救急ジェネラルカンファレンス第4回
  痺れ
聖路路加国際病院
救命救急センター
異異常感覚の表現
痺れの定義
l  主観的訴えで, 異異常感覚と運動⿇麻痺のこと
⽇日本神経学会HP
•  Hyper- esthesia 知覚過敏
•  Hyp- esthesia 知覚鈍⿇麻
•  An- esthesia 無感覚
•  Dys- esthesia ⾃自発的な異異常感覚
•  Par- esthesia 外的刺刺激で異異常感覚
今回取り上げるのは
「異異常感覚」
痺れの原因  (神経内科専⾨門外来  1520例例)
  絞扼性神経障害の61%が⼿手根管症候群であった
原因 頻度度
末梢神経障害  最も多い!! 68%
•  外傷または絞扼性神経障害  最も多い!! 49%
•  代謝性障害 33%
•  感染または炎症性 5.9%
•  栄養障害orアルコール性 1.7%
•  中毒または薬剤性 1.5%
•  遺伝性 0.8%
•  その他 8.1%
脊髄障害  ⾒見見逃せない!!
17.3%
中枢神経障害  ⾒見見逃せない!!
9.3%
原因不不明 5.4%
JIM vol.16 no9 2006-9ただし神経内科専⾨門外来での症例例  ERではやや異異なる印象  
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
痺れの部位と原因  (ERでの極論論)
5
6
l 半⾝身の痺れ
– ⼤大脳病変
– 脳幹病変
痺れの部位と原因  (ERでの極論論)
低⾎血糖,てんかん,神経変性症など
稀な病態も考えられるが,
ERではまずは「頭の中」!!
診断は容易易!
7
l ⼿手のみの痺れ
– 頚椎病変(神経根)
– 神経絞扼障害
特に⼿手根管症候群
痺れの部位と原因  (ERでの極論論)
末梢神経障害は考えない
(末梢神経障害は⾜足から始まる!)
頸椎病変は「肩の痛み」を伴う!
8
l ⾜足のみの痺れ
– 脊椎病変(神経根)
– 末梢神経障害
痺れの部位と原因  (ERでの極論論)
脊椎病変は
Myelopathy脊髄症への増悪を
しっかりと診断できるように!
痺れの部位と原因  (ERでの極論論)
9
l ⼝口の痺れを伴う
– Pure Sensory
Strokeを考慮
Cheiro-oral syndrome(COS)の
病態,  症状,  原因に理理解を深めよう!
痺れの部位と原因  (ERでの極論論)
1
0
l 半⾝身の痺れ
–  ⼤大脳脳幹病変
l ⼿手のみの痺れ
–  頚椎病変(神経根)
–  神経絞扼障害
特に⼿手根管症候群
l ⾜足のみの痺れ
–  脊椎病変(神経根)
–  末梢神経障害
l ⼝口の痺れを伴う
–  Pure Sensory Strokeを
考慮する
⼤大脳・脳幹病変
1
1
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
運動⿇麻痺,  脳神経所⾒見見,
典型的な対側半⾝身⿇麻痺を
伴う場合は診断は容易易…
痺れだけが症状の脳卒中
Pure sensory stroke
                        に要注意!!
Pure sensory stroke
J  Neurol.  2005  Feb;252(2):156-‐‑‒62.
Clinical  study  of  99  patients  with  pure  sensory  stroke.
99名のPure Sensory Stroke患者を検討
l 脳卒中の4.7%
脳梗塞塞の4.3%,  脳出⾎血の1%,  ラクナ梗塞塞の17.4%
l  病型としてはラクナ梗塞塞が最多(87.8%)
アテローム性8%,  脳出⾎血3%,  原因不不明1%
l  病変としては視床が半数以上(56.5%)
内包  6%,  頭頂葉葉  5%,  放線冠  4%,  橋  3%,  優位半
球側頭葉葉を含む⼤大脳⽪皮質  2%
l  完全型 80例例
–  顔⾯面, 上下肢に及ぶ⽚片側感覚障害
l  不不完全型  19例例
–  ⼿手+⼝口             12例例 (Cheiro-oral syndrome)
–  ⼿手+⼝口+⾜足     6例例
–  ⼝口のみ 1例例
⼿手の痺れだけのPSSはある?
