LRGライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
ISSN 2187-4115
図書館における資金調達(ファンドレイジング)
特集 嶋田綾子・岡本真
特別寄稿 水島久光
記憶を失うことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
図書館における資金調達(ファンドレイジング)
特集 嶋田綾子・岡本真
特別寄稿 水島久光
記憶を失うことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
2 巻頭言 ライブラリー・リソース ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号
当初の心積もりよりやや遅くなったものの、『 ライブラリー・リソース・ガイド』
第3号ができあがりました。特に今回は各地の図書館関係者に編集のご協力を賜り
ました。心から御礼を申し上げます。
少しだけ内情を申しますと、「 図書館システム」を特集した第2号の売れ行きがあ
まりよくなく、この第3号の売れ行き次第では、『 ライブラリー・リソース・ガイド』
は進退きわまる事態になるかもしれません。本誌をご評価いただけるようでしたら、
この第3号に加え、第2号もお買い求めいただけますと幸いです。
さて、この第3号は、創刊号や第2号と同様、
 ●特別寄稿
 「記憶を失うことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践」(水島久光)
 ●特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」
 という2本立てとなっています。
水島久光さんは、メディア論などを専門とする研究者です。『 閉じつつ開かれる
世界』(勁草書房、2004年)、『テレビジョン・クライシス』(せりか書房、2008年)
などのご著書をお読みになられた方もいらっしゃることでしょう。水島さんのライフ
ワークの一つが、論考の副題にもある「アーカイブ」です。夕張、鹿児島、東北と、
3つの地域を背景とした議論は、皆さまに様々な示唆を与えてくれるでしょう。アー
カイブ論の画期の一つとなる論考であると、私どもは自負しています。
巻頭言
実践する図書館のために
3ラ イ ブ ラ リ ー ・リソース・ガイド 2013 年 春 号 巻頭言
また、水島さんは本誌発行元であるアカデミック・リソース・ガイド株式会社が
入居するシェアオフィス「 さくらWORKS<関内>」の入居者でもあります。編集、
執筆、デザインのすべてをこの共同オフィスの入居者でまかなってきましたが、つ
いに寄稿者まで得ることができたことをひそかに喜んでいます。日常的に議論し合
える関係という、文字通りの「協働」が生み出したという背景にもご注目ください。
特集「 図書館における資金調達( ファンドレイジング)」は、本誌の創刊時から
必ず実施すると考えてきたものです。資金調達(ファンドレイジング)の重要性は、
図書館業界の関係者の誰もがうなずくところでしょう。しかし、その重要性にも関わ
らず、網羅的かつ体系的な特集が、図書館関係の雑誌で組まれたことはありませ
ん。その理由をここでは問いませんが、手前味噌を承知で、言うなれば幻の企画
が本誌で実現できたことを素直に喜んでいます。
せひ、紹介する事例とその事例にみられるノウハウを引き出し、自らも資金を調
達できる図書館が増えていく一助となれば幸いです。
編集兼発行人:岡本真
責任編集者:嶋田綾子
巻 頭 言 実践する図書館のために[岡本真]……………………………………………………… 2
特別寄稿 「記憶を失う」ことをめぐって
    アーカイブと地域を結びつける実践[水島久光 ]…………………………………… 5
特  集 図書館における資金調達(ファンドレイジング)[嶋田綾子・岡本真]………………… 63
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号
「ふるさと納税」を利用する
 [Case01] ふるさと納税で、児童書を整備
 [Case02] 納税者に「としょかんカード」の発行
 [Case03] 失効したポイントを利用する
 [Case04] 寄付された1000万円で、3043冊を購入
 [Case05] 寄付金で、児童書の購入やデジタル民話を作成
寄付を募る
 [Case06] 館内に募金箱を設置
 [Case07] 書庫整備のために寄付を募る
 [Case08] 寄付者に、フレンドリー利用証を発行
 [Case09] 300万以上の寄付で終身の特別利用証を発行
 [Case10] 基金で、被災した図書館の建て替えを目指す
 [Case11] 図書館まるごと寄贈を受ける
 [Case12] 地域の風習と寄付を組み合わせる
 [Case13] 人生の節目に寄付を提案
 [Case14] 館内に設置した自販機の売上げを寄付
 [Case15] クラウドファンディングに図書館ならではの引換券
本の寄贈を募る
 [Case16] 所蔵できない雑誌の号を寄贈で募る
 [Case17] 全国有数の社史コレクションを寄贈で作る
 [Case18] 友の会が寄贈本を集め販売
 [Case19] 寄贈本だけを所蔵する図書館
 [Case20] 「Amazonほしい物リスト」を活用した寄贈
 [Case21] 寄贈本にメッセージ
 [Case22] 寄贈者と図書館をマッチング(1)
 [Case23] 寄贈者と図書館をマッチング(2)
雑誌スポンサー制度を利用する
 [Case24] ベーシックな雑誌スポンサー制度導入館
 [Case25] 雑誌への広告掲載料をとるモデル
 [Case26] NPOが仲介する雑誌スポンサー制度
広告を募る
 [Case27] 貸出用レシートにクーポンを印字
 [Case28] 図書館への広告掲載事業
………………………… 70
………………………………… 77
…………………………………… 92
………………… 104
……………………………………… 112
……………………………… 118
……………… 123
……………………… 126
…… 138
寄付・寄贈篇 ………………………………… 69
広告篇 ………………………………………… 103
販売篇……………………………………………117
交付金・助成金篇……………………………129
さまざまな方法を
組み合わせた資金調達
……………………………143
………………………144
除籍資料を販売する
 [Case29] 除籍資料を1冊、100円で有償配布
 [Case30] NPOが、除籍本を販売
 [Case31] 常設コーナーで、除籍資料を販売
図書館が作成したものを販売する
 [Case32] 図書館で作成したレファレンス資料の販売
 [Case33] 図書館内でのオリジナルグッズの販売
オンライン書店と連携する
 [Case34] 検索結果を、オンライン書店に誘導
 [Case35] アフィリエイトの利用
 [Case36] 住民生活に光をそそぐ交付金事業
 [Case37] 科学研究費助成事業
 [Case38] 科学技術コミュニケーション推進事業
 [Case39] 地域情報化アドバイザー
 図書館事業に役立つ、交付金・助成金制度
 
 
民間の図書館における実践
 [Case40] 寄付やグッズ販売で、活動資金を調達する
 [Case41] 支援者の立ち位置に寄り添った支援調達
 [Case42] 寄付金や物販で「稼ぐ」図書館
 [Case43] ボランティアと「寄付・寄贈」で運営
 [Case44] 支援者と協力して、図書館を運営
参考文献 ………………………………………… 154
アカデミック・リソース・ガイド株式会社      
業務実績 定期報告 ………………………………… 156
定期購読のご案内 ………………………………… 158
次号予告…………………………………………… 159
アーカイブと地域を結びつける実践
水島久光
記憶を失う ことをめぐって
6 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
これから申し上げるのは、「 記憶は、どうやって失われるか」ということに関
するお話です。とはいっても「 記憶喪失」という言葉で語られるような、症状
や障害のことではありません。「 個々人」単位で起こるこうした現象は、主に精
神病理学的に扱われますが、今回のお話は、それは往々にして「 集団的」ある
いは「 社会的」、もっと突っ込んだ言い方をするなら「 歴史的」に生じうるとい
うことに焦点を当てたものです。
それは決して珍しいことではありません。というよりむしろ「 人間は忘却の
生き物である」といわれるように、忘れることの方があたりまえで、記憶を維持
し続けることの難しさはみんなが知っています。だから、私たちは子どもの頃か
ら一所懸命「 記憶」する技術を学び、ときに「 記録」することで、補完しよう
としてきました。でも天邪鬼な僕は、ある日不思議に思ったのです。本当に、忘
れることは自然なことなのだろうか、と。
1. はじめに
東海大学文学部教授。広告会社、インターネット企業を経て、2003
年に着任。メディアのデジタル化が主な研究テーマ。「映像アーカイ
ブ」に関係する実践を多数行っている。著書に『閉じつつ開かれる
世界』(勁草書房、2004年)『テレビジョン・クライシス』(せりか書房、
2008年)、『窓あるいは鏡』(慶應出版会、2008年、共著)、監訳書に
『コミュニケーション学講義』(D.ブーニュー著、書籍工房早山、2010
