養護教諭のための
フィジカルアセスメント
千葉大学大学院医学研究院 診断推論学
医学部附属病院 総合診療科
鋪野 紀好
Shikino K, M.D., Ph.D.
しきの きよし
Shikino K, MD, PhD
臨床情報
ベイズの定理
で検証
診断推論:2つのパート
Shikino K, M.D., Ph.D.
仮説
疾患頻度
病態生理など
確定診断
外来での診断戦略
Shikino K, MD, PhD
直感
パターン認識
分析的
推論
病歴聴取のOPQRST
O:onset
(発症、いつ:急に、徐々に、知らないうちに)
P:provocation/palliation
(寛解・増悪因子)
Q:quality
(性状)
R:region/related symptom
(部位、随伴症状)
S:site/severity
(部位、重症度)
T:timing/time course
(どんなとき、どうなってきている)
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
咽頭痛
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
風邪の症状は?
・鼻汁/鼻閉
・咽頭痛
・咳嗽
・頭痛
・腹部症状
上気道
症状
局所症状
全身症状
・発熱
・全身倦怠感
グレイ解剖学より引用
鼻腔
咽頭
気管
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
14歳 女性
39℃の発熱
咽頭痛
白苔
咳なし
Shikino K, M.D., Ph.D.
鼻汁なし
点状出血
Shikino K, MD, PhD
咽頭痛>鼻汁/鼻閉, 咳嗽
・鼻汁/鼻閉
・咽頭痛
・咳嗽
・頭痛
・腹部症状
局所症状
全身症状
・発熱
・全身倦怠感
グレイ解剖学より引用
咽頭
Shikino K, M.D., Ph.D.
風邪と危険な疾患を見抜くコツ
急性咽頭炎
Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
インフルエンザにはイクラがある!
(インフルエンザ濾胞)
1-2mm, 緊満感と光沢があり周囲より赤い
Shikino K, MD, PhD
A群β溶連菌 アデノウイルス EBウイルス
好発年齢
2歳以上の小児
(乳児にはまれ)
乳幼児に多い
未婚の若年
成人
頸部リン
パ節の圧
痛・腫脹
前頸部 顕著でない
前・後頸部
とも
症状の持
続期間
3-5日 5日 数週間
白苔を伴う主な咽頭炎
Shikino K, M.D., Ph.D.
大平 Modern Physician 2008
Shikino K, MD, PhD
頸部リンパ節診察のポイント
• 自分なりの順番を決めよう
• 耳の前と後ろ…顎の下…首の浅いところと深いと
ころ…
• 全身か局所か
• 後頸部リンパ節は「鼻・口」より「のど・全身」
• 痛みの有無を確認しよう
• 痛み=炎症のサイン
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
「のどが痛い!」時の緊急疾患
緊急性の高い病歴・身体診察
「強い嚥下時痛」 「流涎」
「開口制限」 「嗄声/こもった声」
「呼吸困難」 「喘鳴」
「低酸素血症」
→急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍
医療機関へ直ちに収容!
Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
咽頭痛のフィジカルアセスメント
 発症時期・部位・性状や原因の問診
 随伴症状(頭痛、鼻汁、咳嗽)の問診
 咽頭部の視診
 口腔内の視診
 皮膚の視診
 眼球結膜の視診
 バイタル測定(体温、脈拍)
 リンパ節の触診
Shikino K, MD, PhD
頭痛
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
頭痛の分類
一次性頭痛
• 緊張型頭痛
• 片頭痛
• 群発頭痛 など
二次性頭痛
• 頭部外傷による頭痛
• 頭頸部血管障害による頭痛
• 精神疾患による頭痛 など
Shikino K, M.D., Ph.D.
国際頭痛分類第3版より引用
機能的
器質的
Shikino K, MD, PhD
緊張型頭痛
片頭痛
片頭痛の疑い
片頭痛+緊張型頭痛
その他
二次性頭痛
分類不能
藤田ら. 小児科臨床 2008
小児における頭痛の原因疾患
平均年齢10.7±3.7歳
Shikino K, M.D., Ph.D.
約80%
Shikino K, MD, PhD
片頭痛と緊張型頭痛の鑑別
Shikino K, M.D., Ph.D.
片頭痛 緊張型頭痛
発作的な頭痛 + −
持続時間 4〜72時間 30分〜7日
部位 片側性 両側性
性質 拍動性 非拍動性
強さ 中〜重 軽〜中
日常的動作による悪
化
+ −
悪心・嘔吐 + −
光過敏・音過敏 + −国際頭痛分類第3版より引用
Shikino K, MD, PhD
 感冒改善後の発症(double sickening)
 片側性の顔面痛
 頭部を下げることで片側顔面痛の増悪
 膿性鼻汁(特に中鼻道に膿性鼻汁)
 後鼻漏
 歯痛が主訴になることがある
急性副鼻腔炎診断のポイント
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
髄膜炎
Shikino K, M.D., Ph.D.
Neck Flexion Test
(感度81%)
ー 発熱(感度90%)
ー 悪心・嘔吐(感度30%)
ー 羞明(光が異常に眩しくみえる)
ー 意識障害
ー 髄膜刺激徴候
 Jolt Accentuation(ジョルト・サイン)
 Neck Flexion Test
(閉口で下顎が胸につくか?)
髄膜刺激徴候
Shikino K, MD, PhD
Jolt Accentuation
Shikino K, M.D., Ph.D.
