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VCファンディングの基礎

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VCファンディングについてのノウハウをまとめました。
以前、Samurai Startup Islandで行ったセミナーの資料をベースにしています。

なお、これに近い内容のプレゼンをした時の動画が、以下のサイトにアップされています。
http://globis.tv/movie/?e=1582

Pre-money, Post-moneyなどの概念が理解しにくいという方は、動画をご覧になることをお勧めします。

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VCファンディングの基礎

  1. 1. VCからの資金調達の 基本知識 2014年8月15日 グロービス経営大学院 准教授 山中礼二 ©GLOBIS University. All rights reserved.
  2. 2. この資料は… • グロービス経営大学院の教員である山中礼二が、Samurai Startup IslandでVCファンディングについてセ ミナーを行った時の資料を、一部改編したものです。 • スライドシェア目的に作成した資料ではありませんので、プレゼン資料だけ見ても分からない箇所があるか もしれません。予めお許し下さい。 • 80分間で行ったセミナーであり、この中でカバーされていない重要な論点も多々あることを、ご容赦くださ い。 • この資料に書いてある意見は、一教員としての私の個人的な意見です。VCファンディングについて語って はいますが、グロービス、特にグロービス・キャピタル・パートナーズの公式的な意見ではありません。
  3. 3. 自己紹介 • 一橋大学経済学部卒 • キヤノン株式会社 • グロービス・キャピタル・パートナーズ (途中休職、Harvard Business School留学。経営学修士) • 株式会社ヘルス・ソリューション(COO) • 株式会社エス・エム・エス (事業開発) • グロービス経営大学院
  4. 4. 疑問 下記のポイントをカバーします。 疑問の分野 • そもそもエクイティが良いのかデットが良いのか? • コンタクトするVCをどう選ぶのか? • いくらの資金を調達するのが良いのか? • 株価をどう設定するのか? • VC投資家は、株価の妥当性をどう見積もっているのか? • 株価以外に、交渉するポイントはないのか? 本日の カバー範囲 × ○ △ ○ ○ △
  5. 5. 本日のテーマ 以下の順番で話を進めます。 • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  6. 6. VCとは • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  7. 7. VCとは何か -7- VC(ベンチャーキャピタル)は、以下の活動を行う投資会社 ソーシング • いいベンチャー企業を探す 投資実行 (Structuring) • ベンチャー企業(経営者)とVCの利害が一致するように、 契約条件を組み上げ、資金を入れる • 株式を取得する 経営支援 (Value-add) • 経営を支援する - 営業活動 - 組織開発(経営陣のリクルーティングなど) - 財務活動(資金調達など) - その他、戦略全般 持分売却 (Exit) • 持分のみを譲渡する • または、会社全体を売却する
  8. 8. VCの収益モデル -8- 小さい企業が大きくなる。それによって、買った時の株価と売る時の株価に、 「利ざや」が生じる ソーシング • いいベンチャー企業を探す 投資実行 (Structuring) • ベンチャー企業(経営者)とVCの利害が 一致するように、契約条件を組み上げ、 資金を入れる • 株式を取得する 経営支援 (Value-add) • 経営を支援する - 営業活動 - 組織開発(経営陣のリクルーティングなど) - 財務活動(資金調達など) - その他、戦略全般 持分売却 (Exit) • 株式の一部(持分のみ)を他者に譲渡する • または、会社全体を売却する Entry Value Exit Value 拡 大
  9. 9. VC-Fundのストラクチャー(1/2) -9- 投資家 (Limited Partners) Fund 運用者 (General Partner) ベンチャー ベンチャー ベンチャー 資金 資金 IRR20% 目標IRR30-60%(注) 広義のVenture Capital (注)Early-stage: 60% Later-stageの場合は、30-40 % が多いが、 ファンドによって要求リターン率が異なる
