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ネオ・サイバネティクス入門

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ネオ・サイバネティクスの名のもとに,オートポイエーシス論を中心とするセカンド・オーダー・サイバネティクスを再評価する動きがあります。本スライドでは,ネオ・サイバネティクスの主要概念を解説しています。

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ネオ・サイバネティクス入門

  1. 1. ネオ・サイバネティクス入門 An Introduction to Neocybernetics 河島茂生 (青山学院女子短期大学,東京経済大学, 総務省情報通信政策研究所,理化学研究所) 1
  2. 2. 解説する概念  オートポイエティック・システム(autopoietic system)  アロポイエティック・マシン(allopoietic machine)  有機構成(organization)/構造(structure)  構造的カップリング(structural coupling)  ニッチ(Niche)  客観的実在論(objective reality)/構成的実在論(constitutive reality)  観察者(observer)  セカンド・オーダー・サイバネティクス(second-order cybernetics)  ラディカル構成主義(radical constructivism)  生命システム(life system)/心的システム(mind system)/社会システム(social system)(注1)  情報(information)  階層的自律コミュニケーション・システム(hierarchical autonomous communication system:HACS) 2
  3. 3. オートポイエティック・システム(1)  「物理的システムがオートポイエティックであるならば,生命である。換言す れば,<オートポイエーシスは生命システムの有機構成を特徴づける,必要か つ十分な概念である>と主張できる。」(Maturana and Varela 1980:78- 79=1991:77)  「オートポイエティック・マシンとは,構成素が構成素を産出するという産出 (変形および破壊)過程のネットワークとして,有機的に構成(単位体として規 定)された機械である」(Maturana and Varela 1980:78-79=1991:70-71) 3
  4. 4. オートポイエティック・システム(2)  「オートポイエティック・マシンは自律的である。それがプロセスのなかでど のように形態を変えようとも,オートポイエティック・マシンはあらゆる変化 をその有機構成の維持へと統御する。」(Maturana and Varela 1980:80 =1991:73)  特徴(Maturana and Varela 1980:80-81=1991:73-75)  [1]自律性  [2]個体性  [3]境界の自己決定  [4]入出力の不在 システムを単位体としてみる視点からみた特徴 システムの内的視点からみた特徴 4 図 ウロボロス(注3) 図 描きあう手(注2)
  5. 5. アロポイエティック・システム  オートポイエティック・システムの反対概念  「物理的空間内の人工機械,たとえば自動車にも,プロセスの連鎖による有機 構成がある。だがこれらのプロセスは,自動車を単位体ならしめるような部分 を産出するようなプロセスではない。自動車の部分は,自動車の有機構成とも 作動とも無関係な別のプロセスによって産出されているからである。こうした 機械は,非オートポイエティックな動的システムである」(Maturana and Varela 1980:79=1991:72)  「アロポイエティック・マシンの有機構成を損なうことなく起こる変化は,そ れゆえ,それ自身とは異なった生産物に付属し従属するのであり,したがって アロポイエティック・マシンは自律的ではない」 (Maturana and Varela 1980:80=1991:73-74) 5
  6. 6. 有機構成/構造(1) 有機構成  複合体(システム)を特定の複合単位 体として規定する構成素の諸関係 (Maturana and Varela, 1980:xix=1981:28)  「システムの有機構成は,システム のクラスの同一性を特定するととも に,システムの同一性が揺らがない ようにそれじたい不変でなくてはな らない(Maturana and Varela, 1980:xx=1981:29) 構造  有機構成を具体的な機械へと具現化 したときに現れる実際の関係の構成 素が存在する領域。チューリングマ シンを例にとると,チューリング・ マシンとは何であるかの規定が有機 構成であり,チューリング・マシン を実現するような可能的具体物(そ れは電気的,力学的などの機構)が 構造である(Varela,1979=2001:67)  システムは,有機構成と構造の複合体 6
  7. 7. 有機構成/構造(2) 有機構成  「<有機構成>とは,その何かが存 在するためになくてはならない,い ろいろな関係のことだ。この物体は 椅子だ,と判断するためには,脚だ とか背もたれだとか底板だとか呼ば れている部分どうしのあいだに,人 に坐らせることを可能にする,ある 種の関係を見いだすことができなく てはならない。それが木と釘ででき ているか,プラスティックとねじで できているかは,その物体をぼくが 椅子として分類することには,なん のかかわりもない。」 (Maturana & Varela,1984:42-43=1987:49-50) (注4) 構造  具体的な機械を,一定の空間に統合 する構成素間の実際の関係が構造を なす  「構造とは,ある特定の単位体を じっさいに構成し,その有機構成を 現実のものとしている,構成素と関 係の全体をさす」(Maturana & Varela,1984:47=1987:58) (注5)  システムは,有機構成と構造の複合体 7 ※「関係は,プロセスとしてしかあた えられない」(Maturana and Varela, 1980:79=1981:71)