1秒間に2-3回の頻度で
左右に水平回旋
→頭痛増強で陽性
髄膜炎に対する感度97%
(ただし特異度は低い!)
髄膜刺激徴候
Shikino K, MD, PhD
頭痛の3つの質問
• 突発
• 増悪
• 最悪
3項目すべて「いいえ」
→ 危険な頭痛は否定的
Basugi A, et al. 2006
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
浜野晋一郎.小児科診療, 2007
Shikino K, M.D., Ph.D.
緊急性が高い症状の判断
 急激な発症
 進行性の強い頭痛
 これまでに経験したことのない激しい頭痛
 頭痛のために覚醒してしまう
 外傷の既往
 咳, くしゃみ, 頭位変化, 体位変化で増強
Shikino K, MD, PhD
頭痛の診察のポイント
 慢性頭痛の約80%は緊張型頭痛
または片頭痛
 突発・最悪・増悪では危険な頭痛
に注意
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
頭痛のフィジカルアセスメント
 痛みの種類の問診
 嘔吐・嘔気の有無の問診
 顔色・表情の観察
 意識状態の確認
 咽頭の視診
 鼻腔の視診
 バイタル測定(体温、脈拍)
 リンパ節の触診
 副鼻腔の触診
 髄膜刺激徴候
Shikino K, MD, PhD
腹痛
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
Onsetは急性?慢性・反復性?
頻度 急性 慢性・反復性
高
急性胃腸炎
便秘
生理痛
外傷
便秘
生理痛
排卵痛
中
急性虫垂炎
消化性潰瘍
胆嚢炎・胆管炎
膵疾患
アレルギー性紫斑病
過敏性腸症候群
消化性潰瘍
炎症性腸疾患
心因性腹痛
低
精巣捻転
卵巣嚢腫茎捻転
骨盤内炎症性疾患
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
部位
による鑑別Shikino K, MD, PhD
• Percussion (Tapping) Pain
• 打診で痛い!!!
• 反跳痛
• 押したときより離したときのほうが痛い
• 筋性防御
• 勝手に腹筋に力が入ってしまう
• 板状硬
• 腹筋が”板”の様にガチガチになる
• 所見を取るのが難しい…
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
腹膜刺激症状
Shikino K, M.D., Ph.D.
急に圧迫を解除
<
疼痛部位を圧迫
反跳痛(ブルンベルグ徴候)
Shikino K, MD, PhD
• Heel Drop Sign
• 感度93%
→ なければ可能性は低い
• かかとを上げて
ストン と落とす
• ベッドの上で
かかとを叩いて代用
• 咳嗽試験:咳をして痛い
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
腹膜刺激症状
過敏性腸症候群 VS 器質的腸疾患
Shikino K, M.D., Ph.D.
• 体重減少
• 発熱
• 腹痛による睡眠障害
• 血便
• 家族歴
→器質的腸疾患を検討
Shikino K, MD, PhD
Pediatr Gastroenterol Hepatol Nutr 2013.
World J Clin Cases 2013.
小児急性腹症の原因疾患
5-12歳
• 胃腸炎
• 虫垂炎
• 機能的腹痛
• 便秘症
• 消化性潰瘍
• アレルギー性紫斑病
• 尿路感染症
• 肺炎
• 糖尿病性ケトアシドーシス
12歳以上
• 胃腸炎
• 虫垂炎
• 便秘症
• 月経困難症
• 排卵耳痛
• 骨盤腹膜炎
• 流産
• 異所性妊娠
• 卵巣/精巣捻転
• 消化性潰瘍
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
急性腹症の手かがり
痛みが激烈
前屈、腹を抱える姿勢
腹膜刺激症状
じっとして体を動かさない
ショック症状
頻脈、頻呼吸、血圧低下、冷汗
Shikino K, MD, PhD
腹部診察のポイント
• 視診→聴診→打診→触診
• 触って赤くなる前に見て
• お腹を刺激する前に聞いて
• 打診で痛みがないか確認して
• 浅い触診…深い触診…
• 視診
• 横から見る、前から見る
• 息をこらえてもらう(排便するようにいきむ)
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
• 聴診
• 膝を伸ばして
• 聴診器は「置くだけ・乗せるだけ」
• 押し込むと腸が刺激されて音が変わります
• 30秒聞いて
• ずっとなってる =亢進 → ウイルス性腸炎な
ど
• 4-5回「ぐるる」 =正常
• 1回もならない =減弱 →麻痺性イレウスなど
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
腹部診察のポイント
腹部診察のポイント
• 触診
• 膝を曲げて
• 「お腹の筋肉の力を抜いて下さい」と具体的に
• 痛い場所は最後に
• 圧痛点
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
Shikino K, M.D., Ph.D.
腹痛のフィジカルアセスメント
 発症時期・部位・性状や原因の問診
 食事との関係の問診
 排便の状態に関する問診
 排尿に関する問診
 頭痛の有無の問診
 嘔気・嘔吐の有無に関する問診
 腹部の視診
 腸蠕動音の聴診
 痛む部位の触診
 バイタル測定(体温、脈拍)
 腹膜刺激徴候
Shikino K, MD, PhD
Take Home Message
高頻度疾患を把握する
(よくある病気はよくある)
日常病に精通する
(キーフィーチャーを捉える)
フィジカルアセスメント
Shikino K, M.D., Ph.D.Shikino K, MD, PhD
kshikino@gmail.com

養護教諭のためのフィジカルアセスメント