  10. 10. VC-Fundのストラクチャー(2/2) -10- 投資家 (Limited Partners) Fund 運用者 (General Partner) 狭義の「VC」 ベンチャー ベンチャー ベンチャー 資金 資金 IRR20% 目標IRR30-60% 個人出資 Carried Interest Management Fee
  11. 11. 含意 • IRR 60%、つまり、「5年で10倍」というレベルのキャピタルゲインを、VCは求めます • 投資先がIPOできればハッピーです • または、持分を売却できるようなExitの機会(たとえば、会社の売却)を求めます
  12. 12. VCファンディングとは • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  13. 13. VCファンディング全体の流れ 以下のような流れで話が進むことが多いです 起業家の 作業 投資家の 作業 • ビジネスプランの 作成 • 最低限の「実績」 • ネットワーキング • 調査・リサーチ Mtg • Due Diligence • 追加情報の 整理 契約条件 交渉 払込
  14. 14. 基礎知識 • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  15. 15. 基本的な用語の意味を整理しましょう
  16. 16. Valuationとは -16- Valuation 市場価値 本質的な価値を 計算する プロセス 時価総額 (公開企業) ‘Implied’ Value (直近株価 x株数) (未公開企業) Pre-money Valuation Post-money Valuation Valuationとは、市場で具現化された企業価値のこと、または 適切な企業価値を計算するプロセスのことを意味します。
  17. 17. Post-money Valuationとは (本質的な価値に関わらず)、実際の株価に基づいて、「計算上の企業価値 (Equity Value)」を算出することができます。直近の株価に、発行済総株式数を かけたものが、”Post-money Valuation”です。 株価 株数 創業時 (0か月) 友人・知人 (1ヵ月後) シリーズA (6ヵ月後) シリーズAの株価×総発行済株式数 =シリーズAのPost-money Valuation
  18. 18. Pre-money Valuationとは 交渉の際に、Pre-money Valuationが使われることもしばしばあります。 シリーズAのPre-money Valuation =(シリーズA株価)×(シリーズA「前」の時点での総発行済株式数)です。 株価 株数 創業時 (0か月) 友人・知人 (1ヵ月後) シリーズA (6ヵ月後) シリーズAの株価×シリーズA前の総発行済株式数 =シリーズAのPre-money Valuation
  19. 19. Pre-money / Post-moneyの用例 新卒新人キャピタリストA「このベンチャー、いいなあ。投資したいな…。」 新卒新人キャピタリストB「でも、どうせValuation高いんじゃね?前回のラウンドはいくら?」 A「前回のポストが6億だってさ。」 B「もう相当高くなってるんだな。それで今回のラウンドは?」 A「プレで20億。調達金額が7億。」 B「ポストで27億か…。前回ラウンドから事業進捗もないのに、株価を上げすぎ。こんなValueで投資 できないだろう。」 A「お前だって2か月前、プレ35億円でスマポアプリのベンチャーに投資してただろ!」 投資家は新たな増資を引き受ける(=新規発行される株式を購入する)時に、下 記のように、Pre / Post-money Valueをチェックしながら、自分の相場観とかい 離していないかを確認します。
  20. 20. 三元連立方程式 -20- 以下の3元連立方程式を満たすような増資を適切なタイミングで行う。 経営者にとって 十分な調達額 既存株主の 受け入れられる 持分希薄化(Dilution) 新規投資者の 満足する 株価(Valuation)
  21. 21. (注)Valuation, 調達額と持分比率の関係 例1)Post-moneyが10億円、新規投資家からの資金調達額が2億円だと すれば…新規投資家のシェア(持分比率)は? → 2億円÷10億円=20% 例2)必要な調達額が4億円、しかし投資家に割り当てたいシェア(持分比率)が20%だとすれば …狙いたいPost-money Valuationは? → 4億円÷0.2=20億円 例3)Pre-moneyが50億円、新規投資家に20%の持ち分を与える資金調達を行った場合、調達 できる金額は… → 調達額÷ (50億円+調達額) = 0.2 この方程式を解いて・・・ 調達額は12.5億円 -21- ①Pre/Post-money Value、②資金調達額、③新規投資家のシェアの3つの うち、2つが決まれば、残りひとつは自動的に決まります
