https://www.watney.co.jp/course?wix-vod-video-id=576b8b40842149e7b61d6a66a5afe395&wix-vod-comp-id=comp-jfnqv23o# 大阪大学大学院経済学研究科 中川功一 准教授 WEB経営学講座 WATNEY（ワトニー） https://watney.co.jp/

1. 大阪大学大学院経済学研究科
中川功一
Allegro_assai@hotmail.com
国際経営
(4)
トランスナショナル経営

2. Bartlett and Ghoshal（1989）
“Managing across borders：The transnational solution”
国際経営の学説史上最も有名かつ重要な著作
当時の日米欧3か国の主要多国籍企業の詳細な
比較分析の中から、あるべき国際経営とはどのよ
うなものかを議論した。四半世紀前の著作ではあ
るが、その普遍的なメッセージが現在でも生き続
けている。そのメッセージとは…
グローバルでの事業活動の「統合」
マルチナショナルな各国環境への「適応」
インターナショナルな「知識の創造と共有」
この3つを同時達成した状態を「トランスナショ
ナル経営」と定義し、それを国際経営のゴール
とした。

3. 言葉の意味を考えると、
理解しやすい
• International
• Multinational
• Global
• Transnational
3

4. Bartlett and Ghoshalの議論枠組み
4
グローバル・アプローチ
世界の事業活動を強く「統合」
日本企業に特徴的な国際化
日本企業、米国企業、欧州企業の国際化戦略にはそれぞれの特徴・強みがあることを
発見。それら3地域の強みをすべて身に付けた姿こそが、国境の縛りを超えた「トラン
ス」ナショナル経営であるとした。
マルチナショナル・アプローチ
各国別に高度な「適応」
欧州企業に特徴的な国際化
インターナショナル・アプローチ
「知識の創発と共有」を重視する
米国企業に特徴的な国際化
トランスナショナル・
アプローチ
「統合」「適応」
「知識創造と共有」の
同時達成！

5. グローバル統合
Global ＝ All over the world
“世界はひとつ”

6. グローバル・アプローチ
事業活動を世界レベルで「統合」する
global ＝ 地球全体の
世界を1つとみる思想が背景にある言葉
世界市場を同質的な市場と（あえて）
みなし、事業を世界レベルで標準化する。
各国市場への高度な適応を犠牲にするか
わりに、効率性を徹底して高める。
1990年代までの日本企業に広く見られた
国際展開の手法で、近年では欧州・VWグ
ループがこの戦略でシェアを伸ばしている
企画・開発
ドイツ
生産
北米
生産
中国
生産
欧州
標準化された
クローン工場を
世界展開
各国で同じ
車種を展開
欧州
市場
中国
市場
北米
市場

7. マルチナショナル適応
Multi-national
“みんなちがって、みんないい”

8. マルチナショナル・アプローチ
各国別に高度に適応する
multinational ＝ 多国籍の
様々な国籍を有する、という点が
強調される
各国市場をそれぞれに異なったものと
考え、事業を各国別に適応させる。
効率性は下がるが、各国ニーズに合致し
た製品戦略が展開できる。
1990年代までの欧州企業に広く見られた
国際展開の手法。近年のトヨタ自動車の
戦略がこれに近い
企画・開発
北米＆日本
生産
北米
日本に開発コアを
置きつつ、各地で企
画・製品戦略立案
生産を現地化し、
各国の需要変
動に対応
欧州
市場
日本
市場
北米
市場
企画・開発
日本
企画・開発
欧州＆日本
生産
日本
生産
欧州
各国ニーズに
合致した製品

9. インターナショナル移転
International
“国境を超える”

10. インターナショナル・アプローチ
国境を超えた知識の移転
international ＝ 国際的な
国境を「越える」という点が
強調される
インターナショナル・アプローチでは市場戦略より
も拠点間の知識移転が強調される。各国で固有に
培われた知識を拠点間で共有し、全社としての競
争力を高めていく。
かつて米国の技術が世界で突出していた時代、米
国企業の国際化の発想はこの「知識の海外移転」
であった。
ルノー・日産の資本提携関係はこの「相互知識移
転」に焦点が置かれたもの。
欧州
市場
日本
市場
日本事業
日産
欧州事業
ルノー
経営・マーケ
ノウハウ
生産技術
製品技術

11. 統合・適応・知識創造と共有の同時達成
は、非常に難しい：3つは相反し合う
グローバル統合 マルチナショナル適応
インターナショナルな
知識創造と共有
適応標準化
既存知識活用
新知識探索

12. トランスナショナル経営へ
どのようなアプローチが
あり得るか？
trans-national
“国の違いの、その先へ”

13. 統合と適応の同時達成①
バックヤード統合、フロントエンド適応
組織設計による統合・適応の同時達成策。生産や流通、調達など効率化の効果が出
やすい部分を統合し、マーケティング・販売・研究開発といった各国市場対応や各国の
技術水準の違いを活かしたほうがよい部分を適応とする。レノボの国際化はこの形をと
る（参考・毛譚睿，2014「レノボの海外マルチプルM&Aとその手法に関する研究」）
生産、物流、調達、管理システム
中国
製品企画
マーケティング
営業販売
北米
製品企画
マーケティング
営業販売
（旧IBM）
日本
製品企画
マーケティング
営業販売
欧州
製品企画
マーケティング
営業販売

14. 統合と適応の同時達成①
プラットフォーム共通化戦略
製品戦略による統合・適応の同時達成策。
製品の基本設計あるいはコア部分を標準化しつ
つ、外観や各種仕様を各国対応とする
ダイキンのプラットフォーム共通
化策：エアコンのコア部品である
コンプレッサーはグローバルで4-
5機種。これを各国別の100を超
えるモデルに共通利用する。
日本 欧州 中国

15. 知識の活用と探索のバランス
本社機能
シンガポール
「新たな知識を生み出す領域」と、「知識を活用する領域」を世界的に使い分ける
HDD業界でトップシェア
研究開発
北米
知識を獲得する
生産
マレーシア、中国
知識を使う
情報システムにより
リアルタイムで情報共有