SlideShare a Scribd company logo
1 of 14
Download to read offline
共変ベクトルと反変ベクトル
反変ベクトル
位置の微小変化(dx、dy、dz)を別の座標系の微小変化(dx’,dy’,dz’)
に変換する。
𝑑𝑥′ =
𝜕𝑥′
𝜕𝑥
𝑑𝑥 +
𝜕𝑥′
𝜕𝑦
𝑑𝑦 +
𝜕𝑥′
𝜕𝑧
𝑑𝑧
𝑑𝑦′ =
𝜕𝑦′
𝜕𝑥
𝑑𝑥 +
𝜕𝑦′
𝜕𝑦
𝑑𝑦 +
𝜕𝑦′
𝜕𝑧
𝑑𝑧
𝑑𝑧′ =
𝜕𝑧′
𝜕𝑥
𝑑𝑥 +
𝜕𝑧′
𝜕𝑦
𝑑𝑦 +
𝜕𝑧′
𝜕𝑧
𝑑𝑧
x‘、y’、z‘がx、y、zの関数である場合、上のように書ける。
このような変換規則に従う時(dx、dy、dz)を反変ベクトルという。
反変ベクトルの例
𝑥′ = 𝐴𝑥 + 𝐵𝑦 + 𝐶𝑧
𝑦′
= 𝐷𝑥 + 𝐸𝑦 + 𝐹𝑧
𝑧′ = 𝐺𝑥 + 𝐻𝑦 + 𝐼𝑧
が反変ベクトルの一例になっている。実際、
𝑑𝑥′
= 𝐴𝑑𝑥 + 𝐵𝑑𝑦 + 𝐶𝑑𝑧
𝑑𝑦′
= 𝐷𝑑𝑥 + 𝐸𝑑𝑦 + 𝐹𝑑𝑧
𝑑𝑧′
= 𝐺𝑑𝑥 + 𝐻𝑑𝑦 + 𝐼𝑑𝑧
で、この係数は反変ベクトルの計算ルールと合致する。
計量
• ある座標系の2点(x、y)、(x+dx、y+dy)間の距離dsは
𝑑𝑠 2 = 𝑑𝑥 2 + 𝑑𝑦 2
という関係にある。別の座標系(x‘、y’)でこの2点を表して、その間の
距離を求めてもdsと等しい。直交座標系とは限らない(つまりd 𝑥 ⋅
𝑑 𝑦 = 0となるとは限らない)ことに注意すると、
𝑑𝑠 2
= 𝐴𝑑𝑥′2
+ 𝐵𝑑𝑥′
𝑑𝑦′
+ 𝐶𝑑𝑦′2
と出来る。ここで、行列
𝐴
𝐵
2
𝐵
2
𝐶
を計量と呼ぶことにする。
極座標における計量
𝑑 𝑠 = 𝑑𝑟 e 𝑟 + 𝑟 𝑑𝜃 𝑒 𝜃
⇒ 𝑑𝑠2 = 𝑑𝑟2 + 𝑟2 𝑑2 𝜃
よって計量は
1 0
0 𝑟2 となる。計量は定数とは限らず空間の各点で異
なる値を取りうることに注意する。
スカラー量
座標変換によって変化しない量をスカラー量と呼ぶ。
共変ベクトル
𝑥, 𝑦, 𝑧 → (𝑥′, 𝑦′, 𝑧′)と座標変換したとき、次の変換則に従うベクトル
(𝑞 𝑥, 𝑞 𝑦, 𝑞 𝑧)を共変ベクトルと呼ぶ。
𝑞 𝑥
′ =
