Successfully reported this slideshow.
Your SlideShare is downloading. ×

文の組み立て・あいまい性に着目した授業実践の効果検証:児童のメタ言語能力向上を目指して

Ad
Ad
Ad
Ad
Ad
Ad
Ad
Ad
Ad
Ad
Ad

Check these out next

1 of 22 Ad

文の組み立て・あいまい性に着目した授業実践の効果検証:児童のメタ言語能力向上を目指して

本研究では、小学校6年生(66名)を対象に、メタ言語能力育成を目的とした授業を実施し、その効果を検証した。「メタ言語能力」とは言語そのものの構造や機能について意識をめぐらせることができる能力のことであり、外国語学習において大きな役割を果たすと言われている。授業者は調査協力校の英語・国語担当の教員であった。介入授業は主に語順・文の構造・あいまい性を扱う内容で5回×45分で実施された。なお、基本的に日本語表現を対象に解説され、必要に応じて英語を含む外国語の表現を取り上げる形で進められた。調査協力児は事前・事後にメタ言語能力テスト、および、言語学習に関するアンケート(動機づけ・信念)に回答した。事前・事後の比較の結果、動機づけや信念については目立った正の変化は見られなかったものの、メタ言語能力については有意なスコアの上昇が見られた。

本研究では、小学校6年生(66名)を対象に、メタ言語能力育成を目的とした授業を実施し、その効果を検証した。「メタ言語能力」とは言語そのものの構造や機能について意識をめぐらせることができる能力のことであり、外国語学習において大きな役割を果たすと言われている。授業者は調査協力校の英語・国語担当の教員であった。介入授業は主に語順・文の構造・あいまい性を扱う内容で5回×45分で実施された。なお、基本的に日本語表現を対象に解説され、必要に応じて英語を含む外国語の表現を取り上げる形で進められた。調査協力児は事前・事後にメタ言語能力テスト、および、言語学習に関するアンケート(動機づけ・信念)に回答した。事前・事後の比較の結果、動機づけや信念については目立った正の変化は見られなかったものの、メタ言語能力については有意なスコアの上昇が見られた。

Advertisement
Advertisement

More Related Content

More from KateConference (7)

Recently uploaded (20)

