第3回 宇沢弘文を読む
社会的共通資本とゲーム理論の視点から
安田洋祐
大阪大学 大学院経済学研究科 准教授
Eメール: yasuda@econ.osaka-u.ac.jp
ウェブ: https://sites.google.com/site/yosukeyasuda/jp
2020年1月 1
簡単な自己紹介
• 1980年 東京都生まれ
• 2002年 東京大学経済学部卒業
(卒業生総代、大内兵衛賞)
• 2007年 プリンストン大学Ph.D.
• 2007年 政策研究大学院大学助教授
• 08年~11年 東京財団VCASIフェロー
• 2014年 大阪大学経済学部准教授
• 研究領域
– ゲーム理論、インセンティブ設計
• 学術研究の傍ら講演会やマスメディア
を通した情報発信、政府審議会等での
委員活動にも積極的に取り組んでいる
2020年1月 2大阪大学|安田洋祐
ゲーム理論/制度設計(主流派)
⇒ 資本主義研究(異端?)へ
2020年1月 3大阪大学|安田洋祐
メディア出演
• レギュラー・準レギュラー
– 関西テレビ 「報道ランナー」 ← 毎週火曜日
– 読売テレビ 「情報ライブ ミヤネ屋」
– テレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」
• 特別番組
– NHK BS1 「欲望の資本主義」シリーズ
– NHK 総合 「NHKスペシャル マネーワールド」 シリーズ
• ネット配信
– 日経ビジネス「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」
– News Picks: WEEKLY OHIAI
• 新聞寄稿
– 朝日新聞論壇委員(2019年度~)
2020年1月 4大阪大学|安田洋祐
恩師は宇沢先生の門下生!
• ゼミの指導教員
– 吉川洋(マクロ経済学)、植田和男(金融)
• 卒業時の学部長
– 岩井克人(経済学史)
• 研究会交流など
– 松島斉(ゲーム理論)
• プリンストン留学時代
– 清滝信宏(マクロ経済学)
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 5
本日の流れ
1. イントロダクション
 理論経済学者としての宇沢先生
2. 新古典派理論と社会的共通資本
 宇沢先生はなぜ新古典派理論から離れたのか
3. 社会的共通資本とゲーム理論
 社会的共通資本の理論分析はなぜ難しいのか
2020年1月 6大阪大学|安田洋祐
イントロダクション
理論経済学者としての宇沢先生
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 7
「宇沢経済学」の集大成?
日本語版(2003年7月) 英語版(2003年8月)
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 8
『経済解析:展開編』の「はしがき」
• 本書の出版にあたって、著者として非常に名誉であ
り、またうれしいことがある。それは本書が、このた
び新しく始まる岩波書店と Cambridge University
Press による共同の出版計画の一冊として、出版さ
れることになったことである。
• 本書は、 Cambridge University Press から出版さ
れる予定の Economic Theory and Global Warning
の岩波版であるが、日本の読者のための解説的な
文章を数多く加えた。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 9
宇沢先生のメッセージ
• 本書では、『基礎編』で導入した経済解析の考え方
と分析的手法をできるだけ有効に使って、社会的共
通資本、あるいはそれに関連する制度主義的な問
題を分析することを試みた。
• しかし、その成果は必ずしも満足できるものではな
い。著者のもつ問題意識を理解していただける若い
経済学者の手によって、実り多い発展をとげること
を期待するものである。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 10
2年後に出た大著の「はしがき」
“I wish that young
economists with
competent analytical
skills and a deep concern
for the welfare of future
generations will follow the
lead suggested and
develop a comprehensive
theory of social common
capital.” (Prefaceより)
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 11
『経済解析:展開編』の「目次」
• 第1部:地球温暖化と経済理論
– 1:地球温暖化と動学的帰属理論
– 2:地球温暖化とリンダール均衡の安定性
– 3:地球温暖化とゲーム理論
– 4:地球温暖化と世代間の公正
• 第2部:経済分析の精緻化
– 5:パレート最適、競争均衡、リンダール均衡
– 6:競争均衡とコアの理論
– 7:サミュエルソン的公共財とゲーム理論
– 8:クールノー均衡のゲーム理論的アプローチ:プレリュード
– 9:オリゴポリーの経済分析
– 10:時間選好と資本蓄積にかんする動学的双対定理
– 11:内生的時間選好、ペンローズ効果、環境の質の動学的最適化
– 12:内生的時間選好にかんするクープマンス=宇沢=エプシタイン理論
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 12
• 第3部:社会的共通資本の理論
– 13:「コモンズの悲劇」と社会的共通資本の理論
– 14:社会的共通資本の一般理論
– 15:社会的共通資本の静学的、動学的学部性
– 16:社会的共通資本とリンダール均衡
– 17:社会的不安定性と社会的共通資本
• 第4部:国際経済学にかんする若干の問題
– 18:経済統合と政策協調のゲーム理論的アプローチ
– 19:資本蓄積と対外債務の最適なパターン
– 20:インフレーション過程の国際的拡散
• 第5部:経済学の新しい展開を求めて
– 21:20世紀の経済学を振り返って
– 22:新しい経済学への展望
• 付論:ゲーム理論入門
– 付論1:ゲーム理論入門
– 付論2:オーマン・レクチャー ―― ゲーム理論の数学的基礎
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 13
新古典派理論と社会的共通資本
宇沢先生はなぜ新古典派理論から離れたのか
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 14
象徴的な二論文
Chapter 11 (1962)
• Walras's existence
theorem and Brouwer's
fixed-point theorem
– 『基礎編』に所収
Chapter 19 (1974)
• On the economics of
social overhead capital
– 仏語論文の(初)英訳!