  22. 22. 調達額 • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  23. 23. いくら(調達額) 自社の事業戦略を財務戦略に落とし込み、資本政策(経営陣の持分 希薄化)を考慮しながら、資金調達額を決めます。 Cash Flow 時間経過 Seed- accelerator 自己資金 友人・知人 VC (Series-A) VC (Series-B)
  24. 24. (参考)資本政策の例 創業期 創業者(常勤) 5,000 5,000 80% 5,000 67% 5,000 56% 5,000 48% 5,000 40% 友人・知人 1,250 20% 1,250 17% 1,250 14% 1,250 12% 1,250 10% Seed-accelerator 1,250 17% 1,250 14% 1,250 12% 1,250 10% VC 1 1,500 17% 1,500 14% 1,500 12% VC 2 1,500 14% 1,500 12% 一般株主(上場後) 2,000 16%   総計 5,000 6,250 7,500 9,000 10,500 12,500 株価(円) 1,000 4,000 8,000 40,000 80,000 400,000 Pre-money Value (百万円) 20 50 300 720 4200 調達総額 (百万円) 5 5 10 60 120 800 Post-money Value(百万円) 5 25 60 360 840 5000 友人・知人 Seed-Accelerator Series-A Series-B 株式公開 下記のケースでは、約200百万円のエクイティ・ファイナンスを行いながら、 経営陣+友人・知人で50%のシェアを保っています。 (注) Pre-money Value: そのラウンドにおける株価に、前回までに発行済の株式総数をかけたもの Post-money Value: そのラウンドにおける株価に、そのラウンド終了後の発行済株式数をかけたもの
  25. 25. 起業家のジレンマ 持分維持 多額の調達 「持分維持」と「十分な金額の調達」のどちらが重要か考え、結論を出します。
  26. 26. (補足) ただし、高いValuation(つまり高い株価)で合意することができれば、少ない数 の新株発行で(つまり、自分の持分比率の低下を防ぎながら)、大きな金額を集 めることができます。 株価 株数 創業時 (0か月) 友人・知人 (1ヵ月後) シリーズA (6ヵ月後) シリーズAのPost-money Valuation この 面積が 調達 金額
  27. 27. 結論:3つの問い 以下の3つの条件を満たす、合理的な資金調達額を決めることをお勧めします。 現状 Milestone-1 Milestone-2 Vision • 有意義なマイルストンに到達するのに十分な 金額であること(左図参照) • 一定期間事業に集中できること(VC-Funding 前は6か月以上、VC-Funding後は18か月以 上の資金を確保) • 過度な自己持分希薄化を招かないこと
  28. 28. いくら(調達額) (追記) マクロ経済の状況を注視しましょう。調達環境が良好で、株価が高く なりがちな時には、大目に調達をし、経済環境の悪化に備えることも 必要です。
  29. 29. どのVCから調達するか • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  30. 30. 誰から 以下のステップで選びます。最終的に起業家は「投資家の審査をする」という冷静さと、 「この人と一生涯付き合えるか」という直感を大切に、判断することをお勧めします。 スクリーニング 意思決定 • 自社の調達額と、先方の 投資ロットがマッチするか • 自社の調達タイミング (Seed / Early / Expansion)と 先方の投資戦略がマッチするか • 投資家(担当者)の評判と、 価値提供(Value-add)はハ イレベルか • 投資家の描く事業戦略、Exit 戦略が、自社の戦略とマッチ するか • 投資家のオファーする契約 条件(株価、他)は受け入れ られるものか
  31. 31. 追記・補足 細かい投資条件を比較し、より良い条件を提示するVCを選ぶこと は(短期的には)経済合理的です。しかし中長期の成功確率を上 げるためには、「良いVC」に株主として入ってもらえるかどうかが、 致命的に重要です。VCの評判をしっかり調べ、高い価値提供をで きそうなVCを選ぶことをお勧めします。
