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カスタムLSIが道具になるために
- 2. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Contents
自己紹介
最近流行の「電子工作」とムーアの法則
技術が普及することの意義
〜センシングを題材として
汎用品と専用品とムーアの法則
部品としてのカスタムLSI
- 3. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
自己紹介
浅田研@東大(VDEC)でPh.D(‘98)(イメージセンサ)
藤島先生がD3のときのB4、池田先生の2つ下
金沢大(’98~’00・’04~)
公立はこだて未来大(’00~’04)
’95〜’00:はこだて未来大 計画策定委員
本業:(機能つき)イメージセンサ
原点:小4のころ:半田付け
好きな半田はPb60%:Sn40%
泉弘志先生の本
トランジスタ回路=「パターン」認識として体得
(理論は後付け:大学3年ではじめて)
- 5. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
研究スタンス
コンピュータと実世界の接点(インタフェース)
人間-コンピュータ
人間-人間
コンピュータ-コンピュータ
具現化手段
集積回路(既存のLSIで実現不可能ならば)
マイコン
ユーザ(人間)の知覚や感覚の特性も重視
interface Device
- 6. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
作品紹介?(半分研究テーマ)
LED Tile
LED Tileオルゴール
ReelOpener
PSoC1duino
- 8. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
イマドキの「電子工作」?
パラレルワールド
旧来型?
基板エッチング
半田付け
Tr・真空管
アンプ、ハム
最近型?
ブレッドボード
ジャンパ線
Arduino
ぴかぴか光る
- 9. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
最近の秋葉原(あきば)
※客層が変わってきている(こっちの)
(昔)ロボコン高専生・電子工作マニア(おっさん)
(今)↑+テクノ手芸女子、親子連れ、美大生
9
西餅「ハルロック」
(週刊モーニングで連載中)
- 10. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Make: 理工離れ?どこの世界の話?
“Maker”の活動の広がり
実はみんな「作るのが大好き」
FabLab(レーザーカッター、3Dプリンタ等の
加工機をコアにしたコミュニティ)
いままでは「技術が手元になかった」だけ
道具・技術が「民主化」されて、使えるようになった
「半導体ユーザが多様化した」と見ることもできる
MakerFaireTokyo2013
の様子
- 11. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“Maker”から産業へ
ロングテール:嗜好の多様化+それに応える産業
「本当に欲しいもの」が手に入る
実際に製造業でも
小規模製造業、高い技術力
熱心なユーザ・ファン、ユニークな製品
市場調査+資金調達=CrowdFunding
サプライチェーン・製造技術の活用
製造業におけるロングテールの具現化
「ハードウエア・スタートアップ」が続々
(C.アンダーソン「ロングテール」,早川書房 (2009))
全体の40%
「一人家電メーカ」BsizeのStroke(39,900円)
- 12. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LSIの進化の歴史:ムーアの法則
ref: http://www.intel.com/jp/intel/museum/processor/index.htm
傾き:×約1.5/年
G.Mooreが1965年に論文[1]で述べる→C.Meadが「法則」と命名→「予測」→「指針(目標)」へ
[1] G.E.Moore, "Cramming more components onto integrated circuits," IEEE Solid-State Circuit Newsletter, Vol.11, No.5, pp.33-35, 1965.
- 13. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則のカラクリ:スケーリング
MOSトランジスタを、より小さく作ると・・・?
R.H.Dennardが考察[2]
寸法: 1/α
不純物濃度: α
電源電圧: 1/α
結論:いいことばかり
速度↑
消費電力↓
集積度(機能)↑
技術が進むべき方向性が極めて明確なまれなケース
p-Si
S DG
n-Sin-Si
p-Si
S DG
n-Sin-Si
L
[2] R.H.Dennard et al., "Design of ion-implanted MOSFET's with very small physical dimensions," IEEE J.of SSC, Vol.9, No.5, pp.256-268, 1974.
- 14. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MOSトランジスタの微細化の歴史
微細化するほど
メリットがある
=がんばって微細化
そろそろ「原子」が
見えてきている
ref: 日経BP Tech-On! 2009/03/30の記事
L=20nm(いま)
L=5nm(2020年ごろ?)
