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次期中学校学習指導要領の改善
に向けて
―メディエーション技能の育成を考えるー
関東甲信越英語教育学会第47回埼玉研究大会(オンライン)
2023年8月26日(土)~27日(日)
新潟大学 増田瑞穂・松沢伸二
本研究の背景(1/5)
 増田・松沢(2022)の研究
• 2012年~2022年に実施された全国公立高等学校入試問題(英語)の中の日本語で
解答を求める問題(英→日メディエーション問題)を調査した。当該問題を出題
している都道府県の割合や問題をタイプ別に分類した。
【研究結果】
• 2022年の高校入試では、25道府県(53%)で当該問題が出題されていた。
• 問題は、受験者が直接日本語を記入する直接的問題(下線部説明・特定部分の内
容説明・概要説明・図表等への日本語挿入)と日本語の選択肢から選ぶ間接的問
題(下線部説明の選択・特定部分の内容説明の選択・単語和訳の選択・図表等の
選択・図表等に挿入する日本語選択)に分けられた。
• 過去10年で英→日メディエーション問題が年々減少していることが分かった。
• 都道府県は、3つのグループ(①毎年当該問題を出題している、②過去10年間一度
も問題を出題していない、③出題する年と出題しない年がある)に分類された。
2
本研究の背景(2/5)
 Common European Framework of Reference for Languages (CEFR)
(Council of Europe, 2020)
• 言語使用者(language users)が従事するコミュニケーション言語活動は、受容(reception)・産
出(production)・やり取り(interaction)・メディエーション(mediation)である。これら4つ
のコミュニケーション言語活動は、four modes of communicationと呼ばれる。
• メディエーション活動とは、コミュニケーションをする相手のために言語を調整(要約や訳等)し
て、メッセージを伝える活動である。2つの異なる言語間における双方向の言語切り替えおよび同
一言語内における言語の調整を含む。この能力は、複言語能力(plurilingual competence)に含ま
れ、実生活に求められる重要な能力の1つである。
• 欧州評議会(Council of Europe)が提唱する複言語主義(plurilingualism)とは新しい言語能力の
捉え方で、「個々人の複合的な言語能力や、コミュニケーションのための言語を複数持つような価
値観を表す用語」(鳥飼, 2017, p. 2)である。単一言語主義(monolingualism)のように目標言語
の母語話者を言語学習の目標とせず、どんな場面・状況でも、自身の言語知識(母語や方言を含
む)を最大限に活用し円滑なコミュニケーションを遂行する言語使用者の育成を目指す。
• 言語学習において、単一言語の枠組み(monolingual paradigm)から複言語の枠組み
(plurilingual paradigm)への転換が、複言語能力や異文化間能力を育成するためにメディエー
ション技能の効果的使用を描写する研究で多く見られるようになっている。(González-Davies,
2020, p. 434)
3
研究の背景(3/5)
 メディエーション技能や訳に触れている諸外国のカリキュラム・試験(1)
 イギリスの学校フランス語教育<カリキュラム>
• “read and show comprehension of original and adapted materials from a range of
different sources, understanding the purpose, important ideas and details, and provide an
accurate English translation of short, suitable material”(Department for Education, 2013,
p. 2).
→フランス語の読解力を育成することや資料の正確な訳(フランス語→英語)をする技能の
育成が求められている。
 中等教育修了資格試験(General Certificate of Secondary Education)のテスト仕様書
(Department for Education, 2022)<試験>
• “translate sentences and short texts from English into the assessed language to convey
key messages accurately and to apply grammatical knowledge of language and structures
in context”(p. 7)
→上記のカリキュラムに準じ、試験では、重要なメッセージを正確に伝え、文脈の中で言語
と構造の文法知識を適用するために、文や短い文章を英語からフランス語に訳すことが求め
られている。
4
研究の背景(4/5)
 メディエーション技能や訳に触れている諸外国のカリキュラム・試験(2)
 オーストラリアのフランス語教育(ACARA, 2022a, 2022b)<カリキュラム>
• 「英語だけの能力では、グローバルな機会を制限する可能性がある」、「二言語併用また
は複言語能力は世界の多くの地域において標準的な状況である」(ACARA, 2022a, p. 3)
とし、Year 5-6(日本の小学校5~6年生)、Year 7-8(中学校1~2年生)、Year 9-10(中
学校3年生~高校1年生)の授業内容にメディエーション活動を取り入れている(ACARA,
2022b) 。
• 授業中における英語(多くの学習者の母語・家庭語)使用は、学習者が①振り返りをする、
②アイデアを探索・議論する、③言語や文化について話し合ったり比較したりするための
メタ言語を使うのに良い機会を提供する(ACARA, 2022a, p. 6)と述べている。
 イスラエルの外国語としての英語教育(Ministry of Education, 2020)<カリキュラム>
• CEFR(Council of Europe, 2020)を参考に、メディエーション活動を含む4つのコミュニ
ケーション言語活動を取り入れ、小学校から高等学校まで一貫した外国語目標および活動
を示している。複言語・複文化能力の育成にも力を入れ、授業中の母語や方言の使用を認
めている。
5
本研究の背景(5/5)
 現行の中学校学習指導要領(文部科学省, 2018)
• 「授業は英語で行うことを基本とする」(p. 86)原則が初めて追加された。
• 日本語は補助的な役割を担う(p. 87)
• 2001年版(初版)CEFRを参考に外国語の目標を設定しているが、そこにメディエー
ション技能の育成は含まれていない。受容活動、産出活動、やり取り活動の一部は外
国語の目標や言語活動に取り込まれている(pp. 18-29)。
 2023年1月に実施された「大学入学共通テスト」のリスニング問題 第4問-B
• 共通テストでは、頭の中での訳が求められる問題が出題された。
• 状況や条件が日本語で提示されていた。留学先の生徒会の会長を選ぶため、4人の候補
者の演説を聞きながら、<日本語で書かれた>条件に合う候補者を選ぶ必要がある。
受験者は、解答するために、頭の中で日本語から英語に、英語から日本語に部分的に
頭の中で訳す必要があった。
6
本研究の目的
 疑問
• 今年実施された高校入試において、日本語の情報を基に英語で解答する問題は出題さ
れていたか。出題していた都道府県の割合はどうか、どのような問題が出題されてい
たか。
• CEFR(Council of Europe, 2020)のメディエーション技能には、双方向の言語切り替え
が含まれている。増田・松沢(2022)では英→日メディエーション問題の調査を行っ
たが、日→英メディエーション問題の出題においても、年々減少しているか。
上記2つの疑問に対する調査
<調査1>2023年に実施された高校入試の中の、日本語の情報を基に英語で解答する問題
のみを抽出し、出題していた都道府県の割合を明らかにする。問題の種類をカテゴリー化
する。
<調査2>2012年~2022年の高校入試を同様に分析し、当該問題の出題率の推移を調査す
る。出題している県としていない県をグループ化する。また、増田・松沢(2022)のデー
タとも比較する。
→これらの調査結果を基に、次期中学校学習指導要領改善のための提案を行う。
