学習研究の歴史
東京大学大学総合教育研究センター 
特任研究員	
  
舘野泰一	
  
自己紹介
•  東京大学大学総合教育研究センター	
  
–  東京大学大学院学際情報学府修士・博士課程	
  
–  中原研究室 OB	
  
•  研究領域	
  
–  教育工学、学習科学	
  
•  具体的な研究	
  
–  大学教育に関する研究	
  
•  レポート・ライティング支援に関する研究	
  
–  社会人を対象にした研究	
  
•  越境学習・ワークショップ	
  
–  大学と社会の移行(トランジション)に関する研究	
  
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本日発表内容
•  「学習研究」の歴史	
  
– 「研究が役に立たない?」	
  
– どのように乗り越えようとしてきたのか?	
  
•  研究方法論と学会の動向	
  
– 質的研究、介入的研究	
  
•  私はどのように感じたか	
  
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「学習研究」の歴史
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佐伯 胖教授	
  
認知科学	
  
1995年「学びへの誘い」	
  
シリーズ学びと文化
■その理由	
  
【研究者側】実験室で得られた「心理学的知見」なる
ものが現実の生活やなんらかの社会的・文化的実践活
動で「役立つ」ことがあまりにとぼしいことへのいら
だちが、研究者たちにも募ってきたこと	
  
【実践者側】現場の実践者たちからの不満(というよ
り、むしろ「あきらめ」)の声が、やっと研究者たち
の耳に聞こえはじめてきた、ということがあろう	
  
1980年代後半から1990年代にかけての議論
実験室で刺激条件を統制した実験からデータ収集して仮説
を検証するという「自然科学」パラダイムから脱して、もっ
と現場に密着した研究をしていかねばならないという声が
さかんに聞かれるようになった
・実験室状況の特殊性 /	
  生態学的妥当性
 ・日常認知と状況論:現場の認知の解明
どのように対応したのか?
1. 「実験室」から「現場」の研究へ
– 質的な研究アプローチに対する注目	
  
•  エスノメソドロジー・フィールドワーク	
  
•  Lave	
  &	
  Wenger(1991)など	
  
2. 「分析」から「介入的な実践研究へ」
– デザイン研究(学習科学)	
  
•  Brown(1992)による提案	
  
– アクション・リサーチ	
  
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「実験室」から「現場」の研究へ
•  質的な研究	
  
–  「教育のエスノグラフィー」
(志水	
  1998)	
  
•  「臨床の知」(中村	
  1992)	
  
–  客観主義との対比	
  
–  対象との個別的・具体的なかか
わりあいの中から立ち上がって
くる知
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われわれ教育研究者が、「研究」や「学問」
という特権を隠れ蓑に、「大学」という高見
から教育現場の状況を見物していればよい時
代は、もはやおわった。われわれは、現場に
出て行かなければならない。そして、現場に
生きる人々と関係を取り結んでいく中で、新た
な知を立ち上げて行かなければならない。
(p26)
志水宏吉教授	
  
大阪大学大学院	
  
人間科学研究科・教授	
  
「分析」から「介入的実践研究」へ
•  学習科学(Brown 1992,三宅 2006)
–  「これまでの認知科学研究における人間の学習につい
ての知見、教授研究の成果をもとに、これまで以上の
学習成果を期待して学習環境を総合的にデザインする
こと」	
  
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大島・大島(2009)	
  
•  分析科学(analytic science)
•  研究の目的が理論の構築や、対象となる現象を解釈する
こと(認知科学、教育心理学)	
  
•  デザイン科学(design science)
•  目的にあわせて人工物をデザインし、それを現場で使用して、
その結果をもとに繰り返し改善を試みるというアプローチ
実践者と協力して、新たな学習環境をつくってしまう	
  
作った上で、学習環境のデザイン原則を導き出すというアプローチ	
  
(北米の科学教育などで大きな成果 Linn,	
  Davis,&	
  Bell,	
  2004など)
研究モデル
•  <研究・普及モデル>
–  中央で研究者がパッケージとツールを開発	
  
–  開発したパッケージやツールを配布	
  
–  学習成果に結びついたかを評価	
  
–  現場は利用する人	
  
•  <アクション・リサーチ>
–  現場が主体になり開発を行っていくモデル	
  
–  実務家と研究者がコラボレーションして問題解決
するモデル	
  
–  事例研究的	
  
学会はどのように対応したのか?
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質的研究における「学会」誌論文の制約(佐伯 1995) 
 しかし、残念ながら心理学についていえば、フィールドワーク研究をベース
にした論文を学会誌に投稿しても、現状では採択される可能性はかなり低いだ
ろう。	
  
 その理由は、学会誌論文のきわめて限定された枚数制限と、「目的」「方
法」「結果」「考察」という定型化された議論の形式にある。これではせいぜ
い一つか二つの小規模の実験で数量的データをとり、統計処理で有意差をだし
てハイおしまい、という程度のことしか発表できないのである。
約5年の時間差
2000年以降、学習研究に関連する論文誌の論文賞や、	
  
フィールドワークなどに関連する書籍が増加する	
  
実践的な介入研究は採録されるか?
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実践論文の数は多い → しかし半分が「資料」として採択	
  
2000∼2009年	
  
全249本	
  
特集号除く	
  
向後(2012)
「学習研究」の流れ
•  1980年代から現在までの大きな流れ
–  分析科学として(質的研究を取り入れる)	
  
–  デザイン科学として(介入的実践研究)	
  
•  現実的にどうなったのか
–  全ての研究が置き換わるわけではない	
  
–  5∼10年の時間をもって論文誌でも認められる	
  
•  現在の状況
–  さまざまな方法論を持つ人がそれぞれ進めてい
る?	
  
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私が修士時代に感じたこと
•  結局この2つはできなかった	
  
–  質的研究(フィールドワーク)	
  
–  現場への介入を長期におこなう実践的な研究	
  
•  その理由	
  
–  修士の2年間という限られた時間	
  
–  大規模な実践研究を、基盤がないところで一から
立ち上げることは難しい	
  
•  ではどうするか?	
  
–  この2つの研究方法論以外をやっていても実践に
資する研究はできるのではないか	
  
–  心に響いたアン・ブラウンの話	
  
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大学生の「書くこと」を支援する研究	
研究開発
実践知見の公開
大学の授業	
  
ワークショップ	
  
など	
ブログや	
  
Twitter等で	
  
知見を公開	
  
システム開発	
  
実践(中程度)	
  
成果は論文へ	
「実践」や「知見の公開」自体が研究にはならないが、
仮説のヒントや研究の対象者(大学生や大学教員)
との関係性構築に役立っている
研究者であり	
  
実践者でもある
ご静聴ありがとうございました!
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研究と実践2.0 舘野さんのプレゼン