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2×2行列𝐴2
= 0の共役
整数要素からなる2×2行列AについてA^2=0を満たすものの集合を考える。
行列Aと、整数要素からなり逆行列の存在する行列Tに
よって計算される𝑇𝐴𝑇−1は同じFamilyだとする。すべてのFamilyは
𝐹 =
0 1
0 0
としたとき、𝜆𝐹(𝜆は整数)によってdisjointなFamilyに分割できる。
𝐴 =
𝑎 𝑏
𝑐 𝑑
とする。ケーリーハミルトンの定理より
A2 − tr A A + det A E = 0
⇔ det 𝐴 𝐸 = 𝑡𝑟 𝐴 𝐸
ここで、𝐴が𝐸の定数倍だとすると、𝐴2 = 0に反するので、
det 𝐴 = 0 ∧ tr A = 0
が成立する。よって、
𝐴 =
𝑎 𝑏
𝑐 −𝑎
とできて、 𝑎2
+ 𝑏𝑐 = 0となる。
𝐴 =
𝑎 𝑏
𝑐 −𝑎
とできて、 𝑎2 + 𝑏𝑐 = 0となる。ここからbc|𝑎2である。gcd 𝑎, 𝑏, 𝑐 = 1
とする。gcd 𝑎, 𝑏 = 𝑚 ∧ gcd 𝑎, 𝑐 = 𝑛とすると、𝑚, 𝑛は互いに素な整
数。 gcd a, b, c = 1に注意すると、 a = mn ∧ 𝑏 = 𝑚2 ∧ 𝑐 = −𝑛2とで
きる。(ただし±1の定数倍は無視して、b>0なるもののみを扱う)。
このとき、
𝐴 = 𝑚𝑛 𝑚2
−𝑛2 −𝑚𝑛
gcd(𝑎, 𝑏, 𝑐) = 𝜆とすると、
𝐴 = 𝜆 𝑚𝑛 𝑚2
−𝑛2 −𝑚𝑛
このとき、確かに𝐴2
= 0となっている。
𝐴 = 𝜆 𝑚𝑛 𝑚2
−𝑛2 −𝑚𝑛
⇔ 𝐴 = 𝜆
𝑚
−𝑛
𝑛 𝑚
𝑢 𝑣
𝑛 𝑚
𝑚
−𝑛
𝑛 𝑚
𝑢 𝑣
𝑛 𝑚
−1
𝑢, 𝑣は𝑢𝑚 − 𝑣𝑛 = 1を満たす整数
=
𝑢 𝑣
𝑚 𝑛
𝑚
−𝑛
𝑛 𝑚
𝑚 −𝑣
−𝑛 𝑢
=
1
0
0 1
=
0 1
0 0
これよりAはλFで表される行列と同じFamilyであることが分かった。最
後にこれらのFamilyがdisjointであることを示す。
𝜆𝑇𝐹𝑇−1 = 𝜆′ 𝑇′𝐹𝑇′−1
⇔ 𝜆𝑇′−1 𝑇𝐹 = 𝜆′ 𝐹𝑇′−1 𝑇
⇔ 𝜆
0 𝑎
0 𝑐
= 𝜆′
𝑐 𝑑
0 0
ここで、𝑇′−1
𝑇 =
𝑎 𝑏
𝑐 𝑑
とした。上式の等号の成立から、 c = 0かつ
𝜆𝑎 = 𝜆′ 𝑑
を得る。逆行列の存在から、
𝑎𝑑 = 1
(𝑎 = 1 ∧ 𝑑 = 1) ∨ (a = −1 ∧ 𝑑 = −1)
これより、λ=λ’となりこの表示はdisjointであることが分かった。

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