- 15. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則とコンピュータの歴史
DEC VAX(1976)
1MIPS
Cray-1 (1978)
100MIPS
MIPS:Million Instruction Per Second (1秒間に実行できる命令数)
(世界最初のスーパーコンピュータ)
「世界トップの高速化」+「身近なものにも高速化の恩恵」の2つの側面がある
20000MIPS
10MIPS
100MIPS
20MIPS
20000MIPS
109MFLOPS
- 16. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則の意義:コストダウンと普及
(昔)コンピュータが高価で性能が低かった
紙テープ、テキスト/CUI (Character UI)
TSS(大学に1台、企業に1台)
(少し昔)個人レベルへ
凝った信号処理もOK/GUI (Graphical UI)
個人に1台(PC)
(いま)「枯れた技術」へ
画像、動画、3Dの処理はあたりまえ
Natural UI (ジェスチャなど)/Physical Computing
一人で何台も(ユビキタス/IoT)
コンピュータが「お手軽」に
→利用場面の拡大
- 17. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則の「コストダウン」
コストダウン
同一機能を小チップ=低価格で
古い世代の製造装置でも作れるLSIも、
「そこそこ」高性能
- 18. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則と「マイコン」という概念
技術的には:枯れた技術の固まり
RISC, Flashメモリ, ...
ハーバード
アーキテクチャ, ...
使い方的には・・・?
「コンピュータ」が安く小さくなることの意義
単なる「ダウンサイジング」ではない
パラダイムの転換(の可能性)
(Atmel ATtiny10データシートより) (日立/Renesas H8/3048F)
- 19. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「マイコン」によるパラダイムシフト
例:「LED点滅回路(Lチカ)」
Ra
Rb
C
NE555
84
3
5
7
2
6 while(1){
a = 1;
sleep(1);
a = 0;
sleep(1);
}
古典的な方法:発振回路
ソフトウエア的な方法
(可能だが非現実的)
- 20. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「Lチカ」をマイコンでやると?
コスト面:マイコン○(「もったいなくない」)
機能面:マイコン○(多機能・仕様変更も容易)
あらゆる面で、マイコンLチカは現実的な解
マイコン使用
部品点数=1
コスト:100円
発振回路(555)
部品点数=4
コスト:150円
- 21. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「原子」化するマイコン
NXP LPC1102
(Coretex-M0/50MHz)
Atmel ATtiny10(8MHz)
システムの中心的構成要素→システムの構成要素の1つへ(「マイコン・リッチ」)
- 22. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
破壊的イノベーションとしてのマイコン
「コンピュータ」が小さく安くなった「だけ」
システム構成の概念を変える可能性
(「破壊的イノベーション」)
ここまでの質的な変化が
実質になるためには?
設計者が意図できるか?
ユーザが理解できるか?
(C.クリステンセン「イノベーションのジレンマ
—技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(翔泳社(2001))
- 23. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「マイコン」における料理人
「マイコン」の「調理例」を示す「料理人」
雑誌記事(トラ技)、電子工作キット(秋月)、・・・
- 24. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
新しいパラダイムでの「料理人」の重要性
2000年頃から店頭に→食べ方???