年)がある。BPO放送倫理検証委員。
アーカイブと地域を結びつける実践
水島久光(東海大学文学部)
記憶を失う ことを
めぐって
7ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
一方で集団を成す生き物である人間は、この忘却を他者との関係によってカ
バーする術を磨いてきました。「 社会」はすなわち、記憶の集積によって築かれ
ると言ってもいいかもしれません。世界中の様々な民族が固有の神話を持ってい
ることが、社会と記憶の密接な関係を表しています。記憶を集団的に構築してい
くためには、その組み立てを組織的に行う必要があります。そこには当然、権力
装置が不可欠であり、「 選ばれる記憶」と「 捨てられる記憶」の区別が設けられ
ていきます――これまで「 集団的」な記憶喪失は、こうした権力装置による統
制の結果として、また政治学的なカテゴリーにおいて語られてきました。
しかし、それだけで「 集団的」に記憶を失うという現象を語り尽くすことは
できるのでしょうか。統制はむしろ、生来、人間にそなわった忘却のメカニズム
に乗じて、人々の記憶への介入、操作を企図したものではないのでしょうか。僕
たちは統制の強制力を意識することができます。ゆえにそれに対するストレスが
原因となって、逆に記憶を内面において強化するということも、少なからず経験
してきているでしょう。つまり「 覚えている」「 忘れてしまう」という現象は複
雑で、そう簡単に説明できることではないのです。
20世紀はマス・メディアの時代だったといわれます。新聞、ラジオ、テレビ
といった強力な記録・伝播システムが、この100年間で一気に日常生活を覆い
尽くしました。その間に2つの世界大戦があり、その後は数々の地域紛争が勃発
し、グローバル経済の発展があり、そしてバブル経済の崩壊がありました。ざっ
と振り返ってみるだけでも、僕たちの記憶と忘却に関わる環境変化は、このよう
な世界の「マス」化をめぐる攻防との関係で考える必要があることがわかります。
記憶や忘却の集団性は政治、経済、文化を横断するような社会システムの変化に
媒介されているのです。
その文脈で言えば、前世紀末から畳み掛けるように起こっている政治、経済、
文化の変化、そしてそれを支えるメディアの動きは、この20世紀型の「 マス」
化とは異なるベクトルで、新たな秩序が形成され始めていることを予感させてく
れます。「 国家」という枠組みの再考と再編、財政破綻と金融危機、現在進行形
で語られるこれらのアジェンダの背景には、各社会システムを通底するテクノロ
ジーの総デジタル化があります。
いま僕たちは数百年に一度の「変化」に直面しているのです。その中で「情報」
になんらかの関わりを持つ仕事をするということは、どんな意味を持つのか――
なんだか、一気に話が大仰になってきたように感じられるかもしれませんが、そ
8 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
れは「 社会」が「 記憶システム」である以上、避けることができない問いでは
ないかと思います。大事なことはその「 社会」が、一人ひとりから成り立って
いるということ。こういう時だからこそ、個人的な記憶/忘却が集団的な記憶/
忘却に結びつくプロセスや、顕在化した社会システムおよび統制の後景にあるメ
カニズムに、接近する努力を怠ってはいけないように思います。
僕はここ数年、この難しい問題に具体的な「 地域」に生きる人々の具体的な
「 トピック」からアプローチしてきました。最近、ようやくその問題の輪郭が
見え始めたような気がしています。この原稿を書こうと考えたのも、この時期だ
からこそ書けるデッサンを、肌理の粗い筆致かもしれないが残しておこうと思っ
たからです――僕自身の「 記憶」と「 忘却」を素材に自問自答することは、そ
れこそ「 この時代の当事者」として、「 情報」に関わる仕事の意味を問い直す作
業につながるのではないかと。
2-1 テレビ・システムと社会システム
僕はもともと放送研究をなりわいにしてきました。番組を記号論的に分析して
論文を書く一方で、この巨大メディアのデジタル化に興味をもち、その全体の動
向を解釈すべく、変化の兆候に目を凝らす作業を続けていました。
かつてテレビは「 集団的な記憶装置」たることによって、20世紀の僕たちの
生活を覆うことに成功したといわれています。実際、1961年生まれの僕は、ま
さに自らの記憶を構成するイメージの多くがテレビのモニターに依存しているこ
とを自覚しています。しかしそれは物質的な、あるいは技術的なカテゴリーとし
てのテレビの機能に依存しているというよりも( それ自体が記憶システムであ
るところの)、「 社会」が、その生成原理をテレビに委ねていたことの表れとい
えます※1
。
テレビがどのようにして「 社会化」を担ってきたか――それはこのメディア
が特にかたち作ってきた時間と空間との関係に支えられてきました。地上波の物
性と戦後民主主義の要請は、生活の実時間を参照軸に番組を編成し、同心円的に
ナショナルな空間を覆う系列の秩序化を促しました。その結果私たちは同じ時間
2. 導きの糸―テレビから、ポスト・テレビ時代へ
9ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
と空間を共有するヴァーチャル感覚を身につけ、それを媒介に「 社会」を認識
するようになったのです。
実際、テレビは意識的あるいは無意識的に、60年間そのシステムの再生産に
努めてきたと言えます。U・エーコが「 ネオTV」と命名したように、1980年代
以降、特に顕著にテレビは、自己言及的に組織構築していく運動体へと純化して
いきました。矛盾めいた言い方をしますが、僕はそのことがテレビ自身の手に
よってテレビ時代の黄昏を生み出す契機となったと考えています※2
。
テレビ・システムの純化が進む一方で、それとカップリング関係にあった「社
会」も、自己組織的に、少しずつその形を変えていきました。資本主義の原理で
ある拡大再生産( マス)モードは、時空間秩序に準拠した物理的限界まで広が
り尽くすと、今度はその秩序自体を崩すことで、「 情報」という目に見えないモ
ノの増殖を促し、それによって自己保存を図る方向にシフトしていきました。既
に僕たちの社会は、地理的には一部の独裁政権を除き、24時間、360度の全てが
「市場」に覆い尽くされています。
旧来のテレビ・システムの限界は、こうした社会環境の変質との関係で考える
ことができるでしょう。デジタルメディアの普及、あるいはあらゆるメディアの
デジタル化は、「 拡張」が物理対象の地平から離陸し、別の( 数理的)次元にそ
の主戦場を求めていった結果なのです。しかしそうなると、本論の主題である
「記憶」の問題は、どう考えたらよいのでしょうか。「社会」が「記憶システム」
として成立するという前提を踏まえるなら、それが「 情報」として、物理的現
実から離れていこうとしているという事態に、僕たちはどのように向き合うこと
ができるのでしょう。
少し具体的な事柄に引きつけて、このことを考えてみましょう。それは「 戦
争の記憶」という問題です。日本のテレビにとって( 特に公共放送たるNHKに
とって)、ずっと「 戦争」は特別なアジェンダでした。それはこの国の放送の歴
史と深く関わっています。かつて政治の支配下に置かれたメディアは、戦後民主
主義体制の構築過程の中でリ・デザインされ、テレビ放送は( 沖縄を除く)日
本の主権回復の翌年に、それを支えるものとしてスタートを切りました。した
がって、戦争・戦後というワードは、このメディアのレゾン・デ・トルと深く結
びついているのです。
ここでいう「 戦争」は、もちろん一義的には、かの満州事変に始まるアジア
太平洋15年戦争のことを指します。しかしテレビは、必ずしも直接的にその「記
10 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
憶」を指し示していたわけではありません。
桜井均は『 テレビは戦争をどう描いてきたか 映像と記憶のアーカイブス』( 岩
波書店、2005年)でこのことを指摘していますが、彼が言うところの戦後およ
そ40年あたりまで繰り返される戦争言説の「 モノローグ性」は、「 記憶」への向
き合い難さに対する的確な表現ではないかと思います。生々しい「 印象」を言
語化することもできず、また特に戦後すぐは、それを助けてくれる資料も多くが
公開されないままの状態にあったわけで、戦後の人々の「 戦争の記憶」は、長
らく「近くにあれども、語り難い」対象であったのです。
テレビはそうした人々の心性を映し出す「鏡」であったと言えます。NHKの『日
本の素顔』から『 現代の映像』『 ある人生』へと続く初期テレビ・ドキュメンタ
リー、あるいは民放( TBS)で村木良彦や萩元晴彦が行った新しいテレビの可能
性を問う実践番組でも、「 私、あなた」と「 いま」という直接的な言及対象を介
して、影絵のように、戦争という「過去」と、それをもって個を圧迫した「社会」
を思い描くアプローチが採られていました。それが徐々に「 過去」に遠ざかり、
資料が開示されるとともに記憶が社会的に組織され、他者性を帯びていく――こ
の変化について、僕たちはもう少し自覚的であってもよかったように思います※3
。
2-2「2005 年」はなぜ振り返るべき節目となったのか
その点では2005年、「 かの戦争」の終結から60年という節目は、最も戦争の記
憶に関する言説が「 多声的( ポリフォニック)」な様相を呈した年ではなかった
かと思います。それまでも日本人は、10年単位でメモリアル・イヤーを設定し、
