論文に関する基礎知識2016

Mai Otsuki
Mai OtsukiAssistant professor at 筑波大学 (University of Tsukuba)
論文の基礎知識
2016年4月12日
大槻麻衣
このプレゼンの目的
 情報分野の科学技術論文に関する知識提供
論文の種類や発行学会等を紹介
 具体的な調査方法
検索方法や入手方法等を紹介
今すぐに理解できなくてもOK!!
この資料を読み直したり,
先輩や先生に聞いたりして覚えていこう!!
質問
みなさん,
論文読んでますか?
そもそもなぜ論文を読むの?
 端的に言えば,研究のため
思いついた or 与えられたテーマ:
「エスノメソドロジーにもとづく
遠隔作業支援システムの開発」
「エスノメソドロジー」とは?
「遠隔作業支援」とは?
どこまで研究されている?
思いついた内容は新しい?
先生に
尋ねる
実装,実験,考察
論文執筆(卒論,学会)
先輩に
尋ねる
書籍を
調べる
論文を
調べる
※survey 【名】 見渡す事,
外観,調査(英辞郎より)
その1:論文の種類と雑誌
Keywords:大会論文,研究会報告,
フルペーパー,査読,論文誌,学会誌
用語説明
 学会
1. 学術団体のこと
例 「今度,HI学会の理事をすることになった」
2. 学術団体が主催する研究発表会のこと
例 「○○君,今度9月のXX学会で発表しようか」
 研究会
1. 学術団体のサブグループ
2. 学術団体(or サブグループ)が主催する研究発表会
文脈で
判断しよう!
論文 (Paper) の種類
大会論文
学術論文,原著論文
(フルペーパー)
シンポジウム,研究会報告
査読:無し
ページ数:1–4p
特徴:速報性が高い
査読:シンポジウムは有り,
研究会は無いことが多い
ページ数:4–6p程度
査読:有り
ページ数:6p以上
特徴:信頼性が高い
+国際会議
査読 (Peer Review)
論文に対する審査
 通常2人以上で行われる
 投稿してから結果が出るまで3ヶ月〜1年以上
 審査結果は3種類
採録 (Accepted)
条件付き採録 (Conditionally Accepted)
不採録 (Rejected)
教員・研究者が
無給でやってます
論文 (Paper) の種類とステップアップ
大会論文
学術論文,原著論文
(フルペーパー)
シンポジウム,研究会報告
査読:シンポジウムは有り,
研究会は無いことが多い
ページ数:4–6p程度Step up!
Step up! GOAL!
査読:無し
ページ数:1–4p
特徴:速報性が高い
査読:有り
ページ数:6p以上
特徴:信頼性が高い
+国際会議
論文誌 (Journal/Transaction)
 全て査読アリ
 原著論文(フルペーパー)
研究の集大成
10p程度の事が多い
 レター論文(ショートペーパー)
フルペーパーに準じて扱われるが,
より速報性が重視される
通常2–4p程度であることが多い
 サーベイ論文
あるテーマ/分野について動向を整理,
解説した論文
survey 【名】 見渡す事,外観,調査(英辞郎より)
近年,電子化が進みつつある
(例:情報処理学会論文誌は
2008年から電子版のみ)
参考:学会誌
 知識を深めるための記事や各種報告が掲載
特集記事,解説記事,会議・研究会参加報告,コラム等
学会の例
 国内
日本バーチャルリアリティ学会(VR学会)
情報処理学会(情処; IPSJ)
ヒューマンインタフェース学会(HI学会)
電子情報通信学会(信学会; IEICE)
 国外
ACM (The Association for Computing Machinery)
 ACMが主催(共催)する国際会議:CHI, CSCW, UIST, VRST, etc.
IEEE (The Institute of Electrical and Electronics Engineers)
 IEEEが主催(共催)する国際会議:HRI, RO-MAN, IEEE-VR, etc.
その2:学会発表
Keywords:発表形式(口頭発表,技術展時発表,
ポスター発表),研究会,大会
なぜ学外で発表するのか?
