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ゲーム理論とマーケットデザイン入門
<マーケットデザイン編>
安田洋祐 | 政策研究大学院大学
早稲田大学オープンカレッジ資料(2013年)	
1
イントロダクション
2
}  テキスト
}  天谷研一『図解で学ぶゲーム理論』
}  参考図書
1.  ジョン・マクミラン『市場を創る』
2.  安田洋祐「社会を変える新しい経済学」
}  講義用ウェブサイト
}  https://sites.google.com/site/yosukeyasuda/jp/lecture/wo13 
}  第一回:戦略的状況とは何か
}  テキスト1~2章
}  第二回:ナッシュ均衡
}  テキスト2~3章
}  第三回:ビジネス競争のゲーム
}  テキスト3章
イントロダクション
3
}  第四回:ゲームを後ろから解く
}  テキスト4章
}  第五回:長期的関係と協力の発生
}  テキスト7章
【ここまでが「ゲーム理論入門」】
}  第六回:マッチングの理論と実践 --- 27~82
}  参考図書1&2
}  第七回:オークションの理論と実践 --- 83~122
}  テキスト5章、参考図書1
}  第八回:メカニズムデザインの考え方 --- 123~151
}  参考図書2
【後半三回は「マーケットデザイン入門」】
<ゲーム理論編>のおさらい
Lecture 1~5:要点のまとめ	
4
1. 囚人のジレンマ:利得表による分析
5
}  (黙秘、黙秘)が2人にとって望ましい結果に見えるが…
}  実は相手の戦略によらず「自白」するのが各自の最適戦略!
}  各人が合理的に選択する結果、(自白、自白)が実現!
}  まさに、囚人の「ジレンマ」が起こってしまう…	
B
A
黙秘 自白
黙秘 -1
-1
0
-5
自白 -5
0
-3
-3
1. 囚人のジレンマ:注意点
6
}  このゲームでは個々のプレーヤーが最適戦略を持つ
}  【最適戦略(支配戦略)】 他のプレーヤーたちがどのような行
動を選択しても、自分がある特定の行動Aを選ぶことによって
利得が最大化されるとき、行動Aを「支配戦略」と呼ぶ。
}  支配戦略の組み合わせは必ずナッシュ均衡になる!
}  支配戦略が存在しないゲームもたくさんある
}  各人の最適な意思決定 ≠	
 全体にとっての効率性
}  ナッシュ均衡が全体にとって望ましい結果(パレート効率的な
結果)をもたらすとは限らない!
}  「アダム・スミスは間違っていた!」(映画『ビューティフル・マイ
ンド』のナッシュの台詞)を簡潔に体現している
1. 囚人のジレンマの応用例
7
現象 プレイヤー 「協力」 「裏切り」
軍拡競争 国 軍縮 軍拡
国際貿易政策 国 関税引き下げ 税率据え置き
男女間の協力 カップル 相手に従う 相手に要求
公共財供給 地域住民 貢献/負担 ただ乗り
森林伐採 きこり 控えめに伐採 とれるだけ伐採
2. コーディネーションゲーム:利得表
8
}  共同作業のために新しいパソコンを購入する
}  相手と異なるOSでは全く意味がないとする
}  (Mac, Mac)の方が(Win,Win)よりも2人にとってベター
   学生2
学生1
Windows Mac
Windows 1
1
0
0
Mac 0
0
2
2
2. ナッシュ均衡の定義
9
}  プレーヤーたちの選択した行動の組がナッシュ均衡
であるとき
1.  (すべてのプレーヤーにとって)自分一人だけが行動を
変更しても利得を上げることができない
}  安定的な状況をうまく描写できる
2.  プレーヤー同士がお互いの行動を正しく予想してそれ
に対して最適な行動を選択し合っている
}  合理的な結果の予測として優れている
}  数学的には全く同じ定義でも多様な解釈ができる!
2. コーディネーションゲーム:分析
10
}  このゲームには2つナッシュ均衡がある!
}  (Mac, Mac)と(Win,Win)のどちらもナッシュ均衡
}  ナッシュ均衡の見つけ方 →天谷(56-59ページ)
}  コーディネーションゲームのように
}  (一般に)ナッシュ均衡は複数存在する場合がある
}  プレイヤー全員にとってあるナッシュ均衡よりも別のナッシュ均衡の
方が望ましい場合もある
}  良い均衡(Mac, Mac)ではなく悪い均衡(Win,Win)が選ばれ
てしまう危険性がある
}  「コーディネーションの失敗」と呼ばれる
}  失敗を防ぐには? →天谷(74-75ページ)
2. 合理的な豚:ナッシュ均衡
11
}  大豚が「スイッチ押す」、子豚が「待つ」ことに
}  一見すると不利な子豚が大豚よりも高い利得を得る
}  戦略的な要因をうまく使えば弱者が強者に勝てることも!	
    子豚
大豚
スイッチ押す 待つ
スイッチ押す -1
4
3
1
待つ -1
5
0
0
3. ホテリング・モデル:立地ゲーム
12
}  【プレイヤー】 (浜辺の)2軒のアイスクリーム屋:AとB
}  【戦略】 お店の立地場所:0から100の間の数字
}  【利得】 利益(集客数に比例する)
ホテリング・モデルの仮定
}  お客は浜辺沿い(0から100)に均一に散らばっている
}  個々のお客は自分から近い方のお店に行って、1単位
ずつアイスクリームを購入する
}  お店が等距離にある場合には半々の確率で店を選ぶ
⇒ナッシュ均衡はどのようになるだろうか?
3. 立地ゲーム:ナッシュ均衡
13
}  このゲームにはナッシュ均衡がひとつだけ存在する
}  どちらのお店も真ん中(=50)に立地する!
}  「最少差別化の原理」(Principle of Minimum Differentiation)
なぜこうなるのだろうか? 2つのお店が
1.  異なる場所を選ぶのは(ナッシュ)均衡にならない
}  相手の立地により近づくと必ずお客が増える
2.  真ん中以外の同じ場所を選ぶのも均衡にはならない
}  左右どちらかに少し動くとお客が急に増える
3.  真ん中をともに選ぶ場合はナッシュ均衡になる!
}  どこに立地を変えても客の数が減ってしまう
3. 立地ゲーム:応用例
14
}  どのような現実の現象を説明できるのか?
1.  できるだけ多くの客を獲得することを目的としている
2.  ライバル同士が同じ土俵(プラットフォーム)で競争していて
3.  競争の結果として同じような戦略を取り合っている状況
プレイヤー	
 戦略	
 現象	
政党(民主党と自民党)	
 政策スタンス	
 中道的な政策(2大政党
制のジレンマ)	
コンビニ・チェーン	
 ロケーション	
 隣り合うコンビニ	
テレビ局	
 放送時間	
 同ジャンル番組の集中	
メーカー	
 製品の味や外見など	
 似たような無難な商品
(家電、コーラ、etc)
3. ゼロサムゲーム:マッチング・ペニー
15
}  2人のプレーヤーがそれぞれコイン(1セント)を置く
}  面が揃えば1が、異なれば2が相手に1セントを支払う
}  2人の利得の和が常にゼロ(/一定)
}  「ゼロサム(/定和)ゲーム」と呼ぶ	
     2
1
表 裏
表 1
-1
-1
1
裏 -1
1
1
-1
3. ナッシュ均衡が“ない”?
16
}  ゼロサムゲームの特徴
}  相手の裏をかくのが常に最適
}  お互いが納得できるWin-Winの状況がない
}  ゼロサムゲームの例
}  【ポーカー】 ブラフ(はったり)を「かける」か「かけない」
}  【戦争】 「海側」から攻める/守る、「陸側」から攻める/守る
}  【テニス】 「中央」にサーブ/備える、「端」にサーブ/備える
}  プレーヤーは常に相手の裏をかこうとする
}  安定的な状況(ナッシュ均衡)は存在しない??
4. 混合戦略:行動を確率的に選択する
17
}  混合戦略
}  複数の行動を確率的に混ぜてプレーする
}  じゃんけんなどで無意識に行っている“戦略”
}  純粋戦略
}  特定の行動を確実に(確率1で)選ぶ:今までの“戦略”
}  混合戦略の特殊ケースとみなすことができる
}  戦略を混合戦略に拡張してナッシュ均衡を定義!
}  すべてのプレーヤーにとって、自分一人だけが(混合)戦略を
変えても得できないような混合戦略の組み合わせ
}  合理的なプレーヤーは利得の「期待値」を最大化すると仮定
}  ノイマン&モルゲンシュテルンによる「期待効用理論(仮説)」
4. 最適反応曲線による分析
18
}  相手の混合戦略に対する最適な反応を図示
}  「最適反応(Best Reply)曲線」の交点=混合戦略均衡	
q
p
0
1
1
BR2	
BR1	
0.5	
0.5	
NE
4. 動学ゲーム分析で気を付けること
19
}  時間を通じた動学ゲームにはナッシュ均衡が複数存在
する場合が多い → これ自体は問題ではないが…	
 
