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戦国篇 第 31 集
荊軻刺秦②(荊軻、秦王刺殺を引き受ける)




秦王刺殺の計画を荊軻に打ち明ける燕太子・丹
第 31 集   荊軻刺秦②(荊軻、秦王刺殺を引き受ける)        -戦国篇-

―あらすじ―
 荊軻(けいか)の話を聞いた燕太子・丹は、さっそく田光に彼を紹介してほしいと頼み、
田光は快諾する。が、田光の去り際、丹はうっかり「刺客を放って秦王を暗殺するという件
は国家の一大事ですので、どうか他人にお漏らしにならぬように」と言ってしまう。誇り高
い田光は、その言葉に自尊心を傷つけられるが、何も言わずにその場を去る。


 田光はその後、荊軻を訪ねようと斯妤(しよ)の宿屋へ行く。が、荊軻は既に下都(燕の
軍事都市)に向かった後であった。


 その頃、既に韓を滅ぼした秦は、次の目標を趙に定め、大軍を投入して攻めていたが、趙
には李牧(りぼく)という名将がおり、さすがの秦も苦戦を強いられていた。そこで秦王・
政は尉繚(いりょう)に相談する。すると尉繚は「趙王のお気に入りの家臣・郭開(かくか
い)は賄賂に弱いので、彼を買収すればよいでしょう」と提案する。


 政は尉繚の案を採用し、郭開を買収する。その結果、李牧は郭開の差し金で殺され、趙軍
は秦に敗れて降伏する。降伏の知らせを聞いた政は、自ら趙に乗り込み、かつて趙で人質生
活を送っていた時につらく当たった趙人たちを生き埋めにする。とその時、引き出された郭
開が「秦王様、私は秦の為に働きましたので、お助け下さい~!」と叫ぶ。


                                      秦王 政に向
                                        ・
                                      かってしき
                                      りに自分の
                                      功績をアピ
                                      ールする趙
                                      の佞臣 郭開
                                         ・
                                      (右)
                                      左は趙王 遷
                                          ・


                                      後ろの黒い
                                      ものは生き
                                      埋めにされ
                                      た趙の将軍
                                      たちの頭
それを聞いた政は薄笑いを浮かべ、傍らにいた趙王・遷(せん)に「これで、郭開と李牧
の、どちらが奸臣でどちらが忠臣かが分かったであろう」と言う。そして更に続ける:
                                      「お前
(遷)は忠臣・李牧を殺し、自ら墓穴を掘ったのだ。死んであの世に行ったら、どの面さげ
て李牧と顔を合わせるつもりだ? お前の先祖の趙襄子は、素晴しい英雄であったのに、その
子孫は何たる様だ!」 そして趙王と郭開もまた生き埋めにしてしまう。




                                     生き埋めに
                                     されるべく
                                     掘られた穴
                                     に突き落と
                                     される趙
                                     王・遷




 一方、荊軻は下都に来てからも酒びたりの毎日。ある時、彼は居酒屋で築(ちく/琴に似た
楽器)の名手・高漸離(こうぜんり)と知り合い、意気投合する。そして高漸離と酒を酌み
交わしている所へ田光、秦舞陽(しんぶよう)、斯妤がやって来る。田光はさっそく燕太子・
丹から依頼された秦王刺殺の件を打ち明けようとする。が、荊軻は最初、あまり乗り気では
なかった。


 と、田光はいきなり荊軻の剣を取り上げて言う:
                      「そもそも君子たる者、他人に疑われるよ
うな事は慎むべきである。しかし、ワシは燕太子から『他言するのではないか』と疑われて
しまった。一旦疑われた以上、死を以って身の潔白を証明せねばならぬ…」
と言うや否や、田光は荊軻の剣で自分の首を刎ねる。
荊軻の剣
                                    を手に、
                                    自ら首を
                                    はねよう
                                    とする田
                                    光 ( 右 /
                                    前)
                                    左/後に
                                    いるのは
                                    荊軻




 愕然とする荊軻。もうこうなったら、田光のあとを継いで太子の依頼を引き受けない訳に
はいかない。


 太子・丹は、田光が身の潔白を証明するために死んだと聞かされ、呆然とする。そして、
田光が後事を託した荊軻を上卿に任じ、彼のために大宴会を開く。ところが当の荊軻は、宴
席で琴を弾く美女に目を奪われ、さかんに彼女の手の美しさを褒めたり、馬のイナナキに気
を取られ、
    「駿馬の生肝は美味しいらしい」などと言ってみたり、ハチャメチャである。


 ところが、その後、丹は本当に美女の腕と駿馬の生肝をお盆に乗せて荊軻に差し出した。
さすがに、それには荊軻も驚くが、丹としては荊軻の欲する事は何であれ、やってのける積
もりなのである。


