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道具としての電子回路・半導体
- 2. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Contents
自己紹介
コンピュータと半導体の歴史:ムーアの法則
「道具の民主化」がもたらすこと
情報科学と半導体の新しい関係
- 3. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
自己紹介
浅田研@東大(VDEC)でPh.D(‘98)(イメージセンサ)
金沢大(’98~’00・’04~)
公立はこだて未来大(’00~’04)
’95〜’00:はこだて未来大 計画策定委員
本業:(機能つき)イメージセンサ
+LSIを使うデバイス・システム(←電子工少年)
LSI(イメージセンサ)のレイアウト図
(プロッタ出力して目視チェック)
チップと基板をつなぐ
ワイヤーボンディング 基板設計
はんだ部屋
- 5. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの歴史
(1946)
真空管: 18,000本
消費電力: 140kW
サイズ: 30m×3m×1m
演算性能: 5,000加算/s
(ENIAC:世界最初のコンピュータ)
最小加工寸法: 0.014μm(14nm)
素子数: ~50,000,000
消費電力: 100W~数mW
サイズ: 10mm×10mm程度
演算性能: 10,000,000,000演算/s
(1960頃)集積回路(IC)の発明
US Patent No. 2 981 877
(R. Noyce, 1961)
US Patent No. 2 138 743
(J. Kilby, 1959)
- 6. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ICの進化の歴史:Mooreの法則
ref: http://www.intel.com/jp/intel/museum/processor/index.htm
50年間ずっと、性能が
毎年「約1.5倍」になっている
(等比数列)
- 7. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Mooreの法則のカラクリ:スケーリング
MOSトランジスタを、より小さく作ると・・・?
寸法: 1/α
不純物濃度: α
電源電圧: 1/α
結論:いいことばかり
速度↑
消費電力↓
集積度(機能)↑
技術が進むべき方向性が極めて明確なまれなケース
p-Si
S DG
n-Sin-Si
p-Si
S DG
n-Sin-Si
L
- 8. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MOSトランジスタの微細化の歴史
微細化するほど
メリットがある
=がんばって微細化
そろそろ「原子」が
見えてきている
ref: 日経BP Tech-On! 2009/03/30の記事
L=20nm(いま)
L=5nm(2020年ごろ?)
- 9. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの高速化の歴史
DEC VAX(1976)
1MIPS
Cray-1 (1978)
100MIPS
MIPS:Million Instruction Per Second (1秒間に実行できる命令数)
(世界最初のスーパーコンピュータ)
「世界トップの高速化」+「身近なものにも高速化の恩恵」の2つの側面がある
20000MIPS
10MIPS
100MIPS
20MIPS20000MIPS
109MFLOPS
- 10. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの進化がもたらしたもの
(昔)コンピュータが高価で性能が低かった
紙テープ、テキスト/CUI (Character UI)
TSS(大学に1台、企業に1台)
(少し昔)
凝った信号処理もOK/GUI (Graphical UI)
個人に1台(PC)
(いま)
画像、動画、3Dの処理はあたりまえ
Natural UI (ジェスチャなど)/Physical Computing
一人で何台も(ユビキタス化)
コンピュータが「お手軽」に
→利用場面の拡大
- 11. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「LED点滅(Lチカ)」のパラダイムシフト
コスト面:マイコン○(「もったいなくない」)
機能面:マイコン○(多機能・仕様変更も容易)
「枯れた技術」でも、世の中は変わりうる
※ただし、「それを使うこと」ができれば
マイコン(MCU)
部品点数=1
コスト:100円
発振回路(555)
部品点数=4
コスト:150円
while(1){
a = 1;
sleep(1);
a = 0;
sleep(1);
}
※さすがにPCではちょっと・・・
- 12. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則のもたらしたもの(その2)
コストダウン
同一機能を小チップ=低価格で
古い世代の製造装置でも作れるLSIも、
「そこそこ」高性能
=パラダイムが
変わる可能性
12
(C.クリステンセン「イノベーションのジレンマ—技術革新が
巨大企業を滅ぼすとき」(翔泳社(2001))
マイコン
SoC
- 14. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具の普及」がもたらしたもの
(昔)「表現」はプロの特権だった
音楽、映画、・・・
私たち=Consumer
(今)「表現」は誰でもできる
「道具」の普及
(DTM、初音ミク、などなど)
「発表機会」の普及
(ニコ動、などなど)
私たち=Creator/Makerになることができる
(ならなくてもいい)
(重要)「できなかった人が、すぐにできるようになる」
わけではない(=基礎知識重要)
宮下芳明「コンテンツは民主化をめざす
―表現のためのメディア技術」
(明治大学出版会, 2015)
- 15. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具の普及」とユーザーイノベーション
発明・イノベーションは、
ユーザーが行う場合も多い
道具が民主化されている
(=やろうと思えばできる)
ユーザーは「アツい心」をもつ
(=採算・労力を度外視で
がんばれる)
小川進「ユーザーイノベーション:
消費者から始まるものづくりの未来」
(東洋経済新報社, 2013)
- 16. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
情報科学ではどうか?