7
研究方法(1/2)―調査資料について
 調査1
• 2023年2~3月に出題された全国公立高等学校入試問題(旺文社, 2023)を調査する。
• 1都道府県につき1試験を調べる。学校選択問題やB問題およびC問題は対象外とし、A問題ま
たは基本問題のみ分析する。国立高校、私立高校、高等専門学校は対象外とする。
• リスニング問題は調査対象としない。
• 日本語での問い、日本語による状況説明、自由作文での日本語の指示は調査対象としない。
• CEFRのメディエーション活動の中の言語を切り替える活動(cross-linguistic mediation)に焦
点を当てて入試問題を分析する。
• 日本語の情報を基に英語で答える問題を「日→英メディエーション問題」とする。
 調査2
• 2012年から2023年に出題された全国公立高等学校入試問題(旺文社, 2012, 2013, 2014, 2015,
2016, 2017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023)を調査する。
8
研究方法(2/2)―分析について
 調査1
• 日→英メディエーション問題のみを抽出する。
• 抽出後、問題をタイプ別にカテゴリー化する。
 調査2
• 調査1と同様の方法で各年の入試問題を分析し、出題率の推移を調べる。
• 都道府県を、①毎年当該問題を出題している、②過去に一度も出題してい
ない、③出題する年としない年がある、の3つのグループに分類する。
• 増田・松沢(2022)で判明した3つのグループと比較し、①日→英・英
→日のどちらも出題している、②日→英を出題している、③英→日を出題
している、④日→英・英→日のどちらも出題していない、の4つのグルー
プに分類する。
9
【調査1】研究結果(1/5)
 今年の高校入試では、23道府県(49%)で日→英メディエーション問
題が出題されていた。
 問題の種類は、直接的問題(7種類)と間接的問題(4種類)に分類さ
れた。
 直接的問題:示された日本語を基に、受験者が直接英語を書く問題
 間接的問題:日本語の情報を基に、受験者が英語の選択肢を選ぶ問題
10
【調査1】研究結果(2/5)
 直接的問題(7種類)Type 1~Type 4
Type 1: 与えられた日本語を英訳する問題(9府県)
(例)【山梨県】本文の会話が成り立つように、下線部(1)あなたは、この前の金曜日私に会ったことを覚
えていますか。という内容を表す英文を一つ書きなさい(旺文社, 2023, p. 173)。
Type 2: 日本語で書かれたメモやチラシから、必要な日本語を抜き取って英訳する問題(5県)
(例)【埼玉県】日本語のメモをもとに、空欄 A ~ C にあてはまる適切な1語を、それぞれ英語で書きな
さい。(旺文社, 2023, p. 103)。
Type 3: 日本語で書かれたメモを基にして、英文を自分で組み立てる問題(2県)
(例)【徳島県】ポスターに書かれていることのうち、けんたさんとマークさんの対話でふれられていない情
報がある。あなたがけんたさんなら、そのふれられていない情報について、マークさんに何と伝えるか、英文1
文で書きなさい(旺文社, 2023, p. 230)。
Type 4: 日本語で書かれた言語機能を基にして、英文を自分で組み立てる問題(2023年は該当なし。2021年ま
では継続的に出題されていた)
(例)【北海道】下線部①が、加藤先生が武に対して、紙に書くよう指示した英文となるように、 に入
る英語を3語以上で書きなさい。(旺文社, 2021, p. 72)。
11
【調査1】研究結果(3/5)
 直接的問題(7種類)Type 5~Type 7
Type 5: 日本語の図表やグラフ等を参考に、受験者が考えた単語や語句を入れて文を完成させる問題(5県)
(例)【栃木県】図を参考に、二人の対話が成り立つよう、下線部(3), (4), (5)に適切な英語を書きなさい(旺文社,
2023, p. 99)。
Type 6: 日本語で書かれた情報を比較・説明しながら、まとまりのある文章を書く問題(2県)
(例)【群馬県】(c) には、下線部の内容について、Picture Cの「水が入りにくい国々に住む子供たちの1日
の例」と「日本に住む私の1日の例」を比較して分かることを、書き出しに続けて30語~40語の英語で書くこと
(旺文社, 2023, p. 102)。
Type 7: 日本語で示された伝えたいことを含めて手紙・メール・会話文等を完成させる問題(1県)
(例)【静岡県】陸(Riku)は、英語の授業で、友人のアレックス(Alex)のスピーチを聞き、コメントを書い
て渡すことになった。伝えたいことは、アレックスの国の祭りについて学べたので、アレックスのスピーチはと
ても良かったということと、私たちは地域の文化を尊重しなければならないということである。あなたが陸なら、
これらのことを伝えるために、どのようなコメントを書くか。次の の中に英語を補い、コメントを完成さ
せなさい(旺文社, 2023, p. 183)。
12
【調査1】研究結果(4/5)
 間接的問題(4種類)Type 8~Type 11
Type 8: 適切な訳(英単語等)を選択肢から選ぶ問題(1府)
(例)【大阪府】次の(1)~(10)の日本語の文の内容と合うように、英文中の( )内のア~ウからそ
れぞれ最も適しているものを一つずつ選び、記号で答えなさい(旺文社, 2023, p. 195)。
Type 9: 日本語で書かれた図表等を基に、適切な選択肢(英文等)を選ぶ問題(4県)
(例)【鳥取県】資料1の結果からわかることとして、最も適切なものを、次のア~エからひとつ選び、
記号で答えなさい(旺文社, 2023, p. 213)。
Type 10: 日本語で示された文の意味に合うように英単語を並べ替える問題(2府県)
(例)【香川県】下線部③が、「あなたの新しい皿を私に見せてください。」という意味になるよう
に、( )内のすべての語を、正しく並べかえて書け(旺文社, 2023, p. 233)。
Type 11: 日本語のポスターやグラフを見ながら、英語を並べ替えて文を完成させる問題(1県)
(例)【茨城県】留学生のエマ(Emma)が、クラスメイトのアズサ(Azusa)とタケル(Takeru)に
次の2つのウェブサイトを見せながら旅行について相談しています。会話の流れに合うように、①~④
の( )内の英語を並べかえて、記号で答えなさい。ただし、それぞれ不要な語(句)が1つずつあり
ます(旺文社, 2023, p. 95)。
13
【調査1】研究結果(5/5)
 調査1のまとめ
• 日→英メディエーション問題を出題している道府県(49%)と出題していない都府県
(51%)の数は約半々であった。
• 各都道府県によって受験者に求める英語力が異なることを意味し、受験者の居住地によって
必要な試験対策が異なることも示している。
• 最も多く日→英メディエーション問題を出題していたのは大阪府であった。
Type 1: 3問(このうち、1問は句レベル、2問は文レベル)
Type 8: 10問
Type 10: 1問
14
【調査2】研究結果(1/7)
 以下は、2012年~2023年における直接的・間接的問題を含む日→英
メディエーション問題の出題率である。
15
2012 2013 2014 2015 2016 2017
日→英問題
の出題率 72% 72% 66% 64% 60% 57%
2018 2019 2020 2021 2022 2023
日→英問題
の出題率 57% 57% 64% 57% 53% 49%
【調査2】研究結果(2/7)
 以下の表は、2012年~2023年の高校入試における、各問題を出題し
ている都道府県の数を反映している。
16
直接的問題 間接的問題
Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8 Type 9 Type 10 Type 11
2012 20 10 1 3 3 0 0 1 10 6 0
2013 22 11 0 3 6 0 0 3 4 6 0
2014 21 13 0 4 3 0 0 2 5 3 0
2015 18 11 0 3 5 0 0 2 9 2 0
2016 13 9 1 4 4 0 2 2 8 3 1
2017 13 8 1 1 7 2 0 2 9 2 0
2018 12 8 3 1 6 1 2 2 10 3 0
2019 12 10 3 2 2 1 1 2 6 3 0
2020 14 11 2 1 3 2 2 2 5 2 0
2021 10 11 5 1 3 2 1 2 1 2 0