  8. 8. 構造的カップリング 8  構造的カップリングが成立するとき,同時に「認知」が発生する。  構造的カップリングは,相手が有機体である場合とそうではない場合がある。  「二つ以上の単位体の行為において,ある単位体の行為が相互に他の単位体の 行為の関数であるような領域である場合,単位体はその領域で連結(カップリ ング)していると言ってよい。カップリングは,相互作用する単位体が,同一 性を失うことなく,相互作用の過程でこうむる相互の変容の結果として生じ る。」(Maturana and Varela, 1980:107=1981:117)  有機体と有機体との構造的カップリングでは,互いに刺激を与えあう共感的領 域(consensual domain)が生じる。 (Fell & Russell, 1994)
  9. 9. ニッチ  構造的カップリングの一種。H.Maturanaが90年代に出した概念。ニッチは,種 によって固有である。メディウム(medium)の一部分で,生命体が認知し相互 作用する領域をニッチと呼ぶ。メディウムのなかで,生命体が出会わない領域 を環境(environment)という。メディウムは,それら二つが合わさったものを 指す。 9(注6)
  10. 10. 客観的実在/構成的実在  客観的実在論は観察者を説明できないが,構成的実在論は観察者を説明できる。 構成的実在論は多元的現実(多元的宇宙)の立場に立つ(Maturana, 1988)。 10
  11. 11. 観察者  「事柄はすべて観察者によって語られる」(Maturana and Varela, 1980:8=1981:167)  「観察者は人間であり,つまりは生命システムであって,生命システムにあて はまることはすべて,観察者にもあてはまる」(Maturana and Varela, 1980:8=1981:167)  N.Luhmannは,社会システムそれ自体が観察するとしたが,Maturanaや西垣通 は観察者を人間の心的システムに限定した。 11 Maturanaの「認知の生物学」(biology of cognition) 認知の生物学は,行為存在論と認識存在論を統合し,その生物学的な説明を 試みたものである(門脇, 2004)。 ・オートポイエーシス=行為存在論 ・観察者=認識存在論
  12. 12. セカンド・オーダー・サイバネティクス  セカンド・オーダー・サイバネティクスは,H.v.Foersterによって1973年に作 られた造語。  ファースト・オーダー・サイバネティクスは,観察者を考慮せず,対象となっ ているシステムを“客観的”存在として見なす。それに対して,セカンド・オー ダー・サイバネティクスは,観察者を含めてシステムを捉える。  ネオ・サイバネティクスは,ClarkやHansenらによって近年提案されたあたら しい呼称であり,セカンド・オーダー・サイバネティクスを再評価してもらう ために提唱された呼び名(Clarke & Hansen, 2009) 12 (Brand, Bateson, and Mead, 1976)
  13. 13. ラディカル構成主義  E.v. Glasersfeld が1974年に作った言葉。  Glasersfeld は,その主著Radical Constructivismにおいて,英国における経験論者 J.Locke,D.Hume,G.Berkeley の3人やG.Vico ,そしてI.Kant をとりあげ,構成主 義の系譜を追った。そして,その後,J.Piagetによる認知発達理論を参照しながら, ラディカル構成主義の基本原則を次のように定式化している(Glasersfeld, 1995:51 =2010:124)。 1 ・知識は,諸感覚を通してであれコミュニケーションを通してであれ,受動的に受け 取られるものではない。 ・知識は,認識主体によって,能動的に組み立てられる。 2 ・認識の機能は,適応的(adaptive)なものであり,その用語の生物学的な意味合いに おいて, 適合や実行可能性(viability)に結びつくものである。 ・認識は,主体による経験的世界に資するのであって,客観的な存在論的現実の発見 に寄与するのではない。 13
  14. 14. 生命システム/心的システム/社会システム 自己言及的オートポイエティック・システム / | \ 生命体のシステム 心的システム 社会システム / | \ / | \ 細胞 脳 有機体等 諸社会 組織 相互行為 (Luhmann,1990:2=1996:9) 図 システムの類別 14  MaturanaやF.Varelaは生命体のシステムを主に研究領域としていたが, Luhmannは心的システムや社会システムを研究対象とした。
  15. 15. 情報(1)  VarelaやE.Thompsonも,生命にとって意味をもつものとして情報を定義した。 図1-2-1は,VarelaやThompsonが描いた図である(Varela, 1998;Thompson, 2007)。 15