}  一部の均衡が信憑性のない「から脅し」に依存している
}  ゲームを「後ろから解く」ことによって、信憑性のない均
衡をきちんと排除することができる!
}  「バックワード・インダクション(後方帰納法)」と呼ぶ
}  この考えを解概念としてフォーマルに一般化すると
}  「部分ゲーム完全均衡」となる(本講義では省略)
4. バックワード・インダクション解
20
( ,4)	
(-1, )	
( , )	
参入企業	
独占企業	
しない	
参入	
価格競争	
しない
4. 参入ゲームとコミットメント
21
}  事後的には(いったん参入が起こったら)最適な価格競
争「しない」を選ばないことにコミットすると…
(0,4)	
(-1,-1)	
(1,1)	
参入企業	
独占企業	
しない	
参入	
価格競争	
しない
4. コミットメントの具体例
22
}  家電量販店などの「最低価格保証」
}  他店よりも1円でも高い商品があれば値下げします
}  事後的には最適ではない「価格競争」にコミットすることにより、
ライバル店の値下げを牽制する効果が期待できる!
}  代理人(エージェント)へ交渉や仕事を依頼する
}  代理人には条件を譲歩する権限が無い
}  交渉の余地がないことをコミットすることができる
}  ソフトウェアの「オープンソース」化
}  市場を独占化しないことにコミットする
}  ユーザーが安心してそのソフトを使えるように
5. 無限回繰り返し「囚人のジレンマ」
23
}  繰り返しが有限回だと協力は絶対に達成できない
}  ゲームを後ろから解くと、毎期(裏切り、裏切り)が実現
}  無限回の場合にはゲームに終わり(最終期)が無い
}  うまくお仕置きの仕組みを作ると(協力、協力)が実現できる
プレーヤー2
プレーヤー1
協力 裏切り
協力 2
2
3
-1
裏切り -1
3
0
0
5. 協力を達成するための条件
24
}  次の形で定義される「トリガー戦略」を考える
}  最初の期には(協力、協力)をプレーする
}  過去に誰も裏切らない限り、(協力、協力)をプレーし続ける
}  もしも誰かが裏切った場合には、次の期以降ずっと(その後に
何が起きようが)(裏切り、裏切り)をプレーし続ける
}  協力を達成するためには、裏切りがもたらす将来の損失
が短期的な利益よりも大きくないといけない	
3/12
1
1
...221...2223 22
≥⇔
−
≤⇔
++≤⇔+++≤
δ
δ
δ
δδδδ
5. 世界の終わりとお金についての考察
25
もしも世界がT期後に終わるとすると…	
1.  T期 → 次の期が無いので誰もお金を受け取らない	
2.  T-1期 → お金を受け取っても来期は絶対使えない	
}  実質的に今期が最終期 → 誰もお金を受け取らない	
3.  T-2期 → お金を受け取っても将来に使うことは無理	
}  やはり誰もお金を受け取ろうとしない	
}  以下、1期にさかのぼるまでこの議論は続く…	
4.  世界の終わりが分かった瞬間に紙幣は紙くずに!?
5. 有限回繰り返しゲームの罠
26
}  Tはどんなに大きい数でも構わない
}  いつかこの世界(人類の歴史)は終わる → Tは有限
}  疑問) だとすると、今すぐお金が使えなくなるのでは?
}  「有限の長さでゲームが終わる」のと「T期でゲームが終
わることが確実に分かっている」のは全く異なる状況
}  ゲームを後ろから解くためには、プレーヤーたちがいつゲー
ムが終わるのかをお互いに正確に知っている必要がある
}  知らない場合には、常に将来の可能性を考慮するはず!
}  例) 今期裏切ったら、将来お仕置きされるかもしれない…
}  実は「無限回繰り返しゲーム」として分析する方が適切
ゲーム理論とマーケットデザイン入門
Lecture 6: マッチングの理論と実践
Lecture 627
本日の講義の流れ	
1.  マーケットデザインとは何か
q  経済学のアイデアが着々と社会に貢献!
2.  公立学校選択制
3.  「マッチング」問題とその解決法
q  すぐに使えるマッチング・メカニズムを覚えて帰ろう!
4.  GSメカニズムの解説
5.  「交換」問題とその解決法
q  すぐに使える交換メカニズムを覚えて帰ろう!
6.  TTCメカニズムの解説
Lecture 628
マーケットデザインとは何か
社会を変える経済学のアイデア	
Lecture 629
30
2012年のノーベル経済学賞
- ロス&シャプレー「マーケットデザイン」で受賞
Lecture 6
マーケットデザイン = 制度設計
- 理論から実践へ!	
マーケットデザインとは?
}  ミクロ経済理論で得られた知見をいかして、現実の市場
や制度を修正・設計する新しい分野
}  「マーケット」はいわゆる市場よりも広い概念なので注意
}  理論だけでなく、実験やシミュレーションを通じて事前に
実用性の検証を行う ⇒ 工学的
}  経済学者の提案した新たな制度がそのまま現実に応用
され役にたっている ⇒ 実践的
⇒ どんな実践例があるのかを見てみよう!
31 Lecture 6
32
代表的な実践例
- すでにたくさんの成功事例が!
}  オークション設計
}  周波数オークション
}  国債の販売方法
}  アドワーズ (Google)
}  マッチング・メカニズム
}  研修医マッチング
}  臓器交換メカニズム
}  公立学校選択制
Lecture 6
33
代表的な実践例
- すでにたくさんの成功事例が!
}  「お金」を使う
}  周波数オークション
}  国債の販売方法
}  アドワーズ (Google)
}  「お金」を使わない
}  研修医マッチング
}  臓器交換メカニズム
}  公立学校選択制
Lecture 6
34
代表的な実践例
- すでにたくさんの成功事例が!
}  オークション設計
}  周波数オークション
}  国債の販売方法
}  アドワーズ (Google)
  ポール・ミルグロム
}  マッチング・メカニズム
}  研修医マッチング
}  臓器交換メカニズム
}  公立学校選択制
 アルヴィン・ロス
Lecture 6
【祝】ノーベル賞!
実践から得られた教訓
- エキスパートはかく語りぬ	
}  ロス教授はマーケットデザインの成功に欠かせない要素
として次の3つを強調:
}  Marketplaces need to
1.  Provide thickness(厚み); they need to attract a sufficient
proportion of market participants.
2.  Overcome congestion(混雑) that thickness brings, by
making it possible to consider enough alternative
transactions to arrive.
3.  Make it safe(安全) and sufficiently simple(単純) to
participate in the market.	
35 Lecture 6
36
日本における(これからの)実践例
- マーケットデザインが社会を変える
}  医師臨床研修マッチングプログラム
}  2004年の制度導入より、年間8-9000人の研修医がマッチン
グプログラム(「Gale-Shapleyメカニズム」)を通じて受け入れ
先の病院に割り当てられている
}  (第4世代携帯電話向け)周波数オークション
}  OECD34か国中31か国で既に導入済み
}  日本でも導入へ向け法制度改正を準備中
}  公立学校選択制
}  研究成果を生かして制度“設計”を行うチャンス
Lecture 6
公立学校選択制
生徒と学校をどのようにマッチングさせるか?	
Lecture 637
38
公立学校選択制
- 制度的な背景
}  伝統的に各生徒は「どこに住んでい
るか」に応じて公立の小中学校に自
動的に入学していた
}  「通学指定校」(いわゆる地元校)
}  1980年代に米国で選択制が開始
}  生徒・保護者の希望に従って、より広い
範囲から学校を選択できるように
}  諸外国にも同様の制度が浸透
}  日本(の自治体)は1998年に初めて制度を導入
}  各自治体が選択制の採否に対する決定権限を持つ
}  2割くらいの自治体が学校選択制を採用している
Lecture 6
39
日本の学校選択制(2004年時点)
- 導入自治体数は増加傾向
Lecture 6
40
なぜ経済学・ゲーム理論の問題なの?
- 学校を賢く(戦略的に)選ぼう!
}  学校のイス(定員)は限られている
}  希望する生徒を全員第一希望の学
校に入れることは不可能
}  どの学校を希望する/しないかを戦
略的に考える必要がある
}  メカニズムが重要! なぜなら…
}  生徒・保護者のインセンティブやマッ
チング結果が変わってくるから
}  学校選択制のアイデア自体は支持が広がっている
}  具体的にどのメカニズムが良いかは依然議論が
}  マーケットデザインが現在積極的に取り組んでいる問題!
Lecture 6
『学校選択制のデザイン』(NTT出版)	
既存の研究書と比較した本書の最大の特徴は、
従来の研究から一線を画したその斬新なアプ
ローチにある。単なる現状分析や、選択制を導
入あるいは廃止すべきか、という是非論にとど
まらず、制度をデザインするという視点から、望
ましい学校選択制の制度設計について、ゲーム
理論の応用研究で得られた最先端の学術的な
知見に基づいて分析を行っている。また、これら
の考察をふまえた上で、より望ましい学校選択
制のあり方について、我々独自の視点から具体
的な政策提言を試みている点も大きな特徴であ
る。(まえがきより)	
Lecture 641
「マッチング」問題とその解決法
Gale-Shapley (GS) メカニズムとは何か?	