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 15
1974年といえば…
(彌永昌吉氏の回想)
• 『自動車の社会的費用』が
発刊されたのは1970年代
になってからであったが、
宇沢君は車を運転しながら
、後にその本に書かれたよ
うなことを話され、社会的費
用を考えれば、便利だから
といって自動車を利用する
のは、経済学上よいことで
はないといわれた。私も家
内もなるほどと思った。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 16
Ch11:宇沢の同値定理
競争均衡の存在定理
超過需要関数が
• 0次同次性
• 連続性
• ワルラス法則
を満たす
⇒ 競争均衡が存在する
不動点の存在定理
[Brouwerの不動点定理]
n次元単体からそれ自身への
関数が
• 連続性
を満たす
⇒ 不動点が存在する
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 17
両者が数学的に全く同じであることを証明
↓
新古典派市場モデルに(数学的な)限界
を感じたきっかけのひとつでは?
Ross Starr 教授が語る含意
• [The Uzawa Equivalence Theorem] says that use of the
Brouwer Fixed-Point Theorem is not merely one way to
prove the existence of equilibrium. In a fundamental sense,
it is the only way.
• Any alternative proof of existence will include, inter alia, an
implicit proof of the Brouwer Theorem. Hence, this
mathematical method is essential; one cannot pursue this
branch of economics without the Brouwer Theorem.
• If Walras (1874) provided an incomplete proof of existence
of equilibrium, it was in part because the necessary
mathematics was not yet available.
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 18
Ch19:公共財 ≠ 社会的共通資本
古典的な(純粋)公共財
• フロー概念
⇒ 消費される財・サービス
• 排除不可能性
• 非競合性
⇒ 等量消費
⇒ 費用負担へのただ乗り
• 〇サミュエルソン条件
社会的共通資本
• ストック概念
⇒ 財・サービスを生む源泉
• 排除は難しい
• ある程度は競合する
⇒ 自由選択と混雑(外部性)
⇒ 負担・利用両方にただ乗り
• ×サミュエルソン条件
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 19
公共財を越えて
(以下は『展開編』の396~7頁からの抜粋)
• 社会的共通資本の概念は、サミュエルソンの公共財と、次の2つの点で
異なる。
• 第1に、経済を構成する経済主体は、社会的共通資本のサービスをどれ
だけ使うかを、それぞれの主観的選好関係にもとづいて、最大の効用が
得られるように、主体的に決めることができる。このとき、各経済主体は、
社会的共通資本のサービスに対して、決められた価格にもとづいて使用
料金を支払う。
• 第2に、社会的共通資本のサービスにともなって、混雑がみられる。すな
わち、各経済主体が、社会的共通資本のサービスを使ったときに得られ
る効用の水準は、その経済主体が使った社会的共通資本のサービスの
量に依存するだけでなく、他の経済主体が、同じ社会的共通資本のサー
ビスをどれだけ使っているかにも依存する。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 20
公共財の分類
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 21
競合する 競合しない
排除できる 私的財 クラブ財
排除できない コモンズ (純粋)公共財
ハーディン「コモンズの悲劇」
⇒民営化か国営化による解決
公共財の分類
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 22
競合する 競合しない
排除できる
見えざる手
アダム・スミス
アイデア
ポール・ローマー
排除できない
社会的共通資本
宇沢弘文
公共財の理論
サミュエルソン
外部性(ピグ―)の考えを導入
⇒公共財と外部性を融合
内生的成長理論≠外部性の成長理論
(青木昌彦氏のコメント)
• 先年、MITのソロー教授が成長
理論にたいする貢献で、ノーベル
経済学賞を受けたが、ソロー教
授の業績は新古典派的な自働
的モデルの解析にあり、宇沢先
生の業績はそれと補完的な制御
理論を開発したという意味で、双
璧の仕事といって言い過ぎでは
ない。
• 近年、内生的成長理論という分
野が登場しつつあるが、技法的
には、宇沢先生の当時の業績を
越えているといえない。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 23
新旧の成長理論
• ソロー・モデル ← ノーベル賞(1987年)
– 貯蓄率は固定(ラムゼイ・モデルで内生化)
– 市場均衡経路(個別最適)=最適成長経路(全体最適)
– 技術進歩は外生的
• 宇沢の二部門モデル
– 技術進歩/研究部門を内生化
– 最適成長経路(≠市場均衡経路)のみ導出
• ローマー・モデル ← ノーベル賞(2018年)
– 技術進歩/研究部門を内生化
– 市場均衡(独占的競争)経路も導出、政策提言に繋げる
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 24
社会的共通資本の定式化
• 𝑄 𝛽 = 𝐹 𝛽
(𝐾𝛽, 𝑋 𝛽, 𝑋, 𝑉)
– Kは私的投入、Xは社会的投入、Vは社会的共通資本量
– 財βの生産関数が社会的な投入財[フロー]を含む
代替的なアプローチ?