 学外の専門家との意見交換で研究を推進
 発表準備を進めることによって,自分の研究を
客観視し,整理する
 プレゼン能力,文章作成能力
限られた時間・紙面の中で論理的に,事実を端的にまとめる
聴衆の前提知識を推測
 他大学・研究機関を知る
「井の中の蛙」状態の回避
発表の形式
ポスター発表
口頭発表 技術展示発表(デモ発表)
全国大会・シンポジウム
 学会が1年or半年に1回開催する全国的な会議
日本バーチャルリアリティ学会第XX回大会
情報処理学会第XX回全国大会
ヒューマンインタフェースシンポジウム 201X
c.f. 学術論文が収録されたもの⇒論文誌
大会・研究会・シンポジウムの
発表原稿を収録したもの⇒予稿集
研究会
学会内のサブグループ*が定期的に開催する
研究発表会のこと
2011年1月の研究会@立命大
*サブグループそのものを「研究会」と呼ぶことも
電子情報通信学会 PRMU,MVE研究会
情報処理学会 CVIM研究会
サイバースペースと仮想都市研究委員会
複合現実感研究委員会
アート&エンタテインメント研究委員会
VR心理学研究委員会
テレイマージョン技術研究委員会
香りと生体情報研究委員会
拡張認知インタフェース調査研究委員会
力触覚の提示と計算
情報技術と文化の融合調査研究委員会
3次元ユーザインタフェース研究委員会
デジタルミュージアム研究委員会
VRと超臨場感研究委員会
テレイグジスタンス研究委員会
(2013年4月現在)
例:VR学会
その3:文献探し
Keywords:データベース検索,CiNii(サイニィ),
参考文献,被引用文献
読むべき論文の見分け方
 著名な国際会議
「学会の例」のスライド参照
 口頭発表
Full paper: 2段組み8p以上のことが多い
Notes, short paper: 2段組み4pのことが多い
とりあえずSkipしていいもの
 Poster/Demo: 2段組み1-2p
 Alt.chi, works-in-progressなど: 横置き4-8p
論文資料の探し方
 読みたい論文が決まっている場合
データベース検索
 検索
 読みたい内容やジャンルだけが決まっている場合
データベース検索がお薦め
⇒ 著者名や雑誌名等のキーワードで検索可能
論文検索のためのデータベース
 大学図書館では,学習・研究を支援する
データベースを数多く提供
 大学の構成員(学生及び教職員)なら誰でも利用可能
 オススメデータベース
日本語文献:CiNii
英語文献:ACM Digital library,IEEE CSDL,Google Scholar
※もちろん無料.学内からだと特に手続きなし.学外からでも
統一認証ID/PWでログイン or Tulips Warp使用でリモートアクセス可
筑波大学付属図書館データベース
筑波大学→筑波大学付属図書館→データベース一覧
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/database/database_category_ja.html
国内の論文:CiNii(サイニィ)
 日本語の学術論文を中心に論文検索可能
 本文へのリンクがあり,その場で本文を入手可能
(PDF,一部有料)
 引用情報,被引用情報があるので,
関連文献を芋づる式にたどることができる
CiNiiのホームページ
検索結果の例
検索結果の見方
著者
論文,記事タイトル
⇒クリックで詳細ページへ
論文誌,学会名等本文へのリンク 所蔵情報へのリンク
著者のHPも要チェック!
動画や補足資料が
Upされているかも?