  32. 32. 株価 / Valuationをどう設定すべきか • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  33. 33. いくらで(株価) 以下の観点から、ちょうど良い株価を決定することが求められます。 意味合い・背景 VCにとって リーズナブルな 株価で 既存株主の持分を 過度に希薄化させ ない株価で • 3-5年後、会社が年間3億円以上の当期利益を出せるように なり、十分な時価総額をもって株式公開するという前提で計算 し、VCが40-60%のIRR(*内部収益率)を出せるような株価 (VC-method Valuation) • 安定的に株式を保有する株主(経営陣)が、最悪30%、 できれば50%超の持分を保有する状態でIPOできる • 前回増資時から、大幅な事業進捗がないにも関わらず株価を 上げると、新規投資家に悪印象を与える (*)IRR(内部収益率):複利計算の前提で計算した時に、「年率何%の利回りで、投下した資金が増加するか」を示す指標。Excelで簡単に計算可能 (前回増資時の 株価から、合理 的なステップアッ プを踏まえて)
  34. 34. (参考):IRR(内部収益率)とは -34- 投資額 (X) 売却総額 (Y) 複利ベースの利子率 = r とすると… Y = X x (1+r) y ∴(1+r) = Y / X y ∴(1+r) = (Y / X)^ (1/y) ∴r = (Y / X)^ (1/y) - 1 これが、IRRの計算式 年率10%の複利利子率で預金が増えるとIRR10%のリターンをもたらす y年
  35. 35. (参考)様々なValuationの手法 -35- Pro Con お勧め DCF VC-Method Multiples (現状の売上/利益 に倍数をかける) •理論的には、もっと も正確. •CF予測困難 •rも予測困難 •CFが安定的な時には、 使いやすい •VC-MethodやMultiple 法の有効性を確認する ためには、有益 •計算しやすい •Exit Valueが正しい かは、比較類似会 社のPER次第 •テクノロジーベン チャーにはお勧め •非常に計算 しやすい •赤字企業には使えな い •将来の成長も織り込 めない •利益が安定化した 後であれば、やり やすい 単一の最適解は存在しないが、IT系ベンチャーの場合はVC-Methodが 妥当な場合が多いのです。本日はこの方法を学びます。
  36. 36. VC-Method Valuation (全体像) Pre / Post-money(所与) → 投資時の持分比率(シェア)を計算 → Exit時のシェアを推定 36 下記の流れで、所与のPre/Post-money Valueが(投資家にとって)妥当かどうかを 検証するのが、”VC-Method Valuation”です。 • Exit時の利益(所与) (A) • 比較類似企業のPER (B) → Exit時の時価総額 (A x B) Exit時の持分価値を計算(時価総額 x シェア) IRR(内部収益率)の計算 期待する収益率を上回っているかの確認
  37. 37. VC Method (Step-1):業績の予測 2011 2012 2013 2014 2015 2016 売上 0 20 100 400 1,000 2,300 当期利益 (100) (200) 0 10 100 300 37 事業が立ち上がり、投資家がExitするタイミングの業績を予測します IPOできる規模
  38. 38. VC Method (Step-2):PERの予測 • 同業種、または同様のビジネスモデルの公開企業を選び、 時価総額 ÷利益を計算して、PERを算出する • 極端な数字は除外して、平均値または中央値を取る • 市場平均に対して、あまりに高いPERになっていないか 確認する (現状、ネットサービス系ベンチャーなら、15~30のレンジに収めるのが妥当) Exit時の時価総額を予測するために、PERを予測します
  39. 39. VC-Method (Step-3) Exit時の時価総額の予測 Exit時の利益 x PER = Exit時の時価総額(推定額)
  40. 40. Step 4: Exit時の投資家持分比率の推定 1. 投資時の投資額とPost-money Valuation(どちらも所与の数字)から、投資家の 持分比率を計算 2. IPOまでの持分比率低下(「希薄化」)を考慮に入れて、Exit時の投資家の持分比 率を計算 ● もし将来的に、さらに20%の株式を将来の投資家に割り当てる可能性がある としたら…投資家の現在の持分比率に(1- 0.2)をかける必要がある。(予測で きない場合には、ざっくりと「増資をするたびに20%」と想定する) ● IPO時には、通常15%ほどの株式が新規発行される。この分も、将来的な持 分比率低下ファクターとして見込んでおく必要がある。
  41. 41. Step-5: 投資家のリターン額の計算 Exit時の時価総額 x Exit時の持分比率 = Exit時のリターン額
  42. 42. VC-Methodの全体像(再確認) Pre / Post-money(所与) → 投資時のシェアを計算 → Exit時のシェアを推定 42 所与のPre / Post-moneyの妥当性を検証することも可能です。 • Exit時の利益(所与) (A) • 比較類似企業のPER (B) → Exit時の時価総額 (A x B) Exit時の持分価値を計算(時価総額 x シェア) IRR(内部収益率)の計算 期待する収益率を上回っているかの確認