 その夜、宴がひけ、荊軻と二人きりになると、丹はさっそく秦王暗殺の件を切り出す。
秦王
                                       刺殺
                                       の密
                                       談を
                                       する
                                       燕丹
                                       (右)
                                       と荊
                                        軻
                                       (左)




荊軻はそれを快諾した。そして言う「問題は、刺殺するために、如何に秦王に近づくかとい
う事です」すると丹は「燕の肥沃な土地・督亢(とくこう)を秦に献上するという名目で、
その地図を持たせた使者を出せば、秦王は会ってくれるのではないか」と言う。


 が、荊軻は、督亢の地だけでなく、秦から逃亡した丹か樊於期の首が必要ではないかとほ
のめかす。


 一方、秦王・政は、韓と趙を滅ぼした後、次は燕を滅ぼそうと考えていた。が、尉繚はそ
れに反対して言う:
        「今、魏が孤立しており、これに乗じて滅ぼすに限ります。燕王・喜は暗
愚であり、太子の丹も小物、後回しにしたところで秦の脅威になりません。もしご心配でし
たら、燕に使者を遣わし『秦と共に魏を討て』との命を出し、相手の出方を窺うのがよろし
いかと存じます」


 こうして秦から燕に使者がやって来る。そこで太子・丹は、さっそく使者に会おうとする
が、父である燕王・喜に止められ、仕方なく幕陰からそっと覗いてみる。
 秦の使者は横柄で、燕王の前でも跪かずに立ったままである。そしてその非礼を咎めると、
人質であった太子・丹の逃亡の件を持ち出し、燕の方が非礼であると反駁する。
それを聞いた丹は、耐えられずに飛び出そうとするが、周りに控えていた宦官らに止めら
れ、シブシブその場を退場する。


 丹はその後、樊於期(はんおき)の屋敷を訪ねる。と、そこには既に荊軻がおり、さかん
に秦の内情を聞き出そうとしていた。それに対して沈黙を続ける樊於期。荊軻はついに業を
煮やして言う:
      「何だ! お前(樊於期)の一族はお前のために非業の死を遂げたんだぞ! そ
れなのに、その態度は、まるで部外者じゃないか! そんな奴はもう冠を脱いで女の格好をし
ろ!」




                                      秦の軍備
                                      について
                                      黙秘を続
                                      ける樊於
                                      期(右)を
                                      激しくな
                                      じる荊軻
                                      (左)




 その剣幕に驚いた丹は、仲に入って言う:
                   「荊軻殿、樊於期殿は私のためにご家族を亡くさ
れたのです。その償いをするため、燕が存続する限り、私は樊将軍のお世話をさせて頂くつ
もりなのです」 荊軻はそれを聞くと、首を振りながら出て行ってしまう。


 あとに残された丹は樊於期に言う:
                「樊将軍、どうかお気になさらぬ様に。荊軻殿はもとも
と破天荒なお人ですから…」すると樊於期は泣きながら言う:
                           「荊軻は志だけは大きいが、才
能に乏しい男だ。あいつと事を決すると、大変なことになる」 それを聞いた丹は愕然とする。
秦王刺殺の計画に
                                  一抹の不安を感じ
                                  はじめた燕太子・
                                  丹




(→「荊軻刺秦③」につづく)


―ひとことー
 燕の軍事都市・下都は、今の河北省保定に近い易県に当たる場所である。そこは戦国時代、
趙との国境に面しており、その北には太行山があり、南には易水(川名)が流れ、敵の攻撃
から身を守るのに適した場所であった。


 実は、この“下都”という地名、前集「荊軻刺秦①」にも登場していた。私は「あまり聞
き慣れない地名だなぁ」と思って「漢語大詞典」で引くと「副首都:首都以外の土地に建て
られた別の都」と書いてあった。


 で、「ん? 副首都って?」と思ったけれど、この言葉を最初に使ったのが秦王・政で、彼
が燕丹に向かって「ワシが六国を滅ぼした後、下都に帰ればよい」と言ったため、私の頭の
中で「秦の都=咸陽≒首都(上都) 燕の都=薊≒副首都(下都)」という風に解釈してしま
った。


 そこで、前集のドラマで“下都”と言った所をすべて薊という風に書いてしまったのだ。 し
かし、今回、念のため、中国語でネット検索をしたら、どうやら:
「燕の首都=薊(上都) 燕の副首都=下都」が正解だったようだ。
うーむ、下都という呼び名は、原書「東周列国志」にはもちろん、郭沫若の「中国史稿地
図集」にも載っていなかったのだが…   ちょっとショック。仕方が無い、後で訂正しておこ
う…。(→既に修正済み)


 現在も易県には、土でできた当時の城壁が残っているらしい。
 下都という場所は、三国志で言えば、蜀の漢中。諸葛孔明が魏征伐の根拠地と定めた軍事
基地・漢中に相当するのではないだろうか。


 次集「荊軻刺秦③」では、荊軻はこの易水流れる下都から秦に向けて出発する。果たして
彼の大望は成し遂げられるのであろうか?

