ライブラリー・リソース・ガイド
第14号/2016年 冬号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
司書名鑑 No.10 佐藤潔(図書館総合展運営委員長)
特集 ふじたまさえ 図書館100連発4
連載 嶋田学 図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼
特別寄稿 岡部晋典
図書館は「利用者の秘密を守る」
その原点と変遷
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
第14号/2016年 冬号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別寄稿 岡部晋典
図 書 館 は「利 用 者 の 秘 密 を 守 る」
そ の 原 点と変 遷
── 大 学 図 書 館 デ ータの 利 活 用 の 可 能 性
特集 ふじたまさえ
図書館100連発4
連載 嶋田学
図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼
司書名鑑 No.10 佐藤潔(図書館総合展運営委員長)
「目となり、耳となる」。
この言葉は、図書館のプロデュースを手掛けるアカデミック・リソース・ガイ
ド株式会社(以下、弊社)の姿勢を説明するうえで、私が講演をする際に、最近
よく使っているものです。弊社は、特に地方での仕事を重視していることもあ
り、私を含めて、合計7名のスタッフが日本全国をめぐり、各地の図書館整備に
関わっています。このような出張の日々において重視していることが、「目となり、
耳となる」ことです。
具体的には、各地に足を運ぶ際には、オフィスと出張先の往復にただ終わるの
ではなく、できる限り出張先の街に身を置くこと、そして行程途中の周辺の街々
にも足を延ばすことを心がけています。あえて一泊し、夜の街にも繰り出すと、
昼間とは一転してにぎわう街の姿を発見することがあります。早朝に街中を散歩
することで、日中では見かけない若者の姿を目にすることがあります。
当然、図書館やそれに類する施設にも足を運びます。たとえば、私の場合、
2015年は43都府県の417施設に足を運びました。昨年1年間の国内移動距離は
11万7,036キロになります。そして、訪問する先は必ずしも世評に名高い施設ば
かりではありません。むしろ世評にまだのぼっていない施設にこそ、宝が眠って
いるかもしれないという意識を持って訪ね歩きます。
こうやってコツコツと足を運び、現地の関係者に話をうかがいます。それが私
たちの仕事の足腰を鍛え、「目となり耳となる」コンサルタントをするうえで、私
たちの血となり肉となっています。もちろん、数や量がすべてではないことはい
うまでもありません。
これは昔話になってしまいますが、かつて在職したYahoo! JAPANで「Yahoo!
知恵袋」を立ち上げた10数年前も、実は同じことをしていました。2004年4月7
日にYahoo!知恵袋のベータ版を世に出し、最終的に「Yahoo!知恵袋」がQ&Aサー
ビスにおけるナンバーワンになるまで、一貫して重視していたのは、質という考
えに捉われずに、まずは質問・回答の量を追い求めることでした。なぜならば、
「質量転化の法則」という仮説を立て、量をこなすことで初めて質を語れる領域に
達することができるという、一種の思い込みにも似た確信を持っていたからです。
この思い込みに基づく確信があればこそ、「Yahoo!知恵袋」の成功があったと初
巻頭言 学び得た知を社会へ──その実践としての雑誌づくり
002 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
巻頭言
代Yahoo!知恵袋プロデューサーとして、いまでも信じています。
図書館という新たな領域に挑戦するうえで、圧倒的に欠けている経験を補うの
は、日々の座学に加え、フットワークを生かしたフィールドワークにほかなりま
せん。こうやって学び得たことを社会に還元・還流させていくことが、図書館プ
ロデュースにおける私たちの責務です。そして、そのプロデュースの場は必ずし
も具体的な図書館整備事業の現場に限られません。そう、この雑誌もまたその場
なのです。これまでの数々の特集記事は、まさにその証明となるでしょう。そし
て、今号では、私たちの日々のフィールドワークの還元・還流の最たるものの一
つである「図書館100連発」の第4弾をみなさまに届けます。主に去年1年間に私
たちが日本各地で学んだ珠玉の取り組みをぜひご覧ください。
なお、ここ1、2年で本誌が生んだ大きなムーブメントとしては、創刊号、第4
号、第9号で特集した「図書館100連発」に刺激を受けた日本各地の図書館が、そ
の地域の「図書館100連発」をつくろうというイベントを開催したことが挙げられ
ます。北海道、東北、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄と幾多の地域に私た
ちをお招きいただき、小さくてもキラリと光る事例の共有に努めようとする図書
館関係者の真摯な姿を目の当たりにしてきました。その場で学んだ取り組みも一
部収録しています。開催にご尽力いただいた関係者の方々には、心から御礼申し
上げます。
そして、今回の第14号では、「論文」と評して問題がないほどのクオリティー
である岡部晋典さん(同志社大学)による「図書館は『利用者の秘密を守る』その原
点と変遷」を書き下ろし論考として掲載します。また、司書名鑑には図書館総合
展運営委員会委員長の佐藤潔さんをお迎えしました。図書館と出版の世界のつば
ぜりあいが再び聞かれなくもない昨今、大手出版社の敏腕営業職であった佐藤さ
んの図書館にかける思いにぜひふれてください。そして前号で予告したとおり、
嶋田学さん(瀬戸内市図書館準備室)による連載「図書館での本選び・私論」が始ま
ります。期待に胸を膨らませたまま、ページをめくっていっていただければ幸い
です。
編集兼発行人:岡本真
003ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
巻頭言
巻 頭 言 学び得た知を社会へ── その実践としての雑誌づくり[岡本真]……………… 002
特別寄稿 図書館は「利用者の秘密を守る」その原点と変遷[岡部晋典]…………………… 005
特  集 図書館100連発4[ふじたまさえ] ……………………………………………………………… 043
資料収集の工夫 ………………………………………………………………………………………… 044
資料提供の工夫 ………………………………………………………………………………………… 049
資料展示の工夫 ………………………………………………………………………………………… 059
PRの工夫………………………………………………………………………………………………… 089
環境の改善 ……………………………………………………………………………………………… 131
地域連携の試み ………………………………………………………………………………………… 140
連  載 図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼[嶋田学]………………………………………… 144
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第 1 4 号 / 2 0 1 6 年 冬 号
司書名鑑 No.10 佐藤 潔(図書館総合展運営委員長)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
………………………………………………………… 157
…………………………………………………… 164
……………………………………………………………………………… 172
…………………………………………………………………………………………………………… 175
図 書 館 は「利 用 者 の 秘 密 を 守 る」
そ の 原 点と変 遷
── 大 学 図 書 館 デ ータの 利 活 用 の 可 能 性
岡 部 晋 典
006 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
1. 問題の所在
本稿では、大学生の学習実態分析におけ
る図書館利用データの活用の可能性につい
て論じる。具体的には、大学図書館の持つ
読書履歴データを利活用することは、「図
書館の自由に関する宣言」(以下、自由宣
言)にある「図書館は利用者の秘密を守る」
の文言に抵触するのかどうかについて論じ
る。なお公共図書館や学校図書館等におけ
る図書館利用データについての議論は本稿
では行わない。
本稿では主として、「図書館は利用者の
秘密を守る」という文言が、現代までどの
ような経緯をたどってきたのかを追跡する
作業を行う。「利用者の秘密」の文言をめ
ぐっては図書館とプライバシーの話題が巻
き起こるたびにしばしば議論が行われるも
のの、一気にこれらの論点を捉えるような
まとめは行われていない。
だからだろうか、たとえば近年の図書館
業界における一大イシューである図書館の
貸出履歴データとポイントカードをめぐる
話題のなかで、なぜか警察の捜査令状の議
論が取り上げられるなどの混乱が生じてい
ることなどは記憶に新しい。
そこで本稿では大学図書館におけるデー
タの利活用の方策を探ることを主たる目的
としつつ、自由宣言における「利用者の秘
密を守る」をめぐる文言がどのような変遷
をたどってきたかを同時に把握できるよう
試みる。よって、「利用者の秘密」の文言の
変遷を先に追う場合においては、第3章か
ら先に読んでいただきたい。
2008年(平成20年)の中央教育審議会答
申「学士課程教育の構築に向けて」、いわゆ
る「学士力答申」および、2012年(平成24年)
の答申「新たな未来を築くための大学教育
の質的転換に向けて」いわゆる「質的転換答
申」以降、大学は自らの「質保証」を強く問
われるようになってきた。
これらの答申を経て、大学は学生に「何
を教えたか」ではなく、学生が「何ができ
図書館は「利用者の秘密を守る」
その原点と変遷
──大学図書館データの利活用の可能性
岡部晋典(おかべ・ゆきのり)
1982年愛知県生まれ。筑波大学大学院図書館情報
メディア研究科博士前期課程修了、同後期課程退学。
博士(図書館情報学)。複数の大学の司書課程の専任
教員を経たのち、現在、同志社大学 学習支援・教
育開発センター助教。ラーニング・コモンズ担当。
007ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
るようになったか」という学生の学習成果
(learning outcome)を主眼とする、成果に
もとづく教育(outcome-based education)
を行うことが重視されるようになった。
このようなアウトカムを重視する潮流
に呼応するように、大学 IR(Institutional
Research)の動きが加速しつつある。詳細
については後に述べるが、大学IRとは「最
も狭義には、IRは単なる調査データの収集
分析、報告といった活動を指すが、より広
義には、全学レベルの財務計画や戦略的
計画(strategic plan)の策定まで、きわめ
て幅広い活動を指す」★1
ものである。つま
り、現在、大学は社会のなかで活動する際
の説明責任を果たすと同時に、業務の改善
を行うために大学内部の活動について調査、
分析し報告することが重視され始めている。
これらは大学教育の質の保証のテーマと
セットで語られる。「質保証」というターム
は米国や欧州、国際機関によって使われ始
め、日本に導入されてきたという背景があ
る。
また、日本においては「質保証」はしばし
ば大学の変遷とセットで議論される。米国
の社会学者マーチン・トロウによると、高
等教育への進学率が15%を超えると 高等
教育はエリート段階からマス段階へ移行す
るという。トロウはこのモデルを1970年
代に提出している★2
。我が国の高等教育の
進学率は1960年代前半に15%を超え、そ
こから急激に上昇した。1970年代には大
学進学率が3割を超え、教育環境の悪化が
指摘されるようになった。そして現在、大
学は「ユニバーサル段階」にあるといわれて
いる。大学進学率がほぼ50%に達してい
る現在、本当に大学生は学んでいるのだろ
うか? 本当に大学教育はきちんと機能し
ているのだろうか?大学はこういった問い
に対して否応なく答えざるを得ない状況に
晒されており、それゆえ「質保証」という考
え方がクローズアップされるようになって
きた。
学生の学びの代表的な測定方法として、
間接評価と直接評価がある。間接評価とは、
学生調査等を用いて学生の自己認識といっ
たことを評価するものである。直接評価は
学生の成果を直接評価するもので、GPA(グ
ローバル・ポイント・アベレージ:学生が
履修した科目の成績を平均した数字で表し
たもの)などがそれにあたる。
我が国においては直接評価についてはい
まだ大学ごとに温度差がある。一方で、間
接評価については、キャンパスライフアン
ケートといった形で、各大学の高等教育開
発センターなどの部署において分析および
報告が進んでいる。
本稿は学生の学びの評価についての論考
ではないため、評価そのものや評価の意
義、評価の持つ困難といった議論に立ち入
るのは控える。ただし、現代の高等教育の
なかでは、学生がどのように学んでいるか
の実態を可視化することは重要視されてお
り、これらが高等教育にまつわるイシュー
になっていることは指摘できる。
たとえば、京都大学FD(ファカルティ・
ディベロップメント:授業内容・方法を改
善し向上させるための組織的な取組の総
称)研究検討委員会・高等教育開発推進セ
ンターでは、『京都大学自学自習等学生の
学修生活実態調査報告書』を刊行し★3
、肯
008 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
定的な結果はもちろん、否定的な結果、た
とえば大学の授業自体よりもむしろサーク
ル活動等が、結果として学生の学びには資
している部分もあり、学生の予習復習時間
は短いといった事実も公表している。この
ことによって、必要に応じて全学・各学部
の教育改善の資料としている。
これらは主としてFDに関連する活動と
して行われている。ただし、学生の実態調
査はFDによるもののみに限らない。たと
えば教育社会学の領域では、学生らの経年
的な生活実態調査が行われている。教育社
会学者の武内清は、最近の学生調査の結果
から、大学生は学業を中心とした生活を
送っているという。また、武内は近年の学
生の特性として大学や授業に満足し、従順
であるものの、向学心に乏しいという結果
も論じている★4
。最近の大学生はしっかり
授業に出てくるが、自らによって学びを組
み立てることをせず、緻密なカリキュラム
を大学側に要求したり、向学心が不足した
りしているという嘆きをしばしば耳にする
ところである。大学生の「生徒化」について
は、教育社会学の領域では議論が行われる
など、知見の蓄積がなされている。ほか、
全国大学生活協同組合連合会(大学生協)が
1963年から実施している「学生生活実態調
査」は、一部欠損もありつつも大学生の読
書時間や書籍費などの時代的変遷といった
貴重なデータを提供している。
以上、近年の大学は、情報を公開するこ
とや、データをオープンにすることが求め
られていること、ほか、大学生の学生生活
の実態調査等が教育社会学といった領域で
は、非常に重要な研究となっていることに
ついて述べてきた。翻って、大学のなかに
それらの流れからは距離をおいている部局
がある。図書館である。
大学図書館界の議論で「学生の学び」の記
録そのものにフォーカスをあてて論じてい
るものはそれほどない。これは、自由宣言
の文言にある「図書館は利用者の秘密を守
る」の条件が大きく関わってくるものであ
ると推察できる。つまり利用者の秘密を守
るがゆえに、学生の読書データの活用やそ
の分析が進まないと想定される。たしかに
読書履歴等はプライバシーにも関連する
重要な情報であり、安易には分析の対象と
しづらい。しかしながら、それだけでよい
のかという微妙な引っ掛かりは残る。たと
えば筆者が高等教育関係の学会に出向く
と、そのなかの質疑応答で「図書館がデー
タの提供を拒むために多層的な分析ができ
なかった」という苦渋の発話がたびたびみ
られることを報告しておきたい。
現在、世界的に研究のオープンデータ化
が進んでいる。たとえば、読書履歴よりも
はるかにセンシティブに捉えられる情報を
扱うライフサイエンスの領域であっても、
「知のめぐりを良くする」★5
ために、個人
情報保護とデータの公開の意義の兼ね合い
をはかりつつ、オープンデータ化が進ん
でいる★6
。オープンデータ化の潮流のそれ
を支えるプレイヤーの一人たる図書館自身
が、実のところ、自らの持っているデータ
をオープンにはしていないという状況が現
前している。
ある大学図書館では学生の図書館利用
データを分析し、エビデンス・ベースドの
姿勢で次の業務改善のために手を打ってい
009ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
る一方、ある大学では図書館利用データの
利活用などはそもそも考えたこともない、
というところもある。学生の学びのありか
たを捉える基礎データとして、図書館利用
データは非常に重要な位置を占めるはずで
あるが、このデータの利活用に対して、各
大学の方針はまちまちなのである。これが
要因だろうか、図書館利用と学生の学びに
ついての研究は散発的なものにとどまって
おり、他大学との比較や全国調査を困難に
している。
また別の面を見てみると、歴史社会学や
教育社会学といった領域が生み出している
知見として、筒
つついきよただ
井清忠や竹
たけうちよう
内洋の手による
教養主義の変遷や没落といった研究がある
★7
。これらは各時代の学生等の実態と、そ
の歴史的変遷をたどるものである。彼らの
研究は読書史研究とも多く重なりがあるが、
学生の図書館利用のデータを用いたもので
はない。後世の研究者にとって、いま現在
の学生像を捉えるための基礎データとして
学生の図書館利用データは有効であるはず
である。さらに別方向から指摘すると、現
在、いくつかの大学で既に行われている可
能性がある「なし崩し的」に学生の図書館利
用データを分析対象として研究する行為は、
結果的には自由宣言を内部から蚕
さんしょく
食させて
いるとも捉えうる。
このような状況で、学生の図書館の利用
データと「利用者の秘密を守る」という文言
の二者の衝突に対し、「読書の秘密は守ら
なければならない」という図書館員の倫理
をとなえる論説は多いものの、実際の折り
合いについて、正面から検討を加えた研究
は見当たらない。
公共図書館を対象としているものでは
あるが、国立国会図書館の渡
わ た な べ た だ し
邉斉志によ
る「知的自由の陥穽:利用情報保護思想が
公立図書館に及ぼす影響の分析」★ 8
があ
る。渡邉は、教条主義的な思想から一旦距
離をおいた立場に立脚し、「利用者の秘密
を守る」ことは、パラドキシカルな結果を
招いていることを指摘している。具体的に
は、これまでの公立図書館関係者の利用情
報保護の取り組みは、現在の情報技術の水
準に照らし合わせると、図書館員の威信向
上、専門職として社会から認められるとい
う目標とは非整合的であるという。本稿も
渡邉の問題意識と共通項を多く持つ。ただ
し渡邉の原稿は公共図書館を主眼としたも
のであるし、また短報という性質上、必要
な文献は押さえつつも限界があるといえる。
そこで、本稿では大学生の学習実態分析
における読書行動履歴の活用の可能性を探
り、かつそれと「利用者の秘密を守る」の文
言の折り合いについて考察する。具体的に
は、自由宣言の成立過程および1979年改
訂に立ち返り、これらに対し検討を加える。
その上で、学生の読書行動といったデータ
が、高等教育における学生実態分析につい
て、実際に利用可能なのかどうかについて
議論する。
本稿の結論は以下のようになる。「自由宣
言」にあった「利用者の秘密を守る」の文言は、
学生の学習行動分析の潮流に対する堡
ほうさい
砦足
り得ない。というのも、利用者個々人の読
書傾向ではなく、匿名化したデータをもっ
て分析した場合、自由宣言の想定していた
秘密を守る条件の想定外と考えられる。
なお、本研究は自由宣言の第三、「利用
010 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
者の秘密を守る」とその関連に絞って議論
する。その理由として、他の文言の重要性
は当然十二分に認めるが、それらを対象と
することは本稿の議論の筋を歪めるからで
ある。たとえば「知る自由」については、こ
れは福井佑介によって上梓された労作『図
書館の倫理的価値「知る自由」の歴史的展
開』★9
を参照されたい。また、本稿では大
学図書館を対象とし、公共図書館や専門図
書館、学校図書館は対象としない。いうま
でもなく公共図書館においてのサービスは、
それは行政が行うものであり、多種多様な
住民へのサービスが求められるため、個人
情報保護については別の理路も当然立ち現
れてくるためである。
更に(こういう原稿を書くと、よく「では
全面的に貸し出し履歴データをあちこちに
バラ撒くのが望ましいのか」といった極論
を言われることがあるので、予防線を張っ
ておく)、本稿は大学図書館外の部署が
データ分析を行っているので図書館も行う
べきだといった「バスに乗り遅れるな」式の
議論でないことについてもここで触れてお
きたい。あくまでも、我々(ないしは、図
書館関係者)の常識はどのような形で構築
されてきたのか、これを明らかにしていき
たいという意図で本稿は記されている。
以下、各章では以下の構成をとる。第2
章では、大学IRを始めとした学生の実態調
査についての潮流、および大学図書館にお
ける貸出履歴データの活用を用いた研究に
ついて紹介する。よって第2章は先行研究
の系列の素描という性質を持つ。第3章は
図書館における秘密を守るという議論がど
のように成立したのか、経緯をたどる。第
4章は第3章を受けて議論を行う。第5章
では結論と今後の課題をまとめる。
2. 高等教育におけるエビデンス・ベースド
 による分析評価の潮流
1章で触れたが、現在の高等教育の世界
では、学生の学びを可視化し、どう捉える
かということが「大学の質保証」としてさか
んに言われている。
たとえば、大学教育学会課題集会の統一
テーマを抜き出すと、第28回(2006年)「評
価時代を迎えた大学の在り方」、第 33 回
(2011年)「大学教育の質とは何か-ふた
たび大学のレゾンデートルを問う-」、第
35 回(2013 年)「教育から学習への転換」
というものがみられる。ほかにも、第18
回FDフォーラム(2013年)は「学生が主体
的に学ぶ力を身につけるには」がテーマで
ある。さらに第20回大学教育研究フォー
ラム(2014年)のテーマは「学生の学びをど
うデータ化し、どう利用するか?」である。
このように、現在、高等教育では学生の学
びの可視化、大学の質保証についての議論
が盛んに行われている。しかしこのなかで、
大学図書館が主たるプレイヤーとして議論
している場はそれほどない。
大学の学生の学びについては、たとえば
ポートフォリオ、ルーブリックによった評
価といった、さまざまな議論や手法が提出
されている。本稿はこれらがどの程度の成
果を挙げているかの詳細に立ち入ることは
避けるが、ともあれ現代では学生の学習成
果の可視化が求められており、そのための
ツールが開発されている。
また、2011年度から教育情報の公表は
011ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
社会への説明責任であるという視点によっ
て、大学の教育情報の公表が義務化された。
これと呼応するように大学IRという動きも
始動・加速しつつある。たとえば、2014
年に『大学におけるIR(インスティテュー
ショナル・リサーチ)の現状と在り方に関
する調査研究報告書』が、文部科学省大学
改革推進委託事業を受けて東京大学より刊
行されている★1
。このなかでは、米国のIR
はいまだ発展中であり定義が困難であるこ
と、また、日本に直輸入してもそのままは
根付かないと断りつつ、
成績や履修科目など学生の様々なデー
タ(学務データ)を分析し、入学から卒業
まで修学を支援するために、IRは重要な
役割を果たしている。学生調査について
も、IRの重要なツールとして位置づけら
れている。とくに、学生調査が氏名や学
生番号などを記入する記名式の場合、学
生の成長や変化を追跡する調査が実施で
きるだけでなく、学務データと学生調査
の結果を紐付けることができ、このこと
が様々な教学の改善に寄与する貴重な分
析を提供している。こうした様々なデー
タを収集することにより、大学間のベン
チマーク(相互比較)が可能となっている
こともIRの大きな特質である。特にア
メリカでは大学間でデータ交換コンソー
シアムが発展している。また、学生調査
についても、大学間でベンチマークをす
ることが可能となるような発展が見られ
る(p.ix)。
と述べられている。
大学IRについての定義等については、い
まだ研究者や大学関係者のなかでも一定
の共通の理解があるものではない。同報
告書の中で浅野茂らは、IRの業務について
Tab.1(p.014)のとおり整理している。
以上のように、現在の大学は自らの持つ
データを分析し、それを報告することが説
明責任として求められる。
ただしここでは「評価」には困難が付いて
回ることを指摘しておきたい。たとえば、
人文社会系には自然科学系で用いられる研
究の評価指標があてはめにくいことはよく
言われている。あるいは評価において適切
ではない指標を用いることが広まってしま
うと、それを訂正することには膨大な手間
がかかるという指摘もある。IRを批判対象
としたものではないが、グローバル化と
いった現代の社会的な要請に高等教育が即
座に(あるいは無自覚的に)呼応することに
対する疑義もある。たとえばビル・レディ
ングズ『廃墟のなかの大学』における「エク
セレンス」の概念を手がかりにしながら、
大学の現在を考察する研究などがそれにあ
たる★10
。加えて、評価は即座に競争的資
金等の議論といったものにスライドしうる。
鈴鹿医療科学大学の学長である豊田長康
は、2002年以降の国立大学の論文数の停
滞・減少と国際競争力の低下をもたらした
主因として、基盤的研究資金の削減、およ
び重点化(選択と集中)性格の強い研究資金
への移行があると2015年に指摘している
★11
。同志社大学の濱嶋幸司は2003年の段
階で、大学生の生徒化に関連し、「イリイ
チの「脱学校化社会」に反し、「学校化社会」
012 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
は着実に浸透している。学校の打ち出した
目標(課業)を黙々と遂行することが生徒の
目的となり…(略)…やがては身体化され
ていく。諸制度からの逸脱は自他ともに許
されないものとなる」★12
と論じている。
このような「評価」が、管理、それもやや
もするとネガティヴな形の管理につながり
かねない批判的視座に立った論考があるこ
とには軽重なく目配りする必要はある。以
上を踏まえた上で大学図書館の状況を鑑
みると、高等教育の質的転換に関しては、
ラーニング・コモンズの設置といった仕
組みで反応しつつあるものの、IRや評価と
いった視点から見ると、反応は慎重、ない
しは乏しいといえる。
ただし、数少ないながら大学図書館の貸
出履歴データと学生のGPAを紐付けて分
析するような研究は現れ始めている。東北
学院大学の片瀬一男は、ブルデューのハビ
トゥスの概念を踏まえ、「ただちに図書館
利用行動が学業成績の向上をもたらすとい
う結論は導き出すことはできない」と断っ
ているものの、3年次、4年次とも図書館
利用頻度の多い大学生ほど、おおむね大学
での成績が良好であり、かつ大学生の図書
館利用頻度は、3年生については多くの学
科で、4年生では特定の学科で成績と関連
していると結論している★13
。また、立命
館大学の木下祐子らは、大学図書館の課題
は利用者である教員と学生の「学術研究」・
「学びと成長」をどのように支援できるのか
であると指摘し、貸出冊数とGPAの相関
を検討し「各学部の特色により若干強弱は
あるものの、貸出冊数と成績には強い相関
通常業務 臨時業務
学
内
業
務
・在学者管理の分析 ・学習成果の測定・分析
・Cohort(入学年次別)分析 ・財務分析及び収支予測
・Retention(継続在籍率)分析 ・教員の配置及び給与に係る分析
・卒業率に係る分析 ・戦略(事業)計画
・履修コースの設定及び登録状況 ・教育プログラム(コース)の評価
・学生の満足度調査 ・外部評価
・学内調査の設計・実施 ・内部コンサルティング
・ベンチマーク
外
部
へ
の
説
明
責
任
・学生納付金に係る情報収集・分析 ・補助金団体への報告書
・大学年鑑 ・大学ランキング・データ
・主要業績評価指標 ・その他の機関情報
・クラスサイズ分析
・機関報告書
・認証評価報告書
・連邦の高等教育機関情報
・NFS データ収集
Tab.1 アメリカのIRの主要な業務
013ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
関係があることが判明した。特に、1回生
ほど強い相関性」があると報告している★14
。
浦川らは大学図書館の貸出数を学生の学び
の代理変数として捉え、私立大学等経常費
補助金等と図書貸出数は正の相関があるこ
と等を明らかにしている★15
。千葉大学の
アカデミック・リンク・センターでも「情
報利用行動定点観測」として学生アンケー
トを実施し、個人を特定できる番号に一方
向性の暗号化を施し、図書貸出記録や成績
情報等との連動分析を行っている★16
。成
果との兼ね合いではないが、T大学の貸出
履歴データの分析については筑波大学の松
野渉ら★17
、また貸出履歴データを用いた
協調フィルタリングの研究については筑
波大学の辻慶太ら★18
の研究がある。また、
公共図書館を対象としたものであるが、佐
浦、辻は図書館の利用者からは貸出履歴を
保存し、活用することは概ね容認されてい
ることを報告している★19
。
社会的背景が異なるものの、海外の事
例 と し て は Soria ら に よ る University of
Minnesotaの図書館利用とGPAについての
報告が目を引く★20
。Soriaらは以下のよう
に論じている。従来、図書館では利用者の
プライバシー保護によってデータ収集が困
難であり、図書館利用と学生の成果の研究
はこれまでなされなかった。しかし、現在
の大学図書館は他の部門と同様に自らの価
値を証明するように求められている。そこ
でSoriaらは統計的処理の上、図書館利用
とGPAの関係を分析し、初年次の図書館
利用にはGPAと高い相関があることを明
らかにした。この分析をもとに、Soriaら
は学内外に対して図書館の価値や設置意義
を訴える議論を行っている。さらにSoria
らは、大学図書館の有用性の説明責任のた
めに他大学でも同様の調査を行うことを
勧告している。ほか、Hong Kong Baptist
University では図書館ワークショップと
GPAの関係を★21
、University of Wisconsin
で は ILL 利 用 と GPA の 関 係 を★ 22
、Kent
State Universityでは深夜の図書館の利用と
GPA等を★23
それぞれ関連付け分析してい
る。
ここでは先述のSoriaらの指摘をもう一
度振り返っておきたい。Soriaは以下のよ
うに論じる。これまでの(アメリカの)大学
図書館はプライバシー保護のみを優先とす
る方針であったが、プライバシー保護と同
時並行で統計的処理を行った上で自らの持
つデータを利活用する方向に舵を切った。
その背景として、図書館は自らの持つ価値
を大学執行部等にきちんと説明する必要に
迫られたことがあるという。
しかし、日本においては自由宣言をもと
に、貸出履歴データを研究・分析対象とす
ることに対して、強い忌避感を持つ大学図
書館や研究者らは依然として存在する。
となると、筆者の興味はおのずと以下の
ようになる。われわれが自明だと信じてい
る図書館のルールというものは、どのよう
に構築されてきたのだろう。構築されてき
た図書館の常識はどのような変遷をたどっ
てきたのだろう。
そこで次章からは、「自由宣言」の成立過
程および1979年改訂の経緯をたどり、「利
用者の秘密を守る」の文言について検討し
ていきたい。
なお、予め断っておくと、自由宣言に関
014 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
する資料は膨大なものがあり、なおかつ
個々人の立場によってはそれらに対する言
及状況には大きな差がある。極力資料は渉
猟したものの、それでも主として『図書館
雑誌』(日本図書館協会の機関誌。1907年
に創刊)等を中心とした点は本稿の限界と
してあらかじめ断っておきたい。
3.「利用者の秘密を守る」から見た自由宣言
  成立過程、および1979年改訂
本章では図書館の自由宣言における「利
用者の秘密を守る」の文言の変遷について
検討する。これまで図書館の自由宣言につ
いての経緯等は、日本図書館協会 図書館
の自由委員会の作業を中心にまとめられて
きた。しかしそれらは図書館の自由宣言を
全体的に捉える性質上、どうしても総花的
な記載とならざるを得ない。そこで本章で
は「利用者の秘密を守る」の文言を縦糸とし
て絞り、時代的変遷を追う。
3.1 成立過程前史
以下、『図書館雑誌』を当時の記載に倣っ
て『雜誌』と記述する。また原文ママの個所
については(sic)を付与する。
自由宣言は1954年、全国図書館大会お
よび日本図書館協会総会によって採択され
た。全体的な採択の経緯については日本図
書館協会常務理事、京都大学教育学部教授
などを歴任した森耕一がまとめている★24
。
本節は森のまとめを参考にしつつ、しかし
森が議論の主眼としていない「利用者の秘
密」に関わる点のみを絞って記述する。全
体像の把握については森のまとめを参照さ
れたい。
自由宣言の採択の前哨戦として、図書館
の中立性論争があるといえる。自由宣言の
成立の発端には1952年の九州図書館大会
において、破防法反対の決議を行おうとい
う「内々交わされていた」議論がある(『雜
誌』、1952年7月)。有
ありやまたかし
山崧(後の日野市長、
後年、前川恒雄の後ろ盾となった)はその
動議に反対し、Editorial Forumの欄で「然
し図書館界が「破防法」について直接発言す
ることは、厳々戒むべきことであると信ず
る。図書館が本当にinformation centerと
して、客観的に資料を提供することを以つ
てその本質とするならば、図書館は一切の
政治や思想から中立であるべきである」と
いう。すなわち、有山は図書館は情報を提
供するための場であり、図書館が積極的に
政治にコミットすることを忌避する意見を
提示する。
これに対して、反発するような意見と
して、編集部から「図書館の中立性につ
いての討論を提案する」(『雜誌』、1952
年8月)という提示が行われた。この討論
を企画したのは、当時26歳であった石井
敦と、武田虎之助の息子であり、のちに
『紀伊国屋文左衛門』で直木賞候補となっ
た武
た け だ や す み
田八洲満(当時25歳)の二名であった。
編集部は、この提案について 8 月 15 日を
意識したという。討論は主として『雜誌』の
「自由論壇」欄において行われた。この欄に
は多くの図書館員が積極的に投書を行って
おり、まるで現代の我々がソーシャルメ
ディア上で議論を交わすがごとき百家争鳴
の論争が行われていた。のちに「中立性論
争」と呼ばれるこの論争のなかで、「利用者
の秘密」につながる閲覧票の議論が現れて
015ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
くる。以下、「図書館の中立性についての
討論を提案する」本文中から抜粋する。
本誌別欄の投稿にあるように、閲覧票
を官憲により、法的な根拠なくして提示
を要求された場合、明らかに閲覧票に書
き込まれている事実が本人に不利益にな
る場合には、これの提示を拒否すべきで
あろうか。基本的人権の侵害になるよう
な行為を図書館がなすべきであろうか。
これは戦時中特高警察が思想調査のため、
往々利用したケースであるという。この
場合図書館員は断乎として拒否せねばな
らないか。(『雜誌』、1952年8月、p.214)
「本誌別欄の投稿」とは、後に図書館問題
研究会の発足呼び掛け人となる中村光雄
(豊橋市立図書館)による投書を指す。「自
由論壇」欄における記事はこのようにある。
先日私達の図書館で大きな問題が討議
され未解決に終つたので、ここにその大
要を発表し皆様の御批判をいただきたい
と思います。それは閲覧証の問題です。
偶然な話から若し思想問題について警察
が閲覧証調べに来ればどうするかという
言うことでした。…(略)…その前に何
故警察が閲覧証を調べるか、これはすぐ
分ることです。太平洋戦争の中で直接経
験された方も居る筈です。まさか図書館
4 4 4 4 4 4
の統計を取るために調べるなんて考えら
4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4
れますか?ナンセンスです
4 4 4 44 4 4 4 4 4 4 4
(傍点筆者)。
…(略)…要するにこの問題は「見せるか、
見せないか」の問題から「合憲か違憲か」
の問題になつて来るのです、だから一層
討議された上ではつきりすべき問題なの
です。私はこう思います「絶対見せては
いけない、(sic)若し見せたとすれば私
達は職権を乱用して基本的人権を侵した
という罪を負うのです。(『雜誌』、1952
年8月、p.230-231)
これに対する反応はいくつかあるものの、
すぐさま、貸出記録の廃棄の発想に極め
て近い投稿が片山良爾「閲覧証をめぐる問
題の解答」に現れてくる。しかし、奇妙な
ことに(あるいはふざけているからだろう
か)、『図書館の自由に関する成立 図書館
の自由・1《復刻版》』には採録されていな
い。片山はこう書く。
それならば閲覧証を保存しなかつたら
どうなるかを考えていただきたい。ポリ
公が来ようが、家出息子の父親が来よう
が、ボスが来ようが、無いものは無いの
で見せようがない。ちょうど私に借金す
る時みたいに無いものは貸せないのです。
至つて簡単なことです。(『雜誌』、1952
年10月、p.287)
他にもいくつかの誌上論争が行われた
ものの、これらの議論の後、図書館憲章
(委員会案)が提示される。『雜誌』1953年
2 月号には、前年の 11 月に埼玉県図書館
大会で図書館憲章(仮称)の制定を決議し
て、日本図書館協会に申し入れを行ったこ
とが記されている。この点について、森は
「図書館の自由に関する宣言−成立までの
経過−」の文中では、「埼玉県大会の決議が、
なにか具体的な事件にもとづいてのこと
016 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
かどうかは不明」と断り書きを行っている
★25
。当時の不明点については、後年、三
苫
みとままさかつ
正勝は1952年2月、埼玉県秩父市立図
書館にて、進歩的文化人であった中島健蔵
の座談会を企画した際に、その数日前に担
当司書の机の中を警察が調査するという事
件があり、それがきっかけであると言及し
ている★26
。
図書館憲章の素案づくりは、埼玉図書館
大会の申し入れを受けた上で行われた★27
。
委員は図書館法改正委員および、中立性論
争に投稿したものから理事長が指名してい
る(『雜誌』、1953年8月、p.30)。そこにお
ける委員会案は以下の通りである。
基本的人権の一つとして、知る自由を
持つ民衆に、資料と施設を提供すること
は、図書館のもつとも重要な任務である。
われわれ図書館人は、その任務を果す
ため、次のことを確認し実践する。
1. 図書館は資料収集の自由を有する。
2. 図書館は資料提供の自由を有する。
3. 図書館はすべての検閲を拒否する。
図書館の自由がおかされる時、われわれ
は団結して抵抗し、関係諸団体との協力
を期する。(『雜誌』、1953年10月、p.298)
このなかには「利用者の秘密を守る」を直
接的に反映している文言はない。ただし、
委員会案と同ページに委員会報告という記
事が配置されている。図書館憲章委員会議
長は佐
さとうただよし
藤忠恕であり、委員会長名での報告
には、以下の記載がある。
館界にあつては「警察側が閲覧者名を
書いた閲覧カードの調査に来たり」「購
入図書の種類に対して県教育委員会から
干渉があつたり」等の具体的事例があっ
たという(Ibid.)。
すなわち、図書館憲章の文言そのものに
は現れてこないものの、利用者の秘密を守
るという観念を、図書館憲章の委員会は意
識していたと推察される。また、当時の
『雜誌』の編集部は一定の編集方針をもって
記事を構成していることがわかる。たとえ
ば編集部の手によって朝日新聞の投書が特
別に『雜誌』に転載されていることがそれに
あたる。岩手県の農業従事者によるこの投
書は以下のようになっている。
先日私は町の書店に行つて「平和」とい
う雜誌の予約購読をしようとしました。
すると書店の主人は「その本なら止めと
いたほうがいよ(sic、ただし元の新聞記
事(1952年12月25日朝日新聞東京版朝
刊3頁)には誤字なし)ですよ。一昨日も
国警の警察が來て平和、世界、新世界、
ソヴエトグラフ等の予約者の名前と調査
をして行つたばかりですから」というの
です。(略)昔の思想警察みたいな行動は
愼んでもらいたいと思います」。(『雜誌』、
1953年3月、p.78)
以上より、図書館はインフォメーション
センターであるから、中立的に情報を提供
するのみにとどまるべきであるという立場
と、積極的に活動することで、中立性を守
ろうという二つの立場の衝突が、自由宣言
の成立前史にはあったといえる。
017ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
これと同様の構図は現代の図書館でもし
ばしば繰り返されるものである。たとえば
ビジネス支援に関して、図書館がサービス
に対し差をつけることは是なのかといった
異議申し立てがなされたこともこの構図と
類似型であろう。
ともあれ、「中立性論争」を基底としつつ、
利用者の閲覧票の保持等を問題としていた
のが、自由宣言成立前史といえるだろう。
以上をまとめると、
(1) この段階では「自由宣言」という文言
ではなく「図書館憲章」という名前
だった
(2) 利用者の秘密は、特に戦前の検閲と
セットで議論されていること、まし
てや統計の発想ではなかった
(3) 図書館憲章の委員会案では、現行の
「自由宣言」にある「利用者の秘密を
守る」の文言は出現していない
という点の3点が指摘できる。
3.1 自由宣言の成立
「中立性論争」という、『雜誌』の「自由論
壇」コーナーを主戦場とした2年間にわ
たった議論を経た後に、1954年の全国図
書館大会および日本図書館協会総会が行わ
れた。Tab.2が日程である。
5 月 26 日の全体会議の議長は、小野則
秋(同志社大学図書館)および小林重幸(奈
良県立図書館)であった。議事録の発言か
ら、自由宣言についての議論はおそらく全
日にわたって行われたと推定できるものの、
『雜誌』掲載の議事録として確認できるもの
は、5月26日の午前、および5月28日午前、
午後と思われるものに限られる。
3.1.1 5月26日午前
このタイミングで、有山らによって「図
書館憲章」ではなく「図書館の自由に関する
宣言」という名前に変更されたものが提示
される。さらに、有山らによる副文の加
筆のため、原案から10倍ほどに分量が増
加していた。有山らによる変更を事前に聞
かされていないものも多く、無断で原稿が
変更されたという意見がなされるなど、議
事録には混乱の跡がうかがえる。ここでは、
この過程についてのやりとりを要約して示
す。
有山:憲章はさまざまな意味に解される
ので「図書館の自由宣言」とした。図書館
憲章は法三章的で短いが、それを解説し
たものを付与した(副文)。三つの問題に
ついて解説したので本質的には憲章と同
じものである
裏田(東京大学):図書館憲章の委員を引
き受けたが法三章の文言を検討しただけ
であり、今回の案はどう関係あるのか
有山:図書館憲章委員会のなかに小委
5月26日 午前 全国図書館大会開会式
午前 〃 全体会議
午後 〃 各部会
5月27日 午前 〃
午後 〃 研究発表
5月28日 午前 全国図書館大会全体会議
午後 日本図書館協会総会
Tab.2 自由宣言採択までの日程
018 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
員会を作り、埼玉県立図書館の韮塚★26
、
武蔵野市立図書館の佐藤、有山の三人で
作った。(『雜誌』、1954年7月、p.224-225
を参考に構成)
法三章とは漢の高祖が始皇帝の定めた厳
しい法律を廃し、殺人・傷害・窃盗の三つ
を罰するとした三か条の法律のことで、転
じて簡略な法律のことである。よって、こ
こでいう法三章とは(1)資料収集の自由
(2)資料提供の自由(3)すべての検閲を拒
否する、の3つの文章のことを指す。
ここでは主文と副文(解説)について確認
しておきたい。ただし、全ての項目を転記
することは煩瑣であるので、抜粋して引用
する。ボールドを主文とし、標準書体を副
文として記す。
3 図書館はすべての不当な検閲に反対
する。
(一)〜(三) (筆者注. 略)
(四)更に図書館の一般的利用状況につい
ては別であるが、利用者個人の読書傾向
など個人的自由を侵すような調査の要求
は、法律上正当な手続きによる場合の外
は拒否する。(Ibid. p.220-221)
「利用者の秘密を守る」という文言は「憲
章」で存在しなかったが、自由宣言の3-4
の副文で現れてくることがわかる。ただし、
有山らの案では、個々人の読書傾向につい
てではない、一般的な利用状況についての
調査を許可している。
議事録を確認する限り、この日の配布資
料は図書館憲章から「図書館の自由に関す
る宣言」という名前に変更された上、副文
が加筆されていたことから、全体会議に混
乱をもたらしたと見受けられる。事実、自
由宣言を読んだことのない参加者がいるた
め、朗読はしたものの28日最終日の全体
会議まで十分研究し検討するという意見が
見られる。
3.1.2 5月26日午前
この議事録を読むと、副文に対する違和
感を表明するものが増えてくることがわか
る。協議に先立って「この草案は憲章委員
会から小委員会に附託され、時間的な余裕
のなかつたせいか、副文にいたるまでは実
際に委員会のほうでも了知していなかつた
ようです。それで副文に関しては皆様の御
意見もあると思いますので、主文に対し
てこの大会で決議していただきたく、主
文を主として決議していただくように会
議を進めていただきたいと思います(Ibid.
p.236)」という発話が見られる。
この時間帯では、主として「抵抗する」の
文言についての議論がなされていた。百家
争鳴で、原案そのものを差し戻そうとしよ
うとする動きすら見られる。ただし、原案
を差し戻すことについては、このような発
話が見られる。「われわれは叡智を持つた
図書館人の集まりであります。…(略)…
差戻すということは、大会の性格上否決す
ることです。(「そうだと」(sic)言う者あ
り)図書館人の出したものを、図書館人に
よつて否決したに等しい結果になる(Ibid.
p.238)」。
また、議長の「お諮り致しますが大多数
の方は趣旨に賛成である。しかしその主文
019ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
のなかに、主文もこれを修正しなければな
らない問題がある。副文には更に検討を要
する問題があり(Ibid.)」という発話を受けて、
その後の処理は当日の午後に行われる日本
図書館協会総会を開催する主体である日本
図書館協会に移すと決定する。その際の条
件として、自由宣言を全国図書館大会の名
のもとで出すというものであった。これら
の決定の後、全国図書館大会は閉会する。
3.1.3 5月28日午後
5月28日午後は、第八回日本図書館協会
総会であった。ここで自由宣言は採択され
ることになるが、採択までに至るには大幅
な紛糾があったといえる。さまざまな文献
でも確認できるが、この紛糾の原因につい
ては、
・「関係所団体との協力…」という表現
・「抵抗する」という表現
の二点が主たる理由であった。
なお、自由宣言の成立にあたって、総会
自体が成立するかどうか自体にまで疑義が
挟まれていることがわかる。森による司会
の発話として、以下が認められる。
森司会:只今の出席は120名でござい
ます。先程申上げましたように、記名
委任状が出ておりまして、その数が158、
白紙委任状が115、従つて現在の会員数
は1,864名、この総会は団体会員は構成
メンバーになつておりませんから、十分
の一、186名で、この会は十分に成立し
ていると認められると思います。(拍手)
(『雜誌』、1954年7月、p.255)
議論が紛糾した理由について、森はこのよ
うに書いている。
宣言の問題が、このように紛糾した
のは、賛成派がある一方、「雉も鳴かず
ば撃たれもすまい」という考え方をとる
図書館員が相当に多かったからである。
(略)きびしい状況に直面していたのであ
る。国の方針がそうであれば、これまで
以上に困難さを増す地方の財政当局との
折衝において、「抵抗する」という表現を
含む自由宣言が障害にならないかという
ことをおそれたのである。(『図書館の自
由に関する成立《復刻》』、p.15)
議論の紛糾について、各論者の見解を逐
一紹介することは難しいが、おおまかにま
とめると、中央―地方、若手−ベテランと
いう構造が看取できる。すなわち、中央の
勤務でありかつ若手の図書館員は自由宣言
に賛成をし、そうでない図書館員は二の足
を踏んでいたという構図がある。たとえ
ば、地方の図書館員(蒲
か ま ち ま さ お
池正夫:徳島県立
図書館長)が、「抵抗」という文言がどのよ
うな響きを持つものか、東京周辺で仕事を
している人にはそれがわからないと批判
し、およそ10分以上も演説していること
がそれを表している。蒲池以外にも「抵抗
という文字については相当な抵抗がありま
す。(笑)これは都会と田舎では余程違うの
であります。(『雜誌』、1954年7月、p.255)」
という発話もある。
このようにベテランと思われる図書館員
から慎重論が出る一方で、たとえば、「自
分も若いので原案に賛成したいと思います
020 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
けれども(Ibid. p.254)」といった若手によ
る積極的な採択への発話が散見される。
議論の結果、主文のみが採択されること
となり、自由宣言は以下のように採択され
た。
基本的人権の一つとして、「知る自由」
をもつ民衆に、資料と施設を提供するこ
とは、図書館のもっとも重要な任務であ
る。
図書館はこのような任務を果すため、
我々図書館人は次のことを確認し実践す
る。
1. 図書館は資料収集の自由を有する
2. 図書館は資料提供の自由を有する
3. 図書館はすべての不当な検閲に反対す
 る
図書館の自由が侵される時、我々は団
結してあくまで自由を守る。
差分をまとめると、以下のTab.3のとおり
となる。
ここでは
(1) 二文目の冒頭「われわれ図書館人」
の書き出しが「図書館は」になって
いる
(2) 抵抗・関係諸団体についての連携
という表現が削除された
(3) 検閲が不当な検閲という文言に変
更されている
(4) 副文が採択されなかったため、「利
用者の秘密」に関する記述も同時
に採択されなかった
以上の点を確認しておく。なお、現在の
自由宣言は「不当な検閲」という文言ではな
く、「すべての検閲」になっている。余談な
がら、有川浩の『図書館戦争』においては
「不当な検閲」という文言が主たる柱となっ
ている。よって、有川浩は『図書館戦争』を
執筆するにあたって、過去の文献をおさえ
ていることがうかがえる★28
。
図書館憲章 自由宣言 1954採択版
基本的人権の一つとして、知る自由を持つ民衆に、資
料と施設を提供することは、図書館のもつとも重要な
任務である。
われわれ図書館人は、その任務を果すため、次のこと
を確認し実践する。
1. 図書館は資料収集の自由を有する。
2. 図書館は資料提供の自由を有する。
3. 図書館はすべての検閲を拒否する。
図書館の自由がおかされる時、われわれは団結して抵
抗し、関係諸団体との協力を期する。
基本的人権の一つとして、「知る自由」をもつ民衆に、
資料と施設を提供することは、図書館のもっとも重要
な任務である。
図書館はこのような任務を果すため、我々図書館人は
次のことを確認し実践する。
1. 図書館は資料収集の自由を有する
2. 図書館は資料提供の自由を有する
3. 図書館はすべての不当な検閲に反対する
図書館の自由が侵される時、我々は団結してあくまで
自由を守る。
Tab.3 図書館憲章と1954年版自由宣言差分        ※差分取得はdifff《デュフフ》(http://difff.jp/)による
021ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
本節をまとめる。1953年までの流れと
して、「利用者の秘密を守る」は、国家権力
による検閲に対抗する手段としてその必要
性が議論されつつも、委員会案の図書館憲
章には出てこなかった。この文言が現れる
のは有山らが裏田らに断らずに加筆した自
由宣言の原案の3-4、検閲に反対する箇所
である。ただし、それは副文であったため、
採択の段階で棄却された。
3.2 1979年改訂前史
1954年の成立時を扱うことも難しいが、
1979年以降の自由宣言改訂以降を研究対
象として扱うことは更にむずかしい。とい
うのも、この時期に実際に第一線で活躍し
ていたライブラリアンは多く存命しており、
資料以外の、たとえばオーラルヒストリー
等も多く存在しうる。本節以降は検証可能
性を容易にするため「公式」の文献を重視し
て執筆されるが、これらの文献に現れない
エピソードが多くあったことは容易に推測
できる。ぜひ、この点について、先賢のご
意見を仰ぎたい。
自由宣言は1979年に一度、改定されて
いる。本節ではその改訂の前史をたどる。
改訂に至った理由として、三苫正勝は
1963年『中小レポート』、1965年の日野市
立図書館開館、図書館問題研究会の方針
(貸出しを伸ばすことを改善の目標とする)、
東京都の図書館振興策(1970 年、図書館建
設費や図書費の補助)、1970年『市民の図
書館』刊行、1973年の山口図書館図書隠匿
事件、1975年「図書館の自由に関する調査
委員会」という、図書館界の流れを紹介し
ている★25
。
渡邊は「公立図書館関係者を利用情報保
護に向かわせてきた要因を特定することは、
文献にその動機が明記されているわけでは
ないため、たやすい作業ではない」と断っ
ている。その上で、渡邊は1960年代の後
半以降、公共図書館の職員が利用情報を安
易に漏示するような描写を含む小説やテレ
ビドラマが度々発表され、「図書館関係者は、
こうした作品に描かれた図書館員像は実態
を正しく反映したものではないことを社会
に対してアピールするとともに、図書館関
係者に対して啓蒙活動を行う必要に迫られ
た」と論じている★8
。
また、三苫、渡邊は言及していないもの
の、当時の社会的な背景として「国民総背
番号制」が自由宣言の改訂に影響を与えた
可能性は高いと推察される。国民総背番号
制は佐藤栄作内閣が1960年代後半に提出
し、野党の反対によって頓挫したものであ
るが、これに関する動向が人々のプライバ
シー保護の機運の醸成に強く関係した形跡
がある。たとえば、朝日新聞1972年11月
16 日朝刊 22 頁には「総背番号制反対へ国
民運動 学者・文化人ら旗揚げ私権侵害防
ぐ法規制も」、同じく朝日新聞1975年4月
7日朝刊11頁には「情報化社会とプライバ
シーを考えるために 国民総背番号制 礼
賛薄れ警戒強まる」といった記事が確認で
きる。また、社会学者の稲葉三千男は「「国
民総背番号制」への異議申し立て」(『潮』、
p.156、1974年12月)を執筆している。学
術雑誌にかぎらず、たとえば大宅壮一文庫
目録を調査すると『平凡パンチ』、『サンデー
毎日』、『週刊ポスト』といった雑誌であっ
ても、国民総背番号制に対する危惧の記事
022 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
が盛んに認められる。たとえば『週刊ポス
ト』では「秘かに進行中、国民総背番号制は
“性体験”まで管理する」(1974年7月26日
p.32)といった、いささかセンセーショナ
ルな記事すら現れている。すなわち高度経
済成長期と図書館数の増大、プライバシー
保護の機運、小説やテレビドラマにおける
誤った図書館像の流布といったさまざまな
状況が、1970年代には存在したといえる
だろう。
この時期は、いわば図書館の発展期と
して捉えることができる。図書館界では
1963 年の『中小レポート』、1970 年の『市
民の図書館』によって、日本の図書館界の
発展は行われたという言説が多く存在する。
しかしそれらは図書館界の内情のみに焦点
を絞った議論の可能性がある。たとえば、
1960年の池田内閣の所得倍増計画がある。
この計画は1961年から10年間で国民所得
を倍増させることを狙ったものだが、実際
は計画以上の成長がなされた。したがって、
ここでは『中小レポート』や『市民の図書館』
だけが原因ではなく、高度経済成長という
要因も図書館の成長に大きく関係した可能
性を指摘しておきたい。
ともあれ1954年採択時に比較し、図書
館数も増大し、実際の図書館の運用上自由
宣言が実質的に必要になってきた時期であ
るといってよいだろう。事実、三苫、塩見
らは、1970年代までの図書館活動が未成
熟であったため、1950年代〜 70年代に関
しては、自由宣言に関する議論は抽象的な
ものに留まらざるを得なかった、と指摘し
ている★25
。
ただし、自由宣言成立後20年間の「無風
状態」については、違う視点を匂わせる指
摘もある。たとえば、先に触れたように、
蒲池は自由宣言の採択の際に、図書館員が
自らの理念を宣言することに対し「キジも
鳴かずば撃たれもしまい」と反対論を訴え
た。蒲池を偲んで新
しんこういち
孝一は以下のように書
いている。
宣言成立後の日本図書館協会の理事会
は、四国・九州の役員が欠席したり、さ
らに土岐善麿理事長の辞意表明なども
あって混迷する。その後松山市で蒲池ら
有志の館長が集い関係修復を図っている。
この時期、蒲池は理事ではなかったが、
松山市の会合のあと開催された日本図書
館協会理事会にも出席して積極的に発言
している。しかし、蒲池をはじめ役員一
同何故か「図書館の自由宣言」の取り扱い
には一切触れていない。
松山市で何が話し合われたか具体的記
録はないが、おそらく自由宣言が話題に
なったであろうことは十分に想像がつく。
蒲池はその後ますます図書館界で発言力
をましていくがそのことと自由宣言成立
後の無風状態と関連があるのか定かでは
ない★29
。
以上、新は「定かではない」と匂わせるに
留まっているがこのように図書館界の趨勢
は一枚岩ではなかったことは指摘できよう。
「利用者の秘密を守る」に関するきっか
けとして、練馬図書館テレビドラマ事件
(1967年)および、東村山市が制定したプ
ライバシーに関する条例が先行研究ではし
ばしば指摘される。ここでは主として東村
023ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
山市の条例について触れる。1974 年 3 月
30日に条例第18号として制定された、
利用者の秘密を守る義務
第6条 図書館は、資料の提供活動を通
じて知り得た利用者の個人的な秘密を漏
らしてはならない。
というものである。しかし、本条例が制
定された経緯についてはほとんど紹介がな
されていない。そこで本稿では、この経緯
について紙幅を割いて紹介する。なお結論
を先に述べると、東村山の図書館のこの条
例の制定背景には、いわば現代の公共図書
館の方向性を決定づけたプレイヤーらが陰
に陽に見られることが指摘できる。
東村山市図書館の成立の過程については、
日本図書館協会の理論誌『現代の図書館』
(vol.11, No.4, p.149-181、1974 年)におお
まかな経緯が記されている。なお、この記
事が記載されていた『現代の図書館』当該号
の編集委員長は、現代の公共図書館の方向
を決定づけたといわれる前川恒雄である。
1953年7月、東京都立立川図書館のブッ
クモービル「むらさき号」が、東村山町(当
時)役場の駐車場を巡回拠点として設定し
た。また、同時期には、日野市における都
電図書館が刺激となり、電車図書館等が開
館された。
1970年となると、移動図書館の漸減が
東京都の方針に現れてくる。そこで文庫活
動等を行っていた人々を中心に、市立図書
館建設の動きが進み始める。
1972年3月、定例市議会で「図書館設置
準備室」設置の陳情が採択された。市民の
意思を反映した図書館をつくるために、専
門委員制度を設置し、そこにおける議論を
図書館づくりに反映することが狙いであっ
た。専門委員は(1)バスおよび電車図書館
などで実際に図書活動に携わっている団体
関係者、すなわち文庫関係者7名(2)小中
学校の関係者2名(3)学識経験者3名で構
成されていた。
学識経験者としては、図書館資料整備セ
ンターの中
な か ね じ ょ せ ふ
根恕世夫、日野図書館長の前川
恒雄、日本図書館協会総務部長の菅
すがわらたかし
原峻の
名が見られる。前川、菅原は文部省図書館
職員養成所の同窓であり、菅原は前川を当
時の一番親しい仲と発言している。図書活
動に携わっている団体関係者の合計7名に
は、主に文庫活動を行っていたり、電車図
書館に携わっていたりした人々が含まれて
いる。この電車図書館とは、1967年に廃
車になった西武鉄道の車両を譲り受け、団
地住民の手によって開かれた「くめがわ電
車図書館」のことである。
この時期の直前の動きとして、1965年、
有山崧が日野市長となる。よく知られてい
るように、有山は前川の後ろ盾的存在だと
される。たとえば、有山が日野市長になる
直前に、前川を図書館づくりのために招聘
したことはよく知られている。塩見は「有
山、前川という、この『中小レポート』を中
心になってやってきた二人が、市長と図書
館長という関係の中でつくった図書館が日
野市立図書館である」と述べている★30
。
もちろん日野市立図書館の以降、各地の
公共図書館は多かれ少なかれ日野の影響を
受けているとはいえ、東村山は他の図書館
よりも日野の影響を一層強く受けていると
024 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
判断することができる。なぜならば東村山
は日野と同じ多摩地区に位置し、移動図書
館を自らのルーツに持つという共通項を持
つ。新図書館の企画段階においては、企画
役の専門委員が日野市立図書館等に見学に
行っている、あるいは東村山市立図書の初
代館長の鈴木喜久一は、もともと日野市立
図書館副館長であるといった特徴がある。
東村山市図書館設立に関する記録に、「あ
る図書館作りの記録」がある。この資料は
1972年10月〜 1973年7月に行われた会議
録で、『現代の図書館』に再構成した形で転
記されている。この会議録の掲載について
東村山市図書館開設準備室では、会議
記録類が充分でないことから会議の「再
構成」は困難であるとして固辞されたが、
館界にこの種の資料が皆無であることか
ら特にお願いした。(p.162)
と、編集委員会が『現代の図書館』に会議内
容を転記・記載しようとした意向が強く働
いていたことがうかがえる。ただし、東村
山市の開設準備室がいう、会議記録等が十
分ではないというのは事実ではない。とい
うのも、この委員会の記録は厚さ5cm程
度の「市立図書館専門委員会関係綴」として
まとめられており、公文書として保存され
ている。また、この会議自体にはそもそも
学識経験者として前川恒雄自身が出席して
いるのである。
そこで東村山市に対し、情報公開請求制
度を用いてこの記録に対する開示請求を
行った。その結果、プライバシー保護の関
係上、個々人の名前については伏せられた
状態で開示が行われた。なお、前述の『現
代の図書館』の「ある図書館作りの記録」で
は、発話者は個人名どころか選出区分も特
定できないようにマスクされている。そこ
で本稿では「市立図書館専門委員会関係綴」
を典拠として記す。
鈴木喜久一市立図書館開設準備室長に
よって1973年9月6日に起案された、市立
図書館専門委員会会議集約事項によると、
「利用者の秘密を守る」という文言について
は、1973年3月の第10回専門委員会会議お
よび1973年7月の第4回専門委員会会議に
認めることができる。これらの回では、他
の会議開催日と異なり市長が同席していた。
1973年3月の第10回専門委員会会議の
協議事項は、「東村山市立図書館建設基本
計画」の資料が配布され、図書館計画に対
する要望のとりまとめから始まった。この
回は比較的初期にあたり、いわばどのよう
な方向性をもって図書館を設計するかとい
う議論の場であった。このなかで、読書履
歴とプライバシー保護についての言及が現
れてくる。
委員(文庫関係者):利用者がどの様な
本を読んだかを調べられては困るので、
そのはどめとして、プライバシーを守る
ということを資料(図書館建設基本計画)
の中に入れてほしい。
委員(学識経験者):資料選択の自由と
利用者のプライバシーを守るということ
は、規則のなかにいれるだろうが、その
前提として計画のなかに入れてもよいと
思う。(1973年3月、第10回専門委員会
会議議事録)
025ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
ここにおける文庫関係者は不明である。
一方で当該箇所の学識経験者は、前後の文
脈から前川恒雄であると強く推察できる。
次にプライバシー保護についての議論が現
れてくる1973年7月の第4回専門委員会会
議では、この内容を条例に盛り込むかどう
かという議論がなされてくる。
室長(準備室長。鈴木喜久一):次にま
た大きな問題ですが、「利用者の秘密を
守る」ということを規則か条例の中でと
りあげるべきではないかというご指摘が
委員のみなさんからございました。この
点はどうでしょう。
(略)
 室長:さきほどの利用者の秘密保持、
具体的にいいますとブラウン式の場合読
書記録は残りませんがある時点での貸出
記録はあります。このほかレクエスト
(sic)とかレファレンスの記録がある訳
です。この記録は決して他にもらしませ
んという約束を市民にするかどうかとい
うことですが(条例に)いれて欲しいとい
う意見がある訳です。
 委員(文庫関係者):条例に加えて貰っ
たほうがよいと思います。
 委員(学識経験者):条例や規則は市民
を拘束するだけでなく役所をしばるもの
でもある訳ですから利用者のための秘密
保持の保証のため入れたほうがいいと思
います。
 委員(学識経験者):それと同時に図書
館の中立ということをいれたらどうで
しょう。最近関西では問題になっていま
すよ同和資料などで。
委員(学識経験者):それは図書館長が資
料収集の決定権をもつということでよい
と思います。
 担当:表現の方法は別として、条例中
に秘密保持の条項を設けていきたいと思
います。(1973 年 7 月、第 4 回専門委員
会会議議事録)
このように利用者の秘密保持についての
議事録が進んでいくが、同日の会議に欠席
していたと思われる委員(文庫関係者)の手
紙も当日の記録として残っている。ここに
はこのような意見が見られる。
何回か強調しました。利用者が資料の
利用にあたって憲法の保証する自由(学
問、思想信教etc)が最大限に保証される
ということ、利用者の資料の利用にあ
たっての個人の秘密が保証されるという
ことをなんらかの形で明記して欲しいと
思います。規則の中で事業の後あたりに
条文を入れてはどうでしょう。また、専
門職としての図書館員が図書を選択肢、
購入するにさいし行政サイドその他から
有形無形の制約を受けず、上記のことを
おこなえるような規定も欲しいものです。
当然このことは教育基本法の精神やそ
れにのっとった社会教育法の中に明記さ
れており図書館がその社会教育のための
機関であることも明記されていますが戦
前からの日本の社会教育が、その独自の
機関を通じて(スポーツなどいまでもそ
のおそれを感じます)国家の教化機能を
強制されてきたことを思うと、社会教育
の民間性、自主性のすじを一本通した運
026 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
営規則にぜひしていただきたいと思うの
です。(1973 年 7 月、第 4 回専門委員会
会議議事録添付資料)
以上から、図書館に関して通暁していた
学識経験者以外の専門委員(すなわち「市
民」)が、秘密保護の内容を条例へ盛り込ん
でもらう依頼を行っており、その意見に対
し、学識経験者、準備室長らがそれに賛同
している姿がうかがえる。
これらの図書館を設置するための専門委
員の議論を経て、東村山市市議会において、
該当の条例である「第6条 図書館は、資
料の提供活動を通じて知り得た利用者の個
人的な秘密を漏らしてはならない」が取り
上げられるに至る。
1974年3月14日(金)に行われた第3回
東村山市議会(定例会)の会議録を摘要する。
教育長(加藤武吉君):議案の第15案
でございますが、東村山市立図書館設置
条例でございます。この設置条例は法律
の定めるところによりまして、条例化を
しなければならないという規定がござい
ます。(略)特に運営の面におきまして
は、専門職である者を中心とした職員構
成、特に館長の権限については、その資
格を指定して、図書館にとってもっとも
重要な任務である資料の選択、構成に力
を発揮できるように配慮する。また利用
者のプライバシーの保護の関係について
も十分配慮する。(略)以上のような内容
で、議案第15号のご提案を申し上げた
わけですが、よろしく御審議願いたいと
思います。
議長(根建秀義君):説明がおわりまし
たので質疑に入ります。24番。
24番(渡辺徳長君):この6条の問題に
ついてちょっと伺っておきたい。
これは、実はわたしがほかのところで
経験した問題なんですけれども、この図
書館を利用された方が、いつの間にか警
察のほうに、どんな本を借りているとい
うようなことがいろいろと調べ上げられ
ておったということを経験しているし、
それから、ほかに、これは訴えられたと
いう形になるわけですけれど、同じよう
なケースが、警察のほうで、図書館でな
ければわからないはずなのに、いろいろ
調べられておったというふうなことがあ
ります。(略)こういう事態が起きた場合
に、どういう形でそういうものに対処し
ていくのか。ここらの点の対処の考え方
を明確にしておいていただきたいという
ふうに思います。
教育長(加藤武吉君):今回の条例の
中でも、第6条については図書館法にも
載っておりません。しかしいままでの専
門委員会等の意見のなかで、プライバ
シーを守るという御意見を尊重しながら、
今回の条例の中に加えてまいったんです
が、ただいまの御質問のとおり、具体的
にこれをどのようにする方法がとれるの
かということになりますと、これは、現
状では記録に名前を残さない。具体的に
はそういう方法で事務を処理していきた
い。名前が残るということは、当然あと
でその記録が判明できるような事務的に
はなるわけですが、そういうものを名前
が残らないようにしよう。そういう配慮
027ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
をしながら個人のプライバシーを守る。
具体的な内容として、そういう方法をと
りたいという内容です。(1974年3月14
日第3回東村山市議会(定例会)議事録)
これらの議事の後、本条例は採択される
に至る。なお、ここにおいて教育長が紹介
しているプライバシーを保護した貸出方式
とは、ブラウン方式のことを指す。1973
年9月6日、準備室長の鈴木喜久一は各専
門委員に会議録の集約事項を送付している
が、その中の鏡文に
また、現在準備室では、ブラウン方式
による貸出手続に改良を加えた回数券式
貸出方式を検討中ですので、市役所へご
用の節は準備室までお立ち寄りください
まして御意見いただければ幸いです。
との文章が見られる。
市議会の議事を経て、本条例は採択され
るに至る。図書館における秘密保護を条例
に盛り込むことができたことは、関係者に
とっては随分喜ばしかったようである。東
村山市の電車図書館新聞部発行の新聞であ
る『でんしゃ』でもこの話題は取り上げられ
ている。ここにおける開館特集においては、
以下のような記事がみられる。
目には立たない(sic)宝の一つに、利
用者のプライバシーを守る配慮がありま
す。思想統制の歴史は過去の物語になり
ましたが、個人の自由や尊厳は守られな
ければなりません。因に婦人は婦人雑誌
を読むとは限らず、婦人雑誌を読めば低
俗とか、何を読めば偉いとか、そのよう
な尺度はなくなっていましょう。世間体
を気にしないで、その時必要な本を、自
分の為に読めます(『でんしゃ』、1974年
6月15日、No.12第一面)。
このように、図書館に関する「市民」から
の要望が、東村山市の図書館の条例となり、
それが現在の「宣言の利用者の秘密を守る」
ルーツの一つとなっている。図書館関係者
にとって、市民と協同できたことは喜ばし
かったことだったようで、『図書館の自由
に関する宣言 1979年改訂解説』において
本事例は以下のように肯定的に取り上げら
れている。
この規定(筆者註. 東村山市立図書館設
置条例)が、同館建設のための専門委員
会に参加していた住民代表の強い主張に
よって挿入されたという経緯は、住民が
自らのプライバシーを守ることに強い関
心を持っていることを示している(p.28-
29)。
ただし、この箇所の文言に対して全面的
に賛同することには注意が必要である。こ
こには嘘は書いていないが、ミスリードの
可能性がある。というのも、一次資料を読
み込んでいくと、住民の強い主張「だけ」で
はなく、その主張を積極的に展開した学識
経験者の存在も、同時に存在するプレイ
ヤーとして前景化してくるためである。有
山崧は1954年の時点で、「利用者の秘密を
守る」という副文を導入しようとし、棄却
された。その後、1970年代に入ると、有
028 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
山と関係の深い前川恒雄と、その関係者ら
が、東村山のプライバシー条例制定の当時
の関係者として垣間見ることができる。
本節をまとめる。1979年改訂の「利用者
の秘密を守る」の文言には、(本稿ではそれ
ほど紙幅はさかなかったものの)練馬テレ
ビドラマ事件および東村山市立図書館設置
条例などが深く関連していた★31
。東村山
市立図書館設置条例には、市民からのプラ
イバシー保護の希望が背景として存在した。
1954年の自由宣言の当初の採択された段
階で主であった意識は、官憲による検閲に
対する防衛であったが、東村山市立図書館
が設置される年代となると、捜査令状に関
連する発想および、他者に読んでいるもの
を知られたくないという考え方として現れ
てきたものであった。また、図書館におけ
るプライバシー保護意識は「市民」から生ま
れたものであった。ただし、確かに出発点
は「市民」からの意見であったが、それに呼
応して学識経験者枠の図書館関係者や室長
がプライバシー保護の意見を積極的に展開
していった形跡が見受けられることも、軽
重なく目配りしておく必要がある。
3.3 1979年改訂
1979 年に自由宣言が改訂されている。
前史については前節で触れたが、これらを
きっかけに1976年5月に「図書館の自由に
関する調査委員会」(2002年、「図書館の
自由委員会」に改称)が中心になって行われ
た。この改訂について、1954年の採択で
は棄却された、「お蔵入りにされていた副
文の採択をも目的にしていた★25
」という発
言が認められる。
1979年改訂が行われるまで、図書館雑
誌を中心に関係者が繰り返し文案を提案、
それを改訂していったことが見受けられる。
そもそもなぜ改訂を行うに至ったかという
理由について、図書館の自由に関する調査
委員会は 1976 年 16 日から 17 日に連絡会
を行い、そのなかでの討議から以下の提案
がなされた。
副文については、当時ほとんど論議さ
れることなく、採択のワクから除外され、
以後の扱いは宣言の具現化とともに協会
に委員会を設置して検討することを理事
長に託して終っている。(略)やがて忘れ
られた存在となり、今日、一片の資料と
して残っているだけである。(略)副文が、
「宣言」の内容を正しく把握するためには
切り離せない重要な文書であり、利用者
の読書記録の公開拒否(利用者のプライ
バシー擁護)のように主文だけでは明快
ではない事項も含まれている。(『雑誌』、
1976年6月、p.262)
よって、1976 年 9 月号において、まず
案文を提出するのではなく、委員会によっ
て検討を要する箇所や論議の余地のある部
分を指摘することで、
かつての中立性論議のように館界の広
範な論議を喚起したい、そしてその上で
近い将来に新しい副文をつくりだし、そ
れを含めたものとして「宣言」を再確認で
きればと考えている。(Ibid.)