  43. 43. 演習 実際にスプレッドシートを組みながら、計算をしてみましょう。 <投資時> • 2014年9月 • Pre-moneyが10億円 • 投資額が1億円 <投資後の希薄化> • 追加的な資金調達で、新規投資家に20% • IPO時に、一般投資家に15% <Exit> • 2019年8月 • 当期利益が5億円 • 業界平均のPERが20
  44. 44. リターンの計算 投資タイミング Sep-14 Pre-money 1,000 百万円 投資額 100 百万円 Post-money 1,100 百万円 持分比率 9.1% (100 / 1100) 追加資金調達 20% (新規投資家持分) IPO 15% (公募)  希薄化後比率 6.2% (9.1%x0.8x0.75) Exitタイミング Aug-19 当期利益 500 百万円 業界平均PER 20 時価総額 10,000 百万円 VC持分リターン 618.2 百万円 (10,000 x 6.2%) 投資時 Exit時 Sep-14 Aug-19 IRR -100 618 44.8% <投資時> <Dilution> <Exit> <XIRR関数を使って計算> (注:VCやPEが株式を保有することに伴う「値崩れリスク」を考慮に入れ、Exit Valueに”VC Discount”を加える場合もある。
  45. 45. 結論 Early-stageの投資案件として、IRR 44.8%というのは、高くない。 (50-60%は欲しい) 従って、Pre-money Valuationの10億円が、「高すぎる」のかもしれない。 といった具合に結論を出し、適切なIRRを 出せるようにPre-money Valuationを 調節します。
  46. 46. 最後に(Valuationについて) ある程度のレンジを示した上で、投資に関心を示している投資家の意見を5社ほど 聞いてみることで、相場観をつかむことをお勧めします。
  47. 47. その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  48. 48. 普通株 vs. 優先株 普通株で増資するのか、または(投資家の要請する通り)優先株を発行するのか を決める必要があります。 普通株で増資すれば… 優先株で増資すれば… • 既存株主と、基本的に同じ権利 • 株主の権利は、(特別に契約を 結ばない限りは)会社法の定め る通り • 優先株主の権利を、自由度高く設計できる • 典型的には、以下の条項が含まれること が多い - 株主総会における特別決議 - 希薄化防止条項 - 精算・売却時の優先分配権 ・ ・ • 上記は起業家にとっては不利な条項だが、 優先株で増資するメリットもある - 優良なVCを巻き込みやすい - 安い株価で普通株を出したり、ストッ クオプションを発行・付与することが 税務上可能
  49. 49. 契約条件 一般的に、起業家が注意すべき契約条件にはどのようなものがあるでしょうか?
  50. 50. Rich vs. Kingの優先順位 論点 「金持ち」志向起業家 「王様」志向起業家 株価/Valuation ストックオプション 清算時優先分配権 希薄化防止 優先配当 取締役会構成 拒否権 Drag Along Right 7 5 5 0 0 1 8 8 0 3 0 3 3 10 10 10 米国の典型的な起業家の重視する論点は、以下の通り 出典:“Rich-vs.-King” Approach to Term Sheet Negotiations Noam Wasserman et al. Harvard Business School 2010
  51. 51. 優先順位ー最終判断 • 自分の起業目的に立ちかえり、自分なりの判断基準を構築することを お勧めします。
  52. 52. VCとのコミュニケーションの取り方 • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  53. 53. • まずは、VCがどのような尺度で投資機会を評価するのかを理解しましょう • 投資家によってスタンスは異なりますが、例えば以下のような見方をします
  54. 54. VCにとってのチェックポイント -54- 市場 • 十分な(質・量ともに) 未充足ニーズがあるか? • 市場は立ち上がりつつあるか?(タイミング) 商品 サービス • その商品・サービスは上記の未充足ニーズを満たすか? • その商品・サービスは、拡大・規模化可能か? 競争 環境 • その商品・サービスは、競合他社のものとどう違うか? • 持続的な競争優位を築けるか? 収益性 • Unit economics から見て、十分な利幅を取れそうか? • 初期投資額と長期的なリターンのバランスは良好か? 投資者の リターン • 投資者は十分な大きさのリターンを取れるか? 経営陣 • 経営陣はこの事業を成功させられそうか?