戦争を振り返ることをしてきました。しかしそれは先の桜井の指摘にあるように
心理的にも、資料的にも、また研究としても十分に「開かれたもの」ではなかっ
たことは確かなようです。坪井秀人も文学研究の立場から、著作『 戦争の記憶
をさかのぼる』(ちくま新書、2005年)でそのことを検証しています。
しかし2005年はさまざまな条件が重なり、「 かの戦争」を振り返る言説がメ
ディア上に溢れかえりました。天皇崩御から16年が経過し「 昭和」という時代
に一定の距離をとることが可能になったこともあるでしょう。同時に東西冷戦
の終結からほぼ同じだけの時が流れ、世界的に「 戦争」や「 紛争」を問い直す
ムードが出てきたことも見逃せません。しかし何よりも大きな影響を与えたのは、
2000年に米国で「 日本帝国政府情報公開法」が成立し、アメリカ国立公文書記
11ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
録管理局などが保管していた戦時下の日本に関する記録が、一気に機密指定から
外れたことでしょう。それまで明るみに出ていなかった様々な事実が、検証可能
になりました。
それに併せてもう一つ、決定的な変化が起こり始めていました。それは戦争体
験者の老化という避けがたい事実と、それに対する体験者自身および、彼らを取
り巻く人々の心の変化です。気がつけば60年という時の流れの中で、既に「 戦
争」を自らの言葉で語りうる多くの人は鬼籍に入り、ドキュメントの軸足は「記
憶」から「 記録」に移り始めていました。存命の人でも、当時既に成人に達し
ていた人は80歳を超え、特に戦地の過酷な経験を持ち、口をつぐんでいた兵士
や在外者の中には、やがて訪れる「 自らの死」に向き合う意識から、言葉を発
し始める人々が現れ始めたのです。
また「 かの戦争」に対して高い意識を持つ戦後世代、特にジャーナリストた
ちは、この記憶と記録を媒介する「 証言」という行為に注目をし始めました。
体験者を潜在的証言者として位置づけ、その希少化から言葉を拾うことに群がる
一種の「 証言ブーム」が、この年を契機に加速し始めます。それはそれで大事
なことなのですが、この「 大量生産」は証言に対する無批判性を生み出すよう
になっていきます。記録に残さねばならないという使命感が集合的実態を伴うよ
うになってくると、その「証言」の数の大きさがポジティブな雰囲気を醸し出し、
その内容の多様さに対する関心を相対的に薄れさせるのです。
実際、「 記憶」とは極めて複雑で、不確かなものです。それまで口にすること
を躊躇っていたことがらでも、人は思い出すこと自体を完全に封じ込められるわ
けではありません。おそらくその個人の脳裏においては、ことあるごとに何度も
それは想起( recall)され、そのたびに「 更新」されてきたはずです。その意味
で「 記憶」とは、決してその対象である出来事との最初の出会いから、フリー
ズしたまま時を超えて運ばれるものではないと言えます。「 言葉」は、その更新
に大きな役割を果たします。頭の中に止まってきたイメージが言語化され外化さ
れるとき、記憶にはその時々の様々な「 いま」が絡み付き、新たな文脈の中で
再生されることになります。
その中でも、「 証言」は語る行為と語られる内容の時制が交錯するという意味
で、特異な表現態であるといえます。すなわち「 証言」は、それ自体の形式に
おいて「 記録」として扱われうる必然性は備わっておらず( オーラル・ヒスト
リーの作法においても、それが「 記録」と見なされるのは、「 筆記者」によって
12 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
書きとめられる限りにおいてである)、その語りの対象内容と、聞き手との関係
の間にあって、偶然的にそうであるにすぎません。
その意味で戦後60年というタイミングは、戦争という「 対象」と、聞き手
( ジャーナリストたち)の「 ニーズ」が重なり、体験者たちの過去に関する語
りを貴重な「 証言」として記録化するフレームとなったと言えます。それにさ
らに重なったのが、先に述べたような元機密資料の公開です。こうして「証言」
と「 資料」の出会いが、この時期のドキュメンタリーの中に「 新たに発見され
た資料をもとに、寄せられた証言とともに過去の出来事を検証する」という宣言
をクリシェ(常套句)として生み出していったのです※4
。
専ら「 いま」を描くメディアとして君臨してきたテレビが、「 過去」を主題と
することは、様々な困難をその中に抱え込むことを意味します。「 検証」はもち
ろん、その時間の隔たりを埋めるための一つのアプローチですが、しかしそれは
よく考えれば、決して簡単なことではありません。しかし、かのクリシェは、特
に形式化が進んだテレビ・ドキュメンタリーのアバンタイトル( タイトル前の
概要紹介シーン)の中に、そもそもそれが番組の自明の目的であるかのように挿
入されています。
この年から数年の間、戦争に関するドキュメンタリーは、その前後と比較して
も積極的に制作されたように思います。しかしそれらは本当にアバンタイトルの
「 宣言」どおり、あの過去の出来事の「 検証」をしたのでしょうか。そもそも
「 検証」とは、何をする行為なのでしょうか。それは「 記録」と「 証言」をた
だ「棚卸し」し「陳列」することと、どこが違うのでしょうか――2013年の「い
ま」、2005年を振り返るべき節目と考えることは、一つのメモリアル・イヤーで
あることを超えた、大きな問題がその時期に実は提起されていたということ、そ
して「 同時代的感覚において」その問題を見落としていたことを( 遅ればせな
がらではあっても)確認するということに他なりません。まさにミネルヴァの梟
のような話ではありますが。
2-3 時空間認識のパラドックス
とりあえず議論を先に進めるために、まず「 ざっくり」と、2005年を境に僕
たちをとりまいている「 メディア」と「 社会」のカップリングの仕方に、何ら
かの変化があったのではないか、という仮説を立ててみようと思います。
13ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
それはおそらく、「 事実」に対する感覚に表れていると言えましょう。僕たち
は日常会話レベルでは、結構ナイーブに「 事実」という言葉を使っていますが、
よくよく考えてみればそれは極めて危うい扱いの難しい概念です。「 事実」は多
くの判断を支える根拠として求められる一方で、それ自身は常に「 媒介的」に
しか立ち現れることができません。
「 ありのままの事実なんてものはない」「 それは必ずどこかの視点からの『 見
え』でしかない」――これらはジャーナリズムやメディア論の基本中の基本の
テーゼであり、社会認識の出発点とされてきたことでした。それは科学的認識に
関しても、大きな違いはありません。常識とされてきた知識も、その多くは「人
間」と「 自然」との対立関係を前提とした、技術論的パースペクティブの下に
あることは、今や多くの人々が認めるところです※5
。西欧中心主義やデカルト的
な近代意識の超克といった議論は、多かれ少なかれ、20世紀における認識批判
によって導かれたものと言えます。まあ、その行き過ぎたものとして、「ポスト・
モダン」的相対主義に陥る場合もありましたが。
ところが昨今まわりを見回すと、いつの間にか再び、かのナイーブな「事実」
主義(「 事実」なるものへの無批判性)が広がってきているように思えます。東
日本大震災以降、それはさらに加速して、「 マス・メディアは嘘をつく」「 政府・
官僚・学者は事実を隠ぺいする」と声を荒げ、糾弾する人々を日常的に目にする
ようになりました。「 事実」は認識し得て当然、もしそれができない場合、そこ
には何らかの悪意が存在するという決めつけに走るこの極論、安易さには、むし
ろ20世紀以前の状態への回帰というよりも、何か未曾有の事態の到来を感じず
にいられません。
この「 事実」に対する認識の急転回は、社会全般の「 不寛容さ」の増大と結
びついています。「 本音」を晒すことが、さも潔いかのごとく、言葉を選ばずに
他者を攻撃する人々が、このように白昼堂々、往来を闊歩するような時代が来る
とは、正直思ってもみませんでした。それは無邪気に迷彩服を着て、戦車に乗り
込みポーズをとるような人が、一国の首相なのですから、「 さもありなん」とい
うことなのかもしれません。この「 右翼的思想」の広がりだけでなく、レイシ
ズムも反レイシズムも、双方が視野狭窄に陥っているようなこの状態をみると、
あの認識批判の時代は、どこにいってしまったんだろうと不思議に思います。
それは「 事実」に対する意識的な絶対視というよりも、むしろ逆に短絡、す
なわちその透明性を生み出す技術に対する無自覚が生じているように僕には思え
14 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
ます。既存の「 目に見える対象」をとりあえず肯定するが、仮に確からしきも
のがそこに「 見えない」ときには、反射的苛立ちが抑えられないといった衝動
が剥き出しになった状態――つまりそこでは「 何が」見えているのか、その対
象の内容には関心がなく、とりあえず「何かが」見えているという「メタ状況」
にあることが大事なのです。
それは自らの存在の確かさが失われた状態であり、その病理は遠近感を失った、
「 生きられる世界」に対する感覚機能の劣化に求めることができます。僕たち
の遠近感の基本は時空間認識であり、過去と未来の間に現在を、HereとThereの
