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孫龐闘智①(孫臏、魏へ赴く)
魏の将軍になり、後に弟弟子・孫臏(右)をも
魏に引き抜こうとする龐涓(左)
2. 第 10 集 孫龐闘智①(孫臏、魏へ赴く) -戦国篇-
―導 入―
秦では商鞅(しょうおう)が変法を行い、盛んに魏を攻撃したが、対する魏の敵は秦だけ
ではなかった。魏の恵王は、龐涓(ほうけん)を上将軍にし、次々と周辺国を侵略していた。
一方、龐涓は、かつて鬼谷子という先生について兵法を学んだが、学友に孫臏(そんびん)
という者がいた。孫臏は、呉王・闔廬(こうろ)に仕えて楚を破った兵法家・孫武(そんぶ)
の孫であった。
龐涓は孫臏を魏に招き、共に魏恵王に仕える身になる。だが、孫臏の才は龐涓を抜き、嫉
妬に狂った龐涓は孫臏を陥れる。やがて二人は、魏と斉に分かれて戦うのだが…
―あらすじー
現在の河南省登封という所に、鬼谷という名前の土地があった。そしてそこには、一人の
隠者が住んでいた。彼は鬼谷子(きこくし)と呼ばれ、星占術、兵法、遊説術、神仙術に長
けていた。彼には有能な弟子達がいた。兵法では孫臏と龐涓。遊説術では蘇秦(そしん)と
張儀(ちょうぎ)である。
今回の物語「孫龐闘智」は、この孫臏と龐涓にまつわるお話である。
魏が将軍を募っているとの噂を聞いた龐涓は、鬼谷での修行を切り上げ、魏の恵王に面会。
自信満々で「魏のために他の諸侯国を倒し、天下を統一してみせます」と宣言する。その言
葉を頼もしく感じた恵王は、早速、龐涓を将軍に任命する。龐涓はとりあえず衛、宋、魯な
どの小国を攻めて勝利を得、ますます自信を深める。
龐涓率いる魏軍の勢いに恐れをなした斉、趙、韓などの諸侯国は、龐涓に対抗するため、
同じ鬼谷子の弟子である孫臏に目をつけ、彼を招聘しようと考える。が、それより早く龐涓
は、弟弟子である孫臏を鬼谷まで迎えに行き、共に魏の恵王に仕えることとなる。
恵王の前に出た龐涓は、孫臏の才は自分より上であるとし、孫臏を上将軍に推薦する。
が、孫臏はそれを辞退し、恵王も戦功を立てていない孫臏をイキナリ上将軍にすることを躊
躇する。そして結局、龐涓自身が上将軍になる。
3. 魏・恵王(右
/背中)に拝
謁する孫臏
(左)
紹介の労を
と る 龐 涓
(中)
この一見、孫臏思いの行為は、実は「謙譲の美徳」を世間に知らせるためのゼスチャーで、
実際、龐涓は孫臏の才能に、強い嫉妬心と脅威を抱いていた。そのため、一旦自分が上将軍
になってしまうと、あれほど褒めていた孫臏の意見も聞かず、独断と偏見に満ちた戦略を採
ってしまう。
つまり、東に接する韓を攻めるにあたり、西に接する秦の実力を侮り、精鋭軍をすべて韓
に差し向けてしまうのだった。そして、それに反対する孫臏を、遠征軍に参加させず、魏に
置き去りにしてしまう。
信頼していた兄弟子・龐涓に無視され、一人やけ酒をあおる孫臏。と、そこへ龐涓の妹・
龐英(ほうえい)がやって来る。龐英は密かに抱いていた孫臏への想いを打ち明け、やがて
二人は結ばれる。
ところがその時、孫臏の予想通り、秦が、精鋭軍のいない魏に襲撃をかけてきた。慌てふ
ためく恵王ら。しかし、その時、すでに孫臏の才能を見抜いていた公子昻(こう)が、孫臏