2022 9 5 3 0 3 3 1 2 5 2 1
2023 9 5 2 0 5 2 1 1 4 2 1
【調査2】研究結果(3/7)
 2020年の高校入試では、日→英メディエーション問題を出題する道府県の増加が見られたが、全体
的に見ると、年々減少していることが判明した。
 Type 1の問題は減少し続けている。2023年にType 1の問題を出題した府県は9府県(19%)のみで、
調査を開始した2012年の入試問題(43%)と比べると、著しく減少していることが分かる。
 Type 2の問題の減少も踏まえると、「英訳をする」問題全般が減少していることが分かる。
 2016年の入試から、日本語で書かれた情報を読み取り、自分で考えてまとまりのある文章を書く問
題が出題されている。
 年によって各都道府県の出題傾向が異なることが多いので、受験者は予測が立てにくい。受験者だ
けでなく受験生を指導する教師も困惑する。日→英メディエーション問題が突然出題される、ある
いは今まで出題されていたメディエーション問題が突然出題されないことはあり得る。
 当該問題の出題に関して、都道府県を3グループに大別できた。
グループ1(14府県):毎年日→英メディエーション問題を出題している(例:青森県、香川県、三重
県)。
グループ2(4都県):過去10年間一度も日→英メディエーション問題を出題していない(東京都、千
葉県、石川県、福井県)。
グループ3(29府県):当該問題を出題した年としなかった年がある(例:宮城県、富山県、高知県)。
17
【調査2】研究結果(4/7)
 グループ3の内訳(29府県;5パターン)
1. 過去10年に渡り、出題したりしなかったりする(18府県)
2. 過去10年に渡り、一度だけ(岩手県、新潟県、宮崎県)あるいは2度(福
岡県)出題した年があった(4県)
3. 過去10年に渡り、一度だけ(熊本県)あるいは2度(大分県)出題しない
年があった(2県)
4. ある年から、一貫して日→英メディエーション問題を出題しなくなった
(福島県、滋賀県、和歌山県、山口県)(4県)
5. ある年から日→英メディエーション問題を出題するようになった(岐阜
県)(1県)
18
【調査2】研究結果(5/7)
 グループ3・パターン1のメディエーション問題の出題実績(例1)
• 宮城県
19
2012 2013 2014 2015 2016 2017
なし なし Type 4 なし Type 9 Type 9
2018 2019 2020 2021 2022 2023
Type 7 なし Type 6 なし なし なし
【調査2】研究結果(6/7)
 グループ3・パターン1のメディエーション問題の出題実績(例2)
• 高知県
20
2012 2013 2014 2015 2016 2017
Type 4 なし Type 2 なし なし なし
2018 2019 2020 2021 2022 2023
なし Type 3 Type 1 Type 2 なし なし
【調査2】研究結果(7/7)
 本研究と増田・松沢(2022)の研究を比較し、日→英メディエーション問題を出題している府県は英→
日メディエーション問題も出題しているかを分析した。
 結果、都道府県を5つのグループに分類することができた。
1. 日→英・英→日ともにメディエーション問題を過去10年に渡り毎年出題している(7府県)
青森県、山形県、栃木県、埼玉県、静岡県、大阪府、香川県
2. 日→英メディエーション問題を過去10年に渡り毎年出題している(7道県)
北海道、山梨県、三重県、兵庫県、広島県、徳島県、愛媛県
3. 英→日メディエーション問題を過去10年に渡り毎年出題している(13県)
宮城県、秋田県、新潟県、富山県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊
本県、鹿児島県
4. 日→英・英→日ともにメディエーション問題を過去10年に渡り一度も出題していない(1都)
東京都
5. 年によって出題したりしなかったりする、又は片方(例えば、日→英メディエーション問題)は一貫して
出題していないが、もう片方は年によって出題したりしなかったりする(19県)
21
考察(1/6)
 日→英および英→日メディエーション問題の出題に関して、揺れている県
が多いことが分かった。
 日本の外国語(英語)教育におけるメディエーション技能の位置づけにつ
いて、全国的に統一されていないことが一目で分かる。
→①メディエーション技能は英語学習に必要ない、②メディエーション技能
は英語学習のツールとして必要だ、③メディエーション技能は将来の実際の
言語使用に必要だ、④メディエーション技能は英語学習のツールとして必要
であり将来の実際の言語使用にも必要だ、について統一の見解を持つ必要が
あるのではないか。
 今日の外国語教育研究の視点から、上記④の考え方を持つ必要があると考
える。
22
考察(2/6)
1. メディエーション技能は、英語学習のツールである
• 数多くの論文で、外国語学習における母語使用の有用性は実証されている(e.g., Hall & Cook, 2013;
Masuda, 2020)。
• Butzukamm and Caldwell (2009)のBilingual Teaching、Leonardi(2010)のPedagogical Translation、Kerr
(2014)のTranslation and Own-language Activitiesなど、母語や訳を使った言語活動が推奨されている。
• Ur(2012)は、語彙および文法指導において生徒の母語や訳を使うことが効果的だとし、生徒の理解度
を測るためのテストの1つとして、訳を含めている。
• スライド4で紹介したイングランドの試験(Department for Education, 2022)は、外国語としてのフラン
ス語の正確性を測るためのものである。また、習った語彙や文法知識のアウトプットを通して言語能力
を高めようとするOutput Hypothesisの主張(Gass, Behney, & Plonsky, 2020)を支持している。
• スライド5で紹介したオーストラリアの学校フランス語教育のカリキュラム(ACARA, 2022a)における母
語(英語)使用は、学習者の言語への気づき(language awareness)を育む。
→外国語学習における以上の母語の肯定的な使用、およびこれを通して身につけられるメディエーション技
能は、次のスライドの通り、生徒が現代社会の中で直面する言語使用の場面や状況で必要である。
23
考察(3/6)
2. メディエーション技能は、実際の言語使用に必要である
• 多言語社会に生きるためには、自身が持つ全ての言語(方言を含む)を駆使して、様々な課
題を解決する能力が必要である(Council of Europe, 2020)。日本語力、英語力のような切り
離された言語の能力という見方ではなく、自身がもつ複合的な言語能力(複言語能力)を育
成することが大切であり、そこにはswitch from one language or dialect (or variety) to another
(p. 30)が含まれる。
• Cambridge University Press(2022)は、ことばを仲介する能力は、多くの実生活の場面にお
いて極めて重要であり(p. 4)、実生活を反映したタスクのためには、教室内でL1を使用する
ことをためらってはならない(p. 7)と主張している。
• 英語母語話者を目標にするL2 learnersではなく、L2 usersを育てることが大切である(Cook,
2016)。L2 usersは、英語母語話者にはないcode-switchingをする能力があり、これは実生活
において自然な行為である。
• 訳ができることは、二言語併用のコミュニケーション能力(bilingual communicative
competence)の主要な構成要素である(Cook, 2010, p. xx)。
24
考察(4/6)
2. メディエーション技能は、実際の言語使用に必要である(続き)
• 複言語能力の伸長のため、メディエーション活動を取り入れた研究がされつつある(Mansur &
Chiappini, 2020; Muñoz-Basols, 2019)。
• Lambert(2010)は、自身が指導する日本の大学生の多くが、卒業後に、メディエーション技能
(①英語から日本語への訳をする、②英語の資料を日本語に要約する、③英語話者と日本語話者の
仲介役をする)を必要とする仕事に就くことを明らかにしている。