間に距離を設定する能力にあります。いま、多くの人々が次々に存在の不安を直
接/間接に訴え、そこにいつの間にか68年前に終わったはずの「 戦争」の姿が
亡霊のように現れ、不安を不安で相克しあうようなオカルト的世界が展開し始め
ているという現実は、時空間認識が崩れた極めて危険な状況であるとしか言いよ
うがありません。
この「 事実」に対する麻痺、あるいは痙攣的な無感覚状態は、しかしながら
よく考えてみれば、「 情報化社会」においてよく見られる「 日常の風景」の範列
の一つとも言えます。何かを考える前に(考えるという回路を避け)、指はスマー
トフォンを、ゲーム機をさわり、その微かな触感と、送り届けられる微細な視聴
覚的変化に心を研ぎ澄ます毎日。「存在への不安」(メディアへの埋没)と「意味
に対する背走」( 社会への埋没)というカップリングから、無時間・無空間的世
界において、反射的行動を繰り返す――ここに誕生した「 新しい人間」は、ま
るで「認識すること自体を放棄した」かのように見えます。
かつて「情報化社会」は、「情報量が拡大する社会」と言い換えられていました。
この文脈において「情報」は、あくまで僕たちが「知りうる対象」としてイメー
ジされていました。つまりそれは、仮にそれがメディア上に溢れるようになった
としても、検索サービスを使えば常に「 可能的」に手にすることができるもの
であり、したがってそれを利用「 できる/できない」は、個人のリテラシーに
還元されるものとみなされるようになりました――これは、例の「自己責任論」
と同じ構造です。
この「 先取り感」( 一種の全能感)こそが、遠近感の喪失の表れであり、今日
の時空間認識の乱れそのものとは言えないでしょうか。何でも知っている( 知
り得る)かのような傲慢さと、自らをまとい、守るものを何も持っていないかの
ような臆病な振る舞いの同居。そうした人々の姿は、この「 社会」が機能不全
15ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
に陥っている証であり、それはまさに拡大した「 情報量」に対する、認識シス
テムの相対的敗北であると僕には映るのです。
なんだかすごく大仰な話を聞かされていると思われるかもしれませんが( 繰
り返しますが)、これが本論の主題です。「 社会」が「 記憶システム」であると
いうことは、その「 記憶」こそが、実は僕たちの身を守る「 衣服」であったの
です。たとえ話的に言うならば、それはテレビ・システムからの衣替えの季節を、
僕たちはきちんと整理整頓しながら、越えることができるのか( これまで、そ
うしてきたか)という問いになるでしょう。
テレビとともに作り出された時空間の代わりに、どのような時空間認識がデザ
インできるのか。そこにおいて「 記憶」と「 記録」の関係は、どのように定義
されるのか。そしてかつてテレビにとって「戦争」が特別な対象であったように、
僕たちの生存を脅かすようなカタストロフィーをどのように位置づけるのか――
ポスト・テレビ時代が、絶望と社会的「 記憶喪失」の時代にならないようにし
たい――ここから少しずつお話ししていくことは、そうした新たな歴史記述に関
わる試みの一部です。ちなみに僕はそれを「 アーカイブ実践」と呼んでいるの
です。
3-1 2005 年 8 月の『戦争』関連番組という「映像群」との出会い
「 2005年8月に放送される『 戦争』に関する番組を、一通り録画してみよう」
――最初にそれを思いついたときには、本論でここまで述べてきたような構想は
当然ありませんでした。むしろ恥ずかしながら、「 デジタル機器による大量録画
ができるようになったのだから、やってみよう」というぐらいの技術的好奇心に
促された軽い気持ちで、その対象を探したような側面の方が強かったように思い
ます。この年の8月1日から31日までの1ヶ月間に録画した番組は、地上波と衛星
放送( ハイビジョン除く)を合わせて計110番組に上りました。そのうち不完全
な録画や、重複( 期間内再放送)などを除くと78番組。これが、僕の手元に構
築された最初の「私的アーカイブ」ということになります。
とはいうもののこの時の僕には、「 アーカイブを作る」という意識はあまりあ
3.「私的」にアーカイブを構築することについて
16 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
りませんでした。分析の対象として、複数の番組を録画しようとしていただけで、
「 番組」が群として存在することにこれといった「 意味」を感じてはいなかっ
たのです。もちろん、「 アーカイブ」という言葉は知っていましたし、2003年か
ら「 NHKアーカイブス」の事業が本格的に開始されていましたから、それも頭
にはありました。しかし、アーカイブといえば大規模な公共設備の事業イメージ
がありましたし、一方でPC用語にも「 アーカイブ」はありましたが、概念的に
それらを結び付けようという考えもありませんでした。
ですから僕の「 アーカイブ論」は、定義づけや理論的考察よりも、ある意味、
体験に先導された感が強かったといえるでしょう。それはまず「 情報が群れと
なって、押し寄せてくる」感覚として表れました。それに気がついたのは、録画
した78番組のリストを作成している最中だったと思います。録画は、対象とし
た各局をまんべんなく行ったのに、( 当たり前のことではありますが)それは決
して均等ではなく、「波」あるいは「塊」として「記録」されていったのです。
「 NHK」はその中で、最も大きな「 塊」を成していたと言えます。なにしろ録
画番組中の約7割( 54本)を占めていたのですから、この年8月のNHKの番組編
成は、いかに『 戦争』を中心に組み立てられていたかがわかります。うち33番
組が地上波。当時、衛星放送は三波ありましたが、それはあくまで地上波の補完
的な位置づけで、中心はあくまで総合・教育( 現・Eテレ)にありました。NHK
=公共放送という存在そのものに、いかに「 戦争」が刻みつけられてきたかに
ついては( 簡単ではありますが)既に述べた通りですが、そのことはこの国の
公共性( Publicness)の概念が、この「 記憶」を想起することと深く結びついて
いることを表しています※6
。
その中心に「 塊」としてあるのが「 NHKスペシャル」です。NHKの番組制作
史のメインストリームとして扱われるこの番組枠は、今日でこそ多様なテーマ、
ジャンルに開かれてはいますが、そもそもは『 日本の素顔』『 現代の映像』に始
まるテレビ・ドキュメンタリーの系譜を正統に継承する流れに位置づけられます。
特筆すべきは、通常は日曜21時を中心に( シリーズ企画などは他の曜日にも)
放送されてきたこの番組が、2005年の8月は、6日から14日まで連続9日間「 戦
争」を題材にした異なるテーマの番組を放送し続けたという事実です。これだけ
連続して、しかも異なる形式・主題の番組を「 スペシャル」の名の下に放送し
続けたということは、極めて異例であることは言うまでもないでしょう。
 
17ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
6日:被爆60年企画   被爆者命の記録 ∼放射線と闘う人々の60年∼(21:00-22:15)
7日:終戦60年企画   ZONE・核と人間(21:00-23:15)
8日:終戦60年企画   追跡 核の闇市場 ∼放置された巨大ネットワーク(21:00-21:58)
9日:被爆60年企画   赤い背中 ∼原爆を背負い続けた60年∼(21:00-21:53)
10日:終戦60年企画   コソボ・隣人たちの戦争 憎しみの通り の6年(21:00-21:58)
11日:終戦60年企画   そして日本は焦土となった ∼都市爆撃の真実∼(21:00-21:58)
12日:終戦60年関連企画 ドラマ「象列車がやってきた」(19:30-20:45)
13日:終戦60年企画   靖国神社 ∼占領下の知られざる攻防∼(21:00-22:13)
14日:終戦60年企画   戦後60年 靖国問題を考える(21:00-22:45)
15日:日本のこれから  戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本
           (第1部:17:10-18:20、第2部:19:30-21:30、第3部:22:30-24:00)
これらの番組群には、いずれも「終戦」あるいは「被爆」60年企画という冠が
つけられていることから、「 一連のもの」として視聴されることを想定して、ラ
インナップが組まれたことがわかります。また「 NHKスペシャル」の枠ではあ
りませんが、7日から9日の3夜連続で「平和アーカイブス」と題して、「NHKアー
カイブス」の特番が放送され、この枠以外にも幾つかの再放送番組も含めて、戦
争に関する過去の映像と向き合い、知識を更新する機会が時系列で積み重ねられ
ていく編成になっています。
<平和アーカイブス>
7日:語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第一夜 原爆投下・その時何が(23:25-24:45)
8日:語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第二夜 被爆者たちの60年(23:00-24:00)
9日:語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第三夜 伝えたし、されど(24:15-25:35)
★「平和アーカイブス」以降、「環境アーカイブス」(2006)、「にっぽんくらしの記憶」(2007)
