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中学生の英語名詞句理解と英作文能力との関係

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中学生の英語名詞句理解と英作文能力との関係

本発表は、中学生が英語名詞句をどの程度理解しているかを調査している一連の研究の一環である。公立中学校の生徒およそ150名に対し、センテンス中の英語名詞句を特定できるかのテストを定期的に行っている。その調査過程において、彼らが英語で書いた作文をデータとして得た。英作文の量・質の分析観点としては(1)流暢性、(2)使用語彙の多様性、(3)文構造の複雑性、(4)正確性があり得るが、本発表においては名詞句理解ともっとも関係が強いと考えられる「文構造の複雑性」および「正確性」の2観点を従属変数として取り上げる。英語名詞句理解と英作文の質の関係を調べることで、「名詞句を理解していること」が英語習得過程においていかに重要な役割を果たしているのかについて議論していきたい。

本発表は、中学生が英語名詞句をどの程度理解しているかを調査している一連の研究の一環である。公立中学校の生徒およそ150名に対し、センテンス中の英語名詞句を特定できるかのテストを定期的に行っている。その調査過程において、彼らが英語で書いた作文をデータとして得た。英作文の量・質の分析観点としては(1)流暢性、(2)使用語彙の多様性、(3)文構造の複雑性、(4)正確性があり得るが、本発表においては名詞句理解ともっとも関係が強いと考えられる「文構造の複雑性」および「正確性」の2観点を従属変数として取り上げる。英語名詞句理解と英作文の質の関係を調べることで、「名詞句を理解していること」が英語習得過程においていかに重要な役割を果たしているのかについて議論していきたい。

