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•この策の実現には、2つのスキルが担保されていること が前提となる。上流工程で他社に負けないコンサルティ ング、要件定義、基本設計ができるスキルと、下流工程 で委託先を効果的にコントロールできるプロジェクトマネ ジメント・スキル。
•業務要件をまとめきれずにユーザー企業から不興を 買ったり、仕様漏れを多発させるような設計書を作成し て、下流工程を担当する委託先に不信感を抱かせたり と、上流工程でトラブルの下地を作るプライムベンダー は多い。また、調整力が中途半端で問題を解決できず に、委託先の言いなりになる例も枚挙に暇がない。 6. 誤解4:調達部門の指示に従えば優 秀な企業と付き合える
•日本でも、調達部門が調達プロセスを標準化し、効率 化を図っている企業が増えた。だが実際には、体裁は整 えたが、運用面ではうまく機能していない企業が多いよ うだ。
•その理由としてまず挙げられるのは、委託先のデータは 保有しているが、Webサイトから入手したような表面的な 情報を最初に登録したきりで、定期的に更新していない 点。
•2つ目の理由は、現場目線が希薄なこと。ベンダー選定 の際に調達部門がプロジェクトの難易度、規模、特殊性 を理解できているかどうか疑問符をつけざるを得ない。 15. 質問4:どのように役割を分担するか
•VMO(Vendor Management Office:外注管理を担 当する専門部署)がうまく機能するのは、製品や要 求仕様の明確なサービスの購買、あるいは技術面 で難易度が低い単純なプロジェクトに限られる。
•中央集権型の外注管理を行う場合、VMOのメン バーがプロジェクト管理の経験者であることが不可欠。 さもないと官僚的、画一的対処に陥るだけでなく、本 来の目的を外れ管理の効率化や自部門の権力拡 大に走るというリスクも出てくる。 16. 外注管理の9つのプロセス
UNIT1
発注フェーズ
PROCESS 1
外注化プランを策定する
PROCESS 2
ベンダー選定の事前準備を行う
PROCESS 3
RFPを作成する
PROCESS 4
提案書を評価する
UNIT2
契約締結フェーズ
PROCESS 5
ベンダーを決定する
PROCESS 6
外注契約を締結する
UNIT3
開始フェーズ
PROCESS 7
コントロールの初期設定を行う
UNIT4
実施フェーズ
PROCESS 8
外注コントロールを実践する
UNIT5
終結フェーズ
PROCESS 9
外注管理を終結させる 17. 外注管理の全体像(1)
PROCESS 1
外注化プランを策定する
発注プラン
委託業務の範囲(スコープ)、起用ベンダーの条件(何社に)
発注開始時期(リードタイム)、発注期間と工程
発注方法(競合提案、競合入札、一社交渉)
想定納期、発注金額の限度(最高額)
外注コントロールプラン
ベンダーに提出を求める管理指標の種類(進捗、品質、リスク、 問題、変更管理関連)
各管理指標の提出時期とそのフォーマット
進捗トラッキング方法、レビュー方法、監査方法、問題追跡方法、 成果物の検収方法
PROCESS 2
ベンダー選定の事前準備を行う
ベンダー市場調査(適正ベンダーと組織特性)
ユーザー企業の再委託方針の調査
数社面談(あるいはRFI)による情報収集
PROCESS 3
RFPを作成する
WBSによる委託作業の記述
スケジュール、工数、想定コストの概要見積もり
リスク分析による契約方針の決定
委託業務(サブシステム)の特性を考慮した評価基準の設定
SOWの作成
RFPの作成 18. 外注管理の全体像(2)
PROCESS 4
提案書を評価する
RFPに対する候補ベンダーからの質問内容の質
技術面の評価
SOWへの対応度、アーキテクチャの妥当性
ソリューションの実現性、パッケージの艇合成
マネジメント面の評価
プロジェクトマネジメント体制、品質管理、問題管理、リスク管理、 変更管理、要員補充体制
価格面の評価
契約の前提、条件の反映、コスト項目別前提
オプションの有無とその正当性
PROCESS 5