と、かつての「自由論壇」のように、幅広い
029ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
論争が巻き起こることを委員会側が期待し
ていたようである。
結論から言うと、1979年改訂は採択に
至るまでに以下の変遷をたどっている。
(1) 検討箇所の指摘(『雑誌』、1976年6月)
(2) 副文案(『雑誌』、1977年9月)
(3) 副文第二草案(『雑誌』、1977年12月)
(4) 副文第2章案(sic)をもとに、検討さ
れた意見の総括(『雑誌』、1978年6月)
(5) 改訂第一次案(『雑誌』、1978年8月)
※ここで「主文」にも手を付けるという発言
が見られる
(6) 1979年改訂案(『雑誌』、1979年2月)
(7) 1979年改訂(『雑誌』、1979年8月)
以上を順番に見ていく。9 月号では、
1954年の有山案の加筆修正点および議論
の焦点を取り上げている。ここでは「図書
館の自由に関する調査委員会」が有山案を
非常に高く評価していることがわかる。以
下が委員会による前置きである。
1974年秋、懸案の委員会がついに成
立したことにより、これまた久しい懸案
であった解説文の作成もここにようやく
可能となったのである。(略)ところで
1954年副文案は、これに先立つ“中立性
論争”を経て館界の合意となりつつあっ
た問題状況への認識と決意をふまえた立
派な文章で、今日でも十分読むにたえる
生命をもっている。(『雑誌』、1976年9月、
p374-376)
もちろん、さきほど見てきたように、「館
界の合意となりつつあった」かどうかにつ
いては、文面通り受け止めることには疑問
の余地があるが、いずれにせよ当時の「委
員会」は自由宣言を実質化しようとしたこ
とが見てとれる。そのために委員会は開か
れた討議を仕掛けたことがわかる。
委員会の指摘箇所は多岐にわたるので、
ここでは前節にならい、「利用者の秘密」に
関連する部分に絞って取り上げる。
まず、1954年の有山案を再度紹介する。
3 図書館はすべての不当な検閲に反対
する。
(一)〜(三) (筆者注. 略)
(四)更に図書館の一般的利用状況につい
ては別であるが、利用者個人の読書傾向
など個人的自由を侵すような調査の要
求は、法律上正当な手続きによる場合
の外は拒否する。(『雜誌』、1954年7月、
p.220-221)
この箇所に対し、「図書館の自由に関す
る調査委員会」は以下のように訂正案を出
している。まず、「不当な検閲」ということ
は検閲の不当性を強調する意図であろうが、
不当な検閲と妥当な検閲があるようにとれ
て紛らわしいので改定する必要があるとい
う。また、(四)については、以下のように
訂正案を提出している。
(四)について。
(1)「更に図書館の一般的利用状況に
ついては別であるが」を削除。
(2)「法律上正当な手続き」については、
その具体的内容をあげるようにする。
030 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
(3) 利用者名の調査、複写申込用紙
の調査の例を加える。(『雑誌』、
1976年9月、p374-376)
これらをきっかけに、さまざまに討論が
なされたが、以下に文言の変遷を見てみよ
う。なお、文言についての意見表明につい
ては、『みんなの図書館』や、大学紀要等で
行われることも多かったが、逐一引用する
のは非常に煩瑣となるので文言の変遷のみ
に絞ってここでは紹介する。
[副文案]
3 図書館はすべての不当な検閲に反対
する。
(二)図書館は、利用者のプライバシーを
守る責任を追う。図書館利用者の利用事
実は、職務上知り得た秘密であって、公
務員の場合には守秘義務が課せられてお
り、公務員の身分を持たない図書館活動
従事者にも当然道義的責任が課せられる。
したがって、刑事訴訟法第107条による
正式の捜査令状が発せられたことを正式
に確認した場合を除いては、利用者の利
用事実を明らかにしてはならない。
図書館における利用者のプライバシー擁
護は、利用者の図書館への信頼を確立し、
国民的支持を得る機縁になることを銘記
すべきである。(『雑誌』、1977年、9月)
[副文第二草案]
3 図書館はすべての不当な検閲に反対
する。
(二)図書館は、利用者のプライバシーを
守る責任を負う。図書館利用者の利用事
実は、職務上知ることのできた秘密で
あって、何人もそれを漏らしてはならな
い。公務員の場合には守秘義務が課せら
れており、また、公務員以外の図書館活
動従事者にも当然道義的責任が課せられ
る。
したがって、刑事訴訟法第107条による
正式の捜索状が発せられたことを正式に
確認した場合を除いては、利用者の利用
事実を明らかにしてはならない。
図書館における利用者のプライバシー擁
護は、利用者の図書館への信頼を確立し、
国民的支持を得るための必須の条件であ
る。(『雑誌』、1977年12月)
[副文第二章案(sic)をもとに、検討された
意見の総括]
3 図書館はすべての不当な検閲に反対
する。
(二)図書館は、利用者のプライバシーを
守る責任を負う。図書館利用者の利用事
実は、職務上知ることのできた秘密で
あって、何人もそれを漏らしてはならな
い。公務員の場合には守秘義務が課せら
れており、また、公務員以外の図書館活
動従事者にも当然道義的責任が課せられ
る。
したがって、刑事訴訟法第107条による
正式の捜索状が発せられたことを正式に
確認した場合を除いては、利用者の利用
事実を明らかにしてはならない。
図書館における利用者のプライバシー擁
護は、利用者の図書館への信頼を確立し、
国民的支持を得るための必須の条件であ
る。
031ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
● 刑事訴訟法第107条による正式の捜索
状といっているが、憲法の条項を示し、
さらに図書館員が判断すべきだと思う。
● 旧副文にくらべ原則性がうすい。ハ
ウ・トゥ的になりすぎている。例えば、
検閲がなぜ悪いかということをこの項
で書くべきである。
●「公務員の場合は守秘義務が…」という
ことを特にいう必要はないのではない
か。この三行削除してはどうか。(『雑
誌』、1978年6月)
(筆者注. ●は案に寄せられた意見。なお、
副文第二章案(sic)は、副文第二草案の
誤植であろう)
[改訂第一次案]
3 図書館は利用者の秘密を守る。
1 読者が何を望んでいるかは、その人
のプライバシーに属することであっ
て、図書館は、利用者の読書事実を
外部に漏らしてはならない。ただし、
刑事訴訟法第 106 条、第 107 条にも
とづく捜索状を確認した場合は例外
とする。
2 読書記録以外の図書館の利用事実に
関しても、利用者のプライババシー
(sic)を犯してはならない。
3 図書館に関係するすべての人々が守
らなければならない。それによって、
図書館利用者の図書館への信頼が培
われる。(『雑誌』1978年8月)
[1979改定案]
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
1 読者が何を読むかはその人のプライ
バシーに属することであり、図書館
は、利用者の読書事実を外部に漏ら
さない。ただし、憲法第35条にもと
づく令状を確認した場合は例外とす
る。
2 図書館は、読書記録以外の図書館の
利用事実に関しても、利用者のプラ
イバシーを侵さない。
3 これらは、図書館が業務上知り得た
秘密であって、図書館活動に従事
するすべての人びとは、この秘密
を守らなければならない。(『雑誌』、
1979年、2月)
以上のように、文案がさまざまに変更さ
れていることがわかる。なお、これ以上文
言の変遷をたどることは煩瑣になるので、
この程度の紹介にとどめる。そこで、実際
に採択された1954年版と1979年改訂版(主
文)の差分をとると、Tab.4(p.035)のよう
になる。
以下では「図書館の自由に関する宣言
1979年改訂」における副文を示す。
図書館は、基本的人権のひとつとして
知る自由をもつ国民に、資料と施設を提
供することをもっとも重要な任務とする。
(1 〜 5 筆者により省略)
6 ここに掲げる「図書館の自由」に関す
る原則は、国民の知る自由を保証するた
めであって、すべての図書館に基本的に
妥当するものである。
3. 利用者の秘密を守る
1 読者が何を読むかはその人のプライ
032 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
バシーに属することであり、図書館
は、利用者の読書事実を外部に漏ら
さない。ただし、憲法第35条にもと
づく令状を確認した場合は例外とす
る。
2 図書館は、読書記録以外の図書館の
利用事実に関しても、利用者のプラ
イバシーを侵さない。
3 利用者の読書事実、利用事実は、図
書館が業務上知り得た秘密であって、
図書館活動に従事するすべての人び
とは、この秘密を守らなければなら
ない。
差分から、1979 年改訂によって「利用
者の秘密を守る」の文言が挿入されたこと、
文章中の主語が「図書館人」から「図書館」に
変更されたこと、「不当な検閲」から「すべ
ての検閲」への文言の変更が盛り込まれて
いることがわかる。
また、本宣言は「すべての図書館につい
て基本的に妥当するものである」との文言
がある。この「基本的に妥当する」という但
し書きについては、塩見によると当時の学
校図書館の特殊性、すなわち教育指導の必
要上、記名式貸出記録とその保存が重要で
あったからだという★32
。
また、1954 年には棄却された副文の
なかに含まれていた「利用者の秘密」が、
1979年改訂において、結果として主文の
項目として取り上げられることとなった。
この点について、委員会は以下にように述
べている。
委員会は、54年に採択された宣言の
主文には手をふれないという方針で、こ
れまでの作業をすすめてまいりました。
しかし、採択を一年延期することにしま
したので、この機会に、宣言の主文にも
最小限手を加えることにしました。(『雑
誌』、1978年、8月、p.403)
なお、「捜査令状」についての文言が、当
初の副文では刑事訴訟法が対象とされてい
たが、それを憲法へと変化している点につ
いて指摘しておきたい。
以上をまとめる。「利用者の秘密を守る」
の文言については、図書館憲章ではそもそ
も存在しなかった。「自由宣言」の採択時に
棄却された副文案「3-4 更に図書館の一般
的利用状況については別であるが、利用者
個人の読書傾向など個人的自由を侵すよう
な調査の要求は、法律上正当な手続きによ
る場合の外は拒否する。」が、1979年改訂
では「主文」としてあらたに立ち現れてくる。
また、このなかでは、1954年における支
配的な文脈であった、官憲による検閲への
政治的抵抗が、直接的に文言のなかに表記
されることはなくなっている。その一方で、
警察の捜査において、図書館の利用履歴が
用いられることに対する忌避感や、他人に
自分の秘密を見られたくないという現代の
プライバシー観に近づいてきていることが
わかる。
3.3 1979年改訂解説文をめぐって
ここからは、『図書館の自由に関する宣
言 1979 改訂』(1979 年刊、以下『1979 改
訂』)、『「図書館の自由に関する宣言1979
年改訂」解説』(1987年刊、以下『改訂解説
初版』)および『「図書館の自由に関する宣言
033ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
1979年改訂」解説 第2版』(2004年刊、以
下『改訂解説第2版』)の図書の3冊を対象
とし、検討を加える。
1979 年に改定された「図書館の自由に
関する宣言」の現行の自由宣言そのものと、
『図書館の自由に関する宣言1979年改訂』
という図書の二種類がありわかりにくいが、
『 』で表記しているほうが、自由宣言の解
説図書である。
これらの解説図書が執筆されたきっかけ
に、1979年の自由宣言の改訂の際に行わ
れた議論がある。森によると、改訂作業の
なかで寄せられた意見のうち、対立する意
見もあり、一方を選択すれば一方を捨てざ
るを得ない、あるいは折衷的な立場を取ら
ざるを得ない等があったという。この刊行
過程について、森は
審議の過程においていずれ宣言の解説
をつくるという委員会の意向を表明して
きた。ただ、詳しい逐条解説をつくると
なると、おそらく2,3年はかかるであ
ろう。そこで、とりあえず最小限にし
ぼって簡単な解説をつくることにした。
石塚(英二)、酒井(忠志)、塩見(昇)、森
(耕一)の四名が分担して草稿を書き、共
同討議によってまとめた(『1979 改訂』
p.45)。 ※筆者注、カッコ書きの名は筆
者が補った。
と記しており、『1979改訂』は副文の細
かな解説を行う意図があったことがわかる。
そこで「調査委員会」は自由宣言の解説冊子
である『図書館の自由に関する宣言 1979改
訂』を刊行している。その後、この解説冊
子は社会の時流や、図書館が直面したその
ときどきの問題に呼応する形で、『改訂解
説初版』、『改訂解説第2版』といった形で
自由宣言 1954採択版 自由宣言 1979年改訂
基本的人権の一つとして、「知る自由」をもつ民衆に、
資料と施設を提供することは、図書館のもっとも重要
な任務である。
 図書館はこのような任務を果すため、我々図書館人
は次のことを確認し実践する。
1. 図書館は資料収集の自由を有する
2. 図書館は資料提供の自由を有する
3. 図書館はすべての不当な検閲に反対する
図書館の自由が侵される時、我々は団結してあくまで
自由を守る。
(177文字)
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ
国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な
任務とする。
 この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し
実践する。
1. 図書館は資料収集の自由を有する
2. 図書館は資料提供の自由を有する
3. 図書館は利用者の秘密を守る
4. 図書館はすべての検閲に反対する
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、
あくまで自由を守る。
(182文字)
Tab.4 自由宣言1954年版と1979年版の差分
※差分取得はdifff《デュフフ》による
034 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
版が改められている。
すなわち、これら『1979改訂』『改訂解
説初版』、『改訂解説第2版』は、1979年に
採択された「自由宣言」を、それぞれの時代
時代に応じて解説したものだと捉えること
ができる。つまり、「自由宣言」の文言の変
更は行わないものの、これらの解説文に
よって自由宣言を弾力的に運用しようとし
た試みとしてとらえることができるだろう。
以下では、この3冊の解説文を手がかり
にしながら、「利用者の秘密を守る」をどの
ように解釈するか、どのように扱われてき
たかをたどる。
3.3.1「外部」の文言の変遷
本節では、「利用者の秘密を守る」の副文、
「図書館は、利用者の読書事実を外部に漏
らさない」を取り上げる。とくにここでは
「外部」の範囲の定義とその変遷を対象とす
る。これを取り上げる理由は、どこまでな
らば図書館の内部であって情報を共有して
もかまわないのか、どこからが図書館の外
部であり、「利用者の秘密を守」らなければ
ならないかの線引きとなるからである。
そもそも図書館の「外部」とは何だろうか。
図書館の内部で貸出記録等を処理すること
ができれば、プライバシー等の問題は発生
しにくい(と、図書館界の人々は考えてい
ると忖度される)。しかし、図書館は当然、
さまざまな部署と関係を持つ。このなかで、
利用者のデータをどこであれば出しても構
わず、どこであったらまずいのか、という
点は議論の対象となる。
たとえば、地方自治体においては、教育
委員会が図書館を管轄することが多い。そ
うなると、教育委員会から図書館の利用状
況を調査するために利用者「個々人」のデー
タを出すこと、という指示があった場合は
どうするのか、がこの話題の範疇となる。
公共図書館と比べ、更にもう少し込み
入った状況になるものに、学校図書館があ
げられる。というのも、教育の場である学
校図書館については、生徒の読書履歴、す
なわち「利用者の秘密を守る」文言と、生徒
指導上の必要性のコンフリクトが容易に発
生するためである。まず、児童生徒の読書
事実も実際に利用者の秘密であるから、図
書館は守るべきであるという考え方があり
える。この考え方は自由宣言を尊重しよう
とする人々に好まれている。一方、児童生
徒の読書事実は、学校で行われる教育活動
の一環である、さらに言えば教育はどうし
てもパターナリズムを許容せざるを得ない
という考え方も成立しうる。
この点の衝突については沖縄国際大学の
山口真也が研究を行っている。なお、山口
は学校図書館における貸出履歴について、
秘密を守るために情報を破棄することを薦
めている論者として知られている。
以下では、解説文3冊が、それぞれ「外
部」をどのように記述しているか、文言の
変遷についてまとめる。
Tab.5の表からわかるように、「外部」に
関して、教育委員会が具体例として取り上
げられており、なおかつ「利用者個々の利
用事実・読書事実」を出すことに対する拒
否が記されている。この点については、ど
の版でも同様の言及である。
では、大学図書館ではどうであろうか。
「外部」における文言について、『1979改訂』
035ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
では大学図書館が含まれていたが、『改訂
解説初版』では外されていることがわかる。
なお、なぜこのような経緯をたどったの
かについて、自由委員会の委員経験のある
知り合いに尋ねた。さらにその方から、他
の委員に尋ねていただいたが、経緯につい
てはわからないということであった(お手
数をおかけした某氏には、この場を借りて
厚く御礼申し上げる)。
以上をまとめる。
自由宣言の解説文書となる3冊の図書、
『図書館の自由に関する宣言 1979 改訂』、
『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」
解説』、『「図書館の自由に関する宣言1979
年改訂」解説 第2版』には、いずれも「どの
範囲が図書館の外部なのか」という項目が
『1979改訂』 『改訂解説初版』 『改訂解説第2版』
外部とは
 読書事実および利用事実を漏
らしてはならない「外部」とは何を
指すか。
 独立した教育機関としての公立
図書館であれば、その組織体と
しての図書館以外は、すべて外
部と規定することが容易であろう。
したがって上部機関としての教育
委員会等も、その行政権限は利
用者個々の読書事実の報告にま
では及ばないし、そうした報告を
求めるべきではないという良識を
前提として、外部に含めて問題は
ない。
 学校・大学図書館においては、
もっと問題が複雑である。学校・
大学図書館は、それを設置して
いる学校の一部局であり、独立
した教育機関とはみなしがたい。
したがって、学校外の機関や個
人に対してはその自主性を主張
できるが、同じ学校内の教員に
対してはどうなるか。(略)
外部とは
 読書事実および利用事実を漏
らしてはならない「外部」とはどの
範囲を指すか。
 独立した教育機関としての公立
図書館であれば、その組織体と
しての図書館以外はすべて外部
とみなすことが容易である。従っ
て上部機関である教育委員会等
も、その行政権限は利用者個々
の読書事実、利用事実の報告に
までは及ばないし、そうした報告
を求めるべきではないという良識
を前提として、外部に含めること
ができる。
 学校図書館の場合はもっと問
題が複雑である。学校図書館は
それを設置している学校の一部
局であり、独立した教育機関とは
みなしがたい。従って学校外の
機関や団体・個人に対してはそ
の自主性を主張できるとしても、
その学校内の校長や教頭・教員
に対してはどうなるか。(略)
外部とは
 読書事実および利用事実を漏
らしてはならない「外部」とはどの
範囲を指すか。
 独立した教育機関としての公立
図書館であれば、その組織体と
しての図書館以外はすべて外部
とみなすことが容易である。従っ
て上部機関である教育委員会等
も、その行政権限は利用者個々
の読書事実、利用事実の報告に
までは及ばないし、そうした報告
を求めるべきではないという良識
を前提として、外部に含めること
ができる。
 学校図書館の場合はもっと問
題が複雑である。学校図書館は
それを設置している学校の一部
局であり、独立した教育機関とは
みなしがたい。従って学校外の
機関や団体・個人に対してはそ
の自主性を主張できるとしても、
その学校内の校長や教頭・教員
に対してはどうなるか。(略)
Tab.5 自由宣言の解説文における「外部」の取り扱いの変遷
※ハイライト部分は『1979改訂』および『改訂解説初版』の差分
036 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
たてられている。ただし、その内容には微
妙な差異があり、最初の説明においては大
学図書館が取り上げられていたが、次の解
説では対象からは外れていた。また、自由
委員会は、個々人のデータを対象として、
それらを保護するべきであるということを
記している。
3.4「貸出記録の保護」をめぐって
1979年改訂において、「図書館は利用者
の秘密を守る」が提出された。また、1970
年代は貸出業務の機械化が行われていた。
すなわち紙で処理していた貸出業務を、コ
ンピュータを用いて処理することになった。
この点で、図書館界で広く議論されたも
のは、貸出業務の記録をとることは、資料
管理の一環であって、利用者の管理のため
ではないことであった。
そのなかで提案されたものが、貸出記録
を消去することによってプライバシー保護
を行おうという発想である。図書館の中立
性論争のなかでも扱われた、きわめて初期
の発想と共通するものである。
これについて、1984年日本図書館協会の
総会議決で、「貸出業務へのコンピュータ
導入に伴う個人情報の保護に関する基準」
が採択されるに至る。これを見ていこう。
一 貸出しに関する記録は、資料を管理
するためのものであり、利用者を管
理するためのものではないことを前
提にし、個人情報が外部に漏れるこ
とのないコンピュータ・システムを
構成しなければならない。
二 データの処理は、図書館内部で行う
ことが望ましい。
三 貸出記録のファイルと登録者のファ
イルの連結は、資料管理上必要な場
合のみとする。
四 貸出記録は、資料が返却されたらで
きるだけすみやかに消去しなければ
ならない。
五 登録者の番号は、図書館で独自に与
えるべきである。住民基本台帳等の
番号を利用することはしない。
六 登録者に関するデータは、必要最小
限に限るものとし、その内容および
それを利用する範囲は、利用者に十
分周知しなければならない。
  利用者の求めがあれば、当人に関す
る記録を開示しなければならない。
 
二から、「外部」を重点的に議論している
こと、四で、貸出記録をそもそも消去して
しまえばよいという考え方がみられる。
また、これに関する図書館の自由に関す
る調査委員会の見解を見ていこう。「「貸出
業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報
の保護に関する基準」についての委員会の
見解」によると、「貸出記録の処理は図書館
の責任において館内で行うことを原則とし、
これを可能にする方式を追求すべき」と記
されており、また、図書館の利用者コード
を図書館が独自に与えたものを採用するこ
とを推奨している。貸出記録を資料管理の
目的以外には使用せず、また貸出記録の
ファイルを他の個人別データ・ファイルと
連結利用することを不可能として、利用者
のプライバシーを保護しようという趣旨で
あった。
037ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
コンピュータの利用の目的は資料管理で
あり、利用者の管理ではない、という発想
の根底として、ここでも日野市立図書館が
プレイヤーとして登場する。『みんなの図
書館』1980年6月号には、生駒さよによ
る「「図書館の自由に関する宣言」にかかわ
る事例」という年表がある。そのなかで「利
用者の秘密を守る」に関しては、年表の最
初に東村山市立図書館設置条例が取り上げ
られ、その次に日野市立図書館が登場する。
生駒はこの件を以下のようにまとめている。
日野市立図書館のコンピューター導入の原
則
(1) 図書館のシステムは「住民管理」では
なく「資料管理」である。
(2) システム全体を図書館の責任で管理
し、「人」に関するデーターは将来共、
民間委託処理などの形で図書館以外
には出さない。
(3) 将来、国レベルあるいは市レベルで
統一コードが採用される場合でも、
図書館ではそのコードを用いない★33
。
以上のように、図書館のコンピュータ化
に伴う際に、図書館独自で利用者コードを
付与するといったことが試みられてきたこ
とがわかる。
ただし、図書館独自の利用者コードに
ついて、1987 年刊の『改訂解説初版』と、
2004年の『改訂解説第2版』では言及が異
なっている。
『改訂解説初版』では、「京都大学附属図
書館や同志社大学ラーネッド記念図書館な
どで学籍番号とは別に利用者コードを付
与している事例などに学び、この基準に
そった方式の採用を期待している(p.30)」
と、京大・同志社において図書館が独自で
IDを発行していることを高く評価している。
しかし、後の『改訂解説第2版』ではその言
及はなぜか消滅してしまう。
なお、どのような経緯をたどって、それ
らの文言が変更になったかを確かめるの
は、記録が公表されていないこともあり困
難が伴う。そこで実際の図書館の状況のみ
記すが、当時の図書館報によると、同志社
大学の場合は、1995年3月までは「学術情
報センター利用カード」という名称で学籍
番号とは別の利用者コードを付与していた。
『同志社大学学術情報センター報』には「従
来発行の「学術情報センター利用カード」は
1996 年 4 月以降すべて失効し、使用でき
ません」との記載がある。この時期、利用
証の「学生証等」への切り替えが行われてい
る。京都大学もほぼ同時期、同様に、シス
テムのリプレイスによって学籍番号を図書
館の利用者コードと統合したと推測される
★34
。独自番号の発行について、当時、京
都大学附属図書館長である長尾真は、利用
者は学生証以外に複数のカードを運用しな
ければならないことに直面していると図書
館報に記している★35
。
このように、貸出業務のコンピュータ化
は当初、資料の貸出管理のためという名目
で、他の利用者コードは他のIDと結び付
けないような設計を行っていた。しかし、
1990年代に入ると(少なくとも大学図書館
では)、運用の煩瑣さや、システムリプレ
イス等によって、利用者コードと学籍番号
は統合に向かっていったと推測される。
038 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
4. 議論とまとめ
以上、「図書館は利用者の秘密を守る」の
文言をめぐって、その成立過程や変遷につ
いて取り上げた。この変遷をまとめたのが
Tab.6である。
ここでは利用者の秘密を「なぜ守らなけ
ればならないか」という理由が、その時
代時代によって意味するところが変更さ
れていることが指摘しておこう。すなわ
ち、1950年代は、検閲に対抗するために
履歴を消去するという発想があった。これ
が1970年代になると、検閲への抵抗とい
う発想から、警察の犯罪捜査と図書館の利
用履歴の関係および、読書履歴を他人に知
られてほしくないというプライバシー保護
の発想が前景化してくる(また、近年では、
図書館がログをもとに新規サービスを行う
ことは住民の「萎縮効果」をもたらすといっ
た危惧も議論されている)。これらはいず
れも「個々人」のデータを対象としているも
のであった。このように、「なぜ守るか」と
いう理由がその時代によって様々であった
ことに対して、これを図書館界の玉虫色の
オペレーションであるとして捉えることも
できるだろうし、あるいは柔軟な運用で
あったと解釈できるかもしれない。柔軟な
運用を可能としたために、文言の大幅な変
更もなく、1979年から現在まで、40年近
くも改訂せずにいられたとも考えられる。
そう肯定的に捉えられる一方で、近年の図
書館の利用履歴に関して、ポイントカード
の議論をしているなかで何故か検閲につい
ての議論が差し挟まれるなど、議論の軸を
ぶれさせている一因であるともいえるだろ
う。
さて、本稿の目的であった、大学図書館
の持つ各種のデータの活用と、自由宣言に
ついて考えていきたい。
1988年に刊行された『図書館は利用者の
秘密を守る』★36
においては、
図書館雑誌1952年7月 破防法反対の立場の意見表明とそれに対する反論
図書館雑誌1952年8月 「図書館の中立性についての討論」の提示
図書館雑誌1952年11月 「図書館憲章」の制定決議
図書館雑誌1953年10月 「図書館憲章」委員会素案提示
1954年5月26日 「図書館憲章」を「自由宣言」と変更、副文加筆。
1954年5月28日 「自由宣言」、主文のみ採択(利用者の秘密を守る文言は削除)
1974年3月 東村山市立図書館設置条例の制定
図書館雑誌1976年6月 副文を復活させる試み
図書館雑誌1978年8月 主文に「利用者の秘密を守る」文言が入る
図書館雑誌1979年8月 現行の自由宣言の採択
Tab.6 自由宣言の変遷
039ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
大学における利用者の秘密を守るとい
う課題は、残念ながら十分な調査や研究、
事例なども非常に少なく、かぎられてい
るのが実情である。しかし大学の情報
化、開放化、国際化など実際的には加速
を増してすすめられてきている。姑息な
プライバシー保護にこだわる必要はない
が、大学図書館の機能に照らしてその対
応には十分な位置づけと配慮が必要であ
る。(田中・若井: p.38-39)
と触れられており、大学図書館の事例は少
ないことが指摘されている。そこで、公共
図書館や学校図書館の議論も多少踏まえつ
つ、以下考察を行っていきたい。
現在の図書館において、利用者のプライ
バシーを保護することは、当然の考え方で
ある。ただしその在り方には、二つの方向
の考え方があるように思われる。
ひとつ目は「プライバシーを保護するた
めに貸出記録を消去する」という図書館業
界における「伝統的な」考え方である。これ
らを主張するものとして、前述の沖縄国際
大学の山口真也がいる。またログを活用し
た機能を公共図書館が実装した場合、住民
に「萎縮効果」を生むため、それは望ましく
ないと論じる、大阪教育大学の高
たかくわひろき
鍬裕樹の
議論★37
もこの系列に属するといえるかも
しれない。
もう一つは、統計的処理を行ったうえで、
ログを活用していこうという考え方である。
たとえば、同志社大学の原田隆史は、デジ
タル的な犯罪に対する原因を究明し、法的
な解決を行うための具体的な技術や手段で
あるフォレンジックの観点からすると、図
書館でログを残すことは当然のことである
と述べている。また、ログを利活用しない
場合においても、当然説明責任が生じると
いう。すなわち、利用するか否かに応じた
コスト・ベネフィットの観点から、ログ利
用は検討するべきあり、検討すらしないと
いうことは、いわば不戦敗であると議論し
ている★38
。
この観点をさらに推し進めた先進的な取
り組みとして、千葉大学のアカデミック・
リンク・センターの事例がある。千葉大学
は我が国のなかでもっとも成功したラーニ
ング・コモンズを持つ大学であると称され
るが、ラーニング・コモンズだけでなく、
図書館内部でさまざまな実験や統計的処理
を行い、それを積極的に発表していること
が挙げられる。たとえば、アンケートや
フォーカスグループインタビューといった
利用者への直接的な調査のほかに、フォト
ボイス調査、RFID 書架のログ、ブックト
ラック返本記録、その他、ビーコンを用い
た利用者の動線分析といった研究を行って
いる★39
。また、冒頭でも述べたが、個人
の情報に暗号化を施し、図書貸出記録や成
績情報等と連動分析を行う「情報利用行動
定点観測」を行っている。これらのように、
千葉大学はデータをもとに図書館の活用を
示しており、図書館関係のみならず、高等
教育関係のなかでも大きなプレゼンスを示
している。
千葉大学のさまざまな実績の裏には、ア
カデミック・リンク・センター(図書館等
を担当する部署)が統計や情報工学の専門
家を雇用しているということと無関係では
ないと思われる★40
。また、自由宣言に抵
040 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
触せずとも、データを利活用した取り組み
の実践ができることの現れでもある。つま
り、利用者「個々人」の読書事実は守り、分
析することで、新しい知見を生み出してい
ると言える。これは米国の大学図書館が自
らの説明責任を果たすために、利用者の
データを暗号化・保護したうえで自館の活
用状況を説明していることと類似的である。
自由宣言の成立後の運用において「なぜ」
利用者の秘密を守らなければならないかと
いう「なぜ」は、常に代入可能な存在であっ
たことを本稿では再度指摘しておく。とい
うのも、そこには官憲の検閲に対する抵抗、
他者へ読書の事実を知られたくないという
思想、そして近年では萎縮効果といったさ
まざまな概念が時代とともに代入されてき
たからである。もちろん読書は思想信条の
自由に直結する回路を持ちうるものである
以上、「個々人」の読者の秘密を守り、かつ
利用者らの違和あるいは嫌悪感を誘発しな
いようにすることは必要不可欠な作業であ
ることは言を俟たないだろう★41
。
ここで自由委員会の前川敦子の議論を紹
介しておきたい★42
。前川は2009年の時点
で、以下のように述べている。
新たな側面をふまえつつ「利用者の秘
密を守る」ことは重要であり、拙速な変
化は禁物だ。一方で従来とは異なるプラ
イバシーの扱いを理由に、新たなサービ
スを消極的に傍観することがあるなら、
利用者の不利益を生み、図書館自体の衰
退、ひいては図書館が保障すべき知的自
由の衰退を招くのではないか。
本稿も前川の問題意識と多く共通する。
同じように、公共図書館についてであるが、
渡邊の議論も紹介する。渡邊は、図書館関
係者による「利用情報不保持」の負の側面に
気づいていることを示す文献が見当たらな
いことから、図書館関係者は、社会的評価
を高める施策は犠牲にされ、むしろ図書館
員の社会的評価が低下する施策を意図しな
いままに採ってきたと指摘している★8
。
これらと問題意識を同じくする立場から、
本稿では「利用者の秘密を守る」という図書
館界における常識は、そもそもどのように
我が国において成立してきたかという経緯
をたどった。また同時に、「利用者の秘密」
を守りつつ、説明責任のために大学図書館
が自らの持つデータを利活用する海外の事
例はいくつも認めることができ、国内でも
同様のケースが存在することを指摘した。
これらを通じて、本稿では利用者の秘密に
ついての成立過程とその運用の経緯から考
えると、大学図書館におけるログの利活用
は、自由宣言からは全面的に禁止されるも
のではないことを示したつもりである★43
。
最後に、本稿の限界及び今後の課題につ
いて述べる。
本稿では、記述的には「自由宣言」は大学
図書館の記録の活用に対する反論の理路足
り得ないというところまでは議論したもの
の、規範的に「反論の理路足り得ないから、
読書履歴の活用を積極的にやるべきだ」は
導出してはいない。記述から規範を導出す
る誤謬は図書館業界においてしばしば見ら
れるため、念のため付言しておく。同じよ
うに貸出履歴を利活用しうるような言説
は危険であって議論するべきではない、と
041ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
いう意見に対しては、それは滑り坂論法
(slippery slope argument)であると指摘し
ておきたい。
これまで自由宣言に関する議論は非常に
幅広く行われており、文献も多数存在する。
そこで、本稿では『図書館雑誌』や、自由委
員会の手による記事を主として取り上げた。
しかし、それ以外にも多くの議論があるこ
とは間違いない。たとえば、菅原勲が『み
んなの図書館』(1979年8月号)に「事実は
どうであったか−「自由宣言」の検討過程か
ら−」といったタイトルの記事を書いてい
るように、当時の図書館員はさまざまな媒
体で自由宣言について発言している。ほか
にも、当時の関係者からは関連する「裏話」
をしばしば聞くこともある(記録し、公表
していただければ後世の検証に資するのだ
が……)。ただし、本稿では煩瑣になるこ
とをおそれたため、直接引用は手元にある
資料のごく一部にとどまった。また、自由
宣言改訂の翌年である1980年には「図書館
員の倫理綱領」が採択されているが、この
第3. 「図書館員は利用者の秘密を漏らさ
ない」には触れることはできなかった。し
たがって、本稿では自由宣言をとりまく大
きなうねりのうち、一部を取り上げたもの
である★42
。
本稿では大学図書館と大学IRといった
切り口を導入とし、自由宣言の歴史的変遷
をたどった。ただし公共図書館や学校図書
館は、本稿では範疇外とした。たとえば指
定管理の公共図書館において、貸出に応じ
てポイントを発行するといった新たな話題
が生じているが、これらのタイムリーな話
題についてはスコープ外とした。同様に法
的な側面、たとえば個人情報保護法の関連
については触れていない。それでも従来な
されてこなかった「利用者の秘密」を縦糸に
絞って時代的変遷を追ったことや、従来ほ
とんど紹介されてこなかった東村山市立図
書館の資料等を紹介したことで本稿には一
定の意義があると考え、これらの新たな話
題等に関しての論考は別稿に譲る。
【謝辞】
本稿の草稿は、もともと文字数の関係
で投稿先が見つからず、筆者のPCのスト
レージに眠っていたものである。長大な原
稿の掲載許可をいただいたARGの岡本真
氏および、ふじたまさえ氏に感謝する。ま
た、本稿の執筆に際し東村山市立図書館の
渋川泰子氏、郡山女子大学図書館の和知剛
氏、筑波大学大学院図書館情報メディア研
究科の逸村裕教授からは多くの手助け、ご
教示を頂いた。この場を借りて厚く御礼申
し上げる。
【註・参考文献】
★1	 h t t p : / / w w w . h e . u - t o k y o . a c . j p / w p - c o n t e n t /
uploads/2014/04/1347631_01.pdf 平成24-25年度文部科学
省大学改革推進委託事業、2014年、『大学におけるIR(イン
スティテューショナル・リサーチ)の現状と在り方に関する調査
研究 報告書』
★2	 Trow, Martin A、天野郁夫、喜多村和之訳、1976年、『高学
歴社会の大学』東京大学出版会
★3	 京都大学FD研究検討委員会、2011年、『京都大学自学自習
等学生の学修生活実態調査報告書』
★4	 武内清、2011年、「大学生の学生文化とキャンパスライフをめ
ぐって」『比治山高等教育研究』no.4. p.77-88.
★5	 http://bonohu.jp/docs/091105DBCLS.pdf 坊農秀雅、2009
年、「統合データベースプロジェクト:オープンで知のめぐりの
良い医薬研究開発を目指して」『統合データベースプロジェク
トシンポジウム』
042 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷
★6	 http://www.slideshare.net/AraiHiromi/hiromi-arai-jsbi-
personalgenome 荒井ひろみ、2014年、「パーソナルゲノム
とプライバシー保護 データマイニング技術」『第3回生命医薬
情報学連合大会』
★7	 たとえば、竹内洋、2003年、『教養主義の没落―変わりゆくエ
リート学生文化』中央公論新社 などがあげられる。
★8	 渡邉斉志、2007 年、「知的自由の陥穽:利用情報保護思想が
公立図書館に及ぼす影響の分析」『Library and information
science』No. 58, p.103-115.
★9	 福井佑介、2015年、『図書館の倫理的価値「知る自由」の歴史
的展開』松籟社
★10	 海老根剛、2015年、「エクセレンスの大学,人文学,都市」『都
市文化研究』vol.17, p.89-96.
★11	 http://blog.goo.ne.jp/toyodang 豊田長康「ある医療系大学
長のつぼやき」
★12	 濱嶋幸司、2005年、「大学生は「生徒」である。それが、なに
か?:1997年・2003年調査データより」『上智大学社会学論
集』vol.29, p.191-208.
★13	 片瀬一男、2006年、「ハビトゥスとしての読書の力--東北学院
大生の図書館利用と学業成績」『東北学院大学教育研究所報
告集』no.6, p.23-54.
★14	 木下祐子、伊藤昭、大島英穂、鳥井真木、2007年、「学生の
「学びの形成」を支援する図書館 ~主体性の確立をめざし
て」『大学行政研究』vol.2, p.31-45.
★15	 浦川邦夫、姉川恭子、2014年、「私立大学等経常費補助金と
大学図書館の学習環境に関する分析」、日本教育工学会発表
資料
★16	 http://current.ndl.go.jp/e1658 小野永貴、2015 年、「千葉
大学アカデミック・リンク・シンポジウム<報告>」『カレント
アウェアネス-E』
★17	 松野渉ほか、2012年、「大学附属図書館における貸出履歴の
分析」、日本図書館情報学会春季研究集会発表資料
★18	 辻慶太ほか、2013 年、「図書館の貸出履歴と書誌情報を用
いた図書推薦システムの有効性」『図書館界』vol.65, no.4,
p.253-267.
★19	 佐浦敬之、辻慶太、2009年、「公共図書館における利用履歴
の活用に関する意識調査」、第57回日本図書館情報学会研究
大会発表資料
★20	 Soria, Krista., Fansen, Jan., Nackerud, Shane. (2013). Library
Use and Undergraduate Student Outcomes: New Evidence
for Students' Retention and Academic Success. portal:
Libraries & the Academy. vol.13, Issue 2, p.147-164.
★21	 Wong, S. R., & Cmor, D. (2011). Measuring Association
between Library Instruction and Graduation GPA. College &
Research Libraries, vol.72, no.5, p464-473.
★22	 Scott, M. (2014). Interlibrary Loan Article Use and User GPA:
Findings and Implications for Library Services. Journal Of
Access Services, vol.11, no.4, p.229-238.
★23	 Hayman, R. (2015). Students and Libraries May Benefit from
Late Night Hours. Evidence Based Library & Information
Practice, vol.10, no.1. p.85-88.
★24	 日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会編、2004年、
『図書館の自由に関する成立 図書館の自由・1《復刻》』日
本図書館協会
★25	 http://www.nal-lib.jp/events/reikai/2005/sp-report.html  日
本図書館研究会2005年度特別研究例会報告
★26	 なお、韮塚は後年、当時の制定過程についての講演を行っ
ているが、副文の成立過程についての言及は行っていない。
「「図書館の自由」宣言成立のころ―そのルーツを探る―」、『み
んなの図書館』、1978年8月号、p.23-36. を参照。
★27	 当時「K生」のペンネームで『図書館雜誌』において積極的に活
動していた草野正名は、後年これらを回顧している。草野正
名、1987年、「「図書館の自由に関する宣言」採択の頃 一埼
玉県立図書館を中心にしての考察 」『国士館大学文学部人文
学会紀要』no.19,p.147-151. を参照。
★28	 有川浩、東條文規、手嶋孝典、2007 年、「インタビュー 有
川浩(作家)「自由宣言」は勇ましい!」『ず・ぼん』ポット出版.
p.148-175.
★29	 新孝一、2002年、「『図書館の自由宣言』成立と蒲池正夫の動向」
『司書課程年報』no.5. p.25-26.
★30	 http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/bukai/public/shiga.pdf 
塩見昇、2012年、「これからの図書館サービスに求められる
もの~『中小レポート』から半世紀~」『日本図書館協会公共
図書館部会 全国公共図書館研究集会報告書』
★31	 なお、40年後となる2008年のシンポジウムで、練馬テレビ
事件の当事者であった人物が「長い間図書館で働いてきたが、
本人が求めれば記録を渡してもいいと思っている。図書館員
はそういうことに消極的である。図書館員が地域の人たちと
結びついていくためにそうしたことも必要である。」と発話して
いることは注目に値する。(https://www.jla.or.jp/portals/0/
html/jiyu/taikai2008kiroku.pdf 図書館の自由 別冊(2008 年
12月「Web2.0 時代」における図書館の自由 を参照)
★32	 塩見昇、1991年、「子どもの権利条約・プライバシー権の波
をかぶる学校図書館」『現代の図書館』vol.29, no.4, p.209-215.
★33	 生駒さよ、1980年、「「図書館の自由に関する宣言」にかかわ
る事例」『みんなの図書館』6月号, p.12-19.
★34	 http://hdl.handle.net/2433/37463 1997年、「図書館利用証
と学生証の一元化について」『静脩』vol.33, no.2. p.13.
★35	 http://hdl.handle.net/2433/37310 長尾真、1995年、「京都
大学附属図書館の現状」『静脩』vol.32, no.1. p.1-4.
★36	 日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会編、1988年、
『図書館は利用者の秘密を守る』日本図書館協会
★37	 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007819738 2010、「討義「図書館
の自由に関する宣言」改訂から30年 : その今日的展開」『図書
館界』、vol.62, no.2, p.112-126.
★38	 図書館の自由委員会、2014年、『みんなでつくる・ネットワー
ク時代の図書館の自由:連続セミナー 2013記録集』
★39	 http://www.slideshare.net/milkyalab/code4lib-japan2015-
ono-haruki 小野永貴「iBeaconを用いた 大学図書館の利用
者行動調査 ― 千葉大学附属図書館での実証実験 ―」
★40	 たとえばアカデミック・リンク・センター評価委員会報告書な
ど を 参 照。 http://alc.chiba-u.jp/assessment_committee.
html
★41 なお(営利企業によるポイント付与ではない)大学図書館におけ
るポイント付与の試みは、白百合女子大学の「LiLiCa」や香川
大学の「ぷらっと図書館ボランティア」等など様々に行われてい
る。指定管理の図書館におけるポイントカードの問題につい
てはハフィントンポストの「【TSUTAYA図書館】CCCが「Pマー
ク」を返納、利用者の個人情報はどうなる?」が参考になる。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/11/p-mark_
n_9215856.html
★42	 https://www.jla.or.jp/portals/0/html/jiyu/column04.
html#200909 前川敦子、「Web2.0時代における図書館の自
由・その後」
★43	 もちろん、統計的処理を行ったからといっても個人を特定し得
るではないかという反論がよくなされるが、この点については
個人特定化防止のための統計的処理方法が知られている。ま
た貸出履歴と個人情報については、鈴木正朝、高木浩光、山
本一郎 、2015年『ニッポンの個人情報 :「個人を特定する情報
が個人情報である」と信じているすべての方へ』翔泳社 などを
参照。
※『図書館雑誌』等、直接引用を行った記事については本文中の当
該箇所において明示したためここでは省略する。
ふじたまさえ
100 4連
発
館
資
料
収
集
の
工
夫
資
料
提
供
の
工
夫
資
料
展
示
の
工
夫
P
R
の
工
夫
環
境
の
改
善
地
域
連
携
の
試
み
044 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
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収
集
の
工
夫
自治体の広報誌と同様に、利用者に見落とされがちな図書館の資料が教科書だ。
ここで紹介するのは、File314(p.057)のような都道府県が設置する教科書セン
ターからの事例ではなく、教科書を資料として自主的に収集している図書館から
の事例である。
教科書センターをはじめ、図書館における教科書の資料としての収集は、一般
的には自治体が行った検定に合格し採用されたものが対象にされるケースがほと
んどだ。そんななか、採用されなかった教科書も図書館資料として受け入れてい
るのが瀬戸内市立牛
うしまどちょう
窓 町公民館図書室である。
採用されなかった教科書の存在を知ることは、選定の際、他にどのような選択
肢があったのかを知る機会ともなる。その選択肢を保存し、全ての人に提供でき
る状態にしておくことは、今後の教育に重要な意味をもつのではないだろうか。
File
301 瀬戸内市牛窓町公民館図書室(岡山県)
選定されなかった教科書も収集
撮影日:2015年1月15日 撮影:岡本真
■瀬戸内市牛窓町公民館図書室
http://lib.city.setouchi.lg.jp/
岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓4910-1
TEL:0869-34-5663
045ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
収
集
の
工
夫
田
た ぶ せ ち ょ う
布施町は、岸信介、佐藤栄作という歴代の総理大臣の出身地である。そこで、
田布施町立田布施図書館では、岸、佐藤両総理大臣に関する資料はもちろんのこ
と、歴代総理が当時読んでいた文献やお宝ともいえる稀
き こ う ぼ ん
覯本も貴重コレクション
として所蔵している。
アメリカであれば、大統領が引退すると大統領図書館がつくられ、時の大統領
がどのような資料を読んでいたのか、私文書や写真なども含めて保存されるしく
みが整っている。一方で日本ではそのようなしくみがないため、資料が散逸して
しまう。同館の充実したコレクションは、そのような懸念を払拭するかのようで
ある。地元の名士だけでなく、日本の貴重な財産として総理大臣資料を扱ってい
くべきではないだろうか。
File
302 田布施町立田布施図書館(山口県)
歴代総理の蔵書を引き継ぐ図書館
撮影日:2015年2月3日 撮影:岡本真
■田布施町立田布施図書館
http://library.town.tabuse.yamaguchi.jp/
山口県田布施町中央南11-1
TEL:0820-52-2288 FAX:0820-52-5308 E-mail:library.tabuse@town.tabuse.yamaguchi.jp
046 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
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収
集
の
工
夫
東日本大震災以降、友好都市は単に友好を深めるだけではなく、防災協定や自
治体連携という意味でも重要な位置づけになっている。そんな友好都市の理解を
深めるために、図書館でできることは何だろうか?
友好都市に関する資料を揃えるということは基本ではあるが、資料費削減が求
められていることの多い昨今、難しい面もある。このような状況のなかで、ほぼ
無料で揃えられる生きた資料が各自治体の広報誌である。そこで安
あ ず み の
曇野市中央図
書館では、安曇野市の友好都市である江戸川区・武蔵野市・福岡市の広報誌をそ
れぞれファイリングし、「安曇野市友好都市の広報誌(広報誌名)」という背ラベル
を貼って展示している。新聞コーナーの奥という配置場所も、文脈的に違和感が
ない。
File
303 安曇野市中央図書館(長野県)
友好都市の広報誌を展示
■安曇野市中央図書館
http://www.city.azumino.nagano.jp/tosho/
長野県安曇野市穂高6765-2 穂高交流学習センター「みらい」内
TEL:0263-84-0111 FAX:0263-84-0116
撮影日:2015年4月1日 撮影:岡本真
047ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
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集
の
工
夫
新着図書コーナーを各自治体の広報誌を置く場所に転用している事例は
File320(p.063)で紹介するが、こちらは雑誌用の書架を行政情報コーナーに転
用している事例である。File331(p.074)でも触れている通り、図書館を行政情
報の発信地としてPRすることは、図書館の地位向上にとってもよいことである。
琴浦町図書館では、雑誌用の書架に市役所の各課を割りあて、各課の資料を分
類しながら配置している。また、書架の側面の部分には、町の公式サイトをプリ
ントしたものを新着順に貼りつけている。たったこれだけのことではあるが、こ
の作業を通して図書館職員が市の情報に必ず目を通すことにもなり、自治体の動
向に詳しくなるという効果も期待できる。取り組んで損はないはずだ。
File
304 琴浦町図書館(鳥取県)
雑誌用書架を行政情報コーナーに転用
■琴浦町図書館
http://www.town.kotoura.tottori.jp/lib-manabi/
鳥取県琴浦町徳万266-5 琴浦町生涯学習センターまなびタウンとうはく内
TEL:0858-52-1115 FAX:0858-52-1155 E-mail:lib-manabi@town.kotoura.tottori.jp
撮影日:2015年4月14日 撮影:岡本真
048 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
収
集
の
工
夫
自治体の広報誌を積極的に収集するFile320(p.063)の事例と近いが、無料で
配られているフリーペーパーも図書館資料として収集し、展示している事例を紹
介したい。
射
い み ず
水市新湊図書館の雑誌向け書架では、自治体の広報誌と並んで、フリーペー
パーや関連機関の機関誌も積極的に収集する取り組みがみられた。
フリーペーパーといえど侮るなかれ。たとえば「Voters」(公益財団法人明るい
選挙推進協会発行)などは自治体行政について調べたいときにとても役立つ。ま
た、富山県ならではの「ぴーぽぱーぽ」(富山県警発行)といったご当地でしか手
に入らない機関誌もある。農林水産や建築、金融、防災など、行政職員を意識し
たラインナップになっているようにも感じられたが、「使える」フリーペーパーが
集められていた。
File
305 射水市新湊図書館(富山県)
フリーペーパーの積極的収集
■射水市新湊図書館
http://lib.city.imizu.toyama.jp/
富山県射水市三日曽根3-23 新湊中央文化会館内
TEL:0766-82-8410 FAX:0766-84-6733
撮影日:2015年5月29日 撮影:岡本真
049ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
地域資料は揃えるだけではなく、活用してこそ意味のあるものとなる。関の刀
鍛冶で有名な刃物の町、関市にある関市立図書館には、関市の伝統文化と産業に
関する資料を収集・保存し、市民に伝えるための「せき・わかくさ文庫」があり、
市を代表する地域資料として「刀剣」や「円空」(1632年〜 1695年、美濃国に生ま
れた仏師)などの関連資料を揃えている。
さて、地域資料を活用する以前に忘れてはならないのは、地域資料が揃う環境
にあるということは、地元にその道の職人がいるということである。そこで同館
では「関の職人シリーズ」と題して、図書館協議会会長と地元の職人が対談する
という形式の図書館イベントを企画している。内容は以下の通り、身近な道具で
ある鋏や包丁のことはもちろん、地元産業の動向までもカバーしている。
・第1弾「鋏職人と語る」(2015年4月12日(日)開催)
・第2弾「錺職人と語る」(2015年5月24日(日)開催)
・第3弾「関式小型多目的ポケットナイフの変遷」(2015年6月14日開催)
・第4弾「包丁の選び方」(2015年7月26日(日)開催)
・第5弾「関産品の国内流通の変化」(2015年9月27日(日)開催)
File
306 関市立図書館(岐阜県)
地域資料を生かした職人シリーズ
■関市立図書館
http://ufinity08.jp.fujitsu.com/sekilib/
岐阜県関市若草通2-1 わかくさ・プラザ 学習情報館1階
TEL:0575-24-2529 FAX:0575-23-7780
撮影日:2015年6月6日 撮影:岡本真
050 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
新
しんぐう
宮市立図書館の母子閲覧室には、何冊かまとめて借りる際に便利な「絵本の
おすすめパック」が用意されていた。司書があらかじめ選んだ絵本5冊がまとめ
て袋に入れてあり、ぱっと借りられるようになっているものだ。気軽に借りるこ
とができるということで、初めて図書館を利用するお母さん方に特に好評とのこ
と。
File101(第4号)で紹介した「おすすめ絵本を、セットで貸出」との違いは、対象
となる子どもの年齢別に「たまご」「ひよこ」「あひる」の3種類が用意されている
ことだ。また、袋は半透明になっていて、どんな本が入っているかはぱっと見た
だけではわからないようなワクワク感を演出しつつ、袋の中に入っている本の書
名、著者名、出版社名が書かれたカードを外側のポケットに入れている。絵本を
もっと活用するためにも、年中利用できる気軽なサービスとしても嬉しい。
File
307 新宮市立図書館(和歌山県)
絵本のおすすめパック
撮影日:2015年1月10日 撮影:岡本真
■新宮市立図書館
https://www.city.shingu.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=18990
和歌山県新宮市井の沢4-15
TEL:0735-22-2284
051ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
箕
み の お
面市立中央図書館では、2015年4月に館内の一部をリニューアルし、1階の
中央部分に天井まであるウォール書架を導入した。大人でも手が届かないウォー
ル書架は使い方が難しい面もあるが、同館での使い方はその高さを生かしたもの
といえる。
子ども向けエリアに面した「子育てママサポートコーナー」で、大人も子どもも
一緒に本を選べるように、それぞれの目線の高さに合わせた選書で配架をしてい
るのだ。さらに、大人向けの本のテーマと、こども向けの本のテーマに関連性を
持たせることで、両者ともに楽しめる書棚づくりをしている工夫もみられた。
なお訪問した時点では、最上段には本を置かず、2段目に洋書の絵本を面陳し
てあった。今後、資料が増えるにしたがって最上段をどのように活用していくの
かも注目したい。
File
308 箕面市立中央図書館(大阪府)
大人、子どもの目線に合わせた本棚づくり
■箕面市立中央図書館
http://www.city.minoh.lg.jp/library/
大阪府箕面市箕面5-11-23
TEL:072-722-4580 FAX:072-724-9697
撮影日:2015年4月28日 撮影:岡本真
052 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
コミックを所蔵している図書館の悩みの一つに、巻数がどんどん増えて、複数
のタイトルを並べづらいというものがあるだろう。コミック以外の開架資料のス
ペースを圧迫してしまう懸念もある。そんな悩みを解決する工夫を、白河市立図
書館でみつけたので紹介したい。
白河市立図書館では、「他巻書庫」というラベルをつくって、コミックの第1巻
の背表紙に貼り、2巻以降は書庫に置くという工夫を行っている。2巻以降を利
用したい場合は、カウンターへ申し込むという方式だ。
配架スペースの確保に困りがちな全集や百科事典に対応するための事例、
File151(第4号)やFile222(第9号)と同じ方式ともいえるが、このラベル表記は
それらの事例にも採用できる汎用性の高い優れた取り組みである。
File
309 白河市立図書館(福島県)
他巻書庫の表示
■白河市立図書館
http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=265&ik=1
福島県白河市道場小路96-5
TEL:0248-23-3250 E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
053ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
利用者の手に取られづらい郷土資料を区分して展示する工夫については、
File321(p.064)で紹介したが、もう一つ違う角度から紹介したい。
北上市立中央図書館では、新着本の案内をする掲示板に本の帯を貼りつけ、
ジャンルごとに見出しをつけて紹介しているが、そのなかで「地域資料」の新着図
書についてもジャンルとして取り上げるという工夫をしていた。
利用者の目に触れにくい資料を、新着図書のコーナーで取り上げることで、利
用者の興味を引く機会を増やしている点が素晴らしい。また、本の帯を使って紹
介する場合、帯には記載がない書名と著者名をどのように表記するかについては
いろいろなパターンがあるが、ここでは帯のソデの部分に手書きで追記している
点も、手軽に展示する際に便利な工夫といえる。
File
310 北上市立中央図書館(岩手県)
新着図書の紹介コーナーで「地域資料」を強調
■北上市立中央図書館
http://www.library-kitakami.jp/
岩手県北上市本石町2-5-35
TEL:0197-63-3359 FAX:0197-63-5545
撮影日:2016年1月11日 撮影:岡本真
054 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
地域に関する郷土資料というと、すぐさま「本」が思い出されがちだが、図書館
が集めている資料は本だけではない。地域に関わりのあるCDやDVDも、取り上
げてみてはどうだろうか?
愛媛県の大洲市立図書館のAV(視聴覚)資料コーナーでは、通常の配架とは別
に「大洲関係」と「愛媛関係」というテーマでCDとDVDをまとめていた。同館で
は、AV資料をケースごと貸し出すので、貸出中でもラインナップがわかるように、
一覧表をつくって、請求記号とタイトルとともに作品の説明も追加している点も
素晴らしい。地元にゆかりがある映像作家といった切り口だけではなく、地元が
ロケ地になった映画などもラインナップに入っており、切り口の工夫次第でどこ
の地域でも比較的簡単に資料が集まるはずだ。
File
311 大洲市立図書館(愛媛県)
AV(視聴覚)資料にも地域色を
■大洲市立図書館
https://library.city.ozu.ehime.jp/
愛媛県大洲市東若宮17-5
TEL:0893-59-4111 FAX:0893-59-4123
撮影日:2015年11月24日 撮影:岡本真
055ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
地域に貢献する図書館サービスにおける一つの柱として、ビジネス支援に取り
組む図書館が増えている。なかでも地場産業の支援として、その産業の関連資料
を集めている図書館は多いだろう。しかし、悩ましいのが資料が集まらないケー
スだ。たとえば、愛媛県今治市といえばタオルの町だが、今
いまばり
治市立図書館が地元
産業についての資料を集めたところ、戦後から現代までの資料が少ないという課
題が残ったという。
そこで今治市立図書館では、現代のタオル産業を支える関係者にインタビュー
し、そのオーラルヒストリーを残していく「タオルびと」制作プロジェクトに取り
組んでいる。城西大学の辻智佐子准教授と司書らでつくるこのプロジェクトの成
果は、図書館の公式サイト上にデータを公開しているが、それを館内でもパネル
にして掲示するという、O2O(Online to Offline)のサイクルができている。
司書が自ら地域資料を制作する取り組みは、生半可にはできない。とにかく素
晴らしいのひと言である。
File
312 今治市立中央図書館(愛媛県)
司書が地域資料を制作
■今治市立中央図書館
http://www.library.imabari.ehime.jp/
愛媛県今治市常盤町5-203-2
TEL:0898-32-0695 FAX:0898-24-2613 E-mail:tosyokan@minos.ocn.ne.jp
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真 タオルびと~タオルづくりの技と伝統のなかに息づく日本の
モノづくりの原点~
http://www.library.imabari.ehime.jp/towelbito/
056 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
定期的に受け入れをしている新着図書の案内は館内で頻繁に目につくが、雑誌
については出版業界の不振により休刊のお知らせが目立つせいなのか、新しく購
読を始めても、きちんと紹介している図書館は少ないように感じる。
そんななか、春日市民図書館や静岡県立中央図書館では、新しく購読を始めた
雑誌のタイトルや内容をまとめたものを一覧にして掲示しており、印象に残った。
特に春日市民図書館では、雑誌の表紙をカラーで印刷している点がわかりやす
い。静岡県立中央図書館の掲示では雑誌の概要だけでなく、利用者が身近に感じ
られるような紹介文を掲載し、利用を促している。常に雑誌コーナーを利用しな
い利用者にとっても嬉しい情報である。
File
313 春日市民図書館(福岡県)、静岡県立中央図書館(静岡県)
新しく購読を始めた雑誌のアピール
■春日市民図書館
http://www.library.city.kasuga.fukuoka.jp/hp/
福岡県春日市大谷6-24
TEL:092-584-4646
■静岡県立中央図書館
https://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/
静岡県静岡市駿河区谷田53-1
TEL:054-262-1242(代表) FAX:054-264-4268
春日市民図書館 撮影日:2015年11月14日 
撮影:岡本真
静岡県立中央図書館 撮影日:2015年12月8日 
撮影:岡本真
057ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
File301(p.044)で紹介したように、館内に教科書センターを配置し、教科書
の閲覧だけでなく、蔵書として貸し出す図書館が増えている。
採用された教科書を並べるだけの事例が多いなか、静岡市立中央図書館では、
教科書を採用する検定の際にまとめられた「検定意見書・修正表」も手に取れるよ
うに配架している。文部科学省によれば、全国には図書館や教育委員会などに都
道府県が設置する教科書センターが941ケ所ある(2015年8月現在)とのこと。他
の図書館にある教科書センターではどのような取り組みが行われているかは、今
後も注目していきたいところである。
File
314 静岡市立中央図書館(静岡県)
教科書センターに検定意見書・修正表も
■静岡市立中央図書館
http://www.toshokan.city.shizuoka.jp/
静岡県静岡市葵区大岩本町29-1
TEL:054-247-6711 FAX:054-247-9971 E-mail:chuuoutosho@city.shizuoka.lg.jp
撮影日:2015年11月8日 撮影:岡本真
058 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
提
供
の
工
夫
「読書会」というと、決められた本を各自が事前に読んでおき、感想を語り合う
イメージがあるかもしれないが、太宰府市民図書館で行われている読書会はひと
味違っている。奇数月に不定期開催されている「朝の読書会」は、「ちょっと! こ
の本読んでみて!!」という気軽な雰囲気のサブタイトルがつけられており、毎回、
決められたテーマに添ったおすすめ本を参加者同士で紹介し合い、気軽に語り合
うスタンスで行われている。ちなみに、最近のテーマは「推理小説」、「昨年読んで、
一番面白かった本(出版年はいつのものでも可)」というラインナップである。
おすすめ本はなるべく図書館の蔵書から選ぶというルールが示されているが、
このルールは読書会で紹介された本を「朝の読書会」コーナーで展示するためにあ
る。読書会に参加した人のおすすめした本が、読書会が終わった後も展示される
しかけになっており、参加しなかった人も楽しめるというしくみが上手くつくら
れている。
File
315 太宰府市民図書館(福岡県)
読書会で紹介された本コーナー
■太宰府市民図書館
https://www.library.dazaifu.fukuoka.jp/
福岡県太宰府市観世音寺1-3-1
TEL:092-921-4646 FAX:092-921-4896
撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
059ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
図書館に来た利用者に最初に何をみせるべきか、テーマ展示の内容を考える以
前のこととして考えてみてほしい。
美
み さ き
咲町立中央図書館では、入り口から入ってすぐ左手の書架の上に、美咲町
合併10周年を記念して町内の小中学生が書いた「まちづくり作文集」が展示され
ている。その場所は、県立図書館からの協力貸出本や新着図書のすぐ隣、利用者
の目にとまる場所だ。「まちづくり作文集」は、図書館の蔵書として貸出も行って
いるが、希望すれば分けてもらえるという。このような体制がとれるのも、美
咲町の人口が1万5,000人ほどで、中央図書館としてカバーしている地区の人口
が7,000人弱だという規模が影響していることは確かだが、行政と町民が共につ
くった作品集をPRすることも図書館が担うべき行政サービスの一環といえるだ
ろう。
File
316 美咲町立中央図書館(岡山県)
「まちづくり作文集」を目立つ場所に展示
■美咲町立中央図書館
http://www.cyerry.net/~library/top.htm
岡山県美咲町打穴下448-4
TEL:0868-66-7151 FAX:0868-66-7152
撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
060 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
2015年4月に恩
お ん な そ ん
納村にオープンした恩納村文化情報センターの展示コーナーで、
他にはみられないひと工夫があったので紹介したい。
「Yomuzou(よむぞう)」は恩納村文化情報センターのキャラクターだが、
「Yomuzou Cafe」と名づけられた展示コーナーに並べられたのは、「カフェ」をテー
マに集められた本だ。そして展示コーナーの名前の通り、このコーナー自体が架
空の「カフェ」になるような遊び心のある仕掛けをしている。なんと、本のタイト
ルと請求記号をメニューとして掲載しているのだ。
展示コーナーに本を面出しして並べると、どうしても棚の広さが足りなくなっ
てしまうが、このように掲示物にひと工夫することで、展示の奥深さを表現する
ことができるのだ。
File
317 恩納村文化情報センター(沖縄県)
カフェメニューに見立てたテーマ展示
■恩納村文化情報センター
http://www.onna-culture.jp/
沖縄県恩納村字仲泊1656-8
TEL:098-982-5432 E-mail:onnalib@ovcic.jp
撮影日:2015年7月18日 撮影:岡本真
061ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
最近の展示コーナーでは、テーマを絞らずに「同じ色の本」を集めた「見せる展
示」が流行しつつある。もちろん、同じ色というだけのつながりでさまざまな
ジャンルの本が集まることにより、偶然の出会いを生み出すこともできる。だが、
「同じ色」というつながりだけでは、どうも面白みにかけてしまうと思うのは筆者
だけだろうか。
同じ色で統一感を出しつつ、テーマも合わせた展示をみつけたので参考にして
もらいたい。恩納村文化情報センターは、館内から東シナ海を臨む絶景のなかに
立地するという特徴を活かして、「青」かつ「海」という見せる展示に挑戦し、筆者
の心をわしづかみにした。テーマは「青い海は、美しい。」さりげなく書かれたPR
文も秀逸だ。
「青い本で恩納村の海を表現しました。どうぞゆっくりおくつろぎください」。
テーマを取り上げたストーリーだけでなく、利用者への思いやりあふれるPR
文となっていることにも注目したい。日本一のリゾート地にあることの誇りが感
じられる。
File
318 恩納村文化情報センター(沖縄県)
同じ色&同じテーマの本を展示
■恩納村文化情報センター
http://www.onna-culture.jp/
沖縄県恩納村字仲泊1656-8
TEL:098-982-5432 E-mail:onnalib@ovcic.jp
撮影日:2015年4月23日 撮影:岡本真
062 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
那覇市の南東に位置する南
は え ば る
風原町立図書館では、町に関する地域資料コーナー
を「南風原本」と名づけている。手に取られづらい地域資料だが、ネーミングひと
つで「何だろう? ちょっと見てみようかな」という気にさせるものだ。
また、その案内も工夫がされている。入り口から入ってきた利用者がちょうど
目をとめる場所にある書架の側面に、切り文字を貼りつけて目立たせているのだ。
切り文字の先頭にある切り絵は、伝統工芸「琉球絣(かすり)」の柄によく使われ
るトゥィグワー(沖縄風鳥模様)の燕の形だ。「南風原本」を形どった切り文字自
体にも琉球絣の幾何学模様が描かれており、南風原の伝統工芸をフルに活用した
デザインが素晴らしい。
File
319 南風原町立図書館(沖縄県)
地域資料コーナーのネーミングにひと工夫
■南風原町立図書館
http://www.town.haebaru.lg.jp/docs/2013022800303/
沖縄県南風原町字喜屋武236
TEL:098-889-6400 FAX:098-888-3265
撮影日:2015年5月17日 撮影:岡本真
063ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
佐
さえきちょう
伯町が合併してできた人口1万5,000人ほどの町、和
わ け ち ょ う
気町にある佐伯図書館は、
旧佐伯町時代に建てられた生涯学習施設 学び館「サエスタ」の一室に入っている。
佐伯図書館でみつけたキラリと光る事例は、県内自治体の広報誌を集め、面陳
するコーナーである。入り口からも近く目立つ場所に設けられたそのコーナーは、
本来であれば新刊図書のためのスペースだ。よくみると、自治体の広報誌だけで
なく、博物館や商工会が発行する広報誌もあり、その奥には持ち帰ることができ
るリーフレットも置いてある。
各自治体の「いま」が記されている広報誌は、無料で手に入れることができる生
きた地域資料だ。地域資料はファイルに綴じて奥へと押し込まれがちだが、すぐ
にしまいこんでしまうのはもったいない。二つ穴を開けて綴じ紐でまとめて面陳
するだけでよい。予算削減の影響で空いてしまった雑誌コーナーなどを活用する
際のアイデアとしても、ぜひ参考にしてもらいたい取り組みである。
File
320 和気町立佐伯図書館(岡山県)
県内自治体の広報誌を目立つところに
撮影日:2015年1月14日 撮影:岡本真
■和気町立佐伯図書館
https://library.town.wake.okayama.jp/
岡山県和気町父井原430-1 学び館「サエスタ」2階
TEL:0869-88-9112 FAX:0869-88-9008 E-mail:saekitosho@town.wake.lg.jp
064 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
和歌山県新宮市は三重県との県境に位置し、熊
くまのはやたま
野速玉大社の門前町として栄え
た歴史ある町である。新宮市立図書館は2019年4月の新館開館を目指しその準
備を進めており、現在の姿はあと数年でみられなくなってしまうが、そこでみつ
けたひと工夫を紹介したい。
新宮市立図書館の郷土資料室は2階の一室にあるのだが、そことは別に、利用
者の目につきやすい1階の書架にも「熊野の本あれこれ」という熊野関連コーナー
を設けている。比較的新しい資料を中心にまとめており、書架には郷土資料室が
2階にあることも掲示されている。
郷土資料室を一般の書架とは別につくった場合、ひとけのない空間になってし
まいがちだが、ふだん利用の多い書架に気軽なネーミングをつけた出張郷土資
料コーナーには、興味のない利用者もちょっとみてみようという気にさせる。こ
のような親しみやすさの設計が、資料活用のきっかけにひと役買うこともあるは
ずだ。
File
321 新宮市立図書館(和歌山県)
地域資料コーナーを分散して設置
撮影日:2015年1月10日 撮影:岡本真
■新宮市立図書館
https://www.city.shingu.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=18990
和歌山県新宮市井の沢4-15
TEL:0735-22-2284
065ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
File349(p.092)で紹介しているレシート芯を活用した事例は、掲示物を立た
せるスタンドとしての活用だが、こちらはブックスタンドのストッパーの部品と
して活用されている事例である。
長岡市立寺
てらどまり
泊地域図書館では、通常の書架の空きスペースに新書の本を面陳
しているが、そのブックスタンドにレシート芯を活用している。ブックエンドを
通常使う際の向きから90度回転させて、ブックエンドの底にレシート芯を固定
しストッパーにすることで、本を面出しする際のスタンドにしているのである。
レシート芯の幅は新書の本の幅と同じくらいなので、取り出すときに邪魔にな
りづらい。よくみるとマスキングテープや柄のある折紙などで、レシート芯を
コーティングしているものもある。レシート芯1本でできるので、ぜひ気軽に試
してほしい。
File
322 長岡市立寺泊地域図書館(新潟県)
レシート芯1本でできるブックスタンド
■長岡市立寺泊地域図書館
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市寺泊磯町7411-14 寺泊文化センター2階
TEL:0258-75-5159 FAX:0258-75-3109
撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
066 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
寄贈で受け入れた本は、どのようにPRしているだろうか? 図書館によって
は、寄贈受け入れ本も、資料費で購入した本と一緒に新着図書コーナーに配架し
ているところもあるだろう。
長岡市立寺
てらどまり
泊地域図書館では、新着図書コーナーとは別に新着寄贈資料コー
ナーを設けて、どういった本が最近寄贈されたのかみせている。このようにすれ
ば、寄贈受け入れの対象となる本をアピールすることもできるので、ぜひ通常購
入の資料とは別に配架してみてほしい。
寄贈をした側としても、自分が寄贈した資料がPRされれば嬉しいだろうし、
寄贈という仕組みを使えば、市民ひとり一人が図書館の資料を充実させる手助け
ができるということを知ってもらう絶好の機会にもなるだろう。
File
323 長岡市立寺泊地域図書館(新潟県)
新着の寄贈資料を紹介
■長岡市立寺泊地域図書館
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市寺泊磯町7411番地14 寺泊文化センター2階
TEL:0258-75-5159 FAX:0258-75-3109
撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
067ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
長岡市では、地元の特色ある資料を「特色資料」として、地域図書館ごとに力を
入れて集める取り組みを行っているが、南地域図書館では「特色資料」の一つとし
て「ユニバーサル文庫」を設置している。「ユニバーサル文庫」には、小説の朗読や
落語などを収録したCDやカセットテープなどの耳で聞くオーディオブックだけ
でなく、字幕つきの映画資料なども含まれる。
これらの資料を使うのは障がいを持つ利用者だけではなく、高齢者が利用する
ケースもあることを考えると、これまでの「障がい者サービス」という位置づけで
は不足があると考える。「障がい者」という表現を強調せずに、「誰でも使える(ユ
ニバーサル)」としてPRしている視野の広さに感心した。
File
324 長岡市立南地域図書館(新潟県)
視聴覚資料コーナー、言い換えてみたら?
撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
■長岡市立南地域図書館
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
長岡市曲新町566-7
TEL:0258-30-3501 FAX:0258-30-3505 E-mail:lib.minami@nscs-net.ne.jp
068 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
図書館で廃棄されるものをブックスタンドとして活用している事例は、これま
で、レシート芯やブックケースを材料として使っているものを中心に紹介してき
た。実はもっと身近な素材であるダンボールを使った事例があるのだが、それは
あまり紹介してこなかった。というのもダンボールをそのまま使った場合、埃が
たまりやすく、みすぼらしくなってしまうという課題を乗り越えられない事例が
ほとんどだったからだ。
長岡市立北地域図書館でみつけたダンボールを使ったブックスタンドは、表面
を綺麗な色柄のついた紙で覆うことで、この点をクリアしていたので紹介したい。
このブックスタンドは、1枚のダンボールをうまく折り曲げることによりつくら
れているので、ある程度の大きさのダンボールが必要だ。ポイントは、折り曲げ
たい部分にカッターで軽く切込みをいれること。ぜひ試してみてほしい。
File
325 長岡市立北地域図書館(新潟県)
ダンボールを折ってブックスタンドに
■長岡市立北地域図書館
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市曲新町566-7
TEL:0258-30-3501 FAX:0258-30-3505 E-mail:lib.minami@nscs-net.ne.jp
撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
069ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
File322(p.065)で紹介した事例と同じように、材料さえあれば簡単につくれ
るブックスタンドの事例を紹介したい。
みなみいせ図書室では、背の高い書架は壁によせて、空間をさえぎらないよう
にしている。特に児童向けの本のコーナーでは、壁にそった書架以外は低い書架
にしているため、本棚の上に絵本を置いて子供の興味を引いているのだが、そこ
に欠かせないのがブックエンドとコルク栓を組み合わせたブックスタンドだ。
この場合に使うブックエンドはアクリルではなく、よくあるスチールの事務用
ブックエンドで、コルク栓を半分に切ったものをストッパーの部品として使って
いる。コルク栓ならばレシート芯よりも柔らかく、加工もしやすいのが特徴だ。
ブックエンド自体のすべり止めに敷かれているフェルト布も、アクセントとして
効果的である。
File
326 みなみいせ図書室(三重県)
ブックエンドとコルクでブックスタンド
■みなみいせ図書室
http://www.amigo2.ne.jp/~cyobun-n/mican/tosyo.html
三重県南伊勢町五ヶ所浦3917 町民文化会館1階
TEL:0599-67-1013
撮影日:2015年1月20日 撮影:岡本真
070 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
臼
う す き
杵市立臼杵図書館に隣接している臼杵市荘
しょうだへいごろう
田平五郎記念こども図書館は、地
元出身で三菱の大番頭といわれた荘田平五郎氏が私費を投じて建て寄贈した大正
時代の建物だ。2003年に現在の「こども図書館」として再生されている。1階は低
学年用と高学年用に大まかに分けられ、2階には学習室や読み聞かせの部屋、談
話室も完備している。
館内で目を引いたのは「きょうど」と掲げられたコーナーである。そこには臼杵
市ゆかりの三
みうらあんじん
浦按針(ウィリアム・アダムス)の絵本から、臼杵の歴史に関する資
料など50冊ほどではあるが、丸テーブルにところ狭しとまとめられていたのだ。
郷土資料は、貴重な資料を保存することが一番に優先されてしまうかもしれな
い。そしてこどもの手には届かない場所に配置されがちだが、地元地域のことを
幼い頃から身近な場所で触れる機会をつくることも重要であろう。
File
327 臼杵市荘田平五郎記念こども図書館(大分県)
こども図書館で郷土資料を展示
■臼杵市荘田平五郎記念こども図書館
http://www.city.usuki.oita.jp/categories/bunya/kyouiku/tosyokan/
大分県臼杵市臼杵6-16
TEL:0972-62-3405
撮影日:2015年1月21日 撮影:岡本真
071ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
File065(創刊号)で紹介してから各図書館で大ヒットしている「図書館福袋」だ
が、これをフル活用した展示コーナーをご紹介したい。
図書館福袋は、その袋に詰められた本のテーマを示すことはあっても、中身に
ついては紹介しないのが一般的である。中身を知らずに、どんな本が出てくるか
を楽しむのが福袋の醍醐味なのだ。
さて、皇學館大学附属図書館では、返却された「図書館福袋」のセットから順に
「福袋中身公開展示」と題した展示コーナーで、福袋に入っていた本を袋から取り
出して展示している。福袋として貸し出されるときには明かされなかった選書担
当者のオススメのひと言も添えてある。「福袋として選書された本」というコンセ
プトで再び利用者の興味をひくという、一粒で二度おいしい企画となっている。
File
328 皇學館大学附属図書館(三重県)
福袋の中身公開展示
■皇學館大学附属図書館
http://www.kogakkan-u.ac.jp/html/library/p01.php
三重県伊勢市神田久志本町1704
TEL:0596-22-6322 FAX:0596-22-6329 E-mail:toshokan@kogakkan-u.ac.jp
撮影日:2015年1月20日 撮影:岡本真
072 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
一関市立花泉図書館の視聴覚コーナーでは、DVDも本と同じく面陳してみせ
るという工夫があったので紹介したい。花泉図書館では、DVDを貸し出す際に
ケースまでは貸し出さず、「貸出中」の見出しを表示している。このようにするこ
とで、貸出中のタイトルが増えた場合に、棚がスカスカになるということもおき
ない。もともと収蔵するタイトルが少ないため書架に余裕があり、利用される頻
度も少ない資料だからこそ、面陳するものを定期的に入れ替える工夫が生きてく
るはずだ。
一方でシリーズもののDVDが増えて場所をとってしまう場合には、File222(第
9号)で紹介した書架スペースの有効活用術を応用し、開架に出すのは1巻目のみ
とし、以降の巻についてはタイトル一覧を付与する方法をおすすめしたい。
File
329 一関市立花泉図書館(岩手県)
DVDも面陳で展示
■一関市立花泉図書館
http://www.library.city.ichinoseki.iwate.jp/
岩手県一関市花泉町涌津字上三ノ町12
TEL:0191-82-4939  FAX:0191-36-1951 E-mail:hanatosho@city.ichinoseki.iwate.jp
撮影日:2015年3月15日 撮影:岡本真
073ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
一関市東山図書館は、2009年につくられた複合施設に入る比較的新しい図書
館である。書架も比較的スペースに余裕がありそうだ。
東山図書館でみつけた小さな工夫は、普段ほとんど使われることのない、高書
架用の移動式踏み台の展示棚への転用だ。同館の書架は、天井まで届きそうな
10段もあるものが壁面に設置されており、この移動式踏み台は、上の方の資料
を出し入れするためのものなのだが、写真の背景に写っているように、一番上の
棚にはまだ本が置かれていない。移動式踏み台には高書架用にストッパーがつい
ているので、展示棚として活用するには申し分ない条件が整っている。また、ど
こにでも動かしていけるのも便利である。
File
330 一関市立東山図書館(岩手県)
移動式踏み台を展示棚に転用
■一関市立花泉図書館
http://www.library.city.ichinoseki.iwate.jp/
岩手県一関市東山町長坂字町335-1 東山地域交流センター1階
TEL:0191-47-2324  FAX:0191-47-2961 E-mail:higatosho@city.ichinoseki.iwate.jp
撮影日:2015年3月15日 撮影:岡本真
074 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
阪急電鉄川西能勢口駅からほど近い商業複合施設内にある川西市立中央図書館
は、エントランス付近に「市政情報」をまとめたコーナーを設置している。通常、
このような資料は郷土資料と並ぶことが多く、図書館の奥のほうに配置されるこ
とがほとんどであることを考えると、非常に好ましい取り組みである。
設置場所も効果的だが、展示内容も市の総合計画をまとめたファイルを単に置
くだけではなく、計画の概要を生活シーンごとにカテゴリ分けし、行政がどのよ
うな計画を立てているのかをわかりやすくまとめていた点も好印象だった。すぐ
隣には「まちづくり情報コーナー」の地域情報として、市役所や関連施設からのお
知らせを掲示するスペースもあり、自由に持ち帰ることができるチラシも配備さ
れていた。市役所よりも駅に近く、市役所の広報窓口の一つとして機能している
といえるだろう。
File
331 川西市立中央図書館(兵庫県)
市政・地域情報を誰もが通る場所に展示
■川西市立中央図書館
https://www.library.city.kawanishi.hyogo.jp/
兵庫県川西市栄町25-1「アステ川西」内
TEL:072-755-2424
撮影日:2015年4月6日 撮影:岡本真
075ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
ブックエンドとレシート芯を組み合わせてブックスタンドにする場合、これま
でに紹介した事例では、ブックエンドとレシート芯を接着するために両面テープ
を使用したが、この場合、接着剤が劣化すると壊れる可能性もでてくる。そこで
部品同士を結びつけることで、この点を解決した事例があるので紹介しよう。
豊中市立蛍池図書館でみかけたのは、ブックエンドとレシート芯を綴じ紐でつ
ないでいるものである。レシート芯の筒に綴じ紐を通し、さらに綴じ紐をブック
エンドにひっかけるようにして結べば完成だ。
接着剤を使わずとも、うまい組み合わせはたくさんありそうだ。
File
332 豊中市立蛍池図書館(大阪府)
綴じ紐を活用したブックスタンド
■豊中市立蛍池図書館
http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/
大阪府豊中市蛍池中町3-2-1-502
TEL:06-6840-8000
撮影日:2015年4月18日 撮影:岡本真
076 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
Web-OPACが導入されてから、閉架資料も開架資料も瞬時に探し出すことが
できるようになったが、ふだん目にすることのない閉架資料は、検索をかけない
限り、その存在を知ることができない。これは意外と見落とされがちなポイント
である。その解決策として、閉架書庫を公開するという事例もあるが、利用者が
入る前提で設計されていない部屋を公開するのは、いろいろな問題があり、ハー
ドルが高い。
手軽にできる方法としておすすめなのは、閉架書庫にしまってある資料で展示
コーナーをつくることである。丹波市立中央図書館では、閉架書庫の資料のPR
コーナーをつくり、本を定期的に入れ替えている。テーマは特に絞らず、図書館
の資料が開架にあるものだけではないということを想像させる展示となっていた。
File
333 丹波市立中央図書館(兵庫県)
閉架書庫の資料をみせる展示コーナー
■丹波市立中央図書館
https://www.city.tamba.hyogo.jp/site/toshokan/
兵庫県丹波市氷上町常楽233
TEL:0795-82-7100 FAX:0795-82-7200 E-mail:library@city.tamba.hyogo.jp
撮影日:2015年4月28日 撮影:岡本真
077ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
利用者が気軽に参加でき、展示としても面白い試みを奥州市立前沢図書館でみ
つけたので紹介したい。「本のリレー」と名づけられたこのコーナーは、1冊の本
からスタートし、その本から連想した本を利用者に紹介してもらうというもので
ある。次の本を推薦する用紙には、最初の本と次の本の共通点やきっかけとなっ
たキーワードも記入してもらう。匿名で参加できるが、世代や性別などの属性も
任意で記入してもらい、次の本を紹介するパネルに記載する。
訪ねた際は、前年度の予約件数ベスト10に入ったタイトルがスタートに選ば
れていた。リレーで紹介された本の変遷は、紹介された本の書影と書名、著者名
が描かれたカードを毛糸で結んでパネルに貼りつけることで分かるようにしてい
る。カードの合間には、紹介されるきっかけになったキーワードも貼りつけてあ
り、わかりやすい。紹介された本が図書館で所蔵されている場合は、パネル手前
のテーブルに展示し、所蔵していない場合は、A4サイズのポスターで紹介する
ことで、リレーが途切れることはない。期間限定のイベントとして、ぜひ試して
みてほしい。
File
334 奥州市立前沢図書館(岩手県)
本のリレー展示
■奥州市立前沢図書館
http://library.city.oshu.iwate.jp/
岩手県奥州市前沢区七日町裏71
TEL:0197-56-6781(FAX兼用)
撮影日:2015年7月16日 撮影:岡本真
078 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
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展
示
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工
夫
奥州市立前沢図書館では2階に児童、幼児向けの資料を集めているが、その一
角に「赤ちゃんの駅」と名づけられた授乳室が設けられている。ベビーベッドを置
き、その周りをカーテンで目隠ししただけの簡易的なつくりのものだが、そこ
に行くための通路に、細長いテーブルの上に育児本や雑誌を置いて「子育て支援
本&子育て雑誌コーナー」をつくっている。地域の保育園での行事予定が書かれ
たポスターや新しく受け入れた本のなかから、子育てに関するものだけをピック
アップした「新刊情報コーナー」もある。
授乳やおむつを交換しにそこを利用する子育て世代のお母さんに向けた、工夫
のつまった便利な展示である。利用者の動きを丁寧に分析・把握することが、利
用者に喜ばれる図書館づくりの一歩であるに違いない。
File
335 奥州市立前沢図書館(岩手県)
利用者の動線に合わせた展示
■奥州市立前沢図書館
http://library.city.oshu.iwate.jp/
岩手県奥州市前沢区七日町裏71
TEL:0197-56-6781(FAX兼用)
撮影日:2015年7月16日 撮影:岡本真
079ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
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展
示
の
工
夫
市の乳幼児健診の際に、保健センターなどで行われていることが多いブックス
タート。 図書館での実施も増えてきているが、基本的には図書館以外の場所が
行うこのような事業を、どのようにPRしているだろうか?
小
お た り む ら
谷村図書館では、絵本を置いている棚の一角に「ブックスタート-赤ちゃん
と絵本が友達になるお手伝い」というパネルを置き、ブックスタートの際に配布
している絵本の見本を常時展示している。絵本にも「ブックスタート用見本」とい
うステッカーを貼りつけ、どの本がブックスタートに使われている絵本なのか
わかるように明示している。このような取り組みを普段から広くPRすることは、
「将来、いつか必要とするとき」のための地道なPRでもある。手堅く取り組んで
ほしいところである。
File
336 小谷村図書館(長野県)
ブックスタートの見本展示
■小谷村図書館
http://www.vill.otari.nagano.jp/mura/library/
長野県小谷村大字中小谷丙131
TEL:0261-82-2587(公民館共通) FAX:0261-82-3164 E-mail:donguri@vill.otari.nagano.jp
撮影日:2015年4月2日 撮影:岡本真
080 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
2006年に宇
う な づ き ま ち
奈月町と合併した黒部市は、人口4万人ほどのまちである。1972
年(昭和47年)に建設された黒部市立図書館は、築40年以上が経過していること
もあり、館内の書架スペースを増やすのは難しいところまできている。そんな限
られたスペースをうまく活用している工夫をみつけたので紹介したい。
具体的に説明すると、キハラ社のワイヤーブックスタンドを書架の側面にピン
2本で止めるだけというものである。通常、ブックスタンドを置く場合はテーブ
ルや低書架の上など平らなスペースが必要となるが、この方法を使えば書架の側
面でも面陳が可能だ。また、その下には椅子も置いてあり、大体の人が座っても
頭がぶつからない程度の高さが確保してある。ちょうど未就学児には届かず、大
人の目線にあった高さでもある。思わず、うまい!と感心した事例である。
File
337 黒部市立図書館(富山県)
書架に掛ける展示器の工夫
■黒部市立図書館
https://lib.city.kurobe.toyama.jp/
富山県黒部市植木23-1
TEL:0765-54-2311 FAX:0765-52-5162 E-mail:s-tosyokan@city.suzaka.nagano.jp
撮影日:2014年12月21日 撮影:岡本真
081ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
図書館に毎日足を運ぶ利用者に向けて、日替わりの情報提供をしたいと考えて
いる読者の方は多いのではないだろうか。しかし、課題となるのが継続だろう。
この課題をうまく解決する、新聞を使った取り組みをみつけたので紹介したい。
安
あんじょう
城 立中央図書館では、エントランスの「新聞で見る昔の今日」というコー
ナーで、10年前と40年前のその日の新聞記事を、新聞縮刷版を使って展示する
とともに、その年に起こった主な出来事もまとめている。 展示に添えたパネル
では「自分や家族の誕生日、記念日の出来事を調べてみませんか」と呼びかけ、図
書館が導入している新聞記事データベースの利用も促している。 データベース
からのプリントアウトをPRに使ってもよさそうだ。持っている資料を最大限に
活用し、簡単に継続できる方法として、ぜひ参考にしてほしい。
File
338 安城市中央図書館(愛知県)
新聞で見る昔の今日
■安城市立中央図書館
http://www.library.city.anjo.aichi.jp/
愛知県安城市城南町2-10-3
TEL:0566-76-6111 FAX:0566-77-6066 E-mail:tosyo@city.anjo.aichi.jp
撮影日:2014年8月19日 撮影:岡本真
082 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
全集などの比較的高級な本が入っている本の箱(ケース)を、展示の際に活用し
ている事例を紹介したい。写真は四日市市立図書館でみたものであるが、ぱっと
見ではそれが本のケースだということがわからないくらいうまくできていた。
まず、本のケースにカッターで切れ目を入れ、開いたものを折り返して組み直
し、テープなどで固定することにより、ブックスタンドにする。本の箱を解体し
て、本来なら内側に折り返されている部分を外側に折り返して、本のストッパー
にするだけだ。
本を立てかけるために、本の箱の背表紙の直角の部分をひし形にカットさせる
ところがむずかしいかもしれない。もちろん、本の箱のタイプによってはうまく
いかないケースもある。ただ、これも捨てればゴミ。多少失敗しても構わないの
で、身近に余った本の箱があれば一度解体してみて、使えそうなものは組み直し
てみてはいかがだろうか。
File
339 四日市市立図書館(三重県)
本箱を展示器具に活用
■四日市市立図書館
http://www.yokkaichi-lib.jp/
三重県四日市市久保田1-2-42
TEL:059-352-5108 FAX:059-352-9897 E-mail: tosyokan@city.yokkaichi.mie.jp
撮影日:2015年12月23日 撮影:岡本真
083ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
File304(p.047)で紹介した行政資料コーナーのPRは、小規模な場合なら一覧
性も高く使いやすいというメリットがあるが、規模が大きくなった場合は、逆に
情報のボリュームがありすぎて、近寄りがたいコーナーになってしまうだろう。
萩市立萩図書館の行政資料コーナーは、見せ方の工夫によりわかりやすいコー
ナーとなっていたので紹介したい。
同館の行政資料コーナーは、1連あたり6つの棚がまとまっているが、その一
面を使って、市議会から商工会まで、あらゆる行政に関する資料をファイルにし
て面陳している。素晴らしかった点は、その書架に「行政資料一覧」という表をつ
けて、行政の部、課ごとに刊行している資料のタイトルをまとめていることであ
る。スペースの都合上、資料を重ねて置いているため、課ごとの仕切りにはオレ
ンジ色の見出しをつけたり、小学校や中学校の要覧などは、他とは違った色の
ファイルを使うことで目立たせるなどしている点も素晴らしい。
File
340 萩市立萩図書館(山口県)
行政資料の一覧リストを提供
■萩市立萩図書館
https://hagilib.city.hagi.lg.jp/
山口県萩市江向552-2
TEL:0838-25-6355 FAX:0838-25-5224 E-mail:hagi_library@city.hagi.lg.jp
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
084 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
香川県綾川町の綾川町立生涯学習センターで、とても興味深い展示方法をとら
れていたので紹介したい。図書館ではメディア別に配架場所を分けるという大前
提があるので、これを見た時にはっとした。それは、映画化された小説とその
DVDをセットで配架するという方法である。
写真では、DVDと本をセットで面陳しているタイトルを紹介しているが、多
くのタイトルはDVDと本を別々に棚差しで配架されている。
本コーナー「読んで観てコーナー」で展示されている資料は、図書館の蔵書検
索システムでも探せるように別置扱いしているので、利用者が探し出せないとい
う心配もない。図書館にあるメディアは本だけではない。視野のひろい情報提供
をぜひ試してみてほしい。
File
341 綾川町立生涯学習センター(綾川町立図書館)(香川県)
書籍とDVDをセットで展示
■綾川町立生涯学習センター
http://www.town.ayagawa.kagawa.jp/docs/2012030900029/
香川県綾川町滝宮318
TEL:087-876-6100 FAX:087-876-6101
撮影日:2015年11月28日 撮影:岡本真
085ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
資料として所蔵していても、開架には出せない貴重な資料の場合、問い合わせ
の多いものについては、書庫にある旨を掲示物で案内するといった方法を採用し
ている館は多い。西条市立西条図書館では、そのような資料について、利用案内
を掲示するだけではない工夫がみられたので紹介したい。
西条市は、名水百選にも選ばれている綺麗な湧き水で有名な町である。水に関
する資料を集めた郷土資料のコーナーでみかけたのは、絶版などで入手が困難な
資料について、表紙のカラーコピーを厚紙に貼りつけ、そこに所蔵先が貴重書庫
であることや本の説明を追加して展示するという工夫である。目の前にない資料
を手に取れるように展示することで、ただ掲示物で案内するよりもPRに成功し
ているといえるだろう。
File
342 西条市立西条図書館(愛媛県)
貴重資料をコピーでみせる
■西条市立西条図書館
http://lib.city.saijo.ehime.jp/
愛媛県西条市大町1590
TEL:0897-56-2668 FAX:0897-56-3188
撮影日:2015年11月26日 撮影:岡本真
086 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
市民参加型の図書館運営といえば伊万里市民図書館が有名だが、ここで紹介す
る春日市民図書館も、市民参加型の図書館として素晴らしい取り組みを行ってい
るので紹介したい。
春日市民図書館では、市の広報誌を中心に集めた「かすが情報コーナー」のすぐ
背中合わせの場所に、市内の各地区の自治会が発行する自治会だよりを集めた
「地域情報コーナー」をつくっている。草の根の活動を紹介する「自治会だより」の
収集だけでも素晴らしいことだが、さらにその向かいには「まちづくりコーナー」
として、まちづくり支援センターの紹介を中心に、市民のまちづくりに関する参
加を後押しする本を集めたコーナーまである。
地域内の情報を利用者に発信することで、図書館も含めたまちづくりに市民の
参加を促すという姿勢が伝わってくるコーナーづくりだ。
File
343 春日市民図書館(福岡県)
市民参加を促すコーナーづくり
■春日市民図書館
http://www.library.city.kasuga.fukuoka.jp/hp/
福岡県春日市大谷6-24
TEL:092-584-4646 FAX:092-584-3900
撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
087ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
使い終わったら捨てられる運命にあるレシート芯。その有効活用として目新し
い事例を静岡市立御幸町図書館でみつけたので紹介したい。
同館ではかなりシンプルな方法ではあるが、レシート芯2本を並べて接着した
ものを、フライヤーを押さえるペーパーウェイトとして活用しているのだ。薄い
フライヤーをスタンドに立てかける際、これをフライヤーの足の部分に置くこと
により、下の方から曲がったり、たわんだ状態になってしまうのを防ぐことがで
きる。シンプルでよい工夫なので、ぜひ試してみてほしい。
File
344 静岡市立御幸町図書館(静岡県)
レシート芯をフライヤー留めに
■静岡市立御幸町図書館
http://www.toshokan.city.shizuoka.jp/
静岡県静岡市葵区御幸町3-21
TEL:054-251-1868  FAX:054-251-9217
撮影日:2015年12月11日 撮影:岡本真
088 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
資
料
展
示
の
工
夫
学術的な内容の専門的な本は小難しい、とっつきにくいなどのイメージから、
小説などよりも読むのにハードルを感じるものだ。そんな一般的なイメージを崩
し、気軽に学術的な専門書を手にしてもらうおうと、神奈川県立川崎図書館が
行っている工夫紹介したい。
同館では科学書を紹介するのに、本のなかから印象的なフレーズを引用し、カ
ラーの書影と書誌情報をまとめたポスターをつくって、科学書が置いてある付近
に限らず、館内のいたるところに貼り出している。思わず興味をそそられるフ
レーズばかりである。
ノーベル賞の受賞時に、社会的な注目と絡めて科学書をまとめて展示する方法
もあるが、その時だけ注目される展示になりがちだ。普段からできる取り組みと
して、科学書以外の本でもぜひ真似をしてほしい。
File
345 神奈川県立川崎図書館(神奈川県)
科学書を読ませる工夫
■神奈川県立川崎図書館
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/
神奈川県川崎市川崎区富士見2-1-4
TEL:044-233-4537(代表) FAX:044-210-1146
撮影日:2015年10月6日 撮影:岡本真
089ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
P
R
の
工
夫
岡山県の山間部に位置する勝
しょうおうちょう
央町にある勝央図書館は、規模は小さいものの勝
央美術文学館との複合施設である。そこで印象に残る黒板の活用事例をみつけた
ので紹介したい。
飲食店やカフェなどで、メニュー表としてセンスよくカジュアルに使われてい
る黒板だが、最近では大学図書館でも、凝ったイラストや印象的なキャッチコ
ピーとともに利用されているのをよくみかける。黒板を使ったPRはブームにな
りつつあるようだが、今回取り上げる勝央図書館での活用はそのなかでも特にシ
ンプルで、わかりやすさを重視した事例だ。
各項目の先頭には桜の花びらのイラストがあしらわれ、注目してもらいたいイ
ベント名は赤い文字で書かれている。イラストを施した凝ったPRもよいが、一
方で必要最低限の情報をわかりやすく伝えることの重要性を訴えたい。
File
346 勝央図書館(岡山県勝央町)
黒板を活用したイベント告知
■勝央図書館
http://www.town.shoo.lg.jp/library/shoo-top.htm
岡山県勝央町勝間田207-4
TEL:0868-38-0250 FAX:0868-38-0260 E-mail:shoolib@town.shoo.lg.jp
撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
090 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
P
R
の
工
夫
美
み ま さ か し
作市は、2005年に美作町、勝田町、大原町、作
さくとうちょう
東町、英
あいだちょう
田町、東
ひがしあわくらそん
粟倉村の5
町1村が合併してできた市であり、図書館は中央館以外に、大原図書館、作東図
書館、英
あ い だ
田図書館、東粟倉図書館の4つの地域図書館がある。
各図書館では、毎月新しく受け入れた新刊図書をカラーの書影つきでジャンル
ごとにまとめ、ポスターにして掲示している。書影の下にはタイトル、著者名が
続き、どの図書館で受け入れたのか所蔵館名も明記しており、他の図書館で受け
入れたタイトルを借りたい場合は、申し込めば取り寄せてもらうことができる。
予約申し込みの案内についてもポスターと合わせて目につくところにわかりやす
く掲示しており、かゆいところに手が届いた案内といえる。
複数の図書館で資料を分担して受け入れながら、連携して活用を促進したいと
いう思いが伝わってくる取り組みである。
File
347 美作市立中央図書館(岡山県)
市内の新刊案内をまとめてポスターに
■美作市立中央図書館
https://library.city.mimasaka.lg.jp/
岡山県美作市栄町35
TEL:0868-72-1135 FAX:0868-72-1145 E-mail:libmimasaka@city.mimasaka.lg.jp
撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
091ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
P
R
の
工
夫
美
みまさか
作市立中央図書館では、前年度に予約が多かった本を特集する「予約ベスト
10」コーナーが設けられていた。新刊当時は話題で予約が多く入っており、借り
るチャンスがめぐってこなかったタイトル集である。
展示では、平置きする本の台に、順位、書影、書名、著者名と内容を記した紙
を敷いておき、その本が貸し出されても情報を残すことで、展示として機能する
ようにひと工夫されている。ベスト10では、市内にある他の図書館が所蔵する
本がランクインすることもあるようで、その場合は、「貸出中※予約できます」と
する代わりに、「他館所蔵本※予約できます」とアナウンスしている。
展示コーナーで取り上げるテーマは、季節やイベント、社会的トピックに合わ
せたものが多いが、たとえば「10年前の貸出ベスト10」というような、図書館が
独自に持っているデータを元にした切り口も、案外楽しめるものになるのではな
いだろうか。
File
348 美作市立中央図書館(岡山県)
前年度の予約ベスト10を展示
撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
■美作市立中央図書館
https://library.city.mimasaka.lg.jp/
岡山県美作市栄町35
TEL:0868-72-1135 FAX:0868-72-1145 E-mail:libmimasaka@city.mimasaka.lg.jp
092 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
レシート芯の活用事例については、File014(創刊号)やFile193(第4号)など
でいままでにも幾つか紹介してきたが、新しい活用事例をみつけたので紹介した
い。坂
さかいで
出市立大橋記念図書館には、初代市長で名誉市民である島田恭平氏にちな
んでつくられた「島田恭平翁文庫」がある。その「島田文庫」は小学生、中学生の学
習に役立つ資料を集めているが、各ジャンルを説明する掲示物のスタンドにレ
シート芯が活用されている。
レシート芯2本を使えば、軽いものなら十分立たせることができる。挟みたい
ものの厚さに合わせて切り込みを入れ、そこに掲示物となるダンボールを挟み込
むだけといういたってシンプルなものである。挟まれているダンボールも、ブッ
クカバーフィルムでコーティングされている。掲示されている内容も整理されて
おり、クオリティーも高い。
File
349 坂出市立大橋記念図書館(香川県)
レシート芯を活用した案内表示
■坂出市立大橋記念図書館
http://www.city.sakaide.lg.jp/site/toshokan-top/
香川県坂出市寿町1-3-10
TEL:0877-45-6677 FAX:0877-45-6678 E-mail:library@city.sakaide.lg.jp
撮影日:2015年6月4日 撮影:岡本真
093ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
長岡市立寺
てらどまり
泊地域図書館では、地元に特にゆかりのある作家の作品が置かれ
る見出し板に切り絵によるデザインを施し、併せて作家の紹介文も記している。
また、同じ市内にある長岡市立西地域図書館では、作家名とあわせてその作家
のジャンルを表示している。たとえば「田辺聖子」なら「純文学」「恋愛」という具
合だ。長野県の池田町図書館では、作家名によみがなをふっていた。読み方が難
しい作家名は意外と多いので、あると嬉しい。
この工夫のよいところは、書架の前に立った時に、本の背表紙を邪魔すること
なく付加情報が追加できる点にある。ポップや張り紙をつけると 、あれこれと
情報をたくさん追加したくなりうるさい書架になってしまいがちだが、このやり
方なら、スペースが限られることもあり、ワンコメントでわかりやすい。ちょっ
とした工夫だが、ぜひ試してみてもらいたい。
File
350 長岡市立寺泊地域図書館、西地域図書館(新潟県)
作家名の見出し板にひと工夫
長岡市立寺泊地域図書館 
撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
長岡市立西地域図書館 
撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
■長岡市立西地域図書館
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市緑町3-55-41
TEL:0258-27-4900 FAX:0258-27-4901 E-mail:lib.nisi@nscs-net.ne.jp
■長岡市立寺泊地域図書館
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市寺泊磯町7411-14寺泊文化センター2階
TEL:0258-75-5159 FAX:0258-75-3109
094 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
比較的狭い市域に人口約11万人を抱える浦添市に建つ浦
うらそえ
添市立図書館には、
「としょまる」と名づけられた移動図書館車があり、市内33 ヶ所のステーション
を月2回巡回している。
移動図書館車の存在はそのステーションの近隣に住む人のほかには知られるこ
とが少ないが、浦添市立図書館ではそのサービスを知ってもらおうと、館内で
「移動図書館としょまる」コーナーを常設展示し、多くの人にPRしている。
コーナーでは、初代としょまるの写真や、稼働中の「2代目としょまる」が運用
された経緯、ステーションマップ、巡回コースごとのステーション所在地やどう
いった利用者が来るかといった簡単な説明パネルが掲示されている。
この展示は、「今日返却された本」を一時的に置いておくスペースの上で展開さ
れ、利用者にとっては必ずチェックする場所だ。このような展示をすぐに真似し
ようとすると大変かもしれないが、参考にできるところから館内でのPRもぜひ
積極的に行ってみてはどうだろうか。
File
351 浦添市立図書館(沖縄県)
館内で移動図書館車をPRするコーナー
撮影日:2015年2月10日 撮影:岡本真
■浦添市立図書館
http://library.city.urasoe.lg.jp/
沖縄県浦添市安波茶2-2-1
TEL:098-876-4946 FAX:098-875-1772 E-mail:tosyokan@city.urasoe.lg.jp
095ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
岸和田市立図書館は建物こそ老朽化が進んでいるものの、図書館友の会の活動
が盛んに行われている。その様子は、館内の1階と2階を行き来する際に必ず通
る目立つ場所に設置されている「友の会掲示板」をみれば一目瞭然である。
岸和田市立図書館は、1階に児童向け資料を中心とした児童コーナーを設置し、
大部分の大人が利用する一般書や新聞雑誌は2階にあるため、「友の会」の活動を
している利用者も含め、ほぼすべての利用者が2階への階段を通って図書館を利
用しているのだ。つまり、館内の一等地に「友の会掲示板」の場所が確保されてい
るのだ。たとえば「友の会の○○さんが新聞に載りました!」といった周辺の情報
も貼り出されており、友の会メンバーのモチベーションアップにもつながってい
ることが伝わってくる取り組みなのである。
File
352 岸和田市立図書館(大阪府)
「友の会掲示板」を目立つところに設置
■岸和田市立図書館
https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/toshokan/
大阪府岸和田市岸城町1-18
TEL:072-422-2142
撮影日:2015年2月22日 撮影:岡本真
096 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
2015年7月に新館を移転オープンさせ、それに伴い閉館した日
ひ じ
出町立萬
ば ん り
里図書
館でみつけた事例を紹介したい。もはやほとんどの図書館で使われなくなった目
録カードだが、そのカードを収納するためのカードケースは、長く使用するため
にしっかりしたつくりになっているものが多く、有効利用できる場合もあるのだ。
目録カードケースは、引き出しの中に目録カードを収納するための金具が入っ
ており、それを固定するための加工がしてあるので、そのままでは収納に向かな
い。だが、引き出してテーブルのように使えるしかけがついているものもあり、
萬里図書館で活用していた目録カードケースもそのような仕様のものであった。
高さもちょうど人の目線に近い高さで、テーブルになる部分にはA4サイズの
チラシを3 ~ 4種類は置くことができる幅がある。本体上部も平らなので、そこ
にもチラシを置いてフルに活用すれば10種類ほどは余裕で置けそうだ。
閉架書庫の奥に眠っている目録カードケースがあれば、ぜひ掘り起こしていた
だきたい。引き出し部分をうまく使えば、本の展示棚としても使えるかもしれな
い。アンティークな雰囲気が人気を呼ぶだろう。
File
353 日出町立萬里図書館(大分県)
目録カードケースをチラシ置き場に
■日出町立図書館 *2016年1月現在のデータ
http://www.town.hiji.oita.jp/page/hiji-library.html
大分県日出町3244-1 BiVi日出2階
TEL:0977-72-3232 FAX:0977-72-6999
撮影日:2015年3月5日 撮影:岡本真
097ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
これまでさまざまな事例を紹介してきたレシート芯の有効活用方法だが、白河
市立図書館を見学した際にみつけたレシート芯を使ったオブジェを紹介したい。
写真は、レシート芯を組み合わせて小さい家を形どったオブジェで、全く実用
性はないのだが、図書館まつりなどのイベントの際には人気になりそうだ。
もしも、捨てるだけの大量のレシート芯があれば、それを使ってオブジェをつ
くるワークショップを開催してもよいだろう。もちろん、そこにはクラフトに関
する資料も一緒に展示するなどして資料の有効活用を促すといった具合だ。
オブジェをつくるだけという企画でも、ブックスタンドをつくるワークショッ
プを開催して持ち帰ってもらってもいい。捨てるだけのゴミをちょっとした工夫
で生き返らせることができるのだ。
File
354 白河市立図書館(福島県)
レシート芯のオブジェはいかが?
■白河市立図書館
http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=266&ik=1
福島県白河市道場小路96-5
TEL:0248-23-3250 E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp
撮影日:2015年2月28日 撮影:岡本真
098 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
西条市立西条図書館では、文芸書棚に郷土ゆかりの作家の本も混配しているが、
その際、わかりやすく識別するために見出し板のデザインを変えている。さらに
代表作品などを説明する文章もあわせて表示し、さらに下には「郷土文学」という
ジャンルも明記しているところがポイントだ。
郷土コーナーを別置して紹介するスペースがない場合に有効であり、利用者か
らみても文芸書というくくりのなかで、郷土にまつわる作家に触れ合えるという
メリットもある。File350(p.093)で紹介した見出し板の工夫とあわせて参考に
してほしい。
File
355 西条市立西条図書館(愛媛県)
郷土にまつわる作家名の見出し板を工夫
■西条市立西条図書館
http://lib.city.saijo.ehime.jp/
愛媛県西条市大町1590
TEL:0897-56-2668 FAX:0897-56-3188
撮影日:2015年11月26日 撮影:岡本真
099ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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図書館はさまざまな本との出会いを提供する場所だ。図書館だよりなどを使っ
て本を紹介する際、どうやってその本のよさを伝えるだろうか? どういった方
法ならその本を気に止めてもらえるだろうか? こうした疑問をシンプルに解決
するヒントになる本の紹介方法を、佐
さ い き
伯市立佐伯図書館の児童書コーナーでみつ
けたので紹介したい。
「科学 あそび」「算数 数学」などのテーマごとに書影が表示されたA4サイズ
のポスター。1枚のポスターで取り上げるテーマは1つか2つ、本は10冊から15
冊くらいだ。書影の下にタイトルや著者名も掲示したくなるところだが、ここで
はあえて表示していないところがポイントだ。利用者の興味をダイレクトに引き
つつ、デザイン性や作業効率も重視したいのであれば、書影をカラーで表示する
くらいシンプルなほうが案外いいのだ。意外と見落としがちな書影の活用方法だ
が、ぜひ試してみてほしい。
File
356 佐伯市立佐伯図書館(大分県)
おすすめ本をカラーの書影だけで紹介
■佐伯市立佐伯図書館
https://lib.city.saiki.oita.jp/
大分県佐伯市中の島2-20-33
TEL:0972-24-1010
撮影日:2015年3月6日 撮影:岡本真
100 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
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夫
塩尻市立図書館は、本の背表紙をカラーコピーしたポスターで新着図書をPR
するというアイデア発祥の地である。このPRポスターは図書館内ではなく、複
合施設内の人通りの多い通路に掲示しているのがポイントで、この取り組みは開
館当初、複合施設には来るものの、図書館には足を運ばない人に向けたPRのた
めに始めた取り組みだそうだ。
最近ではこの方法を応用して、テーマ展示のPRを複合施設内の色々なところ
へ展開するという工夫も行っているので紹介したい。写真の「頑張れ受験生!」と
いう展示では、受験生への応援メッセージを残せる掲示板があり、合格体験記を
投稿してもらうこともできるのだが、さりげなく「図書館にある受験生向け本の
一例」として、関連する本の背表紙をカラーコピーしたポスターを掲示している。
あわせてその関連書が館内のどこにあるかも案内しており、行ってみようかなと
いう気にさせる。複合施設内の通路には、自由に使えるテーブルと椅子が幾つも
置いてあり、学生が勉強したり、集まっているところが自然に発生するそうなの
だが、そういった場所をめがけてこういったコーナーをつくっているそうだ。
File
357 塩尻市立図書館/えんぱーく(長野県)
背表紙をコピーしたポスターでテーマ展示
■塩尻市立図書館/えんぱーく
https://www.library-shiojiri.jp/
長野県塩尻市大門一番町12-2 塩尻市市民交流センター内
TEL:0263-53-3365 FAX:0263-53-3369
撮影日:2015年3月23日 撮影:岡本真
101ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
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原
はらむら
村は人口7,500人ほどの村であるが、蔵書規模7万冊ほどの図書館が整備さ
れている。小さい図書館ではあるが、村を挙げて推進する地元米の消費拡大のた
めに、米粉を特集するコーナーをつくり、ホームベーカリーまで貸し出すなど、
積極的に地元密着型のサービスを展開している。
そんな原村図書館でみかけたのは、地元の小学生の手によるマナーアップを呼
びかけるポスターだ。
マナーアップの呼びかけは「~しないで!」「〇〇禁止」といった否定的な表現
をよくみかけるが、こちらは優しく呼びかける内容となっているのもよい。
このようなポスターをつくってもらうことで、子どもたち自身のマナーアップ
教育をすすめるとともに、拙い字でPRされれば、誰もが素直に従う気にならざ
るをえないだろう。
File
358 原村図書館(長野県)
利用マナーアップをよびかける啓発的ポスター
■原村図書館
http://www.vill.hara.nagano.jp/www/section/detail.jsp?id=73
長野県原村12079-1
TEL:0266-70-1500 FAX:0266-79-7000
撮影日:2015年3月31日 撮影:岡本真
102 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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図書館における資料費削減の波が押し寄せているなか、企業の支援を受けて資
料を購入しようという取り組みが「雑誌スポンサー制度」という形で広まっている。
しかし、企業に雑誌購入費用を負担してもらう一方で、そのメリットを企業側に
うまくPRできているだろうか?
米子市立図書館では、空いた雑誌架に雑誌スポンサー制度の協力企業の一覧
を示し、雑誌本体での広告以外でも企業名を掲示している。これは雑誌スポン
サー制度を多くの人に知ってもらうと同時に、スポンサー企業のPRをすること
で、広告主へのメリットも計られた工夫である。人気雑誌のスポンサーになると、
多くの場合、館内に持ち出されて広告効果が薄れるというジレンマの解決にもな
るので、すでに雑誌スポンサー制度が人気の図書館でも、ぜひ真似してほしい。
弊社がコンサルティングを担当した富山市立図書館でも雑誌スポンサー制度を
導入しているが、こちらは館外の通路に面した壁にスポンサー企業の一覧を張り
出している。書架スペースとの兼ね合いでちょうどよい場所を選ぶことが必要で
ある。
File
359 米子市立図書館(鳥取県)、富山市立図書館(富山県)
広告主のメリットを考えた雑誌スポンサー制度のPR
米子市立図書館 撮影日:2015年4月14日 撮影:岡本真 富山市立図書館 撮影日:2015年8月22日 撮影:岡本真
■米子市立図書館 http://www.yonago-toshokan.jp/
鳥取県米子市中町8 ハピネライフケア文化広場
TEL:0859-22-2612 FAX:0859-22-2637 E-mail:jimu5000@yonago-toshokan.jp
■富山市立図書館 https://www.library.toyama.toyama.jp/
富山県富山市西町5-1
TEL:076-461-3200(代表) FAX:076-461-3310
103ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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第17回図書館総合展で「図書館キャラクターグランプリ」が開催され、好評と
なったことは記憶に新しいだろう。キャラクターはつくっただけでは浸透しない。
では、キャラクターを根づかせるにはどうしたらよいだろうか?
豊中市立岡町図書館では、市のキャラクター「マチカネくん」をPRするために、
折り紙を考案した。「マチカネくん」は、豊中市で40万年前に生息していたとさ
れる「マチカネワニ」の化石が出土したことにちなんだ豊中市のキャラクターであ
る。郷土の話題とも絡めてPRできれば、ストーリーとしては完璧である。
また、File287(第9号)で紹介した福岡県飯塚市立図書館のキャラクター「ぼ
たぼん」は、折り紙はもちろんのこと、絵かき歌までつくられている。こちらも
ぜひ参考にしてほしい。
File
360 豊中市立岡町図書館(大阪府)
図書館キャラクターを根づかせる工夫
豊中市立岡町図書館 撮影日:2015年4月18日 撮影:岡本真
■豊中市立岡町図書館 http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/
大阪府豊中市岡町北3-4-2
TEL:06-6843-4553
104 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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三
さ ん だ
田市立図書館では、面陳の本が借りられた場合のことを考えて、裏に「貸出
中」ということが分かる様々なデザインのサインが用いられていた。デザイン自
体の面白さもさておき、単に「貸出中」と表示するのではなく、貸出中の本は順番
待ち、すなわち「予約ができる」ということもPRしている点が素晴らしい。
サインを統一することで視認性を向上させることも重要かもしれないが、一つ
一つに個性をだし、面白いと思わせることも重要である。
File
361 三田市立図書館(兵庫県)
デザインの持つ“伝えるチカラ”
■三田市立図書館
http://sanda-city-lib.jp/
兵庫県三田市南が丘2-11-57
TEL:079-562-7300 FAX:079-562-7301
撮影日:2015年4月27日 撮影:岡本真
105ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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千葉市立中央図書館でみた「中央図書館・子育て応援マップ」は、図書館が本気
で子育て支援していることがよく伝わってくる事例だったので紹介したい。この
マップは、中央図書館1階の児童フロアの絵本があるエリアの一角に設けられた
「子育て応援コーナー」に貼られているものだ。館内のどこに子育てに関連する資
料があるのかをわかりやすくまとめたものだが、資料だけではなく館内のどこに
授乳室があるかといったことまで紹介している工夫もよい。また、関連資料とし
て「おでかけガイド」や「親子関係」といった、ひと味変わったテーマも紹介されて
おり、子育てに関するあらゆることをカバーしていることがよく伝わってくるも
のとなっている。
File
362 千葉市立中央図書館(千葉県)
館内にある子育て資料をマップで展示
■千葉市立中央図書館
http://www.library.city.chiba.jp/
千葉県千葉市中央区弁天3-7-7
TEL:043-287-3980 FAX:043-287-4074 E-mail:kanri.LIB@city.chiba.lg.jp
撮影日:2015年5月20日 撮影:岡本真
106 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
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夫
図書館で貸出している本は、多くの利用者の手にわたることもあり、どうして
も壊れやすいことから、大切に扱ってもらいたいという思いがある。この思いを
利用者に伝えるために、乱暴な取り扱いによって傷んだ本を展示することで、利
用者の心情に訴えるという方法が多かったが、果たしてそれで十分だろうか?
長崎市立図書館では、マナーアップを呼びかけるために、ひと味違った方法
でPRしていたので紹介したい。「マナーアップキャンペーン」というネーミング
で設けられたこの展示コーナーでは、破損された本を展示しつつ、それを修理す
るボランティアの活動を紹介することで、本を大切にしてほしいということを訴
えているのだ。あわせて「“本のお医者さん”からの7つのお願い」というポスター
をつくり、どんなことに気をつけるといいか、どうやったら本を汚さずに済むか、
汚してしまった場合の修理は図書館へ任せてほしいといったことを訴えている。
ふだん利用者が目にしない部分をPRに活用することで、図書館に対する理解を
深めることができる取り組みである。
File
363 長崎市立図書館(長崎県)
本を大切にしてもらうマナーアップの呼びかけ方法
■長崎市立図書館
http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/
長崎県長崎市興善町1-1
TEL:095-829-4946 FAX:095-829-4948 E-mail:info@lib.city.nagasaki.nagasaki.jp
撮影日:2015年7月10日 撮影:岡本真
107ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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公共図書館では「閉架」として利用者が入れない書庫が多いが、大学図書館では
利用者層が限られていることもあって、入ることができる公開書庫も多い。
共立女子大学・共立女子短期大学図書館の公開書庫では、資料活用のために、
書架にPOPをつけるという工夫をしていたので紹介したい。
大学図書館では、研究や勉強のための資料がほとんどであることから、利用者
の行動パターンとしては、目的の本をピンポイントに検索して探しに行くことが
多い。つまり、公共図書館のように書架を眺めて本を探す機会がほとんどないた
め、目的の本を探すなかでも学生に気に留めてもらえるようにPOPをつけてい
るのだ。主に映画の原作本が多いとのことだが、これは学生に選書をしてもらう
取り組みのなかで選ばれたそうだ。
File
364 共立女子大学・共立女子短期大学図書館(東京都)
公開書庫の本棚にPOP
■共立女子大学・共立女子短期大学図書館
http://www.kyoritsu-wu.ac.jp/lib/
東京都千代田区一ツ橋2-2-1
TEL:03-3237-2630
撮影日:2015年9月3日 撮影:岡本真
108 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
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夫
早
はやしま
島町立図書館では、本の帯を活用して新着資料をPRする掲示板をつくって
いる。本の帯には書名や著者名が印刷されていない場合が多いので、書名と著者
名を手書きで補足しているようだ。CDの帯には、アルバム名と歌手名が印刷さ
れている場合がほとんどなので、そのまま貼りつけるだけで新着CDのタイトル
一覧が一目瞭然なのである。帯の下にはCDの請求記号と資料番号も印刷されて
おり、当然、請求記号の順に並べられている。
新着資料の紹介が本に偏りがちななか、AV(視聴覚)資料の新着も紹介してい
る事例は珍しい。これは意外と見落としがちな点ではあるが、図書館が多様な資
料を所蔵していることをPRするためにもよい工夫といえる。
File
365 早島町立図書館(岡山県)
新着資料のお知らせにAV(視聴覚)資料も
■早島町立図書館
http://www.town.hayashima.lg.jp/library/l
岡山県早島町前潟370-1 ゆるびの舎内
TEL:086-482-1513 FAX:086-482-4802 E-mail:tosyo@town.hayashima.lg.jp
撮影日:2014年12月7日 撮影:岡本真
109ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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津山市立図書館の地域資料の展示コーナーでは、郷土出身の作家や人物のプロ
フィールをパネルにし、資料とあわせて展示していたので紹介したい。ここでみ
られるひと工夫としては、プロフィールだけでなく、図書館に所蔵されている代
表的なタイトルが書かれていること、出身地や地域との関わりが明らかにされて
いることである。津山市に限らず、近隣の鏡
か が み の し
野市や美
み ま さ か し
作市ゆかりの作家について
も紹介している点も素晴らしい。
郷土に関わる文学作品は、作品を並べるだけで満足してしまうことが多いが、
パネルにどのような情報を盛り込むかという工夫一つで、郷土への理解をより深
め、図書館資料を活用してもらうきっかけをつくることができるのだ。
File
366 津山市立図書館(岡山県)
出身作家の紹介にひと手間
■津山市立図書館
https://tsuyamalib.tvt.ne.jp/
岡山県津山市新魚町 アルネ・津山4階
TEL:0868-24-2919 FAX:0868-24-3529 E-mail:toshokan@tvt.ne.jp
撮影日:2013年12月4日 撮影:岡本真
110 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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図書館での注意事項や守ってほしいことなどをアナウンスする際、どうしても
「~してはいけません」「○○禁止」といった表現を多用してしまう文化的貧困に
陥ってはいないだろうか? 里
さとしょう
庄町立図書館では、そういった注意事項を「禁止」
ということばを極力使わずに、誰もが自主的に、気持ちよく使えるような表現を
工夫している。
たとえば「勉強机貸出7原則」。これは、閲覧のための席で勉強をしてしまう学
生に向けた掲示だ。よくみると「飲食禁止」「パソコンは使用できません」という
残念なお知らせが最近追加されたようだが、基本的には「こうしましょう」という
ルールやマナーを呼びかける表現を使っている。頭ごなしに否定する表現を使わ
ずに利用案内も兼ねている点も素晴らしい。
File
367 里庄町立図書館(岡山県)
「禁止」からの巧みな脱却
■里庄町立図書館
https://www.slnet.town.satosho.okayama.jp/
岡山県里庄町里見2621
TEL:0865-64-6016 FAX:0865-64-6017 E-mail:slnet@slnet.town.satosho.okayama.jp
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
111ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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2015年夏に県立長野図書館が行った企画展「信州 地図で読む ふるさとの山」で
展示された「図書館から見える信州の山」と名づけられたパネルが、工夫にあふれ
ており素晴らしかったので紹介したい。県内の公共図書館に呼びかけて作成した
というこのパネルは、全体的にみると長野県をかたどっており、1枚1枚のパネ
ルには、それぞれの図書館から見える山の風景写真と山の名前、説明とその山を
紹介した図書館の名称が記されている。
夏の山岳旅行は長野県の重要な観光資源になっていることもあり、ご当地の強
みを存分に発揮した展示といえるだろう。また、こういった取り組みを県立図書
館が県内の公共図書館に呼びかけて実現できるのも、県内ネットワークがうまく
機能している証といえるだろう。
File
368 県立長野図書館(長野県)
信州 地図で読む ふるさとの山
■県立長野図書館
http://www.library.pref.nagano.jp/
長野県長野市若里1-1-4
TEL:026-228-4500 FAX:026-228-4933 E-mail:ken-tosho@library.pref.nagano.jp
撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
112 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
上田市立上田図書館のエントランスに掲示されていた「大人の社会科見学市内
図書館バスツアー」というポスターが、とてもよかったので紹介したい。
上田市内には分館を含め全部で7つの図書館があるが、その図書館を巡り、よ
いところをみつけようという見学会が自主的に開催されている。バスツアーの主
催は「としょかん実験室」というサークルで、上田市教育委員会も共催している。
今回紹介したポスターは、そのバスツアーに上田女子短期大学図書館サークル
FLCが参加し、その成果をまとめたものとのことである。
大学のサークルの成果であれば大学に掲示されそうなところではあるが、実際
に見学した各図書館に掲示されており、外からの目線が地元に還元されていると
ころが面白い。図書館で働く側にとっては、あたりまえすぎて気づかないような
点も、「よいところ」としてまとめられているのである。
File
369 上田市立上田図書館(長野県)
大人の社会科見学図書館ツアー
■上田市立上田図書館
http://www.city.ueda.nagano.jp/toshokan/tanoshimu/toshokan/ueda/
長野県上田市材木町1-2-47
TEL:0268-22-0880 FAX:0268-28-1118
撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
113ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
塩尻市立図書館でみつけた、小さいけれどキラリと光るひと工夫は、館内の掲
示物を貼る際にマスキングテープを多用していることにある。通常、掲示物を貼
る際、使い捨てる前提であればセロハンテープを使うところだが、耐久性や見た
目があまりよくないところが気になる。塩尻市立図書館では、デザイン面でも機
能面にも優れたマスキングテープをうまく使って、利用者のアイキャッチとして
も活用している。特に白を基調としたデザインの書架のなかで、掲示物をうまく
みせる工夫としてマスキングテープはベストな素材であろう。ハサミがなくても
手で切れ、加工しやすく、キレイに剥がれるという実務面でも申し分ない。
File
370 塩尻市立図書館/えんぱーく(長野県)
マステでおしゃれに
■塩尻市立図書館/えんぱーく
https://www.library-shiojiri.jp/
長野県塩尻市大門一番町12-2 塩尻市市民交流センター内
TEL:0263-53-3365 FAX:0263-53-3369
撮影日:2015年8月12日 撮影:岡本真
114 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
図書館におけるベストセラーの扱いについては、物議を醸して久しい問題の一
つではあるが、市立大町図書館では「書店におけるベストセラー」という掲示物を
つくり、書店が発信する情報と絡めた情報提供を行っている。
新聞に掲載された本の売上げランキング記事を切り抜き、図書館で所蔵してい
るタイトルにはマーカーでラインをつけ、請求記号を赤ペンで追加するだけとい
うシンプルなものだ。出典として何月何日付の何新聞かという情報も補記してあ
る。
情報の更新がなかなか難しい掲示板に、定期的にこのような情報を追加すると、
掲示板という存在に利用者の興味を引くことができる。手軽にできるので、試し
てみてはどうだろうか。
File
371 市立大町図書館(長野県)
書店売れ筋も紹介
■市立大町図書館
長野県大町市大字大町4710-6
TEL:0261-21-1616
撮影日:2015年4月1日 撮影:岡本真
115ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
市立須
す ざ か
坂図書館でみつけたちょっとした貼り紙が心に残っているので紹介した
い。図書館の入り口にある階段の足元にあった写真のような貼り紙。花の名前の
説明があり、その下にはその花が載っている本のタイトルと請求記号が記されて
おり「図書館には便利な本がたくさんあります。ご利用ください」と締めくくられ
ている。ちょうど見学に行ったのは、2015年夏のことだったので、すでにそこ
には「ツメクサ」はなく、貼り紙だけという状態ではあったが、この姿勢は素晴ら
しいと思った。
図書館のカウンターで問い合わせを受けることだけが「レファレンス」ではない
はずだ。身近な疑問を調べることができる「レファレンス」をPRするには、シン
プルでわかりやすい方法といえる。
File
372 市立須坂図書館(長野県)
これぞ、レファレンス!
■市立須坂図書館
http://www.city.suzaka.nagano.jp/enjoy/shisetsu/tosyokan/
長野県須坂市大字須坂803-1
TEL:026-245-0784 FAX:026-245-4313 E-mail:s-tosyokan@city.suzaka.nagano.jp
撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
116 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
須
す ざ か し
坂市の広報誌である「広報すざか」は、毎月の特集や内容をピックアップした
「かわら版」がつくられている。市立須坂図書館のエントランスでは、この「広報
すざか かわら版」をポスターサイズに引き伸ばし、掲示している。 ここまで広
報誌を全面的にPRしている図書館はなかなかみられないが、本来、行政が発行
する広報誌をPRする拠点として、図書館は重宝される立場にあるはずだ。
また「広報すざか」には、「図書館だより」のコーナーがあるので、普段は図書館
を使わない住民にもPRでき、図書館への注目度も上がるだろう。
本誌としても、各図書館が市報でどのようなPRを行っているか、注目してい
きたいところである。
File
373 市立須坂図書館(長野県)
広報誌の「かわら版」を掲示
■市立須坂図書館
http://www.city.suzaka.nagano.jp/enjoy/shisetsu/tosyokan/
長野県須坂市大字須坂803-1
TEL:026-245-0784 FAX:026-245-4313 E-mail:s-tosyokan@city.suzaka.nagano.jp
撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
117ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
書影をコピーしてPRに活用している方法は、File347(p.090)やFile356(p.099)
などでも紹介してきたが、日
ひ お き
置市立東
ひがしいちき
市来図書館で行っているいっぷう変わった
新着図書の紹介方法を紹介したい。
日置市立東市来図書館では入り口に掲示板があり、そこに「新しく入った本」の
書影を受け入れ日ごとに並べて掲示している。この事例で注目したいのは、受け
入れ日ごとに印刷するコピー紙の色を変えてわかりやすくしているところだ。色
紙は黄色、水色、ピンク、黄緑の4色で使い分けている。
書影のコピーで本を紹介する際、白い紙にモノクロコピーでは味気ないが、カ
ラーコピーではコストが高い。その点をどちらもうまく解決した折衷案といえよ
う。
File
374 日置市立東市来図書館(鹿児島県)
新着図書コピーを紙色で区別
■日置市立東市来図書館
http://www.hioki-library.jp/
鹿児島県日置市東市来町長里185
TEL:099-274-9610 E-mail:h-ichiki@hioki-library.jp
撮影日:2014年12月16日 撮影:岡本真
118 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
草津町立温泉図書館は、2015年11月3日に草津温泉バスターミナルの3階に
移転リニューアルし、以前の図書館よりも広い書架を確保している。ここで紹介
したいのは、同館の「群馬文学全集」に施されていた工夫である。その工夫とは、
全集に収録されている地元が生んだ有名な作家名や問い合わせの多い作家名のラ
ベルをつくり、その背表紙に貼りつけるというものである。全集の背表紙はデザ
インが統一されていることがほとんどなので、ちょっとしたラベルがあるだけで
も目を引き、手に取りやすくなるのだ。
もちろん、背表紙もその本の世界観を現す装丁の一部であり、それを壊すこと
になりかねないほどやりすぎないことが重要なポイントとなる。また、File222
(第9号)を参考にし、全巻の目次をまとめた印刷物を添えておけば、一覧性を高
めつつ、目的の作品を探しやすくする助けになることは間違いない。
File
375 草津町立温泉図書館(群馬県)
文学全集に収録作家を明示
■草津町立温泉図書館
http://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1447294370434/
群馬県吾妻郡草津町草津28 草津温泉バスターミナル駅3階
TEL:0279-88-7190
撮影日:2016年1月7日 撮影:岡本真
119ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
2015年7月に新館オープンした日出町立図書館。ここでみつけたひと工夫を
紹介したい。日出町では、2014年11月27日に亘
わたりちょう
理町と友好都市を締結している。
この縁は東日本大震災をきっかけに、町花がサザンカであるという共通点からス
タートしているとのことだ。
日出町立図書館の一角には、友好都市である亘理町の町史や民話に関する資料
を集めて、友好都市であることをPRするコーナーが設けられている。素晴らし
い点は友好都市に関する資料を集めただけでなく、亘理町がどのような町なのか
をシンプルに紹介している点である。A4サイズほどの掲示物で、亘理町の特産
品であるいちごをあしらい、亘理町と日出町を比較しながら面積や人口といった
まちの概要がまとめられている。
平時から、友好な関係にある都市ついて住民同士が知っておくことは、防災上
の観点からみても重要であろう。
File
376 日出町立図書館(大分県)
友好都市のプロフィールをひと言紹介
■日出町立図書館 *2016年1月現在のデータ
http://www.town.hiji.oita.jp/page/hiji-library.html
大分県日出町3244-1 BiVi日出2F
TEL:0977-72-3232 FAX:0977-72-6999
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
120 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
File190(第4号)で紹介した新聞書評を活用した展示は、書評に掲載された本
を記事と一緒に展示するというものだったが、展示の度に書評をコピーして切り
抜く手間が意外とかかる。もっと手間をかけずに新聞書評を活用したい場合は、
どのような取り組みがあるだろうか? 滋賀県日野町立図書館での活用事例を紹
介したい。
日野町立図書館では、「新聞の書評に載った本」というコーナーを設け、地元の
京都新聞などの書評に取り上げられた本を紹介しているが、その際、書評欄を切
り抜くことなく、新聞をそのままクリップでとめて掲示している。書評に掲載さ
れているタイトルのうち、図書館で所蔵しているものについては緑色のマーカー
で印をつけ、請求記号を手描きで追記しているところがポイントだ。掲示には大
きいダブルクリップを使用しているので、めくれば過去の記事も見ることができ
るようになっており、その下には掲載された本も一緒に展示している。
新聞書評と合わせた本の展示はこれ以外にもさまざまなパターンがあるが、実
際の状況に応じて、よいとこ取りをして挑戦してみてほしい。
File
377 日野町立図書館(滋賀県)
書評が掲載された図書の請求記号を案内
■日野町立図書館
http://www.library.town.shiga-hino.lg.jp/
滋賀県日野町松尾1655
TEL:0748-53-1644 FAX:0748-53-3068
撮影日:2015年12月11日 撮影:岡本真
121ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
どこの図書館でも発行しているであろう「図書館報」や「図書館だより」は、利用
者にとって図書館の動向を知る重要な情報源だ。File303(p.046)、File320(p.063)
File373(p.116)では、自治体が発行する広報誌を図書館内でどのようにPRして
いるかを取り上げた。では、自館で発信する情報については、館内でどのように
PRしているだろうか? 多くの図書館がカウンター近くの掲示板などに貼りつけ
てPRをしているが、それで十分だろうか?
