同人ゲーム開発における
ゲームエンジンの現状
東京工芸大学 今給黎 隆
2018年3月3日(土) 14:40~15:00
背景
• 日本デジタルゲーム学会 第7回 年次大会
• ゲームエンジンの歴史概要
• ゲームエンジンの時間的変化を調査
• 公開年度からゲームエンジンの
トレンドを分析
• Unity について機能追加の
歴史を分析
• 次に知りたくなること
• どのゲームエンジンが
どのくらい使われているのか
どのゲームエンジンが
どのくらい使われているのか
• リリースされているゲームに対してどのゲームエンジンが使わ
れているのか調査するのは難しい
• パッケージに記載
• 開始時のロゴ
• ゲームエンジンや開発会社のサイト等でのタイトル紹介
• 講演等での情報公開
等で判別できる場合があるが、全ての情報を入手することは困難
情報収集のノウハウを積む
• 比較的入手しやすいところを調査することで、ゲームエンジン
の調査に関する蓄積を行う
• ターゲットを同人ゲーム・さらにコミックマーケットに絞る
• それなりの数のゲームが存在
• 今後の継続性も見込める
• 開発者がSNSで経過を報告していたりと、オープンな姿勢が強く情報
を集めやすい
• ゲーム開発者が出展しているケースもあり、商業ゲームとの関係が見
込める
巨人の肩の上に立つ
• 同人ゲームの従来研究
• 動機付け
• [2009] 椛島 榮一郎, "個人制作コンテンツの興隆とコンテンツ産業の進化理論," 東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究, 77, 17-41.
• ミクロ経済学の概念を用いた、同人ゲームを含めた個人制作コンテンツが増加してきた背景の分析
• [2010] 七邊 信重, "「同人界の論理」-行為者の利害-関心と資本の変換-,” コンテンツ文化史研究, 3, 2010, 19-32.
• 同人界の論理的観点から、同人コンテンツでは楽しさや承認といった金銭的利益とは異なる動機付けがなされていることを明らかに
• 定量的な分析(同人ゲーム作家へのアンケートを含む)
• [2009] 七邊 信重, “持続的な小規模ゲーム開発の可能性-同人・インディーズゲーム制作の質的データ分析-," デジタルゲーム学研究, 3(2), 171-183.
• [2013] 七邊 信重, "ゲーム産業成長のカギとしての自主制作文化," 博士論文.
• [2016] Nobushige Hichibe, Ema Tanaka, "Content Production Fields and Doujin Game Developers in Japan: Non-economic Rewards as Drivers of Variety in Games,"
Transnational Contexts of Culture, Gender, Class, and Colonialism in Play, 43-80.
• コミックマーケットを含めた80年代の同人ゲーム初期から、00年代の同人ゲームに関する遍歴のまとめ
• [2009] 七邊 信重, "同人・インディーズゲーム制作を可能にする「構造」-制作・頒布の現状とその歴史に関する社会学的考察-," コンテンツ文化史研究, 1, 35-55.
• [2011] 三宅 陽一郎, "日本における同人・インディーズゲームの技術的変遷--開発者インタビューからの同人・インディーズゲーム技術史の再構築 (特集 インディーズゲー
ム)", デジタルゲーム学研究 5(1), 57-64.
近年の研究が行われていない
• 同人ゲームでのゲームエンジンに注目した研究
• [2007] Kenji Ito, “Possibilities of Non-Commercial Games: The Case of Amateur Role Playing Games Designers in Japan,” Worlds in Play:
International Perspectives on Digital Games Research, New York: Peter Lang, 129-142.
• RPGツクール
• [2006] 七邊 信重, "アマチュアとコンテンツ創造--パソコン用ゲーム制作の文化社会学," ソシオロジカル・ペーパーズ, 15, 69-76.
• NScripter
ゲームエンジン全体に注目した研究は行われていない
調査前の仮説
• 3次元のゲームが増えてきているのではないか
• ゲームエンジンの民主化によるUnity, Unreal Engine 4の台頭
• ゲームエンジンとしてはUnity と Unreal Engine 4が多いのでは
• 近年の商用タイトルでは、軽量な物はUnityで、ハイエンドな物はUE4
でというイメージがある
• ゲームエンジンでの制作が増えているならノベルゲーム・
シューティングゲームは減っているのでは?
• 独自エンジンもありそうな気はする
• 商用のゲームでも独自ゲームエンジンは残っているため、作りたい人
はいるのでは?
