More Related Content More from KateConference (20) 高校1年生の語彙学習方略の使用と変化―自由記述データの質的分析より―4. …学習者の文脈に応じて、学習目標を達成するために、意図的に選択される学習法 (Oxford,
2017)。
特に語彙学習に関わるものを語彙学習方略 (Vocabulary Learning Strategy: VLS)と呼ぶ。
4
言語学習方略 (Language Learning Strategy)
先行研究 対象者 尺度 使用頻度の高いVLS
赤瀬 (2014) 高校1年生 209人 6件法 ・繰り返し書く ・辞書を使う ・友達に尋ねる
石川・田村・白
畑 (2018)
高校生(1~3年) 1068
人
4件法 ・繰り返し書く、発音する ・数日毎に繰り返し復
習
・単語集の使用 ・過去/過去分詞形の確認
内田 (2021) 高校1年生 85人 5件法 反復方略 (繰り返し見たり書いたりする)
…これまでの先行研究でも5件法などの量的な調査で、各方略の使用頻度が報告されている。
特に高校1年生では繰り返し書くなどの反復方略が好まれているようである。
4
6. 本研究の
対象者の特徴ついて
高校1年生 42名 (注) 本発表者が現在勤務する高校の学習者ではない。
・1クラスに所属していた。
・大学進学のために定期テストや英検を重視しており、
当時、約半数の生徒が英検準2級を取得済みであった。
・推定語彙サイズ 平均 2654
※学習指導要領 によれば、高1生が学習する語彙数 2800-約3300
・入学時に単語帳と単語学習アプリ が配布されており、
毎週、オンライン上で単語テストを受けていた。
・英語コミュニケーションII 3単位, 論理・表現II 3単位を受講し、
そのうち1単位でALTとの授業があった。
・バスや電車で通学する者が多い。
6
8. 研究材料 質問紙 (表)
8
1学年 最後の定期テストの後、
1年間の振り返りとして質問紙に解答を求めた。
質問紙の表面では、
個人差の理解のために、
(1)習熟度, (2) 語彙学習観, (3) 動機付け (行動)を、
質的データ分析の参考として、
(4) 語彙学習方略 を量的にも調査した。
※ただし、本発表のデータとしては参考にする程度に留めてい
る。
8
11. 11
参考 (海老原, 2020)
上級英語学習者 (語彙サイズ8000以上)
の、中学時、高校時、大学時の語彙学
習方略を質問紙で回顧的に答えても
らった。
<結果>
中学から高校という学習環境に伴い、
新たなVLSを使用し始めていた。
・文脈推測
23(中)→78%(高)
・接辞や語幹、品詞 0→48%
・同義語・反意語 10→63%
n=40
中学 高校 大学
何度も音読する、何度も書く 26 (65%) 23 (58%) 19 (48%)
ワードリスト・単語帳、単語カードを用いる 11 (28%) 29 (73%) 20 (50%)
授業中にノートを取る 19 (48%) 21 (53%) 19 (48%)
教科書の語彙セクションを利用する 20 (50%) 11 (28%) 4 (10%)
ワードリストのCDを聴く 3 (8%) 8 (20%) 4 (10%)
周りにあるものに英単語のラベルを貼る 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)
自分専用の英単語ノートを作成する 6 (15%) 11 (28%) 12 (30%)
接辞や語源、品詞から分析する 0 (0%) 19(48%) 25(63%)
文脈から推測する 9 (23%) 31(78%) 36(90%)
辞書で調べる 33 (83%) 30 (75%) 38 (95%)
先生や友人に聞く 15 (38%) 13 (33%) 11 (28%)
絵と結び付ける/単語のイメージを頭の中で想像する 16 (40%) 20 (50%) 21 (53%)
同義語や反意語など既に持っている知識と関連させる 4 (10%) 25 (63%) 27 (68%)
カテゴリー別に覚える/目標語を用いて文書を作成する 1 (3%) 9 (23%) 13 (33%)
正しいスペルを心の中で発音する 28 (70%) 24 (60%) 26 (65%)
接辞や語源、品詞から意味を覚える 3 (8%) 14 (35%) 24 (60%)
目標語の意味を別の英単語で書き換える 1 (3%) 2 (5%) 8 (20%)
カタカナ英語から単語を覚える 16 (40%) 7 (18%) 6 (15%)
成句や諺を通して覚える 8 (20%) 24 (60%) 20 (50%)
単語を表す行動を実際にしてみる 1 (3%) 3 (8%) 3 (8%)
映画や音楽、新聞などを利用する 9 (23%) 15 (38%) 23 (58%)
自分で単語テストを行い、確認する 10 (25%) 13 (38%) 8 (20%)
自分に必要とないと思う単語はとばすこともある 12 (30%) 10 (25%) 18 (45%)
英単語は時間をかけて継続的に勉強する 9 (23%) 23 (58%) 13 (33%)
メタ認知方略
人数(%)
語彙学習ストラテジー
認知方略
決定方略
記憶方略
各学習段階における語彙学習方略の使用 (海老原, 2020) 11
