低空飛行の地方公共交通に救いはあるか?
空を飛ぶ前に考えること
東京大学 生産技術研究所
伊藤昌毅
空飛ぶ車✕自動運転✕自動車学校
〜目前に迫るエアモビリティ前提社会に向けて新たな交通秩序を共創する〜
2020年1月27日
慶應義塾大学 三田キャンパス 北館ホール
伊藤 昌毅 (Twitter @niyalist)
• 東京大学 生産技術研究所 特任講師
– ユビキタスコンピューティング
– 地理情報システム技術
– ヒューマン・コンピュータ・インタラクション
• 経歴
– 静岡県掛川市出身
– 2008-2010 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
特別研究助教
– 2010-2013 鳥取大学 大学院工学研究科 助教
– 2013-2019 東京大学 生産技術研究所 助教
– 2019- 現職
• 委員など
– くらしの足をみんなで考える全国フォーラム 実行委員
– 国土交通省 バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会
座長
– 国土交通省 公共交通分野におけるオープンデータ推進に関
する検討会 委員
– 経済産業省 官民データの相互運用性実現に向けた検討会
座長
• 標準フォーマット関連
– バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会 座長(H28年度)
– 標準的なバス情報フォーマット利活用検討会 座長(H29年度)
– バス情報の静的・動的データ利活用検討会 座長(H30年度)
• オープンデータ関連
– 公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会 委員(H29年度-R1年度)
• MaaS関連
– 都市と地方における新たなモビリティサービスのあり方懇談会 委員(H30年度)
– 新モビリティサービス推進事業有識者委員会 委員(R1年度)
• 交通政策審議会
– 交通政策基本計画小委員会 委員(R1年度-)
伊藤×国土交通省
• オープンデータ関連
– 官民データの相互運用性実現に向けた検討会 座長(H29年度)
– 情報共有基盤 利用促進ワーキンググループ 委員(H30年度)
伊藤×経済産業省
• 沖縄観光2次交通の利便性向上に向けた検討委員会 座長(H30
年度-R1年度)
• 群馬県バスロケーションシステム実証実験 アドバイザー(R1
年度)
• その他自治体主催のイベントでの講演多数
– 静岡県掛川市、石川県能美市、群馬県、島根県安来市、沖縄県、富山県、岐阜県、
北海道など
伊藤×地方自治体
2019年4月29日号 2019年7月30日号2018年9月号2018年3月5日号
モビリティは100年に一度の大変革の時代
それはITがドライブしている
6
• C: Connected
– 通信・ネットワーク化
• A: Autonomous
– 自動運転
• S: Shared and Service
– サービス化
• E: Electric
– 電動化
• 2016年にダイムラーが提唱・一企業に留まらない自動車産業の方向性を示
すキーワードとなる
CASE: 自動車産業が見据えている方向性
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4200103004032019000000?page=2
MaaS
都市・社会におけるモビリティのあり方の方向性
• ドア・ツー・ドアの移動に対し、 様々な移動手法・サービスを組み合わ
せて1つの移動サービスとして捉えるものであり、ワンストップでシーム
レスな移動が可能となる。
• 加えて、様々な移動手段・サービスの個々のサービス自体と価格を統合
して、 一つのサービスとしてプライシングすることにより、いわば「統
合一貫サービス」 を新たに生み出すものであり、価格面における利便性
の向上により利用者の移動行動に変化をもたらし、移動需要・交通流の
マネジメント、さらには、供給の効率化も期待できる。
• 小売・飲食等の商業、宿泊・観光、物流などあらゆるサービス分野との
連携や、医療、福祉、教育、一般行政サービスとの連携により、移動手
段・サービスの高付加価値化、より一層の需要の拡大も期待できる。
MaaSとは?
(国交省 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会中間とりまとめより)
Whim by MaaS Global
• ヘルシンキ(フィンランド)でMaaSを実現
• Whim というアプリを通して鉄道、バス、タ
クシー、自転車などの組み合わせ検索や予約決
済を実現
https://time-space.kddi.com/digicul-column/world/20161209/1772
Whimのプラン: 料金により交通行動を誘導
• xx
Whimの利用
https://note.mu/kakudosuzuki/n/n01c8ab0f9b84
「全ての交通サービスが自分の
ポケットの中にある」
という、
今までに感じたことのない
異次元の感覚
By 牧村和彦氏(計量計画研究所)
あらためてMaaSとは?