参考文献 (References)
 誰の論文を引用して
いるか
 基礎になる論文を
たどることが出来る
この論文
基礎技術
比較対象背景
被引用文献 (Cited by)
 この論文を誰が(どの
論文が)引用しているか
 論文の影響度や利用例
などを探すことが可能
この論文
発展
比較対象応用
 Referenceをたどる
集約(要素技術)
拡大(アイデア)
 Citing Document が
多い論文
重要な論文である
場合が多い
データベース化の
おかげ
ある論文
発展 比較対象応用
基礎技術 比較対象
背景
もっと基礎
さらに基礎
別の技術
他分野
別の応用
その分野の原点
References と Citing Documents
海外の論文:ACM Portal
 ACM とは
Association for Computing Machinery
アメリカの情報分野の学会
多くのSpecial Interest Groupがある (SIG~)
(例)SIGGRAPH,SIGCHI
チューリング賞
コンピュータ分野の刊行物約60万件検索可能
主要雑誌25誌,会議録など50誌の全文を利用可能
ACM Portal
海外の論文: IEEE CSDL
 IEEE とは
The Institute of Electrical and Electronics Engineers
米国に本部を持つ電気電子工学系学会
学会活動以外に標準化活動(規格の制定)も行う
例)IEEE 1394, IEEE802.11 など
31のソサエティが出している雑誌・論文誌,
4,800件以上の学会予稿集が閲覧可能
IEEE CSDL
ACM Digital Libraryで検索してみよう
http://dl.acm.org/dl.cfm?coll=portal&dl=ACM
その4:論文の構成と読み方
論文の構成
 タイトル
 概要
1. はじめに
2. 関連研究
3. 提案手法の設計
4. 実装
5. 評価,運用,実行結果,考察
6. むすび,今後の展望
 参考文献
一緒になっている
こともある
このあたりは
論文のトピックによって
若干の変動有
(でも流れはだいたい
こんな感じ)
読むときの順番
 タイトル
 概要
1. はじめに
2. 関連研究
3. 提案手法の設計
4. 実装
5. 評価,運用,実行結果,考察
6. むすび,今後の展望
 参考文献
1
2
3
4
読む前のTips
論文タイトルや著者名で検索して,
動画やスライドを眺めたり,
論文の図をざっと見て
雰囲気をつかんでから読む
読むときの注目点
1. はじめに
2. 関連研究
3. 提案手法の設計
4. 実装
5. 評価,運用,実行結果
6. 考察
7. むすび,今後の展望
 参考文献
• その分野で何が課題とされているか
• どのように意義・新規性が説明されているか
• 新規性,意義は何か
• 得られた知見の一般性は何か
• 実験法,評価法は利用できるか?
• この分野の鉄板論文は何か?
ゼミで論文紹介をするときは…
以下の点について,簡潔にまとめる
1. 背景,課題,目的
2. 関連研究と比べて何が新しいか
3. 何を開発したか,何をしたか
4. どのように実験・評価したか
5. 実験結果
6. 実験結果から何がわかったか,一般性は何か
自分の研究との
比較や関連についても
忘れずに
今すぐに理解できなくてもOK!!
この資料を読み直したり,
先輩や先生に聞いたりして覚えていこう!!
まとめ
 そもそも,なぜ論文を読むのか
 その1:論文の種類と雑誌,学会名
 その2:学会発表
 その3:文献探し
 その4:論文の基本構成と読み方
付録:参考文献欄の読み方(日本語)
大島登志一, 佐藤清秀, 山本裕之, 田村秀行 :
“AR2ホッケー:協調型複合現実感システムの実現”,
日本VR学会論文誌, Vol. 3, No. 2, pp. 55 - 60, 1998.
その研究室or
グループのTop
実際に論文を
書いた人or
研究の中心人物
著者
タイトル
出典
雑誌名 巻 号 ページ番号 発行年
第4著者
(Last author)
第1著者
(1st author)
p. は page の略(1pだけの原稿)
pp. は page to page の略
(複数ページの原稿)
付録:参考文献欄の読み方(英語)
 基本的には日本語と一緒
 論文誌名の省略
R. Tenmoku, R. Ichikari, F. Shibata, A. Kimura, and H. Tamura:
“Design and prototype implementation of MR pre-visualization workflow,”
DVD-ROM Proc. Int. Workshop on Mixed Reality Technology for Filmmaking, pp. 1 - 7, 2006
 Journal → J.
(主として学会の基幹論文誌)
 Transactions → Trans.
(主として学会等の専門論文誌)
 Proceedings → Proc.
(主として国際会議論文集)
 Annals → Ann. (紀要・報告書)
 Bulletin → Bull. (紀要,彙報)
 Annual → Annu. (年鑑,年刊の)
 Conference → Conf. (会議)
 Congress → Cong. (会議)
 International → Int'l
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