茨城県の筑
ちくせい
西市立中央図書館では、全ての学習席にハードタイプのクリアケー
スに入れた図書館報を置いている。学習席には図書館のヘビーユーザーはもちろ
んのこと、図書館資料を利用しない学生も集まることから、PRするには絶好の
場所といえる。情報提供の方法として、手に取りやすいケースに入れている工夫
も見逃せない。
File
378 筑西市立中央図書館(山口県)
学習席に図書館報
■筑西市立中央図書館
http://library-city-chikusei.jp/
茨城県筑西市下岡崎1-11-1
TEL:0296-24-3530 FAX:0296-20-1008
撮影日:2015年11月5日 撮影:岡本真
122 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
イベントを告知する際、利用者とその告知をどのようなストーリーで結びつけ
るかを工夫することで共感や感動を与え、イベントに興味を持ってもらうことが
できる。筑西市立中央図書館でみかけたイベントの告知方法が秀逸だったので紹
介したい。
学習席に「ご自由にお取りください」と書かれた手紙のようなものが置いてあっ
た。開いてみると、なんとイベントの告知チラシだった。偶然かもしれないが、
そのイベントの内容が「手紙の書き方講座」だったので、とても印象に残っている。
印象に残っているだけでなく、チラシは複雑に折りたたんであったので元の場所
に戻せなくなり、持ち帰らざるをえない状況となった。
利用者が気にとめ、印象に残る工夫は、このように利用者の目線や動きを想像
してこそ成り立つということをぜひ覚えておいてほしい。
File
379 筑西市立中央図書館(茨城県)
イベント案内を手紙で
■筑西市立中央図書館
http://library-city-chikusei.jp/
茨城県筑西市下岡崎1-11-1
TEL:0296-24-3530 FAX:0296-20-1008
撮影日:2015年11月5日 撮影:岡本真
123ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
電子書籍を貸し出す、「電子図書館」を導入する図書館が徐々に増えてきている。
データベースのサービスなどの新しい形態のサービスを導入した場合、それが特
にウェブサービスなど有形のものではない場合、新しく導入したことをPRする
のがとても難しい。
2014年10月から「筑西市電子図書館」を導入した筑西市立中央図書館では、こ
の無形のサービスをPRするために、40インチほどの大きいディスプレイに電子
図書館の画面を映し出すという工夫を行っていた。デモ映像をつくるわけでも、
音楽が流れているわけでもないが、電子図書館のトップ画面を映し出している傍
らにフライヤーが置いてあり、新しいサービスであることはよく伝わってきた。
シンプルではあるが、このようなディスプレイをあまり行ってこなかった図書
館では目を引くことは間違いない。
撮影日:2015年11月5日 撮影:岡本真
File
380 筑西市立中央図書館(茨城県)
電子図書館をモニターでアピール
■筑西市立中央図書館
http://library-city-chikusei.jp/
茨城県筑西市下岡崎1-11-1
TEL:0296-24-3530 FAX:0296-20-1008
124 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
図書館に慣れ親しむ利用者を育てるために、ブックスタートやお話し会などを
開催している図書館は多いだろう。まずは本を読むことに親しんでもらうという
スタンスで全く問題ないと考える。だが、ある程度、本が読めるようになってか
らは、図書館は読書をするだけの場所ではないことをぜひPRしてほしい。その
参考となる事例として、尾道市立中央図書館の児童コーナーに置かれていた「図
書館の本」がよくできていたので紹介したい。
表紙には「探している本がある! 調べたいことがある! そんな時に読んで
ね!」と書かれており、本の探し方を紹介しているのだが、そこから図書館が「色
んなことを調べられる場所」であること、調べるときにどのような手段があるの
か、また館内の本を探す際のヒントとなる案内などを具体的に図説し、図書館
が総合的にわかる本となっている。8ページほどの小冊子だが、つくりも美しく、
素晴らしい取り組みである。
File
381 尾道市立中央図書館(広島県)
子ども向けのオリジナル図書館使い方ガイド
■尾道市立中央図書館
http://www5.city.onomichi.hiroshima.jp/tosyokan/centerlib/web/
広島県尾道市東久保町4-1
TEL:0848-37-4946 FAX:0848-37-0870 E-mail:toshokan@onomichi-lib.jp
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
125ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
著者名を表す見出し板への工夫はFile350(p.093)などで紹介したが、いずれ
も大人向けの一般文芸書での事例だった。ここでは児童向けの読み物や絵本にお
ける事例を紹介するので、こちらもぜひ参考にしてほしい。
藤枝市立駅南図書館の絵本コーナーでは、絵本作家の著者名が書かれた見出し
板によみがなをふり、代表的な作品の名称も合わせて紹介している。絵本の場合、
絵を描いた作家名よりも、物語を書いた著者名を手がかりに本を探すことが多い
ので、その著者の代表的なタイトルを目立つように表示しているのは、利用者に
とって便利である。
また、絵本の見出しは低書架に入れられることが多いので、利用者がぶつかっ
てケガをしないように柔らかい素材を利用するという安全面での配慮もさすがで
ある。
File
382 藤枝市立駅南図書館(静岡県)
著者名表示に代表作を
■藤枝市立駅南図書館
http://lib.city.fujieda.shizuoka.jp/
静岡県藤枝市前島1-7-10 BiVi藤枝3階
TEL:054-636-4800 FAX:054-636-4808
撮影日:2015年11月8日 撮影:岡本真
126 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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「雑誌スポンサー制度」には、スポンサーが購入代金を寄付する場合や、雑誌そ
のものを寄付する場合など、さまざまなやり方がある。島田市立島田図書館でみ
かけた雑誌スポンサーの広告は、これまでに紹介した事例と違い、雑誌本体に広
告を掲示するだけでなく、雑誌棚にも広告を掲示し、広告効果を高める工夫がみ
られた。
また、広告の基本である「ストーリーづくり」を重視し、たとえば、まちの板金
工場が自動車雑誌のスポンサーになっていたり、ツアー会社が列車の時刻表雑誌
のスポンサーになっていたりする。このようなセレクトが実現している背景には、
購入代金を寄付してもらうという一般的なしくみではなく、書店を通じて雑誌を
寄付してもらうというしくみを採用しているからだろう。スポンサーになる企業
としても、自社のPRにつながる雑誌のテーマを主体的に選ぶことができ、スポ
ンサーになりやすい。広告を出す側にもきちんとメリットを感じてもらえること
が、この制度の成功に欠かせないポイントである。
File
383 島田市立島田図書館(静岡県)
ストーリーづくりを重視した雑誌スポンサー制度
■島田市立島田図書館
http://www.library-shimada.jp/
静岡県島田市本通3-3-3
TEL:0547-36-7226 FAX:0547-37-3469 E-mail:shimada-tosyo@city.shimada.lg.jp
撮影日:2015年11月8日 撮影:岡本真
127ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
どのような展示をするかを考える際に欠かせないのが、その地域の地場産業が、
観光なのか、農業なのかといった町の情勢に目を配ることもさることながら、周
囲にどのような施設があるのかという視点である。これらを把握したうえで、利
用者への情報提供を検討することにより、新しい切り口での展示の可能性がひろ
がるに違いない。
大野城まどかぴあ図書館では、近隣に映画館があることに着目し、近日上映や
上映中の作品のフライヤーを掲示し、図書館がその作品に関連する蔵書を所蔵し
ている場合は、その本もあわせて紹介するコーナーを設けている。蔵書情報には、
タイトル、著者名のほか、出版年や書誌番号、映画との関連についての簡単な説
明が記載されている。
映画のDVDとその原作本をセットで配架するという斬新な配架方法をFile341
(p.084)で紹介したが、DVDを所蔵していない場合でも、このような形式であれ
ば映画と本を結びつけて紹介できる。新しい視点での展示を考える際の参考にし
てほしい。
File
384 大野城まどかぴあ図書館(福岡県)
上映中映画の原作を紹介
■大野城まどかぴあ図書館
http://www.madokapialibrary.jp/
福岡県大野城市曙町2-3-1
TEL:092-586-4010 FAX:092-586-4011
撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
128 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
展示を行う際、どのようなテーマで本を集めるかということ以外にも気をつけ
たいのが、展示の見せ方やデザインである。豊田市立中央図書館で行われていた
テーマ展示のひと工夫は、テーマに合わせたパネルのデザインにある。
「賞特集」というテーマ展示で集められたのは、文学賞を中心としたさまざまな
ジャンルの代表的な賞に関する本である。「ノーベル賞」や「国民栄誉賞」といった、
文学賞以外の賞も取り上げられているため、文芸書以外の本も多数展示されてお
り、各賞を紹介するパネルには賞状のデザインが採用されている。賞の名前とと
もに、その賞がどのような作品に与えられる賞なのか、また、各年度における主
な受賞者の解説も合わせて展示されていた点も素晴らしい。本の内容紹介に徹し
た展示もよいが、展示のテーマ自体に興味を持ってもらう工夫が、デザイン面で
も内容面でもみられたよい取り組みである。
File
385 豊田市立中央図書館(愛知県)
企画展示のパネルデザインにひと工夫
■豊田市立中央図書館
http://www.library.toyota.aichi.jp/
愛知県豊田市西町1-200
TEL:0565-32-0717 FAX:0565-32-4343
撮影日:2015年10月23日 撮影:岡本真
129ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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夫
2015年7月に移転しオープンしたばかりの名古屋市立瑞穂図書館でみつけた
小さな工夫を紹介したい。同館は瑞
み ず ほ
穂文化小劇場との合築で、図書館は建物の1
階ワンフロア部分に位置する。壁面のフライヤーを集めたコーナーでは、たくさ
んのフライヤーが所狭しと並べられていた。直近のイベントは、利用者の目につ
きやすい最上段の面陳できるところに置いているのだが、スペースの関係上、ど
うしても重ねる必要があり、イベントの開催日すらみえなくなってしまうことも
ある。この際、素晴らしいのが、イベントの開催日を記入したふせんで見出しを
つけることで、探しやすく、整理もしやすい環境を整えていることだ。
ふせんは束になっているフライヤーの一番下につければ、移動する際などに落
ちてしまうのを防ぐこともできる。個性豊かなデザインのフライヤーが一同に並
ぶことを考えると、このような統一したアナウンスを追加することで、利用者は
ピンポイントに日付をチェックすることができる。フライヤーを重ねずとも面陳
できるような場合でも、あれば嬉しい工夫である。
File
386 名古屋市立瑞穂図書館(愛知県)
フライヤーの見出しに日付を明記
■名古屋市立瑞穂図書館
https://www.library.city.nagoya.jp/
愛知県名古屋市瑞穂区豊岡通3-29
TEL:052-853-0450 FAX:052-853-0451
撮影日:2015年10月22日 撮影:岡本真
130 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
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読書の際に、あれば便利なツールを貸し出している取り組みを紹介したい。
恩
お ん な そ ん
納村文化情報センターでは、読んでいる行だけに注目できるようにスリットが
入った読書補助ツール「リーディングトラッカー」を貸出している。本を借りる際
に一緒に館外貸出もできるように、資料番号をつけたケースにセットされている
が、図書館システム上では、資料区分を本とは別カウントにしてあるので、本の
貸出冊数が減ることなく気軽に利用できるようになっている点も注目だ。
File
387 恩納村文化情報センター(沖縄県)
リーディングトラッカーの館外貸出
■恩納村文化情報センター
http://www.onna-culture.jp/
沖縄県恩納村字仲泊1656-8
TEL:098-982-5432 E-mail:onnalib@ovcic.jp
写真提供:恩納村文化情報センター
131ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
図書館で調べ物をする際には、図書館の資料を使うのが大前提ではあるが、パ
ソコンを持ち込んで調べ物をメモしたり、資料を作成することができる環境を提
供する図書館も増えてきている。その際に利用者目線では重要かつ、整備されて
いたら嬉しいのがパソコンへの充電ができるかどうかという点である。
新宿区立中央図書館では、パソコンを持ち込んで使えるパソコン優先席が16
席用意されており、ここでは電源の利用が可能である。開館時間内であれば時間
の制限なく利用できる。また、電源とともに整備してあると便利な公衆無線LAN
も整備されており、調べ物にはもってこいの環境が整っている。
スマートフォンの充電についてはその是非が難しいところではあるが、特に利
用が伸び悩んでいるといわれる30代、40代の利用者を増やしたいというのであ
れば、せめてパソコンの電源は最低限提供すべきと考える。
File
388 新宿区立中央図書館(東京都)
パソコン持ち込み席での電源提供
■新宿区立中央図書館
http://www.city.shinjuku.lg.jp/library/
東京都新宿区大久保3-1-1
TEL:03-3364-1421(代表) FAX:03-3208-2303
撮影日:2015年5月13日 撮影:岡本真
132 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
三重県の南伊勢町には、地元のNPO法人みなみいせ市民活動ネットによって
運営されている「みなみいせ図書室」がある。地域の手で育まれ、愛されている図
書館である。
第12号で特集した「図書館×カフェ」では、気軽に始められるカフェの事例を
紹介したが、この図書館にもそんなカフェがあるので紹介したい。
といってもカフェというよりも、カフェタイム。木曜の午後1時から3時まで
の間だけ定期イベントのようなかたちで行われている。特にカフェ用のテーブ
ルと椅子があるわけでもなく、通常の閲覧席でお茶を楽しむことができるのだ。
ちょうどその時間帯に行ったので、声をかけて珈琲をいただいた。
厳密には、飲食が営業になるかどうかで食品衛生法を守る必要があるが、図書
館の規模や館内の雰囲気、利用者の規模といったことも踏まえケースバイケース
で試してみる価値はあるだろう。
File
389 みなみいせ図書室(三重県)
イベント的図書館カフェ、始めました
撮影日:2015年1月20日 撮影:岡本真
■みなみいせ図書室
http://www.amigo2.ne.jp/~cyobun-n/mican/tosyo.html
三重県南伊勢町五ヶ所浦3917 町民文化会館1階
TEL:0599-67-1013
133ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
小
おごおり
郡市立図書館には1987年から運用を続けている移動図書館車「しらさぎ号」
がある。2 代目のしらさぎ号は 1989 年に買い替えられ、現在動いているのは
2002年に買い換えられた3代目となる。
紹介したいのはこの「しらさぎ号」に施された時計である。移動図書館車が行く
先は基本的に屋外であり、学校などの施設に訪問する場合はまだいいが、公園や
団地など屋外のステーションに行く場合、利用者から時間を聞かれることが多
かったので、外から見える位置に時計をつけてもらったそうである。車の揺れに
も耐えられるように船舶向けの仕様になっている。車内に置き時計を置いている
事例は多いだろうが、車外からいつでも確認ができるようにしている事例は少な
いのではないだろうか。
File
390 小郡市立図書館(福岡県)
移動図書館車に時計を設置
■小郡市立図書館
http://www.library-ogori.jp/
福岡県小郡市大板井136-1
TEL:0942-72-4319
撮影日:2015年3月17日 撮影:岡本真
134 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
比較的小規模の図書館では、大人、高校生、児童といった年代別にスペースを
確保することが難しく、その時々で利用者同士のすみ分けがうまくいかないと
いった悩みを抱えることも多いだろう。
浅
あさくち
口市では、市を挙げたまちづくりの一環として「学力向上NO.1プロジェク
ト」に取り組んでおり、子どもたちの学力向上のために、学習サポートや学習環
境の整備など、幅広い支援を行っている。
鴨
かもがた
方図書館には、1フロアに3つのテーブル席があるが、フロア面積との兼ね
合いもあり、潤沢に席があるかというとそうではない。中学生や小学生が大人
に遠慮することなく使える学習席を確保するために、各テーブル席に「中学生学
習コーナー」、「小学生学習コーナー」と書かれた手づくりの掲示物を置いている。
ちょっとしたことだが、どの利用者も気兼ねなく使えるスペースの確保が掲示物
一つの工夫でできるのだ。
File
391 浅口市立鴨方図書館(岡山県)
小、中学生向け学習席を確保
■浅口市立鴨方図書館
http://www.city.asakuchi.lg.jp/lib/
岡山県浅口市鴨方町鴨方2244-13
TEL:0865-44-7004 FAX:0865-44-7004
撮影日:2015年3月22日 撮影:岡本真
135ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
図書館にかばんを持ち込めない図書館の場合、防犯上、コインロッカーを設置
しているところが大多数を占める。
かばんの持ち込みが可能な図書館でも、あったら嬉しい設備が間口が大きめの
ロッカーである。ロッカーといっても、小学生が学校帰りに来てそのままランド
セルを置くことを前提につくられているようで、扉もついていない。もちろん大
人が大きいバッグなどを置いてもよい。
地域的な文化として、学校帰りに図書館に寄ることが歓迎されているからなの
か、図書館運営のなかでたまったノウハウの成果なのか定かではないが、沖縄県
と長野県に集中して導入されているようだ(ほかの地域でも導入されているとこ
ろがあればぜひ見学させてほしい)。
小銭を常備していない小学生にとっては、このロッカーがあるだけで、学校帰
りに寄っていいんだよということが自然と理解できる設備である。
File
392 池田町図書館、富士見町図書館(長野県)
ランドセルも入るロッカー
■富士見町図書館
http://www.town.fujimi.lg.jp/site/library1/
長野県富士見町富士見3597-1
TEL:0266-62-7930 FAX:0266-62-7611 E-mail:fujimi@libnet-suwa.gr.jp
■池田町図書館
http://www.ikedamachi.net/kyoiku/6-2_tosyokan.html
長野県池田町大字池田3203-5
TEL:0261-62-5659 FAX:0261-62-6616
富士見町図書館 撮影日:2015年3月31日 撮影:岡本真 池田町図書館 撮影日:2015年4月1日 撮影:岡本真
136 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
全国の県立図書館のサイトでは、県内にある図書館の情報をまとめたリンク集
が公開されている。47都道府県を比べた場合、岡山県立図書館が提供している
リンク集が素晴らしいので紹介したい。さまざまな情報を集めて図書館訪問を
行っている身からすると、一番使えるリンク集なのだ。
まず、岡山県の地図上で自治体ごとの図書館の数が明示されており、どの地域
に図書館がないのかも一目瞭然である。また、ぱっと見ただけで自治体の広さと
図書館数の比較が可能で、その密度も把握できる。極めつけはクリッカブルマッ
プが仕込まれており、各自治体名の部分をクリックすれば図書館の公式サイトに
直接ジャンプできるようになっている。
なお、これに負けじと劣らないのが京都府立図書館公式サイト「市町村の窓」に
ある「図書館・図書室の紹介」のページである。いずれも地図が効果的に使われて
おり、地理的感覚に乏しい他県の者からもとてもわかりやすい。利用目的によっ
てはテキスト一覧のほうが使いやすい場合もあるが、ぜひ見比べてみてほしい。
File
393 岡山県立図書館(岡山県)
究極の県内リンク集
■岡山県立図書館
http://www.libnet.pref.okayama.jp/
岡山県岡山市北区丸の内2-6-30
TEL:086-224-1286(代表) FAX:086-224-1208
http://www.libnet.pref.okayama.jp/libnet/koukyou/
137ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
最近、雑誌書架の棚にその雑誌の表紙をカラーコピーしたものを貼りつけて、
利用者や職員が棚にスムーズに戻せるようにしているケースが増えている。この
方式で利用がスムーズになることは確かだが、それだけで十分だろうか?
白河市立図書館では、ここにひと言を加えることで、気の効いた案内を実践し
ていたので紹介したい。やることはとても簡単で、雑誌を手にとった際に現れる
表紙のコピーに、「現在館内で利用中です」という表示を加えるだけである。
面陳した本が借りられた際に、その本が貸出中であることを表示する掲示物を
紹介した事例はこれまでにもあったが、この表記を雑誌コーナーにも転用した
ケースといえる。
File
394 白河市立図書館(福島県)
利用中の雑誌棚にその旨を明記
■白河市立図書館
http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=265&ik=1
福島県白河市道場小路96-5
TEL:0248-23-3250 E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
138 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
館内のフロアマップは、どういった方法で提供しているだろうか? ほとんど
の図書館ではA4サイズのコピー紙に印刷し、配布していることだろう。さまざ
まな図書館を訪問している身としては、訪問の記録として保存する目的もあるた
め、持ち帰ってくることもしばしばであるが、持ち帰ったものを再び持参して利
用している利用者はいるだろうか? このように考えてみると、館内でしか使う
ことのないフロアマップを配布する意味はあまりないようにも思える。ではどの
ように提供するのがベストだろうか? という問いに答えられるのがこの事例だ。
新居浜市立別
べ っ し ど う ざ ん
子銅山記念図書館では、フロアマップを掲示している隣でA4サ
イズのハードケースに入れて持ち運べるようにしたものを提供している。ある程
度の硬さがあるので、見ながら歩くにはちょうどよい。
開館したばかりの図書館であれば、印刷されたフロアマップはPRに有効とい
えるが、市民が図書館に馴染み、印刷したフロアマップが棚から減らないような
状況になってきた場合は、ぜひこの方法を試してみてはどうだろうか。
File
395 新居浜市立別子銅山記念図書館(愛媛県)
持ち運べるフロアマップ
■新居浜市立別子銅山記念図書館
https://lib.city.niihama.lg.jp/
愛媛県新居浜市北新町10-1
TEL:0897-32-1911 FAX:0897-32-7007
撮影日:2015年11月26日 撮影:岡本真
139ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
環
境
の
改
善
読書週間である10月27日から11月9日は、毎年、全国の図書館でさまざまな
取り組みが行われているが、2015年の読書週間の直後に太宰府市民図書館を見
学した際、児童コーナーで行われていたパネル展示が素晴らしかったので紹介し
たい。
太宰府には市内に7つの公立小学校と4つの公立中学校があるが、小学校図書
館には学校司書が配置されており、同館がその支援を行っていることから、読書
週間中は学校図書館と連携し、太宰府市民図書館内の児童コーナーで小学校図書
館を紹介するパネルを展示しているのだ。
公共図書館が学校図書館と連携していることをPRする場合、学校図書館で行
われる場合がほとんどで、公共図書館でPRする事例は珍しい。普段は学校図書
館に行く機会の少ない親世代にとっても、学校図書館での取り組みを知ってもら
えるよい取り組みである。
File
396 太宰府市民図書館(福岡県)
読書週間にあわせて学校図書館を紹介
■太宰府市民図書館
https://www.library.dazaifu.fukuoka.jp/
福岡県太宰府市観世音寺1-3-1
TEL:092-921-4646 FAX:092-921-4896
撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
140 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
地
域
連
携
の
試
み
図書館サービスは、図書館という場だけで行うものではない。先日、鳥取県立
図書館のいわゆる出張図書館サービスを目の当たりにしたので紹介したい。
2015年1月に鳥取県男女共同参画センター「よりん彩」が開催する「インター
ネット講座」の講師として登壇したときのことである。会場は鳥取県立図書館隣
接の「とりぎん文化会館」だったが、講演のテーマに関する書籍を鳥取県立図書館
が出張展示してくれていたのだ 。
講師の著書はもちろんのこと、インターネットに関する入門的な資料やトラブ
ル対処のための資料などを50冊ほど展示し、県立図書館の利用者カードを持っ
ていればその場で貸出も可能な状態であった。貸出の手順はいたって簡単で、利
用者カードの番号と資料の番号をメモし、図書館に戻ってから職員がシステムに
データを入力するというアナログではあるが、確実かつコストもかからない方法
である。「図書展示コーナー」と書かれた目立つ色のスタンドパネルには、貸出が
可能なこと、返却は最寄りの図書館でも可能なことが書かれており、手厚いサー
ビス体制が整っている。
File
397 鳥取県立図書館(鳥取県)
関連図書の出張展示
■鳥取県立図書館
http://www.library.pref.tottori.jp/
鳥取県鳥取市尚徳町101
Tel:0857-26-8155 Fax:0857-22-2996
撮影日:2015年1月24日 
撮影:岡本真
141ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
地
域
連
携
の
試
み
鳥
と す
栖市立図書館の特集コーナーで、地元の博物館と連携したテーマ展示の企画
をみつけたので紹介したい。
鳥栖市には、久光製薬が設立した中冨記念くすり博物館がある。このくすり博
物館が発行する機関紙に、本にまつわる連載があることから、鳥栖市立図書館で
はその連載と連動した展示コーナーを設置しているのだ。
展示コーナーには、機関誌が紹介している本を展示すると共に、本を借りる際
に機関紙も一緒に借りられるようにしている。また、展示コーナーは十分なス
ペースを取っているので、機関紙のほかにも薬に関連する資料や久光製薬に関す
る資料も展示しており、博物館とのよい関係づくりにひと役買っていることは間
違いないだろう。
File
398 鳥栖市立図書館(佐賀県)
博物館との地域連携でテーマ展示
■鳥栖市立図書館
http://www.city.tosu.lg.jp/library/
佐賀県鳥栖市布津原町11-21
TEL:0942-85-3630 FAX:0942-84-2828 E-mail:tosyokan@city.tosu.lg.jp
撮影日:2015年3月17日 
撮影:岡本真
142 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
地
域
連
携
の
試
み
富士見町図書館は人口1万5,000人ほどを抱える規模の自治体のなかで、17年
連続で貸出冊数がナンバーワンの町である。その実績を影で支えるサービスの一
つが、「宅配ボランティア」である。主な対象は交通手段のない高齢者だが、返却
はもちろんのこと、希望すれば本を読み聞かせしたり、話し相手になることも
行っている。
東西に細長く、北側に八ヶ岳、南側は入笠山に挟まれたこの地域で暮らす住民
は、生活するにはどうしても駅や図書館がある周辺に集中している町の中心まで
出て行く必要がある。同じ生活圏のなかでの助け合いだからこそ、自分の生活の
動きのついでに参加できる図書館ボランティアが成立している点に注目した。こ
のような生活に密着したサイクルで助け合えるような仕組みがもっと広がって
いってほしい。
File
399 富士見町図書館(長野県)
読み聞かせも! 究極の宅配ボランティア
■富士見町図書館
http://www.town.fujimi.lg.jp/site/library1/
長野県富士見町富士見3597-1
TEL:0266-62-7930 FAX:0266-62-7611 E-mail:fujimi@libnet-suwa.gr.jp
撮影日:2015年3月31日 撮影:岡本真
143ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館100連発 4
地
域
連
携
の
試
み
雑誌スポンサー制度は、企業による地域貢献活動のための制度というイメージ
が強いが、大阪府阪
はんなん
南市立図書館では、個人でも雑誌スポンサーになれる制度設
計になっている。特に市外在住の個人が雑誌スポンサーになった場合は、広告の
掲載はもちろんのこと、利用者カードを発行してもらえるというメリットがある
とのことだ。
大阪の南部に位置し、和歌山市のほうが圧倒的に近い位置にある阪南市では、
今のところ近隣自治体と相互利用協定を結んではいない。このため、図書館利用
者は市内に在住もしくは通勤、通学する人に限られることから、隣接する自治体
に住む住民にとって、このメリットは大きい。また、個人でもスポンサーになれ
るという選択肢を用意することで、地元に直接的に還元される寄付をしたいと考
える人も増えるかもしれない。
個人でもスポンサーになれる制度設計を行っているのは、今のところ関西地域
だけのようだが、すでに雑誌スポンサー制度を導入している図書館でも検討して
みる価値はありそうだ。
File
400 阪南市立図書館(大阪府)
個人でもなれる雑誌スポンサー
■阪南市立図書館
https://www3.city.hannan.osaka.jp/
大阪府阪南市尾崎町35-3
TEL:072-471-9000
撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
144 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
はじめに
本号より、連載「図書館資料の選び方・私論」が始まります。
本誌秋号(第13号)の「予告編」では、「図書館では、どのようにして本が選ばれ
ているか?」、「選書をめぐる論争」、「蔵書構成は図書館政策、そして地域政策で
もある」、そして、「蔵書づくりのあれこれ」という一年間全4回の柱を立てて連
載を進めていきますと予告させていただきました。
基本的には、順を追ってそれぞれのアプローチに基づき「私論」を展開いたしま
すが、相互に関連するトピックについては、柱立てを超えて議論が行き来するこ
とをご容赦ください。また、具体的な事例においては、筆者の勤務地であった図
書館や今現在の現場での取り組みもご紹介しますが、いずれも筆者個人の見解で
あり、組織を代表して主張するものではありませんので、この点もどうぞご了解
のほどお願いします。
では、一年間、おつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
1.図書館では、どのようにして本が選ばれているか?
1-1 出版世界から図書館の蔵書世界へ
図書館ではどのようにして本が選ばれているのかという議論の前に、まずは図
書館の本を選ぶとはどのようなことなのか、「そもそも論」について触れておきた
いと思います。
出版業界という産業で流通している商材である書籍を、教育文化機関である図
図書館資料の選び方・私論 ~その1〜
1963年、大阪生まれ。1987年、豊中市立図書館、1998年、滋賀県旧永源寺町
で図書館開設準備を経て、2000年に永源寺町立図書館、2006年から合併後の東
近江市立八日市図書館、能登川図書館などでの勤務後、2011年、瀬戸内市新図
書館開設準備担当。2009年から2010年まで、京都学園大学司書課程非常勤講師、
同志社大学政策学部嘱託講師を兼業。2008年、政策科学修士(同志社大学)。
嶋田学(しまだ・まなぶ)[瀬戸内市新図書館開設準備室]
連載
145ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
書館(本稿では公立図書館を指します)が、その活動を成立させるための公共財産
として選択収集し、保存、提供する資料の蓄積である蔵書とは、どのような要素、
そして意味があるのでしょうか。
年間8万点近くの出版物から、それぞれのまちの図書館が、「土地の事情及び
一般公衆の希望に沿い」(図書館法第3条)図書館の蔵書を選定します。まずは図
書館の蔵書とは、どのようなものか、またどのように構築されていくものなのか、
系統立てて考えてみたいと思います。
1-2 図書館蔵書とは
図書館蔵書とは、図書館資料によって構成される資源の集合体とされていま
す。図書、雑誌、新聞、視聴覚資料(フィルム、ビデオ、DVD、レコード、CD)、
冊子資料、パンフレット、リーフレット、電子媒体情報(CD-ROMなど)などが想
定されています。なお、図書館が契約するオンラインデータベースは、アクセス
権の利用契約であり、図書館が主体的に収集、保存するものと異なるので、図書
館資料とは見なされていません。電子書籍は、今後、どのような契約形態で普及
していくのかによりますが、現在わずかながら提供されているサービスを見る限
り、図書館資料と見なすかどうか微妙なところです。以後は、図書館で収集、提
供、保存する媒体が多様であることから、蔵書をコレクションと言い換えて表現
します。
1-3 コレクションづくりとは
文字通り、図書館資料群を構築することです。図書館コレクションには、二つ
の見方があります。一つは、資料選定(図書選択)という営為の連続の「結果」とし
てのコレクションの見方、もう一つは「成果」として評価する見方です。
つまり、結果としてのコレクションは、利用者要求の忖度、リクエスト、話題
の出版物などをもとに資料選定した結果としてのコレクション状態のことを意味
します。一方、成果としてのコレクション(Collection Building)は、利用者要求
も踏まえつつ、諸要件によってコレクションを組織的意識的に形成した状態のこ
とを意味します。
コレクション構築を、その都度の事象対応の結果として評価するのか、あるい
は一定の構成的意図の成果として評価するのかという、図書館活動における評価視
点の置き方によっても、コレクション構築の営為も異なってくることがわかります。
146 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
このことは、本連載で言及する資料選定の「要求論」と、「価値論」あるいは「目
的論」とも呼応します。「要求論」では、あくまで資料の選定は利用者ニーズを基
本に行いますから、図書館があらかじめコレクション構築における諸要件を設定
することは理論的にはあり得ません。必然的に、収集されたコレクションはニー
ズへの応答の「結果」として構成されます。一方、「価値論」では、資料の個別的評
価ないしはその相互関連を踏まえて資料を収集しますから、構築された資料群は、
まさにその意図の「成果」として現れます。「目的論」も同様に、図書館をある目的
に向けて展開し、そのために役立つ資料を選定するわけですから、その構築の現
れは「成果」として認識されます。
両方とも必要な要素でしょう……というところですよね。現実的には対立概念
ではなく調整要素だと思いますが、実際にこうした考えによる論争があったこと
や、そもそもこうした概念自体を認識もしない選書実態のなかで、選書をいかに
充実させ、当該図書館にとってより良いコレクションをつくるには、ということ
が研修のテーマになり続けています。
1-4 コレクションの構成要素
図書館のコレクションを幾つかの属性に分けて整理してみます。コレクション
をめぐる議論では、これら属性の要素が必然的に絡み合うため、必要に応じて、
属性を意識して議論を整理する必要があるでしょう。
◎種別蔵書構成
図書館の目的や図書の目的を区分原理とする
 児童書 入門書 実用書 概説書 学術書 研究資料など
◎主題別蔵書構成
主題分類を区分原理とする
日本十進分類法(以下、「NDC」)の分類ごとの蔵書冊数、比率の諸相
◎形態別資料構成
資料の形態を区分原理とする
図書資料
非図書資料(パンフレット、逐次刊行物、地図、フィルム、スライド、マイク
ロ資料、録音資料)
147ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
1-5 コレクション構築に勘案されるべき条件の諸相
図書館のコレクションづくりは、1-4で説明した図書やその他の資料の属性に
加え、コレクションを提供するサービス対象、あるいは対象を取り巻く環境につ
いても十分に理解し、その関連性に基づいて検討される必要があります。以下で
は、その諸相を例示してみます。
1-5-1 利用者の諸相(対象界のセグメント)  
◎年齢区分
児童 → 乳幼児、幼児、小学生、中学生、高校生、十代青少年、勤労青少年
成人 → 若年層、中年層、壮年層、前期高齢者、後期高齢者
◎職業属性
無職、自営業、事務職、営業職、技術職、職人、サービス業、医療職、看護職、
介護職、教職、農林水産職、家事職、その他の専門職
◎個人特性
健常者、障がい者(身体、精神、発達)およびその家族、難病罹患者およびその
家族、生活困窮者、多様な性
◎その他の属性
外国人、留学生
1-5-2 地域社会の属性
◎地理的属性
都市部、近郊部、田園地域、中山間地域、山間部
◎産業的属性
農林水産地域、製造業地域、商業地域、住宅地域
◎地域歴史属性
古くからの居住地(城下町、門前町)、戦後開発された居住地、合併自治体、
非合併自治体
◎自治体政策的属性
自治体総合計画、福祉施策、教育文化施策、産業経済施策
148 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
1-6 コレクション形成にかかる法的側面
図書館のコレクションづくりに際しては、運営主体、活動を規定する法的な諸
条件も重要な検討事項となります。公立図書館では、「図書館法」第2条、学校図
書館については「学校図書館法」第2条、大学図書館については「大学設置基準」第
38条に、それぞれ資料収集についての規定が記されています。
また、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成13年7月18日文部
科学省告示第132 号)」では、市町村立図書館と都道府県立図書館の資料収集にお
ける留意事項が明記されています。
法令とは異なりますが、国内すべての図書館の職能団体である日本図書館協会
が、「図書館の自由宣言」(1954年採択 1979年改訂)、および「図書館員の倫理綱
領」(1980年6月4日 総会決議)という倫理規定によって、種々の図書館におけ
る資料提供についての留意事項を提起しています。
たとえば、「図書館の自由に関する宣言」では、第1に「 図書館は資料収集の自
由を有する 」を上げ、「1.図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国
民のあらゆる資料要求にこたえなければならない 」、「2.図書館は、自らの責
任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際、
(1)多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を
幅広く収集する。(2)著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著
作を排除することはしない。(3)図書館員の個人的な関心や好みによって選択を
しない。(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄した
り、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。(5)寄贈資料の受入にあたっても
同様である。図書館の収集した資料がどのような思想や主張をもっていようとも、
それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない」などの事
項を明記しています。
また、「図書館員の倫理綱領」では、「資料に関する責任」として、「第4 図書館
員は図書館の自由を守り、資料の収集、保存および提供につとめる」、「第5 図書
館員は常に資料を知ることにつとめる」、「第12 図書館員は、読者の立場に立っ
て出版文化の発展に寄与するようつとめる」などの倫理規定を明記しています。
149ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
2.コレクションづくりの実際~選書とは~
2-1 選書手段から見た場合
2-1-1 「見計らい選書」
書店や取次店(本の問屋)から、選定用の新刊図書が図書館に届けられ、現物を
見ながら購入図書の選定をする方法。現物で確認できるので、内容確認の精度が
高まる一方、選定に相応しい図書ばかりが届くわけではないので、返品および輸
送コストが無駄になる短所があります。また、一般に取引量(図書購入予算)が少
ないほど、送付される図書タイトルも少なくなる傾向があり、場合によっては
「見計らい」自体に応じてもらえないケースもあります。従って「見計らい選書」は、
選書業務の一部を担うにすぎません。
「見計らい選書」では、複数の担当職員が定期的に見計らい図書を前に、合議し
ながら購入決定する場合と、色分けしたしおり状のメモを購入候補図書に挟み込
み、たとえば2票以上メモがあれば購入決定、1票の場合は、個別協議、保留ま
たは非購入とするなど、合議の機会を持たずに行うケースがあります。
2-1-2 「リスト選書」
書籍の取次店(本の問屋)が編集、発刊する新刊リストから購入図書を選定す
る方法。週単位(取次店によっては日単位)で出版された新刊図書の書誌事項 を、
NDCの分類順に配列編集したものから本を選びます。昨今は、書影が印刷され
ていたり、解題(本の内容を紹介した解説文)や著者紹介も記載されたリストが発
刊されています。「見計らい」のように一部の新刊図書からの選定でなく、当該週
に出版されたタイトルを網羅したリストから選定するので、幅広い出版物に目を
通せる反面、現物による「見計らい選書」ほど内容確認の精度が高くなく、確信を
持てない場合、購入を見送るということも生じます。
「リスト選書」の場合も「見計らい選書」同様、定期的に選書会議を設けて購入候
補について担当職員が説明し合議で購入決定する場合と、リストを回覧して、購
入候補があれば無条件で発注するケースや、2票以上の得票があれば発注し、1
票の場合は保留または非購入とするなど、合議の機会を持たずに行うケースがあ
ります。
150 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
2-1-3 現地現物選書
ここで言う「現地」とは、取次店の集配倉庫、あるいは大型の書店を指します。
図書館職員が、取次店、書店の協力を得て、直接、それぞれの書架から「現物」を
選んで購入を決定する方法です。場合によっては、ポータブル端末機で現物の
ISBN★2
を読み取って選定候補とし、後日、自館蔵書データとの重複チェックを
かけた後、正式発注をするというケースもあります。
また、取次店が開催する、いわゆるブックフェアという「見本市」を、取次店、
あるいは別の会場で行い、現物を見ながら選定候補の書籍スリップを抜き取って、
自館蔵書との重複チェック後、発注するという場合もあります。
2-1-4 その他の選書方法
「リスト選書」で用いられる新刊案内以外に用いられる選定ツールとしては、各
出版社が発行する新刊案内や「週刊読書人」や「図書新聞」といった書評紙、新聞書
評や出版広告、ネット上の新刊情報などがあり、これらも参考にして資料選定を
します。
また、ある取次店では、「ベル」システムというサービスがあり、出版社やジャ
ンルなどで構成されたグループを予め登録しておくと、発注をしないでも、図書
を確保し納品してくれます。売れ筋の文芸書や実用書などが、確実にしかも早く
届くメリットがある反面、基本的にはタイトルごとに個別に資料を選べるわけで
はないので、期待外れな、あるいは必ずしも必要度の高くない図書を購入するこ
とも起こりえます。また、同取次店が提供する「新継続」というサービスは、シ
リーズもの、叢書もの単位で購入申し込みができ、発注しなくても発行されれば
納品されます。
2-2 図書館体制から見た場合
2-2-1 単独図書館
ひとつの自治体でひとつの図書館を運営している場合は、基本的に全職員で選
書に関わる場合が多いと思います。児童書担当とか、一般書担当などの分担が
あったり、場合によっては、正規職員以外の立場の職員は選書に関われないと
いう場合もあると思いますが、単独館の場合、職員数がそれほど多くなかったり、
物理的にひとつの館で仕事をしていることから、合意形成が取りやすく、全員が
選書に関わりやすい体制と言えます。
151ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
もちろん、例外もあります。1自治体1館でも、人口が多く図書館規模も大き
ければ、職員数も多く、雇用条件も様々で、全員が選書に参画することは難しく
なります。
2-2-2 複数館図書館
複数の図書館を有する自治体の場合は、それぞれにいろいろな選書方法が存在
します。複数館とひとくちに言っても、東京23区や政令市のように、1館あた
りの蔵書が20万冊を超える地域図書館を複数館有するような自治体と、人口10
万人から30万人程度の市とでは、域内図書館数や職員数にも大きな違いがあり、
合意形成にかかるコストも異なることから選書のやり方は自ずと異なります。
たとえば、域内図書館がそれぞれ個別に選書をする「各館選書」と、中央図書館
が域内図書館の選書をすべて行う「集中選書」とに分かれます。なお、複数館での
選書についても、単独図書館で述べたような児童、一般、レファレンスなど、奉
仕対象部門ごとに選書を独立して行っている場合もあります。
◎「各館選書」~図書館ごとに選書をする場合~
このトピックは、実は図書館配置計画の違いによって左右される面がありま
す。たとえば、蔵書が30万冊を超えるような中央図書館的な施設を中心として、
周縁部に3万冊未満の分館、あるいは図書室程度のサービスポイントを構成する
ケースと、蔵書や延床面積の最も大きな図書館を拠点としながら、市各域の人口
密集地域に、5万冊から10万冊程度の蔵書を持つ地域図書館を構成する場合では、
職員配置も異なり、業務分担のあり方も自ずと異なります。
図書館ごとに選書をするケースが多いのは、後者のような独立分散型の図書館
配置計画の場合です。基本的には、図書館ごとに購入予算をあらかじめ振り分
けておいて、それぞれの館が選書と予算管理を行います。同じ市でも、エリア
によって読書や情報ニーズが特異なケースがあるので、各図書館がそれぞれの地
域の事情に応じて選書することは、その点においては合理性があります。しか
し一方で、全市的に見ると、類似した図書が多くなったり、自治体の規模として
は、もう少し専門的な図書を購入すべきところが、各館の予算割り振りのなかで
は、それらの図書が「高価な一冊」と評価され、購入が控えられる場合も考えられ
ます。しかし、拠点図書館をしっかりと位置づけて、予算の傾斜配分を行うこと
で、それらはコントロールできます。
152 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
たとえば筆者の勤務地であった東近江市では、八日市図書館を拠点館として位
置付け、高度な専門書や実用書、基本図書や全館的なリクエスト購入枠を設けま
した。残る6つの各地域図書館は、それぞれのニーズに合わせた選書をするとと
もに、リクエストで高価なものや全市的に購入すべき図書だが自館蔵書としては
馴染まないタイトルについては、八日市図書館が発注するというチャートがあり
ました。また、複本が過剰に重複しないよう、「これはどの図書館も発注しそう
だ」というタイトルを所定のフォームに書き出して購入調整するというスキーム
も設けていました。
◎「集中選書」~域内図書館の資料を一括して選書する場合~
域内図書館数が多い自治体が苦労するのが、自治体立図書館としての蔵書全体
の構成をどのように整えるかという問題です。それぞれの図書館で選書すると、
ニーズの重なる分野の資料は、どうしても似通った資料が多くなります。つまり
「類書」が増えるわけです。あるいは複本の問題があります。たとえば、予約が数
十件も集中するような図書であれば、各図書館で購入して提供しても、一冊あた
りのコストパフォーマンスは有益なものと評価できるでしょう。
しかし、そこまで利用が頻繁でないけれども、図書館としては利用者に紹介し
たい人文科学系や社会科学系の概説書、あるいはビジネス関連の実務書などは、
全市的に見れば2冊も3冊も必要のないとの評価も成り立ちます。それらを買い
控えれば、もっと多くの異なる主題分野の多様なタイトルの図書を購入できる可
能性が高まるからです。
しかし、同じ市でも、それぞれの図書館に利用者が存在し、また図書館を取り
巻く地域性のなかで仕事をする図書館員がいます。それぞれの担当者は、全市的
には「部分最適」でしかなくても、自館のニーズに引っ張られて選書をしますから、
いずれの館でも蔵書としたいと考える図書の買い控えを調整することが難しくな
ります。また、実際的な購入調整のためのコミュニケーションも、蔵書や発注管
理が機械化されて一覧性があるとしても、意思確認のためのコストはそれなりに
かかります。
そこで、そうした調整を図るため、市域全体の蔵書構築を意識した「集中選書」
という方法が用いられることになります。いろいろなスタイルがありますが、内
部組織として選書委員会のような会議を設け、各図書館から選書委員が中央図書
館に集まり、見計らい図書の選定や事前にチェックした選書リストにより、合議
153ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
で購入図書を調整していくというのがオーソドックスです。
ただこの方法は、物理的に職員が1ヶ所に集結することから、広い自治体では
移動コストが問題になります。また、選書の意思決定には一部の職員しか参画し
ないため、本を選ぶ経験と責任、つまり「選書眼」が職員全体に育ちにくいきらい
があります。
2-3 その他の要素から見た場合
以下は、これまで述べてきたケースに共通して関連する要素について考えてみ
ます。まず、「選書手段から見た場合」でも少し触れましたが、図書館員のフェイ
ストゥフェイスによる「選書会議」が設けられているかどうかです。
私が在籍していた当時の豊中市では、児童、一般、レファレンスの3つのパー
トごとに予算を持ち、それぞれ独立的に選書をしていました。そこでは「見計ら
い選書」は、基本的に全職員がそれぞれのパートを超えて購入候補を選ぶことが
認められていました。最終的には、各パートの責任者が購入調整をしていました。
また、「リスト選書」は、回覧で各職員が購入候補に○印をつけ、よほどのことが
ない限り、購入が認められました。つまり、職員が、どうしてこの本が必要か、
あるいは必要ないかというような直接的な議論をする契機を持つことなく、選書
が進められていたのです。現在は、選書委員会が設けられ、各館の代表者による
選書会議により、全館的な調整を行いながら購入図書を決定する方法に改められ
たと聞いています。
利用者対応を始めとした開館業務を行いつつ、リアルな選書会議を行うことは
かなり難しい面があります。しかし、本来は、①当該書の必要性、②必要性を補
足するための著者属性や主題概要、③編集上の工夫、④出版社の特色、⑤利用の
見込み、⑥蔵書構成上の位置づけなど、蔵書に加えたい理由を選書に関わる図書
館員が理解した上で購入を決定すべきだと思います。
次の要素として、運営主体が市の直営か、一部の業務を委託する、あるいは指
定管理者による全面委託かという問題があります。一部業務委託の場合、多くは
貸出などの窓口業務を委託スタッフが担当し、公務員司書が選書業務を直営とし
て行うケースが多いようです。この場合、選書をする図書館員が苦悩するのは、
直接利用者対応や返本作業などの書架整理をしないなかで、選書をすることの難
しさだと言います。出版情報、あるいはリクエストや利用統計の分析だけで、図
書を選ぶのは、隔靴掻痒の感があるというわけです。
154 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
それでは、すべての図書館業務を担う指定管理者制度では、それらの問題はク
リアされるでしょうか。これも指定管理主体によりさまざまで、一概に評価する
ことは難しいですが、図書館スタッフの雇用条件を見る限り、長期的に経験を積
み、図書館を取り巻く地域理解や図書館員としての選書眼を高めていくことは困
難な状況と言わざるを得ません。
では、公務員司書が主体となった直営図書館では、素晴らしい選書ができてい
るでしょうか。今、公立直営図書館は、80年代の発展期から比較すると、選書
を含めた運営力が二極化していると言われています。つまり、直近のニーズに応
答しつつ、時代の変化に合わせた運営を検討し、継続的に試行錯誤を繰り返し、
新陳代謝を図っている図書館と、貸出冊数の多寡をほとんど唯一の評価軸として
持ち、その面だけで選書を含めた運営の善し悪しを判断してきた図書館との間で、
図書館の質的な評価が分かれてきています。そのことは、自治体内における図書
館に対する政策的優位性にも少なくない影響を及ぼしていると言えます。
3.資料選定の独立性
予告編では、図書館が本を選ぶ前提として、まずは、「国民の知る権利」や「学
習する権利」が保障されるという大きな価値が担保される運営実態があるかどう
かが、最初に問われることになると書きました。そのような価値が損なわれる事
態とはどのようなケースでしょうか。
たとえば、記憶に新しいところでは、島根県松江市の学校図書館で、同市教育
委員会事務局の要請により、『はだしのゲン』が本棚から除架されるという事件が
ありました。その後、この要請は、教育委員の総意ではなく、教育委員会事務局
が、ある市民からの除架要請にかかる議会陳情(否決)の際に出た議員意見を忖度
したものであること判明し、教育委員の検討により書架に戻されました。これは
資料提供の問題ですが、選ばれた資料を提供しないという「選択」こそが、国民の
知る権利や学習する権利が保障されるという大きな価値に影響を及ぼします。
あるいは、神戸連続殺傷事件の犯人である少年Aが執筆した『絶歌』(太田出版、
2015年)の提供を巡って、そもそも選定、購入しないという立場の図書館や、購
入するが提供に制限を設けるなどの対応する図書館が出て物議を醸しました。
少年事件の実名報道もそうですが、出版によって社会的不利益や精神的苦痛を
被ることを理由に、差し止めや回収を当事者が求めた場合に、図書館はどう対処
すべきでしょうか。
155ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
「知る権利」と表裏一体である「表現の自由」は、いずれも基本的人権の尊重とい
う大きな憲法の価値に基づいています。基本的人権が損なわれるような事態が予
測できる場合、その表現は慎重であるべきです。しかし、公に出された出版物は、
「表現の自由」の発露としての社会的な営為であり、これを読みたいとする市民の
要望を、図書館が一方的に切って捨てることは、「資料提供の自由」の放棄、つま
り、国民の「知る自由」を否定することに他なりません。
図書館が図書館独自の判断において、要望のある資料の選択や提供を否定すべ
きではない理由は、もうひとつあります。それは、提供を拒むことを正当化する
法的理由がそもそもないからです。
2005年に起きた熊取町図書館事件では、相互貸借でしか提供できない資料要
求がたびたび繰り返され、業務に支障を来たすとして提供を断った図書館の対応
が争点となりました。大阪地裁が「利用者に貸し出すかどうかは、その判断につ
き館長の自由裁量に委ねられているものではなく、図書館法その他の法令規定に
基づいて決せられる必要があり、正当な理由がなく利用者の上記(相互貸借)申込
みを拒否するときは、利用者の上記人格権を侵害するものとして国家賠償法上違
法となる。本件拒否処分には、正当な理由があるものと認めることができず、国
家賠償法上違法の評価を免れない」と断じています(括弧は筆者補足。後に町が控
訴するも高裁で和解)。
つまり、遺族感情に慮って提供を拒否した場合に、貸出希望者が訴訟に出れば、
これまでの判例では違法行為と評価されてしまいます。
仮に被害者が出版社に対し、人権侵害を理由に出版差し止めと回収を訴えて勝
訴したとしても、公開自体を否とする判決でない限り、図書館での提供を制限す
る「正当な理由」とまでは評価できないでしょう。図書館が提供を拒む事例として
は、日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」では、出版物の卑猥性が判例
で確定した場合は、公開自体を否とする判決があり、提供を制限することはやむ
を得ないと解説しています。
公開される出版に対する評価は多様です。いずれも自身の正当性、公正性を主
張して、場合によっては出版自体を否定する見解を出します。しかし、そのよう
な評価を受けて、出版物がその度に隠蔽されたら、その主張の妥当性自体を検証
する機会をなくしてしまいます。
図書館が公的機関として出版物を選定すること、そして所蔵し、保存し、提供
することは、国民の知る権利と表現の自由と密接に関わっていることを、市民の
156 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜
★1 図書等の内容を構成する、著者、書名、出版社、出版年、ページ数等の事項。雑誌論文であれば、著
者、論文名、掲載雑誌名、掲載雑誌の巻、号、出版年などの事項をさす。
★2 ISBN(アイエスビーエヌ、International Standard Book Number)世界共通で図書(書籍)を特定するた
めの番号。日本語では、国際標準図書番号。
みなさん一人ひとりにもご理解ただくような取り組みが必要だと思います。
「その1」のおわりに
「図書館では、どのようにして本が選ばれているか?」が、「その1」の柱でした
が、図書館の蔵書とはそもそもどのようなものか、というそもそも論にもお付き
合いいただきました。
「その2」では、さらに踏み込んで、「選書をめぐる論争」をひも解き、図書館で
本を選ぶという営為の意味を掘り下げたいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
157ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
1. 本との関わり
思えば、小学校の教室の隅に置かれたリンゴ箱の中から取り出して夢中で読ん
だ『ロビンソン・クルーソー』、貸本屋に通って江戸川乱歩を読み漁ったあたりが
読書人生の始まりです。「少年探偵団」への入団も本気で考えていました(笑)。「お
前の“冒険志向”、“実行してみなければ気の済まない性分”はそこからか?」と問
われれば全く否定できません。
幼少期の読書体験はとても重要です。また、中学時代の『チボー家の人々』、五
味川純平の『人間の條件』など、人間として、男として(笑)どう生きていくかな
ど、大いに影響を受けました。
高校では本よりも、ラグビーをかじりました。今も、「音羽ラグビー倶楽部
PREMIUM」の代表として楕円のボールを追い続けています。大学でも運動を、そ
れも機動隊とぶつかる方に入れ込みました(笑)。どちらも「理論」を学ぶことが必
要な“運動”ですが、この時期、なぜか活字の方には背を向けていました。
在籍した都立高校も大学も立派な図書館で知られたところでしたが、一歩も足
を踏み入れることはありませんでした(笑)。卒業してからは、出版社の業務・販
売・宣伝と営業畑を歩き続け、一冊でも多くの本を売ることに専念しました。
なかでも、1997年に瀬戸内寂聴さんの『「源氏物語」現代語訳』を刊行するにあ
たっては、編集・販売・宣伝が一丸となった大プロジェクトを組みました。全十
巻完結に伴うイベントでは、数千人規模の記念講演会や全国百貨店での展覧会、
近年、図書館とその関連企業だけでなく、行政・自治体
や出版社までも巻き込んで、図書館内外の理解者を増や
し続け、好評となっている「図書館総合展」。「司書名鑑」
第10回目の節目として、図書館総合展運営委員長を務
める佐藤潔さんにインタビューを行いました。
司書名鑑 No.10
佐藤 潔(図書館総合展運営委員長)
158 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
寂聴さんのTV出演や新聞インタビューを仕掛けるなど、大いに盛り上げました。
当時、時代の勢いもあったと思いますが、出版社が読者に、日本全体に、もっ
と挑みかかるような動きがあったと思います。
いい作品だから売れるというのはもちろんありますが、ただそれだけではな
く、イベントなど話題性を持たせないと、なかなか読者には届きにくいと思って
います。
2003年には関連会社の幼児教室の社長を引き受けました。2歳から5歳児を対
象とした教室でしたが、乳・幼児期の教育の大切さをアピールしようということ
で、対象年齢を生後半年くらいからに下げて、保健師さんにも参加していただ
く、どちらかというとお母さん向けの教室もつくりました。
育児や幼児教育をサポートするというのは、大変、重要な仕事だと思います。
図書館における「児童書コーナー」でも皆さん苦労されているのではないでしょう
か。
6年間の任期中、幼児英語教室もスタートして、全国400教室まで展開しまし
た。この会社では、寂聴さんにお願いして、子供向けの「寂聴おはなし絵本」8
点を執筆していただき、『月のうさぎ』などは、出版と同時に版を重ねました。
2. 図書館総合展とは
図書館総合展の企画運営をしている株式会社カルチャー・ジャパンは、1984
年に本の保管サービスを目的にスタートしています。2015年10月に急逝された、
故新田満夫社長の発案で、雄松堂書店、講談社と、預かった本を管理する倉庫業
のヤマタネ、その本を運ぶヤマト運輸の4社が中心となって電通・博報堂・大日
本印刷・凸版印刷など24社が出資しました。
書店の外商が家庭に販促に行った際に、本棚が満杯だと言われて本が売れな
い。それなら、そのお客さんの書棚の本を預かって、入れ替えで新しい全集など
を買ってもらおう、という考えです。やがて顧客を企業や大学へと拡大し、いま
では大学図書館を中心に300万冊を超える本を保管しています。
そして「本を愛する人たちのおかげで成り立っているのだから、本を愛する人
159ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
たちに恩返ししなければならない」「それは図書館を盛り上げることだ」という考
えから1999年に始まったのが「図書館総合展」です。ちょっと飛躍気味だけど正
鵠を得ている、それで周囲を元気にさせるというのが新田社長の魅力で、図書館
総合展もそういう性質を引き継いでいると思います。
第1回は東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催されましたが、フォーラム
の増加、出展規模の拡大に伴い、第6回から会場をパシフィコ横浜に移して開催
しています。
私自身、初めは図書館総合展の副委員長という立場で関わり、2010年の第12
回から運営委員長を務めています。
ちょうどその年は、Google訴訟などに抗して、総務省、文部科学省、経済産
業省が「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇
談会」の答申を行い、業界をあげて対応して行こうという機運が高まっていま
した。2011年には、東日本大震災・福島原発事故と未曽有の大災害で図書館も
大きな被害を受けました。2012年には、カルチュア・コンビニエンス・クラブ
(CCC)の武雄市図書館の運営を巡って議論が起きました。ほかにも、電子書籍元
年、光交付金事業、地方創生で何をするかなど、毎年のように大きな話題が図書
館の周りに湧いています。
昨今、図書館の現場では、予算削減のなか様々な役割が求められ、目に見える
成果を求められてしまうなど、難しいことがたくさんあると思います。それでも
なお、毎年、業界全体にかかるような課題が出ているということは、図書館に関
わる者として学び、成長するチャンスが常に与えられているということです。
そしてどんな課題にも賛否両論があります。図書館はすべての人に知を提供す
る場ですが、その方法に様々な意見があり、対立もある。図書館総合展は、問題
となっている事柄は可能な限り全部取り上げる。意見や主張は分け隔てなく取り
上げるというポリシーで運営しています。来る者は拒まず、去る者は「そんなこ
と言わずに来なさいよ」です。「ああいうものを取り上げて!」といったご意見を
いただくこともありますが、場を揺らし、幅と可能性、話題性を拡げ続けること
が私たちのミッションだと思っています。
Directory of librarian
160 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
3. 図書館総合展の重要施策
図書館総合展を運営していくなかで、私が気になっていたことが、図書館に
とって重要な存在である出版界との関係の希薄さでした。出版社には、図書館を
利用したことのない人が、意外に多くいます。かつての私もそうでした。つま
り、あまり知らないで「図書館利用が出版売上げを阻害している」などと言う。
逆に、図書館員の出版社に対する無関心もかなりのものだと感じています。本
には関心がある、作家も好きだ、しかし出版社という組織、出版社の仕事や成立
基盤がどうのこうのということへの関心は低いように思われます。
出版社に長く在籍した私の見るところ、出版社側の無理解は、20年来の深刻
な出版不況の要因を多角的に分析することなく、図書館側に一方的に押しつけよ
うという、短絡的な判断に基づくものと考えています。出版界と図書館が対立し
て読者を奪い合うのではなく、外に広げるように発想を転換すべきです。
一方、図書館は、自治体と一緒になって「ブックスタート」事業や「読み聞かせ」
などの読書推進の担い手として重要な役割を担っていますが、それでもまだ足り
ない。同じく本に関わる立場として、もっと積極的であってほしいですね。美味
しい寿司屋の職人は、ネタだけではなく、その先にある市場、その先にある漁
師、ひいては海に至るまで思いを致すものだと思います。
図書館総合展運営委員会では、図書館流通センター(TRC)と丸善のご協力の
もと「図書館へのおすすめ本」専用注文書を作成しています。
2015年は275の出版社に参加していただきましたが、まだまだ少ないと感じ
ています。この企画では、全国3,000余の出版社に直接電話などで働きかけをし
ていますが、図書館市場に気づいていない出版社、図書館側に気づかれていない
ような良い出版社がまだまだあります。書籍やブースの出展だけでなく、フォー
ラムなどでも、双方の情報交換、交流を深めていきたいと思います。
ほかにもいくつか重点課題があります。
大学図書館から始まった「アクティブ・ラーニング」の取組みについては、大手
什器メーカーに軒並みご出展いただいているということもあり、その動向に注目
しています。
161ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
さらに、文部科学省がこれを初等・中等教育にまで拡げるように呼びかけてい
ますが、どう実現していくかです。今後、学校教育のあり方や、学校図書館・司
書教諭・学校司書の役割も含め、議論を深めていきたいと思います。
私は、生涯学習の場としての公共図書館でも、アクティブ・ラーニングが取り
組まれないものかと期待しています。現場の司書がファシリテーターとなって、
能動的学修の場をつくれないか? いや、そんなことをする余裕も、スペースも、
人材もいない、それよりももっとやることがいっぱいあるといわれるかも知れ
ませんが、読書推進と同じようにNPOなどとの取り組みを拡げていく意味でも、
これからの高齢化社会への加速化のなかでの図書館の役割について、図書館総合
展の場で、問題提起をしていきたいと思っています。
また、2016年4月から法制化される障害者差別解消法は、「合理的配慮」が公
共機関の義務となるだけに、欠かせないテーマです。これまで2年にわたり、「図
書館におけるアクセシビリティ」をフォーラムで取り上げてきましたが、今後は
電子書籍を活用した音声読み上げサービスや、文字拡大、文字と地の色の反転機
能などといった読書アクセシビリティ機能やサービスを扱う企業の出展も促した
いと思います。
グローバルな視点を提供することも私たちの役割ではないかと思っています。
米国図書館協会(ALA)とは提携の調印を交わし、毎年、ALA総会などへの視察研
修も実施しています。2015年はシアトル・サンフランシスコでしたが、33名が
参加しました。シアトルでは、一般公開していないマイクロソフト社の図書館見
学とスタッフとのセッションも行いました。今年のALA総会が開催されるオー
ランドではディズニーの図書館を、ワシントンD.C.では、米国議会図書館(LC)、
スミソニアン博物館、ジョージタウン大学、ジョージ・ワシントン大学などを訪
問します。歴史があり先進的でもあるアメリカの図書館から学べることはたくさ
んありますが、今後は東アジアやヨーロッパにも輪を拡げていきたいと思います。
各々の課題は、対象もそれぞれバラバラに見えるかもしれませんが、それらを
推進していく過程で、大学や行政・自治体のなかで図書館が注目され、これまで
図書館とのつながりが薄かったところにつながりができたりと、良い循環を生み
出してきていると思います。
Directory of librarian
162 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
4. 図書館に関わる皆さまへ
図書館員として人生を過ごしてきたわけではない「よそ者」である私からする
と、図書館に関わる皆さんは、うらやましくもあり、たいへんだなぁと思うとこ
ろもあります。
「図書館は成長する有機体である」という、インドの図書館学者、ランガナタン
の「図書館学の五原則」にもあるように、最初から完璧な図書館などないのはもち
ろんのこと、明確な理想形があるわけでもない。試行錯誤しかありません。私た
ちが図書館総合展を通じてできることは限られていますが、お手伝いできること
があれば、委員会までリクエストをください。
また図書館総合展では、図書館の皆さんが充実感を感じてもらえる場を提供で
きないものかと策を練っています。「ポスターセッション」、「コミュニケーショ
ン・ブース」、「学生ツアー」、そして昨年より始め、多くの参加をいただきまし
た「キャラクター・グランプリ」、「メーカーズ・ラボ」、「地方創生レファレンス
大賞」にはそういう思いを込めています。
何も最先端のもの、高度なもの、大見得を切るようなものだけが、出展対象で
はないのです。出展準備を通じて自分たちのスキルを磨く、出展を軸に総合展会
場で他館の人たちと情報交換の場を持つ、それで良いと思うのです。また来場者
からも「図書館そのものが発表している例をたくさん見たい」「特別なものでなく
ても、自分たちと同じような活動報告がとても参考になる」というご意見を本当
にたくさんいただいています。ですから、これらの企画には遠慮なさらず、どん
どん参加してください。
ほかにも、年4回各地で開催している「地域フォーラム」、展示会の前後を含む
1週間に設定している「図書館総合展週間」で、「トレードショーを見に来て講演
を聴く」という以上の経験をしてもらおうと画策しています。「図書館総合展運営
協力委員」制度もそのひとつです。委員の義務はほぼゼロで、自分の得意があれ
ば適宜、手伝っていただいたり、提案していただいたり、飲み会に参加していた
だいたり(笑)というものです。
そして、図書館総合展に積極的に関わっていただきたいということの最大級の
163ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
司書名鑑 No.10
ものは、「地域フォーラム開催地立候補」です。協賛社さんのお力添えを原資に運
営させていただいておりますので、開催館のご負担は、ほぼマンパワーというこ
とになります。全国から図書館関係者が集まります2017年の開催地を目下募集
中ですので、ぜひ手を挙げてくださるようお願いします。
いま、図書館はメディアからも、一般の人たちからも、大いに注目されていま
す。これまで冷淡だった出版社も、良きにつけ悪しきにつけ図書館に注目するよ
うになっています。昨今の報道でみなさんもそう感じられたのではないでしょう
か。これはチャンスなので、今年も熱をどんどん上げてゆくべきだと思います。
図書館予算は減ろうとも、いや、減らさないためにも声を上げ、積極策をとる
のみです。図書館がより住民とその地域に根ざしたものになるには? 地域が残
すべき資料は何なのか? 図書館は地域創生をサポートできるのか? 大学におけ
る図書館の役割とは? 外国の大学に勝てるのか? 図書館に関わる人たちは充実
した仕事と人生を送れるのか? 私たちが外に向けて応えてゆくべきことはたく
さんあります。
日本では、2019年にラグビーワールドカップ、翌2020年は東京オリンピック
が開かれます。内外から日本に、スポーツに光があたります。この機をとらえ
「文化のほうも負けてはいないぞ」と言ってやろうではないですか。図書館もその
前線に立って、「スポーツの祭典」に勝るとも劣らない「知の祭典」をしかけてやり
たいと思います。運営委員会でも2019年、2020年に向けて、図書館、読書、文
化のすべてを巻き込んだ「知の祭典」のしかけを準備しています。皆さまのお力添
えをお願いします。
(インタビュー:熊﨑由衣 構成:ふじたまさえ)
1944年、東京生まれ。1967年、早稲田大学卒業後、講談社に入社し、業務・販売・宣伝を担当。1997年に
は瀬戸内寂聴『「源氏物語」現代語訳』(全十巻完結)の講演会・展覧会、宣伝・イベントを行い、マルチプレッ
クスな販売活動を展開し注目を浴びる。2003年、講談社パル代表取締役社長に就任。幼児教室・英語教室
を全国400教室展開するほか、寂聴著「寂聴おはなし絵本」シリーズで『月のうさぎ』(講談社、2007年)ほか
8点を企画し刊行。 2010年(第12回)図書館総合展運営委員長就任。
佐藤 潔(さとう・きよし)
Directory of librarian
164 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
ARG 業務実績 定期報告
和歌山市民図書館ワークショップの実施を支援
地元の建築士、クリエイターのチームと
株式会社図書館総合研究所の協同により進
められている和歌山市民図書館基本計画策
定業務の支援として、ワークショップ<
「まち」から生まれる図書館、図書館から生
まれる「まち」>の企画・ファシリテーショ
ンを担当しました。
初回のブレインライティングに始まり、まち歩き、マップづくり、編集まとめ
と全4回開催されたワークショップには多くの市民が参加し、参加者同士が積極
的にコミュニケーションを行い、市民主体の濃密な共創の場が生まれていました。
須賀川市(仮称)市民交流センター実施設計業務を支援
基本設計から引き続き、須賀川市(仮称)市民交流センターの実施設計業務を
支援しました。図書館機能・公民館機能・子育て支援機能が融合する新しいかた
ちの複合施設には、どのような資料の配架が適しているのか、シミュレーション
を重ねて検討しています。
また、この交流センターには、須賀川市
出身の特撮監督・円谷英二を称える展示・
交流スペースが設けられる予定です。実施
設計期では、この展示スペースについて、
空間構成のコンセプトメイクを行いました。
第9回ニコニコ学会βシンポジウム~ THE FINAL ~にて代表の岡本が座長を担当
2015年12月19日(土)に東京・六本木のニコファーレで開催された「第9回ニ
コニコ学会βシンポジウム~ THE FINAL ~」の第1セッション「ニコニコ学会βを
『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・
ガイド株式会社の最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめてい
ます。各種業務依頼はお気軽にご相談ください。
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
165ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
ARG 業務実績 定期報告
50分で振り返る〜これまでとこ
れから、そして「いま」〜」に弊社
代表の岡本が座長として登壇しま
した。
このセッションでは、タイトル
通り、これまでにニコニコ学会β
の活動を高井浩司、myrmecoleon、湯村翼、前野ウルド浩太郎、メレ山メレ子、
牧田翠、武田英明、犬飼博士、稲見昌彦、藤山晃太郎の各氏とふりかえりました。
リクルートテクノロジーズの「第2回自然言語処理ハッカソン」を支援
弊社が産学連携の支援を行っている株式
会社リクルートテクノロジーズが、2016年
2 月 1 日(月)から 5 日(金)の 5 日間、自然言
語処理やその周辺の数学を専攻・興味ある大
学生を対象としたハッカソンを開催しました。
弊社では事務局業務を担い、企画立案から実施を担当しました。
慰安旅行2016を開催
弊社の恒例企画である慰安旅行を2016年
1月7日(木)から9日(土)にかけて、群馬県
吾妻郡草津町で開催しました。バスターミナ
ルの3階にオープンした「温泉図書館」を訪れ、
職員の中沢孝之さんに温泉街の名勝や地元住
人が通う秘湯などを案内していただきました。まさにこれこそ、建物としての図
書館から外に踏み出し、まちじゅうのあらゆるものを資料としてレファレンスす
る、あるべきライブラリアンの姿だと胸を打たれました。
弊社業務問合せ先(メールが確実です)
● mail:info@arg-corp.jp ● 全般:070-5467-7032(岡本) ● LRG関係:045-550-3553(ふじた)
	 ※移動中・会議中なことが多いので留守電にメッセージを残してください。
日々の弊社からの情報発信をお確かめいただくには?
● 公式メールマガジン:http://www.arg.ne.jp/ ● 公式Facebookページ:https://www.facebook.com/ARGjp/
LRGLibrary Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 定期購読・バックナンバーのご案内
定 期 購 読● 誌名:ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG) 
● 発行:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
● 刊期:季刊(年4回)  
● 定価:2,500円(税別) 
● ISSN:2187-4115
● 詳細・入手先:http://fujisan.co.jp/pc/lrg
「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」はアカデミック・リソース・ガイド株式会社が、
2012年11月に創刊した、新しい図書館系専門雑誌です。さまざまな分野で活躍する著者に
よる特別寄稿と、図書館に関する事例や状況を取り上げる特集の2本立てで展開していき
ます。第5号からは「司書名鑑」も連載を開始しました。最新情報は公式Facebookページで
お知らせしています。 【公式Facebookページ:https://www.facebook.com/LRGjp】
1年4号分の定期購読を受付中です。
好きな号からのお申し込みができます。
定   価:10,000円(税別)
問い合せ先:045-550-3553(ふじた)
      lrg@arg-corp.jp
特別寄稿は、数多くの名講演をされている梅澤貴典さんが、ライブラリアンの講演術と
して、そのノウハウを徹底公開。講演をする全ての人に有用である。特集「離島の情報
環境」では、同テーマのもとで行った日本初の悉皆調査として、歴史的な内容となって
いる。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
長尾真「未来の図書館を作るとは」
嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
特別寄稿では、社会的に弱い立場とされる人々の知識・情報へのアクセス状況を概観し、
知のセーフティーネットであるべき公共図書館の役目を考える。特集では、株式会社カー
リルの協力により、全国の図書館における資料管理用のシステムの導入の実態を分析
する、これまでにないものとなっている。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために──何から始めればよいのか」
嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル)「図書館システムの現在」
第2号・2013年冬号(2013年2月発行)
東海大学の水島久光さんによる特別寄稿は、夕張・鹿児島・東北の地域の記憶と記録
を巡って、地域アーカイブの役割と重要性を論じている。特集は「図書館における資金
調達(ファンドレイジング)」の取り組みを紹介。さまざまな手段を講じて資金を集め、
事業を行っていこうとする図書館の取り組みを集めた。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
水島久光「『記憶を失う』ことをめぐって∼アーカイブと地域を結びつける実践∼」
嶋田綾子・岡本真「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」
第3号・2013年春号(2013年5月発行)
創刊号・2012年秋号(2012年11月発行) ※品切れ
残り
210冊
SOLD OUT
完売
間近!
172 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
定期購読・バックナンバーのご案内
特別寄稿は、本屋「B&B」を運営するnumabooks代表の内沼晋太郎さん、自宅を開放
する「住み開き」の提唱者のアサダワタルさん、「ビブリオバトル」を考案した立命館大学
の谷口忠大さんの3名にお話をいただく。特集は、図書館で行われている、本と人とを
つなぐさまざまな取り組みについて紹介する。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
内  容/
内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」
嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
第5号・2013年秋号(2013年11月発行)
残り
200冊
東日本大震災による図書館の被害状況と復興の歩みと図書館の支援のあり方を、宮城
県図書館の熊谷慎一郎さんが論じる。特集では災害の記録を伝える図書館や、地域防
災について啓発活動を行う図書館などの取り組みについて紹介する。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
内  容/
熊谷慎一郎「東日本大震災と図書館─図書館を支援するかたち」
嶋田綾子「図書館で学ぶ防災・災害」
No.2 谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館
「エル・ライブラリー」)
第6号・2014年冬号(2014年2月発行)
残り
280冊
創刊号に掲載した長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」に触発され、未来の図書館
を議論する座談会を収録。特集では、執筆に猪谷千香さんを迎え、コモンズとしての図
書館のあり方を、図書館だけにとどまらない実例を挙げて紹介する。
特別座談会/
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司「未来の図書館をつくる」
猪谷千香「コモンズとしての図書館」
No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
    第1回 大阪府立中之島図書館
第7号・2014年春号(2014年6月発行)
残り
280冊
巻頭では2014年7月2日に開催した菅谷明子×猪谷千香クロストークを収録。ジャー
ナリストから見た日米の図書館とは。特集では、2014年6月に法改正がなされた教育
委員会制度について、インタビューや調査を元に図書館への影響をまとめた。
第2回 LRGフォーラム 菅谷明子×猪谷千香クロストーク
          社会インフラとしての図書館─日本から、アメリカから
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
 
猪谷千香「教育委員会制度の改革」
No.4 嶋田学(瀬戸内市新図書館開設準備室) 
    第2回 旅の図書館
第8号・2014年夏号(2014年9月発行)
残り
320冊
特別寄稿は、第3号での特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」を受けて、
実際に資金調達を行っている組織からの視点、資金調達のサービスを提供する事業者
からの視点と、より理論的に図書館での資金調達に迫る。特集は、創刊号で大きな反
響を呼んだ「図書館100連発」の第2弾。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
岡本真・鎌倉幸子・米良はるか「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」
嶋田綾子「図書館100連発 2」
第4号・2013年夏号(2013年8月発行)
残り
100冊
173ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
定期購読・バックナンバーのご案内
特別寄稿は、数多くの名講演をされている梅澤貴典さんが、ライブラリアンの講演術と
して、そのノウハウを徹底公開。講演をする全ての人に有用である。特集「離島の情報
環境」では、同テーマのもとで行った日本初の悉皆調査として、歴史的な内容となって
いる。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
ライブラリアンの講演術─ 伝える力 の向上を目指して[梅澤貴典]
離島の情報環境[編集部]
No.6 磯谷奈緒子(海士町中央図書館)
    第4回「男木島図書館」
第10号・2015年冬号(2015年3月刊行)
残り
220冊
特別寄稿では、ARG代表の岡本真が自身の活動である「神奈川の県立図書館を考える会」
を通じて、行政にその重要性を伝える「アドボカシー」について解説。特集では、「アー
カイブサミット2015」をテーマに、シンポジウムを特別収録。
特別寄稿/
特  集/
マガジン航 Pick Up Vol.1/
司書名鑑/
内  容/
ライブラリーアドボカシーの重要性とその実践
─「神奈川の県立図書館を考える会」の活動から[岡本真]
「アーカイブサミット2015」を総括する[LRG編集部]
       貧困から図書館について考える[伊達文]
No.7 柳与志夫(東京文化資源会議事務局長)
第11号・2015年春号(2015年6月刊行)
情報発信のために必要なことはなにか? 広報のコツを鎌倉幸子さん、取材のツボを
猪谷千香さんが語る。特集では、「図書館×カフェ」をテーマに全国の事例を類型化、
野原海明さんが取材しつつ、その在り方について論じた。
特別寄稿/
特  集/
マガジン航 Pick Up Vol.1/
司書名鑑/
内  容/
図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ[鎌倉幸子、猪谷千香]
図書館×カフェ[野原海明]
       ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生]
No.8 是住久美子(京都府立図書館)
10 年を迎えた Library of the Year(Loy)。過去の受賞館の関係者にインタビューをし、
その軌跡をふりかえりながらLoyの選考基準や狙い、これからの図書館のあり方につい
て考える。第17回図書館総合展 ARGブースで行われたLoy2015の直前トークセッショ
ンほか、10年間の全受賞館リストも掲載。
総 特 集/
マガジン航 Pick Up Vol.3/
司書名鑑/
内  容/
Library of the Year の軌跡とこれからの図書館[福林靖博、岡野裕行]
       私設雑誌アーカイブ「大宅文庫」の危機[ツカダマスヒロ]
No.9 平賀研也(県立長野図書館館長)
第12号・2015年夏号(2015年9月刊行)
残り
330冊
第13号・2015年秋号(2015年12月刊行)
巻頭では、世界的に動向が注目されるGLAMのオープンデータ化について、その第一
人者たちが白熱の議論を交わした第2回OpenGLAMのシンポジウムを特別収録。
特集では恒例企画「図書館100連発」の第3弾。
第2回 OpenGLAM JAPANシンポジウム
オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来 生貝直人・日下九八・高野明彦
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
 
嶋田綾子「図書館100連発3」
No.5 大向一輝(国立情報学研究所) 
    第3回 京都府立総合資料館
第9号・2015年秋号(2015年12月発行)
残り
320冊
好評
発売中!
好評
発売中!
174 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
定期購読・バックナンバーのご案内
LRG
LRG 第15号 2016年5月 発行予定
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
次回予告
LRGライブラリー・リソース・ガイド
定価(本体価格2,500円+税)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
論 考
特 集 「図書館広報事例集」
連 載 嶋田学 選書論・コレクション論」Vol.2
司書名鑑 ほか
鎌倉幸子「真の図書館広報とは」(仮)
図書館における広報について、理論を知り、実践にうつすために何
が必要か?
図書館界だけの取り組みにとどまらず本質的に使えるノウハウをま
とめます。
175ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号
次号予告
LRG
ライブラリー・リソース・ガイド
https://www.facebook.com/LRGjp
第14号/2016年 冬号
無断転載を禁ず
発 行 日
発 行 人
編 集 人
責任編集
編  集
デザイン
発  行
2016年2月29日
岡本真
岡本真、ふじたまさえ
ふじたまさえ
大谷薫子(モ・クシュラ株式会社)
佐藤理樹(アルファデザイン)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Academic Resource Guide, Inc.
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61
泰生ビル さくらWORKS<関内> 408
Tel 045-550-3553(ふじた)
http://www.arg.ne.jp/
lrg@arg-corp.jp
ISSN 2187-4115
ISBN 978-4-908515-13-2
写真
表紙・裏表紙:白河市立図書館
   撮影:岡本真
これまでに訪問した図書館等の施設の写真は原則的にすべて
公開しています。以下のURLでご覧になれます。
https://www.flickr.com/photos/argeditor/collections/
72157625468181915/
※本誌刊行にあわせて、本誌Facebookページでも上記URLを
紹介します。
定価(本体価格2,500円+税)
Library Resource Guide
第14号/2016年 冬号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
LRGライブラリー・リソース・ガイド
ISSN 2187-4115

『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第14号(2016年2月)

  • 1.