とこのアーカイブス特別企画は続くが、「ともに、いきる」(2008)以降「教育アーカ
イブス∼学び、伝え、はぐくむ」(2009)「女性のためのアーカイブ」(2010)と次第にトー
ンダウンし、NHK スペシャルとの番組連動も少なくなる。
そしてこの一連の番組郡のピーク=「 波」は、15日の特別番組「 日本のこれ
から 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本( 第1部:17:10-18:20、第
18 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
2部:19:30-21:30、第3部:22:30-24:00)」に持ってくるように、デザインされて
いることに気づかされます。つまり「 戦争」をテーマにしつつも、各番組の眼
差しは「 当時の( 被爆に代表されるような)ナショナルなアジェンダ」に囚わ
れないように現代の「 核」問題や「 国際紛争」、あるいは国内では地方の都市爆
撃に焦点を当てるなど、さまざまな論点に目が行くように編成に心を配り、それ
が「 討議」に集約されていくように、大きな流れが「 設計」されているのです。
この、まるでハーバーマス的「 議論する公衆」を意識したような、押し寄せ
てくる番組群のうねりには、一種の公共放送NHKの正統的な自意識の表れを見て
とることができます。しかし、ここまで「 あからさま」にその「 目論見」が表
れた年は、後にも先にもありません。その意味でも2005年という年は特別であっ
たと言うことができます。
ところで2005年8月の1ヶ月を通じてコンスタントに「 戦争」関連番組が放送
され続けたといえども、さすがにこの年も終戦記念日というピークを超えると数
は減り始めます。そしてそれとともに、テーマも変化します。それは「 日本人
の体験」を超えて、「 戦争」一般を問うシリーズに広がり、さらに「 戦後60年・
歴史を変えた戦場」( 衛星第一)、「 アウシュビッツの真実」( 総合)といった番組
へ――すなわち「 8月15日以後」は、かなり意識的に、「 戦争」と「 現代社会」
の関係を問いかけるべく視野を広げようとしたのだと思います。
一方、民間放送もこの年は相当「 力」を入れました。例年、8月の被爆・終戦
企画にはドラマが多いのですが、大型特番だけでなく通常枠を使いながらドキュ
メンタリーをシリーズ化し、あるいは娯楽番組の中に「戦後」「昭和」などのキー
ワードを入れ込むなど、かなり丁寧な編成の跡を見ることができます。さらに民
放ならではのタレントを活用した情報番組的構成も、ヘビーな題材に対する視聴
者のハードルを下げる効果を発揮し、NHKの番組編成を補完する絶妙な役割を果
たした感があります。
こうして僕は、この年の「 戦争関連番組」78本のリストを作成し、その全体像
に向き合う経験を通じて、もはやそれが単に個別コンテンツの集積に止まるもの
ではないことを知るに至りました。すなわちそれは、全体が一つの「 群」とし
て表れ、特有の時間・空間軸との参照関係の中で、見る者に「波」あるいは「塊」
としてそのコンテクストを突き付けてくる、小さいながら「 意味を持った」集
合体として認識されたのです。
そもそもアーカイブとは何か。それは「 データベース」や「 ライブラリー」
19ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
といった類似概念と何が異なるのか――それまでも何度か、こうした議論に参加
したことはありました。そんな中で今も僕のベースを成しているのは、ミッシェ
ル・フーコーを引いた「 ひとつの時代、ひとつの社会、ひとつの文化において、
<言われること>・<書かれること>の存在論的なステータスを具体的に統御し
ているシステムのこと」( 小林康夫他編『 フーコー・ガイドブック』ちくま学芸
文庫、2006年、p.63)という定義です。それに従えば、アーカイブとは決して
普遍的なものではなく、特定の社会・文化との関係の中に置かれる( システム
を成立させる)「秩序を備えたもの」ということになります。この2005年8月の録
画体験は、ある意味、この定義に具体的な実感を与えるものだったと言えます※7
。
3-2 情報秩序=出会い方を制御する/テレビとインターネット
しかしこれまで述べてきたような「 秩序・統御」感は、この「 戦争番組群」
の場合、「 アーカイブ」として形成されたものというよりもむしろ「 テレビジョ
ン」というシステムに備わっていたものであり、そこからある「 塊」を抜き出
したことによって顕在化したもの、ということもできます。果たしてこれらの
「 群」の意味は、そこに止まるものなのか、それとも「 アーカイブ化する」と
いう行為によって、新しい「 何か」が加わる可能性があるのか――僕の興味は、
次第にそこに移っていきました。つまりアーカイブの秩序は、この場合2005年
8月のタイムテーブル( 時空間編成)を外したところに本来見えてくるもの――
「 アーカイブ的」な人々との出会い方( メディア・コンタクト)とは何か、を
考えることに向かっていったのです。
手がかりは「 デジタル化」の中にありました。例えばインターネットを介し
た情報サービスに目を移してみましょう。その「 情報」との出会いは、どのよ
うにかたち作られているでしょうか。最近は、スマートフォンやタブレットPC
をメイン端末としたアプリケーション・ベースのプラットフォームが若い人たち
を中心に広まっていますが、ちょっと前まで( Windows95以来のこの十数年)
は「検索」がその「出会い」を集約するスタートページの役割を担ってきました。
そのいわゆる「 ポータル・サイト」といわれてきたものが、どのような機能を
もっていたのか――それは一度整理をしておいた方がいいかもしれません。なぜ
ならばそこに、「 データベース」と「 アーカイブ」を分節する要素が散りばめら
れている、と考えることができるからです。
20 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
1996年から2001年の春まで、ポータル・サイトの運営に携わっていたことも
あって(当時は、あまり学問的な裏付けもなく、ですが)、人々がいかにして「知
識」と出会うかについて、経験則も含め、幾つか可能なパターンを考え、それを
サービスとして実装するといったことを仕事にしていました。その時に気づいた
ことは、「 人は、自分が既に知っていることとの関係において、新しい知識と出
会う」ということです。この「 既知」とは何かが結構厄介で、そこには様々な
レベルがある――「 ポータル・サイト」の設計のキモは、要はそれをどう定め
るかにあったわけです。
「 検索」サービスが最も日常的に用いる機能は、キーワードによる探索ですが、
実はインターネット初期、これを使いこなせる人は意外に多くありませんでし
た。それは「そもそもどんな言葉を選んだらいいか」を考えることに、高いハー
ドルがあったからです。キーワードが具体的に思い浮かぶということは、もう既
にその段階で、求める情報とそのキーワードとの関連性が、相当レベルでイメー
ジできていることを示しています。従ってよく言われる「検索」の精度の実態は、
事前に形成されるイメージと検索結果とのマッチングの程度である、と言うこと
ができます。
しかし(既に述べたように)ここには様々なレベルがあります。例えば「ポー
タル・サイト」の「 キーワード検索」に並ぶ主機能に「 ディレクトリ」があり
ます。これは、内包に対する外延というか、探索対象を言葉同士の関係に求める
のではなく、カテゴリーという次元の違う意味集合から階層的に絞り込んでいく
アプローチです。「ディレクトリ」はものごとを概念化、あるいは「分類」「整理」
して捉える発想を持つ人に適合する出会い方で、常に対象を集合の要素としてイ
メージする習慣がある人に適しています。未知な対象についても、既知のカテゴ
リーのリストと対照させることによって範列的に理解し、その理解によってカテ
ゴリーを豊かにしていく作業を通じて、認識世界を広げていく人、と言ってもい
いかもしれませんが、これは全ての人、全ての対象に当てはまるものではありま
せん※8
。
初期( 1990年代)のインターネットへのゲートウエイは、「 キーワード検索
( サーチ)」と「 ディレクトリ」の2つの機能で十分と思われていました。しか
しそれはある意味、積極的に情報に向き合う人に限られていました。それが徐々
にメディアとしてのすそ野が広がるに従って、いわゆるマス・メディア的機能が
ネットに求められるようになり、その結果、2000年代のポータルには「 コミュ
21ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
ニティ」「 コンテンツ」「 ニュース」サービスの充実が求められるようになったの
です。
ポータル・サイトは当時、テレビとは異なる意味で「 パブリックな情報サー
ビス」を目指していました。「 異なる」というよりも、アプローチは「 真逆」で
あったといえるかもしれません。テレビは、同時的中央集権的( =同心円的)
な情報の流れを作ることで、ナショナルな認識共同体を作ることに成功しました。
しかしそれがうまくいったのは、戦後のこの国の社会的なモードが、そのシステ
ムと相補的な関係が築けたからです。しかしポスト・バブル期と、情報の流れの
多様化は、テレビが自らのシステムを成立させるために犠牲にしてきた「 それ
以外の情報接触のあり方」の可能性を開く場を求めました――その期待が生み出