  16. 16. 情報(2)  情報伝達の否定 「生物学的にいって,コミュニケーションにおいて「伝達[受けわたし]される情 報」は存在しない。構造的カップリングの領域において行動の調整がおこなわれ るたびごとに,コミュニケーションは起こっているのだ。(中略)人は誰でも自分自 身の固有の構造的決定にしたがって,何かをいったり何かを聞いたりする。何か をいったからといって,それがよく聞きとどけられるとはかぎらない。観察者の 視点から見ると,コミュニケーション的相互作用には,つねにあいまいさがつき まとっている。コミュニケーションという現象は,伝達される何か,にではなく, それを受ける人には何が起こるのか,にかかっているのだ。そしてこれは,「情 報を伝達する」ということとはたいへんに異なった事態だ」 (Maturana & Varela,1984:196=1987:232-233) 16
  17. 17. 階層的自律コミュニケーション・システム  基礎情報学の独自性がもっとも顕著な点である。従来のオートポイエーシス論 は階層性を否定していた。西垣通が指摘する階層性の条件は下記である。 (1)システムAに内属する観察者の視角から見て,システムAがオートポイエティッ ク・システムとして出現するのに対し,システムBはアロポイエティック・システ ムとして立ち現れる。 (2)システムBに内属する観察者の視角から見て,システムBがオートポイエティッ ク・システムとして出現するのに対し,システムAは非明示的存在にとどまりアロ ポイエティック・システムとして出現しない。 17 システムA システムB 観察者 観察者 拘束関係 (西垣, 2003)
  18. 18. 注 (注1)Luhmannは,心的システムをドイツ語で「Psychisches System」と表記し た。英語では「psychic system」にあたる。 (注2)Maurits Cornelis Escher作。 (注3)Lucas Jennis作。 (注4)日本語訳の『知恵の樹』では「organization」は「組織」と訳されているが, ここでは『オートポイエーシス』の河本英夫の訳に合わせ「有機構成」と表記し ている。 (注5)日本語訳の『知恵の樹』では「component」は「構成要素」と訳されている が,ここでは『オートポイエーシス』の河本英夫の訳に合わせ「構成素」と表記 している。 (注6)図は,structural coupling: a reciprocal connection (http://sympoetic.net/Living_Systems/structural_coupling.html)より 18
  19. 19. 参考文献(1)  Brand, Stewart & Bateson, Gregory & Mead, Margaret (1976) For God’s Sake, Margare, CoEvolutionary Quarterly, 10(21), 32-44. http://www.alice.id.tue.nl/references/bateson- mead-1976.pdf アクセス日:2017/6/2  Clarke, Bruce & Hansen, Mark, eds.(2009) Emergence and Embodiment, Duke University Press.  Fell, Lloyd & Russell, David (1994) An Introduction to “Maturana’s” Biology http://www.univie.ac.at/constructivism/pub/seized/matsbio.htmlアクセス日:2017/6/2  Glasersfeld,Ernst von(1995=2010) Radical Constructivism, The Falmer Press (西垣通監訳・橋 本渉訳『ラディカル構成主義』NTT出版)  門脇渉「H. Maturanaの「観察者」概念への批判的考察」日本社会情報学会第9回大会, 2004年  Luhmann,Niklas(1990 = 1996) Essays on Self-Reference, Columbia University Press(土方透・大 澤善信訳『自己言及性について』 国文社)  Maturana,Humberto & Varela,Francisco (1980 = 1991) Autopoiesis and Cognition, D.Reidel Publishing Company (河本英夫訳『オートポイエーシス』国文社)  Maturana,Humberto & Varela,Francisco(1984 ≡1987) El árbol del conocimiento, Editorial Universitaria(管啓次郎訳『知恵の樹』 朝日出版社)  Maturana, Humberto (1988)“REALITY” The Irish Journal of Psychology, Vol. 9 , no. 1, pp. 25- 82. 19
  20. 20. 参考文献(2)  西垣通(2003)「オートポイエーシスにもとづく基礎情報学」『思想』岩波書店, No.951, pp.5- 22.  Thompson, Evan (2007) Mind in Life, Belknap Press.  Varela,Francisco(1979) Principles of Biological Autonomy, North Holland= (2001) 染谷昌義・ 廣野喜幸訳(抄訳)「生物学的自律性の原理」『現代思想』青土社,29巻12号, pp.62-117  Varela,Francisco「オートポイエーシスと現象学」『現代思想』青土社, 27巻4号, 1998 pp.80-93 20

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