• 社会的共通資本[ストック]が労働・資本などの私的投入財
の利用可能性(feasibility)に影響を与える
• 私的投入財を中間財として定式化しては?
– 中間財の生産関数が社会的共通資本によって変化
– (例)優秀な労働者を育むには制度資本(教育)が必要
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 25
ハーディンの「コモンズの悲劇」
(以下は『展開編』の286~7頁からの抜粋)
• ハーディン論文は、ある1つの経済学の考え方の流れのなかで受け入れ
られていった。「コモンズの悲劇」は、コモンズの所有および利用にかんし
て、私的所有関係が欠如しているために必然的に起こる現象であるとい
う主張である。
• もし、コモンズの土地、自然資源にかんして、民有化をおこなえば、各個
人がそれぞれ私的な利益追求の立場から、合理的、効率的な利用を考
え、自然資源の慎重かつ保全的な管理がおこなわれることになるはずで
ある。そのときには、不確実性もなくなり、フリー・ライダーの問題も起こら
ないであろうというのである。
• コモンズの制度は、所有権が共有化されているため、市場機構がうまく
働かず、効率的な資源配分が実現しない。アダム・スミスの「見えざる手」
は、コモンズの資源が私有化されたときにはじめて機能する。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 26
• この考え方は、1970年代から1980年代の初めにかけて、多くの経済学者
を巻き込んだだけでなく、いわば、時代精神(Zeitgeist)ともいえる役割を
はたした。アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権、そして日
本の中曽根政権に共通した政治思想を支えていたのであった。
• しかし、この考え方は、コモンズとオープン・アクセスとの区別について、
完全な誤解にもとづいている。オープン・アクセスというときには、コモン
ズの資源をだれでも自由に利用することができることを意味するが、コモ
ンズについては、その資源を利用することができる人は、ある特定の村、
地域の人々か、あるいはある特定の職業的、社会的集団に属する人々
に限定されている。
• しかも、どのようなルールにしたがって、コモンズの資源を利用するかに
ついてきびしく規定され、またコモンズの維持のために、各構成員がどの
ようなサービスを提供するかについてもくわしく規定されている。コモンズ
の概念自体が、オープン・アクセスを否定するものであるといってもよい
のである。コモンズにかんする所有権と管理の問題は、社会的、文化的
、歴史的な条件と密接な関わりをもり、きわめて多様な形態をもっている
。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 27
社会的共通資本とゲーム理論
社会的共通資本の理論分析はなぜ難しいのか
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 28
「目次」の中のゲーム理論
• 第1部:地球温暖化と経済理論
– 1:地球温暖化と動学的帰属理論
– 2:地球温暖化とリンダール均衡の安定性
– 3:地球温暖化とゲーム理論
– 4:地球温暖化と世代間の公正
• 第2部:経済分析の精緻化 ←有望な分析ツールの紹介?