  55. 55. 市場の評価 -55- 市場の「広がり」とニーズの「強さ」に着目し、Due Diligenceを行う 市場の 広がり ニーズの 強さ • 何らかの「追い風」を受け ている市場分野か • どれくらい、売上規模の拡 大が見込めるか • 製品が存在する場合: 顧客が買っているか • 製品が存在しない場合: 顧客は買ってくれそうか 顧客インタビューを繰り返し て、顧客のニーズおよび インサイトに迫る チェックポイント Due Diligence
  56. 56. 商品・サービスの評価 -56- ターゲット顧客に「刺さる」価値を提供できているかを評価する 顧客に 「刺さる」か Scalableか • 顧客のニーズにこたえ、 強い喜びを与える商品か • 購入を阻害する要因は ないか • 安定的に製品を大量生 産する / サービスを規 模化することが可能か • 顧客インタビュー • 実際に使って体感調査 チェックポイント Due Diligence • 専門家インタビュー • 従業員インタビュー
  57. 57. 競争環境の評価 -57- “Unfair Competitive Advantage”を持っていれば、ベスト。 少なくとも、何からの市場セグメントにおいて、No.1になっている必要がある。 持続的な 競争優位を 築けるか • (顧客から見て)どのポイン トで差別化されているか • どの市場セグメントにおい て、No.1になり得るか • 顧客インタビュー • 経営陣インタビュー チェックポイント Due Diligence • 経営者インタビュー その商品・ サービスは 競合他社の もの(または 代替物)と どう違うか • “Unfair”と言われるほどの競 争優位性を持っているか • 他社は何カ月くらいで真似で きるか • 先行者利益を効かせて、 リードを広げられるか
  58. 58. 経営陣の評価(1/2)一般的スキル -58-  惹きつける力(顧客・社員・投資家・パートナー) ● ビジョン・ミッションと「思い」の強さ ● 人間性の高さ ● にじみ出る「自信」の強さ←過去の成功体験 ● コミュニケーション能力の高さ  考える力 ● 戦略的思考 ● 「右脳」的思考 (顧客ニーズなど) ● 柔軟な思考(過去の自分を疑う思考ができるか)  実行する/させる力 ● 人を動かすスキル » 「厳しさ」 » 動機付けのうまさ ● アクションの速さとラーニングの速さ  そして、チーム内の相互補完関係(Chemistry) 業界、産業分野に関わらず、下記の力を持っていれば、高い評価を得られる。 チェックポイント Due Diligence • 経営者インタビュー - 戦略ディスカッション - 過去の成功体験 • 従業員インタビュー • マネジメント・レファレンス (過去の上司、部下などの インタビュー)
  59. 59. 経営陣の評価(2/2)業界特殊的スキル -59- 前ページの「OS」的スキルに加えて、当該事業分野に必要な 特殊スキル・ネットワーク・マインドがあればベスト 十分な業界 知識・人脈を 持っているか その産業に おける KSFを実行 できるか • 顧客の実態、ニーズについ て深い洞察を持っているか • 顧客への人的ネットワーク を持っているか • 顧客インタビュー • 経営陣インタビュー チェックポイント Due Diligence • 経営者インタビュー • 取引先インタビュー • 技術開発、営業、アライアン ス商談など、その業界にお けるKSFは何か • そのKSFを具現化する力を 持っているか
  60. 60. 収益性の評価 -60- Willingness to Pay (顧客価値) Price (価格) Cost(費用) Profit • 単位当たりの利益は上がりそうか • 店舗当たりの損益分岐を超えそうか • 商品当たりの粗利率はどれくらいか • 顧客の生涯価値(LTV)は顧客獲得費用を 上回るか Unit Economics (単位当たりの 経済性) 長期的な 収益性 FCF Negative CF Positive CF • 初期投資を上回って余りあるだけの 長期的収益が生まれるか 「収益性の高いビジネスか」を評価する
  61. 61. これら全ての評価結果が、IRRの計算に反映されます。 ただし、IRRだけで投資判断をするわけではありません。