• 増田(2022)は、日本の大学に勤務する日本人教員へのインタビューを通して、多くの大学生が授
業や課題、卒業論文のために英→日メディエーション活動を行っていることを明らかにしている。
→日本国外だけではなく、国内でもメディエーション技能の育成は必要である。
• 先に紹介したオーストラリア(ACARA, 2022a, 2022b)とイスラエル(Ministry of Education,
2020)のカリキュラムは、実際の言語使用を見据えたものである。
• Hughes and Hughes(2020)は、実生活で起こり得るとして、問題(items)を母語で示したり、
解答を母語で求めたりすることに妥当な理由があるとしている。
→高校入試でメディエーション問題を出題することは、英語の理解度を測るだけではなく(スライド
23)、日本語を母語とする英語学習者が言語使用者(L2 users)として現代社会に必要な能力を評価
することを意味する(スライド24〜25)。
25
考察(5/6)
 以上2つの観点(スライド23〜25)と構成主義的統合(constructive alignment)
という概念から、メディエーション技能の育成を学習指導要領の目標に加えたい。
• 構成主義的統合(Biggs, 1996)は、効果的な教育には学習目標(learning goal)と学習活動
(classroom activity)と評価 (assessment)が連携すること (aligning)が必須条件
(precondition)である、という概念である。
• Rouffet, van Beuningen, and de Graaff(2023)は、構成主義的統合の概念を用いて、オラン
ダの中学校外国語教育での目標・指導・評価の実態を検証し考察している。オランダの学習
指導要領が Communicative Language Teaching (CLT)の目標を掲げているのに、中学校の
日々の学習活動と評価はCLTの目標を反映していない、という構成主義的統合が不十分な実態
を実証した。
• カリキュラム・指導・評価の連携の必要性はCEFRでも指摘されている(Council of Europe,
2020, p. 29)。
• 先に紹介した、イングランド、オーストラリア、イスラエルのカリキュラムや試験のように、
我が国でも、学習者にとって必要なメディエーション技能を次期中学校学習指導要領の目標
に加えて、それを日々の学習活動で伸長し高校入試で評価したい。
26
考察(6/6)
 昨年は英→日メディエーション技能について調査・考察し、次期中学校学習指導要
領に双方向のメディエーション技能を育成する目標を加えることを提案した(増
田・松沢, 2022)。本研究では、日→英メディエーション技能について調査・考察
し、双方向のメディエーション技能を育成する目標を加えることを改めて提案した
い。
27
引用文献(1/2)
28 Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority (ACARA). (2022a). Languages: About the learning area.
https://v9.australiancurriculum.edu.au/downloads/learning-areas#accordion-4f750b9a53-item-c71c0ed634
Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority (ACARA). (2022b). French: F-10 sequence curriculum content.
https://v9.australiancurriculum.edu.au/downloads/learning-areas#accordion-4f750b9a53-item-c71c0ed634
Biggs, J. (1996). Enhancing teaching through constructive alignment. Higher Education, 32(3), 343-364.
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Department for Education. (2022). Modern foreign languages: GCSE subject content.
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Gass, S. M., Behney, J., & Plonsky, L. (2020). Second language acquisition: An introductory course (5th ed.). Routledge.
González-Davies, M. (2020). Developing mediation competence through translation. In S. Laviosa & M. González-Devies (Eds.), The
Routledge handbook of translation and education (pp. 434-450). Routledge.
Hall, G., & Cook, G. (2013). Own-language use in ELT: Exploring global practices and attitude. British Council ELT Research Papers 13-01.
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Leonardi, V. (2010). The role of pedagogical translation in second language acquisition: From theory to practice. Peter Lang.
引用文献(2/2)
29 Mansur, E., & Chiappini, R. (2020). Cross-linguistic mediation. English Teaching Professional, 126, 20-22.
Masuda, M. (2020). Can translation be a useful tool in preparing speaking tasks for EFL students? NUIS Journal of International Studies, 5,
53-66.
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旺文社. (2012).『全国高校入試問題正解―2013年受験用』旺文社.
旺文社. (2013).『全国高校入試問題正解―2014年受験用』旺文社.
旺文社. (2014).『全国高校入試問題正解―2015年受験用』旺文社.
旺文社. (2015).『全国高校入試問題正解―2016年受験用』旺文社.
旺文社. (2016).『全国高校入試問題正解―2017年受験用』旺文社.
旺文社. (2017).『全国高校入試問題正解―2018年受験用』旺文社.
旺文社. (2018).『全国高校入試問題正解―2019年受験用』旺文社.
旺文社. (2019).『全国高校入試問題正解―2020年受験用』旺文社.
旺文社. (2020).『全国高校入試問題正解―2021年受験用』旺文社.
旺文社. (2021).『全国高校入試問題正解―2022年受験用』旺文社.
旺文社. (2022).『全国高校入試問題正解―2023年受験用』旺文社.
旺文社. (2023).『全国高校入試問題正解―2024年受験用』旺文社.
増田瑞穂. (2022).「Cross-linguistic mediation活動のニーズ―予備調査―」『全国英語教育学会第47回北海道研究大会発表予稿集』
82-83.
増田瑞穂・松沢伸二. (2022).「中学校学習指導要領改善のための一提案―高校入試問題を分析して―」『関東甲信越英語教育学会
第46回栃木研究大会発表予稿集』55.
文部科学省. (2018).『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説―外国語編―』開隆堂.
鳥飼久美子. (2017). 「複言語主義とCEFR、そして Can Do」. 鳥飼久美子・大津由紀夫・江利川春雄・斎藤兆史(編). 『英語だ
けの外国語教育は失敗する』ひつじ書房.