Advertisement

文の組み立て・あいまい性に着目した授業実践の効果検証:児童のメタ言語能力向上を目指して

  1. 1. 文の組み立て・あいまい性に 着目した授業実践の効果検証 ―児童のメタ言語能力向上を目指して― 五十嵐 美加 こども教育宝仙大学 E-mail: igarashi-m@hosen.ac.jp 1
  2. 2. 問題と目的 • メタ言語能力(metalinguistic ability)とは? 言語そのものを思考の対象とし、意識化できる能力 (e.g.,Tunmer & Herriman, 1984) 2 What’s that? No, you’re the typewriter, that’s a typewrite. It’s a typewriter. (Karmiloff-Smith et al., 1996) 4歳児(英語母語話者)が語の形態素(- er)を分析的に捉えていることがわかる例
  3. 3. 問題と目的 • 先行研究で明らかになっていること (e.g., Lasagabaster, 2001; Yeon et. al., 2017) 3 母語の メタ言語能力 目標言語 (外国語)の 成績 メタ言語能力は外国語習熟度に正の影響を与え る
  4. 4. 問題と目的 • 学校現場におけるメタ言語能力育成の具体的な方法やその効果は? →知見はまだ少ない • 目的: 母語のメタ言語能力を育成する実践的方法を明らかにし、 その効果を検証 4 メタ言語能力育成 を目指す授業 メタ言語能力 言語学習動機づけ 言語学習に対する信念
  5. 5. 方法 調査協力者・調査期間 • 調査協力者 • 日本語を母語とする関西公立小学校6年生66名 • 調査期間 • 2021年7月~9月 5 事前調査 • メタ言語能力テス ト • 言語学習に関する アンケート 介入授業 45分×5回 (文の組み立 て・ あいまい性) 事後調査 • メタ言語能力テス ト • 言語学習に関する アンケート
  6. 6. 方法 使用教材・授業者 • 介入授業使用教材 • 小六国語教科書「文の組み立て」(光村図書) • 日本語からはじめる小学校英語「句構造」「埋め込み文と等位接続」 「あいまい性」(開拓社) • 介入授業担当 • 調査協力校の英語・国語担当の教員 (調査協力校では6年生の英語・国語は専科の教員が担当) 6
  7. 7. 方法 授業内容 • 1回目授業 • 語順、主語・述語の位置・関係 • 2回目授業 • 語同士のまとまり(句)、句構造 • 3回目授業 • 文の構造・語順に関する英語と日本語の比較、日本語の助詞の機能 • 4回目授業 • 埋め込み文と等位接続 • 5回目授業 • あいまい性 7
  8. 8. 方法 調査項目 ① メタ言語能力テスト(日本語の仕組みと働きに関するクイズ) a. 文分節課題(1つの文を2つの文に分けて書く問題、2点×6問=12点満 点) • 例)昨日弟が作ったケーキは美味しかった。 解答例:昨日弟がケーキを作った。 (その)ケーキは美味しかった。 b. あいまい性判断課題 (二つの意味を考える問題、 2点×6問=12点満点) • 例)マサキはかっこいいスーツを着た 山田先生を見た。 解答例:スーツがかっこいい、 山田先生がかっこいい 8 調査画面(Google Form)
  9. 9. 方法 調査項目 ② 言語学習に関する質問紙(5段階評価) (外国語や国語に対する感じ方に関する アンケート) a. 外国語学習に対する意欲 b. 国語学習に対する意欲 c. 外国語学習に対する自己効力感 d. 国語学習に対する自己効力感 e. 言語学習に対する信念・態度 9 調査画面(Google Form) ※調査協力校の都合により、 事前の質問紙調査については 全調査協力児の約半数(32名分)の 回答しか得られなかった。 ※質問紙項目は筆者の先行研究を元に 作成された。
  10. 10. 結果 メタ言語能力テストスコア • メタ言語能力テスト(有効回答数N=60) • 文分節課題: t (59) = -5.827 , p = .000, d = .67 • あいまい性判断課題: t (59) = -7.436 , p = .000, d = .98 10 t検定の結果: 事前テストスコア<事後テストスコア 有意な上昇が確認された
  11. 11. 結果 外国語学習に対する意欲 1. 外国語の授業に頑張って参加しようと思う。 2. 外国語が得意になりたい。 3. 外国語についてできるだけ多くのことを学びたい。 4. 外国語の勉強は楽しいと思う。 5. 学校で外国語の授業が無かったとしても外国語の勉強をしたい。 6. 自分の将来にとって外国語を身に付けることは必要だと思う。 (N=66, α=.917) 11
  12. 12. 結果 国語学習に対する意欲 1. 国語の授業に頑張って参加しようと思う。 2. 国語が得意になりたい。 3. 国語についてできるだけ多くのことを学びたい。 4. 国語の勉強は楽しいと思う。 5. 学校で国語の授業がなかったとしても国語の勉強をしたい。 6. 自分の将来にとって国語の勉強をしておくことは必要だと思う。 (N=66, α=.938) 12
  13. 13. 結果 外国語学習に対する自己効力感 1. 外国語のテストがあったら、良い点がとることができると思う。 2. 外国語の授業で教えられる内容を自分は理解できる方だ。 3. 自分は外国語の授業についていくことができている。 4. 他の人と比べると、自分は外国語の授業で学習する内容についてよく知っ ている。 5. 自分の外国語の力は他の人と比べてすぐれている。 6. 自分は外国語の授業で先生の質問にうまく答えられる。 (N=66, α=.902) 13
  14. 14. 結果 国語学習に対する自己効力感 1. 自分は国語のテストで良い成績がとることができる。 2. 国語の授業で教えられる内容を自分は理解できる方だ。 3. 自分は国語の授業についていくことができている。 4. 他の人と比べると、自分は国語の授業で学習する内容についてよく知って いる。 5. 自分の国語力は他の人と比べてすぐれている。 6. 自分は国語の授業で先生の質問にうまく答えられる。 (N=66, α=.941) 14
