公共交通をデータで捉える:
東京都と全国の現状と可能性
東京大学 生産技術研究所
伊藤昌毅
第1回 東京都における地域公共交通の在り方検討会
2020年10月9日
伊藤 昌毅
• 東京大学 生産技術研究所 特任講師
– ユビキタスコンピューティング
– 交通情報学
• 経歴
– 静岡県掛川市出身
– 2002 慶應義塾大学 環境情報学部卒
– 2009 博士(政策・メディア) 指導教員: 慶應義塾大学 徳田英幸教授
– 2008-2010 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別研究助教
– 2010-2013 鳥取大学 大学院工学研究科 助教
– 2013-2019 東京大学 生産技術研究所 助教
– 2019- 現職
• 委員(国土交通省)
– バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会 座長
– 公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会 委員
– MaaS関連データ検討会 委員
– 交通政策基本研究小委員会 委員 他
• 委員(その他)
– 経済産業省 官民データの相互運用性実現に向けた検討会 座長
– 沖縄 観光2次交通の利便性向上に向けた検討委員会 委員長 他
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• 標準フォーマット関連
– バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会 座長(H28年度)
– 標準的なバス情報フォーマット利活用検討会 座長(H29年度)
– バス情報の静的・動的データ利活用検討会 座長(H30年度)
– GTFS-JPに関する検討会 委員(R2年度)
• オープンデータ関連
– 公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会 委員(H29年度-R1年度)
• MaaS関連
– 都市と地方における新たなモビリティサービスのあり方懇談会 委員(H30年度)
– 新モビリティサービス推進事業有識者委員会 委員(R1年度)
• 交通政策審議会
– 交通政策基本計画小委員会 委員(R1年度-)
• シェアサイクル
– シェアサイクルの在り方検討委員(R1年度-)
伊藤×国土交通省
• 経済産業省 オープンデータ関連
– 官民データの相互運用性実現に向けた検討会 座長(H29年度)
– 情報共有基盤 利用促進ワーキンググループ 委員(H30年度)
• 総務省 オープンデータ関連
– 地域情報化アドバイザー(R2年度〜)
伊藤×経済産業省・総務省
• 沖縄観光2次交通の利便性向上に向けた検討委員会 座長(H30年度-R2年
度)
• 群馬県バスロケーションシステム実証実験 アドバイザー(R1年度)
• さいたま市 スマート駅広研究会 副会長(R2年度〜)
• 佐賀市 街なか未来技術活用モデルプラン策定業務有識者会議 委員(R2年
度〜)
• 東京都 東京都における地域公共交通の在り方検討会 委員(R2年度〜)
• その他自治体主催のイベントでの講演多数
– 静岡県掛川市、石川県能美市、群馬県、島根県安来市、沖縄県、富山県、岐阜県、北海道な
ど
伊藤×地方自治体
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標準的なバス情報フォーマットのオープンデータ整備が進行中
路線 時刻 運賃
「標準的なバス情報フォーマット」(世界標準のGTFS互換)でデータ整備
リアルタイム
乗換案内・MaaS サイネージ・印刷物等 交通分析・計画
バス業界において「標準化」「オープン化」が同時に進行中
• x
8
2018年11月:30
2019年2月:90 2019年7月:126
0
50
100
150
200
250
300
17年7月
17年10月
18年1月
18年4月
18年7月
18年10月
19年1月
19年4月
19年7月
19年10月
20年1月
20年4月
20年7月
件数
2018年7月:23
• 標準的なバス情報フォーマット
(GTFS-JP)データ整備に関わる有志
によるコミュニティ
– 2017年夏頃から、国交省検討会の関係者らを
中心に自然発生的に誕生
– 普及に関わるツール開発、勉強会やイベント
開催、関係者への働きかけなどを継続的に実
施
– チャットなどによる活発な情報交換
• 参加者
– 大学研究者
– 乗換案内サービスデータ整備担当
– バス事業者向けツール開発者
– 公共交通コンサルタント
– 交通事業者職員
– 自治体職員 等 20名程度
標準的なバス情報フォーマット広め隊
• Webページからデータを誰でもダウンロード出来るように
オープンデータとして自社などのWebページで公開
• 事業者データ
• バス停データ
• 路線データ
• 時刻表データ
• 路線図(緯度経度)データ
• など
GTFS-JPにはCSVファイル形式で以下の情報が格納
• 便ごとのバス停通過時刻、緯度経
度情報などをリアルタイム公開
• 混雑情報も追記可能
– 2020年7月より宇野バスが対応
• Protocol Buffer形式
GTFSリアルタイム(バスロケ)提供も増加中(28事業者)
• 公共交通オープンデータ協議会(坂村健会長)
による取り組み
– 公共交通オープンデータセンター
• 都バスは、Google Mapsでバスロケを考慮し
た検索が可能に
2020年: 都バス・横浜市営バスの
GTFS-JP・GTFSリアルタイムデータ公開
2019年3月
• x
• 武蔵村山市コミュニティ
• 西東京市コミュニティ
• 小笠原村営バス
• 大田区コミュニティ
• 新宿区コミュニティ
• 立川市コミュニティ
• 北区コミュニティ
東京都内のオープンデータ(自称)掲載状況
• 西武バス
• 東京都交通局 都バス(リ
アルタイムも含む)