ご精読ありがとうございました。

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  • 2. 本研究の背景(1/5)  増田・松沢(2022)の研究 • 2012年~2022年に実施された全国公立高等学校入試問題(英語)の中の日本語で 解答を求める問題(英→日メディエーション問題)を調査した。当該問題を出題 している都道府県の割合や問題をタイプ別に分類した。 【研究結果】 • 2022年の高校入試では、25道府県(53%)で当該問題が出題されていた。 • 問題は、受験者が直接日本語を記入する直接的問題(下線部説明・特定部分の内 容説明・概要説明・図表等への日本語挿入)と日本語の選択肢から選ぶ間接的問 題(下線部説明の選択・特定部分の内容説明の選択・単語和訳の選択・図表等の 選択・図表等に挿入する日本語選択)に分けられた。 • 過去10年で英→日メディエーション問題が年々減少していることが分かった。 • 都道府県は、3つのグループ(①毎年当該問題を出題している、②過去10年間一度 も問題を出題していない、③出題する年と出題しない年がある)に分類された。 2
  • 3. 本研究の背景(2/5)  Common European Framework of Reference for Languages (CEFR) (Council of Europe, 2020) • 言語使用者(language users)が従事するコミュニケーション言語活動は、受容(reception)・産 出(production)・やり取り(interaction)・メディエーション(mediation)である。これら4つ のコミュニケーション言語活動は、four modes of communicationと呼ばれる。 • メディエーション活動とは、コミュニケーションをする相手のために言語を調整(要約や訳等)し て、メッセージを伝える活動である。2つの異なる言語間における双方向の言語切り替えおよび同 一言語内における言語の調整を含む。この能力は、複言語能力(plurilingual competence)に含ま れ、実生活に求められる重要な能力の1つである。 • 欧州評議会(Council of Europe)が提唱する複言語主義(plurilingualism)とは新しい言語能力の 捉え方で、「個々人の複合的な言語能力や、コミュニケーションのための言語を複数持つような価 値観を表す用語」(鳥飼, 2017, p. 2)である。単一言語主義(monolingualism)のように目標言語 の母語話者を言語学習の目標とせず、どんな場面・状況でも、自身の言語知識(母語や方言を含 む)を最大限に活用し円滑なコミュニケーションを遂行する言語使用者の育成を目指す。 • 言語学習において、単一言語の枠組み(monolingual paradigm)から複言語の枠組み (plurilingual paradigm)への転換が、複言語能力や異文化間能力を育成するためにメディエー ション技能の効果的使用を描写する研究で多く見られるようになっている。(González-Davies, 2020, p. 434) 3
  • 4. 研究の背景(3/5)  メディエーション技能や訳に触れている諸外国のカリキュラム・試験(1)  イギリスの学校フランス語教育<カリキュラム> • “read and show comprehension of original and adapted materials from a range of different sources, understanding the purpose, important ideas and details, and provide an accurate English translation of short, suitable material”(Department for Education, 2013, p. 2). →フランス語の読解力を育成することや資料の正確な訳(フランス語→英語)をする技能の 育成が求められている。  中等教育修了資格試験(General Certificate of Secondary Education)のテスト仕様書 (Department for Education, 2022)<試験> • “translate sentences and short texts from English into the assessed language to convey key messages accurately and to apply grammatical knowledge of language and structures in context”(p. 7) →上記のカリキュラムに準じ、試験では、重要なメッセージを正確に伝え、文脈の中で言語 と構造の文法知識を適用するために、文や短い文章を英語からフランス語に訳すことが求め られている。 4
  • 5. 研究の背景(4/5)  メディエーション技能や訳に触れている諸外国のカリキュラム・試験(2)  オーストラリアのフランス語教育(ACARA, 2022a, 2022b)<カリキュラム> • 「英語だけの能力では、グローバルな機会を制限する可能性がある」、「二言語併用また は複言語能力は世界の多くの地域において標準的な状況である」(ACARA, 2022a, p. 3) とし、Year 5-6(日本の小学校5~6年生)、Year 7-8(中学校1~2年生)、Year 9-10(中 学校3年生~高校1年生)の授業内容にメディエーション活動を取り入れている(ACARA, 2022b) 。 • 授業中における英語(多くの学習者の母語・家庭語)使用は、学習者が①振り返りをする、 ②アイデアを探索・議論する、③言語や文化について話し合ったり比較したりするための メタ言語を使うのに良い機会を提供する(ACARA, 2022a, p. 6)と述べている。  イスラエルの外国語としての英語教育(Ministry of Education, 2020)<カリキュラム> • CEFR(Council of Europe, 2020)を参考に、メディエーション活動を含む4つのコミュニ ケーション言語活動を取り入れ、小学校から高等学校まで一貫した外国語目標および活動 を示している。複言語・複文化能力の育成にも力を入れ、授業中の母語や方言の使用を認 めている。 5
  • 6. 本研究の背景(5/5)  現行の中学校学習指導要領(文部科学省, 2018) • 「授業は英語で行うことを基本とする」(p. 86)原則が初めて追加された。 • 日本語は補助的な役割を担う(p. 87) • 2001年版(初版)CEFRを参考に外国語の目標を設定しているが、そこにメディエー ション技能の育成は含まれていない。受容活動、産出活動、やり取り活動の一部は外 国語の目標や言語活動に取り込まれている(pp. 18-29)。  2023年1月に実施された「大学入学共通テスト」のリスニング問題 第4問-B • 共通テストでは、頭の中での訳が求められる問題が出題された。 • 状況や条件が日本語で提示されていた。留学先の生徒会の会長を選ぶため、4人の候補 者の演説を聞きながら、<日本語で書かれた>条件に合う候補者を選ぶ必要がある。 受験者は、解答するために、頭の中で日本語から英語に、英語から日本語に部分的に 頭の中で訳す必要があった。 6
  • 7. 本研究の目的  疑問 • 今年実施された高校入試において、日本語の情報を基に英語で解答する問題は出題さ れていたか。出題していた都道府県の割合はどうか、どのような問題が出題されてい たか。 • CEFR(Council of Europe, 2020)のメディエーション技能には、双方向の言語切り替え が含まれている。増田・松沢(2022)では英→日メディエーション問題の調査を行っ たが、日→英メディエーション問題の出題においても、年々減少しているか。 上記2つの疑問に対する調査 <調査1>2023年に実施された高校入試の中の、日本語の情報を基に英語で解答する問題 のみを抽出し、出題していた都道府県の割合を明らかにする。問題の種類をカテゴリー化 する。 <調査2>2012年~2022年の高校入試を同様に分析し、当該問題の出題率の推移を調査す る。出題している県としていない県をグループ化する。また、増田・松沢(2022)のデー タとも比較する。 →これらの調査結果を基に、次期中学校学習指導要領改善のための提案を行う。 7
  • 8. 研究方法(1/2)―調査資料について  調査1 • 2023年2~3月に出題された全国公立高等学校入試問題(旺文社, 2023)を調査する。 • 1都道府県につき1試験を調べる。学校選択問題やB問題およびC問題は対象外とし、A問題ま たは基本問題のみ分析する。国立高校、私立高校、高等専門学校は対象外とする。 • リスニング問題は調査対象としない。 • 日本語での問い、日本語による状況説明、自由作文での日本語の指示は調査対象としない。 • CEFRのメディエーション活動の中の言語を切り替える活動(cross-linguistic mediation)に焦 点を当てて入試問題を分析する。 • 日本語の情報を基に英語で答える問題を「日→英メディエーション問題」とする。  調査2 • 2012年から2023年に出題された全国公立高等学校入試問題(旺文社, 2012, 2013, 2014, 2015, 2016, 2017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023)を調査する。 8