• 移動の「所有から利用へ」を突き詰めたサービス
• ひとつのインタフェースから様々な交通手段を一貫して利用可能
に
– 「検索」「選択」「予約」「支払い」「チケット」などを総合的に扱うアプリ
– 統一的で利用しやすい料金制度
• 出発地から目的地まで、交通サービスを一人一人の利用者のため
に仕立てて提供
徒歩
鉄道 カーシェアリング
バス
タクシー
シェアサイクル
• 審議会などで議論された政策に基づきインフラ整備
– 長期的な視点で大規模、総合的に検討され後戻りは想定しない
• モビリティの形態ごとに事業が成り立ち制度が作られる
– 法律、習慣、企業、組織などとして固定化されがち
• IT・アプリは業務効率化や利便性向上、交通の本質ではない
これまで:「計画」の時代の交通
自家
用車
バス
タク
シー
電車
路面
電車
道路線路
線路
レンタ
カー
アプリアプリアプリアプリアプリ
制度・政策
重厚長大
軽薄短小
22
伊藤・ 交通政策基本計画
小委員会資料より
• ユーザから伝わる絶え間ない圧力に応えながら進化
• 出発点はユーザの移動需要や実績、評価
– アプリを通じてその場その時のユーザデータがリアルタイムにフィードバック
これから: ユーザ主導のITサービスとしての交通
自家
用車
バス
タク
シー
電車
路面
電車
レンタ
カー
道路・線路
制度・政策
変化の圧力
アプリ・サービス
ユーザ 23
• GAFAに匹敵する強大なプ
ラットフォーマーが出る説
世界はMaaSの覇権競争?
• 覇権は無理、複数プラット
フォーマーが共存する説
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00150/00002/https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/112900306/
• 各自動車会社が持つモビリ
ティ事業を統合
– Car2Go, Moovel、 ParkNowな
ど
• 統合的なモビリティサービ
スプロバイダを目指す
ダイムラー・BMWの
連携
https://note.mu/niyalist/n/nd34413e79ac3
• Toyota and Softbank
ああ
Stockholder of
Uber (US), DiDi (China),
Grab Taxi (Singapore),
Ola (India)
MONET設立
モビリティの統合と覇権争いが
ITを軸に進んでいる
• 公共交通の一層の統合
• あたらしいモビリティに対する期待
• 地域公共交通の維持・発展
• 自動車産業の次の方向性
日本におけるMaaSへの期待
• すごい未来の技術を作ってゲームチェンジを図る
– 全ての課題を一気に解決するような何か
– 人、産業構造、ルールなど大きく変わっていく
– 硬直した社会状況の中での根拠のない待望論が怖い
• 今ある技術や現場をアップデートしていく
– かつてはこれが機能していたのではないか?
– 「失われたX0年」の間に、何もせず切り詰めることが最善手に
• 成熟した社会においては、後者のダイナミズムを取り戻すことも
大事
アプローチ
• MaaSをテーマにした懇親会
• 委員
– 石田東生 筑波大学特命教授 (座長)
– 伊藤昌毅 東京大学生産技術研究所助教
– 鎌田実 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
– 川端由美 自動車ジャーナリスト、株式会社ローラン
ド・ベルガー
– 須田義大 東京大学生産技術研究所教授
– 高原勇 筑波大学未来社会工学開発研究センター長
– 森本章倫 早稲田大学社会環境工学科教授
– 矢野裕児 流通経済大学流通情報学部教授
– 吉田樹 福島大学経済経営学類准教授
• 2019年3月に中間とりまとめ公表
国交省 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000089.html
• 大都市型
– 日常的な渋滞や混雑
• 大都市近郊型
– 郊外の通勤エリア
– ファースト・ラストマイルの交通の不足
• 地方都市型
– 公共交通の利便性・採算性が低下気味
• 地方郊外・過疎地型
– 自家用車への依存
– 地域交通の衰退
• 観光地型
– 観光向け二次交通の不足
– インバウンド増加
地域類型による実現シナリオ
• 国内で検討されている上記のようなモビリティを推進し、地域の
モビリティ確保などを実現
• 欧米で研究開発されているデマンド交通は俎上に上がらず?