料理番組・雑誌等での調理例→定番キノコに
- 25. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術が「道具」になるステップ
開発/発明される
お店で買えるようになる
使い方が知られるようになる
みんなが使うようになる
それが「道具」となって、次のステップへ
プロのみ マニア(ハイレベルアマチュア)向け だれでも
- 26. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Arduino←→他の無数のマイコンボード
技術的なポイント(私見)
ソケットがメス(ジャンパ線をさせる)
PCからリセットをかけられる(DTRリセット)
USB接続で完結する
給電・プログラム・ターミナル
IDEとターミナルが統合・連携
いちいちターミナルを閉じなくてよい
ダウンロード→Lチカまでが劇的・異次元に早い
「そんなこと・・・」と思ってしまいがち
しかしまさに「目からウロコ」(やってみるとわかる)
「お手軽」という意義の大きさ(やってみないとわからない)
「(原理的に)可能」と「(現実的に)可能」の大きな違い
- 27. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Arduino+ブレッドボードの意義
ふつう:「考える→試す」のサイクル
場合によっては「基板設計から」=始まるまで2週間
壊さないように、仕様を満たすように(技術者の常)
Arduino+ブレッドボード:
「考えながら試す」が融合している(サイクルが短い)
良くも悪くも「向こう見ずな試行錯誤」が可能(15分で動く)
「データシートをちゃんと読まずに動かしてみる」が可能
でもけっこう壊れない(ムーアの法則で意外と丈夫)
5V出力ピンにLED直結とか
壊れたらまた買えばいい(ムーアの法則で意外と安い)
秋月で売っている。DigiKeyで売っている。入手が劇的に容易
- 28. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
OSHWの意義
Arduino-Derivative
Arduinoで動くものをつくる(大きいけど)
動いたら、必要なものだけを抜き出して再設計
(小型化・低コスト化)
ソフトウエアはそのまま移行
コアは、ATmega+ブートローダ
mbed (ARMシリーズ)も似ている
mbedで動くものをつくる
動いたら、必要要素だけを再設計、そのまま移行
ArduinoよりCPUラインアップが広い
- 29. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
共通言語としてのArduino/mbed
ハードウエア設計者←→ユーザ(デザイナ)
のやりとりの言語
仕様・API
「実装=設計者」だと、修正のたびに仕様のやりとり
両者の共通言語としてのArduino/mbed
「あとはやっといて」ができる
(Arduinoプログラムならユーザが使える)
パラメータ調整も、ユーザが自分でできる(自立)
実際、とても(お互いにとって)楽
- 31. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具の普及」がもたらしたもの:映像・音楽
(昔)「表現」はプロの特権だった
音楽、映画、・・・
私たち=Consumer
(今)「表現」は誰でもできる
「道具」の普及
(DTM、初音ミク、などなど)
「発表機会」の普及
(ニコ動、などなど)
私たち=Creator/Makerになることができる
(ならなくてもいい)
宮下芳明「コンテンツは民主化をめざす
―表現のためのメディア技術」
(明治大学出版会, 2015)
- 32. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具の普及」がもたらしたもの:イノベーション
発明・イノベーションは、
ユーザーが行う場合も多い
道具が民主化されている
(=やろうと思えばできる)
ユーザーは「アツい心」をもつ
(=採算・労力を度外視で
がんばれる)
小川進「ユーザーイノベーション:
消費者から始まるものづくりの未来」
(東洋経済新報社, 2013)
- 33. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具の普及」がもたらしたもの:プログラミング
プログラミング言語・環境の民主化
(昔)PCもコンパイラも高価
=「遊びに使う」なんて論外
(今)PCも安価、コンパイラはタダ
=「遊びに使う」からはじめられる
ユーザ・コミュニティによる「知の蓄積」も後押し
- 34. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具の普及」の結果:深圳の華強北
34
山寨(ShanZhai)の例
※FakeCopyではなく、プロダクトの
進化系。これが1週間で量産される
無限に続くパーツ屋
築地のような活気
“Used Mobile Phone Shop”の実体
パーツに分解
(BGAも)
路上で解体
店頭でリペア
(BGAも手はんだ:ボール再生機あり)
ShenZhen HuaQiangBei
- 35. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の「普及」がもたらすもの
(従来)技術=プロの特権
(いま)技術=誰でも使える(普及・民主化)
ユーザの裾野が広がる(多様化)
その中から「アタリ(イノベーション)」が生まれる
相対的に「プロ」の重要性↑↑(「遊び」だけでない)
(L.Fleming, Harvard Business Review,
8(9), pp.22-24 (2004))
メンバの「均一性」
生まれる成果
- 36. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「マイコン」の別の可能性
電子回路→コンピュータの継続性
本来はつながっている知識学問体系
・・・全体を通して理解している人がいるか?
- 37. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
似た現象?:化学〜生物学・医学
化学〜生物学・医学の学問体系
脳・知能
生物(多細胞生物)
細胞
タンパク質・DNA
分子・原子
化学と生物学をつなごうとする試み:
分子生物学、生物物理学、・・・
まだ成功はしていない
超えられない壁?