  • 9. 研究方法(2/2)―分析について  調査1 • 日→英メディエーション問題のみを抽出する。 • 抽出後、問題をタイプ別にカテゴリー化する。  調査2 • 調査1と同様の方法で各年の入試問題を分析し、出題率の推移を調べる。 • 都道府県を、①毎年当該問題を出題している、②過去に一度も出題してい ない、③出題する年としない年がある、の3つのグループに分類する。 • 増田・松沢(2022)で判明した3つのグループと比較し、①日→英・英 →日のどちらも出題している、②日→英を出題している、③英→日を出題 している、④日→英・英→日のどちらも出題していない、の4つのグルー プに分類する。 9
  • 10. 【調査1】研究結果(1/5)  今年の高校入試では、23道府県(49%)で日→英メディエーション問 題が出題されていた。  問題の種類は、直接的問題(7種類)と間接的問題(4種類)に分類さ れた。  直接的問題:示された日本語を基に、受験者が直接英語を書く問題  間接的問題:日本語の情報を基に、受験者が英語の選択肢を選ぶ問題 10
  • 11. 【調査1】研究結果(2/5)  直接的問題(7種類)Type 1~Type 4 Type 1: 与えられた日本語を英訳する問題(9府県) (例)【山梨県】本文の会話が成り立つように、下線部(1)あなたは、この前の金曜日私に会ったことを覚 えていますか。という内容を表す英文を一つ書きなさい(旺文社, 2023, p. 173)。 Type 2: 日本語で書かれたメモやチラシから、必要な日本語を抜き取って英訳する問題(5県) (例)【埼玉県】日本語のメモをもとに、空欄 A ~ C にあてはまる適切な1語を、それぞれ英語で書きな さい。(旺文社, 2023, p. 103)。 Type 3: 日本語で書かれたメモを基にして、英文を自分で組み立てる問題(2県) (例)【徳島県】ポスターに書かれていることのうち、けんたさんとマークさんの対話でふれられていない情 報がある。あなたがけんたさんなら、そのふれられていない情報について、マークさんに何と伝えるか、英文1 文で書きなさい(旺文社, 2023, p. 230)。 Type 4: 日本語で書かれた言語機能を基にして、英文を自分で組み立てる問題(2023年は該当なし。2021年ま では継続的に出題されていた) (例)【北海道】下線部①が、加藤先生が武に対して、紙に書くよう指示した英文となるように、 に入 る英語を3語以上で書きなさい。(旺文社, 2021, p. 72)。 11
  • 12. 【調査1】研究結果(3/5)  直接的問題(7種類)Type 5~Type 7 Type 5: 日本語の図表やグラフ等を参考に、受験者が考えた単語や語句を入れて文を完成させる問題(5県) (例)【栃木県】図を参考に、二人の対話が成り立つよう、下線部(3), (4), (5)に適切な英語を書きなさい(旺文社, 2023, p. 99)。 Type 6: 日本語で書かれた情報を比較・説明しながら、まとまりのある文章を書く問題(2県) (例)【群馬県】(c) には、下線部の内容について、Picture Cの「水が入りにくい国々に住む子供たちの1日 の例」と「日本に住む私の1日の例」を比較して分かることを、書き出しに続けて30語~40語の英語で書くこと (旺文社, 2023, p. 102)。 Type 7: 日本語で示された伝えたいことを含めて手紙・メール・会話文等を完成させる問題(1県) (例)【静岡県】陸(Riku)は、英語の授業で、友人のアレックス(Alex)のスピーチを聞き、コメントを書い て渡すことになった。伝えたいことは、アレックスの国の祭りについて学べたので、アレックスのスピーチはと ても良かったということと、私たちは地域の文化を尊重しなければならないということである。あなたが陸なら、 これらのことを伝えるために、どのようなコメントを書くか。次の の中に英語を補い、コメントを完成さ せなさい(旺文社, 2023, p. 183)。 12
  • 13. 【調査1】研究結果(4/5)  間接的問題(4種類)Type 8~Type 11 Type 8: 適切な訳(英単語等)を選択肢から選ぶ問題(1府) (例)【大阪府】次の(1)~(10)の日本語の文の内容と合うように、英文中の( )内のア~ウからそ れぞれ最も適しているものを一つずつ選び、記号で答えなさい(旺文社, 2023, p. 195)。 Type 9: 日本語で書かれた図表等を基に、適切な選択肢(英文等)を選ぶ問題(4県) (例)【鳥取県】資料1の結果からわかることとして、最も適切なものを、次のア~エからひとつ選び、 記号で答えなさい(旺文社, 2023, p. 213)。 Type 10: 日本語で示された文の意味に合うように英単語を並べ替える問題(2府県) (例)【香川県】下線部③が、「あなたの新しい皿を私に見せてください。」という意味になるよう に、( )内のすべての語を、正しく並べかえて書け(旺文社, 2023, p. 233)。 Type 11: 日本語のポスターやグラフを見ながら、英語を並べ替えて文を完成させる問題(1県) (例)【茨城県】留学生のエマ(Emma)が、クラスメイトのアズサ(Azusa)とタケル(Takeru)に 次の2つのウェブサイトを見せながら旅行について相談しています。会話の流れに合うように、①~④ の( )内の英語を並べかえて、記号で答えなさい。ただし、それぞれ不要な語(句)が1つずつあり ます(旺文社, 2023, p. 95)。 13
  • 14. 【調査1】研究結果(5/5)  調査1のまとめ • 日→英メディエーション問題を出題している道府県(49%)と出題していない都府県 (51%)の数は約半々であった。 • 各都道府県によって受験者に求める英語力が異なることを意味し、受験者の居住地によって 必要な試験対策が異なることも示している。 • 最も多く日→英メディエーション問題を出題していたのは大阪府であった。 Type 1: 3問(このうち、1問は句レベル、2問は文レベル) Type 8: 10問 Type 10: 1問 14
  • 15. 【調査2】研究結果(1/7)  以下は、2012年~2023年における直接的・間接的問題を含む日→英 メディエーション問題の出題率である。 15 2012 2013 2014 2015 2016 2017 日→英問題 の出題率 72% 72% 66% 64% 60% 57% 2018 2019 2020 2021 2022 2023 日→英問題 の出題率 57% 57% 64% 57% 53% 49%
  • 16. 【調査2】研究結果(2/7)  以下の表は、2012年~2023年の高校入試における、各問題を出題し ている都道府県の数を反映している。 16 直接的問題 間接的問題 Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8 Type 9 Type 10 Type 11 2012 20 10 1 3 3 0 0 1 10 6 0 2013 22 11 0 3 6 0 0 3 4 6 0 2014 21 13 0 4 3 0 0 2 5 3 0 2015 18 11 0 3 5 0 0 2 9 2 0 2016 13 9 1 4 4 0 2 2 8 3 1 2017 13 8 1 1 7 2 0 2 9 2 0 2018 12 8 3 1 6 1 2 2 10 3 0 2019 12 10 3 2 2 1 1 2 6 3 0 2020 14 11 2 1 3 2 2 2 5 2 0 2021 10 11 5 1 3 2 1 2 1 2 0 2022 9 5 3 0 3 3 1 2 5 2 1 2023 9 5 2 0 5 2 1 1 4 2 1
  • 17. 【調査2】研究結果(3/7)  2020年の高校入試では、日→英メディエーション問題を出題する道府県の増加が見られたが、全体 的に見ると、年々減少していることが判明した。  Type 1の問題は減少し続けている。2023年にType 1の問題を出題した府県は9府県(19%)のみで、 調査を開始した2012年の入試問題(43%)と比べると、著しく減少していることが分かる。  Type 2の問題の減少も踏まえると、「英訳をする」問題全般が減少していることが分かる。  2016年の入試から、日本語で書かれた情報を読み取り、自分で考えてまとまりのある文章を書く問 題が出題されている。  年によって各都道府県の出題傾向が異なることが多いので、受験者は予測が立てにくい。受験者だ けでなく受験生を指導する教師も困惑する。日→英メディエーション問題が突然出題される、ある いは今まで出題されていたメディエーション問題が突然出題されないことはあり得る。  当該問題の出題に関して、都道府県を3グループに大別できた。 グループ1(14府県):毎年日→英メディエーション問題を出題している(例:青森県、香川県、三重 県)。 グループ2(4都県):過去10年間一度も日→英メディエーション問題を出題していない(東京都、千 葉県、石川県、福井県)。 グループ3(29府県):当該問題を出題した年としなかった年がある(例:宮城県、富山県、高知県)。 17
  • 18. 【調査2】研究結果(4/7)  グループ3の内訳(29府県;5パターン) 1. 過去10年に渡り、出題したりしなかったりする(18府県) 2. 過去10年に渡り、一度だけ(岩手県、新潟県、宮崎県)あるいは2度(福 岡県)出題した年があった(4県) 3. 過去10年に渡り、一度だけ(熊本県)あるいは2度(大分県)出題しない 年があった(2県) 4. ある年から、一貫して日→英メディエーション問題を出題しなくなった (福島県、滋賀県、和歌山県、山口県)(4県) 5. ある年から日→英メディエーション問題を出題するようになった(岐阜 県)(1県) 18