    ライブラリー・リソース・ガイド 第14号/2016年 冬号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Library ResourceGuide 司書名鑑 No.10 佐藤潔(図書館総合展運営委員長) 特集 ふじたまさえ 図書館100連発4 連載 嶋田学 図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼ 特別寄稿 岡部晋典 図書館は「利用者の秘密を守る」 その原点と変遷
  • 2.
    LRG Library ResourceGuide ライブラリー・リソース・ガイド 第14号/2016年 冬号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 特別寄稿 岡部晋典 図 書 館 は「利 用 者 の 秘 密 を 守 る」 そ の 原 点と変 遷 ── 大 学 図 書 館 デ ータの 利 活 用 の 可 能 性 特集 ふじたまさえ 図書館100連発4 連載 嶋田学 図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼ 司書名鑑 No.10 佐藤潔(図書館総合展運営委員長)
  • 3.
    「目となり、耳となる」。 この言葉は、図書館のプロデュースを手掛けるアカデミック・リソース・ガイ ド株式会社(以下、弊社)の姿勢を説明するうえで、私が講演をする際に、最近 よく使っているものです。弊社は、特に地方での仕事を重視していることもあ り、私を含めて、合計7名のスタッフが日本全国をめぐり、各地の図書館整備に 関わっています。このような出張の日々において重視していることが、「目となり、 耳となる」ことです。 具体的には、各地に足を運ぶ際には、オフィスと出張先の往復にただ終わるの ではなく、できる限り出張先の街に身を置くこと、そして行程途中の周辺の街々 にも足を延ばすことを心がけています。あえて一泊し、夜の街にも繰り出すと、 昼間とは一転してにぎわう街の姿を発見することがあります。早朝に街中を散歩 することで、日中では見かけない若者の姿を目にすることがあります。 当然、図書館やそれに類する施設にも足を運びます。たとえば、私の場合、 2015年は43都府県の417施設に足を運びました。昨年1年間の国内移動距離は 11万7,036キロになります。そして、訪問する先は必ずしも世評に名高い施設ば かりではありません。むしろ世評にまだのぼっていない施設にこそ、宝が眠って いるかもしれないという意識を持って訪ね歩きます。 こうやってコツコツと足を運び、現地の関係者に話をうかがいます。それが私 たちの仕事の足腰を鍛え、「目となり耳となる」コンサルタントをするうえで、私 たちの血となり肉となっています。もちろん、数や量がすべてではないことはい うまでもありません。 これは昔話になってしまいますが、かつて在職したYahoo! JAPANで「Yahoo! 知恵袋」を立ち上げた10数年前も、実は同じことをしていました。2004年4月7 日にYahoo!知恵袋のベータ版を世に出し、最終的に「Yahoo!知恵袋」がQ&Aサー ビスにおけるナンバーワンになるまで、一貫して重視していたのは、質という考 えに捉われずに、まずは質問・回答の量を追い求めることでした。なぜならば、 「質量転化の法則」という仮説を立て、量をこなすことで初めて質を語れる領域に 達することができるという、一種の思い込みにも似た確信を持っていたからです。 この思い込みに基づく確信があればこそ、「Yahoo!知恵袋」の成功があったと初 巻頭言 学び得た知を社会へ──その実践としての雑誌づくり 002ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 巻頭言
  • 4.
    代Yahoo!知恵袋プロデューサーとして、いまでも信じています。 図書館という新たな領域に挑戦するうえで、圧倒的に欠けている経験を補うの は、日々の座学に加え、フットワークを生かしたフィールドワークにほかなりま せん。こうやって学び得たことを社会に還元・還流させていくことが、図書館プ ロデュースにおける私たちの責務です。そして、そのプロデュースの場は必ずし も具体的な図書館整備事業の現場に限られません。そう、この雑誌もまたその場 なのです。これまでの数々の特集記事は、まさにその証明となるでしょう。そし て、今号では、私たちの日々のフィールドワークの還元・還流の最たるものの一 つである「図書館100連発」の第4弾をみなさまに届けます。主に去年1年間に私 たちが日本各地で学んだ珠玉の取り組みをぜひご覧ください。 なお、ここ1、2年で本誌が生んだ大きなムーブメントとしては、創刊号、第4 号、第9号で特集した「図書館100連発」に刺激を受けた日本各地の図書館が、そ の地域の「図書館100連発」をつくろうというイベントを開催したことが挙げられ ます。北海道、東北、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄と幾多の地域に私た ちをお招きいただき、小さくてもキラリと光る事例の共有に努めようとする図書 館関係者の真摯な姿を目の当たりにしてきました。その場で学んだ取り組みも一 部収録しています。開催にご尽力いただいた関係者の方々には、心から御礼申し 上げます。 そして、今回の第14号では、「論文」と評して問題がないほどのクオリティー である岡部晋典さん(同志社大学)による「図書館は『利用者の秘密を守る』その原 点と変遷」を書き下ろし論考として掲載します。また、司書名鑑には図書館総合 展運営委員会委員長の佐藤潔さんをお迎えしました。図書館と出版の世界のつば ぜりあいが再び聞かれなくもない昨今、大手出版社の敏腕営業職であった佐藤さ んの図書館にかける思いにぜひふれてください。そして前号で予告したとおり、 嶋田学さん(瀬戸内市図書館準備室)による連載「図書館での本選び・私論」が始ま ります。期待に胸を膨らませたまま、ページをめくっていっていただければ幸い です。 編集兼発行人:岡本真 003ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 巻頭言
  • 5.
    巻 頭 言学び得た知を社会へ── その実践としての雑誌づくり[岡本真]……………… 002 特別寄稿 図書館は「利用者の秘密を守る」その原点と変遷[岡部晋典]…………………… 005 特  集 図書館100連発4[ふじたまさえ] ……………………………………………………………… 043 資料収集の工夫 ………………………………………………………………………………………… 044 資料提供の工夫 ………………………………………………………………………………………… 049 資料展示の工夫 ………………………………………………………………………………………… 059 PRの工夫………………………………………………………………………………………………… 089 環境の改善 ……………………………………………………………………………………………… 131 地域連携の試み ………………………………………………………………………………………… 140 連  載 図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼[嶋田学]………………………………………… 144 LRG CONTENTS Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第 1 4 号 / 2 0 1 6 年 冬 号 司書名鑑 No.10 佐藤 潔(図書館総合展運営委員長) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告 定期購読・バックナンバーのご案内 次号予告 ………………………………………………………… 157 …………………………………………………… 164 ……………………………………………………………………………… 172 …………………………………………………………………………………………………………… 175
  • 6.
    図 書 館は「利 用 者 の 秘 密 を 守 る」 そ の 原 点と変 遷 ── 大 学 図 書 館 デ ータの 利 活 用 の 可 能 性 岡 部 晋 典
  • 7.
    006 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 1. 問題の所在 本稿では、大学生の学習実態分析におけ る図書館利用データの活用の可能性につい て論じる。具体的には、大学図書館の持つ 読書履歴データを利活用することは、「図 書館の自由に関する宣言」(以下、自由宣 言)にある「図書館は利用者の秘密を守る」 の文言に抵触するのかどうかについて論じ る。なお公共図書館や学校図書館等におけ る図書館利用データについての議論は本稿 では行わない。 本稿では主として、「図書館は利用者の 秘密を守る」という文言が、現代までどの ような経緯をたどってきたのかを追跡する 作業を行う。「利用者の秘密」の文言をめ ぐっては図書館とプライバシーの話題が巻 き起こるたびにしばしば議論が行われるも のの、一気にこれらの論点を捉えるような まとめは行われていない。 だからだろうか、たとえば近年の図書館 業界における一大イシューである図書館の 貸出履歴データとポイントカードをめぐる 話題のなかで、なぜか警察の捜査令状の議 論が取り上げられるなどの混乱が生じてい ることなどは記憶に新しい。 そこで本稿では大学図書館におけるデー タの利活用の方策を探ることを主たる目的 としつつ、自由宣言における「利用者の秘 密を守る」をめぐる文言がどのような変遷 をたどってきたかを同時に把握できるよう 試みる。よって、「利用者の秘密」の文言の 変遷を先に追う場合においては、第3章か ら先に読んでいただきたい。 2008年(平成20年)の中央教育審議会答 申「学士課程教育の構築に向けて」、いわゆ る「学士力答申」および、2012年(平成24年) の答申「新たな未来を築くための大学教育 の質的転換に向けて」いわゆる「質的転換答 申」以降、大学は自らの「質保証」を強く問 われるようになってきた。 これらの答申を経て、大学は学生に「何 を教えたか」ではなく、学生が「何ができ 図書館は「利用者の秘密を守る」 その原点と変遷 ──大学図書館データの利活用の可能性 岡部晋典(おかべ・ゆきのり) 1982年愛知県生まれ。筑波大学大学院図書館情報 メディア研究科博士前期課程修了、同後期課程退学。 博士(図書館情報学)。複数の大学の司書課程の専任 教員を経たのち、現在、同志社大学 学習支援・教 育開発センター助教。ラーニング・コモンズ担当。
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    007ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 るようになったか」という学生の学習成果 (learning outcome)を主眼とする、成果に もとづく教育(outcome-based education) を行うことが重視されるようになった。 このようなアウトカムを重視する潮流 に呼応するように、大学 IR(Institutional Research)の動きが加速しつつある。詳細 については後に述べるが、大学IRとは「最 も狭義には、IRは単なる調査データの収集 分析、報告といった活動を指すが、より広 義には、全学レベルの財務計画や戦略的 計画(strategic plan)の策定まで、きわめ て幅広い活動を指す」★1 ものである。つま り、現在、大学は社会のなかで活動する際 の説明責任を果たすと同時に、業務の改善 を行うために大学内部の活動について調査、 分析し報告することが重視され始めている。 これらは大学教育の質の保証のテーマと セットで語られる。「質保証」というターム は米国や欧州、国際機関によって使われ始 め、日本に導入されてきたという背景があ る。 また、日本においては「質保証」はしばし ば大学の変遷とセットで議論される。米国 の社会学者マーチン・トロウによると、高 等教育への進学率が15%を超えると 高等 教育はエリート段階からマス段階へ移行す るという。トロウはこのモデルを1970年 代に提出している★2 。我が国の高等教育の 進学率は1960年代前半に15%を超え、そ こから急激に上昇した。1970年代には大 学進学率が3割を超え、教育環境の悪化が 指摘されるようになった。そして現在、大 学は「ユニバーサル段階」にあるといわれて いる。大学進学率がほぼ50%に達してい る現在、本当に大学生は学んでいるのだろ うか? 本当に大学教育はきちんと機能し ているのだろうか?大学はこういった問い に対して否応なく答えざるを得ない状況に 晒されており、それゆえ「質保証」という考 え方がクローズアップされるようになって きた。 学生の学びの代表的な測定方法として、 間接評価と直接評価がある。間接評価とは、 学生調査等を用いて学生の自己認識といっ たことを評価するものである。直接評価は 学生の成果を直接評価するもので、GPA(グ ローバル・ポイント・アベレージ:学生が 履修した科目の成績を平均した数字で表し たもの)などがそれにあたる。 我が国においては直接評価についてはい まだ大学ごとに温度差がある。一方で、間 接評価については、キャンパスライフアン ケートといった形で、各大学の高等教育開 発センターなどの部署において分析および 報告が進んでいる。 本稿は学生の学びの評価についての論考 ではないため、評価そのものや評価の意 義、評価の持つ困難といった議論に立ち入 るのは控える。ただし、現代の高等教育の なかでは、学生がどのように学んでいるか の実態を可視化することは重要視されてお り、これらが高等教育にまつわるイシュー になっていることは指摘できる。 たとえば、京都大学FD(ファカルティ・ ディベロップメント:授業内容・方法を改 善し向上させるための組織的な取組の総 称)研究検討委員会・高等教育開発推進セ ンターでは、『京都大学自学自習等学生の 学修生活実態調査報告書』を刊行し★3 、肯
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    008 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 定的な結果はもちろん、否定的な結果、た とえば大学の授業自体よりもむしろサーク ル活動等が、結果として学生の学びには資 している部分もあり、学生の予習復習時間 は短いといった事実も公表している。この ことによって、必要に応じて全学・各学部 の教育改善の資料としている。 これらは主としてFDに関連する活動と して行われている。ただし、学生の実態調 査はFDによるもののみに限らない。たと えば教育社会学の領域では、学生らの経年 的な生活実態調査が行われている。教育社 会学者の武内清は、最近の学生調査の結果 から、大学生は学業を中心とした生活を 送っているという。また、武内は近年の学 生の特性として大学や授業に満足し、従順 であるものの、向学心に乏しいという結果 も論じている★4 。最近の大学生はしっかり 授業に出てくるが、自らによって学びを組 み立てることをせず、緻密なカリキュラム を大学側に要求したり、向学心が不足した りしているという嘆きをしばしば耳にする ところである。大学生の「生徒化」について は、教育社会学の領域では議論が行われる など、知見の蓄積がなされている。ほか、 全国大学生活協同組合連合会(大学生協)が 1963年から実施している「学生生活実態調 査」は、一部欠損もありつつも大学生の読 書時間や書籍費などの時代的変遷といった 貴重なデータを提供している。 以上、近年の大学は、情報を公開するこ とや、データをオープンにすることが求め られていること、ほか、大学生の学生生活 の実態調査等が教育社会学といった領域で は、非常に重要な研究となっていることに ついて述べてきた。翻って、大学のなかに それらの流れからは距離をおいている部局 がある。図書館である。 大学図書館界の議論で「学生の学び」の記 録そのものにフォーカスをあてて論じてい るものはそれほどない。これは、自由宣言 の文言にある「図書館は利用者の秘密を守 る」の条件が大きく関わってくるものであ ると推察できる。つまり利用者の秘密を守 るがゆえに、学生の読書データの活用やそ の分析が進まないと想定される。たしかに 読書履歴等はプライバシーにも関連する 重要な情報であり、安易には分析の対象と しづらい。しかしながら、それだけでよい のかという微妙な引っ掛かりは残る。たと えば筆者が高等教育関係の学会に出向く と、そのなかの質疑応答で「図書館がデー タの提供を拒むために多層的な分析ができ なかった」という苦渋の発話がたびたびみ られることを報告しておきたい。 現在、世界的に研究のオープンデータ化 が進んでいる。たとえば、読書履歴よりも はるかにセンシティブに捉えられる情報を 扱うライフサイエンスの領域であっても、 「知のめぐりを良くする」★5 ために、個人 情報保護とデータの公開の意義の兼ね合い をはかりつつ、オープンデータ化が進ん でいる★6 。オープンデータ化の潮流のそれ を支えるプレイヤーの一人たる図書館自身 が、実のところ、自らの持っているデータ をオープンにはしていないという状況が現 前している。 ある大学図書館では学生の図書館利用 データを分析し、エビデンス・ベースドの 姿勢で次の業務改善のために手を打ってい
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    009ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 る一方、ある大学では図書館利用データの 利活用などはそもそも考えたこともない、 というところもある。学生の学びのありか たを捉える基礎データとして、図書館利用 データは非常に重要な位置を占めるはずで あるが、このデータの利活用に対して、各 大学の方針はまちまちなのである。これが 要因だろうか、図書館利用と学生の学びに ついての研究は散発的なものにとどまって おり、他大学との比較や全国調査を困難に している。 また別の面を見てみると、歴史社会学や 教育社会学といった領域が生み出している 知見として、筒 つついきよただ 井清忠や竹 たけうちよう 内洋の手による 教養主義の変遷や没落といった研究がある ★7 。これらは各時代の学生等の実態と、そ の歴史的変遷をたどるものである。彼らの 研究は読書史研究とも多く重なりがあるが、 学生の図書館利用のデータを用いたもので はない。後世の研究者にとって、いま現在 の学生像を捉えるための基礎データとして 学生の図書館利用データは有効であるはず である。さらに別方向から指摘すると、現 在、いくつかの大学で既に行われている可 能性がある「なし崩し的」に学生の図書館利 用データを分析対象として研究する行為は、 結果的には自由宣言を内部から蚕 さんしょく 食させて いるとも捉えうる。 このような状況で、学生の図書館の利用 データと「利用者の秘密を守る」という文言 の二者の衝突に対し、「読書の秘密は守ら なければならない」という図書館員の倫理 をとなえる論説は多いものの、実際の折り 合いについて、正面から検討を加えた研究 は見当たらない。 公共図書館を対象としているものでは あるが、国立国会図書館の渡 わ た な べ た だ し 邉斉志によ る「知的自由の陥穽:利用情報保護思想が 公立図書館に及ぼす影響の分析」★ 8 があ る。渡邉は、教条主義的な思想から一旦距 離をおいた立場に立脚し、「利用者の秘密 を守る」ことは、パラドキシカルな結果を 招いていることを指摘している。具体的に は、これまでの公立図書館関係者の利用情 報保護の取り組みは、現在の情報技術の水 準に照らし合わせると、図書館員の威信向 上、専門職として社会から認められるとい う目標とは非整合的であるという。本稿も 渡邉の問題意識と共通項を多く持つ。ただ し渡邉の原稿は公共図書館を主眼としたも のであるし、また短報という性質上、必要 な文献は押さえつつも限界があるといえる。 そこで、本稿では大学生の学習実態分析 における読書行動履歴の活用の可能性を探 り、かつそれと「利用者の秘密を守る」の文 言の折り合いについて考察する。具体的に は、自由宣言の成立過程および1979年改 訂に立ち返り、これらに対し検討を加える。 その上で、学生の読書行動といったデータ が、高等教育における学生実態分析につい て、実際に利用可能なのかどうかについて 議論する。 本稿の結論は以下のようになる。「自由宣 言」にあった「利用者の秘密を守る」の文言は、 学生の学習行動分析の潮流に対する堡 ほうさい 砦足 り得ない。というのも、利用者個々人の読 書傾向ではなく、匿名化したデータをもっ て分析した場合、自由宣言の想定していた 秘密を守る条件の想定外と考えられる。 なお、本研究は自由宣言の第三、「利用
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    010 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 者の秘密を守る」とその関連に絞って議論 する。その理由として、他の文言の重要性 は当然十二分に認めるが、それらを対象と することは本稿の議論の筋を歪めるからで ある。たとえば「知る自由」については、こ れは福井佑介によって上梓された労作『図 書館の倫理的価値「知る自由」の歴史的展 開』★9 を参照されたい。また、本稿では大 学図書館を対象とし、公共図書館や専門図 書館、学校図書館は対象としない。いうま でもなく公共図書館においてのサービスは、 それは行政が行うものであり、多種多様な 住民へのサービスが求められるため、個人 情報保護については別の理路も当然立ち現 れてくるためである。 更に(こういう原稿を書くと、よく「では 全面的に貸し出し履歴データをあちこちに バラ撒くのが望ましいのか」といった極論 を言われることがあるので、予防線を張っ ておく)、本稿は大学図書館外の部署が データ分析を行っているので図書館も行う べきだといった「バスに乗り遅れるな」式の 議論でないことについてもここで触れてお きたい。あくまでも、我々(ないしは、図 書館関係者)の常識はどのような形で構築 されてきたのか、これを明らかにしていき たいという意図で本稿は記されている。 以下、各章では以下の構成をとる。第2 章では、大学IRを始めとした学生の実態調 査についての潮流、および大学図書館にお ける貸出履歴データの活用を用いた研究に ついて紹介する。よって第2章は先行研究 の系列の素描という性質を持つ。第3章は 図書館における秘密を守るという議論がど のように成立したのか、経緯をたどる。第 4章は第3章を受けて議論を行う。第5章 では結論と今後の課題をまとめる。 2. 高等教育におけるエビデンス・ベースド  による分析評価の潮流 1章で触れたが、現在の高等教育の世界 では、学生の学びを可視化し、どう捉える かということが「大学の質保証」としてさか んに言われている。 たとえば、大学教育学会課題集会の統一 テーマを抜き出すと、第28回(2006年)「評 価時代を迎えた大学の在り方」、第 33 回 (2011年)「大学教育の質とは何か-ふた たび大学のレゾンデートルを問う-」、第 35 回(2013 年)「教育から学習への転換」 というものがみられる。ほかにも、第18 回FDフォーラム(2013年)は「学生が主体 的に学ぶ力を身につけるには」がテーマで ある。さらに第20回大学教育研究フォー ラム(2014年)のテーマは「学生の学びをど うデータ化し、どう利用するか?」である。 このように、現在、高等教育では学生の学 びの可視化、大学の質保証についての議論 が盛んに行われている。しかしこのなかで、 大学図書館が主たるプレイヤーとして議論 している場はそれほどない。 大学の学生の学びについては、たとえば ポートフォリオ、ルーブリックによった評 価といった、さまざまな議論や手法が提出 されている。本稿はこれらがどの程度の成 果を挙げているかの詳細に立ち入ることは 避けるが、ともあれ現代では学生の学習成 果の可視化が求められており、そのための ツールが開発されている。 また、2011年度から教育情報の公表は
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    011ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 社会への説明責任であるという視点によっ て、大学の教育情報の公表が義務化された。 これと呼応するように大学IRという動きも 始動・加速しつつある。たとえば、2014 年に『大学におけるIR(インスティテュー ショナル・リサーチ)の現状と在り方に関 する調査研究報告書』が、文部科学省大学 改革推進委託事業を受けて東京大学より刊 行されている★1 。このなかでは、米国のIR はいまだ発展中であり定義が困難であるこ と、また、日本に直輸入してもそのままは 根付かないと断りつつ、 成績や履修科目など学生の様々なデー タ(学務データ)を分析し、入学から卒業 まで修学を支援するために、IRは重要な 役割を果たしている。学生調査について も、IRの重要なツールとして位置づけら れている。とくに、学生調査が氏名や学 生番号などを記入する記名式の場合、学 生の成長や変化を追跡する調査が実施で きるだけでなく、学務データと学生調査 の結果を紐付けることができ、このこと が様々な教学の改善に寄与する貴重な分 析を提供している。こうした様々なデー タを収集することにより、大学間のベン チマーク(相互比較)が可能となっている こともIRの大きな特質である。特にア メリカでは大学間でデータ交換コンソー シアムが発展している。また、学生調査 についても、大学間でベンチマークをす ることが可能となるような発展が見られ る(p.ix)。 と述べられている。 大学IRについての定義等については、い まだ研究者や大学関係者のなかでも一定 の共通の理解があるものではない。同報 告書の中で浅野茂らは、IRの業務について Tab.1(p.014)のとおり整理している。 以上のように、現在の大学は自らの持つ データを分析し、それを報告することが説 明責任として求められる。 ただしここでは「評価」には困難が付いて 回ることを指摘しておきたい。たとえば、 人文社会系には自然科学系で用いられる研 究の評価指標があてはめにくいことはよく 言われている。あるいは評価において適切 ではない指標を用いることが広まってしま うと、それを訂正することには膨大な手間 がかかるという指摘もある。IRを批判対象 としたものではないが、グローバル化と いった現代の社会的な要請に高等教育が即 座に(あるいは無自覚的に)呼応することに 対する疑義もある。たとえばビル・レディ ングズ『廃墟のなかの大学』における「エク セレンス」の概念を手がかりにしながら、 大学の現在を考察する研究などがそれにあ たる★10 。加えて、評価は即座に競争的資 金等の議論といったものにスライドしうる。 鈴鹿医療科学大学の学長である豊田長康 は、2002年以降の国立大学の論文数の停 滞・減少と国際競争力の低下をもたらした 主因として、基盤的研究資金の削減、およ び重点化(選択と集中)性格の強い研究資金 への移行があると2015年に指摘している ★11 。同志社大学の濱嶋幸司は2003年の段 階で、大学生の生徒化に関連し、「イリイ チの「脱学校化社会」に反し、「学校化社会」
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    012 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 は着実に浸透している。学校の打ち出した 目標(課業)を黙々と遂行することが生徒の 目的となり…(略)…やがては身体化され ていく。諸制度からの逸脱は自他ともに許 されないものとなる」★12 と論じている。 このような「評価」が、管理、それもやや もするとネガティヴな形の管理につながり かねない批判的視座に立った論考があるこ とには軽重なく目配りする必要はある。以 上を踏まえた上で大学図書館の状況を鑑 みると、高等教育の質的転換に関しては、 ラーニング・コモンズの設置といった仕 組みで反応しつつあるものの、IRや評価と いった視点から見ると、反応は慎重、ない しは乏しいといえる。 ただし、数少ないながら大学図書館の貸 出履歴データと学生のGPAを紐付けて分 析するような研究は現れ始めている。東北 学院大学の片瀬一男は、ブルデューのハビ トゥスの概念を踏まえ、「ただちに図書館 利用行動が学業成績の向上をもたらすとい う結論は導き出すことはできない」と断っ ているものの、3年次、4年次とも図書館 利用頻度の多い大学生ほど、おおむね大学 での成績が良好であり、かつ大学生の図書 館利用頻度は、3年生については多くの学 科で、4年生では特定の学科で成績と関連 していると結論している★13 。また、立命 館大学の木下祐子らは、大学図書館の課題 は利用者である教員と学生の「学術研究」・ 「学びと成長」をどのように支援できるのか であると指摘し、貸出冊数とGPAの相関 を検討し「各学部の特色により若干強弱は あるものの、貸出冊数と成績には強い相関 通常業務 臨時業務 学 内 業 務 ・在学者管理の分析 ・学習成果の測定・分析 ・Cohort(入学年次別)分析 ・財務分析及び収支予測 ・Retention(継続在籍率)分析 ・教員の配置及び給与に係る分析 ・卒業率に係る分析 ・戦略(事業)計画 ・履修コースの設定及び登録状況 ・教育プログラム(コース)の評価 ・学生の満足度調査 ・外部評価 ・学内調査の設計・実施 ・内部コンサルティング ・ベンチマーク 外 部 へ の 説 明 責 任 ・学生納付金に係る情報収集・分析 ・補助金団体への報告書 ・大学年鑑 ・大学ランキング・データ ・主要業績評価指標 ・その他の機関情報 ・クラスサイズ分析 ・機関報告書 ・認証評価報告書 ・連邦の高等教育機関情報 ・NFS データ収集 Tab.1 アメリカのIRの主要な業務
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    013ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 関係があることが判明した。特に、1回生 ほど強い相関性」があると報告している★14 。 浦川らは大学図書館の貸出数を学生の学び の代理変数として捉え、私立大学等経常費 補助金等と図書貸出数は正の相関があるこ と等を明らかにしている★15 。千葉大学の アカデミック・リンク・センターでも「情 報利用行動定点観測」として学生アンケー トを実施し、個人を特定できる番号に一方 向性の暗号化を施し、図書貸出記録や成績 情報等との連動分析を行っている★16 。成 果との兼ね合いではないが、T大学の貸出 履歴データの分析については筑波大学の松 野渉ら★17 、また貸出履歴データを用いた 協調フィルタリングの研究については筑 波大学の辻慶太ら★18 の研究がある。また、 公共図書館を対象としたものであるが、佐 浦、辻は図書館の利用者からは貸出履歴を 保存し、活用することは概ね容認されてい ることを報告している★19 。 社会的背景が異なるものの、海外の事 例 と し て は Soria ら に よ る University of Minnesotaの図書館利用とGPAについての 報告が目を引く★20 。Soriaらは以下のよう に論じている。従来、図書館では利用者の プライバシー保護によってデータ収集が困 難であり、図書館利用と学生の成果の研究 はこれまでなされなかった。しかし、現在 の大学図書館は他の部門と同様に自らの価 値を証明するように求められている。そこ でSoriaらは統計的処理の上、図書館利用 とGPAの関係を分析し、初年次の図書館 利用にはGPAと高い相関があることを明 らかにした。この分析をもとに、Soriaら は学内外に対して図書館の価値や設置意義 を訴える議論を行っている。さらにSoria らは、大学図書館の有用性の説明責任のた めに他大学でも同様の調査を行うことを 勧告している。ほか、Hong Kong Baptist University では図書館ワークショップと GPAの関係を★21 、University of Wisconsin で は ILL 利 用 と GPA の 関 係 を★ 22 、Kent State Universityでは深夜の図書館の利用と GPA等を★23 それぞれ関連付け分析してい る。 ここでは先述のSoriaらの指摘をもう一 度振り返っておきたい。Soriaは以下のよ うに論じる。これまでの(アメリカの)大学 図書館はプライバシー保護のみを優先とす る方針であったが、プライバシー保護と同 時並行で統計的処理を行った上で自らの持 つデータを利活用する方向に舵を切った。 その背景として、図書館は自らの持つ価値 を大学執行部等にきちんと説明する必要に 迫られたことがあるという。 しかし、日本においては自由宣言をもと に、貸出履歴データを研究・分析対象とす ることに対して、強い忌避感を持つ大学図 書館や研究者らは依然として存在する。 となると、筆者の興味はおのずと以下の ようになる。われわれが自明だと信じてい る図書館のルールというものは、どのよう に構築されてきたのだろう。構築されてき た図書館の常識はどのような変遷をたどっ てきたのだろう。 そこで次章からは、「自由宣言」の成立過 程および1979年改訂の経緯をたどり、「利 用者の秘密を守る」の文言について検討し ていきたい。 なお、予め断っておくと、自由宣言に関
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    014 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 する資料は膨大なものがあり、なおかつ 個々人の立場によってはそれらに対する言 及状況には大きな差がある。極力資料は渉 猟したものの、それでも主として『図書館 雑誌』(日本図書館協会の機関誌。1907年 に創刊)等を中心とした点は本稿の限界と してあらかじめ断っておきたい。 3.「利用者の秘密を守る」から見た自由宣言   成立過程、および1979年改訂 本章では図書館の自由宣言における「利 用者の秘密を守る」の文言の変遷について 検討する。これまで図書館の自由宣言につ いての経緯等は、日本図書館協会 図書館 の自由委員会の作業を中心にまとめられて きた。しかしそれらは図書館の自由宣言を 全体的に捉える性質上、どうしても総花的 な記載とならざるを得ない。そこで本章で は「利用者の秘密を守る」の文言を縦糸とし て絞り、時代的変遷を追う。 3.1 成立過程前史 以下、『図書館雑誌』を当時の記載に倣っ て『雜誌』と記述する。また原文ママの個所 については(sic)を付与する。 自由宣言は1954年、全国図書館大会お よび日本図書館協会総会によって採択され た。全体的な採択の経緯については日本図 書館協会常務理事、京都大学教育学部教授 などを歴任した森耕一がまとめている★24 。 本節は森のまとめを参考にしつつ、しかし 森が議論の主眼としていない「利用者の秘 密」に関わる点のみを絞って記述する。全 体像の把握については森のまとめを参照さ れたい。 自由宣言の採択の前哨戦として、図書館 の中立性論争があるといえる。自由宣言の 成立の発端には1952年の九州図書館大会 において、破防法反対の決議を行おうとい う「内々交わされていた」議論がある(『雜 誌』、1952年7月)。有 ありやまたかし 山崧(後の日野市長、 後年、前川恒雄の後ろ盾となった)はその 動議に反対し、Editorial Forumの欄で「然 し図書館界が「破防法」について直接発言す ることは、厳々戒むべきことであると信ず る。図書館が本当にinformation centerと して、客観的に資料を提供することを以つ てその本質とするならば、図書館は一切の 政治や思想から中立であるべきである」と いう。すなわち、有山は図書館は情報を提 供するための場であり、図書館が積極的に 政治にコミットすることを忌避する意見を 提示する。 これに対して、反発するような意見と して、編集部から「図書館の中立性につ いての討論を提案する」(『雜誌』、1952 年8月)という提示が行われた。この討論 を企画したのは、当時26歳であった石井 敦と、武田虎之助の息子であり、のちに 『紀伊国屋文左衛門』で直木賞候補となっ た武 た け だ や す み 田八洲満(当時25歳)の二名であった。 編集部は、この提案について 8 月 15 日を 意識したという。討論は主として『雜誌』の 「自由論壇」欄において行われた。この欄に は多くの図書館員が積極的に投書を行って おり、まるで現代の我々がソーシャルメ ディア上で議論を交わすがごとき百家争鳴 の論争が行われていた。のちに「中立性論 争」と呼ばれるこの論争のなかで、「利用者 の秘密」につながる閲覧票の議論が現れて
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    015ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 くる。以下、「図書館の中立性についての 討論を提案する」本文中から抜粋する。 本誌別欄の投稿にあるように、閲覧票 を官憲により、法的な根拠なくして提示 を要求された場合、明らかに閲覧票に書 き込まれている事実が本人に不利益にな る場合には、これの提示を拒否すべきで あろうか。基本的人権の侵害になるよう な行為を図書館がなすべきであろうか。 これは戦時中特高警察が思想調査のため、 往々利用したケースであるという。この 場合図書館員は断乎として拒否せねばな らないか。(『雜誌』、1952年8月、p.214) 「本誌別欄の投稿」とは、後に図書館問題 研究会の発足呼び掛け人となる中村光雄 (豊橋市立図書館)による投書を指す。「自 由論壇」欄における記事はこのようにある。 先日私達の図書館で大きな問題が討議 され未解決に終つたので、ここにその大 要を発表し皆様の御批判をいただきたい と思います。それは閲覧証の問題です。 偶然な話から若し思想問題について警察 が閲覧証調べに来ればどうするかという 言うことでした。…(略)…その前に何 故警察が閲覧証を調べるか、これはすぐ 分ることです。太平洋戦争の中で直接経 験された方も居る筈です。まさか図書館 4 4 4 4 4 4 の統計を取るために調べるなんて考えら 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 れますか?ナンセンスです 4 4 4 44 4 4 4 4 4 4 4 (傍点筆者)。 …(略)…要するにこの問題は「見せるか、 見せないか」の問題から「合憲か違憲か」 の問題になつて来るのです、だから一層 討議された上ではつきりすべき問題なの です。私はこう思います「絶対見せては いけない、(sic)若し見せたとすれば私 達は職権を乱用して基本的人権を侵した という罪を負うのです。(『雜誌』、1952 年8月、p.230-231) これに対する反応はいくつかあるものの、 すぐさま、貸出記録の廃棄の発想に極め て近い投稿が片山良爾「閲覧証をめぐる問 題の解答」に現れてくる。しかし、奇妙な ことに(あるいはふざけているからだろう か)、『図書館の自由に関する成立 図書館 の自由・1《復刻版》』には採録されていな い。片山はこう書く。 それならば閲覧証を保存しなかつたら どうなるかを考えていただきたい。ポリ 公が来ようが、家出息子の父親が来よう が、ボスが来ようが、無いものは無いの で見せようがない。ちょうど私に借金す る時みたいに無いものは貸せないのです。 至つて簡単なことです。(『雜誌』、1952 年10月、p.287) 他にもいくつかの誌上論争が行われた ものの、これらの議論の後、図書館憲章 (委員会案)が提示される。『雜誌』1953年 2 月号には、前年の 11 月に埼玉県図書館 大会で図書館憲章(仮称)の制定を決議し て、日本図書館協会に申し入れを行ったこ とが記されている。この点について、森は 「図書館の自由に関する宣言−成立までの 経過−」の文中では、「埼玉県大会の決議が、 なにか具体的な事件にもとづいてのこと
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    016 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 かどうかは不明」と断り書きを行っている ★25 。当時の不明点については、後年、三 苫 みとままさかつ 正勝は1952年2月、埼玉県秩父市立図 書館にて、進歩的文化人であった中島健蔵 の座談会を企画した際に、その数日前に担 当司書の机の中を警察が調査するという事 件があり、それがきっかけであると言及し ている★26 。 図書館憲章の素案づくりは、埼玉図書館 大会の申し入れを受けた上で行われた★27 。 委員は図書館法改正委員および、中立性論 争に投稿したものから理事長が指名してい る(『雜誌』、1953年8月、p.30)。そこにお ける委員会案は以下の通りである。 基本的人権の一つとして、知る自由を 持つ民衆に、資料と施設を提供すること は、図書館のもつとも重要な任務である。 われわれ図書館人は、その任務を果す ため、次のことを確認し実践する。 1. 図書館は資料収集の自由を有する。 2. 図書館は資料提供の自由を有する。 3. 図書館はすべての検閲を拒否する。 図書館の自由がおかされる時、われわれ は団結して抵抗し、関係諸団体との協力 を期する。(『雜誌』、1953年10月、p.298) このなかには「利用者の秘密を守る」を直 接的に反映している文言はない。ただし、 委員会案と同ページに委員会報告という記 事が配置されている。図書館憲章委員会議 長は佐 さとうただよし 藤忠恕であり、委員会長名での報告 には、以下の記載がある。 館界にあつては「警察側が閲覧者名を 書いた閲覧カードの調査に来たり」「購 入図書の種類に対して県教育委員会から 干渉があつたり」等の具体的事例があっ たという(Ibid.)。 すなわち、図書館憲章の文言そのものに は現れてこないものの、利用者の秘密を守 るという観念を、図書館憲章の委員会は意 識していたと推察される。また、当時の 『雜誌』の編集部は一定の編集方針をもって 記事を構成していることがわかる。たとえ ば編集部の手によって朝日新聞の投書が特 別に『雜誌』に転載されていることがそれに あたる。岩手県の農業従事者によるこの投 書は以下のようになっている。 先日私は町の書店に行つて「平和」とい う雜誌の予約購読をしようとしました。 すると書店の主人は「その本なら止めと いたほうがいよ(sic、ただし元の新聞記 事(1952年12月25日朝日新聞東京版朝 刊3頁)には誤字なし)ですよ。一昨日も 国警の警察が來て平和、世界、新世界、 ソヴエトグラフ等の予約者の名前と調査 をして行つたばかりですから」というの です。(略)昔の思想警察みたいな行動は 愼んでもらいたいと思います」。(『雜誌』、 1953年3月、p.78) 以上より、図書館はインフォメーション センターであるから、中立的に情報を提供 するのみにとどまるべきであるという立場 と、積極的に活動することで、中立性を守 ろうという二つの立場の衝突が、自由宣言 の成立前史にはあったといえる。
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    017ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 これと同様の構図は現代の図書館でもし ばしば繰り返されるものである。たとえば ビジネス支援に関して、図書館がサービス に対し差をつけることは是なのかといった 異議申し立てがなされたこともこの構図と 類似型であろう。 ともあれ、「中立性論争」を基底としつつ、 利用者の閲覧票の保持等を問題としていた のが、自由宣言成立前史といえるだろう。 以上をまとめると、 (1) この段階では「自由宣言」という文言 ではなく「図書館憲章」という名前 だった (2) 利用者の秘密は、特に戦前の検閲と セットで議論されていること、まし てや統計の発想ではなかった (3) 図書館憲章の委員会案では、現行の 「自由宣言」にある「利用者の秘密を 守る」の文言は出現していない という点の3点が指摘できる。 3.1 自由宣言の成立 「中立性論争」という、『雜誌』の「自由論 壇」コーナーを主戦場とした2年間にわ たった議論を経た後に、1954年の全国図 書館大会および日本図書館協会総会が行わ れた。Tab.2が日程である。 5 月 26 日の全体会議の議長は、小野則 秋(同志社大学図書館)および小林重幸(奈 良県立図書館)であった。議事録の発言か ら、自由宣言についての議論はおそらく全 日にわたって行われたと推定できるものの、 『雜誌』掲載の議事録として確認できるもの は、5月26日の午前、および5月28日午前、 午後と思われるものに限られる。 3.1.1 5月26日午前 このタイミングで、有山らによって「図 書館憲章」ではなく「図書館の自由に関する 宣言」という名前に変更されたものが提示 される。さらに、有山らによる副文の加 筆のため、原案から10倍ほどに分量が増 加していた。有山らによる変更を事前に聞 かされていないものも多く、無断で原稿が 変更されたという意見がなされるなど、議 事録には混乱の跡がうかがえる。ここでは、 この過程についてのやりとりを要約して示 す。 有山:憲章はさまざまな意味に解される ので「図書館の自由宣言」とした。図書館 憲章は法三章的で短いが、それを解説し たものを付与した(副文)。三つの問題に ついて解説したので本質的には憲章と同 じものである 裏田(東京大学):図書館憲章の委員を引 き受けたが法三章の文言を検討しただけ であり、今回の案はどう関係あるのか 有山:図書館憲章委員会のなかに小委 5月26日 午前 全国図書館大会開会式 午前 〃 全体会議 午後 〃 各部会 5月27日 午前 〃 午後 〃 研究発表 5月28日 午前 全国図書館大会全体会議 午後 日本図書館協会総会 Tab.2 自由宣言採択までの日程
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    018 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 員会を作り、埼玉県立図書館の韮塚★26 、 武蔵野市立図書館の佐藤、有山の三人で 作った。(『雜誌』、1954年7月、p.224-225 を参考に構成) 法三章とは漢の高祖が始皇帝の定めた厳 しい法律を廃し、殺人・傷害・窃盗の三つ を罰するとした三か条の法律のことで、転 じて簡略な法律のことである。よって、こ こでいう法三章とは(1)資料収集の自由 (2)資料提供の自由(3)すべての検閲を拒 否する、の3つの文章のことを指す。 ここでは主文と副文(解説)について確認 しておきたい。ただし、全ての項目を転記 することは煩瑣であるので、抜粋して引用 する。ボールドを主文とし、標準書体を副 文として記す。 3 図書館はすべての不当な検閲に反対 する。 (一)〜(三) (筆者注. 略) (四)更に図書館の一般的利用状況につい ては別であるが、利用者個人の読書傾向 など個人的自由を侵すような調査の要求 は、法律上正当な手続きによる場合の外 は拒否する。(Ibid. p.220-221) 「利用者の秘密を守る」という文言は「憲 章」で存在しなかったが、自由宣言の3-4 の副文で現れてくることがわかる。ただし、 有山らの案では、個々人の読書傾向につい てではない、一般的な利用状況についての 調査を許可している。 議事録を確認する限り、この日の配布資 料は図書館憲章から「図書館の自由に関す る宣言」という名前に変更された上、副文 が加筆されていたことから、全体会議に混 乱をもたらしたと見受けられる。事実、自 由宣言を読んだことのない参加者がいるた め、朗読はしたものの28日最終日の全体 会議まで十分研究し検討するという意見が 見られる。 3.1.2 5月26日午前 この議事録を読むと、副文に対する違和 感を表明するものが増えてくることがわか る。協議に先立って「この草案は憲章委員 会から小委員会に附託され、時間的な余裕 のなかつたせいか、副文にいたるまでは実 際に委員会のほうでも了知していなかつた ようです。それで副文に関しては皆様の御 意見もあると思いますので、主文に対し てこの大会で決議していただきたく、主 文を主として決議していただくように会 議を進めていただきたいと思います(Ibid. p.236)」という発話が見られる。 この時間帯では、主として「抵抗する」の 文言についての議論がなされていた。百家 争鳴で、原案そのものを差し戻そうとしよ うとする動きすら見られる。ただし、原案 を差し戻すことについては、このような発 話が見られる。「われわれは叡智を持つた 図書館人の集まりであります。…(略)… 差戻すということは、大会の性格上否決す ることです。(「そうだと」(sic)言う者あ り)図書館人の出したものを、図書館人に よつて否決したに等しい結果になる(Ibid. p.238)」。 また、議長の「お諮り致しますが大多数 の方は趣旨に賛成である。しかしその主文
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    019ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 のなかに、主文もこれを修正しなければな らない問題がある。副文には更に検討を要 する問題があり(Ibid.)」という発話を受けて、 その後の処理は当日の午後に行われる日本 図書館協会総会を開催する主体である日本 図書館協会に移すと決定する。その際の条 件として、自由宣言を全国図書館大会の名 のもとで出すというものであった。これら の決定の後、全国図書館大会は閉会する。 3.1.3 5月28日午後 5月28日午後は、第八回日本図書館協会 総会であった。ここで自由宣言は採択され ることになるが、採択までに至るには大幅 な紛糾があったといえる。さまざまな文献 でも確認できるが、この紛糾の原因につい ては、 ・「関係所団体との協力…」という表現 ・「抵抗する」という表現 の二点が主たる理由であった。 なお、自由宣言の成立にあたって、総会 自体が成立するかどうか自体にまで疑義が 挟まれていることがわかる。森による司会 の発話として、以下が認められる。 森司会:只今の出席は120名でござい ます。先程申上げましたように、記名 委任状が出ておりまして、その数が158、 白紙委任状が115、従つて現在の会員数 は1,864名、この総会は団体会員は構成 メンバーになつておりませんから、十分 の一、186名で、この会は十分に成立し ていると認められると思います。(拍手) (『雜誌』、1954年7月、p.255) 議論が紛糾した理由について、森はこのよ うに書いている。 宣言の問題が、このように紛糾した のは、賛成派がある一方、「雉も鳴かず ば撃たれもすまい」という考え方をとる 図書館員が相当に多かったからである。 (略)きびしい状況に直面していたのであ る。国の方針がそうであれば、これまで 以上に困難さを増す地方の財政当局との 折衝において、「抵抗する」という表現を 含む自由宣言が障害にならないかという ことをおそれたのである。(『図書館の自 由に関する成立《復刻》』、p.15) 議論の紛糾について、各論者の見解を逐 一紹介することは難しいが、おおまかにま とめると、中央―地方、若手−ベテランと いう構造が看取できる。すなわち、中央の 勤務でありかつ若手の図書館員は自由宣言 に賛成をし、そうでない図書館員は二の足 を踏んでいたという構図がある。たとえ ば、地方の図書館員(蒲 か ま ち ま さ お 池正夫:徳島県立 図書館長)が、「抵抗」という文言がどのよ うな響きを持つものか、東京周辺で仕事を している人にはそれがわからないと批判 し、およそ10分以上も演説していること がそれを表している。蒲池以外にも「抵抗 という文字については相当な抵抗がありま す。(笑)これは都会と田舎では余程違うの であります。(『雜誌』、1954年7月、p.255)」 という発話もある。 このようにベテランと思われる図書館員 から慎重論が出る一方で、たとえば、「自 分も若いので原案に賛成したいと思います
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    020 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 けれども(Ibid. p.254)」といった若手によ る積極的な採択への発話が散見される。 議論の結果、主文のみが採択されること となり、自由宣言は以下のように採択され た。 基本的人権の一つとして、「知る自由」 をもつ民衆に、資料と施設を提供するこ とは、図書館のもっとも重要な任務であ る。 図書館はこのような任務を果すため、 我々図書館人は次のことを確認し実践す る。 1. 図書館は資料収集の自由を有する 2. 図書館は資料提供の自由を有する 3. 図書館はすべての不当な検閲に反対す  る 図書館の自由が侵される時、我々は団 結してあくまで自由を守る。 差分をまとめると、以下のTab.3のとおり となる。 ここでは (1) 二文目の冒頭「われわれ図書館人」 の書き出しが「図書館は」になって いる (2) 抵抗・関係諸団体についての連携 という表現が削除された (3) 検閲が不当な検閲という文言に変 更されている (4) 副文が採択されなかったため、「利 用者の秘密」に関する記述も同時 に採択されなかった 以上の点を確認しておく。なお、現在の 自由宣言は「不当な検閲」という文言ではな く、「すべての検閲」になっている。余談な がら、有川浩の『図書館戦争』においては 「不当な検閲」という文言が主たる柱となっ ている。よって、有川浩は『図書館戦争』を 執筆するにあたって、過去の文献をおさえ ていることがうかがえる★28 。 図書館憲章 自由宣言 1954採択版 基本的人権の一つとして、知る自由を持つ民衆に、資 料と施設を提供することは、図書館のもつとも重要な 任務である。 われわれ図書館人は、その任務を果すため、次のこと を確認し実践する。 1. 図書館は資料収集の自由を有する。 2. 図書館は資料提供の自由を有する。 3. 図書館はすべての検閲を拒否する。 図書館の自由がおかされる時、われわれは団結して抵 抗し、関係諸団体との協力を期する。 基本的人権の一つとして、「知る自由」をもつ民衆に、 資料と施設を提供することは、図書館のもっとも重要 な任務である。 図書館はこのような任務を果すため、我々図書館人は 次のことを確認し実践する。 1. 図書館は資料収集の自由を有する 2. 図書館は資料提供の自由を有する 3. 図書館はすべての不当な検閲に反対する 図書館の自由が侵される時、我々は団結してあくまで 自由を守る。 Tab.3 図書館憲章と1954年版自由宣言差分        ※差分取得はdifff《デュフフ》(http://difff.jp/)による
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    021ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 本節をまとめる。1953年までの流れと して、「利用者の秘密を守る」は、国家権力 による検閲に対抗する手段としてその必要 性が議論されつつも、委員会案の図書館憲 章には出てこなかった。この文言が現れる のは有山らが裏田らに断らずに加筆した自 由宣言の原案の3-4、検閲に反対する箇所 である。ただし、それは副文であったため、 採択の段階で棄却された。 3.2 1979年改訂前史 1954年の成立時を扱うことも難しいが、 1979年以降の自由宣言改訂以降を研究対 象として扱うことは更にむずかしい。とい うのも、この時期に実際に第一線で活躍し ていたライブラリアンは多く存命しており、 資料以外の、たとえばオーラルヒストリー 等も多く存在しうる。本節以降は検証可能 性を容易にするため「公式」の文献を重視し て執筆されるが、これらの文献に現れない エピソードが多くあったことは容易に推測 できる。ぜひ、この点について、先賢のご 意見を仰ぎたい。 自由宣言は1979年に一度、改定されて いる。本節ではその改訂の前史をたどる。 改訂に至った理由として、三苫正勝は 1963年『中小レポート』、1965年の日野市 立図書館開館、図書館問題研究会の方針 (貸出しを伸ばすことを改善の目標とする)、 東京都の図書館振興策(1970 年、図書館建 設費や図書費の補助)、1970年『市民の図 書館』刊行、1973年の山口図書館図書隠匿 事件、1975年「図書館の自由に関する調査 委員会」という、図書館界の流れを紹介し ている★25 。 渡邊は「公立図書館関係者を利用情報保 護に向かわせてきた要因を特定することは、 文献にその動機が明記されているわけでは ないため、たやすい作業ではない」と断っ ている。その上で、渡邊は1960年代の後 半以降、公共図書館の職員が利用情報を安 易に漏示するような描写を含む小説やテレ ビドラマが度々発表され、「図書館関係者は、 こうした作品に描かれた図書館員像は実態 を正しく反映したものではないことを社会 に対してアピールするとともに、図書館関 係者に対して啓蒙活動を行う必要に迫られ た」と論じている★8 。 また、三苫、渡邊は言及していないもの の、当時の社会的な背景として「国民総背 番号制」が自由宣言の改訂に影響を与えた 可能性は高いと推察される。国民総背番号 制は佐藤栄作内閣が1960年代後半に提出 し、野党の反対によって頓挫したものであ るが、これに関する動向が人々のプライバ シー保護の機運の醸成に強く関係した形跡 がある。たとえば、朝日新聞1972年11月 16 日朝刊 22 頁には「総背番号制反対へ国 民運動 学者・文化人ら旗揚げ私権侵害防 ぐ法規制も」、同じく朝日新聞1975年4月 7日朝刊11頁には「情報化社会とプライバ シーを考えるために 国民総背番号制 礼 賛薄れ警戒強まる」といった記事が確認で きる。また、社会学者の稲葉三千男は「「国 民総背番号制」への異議申し立て」(『潮』、 p.156、1974年12月)を執筆している。学 術雑誌にかぎらず、たとえば大宅壮一文庫 目録を調査すると『平凡パンチ』、『サンデー 毎日』、『週刊ポスト』といった雑誌であっ ても、国民総背番号制に対する危惧の記事
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    022 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 が盛んに認められる。たとえば『週刊ポス ト』では「秘かに進行中、国民総背番号制は “性体験”まで管理する」(1974年7月26日 p.32)といった、いささかセンセーショナ ルな記事すら現れている。すなわち高度経 済成長期と図書館数の増大、プライバシー 保護の機運、小説やテレビドラマにおける 誤った図書館像の流布といったさまざまな 状況が、1970年代には存在したといえる だろう。 この時期は、いわば図書館の発展期と して捉えることができる。図書館界では 1963 年の『中小レポート』、1970 年の『市 民の図書館』によって、日本の図書館界の 発展は行われたという言説が多く存在する。 しかしそれらは図書館界の内情のみに焦点 を絞った議論の可能性がある。たとえば、 1960年の池田内閣の所得倍増計画がある。 この計画は1961年から10年間で国民所得 を倍増させることを狙ったものだが、実際 は計画以上の成長がなされた。したがって、 ここでは『中小レポート』や『市民の図書館』 だけが原因ではなく、高度経済成長という 要因も図書館の成長に大きく関係した可能 性を指摘しておきたい。 ともあれ1954年採択時に比較し、図書 館数も増大し、実際の図書館の運用上自由 宣言が実質的に必要になってきた時期であ るといってよいだろう。事実、三苫、塩見 らは、1970年代までの図書館活動が未成 熟であったため、1950年代〜 70年代に関 しては、自由宣言に関する議論は抽象的な ものに留まらざるを得なかった、と指摘し ている★25 。 ただし、自由宣言成立後20年間の「無風 状態」については、違う視点を匂わせる指 摘もある。たとえば、先に触れたように、 蒲池は自由宣言の採択の際に、図書館員が 自らの理念を宣言することに対し「キジも 鳴かずば撃たれもしまい」と反対論を訴え た。蒲池を偲んで新 しんこういち 孝一は以下のように書 いている。 宣言成立後の日本図書館協会の理事会 は、四国・九州の役員が欠席したり、さ らに土岐善麿理事長の辞意表明なども あって混迷する。その後松山市で蒲池ら 有志の館長が集い関係修復を図っている。 この時期、蒲池は理事ではなかったが、 松山市の会合のあと開催された日本図書 館協会理事会にも出席して積極的に発言 している。しかし、蒲池をはじめ役員一 同何故か「図書館の自由宣言」の取り扱い には一切触れていない。 松山市で何が話し合われたか具体的記 録はないが、おそらく自由宣言が話題に なったであろうことは十分に想像がつく。 蒲池はその後ますます図書館界で発言力 をましていくがそのことと自由宣言成立 後の無風状態と関連があるのか定かでは ない★29 。 以上、新は「定かではない」と匂わせるに 留まっているがこのように図書館界の趨勢 は一枚岩ではなかったことは指摘できよう。 「利用者の秘密を守る」に関するきっか けとして、練馬図書館テレビドラマ事件 (1967年)および、東村山市が制定したプ ライバシーに関する条例が先行研究ではし ばしば指摘される。ここでは主として東村
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    023ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 山市の条例について触れる。1974 年 3 月 30日に条例第18号として制定された、 利用者の秘密を守る義務 第6条 図書館は、資料の提供活動を通 じて知り得た利用者の個人的な秘密を漏 らしてはならない。 というものである。しかし、本条例が制 定された経緯についてはほとんど紹介がな されていない。そこで本稿では、この経緯 について紙幅を割いて紹介する。なお結論 を先に述べると、東村山の図書館のこの条 例の制定背景には、いわば現代の公共図書 館の方向性を決定づけたプレイヤーらが陰 に陽に見られることが指摘できる。 東村山市図書館の成立の過程については、 日本図書館協会の理論誌『現代の図書館』 (vol.11, No.4, p.149-181、1974 年)におお まかな経緯が記されている。なお、この記 事が記載されていた『現代の図書館』当該号 の編集委員長は、現代の公共図書館の方向 を決定づけたといわれる前川恒雄である。 1953年7月、東京都立立川図書館のブッ クモービル「むらさき号」が、東村山町(当 時)役場の駐車場を巡回拠点として設定し た。また、同時期には、日野市における都 電図書館が刺激となり、電車図書館等が開 館された。 1970年となると、移動図書館の漸減が 東京都の方針に現れてくる。そこで文庫活 動等を行っていた人々を中心に、市立図書 館建設の動きが進み始める。 1972年3月、定例市議会で「図書館設置 準備室」設置の陳情が採択された。市民の 意思を反映した図書館をつくるために、専 門委員制度を設置し、そこにおける議論を 図書館づくりに反映することが狙いであっ た。専門委員は(1)バスおよび電車図書館 などで実際に図書活動に携わっている団体 関係者、すなわち文庫関係者7名(2)小中 学校の関係者2名(3)学識経験者3名で構 成されていた。 学識経験者としては、図書館資料整備セ ンターの中 な か ね じ ょ せ ふ 根恕世夫、日野図書館長の前川 恒雄、日本図書館協会総務部長の菅 すがわらたかし 原峻の 名が見られる。前川、菅原は文部省図書館 職員養成所の同窓であり、菅原は前川を当 時の一番親しい仲と発言している。図書活 動に携わっている団体関係者の合計7名に は、主に文庫活動を行っていたり、電車図 書館に携わっていたりした人々が含まれて いる。この電車図書館とは、1967年に廃 車になった西武鉄道の車両を譲り受け、団 地住民の手によって開かれた「くめがわ電 車図書館」のことである。 この時期の直前の動きとして、1965年、 有山崧が日野市長となる。よく知られてい るように、有山は前川の後ろ盾的存在だと される。たとえば、有山が日野市長になる 直前に、前川を図書館づくりのために招聘 したことはよく知られている。塩見は「有 山、前川という、この『中小レポート』を中 心になってやってきた二人が、市長と図書 館長という関係の中でつくった図書館が日 野市立図書館である」と述べている★30 。 もちろん日野市立図書館の以降、各地の 公共図書館は多かれ少なかれ日野の影響を 受けているとはいえ、東村山は他の図書館 よりも日野の影響を一層強く受けていると
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    024 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 判断することができる。なぜならば東村山 は日野と同じ多摩地区に位置し、移動図書 館を自らのルーツに持つという共通項を持 つ。新図書館の企画段階においては、企画 役の専門委員が日野市立図書館等に見学に 行っている、あるいは東村山市立図書の初 代館長の鈴木喜久一は、もともと日野市立 図書館副館長であるといった特徴がある。 東村山市図書館設立に関する記録に、「あ る図書館作りの記録」がある。この資料は 1972年10月〜 1973年7月に行われた会議 録で、『現代の図書館』に再構成した形で転 記されている。この会議録の掲載について 東村山市図書館開設準備室では、会議 記録類が充分でないことから会議の「再 構成」は困難であるとして固辞されたが、 館界にこの種の資料が皆無であることか ら特にお願いした。(p.162) と、編集委員会が『現代の図書館』に会議内 容を転記・記載しようとした意向が強く働 いていたことがうかがえる。ただし、東村 山市の開設準備室がいう、会議記録等が十 分ではないというのは事実ではない。とい うのも、この委員会の記録は厚さ5cm程 度の「市立図書館専門委員会関係綴」として まとめられており、公文書として保存され ている。また、この会議自体にはそもそも 学識経験者として前川恒雄自身が出席して いるのである。 そこで東村山市に対し、情報公開請求制 度を用いてこの記録に対する開示請求を 行った。その結果、プライバシー保護の関 係上、個々人の名前については伏せられた 状態で開示が行われた。なお、前述の『現 代の図書館』の「ある図書館作りの記録」で は、発話者は個人名どころか選出区分も特 定できないようにマスクされている。そこ で本稿では「市立図書館専門委員会関係綴」 を典拠として記す。 鈴木喜久一市立図書館開設準備室長に よって1973年9月6日に起案された、市立 図書館専門委員会会議集約事項によると、 「利用者の秘密を守る」という文言について は、1973年3月の第10回専門委員会会議お よび1973年7月の第4回専門委員会会議に 認めることができる。これらの回では、他 の会議開催日と異なり市長が同席していた。 1973年3月の第10回専門委員会会議の 協議事項は、「東村山市立図書館建設基本 計画」の資料が配布され、図書館計画に対 する要望のとりまとめから始まった。この 回は比較的初期にあたり、いわばどのよう な方向性をもって図書館を設計するかとい う議論の場であった。このなかで、読書履 歴とプライバシー保護についての言及が現 れてくる。 委員(文庫関係者):利用者がどの様な 本を読んだかを調べられては困るので、 そのはどめとして、プライバシーを守る ということを資料(図書館建設基本計画) の中に入れてほしい。 委員(学識経験者):資料選択の自由と 利用者のプライバシーを守るということ は、規則のなかにいれるだろうが、その 前提として計画のなかに入れてもよいと 思う。(1973年3月、第10回専門委員会 会議議事録)
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    025ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 ここにおける文庫関係者は不明である。 一方で当該箇所の学識経験者は、前後の文 脈から前川恒雄であると強く推察できる。 次にプライバシー保護についての議論が現 れてくる1973年7月の第4回専門委員会会 議では、この内容を条例に盛り込むかどう かという議論がなされてくる。 室長(準備室長。鈴木喜久一):次にま た大きな問題ですが、「利用者の秘密を 守る」ということを規則か条例の中でと りあげるべきではないかというご指摘が 委員のみなさんからございました。この 点はどうでしょう。 (略)  室長:さきほどの利用者の秘密保持、 具体的にいいますとブラウン式の場合読 書記録は残りませんがある時点での貸出 記録はあります。このほかレクエスト (sic)とかレファレンスの記録がある訳 です。この記録は決して他にもらしませ んという約束を市民にするかどうかとい うことですが(条例に)いれて欲しいとい う意見がある訳です。  委員(文庫関係者):条例に加えて貰っ たほうがよいと思います。  委員(学識経験者):条例や規則は市民 を拘束するだけでなく役所をしばるもの でもある訳ですから利用者のための秘密 保持の保証のため入れたほうがいいと思 います。  委員(学識経験者):それと同時に図書 館の中立ということをいれたらどうで しょう。最近関西では問題になっていま すよ同和資料などで。 委員(学識経験者):それは図書館長が資 料収集の決定権をもつということでよい と思います。  担当:表現の方法は別として、条例中 に秘密保持の条項を設けていきたいと思 います。(1973 年 7 月、第 4 回専門委員 会会議議事録) このように利用者の秘密保持についての 議事録が進んでいくが、同日の会議に欠席 していたと思われる委員(文庫関係者)の手 紙も当日の記録として残っている。ここに はこのような意見が見られる。 何回か強調しました。利用者が資料の 利用にあたって憲法の保証する自由(学 問、思想信教etc)が最大限に保証される ということ、利用者の資料の利用にあ たっての個人の秘密が保証されるという ことをなんらかの形で明記して欲しいと 思います。規則の中で事業の後あたりに 条文を入れてはどうでしょう。また、専 門職としての図書館員が図書を選択肢、 購入するにさいし行政サイドその他から 有形無形の制約を受けず、上記のことを おこなえるような規定も欲しいものです。 当然このことは教育基本法の精神やそ れにのっとった社会教育法の中に明記さ れており図書館がその社会教育のための 機関であることも明記されていますが戦 前からの日本の社会教育が、その独自の 機関を通じて(スポーツなどいまでもそ のおそれを感じます)国家の教化機能を 強制されてきたことを思うと、社会教育 の民間性、自主性のすじを一本通した運
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    026 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 営規則にぜひしていただきたいと思うの です。(1973 年 7 月、第 4 回専門委員会 会議議事録添付資料) 以上から、図書館に関して通暁していた 学識経験者以外の専門委員(すなわち「市 民」)が、秘密保護の内容を条例へ盛り込ん でもらう依頼を行っており、その意見に対 し、学識経験者、準備室長らがそれに賛同 している姿がうかがえる。 これらの図書館を設置するための専門委 員の議論を経て、東村山市市議会において、 該当の条例である「第6条 図書館は、資 料の提供活動を通じて知り得た利用者の個 人的な秘密を漏らしてはならない」が取り 上げられるに至る。 1974年3月14日(金)に行われた第3回 東村山市議会(定例会)の会議録を摘要する。 教育長(加藤武吉君):議案の第15案 でございますが、東村山市立図書館設置 条例でございます。この設置条例は法律 の定めるところによりまして、条例化を しなければならないという規定がござい ます。(略)特に運営の面におきまして は、専門職である者を中心とした職員構 成、特に館長の権限については、その資 格を指定して、図書館にとってもっとも 重要な任務である資料の選択、構成に力 を発揮できるように配慮する。また利用 者のプライバシーの保護の関係について も十分配慮する。(略)以上のような内容 で、議案第15号のご提案を申し上げた わけですが、よろしく御審議願いたいと 思います。 議長(根建秀義君):説明がおわりまし たので質疑に入ります。24番。 24番(渡辺徳長君):この6条の問題に ついてちょっと伺っておきたい。 これは、実はわたしがほかのところで 経験した問題なんですけれども、この図 書館を利用された方が、いつの間にか警 察のほうに、どんな本を借りているとい うようなことがいろいろと調べ上げられ ておったということを経験しているし、 それから、ほかに、これは訴えられたと いう形になるわけですけれど、同じよう なケースが、警察のほうで、図書館でな ければわからないはずなのに、いろいろ 調べられておったというふうなことがあ ります。(略)こういう事態が起きた場合 に、どういう形でそういうものに対処し ていくのか。ここらの点の対処の考え方 を明確にしておいていただきたいという ふうに思います。 教育長(加藤武吉君):今回の条例の 中でも、第6条については図書館法にも 載っておりません。しかしいままでの専 門委員会等の意見のなかで、プライバ シーを守るという御意見を尊重しながら、 今回の条例の中に加えてまいったんです が、ただいまの御質問のとおり、具体的 にこれをどのようにする方法がとれるの かということになりますと、これは、現 状では記録に名前を残さない。具体的に はそういう方法で事務を処理していきた い。名前が残るということは、当然あと でその記録が判明できるような事務的に はなるわけですが、そういうものを名前 が残らないようにしよう。そういう配慮
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    027ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 をしながら個人のプライバシーを守る。 具体的な内容として、そういう方法をと りたいという内容です。(1974年3月14 日第3回東村山市議会(定例会)議事録) これらの議事の後、本条例は採択される に至る。なお、ここにおいて教育長が紹介 しているプライバシーを保護した貸出方式 とは、ブラウン方式のことを指す。1973 年9月6日、準備室長の鈴木喜久一は各専 門委員に会議録の集約事項を送付している が、その中の鏡文に また、現在準備室では、ブラウン方式 による貸出手続に改良を加えた回数券式 貸出方式を検討中ですので、市役所へご 用の節は準備室までお立ち寄りください まして御意見いただければ幸いです。 との文章が見られる。 市議会の議事を経て、本条例は採択され るに至る。図書館における秘密保護を条例 に盛り込むことができたことは、関係者に とっては随分喜ばしかったようである。東 村山市の電車図書館新聞部発行の新聞であ る『でんしゃ』でもこの話題は取り上げられ ている。ここにおける開館特集においては、 以下のような記事がみられる。 目には立たない(sic)宝の一つに、利 用者のプライバシーを守る配慮がありま す。思想統制の歴史は過去の物語になり ましたが、個人の自由や尊厳は守られな ければなりません。因に婦人は婦人雑誌 を読むとは限らず、婦人雑誌を読めば低 俗とか、何を読めば偉いとか、そのよう な尺度はなくなっていましょう。世間体 を気にしないで、その時必要な本を、自 分の為に読めます(『でんしゃ』、1974年 6月15日、No.12第一面)。 このように、図書館に関する「市民」から の要望が、東村山市の図書館の条例となり、 それが現在の「宣言の利用者の秘密を守る」 ルーツの一つとなっている。図書館関係者 にとって、市民と協同できたことは喜ばし かったことだったようで、『図書館の自由 に関する宣言 1979年改訂解説』において 本事例は以下のように肯定的に取り上げら れている。 この規定(筆者註. 東村山市立図書館設 置条例)が、同館建設のための専門委員 会に参加していた住民代表の強い主張に よって挿入されたという経緯は、住民が 自らのプライバシーを守ることに強い関 心を持っていることを示している(p.28- 29)。 ただし、この箇所の文言に対して全面的 に賛同することには注意が必要である。こ こには嘘は書いていないが、ミスリードの 可能性がある。というのも、一次資料を読 み込んでいくと、住民の強い主張「だけ」で はなく、その主張を積極的に展開した学識 経験者の存在も、同時に存在するプレイ ヤーとして前景化してくるためである。有 山崧は1954年の時点で、「利用者の秘密を 守る」という副文を導入しようとし、棄却 された。その後、1970年代に入ると、有
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    028 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 山と関係の深い前川恒雄と、その関係者ら が、東村山のプライバシー条例制定の当時 の関係者として垣間見ることができる。 本節をまとめる。1979年改訂の「利用者 の秘密を守る」の文言には、(本稿ではそれ ほど紙幅はさかなかったものの)練馬テレ ビドラマ事件および東村山市立図書館設置 条例などが深く関連していた★31 。東村山 市立図書館設置条例には、市民からのプラ イバシー保護の希望が背景として存在した。 1954年の自由宣言の当初の採択された段 階で主であった意識は、官憲による検閲に 対する防衛であったが、東村山市立図書館 が設置される年代となると、捜査令状に関 連する発想および、他者に読んでいるもの を知られたくないという考え方として現れ てきたものであった。また、図書館におけ るプライバシー保護意識は「市民」から生ま れたものであった。ただし、確かに出発点 は「市民」からの意見であったが、それに呼 応して学識経験者枠の図書館関係者や室長 がプライバシー保護の意見を積極的に展開 していった形跡が見受けられることも、軽 重なく目配りしておく必要がある。 3.3 1979年改訂 1979 年に自由宣言が改訂されている。 前史については前節で触れたが、これらを きっかけに1976年5月に「図書館の自由に 関する調査委員会」(2002年、「図書館の 自由委員会」に改称)が中心になって行われ た。この改訂について、1954年の採択で は棄却された、「お蔵入りにされていた副 文の採択をも目的にしていた★25 」という発 言が認められる。 1979年改訂が行われるまで、図書館雑 誌を中心に関係者が繰り返し文案を提案、 それを改訂していったことが見受けられる。 そもそもなぜ改訂を行うに至ったかという 理由について、図書館の自由に関する調査 委員会は 1976 年 16 日から 17 日に連絡会 を行い、そのなかでの討議から以下の提案 がなされた。 副文については、当時ほとんど論議さ れることなく、採択のワクから除外され、 以後の扱いは宣言の具現化とともに協会 に委員会を設置して検討することを理事 長に託して終っている。(略)やがて忘れ られた存在となり、今日、一片の資料と して残っているだけである。(略)副文が、 「宣言」の内容を正しく把握するためには 切り離せない重要な文書であり、利用者 の読書記録の公開拒否(利用者のプライ バシー擁護)のように主文だけでは明快 ではない事項も含まれている。(『雑誌』、 1976年6月、p.262) よって、1976 年 9 月号において、まず 案文を提出するのではなく、委員会によっ て検討を要する箇所や論議の余地のある部 分を指摘することで、 かつての中立性論議のように館界の広 範な論議を喚起したい、そしてその上で 近い将来に新しい副文をつくりだし、そ れを含めたものとして「宣言」を再確認で きればと考えている。(Ibid.) と、かつての「自由論壇」のように、幅広い
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    029ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 論争が巻き起こることを委員会側が期待し ていたようである。 結論から言うと、1979年改訂は採択に 至るまでに以下の変遷をたどっている。 (1) 検討箇所の指摘(『雑誌』、1976年6月) (2) 副文案(『雑誌』、1977年9月) (3) 副文第二草案(『雑誌』、1977年12月) (4) 副文第2章案(sic)をもとに、検討さ れた意見の総括(『雑誌』、1978年6月) (5) 改訂第一次案(『雑誌』、1978年8月) ※ここで「主文」にも手を付けるという発言 が見られる (6) 1979年改訂案(『雑誌』、1979年2月) (7) 1979年改訂(『雑誌』、1979年8月) 以上を順番に見ていく。9 月号では、 1954年の有山案の加筆修正点および議論 の焦点を取り上げている。ここでは「図書 館の自由に関する調査委員会」が有山案を 非常に高く評価していることがわかる。以 下が委員会による前置きである。 1974年秋、懸案の委員会がついに成 立したことにより、これまた久しい懸案 であった解説文の作成もここにようやく 可能となったのである。(略)ところで 1954年副文案は、これに先立つ“中立性 論争”を経て館界の合意となりつつあっ た問題状況への認識と決意をふまえた立 派な文章で、今日でも十分読むにたえる 生命をもっている。(『雑誌』、1976年9月、 p374-376) もちろん、さきほど見てきたように、「館 界の合意となりつつあった」かどうかにつ いては、文面通り受け止めることには疑問 の余地があるが、いずれにせよ当時の「委 員会」は自由宣言を実質化しようとしたこ とが見てとれる。そのために委員会は開か れた討議を仕掛けたことがわかる。 委員会の指摘箇所は多岐にわたるので、 ここでは前節にならい、「利用者の秘密」に 関連する部分に絞って取り上げる。 まず、1954年の有山案を再度紹介する。 3 図書館はすべての不当な検閲に反対 する。 (一)〜(三) (筆者注. 略) (四)更に図書館の一般的利用状況につい ては別であるが、利用者個人の読書傾向 など個人的自由を侵すような調査の要 求は、法律上正当な手続きによる場合 の外は拒否する。(『雜誌』、1954年7月、 p.220-221) この箇所に対し、「図書館の自由に関す る調査委員会」は以下のように訂正案を出 している。まず、「不当な検閲」ということ は検閲の不当性を強調する意図であろうが、 不当な検閲と妥当な検閲があるようにとれ て紛らわしいので改定する必要があるとい う。また、(四)については、以下のように 訂正案を提出している。 (四)について。 (1)「更に図書館の一般的利用状況に ついては別であるが」を削除。 (2)「法律上正当な手続き」については、 その具体的内容をあげるようにする。
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    030 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 (3) 利用者名の調査、複写申込用紙 の調査の例を加える。(『雑誌』、 1976年9月、p374-376) これらをきっかけに、さまざまに討論が なされたが、以下に文言の変遷を見てみよ う。なお、文言についての意見表明につい ては、『みんなの図書館』や、大学紀要等で 行われることも多かったが、逐一引用する のは非常に煩瑣となるので文言の変遷のみ に絞ってここでは紹介する。 [副文案] 3 図書館はすべての不当な検閲に反対 する。 (二)図書館は、利用者のプライバシーを 守る責任を追う。図書館利用者の利用事 実は、職務上知り得た秘密であって、公 務員の場合には守秘義務が課せられてお り、公務員の身分を持たない図書館活動 従事者にも当然道義的責任が課せられる。 したがって、刑事訴訟法第107条による 正式の捜査令状が発せられたことを正式 に確認した場合を除いては、利用者の利 用事実を明らかにしてはならない。 図書館における利用者のプライバシー擁 護は、利用者の図書館への信頼を確立し、 国民的支持を得る機縁になることを銘記 すべきである。(『雑誌』、1977年、9月) [副文第二草案] 3 図書館はすべての不当な検閲に反対 する。 (二)図書館は、利用者のプライバシーを 守る責任を負う。図書館利用者の利用事 実は、職務上知ることのできた秘密で あって、何人もそれを漏らしてはならな い。公務員の場合には守秘義務が課せら れており、また、公務員以外の図書館活 動従事者にも当然道義的責任が課せられ る。 したがって、刑事訴訟法第107条による 正式の捜索状が発せられたことを正式に 確認した場合を除いては、利用者の利用 事実を明らかにしてはならない。 図書館における利用者のプライバシー擁 護は、利用者の図書館への信頼を確立し、 国民的支持を得るための必須の条件であ る。(『雑誌』、1977年12月) [副文第二章案(sic)をもとに、検討された 意見の総括] 3 図書館はすべての不当な検閲に反対 する。 (二)図書館は、利用者のプライバシーを 守る責任を負う。図書館利用者の利用事 実は、職務上知ることのできた秘密で あって、何人もそれを漏らしてはならな い。公務員の場合には守秘義務が課せら れており、また、公務員以外の図書館活 動従事者にも当然道義的責任が課せられ る。 したがって、刑事訴訟法第107条による 正式の捜索状が発せられたことを正式に 確認した場合を除いては、利用者の利用 事実を明らかにしてはならない。 図書館における利用者のプライバシー擁 護は、利用者の図書館への信頼を確立し、 国民的支持を得るための必須の条件であ る。
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    031ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 ● 刑事訴訟法第107条による正式の捜索 状といっているが、憲法の条項を示し、 さらに図書館員が判断すべきだと思う。 ● 旧副文にくらべ原則性がうすい。ハ ウ・トゥ的になりすぎている。例えば、 検閲がなぜ悪いかということをこの項 で書くべきである。 ●「公務員の場合は守秘義務が…」という ことを特にいう必要はないのではない か。この三行削除してはどうか。(『雑 誌』、1978年6月) (筆者注. ●は案に寄せられた意見。なお、 副文第二章案(sic)は、副文第二草案の 誤植であろう) [改訂第一次案] 3 図書館は利用者の秘密を守る。 1 読者が何を望んでいるかは、その人 のプライバシーに属することであっ て、図書館は、利用者の読書事実を 外部に漏らしてはならない。ただし、 刑事訴訟法第 106 条、第 107 条にも とづく捜索状を確認した場合は例外 とする。 2 読書記録以外の図書館の利用事実に 関しても、利用者のプライババシー (sic)を犯してはならない。 3 図書館に関係するすべての人々が守 らなければならない。それによって、 図書館利用者の図書館への信頼が培 われる。(『雑誌』1978年8月) [1979改定案] 第3 図書館は利用者の秘密を守る。 1 読者が何を読むかはその人のプライ バシーに属することであり、図書館 は、利用者の読書事実を外部に漏ら さない。ただし、憲法第35条にもと づく令状を確認した場合は例外とす る。 2 図書館は、読書記録以外の図書館の 利用事実に関しても、利用者のプラ イバシーを侵さない。 3 これらは、図書館が業務上知り得た 秘密であって、図書館活動に従事 するすべての人びとは、この秘密 を守らなければならない。(『雑誌』、 1979年、2月) 以上のように、文案がさまざまに変更さ れていることがわかる。なお、これ以上文 言の変遷をたどることは煩瑣になるので、 この程度の紹介にとどめる。そこで、実際 に採択された1954年版と1979年改訂版(主 文)の差分をとると、Tab.4(p.035)のよう になる。 以下では「図書館の自由に関する宣言 1979年改訂」における副文を示す。 図書館は、基本的人権のひとつとして 知る自由をもつ国民に、資料と施設を提 供することをもっとも重要な任務とする。 (1 〜 5 筆者により省略) 6 ここに掲げる「図書館の自由」に関す る原則は、国民の知る自由を保証するた めであって、すべての図書館に基本的に 妥当するものである。 3. 利用者の秘密を守る 1 読者が何を読むかはその人のプライ