ベンダーを決定する
最終候補への絞り込み
内定ベンダーとの確認
PROCESS 6
外注契約を締結する
プロジェクトの規模や特性から見て譲歩してはならない交渉項目の 特定
外注化の目的を裏切らないための各交渉項目の最低限の設定
最終候補(2~3社)との技術、マネジメント、価格面での交渉
契約形態(請負、準委任、派遣)によるリスク分散
契約条件条項によるリスク分散
各フェーズ(工程)移行基準の明確化と条項化 19. 外注管理の全体像(3)
PROCESS 7
コントロールの初期設定を行う
プロシージャ―マニュアルの作成とレビュー
キックオフミーティングの開催
提案書、契約書、開発プランの共同レビュー
PROCESS 8
外注コントロールを実践する
進捗管理(進捗会議、進捗報告書)、リスク管理
品質管理(マイルストーンレビュー、成果物レビュー、テスト検証、各 成果物の検収)
変更管理(変更要求書、変更ログ、変更管理のフロー)
問題管理(課題管理リスト、対応策の妥当性検証、問題解決への 支援)
外注コスト/支払い管理、利害対立管理
外注要員管理(請負契約下での偽装請負申立て防止、派遣契約 下での動機づけ)
フェーズ移行基準適合への審査(プロジェクト監査、サンプルチェッ ク)
PROCESS 9
外注管理を終結させる
会計処理と成果物保証
評価と教訓 20. PROCESS 1:外注化プランを策定す る
•プランには、どのような業務範囲(成果物)を、どの 工程を対象にして、どのベンダーに(何社のベンダー に)、いつまでに(リードタイムを考慮して)、どのよう な方法(入札、3~4社による競合交渉、特定ベン ダーとの交渉)で、どの程度のコストと納期で発注す るのかを盛り込む。
•一番のポイントは、外注化の目的を裏切らない業務 委託範囲(発注スコープ)を決定すること。 21. PROCESS 2:ベンダー選定の事前 準備を行う
•調達部門が外注化戦略の目的別に分類したベン ダーのデータベースを整備しているのであれば、シ ステムの複雑度、実装の難易度、使用ソリューショ ンやパッケージの内容といった技術面や管理面での 情報を調達部門に伝達し、候補ベンダーを推薦し てもらう。
•あるいは市場調査により、候補ベンダーを洗い出す。
•守秘義務契約を結んだ上で、3~5社程度の候補 ベンダーを予備選定して初期調査を始める。 22. PROCESS 3:RFPを作成する
•RFPの作成は、まず委託する作業をWBS(Work Breakdown Structure)の形で記述することから始める。
•WBSを基にトップダウン型での概算見積もりを行う。
•リスク分析を実施し、契約方針を決定する。
•発注スコープの特性を考え、提案書の評価基準を設定 する。
•RFPのハイライトとなるSOW(Statement of Work:作業 範囲記述書)を作成する。
•これら一通りそろったら、RFPとしてまとめる。 26. PROCESS 7:コントロールの初期設 定を行う
•発注先が委託先のベンダーのパフォーマンスを効果的にコ ントロールするには、仕組み作りが不可欠だ。その仕組みを ルール化するのがプロシージャ―ズマニュアル。契約書の延 長線として現場で実際に使って動くための詳細レベルのコ ミュニケーションルールであり、ルールブックである。
•初期設定で特に重要なのが、開発プランや品質管理プラン などの管理指標の実効性、管理方法の妥当性の共同レ ビュー。
•初期設定には、キックオフミーティングも一役買う。キックオ フで期待成果を明示し、プロジェクト当事者間の関係を構築 し、当事者に各自の役割と責任をきっちりと理解してもらう。 27. PROCESS 8:外注コントロールを実 践する
•請負や準委任では管理の主体はあくまで委託先に ある。外注コントロールはポイントを絞って行うべきで ある。
1.週次のミーティング、報告書に基づき進捗状況を査定 する
2.体系的なレビュー計画に基づき、品質をレビューする
3.変更管理はルールに基づき、自ら主導する
4.問題を報告書、課題管理リストでトラッキングする
5.問題の対応策の実効性を検証する