  • 19. 【調査2】研究結果(5/7)  グループ3・パターン1のメディエーション問題の出題実績(例1) • 宮城県 19 2012 2013 2014 2015 2016 2017 なし なし Type 4 なし Type 9 Type 9 2018 2019 2020 2021 2022 2023 Type 7 なし Type 6 なし なし なし
  • 20. 【調査2】研究結果(6/7)  グループ3・パターン1のメディエーション問題の出題実績(例2) • 高知県 20 2012 2013 2014 2015 2016 2017 Type 4 なし Type 2 なし なし なし 2018 2019 2020 2021 2022 2023 なし Type 3 Type 1 Type 2 なし なし
  • 21. 【調査2】研究結果(7/7)  本研究と増田・松沢(2022)の研究を比較し、日→英メディエーション問題を出題している府県は英→ 日メディエーション問題も出題しているかを分析した。  結果、都道府県を5つのグループに分類することができた。 1. 日→英・英→日ともにメディエーション問題を過去10年に渡り毎年出題している(7府県) 青森県、山形県、栃木県、埼玉県、静岡県、大阪府、香川県 2. 日→英メディエーション問題を過去10年に渡り毎年出題している(7道県) 北海道、山梨県、三重県、兵庫県、広島県、徳島県、愛媛県 3. 英→日メディエーション問題を過去10年に渡り毎年出題している(13県) 宮城県、秋田県、新潟県、富山県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊 本県、鹿児島県 4. 日→英・英→日ともにメディエーション問題を過去10年に渡り一度も出題していない(1都) 東京都 5. 年によって出題したりしなかったりする、又は片方(例えば、日→英メディエーション問題)は一貫して 出題していないが、もう片方は年によって出題したりしなかったりする(19県) 21
  • 22. 考察(1/6)  日→英および英→日メディエーション問題の出題に関して、揺れている県 が多いことが分かった。  日本の外国語(英語)教育におけるメディエーション技能の位置づけにつ いて、全国的に統一されていないことが一目で分かる。 →①メディエーション技能は英語学習に必要ない、②メディエーション技能 は英語学習のツールとして必要だ、③メディエーション技能は将来の実際の 言語使用に必要だ、④メディエーション技能は英語学習のツールとして必要 であり将来の実際の言語使用にも必要だ、について統一の見解を持つ必要が あるのではないか。  今日の外国語教育研究の視点から、上記④の考え方を持つ必要があると考 える。 22
  • 23. 考察(2/6) 1. メディエーション技能は、英語学習のツールである • 数多くの論文で、外国語学習における母語使用の有用性は実証されている(e.g., Hall & Cook, 2013; Masuda, 2020)。 • Butzukamm and Caldwell (2009)のBilingual Teaching、Leonardi(2010)のPedagogical Translation、Kerr (2014)のTranslation and Own-language Activitiesなど、母語や訳を使った言語活動が推奨されている。 • Ur(2012)は、語彙および文法指導において生徒の母語や訳を使うことが効果的だとし、生徒の理解度 を測るためのテストの1つとして、訳を含めている。 • スライド4で紹介したイングランドの試験(Department for Education, 2022)は、外国語としてのフラン ス語の正確性を測るためのものである。また、習った語彙や文法知識のアウトプットを通して言語能力 を高めようとするOutput Hypothesisの主張(Gass, Behney, & Plonsky, 2020)を支持している。 • スライド5で紹介したオーストラリアの学校フランス語教育のカリキュラム(ACARA, 2022a)における母 語(英語)使用は、学習者の言語への気づき(language awareness)を育む。 →外国語学習における以上の母語の肯定的な使用、およびこれを通して身につけられるメディエーション技 能は、次のスライドの通り、生徒が現代社会の中で直面する言語使用の場面や状況で必要である。 23
  • 24. 考察(3/6) 2. メディエーション技能は、実際の言語使用に必要である • 多言語社会に生きるためには、自身が持つ全ての言語(方言を含む)を駆使して、様々な課 題を解決する能力が必要である(Council of Europe, 2020)。日本語力、英語力のような切り 離された言語の能力という見方ではなく、自身がもつ複合的な言語能力(複言語能力)を育 成することが大切であり、そこにはswitch from one language or dialect (or variety) to another (p. 30)が含まれる。 • Cambridge University Press(2022)は、ことばを仲介する能力は、多くの実生活の場面にお いて極めて重要であり(p. 4)、実生活を反映したタスクのためには、教室内でL1を使用する ことをためらってはならない(p. 7)と主張している。 • 英語母語話者を目標にするL2 learnersではなく、L2 usersを育てることが大切である(Cook, 2016)。L2 usersは、英語母語話者にはないcode-switchingをする能力があり、これは実生活 において自然な行為である。 • 訳ができることは、二言語併用のコミュニケーション能力(bilingual communicative competence)の主要な構成要素である(Cook, 2010, p. xx)。 24
  • 25. 考察(4/6) 2. メディエーション技能は、実際の言語使用に必要である(続き) • 複言語能力の伸長のため、メディエーション活動を取り入れた研究がされつつある(Mansur & Chiappini, 2020; Muñoz-Basols, 2019)。 • Lambert(2010)は、自身が指導する日本の大学生の多くが、卒業後に、メディエーション技能 (①英語から日本語への訳をする、②英語の資料を日本語に要約する、③英語話者と日本語話者の 仲介役をする)を必要とする仕事に就くことを明らかにしている。 • 増田(2022)は、日本の大学に勤務する日本人教員へのインタビューを通して、多くの大学生が授 業や課題、卒業論文のために英→日メディエーション活動を行っていることを明らかにしている。 →日本国外だけではなく、国内でもメディエーション技能の育成は必要である。 • 先に紹介したオーストラリア(ACARA, 2022a, 2022b)とイスラエル(Ministry of Education, 2020)のカリキュラムは、実際の言語使用を見据えたものである。 • Hughes and Hughes(2020)は、実生活で起こり得るとして、問題(items)を母語で示したり、 解答を母語で求めたりすることに妥当な理由があるとしている。 →高校入試でメディエーション問題を出題することは、英語の理解度を測るだけではなく(スライド 23)、日本語を母語とする英語学習者が言語使用者(L2 users)として現代社会に必要な能力を評価 することを意味する(スライド24〜25)。 25
  • 26. 考察(5/6)  以上2つの観点(スライド23〜25)と構成主義的統合(constructive alignment) という概念から、メディエーション技能の育成を学習指導要領の目標に加えたい。 • 構成主義的統合(Biggs, 1996)は、効果的な教育には学習目標(learning goal)と学習活動 (classroom activity)と評価 (assessment)が連携すること (aligning)が必須条件 (precondition)である、という概念である。 • Rouffet, van Beuningen, and de Graaff(2023)は、構成主義的統合の概念を用いて、オラン ダの中学校外国語教育での目標・指導・評価の実態を検証し考察している。オランダの学習 指導要領が Communicative Language Teaching (CLT)の目標を掲げているのに、中学校の 日々の学習活動と評価はCLTの目標を反映していない、という構成主義的統合が不十分な実態 を実証した。 • カリキュラム・指導・評価の連携の必要性はCEFRでも指摘されている(Council of Europe, 2020, p. 29)。 • 先に紹介した、イングランド、オーストラリア、イスラエルのカリキュラムや試験のように、 我が国でも、学習者にとって必要なメディエーション技能を次期中学校学習指導要領の目標 に加えて、それを日々の学習活動で伸長し高校入試で評価したい。 26