⼿手の痺れのみのPure sensory strokeは⾮非常に稀
このstudyではPSSと診断された全例例が顔⾯面の痺れを
伴っていた.  理理論論的にはありうるが単肢のしびれは
報告されていない。
視床の
冠状断
視床の機能解剖 VPL
VPM
⽀支配領領域 栄養⾎血管
VPL Ventral posterolateral
後外側腹側核
四肢体幹
(脊髄視床路路,内側⽑毛帯)
視床膝状体動脈(TG)
※後⼤大脳動脈の分枝
VPM Ventral posteromedial
後内側腹側核
顔⾯面
(三叉神経第2上⾏行行路路)
視床膝状体動脈(TG)
視床穿通枝動脈(TP)
VPL
VPM
四肢体幹
顔⾯面
視床の
冠状断
視床の機能解剖 VPL
VPM
⽀支配領領域 栄養⾎血管
VPL Ventral posterolateral
後外側腹側核
四肢体幹
(脊髄視床路路,内側⽑毛帯)
視床膝状体動脈(TG)
※後⼤大脳動脈の分枝
VPM Ventral posteromedial
後内側腹側核
顔⾯面
(三叉神経第2上⾏行行路路)
視床膝状体動脈(TG)
視床穿通枝動脈(TP)
VPL
VPM
四肢体幹
顔⾯面
視床の
冠状断
視床の機能解剖 VPL
VPM
⽀支配領領域 栄養⾎血管
VPL Ventral posterolateral
後外側腹側核
四肢体幹
(脊髄視床路路,内側⽑毛帯)
視床膝状体動脈(TG)
※後⼤大脳動脈の分枝
VPM Ventral posteromedial
後内側腹側核
顔⾯面
(三叉神経第2上⾏行行路路)
視床膝状体動脈(TG)
視床穿通枝動脈(TP)
VPL
VPM
TGの閉塞塞ではVPL,VPMの両⽅方が障害され,
⼿手⼝口の感覚異異常が出現
四肢体幹
顔⾯面
l  視床核には体性感覚以外にも機能がある
視床核(略略語) ⽀支配⾎血管 主な機能 障害時の症状
前核(AN) PM 記憶・情動 健忘・⾃自発性低下
背内側核(DM) PM,TP 記憶・情動 健忘・⾃自発性低下
前腹側核(VA) PM 運動の統制 ⼩小脳性失調・不不随意運動
外側腹側核(VL) PM,TG 運動の統制 ⼩小脳性失調・不不随意運動
後外側腹側核(VPL) TG 体性感覚(四肢) 感覚障害(四肢)
後内側腹側核(VPM) TG,TP 体性感覚(顔⾯面) 感覚障害(顔⾯面)
正中中⼼心核(CM) TP 意識識活動 意識識障害
束傍核(PF) TP 意識識活動 意識識障害
PSSと視床梗塞塞
PSSの最多が視床梗塞塞であるが、
視床梗塞塞ではPure sensoryでないこともある
PSSの予後は良良好
l  病院内死亡0%
l  41.5%が後遺症なく退院した
頚椎症(神経根症/脊髄症)
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1
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
「頚椎症」で
Myelopathyと
Radiculopathyの
違いを理理解しよう!!
頚椎症
l  椎間板の退⾏行行性変性が原因で,
椎間板ヘルニア,  ⾻骨棘,  後縦靱帯肥厚,
⻩黄⾊色靱帯肥厚などの圧迫要素が発達.
l  ①脊髄圧迫による脊髄症myelopathyと,
②脊髄から枝分かれした神経の圧迫による
  神経根症radiculopathyに分類.
2
4
①頚椎症性神経根症  Radiculopathy
l  40〜~60歳代での発⽣生が多い.
l  C7神経根が最も多い(C7>C6>C8>C5)
l  頚部痛が初発症状(70%以上) 上肢痛や⼿手
指の痺れは遅れて⽣生じることが多い
l  問診,  神経・⾝身体診察により⾼高位診断を
⾏行行うことが重要
Brain. 1994 Apr;117 ( Pt 2):325-35.
Spine (Phila Pa 1976). 2006 Aug;31(17):E568-73.
神経根症の⾼高位診断の基本
2
6
初発症状
感覚障害
運動障害  
腱反射
画像診断
1
2
3
4
5
2
7
l 初発症状として頚部〜~肩痛を伴う!
l 障害される神経根により
疼痛の出現する部位が有意に異異なる
– 肩甲上部:C5 or C6
– 肩甲間部:C7 or C8
– 肩甲⾻骨部:C8
l 神経根症の痛みは⽀支配領領域に沿った放散痛
Spine (Phila Pa 1976). 2006 Aug;31(17):E568-73.
「整形外科医のための神経学図説」南江堂  
    初発症状1
2
8
    感覚障害2
デルマトームを意識識した問診を⾏行行う!
    運動障害3
神経根 ⽀支配運動
C3 呼吸(横隔膜) (三  上と下を分ける)
C4 単独はない
C5
肩挙上(両腕を上に伸ばしてⅤ)
肘屈曲(開いた掌(=5)で顔を叩く)
C6 ⼿手関節背屈(⼿手⾸首で6の形作る)
C7
⼿手関節背屈(にゃにゃ(=7))
肘伸展(肘をシチっ(=7)と伸ばす)
C8 指屈曲(両指を8の字に組む)
T1 指の開閉(1ドル札を指で挟む)
    腱反射4
l  神経根症状  ⇛  腱反射↓
l  脊髄症状        ⇛  腱反射↑
神経根 腱反射
C5 上腕⼆二頭筋腱反射(肘の屈曲)
C6 腕撓⾻骨筋反射(⼿手関節背屈)
C7 上腕三頭筋反射(肘進展)
C5
C6
C7
3
1
    画像診断5
l まずは  単純X線  (頚椎X線正⾯面および側⾯面)
l C5椎体レベルで脊柱管前後径14mm以下(⼥女女性は13mm)
l 椎体と脊柱管の前後径の⽐比(Torg-Pavlov⽐比) 75%以下
l 発育性脊柱管狭窄と判断(頚椎症性脊髄症の診療療ガイドライン)
l 脊髄症状があればMRI企画
l T2強調画像で髄内の⾼高信号の有無が評価.