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中学生の英語名詞句理解と英作文能力との関係

  1. 1. 中学生の英語名詞句理解と英作文能力との関係 羽山恵(獨協大学)・勝呂奈緒(八潮市立八潮中学校) 関東甲信越英語教育学会 第46回 栃木研究大会(オンライン) 2022年12月10日〜18日
  2. 2. 研究の背景
  3. 3. 本研究の背景と動機 • 英語の「基礎基本」が身についていなければ、 学習・習得は順調には進まない • 「基礎基本」とは何か? • それを「英語名詞句(NP)を理解していること」と仮定する
  4. 4. 名詞句の習得に関わる先行研究 ① • NPは言語の基本である (Biber, Johansson, Leech, Conrad & Finegan, 1999) • NPはその修飾構造によって多様になり得る (Huddleston & Pullum, 2002)
  5. 5. 名詞句の習得に関わる先行研究 ② • 教科書においても英文の大部分をNPが占める • 教科書の難度はNPと関連しているようだ (Tsunashima, 2018; 大田, 2019)
  6. 6. 名詞句の習得に関わる先行研究 ③ • NPの習得は実は難しい  金谷・小林・告・贄田・羽山(2015)  鈴木・臼倉(2018)  関東甲信越英語教育学会研究推進委員会
  7. 7. 名詞句と英語レベルに関わる先行研究 • 木村・金谷・小林(2010) NP把握テストのスコアは、学校の英語の成績上位群と下位群を 判別できる • 吉原(2019) NP把握テストのスコアにより上位・下位とわけられた各グループの、 英文読解テストと英語ライティングテストそれぞれのスコアの平均 は有意に異なる
  8. 8. 研究の課題 • 英語NPを把握できる/できないことが何を意味するのかを 明らかにしたい RQ. 英語名詞句把握テストにおいて上位の成績を取るグループと下位の成績を取る グループでは、彼らが書く英語自由英作文において、下記の点に違いがあるか? 文構造の複雑性 正確性 t-unitの平均語数 誤りがあるt-unitの割合 複数語から成る名詞句の割合 S,V,C,Oなど主要素が脱落している誤りの割合 形容詞+HNから成る名詞句の割合 語順の誤りの割合 HN+前置詞句から成る名詞句の割合 名詞句内の修飾に関わる誤りの割合
  9. 9. 研究の方法
  10. 10. 協力者 • 埼玉県にある公立中学校に所属する中学生189名 • 中学1年生次〜2年生次にかけ、3回のNP把握テストと 英作文テストを受験
  11. 11. 使用データ:名詞句 • NPを把握できるかを測るテスト (Billy’s Test) (金谷・小林・告・贄田・羽山, 2015) • 中学1年次の2学期(12月) 中学1年次の3学期(2月) 中学2年時の1学期(7月)の3回実施
  12. 12. 使用データ:英作文 • 勝呂(2022)の一環として書いた作文 • 「将来の夢」について • 辞書は使用せず
  13. 13. 名詞句習得状況に基づく学習者グループ • 3回受験したBilly’s Test(第1回〜第3回)のそれぞれにおいて、偏差 値60以上を「上位」、偏差値40未満を「下位」とした • 3回のうち2回以上「上位」または「下位」となった生徒を そのグループに属していると見なした • 「上位グループ」19名、「下位グループ」23名となった
  14. 14. 各学習者グループの英作文の特性 • 上位者19名のうち分析対象の英作文は20 • 下位者23名のうち分析対象の英作文は13(欠席等の理由による) 上位グループ 下位グループ 総語数の平均 30.4語 11.8語 センテンス数の平均 5.1 2.8 t-unit数の平均 5.4 2.8 センテンス数の平均 とt-unit数の平均はほ ぼ変わらない (特に下位) 文構造の複雑さは まだ十分ではない
  15. 15. 英作文の分析観点 • ライティング研究においてしばしば用いられる観点(流暢性、複雑性、正確性)のうち NPの習得に関連が強いと思われる2つを選択( Wolfe-Quintero, Inagaki & Kim, 1998) • 初習者であることを踏まえ、それぞれの指標は以下の通り 複雑性 正確性 t-unitの平均語数 誤りがあるt-unitの割合 複数語から成る名詞句の割合 S,V,C,Oなど主要素が脱落している誤りの割合 形容詞+HNから成る名詞句の割合 語順の誤りの割合 HN+前置詞句から成る名詞句の割合 名詞句内の修飾に関わる誤りの割合
  16. 16. 結果
  17. 17. 結果 ①:複雑性 • 形容詞+HN(主要部名詞)から成るNPの割合が顕著に異なる • いずれのグループもまだ初級段階だが、まずは形容詞を付けるNPを作るところから 発達が始まることがわかる • より正確にNPを認識することができる学習者の方が、より複雑なNPを作ることができるようになる • HN+前置詞句のNPを把握できても、それを作ることはまだできない 複雑性 上位 下位 t-unitの平均語数 5.6語 4.3語 複数語から成る名詞句の割合 65.5% 52.8% 形容詞+HNから成る名詞句の割合 22.4% 5.3% HN+前置詞句から成る名詞句の割合 0% 0%
  18. 18. 結果 ②:正確性 • S,V,C,Oなど主要素が脱落している誤りの割合が顕著に異なる • 正確にNPを認識することができない学習者の方が、センテンスの主要素を脱落させてしまう • 句をまとまりとして捉えられることは、センテンス構造を正しく作ることの基礎となり得る 正確性 上位 下位 誤りがあるt-unitの割合 40.7% 55.6% S,V,C,Oなど主要素が脱落している誤りの割合 3.7% 30.6% 語順の誤りの割合 0.9% 8.3% 名詞句内の修飾に関わる誤りの割合 1.3% 0%
  19. 19. 結果から導き出されること • センテンス中のNPを正しく把握(まとまりとして認識)できることは、英作文の作成という発 表技能と関連がある • もっとも基本的と考えられる「形容詞+HN」の前置修飾構造のNP作成においてでさえ、NP把握 ができるかどうかとの関係が見られる。つまり、把握ができない学習者は、もっとも基本的な 構造のNPを作ることも困難 • 「HN+前置詞句」の後置修飾構造のNPについて、それを把握はできても作成することは困難 (=認識から発表までには時差がある) • NPはその長さや構造が多様となり得る句だが、それを正しく把握できないと、センテンスの主 要素(主語、動詞、補語、目的語にあたる句)を脱落させてしまうという、より重大なエラー をおかしてしまう • 以上のことから、NPの把握は英語の基礎基本であると見なせると考える
  20. 20. 本研究の結果から得られる教育的示唆 • 「句の把握」は明示的に教授され特化して練習する文法事項ではないが、その重要性を認識す るべきだと考える • 特に長さ・構造が多様である名詞句については、学習者が習得することが困難であることを認 識するべきだと考える • 名詞句の習得が、その他の言語能力・スキルと関連しており、特にそれらの基本となることを 認識するべきだと考える • 名詞句のトレーニングをすれば良いのかは今後の研究成果を待ちたいところだが、少なくとも 名詞句の習得状況を気にする必要があると考える
  21. 21. 今後の課題 • 本研究の協力者である中学生は、今後も名詞句把握テスト(Billy’s Test)を中学在学中に 5回受験する予定である • その結果を分析し、名詞句習得のプロセスを注視していく • さらに、同中学生の他の観点からの知識・能力・スキルを測る機会も得たい • さらに、より多くの中学生からもデータを得たい • 生徒にとって主要なインプット源となる検定教科書に出現する名詞句の分析も行っている • 名詞句を指導すると習得はどのように促進されるのか、その効果検証も行いたい
  22. 22. 引用文献 • Biber, D., Johansson, S., Leech, G., Conrad, S. & Finegan, E.(1999)Longman Grammar of Spoken and Written English. Longman. • Huddleston, R. & Pullum, G. K.(2002)The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge University Press. • 金谷憲・小林美音・告かおり・贄田悠・羽山恵(2015)『中学英語いつ卒業? ―中学生の主語把握プロセス― 』三省堂. • 木村恵・金谷憲・小林美音(2010) 日本人中学生の英語名詞句構造の理解過程:縦断的調査による実態把握と判別力の検証」『関東甲信越英 語教育学会研究紀要』24, pp.61-72. • 大田悦子.(2019)「高校英語教科書の難易度と学習者の読む力との関係―そのギャップが授業実践にもたらす影響」『白山英米文学』44, pp.55-82. • 勝呂奈緒.(2022)「書く力を育成するための『視写活動』という指導について」関東甲信越英語教育学会第47回栃木大会 口頭発表. • 鈴木祐一・臼倉美里. (2016). 「日本高校生英語名詞句構造の把握力―Koukousei Billy’s (KB)テストの開発―」『外国語教育メディア学会関⻄支 部メソドロジー研究部会 第11回報告論集』, pp.23-47. • Tsunashima, Y.(2018)Analyses of Noun Phrases Appearing in Junior or Senior High School Textbooks. 獨協大学外国語学部. • Yoshihara, M.(2020) The Relationships between Japanese Learners’ Ability to Recognize English Noun Phrases, Speed-Reading Ability and English Writing Ability. 獨協大学外国語学部. • Wolfe-Quintero, K., Inagaki, S. & Kim, H. (1998) Second Language Development in Writing: Measures of Fluency, Accuracy, and Complexity. Honolulu, HI: University of Hawai‘i Press.

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