新型輸送サービスの推進
• 民営の営利事業としての経営
• 複数事業者で同一エリアで競争
• 鉄道・バス・タクシーがそれぞれ別会社
日本の公共交通の特徴
https://www.mlit.go.jp/common/001190066.pdf
37
そびえたつバス停ポール群
めぐりん・両備グループ・宇野(別名) 岡電と両備
• 岡山では新規参入の妥
当性をめぐってストや
法廷闘争も
競争前提の地域公共
交通運営
https://toyokeizai.net/articles/-/213178
http://www.mlit.go.jp/common/001125652.pdf
増加する交通事業者
• 複数の交通事業者を一体運用し統一的な公共交通サービスを実現する組織
– 交通事業者、自治体などが主導し結成される
• 公費を投入しての運営が前提、運賃収入は半分以下
• ドイツ、フランスなどで導入が進む
– 1965年にドイツ ハンブルグで始まる
• 運輸連合の役割(例)
– 統一的な運賃システムの構築と販売のマネジメント
– 事業者間での運賃調整
– 地方自治体や事業者との契約に関するマネジメント
– ローカル線の維持管理と品質管理
– 旅客輸送の計画策定
– マーケティングと乗客への情報提供
ヨーロッパなどでは運輸連合を形成
https://www.itej.or.jp/assets/seika/jijyou/201209_00.pdf
運輸連合の概要と日本への示唆 −ドイツ・ベルリンを例に−(渡邉亮) 参照
• 地域公共交通活性化再生法(2007年
制定)により、行政が主導して地域
公共交通を計画、実現する枠組みが
明確化。
• 特徴(伊藤の理解)
– 地域のことは地域(事業者、住民、行政な
ど)で
– 全体をネットワークで考える
– やる気のある地域を金や制度でサポート
– まちづくりとの連携
行政の役割の高まり
• 市町村が主体となり、地域の交通事業者や利用者などを集めた
協議会を開催できる
地域公共交通会議など
出展: 中部運輸局愛知運輸支局
「地域公共交通会議等運営マニュアル」
http://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/hrt54/com_policy/pdf/H29startup-koutuukikaku1.pdf
伊藤の仕事:
公共交通オープンデータの推進
• 標準化
– データ取り扱いのコスト削減
– 新しい技術開発を促進
• オープン化
– 地域公共交通に関わる誰でも使えるように
– 新しいプレイヤーの参入を促進
データ整備の2本柱
バス情報の効率的な収集・共有に向けた
検討会(2016年12月〜2017年3月)
• 事務局: 総合政策局公共交通政策部交通計画課
• 外部委員
– 伊藤昌毅 東京大学生産技術研究所(座長)
– ー川雄一 株式会社構造計画研究所
– 伊藤浩之 公共交通利用促進ネットワーク
– 井上佳国 ジョルダン株式会社
– 遠藤治男 日本バス協会
– 櫻井浩司 株式会社駅探
– 篠原雄大 株式会社ナビタイムジャパン
– 丹賀浩太郎 株式会社工房
– 別所正博 公共交通オープンデータ協議会
– 山本直樹 株式会社ヴァル研究所
2017年3月31日
「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」公開
世界で使われるGTFS形式を拡張して制定
• 世界で広く使われる形式
• 乗換案内に必要な情報(バス停・駅+路線+時刻表+運賃)をまとめて格納
したファイル形式
バス停/駅+路線 時刻 運賃
63
• 自治体、運輸局、事業者と連携してGTFS-JPの整備の呼び掛け、技術協力
– バス事業者が周辺の事業者のデジタル化を啓蒙・指南する「バス芸人」が全国で誕生
• 「その筋屋」「西沢ツール」「見える化フォーマット」等のITツールを開発、
配布
– 中小事業者の業務のデジタル化を支援するとともに、IT企業に対し方向性を示す
• IT事業者、研究者などへのデータ活用アピール
• イベントの開催や関係者の交流の促進
• フォーマット仕様のアップデートや国際連携
「標準的なバス情報フォーマット広め隊」として
公共交通のオープンイノベーションを開拓中
2018年3月:7事業者
石川県能美市「のみバス」
2017年1月からGTFS形式でオープン
データ公開。Google Mapsから検索
も可能に。
福岡県新宮町
2016年末からGTFS形式でバス、
渡船のデータ整備。Google
Mapsから検索を可能に。
山梨県
主要2事業者(山梨交通、富
士急行)及び一部のコミュニ
ティバスデータを2017年2月
よりGTFS形式で公開。
静岡県島田市・焼津市
OpenTrans.itによって2016年から
GTFS形式でデータ公開。Google
Mapsから検索も可能に。
宇野バス(岡山)