Lecture 642
マッチング問題とは何か?
- ヒトとヒトとのマッチング	
}  人と人、人と組織をどう
やってマッチさせるのがよ
いだろうか?	
}  望ましいマッチングの仕
組みをゲーム理論を使っ
て分析!	
Lecture 643
様々なマッチング問題
- 下に行くほどより複雑に…	
}  1対1(One-to-One)
}  【結婚市場】 男女のマッチング
}  1対多(One-to-Many)
}  【労働市場】 労働者と企業のマッチング
}  【学校選択・入試】 生徒・学生と学校のマッチング
}  多対多(Many-to-Many)
}  【ビジネス】 卸売と小売業者のマッチング
}  【学界】 学術誌と編集者
Lecture 644
具体的なマッチング問題
- 3対3の合コン(男女のマッチング)	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  できるだけお互いに好みの相手同士とマッチングさせる
にはどうすれば良いだろうか?	
Lecture 645
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
非効率なマッチング
- 適当(あいうえお順)にマッチングを決めると…	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  【こうき-あい】と【だいき-ひとみ】は3位同士
}  お互いのパートナーを入れ替えるとみんな幸せ	
Lecture 646
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
パレート改善することができる
- あきらかに損なマッチング結果だった	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  誰の満足も下げることなく4人の状態を改善!
}  もとの状態は「パレート非効率」だった…	
Lecture 647
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
不安定なマッチング
- 今度は男性が順番に女性を選ぶと…	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  結果は必ず効率的に(パレート改善できない)
}  しかし【ともき-るい】に“正当な”不満が残る	
Lecture 648
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
ペアで「ブロック」することができる
- 実はお互いの好みが反映されていなかった	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  【ともき-るい】はお互いの状況を改善できる
}  もとの状態は「不安定」なマッチングだった…	
Lecture 649
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
安定マッチングの理論
- その驚くべき性質とは?	
}  安定マッチング: 「どんなペア(や個人)が逸脱してもそ
の人たちが得できないようなマッチング」
}  すべての参加者にとって、自分がマッチできる可能性のある
相手の中で最適なパートナーとくっつける!
}  不安定なマッチング制度は長続きしない(次表)
}  安定マッチングの性質
}  どんなマッチング問題でも常に1つは存在する
}  (すべての)安定マッチングはパレート効率的
}  Gale-Shapley (GS) メカニズムによって見つかる	
Lecture 650
51
ロスが作成した表 (2002, Econometrica)
Lecture 6
安定マッチングの求め方
- (男性側提案の)GSメカニズム	
1.  すべての参加者が好み(ランキング)を提出
2.  次の作業をマッチメイカーが機械的に行う
1.  男性が第一希望の女性に一斉にプロポーズ(告白)
2.  女性はその中で、自分の好みに一番近い人を選んで「キー
プ」、残りの男性をリジェクト(拒否)
3.  男性はリジェクトされるたびにその次の好みの女性にプロ
ポーズ
4.  女性は現状より好みの男性が来るたびにキープ相手を乗
り換えて、残りをリジェクト
3.  ストップした段階でマッチング結果が確定!
Lecture 652
GSメカニズムの注意点
- どちらがプロポーズするかはかなり重要	
}  安定マッチングは一般には複数存在する
}  今回の例では(たまたま)安定マッチングは一つ
}  2通りのGSメカニズムが異なる結果を
}  男性側提案 ⇒ 男性陣にとって最適な安定マッチング
}  女性側提案 ⇒ 女性陣にとって最適な安定マッチング
}  今回の例はどちらからプロポーズしても結果は同じ
}  男性(女性)最適な安定マッチングとは?
}  個々の男性(女性)が、安定マッチングで決まるパートナーの
中からベストの女性(男性)とマッチしている	
Lecture 653
GSメカニズムの解説
安定マッチングを求める簡単な方法	
Lecture 654
GSメカニズムの使い方
- 第1ラウンド、男性のプロポーズ	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  こうきとだいきが同じ女性(るい)にプロポーズ
}  ともきはあいにプロポーズ	
Lecture 655
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの使い方
- 第1ラウンド、女性のリジェクト	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  るいはこうきをキープしてだいきをリジェクト
}  あいはともきをキープ	
Lecture 656
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの使い方
- 第2ラウンド、男性のプロポーズ	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  第1ラウンドでリジェクトされただいきが第2希望のあいに
プロポーズ	
Lecture 657
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの使い方
- 第2ラウンド、女性のリジェクト	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  あいはキープ相手をだいきに切り替えてともきをリジェク
ト	
Lecture 658
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの使い方
- 第3ラウンド、男性のプロポーズ	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  第2ラウンドでリジェクトされたともきが第2希望のるいに
プロポーズ	
Lecture 659
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの使い方
- 第3ラウンド、女性のリジェクト	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  るいはキープ相手をともきに切り替えてこうきをリジェクト	
Lecture 660
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの使い方
- 第4ラウンド、男性のプロポーズ	
}  男性陣の好み	
 }  女性陣の好み	
}  リジェクトされたこうきがひとみにプロポーズ
}  新たにリジェクトが起こらずメカニズム終了!	
Lecture 661
こうき	
 だいき	
 ともき	
1位	
 るい	
 るい	
 あい	
2位	
 ひとみ	
 あい	
 るい	
3位	
 あい	
 ひとみ	
 ひとみ	
るい	
 ひとみ	
 あい	
1位	
 ともき	
 ともき	
 だいき	
2位	
 こうき	
 こうき	
 ともき	
3位	
 だいき	
 だいき	
 こうき
GSメカニズムの性質
- 単純で役に立つ魔法のメカニズム	
}  インセンティブの問題
}  提案側は誰一人として嘘をついても得できない
}  受入側は場合によっては嘘が得になる場合も…
}  結果が安定マッチングになるようなどんなメカニズムを考えても、嘘
をつくインセンティブを完全に無くすことはできない
}  メカニズムの拡張
}  アンマッチ(受入拒否)を許しても結果は安定に
}  同順位がある場合には予めタイブレークが必要
}  1対多のマッチング問題にも簡単に拡張できる
Lecture 662
GSメカニズムの実践例
- ぜひいろんな場所で活用してみよう!	
}  すでに実施されている採用例
}  研修医マッチング(日本、米国、英国など)
}  法曹の実務研修(カナダ)
}  公立学校選択制(ニューヨーク市、ボストン市など)
}  香港の大学入試制度
}  早稲田の内部進学(高校→大学)
}  これから使えそうな応用例
}  ゼミ・研究室・学科配属(「進振り」)
}  新入社員と希望配属部署のマッチ	
Lecture 663
「交換」問題とその解決策
Top Trading Cycles (TTC) メカニズムとは何か?	
Lecture 664
交換問題とは何か?
- モノとモノの交換	
}  参加者がお互いに持って
いるモノをどうやって交換
すべきか?	
}  望ましい交換の仕組みを
ゲーム理論を使って分
析!	
Lecture 665
交換問題とマッチング問題
- マッチング問題の一種としての交換問題	
