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学習科学と英語教育
- 2. 目次 1. 学習科学とは 2. 学習科学に関係する諸理論 ① 状況論 ② 拡張的学習 ③ 建設的相互作用 3. 教育実践に向けて ① 知識構成型ジクソー法 ② デザイン実験アプローチ ③ 評価の三角形 4. 英語教育への応用
- 4. 学習科学に関係する諸理論 ①正統的周辺参加 （Lave & Wenger 1991） ②拡張的学習（Engeström 1987） ③建設的相互作用（Miyake 1985）
- 5. 状況論 （香川 2011） • 状況論（situative perspective）とは， 後述する「正統的周辺参加」や「拡張的学習」 の概念などを代表としている． • 認知とは個人の頭の内部に閉じたものではなく， 常に社会的状況にひらかれ，個々の状況により 多様であるとする． • 頭の内部の一般的メカニズムを探る，実験室 中心の研究から離れ，現実社会の様々な種類の フィールドを対象にしてきた特徴がある．
- 6. 正統的周辺参加 （Lave & Wenger 1991） •正統的周辺参加（LPP: Legitimate peripheral participation）とは， 「実践共同体」に周辺的に参加する ことから，十全的に参加することが 学習であるとする．
- 7. 状況論のアプローチによる実践例 （辻・西村・野嶋 2007: 403） • 電子ネットワーク上で実践的に英語を使用する 〜実践文化の共同体〜 ケースウェスタン リザーブ大学 （熟達者） 早稲田大学 （初学者） 支援 十全な英語使用 【ルール】 実用的に英語を使用する ネットワークを介し て英語を活用し， 熟達者から支援を 受ける共同体の構築
- 8. 拡張的学習 （Engeström 1987） • 拡張的学習とは，新しい実践活動を集団的に想像して いくための協働学習をモデル化したもの（山住 2014） 道具 主体 対象 結果 ルール 共同体 分業 生産 消費 交換 分配 活動理論
- 12. 知識構成型ジクソー法 0. 問いを設定する 1. 自分のわかっていることを意識化する 2. エキスパート活動で専門家になる 3. ジグソー活動で交換・統合する 4. クロストークで発表し，表現をみつける 5. 一人に戻る 東京大学CoLEF http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515 建設的相互作用の理論を応用した実践
- 13. デザイン実験アプローチ （Brown, 1992） • 教育研究に「デザイン科学」を取り入れること • 方略と学習目標を設定した学習モデルに基づい て授業をデザイン，実践し，得られた知見と課 題から，より良い学習モデルに改善，実践する． • 一般性の高い「デザイン原則」を導く 学習モデル 授業デザイン 実践 デザイン原則 学習科学の研究方法（三宅・白水 2003，p.71）
- 14. 評価の三角形 Pellegrino, et al. “The Nature of Assessment and Reasoning from Evidence”, Knowing what students Know, NAPr. 2001, p.41 観察 解釈 認知過程 東京大学 UTokyo OCW 朝日講座 「知の冒険」 Copyright2014, 大武美保子,三宅なほみ （http://ocw.u- tokyo.ac.jp/lecture_files/11369/8_1/notes/ja/08otake%26miyake20141215final.pdf）より引用 認知過程を観察 するための窓 観察できた認知 過程を解釈 窓から見えるその時起きている認知過程
- 15. 英語教育への応用 （東條 2011） • 学習科学の分野において，一斉学習での子ども 達の協働性は，情報伝達のあり方が「垂直的 [vertical]（教員と生徒）」または 「水平的[horizontal]（生徒同士）」である (Hatano & Inagaki, 1991) ． ↓ 水平的（生徒同士）の方が 知識構築には効果的
- 17. 英語教育への応用 （東京大学CoLEF：知識構成型ジグソー法） 【中学校】 • The best season to visit OKINAWA（中２） 【高等学校】 • Mermaid Balloon（高１） • ing（高２） ↓ 授業案・教材・指導案が公開されています！ 使い方キット（定番教材）http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5661
- 18. 確認問題 ① 学習科学とはどのような学問であるか述べて 下さい。 ② 「実践共同体」に周辺的に参加することから， 十全的に参加することが学習であるとする理 論の名称を答えて下さい。 ③ ある問いに対して他者と一緒に考えながら， お互いの知識（アイデア）を相互に出し合う ことで，実行役とモニター役の役割交代が自 然と起こり，知識（アイデア）の抽象度が上 がる原理の名称を答えて下さい。 ④ 知識構成型ジグソー法について説明して下さ い。 ⑤ 評価の三角形の３つの要素は何でしょうか。
- 20. 参考文献 • Engeström, Y. (1987). Learning by Expanding: An activity theoretical approach to developmental research. Helsinki: Orieta-Konsultit. (山住勝広・松下佳代・百合草禎二・保坂裕子・ 庄井良信・手取義宏・高 橋登 訳 (1999). 『拡張による学習―活動理論からのアプローチ―』. 新曜社.) • 香川秀太（2011）状況論の拡大：状況的学習，文脈横断，そして共同体間の「境界」を問う議論へ．認知科学， 18(4)，pp.604-623 • Hatano,G.,&Inagaki,K.(1991).Sharing cognition through collective comprehension activity. InL. Resnick, J. Levin, & S. D. Teasley(Eds.), Perspectives on socially shared cognition (pp. 331-348). Washington, DC: American Psychological Association. • Lave, J., & Wenger, E. (1991). Situated learning: Legitimate peripheral participation. New York: Cambridge University Press. (佐伯 胖 訳 (1993). 『状況に埋め込まれた学習―正統的 周辺参加―』. 産業図 書) • Miyake, N. (1986). Constructive interaction and the iterative process of understanding. Cognitive Science, 10, pp.151-177 • 三宅 なほみ・白水 始 (2003) 『学習科学とテクノ ロジ』. 放送大学教育振興会. • 白土厚子（2017）教師の協働によるプロジェクト重視の小学校英語活動―活動理論の視点からその実践を検証す る―．津田塾大学紀要， 49， pp.295 - 304 • ソーヤー・R・K：イントロダクション：新しい学びの科学，R・K・ソーヤー（編），大島純，森敏昭，秋田喜代 美，白水始（監訳），望月俊男，益川弘如（編訳）（2016）学習科学ハンドブック 第二版 第２巻：効果的な学 びを促進する実践／共に学ぶ，北大路書房 • 東條弘子（2011） 『つぶやき』が構成する多層的対話の検討 ―中学校英語科 oral introduction における協働性 に着目して．中央教育研究所 研究報告，No.75（平成23年3月），pp.28-41 • 辻高明，西村昭治，野嶋栄一郎（2006）日米間の遠隔協同授業における日本側学習者の英語学習への状況論的ア プローチ，日本教育工学会論文誌，30(4)， pp.397-407 • 山住勝広（2014）拡張的学習とノットワークする主体の形成─活動理論の新しい挑戦─．組織科学，48(2)， pp.50-60