公共交通オープンデータ
協議会
ジョルダン 公共交通データ
HUBシステム
両者とも利用にはユーザ登録が必要
データのライセンスが不明確であったり再
配布を禁止しているため、厳密には「オー
プンデータ」とは呼べない
データ品質やダイヤ改正対応は確認が必要
※オープンデータ基本指針(平成29年5月30日高度情報通信
ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会
議決定)の定義に基づく
Accessなどと同様のリレーショナルデータ
ベースとして解釈可能
• x
例: 本日 渋谷駅前 51番乗り場から発車するバス
• 例:SNSの「都バスは同時に何台走っている?」という問いに
すぐに答えられる
– Max 1141台, 都バスの保有台数は約1500台
SQLなので様々な角度からデータ取得が可能
https://twitter.com/niyalist/status/1295398917488574464
その他の公共交通データ
ICカードによる利用データ取得
• IruCa
– 2005年に導入された非接触式ICカードシステム
• 磁気式切符は未導入
• 私鉄としては早い導入
• 香川大学の学生証と一体化
• 一部では電子マネーとしても利用可能
• 対象
– ことでん、ことでんバス、
– 大川バス、小豆島オリーブバス
• 回数割引
– 電車、バスに乗れば乗るほどお得
• 乗り継ぎ割引
– 電車→バスへの乗り継ぎで100円引
• 様々な交通手段を網羅した移動需要が反映されたデー
タ
– 全国のナビタイム利用者からの大量のデータが集まる
交通アプリによる検索履歴データ
その他、自転車やバスなど様々なアプリ
検索ログデータ
• 出発地
• 目的地
• 移動手段
• 出発時刻/到着時刻
• x
検索ログ(非日常の需要)とICカード(実際の利用)
はパターンが異なる
Navitime ICカード
• 岡山県 宇野バスの事例
コロナ禍でのダイヤ改正の実態
データのオープン化がもたらす
イノベーションと日本の現状
• Trafi(リトアニア)
• Whim(フィンランド)
• Kyyty(フィンランド)
• Moovel(ドイツ)
• CityMapper(イギリス)
• Moovit!(イスラエル)
GAFAやユニコーンだけでなく中小スタートアップ
が世界で競争
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日本: 公共交通事業者が主導するMaaSアプリが
登場し始めるも連携はまだ遠い
My route(西鉄・トヨタ)
WILLER Izuko(東急)
Emot(小田急)
• 鉄道、バスなどに加えタクシーアプリやデマンド交通などを統合
• 開発はIT企業に委託。事業者による囲い込みの面も
– それぞれがアライアンス形成を目指すが、相互乗り入れできるか? 27
28
• 有償データ前提のビジネスモデルがスマホ時代に合致せず
– B2B向けサービス(出張精算等)を重視、競争の主戦場であるC向けに注力できず
• 地図との連携や運行情報の充実など「その場・その時」のメディアになり切れない
• データ整備が重荷・都市部中心に
– オープンデータにしたバスのリアルタイムデータの取り込みが進まず
– 地方、過疎地などの交通利便性向上に存在感なし
• 交通事業者のITサービスは発展途上
– 各社バラバラで使いにくいアプリ、チケットシステム
• えきねっと、モバイルSuica、エクスプレス予約・・・・・・
– 分かりにくいバスロケアプリ
日本が大きく先行した乗換案内の競争力は風前の灯火
→ITによる交通の利便性向上が進まず
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公共交通オープンデータの年間経済効果@ロンドン
対 乗客 待ち時間削減 £70-90m 100-130億円
経路最適化による時間削減 £20m 29億円
対 交通事業者 問い合わせ窓口のコスト削減 £1m 1.4億円
対 都市 企業活動による総付加価値 £12-15m 17-22億円
http://content.tfl.gov.uk/deloitte-report-tfl-open-data.pdf
Assessing the value of TfL’s open data and digital partnerships
Deloitte, 2017
データ整備や規制改革の実施にあたり
根拠となる効果を推計する必要がある
• xx
MaaSでは4段階のレベルが提唱されている
http://www.tut.fi/verne/aineisto/ICoMaaS_Proceedings_S6.pdf
行政によるデータ活用:
「地域が自らデザインする地域の交通」
のために
• 2020年法改正
で示された方針
• 地域に「デー
タ」という武器
を
• 運輸局と自治体
の連携も制度化
https://www.mlit.go.jp/common/001352013.pdf
GTFSから都バスの
サービスレベルを可視化
• x
野津直樹, 太田恒平, 梶原康至, “運行頻度路線図でビジュアライズした都市内のバスと
鉄道の役割分担の実態”, 第51回 土木計画学研究発表会, 発表資料, 2015年06月.
http://consulting.navitime.biz/pdf/presentation_20150606_02.pdf
高松駅13:00発の到達圏
https://qiita.com/niyalist/items/1d3941761df3969f16a2
運輸行政のデジタル化と
基盤データの整備
運輸局への紙による膨大な申請・届出業務
バス会社(永井運輸@前橋) 関東運輸局
太田恒平, 水野羊平, 三浦公貴, 伊藤昌毅, "GTFS-JPデータを用いた乗合
バス事業の電子申請に向けた基礎検討 〜帳票地獄からの脱却による働き
方改革を目指して〜", 第59回土木計画学研究発表会, 2019年6月9日.