}  マッチング問題は参加者が2グループに分かれていた
}  両側(Two-Sided)マッチング
}  交換問題の参加者はグループ分けされていない
}  ただし人とモノとで2グループと考えることができる
}  その際にはモノの選好や厚生は考慮する必要がない
}  片側(One-Sided)マッチング
}  ここでは、すべての参加者がちょうど一つずつモノを持っ
ているような単純な状況を考える
Lecture 666
具体的な交換問題
- 5人で商品を(1人ひとつずつ)交換	
}  各参加者の好み
}  できるだけ各人が希望の商品をゲットできるように交換
するにはどうすればよいか?	
Lecture 667
A	
 B	
 C	
 D	
 E	
1位	
 B	
 B	
 E	
 C	
 D	
2位	
 C	
 E	
 D	
 D	
 A	
3位	
 A	
 A	
 C	
 E	
 E	
4位	
 E	
 D	
 B	
 A	
 C	
5位	
 D	
 C	
 A	
 B	
 B
非効率な交換
- 適当に(次の人の商品をもらう)交換すると…	
}  各参加者の好み
}  Bは第5希望のCを、Dは第3希望のEをもらう
}  お互いの商品を交換することで順位が上がる	
Lecture 668
A	
 B	
 C	
 D	
 E	
1位	
 B	
 B	
 E	
 C	
 D	
2位	
 C	
 E	
 D	
 D	
 A	
3位	
 A	
 A	
 C	
 E	
 E	
4位	
 E	
 D	
 B	
 A	
 C	
5位	
 D	
 C	
 A	
 B	
 B
パレート改善できる
- あきらかに損な交換結果だった	
}  各参加者の好み
}  誰の満足も下げることなくBとDの状態を改善!
}  もとの状態は「パレート非効率」だった…	
Lecture 669
A	
 B	
 C	
 D	
 E	
1位	
 B	
 B	
 E	
 C	
 D	
2位	
 C	
 E	
 D	
 D	
 A	
3位	
 A	
 A	
 C	
 E	
 E	
4位	
 E	
 D	
 B	
 A	
 C	
5位	
 D	
 C	
 A	
 B	
 B
現状よりも損してしまう交換
- Aから順番に欲しい商品を選ぶと…	
}  各参加者の好み
}  結果は必ず効率的に(パレート改善できない)
}  Bは自分の商品よりも悪いEを受け取ることに	
Lecture 670
A	
 B	
 C	
 D	
 E	
1位	
 B	
 B	
 E	
 C	
 D	
2位	
 C	
 E	
 D	
 D	
 A	
3位	
 A	
 A	
 C	
 E	
 E	
4位	
 E	
 D	
 B	
 A	
 C	
5位	
 D	
 C	
 A	
 B	
 B
交換結果を個人でブロックできる
- Aから順番に欲しい商品を選ぶと…	
}  各参加者の好み
}  Bは交換結果に従わない方が望ましい
}  もとの状態は「個人合理性」を満たさない	
Lecture 671
A	
 B	
 C	
 D	
 E	
1位	
 B	
 B	
 E	
 C	
 D	
2位	
 C	
 E	
 D	
 D	
 A	
3位	
 A	
 A	
 C	
 E	
 E	
4位	
 E	
 D	
 B	
 A	
 C	
5位	
 D	
 C	
 A	
 B	
 B
(強)コアの理論
- その驚くべき性質とは?	
}  強コアとは「どんなグループ(や個人)によってもブロック
されないような配分」
}  自分たちのグループだけで商品を配分しても得しない
}  すべての参加者にとって、自分が手に入れることのできる中
で最高の商品をもらうことができる!
}  強コア配分の性質
}  どんな交換問題にも常に1つだけ存在する
}  強コアは必ずパレート効率的かつ個人合理的
}  Top Trading Cycles (TTC) メカニズムで発見可能	
Lecture 672
TTCメカニズムの解説
強コア配分を求める簡単な方法	
Lecture 673
強コア配分の求め方
- TTCメカニズム	
1.  すべての参加者が好み(ランキング)を提出
2.  次の作業をマッチメイカーが機械的に行う
1.  各参加者が第1希望(の所有者)を一斉に指差す
2.  サイクルができたグループは、各人が指を指した商品を受
け取るように交換してメカニズムから退出
3.  残った参加者たちで残りの商品の中から第1希望(の所有
者)を一斉に指差す
4.  全員が退出するまでこの作業を続ける
3.  退出した参加者から順に交換配分が決定!
Lecture 674
TTCメカニズムの使い方
- 各人が第1希望を指さす	
Lecture 675
A	
C	
B	
D	
E
TTCメカニズムの使い方
- サイクルが出来たグループは交換成立!	
Lecture 676
A	
C	
B	
D	
E
TTCメカニズムの使い方
- 第2ラウンドでAが自分自身を指差して終了	
}  各参加者の好み
}  結果はパレート効率的かつ個人合理的に!
}  しかも参加者は嘘をついても絶対に得できない	
Lecture 677
A	
 B	
 C	
 D	
 E	
1位	
 B	
 B	
 E	
 C	
 D	
2位	
 C	
 E	
 D	
 D	
 A	
3位	
 A	
 A	
 C	
 E	
 E	
4位	
 E	
 D	
 B	
 A	
 C	
5位	
 D	
 C	
 A	
 B	
 B
TTCメカニズムの実践例
- ぜひいろんな場所で活用してみよう!	
}  すでにアイデアが生かされている例
}  腎臓交換メカニズム(米国東部)
}  公立学校選択制(サンフランシスコ市?)
}  これから使えそうな応用例
}  教室や職場での席替え
}  古着や本などの交換
}  避難所の救援物資の再配分	
Lecture 678
参考文献 (1)
- マーケットデザインに関する日本語文献	
}  伊藤秀史 (2012) 「見えざる手は創れるか?: マーケット・デザイン」『ひたすら読
むエコノミクス』(第8章)有斐閣
}  岡田章・大道典子「職場における人員配置問題:マッチング・ゲーム理論の適用
例」オペレーションズ・リサーチ, Vol.41
}  川越敏司 (2012) 『はじめてのゲーム理論』講談社ブルーバックス
}  神取道宏 (2010) 「政府調達の『競り下げ』導入:効果の見極め慎重に」日本経済
新聞(経済教室), 7月22日
}  小島武仁 (2009) 「『ゲーム理論』とマーケットデザイン」日本経済新聞(やさしい経
済学), 8月6日-
}  小島武仁・鎌田雄一郎 (2012) 「ゲーム理論で考える政治・経済(下):研修医配
属に改善の余地」日本経済新聞(経済教室), 8月16日
}  小島武仁・安田洋祐 (2009) 「マッチング・マーケットデザイン」経済セミナー, No.
647(4・5月号)
}  坂井豊貴 (2010) 『マーケットデザイン入門』ミネルヴァ書房
}  坂井豊貴 (2012) 「ゲーム理論で考える政治・経済(中):『民意』の絶対視にも問
題」日本経済新聞(経済教室), 8月15日
79 Lecture 6
参考文献 (2)
- マーケットデザインに関する日本語文献	
}  坂井豊貴 (2013) 「マーケットデザイン」日本経済新聞(やさしい経済学), 5月8日-
}  坂井豊貴・藤中裕二・若山琢磨 (2008) 『メカニズムデザイン:資源配分制度の設
計とインセンティブ』ミネルヴァ書房
}  佐々木宏夫 (2004) 「マッチング問題とその応用:大学入学者選抜の事例研究」
日本オペレーションズ・リサーチ学会, シンポジウム予稿集, Vol.51
}  高宮浩司 (2008) 「臓器売買なしに移植を増やす方法」大竹文雄編『こんなに使え
る経済学』ちくま新書(第1章)
}  田村明久 (2009) 『離散凸解析とゲーム理論』朝倉書店
}  松島斉 (2011) 「電波オークション成功の条件:高収益企業の参加が鍵」日本経済
新聞(経済教室), 12月2日
}  松島斉 (2012) 「電波オークションまったなし:日本を変えるマーケットデザイン」経
済セミナー, No.664(2・3月号)
}  マクミラン (2007) 『市場を創る:バザールからネット取引まで』NTT出版
}  ミルグロム (2007) 『オークション理論とデザイン』東洋経済新報社
80 Lecture 6
参考文献 (3)
- マーケットデザインに関する日本語文献	
}  安田洋祐 (2008) 「注目集まる『マーケット・デザイン』:欧米の制度設計で適用」日
本経済新聞(経済教室), 6月5日
}  安田洋祐 (2009) 「学校選択制を経済学で考える」エコノミスト, 1月13日号
}  安田洋祐 (2010) 「オークション理論の実践:検索サイトを支える理論」日経ビジネ
ス(気鋭の論点), 8月2日号
}  安田洋祐 (2012) 「マーケットデザインの進展と学校選択制への応用」新世代法
政策学研究, Vol.15
}  安田洋祐 (2012) 「周波数オークション設計の課題:正直な入札行動導く制度に」
日本経済新聞(経済教室), 5月31日
}  安田洋祐 (2012) 「社会を変える新しい経済学:マーケットデザインの挑戦」荻上
チキ・シノドス編『日本の難題をかたづけよう』光文社新書(第1章)
}  安田洋祐 (2013) 「マーケットデザインの理論とビジネスへの実践」一橋ビジネス
レビュー, 2013年夏号
}  安田洋祐編 (2010) 『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』NTT出版
}  横尾真 (2006) 『オークション理論の基礎 ゲーム理論と情報科学の先端領域』東
京電機大学出版局	
81 Lecture 6
関連ウェブサイト
- マーケットデザインに関するウェブサイト	
}  医師臨床研修 マッチング協議会
}  アニメーションでGSメカニズムを分かりやすく説明
