4. 米国アカデミー医学研究所(Institute of Medicine of
the National Academies:IOM)による
診療ガイドラインの定義
「診療ガイドライン」は、「エビデンス」の「システマティッ
クレビュー」と「複数の治療選択肢」の「利益と害の評
価」に基づいて「患者ケアを最適化」するための「推
奨」を含む文書である。
この定義が、EBMの3原則に従っているため、この定義で作成された診
療ガイドラインは、EBMを実践するために役立つ資料となる。
10. 米国アカデミー医学研究所(Institute of Medicine of the National
Academies:IOM)による
診療ガイドラインの定義
「診療ガイドライン」は、「エビデンス」の「システマティックレビュー」と「複数
の治療選択肢」の「利益と害の評価」に基づいて「患者ケアを最適化」
するための「推奨」を含む文書である。
この定義に厳密に従っている診療ガイドラインは、質が高く信頼できると
考えられるが、具体的な方法が複雑であり間違った方法が広まった。
この定義の診療ガイドラインの作成を、具体的に行いやすいように、最
低限のルールをまとめたのが、GRADEアプローチです。
(まだまだ難しいと感じるかも知れませんが、それは、GRADEアプローチが難しいのでなく、診療ガイドライン
は、それほど厳密な手順で、社会に対して真摯に行うものと考えて下さい)
GRADEアプローチでは、EBMの3原則に従っているので、
このEBMの3原則を理解することが、質の高い診療ガイドラインを
見極めるポイントであるので、解説する。
11. システマティックレビュー作成
P
I
C
O
T
S
アウトカム
アウトカム
アウトカム
アウトカム
重大
重要
重大
Evidence Profile
全体的なエビデンスの確信性(質)
(overall certainty of evidence across outcomes)
重大(critical) なアウトカムのみを検討
原則として,重大なアウトカムに関するエビデンスの質の中で最も
低いものとする(各アウトカムが同じ方向ならば最も高いもの)
A 「高」/B 「中」/C 「低」/D 「非常に低」
RCTは「高」から、観察研究は「低」から開始し、エビデンスを確信性の程度で紐付きにする
1.研究の限界(risk of bias)
2.非一貫性(inconsistency)
3.非直接性(indirectness)
4.不精確さ(imprecision)
5.出版バイアス(publication bias)
グレードを下げる5要因 グレードを上げる3要因
1.大きな効果(large magnitude)
2.用量反応(dose response
gradient)
3.交絡因子(confounders)
アウトカム毎に集めた研究の
risk of biasを評価
効果推定値のアウトカムごとのエビデンスの確信性
高(High)/中(Moderate)/低(Low)/非常に低(Very low)
推奨の作成:以下を考慮して判断
エビデンスの質
利益と害のバランス
価値観と好み
資源の利用(コスト)
パネル会議前に1回目投票
パネル会議でディスカッション必要に応じてもう1回投票
診療ガイドライン完成
アウトカムごとのエビデンス(body of evidence)の確信性を評価
Risk of bias summary
Risk of bias graph
各アウトカムに
関する効果推定値
と結果の要約
=メタアナリシス
(Forest plot作成)
推奨度と推奨文の決定
推奨(例):抗凝固療法の適応がな
い癌患者に対して、非経口的抗凝固
療法を行うことを提案する(GRADE
2B,推奨の強さ「弱い推奨」/ エ
ビデンスの確信性「中」)
Summary of Findings(SoF)
様々な介入に
対する推奨を
盛り込む
診療ガイドライン作成
Clinical Question(CQ)
→Analytic Frameworks
→Key Questions SRの
結果の
評価
1.ランダム割り付け順番の生成
2.割り付けの隠蔽化
3.研究参加者と治療提供者の盲検化
4.アウトカム評価者の盲検化
5.不完全なアウトカムデータ
6.選択されたアウトカムの報告
7.その他のバイアス
Evidence-to-Decisionテーブル
診療ガイドラインパネル会議
あらゆるステークホルダーが参加する
推奨の強さと方向:強く・弱く/推奨する・推奨しない(しないことを推奨)
Strong recommendation FOR an intervention:1 (・・・することを推奨する)
Weak recommendation FOR an intervention:2(・・・することを提案する、条件付き)
Strong recommendation AGAINST an intervention:1(・・・しないことを推奨する)
Weak recommendation AGAINST an intervention:2
(・・・しないことを提案する、・・・しないことを条件付きで推奨する)
1つの疑問の推奨に複数のSRが必要なことも多い
42. そして、本来は、連続している推奨度を、わかりやすくするため
「強い・弱い」に、診療ガイドラインパネル会議で合議します。
EBMのコンセプトで考案されている診療ガイドライン作成方法
• GRADE:GRADEアプローチ<最も普及している>
• USPSTF:米国予防医学専門委員会<予防系が一部採用か>
• AHA:米国心臓協会<基本的に、AHAのみ>
• Minds 2014<日本の一部のみ>
EBMのコンセプトで考案されていない診療ガイドライン作成方法
• Minds 2007(level of confidence は、私案)
Do not offer the
intervention
Quality of evidence
GRADE
Strong Against
4 levels (high, moderate,
low, very low)
USPSTF
Grade D
USPSTF
Grade B
USPSTF
Grade A
3 levels (high, moderate,
low)
AHA
Class III
AHA
Class IIa
AHA
Class I
3 levels (A, B, C)
(JAMA-UG3eより改変)
Minds 2014 Minds 2014
行わないことを推奨する
Minds 2007
D C2 C1 B A
Level of Confidence
Individualized decisions
Offer the intervention to
all or almost all
GRADE
Weak Against
GRADE
Weak in Favor
GRADE
Strong in Favor
USPSTF
Grade I
USPSTF
Grade C
AHA
Class IIb
行うことを推奨する
行わないことを弱く推奨する
行うことを推奨する
Minds 2007:使用は望ましくないが、現在も同じコンセプトのCPGが多いので記載