12. 12
分析2
英単語の学習法に変化があった 29名の
自由記述データ(質問紙 問6)を
KH Coderの前処理にかけ、抽出語リストを作成。
↓
語彙学習方略に関わる語を探索した。
「書く」・「タンゴスタ*1」という語が特徴的で
ある。
加えて 「単語=覚えるもの」という学習観が伺える
*1 タンゴスタとは、旺文社が提供する英単語学習支援Webアプリ
ケーションのこと。 ターゲット1300 (旺文社, 2022)という単語帳
に準じる。
スマートフォンやパソコンで使用することができる。
抽出語 出現回数
単語 27
覚える 23
勉強 15
タンゴスタ 12
書く 12
高校 9
単語テスト 9
定期テスト 9
学習法 8
使う 8
中学校 8
英検 6
時間 6
英単語 5
少し 5
分かる 5
思う 4
自分 4
熟語 4
文章 4
変わる 4
毎週 4
英語 3
受ける 3
文章 4
変わる 4
毎週 4
英語 3
受ける 3
増える 3
沢山 3
単語帳 3
知る 3
入る 3
発音 3
問題 3
たくさん 2
セルフチェック 2
リスニング 2
以前 2
英 2
活用 2
効率 2
向ける 2
合う 2
今 2
前 2
前後 2
調べる 2
電車 2
難しい 2
利用 2
表1 KH Coderの上位抽出語リス
15. 概念名 現在の語彙学習方略 (アプリケーションの利用)
定義 高校1学年の現在に使用している英語語彙の学習法。Webアプリを使う。
データ No.1
よく書いて英単語を覚えていたが、書くのではなく、英単語帳やタンゴスタを利用することで少しの
時間でも少量の英単語を覚えることができたし、より短時間でたくさんの単語を覚えられた。
No.2
タンゴスタを使って、中学校からずっと苦手だった単語を積極的に覚えるようにした。
No.7
タンゴスタを使って、フラッシュカードで覚えてセルフチェックでチェックした。
No.9
タンゴスタを利用してから、ほかの英単語アプリも活用するようになった。
No.11
授業を受けてあまり英単語を知らない気づいて、英検のためにもなるし少しずつ勉強し始めました。
単語テストが全然分からなくて、焦ってやるようになりました。タンゴスタや英語の曲を聴くようにな
りました。
No.13
中学校の時はあまり単語を勉強することがなかったけど、高校になってタンゴスタをやって単語テス
トを受けるうちに単語の量がテストにつながり、多くの単語を知っていることは大切なことだ と思っ
た。単語を沢山書くことで私は覚えられると思ったので単語を沢山書いて覚えている。
No.14
中学校の時は定期テストが書くものだったので必死に書いて練習していたが、高校に入ったらタンゴ
分析ワークシート1 <タンゴスタを含む文章>
15
17. 概念名 以前の語彙学習方略 (綴りを書く)
定義 以前(特に中学時)に使用していた英語語彙の学習法。書いて覚える。
データ No.1
よく書いて英単語を覚えていたが、書くのではなく、英単語帳やタンゴスタを利用することで少しの時間で
も少量の英単語を覚えることができたし、より短時間でたくさんの単語を覚えられた。
No.13
中学校の時はあまり単語を勉強することがなかったけど、高校になってタンゴスタをやって単語テストを受
けるうちに単語の量がテストにつながり、多くの単語を知っていることは大切なことだと思った。単語を沢山
書くことで私は覚えられると思ったので単語を沢山書いて覚えている。
No.14:
中学校の時は定期テストが書くものだったので必死に書いて練習していたが、高校に入ったらタンゴスタが
あったので主にそれを使い勉強するようになった。
No.16:
中学校の時は文章中にある単語や新しい単語がまとめて書いてある部分をなんとなく読んでい ただけでし
たが、高校生になってからは、タンゴスタの電子単語帳を使うようになって、以前より も単語を覚えられる
ようになった。
No.21
単語テストを通して自分がミスをしてしまった所は何度も書いたり、発音したりした。定期テストの後、長
文の問題で分からなかった単語はすぐ調べた。
No.22
単語テストがあるため、朝の電車で勉強することで、学習習慣がついた。定期テストの勉強をすることで、
単語力が増えた。発音を知ってから書く。
分析ワークシート2<書くを含む文章>
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19. 概念名 英単語学習における効率性への気づき
定義 英単語学習法の費用対効果に意識を向け始めた。
データ No.1
よく書いて英単語を覚えていたが、書くのではなく、英単語帳やタンゴスタを利用することで少し の時
間でも少量の英単語を覚えることができたし、より短時間でたくさんの単語を覚えられた。
No.2
タンゴスタを使って、中学校からずっと苦手だった単語を積極的に覚えるようにした。
No.7
タンゴスタを使って、フラッシュカードで覚えてセルフチェックでチェックした。
No.9
タンゴスタを利用してから、ほかの英単語アプリも活用するようになった。
No.11
授業を受けてあまり英単語を知らない気づいて、英検のためにもなるし少しずつ勉強し始めました。単語
テストが全然分からなくて、焦ってやるようになりました。タンゴスタや英語の曲を聴くようになりました。
No.13