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    032 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 バシーに属することであり、図書館 は、利用者の読書事実を外部に漏ら さない。ただし、憲法第35条にもと づく令状を確認した場合は例外とす る。 2 図書館は、読書記録以外の図書館の 利用事実に関しても、利用者のプラ イバシーを侵さない。 3 利用者の読書事実、利用事実は、図 書館が業務上知り得た秘密であって、 図書館活動に従事するすべての人び とは、この秘密を守らなければなら ない。 差分から、1979 年改訂によって「利用 者の秘密を守る」の文言が挿入されたこと、 文章中の主語が「図書館人」から「図書館」に 変更されたこと、「不当な検閲」から「すべ ての検閲」への文言の変更が盛り込まれて いることがわかる。 また、本宣言は「すべての図書館につい て基本的に妥当するものである」との文言 がある。この「基本的に妥当する」という但 し書きについては、塩見によると当時の学 校図書館の特殊性、すなわち教育指導の必 要上、記名式貸出記録とその保存が重要で あったからだという★32 。 また、1954 年には棄却された副文の なかに含まれていた「利用者の秘密」が、 1979年改訂において、結果として主文の 項目として取り上げられることとなった。 この点について、委員会は以下にように述 べている。 委員会は、54年に採択された宣言の 主文には手をふれないという方針で、こ れまでの作業をすすめてまいりました。 しかし、採択を一年延期することにしま したので、この機会に、宣言の主文にも 最小限手を加えることにしました。(『雑 誌』、1978年、8月、p.403) なお、「捜査令状」についての文言が、当 初の副文では刑事訴訟法が対象とされてい たが、それを憲法へと変化している点につ いて指摘しておきたい。 以上をまとめる。「利用者の秘密を守る」 の文言については、図書館憲章ではそもそ も存在しなかった。「自由宣言」の採択時に 棄却された副文案「3-4 更に図書館の一般 的利用状況については別であるが、利用者 個人の読書傾向など個人的自由を侵すよう な調査の要求は、法律上正当な手続きによ る場合の外は拒否する。」が、1979年改訂 では「主文」としてあらたに立ち現れてくる。 また、このなかでは、1954年における支 配的な文脈であった、官憲による検閲への 政治的抵抗が、直接的に文言のなかに表記 されることはなくなっている。その一方で、 警察の捜査において、図書館の利用履歴が 用いられることに対する忌避感や、他人に 自分の秘密を見られたくないという現代の プライバシー観に近づいてきていることが わかる。 3.3 1979年改訂解説文をめぐって ここからは、『図書館の自由に関する宣 言 1979 改訂』(1979 年刊、以下『1979 改 訂』)、『「図書館の自由に関する宣言1979 年改訂」解説』(1987年刊、以下『改訂解説 初版』)および『「図書館の自由に関する宣言
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    033ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 1979年改訂」解説 第2版』(2004年刊、以 下『改訂解説第2版』)の図書の3冊を対象 とし、検討を加える。 1979 年に改定された「図書館の自由に 関する宣言」の現行の自由宣言そのものと、 『図書館の自由に関する宣言1979年改訂』 という図書の二種類がありわかりにくいが、 『 』で表記しているほうが、自由宣言の解 説図書である。 これらの解説図書が執筆されたきっかけ に、1979年の自由宣言の改訂の際に行わ れた議論がある。森によると、改訂作業の なかで寄せられた意見のうち、対立する意 見もあり、一方を選択すれば一方を捨てざ るを得ない、あるいは折衷的な立場を取ら ざるを得ない等があったという。この刊行 過程について、森は 審議の過程においていずれ宣言の解説 をつくるという委員会の意向を表明して きた。ただ、詳しい逐条解説をつくると なると、おそらく2,3年はかかるであ ろう。そこで、とりあえず最小限にし ぼって簡単な解説をつくることにした。 石塚(英二)、酒井(忠志)、塩見(昇)、森 (耕一)の四名が分担して草稿を書き、共 同討議によってまとめた(『1979 改訂』 p.45)。 ※筆者注、カッコ書きの名は筆 者が補った。 と記しており、『1979改訂』は副文の細 かな解説を行う意図があったことがわかる。 そこで「調査委員会」は自由宣言の解説冊子 である『図書館の自由に関する宣言 1979改 訂』を刊行している。その後、この解説冊 子は社会の時流や、図書館が直面したその ときどきの問題に呼応する形で、『改訂解 説初版』、『改訂解説第2版』といった形で 自由宣言 1954採択版 自由宣言 1979年改訂 基本的人権の一つとして、「知る自由」をもつ民衆に、 資料と施設を提供することは、図書館のもっとも重要 な任務である。  図書館はこのような任務を果すため、我々図書館人 は次のことを確認し実践する。 1. 図書館は資料収集の自由を有する 2. 図書館は資料提供の自由を有する 3. 図書館はすべての不当な検閲に反対する 図書館の自由が侵される時、我々は団結してあくまで 自由を守る。 (177文字) 図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ 国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な 任務とする。  この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し 実践する。 1. 図書館は資料収集の自由を有する 2. 図書館は資料提供の自由を有する 3. 図書館は利用者の秘密を守る 4. 図書館はすべての検閲に反対する 図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、 あくまで自由を守る。 (182文字) Tab.4 自由宣言1954年版と1979年版の差分 ※差分取得はdifff《デュフフ》による
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    034 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 版が改められている。 すなわち、これら『1979改訂』『改訂解 説初版』、『改訂解説第2版』は、1979年に 採択された「自由宣言」を、それぞれの時代 時代に応じて解説したものだと捉えること ができる。つまり、「自由宣言」の文言の変 更は行わないものの、これらの解説文に よって自由宣言を弾力的に運用しようとし た試みとしてとらえることができるだろう。 以下では、この3冊の解説文を手がかり にしながら、「利用者の秘密を守る」をどの ように解釈するか、どのように扱われてき たかをたどる。 3.3.1「外部」の文言の変遷 本節では、「利用者の秘密を守る」の副文、 「図書館は、利用者の読書事実を外部に漏 らさない」を取り上げる。とくにここでは 「外部」の範囲の定義とその変遷を対象とす る。これを取り上げる理由は、どこまでな らば図書館の内部であって情報を共有して もかまわないのか、どこからが図書館の外 部であり、「利用者の秘密を守」らなければ ならないかの線引きとなるからである。 そもそも図書館の「外部」とは何だろうか。 図書館の内部で貸出記録等を処理すること ができれば、プライバシー等の問題は発生 しにくい(と、図書館界の人々は考えてい ると忖度される)。しかし、図書館は当然、 さまざまな部署と関係を持つ。このなかで、 利用者のデータをどこであれば出しても構 わず、どこであったらまずいのか、という 点は議論の対象となる。 たとえば、地方自治体においては、教育 委員会が図書館を管轄することが多い。そ うなると、教育委員会から図書館の利用状 況を調査するために利用者「個々人」のデー タを出すこと、という指示があった場合は どうするのか、がこの話題の範疇となる。 公共図書館と比べ、更にもう少し込み 入った状況になるものに、学校図書館があ げられる。というのも、教育の場である学 校図書館については、生徒の読書履歴、す なわち「利用者の秘密を守る」文言と、生徒 指導上の必要性のコンフリクトが容易に発 生するためである。まず、児童生徒の読書 事実も実際に利用者の秘密であるから、図 書館は守るべきであるという考え方があり える。この考え方は自由宣言を尊重しよう とする人々に好まれている。一方、児童生 徒の読書事実は、学校で行われる教育活動 の一環である、さらに言えば教育はどうし てもパターナリズムを許容せざるを得ない という考え方も成立しうる。 この点の衝突については沖縄国際大学の 山口真也が研究を行っている。なお、山口 は学校図書館における貸出履歴について、 秘密を守るために情報を破棄することを薦 めている論者として知られている。 以下では、解説文3冊が、それぞれ「外 部」をどのように記述しているか、文言の 変遷についてまとめる。 Tab.5の表からわかるように、「外部」に 関して、教育委員会が具体例として取り上 げられており、なおかつ「利用者個々の利 用事実・読書事実」を出すことに対する拒 否が記されている。この点については、ど の版でも同様の言及である。 では、大学図書館ではどうであろうか。 「外部」における文言について、『1979改訂』
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    035ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 では大学図書館が含まれていたが、『改訂 解説初版』では外されていることがわかる。 なお、なぜこのような経緯をたどったの かについて、自由委員会の委員経験のある 知り合いに尋ねた。さらにその方から、他 の委員に尋ねていただいたが、経緯につい てはわからないということであった(お手 数をおかけした某氏には、この場を借りて 厚く御礼申し上げる)。 以上をまとめる。 自由宣言の解説文書となる3冊の図書、 『図書館の自由に関する宣言 1979 改訂』、 『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」 解説』、『「図書館の自由に関する宣言1979 年改訂」解説 第2版』には、いずれも「どの 範囲が図書館の外部なのか」という項目が 『1979改訂』 『改訂解説初版』 『改訂解説第2版』 外部とは  読書事実および利用事実を漏 らしてはならない「外部」とは何を 指すか。  独立した教育機関としての公立 図書館であれば、その組織体と しての図書館以外は、すべて外 部と規定することが容易であろう。 したがって上部機関としての教育 委員会等も、その行政権限は利 用者個々の読書事実の報告にま では及ばないし、そうした報告を 求めるべきではないという良識を 前提として、外部に含めて問題は ない。  学校・大学図書館においては、 もっと問題が複雑である。学校・ 大学図書館は、それを設置して いる学校の一部局であり、独立 した教育機関とはみなしがたい。 したがって、学校外の機関や個 人に対してはその自主性を主張 できるが、同じ学校内の教員に 対してはどうなるか。(略) 外部とは  読書事実および利用事実を漏 らしてはならない「外部」とはどの 範囲を指すか。  独立した教育機関としての公立 図書館であれば、その組織体と しての図書館以外はすべて外部 とみなすことが容易である。従っ て上部機関である教育委員会等 も、その行政権限は利用者個々 の読書事実、利用事実の報告に までは及ばないし、そうした報告 を求めるべきではないという良識 を前提として、外部に含めること ができる。  学校図書館の場合はもっと問 題が複雑である。学校図書館は それを設置している学校の一部 局であり、独立した教育機関とは みなしがたい。従って学校外の 機関や団体・個人に対してはそ の自主性を主張できるとしても、 その学校内の校長や教頭・教員 に対してはどうなるか。(略) 外部とは  読書事実および利用事実を漏 らしてはならない「外部」とはどの 範囲を指すか。  独立した教育機関としての公立 図書館であれば、その組織体と しての図書館以外はすべて外部 とみなすことが容易である。従っ て上部機関である教育委員会等 も、その行政権限は利用者個々 の読書事実、利用事実の報告に までは及ばないし、そうした報告 を求めるべきではないという良識 を前提として、外部に含めること ができる。  学校図書館の場合はもっと問 題が複雑である。学校図書館は それを設置している学校の一部 局であり、独立した教育機関とは みなしがたい。従って学校外の 機関や団体・個人に対してはそ の自主性を主張できるとしても、 その学校内の校長や教頭・教員 に対してはどうなるか。(略) Tab.5 自由宣言の解説文における「外部」の取り扱いの変遷 ※ハイライト部分は『1979改訂』および『改訂解説初版』の差分
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    036 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 たてられている。ただし、その内容には微 妙な差異があり、最初の説明においては大 学図書館が取り上げられていたが、次の解 説では対象からは外れていた。また、自由 委員会は、個々人のデータを対象として、 それらを保護するべきであるということを 記している。 3.4「貸出記録の保護」をめぐって 1979年改訂において、「図書館は利用者 の秘密を守る」が提出された。また、1970 年代は貸出業務の機械化が行われていた。 すなわち紙で処理していた貸出業務を、コ ンピュータを用いて処理することになった。 この点で、図書館界で広く議論されたも のは、貸出業務の記録をとることは、資料 管理の一環であって、利用者の管理のため ではないことであった。 そのなかで提案されたものが、貸出記録 を消去することによってプライバシー保護 を行おうという発想である。図書館の中立 性論争のなかでも扱われた、きわめて初期 の発想と共通するものである。 これについて、1984年日本図書館協会の 総会議決で、「貸出業務へのコンピュータ 導入に伴う個人情報の保護に関する基準」 が採択されるに至る。これを見ていこう。 一 貸出しに関する記録は、資料を管理 するためのものであり、利用者を管 理するためのものではないことを前 提にし、個人情報が外部に漏れるこ とのないコンピュータ・システムを 構成しなければならない。 二 データの処理は、図書館内部で行う ことが望ましい。 三 貸出記録のファイルと登録者のファ イルの連結は、資料管理上必要な場 合のみとする。 四 貸出記録は、資料が返却されたらで きるだけすみやかに消去しなければ ならない。 五 登録者の番号は、図書館で独自に与 えるべきである。住民基本台帳等の 番号を利用することはしない。 六 登録者に関するデータは、必要最小 限に限るものとし、その内容および それを利用する範囲は、利用者に十 分周知しなければならない。   利用者の求めがあれば、当人に関す る記録を開示しなければならない。   二から、「外部」を重点的に議論している こと、四で、貸出記録をそもそも消去して しまえばよいという考え方がみられる。 また、これに関する図書館の自由に関す る調査委員会の見解を見ていこう。「「貸出 業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報 の保護に関する基準」についての委員会の 見解」によると、「貸出記録の処理は図書館 の責任において館内で行うことを原則とし、 これを可能にする方式を追求すべき」と記 されており、また、図書館の利用者コード を図書館が独自に与えたものを採用するこ とを推奨している。貸出記録を資料管理の 目的以外には使用せず、また貸出記録の ファイルを他の個人別データ・ファイルと 連結利用することを不可能として、利用者 のプライバシーを保護しようという趣旨で あった。
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    037ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 コンピュータの利用の目的は資料管理で あり、利用者の管理ではない、という発想 の根底として、ここでも日野市立図書館が プレイヤーとして登場する。『みんなの図 書館』1980年6月号には、生駒さよによ る「「図書館の自由に関する宣言」にかかわ る事例」という年表がある。そのなかで「利 用者の秘密を守る」に関しては、年表の最 初に東村山市立図書館設置条例が取り上げ られ、その次に日野市立図書館が登場する。 生駒はこの件を以下のようにまとめている。 日野市立図書館のコンピューター導入の原 則 (1) 図書館のシステムは「住民管理」では なく「資料管理」である。 (2) システム全体を図書館の責任で管理 し、「人」に関するデーターは将来共、 民間委託処理などの形で図書館以外 には出さない。 (3) 将来、国レベルあるいは市レベルで 統一コードが採用される場合でも、 図書館ではそのコードを用いない★33 。 以上のように、図書館のコンピュータ化 に伴う際に、図書館独自で利用者コードを 付与するといったことが試みられてきたこ とがわかる。 ただし、図書館独自の利用者コードに ついて、1987 年刊の『改訂解説初版』と、 2004年の『改訂解説第2版』では言及が異 なっている。 『改訂解説初版』では、「京都大学附属図 書館や同志社大学ラーネッド記念図書館な どで学籍番号とは別に利用者コードを付 与している事例などに学び、この基準に そった方式の採用を期待している(p.30)」 と、京大・同志社において図書館が独自で IDを発行していることを高く評価している。 しかし、後の『改訂解説第2版』ではその言 及はなぜか消滅してしまう。 なお、どのような経緯をたどって、それ らの文言が変更になったかを確かめるの は、記録が公表されていないこともあり困 難が伴う。そこで実際の図書館の状況のみ 記すが、当時の図書館報によると、同志社 大学の場合は、1995年3月までは「学術情 報センター利用カード」という名称で学籍 番号とは別の利用者コードを付与していた。 『同志社大学学術情報センター報』には「従 来発行の「学術情報センター利用カード」は 1996 年 4 月以降すべて失効し、使用でき ません」との記載がある。この時期、利用 証の「学生証等」への切り替えが行われてい る。京都大学もほぼ同時期、同様に、シス テムのリプレイスによって学籍番号を図書 館の利用者コードと統合したと推測される ★34 。独自番号の発行について、当時、京 都大学附属図書館長である長尾真は、利用 者は学生証以外に複数のカードを運用しな ければならないことに直面していると図書 館報に記している★35 。 このように、貸出業務のコンピュータ化 は当初、資料の貸出管理のためという名目 で、他の利用者コードは他のIDと結び付 けないような設計を行っていた。しかし、 1990年代に入ると(少なくとも大学図書館 では)、運用の煩瑣さや、システムリプレ イス等によって、利用者コードと学籍番号 は統合に向かっていったと推測される。
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    038 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 4. 議論とまとめ 以上、「図書館は利用者の秘密を守る」の 文言をめぐって、その成立過程や変遷につ いて取り上げた。この変遷をまとめたのが Tab.6である。 ここでは利用者の秘密を「なぜ守らなけ ればならないか」という理由が、その時 代時代によって意味するところが変更さ れていることが指摘しておこう。すなわ ち、1950年代は、検閲に対抗するために 履歴を消去するという発想があった。これ が1970年代になると、検閲への抵抗とい う発想から、警察の犯罪捜査と図書館の利 用履歴の関係および、読書履歴を他人に知 られてほしくないというプライバシー保護 の発想が前景化してくる(また、近年では、 図書館がログをもとに新規サービスを行う ことは住民の「萎縮効果」をもたらすといっ た危惧も議論されている)。これらはいず れも「個々人」のデータを対象としているも のであった。このように、「なぜ守るか」と いう理由がその時代によって様々であった ことに対して、これを図書館界の玉虫色の オペレーションであるとして捉えることも できるだろうし、あるいは柔軟な運用で あったと解釈できるかもしれない。柔軟な 運用を可能としたために、文言の大幅な変 更もなく、1979年から現在まで、40年近 くも改訂せずにいられたとも考えられる。 そう肯定的に捉えられる一方で、近年の図 書館の利用履歴に関して、ポイントカード の議論をしているなかで何故か検閲につい ての議論が差し挟まれるなど、議論の軸を ぶれさせている一因であるともいえるだろ う。 さて、本稿の目的であった、大学図書館 の持つ各種のデータの活用と、自由宣言に ついて考えていきたい。 1988年に刊行された『図書館は利用者の 秘密を守る』★36 においては、 図書館雑誌1952年7月 破防法反対の立場の意見表明とそれに対する反論 図書館雑誌1952年8月 「図書館の中立性についての討論」の提示 図書館雑誌1952年11月 「図書館憲章」の制定決議 図書館雑誌1953年10月 「図書館憲章」委員会素案提示 1954年5月26日 「図書館憲章」を「自由宣言」と変更、副文加筆。 1954年5月28日 「自由宣言」、主文のみ採択(利用者の秘密を守る文言は削除) 1974年3月 東村山市立図書館設置条例の制定 図書館雑誌1976年6月 副文を復活させる試み 図書館雑誌1978年8月 主文に「利用者の秘密を守る」文言が入る 図書館雑誌1979年8月 現行の自由宣言の採択 Tab.6 自由宣言の変遷
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    039ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 大学における利用者の秘密を守るとい う課題は、残念ながら十分な調査や研究、 事例なども非常に少なく、かぎられてい るのが実情である。しかし大学の情報 化、開放化、国際化など実際的には加速 を増してすすめられてきている。姑息な プライバシー保護にこだわる必要はない が、大学図書館の機能に照らしてその対 応には十分な位置づけと配慮が必要であ る。(田中・若井: p.38-39) と触れられており、大学図書館の事例は少 ないことが指摘されている。そこで、公共 図書館や学校図書館の議論も多少踏まえつ つ、以下考察を行っていきたい。 現在の図書館において、利用者のプライ バシーを保護することは、当然の考え方で ある。ただしその在り方には、二つの方向 の考え方があるように思われる。 ひとつ目は「プライバシーを保護するた めに貸出記録を消去する」という図書館業 界における「伝統的な」考え方である。これ らを主張するものとして、前述の沖縄国際 大学の山口真也がいる。またログを活用し た機能を公共図書館が実装した場合、住民 に「萎縮効果」を生むため、それは望ましく ないと論じる、大阪教育大学の高 たかくわひろき 鍬裕樹の 議論★37 もこの系列に属するといえるかも しれない。 もう一つは、統計的処理を行ったうえで、 ログを活用していこうという考え方である。 たとえば、同志社大学の原田隆史は、デジ タル的な犯罪に対する原因を究明し、法的 な解決を行うための具体的な技術や手段で あるフォレンジックの観点からすると、図 書館でログを残すことは当然のことである と述べている。また、ログを利活用しない 場合においても、当然説明責任が生じると いう。すなわち、利用するか否かに応じた コスト・ベネフィットの観点から、ログ利 用は検討するべきあり、検討すらしないと いうことは、いわば不戦敗であると議論し ている★38 。 この観点をさらに推し進めた先進的な取 り組みとして、千葉大学のアカデミック・ リンク・センターの事例がある。千葉大学 は我が国のなかでもっとも成功したラーニ ング・コモンズを持つ大学であると称され るが、ラーニング・コモンズだけでなく、 図書館内部でさまざまな実験や統計的処理 を行い、それを積極的に発表していること が挙げられる。たとえば、アンケートや フォーカスグループインタビューといった 利用者への直接的な調査のほかに、フォト ボイス調査、RFID 書架のログ、ブックト ラック返本記録、その他、ビーコンを用い た利用者の動線分析といった研究を行って いる★39 。また、冒頭でも述べたが、個人 の情報に暗号化を施し、図書貸出記録や成 績情報等と連動分析を行う「情報利用行動 定点観測」を行っている。これらのように、 千葉大学はデータをもとに図書館の活用を 示しており、図書館関係のみならず、高等 教育関係のなかでも大きなプレゼンスを示 している。 千葉大学のさまざまな実績の裏には、ア カデミック・リンク・センター(図書館等 を担当する部署)が統計や情報工学の専門 家を雇用しているということと無関係では ないと思われる★40 。また、自由宣言に抵
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    040 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 触せずとも、データを利活用した取り組み の実践ができることの現れでもある。つま り、利用者「個々人」の読書事実は守り、分 析することで、新しい知見を生み出してい ると言える。これは米国の大学図書館が自 らの説明責任を果たすために、利用者の データを暗号化・保護したうえで自館の活 用状況を説明していることと類似的である。 自由宣言の成立後の運用において「なぜ」 利用者の秘密を守らなければならないかと いう「なぜ」は、常に代入可能な存在であっ たことを本稿では再度指摘しておく。とい うのも、そこには官憲の検閲に対する抵抗、 他者へ読書の事実を知られたくないという 思想、そして近年では萎縮効果といったさ まざまな概念が時代とともに代入されてき たからである。もちろん読書は思想信条の 自由に直結する回路を持ちうるものである 以上、「個々人」の読者の秘密を守り、かつ 利用者らの違和あるいは嫌悪感を誘発しな いようにすることは必要不可欠な作業であ ることは言を俟たないだろう★41 。 ここで自由委員会の前川敦子の議論を紹 介しておきたい★42 。前川は2009年の時点 で、以下のように述べている。 新たな側面をふまえつつ「利用者の秘 密を守る」ことは重要であり、拙速な変 化は禁物だ。一方で従来とは異なるプラ イバシーの扱いを理由に、新たなサービ スを消極的に傍観することがあるなら、 利用者の不利益を生み、図書館自体の衰 退、ひいては図書館が保障すべき知的自 由の衰退を招くのではないか。 本稿も前川の問題意識と多く共通する。 同じように、公共図書館についてであるが、 渡邊の議論も紹介する。渡邊は、図書館関 係者による「利用情報不保持」の負の側面に 気づいていることを示す文献が見当たらな いことから、図書館関係者は、社会的評価 を高める施策は犠牲にされ、むしろ図書館 員の社会的評価が低下する施策を意図しな いままに採ってきたと指摘している★8 。 これらと問題意識を同じくする立場から、 本稿では「利用者の秘密を守る」という図書 館界における常識は、そもそもどのように 我が国において成立してきたかという経緯 をたどった。また同時に、「利用者の秘密」 を守りつつ、説明責任のために大学図書館 が自らの持つデータを利活用する海外の事 例はいくつも認めることができ、国内でも 同様のケースが存在することを指摘した。 これらを通じて、本稿では利用者の秘密に ついての成立過程とその運用の経緯から考 えると、大学図書館におけるログの利活用 は、自由宣言からは全面的に禁止されるも のではないことを示したつもりである★43 。 最後に、本稿の限界及び今後の課題につ いて述べる。 本稿では、記述的には「自由宣言」は大学 図書館の記録の活用に対する反論の理路足 り得ないというところまでは議論したもの の、規範的に「反論の理路足り得ないから、 読書履歴の活用を積極的にやるべきだ」は 導出してはいない。記述から規範を導出す る誤謬は図書館業界においてしばしば見ら れるため、念のため付言しておく。同じよ うに貸出履歴を利活用しうるような言説 は危険であって議論するべきではない、と
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    041ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 いう意見に対しては、それは滑り坂論法 (slippery slope argument)であると指摘し ておきたい。 これまで自由宣言に関する議論は非常に 幅広く行われており、文献も多数存在する。 そこで、本稿では『図書館雑誌』や、自由委 員会の手による記事を主として取り上げた。 しかし、それ以外にも多くの議論があるこ とは間違いない。たとえば、菅原勲が『み んなの図書館』(1979年8月号)に「事実は どうであったか−「自由宣言」の検討過程か ら−」といったタイトルの記事を書いてい るように、当時の図書館員はさまざまな媒 体で自由宣言について発言している。ほか にも、当時の関係者からは関連する「裏話」 をしばしば聞くこともある(記録し、公表 していただければ後世の検証に資するのだ が……)。ただし、本稿では煩瑣になるこ とをおそれたため、直接引用は手元にある 資料のごく一部にとどまった。また、自由 宣言改訂の翌年である1980年には「図書館 員の倫理綱領」が採択されているが、この 第3. 「図書館員は利用者の秘密を漏らさ ない」には触れることはできなかった。し たがって、本稿では自由宣言をとりまく大 きなうねりのうち、一部を取り上げたもの である★42 。 本稿では大学図書館と大学IRといった 切り口を導入とし、自由宣言の歴史的変遷 をたどった。ただし公共図書館や学校図書 館は、本稿では範疇外とした。たとえば指 定管理の公共図書館において、貸出に応じ てポイントを発行するといった新たな話題 が生じているが、これらのタイムリーな話 題についてはスコープ外とした。同様に法 的な側面、たとえば個人情報保護法の関連 については触れていない。それでも従来な されてこなかった「利用者の秘密」を縦糸に 絞って時代的変遷を追ったことや、従来ほ とんど紹介されてこなかった東村山市立図 書館の資料等を紹介したことで本稿には一 定の意義があると考え、これらの新たな話 題等に関しての論考は別稿に譲る。 【謝辞】 本稿の草稿は、もともと文字数の関係 で投稿先が見つからず、筆者のPCのスト レージに眠っていたものである。長大な原 稿の掲載許可をいただいたARGの岡本真 氏および、ふじたまさえ氏に感謝する。ま た、本稿の執筆に際し東村山市立図書館の 渋川泰子氏、郡山女子大学図書館の和知剛 氏、筑波大学大学院図書館情報メディア研 究科の逸村裕教授からは多くの手助け、ご 教示を頂いた。この場を借りて厚く御礼申 し上げる。 【註・参考文献】 ★1 h t t p : / / w w w . h e . u - t o k y o . a c . j p / w p - c o n t e n t / uploads/2014/04/1347631_01.pdf 平成24-25年度文部科学 省大学改革推進委託事業、2014年、『大学におけるIR(イン スティテューショナル・リサーチ)の現状と在り方に関する調査 研究 報告書』 ★2 Trow, Martin A、天野郁夫、喜多村和之訳、1976年、『高学 歴社会の大学』東京大学出版会 ★3 京都大学FD研究検討委員会、2011年、『京都大学自学自習 等学生の学修生活実態調査報告書』 ★4 武内清、2011年、「大学生の学生文化とキャンパスライフをめ ぐって」『比治山高等教育研究』no.4. p.77-88. ★5 http://bonohu.jp/docs/091105DBCLS.pdf 坊農秀雅、2009 年、「統合データベースプロジェクト:オープンで知のめぐりの 良い医薬研究開発を目指して」『統合データベースプロジェク トシンポジウム』
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    042 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図 書 館 は「 利 用 者 の 秘 密 を 守 る 」そ の 原 点 と 変 遷 ★6 http://www.slideshare.net/AraiHiromi/hiromi-arai-jsbi- personalgenome 荒井ひろみ、2014年、「パーソナルゲノム とプライバシー保護 データマイニング技術」『第3回生命医薬 情報学連合大会』 ★7 たとえば、竹内洋、2003年、『教養主義の没落―変わりゆくエ リート学生文化』中央公論新社 などがあげられる。 ★8 渡邉斉志、2007 年、「知的自由の陥穽:利用情報保護思想が 公立図書館に及ぼす影響の分析」『Library and information science』No. 58, p.103-115. ★9 福井佑介、2015年、『図書館の倫理的価値「知る自由」の歴史 的展開』松籟社 ★10 海老根剛、2015年、「エクセレンスの大学,人文学,都市」『都 市文化研究』vol.17, p.89-96. ★11 http://blog.goo.ne.jp/toyodang 豊田長康「ある医療系大学 長のつぼやき」 ★12 濱嶋幸司、2005年、「大学生は「生徒」である。それが、なに か?:1997年・2003年調査データより」『上智大学社会学論 集』vol.29, p.191-208. ★13 片瀬一男、2006年、「ハビトゥスとしての読書の力--東北学院 大生の図書館利用と学業成績」『東北学院大学教育研究所報 告集』no.6, p.23-54. ★14 木下祐子、伊藤昭、大島英穂、鳥井真木、2007年、「学生の 「学びの形成」を支援する図書館 ~主体性の確立をめざし て」『大学行政研究』vol.2, p.31-45. ★15 浦川邦夫、姉川恭子、2014年、「私立大学等経常費補助金と 大学図書館の学習環境に関する分析」、日本教育工学会発表 資料 ★16 http://current.ndl.go.jp/e1658 小野永貴、2015 年、「千葉 大学アカデミック・リンク・シンポジウム<報告>」『カレント アウェアネス-E』 ★17 松野渉ほか、2012年、「大学附属図書館における貸出履歴の 分析」、日本図書館情報学会春季研究集会発表資料 ★18 辻慶太ほか、2013 年、「図書館の貸出履歴と書誌情報を用 いた図書推薦システムの有効性」『図書館界』vol.65, no.4, p.253-267. ★19 佐浦敬之、辻慶太、2009年、「公共図書館における利用履歴 の活用に関する意識調査」、第57回日本図書館情報学会研究 大会発表資料 ★20 Soria, Krista., Fansen, Jan., Nackerud, Shane. (2013). Library Use and Undergraduate Student Outcomes: New Evidence for Students' Retention and Academic Success. portal: Libraries & the Academy. vol.13, Issue 2, p.147-164. ★21 Wong, S. R., & Cmor, D. (2011). Measuring Association between Library Instruction and Graduation GPA. College & Research Libraries, vol.72, no.5, p464-473. ★22 Scott, M. (2014). Interlibrary Loan Article Use and User GPA: Findings and Implications for Library Services. Journal Of Access Services, vol.11, no.4, p.229-238. ★23 Hayman, R. (2015). Students and Libraries May Benefit from Late Night Hours. Evidence Based Library & Information Practice, vol.10, no.1. p.85-88. ★24 日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会編、2004年、 『図書館の自由に関する成立 図書館の自由・1《復刻》』日 本図書館協会 ★25 http://www.nal-lib.jp/events/reikai/2005/sp-report.html  日 本図書館研究会2005年度特別研究例会報告 ★26 なお、韮塚は後年、当時の制定過程についての講演を行っ ているが、副文の成立過程についての言及は行っていない。 「「図書館の自由」宣言成立のころ―そのルーツを探る―」、『み んなの図書館』、1978年8月号、p.23-36. を参照。 ★27 当時「K生」のペンネームで『図書館雜誌』において積極的に活 動していた草野正名は、後年これらを回顧している。草野正 名、1987年、「「図書館の自由に関する宣言」採択の頃 一埼 玉県立図書館を中心にしての考察 」『国士館大学文学部人文 学会紀要』no.19,p.147-151. を参照。 ★28 有川浩、東條文規、手嶋孝典、2007 年、「インタビュー 有 川浩(作家)「自由宣言」は勇ましい!」『ず・ぼん』ポット出版. p.148-175. ★29 新孝一、2002年、「『図書館の自由宣言』成立と蒲池正夫の動向」 『司書課程年報』no.5. p.25-26. ★30 http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/bukai/public/shiga.pdf  塩見昇、2012年、「これからの図書館サービスに求められる もの~『中小レポート』から半世紀~」『日本図書館協会公共 図書館部会 全国公共図書館研究集会報告書』 ★31 なお、40年後となる2008年のシンポジウムで、練馬テレビ 事件の当事者であった人物が「長い間図書館で働いてきたが、 本人が求めれば記録を渡してもいいと思っている。図書館員 はそういうことに消極的である。図書館員が地域の人たちと 結びついていくためにそうしたことも必要である。」と発話して いることは注目に値する。(https://www.jla.or.jp/portals/0/ html/jiyu/taikai2008kiroku.pdf 図書館の自由 別冊(2008 年 12月「Web2.0 時代」における図書館の自由 を参照) ★32 塩見昇、1991年、「子どもの権利条約・プライバシー権の波 をかぶる学校図書館」『現代の図書館』vol.29, no.4, p.209-215. ★33 生駒さよ、1980年、「「図書館の自由に関する宣言」にかかわ る事例」『みんなの図書館』6月号, p.12-19. ★34 http://hdl.handle.net/2433/37463 1997年、「図書館利用証 と学生証の一元化について」『静脩』vol.33, no.2. p.13. ★35 http://hdl.handle.net/2433/37310 長尾真、1995年、「京都 大学附属図書館の現状」『静脩』vol.32, no.1. p.1-4. ★36 日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会編、1988年、 『図書館は利用者の秘密を守る』日本図書館協会 ★37 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007819738 2010、「討義「図書館 の自由に関する宣言」改訂から30年 : その今日的展開」『図書 館界』、vol.62, no.2, p.112-126. ★38 図書館の自由委員会、2014年、『みんなでつくる・ネットワー ク時代の図書館の自由:連続セミナー 2013記録集』 ★39 http://www.slideshare.net/milkyalab/code4lib-japan2015- ono-haruki 小野永貴「iBeaconを用いた 大学図書館の利用 者行動調査 ― 千葉大学附属図書館での実証実験 ―」 ★40 たとえばアカデミック・リンク・センター評価委員会報告書な ど を 参 照。 http://alc.chiba-u.jp/assessment_committee. html ★41 なお(営利企業によるポイント付与ではない)大学図書館におけ るポイント付与の試みは、白百合女子大学の「LiLiCa」や香川 大学の「ぷらっと図書館ボランティア」等など様々に行われてい る。指定管理の図書館におけるポイントカードの問題につい てはハフィントンポストの「【TSUTAYA図書館】CCCが「Pマー ク」を返納、利用者の個人情報はどうなる?」が参考になる。 http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/11/p-mark_ n_9215856.html ★42 https://www.jla.or.jp/portals/0/html/jiyu/column04. html#200909 前川敦子、「Web2.0時代における図書館の自 由・その後」 ★43 もちろん、統計的処理を行ったからといっても個人を特定し得 るではないかという反論がよくなされるが、この点については 個人特定化防止のための統計的処理方法が知られている。ま た貸出履歴と個人情報については、鈴木正朝、高木浩光、山 本一郎 、2015年『ニッポンの個人情報 :「個人を特定する情報 が個人情報である」と信じているすべての方へ』翔泳社 などを 参照。 ※『図書館雑誌』等、直接引用を行った記事については本文中の当 該箇所において明示したためここでは省略する。
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    044 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 収 集 の 工 夫 自治体の広報誌と同様に、利用者に見落とされがちな図書館の資料が教科書だ。 ここで紹介するのは、File314(p.057)のような都道府県が設置する教科書セン ターからの事例ではなく、教科書を資料として自主的に収集している図書館から の事例である。 教科書センターをはじめ、図書館における教科書の資料としての収集は、一般 的には自治体が行った検定に合格し採用されたものが対象にされるケースがほと んどだ。そんななか、採用されなかった教科書も図書館資料として受け入れてい るのが瀬戸内市立牛 うしまどちょう 窓 町公民館図書室である。 採用されなかった教科書の存在を知ることは、選定の際、他にどのような選択 肢があったのかを知る機会ともなる。その選択肢を保存し、全ての人に提供でき る状態にしておくことは、今後の教育に重要な意味をもつのではないだろうか。 File 301 瀬戸内市牛窓町公民館図書室(岡山県) 選定されなかった教科書も収集 撮影日:2015年1月15日 撮影:岡本真 ■瀬戸内市牛窓町公民館図書室 http://lib.city.setouchi.lg.jp/ 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓4910-1 TEL:0869-34-5663
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    045ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 収 集 の 工 夫 田 た ぶ せ ち ょ う 布施町は、岸信介、佐藤栄作という歴代の総理大臣の出身地である。そこで、 田布施町立田布施図書館では、岸、佐藤両総理大臣に関する資料はもちろんのこ と、歴代総理が当時読んでいた文献やお宝ともいえる稀 き こ う ぼ ん 覯本も貴重コレクション として所蔵している。 アメリカであれば、大統領が引退すると大統領図書館がつくられ、時の大統領 がどのような資料を読んでいたのか、私文書や写真なども含めて保存されるしく みが整っている。一方で日本ではそのようなしくみがないため、資料が散逸して しまう。同館の充実したコレクションは、そのような懸念を払拭するかのようで ある。地元の名士だけでなく、日本の貴重な財産として総理大臣資料を扱ってい くべきではないだろうか。 File 302 田布施町立田布施図書館(山口県) 歴代総理の蔵書を引き継ぐ図書館 撮影日:2015年2月3日 撮影:岡本真 ■田布施町立田布施図書館 http://library.town.tabuse.yamaguchi.jp/ 山口県田布施町中央南11-1 TEL:0820-52-2288 FAX:0820-52-5308 E-mail:library.tabuse@town.tabuse.yamaguchi.jp
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    046 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 収 集 の 工 夫 東日本大震災以降、友好都市は単に友好を深めるだけではなく、防災協定や自 治体連携という意味でも重要な位置づけになっている。そんな友好都市の理解を 深めるために、図書館でできることは何だろうか? 友好都市に関する資料を揃えるということは基本ではあるが、資料費削減が求 められていることの多い昨今、難しい面もある。このような状況のなかで、ほぼ 無料で揃えられる生きた資料が各自治体の広報誌である。そこで安 あ ず み の 曇野市中央図 書館では、安曇野市の友好都市である江戸川区・武蔵野市・福岡市の広報誌をそ れぞれファイリングし、「安曇野市友好都市の広報誌(広報誌名)」という背ラベル を貼って展示している。新聞コーナーの奥という配置場所も、文脈的に違和感が ない。 File 303 安曇野市中央図書館(長野県) 友好都市の広報誌を展示 ■安曇野市中央図書館 http://www.city.azumino.nagano.jp/tosho/ 長野県安曇野市穂高6765-2 穂高交流学習センター「みらい」内 TEL:0263-84-0111 FAX:0263-84-0116 撮影日:2015年4月1日 撮影:岡本真
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    047ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 収 集 の 工 夫 新着図書コーナーを各自治体の広報誌を置く場所に転用している事例は File320(p.063)で紹介するが、こちらは雑誌用の書架を行政情報コーナーに転 用している事例である。File331(p.074)でも触れている通り、図書館を行政情 報の発信地としてPRすることは、図書館の地位向上にとってもよいことである。 琴浦町図書館では、雑誌用の書架に市役所の各課を割りあて、各課の資料を分 類しながら配置している。また、書架の側面の部分には、町の公式サイトをプリ ントしたものを新着順に貼りつけている。たったこれだけのことではあるが、こ の作業を通して図書館職員が市の情報に必ず目を通すことにもなり、自治体の動 向に詳しくなるという効果も期待できる。取り組んで損はないはずだ。 File 304 琴浦町図書館(鳥取県) 雑誌用書架を行政情報コーナーに転用 ■琴浦町図書館 http://www.town.kotoura.tottori.jp/lib-manabi/ 鳥取県琴浦町徳万266-5 琴浦町生涯学習センターまなびタウンとうはく内 TEL:0858-52-1115 FAX:0858-52-1155 E-mail:lib-manabi@town.kotoura.tottori.jp 撮影日:2015年4月14日 撮影:岡本真
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    048 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 収 集 の 工 夫 自治体の広報誌を積極的に収集するFile320(p.063)の事例と近いが、無料で 配られているフリーペーパーも図書館資料として収集し、展示している事例を紹 介したい。 射 い み ず 水市新湊図書館の雑誌向け書架では、自治体の広報誌と並んで、フリーペー パーや関連機関の機関誌も積極的に収集する取り組みがみられた。 フリーペーパーといえど侮るなかれ。たとえば「Voters」(公益財団法人明るい 選挙推進協会発行)などは自治体行政について調べたいときにとても役立つ。ま た、富山県ならではの「ぴーぽぱーぽ」(富山県警発行)といったご当地でしか手 に入らない機関誌もある。農林水産や建築、金融、防災など、行政職員を意識し たラインナップになっているようにも感じられたが、「使える」フリーペーパーが 集められていた。 File 305 射水市新湊図書館(富山県) フリーペーパーの積極的収集 ■射水市新湊図書館 http://lib.city.imizu.toyama.jp/ 富山県射水市三日曽根3-23 新湊中央文化会館内 TEL:0766-82-8410 FAX:0766-84-6733 撮影日:2015年5月29日 撮影:岡本真
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    049ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 提 供 の 工 夫 地域資料は揃えるだけではなく、活用してこそ意味のあるものとなる。関の刀 鍛冶で有名な刃物の町、関市にある関市立図書館には、関市の伝統文化と産業に 関する資料を収集・保存し、市民に伝えるための「せき・わかくさ文庫」があり、 市を代表する地域資料として「刀剣」や「円空」(1632年〜 1695年、美濃国に生ま れた仏師)などの関連資料を揃えている。 さて、地域資料を活用する以前に忘れてはならないのは、地域資料が揃う環境 にあるということは、地元にその道の職人がいるということである。そこで同館 では「関の職人シリーズ」と題して、図書館協議会会長と地元の職人が対談する という形式の図書館イベントを企画している。内容は以下の通り、身近な道具で ある鋏や包丁のことはもちろん、地元産業の動向までもカバーしている。 ・第1弾「鋏職人と語る」(2015年4月12日(日)開催) ・第2弾「錺職人と語る」(2015年5月24日(日)開催) ・第3弾「関式小型多目的ポケットナイフの変遷」(2015年6月14日開催) ・第4弾「包丁の選び方」(2015年7月26日(日)開催) ・第5弾「関産品の国内流通の変化」(2015年9月27日(日)開催) File 306 関市立図書館(岐阜県) 地域資料を生かした職人シリーズ ■関市立図書館 http://ufinity08.jp.fujitsu.com/sekilib/ 岐阜県関市若草通2-1 わかくさ・プラザ 学習情報館1階 TEL:0575-24-2529 FAX:0575-23-7780 撮影日:2015年6月6日 撮影:岡本真
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    050 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 提 供 の 工 夫 新 しんぐう 宮市立図書館の母子閲覧室には、何冊かまとめて借りる際に便利な「絵本の おすすめパック」が用意されていた。司書があらかじめ選んだ絵本5冊がまとめ て袋に入れてあり、ぱっと借りられるようになっているものだ。気軽に借りるこ とができるということで、初めて図書館を利用するお母さん方に特に好評とのこ と。 File101(第4号)で紹介した「おすすめ絵本を、セットで貸出」との違いは、対象 となる子どもの年齢別に「たまご」「ひよこ」「あひる」の3種類が用意されている ことだ。また、袋は半透明になっていて、どんな本が入っているかはぱっと見た だけではわからないようなワクワク感を演出しつつ、袋の中に入っている本の書 名、著者名、出版社名が書かれたカードを外側のポケットに入れている。絵本を もっと活用するためにも、年中利用できる気軽なサービスとしても嬉しい。 File 307 新宮市立図書館(和歌山県) 絵本のおすすめパック 撮影日:2015年1月10日 撮影:岡本真 ■新宮市立図書館 https://www.city.shingu.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=18990 和歌山県新宮市井の沢4-15 TEL:0735-22-2284
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    051ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 提 供 の 工 夫 箕 み の お 面市立中央図書館では、2015年4月に館内の一部をリニューアルし、1階の 中央部分に天井まであるウォール書架を導入した。大人でも手が届かないウォー ル書架は使い方が難しい面もあるが、同館での使い方はその高さを生かしたもの といえる。 子ども向けエリアに面した「子育てママサポートコーナー」で、大人も子どもも 一緒に本を選べるように、それぞれの目線の高さに合わせた選書で配架をしてい るのだ。さらに、大人向けの本のテーマと、こども向けの本のテーマに関連性を 持たせることで、両者ともに楽しめる書棚づくりをしている工夫もみられた。 なお訪問した時点では、最上段には本を置かず、2段目に洋書の絵本を面陳し てあった。今後、資料が増えるにしたがって最上段をどのように活用していくの かも注目したい。 File 308 箕面市立中央図書館(大阪府) 大人、子どもの目線に合わせた本棚づくり ■箕面市立中央図書館 http://www.city.minoh.lg.jp/library/ 大阪府箕面市箕面5-11-23 TEL:072-722-4580 FAX:072-724-9697 撮影日:2015年4月28日 撮影:岡本真
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    052 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 提 供 の 工 夫 コミックを所蔵している図書館の悩みの一つに、巻数がどんどん増えて、複数 のタイトルを並べづらいというものがあるだろう。コミック以外の開架資料のス ペースを圧迫してしまう懸念もある。そんな悩みを解決する工夫を、白河市立図 書館でみつけたので紹介したい。 白河市立図書館では、「他巻書庫」というラベルをつくって、コミックの第1巻 の背表紙に貼り、2巻以降は書庫に置くという工夫を行っている。2巻以降を利 用したい場合は、カウンターへ申し込むという方式だ。 配架スペースの確保に困りがちな全集や百科事典に対応するための事例、 File151(第4号)やFile222(第9号)と同じ方式ともいえるが、このラベル表記は それらの事例にも採用できる汎用性の高い優れた取り組みである。 File 309 白河市立図書館(福島県) 他巻書庫の表示 ■白河市立図書館 http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=265&ik=1 福島県白河市道場小路96-5 TEL:0248-23-3250 E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    053ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 提 供 の 工 夫 利用者の手に取られづらい郷土資料を区分して展示する工夫については、 File321(p.064)で紹介したが、もう一つ違う角度から紹介したい。 北上市立中央図書館では、新着本の案内をする掲示板に本の帯を貼りつけ、 ジャンルごとに見出しをつけて紹介しているが、そのなかで「地域資料」の新着図 書についてもジャンルとして取り上げるという工夫をしていた。 利用者の目に触れにくい資料を、新着図書のコーナーで取り上げることで、利 用者の興味を引く機会を増やしている点が素晴らしい。また、本の帯を使って紹 介する場合、帯には記載がない書名と著者名をどのように表記するかについては いろいろなパターンがあるが、ここでは帯のソデの部分に手書きで追記している 点も、手軽に展示する際に便利な工夫といえる。 File 310 北上市立中央図書館(岩手県) 新着図書の紹介コーナーで「地域資料」を強調 ■北上市立中央図書館 http://www.library-kitakami.jp/ 岩手県北上市本石町2-5-35 TEL:0197-63-3359 FAX:0197-63-5545 撮影日:2016年1月11日 撮影:岡本真
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    054 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 提 供 の 工 夫 地域に関する郷土資料というと、すぐさま「本」が思い出されがちだが、図書館 が集めている資料は本だけではない。地域に関わりのあるCDやDVDも、取り上 げてみてはどうだろうか? 愛媛県の大洲市立図書館のAV(視聴覚)資料コーナーでは、通常の配架とは別 に「大洲関係」と「愛媛関係」というテーマでCDとDVDをまとめていた。同館で は、AV資料をケースごと貸し出すので、貸出中でもラインナップがわかるように、 一覧表をつくって、請求記号とタイトルとともに作品の説明も追加している点も 素晴らしい。地元にゆかりがある映像作家といった切り口だけではなく、地元が ロケ地になった映画などもラインナップに入っており、切り口の工夫次第でどこ の地域でも比較的簡単に資料が集まるはずだ。 File 311 大洲市立図書館(愛媛県) AV(視聴覚)資料にも地域色を ■大洲市立図書館 https://library.city.ozu.ehime.jp/ 愛媛県大洲市東若宮17-5 TEL:0893-59-4111 FAX:0893-59-4123 撮影日:2015年11月24日 撮影:岡本真
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    055ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 提 供 の 工 夫 地域に貢献する図書館サービスにおける一つの柱として、ビジネス支援に取り 組む図書館が増えている。なかでも地場産業の支援として、その産業の関連資料 を集めている図書館は多いだろう。しかし、悩ましいのが資料が集まらないケー スだ。たとえば、愛媛県今治市といえばタオルの町だが、今 いまばり 治市立図書館が地元 産業についての資料を集めたところ、戦後から現代までの資料が少ないという課 題が残ったという。 そこで今治市立図書館では、現代のタオル産業を支える関係者にインタビュー し、そのオーラルヒストリーを残していく「タオルびと」制作プロジェクトに取り 組んでいる。城西大学の辻智佐子准教授と司書らでつくるこのプロジェクトの成 果は、図書館の公式サイト上にデータを公開しているが、それを館内でもパネル にして掲示するという、O2O(Online to Offline)のサイクルができている。 司書が自ら地域資料を制作する取り組みは、生半可にはできない。とにかく素 晴らしいのひと言である。 File 312 今治市立中央図書館(愛媛県) 司書が地域資料を制作 ■今治市立中央図書館 http://www.library.imabari.ehime.jp/ 愛媛県今治市常盤町5-203-2 TEL:0898-32-0695 FAX:0898-24-2613 E-mail:tosyokan@minos.ocn.ne.jp 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真 タオルびと~タオルづくりの技と伝統のなかに息づく日本の モノづくりの原点~ http://www.library.imabari.ehime.jp/towelbito/
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    056 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 提 供 の 工 夫 定期的に受け入れをしている新着図書の案内は館内で頻繁に目につくが、雑誌 については出版業界の不振により休刊のお知らせが目立つせいなのか、新しく購 読を始めても、きちんと紹介している図書館は少ないように感じる。 そんななか、春日市民図書館や静岡県立中央図書館では、新しく購読を始めた 雑誌のタイトルや内容をまとめたものを一覧にして掲示しており、印象に残った。 特に春日市民図書館では、雑誌の表紙をカラーで印刷している点がわかりやす い。静岡県立中央図書館の掲示では雑誌の概要だけでなく、利用者が身近に感じ られるような紹介文を掲載し、利用を促している。常に雑誌コーナーを利用しな い利用者にとっても嬉しい情報である。 File 313 春日市民図書館(福岡県)、静岡県立中央図書館(静岡県) 新しく購読を始めた雑誌のアピール ■春日市民図書館 http://www.library.city.kasuga.fukuoka.jp/hp/ 福岡県春日市大谷6-24 TEL:092-584-4646 ■静岡県立中央図書館 https://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/ 静岡県静岡市駿河区谷田53-1 TEL:054-262-1242(代表) FAX:054-264-4268 春日市民図書館 撮影日:2015年11月14日  撮影:岡本真 静岡県立中央図書館 撮影日:2015年12月8日  撮影:岡本真
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    057ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 提 供 の 工 夫 File301(p.044)で紹介したように、館内に教科書センターを配置し、教科書 の閲覧だけでなく、蔵書として貸し出す図書館が増えている。 採用された教科書を並べるだけの事例が多いなか、静岡市立中央図書館では、 教科書を採用する検定の際にまとめられた「検定意見書・修正表」も手に取れるよ うに配架している。文部科学省によれば、全国には図書館や教育委員会などに都 道府県が設置する教科書センターが941ケ所ある(2015年8月現在)とのこと。他 の図書館にある教科書センターではどのような取り組みが行われているかは、今 後も注目していきたいところである。 File 314 静岡市立中央図書館(静岡県) 教科書センターに検定意見書・修正表も ■静岡市立中央図書館 http://www.toshokan.city.shizuoka.jp/ 静岡県静岡市葵区大岩本町29-1 TEL:054-247-6711 FAX:054-247-9971 E-mail:chuuoutosho@city.shizuoka.lg.jp 撮影日:2015年11月8日 撮影:岡本真
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    058 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 提 供 の 工 夫 「読書会」というと、決められた本を各自が事前に読んでおき、感想を語り合う イメージがあるかもしれないが、太宰府市民図書館で行われている読書会はひと 味違っている。奇数月に不定期開催されている「朝の読書会」は、「ちょっと! こ の本読んでみて!!」という気軽な雰囲気のサブタイトルがつけられており、毎回、 決められたテーマに添ったおすすめ本を参加者同士で紹介し合い、気軽に語り合 うスタンスで行われている。ちなみに、最近のテーマは「推理小説」、「昨年読んで、 一番面白かった本(出版年はいつのものでも可)」というラインナップである。 おすすめ本はなるべく図書館の蔵書から選ぶというルールが示されているが、 このルールは読書会で紹介された本を「朝の読書会」コーナーで展示するためにあ る。読書会に参加した人のおすすめした本が、読書会が終わった後も展示される しかけになっており、参加しなかった人も楽しめるというしくみが上手くつくら れている。 File 315 太宰府市民図書館(福岡県) 読書会で紹介された本コーナー ■太宰府市民図書館 https://www.library.dazaifu.fukuoka.jp/ 福岡県太宰府市観世音寺1-3-1 TEL:092-921-4646 FAX:092-921-4896 撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
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    059ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 図書館に来た利用者に最初に何をみせるべきか、テーマ展示の内容を考える以 前のこととして考えてみてほしい。 美 み さ き 咲町立中央図書館では、入り口から入ってすぐ左手の書架の上に、美咲町 合併10周年を記念して町内の小中学生が書いた「まちづくり作文集」が展示され ている。その場所は、県立図書館からの協力貸出本や新着図書のすぐ隣、利用者 の目にとまる場所だ。「まちづくり作文集」は、図書館の蔵書として貸出も行って いるが、希望すれば分けてもらえるという。このような体制がとれるのも、美 咲町の人口が1万5,000人ほどで、中央図書館としてカバーしている地区の人口 が7,000人弱だという規模が影響していることは確かだが、行政と町民が共につ くった作品集をPRすることも図書館が担うべき行政サービスの一環といえるだ ろう。 File 316 美咲町立中央図書館(岡山県) 「まちづくり作文集」を目立つ場所に展示 ■美咲町立中央図書館 http://www.cyerry.net/~library/top.htm 岡山県美咲町打穴下448-4 TEL:0868-66-7151 FAX:0868-66-7152 撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
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    060 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 2015年4月に恩 お ん な そ ん 納村にオープンした恩納村文化情報センターの展示コーナーで、 他にはみられないひと工夫があったので紹介したい。 「Yomuzou(よむぞう)」は恩納村文化情報センターのキャラクターだが、 「Yomuzou Cafe」と名づけられた展示コーナーに並べられたのは、「カフェ」をテー マに集められた本だ。そして展示コーナーの名前の通り、このコーナー自体が架 空の「カフェ」になるような遊び心のある仕掛けをしている。なんと、本のタイト ルと請求記号をメニューとして掲載しているのだ。 展示コーナーに本を面出しして並べると、どうしても棚の広さが足りなくなっ てしまうが、このように掲示物にひと工夫することで、展示の奥深さを表現する ことができるのだ。 File 317 恩納村文化情報センター(沖縄県) カフェメニューに見立てたテーマ展示 ■恩納村文化情報センター http://www.onna-culture.jp/ 沖縄県恩納村字仲泊1656-8 TEL:098-982-5432 E-mail:onnalib@ovcic.jp 撮影日:2015年7月18日 撮影:岡本真
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    061ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 最近の展示コーナーでは、テーマを絞らずに「同じ色の本」を集めた「見せる展 示」が流行しつつある。もちろん、同じ色というだけのつながりでさまざまな ジャンルの本が集まることにより、偶然の出会いを生み出すこともできる。だが、 「同じ色」というつながりだけでは、どうも面白みにかけてしまうと思うのは筆者 だけだろうか。 同じ色で統一感を出しつつ、テーマも合わせた展示をみつけたので参考にして もらいたい。恩納村文化情報センターは、館内から東シナ海を臨む絶景のなかに 立地するという特徴を活かして、「青」かつ「海」という見せる展示に挑戦し、筆者 の心をわしづかみにした。テーマは「青い海は、美しい。」さりげなく書かれたPR 文も秀逸だ。 「青い本で恩納村の海を表現しました。どうぞゆっくりおくつろぎください」。 テーマを取り上げたストーリーだけでなく、利用者への思いやりあふれるPR 文となっていることにも注目したい。日本一のリゾート地にあることの誇りが感 じられる。 File 318 恩納村文化情報センター(沖縄県) 同じ色&同じテーマの本を展示 ■恩納村文化情報センター http://www.onna-culture.jp/ 沖縄県恩納村字仲泊1656-8 TEL:098-982-5432 E-mail:onnalib@ovcic.jp 撮影日:2015年4月23日 撮影:岡本真
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    062 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 那覇市の南東に位置する南 は え ば る 風原町立図書館では、町に関する地域資料コーナー を「南風原本」と名づけている。手に取られづらい地域資料だが、ネーミングひと つで「何だろう? ちょっと見てみようかな」という気にさせるものだ。 また、その案内も工夫がされている。入り口から入ってきた利用者がちょうど 目をとめる場所にある書架の側面に、切り文字を貼りつけて目立たせているのだ。 切り文字の先頭にある切り絵は、伝統工芸「琉球絣(かすり)」の柄によく使われ るトゥィグワー(沖縄風鳥模様)の燕の形だ。「南風原本」を形どった切り文字自 体にも琉球絣の幾何学模様が描かれており、南風原の伝統工芸をフルに活用した デザインが素晴らしい。 File 319 南風原町立図書館(沖縄県) 地域資料コーナーのネーミングにひと工夫 ■南風原町立図書館 http://www.town.haebaru.lg.jp/docs/2013022800303/ 沖縄県南風原町字喜屋武236 TEL:098-889-6400 FAX:098-888-3265 撮影日:2015年5月17日 撮影:岡本真
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    063ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 佐 さえきちょう 伯町が合併してできた人口1万5,000人ほどの町、和 わ け ち ょ う 気町にある佐伯図書館は、 旧佐伯町時代に建てられた生涯学習施設 学び館「サエスタ」の一室に入っている。 佐伯図書館でみつけたキラリと光る事例は、県内自治体の広報誌を集め、面陳 するコーナーである。入り口からも近く目立つ場所に設けられたそのコーナーは、 本来であれば新刊図書のためのスペースだ。よくみると、自治体の広報誌だけで なく、博物館や商工会が発行する広報誌もあり、その奥には持ち帰ることができ るリーフレットも置いてある。 各自治体の「いま」が記されている広報誌は、無料で手に入れることができる生 きた地域資料だ。地域資料はファイルに綴じて奥へと押し込まれがちだが、すぐ にしまいこんでしまうのはもったいない。二つ穴を開けて綴じ紐でまとめて面陳 するだけでよい。予算削減の影響で空いてしまった雑誌コーナーなどを活用する 際のアイデアとしても、ぜひ参考にしてもらいたい取り組みである。 File 320 和気町立佐伯図書館(岡山県) 県内自治体の広報誌を目立つところに 撮影日:2015年1月14日 撮影:岡本真 ■和気町立佐伯図書館 https://library.town.wake.okayama.jp/ 岡山県和気町父井原430-1 学び館「サエスタ」2階 TEL:0869-88-9112 FAX:0869-88-9008 E-mail:saekitosho@town.wake.lg.jp
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    064 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 和歌山県新宮市は三重県との県境に位置し、熊 くまのはやたま 野速玉大社の門前町として栄え た歴史ある町である。新宮市立図書館は2019年4月の新館開館を目指しその準 備を進めており、現在の姿はあと数年でみられなくなってしまうが、そこでみつ けたひと工夫を紹介したい。 新宮市立図書館の郷土資料室は2階の一室にあるのだが、そことは別に、利用 者の目につきやすい1階の書架にも「熊野の本あれこれ」という熊野関連コーナー を設けている。比較的新しい資料を中心にまとめており、書架には郷土資料室が 2階にあることも掲示されている。 郷土資料室を一般の書架とは別につくった場合、ひとけのない空間になってし まいがちだが、ふだん利用の多い書架に気軽なネーミングをつけた出張郷土資 料コーナーには、興味のない利用者もちょっとみてみようという気にさせる。こ のような親しみやすさの設計が、資料活用のきっかけにひと役買うこともあるは ずだ。 File 321 新宮市立図書館(和歌山県) 地域資料コーナーを分散して設置 撮影日:2015年1月10日 撮影:岡本真 ■新宮市立図書館 https://www.city.shingu.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=18990 和歌山県新宮市井の沢4-15 TEL:0735-22-2284
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    065ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 File349(p.092)で紹介しているレシート芯を活用した事例は、掲示物を立た せるスタンドとしての活用だが、こちらはブックスタンドのストッパーの部品と して活用されている事例である。 長岡市立寺 てらどまり 泊地域図書館では、通常の書架の空きスペースに新書の本を面陳 しているが、そのブックスタンドにレシート芯を活用している。ブックエンドを 通常使う際の向きから90度回転させて、ブックエンドの底にレシート芯を固定 しストッパーにすることで、本を面出しする際のスタンドにしているのである。 レシート芯の幅は新書の本の幅と同じくらいなので、取り出すときに邪魔にな りづらい。よくみるとマスキングテープや柄のある折紙などで、レシート芯を コーティングしているものもある。レシート芯1本でできるので、ぜひ気軽に試 してほしい。 File 322 長岡市立寺泊地域図書館(新潟県) レシート芯1本でできるブックスタンド ■長岡市立寺泊地域図書館 http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/ 新潟県長岡市寺泊磯町7411-14 寺泊文化センター2階 TEL:0258-75-5159 FAX:0258-75-3109 撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
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    066 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 寄贈で受け入れた本は、どのようにPRしているだろうか? 図書館によって は、寄贈受け入れ本も、資料費で購入した本と一緒に新着図書コーナーに配架し ているところもあるだろう。 長岡市立寺 てらどまり 泊地域図書館では、新着図書コーナーとは別に新着寄贈資料コー ナーを設けて、どういった本が最近寄贈されたのかみせている。このようにすれ ば、寄贈受け入れの対象となる本をアピールすることもできるので、ぜひ通常購 入の資料とは別に配架してみてほしい。 寄贈をした側としても、自分が寄贈した資料がPRされれば嬉しいだろうし、 寄贈という仕組みを使えば、市民ひとり一人が図書館の資料を充実させる手助け ができるということを知ってもらう絶好の機会にもなるだろう。 File 323 長岡市立寺泊地域図書館(新潟県) 新着の寄贈資料を紹介 ■長岡市立寺泊地域図書館 http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/ 新潟県長岡市寺泊磯町7411番地14 寺泊文化センター2階 TEL:0258-75-5159 FAX:0258-75-3109 撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
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    067ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 長岡市では、地元の特色ある資料を「特色資料」として、地域図書館ごとに力を 入れて集める取り組みを行っているが、南地域図書館では「特色資料」の一つとし て「ユニバーサル文庫」を設置している。「ユニバーサル文庫」には、小説の朗読や 落語などを収録したCDやカセットテープなどの耳で聞くオーディオブックだけ でなく、字幕つきの映画資料なども含まれる。 これらの資料を使うのは障がいを持つ利用者だけではなく、高齢者が利用する ケースもあることを考えると、これまでの「障がい者サービス」という位置づけで は不足があると考える。「障がい者」という表現を強調せずに、「誰でも使える(ユ ニバーサル)」としてPRしている視野の広さに感心した。 File 324 長岡市立南地域図書館(新潟県) 視聴覚資料コーナー、言い換えてみたら? 撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真 ■長岡市立南地域図書館 http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/ 長岡市曲新町566-7 TEL:0258-30-3501 FAX:0258-30-3505 E-mail:lib.minami@nscs-net.ne.jp
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    068 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 図書館で廃棄されるものをブックスタンドとして活用している事例は、これま で、レシート芯やブックケースを材料として使っているものを中心に紹介してき た。実はもっと身近な素材であるダンボールを使った事例があるのだが、それは あまり紹介してこなかった。というのもダンボールをそのまま使った場合、埃が たまりやすく、みすぼらしくなってしまうという課題を乗り越えられない事例が ほとんどだったからだ。 長岡市立北地域図書館でみつけたダンボールを使ったブックスタンドは、表面 を綺麗な色柄のついた紙で覆うことで、この点をクリアしていたので紹介したい。 このブックスタンドは、1枚のダンボールをうまく折り曲げることによりつくら れているので、ある程度の大きさのダンボールが必要だ。ポイントは、折り曲げ たい部分にカッターで軽く切込みをいれること。ぜひ試してみてほしい。 File 325 長岡市立北地域図書館(新潟県) ダンボールを折ってブックスタンドに ■長岡市立北地域図書館 http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/ 新潟県長岡市曲新町566-7 TEL:0258-30-3501 FAX:0258-30-3505 E-mail:lib.minami@nscs-net.ne.jp 撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真
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    069ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 File322(p.065)で紹介した事例と同じように、材料さえあれば簡単につくれ るブックスタンドの事例を紹介したい。 みなみいせ図書室では、背の高い書架は壁によせて、空間をさえぎらないよう にしている。特に児童向けの本のコーナーでは、壁にそった書架以外は低い書架 にしているため、本棚の上に絵本を置いて子供の興味を引いているのだが、そこ に欠かせないのがブックエンドとコルク栓を組み合わせたブックスタンドだ。 この場合に使うブックエンドはアクリルではなく、よくあるスチールの事務用 ブックエンドで、コルク栓を半分に切ったものをストッパーの部品として使って いる。コルク栓ならばレシート芯よりも柔らかく、加工もしやすいのが特徴だ。 ブックエンド自体のすべり止めに敷かれているフェルト布も、アクセントとして 効果的である。 File 326 みなみいせ図書室(三重県) ブックエンドとコルクでブックスタンド ■みなみいせ図書室 http://www.amigo2.ne.jp/~cyobun-n/mican/tosyo.html 三重県南伊勢町五ヶ所浦3917 町民文化会館1階 TEL:0599-67-1013 撮影日:2015年1月20日 撮影:岡本真
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    070 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 臼 う す き 杵市立臼杵図書館に隣接している臼杵市荘 しょうだへいごろう 田平五郎記念こども図書館は、地 元出身で三菱の大番頭といわれた荘田平五郎氏が私費を投じて建て寄贈した大正 時代の建物だ。2003年に現在の「こども図書館」として再生されている。1階は低 学年用と高学年用に大まかに分けられ、2階には学習室や読み聞かせの部屋、談 話室も完備している。 館内で目を引いたのは「きょうど」と掲げられたコーナーである。そこには臼杵 市ゆかりの三 みうらあんじん 浦按針(ウィリアム・アダムス)の絵本から、臼杵の歴史に関する資 料など50冊ほどではあるが、丸テーブルにところ狭しとまとめられていたのだ。 郷土資料は、貴重な資料を保存することが一番に優先されてしまうかもしれな い。そしてこどもの手には届かない場所に配置されがちだが、地元地域のことを 幼い頃から身近な場所で触れる機会をつくることも重要であろう。 File 327 臼杵市荘田平五郎記念こども図書館(大分県) こども図書館で郷土資料を展示 ■臼杵市荘田平五郎記念こども図書館 http://www.city.usuki.oita.jp/categories/bunya/kyouiku/tosyokan/ 大分県臼杵市臼杵6-16 TEL:0972-62-3405 撮影日:2015年1月21日 撮影:岡本真
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    071ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 File065(創刊号)で紹介してから各図書館で大ヒットしている「図書館福袋」だ が、これをフル活用した展示コーナーをご紹介したい。 図書館福袋は、その袋に詰められた本のテーマを示すことはあっても、中身に ついては紹介しないのが一般的である。中身を知らずに、どんな本が出てくるか を楽しむのが福袋の醍醐味なのだ。 さて、皇學館大学附属図書館では、返却された「図書館福袋」のセットから順に 「福袋中身公開展示」と題した展示コーナーで、福袋に入っていた本を袋から取り 出して展示している。福袋として貸し出されるときには明かされなかった選書担 当者のオススメのひと言も添えてある。「福袋として選書された本」というコンセ プトで再び利用者の興味をひくという、一粒で二度おいしい企画となっている。 File 328 皇學館大学附属図書館(三重県) 福袋の中身公開展示 ■皇學館大学附属図書館 http://www.kogakkan-u.ac.jp/html/library/p01.php 三重県伊勢市神田久志本町1704 TEL:0596-22-6322 FAX:0596-22-6329 E-mail:toshokan@kogakkan-u.ac.jp 撮影日:2015年1月20日 撮影:岡本真