– 5:パレート最適、競争均衡、リンダール均衡
– 6:競争均衡とコアの理論
– 7:サミュエルソン的公共財とゲーム理論
– 8:クールノー均衡のゲーム理論的アプローチ:プレリュード
– 9:オリゴポリーの経済分析
– 10:時間選好と資本蓄積にかんする動学的双対定理
– 11:内生的時間選好、ペンローズ効果、環境の質の動学的最適化
– 12:内生的時間選好にかんするクープマンス=宇沢=エプシタイン理論
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 29
• 第3部:社会的共通資本の理論 ←ゲーム理論をまだ使っていない
– 13:「コモンズの悲劇」と社会的共通資本の理論
– 14:社会的共通資本の一般理論
– 15:社会的共通資本の静学的、動学的学部性
– 16:社会的共通資本とリンダール均衡
– 17:社会的不安定性と社会的共通資本
• 第4部:国際経済学にかんする若干の問題
– 18:経済統合と政策協調のゲーム理論的アプローチ
– 19:資本蓄積と対外債務の最適なパターン
– 20:インフレーション過程の国際的拡散
• 第5部:経済学の新しい展開を求めて
– 21:20世紀の経済学を振り返って
– 22:新しい経済学への展望
• 付論:ゲーム理論入門
– 付論1:ゲーム理論入門
– 付論2:オーマン・レクチャー ―― ゲーム理論の数学的基礎
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 30
オーマン・レクチャー
(『発展編』676ページより抜粋)
• ゲーム理論の数学的な基礎
については、イスラエルの数
学者ロバート・オーマン教授が
、1975-76年、アメリカのスタン
フォード大学でおこなった名講
義がしばしば引用される。
• 付論1と重複するところが多い
が、オーマン・レクチャーを紹
介する意味もあって、ここでま
とめて述べることにする。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 31
数学出身の偉大な経済学者
宇沢弘文 ロバート・オーマン
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 32
宇沢先生のゲーム理論に対する懐疑
(以下は『展開編』の664~5頁からの抜粋)
• しかし、ここで、留意しておかなければならないことがある。それは、ゲー
ム理論の発展の過程で主導的な役割をはたしてきた人々がほぼ共通し
てもっている文化的、社会的、人間的性向である。それは、第二次世界
大戦中から戦後のある時期までを通じて、主としてアメリカの知識人に共
通してみられた性向である。論理的、演繹的思考にすぐれ、近代合理主
義的精神を貫こうとするものである。
• 既存の学問的パラダイムを超えて(往々にして、基本的パラダイムの理
解が皆無の場合もあるが)、新しい思考の展開をはかろうとするものであ
る。このZeitgeist(時代精神)を象徴するのが、ゲーム理論である。しかし
、この性向は、近代合理主義に対して、信仰ともいうべき信頼感にもとづ
いて理論的枠組みがつくられ、議論が展開されている。そのとき、歴史的
、伝承的に受け継がれてきた人類の文化的、学問的、技術的、芸術的蓄
積に対する知識と尊敬に欠けるところがあることも否定できないだろう。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 33
ゲーム理論の分類
• 非協力ゲーム理論
– 各人が独立に意思決定を行う
– ナッシュ均衡 (誰も行動を変えるインセンティブが無い)
– 囚人のジレンマ ⇒ 個人の利益≠全体の利益
• 協力ゲーム理論
– 拘束力のある合意形成が可能
– コア、安定マッチング ⇒ 近年実装が進む
– シャプレー値 ⇒ Google検索で活用?
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 34
囚人のジレンマ:ストーリー
2020年1月 35
• AさんとBさんの2人がある犯罪容疑で逮捕された!
• 有罪にするだけの証拠がなく、検事は自白が頼り(焦)
• そこで、次のような司法取引を容疑者に持ちかけた…
– 2人とも自白すれば、A、Bともに懲役3年
– 2人とも黙秘すれば、A、Bともに懲役1年
– Aが自白、Bが黙秘すれば、Aは釈放、Bは懲役5年
– Bが自白、Aが黙秘すれば、Bは釈放、Aは懲役5年
• まず、このゲームを表の形でまとめてみよう!
– プレイヤー、戦略、利得が一目で分かるようになる
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマ:利得表
2020年1月 36
• ここでは、懲役の年数(×マイナス)を利得に設定
– (他の数字でも同じ「囚人のジレンマ」を表すことが可能)
B
A
黙秘 自白
黙秘 -1
-1
0
-5
自白 -5
0
-3
-3
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマ:利得表による分析(1)
2020年1月 37
• もしも相手(B)が黙秘を選んでいた場合には
– 自分(A)は自白を選ぶ方が得: 0 > -1 なので
B
A
黙秘 自白
黙秘 -1
-1
0
-5
自白 -5
0
-3
-3
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマ:利得表による分析(2)
2020年1月 38
• もしも相手(B)が自白を選んでいた場合には
– 自分(A)は自白を選ぶ方が得: -3 > -5 なので
B
A
黙秘 自白
黙秘 -1
-1
0
-5
自白 -5
0
-3
-3
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマ:利得表による分析(3)
2020年1月 39
• (黙秘、黙秘)が2人にとって望ましい結果に見えるが…
– 実は相手の戦略によらず「自白」するのが各自の最適戦略!