𝜕𝑥
𝜕𝑥′
𝑞 𝑥 +
𝜕𝑦
𝜕𝑥′
𝑞 𝑦 +
𝜕𝑧
𝜕𝑥′
𝑞 𝑧
𝑞 𝑦
′ =
𝜕𝑥
𝜕𝑦′
𝑞 𝑥 +
𝜕𝑦
𝜕𝑦′
𝑞 𝑦 +
𝜕𝑧
𝜕𝑦′
𝑞 𝑧
𝑞 𝑧
′ =
𝜕𝑥
𝜕𝑧′
𝑞 𝑥 +
𝜕𝑦
𝜕𝑧′
𝑞 𝑦 +
𝜕𝑧
𝜕𝑧′
𝑞 𝑧
共変ベクトルの例
𝑞 𝑥
′
=
𝜕𝑥
𝜕𝑥′
𝑞 𝑥 +
𝜕𝑦
𝜕𝑥′
𝑞 𝑦 +
𝜕𝑧
𝜕𝑥′
𝑞 𝑧
𝑞 𝑦
′ =
𝜕𝑥
𝜕𝑦′
𝑞 𝑥 +
𝜕𝑦
𝜕𝑦′
𝑞 𝑦 +
𝜕𝑧
𝜕𝑦′
𝑞 𝑧
𝑞 𝑧
′
=
𝜕𝑥
𝜕𝑧′
𝑞 𝑥 +
𝜕𝑦
𝜕𝑧′
𝑞 𝑦 +
𝜕𝑧
𝜕𝑧′
𝑞 𝑧
𝑞 𝑥, 𝑞 𝑦, 𝑞 𝑧 =
𝜕
𝜕𝑥
,
𝜕
𝜕𝑦
,
𝜕
𝜕𝑧
, 𝑞′ 𝑥, 𝑞′ 𝑦, 𝑞′ 𝑧 =
𝜕
𝜕𝑥′
,
𝜕
𝜕𝑦′
,
𝜕
𝜕𝑧′
とすると、上
の変換則を満たす。よって
𝜕
𝜕𝑥′
,
𝜕
𝜕𝑦′
,
𝜕
𝜕𝑧′
は共変ベクトル。
反変ベクトルと共変ベクトルの関係
𝑎を共変ベクトル、𝑏を反変ベクトル、A、Bをその変換を表す行列だとし
て次のように置く。
𝑎′ = 𝐴 𝑎
𝑏′ = 𝐵𝑏
このとき、次の関係にある。
𝐴𝑡
= 𝐵−1
⇔ 𝐵 𝑡 = 𝐴−1
AB^t の成分の一つを計算してみる。(他も同じように計算できる)
𝜕𝑥
𝜕𝑥′
𝜕𝑥′
𝜕𝑥
+
𝜕𝑦
𝜕𝑥′
𝜕𝑥′
𝜕𝑦
+
𝜕𝑧
𝜕𝑥′
𝜕𝑥′
𝜕𝑧
=
𝜕𝑥
𝜕𝑥′
𝜕
𝜕𝑥
+
𝜕𝑦
𝜕𝑥′
𝜕
𝜕𝑦
+
𝜕𝑧
𝜕𝑥′
𝜕
𝜕𝑧
𝑥′
=
𝜕
𝜕𝑥
𝑥
= 1
反変ベクトルと共変ベクトルの内積
𝑎′ 𝑡 𝑏′
= 𝐴𝑎 𝑡 𝐵𝑏
= 𝑎 𝑡 𝐴𝑡 𝐵𝑏
= 𝑎 𝑡 𝑏
つまり、反変ベクトルと共変ベクトルの積はスカラー量である。
反変ベクトルと共変ベクトルの添え字
• 反変ベクトルの添え字は右上
• 共変ベクトルの添え字は右下
アインシュタインの省略
• 反変ベクトルa,共変ベクトルbの変換則は
𝑎′𝑖 =
𝜕𝑥′𝑖
𝜕𝑥 𝑗
𝑎 𝑗
𝑏′𝑖
=
𝜕𝑥′𝑗
𝜕𝑥′𝑖
𝑎 𝑗
偏微分中のxが反変ベクトル表記になっているのはxが反変ベクトル
以上の理由はない?(よく分からない)
また、a,bの内積は
𝑐 = 𝑎 𝑖 𝑏𝑖
共変座標と反変座標の図形的意味