}  http://www.jrmp.jp/
}  オークションマーケットデザイン・フォーラム(AMF)
}  東大の松島斉教授が代表を務める研究グループのページ
}  http://exp.e.u-tokyo.ac.jp/auction/
}  アルヴィン・ロス教授のページ
}  情報が盛りだくさん、かなり読みにくいのが玉に瑕
}  http://kuznets.fas.harvard.edu/~aroth/alroth.html
}  同教授が運営するマーケットデザイン・ブログ
}  http://marketdesigner.blogspot.jp/
82 Lecture 6
ゲーム理論とマーケットデザイン入門
Lecture 7: オークションの理論と実践
Lecture 783
本日の講義の流れ	
1.  買い手から見たオークション
q  戦略的な駆け引きをゲーム理論を使って分析!
2.  戦略的に単純な「2位価格オークション」
3.  売り手から見たオークション
q  望ましい結果を導くための制度設計とは?
4.  収入同値定理
5.  2位価格オークションの一般化と実践
q  次々と進むマーケットデザイン
6.  「VCGメカニズム」と「一般化2位価格オークション」
Lecture 784
イントロダクション
85 Lecture 7
オークションとは?	
}  オークションのイメージ
}  アンティーク: クリスティーズ・サザビーズ
}  ネット・オークション: ヤフオク・楽天・eBay
}  意外な(?)オークションの例
}  公共調達(公共事業の競争入札)
}  国債入札
}  検索連動型広告: Google等のアド・オークション
}  実はオークションはたくさん使われている!	
86 Lecture 7
87
現実の様々なオークション	
}  民間系	
}  アンティーク、インターネット、木材、不動産、IPO、チャリティ、
五輪放映権、検索連動型広告、ペニー・オークション	
}  政府系	
}  公共調達、周波数帯、国債、電力、石油/天然ガス、水利権、
排出権、バス・ルート、空港スロット	
}  擬似オークション	
}  コンテスト(オール・ペイ・オークション)、ロビー活動(メニュー・
オークション)、退出競争(消耗戦)	
Lecture 7
88
代表的なオークション・ルール	
}  公開入札	
}  競り上げ式(イギリス式)	
}  戦略的に単純、最もポピュラー	
}  競り下げ式(オランダ式)	
}  花卉市場、バナナの叩き売り	
}  封印入札	
}  1位価格(ファースト・プライス)	
}  直感的、公共調達	
}  2位価格(セカンド・プライス)	
}  ヴィックリーが考案、理論的に望ましい性質、切手売買
}  実は様々なオークション設計に応用され始めている!	
Lecture 7
オークション分析の勘所 (1)	
}  買い手同士の戦略的な行動の理解が鍵	
}  最適な入札行動は他の買い手の行動に依存	
}  戦略的状況における予測 → ゲーム理論	
}  予測が正しいかのチェック → 実験・シミュレーション
}  売り手の目的を達成する入札制度設計
}  収益の最大化、効率性の達成などの目的
}  オークションの仕組みを変えれば結果も変わる
}  どう制度設計を行うか? → マーケットデザイン!	
89 Lecture 7
オークション分析の勘所 (2)	
}  情報の非対称性
}  売り手は買い手の財に対する価値が分からない
}  他の買い手の財に対する価値は通常は分からない
}  これを「不完備情報」と呼ぶ(分かる場合は「完備情報」)
}  私的価値と共通/相互依存価値(【メモ】参照)
}  売りに出される財が単一か複数か?
}  単一財は理論的に分析しやすい
}  現実の制度設計では複数財がより重要に
}  単一財の「2位価格オークション」を複数財にどう拡張するか?
}  理論的には「VCGメカニズム」が望ましいが問題点も…	
Lecture 790
【メモ】 私的価値と共通価値	
}  私的価値(Private Value)
}  各買い手の評価額が予め定まっている
}  共通価値(Common Value)または相互依存価値
(Interdependent Value)
}  真の評価額が事前には正確に分からない
}  事後的に買い手間で同じ/似た価値を受け取る
}  例) 石油の採掘権、転売目的の美術品、周波数?
}  ナイーブに予想すると払い過ぎる = 「勝者の呪い」
}  勝者は評価額に関して一番楽観的な予想をしている!
}  その分を割り引いて入札するのが肝心	
91 Lecture 7
買い手の最適な入札戦略とは?
Lecture 792
ゲーム理論で分析してみよう!	
}  分析上の仮定(状況の単純化): 各買い手は
}  自分の評価額を知っている = 私的価値
}  相手の評価額は正確には(確率的にしか)分からない
}  ある同一の確率分布に従うと予想 = 分布の対称性
}  買い手間の評価額に相関はない = 分布の独立性
}  「評価額-支払い額」が大きいほど嬉しい
}  この期待値の最大化を目指す = リスク中立的
}  (予算/資金に制約がない、買った財を転売できない)
}  この不確実性のあるゲームのナッシュ均衡を求める!
}  「ベイジアン・ナッシュ均衡」とも呼ばれる	
93 Lecture 7
入札行動の戦略分析のポイント	
}  次の組は実は戦略的には全く同じ
}  競り上げ式 = 2位価格オークション
}  競り下げ式 = 1位価格オークション
}  競り上げ/2位価格には相手の入札戦略によらず常に
最適な入札戦略(=支配戦略)が存在する
}  自分の評価額に達するまで競り上げに残る
}  自分の評価額をそのまま入札する
}  競り下げ(1位価格)の理論予測は計算できる
}  評価額よりもどれだけ金額を割り引いて入札するか?	
Lecture 794
95
戦略的同値性:競り上げ = 2位価格
}  私的価値の下では同じ意思決定	
}  いつまで残るか=いくらを入札するか	
}  (共通/相互依存価値の場合は両者は異なる)	
}  自分の価値を正直に入札するのが最適	
}  競り上げ:高い/安い価格で降りるのは明らかに損	
}  2位価格:実は競り上げと実質的に同じ問題(【メモ】参照)	
}  戦略的な入札行動の分析を一気に単純化
}  買い手は複雑な計算をする必要が全くない!	
Lecture 7
【メモ】 2位価格オークションの支配戦略
Lecture 796
}  あなたの財への評価額が10万円だとする
}  他の参加者がいくらを入札してきても、10万円を入札す
るのが最適であることを示そう!
}  以下では「10万円よりも高い金額Hを入札しても損」を確認
あなた以外の買い手の最高入札額が
1.  10万円よりも安い
2.  10万円からHの間
3.  Hよりも高い
に場合分けして考えてみよう!
97
戦略的同値性:競り下げ = 1位価格
}  よく考えると戦略的に“全く”同じ意思決定	
}  いつストップするか=いくらを入札するか
}  自分の価値よりも低い価格を入札しないと損
}  どの程度割り引くかを計算しなければいけない	
}  戦略的にかなり複雑な意思決定(【メモ】参照)
}  勝者は(ほとんど必ず)払いすぎる	
}  Money left on the table
}  事後的に後悔が必ず残ってしまう	
Lecture 7
【メモ】 1位価格における均衡戦略	
}  買い手は次のトレードオフに直面する
}  入札価格↑ => 勝率↑ & 買った時の利得↓
}  入札価格↓ => 勝率↓ & 買った時の利得↑
買い手が2人で私的価値のケースを考察
}  各人の潜在的な評価額が独立に、0円から1万円の間に
まんべんなく散らばっているとする
}  つまり、 [0, 1]区間の一様分布に独立に従っている
}  自分の評価額の半分を入札するのが均衡戦略
}  これ以外にナッシュ均衡は存在しない
}  自分の評価額が1上がると入札額は1/2だけ増やす	
Lecture 798
人は理論通りに行動するのか?	
}  オークションは数々の実験が行われている
}  最適戦略がとられないことも多い
}  2位価格で正直に評価額を入札しない
}  共通価値の実験で勝者の呪いが発生してしまう
}  ただし理論予測から大きく外れることはまれ
}  特に熟練者については理論のあてはまりがよい
}  とても複雑な入札戦略があてはまる場合も
}  【別紙】の実験結果を参照	
Lecture 799
売り手が望む入札制度は何か?
Lecture 7100
“望ましい”オークションとは?	
}  売り手の立場・目的によって異なる
}  売上の最大化: 最適(Optimal)オークション
}  “最適”=売り上げ最大化を意味するので注意
}  民間の売り手の主たる関心事
}  効率性の達成: 効率的(Efficient)オークション
}  評価額(の総額)が最大になるように財を配分する
}  政府系オークションの主たる関心事
}  スピード・単純さ・談合への頑健性…	
101 Lecture 7
1位と2位価格はどちらが儲かる?	
}  パッと見のルールは全然異なる	
}  1位価格の方が売り上げが高くなりそうだが…	
}  なんと先ほどの仮定の下では期待収益は同じ	
}  単純なケースで計算してみよう!
}  実は1位価格(競り下げ) = 2位価格(競り上げ)
}  これを「収入同値定理」と呼ぶ
}  Revenue Equivalence Theorem (RET)
}  オークション理論で最も重要なベンチマーク!	
102 Lecture 7
103
オークション理論の金字塔	
}  Vickrey (1961):戦略的入札行動の分析	
}  オークションに関する最初の理論分析	