- 38. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
学問体系が断絶した世界で発生する問題
例:ガン細胞
分子レベルからの発生メカニズムは
完全には未解明
対処療法:外科手術、化学療法など
- 39. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
学問体系が断絶した世界で発生する問題
例:ガン化したトランジスタ・・・?
コンピュータ=決定論的システム
=構成要素の完全動作が前提
微細化の進展→量子効果等による動作の不確実性↑
現状では、製造技術や設計技術で、なんとか抑え込む
・・・いつまでも可能なのか?
「ハード屋」の言い分:ソフトウエアでなんとかしてくれ
「ソフト屋」の言い分:ハードウエアがしっかりしてくれ
例:組込みシステム
トレイ開閉ボタンを押してから45秒後にトレイが開く
Blu-rayレコーダ(実話)
「ソフト屋」の言い分:「CPUがもっと速くなってくれ」
「ハード屋」の言い分:ソフトウエアをもっと効率化してくれ
- 40. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
マイコン:これらをつなぐ媒体?
ぎりぎり、命令実行ステップ〜高級言語が
つながる規模
入出力のための電子回路と
親和性・関連性が高い
- 41. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ボトムアップ式電子工作
金沢大3年生の実習(半期)として実施
作りたいもののアイディアを出す(実現性は考慮しない)
そのアイディアの実現可能性を、指導者と吟味
用いるセンサ・アクチュエータを選定
期間内に実現できそうなレベル・複雑度を設定
学習方法の効率化
用いるマイコン(Cypress PSoC1)を共通化=ノウハウ共有・蓄積
用いる部品のデータシートの読み方を学習
=自ら先へ進めるようにステップアップ
「自分で考えた、作りたいもの」を作るので、
モチベーションを維持しやすい
- 44. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「センシング」のニーズ
「身の回りの現象を自分で観測したい」のは、
人間の根源的な欲求(のようだ)
農業、自然災害などは死活問題で高いニーズ
ホビーユースでも幅広いニーズ
(例:インターバルカメラで撮った画像、昆虫観察)
どうやって「観測」するか?
公共事業(行政サービス):天気予報など
自分で観測する(ロングテール):趣味
- 45. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
公共事業型センシングシステム
特に大規模なセンシングシステム向き
高価・高性能な観測機
広い観測網、高い信頼性
得られるデータの高い公共性
維持のための継続的な(主に公的)資金提供
欠点:大胆な新技術の投入が困難
即効的な成果を求められる傾向が強い
長期的には技術開発の停滞
- 46. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
助成金依存vs自立資金
例:歌舞伎
松竹(株)の営業興行
(株)歌舞伎座が運営
伝統を守りつつ
進化を続けている
例:多くの伝統芸能・伝統工芸
補助金依存→
「古いものを守る」ことが目的化
後継者不足、高齢化、・・・
本来の伝統工芸は、その時代での最先端技術
のはず
- 47. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
公共事業依存の産業の未来は?
例:テレビ・公共インフラ
「2020年東京オリンピック
に期待」できるのか
1964年とは社会状況が全く異なる(成熟社会)
例:スマートメータ・スマートグリッド
メリットの一般論:
節電効果、地球温暖化
・・・定量的な議論は?
3.11を経験しても
普及しない社会構造は?
ただし「21世紀の公共インフラ」かもしれない
- 48. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ユーザの手によるセンシング
例:気象観測
「自分で計測した気象データから、地球温暖化を
考える」試み
例:放射能計測
生活に直結し、目に見えない事象
きわめて強固な観測のモチベーション
その一方、非科学的(感情的)な議論が横行
「事故の当事者(東電・政府)の観測データ」
に対する不信感が大きな背景の一つ
- 49. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
観測データの真の活用のために
「科学的な方法で観測したデータを、定量的・
科学的に解釈する」ことは、現代社会を生き
る我々の必須スキル
「理科離れ」とは次元が違う
観測対象が身近なほど、観測方法・技術が
細分化
汎用の観測方法・装置は非現実的
技術の高度化&知財保護→ブラックボックス化
→さらにユーザ自身が観測技術を持てない
- 50. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ユーザ参加型センシングシステム
ユーザの「多種多様で高いモチベーションのセ
ンシング」を持続的に具現化するためには?