• 各人が合理的に選択する結果、(自白、自白)が実現!
– まさに、囚人の「ジレンマ」が起こってしまう…
B
A
黙秘 自白
黙秘 -1
-1
0
-5
自白 -5
0
-3
-3
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマ:注意点
2020年1月 40
• このゲームでは個々のプレーヤーが最適戦略を持つ
– 【最適戦略(支配戦略)】 他のプレーヤーたちがどのような行動を選
択しても、自分がある特定の行動Aを選ぶことによって利得が最大化
されるとき、行動Aを「支配戦略」と呼ぶ。
– 支配戦略の組み合わせは必ずナッシュ均衡になる!
– 支配戦略が存在しないゲームもたくさんある
• 各人の最適な意思決定 ≠ 全体にとっての効率性
– ナッシュ均衡が全体にとって望ましい結果(パレート効率的な結果)を
もたらすとは限らない!
– 「アダム・スミスは間違っていた!」(映画『ビューティフル・マインド』の
ナッシュの台詞)を簡潔に体現している
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマの応用:価格競争
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 41
【プレイヤー】 X社とY社が価格競争を行っている
【戦略】 価格を「据え置く」か「値下げ」の2つ
【利得】 利潤は次のように決まる
• 両企業とも据え置きの場合にはともに 2 億円の利益
• 両企業とも値下げの場に合はともに利益はゼロ
• X が値下げ、Y が現状価格だと
– X は 3 億円の利益、Y は 1 億円の損失
• Y が値下げ、X が現状価格だと
– Y は 3 億円の利益、X は 1 億円の損失
価格競争:利得表による分析
2020年1月 42
• (据え置き、据え置き)が2人にとって望ましい結果だが…
– 実は相手の戦略によらず「値下げ」するのが各社の最適戦略!
• 各社が合理的に選択する結果、(値下げ、値下げ)が実現!
– 泥沼の「価格競争」から逃れることができない…
Y
X
据え置き 値下げ
据え置き 2
2
3
-1
値下げ -1
3
0
0
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマ:別の利得表
2020年1月 43
• それぞれのプレイヤーにとっての結果の望ましさ:
– (裏切、協力)>(協力、協力)>(裏切、裏切)>(協力、裏切)
プレイヤー2
プレイヤー1
協力 裏切り
協力 2
2
3
0
裏切り 0
3
1
1
大阪大学|安田洋祐
囚人のジレンマの応用例
2020年1月 44
現象 プレイヤー 「協力」 「裏切り」
軍拡競争 国 軍縮 軍拡
国際貿易政策 国 関税引き下げ 税率据え置き
男女間の協力 カップル 相手に従う 相手に要求
公共財供給 地域住民 貢献/負担 ただ乗り
森林伐採 きこり 控えめに伐採 とれるだけ伐採
大阪大学|安田洋祐
アダム・スミスからダーウィンへ?
• 「経済学の父」とされるアダ
ム・スミスは、自由な市場は
すべての人にとっての最善
を生み出すと考えた。
• だが、現実世界を見回すと
スミスの「見えざる手」が機
能していないように思える。
• むしろ、ダーウィンが観察し
たように、個々の動物の利
益と、種としての大きな利
益は深刻に対立している。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 45
コモンズのゲーム理論分析
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 46
競合する 競合しない
排除できる
見えざる手
アダム・スミス
アイデア
ポール・ローマー
排除できない
コモンズの統治
オストロム
公共財の理論
サミュエルソン
ゲーム理論で統治を理論化
⇒「繰り返しゲームの理論」
コミュニティによるコモンズの統治
• Both state control and
privatization of resources have
been advocated, but neither the
state nor the market have been
uniformly successful in solving
common pool resource problems.
• In contrast to the proposition of
the tragedy of the commons
argument, common pool
problems sometimes are solved
by voluntary organizations rather
than by a coercive state.
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 47
第三の道:ラディカル・マーケット
共同所有自己申告税金(COST)
1. 資産評価額の自己申告
・保有している財産の価格を自ら決める
2. 自己申告額に基づく資産課税
・その価格に対して一定の税率分を課税
3. 財産の共同所有
・より高い価格の買い手が現れた場合には
- 1.の金額が所有者に対して支払われ、
- 買い手へと所有権が自動的に移転。
2020年1月 大阪大学|安田洋祐 48

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