
を増すことにより代謝率を高める
正常ホルモンを欠く成人では,遺伝子組み換え
成⾧ホルモンの補充で,基礎代謝率が約20%
上昇する.
成⾧ホルモンが,代謝率を上昇
54. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
原因の如何によらず,発熱は,体の化学反応を
約120%/10゜C上昇増加する.
発熱は,代謝率を増す
55. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
正常睡眠時,代謝率は10-15%低下
原因は,二つの因子による
1. 睡眠時に,骨格筋の緊張が低下するため
2. 中枢神経系の活動が低下するため
睡眠は,代謝率を減少
56. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
遷延する低栄養は,栄養基質の不足により,代
謝率を20-30%下げる.
多くの病的状態の終末期には,衰弱により著明
な代謝率の低下を来し,死の直前には体温が
数度下がる.
低栄養は,代謝率を下げる
57. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
身体活動に使用されるエネルギー
58. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
運動の形 kcal/hr
睡眠 65
覚醒臥床 77
安静座位 100
くつろいだ立位 105
衣服の着脱 118
早いタイピング 140
ゆっくりとした歩行 200
大工,金属労働,工業塗装 240
木材切断 480
水泳 500
ランニング 570
階段の早上り 1100
異なるタイプの活動時のエネルギー消費量
59. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
食事摂取後,消化,吸収,貯留などの化学反応の
結果代謝率が増す.
→thermogenic effect of food
食品の発熱効果
大量のCHOや脂肪を含む食事の後は,通常代謝率が
約4%上昇する.
蛋白が多い食事の後,代謝率は1時間以内に上昇し始
め,最大正常値の上約30%まで達し,この率が3-12時
間持続.→蛋白の特異的動的作用
食品の発熱効果は,一日のエネルギー消費量の約8%
を占める.
食品処理に使用されるエネルギー
60. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
nonshivering thermogenesis
非身震い性熱産生
交感神経系の刺激によりおこる.
NE,ENを放出し,代謝活動を高めて,熱を産生.
brown fatとよばれタイプの脂肪組織は,交感神経刺激により,
大量の熱を放出する.
多数のmitochondriaと多くの脂肪の小球を持つ.
mitochondria内の酸化的リン酸化は,共役しておらず,交感
神経の刺激を受けると,mitochondriaはATPを作る代わり
に大量の熱を産生するため,放出された酸化的エネルギーの
殆ど全てが,熱になる.
新生児は,相当量のbrown fatを有しており,最大限の交感神経
刺激により子供の代謝は100%以上増える.
brown fatを持たない成人の場合の非身震い性熱産生で
は,15%以下に過ぎないが,寒冷順応の後は,著明に増加
交感神経刺激による発熱
61. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
nonshivering thermogenesis
非身震い性熱産生
肥満に対する緩衝の役も果たしている可能性があ
る.
遷延する過食状態にある肥満の人では,交感神
経系の活性が上昇している.
その,メカニズムは不明だが,増えているleptinが
視床下部のpro-opiomelanocortinニューロン
を刺激して起きている可能性がある.
交感神経刺激が,熱産生を増加して,過剰な体重
増加を防ぐのに有用.
交感神経刺激による発熱
62. 73 Energetics and Metabolic Rate
O.Yamaguchi
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 14th Ed.
73章 エネルギー学と代謝率
UNIT XIII
代謝と温度調節