}  2位価格オークションの定式化 + 収入同値定理	
}  1996年にノーベル経済学賞受賞!	
}  Myerson (1981):メカニズム・デザイン	
}  売り手の収入最大化オークションの導出	
}  厳密かつ一般的な形で収入同値定理を証明(【メモ】参照)	
}  2007年にノーベル経済学賞受賞!	
Lecture 7
【メモ】 一般化された収入同値定理	
}  私的価値&独立分布を仮定すると(たとえ分布が非対称
であっても)、以下の二つが同一のメカニズムの期待収
入は必ず等しくなる
}  財の配分(勝者の決定)の方法
}  もっとも低い評価額の買い手が得る利得
}  例) 最も高い評価額の買い手が勝者となり、評価額が
最低の買い手の利得がゼロ
}  (対称性の下で)1位価格 = 2位価格
104 Lecture 7
仮定が満たされなくなると…?	
}  評価額が相関している(Affiliated)場合
}  2位価格(競り上げ) > 1位価格
}  共通価値では:競り上げ > 2位価格 > 1位価格
}  分布が非対称な場合
}  1位価格は一般的に効率的ではない
}  評価額が低い買い手が(均衡で)勝者になる可能性がある
}  売り上げの大小関係はケース・バイ・ケース
}  買い手がリスク回避的な場合
}  1位価格 > 2位価格(競り上げ)
105 Lecture 7
106
収入最大化オークション	
}  最低入札価格(Reserve Price)の重要性	
}  買い手の(評価額の事前分布)が対称的な場合には、2位価
格 + 最低入札価格で収入最大化	
}  売り手の評価額が0でも最低入札価格は正	
}  利益を生む売買/取引が実現しないことがある
}  非効率性の発生: 効率性 ≠ 収入最大化	
}  買い手が非対称な場合は非常に複雑な仕組み	
}  ウィルソン原則(Wilson Doctrine)=「メカニズムのルールは
設計者の知識に強く依存してはならない」
}  一般に、収入最大化オークションはウィルソン原則に違反!	
Lecture 7
現実に応用される2位価格方式	
}  ネット・オークション
}  時間を通じて入札できる2位価格オークション
}  国債等の単一(Uniform)価格オークション
}  需給を一致させる(共通の)価格を全員が支払う
}  2位価格オークションの考えを一般化
}  Googleの一般化2位価格オークション(後述)
}  これも2位価格オークションの考えを一般化
}  2位価格の複数財への拡張 → VCGメカニズム
107 Lecture 7
単一財と複数財	
}  単一財のオークション
}  評価額や落札パターンの数が少なく単純
}  90年代前半まで徹底的に研究が進められた
}  複数財のオークション
}  90年代後半以降の研究の中心
}  ビジネス・政策上重要な多くの実例を含む
}  理論的な扱いは単一財よりも格段に難しくなる
}  同質財: 自然な仮定の下で単一財と似た分析が可能
}  異質財: マッチング理論や離散数学にむしろ近い	
108 Lecture 7
VCGメカニズム
Lecture 7109
望ましい売り方 = VCGメカニズム	
}  VCG=Vickrey-Clarke-Groves
}  財の効率的配分を達成する一般的なメカニズム
}  各人は正直に評価額を申告するのが最適戦略
}  単一財の場合は2位価格オークションに一致
}  実際の売り方はどうなってるのか?
}  申告された評価額にもとづき効率的な配分を決定
}  各参加者は自分が意思決定に加わることによって他の参加
者がこうむる余剰損失分を支払う=迷惑料?
}  自分の限界的な貢献分を利得として受け取る
110 Lecture 7
VCGメカニズムの具体例1	
}  効率的な配分
}  買い手1がコーヒー、買い手3がケーキを落札
}  各人の支払い(迷惑料)
}  買い手1: $8 - $5 = $3
}  買い手2: $11 - $11 = $0
}  買い手3: $8 - $6 = $2	
111
コーヒーのみ	
 ケーキのみ	
 両方	
買い手1	
 $6	
 $0	
 $6	
買い手2	
 $0	
 $0	
 $8	
買い手3	
 $0	
 $5	
 $5	
Lecture 7
VCGメカニズムの具体例2	
}  効率的な配分
}  買い手1がコーヒーとケーキの両方を落札
}  各人の支払い(迷惑料)
}  買い手1: $8 - $0 = $8
}  買い手2: $11 - $11 = $0
112
コーヒーのみ	
 ケーキのみ	
 両方	
買い手1	
 $6	
 $5	
 $11	
買い手2	
 $0	
 $0	
 $8	
Lecture 7
VCGメカニズムの問題点	
}  実務上の問題点
}  複雑なルール
}  参加者が敬遠する、正直に入札しない危険性
}  莫大な情報入力と計算
}  全ての可能なパターンの評価額を申告しなければいけない
}  評価額が売り手にバレてしまうリスク
}  売り手の不正行為、私的情報開示の問題
}  理論的な問題点
}  架空名義入札による不正
}  例2で買い手1が例1のように架空名義入札を行うと…	
113 Lecture 7
架空名義入札(買い手1=>1’&3’)	
}  効率的な配分
}  買い手1’がコーヒー、買い手3’がケーキを落札
}  各人の支払い(迷惑料)
}  買い手1’: $8 - $5 = $3
}  買い手3’: $8 - $6 = $2
}  買い手1が少ない支払いで両方を落札できる!
114
コーヒーのみ	
 ケーキのみ	
 両方	
買い手1’ $6	
 $0	
 $6	
買い手2	
 $0	
 $0	
 $8	
買い手3’	
 $0	
 $5	
 $5	
Lecture 7
検索連動型オークション
Lecture 7115
116
検索サイトとオークション	
}  無料検索と有料検索(検索連動型広告)	
}  有料広告は検索ページの上部と脇に表示
}  この収益がGoogleの主たる収入源	
}  実は背後で複雑なオークションによって販売
}  検索広告の販売方法の推移	
}  古くはImpression(表示数)あたりの固定課金	
}  キーワード・広告主ごとに条件をそれぞれ交渉	
}  1997年にGoTo.com(その後Overture → Yahoo!が吸収)が
オークション制度を導入	
}  表示数から実際のクリックあたりの課金に変化	
Lecture 7
117
例) 「オークション」を検索	
Lecture 7
118
現状) 一般化2位価格オークション	
}  特殊な複数財オークション(単一需要)	
}  各買い手は1クリック当たりの価値を入札	
}  「入札額 x CTR」の高い順に上から表示される	
}  CTR = Click Through Rate
}  実際には、真のCTRの予測値(クオリティ・スコア)を使用	
}  どの順番になるか事前には分からない	
}  一般化1位価格オークション	
}  (1クリックあたりの)課金額 = 自分の入札額	
}  一般化2位価格オークション	
}  課金額 = 自分より1つ下の買い手の入札額	
}  前者で生じた問題を克服すべく後者へ移行	
Lecture 7
119
例) 1位価格と2位価格の比較	
}  買い手3人: A, B, C、スロット2個:1, 2
}  BのCTRがAとCのCTRの2倍だと仮定	
}  各買い手の入札額: A = 10, B = 4, C = 2
}  2位価格の支払いはCTR比で調整される
}  1列目は2列目の2倍クリックされやすいと仮定	
CTR: A,C CTR: B 1位価格 2位価格
1 0.04 0.08 A: 10 A: 8
2 0.02 0.04 B: 4 B: 1
Lecture 7
120
1位価格から2位価格への移行	
}  GoogleのAdWordsがオークション導入に際して2位価
格方式を採用(2002年)	
}  その後ライバル社のOvertureも2位価格方式へ移行
}  1位価格方式の問題点	
}  他人の入札額に応じた入札改訂のインセンティブ	
}  随時モニター&入札を行うコストがかかる	
}  典型的には価格サイクルが発生 => 非効率性
}  ヴィックリーのアイデアを拡張させた新方式へ!	
}  Googleの広告では明示的に言及していた	
}  “unique auction model uses Nobel Prize-winning economic
theory …” => 厳密には誤り(理由は後述)	
Lecture 7
121
2位価格方式の性質と問題点	
}  各買い手は、正直に自分の価値を申告するのが最適と
は限らない	
}  理論予測(ナッシュ均衡)がたくさん存在する	
}  自分の入札額を少しだけズラしても結果は不変	
}  均衡選択:Locally Envy-free / Symmetric
}  1つ“上”の位置の買い手と入れ替わっても得できない	
}  割り当て問題の「安定マッチング」と一致する	
}  LEF均衡自体も一般には複数存在する	
Lecture 7
VCGメカニズムとの関係	
}  LEF均衡の中で買い手の支払い額がもっとも少ない均
衡がVCGの結果と一致
}  2位価格の方が売り上げが一般には大きい
}  実は競り上げ(一般化イギリス式)オークションの唯一のナッ
シュ均衡にも一致している
}  効率的な結果をもたらすことが期待される
}  まだ一般化2位価格オークションの性質は完全には明ら
かにされていない…	
122 Lecture 7
ゲーム理論とマーケットデザイン入門
Lecture 8: メカニズムデザインの考え方
Lecture 8123
メカニズムデザインの考え方
Lecture 8124
戦略の科学:ゲーム理論の使い方	
}  ステップ1 	
  
