大規模CSゲームにおけるライトマス運用

大規模CSゲーム
における
ライトマス運用
© 2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

斎藤修
(株)スクウェア・エニックス
背景デザイナー
主に夢と希望あふれる感じの
タイトルを開発してます

大規模 CS ゲーム
3点において起きた色々な問題を
共有させて頂きます
の
発表目的

注意書き
今回お話する内容は「成功例」ではありません
あくまで「現在進行形」のお話です
チームは未だ挑戦中であり
今後フローは変更される可能性があります
より良い方法より良い手段がありましたら
（この後すぐにでも）是非教えて頂けましたら幸いです

ではまずゲームから

休憩室再現

写真
Unreal
Engine4

写真一見それっぽくライティング
できているように見えます…??
Unreal
Engine4

写真
NG Lighting
Unreal
Engine4

何がNGなのか?

動くモノを置いてみると解ります

何が原因??

PLV事前計算ライトボリューム
Precomputed Light Volume

↑このツブツブ↑

PLVPrecomputed Light Volumeとは
ライトマスでライティングした際
空間上に作成される
間接光の情報

動くモノへのライティングは
PLVが使用されます

PLVにエラーがあると
おかしなライティングがされます

ゲームは大体動くメッシュがあるので
PLVも意識してライティングする必要があります

ちなみにさっきのNGライティングの
原因はコレです

コレ

チームで行った対処法

サンプリング方法を見直す
ライティング方法を見直す

今回のエラー環境は
スタティックライトを使用して再現しました

スタティックライトと
エミッシブライトはPLVにエラーを
起こしやすいライトです

スタティックライト
PLVに直接光が格納される
エミッシブライト
PLVの精度が著しく悪い

なので

チームでは使用を
制限しました

動くモノのあるとこでは
スタティックエミッシブ共に
原則使用禁止

悲しいですが仕方ない……

ILCQの設定

ILCとは？

ILC Indirect Lighting Cache
PLVを参照して
各動的メッシュに作成される
間接光のキャッシュ

Point
バウンディングボックスの
中心1点でサンプリング
Volume
バウンディングボックスサイズで
5×5×5のグリッドを
作成してサンプリング
ILCQ
Indirect Lighting Cache Quality

ILCQがPointだと
エラーが出てしまいますが…

Volumeの場合
馴染みます

ただしDraw負荷が上がります

負荷は参照するPLVの量に応じて増大しますので
あまり大きく素早く動くモノなどは
気をつけた方が良さそうです

ここで朗報

先ほどの
2つのPLVエラーですが……

篠山さんが対応してくれています

PLVに直接光が
格納されないようにする
PLVの精度を向上

詳しくはご本人かUDNへ

では次に

CS

CSコンシューマー開発といえば
厳しいレギュレーション

例えばメモリ

UnrealEngine4のテクスチャプール
デフォルトで1GB
1GB

4Kテクスチャ50枚分

そのうちどれくらいが
ライティングに使えるかと言うと…

1/5 200MB
4K10枚分くらい

これくらいの広さで？

NO これくらいの広さで

なので現開発チームでは……

ライトマップ密度は
基本的に「青」に制限

ライトマップ密度「青」ってどれくらい？

1m≒5Pixel

どうしてもって言う時は
「緑」も使用可能です

1m≒20Pixel

「赤」は？

不可能です
1m≒80Pixel

起きた事例

設定ミスで真っ赤の状態で
アップされたマップ

ライトマップだけで4GB

テクスチャプールに入りきらず
エラーで見れない

さらには重すぎて
サーバーアクセスエラー

怒られる

1GB以上のファイルアップしたら
警告メールが届くようになりました
1GB

そして

「青」マップだとどうなるか？

ライトマップエラーが大量発生します

ぶっ刺しエラー UVシームエラー
パディングエラー UVグリッドエラー

適切なライトマップUV作成で
かなり緩和されますが……

ある程度は
諦めざるを得ませんでした

フォリッジのライトマップエラー

円柱のライトマップエラー
ぶっ刺しエラー

良い解決方法
ご存知の方いらっしゃったら
教えて下さい…

もちょっと追加で
厳しい話

先ほどこの規模で200MBと言いましたが…

実際はもっと
切り詰める必要があります

仮にこの規模のマップが
30ステージあるとしたら…

ライトマップだけで
200MB×30=6GB

Blu-rayディスク
1/4以上を占めます

厳しいです

ラスト

大規模

個人的に一番大変だと
思ったのがコレ

大規模＝働く人が多い

＝ラインが同時に動く

＝ラインが同時に動く
=ライティングする人が
二桁を超える

そしてそれぞれ
手法も好みもバラバラ

何か土台となるモノが
必要になりました

そこで採用した手法
「照度ベースライティング」

照度って何？

「照度（しょうど、英: illuminance）とは、物体の表
面を照らす光の明るさを表す物理量である。照度は
人間の感じる量を表す心理物理量のひとつである。
国際単位系（SI）における単位はルクス（記号: lx）
またはルーメン毎平方メートル（記号: lm m−2）が用
いられる。照度は光束発散度と同じ次元を持つが、
光束発散度は平面状の光源の指標であり、照度は照
射された側の指標である。」