コミックマーケット92の調査(2017年夏)
• オンラインで情報を収集
• ぐぐってゲームを展示していたサークルを調査
• まとめサイトで出展予定を確認
• 最終的にtwitter、公式サイト、ブログで本当に展示されたのかを確認
• 単なる「再販」は対象外。体験版は対象とした
• コミックマーケットのゲームには「体験版」として継続的に開発している例が多い
• ゲームエンジンを判定
• 公式ページ等での作者からの情報
• readme.txt等での記載
• 体験版などのファイルの構成から判断
• ファイル互換性から誤判定の可能性あり
• 結果
• 調査件数:177件
• ゲームエンジン判明数:126件 (71.2%)
• 2Dのノベルゲームで未判明が多い
• 公開する動機がない(売りにならない)ためと推測
コミックマーケット93の調査
• コミケ92の情報から「同人ソフト」ジャンル
でゲームが多く展示されていることが判明
• C93では「同人ソフト」のサークルは全て調査
• 結果として、C92の調査で見落としていた
カテゴリーを発見
• 学生サークルのゲーム集
• 多くのミニゲームが作られており、個別にはほとんど
宣伝されないため、情報が収集されていなかった
• 結果
• 総計719サークルを調査
• 調査ゲーム数:316 (78%増)
• 判明ゲーム数:233 (73.7%)
ジャンル別ゲーム数(C92)
調査結果:カテゴリー・次元ごとのゲーム数
• 各ゲームをカテゴリーで分類
• 複数のカテゴリーにまたがるゲームもあるが、どれか1つに選別
①ノベルゲームが多い
②半年間での大きなカテゴリの移動はない
(調査範囲の拡大による影響が大きい)
分析:ノベルゲームが多い
• コミックマーケットという2次元との親和性
• 別のアマチュア向けイベントであるデジゲー博とは異なる傾向
• アクションゲームが多く、ノベルゲームの割合は少ない
• 規模の違いもあり(デジゲー博参加サークル数204)
• アセット確保の容易さ(要検証)
ゲームエンジン
• 最も使われているのはUnity
• Unreal Engine 4 が続くが、使用数は倍以上
• 吉里吉里、ティラノスクリプト、RPGツクールと専用ツールが続く
• 吉里吉里やRPGツクールは全てのバージョンを合算して集計
• 2Dと3Dで傾向が異なりそう?
• 共にUnityが最も多く使われている
• 2D:複数のツールが群雄割拠
• 吉里吉里、ティラノスクリプト、RPGツクール、NScripter
• 3D:Unreal Engine 4が次いで多い
• 3Dでは、Unityに迫る勢い( Unreal Engineは2Dで使われてないため全体で減少)
• 独自エンジンが次に継ぐ人気
• 古くからのゲームが更新されている
次元別ゲームエンジン数
カテゴリーごとの分析
• ゲーム数がある程度以上のカテゴリーに関して
ゲームエンジンの分布を観察した
• ノベルゲーム
• RPG
• シミュレーション
• アクション
• シューティング
• リズム
• ゲーム集
ノベルゲーム
• 吉里吉里、ティラノスクリプト、NScriper が多いが、
複数のエンジンがそれなりに使われている
• 3Dのゲームは少ない
RPG
• RPGツクールが活躍
• 3DではUnityが主に使われている
シミュレーションゲーム
• Unityが多い
• 3Dではあまり作られていない
アクションゲーム
• Unityが多い
• 2D: DXライブラリが使われている
• 3D: Unreal Engine 4 がUnityに迫る
DXLib
• 2001~
• 専門学校の教材
が元
• 静的ライブラリ
• 低レベルAPIの
DirectXが簡単に
使える
• 現在も専門学校等
で教えられている
• [仮説]教育現場で
低レベル3DAPIの
学習に多く用いら
れている
Wikipediaより
シューティング
• 独自エンジンが多い
• 3次元のゲームでも独自エンジンが作られている
• 現在でもHSPやRPGツクールは使われている
リズムゲーム
• 2DではUnityが独占
• 3DではUnreal Engine の勢力が多い
• ブループリントによりデザイナーがエフェクトを作りやすい?
ただし、母数は少ない
ゲーム集
• 学校のサークルが多い
• 個人で作ったものを集める
• 複数のゲームエンジンが使われているものも存在
• ゲームエンジンが不明な場合も多い
• 本カテゴリーのみ、「不明」を表示
ゲームエンジンの推移
• Unityの割合が増加
• DXライブラリも増えているが、判明したゲームの偏りと考えられる
調査前の仮説
• 3次元のゲームが増えてきているのではないか
• ゲームエンジンの民主化によるUnity, Unreal Engine 4の台頭
• コミケでは、2次元のゲームが多い
• ゲームエンジンとしてはUnity と Unreal Engine 4が多いのでは
• 近年の商用タイトルでは、軽量な物はUnityで、ハイエンドな物はUE4でというイメージ
がある
• Unityが強く、勢いはさらに強まっている
• ゲームエンジンでの制作が増えているならノベルゲーム・シューティングゲーム
は減っているのでは?
• ノベルゲームは非常に多い(40%)
• シューティングゲームもそこそこ作られている(9.0%)
• 独自エンジンもありそうな気はする
• 商用のゲームでも独自ゲームエンジンは残っているため、作りたい人はいるのでは?
• 3Dゲームでは一定数存在(11%)
• STGゲームでは割合が高い(29%)
• 全体としては(5.3%)
ご清聴ありがとうございました
• やったこと
• 昨年のコミケの同人ゲームのエンジンを調査
• 分かったこと
• 2次元のノベルゲームが多く作られている
• Unityの割合が2次元、3次元問わず高い
• 2次元のゲームも作りやすくなっている(専用のプロジェクト生成)
• Unity以外の勢力は次元で異なる
• 2D: 様々な専用エンジン・スクリプトシステムが群雄割拠
• 3D: Unreal Engine 4 がUnityに迫る勢い
• カテゴリごとにゲームエンジンの選択に特徴がある
• ノベル:様々なスクリプトエンジンが用いられている。3Dものはほとんどない
• RPG :RPGツクールが強い。3DではUnity
• アクション:Unityが強い。次いで2DではDXLib, 3DではUE4
• STG:独自エンジンが多く作られている
• リズム:2DではUnityが独占
• Unity の勢いが時間と共に増している
• 未来の仕事
• 商用ゲームでのゲームエンジンの調査
• DXライブラリの教育での利用度の調査
• 開発ツールの調査

同人ゲーム開発におけるゲームエンジンの現状