}  分析対象に合わせてゲームの構造(プレーヤー・戦略・利得)
を定式化する	
}  ステップ2	
  
}  そのゲームのナッシュ均衡を解く	
}  ステップ3	
  
}  理論的に導かれた結果と現実を比較	
	
⇒  理想的な市場(完全競争市場)という枠を超えて様々な
制度の分析や比較が可能に! 	
  
Lecture 8125
制度設計の科学:メカニズムデザイン理論	
}  ステップ1’	
  
}  望ましい結果の定式化	
  
}  ステップ2’ 	
  
}  その結果が理論的にそもそも達成可能なものであるかを
チェック	
}  ステップ3’	
  
}  望ましい結果をもたらすメカニズム(ゲーム形式)を探し出す	
	
⇒  理想的な市場(完全競争市場)という枠を超えて様々な
制度の設計や修正が可能に!	
Lecture 8126
メカニズムデザインの注意点	
}  「(与えられた)ゲーム→結果の分析」	
  
ではなく	
  
}  「(望ましい)結果→メカニズムの探求」	
  
という正反対のプロセスを取る点が特徴的	
  
}  マーケットデザインではステップ3’が特に重要だが、多く
の理論研究はステップ1’と2’に焦点	
  
}  実際に提示されるメカニズムは複雑で、理論上は機能し
ても非現実的なものが多い	
  
⇒ 	
  経済実験や実務経験によって補う必要がある!	
  
Lecture 8127
実践的理論家の言葉(前半)	
}  教科書的な経済理論は、市場がどのように機能して
いるかについてほとんど記述しておらず、市場が魔
法であるという考え方を払拭していない。経済学の
大部分は市場の研究であるにもかかわらず、経済
学の教科書は市場を軸に抽象的に記述しているだ
けである。「経済学入門」の無数の講義の中で詳細
に説明される需要曲線と供給曲線の図は、交換に
ついての血の通っていない説明である。	
(ジョン・マクミラン著『市場を創る』11頁より)	
Lecture 8128
実践的理論家の言葉(後半)	
}  現代経済学は市場の働きについて多くのことを語る
ことができる。理論家たちが需要と供給のブラック
ボックスを開き、その内部を観察してきた。交換のプ
ロセスに関しては、ゲーム理論が持ち込まれた。(中
略)これらの新しい考え方は、数式と難解な専門用
語によって表現されており、目立つことなく専門雑誌
の中に存在しているだけである。しかし、その考え方
は、深く実用的な内容を持っている。	
(ジョン・マクミラン著『市場を創る』11~12頁より)	
Lecture 8129
入門メカニズムデザイン理論	
解説の流れ	
  
}  メカニズムデザインの目的	
}  メカニズムとは何か	
}  目的達成の判定方法	
}  例:ソロモン王のジレンマ	
}  マスキンの定理	
}  ソロモン王のジレンマ解題	
}  出版社のジレンマ、悲劇そして平和	
Lecture 8130
メカニズムデザインの目的	
}  社会/集団の意思決定を行う運営者が	
}  社会にとって望ましい結果を達成するために	
}  戦略的に行動する個々のメンバーから運営者の知らない
社会状況(特に彼らの選好=好み)を聞きだし	
}  目的達成の可能性や目的遂行の具体的な仕組み(=メカ
ニズム)を研究する学問分野	
  
}  社会にとって望ましい結果は各メンバーの選好に
よって変わってくる	
  
}  どうやって彼らに適切なインセンティブを与えて、うま
く真の選好を聞き出すかがポイント	
Lecture 8131
メカニズムとは何か	
}  メンバーから聞き出したメッセージの組み合わせに
応じて実現する結果を指定した関数	
}  起こりえるすべての可能性について、結果をしておかなけ
ればならない	
}  ゲーム形式とも呼ばれる(ゲームとは微妙に異なる)	
  
}  各メンバーはこのメカニズムを知らされた上で同時
にメッセージを運営者に送る	
}  必ずしも正直に情報を伝える必要はない	
  
}  申告されたメッセージに基づき運営者が予めメカニ
ズムで指定した結果を実現する	
Lecture 8132
目的達成の評価方法	
}  何を持って「メカニズムが社会目的を達成した」と考えれ
ばよいのだろうか?	
}  (情報を知っている)個々のメンバー達にとっては、メカニズム
はゲームと全く同じ	
}  メカニズムをひとつ固定してもゲームは起こりえる情報の組み
合わせの数だけ存在	
}  それぞれのゲームのナッシュ均衡に従って選ばれる結果が望
ましい結果と一致する=社会目的は達成される(「ナッシュ遂
行」される、と言う)	
Lecture 8133
例:ソロモン王のジレンマ	
}  「ソロモン王の知恵」	
}  『旧約聖書』列王記(3章16~28節)	
}  「大岡裁き」にも同じようなストーリーが!	
  
}  二人の女性が赤ん坊の母親を名乗り出る	
}  女性達はどちらが本物の母親であるかを知っているが、
ソロモン王は知らない	
}  この時、ソロモン王は正しい母親に赤ん坊を渡すことが
できるだろうか?	
  
Lecture 8134
ソロモン王の解決策	
1.  どちらの女性も自分の子どもであるといって譲らない	
  
2.  そこで、赤ん坊を二つに切って、女性達に分け与える
ように判決を出す	
3.  すると、片方の女性が、相手の女性に赤ん坊を渡すよ
うに申し出る	
4.  ソロモン王は申し出てきた女性を真の母親だと見抜き、
彼女に赤ん坊を与える	
Lecture 8135
ソロモン王の落とし穴	
}  ソロモン王の解決策は、女性達が十分賢い場合には望
ましい結果を達成できない!	
}  嘘をつくインセンティブがあるかもしれない	
  
}  相手に譲れば赤ん坊がもられるということが事前に分かって
いたら、偽者の母親も相手に譲ろうとするのでは?	
  
}  ソロモン王のジレンマを解決することができるメカニズム
は果たして存在するのだろうか?	
  