「センシング装置を受託開発」
持続的でない(ユーザの経済的余裕)
裾野が狭い(極めて高い志 or よほどの物好き)
「センシング技術の普及(民主化)」はどうか?
(おばあちゃんセンシング)
- 51. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
実例:Radiation Watch
非専門家がスマホ接続型
放射線観測機を製品化、
事業化、進化改良中
回路設計者・メーカも参画
(仙台近辺の方々)
福島第1原発事故という特殊な
状況下とはいえ、極めて迅速な
製品化(フィジカルコンピュー
ティングやMAKERSの活用)
ビッグデータ的な展開も可能
http://www.radiation-watch.org/
- 52. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ユーザ参加型センシングの可能性
センシング技術の普及(「民主化」)
(ツールキット化・ユーザコミュニティ)
あらゆる人がセンシング技術を手に入れる
「必要なものは自分で作る」という価値観(DIY)
←→プロに発注(Hire a Pro; HAP)
高いモチベーションでセンシング
場合によっては事業化する
近年注目されている動き
例:ニコニコ学会β(ユーザ参加型研究・学会)
結果として、プロの役割が重要になる
- 54. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
産業としての製造業の形態の分類
製造業の形態の分類
(P.F.ドラッカー「現代の経営[上]」(ダイヤモンド社,2006))
個別生産: 船舶のような一点物の生産
旧型の大量生産: 均一な製品の大量生産
「黒である限り何色の自動車でも手に入る」(H.フォード)
新型の大量生産: 均一な部品の組み合わせによる
多様な製品の大量生産
プロセス生産: 製品が製造工程に強く依存する生産
(石油精製など)
- 55. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
製造業における半導体
「旧型の大量生産」
同じ製品を大量につくる
汎用Tr・汎用ロジック・汎用アナログ・メモリ・・・
「新型の大量生産」
「均一な部品=汎用半導体」の
組み合わせ
半導体の位置づけ
それ自体が「旧型の大量生産」の対象
「新型の大量生産」による
「電子情報機器」生産のための部品・素材
- 56. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「新型の大量生産」における部品
部品の規格化による高い効率化
黎明期の半導体における「セカンドソース」
「真の汎用品」
741、555、74シリーズ、・・・
主に供給安定化が目的
電子情報機器の設計・製造に
与えたメリットは、はかりしれない (Wikipediaより)
- 57. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「真の汎用半導体」の転換
半導体性能↑と電子情報機器の性能↑
部品である半導体製品への性能要求↑
「真の汎用品」の意義の薄れ
汎用品=性能もそれなり
特定用途では性能が不足
半導体製品が用途ごとに多様化
=半導体産業の本質の転換
大量少品種→少量多品種(→SoC)
- 58. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則:汎用品の底上げ
高性能な「汎用品」:道具になった
(マイコン、FPGA、オペアンプ、・・・)
「旧型の大量生産」
=まさに汎用LSI
「新型の大量生産」
=均一な部品のくみあわせで
多様な製品を生み出す
再構成可能LSI(部品の多様化)
FPGA, PSoC, SmartAnalog, …
多少「無駄」があっても問題ない
(ムーアの法則の「恩恵」=コスト面&性能底上げ)
ArduinoUno:部品点数:52
• 受動・機構部品:35(67%)「メーカー問わず」
• 代替可能な半導体:15(29%)
• 代替品がないASSP:2(マイコン×2)(4%)
※P.ドラッカーの分類
- 59. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
SoCのジレンマ?