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荊軻刺秦②(荊軻、秦王刺殺を引き受ける)

  • 1. 戦国篇 第 31 集 荊軻刺秦②(荊軻、秦王刺殺を引き受ける) 秦王刺殺の計画を荊軻に打ち明ける燕太子・丹
  • 2. 第 31 集 荊軻刺秦②(荊軻、秦王刺殺を引き受ける) -戦国篇- ―あらすじ― 荊軻(けいか)の話を聞いた燕太子・丹は、さっそく田光に彼を紹介してほしいと頼み、 田光は快諾する。が、田光の去り際、丹はうっかり「刺客を放って秦王を暗殺するという件 は国家の一大事ですので、どうか他人にお漏らしにならぬように」と言ってしまう。誇り高 い田光は、その言葉に自尊心を傷つけられるが、何も言わずにその場を去る。 田光はその後、荊軻を訪ねようと斯妤(しよ)の宿屋へ行く。が、荊軻は既に下都(燕の 軍事都市)に向かった後であった。 その頃、既に韓を滅ぼした秦は、次の目標を趙に定め、大軍を投入して攻めていたが、趙 には李牧(りぼく)という名将がおり、さすがの秦も苦戦を強いられていた。そこで秦王・ 政は尉繚(いりょう)に相談する。すると尉繚は「趙王のお気に入りの家臣・郭開(かくか い)は賄賂に弱いので、彼を買収すればよいでしょう」と提案する。 政は尉繚の案を採用し、郭開を買収する。その結果、李牧は郭開の差し金で殺され、趙軍 は秦に敗れて降伏する。降伏の知らせを聞いた政は、自ら趙に乗り込み、かつて趙で人質生 活を送っていた時につらく当たった趙人たちを生き埋めにする。とその時、引き出された郭 開が「秦王様、私は秦の為に働きましたので、お助け下さい~!」と叫ぶ。 秦王 政に向 ・ かってしき りに自分の 功績をアピ ールする趙 の佞臣 郭開 ・ (右) 左は趙王 遷 ・ 後ろの黒い ものは生き 埋めにされ た趙の将軍 たちの頭
  • 3. それを聞いた政は薄笑いを浮かべ、傍らにいた趙王・遷(せん)に「これで、郭開と李牧 の、どちらが奸臣でどちらが忠臣かが分かったであろう」と言う。そして更に続ける: 「お前 (遷)は忠臣・李牧を殺し、自ら墓穴を掘ったのだ。死んであの世に行ったら、どの面さげ て李牧と顔を合わせるつもりだ? お前の先祖の趙襄子は、素晴しい英雄であったのに、その 子孫は何たる様だ!」 そして趙王と郭開もまた生き埋めにしてしまう。 生き埋めに されるべく 掘られた穴 に突き落と される趙 王・遷 一方、荊軻は下都に来てからも酒びたりの毎日。ある時、彼は居酒屋で築(ちく/琴に似た 楽器)の名手・高漸離(こうぜんり)と知り合い、意気投合する。そして高漸離と酒を酌み 交わしている所へ田光、秦舞陽(しんぶよう)、斯妤がやって来る。田光はさっそく燕太子・ 丹から依頼された秦王刺殺の件を打ち明けようとする。が、荊軻は最初、あまり乗り気では なかった。 と、田光はいきなり荊軻の剣を取り上げて言う: 「そもそも君子たる者、他人に疑われるよ うな事は慎むべきである。しかし、ワシは燕太子から『他言するのではないか』と疑われて しまった。一旦疑われた以上、死を以って身の潔白を証明せねばならぬ…」 と言うや否や、田光は荊軻の剣で自分の首を刎ねる。
  • 4. 荊軻の剣 を手に、 自ら首を はねよう とする田 光 ( 右 / 前) 左/後に いるのは 荊軻 愕然とする荊軻。もうこうなったら、田光のあとを継いで太子の依頼を引き受けない訳に はいかない。 太子・丹は、田光が身の潔白を証明するために死んだと聞かされ、呆然とする。そして、 田光が後事を託した荊軻を上卿に任じ、彼のために大宴会を開く。ところが当の荊軻は、宴 席で琴を弾く美女に目を奪われ、さかんに彼女の手の美しさを褒めたり、馬のイナナキに気 を取られ、 「駿馬の生肝は美味しいらしい」などと言ってみたり、ハチャメチャである。 ところが、その後、丹は本当に美女の腕と駿馬の生肝をお盆に乗せて荊軻に差し出した。 さすがに、それには荊軻も驚くが、丹としては荊軻の欲する事は何であれ、やってのける積 もりなのである。 その夜、宴がひけ、荊軻と二人きりになると、丹はさっそく秦王暗殺の件を切り出す。