}  2007年にノーベル経済学賞を受賞したマスキンの研究
に答えが!	
Lecture 8136
マスキンの定理:その1	
  
}  【定理1】 もしも社会目的が(ナッシュ均衡によって)
達成可能であれば、それはマスキン単調性と呼ばれ
る性質を必ず満たさなければならない	
⇒  マスキン単調性を満たさない社会目的はどうやって
も達成することができない!	
}  マスキン単調性とは?	
}  いま、ある選好の組に対して実現したい結果が「x」だとする。
このとき、全てのメンバーにとって「x」がより望ましいように
(つまり“単調に”)選好が変化した場合には、引き続きこの
社会は「x」の実現を目指さなければならない。	
Lecture 8137
マスキンの定理:その2	
  
}  【定理2】 社会メンバーが3人以上いる場合に、マス
キン単調性を満たすほぼ全ての社会目的をナッシュ
遂行することができる	
}  2人の場合はより強い条件が必要(どちらが嘘をついている
のかを見破ることができないので)	
}  具体的なメカニズムもマスキンによって与えられている(が、
かなり複雑で実用性は低い)	
}  (定理1と合わせると)ありとあらゆるメカニズムをチェックす
る手間を省き、社会目的がマスキン単調性を満たすかどう
かをチェックするだけで良い!	
  
Lecture 8138
ソロモン王のジレンマ解題1	
  
}  実現可能な結果は以下の3つ	
}  a:赤ん坊を女性Aに与える	
}  b:赤ん坊を女性Bに与える	
}  c:赤ん坊を2つに切り裂く	
}  社会状況(私的情報)には2通りの可能性	
}  「Aが真の母親」か「Bが真の母親」	
}  ソロモン王(社会)の目的	
}  真の母親に赤ん坊を与える:A	
  →	
  a,	
  B	
  →	
  b	
  
}  この目的はマスキン単調性を満たすだろうか?	
Lecture 8139
ソロモン王のジレンマ解題2	
  
}  Aが真の母親の場合	
}  Aの選好:a	
  >	
  b	
  >	
  c	
  
}  Bの選好:b	
  >	
  c	
  >	
  a	
  
}  Bが真の母親の場合	
}  Aの選好:a	
  >	
  c	
  >	
  b	
  
}  Bの選好:b	
  >	
  a	
  >	
  c	
  
}  選好パターンがAからBへ変わる時に(Aの結果であ
る)aの優先順位は下がっていない	
}  Bでも引き続きaが選ばれないといけない	
}  しかしソロモン王の目的はaではなくbを選んでいる	
⇒  マスキン単調性を満たさない(=実現不可能)!	
Lecture 8140
出版社のジレンマ	
  
}  ある出版社が経済書の執筆者を探している	
}  二人の経済学者(真の経済学者とダメな経済学者)が執
筆者の候補に挙がった	
}  彼らはどちらが真の経済学者かを知っているが、出版社
は知らない	
}  この時、出版社は真の経済学者に執筆を依頼すること
ができるだろうか?	
⇒  ソロモン王のジレンマと状況が酷似!	
Lecture 8141
出版社のジレンマ解題1	
  
}  実現可能な結果は以下の3つ	
}  a:経済学者Aに依頼する	
}  b:経済学者Bに依頼する	
}  c:第3者(素人)に依頼する	
}  社会状況(私的情報)には2通りの可能性	
}  「Aが真の経済学者」か「Bが真の経済学者」	
}  出版社(社会)の目的	
}  真の経済学者に依頼する:A	
  →	
  a,	
  B	
  →	
  b	
  
}  この目的は果たして実現可能だろうか?	
Lecture 8142
出版社のジレンマ解題2	
  
}  Aが真の経済学者の場合	
}  Aの選好:a	
  >	
  b	
  >	
  c	
  
}  Bの選好:b	
  >	
  c	
  >	
  a	
  
}  Bが真の経済学者の場合	
}  Aの選好:a	
  >	
  c	
  >	
  b	
  
}  Bの選好:b	
  >	
  a	
  >	
  c	
  
}  選好パターンの解釈	
}  真の学者は素人よりもマシなダメな学者を好む	
}  ダメな学者は専門家からの批評や糾弾を恐れる	
⇒  出版社の目的は絶対に達成できない!	
Lecture 8143
現実的なメカニズム	
B	
  
A	
  
名乗り出る	
 相手に譲る	
名乗り出る	
	
c	
   a	
  
相手に譲る	
 b	
   c	
  
Lecture 8144
Aが真の学者の場合の利得表	
  
B	
  
A	
  
名乗り出る	
 相手に譲る	
名乗り出る	
	
1	
  
0	
  
0	
  
2	
  
相手に譲る	
 2	
  
1	
  
1	
  
0	
  
Lecture 8145
出版社の悲劇	
}  真の経済学者Aではなく、ダメな経済学者Bが選ばれる
のが唯一のナッシュ均衡	
}  真の経済学者がBの場合には、同様の議論により今度はAが
選ばれてしまう	
}  現実的なメカニズムのもとでは、常にダメな経済学者が
仕事を依頼されてしまう!	
}  著者自身からの申し出に頼るようなナイーブな依頼方法
だとダメな経済学者の本ばかり出版する羽目になる!	
Lecture 8146
解決策? 新たな結果(d)の導入	
}  Aが真の経済学者の場合	
}  Aの選好:a	
  >	
  d	
  >	
  b	
  >	
  c	
  
}  Bの選好:b	
  >	
  c	
  >	
  a	
  >	
  d	
  
}  Bが真の経済学者の場合	
}  Aの選好:a	
  >	
  c	
  >	
  b	
  >	
  d	
  
}  Bの選好:b	
  >	
  d	
  >	
  a	
  >	
  c	
  
}  新たな結果dの解釈	
}  ダメな学者批判で有名な辛辣な学者への執筆依頼	
  
}  辛辣な学者への書評依頼を事前にコミット	
⇒  マスキン単調性が満たされるように!	
Lecture 8147
新たなメカニズム	
B	
  
A	
  
名乗り出る	
 相手に譲る	
名乗り出る	
	
d	
   a	
  
相手に譲る	
 b	
   d	
  
Lecture 8148
Aが真の学者の場合の利得表	
  
B	
  
A	
  
名乗り出る	
 相手に譲る	
名乗り出る	
	
0	
  
2	
  
1	
  
3	
  
相手に譲る	
 2	
  
1	
  
0	
  
2	
  
Lecture 8149
出版社の平和	
}  今度は真の経済学者Aが選ばれるのが唯一のナッシュ
均衡に	
}  真の経済学者がBの場合にも、同様の議論によりきちんとBが
選ばれる	
}  修正版メカニズムのもとでは、常にきちんと真の経済学
者が仕事を依頼される!	
}  研究業績や研究者としてのキャリアがあり、労を厭わず
にダメな経済学(者)批判を行う学者がキーパーソン?	
  
Lecture 8150
行動経済学/ゲーム理論:参考文献10冊
Lecture 8151
}  『実践 行動経済学』 ・・・ 行動経済学を政策へどう活かすかを大御所二人が提案
}  リチャード・セイラー&キャス・サンスティーン、日経BP社、2009年
}  『ファスト&スロー』(上・下) ・・・ ノーベル賞学者による非常に読みやすい大著
}  ダニエル・カーネマン、早川書房、2012年
}  『セイラー教授の行動経済学入門』 ・・・ 彼自身の古典的な研究成果を分かりやすく紹介
}  リチャード・セイラー、ダイヤモンド社、2007年
}  『人はお金だけでは動かない』 ・・・ 行動経済学を中心とした最新の経済学知見が満載
}  ノルベルト・ヘーリング&オラフ・シュトルベック、NTT出版、2012年
}  『善意で貧困は無くせるのか?』 ・・・ 開発経済学への応用例を多数紹介
}  ディーン・カーラン&ジェイコブ・アベル、みすず書房、2013年
}  『増補版 予想どおりに不合理』 ・・・ 一般向け啓蒙書で世界的なベストセラー
}  ダン・アリエリー、早川書房、2010年
}  『意思決定理論入門』 ・・・ 合理的選択理論と行動経済学をバランス良く解説
}  イツァーク・ギルボア、NTT出版、2012年
}  『行動ゲーム理論入門』 ・・・ 基礎から方法論をきっちり学べる唯一無二の国内テキスト
}  川越敏司、NTT出版、2010年
}  『自滅する選択』 ・・・ 時間を通じた意思決定の癖を分析
}  池田新介、東洋経済新報社、2012年
}  『脳の中の経済学』 ・・・ 話題の「神経経済学」を対談形式で分かりやすく紹介
}  大竹文雄&田中沙織&佐倉統、ディスカヴァー21、2012年

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