を用いて秦軍撃退させるよう恵王に進言する。活躍の場を与えられた孫臏は、夜陰に紛れて
少数の兵を大軍に見せかけ、みごと秦軍を撃退するのであった。
こうして無謀な韓遠征に出た龐涓と効果的に秦軍を撃退させた孫臏との才能の差は明らか
4. になり、恵王は孫臏を高く評価。ついには上将軍の位を孫臏に与えようと考える。
孫臏(右)の秦
軍撃退を祝し
て宴席を設け
る恵王(中)
その噂を聞きつけた龐涓は、何とかそれを阻止しようと作戦を練る。
一方、孫臏は、上将軍の位を受ければ兄弟子である龐涓に申し訳が立たず、受けなければ
恵王の期待に背くという苦しい立場に立たされていた。そこで、龐涓の屋敷を出て、龐英と
二人で心静かに暮らそうと決意する。
ところが、この時、孫臏に対する龐涓の嫉妬心は頂点に達していた。龐涓は何としても孫
臏に復讐しようと考え、孫臏にはわざと親切を装い、妹・龐英との結婚式を盛大に行うこと
を約束。その実、密かに孫臏を陥れるスキを窺うのであった。
ところで孫臏はもともと斉の人であった。そして当時、斉と魏は戦闘状態にあった。その
ため龐涓は、孫臏と斉の関わりを利用し、彼を不利な立場に追い込もうと考えた。そこで、
それとなく孫臏に斉にいる親戚のことなど尋ねるのだが、孫臏の両親は早くに亡くなり、親
戚とは離散し、音信不通だと言う。
ところがある時、龐涓の屋敷の前で斉の歌声が聞こえた。そしてその声の主は、屋敷の門
をたたいて孫臏に会わせて欲しいと言う。孫臏が会ってみると、その男は丁乙(ちょうおつ)
と名乗り、消息を絶っていた孫臏の兄の知り合いだと言う。そして彼は兄からの手紙を孫臏
に手渡す。
5. 兄の友人・丁乙
(左)から兄の手紙
を受け取る孫臏
(右)
その様子を複雑な
顔で見守る龐涓
(中/後ろ)
長い間消息を絶っていた兄からの手紙に感激する孫臏。兄の居場所が分かった今、一刻も
早く斉に帰りたいと願う。そんな孫臏を愛おしく感じた龐英は、祖国である魏を離れ、孫臏
と共に斉に行く決心をする。
ところが、丁乙の方は、龐涓にすっかり抱き込まれていた。そして彼は、孫臏が兄に宛て
て書いた手紙を手に入れ、龐涓に届ける。
「私は、燃え盛る火のよ
うな想いで、お兄さんの
事を思っています…」と
いう孫臏の手紙を龐涓
(右)に読んで聞かせる
丁乙(左)
6. 龐涓は、丁乙に孫臏の筆跡を真似させて次のように書かせる:「…私は故郷である斉に戻り、
斉のために尽くしたいと思っております」
龐涓に言われるまま、孫
臏の筆跡を真似て偽手紙
を書く丁乙
こうして、うまうまと偽手紙を作ってしまうと、龐涓は、部下に命じて、口封じのため当
の丁乙をも殺してしまうのだった。 (→「孫龐闘智②」へ つづく)
―ひとことー
本 DVD のタイトル「孫龐闘智」と次のタイトル「蘇張縦横」の内容は、共に同じ師につい
た兄弟弟子同士の争い(孫臏 vs 龐涓 と 蘇秦 vs 張儀)である。特に今回の孫臏 vs 龐涓は、
他人同士の争いより更に残酷かつ壮絶である。ここら辺から、戦国時代の膿(うみ)が出て
きたのだろうか…
今回登場するヒロイン・龐英(龐涓の妹という設定)も架空の人物である。が、彼女の存
在によって、物語の展開が大きく変わる場面は、今のところあまりなさそうだ。