高度な微細化→System on a Chip (SoC)
=専門性の高いCustom品
&高いイニシャルコスト
(設計・製造装置)
=少量多品種への依存
特定製品への強い依存
iPhone搭載SoC/DRAM/フラッシュメモリ/液晶パネル
設計製造技術の過度の専門化
=参入の敷居↑↑↑(素人お断り)
学生はCADを覚えるので精一杯・・・
59
- 60. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
半導体の汎用品化アプローチ(1)
再構成可能論理
FPGA
PA3 (Renesas): SRAMベース
SmartAnalog (Renesas)
PSoC (Cypress)
(回路的に)均一な部品・多様な製品
専用品よりは性能が劣るが、
基本性能が高いので、
多くの用途では十分
ムーアの法則の恩恵
富豪的アプローチ(Trの無駄遣い)
Y.Kawamura, Proc. of IEEE A-SSCC,
pp.388-391 (2007)
Cypress PSoCシリーズの概念図
- 61. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
半導体の汎用品化アプローチ(2)
汎用LSIチップを
用途にあわせてパッケージ化
MCM (Multi Chip Module)
SiP (System In Package)
SoCよりは性能が低い
ムーアの法則の恩恵
=用途によっては十分
富豪的アプローチ
http://developer.axis.com/old/products/mcm/
http://www.renesas.com/products/package/what/index.jsp
- 62. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
半導体製品のレッドオーシャン化?
半導体のASSP化=コモディティ化=レッドオーシャン化
インフラとしては成り立つはず
(例)鉛筆産業:世の中での必要性からの需給バランス&淘汰の結果、健
全な産業として存在
半導体産業も「産業のコメ」として不可欠なのは事実
「最先端の微細加工」が手段でなく目的化していないか?
例:Flashメモリの価格・性能は微細化でメリットがあるのか?
ユーザ(機器メーカ)からは「加工寸法」はみえない(製品も多い)
「無理して22nm移行」vs「25nmで歩留り↑」
価格、容量、速度、安定供給・・・
※何nmプロセス?
- 63. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則の副作用
「わかりやすい&嬉しい」指針
メーカ側:微細化による性能↑&コスト↓
ユーザ側:機能↑&コスト↓
他の産業にない半導体・電子産業の特異性
重要な前提
「ユーザの機能飢餓」の存在
(潜在的に高機能な製品が求められている状況)
ムーアの法則はユーザの機能飢餓を満たしてきた
・・・当たり前と考えられてこなかったか?
・・・手段であるべき微細化が目的化していないか?
- 64. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
実例:4MbDRAMの立ち上がり
1Mb→4Mbの交代は
ビット単価では説明できない
不景気説は×
DRAM大口ユーザのPCのOS
(Win3.1→Win95)の世代交代? (直野「転換期の半導体・液晶産業」(日経BP,1996))
- 65. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
実例:テレビ
市場動向をどうとらえるか?
公共事業で「市場を作る」ことは長期的に得策か?
(オリンピック、エコポイント、・・・)
学生のテレビ所有率:10%程度
PC(動画)と競合すべき?(時間の使い方として)
http://www.garbagenews.net/archives/1935926.html http://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/32.html
- 67. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
L=20nm(いま)
L=5nm(2020年ごろ?)
ムーアの法則:高機能化の負の側面
微細化が物理限界に
近づきつつある
設計・製造コストの高騰
LSI製造イニシャル費用
~10億円(マスク代)
LSI製造工場
~5000億円
LSI設計コスト
~1000人・月以上
LSI設計CAD
~1億円 ref: 日経BP Tech-On! 2009/03/30の記事
- 68. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路は「道具」になっているか?
「専用品」(カスタムLSI)は?:現状、無理
例:学部1年生にLSIを作らせる?
「高いんだぞ・・・」「失敗したらシャレにならんぞ」
「ツールの使い方が難しいぞ」
「基礎知識(回路理論など)をいっぱい勉強しろ」
「ちゃんと動かすのは難しいぞ」
作れない→経験できない→学べない
「数が出ない製品」のためにカスタムLSI?