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    072 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 一関市立花泉図書館の視聴覚コーナーでは、DVDも本と同じく面陳してみせ るという工夫があったので紹介したい。花泉図書館では、DVDを貸し出す際に ケースまでは貸し出さず、「貸出中」の見出しを表示している。このようにするこ とで、貸出中のタイトルが増えた場合に、棚がスカスカになるということもおき ない。もともと収蔵するタイトルが少ないため書架に余裕があり、利用される頻 度も少ない資料だからこそ、面陳するものを定期的に入れ替える工夫が生きてく るはずだ。 一方でシリーズもののDVDが増えて場所をとってしまう場合には、File222(第 9号)で紹介した書架スペースの有効活用術を応用し、開架に出すのは1巻目のみ とし、以降の巻についてはタイトル一覧を付与する方法をおすすめしたい。 File 329 一関市立花泉図書館(岩手県) DVDも面陳で展示 ■一関市立花泉図書館 http://www.library.city.ichinoseki.iwate.jp/ 岩手県一関市花泉町涌津字上三ノ町12 TEL:0191-82-4939  FAX:0191-36-1951 E-mail:hanatosho@city.ichinoseki.iwate.jp 撮影日:2015年3月15日 撮影:岡本真
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    073ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 一関市東山図書館は、2009年につくられた複合施設に入る比較的新しい図書 館である。書架も比較的スペースに余裕がありそうだ。 東山図書館でみつけた小さな工夫は、普段ほとんど使われることのない、高書 架用の移動式踏み台の展示棚への転用だ。同館の書架は、天井まで届きそうな 10段もあるものが壁面に設置されており、この移動式踏み台は、上の方の資料 を出し入れするためのものなのだが、写真の背景に写っているように、一番上の 棚にはまだ本が置かれていない。移動式踏み台には高書架用にストッパーがつい ているので、展示棚として活用するには申し分ない条件が整っている。また、ど こにでも動かしていけるのも便利である。 File 330 一関市立東山図書館(岩手県) 移動式踏み台を展示棚に転用 ■一関市立花泉図書館 http://www.library.city.ichinoseki.iwate.jp/ 岩手県一関市東山町長坂字町335-1 東山地域交流センター1階 TEL:0191-47-2324  FAX:0191-47-2961 E-mail:higatosho@city.ichinoseki.iwate.jp 撮影日:2015年3月15日 撮影:岡本真
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    074 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 阪急電鉄川西能勢口駅からほど近い商業複合施設内にある川西市立中央図書館 は、エントランス付近に「市政情報」をまとめたコーナーを設置している。通常、 このような資料は郷土資料と並ぶことが多く、図書館の奥のほうに配置されるこ とがほとんどであることを考えると、非常に好ましい取り組みである。 設置場所も効果的だが、展示内容も市の総合計画をまとめたファイルを単に置 くだけではなく、計画の概要を生活シーンごとにカテゴリ分けし、行政がどのよ うな計画を立てているのかをわかりやすくまとめていた点も好印象だった。すぐ 隣には「まちづくり情報コーナー」の地域情報として、市役所や関連施設からのお 知らせを掲示するスペースもあり、自由に持ち帰ることができるチラシも配備さ れていた。市役所よりも駅に近く、市役所の広報窓口の一つとして機能している といえるだろう。 File 331 川西市立中央図書館(兵庫県) 市政・地域情報を誰もが通る場所に展示 ■川西市立中央図書館 https://www.library.city.kawanishi.hyogo.jp/ 兵庫県川西市栄町25-1「アステ川西」内 TEL:072-755-2424 撮影日:2015年4月6日 撮影:岡本真
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    075ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 ブックエンドとレシート芯を組み合わせてブックスタンドにする場合、これま でに紹介した事例では、ブックエンドとレシート芯を接着するために両面テープ を使用したが、この場合、接着剤が劣化すると壊れる可能性もでてくる。そこで 部品同士を結びつけることで、この点を解決した事例があるので紹介しよう。 豊中市立蛍池図書館でみかけたのは、ブックエンドとレシート芯を綴じ紐でつ ないでいるものである。レシート芯の筒に綴じ紐を通し、さらに綴じ紐をブック エンドにひっかけるようにして結べば完成だ。 接着剤を使わずとも、うまい組み合わせはたくさんありそうだ。 File 332 豊中市立蛍池図書館(大阪府) 綴じ紐を活用したブックスタンド ■豊中市立蛍池図書館 http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/ 大阪府豊中市蛍池中町3-2-1-502 TEL:06-6840-8000 撮影日:2015年4月18日 撮影:岡本真
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    076 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 Web-OPACが導入されてから、閉架資料も開架資料も瞬時に探し出すことが できるようになったが、ふだん目にすることのない閉架資料は、検索をかけない 限り、その存在を知ることができない。これは意外と見落とされがちなポイント である。その解決策として、閉架書庫を公開するという事例もあるが、利用者が 入る前提で設計されていない部屋を公開するのは、いろいろな問題があり、ハー ドルが高い。 手軽にできる方法としておすすめなのは、閉架書庫にしまってある資料で展示 コーナーをつくることである。丹波市立中央図書館では、閉架書庫の資料のPR コーナーをつくり、本を定期的に入れ替えている。テーマは特に絞らず、図書館 の資料が開架にあるものだけではないということを想像させる展示となっていた。 File 333 丹波市立中央図書館(兵庫県) 閉架書庫の資料をみせる展示コーナー ■丹波市立中央図書館 https://www.city.tamba.hyogo.jp/site/toshokan/ 兵庫県丹波市氷上町常楽233 TEL:0795-82-7100 FAX:0795-82-7200 E-mail:library@city.tamba.hyogo.jp 撮影日:2015年4月28日 撮影:岡本真
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    077ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 利用者が気軽に参加でき、展示としても面白い試みを奥州市立前沢図書館でみ つけたので紹介したい。「本のリレー」と名づけられたこのコーナーは、1冊の本 からスタートし、その本から連想した本を利用者に紹介してもらうというもので ある。次の本を推薦する用紙には、最初の本と次の本の共通点やきっかけとなっ たキーワードも記入してもらう。匿名で参加できるが、世代や性別などの属性も 任意で記入してもらい、次の本を紹介するパネルに記載する。 訪ねた際は、前年度の予約件数ベスト10に入ったタイトルがスタートに選ば れていた。リレーで紹介された本の変遷は、紹介された本の書影と書名、著者名 が描かれたカードを毛糸で結んでパネルに貼りつけることで分かるようにしてい る。カードの合間には、紹介されるきっかけになったキーワードも貼りつけてあ り、わかりやすい。紹介された本が図書館で所蔵されている場合は、パネル手前 のテーブルに展示し、所蔵していない場合は、A4サイズのポスターで紹介する ことで、リレーが途切れることはない。期間限定のイベントとして、ぜひ試して みてほしい。 File 334 奥州市立前沢図書館(岩手県) 本のリレー展示 ■奥州市立前沢図書館 http://library.city.oshu.iwate.jp/ 岩手県奥州市前沢区七日町裏71 TEL:0197-56-6781(FAX兼用) 撮影日:2015年7月16日 撮影:岡本真
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    078 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 奥州市立前沢図書館では2階に児童、幼児向けの資料を集めているが、その一 角に「赤ちゃんの駅」と名づけられた授乳室が設けられている。ベビーベッドを置 き、その周りをカーテンで目隠ししただけの簡易的なつくりのものだが、そこ に行くための通路に、細長いテーブルの上に育児本や雑誌を置いて「子育て支援 本&子育て雑誌コーナー」をつくっている。地域の保育園での行事予定が書かれ たポスターや新しく受け入れた本のなかから、子育てに関するものだけをピック アップした「新刊情報コーナー」もある。 授乳やおむつを交換しにそこを利用する子育て世代のお母さんに向けた、工夫 のつまった便利な展示である。利用者の動きを丁寧に分析・把握することが、利 用者に喜ばれる図書館づくりの一歩であるに違いない。 File 335 奥州市立前沢図書館(岩手県) 利用者の動線に合わせた展示 ■奥州市立前沢図書館 http://library.city.oshu.iwate.jp/ 岩手県奥州市前沢区七日町裏71 TEL:0197-56-6781(FAX兼用) 撮影日:2015年7月16日 撮影:岡本真
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    079ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 市の乳幼児健診の際に、保健センターなどで行われていることが多いブックス タート。 図書館での実施も増えてきているが、基本的には図書館以外の場所が 行うこのような事業を、どのようにPRしているだろうか? 小 お た り む ら 谷村図書館では、絵本を置いている棚の一角に「ブックスタート-赤ちゃん と絵本が友達になるお手伝い」というパネルを置き、ブックスタートの際に配布 している絵本の見本を常時展示している。絵本にも「ブックスタート用見本」とい うステッカーを貼りつけ、どの本がブックスタートに使われている絵本なのか わかるように明示している。このような取り組みを普段から広くPRすることは、 「将来、いつか必要とするとき」のための地道なPRでもある。手堅く取り組んで ほしいところである。 File 336 小谷村図書館(長野県) ブックスタートの見本展示 ■小谷村図書館 http://www.vill.otari.nagano.jp/mura/library/ 長野県小谷村大字中小谷丙131 TEL:0261-82-2587(公民館共通) FAX:0261-82-3164 E-mail:donguri@vill.otari.nagano.jp 撮影日:2015年4月2日 撮影:岡本真
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    080 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 2006年に宇 う な づ き ま ち 奈月町と合併した黒部市は、人口4万人ほどのまちである。1972 年(昭和47年)に建設された黒部市立図書館は、築40年以上が経過していること もあり、館内の書架スペースを増やすのは難しいところまできている。そんな限 られたスペースをうまく活用している工夫をみつけたので紹介したい。 具体的に説明すると、キハラ社のワイヤーブックスタンドを書架の側面にピン 2本で止めるだけというものである。通常、ブックスタンドを置く場合はテーブ ルや低書架の上など平らなスペースが必要となるが、この方法を使えば書架の側 面でも面陳が可能だ。また、その下には椅子も置いてあり、大体の人が座っても 頭がぶつからない程度の高さが確保してある。ちょうど未就学児には届かず、大 人の目線にあった高さでもある。思わず、うまい!と感心した事例である。 File 337 黒部市立図書館(富山県) 書架に掛ける展示器の工夫 ■黒部市立図書館 https://lib.city.kurobe.toyama.jp/ 富山県黒部市植木23-1 TEL:0765-54-2311 FAX:0765-52-5162 E-mail:s-tosyokan@city.suzaka.nagano.jp 撮影日:2014年12月21日 撮影:岡本真
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    081ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 図書館に毎日足を運ぶ利用者に向けて、日替わりの情報提供をしたいと考えて いる読者の方は多いのではないだろうか。しかし、課題となるのが継続だろう。 この課題をうまく解決する、新聞を使った取り組みをみつけたので紹介したい。 安 あんじょう 城 立中央図書館では、エントランスの「新聞で見る昔の今日」というコー ナーで、10年前と40年前のその日の新聞記事を、新聞縮刷版を使って展示する とともに、その年に起こった主な出来事もまとめている。 展示に添えたパネル では「自分や家族の誕生日、記念日の出来事を調べてみませんか」と呼びかけ、図 書館が導入している新聞記事データベースの利用も促している。 データベース からのプリントアウトをPRに使ってもよさそうだ。持っている資料を最大限に 活用し、簡単に継続できる方法として、ぜひ参考にしてほしい。 File 338 安城市中央図書館(愛知県) 新聞で見る昔の今日 ■安城市立中央図書館 http://www.library.city.anjo.aichi.jp/ 愛知県安城市城南町2-10-3 TEL:0566-76-6111 FAX:0566-77-6066 E-mail:tosyo@city.anjo.aichi.jp 撮影日:2014年8月19日 撮影:岡本真
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    082 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 全集などの比較的高級な本が入っている本の箱(ケース)を、展示の際に活用し ている事例を紹介したい。写真は四日市市立図書館でみたものであるが、ぱっと 見ではそれが本のケースだということがわからないくらいうまくできていた。 まず、本のケースにカッターで切れ目を入れ、開いたものを折り返して組み直 し、テープなどで固定することにより、ブックスタンドにする。本の箱を解体し て、本来なら内側に折り返されている部分を外側に折り返して、本のストッパー にするだけだ。 本を立てかけるために、本の箱の背表紙の直角の部分をひし形にカットさせる ところがむずかしいかもしれない。もちろん、本の箱のタイプによってはうまく いかないケースもある。ただ、これも捨てればゴミ。多少失敗しても構わないの で、身近に余った本の箱があれば一度解体してみて、使えそうなものは組み直し てみてはいかがだろうか。 File 339 四日市市立図書館(三重県) 本箱を展示器具に活用 ■四日市市立図書館 http://www.yokkaichi-lib.jp/ 三重県四日市市久保田1-2-42 TEL:059-352-5108 FAX:059-352-9897 E-mail: tosyokan@city.yokkaichi.mie.jp 撮影日:2015年12月23日 撮影:岡本真
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    083ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 File304(p.047)で紹介した行政資料コーナーのPRは、小規模な場合なら一覧 性も高く使いやすいというメリットがあるが、規模が大きくなった場合は、逆に 情報のボリュームがありすぎて、近寄りがたいコーナーになってしまうだろう。 萩市立萩図書館の行政資料コーナーは、見せ方の工夫によりわかりやすいコー ナーとなっていたので紹介したい。 同館の行政資料コーナーは、1連あたり6つの棚がまとまっているが、その一 面を使って、市議会から商工会まで、あらゆる行政に関する資料をファイルにし て面陳している。素晴らしかった点は、その書架に「行政資料一覧」という表をつ けて、行政の部、課ごとに刊行している資料のタイトルをまとめていることであ る。スペースの都合上、資料を重ねて置いているため、課ごとの仕切りにはオレ ンジ色の見出しをつけたり、小学校や中学校の要覧などは、他とは違った色の ファイルを使うことで目立たせるなどしている点も素晴らしい。 File 340 萩市立萩図書館(山口県) 行政資料の一覧リストを提供 ■萩市立萩図書館 https://hagilib.city.hagi.lg.jp/ 山口県萩市江向552-2 TEL:0838-25-6355 FAX:0838-25-5224 E-mail:hagi_library@city.hagi.lg.jp 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    084 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 香川県綾川町の綾川町立生涯学習センターで、とても興味深い展示方法をとら れていたので紹介したい。図書館ではメディア別に配架場所を分けるという大前 提があるので、これを見た時にはっとした。それは、映画化された小説とその DVDをセットで配架するという方法である。 写真では、DVDと本をセットで面陳しているタイトルを紹介しているが、多 くのタイトルはDVDと本を別々に棚差しで配架されている。 本コーナー「読んで観てコーナー」で展示されている資料は、図書館の蔵書検 索システムでも探せるように別置扱いしているので、利用者が探し出せないとい う心配もない。図書館にあるメディアは本だけではない。視野のひろい情報提供 をぜひ試してみてほしい。 File 341 綾川町立生涯学習センター(綾川町立図書館)(香川県) 書籍とDVDをセットで展示 ■綾川町立生涯学習センター http://www.town.ayagawa.kagawa.jp/docs/2012030900029/ 香川県綾川町滝宮318 TEL:087-876-6100 FAX:087-876-6101 撮影日:2015年11月28日 撮影:岡本真
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    085ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 資料として所蔵していても、開架には出せない貴重な資料の場合、問い合わせ の多いものについては、書庫にある旨を掲示物で案内するといった方法を採用し ている館は多い。西条市立西条図書館では、そのような資料について、利用案内 を掲示するだけではない工夫がみられたので紹介したい。 西条市は、名水百選にも選ばれている綺麗な湧き水で有名な町である。水に関 する資料を集めた郷土資料のコーナーでみかけたのは、絶版などで入手が困難な 資料について、表紙のカラーコピーを厚紙に貼りつけ、そこに所蔵先が貴重書庫 であることや本の説明を追加して展示するという工夫である。目の前にない資料 を手に取れるように展示することで、ただ掲示物で案内するよりもPRに成功し ているといえるだろう。 File 342 西条市立西条図書館(愛媛県) 貴重資料をコピーでみせる ■西条市立西条図書館 http://lib.city.saijo.ehime.jp/ 愛媛県西条市大町1590 TEL:0897-56-2668 FAX:0897-56-3188 撮影日:2015年11月26日 撮影:岡本真
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    086 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 市民参加型の図書館運営といえば伊万里市民図書館が有名だが、ここで紹介す る春日市民図書館も、市民参加型の図書館として素晴らしい取り組みを行ってい るので紹介したい。 春日市民図書館では、市の広報誌を中心に集めた「かすが情報コーナー」のすぐ 背中合わせの場所に、市内の各地区の自治会が発行する自治会だよりを集めた 「地域情報コーナー」をつくっている。草の根の活動を紹介する「自治会だより」の 収集だけでも素晴らしいことだが、さらにその向かいには「まちづくりコーナー」 として、まちづくり支援センターの紹介を中心に、市民のまちづくりに関する参 加を後押しする本を集めたコーナーまである。 地域内の情報を利用者に発信することで、図書館も含めたまちづくりに市民の 参加を促すという姿勢が伝わってくるコーナーづくりだ。 File 343 春日市民図書館(福岡県) 市民参加を促すコーナーづくり ■春日市民図書館 http://www.library.city.kasuga.fukuoka.jp/hp/ 福岡県春日市大谷6-24 TEL:092-584-4646 FAX:092-584-3900 撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
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    087ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 資 料 展 示 の 工 夫 使い終わったら捨てられる運命にあるレシート芯。その有効活用として目新し い事例を静岡市立御幸町図書館でみつけたので紹介したい。 同館ではかなりシンプルな方法ではあるが、レシート芯2本を並べて接着した ものを、フライヤーを押さえるペーパーウェイトとして活用しているのだ。薄い フライヤーをスタンドに立てかける際、これをフライヤーの足の部分に置くこと により、下の方から曲がったり、たわんだ状態になってしまうのを防ぐことがで きる。シンプルでよい工夫なので、ぜひ試してみてほしい。 File 344 静岡市立御幸町図書館(静岡県) レシート芯をフライヤー留めに ■静岡市立御幸町図書館 http://www.toshokan.city.shizuoka.jp/ 静岡県静岡市葵区御幸町3-21 TEL:054-251-1868  FAX:054-251-9217 撮影日:2015年12月11日 撮影:岡本真
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    088 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 資 料 展 示 の 工 夫 学術的な内容の専門的な本は小難しい、とっつきにくいなどのイメージから、 小説などよりも読むのにハードルを感じるものだ。そんな一般的なイメージを崩 し、気軽に学術的な専門書を手にしてもらうおうと、神奈川県立川崎図書館が 行っている工夫紹介したい。 同館では科学書を紹介するのに、本のなかから印象的なフレーズを引用し、カ ラーの書影と書誌情報をまとめたポスターをつくって、科学書が置いてある付近 に限らず、館内のいたるところに貼り出している。思わず興味をそそられるフ レーズばかりである。 ノーベル賞の受賞時に、社会的な注目と絡めて科学書をまとめて展示する方法 もあるが、その時だけ注目される展示になりがちだ。普段からできる取り組みと して、科学書以外の本でもぜひ真似をしてほしい。 File 345 神奈川県立川崎図書館(神奈川県) 科学書を読ませる工夫 ■神奈川県立川崎図書館 https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/ 神奈川県川崎市川崎区富士見2-1-4 TEL:044-233-4537(代表) FAX:044-210-1146 撮影日:2015年10月6日 撮影:岡本真
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    089ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 岡山県の山間部に位置する勝 しょうおうちょう 央町にある勝央図書館は、規模は小さいものの勝 央美術文学館との複合施設である。そこで印象に残る黒板の活用事例をみつけた ので紹介したい。 飲食店やカフェなどで、メニュー表としてセンスよくカジュアルに使われてい る黒板だが、最近では大学図書館でも、凝ったイラストや印象的なキャッチコ ピーとともに利用されているのをよくみかける。黒板を使ったPRはブームにな りつつあるようだが、今回取り上げる勝央図書館での活用はそのなかでも特にシ ンプルで、わかりやすさを重視した事例だ。 各項目の先頭には桜の花びらのイラストがあしらわれ、注目してもらいたいイ ベント名は赤い文字で書かれている。イラストを施した凝ったPRもよいが、一 方で必要最低限の情報をわかりやすく伝えることの重要性を訴えたい。 File 346 勝央図書館(岡山県勝央町) 黒板を活用したイベント告知 ■勝央図書館 http://www.town.shoo.lg.jp/library/shoo-top.htm 岡山県勝央町勝間田207-4 TEL:0868-38-0250 FAX:0868-38-0260 E-mail:shoolib@town.shoo.lg.jp 撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
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    090 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 美 み ま さ か し 作市は、2005年に美作町、勝田町、大原町、作 さくとうちょう 東町、英 あいだちょう 田町、東 ひがしあわくらそん 粟倉村の5 町1村が合併してできた市であり、図書館は中央館以外に、大原図書館、作東図 書館、英 あ い だ 田図書館、東粟倉図書館の4つの地域図書館がある。 各図書館では、毎月新しく受け入れた新刊図書をカラーの書影つきでジャンル ごとにまとめ、ポスターにして掲示している。書影の下にはタイトル、著者名が 続き、どの図書館で受け入れたのか所蔵館名も明記しており、他の図書館で受け 入れたタイトルを借りたい場合は、申し込めば取り寄せてもらうことができる。 予約申し込みの案内についてもポスターと合わせて目につくところにわかりやす く掲示しており、かゆいところに手が届いた案内といえる。 複数の図書館で資料を分担して受け入れながら、連携して活用を促進したいと いう思いが伝わってくる取り組みである。 File 347 美作市立中央図書館(岡山県) 市内の新刊案内をまとめてポスターに ■美作市立中央図書館 https://library.city.mimasaka.lg.jp/ 岡山県美作市栄町35 TEL:0868-72-1135 FAX:0868-72-1145 E-mail:libmimasaka@city.mimasaka.lg.jp 撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真
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    091ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 美 みまさか 作市立中央図書館では、前年度に予約が多かった本を特集する「予約ベスト 10」コーナーが設けられていた。新刊当時は話題で予約が多く入っており、借り るチャンスがめぐってこなかったタイトル集である。 展示では、平置きする本の台に、順位、書影、書名、著者名と内容を記した紙 を敷いておき、その本が貸し出されても情報を残すことで、展示として機能する ようにひと工夫されている。ベスト10では、市内にある他の図書館が所蔵する 本がランクインすることもあるようで、その場合は、「貸出中※予約できます」と する代わりに、「他館所蔵本※予約できます」とアナウンスしている。 展示コーナーで取り上げるテーマは、季節やイベント、社会的トピックに合わ せたものが多いが、たとえば「10年前の貸出ベスト10」というような、図書館が 独自に持っているデータを元にした切り口も、案外楽しめるものになるのではな いだろうか。 File 348 美作市立中央図書館(岡山県) 前年度の予約ベスト10を展示 撮影日:2015年6月23日 撮影:岡本真 ■美作市立中央図書館 https://library.city.mimasaka.lg.jp/ 岡山県美作市栄町35 TEL:0868-72-1135 FAX:0868-72-1145 E-mail:libmimasaka@city.mimasaka.lg.jp
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    092 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 レシート芯の活用事例については、File014(創刊号)やFile193(第4号)など でいままでにも幾つか紹介してきたが、新しい活用事例をみつけたので紹介した い。坂 さかいで 出市立大橋記念図書館には、初代市長で名誉市民である島田恭平氏にちな んでつくられた「島田恭平翁文庫」がある。その「島田文庫」は小学生、中学生の学 習に役立つ資料を集めているが、各ジャンルを説明する掲示物のスタンドにレ シート芯が活用されている。 レシート芯2本を使えば、軽いものなら十分立たせることができる。挟みたい ものの厚さに合わせて切り込みを入れ、そこに掲示物となるダンボールを挟み込 むだけといういたってシンプルなものである。挟まれているダンボールも、ブッ クカバーフィルムでコーティングされている。掲示されている内容も整理されて おり、クオリティーも高い。 File 349 坂出市立大橋記念図書館(香川県) レシート芯を活用した案内表示 ■坂出市立大橋記念図書館 http://www.city.sakaide.lg.jp/site/toshokan-top/ 香川県坂出市寿町1-3-10 TEL:0877-45-6677 FAX:0877-45-6678 E-mail:library@city.sakaide.lg.jp 撮影日:2015年6月4日 撮影:岡本真
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    093ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 長岡市立寺 てらどまり 泊地域図書館では、地元に特にゆかりのある作家の作品が置かれ る見出し板に切り絵によるデザインを施し、併せて作家の紹介文も記している。 また、同じ市内にある長岡市立西地域図書館では、作家名とあわせてその作家 のジャンルを表示している。たとえば「田辺聖子」なら「純文学」「恋愛」という具 合だ。長野県の池田町図書館では、作家名によみがなをふっていた。読み方が難 しい作家名は意外と多いので、あると嬉しい。 この工夫のよいところは、書架の前に立った時に、本の背表紙を邪魔すること なく付加情報が追加できる点にある。ポップや張り紙をつけると 、あれこれと 情報をたくさん追加したくなりうるさい書架になってしまいがちだが、このやり 方なら、スペースが限られることもあり、ワンコメントでわかりやすい。ちょっ とした工夫だが、ぜひ試してみてもらいたい。 File 350 長岡市立寺泊地域図書館、西地域図書館(新潟県) 作家名の見出し板にひと工夫 長岡市立寺泊地域図書館  撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真 長岡市立西地域図書館  撮影日:2015年1月18日 撮影:岡本真 ■長岡市立西地域図書館 http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/ 新潟県長岡市緑町3-55-41 TEL:0258-27-4900 FAX:0258-27-4901 E-mail:lib.nisi@nscs-net.ne.jp ■長岡市立寺泊地域図書館 http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/ 新潟県長岡市寺泊磯町7411-14寺泊文化センター2階 TEL:0258-75-5159 FAX:0258-75-3109
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    094 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 比較的狭い市域に人口約11万人を抱える浦添市に建つ浦 うらそえ 添市立図書館には、 「としょまる」と名づけられた移動図書館車があり、市内33 ヶ所のステーション を月2回巡回している。 移動図書館車の存在はそのステーションの近隣に住む人のほかには知られるこ とが少ないが、浦添市立図書館ではそのサービスを知ってもらおうと、館内で 「移動図書館としょまる」コーナーを常設展示し、多くの人にPRしている。 コーナーでは、初代としょまるの写真や、稼働中の「2代目としょまる」が運用 された経緯、ステーションマップ、巡回コースごとのステーション所在地やどう いった利用者が来るかといった簡単な説明パネルが掲示されている。 この展示は、「今日返却された本」を一時的に置いておくスペースの上で展開さ れ、利用者にとっては必ずチェックする場所だ。このような展示をすぐに真似し ようとすると大変かもしれないが、参考にできるところから館内でのPRもぜひ 積極的に行ってみてはどうだろうか。 File 351 浦添市立図書館(沖縄県) 館内で移動図書館車をPRするコーナー 撮影日:2015年2月10日 撮影:岡本真 ■浦添市立図書館 http://library.city.urasoe.lg.jp/ 沖縄県浦添市安波茶2-2-1 TEL:098-876-4946 FAX:098-875-1772 E-mail:tosyokan@city.urasoe.lg.jp
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    095ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 岸和田市立図書館は建物こそ老朽化が進んでいるものの、図書館友の会の活動 が盛んに行われている。その様子は、館内の1階と2階を行き来する際に必ず通 る目立つ場所に設置されている「友の会掲示板」をみれば一目瞭然である。 岸和田市立図書館は、1階に児童向け資料を中心とした児童コーナーを設置し、 大部分の大人が利用する一般書や新聞雑誌は2階にあるため、「友の会」の活動を している利用者も含め、ほぼすべての利用者が2階への階段を通って図書館を利 用しているのだ。つまり、館内の一等地に「友の会掲示板」の場所が確保されてい るのだ。たとえば「友の会の○○さんが新聞に載りました!」といった周辺の情報 も貼り出されており、友の会メンバーのモチベーションアップにもつながってい ることが伝わってくる取り組みなのである。 File 352 岸和田市立図書館(大阪府) 「友の会掲示板」を目立つところに設置 ■岸和田市立図書館 https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/toshokan/ 大阪府岸和田市岸城町1-18 TEL:072-422-2142 撮影日:2015年2月22日 撮影:岡本真
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    096 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 2015年7月に新館を移転オープンさせ、それに伴い閉館した日 ひ じ 出町立萬 ば ん り 里図書 館でみつけた事例を紹介したい。もはやほとんどの図書館で使われなくなった目 録カードだが、そのカードを収納するためのカードケースは、長く使用するため にしっかりしたつくりになっているものが多く、有効利用できる場合もあるのだ。 目録カードケースは、引き出しの中に目録カードを収納するための金具が入っ ており、それを固定するための加工がしてあるので、そのままでは収納に向かな い。だが、引き出してテーブルのように使えるしかけがついているものもあり、 萬里図書館で活用していた目録カードケースもそのような仕様のものであった。 高さもちょうど人の目線に近い高さで、テーブルになる部分にはA4サイズの チラシを3 ~ 4種類は置くことができる幅がある。本体上部も平らなので、そこ にもチラシを置いてフルに活用すれば10種類ほどは余裕で置けそうだ。 閉架書庫の奥に眠っている目録カードケースがあれば、ぜひ掘り起こしていた だきたい。引き出し部分をうまく使えば、本の展示棚としても使えるかもしれな い。アンティークな雰囲気が人気を呼ぶだろう。 File 353 日出町立萬里図書館(大分県) 目録カードケースをチラシ置き場に ■日出町立図書館 *2016年1月現在のデータ http://www.town.hiji.oita.jp/page/hiji-library.html 大分県日出町3244-1 BiVi日出2階 TEL:0977-72-3232 FAX:0977-72-6999 撮影日:2015年3月5日 撮影:岡本真
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    097ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 これまでさまざまな事例を紹介してきたレシート芯の有効活用方法だが、白河 市立図書館を見学した際にみつけたレシート芯を使ったオブジェを紹介したい。 写真は、レシート芯を組み合わせて小さい家を形どったオブジェで、全く実用 性はないのだが、図書館まつりなどのイベントの際には人気になりそうだ。 もしも、捨てるだけの大量のレシート芯があれば、それを使ってオブジェをつ くるワークショップを開催してもよいだろう。もちろん、そこにはクラフトに関 する資料も一緒に展示するなどして資料の有効活用を促すといった具合だ。 オブジェをつくるだけという企画でも、ブックスタンドをつくるワークショッ プを開催して持ち帰ってもらってもいい。捨てるだけのゴミをちょっとした工夫 で生き返らせることができるのだ。 File 354 白河市立図書館(福島県) レシート芯のオブジェはいかが? ■白河市立図書館 http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=266&ik=1 福島県白河市道場小路96-5 TEL:0248-23-3250 E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp 撮影日:2015年2月28日 撮影:岡本真
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    098 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 西条市立西条図書館では、文芸書棚に郷土ゆかりの作家の本も混配しているが、 その際、わかりやすく識別するために見出し板のデザインを変えている。さらに 代表作品などを説明する文章もあわせて表示し、さらに下には「郷土文学」という ジャンルも明記しているところがポイントだ。 郷土コーナーを別置して紹介するスペースがない場合に有効であり、利用者か らみても文芸書というくくりのなかで、郷土にまつわる作家に触れ合えるという メリットもある。File350(p.093)で紹介した見出し板の工夫とあわせて参考に してほしい。 File 355 西条市立西条図書館(愛媛県) 郷土にまつわる作家名の見出し板を工夫 ■西条市立西条図書館 http://lib.city.saijo.ehime.jp/ 愛媛県西条市大町1590 TEL:0897-56-2668 FAX:0897-56-3188 撮影日:2015年11月26日 撮影:岡本真
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    099ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 図書館はさまざまな本との出会いを提供する場所だ。図書館だよりなどを使っ て本を紹介する際、どうやってその本のよさを伝えるだろうか? どういった方 法ならその本を気に止めてもらえるだろうか? こうした疑問をシンプルに解決 するヒントになる本の紹介方法を、佐 さ い き 伯市立佐伯図書館の児童書コーナーでみつ けたので紹介したい。 「科学 あそび」「算数 数学」などのテーマごとに書影が表示されたA4サイズ のポスター。1枚のポスターで取り上げるテーマは1つか2つ、本は10冊から15 冊くらいだ。書影の下にタイトルや著者名も掲示したくなるところだが、ここで はあえて表示していないところがポイントだ。利用者の興味をダイレクトに引き つつ、デザイン性や作業効率も重視したいのであれば、書影をカラーで表示する くらいシンプルなほうが案外いいのだ。意外と見落としがちな書影の活用方法だ が、ぜひ試してみてほしい。 File 356 佐伯市立佐伯図書館(大分県) おすすめ本をカラーの書影だけで紹介 ■佐伯市立佐伯図書館 https://lib.city.saiki.oita.jp/ 大分県佐伯市中の島2-20-33 TEL:0972-24-1010 撮影日:2015年3月6日 撮影:岡本真
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    100 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 塩尻市立図書館は、本の背表紙をカラーコピーしたポスターで新着図書をPR するというアイデア発祥の地である。このPRポスターは図書館内ではなく、複 合施設内の人通りの多い通路に掲示しているのがポイントで、この取り組みは開 館当初、複合施設には来るものの、図書館には足を運ばない人に向けたPRのた めに始めた取り組みだそうだ。 最近ではこの方法を応用して、テーマ展示のPRを複合施設内の色々なところ へ展開するという工夫も行っているので紹介したい。写真の「頑張れ受験生!」と いう展示では、受験生への応援メッセージを残せる掲示板があり、合格体験記を 投稿してもらうこともできるのだが、さりげなく「図書館にある受験生向け本の 一例」として、関連する本の背表紙をカラーコピーしたポスターを掲示している。 あわせてその関連書が館内のどこにあるかも案内しており、行ってみようかなと いう気にさせる。複合施設内の通路には、自由に使えるテーブルと椅子が幾つも 置いてあり、学生が勉強したり、集まっているところが自然に発生するそうなの だが、そういった場所をめがけてこういったコーナーをつくっているそうだ。 File 357 塩尻市立図書館/えんぱーく(長野県) 背表紙をコピーしたポスターでテーマ展示 ■塩尻市立図書館/えんぱーく https://www.library-shiojiri.jp/ 長野県塩尻市大門一番町12-2 塩尻市市民交流センター内 TEL:0263-53-3365 FAX:0263-53-3369 撮影日:2015年3月23日 撮影:岡本真
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    101ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 原 はらむら 村は人口7,500人ほどの村であるが、蔵書規模7万冊ほどの図書館が整備さ れている。小さい図書館ではあるが、村を挙げて推進する地元米の消費拡大のた めに、米粉を特集するコーナーをつくり、ホームベーカリーまで貸し出すなど、 積極的に地元密着型のサービスを展開している。 そんな原村図書館でみかけたのは、地元の小学生の手によるマナーアップを呼 びかけるポスターだ。 マナーアップの呼びかけは「~しないで!」「〇〇禁止」といった否定的な表現 をよくみかけるが、こちらは優しく呼びかける内容となっているのもよい。 このようなポスターをつくってもらうことで、子どもたち自身のマナーアップ 教育をすすめるとともに、拙い字でPRされれば、誰もが素直に従う気にならざ るをえないだろう。 File 358 原村図書館(長野県) 利用マナーアップをよびかける啓発的ポスター ■原村図書館 http://www.vill.hara.nagano.jp/www/section/detail.jsp?id=73 長野県原村12079-1 TEL:0266-70-1500 FAX:0266-79-7000 撮影日:2015年3月31日 撮影:岡本真
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    102 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 図書館における資料費削減の波が押し寄せているなか、企業の支援を受けて資 料を購入しようという取り組みが「雑誌スポンサー制度」という形で広まっている。 しかし、企業に雑誌購入費用を負担してもらう一方で、そのメリットを企業側に うまくPRできているだろうか? 米子市立図書館では、空いた雑誌架に雑誌スポンサー制度の協力企業の一覧 を示し、雑誌本体での広告以外でも企業名を掲示している。これは雑誌スポン サー制度を多くの人に知ってもらうと同時に、スポンサー企業のPRをすること で、広告主へのメリットも計られた工夫である。人気雑誌のスポンサーになると、 多くの場合、館内に持ち出されて広告効果が薄れるというジレンマの解決にもな るので、すでに雑誌スポンサー制度が人気の図書館でも、ぜひ真似してほしい。 弊社がコンサルティングを担当した富山市立図書館でも雑誌スポンサー制度を 導入しているが、こちらは館外の通路に面した壁にスポンサー企業の一覧を張り 出している。書架スペースとの兼ね合いでちょうどよい場所を選ぶことが必要で ある。 File 359 米子市立図書館(鳥取県)、富山市立図書館(富山県) 広告主のメリットを考えた雑誌スポンサー制度のPR 米子市立図書館 撮影日:2015年4月14日 撮影:岡本真 富山市立図書館 撮影日:2015年8月22日 撮影:岡本真 ■米子市立図書館 http://www.yonago-toshokan.jp/ 鳥取県米子市中町8 ハピネライフケア文化広場 TEL:0859-22-2612 FAX:0859-22-2637 E-mail:jimu5000@yonago-toshokan.jp ■富山市立図書館 https://www.library.toyama.toyama.jp/ 富山県富山市西町5-1 TEL:076-461-3200(代表) FAX:076-461-3310
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    103ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 第17回図書館総合展で「図書館キャラクターグランプリ」が開催され、好評と なったことは記憶に新しいだろう。キャラクターはつくっただけでは浸透しない。 では、キャラクターを根づかせるにはどうしたらよいだろうか? 豊中市立岡町図書館では、市のキャラクター「マチカネくん」をPRするために、 折り紙を考案した。「マチカネくん」は、豊中市で40万年前に生息していたとさ れる「マチカネワニ」の化石が出土したことにちなんだ豊中市のキャラクターであ る。郷土の話題とも絡めてPRできれば、ストーリーとしては完璧である。 また、File287(第9号)で紹介した福岡県飯塚市立図書館のキャラクター「ぼ たぼん」は、折り紙はもちろんのこと、絵かき歌までつくられている。こちらも ぜひ参考にしてほしい。 File 360 豊中市立岡町図書館(大阪府) 図書館キャラクターを根づかせる工夫 豊中市立岡町図書館 撮影日:2015年4月18日 撮影:岡本真 ■豊中市立岡町図書館 http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/ 大阪府豊中市岡町北3-4-2 TEL:06-6843-4553
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    104 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 三 さ ん だ 田市立図書館では、面陳の本が借りられた場合のことを考えて、裏に「貸出 中」ということが分かる様々なデザインのサインが用いられていた。デザイン自 体の面白さもさておき、単に「貸出中」と表示するのではなく、貸出中の本は順番 待ち、すなわち「予約ができる」ということもPRしている点が素晴らしい。 サインを統一することで視認性を向上させることも重要かもしれないが、一つ 一つに個性をだし、面白いと思わせることも重要である。 File 361 三田市立図書館(兵庫県) デザインの持つ“伝えるチカラ” ■三田市立図書館 http://sanda-city-lib.jp/ 兵庫県三田市南が丘2-11-57 TEL:079-562-7300 FAX:079-562-7301 撮影日:2015年4月27日 撮影:岡本真
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    105ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 千葉市立中央図書館でみた「中央図書館・子育て応援マップ」は、図書館が本気 で子育て支援していることがよく伝わってくる事例だったので紹介したい。この マップは、中央図書館1階の児童フロアの絵本があるエリアの一角に設けられた 「子育て応援コーナー」に貼られているものだ。館内のどこに子育てに関連する資 料があるのかをわかりやすくまとめたものだが、資料だけではなく館内のどこに 授乳室があるかといったことまで紹介している工夫もよい。また、関連資料とし て「おでかけガイド」や「親子関係」といった、ひと味変わったテーマも紹介されて おり、子育てに関するあらゆることをカバーしていることがよく伝わってくるも のとなっている。 File 362 千葉市立中央図書館(千葉県) 館内にある子育て資料をマップで展示 ■千葉市立中央図書館 http://www.library.city.chiba.jp/ 千葉県千葉市中央区弁天3-7-7 TEL:043-287-3980 FAX:043-287-4074 E-mail:kanri.LIB@city.chiba.lg.jp 撮影日:2015年5月20日 撮影:岡本真
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    106 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 図書館で貸出している本は、多くの利用者の手にわたることもあり、どうして も壊れやすいことから、大切に扱ってもらいたいという思いがある。この思いを 利用者に伝えるために、乱暴な取り扱いによって傷んだ本を展示することで、利 用者の心情に訴えるという方法が多かったが、果たしてそれで十分だろうか? 長崎市立図書館では、マナーアップを呼びかけるために、ひと味違った方法 でPRしていたので紹介したい。「マナーアップキャンペーン」というネーミング で設けられたこの展示コーナーでは、破損された本を展示しつつ、それを修理す るボランティアの活動を紹介することで、本を大切にしてほしいということを訴 えているのだ。あわせて「“本のお医者さん”からの7つのお願い」というポスター をつくり、どんなことに気をつけるといいか、どうやったら本を汚さずに済むか、 汚してしまった場合の修理は図書館へ任せてほしいといったことを訴えている。 ふだん利用者が目にしない部分をPRに活用することで、図書館に対する理解を 深めることができる取り組みである。 File 363 長崎市立図書館(長崎県) 本を大切にしてもらうマナーアップの呼びかけ方法 ■長崎市立図書館 http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/ 長崎県長崎市興善町1-1 TEL:095-829-4946 FAX:095-829-4948 E-mail:info@lib.city.nagasaki.nagasaki.jp 撮影日:2015年7月10日 撮影:岡本真
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    107ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 公共図書館では「閉架」として利用者が入れない書庫が多いが、大学図書館では 利用者層が限られていることもあって、入ることができる公開書庫も多い。 共立女子大学・共立女子短期大学図書館の公開書庫では、資料活用のために、 書架にPOPをつけるという工夫をしていたので紹介したい。 大学図書館では、研究や勉強のための資料がほとんどであることから、利用者 の行動パターンとしては、目的の本をピンポイントに検索して探しに行くことが 多い。つまり、公共図書館のように書架を眺めて本を探す機会がほとんどないた め、目的の本を探すなかでも学生に気に留めてもらえるようにPOPをつけてい るのだ。主に映画の原作本が多いとのことだが、これは学生に選書をしてもらう 取り組みのなかで選ばれたそうだ。 File 364 共立女子大学・共立女子短期大学図書館(東京都) 公開書庫の本棚にPOP ■共立女子大学・共立女子短期大学図書館 http://www.kyoritsu-wu.ac.jp/lib/ 東京都千代田区一ツ橋2-2-1 TEL:03-3237-2630 撮影日:2015年9月3日 撮影:岡本真
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    108 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 早 はやしま 島町立図書館では、本の帯を活用して新着資料をPRする掲示板をつくって いる。本の帯には書名や著者名が印刷されていない場合が多いので、書名と著者 名を手書きで補足しているようだ。CDの帯には、アルバム名と歌手名が印刷さ れている場合がほとんどなので、そのまま貼りつけるだけで新着CDのタイトル 一覧が一目瞭然なのである。帯の下にはCDの請求記号と資料番号も印刷されて おり、当然、請求記号の順に並べられている。 新着資料の紹介が本に偏りがちななか、AV(視聴覚)資料の新着も紹介してい る事例は珍しい。これは意外と見落としがちな点ではあるが、図書館が多様な資 料を所蔵していることをPRするためにもよい工夫といえる。 File 365 早島町立図書館(岡山県) 新着資料のお知らせにAV(視聴覚)資料も ■早島町立図書館 http://www.town.hayashima.lg.jp/library/l 岡山県早島町前潟370-1 ゆるびの舎内 TEL:086-482-1513 FAX:086-482-4802 E-mail:tosyo@town.hayashima.lg.jp 撮影日:2014年12月7日 撮影:岡本真
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    109ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 津山市立図書館の地域資料の展示コーナーでは、郷土出身の作家や人物のプロ フィールをパネルにし、資料とあわせて展示していたので紹介したい。ここでみ られるひと工夫としては、プロフィールだけでなく、図書館に所蔵されている代 表的なタイトルが書かれていること、出身地や地域との関わりが明らかにされて いることである。津山市に限らず、近隣の鏡 か が み の し 野市や美 み ま さ か し 作市ゆかりの作家について も紹介している点も素晴らしい。 郷土に関わる文学作品は、作品を並べるだけで満足してしまうことが多いが、 パネルにどのような情報を盛り込むかという工夫一つで、郷土への理解をより深 め、図書館資料を活用してもらうきっかけをつくることができるのだ。 File 366 津山市立図書館(岡山県) 出身作家の紹介にひと手間 ■津山市立図書館 https://tsuyamalib.tvt.ne.jp/ 岡山県津山市新魚町 アルネ・津山4階 TEL:0868-24-2919 FAX:0868-24-3529 E-mail:toshokan@tvt.ne.jp 撮影日:2013年12月4日 撮影:岡本真
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    110 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 図書館での注意事項や守ってほしいことなどをアナウンスする際、どうしても 「~してはいけません」「○○禁止」といった表現を多用してしまう文化的貧困に 陥ってはいないだろうか? 里 さとしょう 庄町立図書館では、そういった注意事項を「禁止」 ということばを極力使わずに、誰もが自主的に、気持ちよく使えるような表現を 工夫している。 たとえば「勉強机貸出7原則」。これは、閲覧のための席で勉強をしてしまう学 生に向けた掲示だ。よくみると「飲食禁止」「パソコンは使用できません」という 残念なお知らせが最近追加されたようだが、基本的には「こうしましょう」という ルールやマナーを呼びかける表現を使っている。頭ごなしに否定する表現を使わ ずに利用案内も兼ねている点も素晴らしい。 File 367 里庄町立図書館(岡山県) 「禁止」からの巧みな脱却 ■里庄町立図書館 https://www.slnet.town.satosho.okayama.jp/ 岡山県里庄町里見2621 TEL:0865-64-6016 FAX:0865-64-6017 E-mail:slnet@slnet.town.satosho.okayama.jp 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    111ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 2015年夏に県立長野図書館が行った企画展「信州 地図で読む ふるさとの山」で 展示された「図書館から見える信州の山」と名づけられたパネルが、工夫にあふれ ており素晴らしかったので紹介したい。県内の公共図書館に呼びかけて作成した というこのパネルは、全体的にみると長野県をかたどっており、1枚1枚のパネ ルには、それぞれの図書館から見える山の風景写真と山の名前、説明とその山を 紹介した図書館の名称が記されている。 夏の山岳旅行は長野県の重要な観光資源になっていることもあり、ご当地の強 みを存分に発揮した展示といえるだろう。また、こういった取り組みを県立図書 館が県内の公共図書館に呼びかけて実現できるのも、県内ネットワークがうまく 機能している証といえるだろう。 File 368 県立長野図書館(長野県) 信州 地図で読む ふるさとの山 ■県立長野図書館 http://www.library.pref.nagano.jp/ 長野県長野市若里1-1-4 TEL:026-228-4500 FAX:026-228-4933 E-mail:ken-tosho@library.pref.nagano.jp 撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
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    112 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 上田市立上田図書館のエントランスに掲示されていた「大人の社会科見学市内 図書館バスツアー」というポスターが、とてもよかったので紹介したい。 上田市内には分館を含め全部で7つの図書館があるが、その図書館を巡り、よ いところをみつけようという見学会が自主的に開催されている。バスツアーの主 催は「としょかん実験室」というサークルで、上田市教育委員会も共催している。 今回紹介したポスターは、そのバスツアーに上田女子短期大学図書館サークル FLCが参加し、その成果をまとめたものとのことである。 大学のサークルの成果であれば大学に掲示されそうなところではあるが、実際 に見学した各図書館に掲示されており、外からの目線が地元に還元されていると ころが面白い。図書館で働く側にとっては、あたりまえすぎて気づかないような 点も、「よいところ」としてまとめられているのである。 File 369 上田市立上田図書館(長野県) 大人の社会科見学図書館ツアー ■上田市立上田図書館 http://www.city.ueda.nagano.jp/toshokan/tanoshimu/toshokan/ueda/ 長野県上田市材木町1-2-47 TEL:0268-22-0880 FAX:0268-28-1118 撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
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    113ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 塩尻市立図書館でみつけた、小さいけれどキラリと光るひと工夫は、館内の掲 示物を貼る際にマスキングテープを多用していることにある。通常、掲示物を貼 る際、使い捨てる前提であればセロハンテープを使うところだが、耐久性や見た 目があまりよくないところが気になる。塩尻市立図書館では、デザイン面でも機 能面にも優れたマスキングテープをうまく使って、利用者のアイキャッチとして も活用している。特に白を基調としたデザインの書架のなかで、掲示物をうまく みせる工夫としてマスキングテープはベストな素材であろう。ハサミがなくても 手で切れ、加工しやすく、キレイに剥がれるという実務面でも申し分ない。 File 370 塩尻市立図書館/えんぱーく(長野県) マステでおしゃれに ■塩尻市立図書館/えんぱーく https://www.library-shiojiri.jp/ 長野県塩尻市大門一番町12-2 塩尻市市民交流センター内 TEL:0263-53-3365 FAX:0263-53-3369 撮影日:2015年8月12日 撮影:岡本真
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    114 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 図書館におけるベストセラーの扱いについては、物議を醸して久しい問題の一 つではあるが、市立大町図書館では「書店におけるベストセラー」という掲示物を つくり、書店が発信する情報と絡めた情報提供を行っている。 新聞に掲載された本の売上げランキング記事を切り抜き、図書館で所蔵してい るタイトルにはマーカーでラインをつけ、請求記号を赤ペンで追加するだけとい うシンプルなものだ。出典として何月何日付の何新聞かという情報も補記してあ る。 情報の更新がなかなか難しい掲示板に、定期的にこのような情報を追加すると、 掲示板という存在に利用者の興味を引くことができる。手軽にできるので、試し てみてはどうだろうか。 File 371 市立大町図書館(長野県) 書店売れ筋も紹介 ■市立大町図書館 長野県大町市大字大町4710-6 TEL:0261-21-1616 撮影日:2015年4月1日 撮影:岡本真
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    115ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 市立須 す ざ か 坂図書館でみつけたちょっとした貼り紙が心に残っているので紹介した い。図書館の入り口にある階段の足元にあった写真のような貼り紙。花の名前の 説明があり、その下にはその花が載っている本のタイトルと請求記号が記されて おり「図書館には便利な本がたくさんあります。ご利用ください」と締めくくられ ている。ちょうど見学に行ったのは、2015年夏のことだったので、すでにそこ には「ツメクサ」はなく、貼り紙だけという状態ではあったが、この姿勢は素晴ら しいと思った。 図書館のカウンターで問い合わせを受けることだけが「レファレンス」ではない はずだ。身近な疑問を調べることができる「レファレンス」をPRするには、シン プルでわかりやすい方法といえる。 File 372 市立須坂図書館(長野県) これぞ、レファレンス! ■市立須坂図書館 http://www.city.suzaka.nagano.jp/enjoy/shisetsu/tosyokan/ 長野県須坂市大字須坂803-1 TEL:026-245-0784 FAX:026-245-4313 E-mail:s-tosyokan@city.suzaka.nagano.jp 撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
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    116 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 須 す ざ か し 坂市の広報誌である「広報すざか」は、毎月の特集や内容をピックアップした 「かわら版」がつくられている。市立須坂図書館のエントランスでは、この「広報 すざか かわら版」をポスターサイズに引き伸ばし、掲示している。 ここまで広 報誌を全面的にPRしている図書館はなかなかみられないが、本来、行政が発行 する広報誌をPRする拠点として、図書館は重宝される立場にあるはずだ。 また「広報すざか」には、「図書館だより」のコーナーがあるので、普段は図書館 を使わない住民にもPRでき、図書館への注目度も上がるだろう。 本誌としても、各図書館が市報でどのようなPRを行っているか、注目してい きたいところである。 File 373 市立須坂図書館(長野県) 広報誌の「かわら版」を掲示 ■市立須坂図書館 http://www.city.suzaka.nagano.jp/enjoy/shisetsu/tosyokan/ 長野県須坂市大字須坂803-1 TEL:026-245-0784 FAX:026-245-4313 E-mail:s-tosyokan@city.suzaka.nagano.jp 撮影日:2015年8月13日 撮影:岡本真
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    117ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 書影をコピーしてPRに活用している方法は、File347(p.090)やFile356(p.099) などでも紹介してきたが、日 ひ お き 置市立東 ひがしいちき 市来図書館で行っているいっぷう変わった 新着図書の紹介方法を紹介したい。 日置市立東市来図書館では入り口に掲示板があり、そこに「新しく入った本」の 書影を受け入れ日ごとに並べて掲示している。この事例で注目したいのは、受け 入れ日ごとに印刷するコピー紙の色を変えてわかりやすくしているところだ。色 紙は黄色、水色、ピンク、黄緑の4色で使い分けている。 書影のコピーで本を紹介する際、白い紙にモノクロコピーでは味気ないが、カ ラーコピーではコストが高い。その点をどちらもうまく解決した折衷案といえよ う。 File 374 日置市立東市来図書館(鹿児島県) 新着図書コピーを紙色で区別 ■日置市立東市来図書館 http://www.hioki-library.jp/ 鹿児島県日置市東市来町長里185 TEL:099-274-9610 E-mail:h-ichiki@hioki-library.jp 撮影日:2014年12月16日 撮影:岡本真
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    118 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 草津町立温泉図書館は、2015年11月3日に草津温泉バスターミナルの3階に 移転リニューアルし、以前の図書館よりも広い書架を確保している。ここで紹介 したいのは、同館の「群馬文学全集」に施されていた工夫である。その工夫とは、 全集に収録されている地元が生んだ有名な作家名や問い合わせの多い作家名のラ ベルをつくり、その背表紙に貼りつけるというものである。全集の背表紙はデザ インが統一されていることがほとんどなので、ちょっとしたラベルがあるだけで も目を引き、手に取りやすくなるのだ。 もちろん、背表紙もその本の世界観を現す装丁の一部であり、それを壊すこと になりかねないほどやりすぎないことが重要なポイントとなる。また、File222 (第9号)を参考にし、全巻の目次をまとめた印刷物を添えておけば、一覧性を高 めつつ、目的の作品を探しやすくする助けになることは間違いない。 File 375 草津町立温泉図書館(群馬県) 文学全集に収録作家を明示 ■草津町立温泉図書館 http://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1447294370434/ 群馬県吾妻郡草津町草津28 草津温泉バスターミナル駅3階 TEL:0279-88-7190 撮影日:2016年1月7日 撮影:岡本真
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    119ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 2015年7月に新館オープンした日出町立図書館。ここでみつけたひと工夫を 紹介したい。日出町では、2014年11月27日に亘 わたりちょう 理町と友好都市を締結している。 この縁は東日本大震災をきっかけに、町花がサザンカであるという共通点からス タートしているとのことだ。 日出町立図書館の一角には、友好都市である亘理町の町史や民話に関する資料 を集めて、友好都市であることをPRするコーナーが設けられている。素晴らし い点は友好都市に関する資料を集めただけでなく、亘理町がどのような町なのか をシンプルに紹介している点である。A4サイズほどの掲示物で、亘理町の特産 品であるいちごをあしらい、亘理町と日出町を比較しながら面積や人口といった まちの概要がまとめられている。 平時から、友好な関係にある都市ついて住民同士が知っておくことは、防災上 の観点からみても重要であろう。 File 376 日出町立図書館(大分県) 友好都市のプロフィールをひと言紹介 ■日出町立図書館 *2016年1月現在のデータ http://www.town.hiji.oita.jp/page/hiji-library.html 大分県日出町3244-1 BiVi日出2F TEL:0977-72-3232 FAX:0977-72-6999 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    120 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 File190(第4号)で紹介した新聞書評を活用した展示は、書評に掲載された本 を記事と一緒に展示するというものだったが、展示の度に書評をコピーして切り 抜く手間が意外とかかる。もっと手間をかけずに新聞書評を活用したい場合は、 どのような取り組みがあるだろうか? 滋賀県日野町立図書館での活用事例を紹 介したい。 日野町立図書館では、「新聞の書評に載った本」というコーナーを設け、地元の 京都新聞などの書評に取り上げられた本を紹介しているが、その際、書評欄を切 り抜くことなく、新聞をそのままクリップでとめて掲示している。書評に掲載さ れているタイトルのうち、図書館で所蔵しているものについては緑色のマーカー で印をつけ、請求記号を手描きで追記しているところがポイントだ。掲示には大 きいダブルクリップを使用しているので、めくれば過去の記事も見ることができ るようになっており、その下には掲載された本も一緒に展示している。 新聞書評と合わせた本の展示はこれ以外にもさまざまなパターンがあるが、実 際の状況に応じて、よいとこ取りをして挑戦してみてほしい。 File 377 日野町立図書館(滋賀県) 書評が掲載された図書の請求記号を案内 ■日野町立図書館 http://www.library.town.shiga-hino.lg.jp/ 滋賀県日野町松尾1655 TEL:0748-53-1644 FAX:0748-53-3068 撮影日:2015年12月11日 撮影:岡本真
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    121ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 どこの図書館でも発行しているであろう「図書館報」や「図書館だより」は、利用 者にとって図書館の動向を知る重要な情報源だ。File303(p.046)、File320(p.063) File373(p.116)では、自治体が発行する広報誌を図書館内でどのようにPRして いるかを取り上げた。では、自館で発信する情報については、館内でどのように PRしているだろうか? 多くの図書館がカウンター近くの掲示板などに貼りつけ てPRをしているが、それで十分だろうか? 茨城県の筑 ちくせい 西市立中央図書館では、全ての学習席にハードタイプのクリアケー スに入れた図書館報を置いている。学習席には図書館のヘビーユーザーはもちろ んのこと、図書館資料を利用しない学生も集まることから、PRするには絶好の 場所といえる。情報提供の方法として、手に取りやすいケースに入れている工夫 も見逃せない。 File 378 筑西市立中央図書館(山口県) 学習席に図書館報 ■筑西市立中央図書館 http://library-city-chikusei.jp/ 茨城県筑西市下岡崎1-11-1 TEL:0296-24-3530 FAX:0296-20-1008 撮影日:2015年11月5日 撮影:岡本真
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    122 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 イベントを告知する際、利用者とその告知をどのようなストーリーで結びつけ るかを工夫することで共感や感動を与え、イベントに興味を持ってもらうことが できる。筑西市立中央図書館でみかけたイベントの告知方法が秀逸だったので紹 介したい。 学習席に「ご自由にお取りください」と書かれた手紙のようなものが置いてあっ た。開いてみると、なんとイベントの告知チラシだった。偶然かもしれないが、 そのイベントの内容が「手紙の書き方講座」だったので、とても印象に残っている。 印象に残っているだけでなく、チラシは複雑に折りたたんであったので元の場所 に戻せなくなり、持ち帰らざるをえない状況となった。 利用者が気にとめ、印象に残る工夫は、このように利用者の目線や動きを想像 してこそ成り立つということをぜひ覚えておいてほしい。 File 379 筑西市立中央図書館(茨城県) イベント案内を手紙で ■筑西市立中央図書館 http://library-city-chikusei.jp/ 茨城県筑西市下岡崎1-11-1 TEL:0296-24-3530 FAX:0296-20-1008 撮影日:2015年11月5日 撮影:岡本真
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    123ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 電子書籍を貸し出す、「電子図書館」を導入する図書館が徐々に増えてきている。 データベースのサービスなどの新しい形態のサービスを導入した場合、それが特 にウェブサービスなど有形のものではない場合、新しく導入したことをPRする のがとても難しい。 2014年10月から「筑西市電子図書館」を導入した筑西市立中央図書館では、こ の無形のサービスをPRするために、40インチほどの大きいディスプレイに電子 図書館の画面を映し出すという工夫を行っていた。デモ映像をつくるわけでも、 音楽が流れているわけでもないが、電子図書館のトップ画面を映し出している傍 らにフライヤーが置いてあり、新しいサービスであることはよく伝わってきた。 シンプルではあるが、このようなディスプレイをあまり行ってこなかった図書 館では目を引くことは間違いない。 撮影日:2015年11月5日 撮影:岡本真 File 380 筑西市立中央図書館(茨城県) 電子図書館をモニターでアピール ■筑西市立中央図書館 http://library-city-chikusei.jp/ 茨城県筑西市下岡崎1-11-1 TEL:0296-24-3530 FAX:0296-20-1008
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    124 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 図書館に慣れ親しむ利用者を育てるために、ブックスタートやお話し会などを 開催している図書館は多いだろう。まずは本を読むことに親しんでもらうという スタンスで全く問題ないと考える。だが、ある程度、本が読めるようになってか らは、図書館は読書をするだけの場所ではないことをぜひPRしてほしい。その 参考となる事例として、尾道市立中央図書館の児童コーナーに置かれていた「図 書館の本」がよくできていたので紹介したい。 表紙には「探している本がある! 調べたいことがある! そんな時に読んで ね!」と書かれており、本の探し方を紹介しているのだが、そこから図書館が「色 んなことを調べられる場所」であること、調べるときにどのような手段があるの か、また館内の本を探す際のヒントとなる案内などを具体的に図説し、図書館 が総合的にわかる本となっている。8ページほどの小冊子だが、つくりも美しく、 素晴らしい取り組みである。 File 381 尾道市立中央図書館(広島県) 子ども向けのオリジナル図書館使い方ガイド ■尾道市立中央図書館 http://www5.city.onomichi.hiroshima.jp/tosyokan/centerlib/web/ 広島県尾道市東久保町4-1 TEL:0848-37-4946 FAX:0848-37-0870 E-mail:toshokan@onomichi-lib.jp 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    125ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 著者名を表す見出し板への工夫はFile350(p.093)などで紹介したが、いずれ も大人向けの一般文芸書での事例だった。ここでは児童向けの読み物や絵本にお ける事例を紹介するので、こちらもぜひ参考にしてほしい。 藤枝市立駅南図書館の絵本コーナーでは、絵本作家の著者名が書かれた見出し 板によみがなをふり、代表的な作品の名称も合わせて紹介している。絵本の場合、 絵を描いた作家名よりも、物語を書いた著者名を手がかりに本を探すことが多い ので、その著者の代表的なタイトルを目立つように表示しているのは、利用者に とって便利である。 また、絵本の見出しは低書架に入れられることが多いので、利用者がぶつかっ てケガをしないように柔らかい素材を利用するという安全面での配慮もさすがで ある。 File 382 藤枝市立駅南図書館(静岡県) 著者名表示に代表作を ■藤枝市立駅南図書館 http://lib.city.fujieda.shizuoka.jp/ 静岡県藤枝市前島1-7-10 BiVi藤枝3階 TEL:054-636-4800 FAX:054-636-4808 撮影日:2015年11月8日 撮影:岡本真
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    126 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 「雑誌スポンサー制度」には、スポンサーが購入代金を寄付する場合や、雑誌そ のものを寄付する場合など、さまざまなやり方がある。島田市立島田図書館でみ かけた雑誌スポンサーの広告は、これまでに紹介した事例と違い、雑誌本体に広 告を掲示するだけでなく、雑誌棚にも広告を掲示し、広告効果を高める工夫がみ られた。 また、広告の基本である「ストーリーづくり」を重視し、たとえば、まちの板金 工場が自動車雑誌のスポンサーになっていたり、ツアー会社が列車の時刻表雑誌 のスポンサーになっていたりする。このようなセレクトが実現している背景には、 購入代金を寄付してもらうという一般的なしくみではなく、書店を通じて雑誌を 寄付してもらうというしくみを採用しているからだろう。スポンサーになる企業 としても、自社のPRにつながる雑誌のテーマを主体的に選ぶことができ、スポ ンサーになりやすい。広告を出す側にもきちんとメリットを感じてもらえること が、この制度の成功に欠かせないポイントである。 File 383 島田市立島田図書館(静岡県) ストーリーづくりを重視した雑誌スポンサー制度 ■島田市立島田図書館 http://www.library-shimada.jp/ 静岡県島田市本通3-3-3 TEL:0547-36-7226 FAX:0547-37-3469 E-mail:shimada-tosyo@city.shimada.lg.jp 撮影日:2015年11月8日 撮影:岡本真
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    127ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 どのような展示をするかを考える際に欠かせないのが、その地域の地場産業が、 観光なのか、農業なのかといった町の情勢に目を配ることもさることながら、周 囲にどのような施設があるのかという視点である。これらを把握したうえで、利 用者への情報提供を検討することにより、新しい切り口での展示の可能性がひろ がるに違いない。 大野城まどかぴあ図書館では、近隣に映画館があることに着目し、近日上映や 上映中の作品のフライヤーを掲示し、図書館がその作品に関連する蔵書を所蔵し ている場合は、その本もあわせて紹介するコーナーを設けている。蔵書情報には、 タイトル、著者名のほか、出版年や書誌番号、映画との関連についての簡単な説 明が記載されている。 映画のDVDとその原作本をセットで配架するという斬新な配架方法をFile341 (p.084)で紹介したが、DVDを所蔵していない場合でも、このような形式であれ ば映画と本を結びつけて紹介できる。新しい視点での展示を考える際の参考にし てほしい。 File 384 大野城まどかぴあ図書館(福岡県) 上映中映画の原作を紹介 ■大野城まどかぴあ図書館 http://www.madokapialibrary.jp/ 福岡県大野城市曙町2-3-1 TEL:092-586-4010 FAX:092-586-4011 撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
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    128 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 展示を行う際、どのようなテーマで本を集めるかということ以外にも気をつけ たいのが、展示の見せ方やデザインである。豊田市立中央図書館で行われていた テーマ展示のひと工夫は、テーマに合わせたパネルのデザインにある。 「賞特集」というテーマ展示で集められたのは、文学賞を中心としたさまざまな ジャンルの代表的な賞に関する本である。「ノーベル賞」や「国民栄誉賞」といった、 文学賞以外の賞も取り上げられているため、文芸書以外の本も多数展示されてお り、各賞を紹介するパネルには賞状のデザインが採用されている。賞の名前とと もに、その賞がどのような作品に与えられる賞なのか、また、各年度における主 な受賞者の解説も合わせて展示されていた点も素晴らしい。本の内容紹介に徹し た展示もよいが、展示のテーマ自体に興味を持ってもらう工夫が、デザイン面で も内容面でもみられたよい取り組みである。 File 385 豊田市立中央図書館(愛知県) 企画展示のパネルデザインにひと工夫 ■豊田市立中央図書館 http://www.library.toyota.aichi.jp/ 愛知県豊田市西町1-200 TEL:0565-32-0717 FAX:0565-32-4343 撮影日:2015年10月23日 撮影:岡本真
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    129ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 P R の 工 夫 2015年7月に移転しオープンしたばかりの名古屋市立瑞穂図書館でみつけた 小さな工夫を紹介したい。同館は瑞 み ず ほ 穂文化小劇場との合築で、図書館は建物の1 階ワンフロア部分に位置する。壁面のフライヤーを集めたコーナーでは、たくさ んのフライヤーが所狭しと並べられていた。直近のイベントは、利用者の目につ きやすい最上段の面陳できるところに置いているのだが、スペースの関係上、ど うしても重ねる必要があり、イベントの開催日すらみえなくなってしまうことも ある。この際、素晴らしいのが、イベントの開催日を記入したふせんで見出しを つけることで、探しやすく、整理もしやすい環境を整えていることだ。 ふせんは束になっているフライヤーの一番下につければ、移動する際などに落 ちてしまうのを防ぐこともできる。個性豊かなデザインのフライヤーが一同に並 ぶことを考えると、このような統一したアナウンスを追加することで、利用者は ピンポイントに日付をチェックすることができる。フライヤーを重ねずとも面陳 できるような場合でも、あれば嬉しい工夫である。 File 386 名古屋市立瑞穂図書館(愛知県) フライヤーの見出しに日付を明記 ■名古屋市立瑞穂図書館 https://www.library.city.nagoya.jp/ 愛知県名古屋市瑞穂区豊岡通3-29 TEL:052-853-0450 FAX:052-853-0451 撮影日:2015年10月22日 撮影:岡本真