  • 28. 引用文献(1/2) 28 Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority (ACARA). (2022a). Languages: About the learning area. https://v9.australiancurriculum.edu.au/downloads/learning-areas#accordion-4f750b9a53-item-c71c0ed634 Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority (ACARA). (2022b). French: F-10 sequence curriculum content. https://v9.australiancurriculum.edu.au/downloads/learning-areas#accordion-4f750b9a53-item-c71c0ed634 Biggs, J. (1996). Enhancing teaching through constructive alignment. Higher Education, 32(3), 343-364. Butzukamm, W., & Caldwell, J.A.W. (2009). The bilingual reform: A paradigm shift in foreign language teaching. Narr Studienbücher. Cambridge University Press. (2022). Mediation: What it is, how to teach it and how to assess it. Part of the Cambridge Papers in ELT and Education series. https://www.cambridgeenglish.org/Images/664965-mediation-what-it-is-how-to-teach-it-and-how-to-assess-it.pdf Cook, G. (2010). Translation in language teaching. Oxford University Press. Cook, V. (2016). Second language learning and language teaching (5th ed.). Routledge. Council of Europe. (2020). Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment – companion volume. https://rm.coe.int/common-european-framework-of-reference-for-languages-learning-teaching/16809ea0d4 Department for Education. (2013). Languages programmes of study: Key stage 3. https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/239083/SECON DARY_national_curriculum_-_Languages.pdf Department for Education. (2022). Modern foreign languages: GCSE subject content. https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1121618/GCSE_subject_content_ modern_foreign_languages.pdf Gass, S. M., Behney, J., & Plonsky, L. (2020). Second language acquisition: An introductory course (5th ed.). Routledge. González-Davies, M. (2020). Developing mediation competence through translation. In S. Laviosa & M. González-Devies (Eds.), The Routledge handbook of translation and education (pp. 434-450). Routledge. Hall, G., & Cook, G. (2013). Own-language use in ELT: Exploring global practices and attitude. British Council ELT Research Papers 13-01. British Council. Hughes, A., & Hughes, J. (2020). Testing for language teachers (3rd ed.). Cambridge University Press. Kerr, P. (2014). Translation and own-language activities. Cambridge University Press. Lambert, C. (2010). A task-based needs analysis: Putting principles into practice. Language Teaching Research, 14, 99-112. https://doi.org/10.1177/1362168809346520 Leonardi, V. (2010). The role of pedagogical translation in second language acquisition: From theory to practice. Peter Lang.
  • 29. 引用文献(2/2) 29 Mansur, E., & Chiappini, R. (2020). Cross-linguistic mediation. English Teaching Professional, 126, 20-22. Masuda, M. (2020). Can translation be a useful tool in preparing speaking tasks for EFL students? NUIS Journal of International Studies, 5, 53-66. Ministry of Education. (2020). English curriculum 2020. https://meyda.education.gov.il/files/Mazkirut_Pedagogit/English/Curriculum2020.pdf Muñoz-Basols, J. (2019). Going beyond the comfort zone: Multilingualism, translation and mediation to foster plurilingual competence. Language, Culture and Curriculum, 32(3), 299-321. https://doi.org/10.1080/07908318.2019.1661687 Rouffet, C., van Beuningen, C., & de Graaff, R. (2023). Constructive alignment in foreign language curricula: An exploration of teaching and assessment practices in Dutch secondary education. The Language Learning Journal, 51(3), 344-358. Ur, P. (2012). A course in English language teaching. Cambridge University Press. 旺文社. (2012).『全国高校入試問題正解―2013年受験用』旺文社. 旺文社. (2013).『全国高校入試問題正解―2014年受験用』旺文社. 旺文社. (2014).『全国高校入試問題正解―2015年受験用』旺文社. 旺文社. (2015).『全国高校入試問題正解―2016年受験用』旺文社. 旺文社. (2016).『全国高校入試問題正解―2017年受験用』旺文社. 旺文社. (2017).『全国高校入試問題正解―2018年受験用』旺文社. 旺文社. (2018).『全国高校入試問題正解―2019年受験用』旺文社. 旺文社. (2019).『全国高校入試問題正解―2020年受験用』旺文社. 旺文社. (2020).『全国高校入試問題正解―2021年受験用』旺文社. 旺文社. (2021).『全国高校入試問題正解―2022年受験用』旺文社. 旺文社. (2022).『全国高校入試問題正解―2023年受験用』旺文社. 旺文社. (2023).『全国高校入試問題正解―2024年受験用』旺文社. 増田瑞穂. (2022).「Cross-linguistic mediation活動のニーズ―予備調査―」『全国英語教育学会第47回北海道研究大会発表予稿集』 82-83. 増田瑞穂・松沢伸二. (2022).「中学校学習指導要領改善のための一提案―高校入試問題を分析して―」『関東甲信越英語教育学会 第46回栃木研究大会発表予稿集』55. 文部科学省. (2018).『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説―外国語編―』開隆堂. 鳥飼久美子. (2017). 「複言語主義とCEFR、そして Can Do」. 鳥飼久美子・大津由紀夫・江利川春雄・斎藤兆史(編). 『英語だ けの外国語教育は失敗する』ひつじ書房. ご精読ありがとうございました。