l 髄内⾼高信号がみられても必ずしも重症ではなく,軽微な
髄節症候だけの症例例もある
②頚椎症性脊髄症  Myelopathy
l  50歳代での発⽣生が多い
l  男性が⼥女女性の約2倍  
l  脊髄中⼼心部(上肢症状) ⇛  後側索索(下肢痙性⿇麻痺)
⇛前側索索(下肢の温痛覚障害) が⾃自然経過
l  頚椎症性脊髄症の初期症状は
両⼿手指のしびれ(64%)と歩⾏行行障害(16%)
l  障害側から末梢のレベル(デルマトーム多分節に及ぶ)
で両側性に運動障害と感覚障害を認める
l  痺れが主訴で頸部痛の先⾏行行がなければ神経根症
は除外してよい
脊椎脊髄  18(5):408-415,2005
3
3
ASIA分類
American spinal Injury Association
3
4
l 10秒テスト  Grip&Release Test
–  20回以上正常, 20回以下  Myelopathyの可能性
l Finger escape sign
–  ⼩小指が閉じられなくなる  悪化すると薬指も
l 箸,  ボタン,  書字
巧緻運動障害
clumsiness
3
5
脊髄症の痺れ
神経根のときより1椎間上
運動 知覚 症状
C3/4 C5 C6 全指の痺れ
C4/5 C6 C7 1-3指の痺れ
C5/6 C7 C8 3-5指の痺れ
C6/7 C8 T1 痺れなし
臨臨床整形外科19巻  409-415P, 1984年年
  C6/7の脊髄症では痺れない
神経絞扼障害
3
6
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
痺れの分類
痺れ  (感覚障害)
痺れの分布,病歴,⾝身体所⾒見見から障害部位を考える.6分類!
神経絞扼
(単神経)
末梢神経
対側半⾝身や
感覚野の領領域
障害側顔⾯面と
対側頸部以下
障害レベル
以下
デルマトームに
⼀一致
⼤大脳 脳幹 脊髄 神経根
外側脊髄視床路路
21 3 4 5 6
限局性障害 ⼿手袋靴下型
⼿手根管症候群の
理理解を深めよう!!
単神経障害
l 単⼀一の神経領領域にのみ感覚障害が出現
– 絞扼性神経障害
– ⼿手根管症候群
⼿手根管症候群とは
l  ⼿手根管内圧が上昇し, 正中神経が圧迫され、
正中神経領領域の感覚障害,  ⺟母指球筋萎縮を
来す疾患である.
l  夜間や頻繁に⼿手を使った際に症状が増悪.
l  確定診断には電気⽣生理理検査は必須
l  従来はPhalen徴候やTinel徴候といった
伝統的所⾒見見が陽性の場合に電気⽣生理理検査を
⾏行行っていたが…
Tinel徴候
⼿手根管部を叩いて,  正中神経
⽀支配域にしびれが⾛走れば陽性
Phalen徴候
⼿手関節を1分間内側に折曲げ  
しびれ感が増加すれば陽性  
•  感度度25%   特異異度度67%
•  LR+0.7    LR-1.1
Gerrら  1995年年
•  感度度58%    特異異度度54%
•  LR+1.3    LR-0.8
buch-jaegerとfoucher 1994年年  
l  伝統的に使⽤用されてきたPhalen徴候や
Tinel徴候は感度度・特異異度度ともに優れてなく、
優位な診断情報を付与しない
l  Hand diagram(痺れの⼿手模式図)は
⼿手根管症候群の診断を⽀支持する
⼿手根管症候群の診断
4
3
Hand diagram(痺れの⼿手模式図)
痺れの分布 解説
典型的なパターン!!
l  第1~3指のうち2指以上に症状あり
l  典型的には第4,5指や近位にも症状あり
l  ⼿手掌や⼿手背に症状を認めてはならない  
おそらく⼿手根管症候群
l  ⼿手掌や⼿手背に症状を認めてもいいが、  
尺側の第4,5指には限局しない
l  第1~3指の⼀一つを含むならpossible
pattern (not shown)となる  
可能性が低い・・・
l  第1~3指を含まない
Classic pattern
Probable pattern
Unlikely pattern
Phalen徴候やTinel徴候より有⽤用な検査である
•  上記2パターンなら  感度度64%  特異異度度73% LR+2.4   LR-0.2
JAMA. 2000 Jun 21;283(23):3110-7
まとめ
l  痺れには感覚障害と運動障害がある
l  痺れの局在を問診と⾝身体診察で
はっきりすることが診断に繋がる.
l  痺れの性状とデルマトームを意識識する.
l  痺れを主訴にする脳卒中PSSが存在するが,
通常  ⼝口唇周囲の痺れを伴う  (必ず問診!)

第4回 「痺れ」