フリーのダイヤ編成システム「その筋屋」を
利用し、GTFSデータとGTFS Realtimeデータ
を公開。Google Mapsからリアルタイム位
置を加味した検索が可能に。
北海道室蘭市
独自形式で公開していたオープンデー
タをCode forがGTFS化、公式にも反映。
2018年7月:23事業者
2018年11月:30事業者
2019年2月:90事業者
2019年7月:126事業者
2020年1月:176事業者
69
• GoogleはGTFS形式によるオープン
データを推奨
– ほぼ選り好みせずデータを掲載
– 検索の統計情報も公開
• 乗換案内に掲載されていない自治
体やバス事業者が利用促進のため
にデータ整備
• 訪日外国人が利用するのはGoogle
Maps
Google Mapsに載るから
国内の乗換案内事業者もデータを採用
• オープンデータ化されたバスデータを経路探索に採用
https://ekiworld.net/personal/app/spec/info.html?style=pc
• ツールの開発が進む
• 各地で勉強会を実施
• 運輸局が独自にマニュアル作成
自分でも出来そうだから
• 佐賀、富山、群馬、沖縄
• その他にも続々と・・・
県が推進するから
今後に向けた取り組み
ワンソース・マルチユース
• データを使った様々なアプリ開発や
交通分析が実現
• データ分析やアプリ開発によって公
共交通の利便性が向上
公共交通
オープンデータ
乗り換え案内 マイ路線図・マイ時刻表
交通分析
service_id 平日
route_name 250号線 [3102](片上→岡山駅)
行ラベル 計画 最小 中央値最大
06:52 83 92 102 106
08:40 78 78 83 90
10:35 76 76 80 84
15:11 75 79 81 88
17:05 85 87 98 111
総計 79.4 82 89 96
0
20
40
60
80
100
120 06:52
08:40
10:35
15:11
17:05
計画 最小
中央値 最大
• 現在は時刻表ベースの乗換案内
乗換案内: リアルタイム交通メディアへ
• デジタルサイネージへの採用が具体的に進行中
デジタルサイネージでスマホに閉じない案内
• 業務そのものをデジタル化し
て楽に
– ダイヤ改正、仕業編成、バス停向け
時刻表作成、運賃改正、届出書類作
成・・・・・・
– ダイヤデータ、営業データ、車両
データ、労務データなどを一元管理
• 結果的に最新のデータが常に
作成出来る体制
バス事業者: 業務のデジタル化で継続的データ整備
• 2019年現在、交通事業者と国交省(運輸局)とのやり取りは
紙とハンコ
• ファイルされた紙は死蔵され政策立案に活かせず
• 交通事業者にデジタル化のインセンティブ無し
交通行政: 届出のデジタル化と活用へ
オープンデータによる交通分析
Web記事化してノウハウ共有
https://qiita.com/niyalist/items/1d3941761df3969f16a2
• 企業、大学、自治体、交通事業者などが垣根を越えてアイディ
アや技術を持ち寄り交通を良くしていくイメージ
– 良いアイディアから実現までの距離を短く
– MaaSに関しても全ての構成技術は国内にあるのに繋がらない現状
• IT人材、IT企業にとって交通を魅力的な業界に
– オープンデータでIT人材の挑戦を呼び込む
– 交通分野に投資を呼び込み事業に繋げてもらう
• 災害時にも活きるしなやかさ
– 全てを予見し準備は出来ない。多様な居住地、技術、発想などを持つ人と緩やか
な協力関係を持っていることの方が強い
本物のオープンイノベーションを目指そう
82
• a
市民発のアプリ・ノウハウも登場
GTFSリアルタイム表示 開発ノウハウ提供
https://qiita.com/hiroshi_toyoshima/items/ecac6d074390544b6e9ehttp://gtfs.boo.jp/
• 概要:
– 2018年10月13日(土)、岡山市にて、参加者約20名
• 実習内容:
– アプリ開発(講師: 伊藤昌毅) Node.jsでWebアプリ
– データ分析(講師: 太田恒平) QGISで路線図作成
公共交通オープンデータ技術実習
〜はじめよう!GTFSを使ったアプリ開発とデータ分析〜
• モビリティが自国技術でまかなえない時代が到来
– ドローン・MaaS・GAFA
• 「官か民か」「国内市場で競争」など言っていられる時代は終
わった
• 身の丈に合った意志決定や行動力のある国にするために
衰退途上国の中でモビリティの未来を作るために
交通: 地味で地道な仕事
国や地域の土台がなくては成り立たない
しっかりと地域や制度と向き合い、
一緒に未来を作りましょう

低空飛行の地方公共交通に救いはあるか? 空を飛ぶ前に考えること