  • 5. 秦王 刺殺 の密 談を する 燕丹 (右) と荊 軻 (左) 荊軻はそれを快諾した。そして言う「問題は、刺殺するために、如何に秦王に近づくかとい う事です」すると丹は「燕の肥沃な土地・督亢(とくこう)を秦に献上するという名目で、 その地図を持たせた使者を出せば、秦王は会ってくれるのではないか」と言う。 が、荊軻は、督亢の地だけでなく、秦から逃亡した丹か樊於期の首が必要ではないかとほ のめかす。 一方、秦王・政は、韓と趙を滅ぼした後、次は燕を滅ぼそうと考えていた。が、尉繚はそ れに反対して言う: 「今、魏が孤立しており、これに乗じて滅ぼすに限ります。燕王・喜は暗 愚であり、太子の丹も小物、後回しにしたところで秦の脅威になりません。もしご心配でし たら、燕に使者を遣わし『秦と共に魏を討て』との命を出し、相手の出方を窺うのがよろし いかと存じます」 こうして秦から燕に使者がやって来る。そこで太子・丹は、さっそく使者に会おうとする が、父である燕王・喜に止められ、仕方なく幕陰からそっと覗いてみる。 秦の使者は横柄で、燕王の前でも跪かずに立ったままである。そしてその非礼を咎めると、 人質であった太子・丹の逃亡の件を持ち出し、燕の方が非礼であると反駁する。
  • 6. それを聞いた丹は、耐えられずに飛び出そうとするが、周りに控えていた宦官らに止めら れ、シブシブその場を退場する。 丹はその後、樊於期(はんおき)の屋敷を訪ねる。と、そこには既に荊軻がおり、さかん に秦の内情を聞き出そうとしていた。それに対して沈黙を続ける樊於期。荊軻はついに業を 煮やして言う: 「何だ! お前(樊於期)の一族はお前のために非業の死を遂げたんだぞ! そ れなのに、その態度は、まるで部外者じゃないか! そんな奴はもう冠を脱いで女の格好をし ろ!」 秦の軍備 について 黙秘を続 ける樊於 期(右)を 激しくな じる荊軻 (左) その剣幕に驚いた丹は、仲に入って言う: 「荊軻殿、樊於期殿は私のためにご家族を亡くさ れたのです。その償いをするため、燕が存続する限り、私は樊将軍のお世話をさせて頂くつ もりなのです」 荊軻はそれを聞くと、首を振りながら出て行ってしまう。 あとに残された丹は樊於期に言う: 「樊将軍、どうかお気になさらぬ様に。荊軻殿はもとも と破天荒なお人ですから…」すると樊於期は泣きながら言う: 「荊軻は志だけは大きいが、才 能に乏しい男だ。あいつと事を決すると、大変なことになる」 それを聞いた丹は愕然とする。
  • 7. 秦王刺殺の計画に 一抹の不安を感じ はじめた燕太子・ 丹 (→「荊軻刺秦③」につづく) ―ひとことー 燕の軍事都市・下都は、今の河北省保定に近い易県に当たる場所である。そこは戦国時代、 趙との国境に面しており、その北には太行山があり、南には易水(川名)が流れ、敵の攻撃 から身を守るのに適した場所であった。 実は、この“下都”という地名、前集「荊軻刺秦①」にも登場していた。私は「あまり聞 き慣れない地名だなぁ」と思って「漢語大詞典」で引くと「副首都:首都以外の土地に建て られた別の都」と書いてあった。 で、「ん? 副首都って?」と思ったけれど、この言葉を最初に使ったのが秦王・政で、彼 が燕丹に向かって「ワシが六国を滅ぼした後、下都に帰ればよい」と言ったため、私の頭の 中で「秦の都=咸陽≒首都(上都) 燕の都=薊≒副首都(下都)」という風に解釈してしま った。 そこで、前集のドラマで“下都”と言った所をすべて薊という風に書いてしまったのだ。 し かし、今回、念のため、中国語でネット検索をしたら、どうやら: 「燕の首都=薊(上都) 燕の副首都=下都」が正解だったようだ。
  • 8. うーむ、下都という呼び名は、原書「東周列国志」にはもちろん、郭沫若の「中国史稿地 図集」にも載っていなかったのだが… ちょっとショック。仕方が無い、後で訂正しておこ う…。(→既に修正済み) 現在も易県には、土でできた当時の城壁が残っているらしい。 下都という場所は、三国志で言えば、蜀の漢中。諸葛孔明が魏征伐の根拠地と定めた軍事 基地・漢中に相当するのではないだろうか。 次集「荊軻刺秦③」では、荊軻はこの易水流れる下都から秦に向けて出発する。果たして 彼の大望は成し遂げられるのであろうか?