  62. 62. リスクとリターンのバランス -62- 以上全ての分析に基づき、リスクとリターン(IRR)のバランスを理解します リターン リスク 高い 中 低い 高い 中 低い ○ ○ ○ × × × ◎ ◎ ◎ ◎:絶好の投資案件 ○:投資可能 ×:投資すべきでない
  63. 63. 最終判断(ステージによる違い) -63- リターンに最も影響を与えるファクターは、ステージによって異なってきます。 Early Expansion Later • 経営陣 • 市場の成長性 • 当該企業のポジショニング (競争優位性) • 上場後のValuationとの 「利ざや」があるか
  64. 64. VCとのコミュニケーションの要諦(1) あせらない おこらない いばらない くさらない まけない ベンチャーファイナンスには春秋があり、VCに対して強く出れる時期もあれば、逆にいくら頭を 下げても跳ね返される時期もあります。好況時におごらず、苦境時にもあきらめず、粘り強く 真摯なコミュニケーションをとり続けることが重要です。
  65. 65. さらに深く理解するには • VCとは • VCファンディングとは • 知っておくべき基礎知識 • いくら調達すべきか • どのVCから調達すべきか • 株価 / Valuationをどう設定すべきか • その他の契約条件はどう設計すべきか • VCとのコミュニケーションの取り方 • さらに深くVCファンディングのことを理解するためには
  66. 66. お勧めの情報源 書籍 Web • 磯崎哲也「起業のファイナンス」 • ノーム・ワッサーマン「起業家はどこで選択を誤るのか」 • ジータアナンド「小さな命が呼ぶとき」 • ジェリー・カプラン「シリコンバレー・アドベンチャー―ザ・起業物語」 • http://www.find-job.net/startup/business-plan-of-nanapi 「nanapiの事業計画書」 • http://www.azx.co.jp/ AZX Professional GroupのWebサイト • http://thestartup.jp/ THE STARTUP • http://startupinnovators.jp/ Startup Innovators
  67. 67. 最後に • 何かご質問などあれば、気軽にご連絡下さい • 起業家限定の特別プログラム、グロービス「ベンチャー・マネジメント・プログラム」 へのご参加をお勧めします  グロービスのプログラムの中でも、最も(事業立上後の起業家にとって) 美味しい部分を凝縮したプログラムです。  起業家の堀義人、ベンチャーキャピタリストの仮屋薗聡一などが講師として登 壇します  マネックス証券の松本社長、ライフネット生命の出口社長などが、ゲストとして いらっしゃいます  メガ・ベンチャーを目指す新進気鋭の起業家 / ベンチャー経営者が集う ハイレベルなコミュニティです http://mba.globis.ac.jp/vmp/index.html
  68. 68. (参考)2014年度VMPのプログラム概要 1日目(10月3日) 2日目(10月21 日) 3日目(10月30日) 12:00 ~15:00 イントロ/起業家論 「ソフトバンク」 堀義人 ビジネスモデル構築と マーケティング 「クックパッド」 加藤剛広 マネジメント・システム 「GDH」仮屋薗聡一 (12:00-14:00) 資金調達とIPO 「グリー」仮屋薗聡一 (14:10-16:10) 15:30 ~18:30 組織開発と人材育成 「ライフネット生命」 井上陽介 (ゲスト:同社CEO 出口様) グローバル展開 「マネックス」 岡島悦子 (ゲスト:同社代表 松本様) 経営理念とリーダーシップ 「吾人の任務」 堀義人 (16:20-18:30) 懇親会 18:30 ~22:00 第1部:対談(サブテーマ:メディアとの関係構築、デット・ファイナンス、経営陣の処遇とマネジメント) 第2部:懇親会ネットワーキング (敬称略) 一流の講師陣、素晴らしいゲスト、そしてベンチャー経営者の仲間たちから、学びを 得る機会です。 詳細・申込: http://mba.globis.ac.jp/vmp/index.html
  69. 69. 山中礼二 F: http://www.facebook.com/reiji.yamanaka.1 T: @reijiyamanaka B: http://venchaya.doorblog.jp/

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