プログラミング言語・環境の民主化
(昔)PCもコンパイラも高価
=「遊びに使う」なんて論外
(今)PCも安価、コンパイラはタダ
=「遊びに使う」からはじめられる
ユーザ・コミュニティによる「知の蓄積」も後押し
- 17. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「技術の民主化」と多様性
(従来)技術=プロの特権
(いま)技術=誰でも使える(民主化)
ユーザの裾野が広がる(多様化)
その中から「アタリ(イノベーション)」が生まれる
相対的に「プロ」の重要性↑↑(「遊び」だけでない)
(L.Fleming, Harvard Business Review,
8(9), pp.22-24 (2004))メンバの「均一性」
生まれる成果
- 18. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
こんなことやってます:NT金沢
「つくってみた」の「ドヤ顔大会」
遊び・アツい思い(多様性)→アタリは出るか?
- 19. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ハードウエアはどうか?最近の秋葉原
※客層が変わってきている(こっちの)
(昔)ロボコン高専生・電子工作マニア(おっさん)
(今)↑+テクノ手芸女子、親子連れ、美大生
19
西餅「ハルロック」
(週刊モーニングで連載中)
- 20. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Make: 理工離れ?どこの世界の話?
“Maker”の活動の広がり
実はみんな「作るのが大好き」
FabLab(レーザーカッター、3Dプリンタ等の
加工機をコアにしたコミュニティ)
いままでは「技術が手元になかった」だけ
道具・技術が「民主化」されて、
使えるようになった
MakerFaireTokyo2013の様子
「ハルロック」1巻1Ωより
- 21. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“Maker”から産業へ
ロングテール:嗜好の多様化+それに応える産業
「本当に欲しいもの」が手に入る
実際に製造業でも
小規模製造業、高い技術力
熱心なユーザ・ファン、ユニークな製品
市場調査+資金調達=CrowdFunding
サプライチェーン・製造技術の活用
製造業におけるロングテールの具現化
「ハードウエア・スタートアップ」が続々
(C.アンダーソン「ロングテール」,早川書房 (2009))
全体の40%
「一人家電メーカ」BsizeのStroke(39,900円)
- 22. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
なぜMakerが生まれたのか?
製造技術が真の意味で普及したから
技術がこなれてきた
ノウハウがたまった
ユーザの「幅」が広がった
Arduino←→無数のマイコンボードの違いは?
使いやすさ+ユーザコミュニティ(主にオンライン)
ArduinoUno
22
- 23. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「技術の普及」の結果:深圳の華強北
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山寨(ShanZhai)の例(“iPhone nano”)
※FakeCopyではなく、プロダクトの
進化系。これが1週間で量産される
無限に続くパーツ屋
築地のような活気
“Used Mobile Phone Shop”の実体
パーツに分解
(BGAも)
路上で解体
店頭でリペア
(BGAも手はんだ:ボール再生機あり)
ShenZhen HuaQiangBei
- 25. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「道具」としてのICを持つこと
ふつうの情報工学の研究・・・「あるもの」を使う
カメラ、Kinect、マイコン、FPGA・・・
新技術で、一気にパラダイムが変わることがある
「ICをつくる」という道具を持つと?