したのが「ポータル・サイト」だったと言えます。
先ほどのアーカイブの概念に従って振り返るならば、「 ポータル・サイト」の
システムは特定の統御の仕方を内包するものではなく、様々な「 出会い」に開
かれることを志向していました。今では、「 ポータル・サイト」も一定の役割を
終え、「 ソーシャル・メディア」なるものが、新たな期待の受け皿になっていま
す。「 ポータル・サイト」が、その理想を実現させることができたか否かを評価
することは簡単ではありませんが、「情報との出会い方」に注目するならば、「テ
レビ」→「ポータル」→「ソーシャル」という展開は、再び特定の統御の仕方に、
パブリックなメディアの原理を委ねる流れに戻ってきているように映ります。具
体的に言うならば、同時的中央集権的から多時間的島宇宙的秩序(コミュニティ
的秩序)へ、と言ったらいいでしょうか。
秩序を内包するという意味で「テレビ」も「ソーシャル・メディア」も、「アー
カイブ的」であると言えます――とりわけその「 コンテンツの集積」という側
面に光を当てるならば( 一方、この論点に照らすならば、「 ポータル」は「 デー
タベース的」であったといえましょう)。しかしそれでも「テレビ」も「ソーシャ
ル・メディア」も厳密な意味で「 アーカイブ」であるとは言えないのは、時間
と空間の参照関係において、それはむしろ秩序本質が「 ネットワーク」性にあ
るからでしょう※9
。
仮説的に定義するならば、「 ネットワーク」は時間を統御することによって利
用者の空間認識を作り出すのに対し、「 アーカイブ」は逆に空間を統御すること
によって時間に対する認識を促す、システム概念であると言えましょう。さら
に言えばこの定義が、「 アーカイブ」と「 ライブラリー」の間に一線を引くヒ
22 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
ントを与えてくれます。「 ライブラリー」は、その空間秩序自体の再生産装置で
あるといえます。ポータルのディレクトリが実体化したものとしての「 ライブ
ラリー」は、「 分類」という知的営みそのものに奉仕する機能に特化していま
す。その点で、具体的な生きられる世界と僕たちの認識との関係で考えるならば、
「 ライブラリー」は「 データベース」に近いポジションに置くことができるで
しょう。
3-3 過去と現在、そして未来が出会う――アーカイブの秩序原理
少し寄り道をしながら面倒な思考実験をしてみたのは、2005年8月の戦争関連
番組の録画とその整理作業をしながら僕が初めて感じた「 アーカイブ体験」と
は何かを、はっきりさせたかったからです。
アーカイブが秩序性を内包すること、空間の統御が時間に対する認識を促すこ
と――テレビの独特の編成から「 切り取って」アーカイブを作るということは、
すなわちその固有の秩序性を逆転させることに他なりません。テレビが「戦争」
を題材にして、同時的映像体験から創造を促す空間認識は、「 ナショナル」とい
うフレームであるといえるでしょう。それが、戦後のこの国に誕生したメディア
の「 パブリック」の次元における使命であり、だからこそこのテーマには、特
権的ポジションが与えられ続けてきたのです。
それを「 アーカイブ化」するということは、そこに別の秩序を与えることを
意味します――実はこのアプローチは、僕が始めたとか、偉そうに言えるもの
ではなく、先行する取り組みがあったからこそ気づいたのですが――桜井均の
『テレビは戦争をどう描いてきたか』(岩波書店、2005年)が、まさにそうでした。
NHKのプロデューサーであった桜井は、実務を介して個人的に保管していた映像
データを素材に( 公式のNHKアーカイブスのプロジェクトとは全く別に)「 私的
アーカイブ」の構築を既に行っていました。この本は、まさにその「 テレビ」
の「アーカイブ化」の記録だったのです。
桜井がその作業を通じて発見した「 秩序」は、「 戦争を語ること」の時間的変
遷でした。「 モノローグからポリローグ、そしてさらなる閉塞へ」という流れは、
まさにその時々刻々移り変わる社会的コミュンケーションのかたちと、NHKの制
作者たちの意識( あるいは無意識)の構造的カップリングの様相を明らかにし
たもので、この「 戦争」表象の集積体は、まさしくテレビが「 介入」し続けて
23ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
きた戦後の「歴史化の鳥瞰図」であったと言えます。
僕は翌年、光栄にもこの本のレビューを書かせていただく機会をいただきまし
た。そこでうっかり筆が滑った僕は、こんな批判的な一文を書いてしまうのです
――「 この作業はもちろん、桜井自身が、ドキュメンタリー制作者であるが故
に成し遂げられたものである――しかし、一方で我々は、この作品が抱え込んだ
もう一つの『閉鎖性』に気づかずにはいられない。すなわち、この作品自体が『制
作者の自意識』を辿る遍路(モノローグ)なのである」(『東京大学大学院情報学
環紀要 情報学研究』No.70、2007年)。つまりこの桜井の仕事は、テレビ制作者
の空間を設定したからこそできたものだと。
これは決して否定的な意味ではなく、むしろそのことによって僕は「 アーカ
イブ性」とは何かという問いに答える一歩が踏み出せました――実際その後の多
くの「 思考実験」の背後には、これをきっかけに開かれた、桜井との対話的実
践があったということを、触れておかずにはいられません。
すなわち「 テレビ番組のアーカイブ化」とは、制作者−視聴者( 送り手−受
け手)の分断によって形成された空間秩序を乗り越えることと僕たちは考えまし
た。桜井はその映像を素材ごとに細かく見つめ、そこに写されている対象を拾い
出し再編集することを通じて、すなわち映像制作そのものを「アーカイブ実践」
として、制作者空間の無意識の中にある「 時代」をあぶり出す方法を提示しま
しました。一方、僕はテレビ番組を見る者が、それを通じてどのような時間体験
をするのか、を分析するアプローチを選択しました。
テレビを見る者は、常に「 現在」の位置にいます。しかしその者がテレビの
モニターを介して出会う映像は、必ずしも「 現在」のものとは言えません。す
なわちその地点は、「 いま」と多様な時間( 特に「 過去」)が遭遇するインター
フェイスであると言えます。その観点から、2005年8月の「 戦争番組群」の時間
表現を分析していきました。するとそこには4つのパターンが浮かび上がってき
たのです。それはドキュメンタリーだけでなく、ドラマや情報番組を含むジャン
ルの枠を越えて表れていました。
Ⅰ <再現> 現在を消し、超越的な位置から、過去を再構成する。
Ⅱ <検証> 現在の位置から、過去の経緯、妥当性、因果性を問い、評価する。
Ⅲ <想起> 個人の記憶のレベルで思い出し、語る。記録映像は妥当性の保証。
Ⅳ <参照> 常に主題は現在を定位する。記録映像はその「現在」に意味を付与する。
24 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
<再現><検証><想起>は、「 過去」を作り出す行為です。ただし、<再現
>は過去によって過去を作り出すのに対し、<検証><想起>は、その立ち位置
は現在にあります。一方<参照>は逆に、過去によって<現在>の意味を保証す
る作業であり、<検証>の対極にあります。<想起>は常に個人の立場で行わ
れるのに対して、他の3つは、その個人の立ち位置を超越する、あるいは客観的、
集団的認識の地平を作り出します。
<再現>は主にドラマの形式を要求します。手元にない「 過去」の資料を、
想像=創造の力を借りて、イメージとして作り出すのです。すなわち単に過去の
位置にとどまっているのではなく、見る者の個人的な印象の力を借りている――
その意味では、<想起>の対極にあるといえるかもしれません。一方<検証>に
は資料映像、<想起>は個人の声( 証言や語り)が主に用いられます。それに
対し<参照>は現在のルポ映像が前景化し、資料や証言が後景でそれを支える関
係で組み合せられます。
番組はこのように多様な方法で、あるいは時に特定「 過去」と「 現在」の映
像と見る者のイメージを結びつけ、そこに「 印象」を生み出します。それが<
再現> ‐ <想起>の軸を中心に構成されればそれはドラマになり、<検証> ‐
<参照>の軸を中心に構成されればドキュメンタリーとなります。昨今の、「 戦
争」をテーマにドキュメンタリーとドラマの形式を併せもったドキュ・ドラマの
手法が多く用いられるといった現象も、それが「 過去」の映像や「 証言」が乏
しくなった現実の鏡である一方で、客観化の困難を<個人>の想像の強さで補お
うという制作者の意識/無意識がそこに働いている、ということから説明可能に
なります。
また、一つの番組内に上記の多様な要素が織り込まれればそれは、バラエティ
的になります。情報番組の場合には、それを構成するバラバラのシークエンスは、
MCの語りでつながれていくことになりますが、現在のこれらの番組の多くには、
客観化されたナレーションではなく、MCのパーソナリティが前景化した「 個人
の声」が用いられています。これは<想起>が、様々なモードを束ねるというか
たちで、一段上の(メタな)機能を果たしているということを示しています。
このように「 過去」を「 現在」に描く番組の中で、<想起>や<再現>が強
化されているということは、「 記憶」の活性化があくまで個人のベースに止まり、
社会化しにくい現状を表しているといえます。
一方、2005年8月の「戦争番組群」の中で大きな「波」を形成していた「NHK
25ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
スペシャル」の基本形式は、( 12日のドラマ『 象列車がやってきた』は除く)<
検証>と<参照>を基本パターンとしたドキュメンタリーにあります。しかしそ
の中にも、個人のレベルにおける「 印象操作」ともいえる技法が多用されてい
ました。それはスチール( 静止画像)や主題に直結するショット、効果音の反
復的使用です。これらは「 印象」の「 象徴化」を促し、記念碑的な像を、見る
者の心の中に刻みこみます。
本来、記憶の社会化を促すべきこれらのジャンル表現の中で、こうした手法が
多用されるということ、すなわちイメージの反復の力を借りて象徴化が促進され
るということは、それ自身が「 シンボル」として機能しづらくなっていること
のメタ次元での表現であり、むしろそれは象徴の負の側面である具体的な現実、
リアル世界との関係の疎遠さを強く表してしまう危険性を示しています。
フロイトはこうした機能に「隠蔽記憶」(リアルな経験の想起に蓋をする:『フ
ロイト著作集6』)と名づけました。このショットあるいは効果音が、「 沈黙を作
り出す」ことに働きかけていること自体がまさに「象徴的」であるといえましょ
う。例えば、昨今の社会を覆う「 右傾化」の意識を、この「 象徴化」の負の部
分が過剰となった結果と捉えるのは、行きすぎた解釈でしょうか。
3-4 ネットワーク化する番組
こうした番組を介した「 過去」と「 現在」の出会いのパターンは、決して単
体の番組に閉じているわけではありません。むしろそこにこそ「アーカイブ化」
の意味が表れてくる――例えば、<想起><検証><参照>に表れる、「 過去」
と「 現在」の往還は、「 見る」という行為が常に現在に縛り付けられているとい
う避けがたい現実によって、番組の殻を破って、複数の映像や声を結びつけます。
「アーカイブ」的視聴、すなわち番組に「群(むれ)」として出会うということは、
テレビが与えたリアルな時空間秩序を超えて、これらのパターンを顕勢化、意識
化する機会を与えてくれるのです。
2005年8月の番組編成についても、制作者たちはこうした番組を超えた関係
性を意識していたことは容易に想定できます。そして一種の「 集合体」として、
これら番組群と向き合うとき、そこには明らかに他の番組との関係自体を主題化
した、さらに言えば、他の番組の要素を折りたたみその中にインデックスとして
取り込んだような特別な番組の存在が浮かび上がってきます。桜井はこうした番
26 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
組のことを、「 ハブ番組」と呼びました。そこを基点に、様々な番組との間に関
係の糸が結ばれていく、それ自身が「アーカイブ」的でありかつ、「アーカイブ」
に探索に入る入口の役割を担う番組です※10
。
僕はこの年の番組群の中に、それを2つ見つけました。一つは、NHKスペシャ
ル『 終戦60年企画 ZONE・核と人間』( 7日21:00-23:15)。もう一つは、TBS放送
50周年記念 戦後60年特別企画『ヒロシマ』(5日18:55-21:48)です。
『 ZONE・核と人間』は、極めて高い象徴性を持った番組でした。ZONEとは放
射能に汚染され、立入禁止となった区域のこと。この番組は、かの戦争における
原爆投下以来、世界中に数えきれないほどに広がった「 ZONE」を訪ね、それを
結びつけていきます。すなわちこの番組では広島・長崎から現代へ、広島・長崎
から世界へという時空間の拡張そのものが企図されているのです。従ってそこに
は外観が与えられていきます。その点で言えば、これははっきりと「 2005年的
現在」における「 核」に対する認識を統御する「 設計・デザイン」が意識的に
施された番組でした。
その特徴は、以下の様に整理することができます。
第一に、「 資料映像」は構成の主役を担っている点。この番組はインタビュー
や現在の取材映像よりもはるかに大量の、過去の番組・作品からの引用によって
作られています。しかも特徴的なのは、それらを素材として結合する際に、音楽
の「 シンコペーション」、フランス語の「 リエゾン」のように連続性やリズム感
覚が意図的に乱される特殊な記述的連辞( C・メッツ)が用いられ、また「 イン
サート」「 ファスト・カット」「 フラッシュバック」など、結合対象間の意味関係
を崩すトランジションも目立つことです※11
。この個々の映像が、番組の内外に
張り巡らされるリンクのノードであることを感じさせる仕掛けは、僕たちの視線
をわざと振り回し、常套句的な象徴性を「 追い払う」かのようです。それはこ
の番組「 ZONE」の主題が、未規定のままこの「 戦後」史の中で放置され続けて
きた「 核の意味」の空虚さを、確信犯的に「 告発」することにあると読むこと
もできます。
もう一つは、番組の中における時間の経過に関する特徴です。リニアさは消去
され、むしろここでは、中盤の折り返し点を境に、前後半が対照を成すように組
み立てられています。この時間が空間にように構造づけられる方法によって、前
半「ZONEが生成されるプロセス」の各点が、後半の「ZONEの現在性(共時性)」
に対称的に/対照づけられるのです。その「 折り返し点」の役割を引き受ける
27ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
のは、沢山の爆発のきのこ雲。この典型的な「 戦争」の象徴映像が、逆にこの
シンメトリカルな構造によって、現実世界に引き戻され、番組を見ることによっ
て、記号のピラミッド(D・ブーニュー)の上昇/下降の「連続する記号過程」
の体験が促されるようにデザインされています※12
。
このきわめてコラージュ的かつ、幾何学的に配置された映像構成は、「 フクシ
マ」を経験した2013年の現在に見直すとき、さらに新しい「 印象」を僕たちに
呼び覚まします。すなわち『ZONE』は、(2005年も、いまも同じく)現在進行形、
あるいはリニアな時の流れから逸脱した、もう一つのメタ時間の可能性を、僕ら
に開いて見せているのだろうと思います。
『 ヒロシマ』は、同様に「 ハブ番組」と言いましたが、どちらかといえば「 作
品的」である『ZONE』とは全く異なる、きわめて「テレビ的」に作られた「番組」
であると言えます。筑紫哲也と綾瀬はるかという2人のナビゲーターが、テレビ
スタジオに模した「 原爆ドーム」前の広場で様々な映像を繋ぎ進行していく大
型番組。TBSのオフィシャルサイトでは「 原爆開発や投下決定に関わった当事者、
被爆者の方々の貴重な新証言、膨大な数の史料を集めたドキュメント、さらに証
言から忠実に制作した再現映像やCGなどによって、60年目に初めて明らかにな
る事実から人類最大の悲劇の『全体像』を描いていく」と紹介されています。
制作者たちはこの番組を「 ドキュメンタリー」と明言していますが、その形
式はまさにジャンルの混交の極みという意味でバラエティ的であり、かつ<再
現><検証><想起><参照>の4つのモードが複雑に入り乱れつつ、ナビゲー
ターの語りの現在性(「 いま・ここ」)に回収されるという、まさに「 時間性」
そのものが、意識されないうちに主題化されていく「アーカイブ的」構成になっ
ています。
しかし『 ZONE』では意図して「 散文的」に素材の結合が仕立てられたのに対
し、『 ヒロシマ』はナマの「 語り」による直線的な流れの幹に、各コーナーが枝
葉のように絡み付く構造になっており、その意味では一見「ふつう」のネオTV的
( U・エーコ)な閉じた予定調和的番組ではあります。ところがそれは、最終場
面に仕掛けられた偶然性によって反転します。「 ハロルド・アグニュー( 原爆投
下機に搭乗していた)と、被爆者の当事者同士の対話」が、かみ合わず、決裂す
る瞬間に、一気に(『 ZONE』とは異なった手法によって)それまでの番組が与
えてきた意味は宙に浮き、結論なき不安な状態に見る者は陥れられるのです※13
。
『 ZONE』の未規定性、『 ヒロシマ』の用意された大団円の決裂は、少し引いて
28 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
見るならば、意味の「 開かれ」に他ならず、時間的なパースペクティブでいう
ならば、結論の先送り=未来の解釈者を招き入れる作りであると考えることもで
きます。これらが「 ハブ番組」であることの意味は、それは「 過去」に対して
だけでなく、「 現在」を介して「 未来」のアーカイブ実践( 再編集、視聴など)
への可能性を担保していることにも、見ることができるでしょう。
その意味の「 開かれ」についてさらに掘り下げるならば、『 ヒロシマ』はか
なりわかりやすく、また番組内外とのリンク関係についての可能性を示した、
チャレンジングなプロジェクトであったと言うことができます。まず冒頭20分
の、まるで映画の予告編を思わせるイントロダクション。この映像は、その大
半が本編のどこかで使われた映像であり、出現順や語りとの対応関係は、必ず
しも本編の文脈に従ったものではないものの、あたかも3時間の番組の中に短縮
版と本編というコンテクストが異にする2つの「 ヒロシマ」が収められているか
のように作られています。また再現シーンの多くが、実はBBCが制作した別番組
『 Hiroshima』からの( 共同制作関係を結んだ上での)利用であるという点にも
驚かされました。さらには別の目的で制作されたCGが、あたかもこの番組の意
図に従って用意されたものであるかのように任意に組み込まれるという特徴も見
