More Related Content
Similar to 范雎逼仇②(范雎の復讐) (16)
范雎逼仇②(范雎の復讐)
- 1. 戦国篇 第 23 集
范雎逼仇②(范雎の復讐)
范雎の仇の一人・須賈(写真)、かつて范雎にした様に、
今度は自分が馬の餌を食べさせられる
- 2. 第 23 集 范雎逼仇②(范雎の復讐) -戦国篇-
―あらすじ―
范雎(はんしょ)の仇を討つために秦が魏に進軍すると、魏の安釐王(あんきおう)は恐
れをなし、戦うべきか和を乞うべきかを群臣たちに尋ねる。すると、王の異母弟にあたる信
陵君(しんりょうくん)は「断固戦うべきです」と主張する。
しかし、宰相の魏斉(ぎぜん)は「秦は強く、魏は太刀打ちできません。ですから講和す
るしかないでしょう。しかし、噂によると、今の魏の宰相である張禄(范雎の偽名)はもと
もと魏の人間だとのこと。そこで、こちらから張宰相に賄賂を渡し、融通を図ってもらうの
が良いかと存じます」と言う。その話を聞いた安釐王は魏斉の策を採用し、須賈(しゅか)
を秦に派遣する。
須賈が講和の使者として派遣されたことを知った范雎は、
「これで昔の仇が討てるぞ」とほ
くそ笑む。そんな事とは知らない須賈は、張宰相に会って講和に持ち込もうと、鄭安平(て
いあんぺい)にとりなしを頼むが、彼は「宰相は今お忙しいので、時間ができたら会いに来
られるだろう」と言うばかり。一向にラチがあかない。
そんなある日、乞食の姿に身をやつした范雎が現れ、須賈に声をかける。魏斉の拷問によ
って殺されたものと思っていた范雎の姿に、須賈は自分の目を疑う。
死んだとばかり思っ
ていた范雎(左)の姿
を見て、最初、幽霊
かとギョッとする須
賈(右)
しかし、范雎が「蘇生した後、秦に連れて来られ、今はその日暮しの生活を送っている」と
- 3. 説明すると、さすがの須賈も彼の身の上にすっかり同情し、食事をご馳走した上、衣服も恵
んでやる。
范雎はあくまでも自分の身分を隠しつつ、とぼけて須賈に尋ねる:
「ところで須賈殿はどう
して秦に来られたのです?」すると須賈はため息をついて言う:
「秦が魏を攻めるので、和を
講じるため張宰相を訪ねようとするのだが、なかなかお目にかかれないのだ」
すると范雎は言う:
「実は最近、張宰相の御者として雇われまして、宰相とは多少の面識が
あります。何なら、私の方から宰相にお願いしてみましょうか?」それを聞いた須賈は大喜
び。さっそく范雎にその手筈を頼む。
こうして范雎と須賈は連れ立って宰相府の門の前まで行く。そして范雎は須賈に向かって
言う:「私は先に入って宰相にお話しますので、須賈殿はここでお待ちください」
ところが、范雎は中に入ったきり、待てど暮らせど出てこない。ついにしびれを切らせた
須賈は、門番に向かって「范雎を捜したいので中に入れてくれ」と要求する。が、その門番
「張宰相=
は「范雎などと言う者はいない。先ほど中に入られたのは張宰相だ」と主張する。
范雎」という事実に気づいた須賈、自分が魏でやった数々の仕打ちを思い出し、真っ青にな
る。そして、へなへなとその場に座り込む。
その後、須賈は秦兵に連行されて范雎の前に引き出される。現在の二人の関係で言えば、
須賈は范雎に殺されてもおかしくない。須賈はひたすら下手に出て命乞いをする。
が、恨み骨髄の范雎は、そんなにあっさりと須賈を許すはずがない。彼は以前、自分が魏で
やられたのと同様に、須賈にも馬の飼料を食べさせる。
ところが、その時同席していた趙の宰相・虞卿(ぐけい)が、皆の前で須賈が侮辱される
のを見、怒って言う:
「須賈が罪を犯したことは分かるが、公衆の面前で侮辱しなくてもよい
ではないか!?」 するとその時、秦・昭王がやって来て言う:
「虞大夫、こいつ(須賈)は、范宰相(張禄=范雎だという事を昭王は知っていた)の憎っ
