大阪大学大学院経済学研究科
中川功一
Allegro_assai@hotmail.com
国際経営
(5)
海外子会社のマネジメント
海外子会社のマネジメント
結局のところ、海外子会社が現地でうまく行動できるか
どうかに、国際経営の成否が懸かっている。
本国
親会社
海外
子会社
海外
子会社
海外
子会社
企業グループ全体の
組織設計と戦略
講義(3)多国籍企業の組織設計
講義(4)トランスナショナル経営
国際経営の“現場”=海外子会
社のマネジメント
講義(5)海外子会社マネジメント
※もう一つのトピックとして、本国親会社
はどうあるべきか、という論点もある
海外子会社の基本的な見方
自社が過半数以上の株式を保有している=自社が経営支配をしている海外法
人。自社の海外出先機関=国際経営を実際に担う“現場”。
本国親会社と現地事業環境の2つの板挟みとなることが、海外子会社
特有の困難性を生じさせている。このため、海外子会社は基本的に現
地企業に対しハンディキャップを負っている(有名な外資の大企業だか
ら強い、という思い込みを捨てることが大切)。
だからこそ、親と子の二人三脚構造を強みにするマネジメント上の工夫
が必要となる。
本国
親会社
海外
子会社
現地
事業環境
海外子会社はハンディを負った存在
①多国籍企業内部の要求と現地事業環境の要求
による板挟み
②意思決定を親会社と子会社で分担することの
難しさ
海外子会社の設立方法①
M&A or グリーンフィールド
M&A グリーンフィールド
既存の現地企業を買
収する
自ら新たに海外子会社を
立ち上げる
事業展開
スピード
即戦力なのですぐに
事業が立ち上がる
時間をかけて育てるので
ゆっくり立ち上がる
現地参入コス
ト
初期買収費用が発生
するが、資源が揃って
いる分長期的には安
い
初期費用は小さいが、0
から作るため長期的には
高い
現地適応 現地に一定程度適応
している。
初期時点ではしていない
本国との
統合
悪い組織文化があっ
たり、組織融合が困難
となる可能性
本国組織との連携・調整
を採りやすい
海外子会社の設立②
出資比率:単独出資か、JVか
出資比率
<50% >50% 100%
自社の海外子会社とは
みなさない
自社の海外子会社である
意思決定権弱い 意思決定権強い 単独で意思決定
コスト・リスク・リターン小さい 大きい
利用可能資源の質豊富で多様 自社のみ
株主間の利害対立可能性高い なし
海外子会社の設立③子会社のタイプ
製造拠点
販売拠点
研究開発拠点
管理・投資拠点
ひとつの法人が複数の機能
を併せ持つことも多い
泌尿器領域・免疫抑制剤を主力とする、連結
1兆円を超える国内2位の巨大医薬品企業
海外子会社を
どうコントロールするか
海外子会社のマネジメント
分権構造と、社会化
集権化・分権化による
コントロールの設計
組織文化や価値観による
コントロールの設計
集権化と分権化:官僚的コントロール設計
本国
海外A 海外B
集権化:本国に権力集中。一切の調整を本国が担う。
メリット
管理が行き届きやすい
世界で首尾一貫した経営ができる
デメリット
本国の業務負荷が高くなる
各国現地状況が把握できず適切な対応が取れない
海外拠点が成長しにくい
本国
海外A 海外B
分権化:海外拠点に権力分散
メリット
本国業務負荷は小さくなる
現地で細かな対応を取りやすい
海外拠点が成長しやすい
デメリット
海外拠点への統制が行き届きにくくなる
世界戦略に一貫性が取りづらい
社会化コントロール設計
社会化コントロール
本国能力の移転
現地での創意工夫
+
-
社会化とは、組織の文化や価値観
の受容度を高めること。
海外子会社の社会化が進めば、本
国側が命令せずとも本国流の考え
方で行動・調整しあう。
また、本国拠点の事業活動に対す
る理解が進み、能力移転も進む。
ただし、本国流のやり方に縛られ、
現地での創意工夫が発生しづらく
なるというデメリットもある。
自社固有の
行動ルールの形成
+
世界32か国で毎日3200万本が消
費されるヤクルトは、世界各国で
ヤクルトとシロタ株の理念・価値感
教育をヤクルトレディに徹底的に
施す。それによって、緻密な支持
を出さずとも、自ずとヤクルト流の
行動を取るようになる。
調整のポイント
権力構造と社会化をうまく組み合わせる
調整の手段としての権力構造設計と社会化設計は相互補完的で
あり、狙った拠点間連携関係を作り出すため、2つを組み合わせて
用いるべきである。
社会化の程度
高い 低い
集権化の程度 高い 本国流のものの考え方を
全社で共有しており、か
つ本国が全社を強くコント
ロールする
本国が重要な意思決定に
は指示を出すが、各国流の
ものの考え方で行動し、現
地事情に合わせる
低い 共通の価値観のもとに行
動するが、各国拠点が自
由に判断を行う
各国拠点がきわめて自由
に判断し、行動する
視点は
「育成」へ
海外子会社の育成
現地の戦略的重要性に対し
て、子会社の能力が不十分
であるなら、親会社が提供す
る資源を消耗するだけの「ブ
ラックホール」と化す。
子会社の能力が高ければ
「貢献者」や「戦略的リー
ダー」として国際経営に貢献
する。
出所:Bartlett and Ghoshal, 1989.
海外子会社育成の4要素
親会社による適切な役
割・目標設定
親会社による経営資源
の提供
子会社への
権限移譲
現地の適度な競争圧力
海外子会社の
能力構築・
役割進化
原則として「手厚い支援」
は拠点能力構築に有効
意思決定は子会社が行う 厳しすぎず、甘すぎないこと
現地状況に応じた役割の
設定・再設定
=親会社による状況把握
の適切さが大切
日本コカ・コーラの能力構築
~1975
移転された商品を
若干改良して販売
反コカ・コーラ運動コカ・コーラの現地
普及
親会社による役割付与 現地環境 子会社の行動
缶コーヒー「ジョージア」
リアルゴールド
アクエリアス
など独自開発
業績不振
日本社会との融和
現地権限移譲
炭酸飲料ニーズ減少1975~1991
売上急速拡大
茶系飲料の独自開発
アジア圏展開用製品の
開発
グローバルリー
ダーとして市場牽引
アジア圏独自のニー
ズが発達
1992~
他国向けビジネスも開始

「国際経営」5