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単位行列をIとする。n次の直交行列(tAA=AtA=Iとなる各成分が実数のn次正方行列A)となり行列式の値が1であるもの全体をSO(n)と書
く。
(1)SO(2)の任意の元は
𝑐𝑜𝑠𝜃 −𝑠𝑖𝑛𝜃
𝑠𝑖𝑛𝜃 𝑐𝑜𝑠𝜃
と表されることを示せ。
証明 T=
𝑎 𝑏
𝑐 𝑑
と置いてtTT=TtT=I detT=1から-1≦a,b,c,d≦1 𝑎2
+ 𝑐2
= 1 𝑏2
+ 𝑑2
= 1を示す。
(2)A∈SO(3)で成分に0となるものが1つもないものを具体的に上げよ。
計算 3次元の正規直交基底を3つ持ってきて各列に並べれば良い。
(3)SO(3)の任意の元Aの固有値の絶対値は1であることを示せ。さらに固有値の少なくても1つは1であることを証明せよ。
証明 Aの固有値をλ その固有値をx0とすると
Ax0=λx0
Aの成分もx0の成分も共に実数なのでAx0= 𝜆x0
t(Ax0)Ax0=t(λx)(𝜆𝑥0)
tx0tAAx0= 𝜆λtx0x0
Tx0x0=|λ 2
tx0x0 よって固有値の絶対値は1である。
また1=det(A)=λ1λ2λ3 行列式の関係から少なくても2つの固有値は共役である。
よって1= 𝜆λλi =λi よってよって少なくても1つの固有値は1である。
(4)行列A,B∈SO(3)が固有値1に対する固有ベクトルを共有しているならばAB=BAを満たすことを証明せよ。
証明 A,Bは固有値1に対する固有ベクトルを共有しているのでAx=x Bx=x
ABx=A(Bx)=Ax=x Abx=B(Ax)=Bx=x AB=BA
(5)逆にA,B∈SO(3)がAB=BAならば固有値1に対する固有ベクトルを共有しているか?正しければ証明し、誤りであれば反例を上げよ。
反例
A=
1 0 0
0 −1 0
0 0 −1
B =
−1 0 0
0 −1 0
0 0 1
とするとAB=BA=
−1 0 0
0 1 0
0 0 −1
AB=BAの行列と(4)の途中式からABx=x=Ax=BxになるはずだからAの固有ベクトルはt(x,0,0) Bの固有ベクトルはt(0,0,x)になるはずで
あり、よってx=0となってしまう。

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