「文字通り、どれだけ対象物を「照らしている」かを表す指標であり、
机の上や部屋などの明るさを示すのに利用される。照度は右図のよう
に照らされる物体が光線に対して垂直でなく斜めであった場合、照射
される物体は暗くなってしまうので、法線ベクトルnをかけることに
よってそれを加味する。照度と光束の違いは、照射している物体の面
積を考慮するかしないかである。例えば、同じ光束を放つ電灯でも近
くにある本よりも、離れた場所にある本の方が暗くなる。これを照度
が低いと呼ぶ。光源となる電灯が単位カンデラで表されるのに対し、
机の上がどれだけ照らされているかを示すときにルクスが用いられる
のはこのためである。
目で感じる物体の単位視面積あたりの明るさは、距離には依存せず、
物体の照度に正比例する。しかし、物体の視面積が極めて小さい場合
は、同じ面積と照度の物体でも、目で感じる単位視面積あたりの明る
さは、距離の増加にしたがって減衰していく。」
Wikipediaより引用
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%A7%E5%BA%A6

「明るさ」の事です

照度は人間の「感覚的な明るさ」の単位
晴天
10万Lux
曇天
5000Lux
オフィス
500Lux
地下駐車場
30Lux
街灯
5Lux
月夜
0.1Lux

なぜ「照度」を使うのか？

色々な人に聞かれたこと
「太陽ってディレクショナルライトの
Intensityでいくつくらい？」

……わからない

でもわからないままなのは
まずい…

そこで手がかりにしたのが
「照度」

実はUnrealEngine4のライトは
それぞれIntensityの基準が
バラバラなのですが
謎数値
謎数値
ルーメン
ルーメンと見せかけて謎数値

「照度」は受光側の単位なので
何で照らされているかが問題になりません

「照度」を基準にすれば
ポイントでもディレクショナルでも
太陽の値を出すことが出来ます

「照度」を基準にすれば
ライトやマテリアルの種類を気にせず
ライティングができます

では晴天時の太陽の
ディレクショナル値を出してみます

ここからちょっと
つまらないかもしれません

まずは
BaseColor＝1.0 Roughness=1.0
Metal=0.0 Specular=0.0
の板を完全拡散面として配置します

その1m直上に
ポイントライトを配置

HDRVisualizeモードで
L値1.0を返すまでIntensityを上げます

この時のポイントライトの
ルーメン値は約1966lmなので
1966/4π≒156.45lx
L値1.0の時約156lxの照度である事が解ります

次にディレクショナルライトを
真下に向けて配置します

約3.15の時L値1.0を返すのが解ります
ここからディレクショナルライトのIntensityは
3.15の時約156lxの照度になる事が解ります

晴天時の照度は10万Luxです
晴天
10万Lux
曇天
5000Lux
オフィス
500Lux
地下駐車場
30Lux
街灯
5Lux
月夜
0.1Lux

よって100000/156*3.14≒2012.8
が晴天時のディレクショナルライトの値です

2012.8です

EVは適宜調整して下さい

このように
「照度」を土台にすると
各ライトの基準を作ることができます
謎数値
謎数値
ルーメン
ルーメンと見せかけて
謎数値
照度

また「照度」を基準とすることで
現実世界をリファレンスに
しやすくなりました

チームでは日の出から南中までの
各時間帯の照度とIBLを計測し

太陽高度、角度、色温度、光量、IBLの
相関したデータを取得

各時間帯のライティング環境を
UnrealEngine4上で再現精度を確認し…

ライティングの基礎となる
ライトリグを作成しました

これにより各自バラバラだった
ライティング手法が
ある程度統一

初期ライト設計のコストを
減らすことができました

しかし

「照度」を基準とする事で
エラーも発生

16bitの壁

UnrealEngine4のGBufferは
1チャンネル最大16bitです

16bitの最大値は「65535」

先ほどの2012.8の
ディレクショナルライトの値で
Roughness0.0の球をライティングすると

ハイライトの部分でシーンカラーの
輝度値がぶっ飛びます
Infinity!

逆に0.001などにすると
デバッグ表示やギズモがぶっ飛びます

「照度」を基準にする
=
「現実」を基準にする

現実世界のHDR情報は
16bitには収まりきらない……

悩ましいです

良いライティングフローがあったら
是非教えて頂けましたら幸いです

まとめ

大規模
CS
ゲーム動くものへのライティングは気をつけよう！
篠山さん早く何とかして
レギュレーションとっても厳しいです。
誰かライトベイクエラー助けて
照度ベースで頑張りました！
ギズモで失明しそうです

長時間
ありがとうございました

ご質問などありましたら
UnrealEngine4はEpic Games社の商標または登録商標です。
PARAGONはEpic Games社の商標または登録商標です。
Blu-rayはブルーレイディスクアソシエーションの商標または登録商標です。
その他掲載されている会社名、商品名は、各社の商標または登録商標です。

大規模CSゲームにおけるライトマス運用

More Related Content

What's hot

Similar to 大規模CSゲームにおけるライトマス運用

More from エピック・ゲームズ・ジャパン Epic Games Japan

大規模CSゲームにおけるライトマス運用