=「いまできること」という発想から脱却
「カメラをつくれる」→画素をいじってみる
「容量センサをつくれる」→回路とつなげる
Depth画像
- 26. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
現状、ICは「道具」になっているか?
マイコンは「道具」になった
カスタムIC(オレIC)は?:否
「カスタムICを作ったことがある人、いますか?」
設計ツール:高すぎ、高機能すぎ
製造方法:高すぎ、時間かかりすぎ(1000万円・半
年)、NDA(設計情報のアクセス制限)が厳しすぎ
ユーザ・コミュニティ:高い参入障壁、現状は専門
家ばかり
- 27. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「失敗から学ぶ」
「作る→失敗する→そこから学ぶ」のサイクル
プログラミング:失敗OK
マイコン:失敗OK
プリント基板:失敗OK
カスタムIC:さすがにNG
もし学部1年生が「IC作らせてください」ときたら?
「高いんだぞ・・・」「失敗したらシャレにならんぞ」
「ツールの使い方が難しいぞ」
「基礎知識(回路理論など)をいっぱい勉強しろ」
「ちゃんと動かすのは難しいぞ」
27
- 28. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ICを道具にするために: MakeLSI:
情報収集・整理
フリーCADなど
VDEC非依存の環境で
仲間さがし
けっこういる
素人で作ってみる?
http://ifdl.jp/make_lsi
- 29. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MakeLSI: まずはやってみた
ML登録:50人くらい(プロ以外も多数)
設計データ:8人・9種類+α(イラスト)
8/3から北九州で製造開始
- 31. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ICが道具になったら何をしたい?
https://www.youtube.com/watch?v=A188CYfuKQ0
http://www.nicovideo.jp/watch/sm23660093
本チップ試作は東京大学大規模集積システム
設計教育研究センターを通し、ローム(株)および
凸版印刷(株)の協力で行われたものです
- 32. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LチカLSI動画:ニコ動でのコメント
こっから?
ニコ技界のTOKIO
ゲートの無駄遣い
ここから!!?
ひでえ、勿体ない使い方wwwww
マジかよ。レジストレベルの設計とか
ガチすぎる。
無駄遣い過ぎるだろw
贅沢というかなんというか
え?まじでここからかよ」wwww」」
IC版FusionPCB的なところが現れれば・・・
(FPGAでは)いかんのか?
俺はFPGAで我慢することにする
いや、そこまでは必要ないです
量産品すらFPGA使う時代に専用LSI・・・
アマチュアはFPGAで良いんだよなぁ・・・w
- 33. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LチカLSI ver2(センサ機能つき)
タッチセンサ
光センサ
※北九州学術研究都市 共同研究開発センターの半導体試作施設において、
(一財)ファジィシステム研究所の協力の下、他大学学生のLSI製造演習として
試作されました
CMOS 2um 2Al 3.2mm x 3.2mm
https://www.youtube.com/watch?v=NN1wNf66vXw
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24280073
CAD:フリーウエア(Inkscape)
製造:北九州の時間貸しクリーンルーム
マイコンではできない芸当!
- 34. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
でもやっぱり、そこまでやらなくても・・・・
SiP (System In Package)
(Elmos社のWebページより)
自分でつくったIC(カスタム品)
(ほしい機能)
既製品のチップ=汎用品
(マイコン、無線など)
「Arduinoまで作らなくても、それは買ってきて、
それにつなぐ部分だけ作ればOK」と同じこと
- 35. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ICが道具になるとは・・・
『3Dプリンタは、私たちに「何をつくりたいの
か」を問いかけているのです。』
あなたなら、何を作りますか?
田中「SFを実現する 3Dプリンタの想像力」
(講談社現代新書, 2014)
- 36. 2015/8/11 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
まとめ
半導体とコンピュータ・情報科学
ムーア法則→コンピュータの性能向上
コンピュータの性能向上→情報工学の幅の広がり
「技術の民主化」という見方
プロの特権→誰でも使える(コスト面・使い勝手面)
多様な人が使う → アウトプットの多様性↑
その中からイノベーションが出る(かもしれない)
「半導体(IC)の民主化」
そのための道筋
それによって広がる「情報科学」の守備範囲・可能性
その結果、「電子回路」の重要度↑
=来るべき近未来でウハウハ!