More Related Content

More from M M

電磁テンソルの導出
電磁テンソルの導出電磁テンソルの導出
電磁テンソルの導出M M
 
ネータカレントの導出
ネータカレントの導出ネータカレントの導出
ネータカレントの導出M M
 
自発的対称性の破れと小林益川理論
自発的対称性の破れと小林益川理論自発的対称性の破れと小林益川理論
自発的対称性の破れと小林益川理論M M
 
クォークとレプトン
クォークとレプトンクォークとレプトン
クォークとレプトンM M
 
ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出
ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出
ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出M M
 
剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質
剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質
剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質M M
 
平面内の回転
平面内の回転平面内の回転
平面内の回転M M
 
相対性理論の記法
相対性理論の記法相対性理論の記法
相対性理論の記法M M
 
ラグランジュ形式による場の量子化
ラグランジュ形式による場の量子化ラグランジュ形式による場の量子化
ラグランジュ形式による場の量子化M M
 
四元速度の導入
四元速度の導入四元速度の導入
四元速度の導入M M
 
ローレンツ変換の不変量 世界間隔
ローレンツ変換の不変量 世界間隔ローレンツ変換の不変量 世界間隔
ローレンツ変換の不変量 世界間隔M M
 
時間と空間の対称性
時間と空間の対称性時間と空間の対称性
時間と空間の対称性M M
 
ローレンツ変換の導出
ローレンツ変換の導出ローレンツ変換の導出
ローレンツ変換の導出M M
 
ローレンツ変換と不変量
ローレンツ変換と不変量ローレンツ変換と不変量
ローレンツ変換と不変量M M
 
反変・共変・混合テンソルの定義
反変・共変・混合テンソルの定義反変・共変・混合テンソルの定義
反変・共変・混合テンソルの定義M M
 
点電荷のエネルギーの発散
点電荷のエネルギーの発散点電荷のエネルギーの発散
点電荷のエネルギーの発散M M
 
場の量子論
場の量子論場の量子論
場の量子論M M
 
A^2=0のFamily
A^2=0のFamilyA^2=0のFamily
A^2=0のFamilyM M
 
磁場中のシュレディンガー方程式
磁場中のシュレディンガー方程式磁場中のシュレディンガー方程式
磁場中のシュレディンガー方程式M M
 
ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出
ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出
ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出M M
 

More from M M (20)

電磁テンソルの導出
電磁テンソルの導出電磁テンソルの導出
電磁テンソルの導出
 
ネータカレントの導出
ネータカレントの導出ネータカレントの導出
ネータカレントの導出
 
自発的対称性の破れと小林益川理論
自発的対称性の破れと小林益川理論自発的対称性の破れと小林益川理論
自発的対称性の破れと小林益川理論
 
クォークとレプトン
クォークとレプトンクォークとレプトン
クォークとレプトン
 
ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出
ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出
ナビエストークスの方程式の物理的解釈と導出
 
剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質
剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質
剛体の力学的エネルギーと慣性モーメントの性質
 
平面内の回転
平面内の回転平面内の回転
平面内の回転
 
相対性理論の記法
相対性理論の記法相対性理論の記法
相対性理論の記法
 
ラグランジュ形式による場の量子化
ラグランジュ形式による場の量子化ラグランジュ形式による場の量子化
ラグランジュ形式による場の量子化
 
四元速度の導入
四元速度の導入四元速度の導入
四元速度の導入
 
ローレンツ変換の不変量 世界間隔
ローレンツ変換の不変量 世界間隔ローレンツ変換の不変量 世界間隔
ローレンツ変換の不変量 世界間隔
 
時間と空間の対称性
時間と空間の対称性時間と空間の対称性
時間と空間の対称性
 
ローレンツ変換の導出
ローレンツ変換の導出ローレンツ変換の導出
ローレンツ変換の導出
 
ローレンツ変換と不変量
ローレンツ変換と不変量ローレンツ変換と不変量
ローレンツ変換と不変量
 
反変・共変・混合テンソルの定義
反変・共変・混合テンソルの定義反変・共変・混合テンソルの定義
反変・共変・混合テンソルの定義
 
点電荷のエネルギーの発散
点電荷のエネルギーの発散点電荷のエネルギーの発散
点電荷のエネルギーの発散
 
場の量子論
場の量子論場の量子論
場の量子論
 
A^2=0のFamily
A^2=0のFamilyA^2=0のFamily
A^2=0のFamily
 
磁場中のシュレディンガー方程式
磁場中のシュレディンガー方程式磁場中のシュレディンガー方程式
磁場中のシュレディンガー方程式
 
ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出
ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出
ラグランジアンからニュートンの運動方程式の導出
 

反変ベクトルと共変ベクトル