中学校の時はあまり単語を勉強することがなかったけど、高校になってタンゴスタをやって単語テストを
受けるうちに単語の量がテストにつながり、多くの単語を知っていることは大切なことだと思った。単語を
沢山書くことで私は覚えられると思ったので単語を沢山書いて覚えている。
No.14
中学校の時は定期テストが書くものだったので必死に書いて練習していたが、高校に入ったらタンゴスタ
があったので主にそれを使い勉強するようになった。
分析ワークシート3<タンゴスタを含む文章(別視点で分析)>
19
21. 概念名 単語テストに向けて学習時間の増加
定義 単語テストに向けて学習に取り組み始める。
データ No.5
高校からは毎週単語テストがあるので、それに向けて自分で勉強をするようになった。
No.11
授業を受けてあまり英単語を知らないと気づいて、英検のためにもなるし少しずつ勉強し始めました。単
語テストが全然分からなくて、焦ってやるようになりました。タンゴスタや英語の曲を聴くようになりまし
た。
No.13
中学校の時はあまり単語を勉強することがなかったけど、高校になってタンゴスタをやって単語テストを
受けるうちに単語の量がテストにつながり、多くの単語を知っていることは大切なことだと思った。単語を
沢山書くことで私は覚えられると思ったので単語を沢山書いて覚えている。
No.15
単語テスト前に単語を繰り返し覚えたので、単語を多く覚えられるようになった。定期的に単語を覚える
ことで、問題で出てきたときに単語を思い出しやすくなった。
No.17
毎週金曜日の単語テストの前。英検の勉強中。定期テストの前後。実力テスト、模試の前後。
No.21
単語テストを通して自分がミスをしてしまった所は何度も書いたり、発音したりした。定期テストの後、
長文の問題で分からなかった単語はすぐ調べた。
分析ワークシート4<単語テストを含む文章>
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23. 概念名 ―
定義 ―
データ No.3
高校での定期テストに向けての勉強で、物語や説明文などを読み込みながら単語や熟語を覚えるという学
習法で勉強していたら、それが自分に合っていると分かり、そこからその学習法を続けている。
No.6
英検に合格するために英検の勉強をするようになったこと。今まで英語の勉強は定期テスト期間だけだっ
たが、自ら勉強するようになった。
No.12
定期テスト後の直しを少しずつ出来てきた。単語を勉強するときに発音するようにした。
No.14
中学校の時は定期テストが書くものだったので必死に書いて練習していたが、高校に入ったらタンゴスタ
があったので主にそれを使い勉強するようになった。
No.17
毎週金曜日の単語テストの前。英検の勉強中。定期テストの前後。実力テスト、模試の前後。
No.19
定期テストの時に単語や熟語が今までの学習法だと覚えられないと思ったから変えた。
No.21
単語テストを通して自分がミスをしてしまった所は何度も書いたり、発音したりした。定期テストの後、
長文の問題で分からなかった単語はすぐ調べた。
分析ワークシート5による概念の生成 <定期テストを含む文
章>
23
27. 引用文献
赤瀬正樹 (2014).「高校生の英語語彙学習方略に関する研究ー高校1年次と2年次の比較ー」『中部地区英語教育学学会紀
要』第43号, 93-100.
石川芳恵・田村知子・白畑知彦 (2018).「語彙学習の実態と教師および生徒の意識―静岡県内の公立高校の英語科教員お
よび 生徒へのアンケート調査より―」『教育開発学論集』第6号, 35-45.
内田奈緒 (2021).「中高の英語学習における語彙学習方略―方略使用・有効性と規定要因に関する発達的差異の検討―」
『教 育心理学研究』第69号, 366-381.
木下康仁 (2003).『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践―質的研究への誘い』弘文堂.
樋口耕一 (2014).『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して―』ナカニシ出版.
ベネッセ総合教育研究所 (2020).『高1生の英語学習に関する調査』
https://berd.benesse.jp/global/research/detail1.php?id=5467
ターゲット編集部編 (2020).『英単語ターゲット 1300』旺文社.
Ebihara, T. (2020). Identifying Vocabulary Learning Strategies Used by Advanced Japanese EFL Learners on Different Learning
Stages. Dokkyo Working Papers, 55, 7-46.
Oxford, R. L. (2017). Teaching and researching language learning strategies: Self-regulation in context (2nd ed.). New York, US:
Routledge.
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