価格的に無理
性能的に、そこまでしなくてもOKな場合が多い
68
- 69. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
失敗から学ぶ:「手軽に試せる」環境
69
http://www.viscuit.com/column01/column02/
原田康徳氏(NTT CS研)
- 70. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路が「道具」になるハードル
設計CAD
市販の業務用CAD: 高すぎ、高機能すぎ
VDEC?アカデミア限定
製造方法
高すぎ、時間かかりすぎ(1000万円・半年)
NDA(設計ルールなどのアクセス制限)が厳しすぎ
ユーザ・コミュニティ
参入障壁:現状は(Howの)専門家ばかり
/ユーザ(What/Why)の専門家がいない
- 71. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路の道具化へ:MakeLSI:
情報収集・整理
フリーCADなど
VDEC非依存の環境で
仲間さがし(MLベース)
NDA不要のチップ製造
http://ifdl.jp/make_lsi
- 72. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MakeLSI: 参加登録
Webから申し込み
参加条件:なし
メーリングリスト(GoogleGroup)ベース
CAD(Wgex)+北九州設計ルール
登録メンバ:90名(2016/2/17現在)
プロ(回路・LSI技術者・研究者)
学生(LSI・その他)
社会人(非LSI技術者)
動機:さまざま(興味があった、面白そう、など)
- 73. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MakeLSI: ツール
レイアウト設計ツール: Wgex
浅田先生@東大VDECが(最近は個人的に)開発
回路抽出・DRC機能あり
回路シミュレーションツール:LTspice
HDL→論理合成・配置配線:
Allianceでフロー構築中
(清水先生@東海大)
- 74. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MakeLSI: チップ設計・製造
北九州学研都市共同研究センター
クリーンルーム
「山田シャトル」
2umルール(ほぼλルール):NDA不要
製造実習の一環(受託製造ではない)
フェニテックセミコンダクタ
「山田シャトル」
0.6umルール(北九州ルールを修正し×0.3)
※フェニテックルールは満たす(NDA不要)
パッド、ESD、IOセル、トランジスタモデルは
NDA対象なので使わない
- 75. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MakeLSI: IP
作りながら、GitHubへ蓄積
スタンダードセル
アナログIP(オペアンプ、BGR等)
OSHW (OpenSourceHardware)
ユーザ参加型の蓄積
設計ルールがNDA不要
=IPもNDA不要
- 76. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MakeLSI: 第1回試作:結果
3.5mm角・2チップ、20155/8/3~14に製造
ベアチップ+QFPパッケージ品を配布
各自の多様で強い興味
- 77. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
少量多品種向けLSI製造装置
ミニマルファブ(産総研を中心に開発中)
少量多品種向きの半導体製品生産の方法
会社/大学で持てる(維持できる)
製造受託サービスも(100万円弱?)
http://unit.aist.go.jp/neri/mini-sys/fabsystem/minimalfab.html http://www.p-ban.com
- 78. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具」としてのLSIを持つこと
ふつうの情報工学の研究・・・「あるもの」を使う
カメラ、Kinect、マイコン、FPGA・・・
新技術で、一気にパラダイムが変わることがある
「ICをつくる」という道具を持つと?
=「いまできること」という発想から脱却
「カメラをつくれる」→画素をいじってみる
「容量センサをつくれる」→回路とつなげる
Depth画像
- 79. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LSIが道具になったら何をしたい?
https://www.youtube.com/watch?v=A188CYfuKQ0
http://www.nicovideo.jp/watch/sm23660093
- 80. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LチカLSI動画:ニコ動でのコメント
こっから?
ニコ技界のTOKIO
ゲートの無駄遣い
ここから!!?
ひでえ、勿体ない使い方wwwww
マジかよ。レジストレベルの設計とか
ガチすぎる。
無駄遣い過ぎるだろw
贅沢というかなんというか
え?まじでここからかよ」wwww」」
IC版FusionPCB的なところが現れれば・・・
(FPGAでは)いかんのか?
俺はFPGAで我慢することにする
いや、そこまでは必要ないです
量産品すらFPGA使う時代に専用LSI・・・
アマチュアはFPGAで良いんだよなぁ・・・w
- 81. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「カスタムIC」ならではのことは?
実世界との界面
センサ、アクチュエータ(MEMS)
アナログ回路
超LowPower
カスタムマイコン?
81
- 82. 2016/3/31 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LチカLSI ver2
タッチセンサ 光センサ ※北九州学術研究都市 共同研究開発センターの半導体試作施設において、
(一財)ファジィシステム研究所の協力の下、他大学学生のLSI製造演習として
試作されました
CMOS 2um 2Al
3.2mm x 3.2mm
https://www.youtube.com/watch?v=NN1wNf66vXw
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24280073
CAD:フリーウエア(Inkscape)
製造:北九州の時間貸しクリーンルーム