規制改革推進に関する
答申(2020年7月)
• 内閣府 規制改革推進会議
• 交通事業者のデータ整備・連携
の推進
• 交通事業者から国への申請のオ
ンライン化
– 交通業界におけるDX(デジタルトランス
フォーメーション)推進
令和3年度 国土交通省
自動車局関係
予算概算要求概要
2020年9月25日公開
https://www.mlit.go.jp/page
/content/001364071.pdf
コロナ禍と公共交通
「くらしの足をなくさない!
緊急フォーラム」
オンラインで開催
4/24:1,000人が登録
• 川鍋一朗・全タク連会長があいさつ
• 現状の整理、当面の危機をどう乗り切るか議論
• 提言「社会崩壊を招く『交通崩壊』を防ご
う!」を作成し、国土交通大臣に提出、業界団
体から賛同
5/29:820人が登録
• 赤羽一嘉・国土交通大臣(録画)、藤井直樹・
国土交通審議官があいさつ
• 感染防止策、事業者支援策を中心に議論
• 主体別行動マトリックス「withコロナ環境での
『おでかけの足』確保に向けた枠組」を公表
https://zenkokuforum.jimdofree.com/
にて録画視聴・資料閲覧可能
この種のフォーラムは初。オンラインもかなり早い取組 422020/8/8 加藤博和・伊藤昌毅ほか
「緊急に必要」と
社会に対して訴えていかなければならないこと
1. 「くらしの足」が危機的であり、いったん失えば戻すのは困難
– このままだと、収束後に元通りの運行はできなくなる可能性が高い
– そうなれば、外出が自由になっても、実質的に外出が制約される人が多数出てしま
う
2. 現段階でも確保すべき「くらしの足」があり、移動中の乗客や
職員の感染防止が必要
– 社会を維持するために働いていただいている方が、そのために安全に移動できるよ
うにしなければならない
3. そのために、「くらしの足」確保維持への公的支援が必要
– 現状の制度では対応できないところがあり、一刻を争う
「後」でなく、とりあえず「今」に集中
「主張」「要求」の前に「現状」「問題」を知ってもらう 432020/8/8 加藤博和・伊藤昌毅ほか
国の二次補正予算への
補助制度盛り込み、
地方創生交付金の
メニュー提示・宣伝
にもつながる 442020/8/8 加藤博和・伊藤昌毅ほか
• x
公共交通事業の回復は遠い(路線バス・貸切バスの例)
https://www.mlit.go.jp/common/001363025.pdf
国土交通省 新型コロナウイルス感染症による関係業界の影響について
(令和2年8月31日時点まとめ)
東京の公共交通事業者は安泰か?
営業収益 経常損益
「都営交通2019経営レポート」より
https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/
about/keiei/pdf/report2019.pdf
2.3億人利用、
404億円収益
10億人利用、
1530億円収益
運賃366億円、
9.7億円黒字
運賃1437億円、
352億円黒字
乗車人員2.2億人(4%少ない)
でさえ赤字だった
都バスの数字からバス事業への
コロナの影響をシミュレーション
収入: 422億円 支出: 412億円
「都営交通2019経営レポート」より
https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/
about/keiei/pdf/report2019.pdf
年間通じて乗客数20%減と仮定して、収入は349億円(73億円減)、
補助金割合が少ない分、乗客減のインパクトが大きい
減便をせず、支出が変わらなければ一気に63億円の赤字に
民間事バス業者が減便で
人件費抑制する可能性
• x
49
• 地域間幹線系統確保維持費国庫補助金
• 生活交通確保維持改善計画
• 地域内フィーダー系統確保維持費国庫
補助金
補助要件を緩和し減収の影響を
抑える事務連絡
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/tsukuro/shien/pdf/R2kanwa.pdf
東京都においてどれだけの
効果が見込めるか
鉄道
• x
x
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59591920W0A520C2DTA000/ https://digital.asahi.com/articles/ASN9J6KFQN9JULFA02R.html
• 東京の「地域公共交通」の取り組みは始まったばかり。
他の県から学ぶべきことは多い
• 東京から交通イノベーションを起こしたいが、基礎的な
取り組みが遅れている
• 行政にデータリテラシーを
• コロナ禍のインパクトは想定以上なのではないか
• 鉄道・タクシーなど様々なモードも一緒に議論したい
まとめ

公共交通をデータで捉える: 東京都と全国の現状と可能性