くき仇なのだ。范雎は以前、斉に使いした際、斉王の非を見事論破した。ところが、この須
賈や魏斉に無実の罪をきせられ、拷問にかけられ、もう少しで命を落とすところであった。
ワシはこの范雎の人物を買って宰相にした。今、范雎の仇はワシの仇であり、秦の仇でもあ
る。もし、范雎の仇に助太刀するような国があれば、秦は直ちにその国に軍を派遣する」
昭王はそう言い捨てて出て行ってしまう。後に残された須賈は范雎の前に這いつくばって
- 4. 命乞いをする。しかし范雎は言う:
「今、お前は命乞いしているが、以前、オレが拷問に遭っ
た際、なぜそれを止めてくれなかった? 因果応報とは、このことだ。本来ならお前を処刑に
すべきだが、お前は今回オレにご馳走し、衣服を恵んでくれた。だから、命だけは許してや
ろう。しかしお前は二つの事をしなければならない」
完全に立場が逆
転し、
「殺される
のではないか」
という恐怖に怯
える須賈(左下)
と高飛車な態度
の范雎(右)
「一つは、オレの妻を魏の牢から出し、こちらに送り届けること。二つ目は、魏斉(ぎせい)
を斬り、その首を届けること」 二つ目の要求を聞いた須賈は「魏の宰相である魏斉の首をと
ることは難しいのでは…」と渋るが、范雎は「それが出来ねば、即、秦の軍を率いて魏宮を
襲うぞ」と脅す。
魏に戻った須賈は、牢に繋がれている雲娘を釈放する。須賈と共に牢にやって来た鄭安平
に迎えられた雲娘は、彼から范雎が生きていると聞かされ大喜びする。
一方、須賈は魏・安釐王に范雎から魏斉の首を要求された経緯を話す。安釐王はそれを聞
くと大いに怒るが、強国・秦を相手に戦う勇気もない。すると信陵君が一計を案じ、魏斉を
こっそり趙に逃がし、安釐王はそれに気付かなかった事にしてしまう。
魏斉の首を手に入れることなく空しく秦に帰る鄭安平と雲娘。安釐王は彼らを見送る際、
雲娘に金銀財宝を贈り、范雎にとりなしの労を頼む。しかし、魏の牢でひどい目に遭った雲
娘は、それらの受け取りを拒んで去っていく。
- 6. 「魏斉を匿っ
たのはお前だ
な」と叔父に
あたる平原君
(左)に不快感
を示す趙・考
成王(中)
右は趙宰相の
虞卿
「秦は信用のおけない国ですので、魏斉の首を差し出した
が、傍らにいた宰相の虞卿は言う:
ところで、3城が返ってくるとは限りません。私が今から斉に赴き、斉・襄王(じょうおう)
に趙を助けるよう説得して参ります」
こうして虞卿は斉に赴く。斉・襄王は最初、趙を助けて秦と戦うことに乗り気ではなかっ
た。しかし虞卿が「今、斉が高みの見物を決めこんだ場合、秦は魏・趙の両国を滅ぼした後、
勢いを得、斉も滅ぼすかもしれません」という言葉に動かされ、ついに趙に援軍を送る事を
決意する。
一方、この斉の動きを知った范雎は、直ちに反撃に出ようと考える。が、この時、雲娘が
現れ、彼に「仇を打つために多くの国々と戦争をするのは良くありません」と諌める。しか
し、既に秦の宰相の地位にいた范雎の心は、傲慢な気持ちで満たされており、彼女の忠告が
耳に入らない。そんな范雎の変化に、雲娘はひどく失望する。
(→「范雎逼仇③」につづく)
―ひとことー
范雎は雲娘に仇討ちの正当性を示すため「魏斉の首を要求して戦争をしかけるのは、我が
秦国の威光を天下に知らしめるための方便である」と説明する。その「我が秦国」という言
葉に呆れた雲娘は「あなたは何時から秦人になったの?」と皮肉る。
- 7. 「あなたは
何時から秦
人になった
の?」
これは一種の示唆に富んだ場面である。なぜなら、商鞅、張儀、范雎、そして後から出て
くる呂不韋(りょふい)や李斯(りし)など秦を支えた重臣たちは皆、秦以外の国の出身な
のである。秦は謂わば、有能な外人部隊によって成功した国とも言える。