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    130 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 P R の 工 夫 読書の際に、あれば便利なツールを貸し出している取り組みを紹介したい。 恩 お ん な そ ん 納村文化情報センターでは、読んでいる行だけに注目できるようにスリットが 入った読書補助ツール「リーディングトラッカー」を貸出している。本を借りる際 に一緒に館外貸出もできるように、資料番号をつけたケースにセットされている が、図書館システム上では、資料区分を本とは別カウントにしてあるので、本の 貸出冊数が減ることなく気軽に利用できるようになっている点も注目だ。 File 387 恩納村文化情報センター(沖縄県) リーディングトラッカーの館外貸出 ■恩納村文化情報センター http://www.onna-culture.jp/ 沖縄県恩納村字仲泊1656-8 TEL:098-982-5432 E-mail:onnalib@ovcic.jp 写真提供:恩納村文化情報センター
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    131ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 環 境 の 改 善 図書館で調べ物をする際には、図書館の資料を使うのが大前提ではあるが、パ ソコンを持ち込んで調べ物をメモしたり、資料を作成することができる環境を提 供する図書館も増えてきている。その際に利用者目線では重要かつ、整備されて いたら嬉しいのがパソコンへの充電ができるかどうかという点である。 新宿区立中央図書館では、パソコンを持ち込んで使えるパソコン優先席が16 席用意されており、ここでは電源の利用が可能である。開館時間内であれば時間 の制限なく利用できる。また、電源とともに整備してあると便利な公衆無線LAN も整備されており、調べ物にはもってこいの環境が整っている。 スマートフォンの充電についてはその是非が難しいところではあるが、特に利 用が伸び悩んでいるといわれる30代、40代の利用者を増やしたいというのであ れば、せめてパソコンの電源は最低限提供すべきと考える。 File 388 新宿区立中央図書館(東京都) パソコン持ち込み席での電源提供 ■新宿区立中央図書館 http://www.city.shinjuku.lg.jp/library/ 東京都新宿区大久保3-1-1 TEL:03-3364-1421(代表) FAX:03-3208-2303 撮影日:2015年5月13日 撮影:岡本真
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    132 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 環 境 の 改 善 三重県の南伊勢町には、地元のNPO法人みなみいせ市民活動ネットによって 運営されている「みなみいせ図書室」がある。地域の手で育まれ、愛されている図 書館である。 第12号で特集した「図書館×カフェ」では、気軽に始められるカフェの事例を 紹介したが、この図書館にもそんなカフェがあるので紹介したい。 といってもカフェというよりも、カフェタイム。木曜の午後1時から3時まで の間だけ定期イベントのようなかたちで行われている。特にカフェ用のテーブ ルと椅子があるわけでもなく、通常の閲覧席でお茶を楽しむことができるのだ。 ちょうどその時間帯に行ったので、声をかけて珈琲をいただいた。 厳密には、飲食が営業になるかどうかで食品衛生法を守る必要があるが、図書 館の規模や館内の雰囲気、利用者の規模といったことも踏まえケースバイケース で試してみる価値はあるだろう。 File 389 みなみいせ図書室(三重県) イベント的図書館カフェ、始めました 撮影日:2015年1月20日 撮影:岡本真 ■みなみいせ図書室 http://www.amigo2.ne.jp/~cyobun-n/mican/tosyo.html 三重県南伊勢町五ヶ所浦3917 町民文化会館1階 TEL:0599-67-1013
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    133ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 環 境 の 改 善 小 おごおり 郡市立図書館には1987年から運用を続けている移動図書館車「しらさぎ号」 がある。2 代目のしらさぎ号は 1989 年に買い替えられ、現在動いているのは 2002年に買い換えられた3代目となる。 紹介したいのはこの「しらさぎ号」に施された時計である。移動図書館車が行く 先は基本的に屋外であり、学校などの施設に訪問する場合はまだいいが、公園や 団地など屋外のステーションに行く場合、利用者から時間を聞かれることが多 かったので、外から見える位置に時計をつけてもらったそうである。車の揺れに も耐えられるように船舶向けの仕様になっている。車内に置き時計を置いている 事例は多いだろうが、車外からいつでも確認ができるようにしている事例は少な いのではないだろうか。 File 390 小郡市立図書館(福岡県) 移動図書館車に時計を設置 ■小郡市立図書館 http://www.library-ogori.jp/ 福岡県小郡市大板井136-1 TEL:0942-72-4319 撮影日:2015年3月17日 撮影:岡本真
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    134 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 環 境 の 改 善 比較的小規模の図書館では、大人、高校生、児童といった年代別にスペースを 確保することが難しく、その時々で利用者同士のすみ分けがうまくいかないと いった悩みを抱えることも多いだろう。 浅 あさくち 口市では、市を挙げたまちづくりの一環として「学力向上NO.1プロジェク ト」に取り組んでおり、子どもたちの学力向上のために、学習サポートや学習環 境の整備など、幅広い支援を行っている。 鴨 かもがた 方図書館には、1フロアに3つのテーブル席があるが、フロア面積との兼ね 合いもあり、潤沢に席があるかというとそうではない。中学生や小学生が大人 に遠慮することなく使える学習席を確保するために、各テーブル席に「中学生学 習コーナー」、「小学生学習コーナー」と書かれた手づくりの掲示物を置いている。 ちょっとしたことだが、どの利用者も気兼ねなく使えるスペースの確保が掲示物 一つの工夫でできるのだ。 File 391 浅口市立鴨方図書館(岡山県) 小、中学生向け学習席を確保 ■浅口市立鴨方図書館 http://www.city.asakuchi.lg.jp/lib/ 岡山県浅口市鴨方町鴨方2244-13 TEL:0865-44-7004 FAX:0865-44-7004 撮影日:2015年3月22日 撮影:岡本真
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    135ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 環 境 の 改 善 図書館にかばんを持ち込めない図書館の場合、防犯上、コインロッカーを設置 しているところが大多数を占める。 かばんの持ち込みが可能な図書館でも、あったら嬉しい設備が間口が大きめの ロッカーである。ロッカーといっても、小学生が学校帰りに来てそのままランド セルを置くことを前提につくられているようで、扉もついていない。もちろん大 人が大きいバッグなどを置いてもよい。 地域的な文化として、学校帰りに図書館に寄ることが歓迎されているからなの か、図書館運営のなかでたまったノウハウの成果なのか定かではないが、沖縄県 と長野県に集中して導入されているようだ(ほかの地域でも導入されているとこ ろがあればぜひ見学させてほしい)。 小銭を常備していない小学生にとっては、このロッカーがあるだけで、学校帰 りに寄っていいんだよということが自然と理解できる設備である。 File 392 池田町図書館、富士見町図書館(長野県) ランドセルも入るロッカー ■富士見町図書館 http://www.town.fujimi.lg.jp/site/library1/ 長野県富士見町富士見3597-1 TEL:0266-62-7930 FAX:0266-62-7611 E-mail:fujimi@libnet-suwa.gr.jp ■池田町図書館 http://www.ikedamachi.net/kyoiku/6-2_tosyokan.html 長野県池田町大字池田3203-5 TEL:0261-62-5659 FAX:0261-62-6616 富士見町図書館 撮影日:2015年3月31日 撮影:岡本真 池田町図書館 撮影日:2015年4月1日 撮影:岡本真
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    136 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 環 境 の 改 善 全国の県立図書館のサイトでは、県内にある図書館の情報をまとめたリンク集 が公開されている。47都道府県を比べた場合、岡山県立図書館が提供している リンク集が素晴らしいので紹介したい。さまざまな情報を集めて図書館訪問を 行っている身からすると、一番使えるリンク集なのだ。 まず、岡山県の地図上で自治体ごとの図書館の数が明示されており、どの地域 に図書館がないのかも一目瞭然である。また、ぱっと見ただけで自治体の広さと 図書館数の比較が可能で、その密度も把握できる。極めつけはクリッカブルマッ プが仕込まれており、各自治体名の部分をクリックすれば図書館の公式サイトに 直接ジャンプできるようになっている。 なお、これに負けじと劣らないのが京都府立図書館公式サイト「市町村の窓」に ある「図書館・図書室の紹介」のページである。いずれも地図が効果的に使われて おり、地理的感覚に乏しい他県の者からもとてもわかりやすい。利用目的によっ てはテキスト一覧のほうが使いやすい場合もあるが、ぜひ見比べてみてほしい。 File 393 岡山県立図書館(岡山県) 究極の県内リンク集 ■岡山県立図書館 http://www.libnet.pref.okayama.jp/ 岡山県岡山市北区丸の内2-6-30 TEL:086-224-1286(代表) FAX:086-224-1208 http://www.libnet.pref.okayama.jp/libnet/koukyou/
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    137ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 環 境 の 改 善 最近、雑誌書架の棚にその雑誌の表紙をカラーコピーしたものを貼りつけて、 利用者や職員が棚にスムーズに戻せるようにしているケースが増えている。この 方式で利用がスムーズになることは確かだが、それだけで十分だろうか? 白河市立図書館では、ここにひと言を加えることで、気の効いた案内を実践し ていたので紹介したい。やることはとても簡単で、雑誌を手にとった際に現れる 表紙のコピーに、「現在館内で利用中です」という表示を加えるだけである。 面陳した本が借りられた際に、その本が貸出中であることを表示する掲示物を 紹介した事例はこれまでにもあったが、この表記を雑誌コーナーにも転用した ケースといえる。 File 394 白河市立図書館(福島県) 利用中の雑誌棚にその旨を明記 ■白河市立図書館 http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=265&ik=1 福島県白河市道場小路96-5 TEL:0248-23-3250 E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    138 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 環 境 の 改 善 館内のフロアマップは、どういった方法で提供しているだろうか? ほとんど の図書館ではA4サイズのコピー紙に印刷し、配布していることだろう。さまざ まな図書館を訪問している身としては、訪問の記録として保存する目的もあるた め、持ち帰ってくることもしばしばであるが、持ち帰ったものを再び持参して利 用している利用者はいるだろうか? このように考えてみると、館内でしか使う ことのないフロアマップを配布する意味はあまりないようにも思える。ではどの ように提供するのがベストだろうか? という問いに答えられるのがこの事例だ。 新居浜市立別 べ っ し ど う ざ ん 子銅山記念図書館では、フロアマップを掲示している隣でA4サ イズのハードケースに入れて持ち運べるようにしたものを提供している。ある程 度の硬さがあるので、見ながら歩くにはちょうどよい。 開館したばかりの図書館であれば、印刷されたフロアマップはPRに有効とい えるが、市民が図書館に馴染み、印刷したフロアマップが棚から減らないような 状況になってきた場合は、ぜひこの方法を試してみてはどうだろうか。 File 395 新居浜市立別子銅山記念図書館(愛媛県) 持ち運べるフロアマップ ■新居浜市立別子銅山記念図書館 https://lib.city.niihama.lg.jp/ 愛媛県新居浜市北新町10-1 TEL:0897-32-1911 FAX:0897-32-7007 撮影日:2015年11月26日 撮影:岡本真
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    139ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 環 境 の 改 善 読書週間である10月27日から11月9日は、毎年、全国の図書館でさまざまな 取り組みが行われているが、2015年の読書週間の直後に太宰府市民図書館を見 学した際、児童コーナーで行われていたパネル展示が素晴らしかったので紹介し たい。 太宰府には市内に7つの公立小学校と4つの公立中学校があるが、小学校図書 館には学校司書が配置されており、同館がその支援を行っていることから、読書 週間中は学校図書館と連携し、太宰府市民図書館内の児童コーナーで小学校図書 館を紹介するパネルを展示しているのだ。 公共図書館が学校図書館と連携していることをPRする場合、学校図書館で行 われる場合がほとんどで、公共図書館でPRする事例は珍しい。普段は学校図書 館に行く機会の少ない親世代にとっても、学校図書館での取り組みを知ってもら えるよい取り組みである。 File 396 太宰府市民図書館(福岡県) 読書週間にあわせて学校図書館を紹介 ■太宰府市民図書館 https://www.library.dazaifu.fukuoka.jp/ 福岡県太宰府市観世音寺1-3-1 TEL:092-921-4646 FAX:092-921-4896 撮影日:2015年11月14日 撮影:岡本真
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    140 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 地 域 連 携 の 試 み 図書館サービスは、図書館という場だけで行うものではない。先日、鳥取県立 図書館のいわゆる出張図書館サービスを目の当たりにしたので紹介したい。 2015年1月に鳥取県男女共同参画センター「よりん彩」が開催する「インター ネット講座」の講師として登壇したときのことである。会場は鳥取県立図書館隣 接の「とりぎん文化会館」だったが、講演のテーマに関する書籍を鳥取県立図書館 が出張展示してくれていたのだ 。 講師の著書はもちろんのこと、インターネットに関する入門的な資料やトラブ ル対処のための資料などを50冊ほど展示し、県立図書館の利用者カードを持っ ていればその場で貸出も可能な状態であった。貸出の手順はいたって簡単で、利 用者カードの番号と資料の番号をメモし、図書館に戻ってから職員がシステムに データを入力するというアナログではあるが、確実かつコストもかからない方法 である。「図書展示コーナー」と書かれた目立つ色のスタンドパネルには、貸出が 可能なこと、返却は最寄りの図書館でも可能なことが書かれており、手厚いサー ビス体制が整っている。 File 397 鳥取県立図書館(鳥取県) 関連図書の出張展示 ■鳥取県立図書館 http://www.library.pref.tottori.jp/ 鳥取県鳥取市尚徳町101 Tel:0857-26-8155 Fax:0857-22-2996 撮影日:2015年1月24日  撮影:岡本真
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    141ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 地 域 連 携 の 試 み 鳥 と す 栖市立図書館の特集コーナーで、地元の博物館と連携したテーマ展示の企画 をみつけたので紹介したい。 鳥栖市には、久光製薬が設立した中冨記念くすり博物館がある。このくすり博 物館が発行する機関紙に、本にまつわる連載があることから、鳥栖市立図書館で はその連載と連動した展示コーナーを設置しているのだ。 展示コーナーには、機関誌が紹介している本を展示すると共に、本を借りる際 に機関紙も一緒に借りられるようにしている。また、展示コーナーは十分なス ペースを取っているので、機関紙のほかにも薬に関連する資料や久光製薬に関す る資料も展示しており、博物館とのよい関係づくりにひと役買っていることは間 違いないだろう。 File 398 鳥栖市立図書館(佐賀県) 博物館との地域連携でテーマ展示 ■鳥栖市立図書館 http://www.city.tosu.lg.jp/library/ 佐賀県鳥栖市布津原町11-21 TEL:0942-85-3630 FAX:0942-84-2828 E-mail:tosyokan@city.tosu.lg.jp 撮影日:2015年3月17日  撮影:岡本真
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    142 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館100連発 4 地 域 連 携 の 試 み 富士見町図書館は人口1万5,000人ほどを抱える規模の自治体のなかで、17年 連続で貸出冊数がナンバーワンの町である。その実績を影で支えるサービスの一 つが、「宅配ボランティア」である。主な対象は交通手段のない高齢者だが、返却 はもちろんのこと、希望すれば本を読み聞かせしたり、話し相手になることも 行っている。 東西に細長く、北側に八ヶ岳、南側は入笠山に挟まれたこの地域で暮らす住民 は、生活するにはどうしても駅や図書館がある周辺に集中している町の中心まで 出て行く必要がある。同じ生活圏のなかでの助け合いだからこそ、自分の生活の 動きのついでに参加できる図書館ボランティアが成立している点に注目した。こ のような生活に密着したサイクルで助け合えるような仕組みがもっと広がって いってほしい。 File 399 富士見町図書館(長野県) 読み聞かせも! 究極の宅配ボランティア ■富士見町図書館 http://www.town.fujimi.lg.jp/site/library1/ 長野県富士見町富士見3597-1 TEL:0266-62-7930 FAX:0266-62-7611 E-mail:fujimi@libnet-suwa.gr.jp 撮影日:2015年3月31日 撮影:岡本真
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    143ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館100連発4 地 域 連 携 の 試 み 雑誌スポンサー制度は、企業による地域貢献活動のための制度というイメージ が強いが、大阪府阪 はんなん 南市立図書館では、個人でも雑誌スポンサーになれる制度設 計になっている。特に市外在住の個人が雑誌スポンサーになった場合は、広告の 掲載はもちろんのこと、利用者カードを発行してもらえるというメリットがある とのことだ。 大阪の南部に位置し、和歌山市のほうが圧倒的に近い位置にある阪南市では、 今のところ近隣自治体と相互利用協定を結んではいない。このため、図書館利用 者は市内に在住もしくは通勤、通学する人に限られることから、隣接する自治体 に住む住民にとって、このメリットは大きい。また、個人でもスポンサーになれ るという選択肢を用意することで、地元に直接的に還元される寄付をしたいと考 える人も増えるかもしれない。 個人でもスポンサーになれる制度設計を行っているのは、今のところ関西地域 だけのようだが、すでに雑誌スポンサー制度を導入している図書館でも検討して みる価値はありそうだ。 File 400 阪南市立図書館(大阪府) 個人でもなれる雑誌スポンサー ■阪南市立図書館 https://www3.city.hannan.osaka.jp/ 大阪府阪南市尾崎町35-3 TEL:072-471-9000 撮影日:2015年1月30日 撮影:岡本真
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    144 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 はじめに 本号より、連載「図書館資料の選び方・私論」が始まります。 本誌秋号(第13号)の「予告編」では、「図書館では、どのようにして本が選ばれ ているか?」、「選書をめぐる論争」、「蔵書構成は図書館政策、そして地域政策で もある」、そして、「蔵書づくりのあれこれ」という一年間全4回の柱を立てて連 載を進めていきますと予告させていただきました。 基本的には、順を追ってそれぞれのアプローチに基づき「私論」を展開いたしま すが、相互に関連するトピックについては、柱立てを超えて議論が行き来するこ とをご容赦ください。また、具体的な事例においては、筆者の勤務地であった図 書館や今現在の現場での取り組みもご紹介しますが、いずれも筆者個人の見解で あり、組織を代表して主張するものではありませんので、この点もどうぞご了解 のほどお願いします。 では、一年間、おつきあいのほど、よろしくお願いいたします。 1.図書館では、どのようにして本が選ばれているか? 1-1 出版世界から図書館の蔵書世界へ 図書館ではどのようにして本が選ばれているのかという議論の前に、まずは図 書館の本を選ぶとはどのようなことなのか、「そもそも論」について触れておきた いと思います。 出版業界という産業で流通している商材である書籍を、教育文化機関である図 図書館資料の選び方・私論 ~その1〜 1963年、大阪生まれ。1987年、豊中市立図書館、1998年、滋賀県旧永源寺町 で図書館開設準備を経て、2000年に永源寺町立図書館、2006年から合併後の東 近江市立八日市図書館、能登川図書館などでの勤務後、2011年、瀬戸内市新図 書館開設準備担当。2009年から2010年まで、京都学園大学司書課程非常勤講師、 同志社大学政策学部嘱託講師を兼業。2008年、政策科学修士(同志社大学)。 嶋田学(しまだ・まなぶ)[瀬戸内市新図書館開設準備室] 連載
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    145ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館資料の選び方・私論~その 1 〜 書館(本稿では公立図書館を指します)が、その活動を成立させるための公共財産 として選択収集し、保存、提供する資料の蓄積である蔵書とは、どのような要素、 そして意味があるのでしょうか。 年間8万点近くの出版物から、それぞれのまちの図書館が、「土地の事情及び 一般公衆の希望に沿い」(図書館法第3条)図書館の蔵書を選定します。まずは図 書館の蔵書とは、どのようなものか、またどのように構築されていくものなのか、 系統立てて考えてみたいと思います。 1-2 図書館蔵書とは 図書館蔵書とは、図書館資料によって構成される資源の集合体とされていま す。図書、雑誌、新聞、視聴覚資料(フィルム、ビデオ、DVD、レコード、CD)、 冊子資料、パンフレット、リーフレット、電子媒体情報(CD-ROMなど)などが想 定されています。なお、図書館が契約するオンラインデータベースは、アクセス 権の利用契約であり、図書館が主体的に収集、保存するものと異なるので、図書 館資料とは見なされていません。電子書籍は、今後、どのような契約形態で普及 していくのかによりますが、現在わずかながら提供されているサービスを見る限 り、図書館資料と見なすかどうか微妙なところです。以後は、図書館で収集、提 供、保存する媒体が多様であることから、蔵書をコレクションと言い換えて表現 します。 1-3 コレクションづくりとは 文字通り、図書館資料群を構築することです。図書館コレクションには、二つ の見方があります。一つは、資料選定(図書選択)という営為の連続の「結果」とし てのコレクションの見方、もう一つは「成果」として評価する見方です。 つまり、結果としてのコレクションは、利用者要求の忖度、リクエスト、話題 の出版物などをもとに資料選定した結果としてのコレクション状態のことを意味 します。一方、成果としてのコレクション(Collection Building)は、利用者要求 も踏まえつつ、諸要件によってコレクションを組織的意識的に形成した状態のこ とを意味します。 コレクション構築を、その都度の事象対応の結果として評価するのか、あるい は一定の構成的意図の成果として評価するのかという、図書館活動における評価視 点の置き方によっても、コレクション構築の営為も異なってくることがわかります。
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    146 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 このことは、本連載で言及する資料選定の「要求論」と、「価値論」あるいは「目 的論」とも呼応します。「要求論」では、あくまで資料の選定は利用者ニーズを基 本に行いますから、図書館があらかじめコレクション構築における諸要件を設定 することは理論的にはあり得ません。必然的に、収集されたコレクションはニー ズへの応答の「結果」として構成されます。一方、「価値論」では、資料の個別的評 価ないしはその相互関連を踏まえて資料を収集しますから、構築された資料群は、 まさにその意図の「成果」として現れます。「目的論」も同様に、図書館をある目的 に向けて展開し、そのために役立つ資料を選定するわけですから、その構築の現 れは「成果」として認識されます。 両方とも必要な要素でしょう……というところですよね。現実的には対立概念 ではなく調整要素だと思いますが、実際にこうした考えによる論争があったこと や、そもそもこうした概念自体を認識もしない選書実態のなかで、選書をいかに 充実させ、当該図書館にとってより良いコレクションをつくるには、ということ が研修のテーマになり続けています。 1-4 コレクションの構成要素 図書館のコレクションを幾つかの属性に分けて整理してみます。コレクション をめぐる議論では、これら属性の要素が必然的に絡み合うため、必要に応じて、 属性を意識して議論を整理する必要があるでしょう。 ◎種別蔵書構成 図書館の目的や図書の目的を区分原理とする  児童書 入門書 実用書 概説書 学術書 研究資料など ◎主題別蔵書構成 主題分類を区分原理とする 日本十進分類法(以下、「NDC」)の分類ごとの蔵書冊数、比率の諸相 ◎形態別資料構成 資料の形態を区分原理とする 図書資料 非図書資料(パンフレット、逐次刊行物、地図、フィルム、スライド、マイク ロ資料、録音資料)
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    147ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館資料の選び方・私論~その 1 〜 1-5 コレクション構築に勘案されるべき条件の諸相 図書館のコレクションづくりは、1-4で説明した図書やその他の資料の属性に 加え、コレクションを提供するサービス対象、あるいは対象を取り巻く環境につ いても十分に理解し、その関連性に基づいて検討される必要があります。以下で は、その諸相を例示してみます。 1-5-1 利用者の諸相(対象界のセグメント)   ◎年齢区分 児童 → 乳幼児、幼児、小学生、中学生、高校生、十代青少年、勤労青少年 成人 → 若年層、中年層、壮年層、前期高齢者、後期高齢者 ◎職業属性 無職、自営業、事務職、営業職、技術職、職人、サービス業、医療職、看護職、 介護職、教職、農林水産職、家事職、その他の専門職 ◎個人特性 健常者、障がい者(身体、精神、発達)およびその家族、難病罹患者およびその 家族、生活困窮者、多様な性 ◎その他の属性 外国人、留学生 1-5-2 地域社会の属性 ◎地理的属性 都市部、近郊部、田園地域、中山間地域、山間部 ◎産業的属性 農林水産地域、製造業地域、商業地域、住宅地域 ◎地域歴史属性 古くからの居住地(城下町、門前町)、戦後開発された居住地、合併自治体、 非合併自治体 ◎自治体政策的属性 自治体総合計画、福祉施策、教育文化施策、産業経済施策
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    148 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 1-6 コレクション形成にかかる法的側面 図書館のコレクションづくりに際しては、運営主体、活動を規定する法的な諸 条件も重要な検討事項となります。公立図書館では、「図書館法」第2条、学校図 書館については「学校図書館法」第2条、大学図書館については「大学設置基準」第 38条に、それぞれ資料収集についての規定が記されています。 また、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成13年7月18日文部 科学省告示第132 号)」では、市町村立図書館と都道府県立図書館の資料収集にお ける留意事項が明記されています。 法令とは異なりますが、国内すべての図書館の職能団体である日本図書館協会 が、「図書館の自由宣言」(1954年採択 1979年改訂)、および「図書館員の倫理綱 領」(1980年6月4日 総会決議)という倫理規定によって、種々の図書館におけ る資料提供についての留意事項を提起しています。 たとえば、「図書館の自由に関する宣言」では、第1に「 図書館は資料収集の自 由を有する 」を上げ、「1.図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国 民のあらゆる資料要求にこたえなければならない 」、「2.図書館は、自らの責 任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際、 (1)多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を 幅広く収集する。(2)著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著 作を排除することはしない。(3)図書館員の個人的な関心や好みによって選択を しない。(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄した り、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。(5)寄贈資料の受入にあたっても 同様である。図書館の収集した資料がどのような思想や主張をもっていようとも、 それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない」などの事 項を明記しています。 また、「図書館員の倫理綱領」では、「資料に関する責任」として、「第4 図書館 員は図書館の自由を守り、資料の収集、保存および提供につとめる」、「第5 図書 館員は常に資料を知ることにつとめる」、「第12 図書館員は、読者の立場に立っ て出版文化の発展に寄与するようつとめる」などの倫理規定を明記しています。
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    149ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館資料の選び方・私論~その 1 〜 2.コレクションづくりの実際~選書とは~ 2-1 選書手段から見た場合 2-1-1 「見計らい選書」 書店や取次店(本の問屋)から、選定用の新刊図書が図書館に届けられ、現物を 見ながら購入図書の選定をする方法。現物で確認できるので、内容確認の精度が 高まる一方、選定に相応しい図書ばかりが届くわけではないので、返品および輸 送コストが無駄になる短所があります。また、一般に取引量(図書購入予算)が少 ないほど、送付される図書タイトルも少なくなる傾向があり、場合によっては 「見計らい」自体に応じてもらえないケースもあります。従って「見計らい選書」は、 選書業務の一部を担うにすぎません。 「見計らい選書」では、複数の担当職員が定期的に見計らい図書を前に、合議し ながら購入決定する場合と、色分けしたしおり状のメモを購入候補図書に挟み込 み、たとえば2票以上メモがあれば購入決定、1票の場合は、個別協議、保留ま たは非購入とするなど、合議の機会を持たずに行うケースがあります。 2-1-2 「リスト選書」 書籍の取次店(本の問屋)が編集、発刊する新刊リストから購入図書を選定す る方法。週単位(取次店によっては日単位)で出版された新刊図書の書誌事項 を、 NDCの分類順に配列編集したものから本を選びます。昨今は、書影が印刷され ていたり、解題(本の内容を紹介した解説文)や著者紹介も記載されたリストが発 刊されています。「見計らい」のように一部の新刊図書からの選定でなく、当該週 に出版されたタイトルを網羅したリストから選定するので、幅広い出版物に目を 通せる反面、現物による「見計らい選書」ほど内容確認の精度が高くなく、確信を 持てない場合、購入を見送るということも生じます。 「リスト選書」の場合も「見計らい選書」同様、定期的に選書会議を設けて購入候 補について担当職員が説明し合議で購入決定する場合と、リストを回覧して、購 入候補があれば無条件で発注するケースや、2票以上の得票があれば発注し、1 票の場合は保留または非購入とするなど、合議の機会を持たずに行うケースがあ ります。
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    150 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 2-1-3 現地現物選書 ここで言う「現地」とは、取次店の集配倉庫、あるいは大型の書店を指します。 図書館職員が、取次店、書店の協力を得て、直接、それぞれの書架から「現物」を 選んで購入を決定する方法です。場合によっては、ポータブル端末機で現物の ISBN★2 を読み取って選定候補とし、後日、自館蔵書データとの重複チェックを かけた後、正式発注をするというケースもあります。 また、取次店が開催する、いわゆるブックフェアという「見本市」を、取次店、 あるいは別の会場で行い、現物を見ながら選定候補の書籍スリップを抜き取って、 自館蔵書との重複チェック後、発注するという場合もあります。 2-1-4 その他の選書方法 「リスト選書」で用いられる新刊案内以外に用いられる選定ツールとしては、各 出版社が発行する新刊案内や「週刊読書人」や「図書新聞」といった書評紙、新聞書 評や出版広告、ネット上の新刊情報などがあり、これらも参考にして資料選定を します。 また、ある取次店では、「ベル」システムというサービスがあり、出版社やジャ ンルなどで構成されたグループを予め登録しておくと、発注をしないでも、図書 を確保し納品してくれます。売れ筋の文芸書や実用書などが、確実にしかも早く 届くメリットがある反面、基本的にはタイトルごとに個別に資料を選べるわけで はないので、期待外れな、あるいは必ずしも必要度の高くない図書を購入するこ とも起こりえます。また、同取次店が提供する「新継続」というサービスは、シ リーズもの、叢書もの単位で購入申し込みができ、発注しなくても発行されれば 納品されます。 2-2 図書館体制から見た場合 2-2-1 単独図書館 ひとつの自治体でひとつの図書館を運営している場合は、基本的に全職員で選 書に関わる場合が多いと思います。児童書担当とか、一般書担当などの分担が あったり、場合によっては、正規職員以外の立場の職員は選書に関われないと いう場合もあると思いますが、単独館の場合、職員数がそれほど多くなかったり、 物理的にひとつの館で仕事をしていることから、合意形成が取りやすく、全員が 選書に関わりやすい体制と言えます。
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    151ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館資料の選び方・私論~その 1 〜 もちろん、例外もあります。1自治体1館でも、人口が多く図書館規模も大き ければ、職員数も多く、雇用条件も様々で、全員が選書に参画することは難しく なります。 2-2-2 複数館図書館 複数の図書館を有する自治体の場合は、それぞれにいろいろな選書方法が存在 します。複数館とひとくちに言っても、東京23区や政令市のように、1館あた りの蔵書が20万冊を超える地域図書館を複数館有するような自治体と、人口10 万人から30万人程度の市とでは、域内図書館数や職員数にも大きな違いがあり、 合意形成にかかるコストも異なることから選書のやり方は自ずと異なります。 たとえば、域内図書館がそれぞれ個別に選書をする「各館選書」と、中央図書館 が域内図書館の選書をすべて行う「集中選書」とに分かれます。なお、複数館での 選書についても、単独図書館で述べたような児童、一般、レファレンスなど、奉 仕対象部門ごとに選書を独立して行っている場合もあります。 ◎「各館選書」~図書館ごとに選書をする場合~ このトピックは、実は図書館配置計画の違いによって左右される面がありま す。たとえば、蔵書が30万冊を超えるような中央図書館的な施設を中心として、 周縁部に3万冊未満の分館、あるいは図書室程度のサービスポイントを構成する ケースと、蔵書や延床面積の最も大きな図書館を拠点としながら、市各域の人口 密集地域に、5万冊から10万冊程度の蔵書を持つ地域図書館を構成する場合では、 職員配置も異なり、業務分担のあり方も自ずと異なります。 図書館ごとに選書をするケースが多いのは、後者のような独立分散型の図書館 配置計画の場合です。基本的には、図書館ごとに購入予算をあらかじめ振り分 けておいて、それぞれの館が選書と予算管理を行います。同じ市でも、エリア によって読書や情報ニーズが特異なケースがあるので、各図書館がそれぞれの地 域の事情に応じて選書することは、その点においては合理性があります。しか し一方で、全市的に見ると、類似した図書が多くなったり、自治体の規模として は、もう少し専門的な図書を購入すべきところが、各館の予算割り振りのなかで は、それらの図書が「高価な一冊」と評価され、購入が控えられる場合も考えられ ます。しかし、拠点図書館をしっかりと位置づけて、予算の傾斜配分を行うこと で、それらはコントロールできます。
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    152 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 たとえば筆者の勤務地であった東近江市では、八日市図書館を拠点館として位 置付け、高度な専門書や実用書、基本図書や全館的なリクエスト購入枠を設けま した。残る6つの各地域図書館は、それぞれのニーズに合わせた選書をするとと もに、リクエストで高価なものや全市的に購入すべき図書だが自館蔵書としては 馴染まないタイトルについては、八日市図書館が発注するというチャートがあり ました。また、複本が過剰に重複しないよう、「これはどの図書館も発注しそう だ」というタイトルを所定のフォームに書き出して購入調整するというスキーム も設けていました。 ◎「集中選書」~域内図書館の資料を一括して選書する場合~ 域内図書館数が多い自治体が苦労するのが、自治体立図書館としての蔵書全体 の構成をどのように整えるかという問題です。それぞれの図書館で選書すると、 ニーズの重なる分野の資料は、どうしても似通った資料が多くなります。つまり 「類書」が増えるわけです。あるいは複本の問題があります。たとえば、予約が数 十件も集中するような図書であれば、各図書館で購入して提供しても、一冊あた りのコストパフォーマンスは有益なものと評価できるでしょう。 しかし、そこまで利用が頻繁でないけれども、図書館としては利用者に紹介し たい人文科学系や社会科学系の概説書、あるいはビジネス関連の実務書などは、 全市的に見れば2冊も3冊も必要のないとの評価も成り立ちます。それらを買い 控えれば、もっと多くの異なる主題分野の多様なタイトルの図書を購入できる可 能性が高まるからです。 しかし、同じ市でも、それぞれの図書館に利用者が存在し、また図書館を取り 巻く地域性のなかで仕事をする図書館員がいます。それぞれの担当者は、全市的 には「部分最適」でしかなくても、自館のニーズに引っ張られて選書をしますから、 いずれの館でも蔵書としたいと考える図書の買い控えを調整することが難しくな ります。また、実際的な購入調整のためのコミュニケーションも、蔵書や発注管 理が機械化されて一覧性があるとしても、意思確認のためのコストはそれなりに かかります。 そこで、そうした調整を図るため、市域全体の蔵書構築を意識した「集中選書」 という方法が用いられることになります。いろいろなスタイルがありますが、内 部組織として選書委員会のような会議を設け、各図書館から選書委員が中央図書 館に集まり、見計らい図書の選定や事前にチェックした選書リストにより、合議
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    153ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館資料の選び方・私論~その 1 〜 で購入図書を調整していくというのがオーソドックスです。 ただこの方法は、物理的に職員が1ヶ所に集結することから、広い自治体では 移動コストが問題になります。また、選書の意思決定には一部の職員しか参画し ないため、本を選ぶ経験と責任、つまり「選書眼」が職員全体に育ちにくいきらい があります。 2-3 その他の要素から見た場合 以下は、これまで述べてきたケースに共通して関連する要素について考えてみ ます。まず、「選書手段から見た場合」でも少し触れましたが、図書館員のフェイ ストゥフェイスによる「選書会議」が設けられているかどうかです。 私が在籍していた当時の豊中市では、児童、一般、レファレンスの3つのパー トごとに予算を持ち、それぞれ独立的に選書をしていました。そこでは「見計ら い選書」は、基本的に全職員がそれぞれのパートを超えて購入候補を選ぶことが 認められていました。最終的には、各パートの責任者が購入調整をしていました。 また、「リスト選書」は、回覧で各職員が購入候補に○印をつけ、よほどのことが ない限り、購入が認められました。つまり、職員が、どうしてこの本が必要か、 あるいは必要ないかというような直接的な議論をする契機を持つことなく、選書 が進められていたのです。現在は、選書委員会が設けられ、各館の代表者による 選書会議により、全館的な調整を行いながら購入図書を決定する方法に改められ たと聞いています。 利用者対応を始めとした開館業務を行いつつ、リアルな選書会議を行うことは かなり難しい面があります。しかし、本来は、①当該書の必要性、②必要性を補 足するための著者属性や主題概要、③編集上の工夫、④出版社の特色、⑤利用の 見込み、⑥蔵書構成上の位置づけなど、蔵書に加えたい理由を選書に関わる図書 館員が理解した上で購入を決定すべきだと思います。 次の要素として、運営主体が市の直営か、一部の業務を委託する、あるいは指 定管理者による全面委託かという問題があります。一部業務委託の場合、多くは 貸出などの窓口業務を委託スタッフが担当し、公務員司書が選書業務を直営とし て行うケースが多いようです。この場合、選書をする図書館員が苦悩するのは、 直接利用者対応や返本作業などの書架整理をしないなかで、選書をすることの難 しさだと言います。出版情報、あるいはリクエストや利用統計の分析だけで、図 書を選ぶのは、隔靴掻痒の感があるというわけです。
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    154 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 それでは、すべての図書館業務を担う指定管理者制度では、それらの問題はク リアされるでしょうか。これも指定管理主体によりさまざまで、一概に評価する ことは難しいですが、図書館スタッフの雇用条件を見る限り、長期的に経験を積 み、図書館を取り巻く地域理解や図書館員としての選書眼を高めていくことは困 難な状況と言わざるを得ません。 では、公務員司書が主体となった直営図書館では、素晴らしい選書ができてい るでしょうか。今、公立直営図書館は、80年代の発展期から比較すると、選書 を含めた運営力が二極化していると言われています。つまり、直近のニーズに応 答しつつ、時代の変化に合わせた運営を検討し、継続的に試行錯誤を繰り返し、 新陳代謝を図っている図書館と、貸出冊数の多寡をほとんど唯一の評価軸として 持ち、その面だけで選書を含めた運営の善し悪しを判断してきた図書館との間で、 図書館の質的な評価が分かれてきています。そのことは、自治体内における図書 館に対する政策的優位性にも少なくない影響を及ぼしていると言えます。 3.資料選定の独立性 予告編では、図書館が本を選ぶ前提として、まずは、「国民の知る権利」や「学 習する権利」が保障されるという大きな価値が担保される運営実態があるかどう かが、最初に問われることになると書きました。そのような価値が損なわれる事 態とはどのようなケースでしょうか。 たとえば、記憶に新しいところでは、島根県松江市の学校図書館で、同市教育 委員会事務局の要請により、『はだしのゲン』が本棚から除架されるという事件が ありました。その後、この要請は、教育委員の総意ではなく、教育委員会事務局 が、ある市民からの除架要請にかかる議会陳情(否決)の際に出た議員意見を忖度 したものであること判明し、教育委員の検討により書架に戻されました。これは 資料提供の問題ですが、選ばれた資料を提供しないという「選択」こそが、国民の 知る権利や学習する権利が保障されるという大きな価値に影響を及ぼします。 あるいは、神戸連続殺傷事件の犯人である少年Aが執筆した『絶歌』(太田出版、 2015年)の提供を巡って、そもそも選定、購入しないという立場の図書館や、購 入するが提供に制限を設けるなどの対応する図書館が出て物議を醸しました。 少年事件の実名報道もそうですが、出版によって社会的不利益や精神的苦痛を 被ることを理由に、差し止めや回収を当事者が求めた場合に、図書館はどう対処 すべきでしょうか。
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    155ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 図書館資料の選び方・私論~その 1 〜 「知る権利」と表裏一体である「表現の自由」は、いずれも基本的人権の尊重とい う大きな憲法の価値に基づいています。基本的人権が損なわれるような事態が予 測できる場合、その表現は慎重であるべきです。しかし、公に出された出版物は、 「表現の自由」の発露としての社会的な営為であり、これを読みたいとする市民の 要望を、図書館が一方的に切って捨てることは、「資料提供の自由」の放棄、つま り、国民の「知る自由」を否定することに他なりません。 図書館が図書館独自の判断において、要望のある資料の選択や提供を否定すべ きではない理由は、もうひとつあります。それは、提供を拒むことを正当化する 法的理由がそもそもないからです。 2005年に起きた熊取町図書館事件では、相互貸借でしか提供できない資料要 求がたびたび繰り返され、業務に支障を来たすとして提供を断った図書館の対応 が争点となりました。大阪地裁が「利用者に貸し出すかどうかは、その判断につ き館長の自由裁量に委ねられているものではなく、図書館法その他の法令規定に 基づいて決せられる必要があり、正当な理由がなく利用者の上記(相互貸借)申込 みを拒否するときは、利用者の上記人格権を侵害するものとして国家賠償法上違 法となる。本件拒否処分には、正当な理由があるものと認めることができず、国 家賠償法上違法の評価を免れない」と断じています(括弧は筆者補足。後に町が控 訴するも高裁で和解)。 つまり、遺族感情に慮って提供を拒否した場合に、貸出希望者が訴訟に出れば、 これまでの判例では違法行為と評価されてしまいます。 仮に被害者が出版社に対し、人権侵害を理由に出版差し止めと回収を訴えて勝 訴したとしても、公開自体を否とする判決でない限り、図書館での提供を制限す る「正当な理由」とまでは評価できないでしょう。図書館が提供を拒む事例として は、日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」では、出版物の卑猥性が判例 で確定した場合は、公開自体を否とする判決があり、提供を制限することはやむ を得ないと解説しています。 公開される出版に対する評価は多様です。いずれも自身の正当性、公正性を主 張して、場合によっては出版自体を否定する見解を出します。しかし、そのよう な評価を受けて、出版物がその度に隠蔽されたら、その主張の妥当性自体を検証 する機会をなくしてしまいます。 図書館が公的機関として出版物を選定すること、そして所蔵し、保存し、提供 することは、国民の知る権利と表現の自由と密接に関わっていることを、市民の
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    156 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 図書館資料の選び方・私論 ~その 1 〜 ★1 図書等の内容を構成する、著者、書名、出版社、出版年、ページ数等の事項。雑誌論文であれば、著 者、論文名、掲載雑誌名、掲載雑誌の巻、号、出版年などの事項をさす。 ★2 ISBN(アイエスビーエヌ、International Standard Book Number)世界共通で図書(書籍)を特定するた めの番号。日本語では、国際標準図書番号。 みなさん一人ひとりにもご理解ただくような取り組みが必要だと思います。 「その1」のおわりに 「図書館では、どのようにして本が選ばれているか?」が、「その1」の柱でした が、図書館の蔵書とはそもそもどのようなものか、というそもそも論にもお付き 合いいただきました。 「その2」では、さらに踏み込んで、「選書をめぐる論争」をひも解き、図書館で 本を選ぶという営為の意味を掘り下げたいと思います。 引き続き、よろしくお願いいたします。
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    157ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 司書名鑑 No.10 1.本との関わり 思えば、小学校の教室の隅に置かれたリンゴ箱の中から取り出して夢中で読ん だ『ロビンソン・クルーソー』、貸本屋に通って江戸川乱歩を読み漁ったあたりが 読書人生の始まりです。「少年探偵団」への入団も本気で考えていました(笑)。「お 前の“冒険志向”、“実行してみなければ気の済まない性分”はそこからか?」と問 われれば全く否定できません。 幼少期の読書体験はとても重要です。また、中学時代の『チボー家の人々』、五 味川純平の『人間の條件』など、人間として、男として(笑)どう生きていくかな ど、大いに影響を受けました。 高校では本よりも、ラグビーをかじりました。今も、「音羽ラグビー倶楽部 PREMIUM」の代表として楕円のボールを追い続けています。大学でも運動を、そ れも機動隊とぶつかる方に入れ込みました(笑)。どちらも「理論」を学ぶことが必 要な“運動”ですが、この時期、なぜか活字の方には背を向けていました。 在籍した都立高校も大学も立派な図書館で知られたところでしたが、一歩も足 を踏み入れることはありませんでした(笑)。卒業してからは、出版社の業務・販 売・宣伝と営業畑を歩き続け、一冊でも多くの本を売ることに専念しました。 なかでも、1997年に瀬戸内寂聴さんの『「源氏物語」現代語訳』を刊行するにあ たっては、編集・販売・宣伝が一丸となった大プロジェクトを組みました。全十 巻完結に伴うイベントでは、数千人規模の記念講演会や全国百貨店での展覧会、 近年、図書館とその関連企業だけでなく、行政・自治体 や出版社までも巻き込んで、図書館内外の理解者を増や し続け、好評となっている「図書館総合展」。「司書名鑑」 第10回目の節目として、図書館総合展運営委員長を務 める佐藤潔さんにインタビューを行いました。 司書名鑑 No.10 佐藤 潔(図書館総合展運営委員長)
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    158 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 司書名鑑 No.10 寂聴さんのTV出演や新聞インタビューを仕掛けるなど、大いに盛り上げました。 当時、時代の勢いもあったと思いますが、出版社が読者に、日本全体に、もっ と挑みかかるような動きがあったと思います。 いい作品だから売れるというのはもちろんありますが、ただそれだけではな く、イベントなど話題性を持たせないと、なかなか読者には届きにくいと思って います。 2003年には関連会社の幼児教室の社長を引き受けました。2歳から5歳児を対 象とした教室でしたが、乳・幼児期の教育の大切さをアピールしようということ で、対象年齢を生後半年くらいからに下げて、保健師さんにも参加していただ く、どちらかというとお母さん向けの教室もつくりました。 育児や幼児教育をサポートするというのは、大変、重要な仕事だと思います。 図書館における「児童書コーナー」でも皆さん苦労されているのではないでしょう か。 6年間の任期中、幼児英語教室もスタートして、全国400教室まで展開しまし た。この会社では、寂聴さんにお願いして、子供向けの「寂聴おはなし絵本」8 点を執筆していただき、『月のうさぎ』などは、出版と同時に版を重ねました。 2. 図書館総合展とは 図書館総合展の企画運営をしている株式会社カルチャー・ジャパンは、1984 年に本の保管サービスを目的にスタートしています。2015年10月に急逝された、 故新田満夫社長の発案で、雄松堂書店、講談社と、預かった本を管理する倉庫業 のヤマタネ、その本を運ぶヤマト運輸の4社が中心となって電通・博報堂・大日 本印刷・凸版印刷など24社が出資しました。 書店の外商が家庭に販促に行った際に、本棚が満杯だと言われて本が売れな い。それなら、そのお客さんの書棚の本を預かって、入れ替えで新しい全集など を買ってもらおう、という考えです。やがて顧客を企業や大学へと拡大し、いま では大学図書館を中心に300万冊を超える本を保管しています。 そして「本を愛する人たちのおかげで成り立っているのだから、本を愛する人
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    159ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 司書名鑑 No.10 たちに恩返ししなければならない」「それは図書館を盛り上げることだ」という考 えから1999年に始まったのが「図書館総合展」です。ちょっと飛躍気味だけど正 鵠を得ている、それで周囲を元気にさせるというのが新田社長の魅力で、図書館 総合展もそういう性質を引き継いでいると思います。 第1回は東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催されましたが、フォーラム の増加、出展規模の拡大に伴い、第6回から会場をパシフィコ横浜に移して開催 しています。 私自身、初めは図書館総合展の副委員長という立場で関わり、2010年の第12 回から運営委員長を務めています。 ちょうどその年は、Google訴訟などに抗して、総務省、文部科学省、経済産 業省が「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇 談会」の答申を行い、業界をあげて対応して行こうという機運が高まっていま した。2011年には、東日本大震災・福島原発事故と未曽有の大災害で図書館も 大きな被害を受けました。2012年には、カルチュア・コンビニエンス・クラブ (CCC)の武雄市図書館の運営を巡って議論が起きました。ほかにも、電子書籍元 年、光交付金事業、地方創生で何をするかなど、毎年のように大きな話題が図書 館の周りに湧いています。 昨今、図書館の現場では、予算削減のなか様々な役割が求められ、目に見える 成果を求められてしまうなど、難しいことがたくさんあると思います。それでも なお、毎年、業界全体にかかるような課題が出ているということは、図書館に関 わる者として学び、成長するチャンスが常に与えられているということです。 そしてどんな課題にも賛否両論があります。図書館はすべての人に知を提供す る場ですが、その方法に様々な意見があり、対立もある。図書館総合展は、問題 となっている事柄は可能な限り全部取り上げる。意見や主張は分け隔てなく取り 上げるというポリシーで運営しています。来る者は拒まず、去る者は「そんなこ と言わずに来なさいよ」です。「ああいうものを取り上げて!」といったご意見を いただくこともありますが、場を揺らし、幅と可能性、話題性を拡げ続けること が私たちのミッションだと思っています。 Directoryof librarian
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    160 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 司書名鑑 No.10 3. 図書館総合展の重要施策 図書館総合展を運営していくなかで、私が気になっていたことが、図書館に とって重要な存在である出版界との関係の希薄さでした。出版社には、図書館を 利用したことのない人が、意外に多くいます。かつての私もそうでした。つま り、あまり知らないで「図書館利用が出版売上げを阻害している」などと言う。 逆に、図書館員の出版社に対する無関心もかなりのものだと感じています。本 には関心がある、作家も好きだ、しかし出版社という組織、出版社の仕事や成立 基盤がどうのこうのということへの関心は低いように思われます。 出版社に長く在籍した私の見るところ、出版社側の無理解は、20年来の深刻 な出版不況の要因を多角的に分析することなく、図書館側に一方的に押しつけよ うという、短絡的な判断に基づくものと考えています。出版界と図書館が対立し て読者を奪い合うのではなく、外に広げるように発想を転換すべきです。 一方、図書館は、自治体と一緒になって「ブックスタート」事業や「読み聞かせ」 などの読書推進の担い手として重要な役割を担っていますが、それでもまだ足り ない。同じく本に関わる立場として、もっと積極的であってほしいですね。美味 しい寿司屋の職人は、ネタだけではなく、その先にある市場、その先にある漁 師、ひいては海に至るまで思いを致すものだと思います。 図書館総合展運営委員会では、図書館流通センター(TRC)と丸善のご協力の もと「図書館へのおすすめ本」専用注文書を作成しています。 2015年は275の出版社に参加していただきましたが、まだまだ少ないと感じ ています。この企画では、全国3,000余の出版社に直接電話などで働きかけをし ていますが、図書館市場に気づいていない出版社、図書館側に気づかれていない ような良い出版社がまだまだあります。書籍やブースの出展だけでなく、フォー ラムなどでも、双方の情報交換、交流を深めていきたいと思います。 ほかにもいくつか重点課題があります。 大学図書館から始まった「アクティブ・ラーニング」の取組みについては、大手 什器メーカーに軒並みご出展いただいているということもあり、その動向に注目 しています。
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    161ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 司書名鑑 No.10 さらに、文部科学省がこれを初等・中等教育にまで拡げるように呼びかけてい ますが、どう実現していくかです。今後、学校教育のあり方や、学校図書館・司 書教諭・学校司書の役割も含め、議論を深めていきたいと思います。 私は、生涯学習の場としての公共図書館でも、アクティブ・ラーニングが取り 組まれないものかと期待しています。現場の司書がファシリテーターとなって、 能動的学修の場をつくれないか?いや、そんなことをする余裕も、スペースも、 人材もいない、それよりももっとやることがいっぱいあるといわれるかも知れ ませんが、読書推進と同じようにNPOなどとの取り組みを拡げていく意味でも、 これからの高齢化社会への加速化のなかでの図書館の役割について、図書館総合 展の場で、問題提起をしていきたいと思っています。 また、2016年4月から法制化される障害者差別解消法は、「合理的配慮」が公 共機関の義務となるだけに、欠かせないテーマです。これまで2年にわたり、「図 書館におけるアクセシビリティ」をフォーラムで取り上げてきましたが、今後は 電子書籍を活用した音声読み上げサービスや、文字拡大、文字と地の色の反転機 能などといった読書アクセシビリティ機能やサービスを扱う企業の出展も促した いと思います。 グローバルな視点を提供することも私たちの役割ではないかと思っています。 米国図書館協会(ALA)とは提携の調印を交わし、毎年、ALA総会などへの視察研 修も実施しています。2015年はシアトル・サンフランシスコでしたが、33名が 参加しました。シアトルでは、一般公開していないマイクロソフト社の図書館見 学とスタッフとのセッションも行いました。今年のALA総会が開催されるオー ランドではディズニーの図書館を、ワシントンD.C.では、米国議会図書館(LC)、 スミソニアン博物館、ジョージタウン大学、ジョージ・ワシントン大学などを訪 問します。歴史があり先進的でもあるアメリカの図書館から学べることはたくさ んありますが、今後は東アジアやヨーロッパにも輪を拡げていきたいと思います。 各々の課題は、対象もそれぞれバラバラに見えるかもしれませんが、それらを 推進していく過程で、大学や行政・自治体のなかで図書館が注目され、これまで 図書館とのつながりが薄かったところにつながりができたりと、良い循環を生み 出してきていると思います。 Directory of librarian
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    162 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 司書名鑑 No.10 4. 図書館に関わる皆さまへ 図書館員として人生を過ごしてきたわけではない「よそ者」である私からする と、図書館に関わる皆さんは、うらやましくもあり、たいへんだなぁと思うとこ ろもあります。 「図書館は成長する有機体である」という、インドの図書館学者、ランガナタン の「図書館学の五原則」にもあるように、最初から完璧な図書館などないのはもち ろんのこと、明確な理想形があるわけでもない。試行錯誤しかありません。私た ちが図書館総合展を通じてできることは限られていますが、お手伝いできること があれば、委員会までリクエストをください。 また図書館総合展では、図書館の皆さんが充実感を感じてもらえる場を提供で きないものかと策を練っています。「ポスターセッション」、「コミュニケーショ ン・ブース」、「学生ツアー」、そして昨年より始め、多くの参加をいただきまし た「キャラクター・グランプリ」、「メーカーズ・ラボ」、「地方創生レファレンス 大賞」にはそういう思いを込めています。 何も最先端のもの、高度なもの、大見得を切るようなものだけが、出展対象で はないのです。出展準備を通じて自分たちのスキルを磨く、出展を軸に総合展会 場で他館の人たちと情報交換の場を持つ、それで良いと思うのです。また来場者 からも「図書館そのものが発表している例をたくさん見たい」「特別なものでなく ても、自分たちと同じような活動報告がとても参考になる」というご意見を本当 にたくさんいただいています。ですから、これらの企画には遠慮なさらず、どん どん参加してください。 ほかにも、年4回各地で開催している「地域フォーラム」、展示会の前後を含む 1週間に設定している「図書館総合展週間」で、「トレードショーを見に来て講演 を聴く」という以上の経験をしてもらおうと画策しています。「図書館総合展運営 協力委員」制度もそのひとつです。委員の義務はほぼゼロで、自分の得意があれ ば適宜、手伝っていただいたり、提案していただいたり、飲み会に参加していた だいたり(笑)というものです。 そして、図書館総合展に積極的に関わっていただきたいということの最大級の
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    163ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 司書名鑑 No.10 ものは、「地域フォーラム開催地立候補」です。協賛社さんのお力添えを原資に運 営させていただいておりますので、開催館のご負担は、ほぼマンパワーというこ とになります。全国から図書館関係者が集まります2017年の開催地を目下募集 中ですので、ぜひ手を挙げてくださるようお願いします。 いま、図書館はメディアからも、一般の人たちからも、大いに注目されていま す。これまで冷淡だった出版社も、良きにつけ悪しきにつけ図書館に注目するよ うになっています。昨今の報道でみなさんもそう感じられたのではないでしょう か。これはチャンスなので、今年も熱をどんどん上げてゆくべきだと思います。 図書館予算は減ろうとも、いや、減らさないためにも声を上げ、積極策をとる のみです。図書館がより住民とその地域に根ざしたものになるには?地域が残 すべき資料は何なのか? 図書館は地域創生をサポートできるのか? 大学におけ る図書館の役割とは? 外国の大学に勝てるのか? 図書館に関わる人たちは充実 した仕事と人生を送れるのか? 私たちが外に向けて応えてゆくべきことはたく さんあります。 日本では、2019年にラグビーワールドカップ、翌2020年は東京オリンピック が開かれます。内外から日本に、スポーツに光があたります。この機をとらえ 「文化のほうも負けてはいないぞ」と言ってやろうではないですか。図書館もその 前線に立って、「スポーツの祭典」に勝るとも劣らない「知の祭典」をしかけてやり たいと思います。運営委員会でも2019年、2020年に向けて、図書館、読書、文 化のすべてを巻き込んだ「知の祭典」のしかけを準備しています。皆さまのお力添 えをお願いします。 (インタビュー:熊﨑由衣 構成:ふじたまさえ) 1944年、東京生まれ。1967年、早稲田大学卒業後、講談社に入社し、業務・販売・宣伝を担当。1997年に は瀬戸内寂聴『「源氏物語」現代語訳』(全十巻完結)の講演会・展覧会、宣伝・イベントを行い、マルチプレッ クスな販売活動を展開し注目を浴びる。2003年、講談社パル代表取締役社長に就任。幼児教室・英語教室 を全国400教室展開するほか、寂聴著「寂聴おはなし絵本」シリーズで『月のうさぎ』(講談社、2007年)ほか 8点を企画し刊行。 2010年(第12回)図書館総合展運営委員長就任。 佐藤 潔(さとう・きよし) Directory of librarian
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    164 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年冬号 ARG 業務実績 定期報告 和歌山市民図書館ワークショップの実施を支援 地元の建築士、クリエイターのチームと 株式会社図書館総合研究所の協同により進 められている和歌山市民図書館基本計画策 定業務の支援として、ワークショップ< 「まち」から生まれる図書館、図書館から生 まれる「まち」>の企画・ファシリテーショ ンを担当しました。 初回のブレインライティングに始まり、まち歩き、マップづくり、編集まとめ と全4回開催されたワークショップには多くの市民が参加し、参加者同士が積極 的にコミュニケーションを行い、市民主体の濃密な共創の場が生まれていました。 須賀川市(仮称)市民交流センター実施設計業務を支援 基本設計から引き続き、須賀川市(仮称)市民交流センターの実施設計業務を 支援しました。図書館機能・公民館機能・子育て支援機能が融合する新しいかた ちの複合施設には、どのような資料の配架が適しているのか、シミュレーション を重ねて検討しています。 また、この交流センターには、須賀川市 出身の特撮監督・円谷英二を称える展示・ 交流スペースが設けられる予定です。実施 設計期では、この展示スペースについて、 空間構成のコンセプトメイクを行いました。 第9回ニコニコ学会βシンポジウム~ THE FINAL ~にて代表の岡本が座長を担当 2015年12月19日(土)に東京・六本木のニコファーレで開催された「第9回ニ コニコ学会βシンポジウム~ THE FINAL ~」の第1セッション「ニコニコ学会βを 『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・ ガイド株式会社の最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめてい ます。各種業務依頼はお気軽にご相談ください。 アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
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    165ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 ARG業務実績 定期報告 50分で振り返る〜これまでとこ れから、そして「いま」〜」に弊社 代表の岡本が座長として登壇しま した。 このセッションでは、タイトル 通り、これまでにニコニコ学会β の活動を高井浩司、myrmecoleon、湯村翼、前野ウルド浩太郎、メレ山メレ子、 牧田翠、武田英明、犬飼博士、稲見昌彦、藤山晃太郎の各氏とふりかえりました。 リクルートテクノロジーズの「第2回自然言語処理ハッカソン」を支援 弊社が産学連携の支援を行っている株式 会社リクルートテクノロジーズが、2016年 2 月 1 日(月)から 5 日(金)の 5 日間、自然言 語処理やその周辺の数学を専攻・興味ある大 学生を対象としたハッカソンを開催しました。 弊社では事務局業務を担い、企画立案から実施を担当しました。 慰安旅行2016を開催 弊社の恒例企画である慰安旅行を2016年 1月7日(木)から9日(土)にかけて、群馬県 吾妻郡草津町で開催しました。バスターミナ ルの3階にオープンした「温泉図書館」を訪れ、 職員の中沢孝之さんに温泉街の名勝や地元住 人が通う秘湯などを案内していただきました。まさにこれこそ、建物としての図 書館から外に踏み出し、まちじゅうのあらゆるものを資料としてレファレンスす る、あるべきライブラリアンの姿だと胸を打たれました。 弊社業務問合せ先(メールが確実です) ● mail:info@arg-corp.jp ● 全般:070-5467-7032(岡本) ● LRG関係:045-550-3553(ふじた) ※移動中・会議中なことが多いので留守電にメッセージを残してください。 日々の弊社からの情報発信をお確かめいただくには? ● 公式メールマガジン:http://www.arg.ne.jp/ ● 公式Facebookページ:https://www.facebook.com/ARGjp/
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    LRGLibrary Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド定期購読・バックナンバーのご案内 定 期 購 読● 誌名:ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG)  ● 発行:アカデミック・リソース・ガイド株式会社 ● 刊期:季刊(年4回)   ● 定価:2,500円(税別)  ● ISSN:2187-4115 ● 詳細・入手先:http://fujisan.co.jp/pc/lrg 「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」はアカデミック・リソース・ガイド株式会社が、 2012年11月に創刊した、新しい図書館系専門雑誌です。さまざまな分野で活躍する著者に よる特別寄稿と、図書館に関する事例や状況を取り上げる特集の2本立てで展開していき ます。第5号からは「司書名鑑」も連載を開始しました。最新情報は公式Facebookページで お知らせしています。 【公式Facebookページ:https://www.facebook.com/LRGjp】 1年4号分の定期購読を受付中です。 好きな号からのお申し込みができます。 定   価:10,000円(税別) 問い合せ先:045-550-3553(ふじた)       lrg@arg-corp.jp 特別寄稿は、数多くの名講演をされている梅澤貴典さんが、ライブラリアンの講演術と して、そのノウハウを徹底公開。講演をする全ての人に有用である。特集「離島の情報 環境」では、同テーマのもとで行った日本初の悉皆調査として、歴史的な内容となって いる。 特別寄稿/ 特  集/ 内  容/ 長尾真「未来の図書館を作るとは」 嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」 特別寄稿では、社会的に弱い立場とされる人々の知識・情報へのアクセス状況を概観し、 知のセーフティーネットであるべき公共図書館の役目を考える。特集では、株式会社カー リルの協力により、全国の図書館における資料管理用のシステムの導入の実態を分析 する、これまでにないものとなっている。 特別寄稿/ 特  集/ 内  容/ みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために──何から始めればよいのか」 嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル)「図書館システムの現在」 第2号・2013年冬号(2013年2月発行) 東海大学の水島久光さんによる特別寄稿は、夕張・鹿児島・東北の地域の記憶と記録 を巡って、地域アーカイブの役割と重要性を論じている。特集は「図書館における資金 調達(ファンドレイジング)」の取り組みを紹介。さまざまな手段を講じて資金を集め、 事業を行っていこうとする図書館の取り組みを集めた。 特別寄稿/ 特  集/ 内  容/ 水島久光「『記憶を失う』ことをめぐって∼アーカイブと地域を結びつける実践∼」 嶋田綾子・岡本真「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」 第3号・2013年春号(2013年5月発行) 創刊号・2012年秋号(2012年11月発行) ※品切れ 残り 210冊 SOLD OUT 完売 間近! 172 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 定期購読・バックナンバーのご案内
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    特別寄稿は、本屋「B&B」を運営するnumabooks代表の内沼晋太郎さん、自宅を開放 する「住み開き」の提唱者のアサダワタルさん、「ビブリオバトル」を考案した立命館大学 の谷口忠大さんの3名にお話をいただく。特集は、図書館で行われている、本と人とを つなぐさまざまな取り組みについて紹介する。 特別寄稿/ 特  集/ 司書名鑑/ 内  容/ 内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」 嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」 No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館) 第5号・2013年秋号(2013年11月発行) 残り 200冊 東日本大震災による図書館の被害状況と復興の歩みと図書館の支援のあり方を、宮城 県図書館の熊谷慎一郎さんが論じる。特集では災害の記録を伝える図書館や、地域防 災について啓発活動を行う図書館などの取り組みについて紹介する。 特別寄稿/ 特  集/ 司書名鑑/ 内  容/ 熊谷慎一郎「東日本大震災と図書館─図書館を支援するかたち」 嶋田綾子「図書館で学ぶ防災・災害」 No.2谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館 「エル・ライブラリー」) 第6号・2014年冬号(2014年2月発行) 残り 280冊 創刊号に掲載した長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」に触発され、未来の図書館 を議論する座談会を収録。特集では、執筆に猪谷千香さんを迎え、コモンズとしての図 書館のあり方を、図書館だけにとどまらない実例を挙げて紹介する。 特別座談会/ 特  集/ 司書名鑑/ 羊の図書館めぐり/ 内  容/  内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司「未来の図書館をつくる」 猪谷千香「コモンズとしての図書館」 No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)     第1回 大阪府立中之島図書館 第7号・2014年春号(2014年6月発行) 残り 280冊 巻頭では2014年7月2日に開催した菅谷明子×猪谷千香クロストークを収録。ジャー ナリストから見た日米の図書館とは。特集では、2014年6月に法改正がなされた教育 委員会制度について、インタビューや調査を元に図書館への影響をまとめた。 第2回 LRGフォーラム 菅谷明子×猪谷千香クロストーク           社会インフラとしての図書館─日本から、アメリカから 特  集/ 司書名鑑/ 羊の図書館めぐり/ 内  容/   猪谷千香「教育委員会制度の改革」 No.4 嶋田学(瀬戸内市新図書館開設準備室)      第2回 旅の図書館 第8号・2014年夏号(2014年9月発行) 残り 320冊 特別寄稿は、第3号での特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」を受けて、 実際に資金調達を行っている組織からの視点、資金調達のサービスを提供する事業者 からの視点と、より理論的に図書館での資金調達に迫る。特集は、創刊号で大きな反 響を呼んだ「図書館100連発」の第2弾。 特別寄稿/ 特  集/ 内  容/ 岡本真・鎌倉幸子・米良はるか「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」 嶋田綾子「図書館100連発 2」 第4号・2013年夏号(2013年8月発行) 残り 100冊 173ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 定期購読・バックナンバーのご案内
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    特別寄稿は、数多くの名講演をされている梅澤貴典さんが、ライブラリアンの講演術と して、そのノウハウを徹底公開。講演をする全ての人に有用である。特集「離島の情報 環境」では、同テーマのもとで行った日本初の悉皆調査として、歴史的な内容となって いる。 特別寄稿/ 特  集/ 司書名鑑/ 羊の図書館めぐり/ 内  容/ ライブラリアンの講演術─ 伝える力 の向上を目指して[梅澤貴典] 離島の情報環境[編集部] No.6磯谷奈緒子(海士町中央図書館)     第4回「男木島図書館」 第10号・2015年冬号(2015年3月刊行) 残り 220冊 特別寄稿では、ARG代表の岡本真が自身の活動である「神奈川の県立図書館を考える会」 を通じて、行政にその重要性を伝える「アドボカシー」について解説。特集では、「アー カイブサミット2015」をテーマに、シンポジウムを特別収録。 特別寄稿/ 特  集/ マガジン航 Pick Up Vol.1/ 司書名鑑/ 内  容/ ライブラリーアドボカシーの重要性とその実践 ─「神奈川の県立図書館を考える会」の活動から[岡本真] 「アーカイブサミット2015」を総括する[LRG編集部]        貧困から図書館について考える[伊達文] No.7 柳与志夫(東京文化資源会議事務局長) 第11号・2015年春号(2015年6月刊行) 情報発信のために必要なことはなにか? 広報のコツを鎌倉幸子さん、取材のツボを 猪谷千香さんが語る。特集では、「図書館×カフェ」をテーマに全国の事例を類型化、 野原海明さんが取材しつつ、その在り方について論じた。 特別寄稿/ 特  集/ マガジン航 Pick Up Vol.1/ 司書名鑑/ 内  容/ 図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ[鎌倉幸子、猪谷千香] 図書館×カフェ[野原海明]        ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生] No.8 是住久美子(京都府立図書館) 10 年を迎えた Library of the Year(Loy)。過去の受賞館の関係者にインタビューをし、 その軌跡をふりかえりながらLoyの選考基準や狙い、これからの図書館のあり方につい て考える。第17回図書館総合展 ARGブースで行われたLoy2015の直前トークセッショ ンほか、10年間の全受賞館リストも掲載。 総 特 集/ マガジン航 Pick Up Vol.3/ 司書名鑑/ 内  容/ Library of the Year の軌跡とこれからの図書館[福林靖博、岡野裕行]        私設雑誌アーカイブ「大宅文庫」の危機[ツカダマスヒロ] No.9 平賀研也(県立長野図書館館長) 第12号・2015年夏号(2015年9月刊行) 残り 330冊 第13号・2015年秋号(2015年12月刊行) 巻頭では、世界的に動向が注目されるGLAMのオープンデータ化について、その第一 人者たちが白熱の議論を交わした第2回OpenGLAMのシンポジウムを特別収録。 特集では恒例企画「図書館100連発」の第3弾。 第2回 OpenGLAM JAPANシンポジウム オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来 生貝直人・日下九八・高野明彦 特  集/ 司書名鑑/ 羊の図書館めぐり/ 内  容/   嶋田綾子「図書館100連発3」 No.5 大向一輝(国立情報学研究所)      第3回 京都府立総合資料館 第9号・2015年秋号(2015年12月発行) 残り 320冊 好評 発売中! 好評 発売中! 174 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 定期購読・バックナンバーのご案内
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    LRG LRG 第15号 2016年5月 発行予定 LibraryResource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 次回予告 LRGライブラリー・リソース・ガイド 定価(本体価格2,500円+税) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 論 考 特 集 「図書館広報事例集」 連 載 嶋田学 選書論・コレクション論」Vol.2 司書名鑑 ほか 鎌倉幸子「真の図書館広報とは」(仮) 図書館における広報について、理論を知り、実践にうつすために何 が必要か? 図書館界だけの取り組みにとどまらず本質的に使えるノウハウをま とめます。 175ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 冬号 次号予告
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    LRG ライブラリー・リソース・ガイド https://www.facebook.com/LRGjp 第14号/2016年 冬号 無断転載を禁ず 発 行日 発 行 人 編 集 人 責任編集 編  集 デザイン 発  行 2016年2月29日 岡本真 岡本真、ふじたまさえ ふじたまさえ 大谷薫子(モ・クシュラ株式会社) 佐藤理樹(アルファデザイン) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Academic Resource Guide, Inc. 〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61 泰生ビル さくらWORKS<関内> 408 Tel 045-550-3553(ふじた) http://www.arg.ne.jp/ lrg@arg-corp.jp ISSN 2187-4115 ISBN 978-4-908515-13-2 写真 表紙・裏表紙:白河市立図書館    撮影:岡本真 これまでに訪問した図書館等の施設の写真は原則的にすべて 公開しています。以下のURLでご覧になれます。 https://www.flickr.com/photos/argeditor/collections/ 72157625468181915/ ※本誌刊行にあわせて、本誌Facebookページでも上記URLを 紹介します。
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    定価(本体価格2,500円+税) Library Resource Guide 第14号/2016年冬号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 LRGライブラリー・リソース・ガイド ISSN 2187-4115