  15. 15. 結果 因子分析(言語学習に対する信念・態度) • Table 1 因子分析結果(Promax回転後の因子パターン) 15 項目 Factor1 Factor2 Factor3 4日本語の文やことばの仕組みや意味について考えるのは楽しい。 .902 -.130 .013 3国語の文法の勉強は好きだ。 .851 -.205 -.130 5日本語の文や語句の仕組みついてたくさん知りたい。 .798 .132 -.059 6外国語の文やことばの仕組みや意味について考えるのは楽しい。 .619 .076 .206 7外国語の文やことばの仕組みについてたくさん知りたい。 .608 .215 .092 8実際に使う機会がなくても、英語以外の他の言語も学びたい。 .496 .138 .109 11外国語の文やことばの仕組みについて知っておくと外国語で会話するときにも 役立つと思う。 -.063 .865 -.127 12日本語の文やことばの仕組みについて知っておくと日常生活でも役立つと思う。 .037 .860 -.121 10日本語の文やことばの仕組みについて知っておくと外国語の勉強にも役立つと 思う。 .141 .701 .033 15外国語を学ぶことで日本語のことももっとよく知ることができると思う。 .010 .608 .105 1国語の文法(日本語の文の組み立てやことば同士の関係など)の勉強は学校のテ ストや受験以外では役に立たないと思う。 .277 -.497 -.280 14国語の勉強以外のときでも日本語(広告やかんばん、Tシャツに書かれた言葉な ど)の仕組みや意味について注目したり話題にしたりする。 -.014 -.075 1.009 13外国語の勉強以外のときでも外国語(広告やかんばん、Tシャツに書かれた言葉 など)の仕組みや意味について注目したり話題にしたりする。 .049 .026 .813 因子間相関 Factor1 Factor2 Factor3 Factor1 ー .586 .546 Factor2 ー .490 Factor3 ー • 因子負荷量0.4未満の項目は除外 • 因子数は固有値1以上基準で決定 • 因子の命名 • Factor1=言語に対する興味 • Factor2=言語学習の有効性の認知 • Factor3=メタ言語的行動 • 因子負荷量が1を超える項目があったが、 解釈の可能性から除外しなかった。
  16. 16. 結果 信頼性係数(言語学習に対する信念・態度) 16 変数名 有効回答数 (N) 項目数 信頼性係数 (α) 言語に対する興味 66 6 .887 言語学習の有効性の認知 66 5 .816 メタ言語的行動 66 2 .901
  17. 17. 結果 自己効力感スコア • 外国語学習に対する自己効力感(有効回答数N=32) t (31) = 2.806 , p = .009, d = .28 • 国語学習に対する自己効力感(有効回答数N=32) t (31) = 2.058 , p = .048, d = .25 17 t検定の結果: 事前調査スコア>事後調査スコア 有意な差が確認された
  18. 18. 結果 まとめ 18 • メタ言語能力 • 事前スコア < 事後スコア 有意差有り • 外国語学習に対する自己効力感 • 事前スコア > 事後スコア 有意差有り • 国語学習に対する自己効力感 • 事前スコア > 事後スコア 有意差有り • 他の調査項目については有意な差はみられなかった。
  19. 19. 考察 • メタ言語能力テストスコアが有意に上昇 →今回の授業は児童のメタ言語能力向上に寄与するという示唆が得られた。 • 外国語学習・国語学習とも、自己効力感のスコアは有意に低下 →今回の介入授業では「ことばの奥深さ」を知るという狙いもあったため、 それまでの授業内容よりも難易度が高い課題に取り組むことになった。 また、メタ言語能力テストのスコアが全体的に高いものではなったことも影 響か? 19
  20. 20. 考察 • 以上のことにより、 結果的に児童たちが国語や英語に対して「難しい」という印象を 抱いてしまった可能性がある。 • 他の項目では有意な差がみられなかった。 →今回の調査協力校の授業担当教員は、介入授業以前からメタ言語能力育成を 意識した言葉かけをすることがあったようで、介入の効果が薄れた可能性があ る。 20
  21. 21. 結論 • 文の組み立て・あいまい性に着目した授業はメタ言語能力育成に寄与すること が 明らかになった。 • 一方、今回の授業法では動機づけや信念には正の影響はみられなかった。 • 今後は、介入授業内容やメタ言語能力テストの難易度を調整することにより、 動機づけや信念に対しても正の影響を期待できる指導法を検討する必要がある。 • メタ言語能力の発達をより詳細に検討するべく、ワークシートの記述や 授業の感想などを分析の対象とし、定性的な検討を行うことも今後の課題にし たい。 21
  22. 22. 主な参考文献 • Igarashi, M. (2021). Individual Differences in Early Stage English Learners in Japan. European Proceedings of International Conference on Education and Educational Psychology (EpICEEPSY) 2, 28-40. • Karmiloff-Smith, A., Grant, J., Sims, K., Jones, M. C., & Cuckle, P. (1996). Rethinking metalinguistic awareness: representing and accessing knowledge about what counts as a word. Cognition, 58(2), 197-219. • Lasagabaster, D. (2001). The effect of knowledge about the L1 on foreign language skills and grammar. International Journal of Bilingual Education and Bilingualism, 4(5), 310-332. • Tunmer, W.E., & Herriman, M.L. (1984). The development of metalinguistic awareness: a conceptual view. In W.E. Tunmer, C.Pratt, & M.L. Herriman (Eds.), Metalinguistic awareness in children: Theory, research and implications (pp. 12-35). New York: Springer-Verlag. • Yeon, S., Bae, H. S., & Joshi, R. M. (2017). Cross‐language transfer of metalinguistic skills: Evidence from spelling English words by Korean students in grades 4, 5 and 6. Dyslexia, 23, 428-448. 22

×