范雎逼仇①(魏人・范雎、秦相となる)
- 1. 戦国篇 第 22 集
范雎逼仇①(魏人・范雎、秦相となる)
范雎を秦の宰相に任命する秦・昭王
- 2. 第 22 集 范雎逼仇①(魏人・范雎、秦相となる) -戦国篇-
―背 景―
秦では、孝公→恵王→武王の後、昭王が位についていたが、昭王の母親である宣太后と、
その弟・魏冉(ぎぜん)らに政権を握られ、昭王は傀儡化していた。そのため、戦国の七雄
の中でも優勢であったはずの秦も、全国統一への勢いが衰えかけていた。
一方、魏人・范雎(はんしょ)は、魏王に仕えようとしたが、魏王に近づく元手がなかっ
たため、仕方なく魏の中大夫・須賈(しゅか)の食客になっていた。
この物語は、魏王の使者として須賈と范雎が、斉の襄王(法章)に接見する場面から始ま
る。
―あらすじ―
物々しい武装体勢がしかれた斉の王宮、魏の使者・須賈と范雎が斉・襄王に謁見するため
に参内する。無愛想な襄王に対し、先ず須賈が挨拶する:
「このたび魏王の命により、斉と魏
の間で同盟を結び、兄弟国としての関係を結ぶためにやってまいりました」
ところが、「兄弟国」という言葉を聞いた途端、襄王は須賈に詰め寄って言う:「亡き父・
湣王(びんおう)はかつて魏と結び、共に宋を討ったが、その後、楽毅(がっき)が我が斉
を滅ぼそうとした際、魏は楽毅に従い、我が領土を侵略した。これが兄弟国のすることか!?」
その剣幕と威勢に恐れをなした須賈は、ひたすら恐縮するばかりで、言葉が継げない。
斉襄王の威光に恐れお
ののき、平身低頭する
須賈(中/下)と平然と
した態度を保つ范雎
(中/右上)
- 5. 一命を取りとめ馬車の中に潜んでいた范雎は、その様子を見、一体あの軍を指揮しているの
は誰かと尋ねる。
「あれは秦の宰相・魏冉様の軍です」と答える王稽に対して、范雎は「魏冉
は秦で独裁をしていると聞く。きっと私の様な人間が来ることを嫌がるであろう」と言い、
馬車から降り、どこかへ隠れてしまう。
案の定、魏冉がやって来ると王稽に「東方の国々への使節のお役目ご苦労であった。とこ
ろで、東方の諸侯の食客を連れ帰ってはいないだろうな? 奴らは口先三寸で高位高給を勝ち
取ることしか頭にない連中で、秦にとって有害無益だからな」と釘を刺す。しかし、王稽が
その場を上手く取り繕うと、魏冉はそれ以上何も言わずに去る。
魏冉が去った後、范雎は姿を現し、
「魏冉は王稽殿の馬車に誰か居るのではないかと疑って
いる。きっと、人を遣わせて馬車を捜索するだろう。私は馬車には戻らず、鄭安平と共に徒
歩で関を通過し、後ほど王稽殿のお宅を訪ねよう」という。その後、范雎の予想通り、魏冉
に派遣された秦兵がやって来て、馬車を調べたが、すでに范雎は関を通過した後、馬車はも
ぬけの殻であった。
:
無事、王稽の屋敷にやって来た范雎に対し、王稽は翌日開かれる朝廷の席で秦・昭王に彼
を推挙するつもりだと打ち明ける。魏で受けた仕打ちに報いるため、一刻も早く秦で出世し
たい范雎は、それを聞いて大喜びする。
しかし、翌日、朝廷から退朝した王稽は浮かぬ顔で范雎に言う:
「范雎殿のことを昭王様に
推挙したところ、昭王様は謁見しようと言われたのだが、魏宰相(魏冉)が『范雎などと言
う奴は信用置けない輩だ』と言い立て、ついに謁見の話は立ち消えになってしまった」
そこで范雎は、昭王宛に拝謁を願う気持ちを綴った手紙を何度も上書するが、その度に魏
冉の手に渡り、もみ消される。
秦王に宛てた范雎の手紙を焼いてしま
う秦宰相・魏冉