られます。
こうした各素材に備わった関係性のノードとしての性質は、作品として非自律
的であることを隠さないことで『 ZONE』に近い役割を果たしているという点で、
「ハブ」的役割を果たしているとは言えるものの、それは「過去」と「現在」(あ
るいは「 未来」)の軸よりも、共時的な関係に重心があるようにも見えます。特
に(2005年当時、この点についてははっきりとした言及はありませんでしたが)
同じ8月に同じ局で放送されたドラマ『 広島』( 29日21:00-23:24)とは、明らか
にその対照を意識した配置がなされており、そこでは番組間の「ネットワーク」
性が意識されていたことは間違いないでしょう。
「 ハブ」番組の存在は、かつてのテレビ・システムにおける時空間編成を超え
た、「秩序」の可能性を示唆してくれます。それは一方では「過去」と「現在」(あ
るいは「 未来」)との関係を開き、他方では「 現在」において様々に並列しうる
表現を結びつけます。「 アーカイブ」と「 ネットワーク」――この段階で、デジ
タル時代( ないしはポスト・テレビ時代)について何かを言うことは早過ぎか
もしれませんが、少なくとも「 テレビ」ではないメディアによる公共性の実現
を考える足がかりを、2005年というこの年に見ることはできると思います。
29ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
3-5 2006年以降――そして徐々に「戦争」は消えていく
戦争関連番組は2005年以降も、数の上では及ばないにせよ( それ以前よりも
はっきりと)意識して作られ続けます。もちろんそこには( 特にNHKにとって
は)重要な制作環境上の背景事情があったのですが、それ以上に「 60年」を契
機に問題が明確に示され、それを継承していく流れができたということの意味は
大きかったといえます。
特に8月前半は、より明確な問いを「 編成」の核に据えるようになりました。
2005年の「 ピーク」に(『 靖国神社』などによって)提起された「 戦後処理」
の問題が、特に15日に向けて主題化されるようになったのです。
● 2005 年 8 月放送
▶ NHK スペシャル「靖国神社∼占領下の知られざる攻防」(13 日)
▶ NHK スペシャル「戦後 60 年∼靖国問題を考える」(14 日)
▶ 日本の、これから「アジアの中の日本∼戦後 60 年・互いの理解をどう深めるのか」
 (15 日)
● 2006 年 8 月放送
▶ NHK スペシャル「日中戦争∼なぜ戦争は拡大したのか」(13 日)
▶ NHK スペシャル「日中は歴史にどう向き合えばいいのか」(14 日)
▶ 日本の、これから「もう一度話そう、アジアの中の日本」(15 日)
● 2007 年 8 月放送
▶ NHK スペシャル「A 級戦犯は何を語ったのか∼東京裁判・尋問調書より」(13 日)
▶ NHK スペシャル「パール判事は何を問いかけたのか∼東京裁判・知られざる攻防」
 (14 日)
▶ 日本の、これから「考えてみませんか?憲法 9 条」(15 日)
「 靖国」「 日中関係」「 東京裁判」は、いずれもこの60年間議論し尽くされてこ
なかった「 戦後」処理を代表する問題で、13日からの3日間、2005年から2007
年の間、ほぼ同じスタイルで( ドキュメンタリーから、15日の一般視聴者を交
30 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
えた討論番組につないでいく)特別編成が採用されたことは注目に値します。特
に13日のドキュメンタリーに用いられた「 知られざる攻防」という言葉は、そ
の当時の対立項を明示するという意味で、<検証>的アプローチを宣言するもの
であり、それを徐々に同時代的問題に軸足を移す<参照>のモードに移行させて
いくという流れを作り出しました。それは、もはや一方向的なテレビ・システム
の情報の流れを超えて、「 コミュニケーション・デザイン」的な試みであったと
さえいえましょう。
また戦争体験者の高齢化に伴う切実な問題として提起された「 証言者がいな
くなる」ことへの危機意識はさらに煽られていきます。それを受けて2007年に
は、放送した戦争関連番組を一覧表示したWebサイト「 Sengo62」と「 証言記
録」を蓄積していくプロジェクトが進みました。こうした動きは2005年以前には、
10年刻みのメモリアル・イヤーにおいても全く見られなかったことです。その
意味で、「 60年」を機とした戦争関連番組の大量生産は、テレビ的なアプローチ
からアーカイブ的なそれへと、「 戦争」を問うかたちの変化を促す契機になった
と言えます。
こうして2005年を契機に生まれた「 過去」と「 現在」との出会いの芽は、し
かし残念ながら、翌2008年を境にして徐々にトーンダウンしていきます。その
きっかけは北京オリンピックにあります。4年に一度開かれるこの「 祭」は、夏
季のテレビ番組の編成を乱し、前後との連続性を途絶えさせます。実際3年間続
いた編成パターンは崩れ、「 戦争証言プロジェクト」などWebをベースとしたも
のを除いて、縮小されていきます。しかし8月以外での戦争関連番組のオンエア
が増えるなど、テレビと戦争のこれまでの定型的な向き合い方に変化を与える
きっかけにもなったと言えます。
2008年の空白以降、「 証言の希少化」の危機はさらに切実なものになり、その
一方で「 新たな資料の発見」が「 過去」との出会いを開くケースの中心となっ
ていきます。ところが当然ながら「 資料」だけで映像を埋めることの困難は大
きく、事実2009年8月9日から11日まで放送された NHKスペシャル『 日本海軍
400時間の証言』、10日の『 最後の赤紙配達人∼悲劇の 召集令状 64年目の真
実』( TBS)などは、ともに埋もれていた資料の発見を契機に作られ、事実の凄味
を認識させる良質な企画ではありましたが、<再現>ドラマに頼らなければなら
ない苦しさを露わにしました。
2010年からは、直接の証言を得ることがさらに難しくなり、番組数の減少に
31ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
加え、戦争経験の次の世代にフォーカスを当てるか、あるいは「 記録」から<
検証>へ向かうプロセス自体を取り上げるといった比較的地味な印象が否めなく
なりました。そして2011年――震災後の最初の夏は原発事故と、かの戦争にお
ける被爆との関係を問う企画が中心となり、2012年のロンドンオリンピックで、
「夏=被爆・終戦の季節」といった印象は消えていきます。
この原稿を書いている2013年春現在、この先「 戦争」をテレビがどう描いて
いくのかについて、断定的なことは何も言えません。しかし少なくともその対象
との距離は今後も開く一方であることは間違いなく、「 過去」にしっかり出会う
ことができない僕たちが、具体性を欠いたイメージに頼って、何か誤った判断を
してしまう危険性は一層高まるでしょう。その点において、2005年から数年に
わたる、まさにテレビ・システムからアーカイブ的な視聴体験への移行が、その
後やや途切れ気味に見える現状は、大いに気になる事態です。
4-1 「戦争」的パースペクティブの死角
既に述べたように僕は、2005年8月に放送しされた戦争関連番組の録画による
「私的アーカイブ」構築作業を通じて、テレビ・システムが有する秩序とは、「同
時かつ一方向性」という時間の統制によってナショナルな空間を創造するもので
あることを確認するに至りました。そしてその番組群の主題は分析を進めるに
従って、徹底的に国家・国民的パースペクティブ自身への問いを志向しているこ
とを実感していったのです。
それは確かに戦後のテレビ的公共圏におけるアジェンダとしては、適合的で
あったといえるかもしれません。しかし今、「テレビ」から「ソーシャル・メディ
ア」へとメディアの重心がシフトしていく社会の中で( そして「 戦争」という
「 過去」が遠ざかる中で)、果たしてそれに縛られていることが必然であるかど
うか、それ自体が問われるべき課題になりつつあるとも言えます。
この問い直しは、幾つかのステップに分かれます。まず、かつてのテレビ時代
における「 戦争」への問いに死角はなかったか。それは、被爆・終戦∼戦後処
理がナショナルなアジェンダとして特権的に扱われていた一方で、「 消えて行っ
4.「地域」という空間枠の設定――アーカイブ的秩序原理へ
32 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
た過去」はなかったのかという問いです。これこそまさに、本論の主題である
「 集団的( 社会的)に記憶を失う現象」に対する検証であり、テレビが作り出
した象徴が、隠蔽記憶として働いていなかったかを考えることでもあります。
「 アーカイブ」的な秩序原理がテレビとは反対に、空間の規定から時間認識の
創造へ向かうとするならば、ここで必要になるのが、「 ナショナル」に代わる空
間枠の再設定です。移行期の端緒( 2005年)において「 ハブ番組」が試みたそ
の組み換えは、「 ナショナル→グローバル」という視角の拡大でした。『 ZONE』
はその典型であるといえますが、結果そこでできたことは、「 きのこ雲」という
象徴の異化、意味の宙吊りに止まるもの――残念ながら、僕たちはそれに新たな
意味を与えることができませんでした。それは『 ZONE』の表現と、それを受け
止める主体のリアリティとの間にずれがあったからではないかと思います。
「 グローバル」な死角は、ある意味「 ポータル」の無規定性を要求した時代に
対応するものだったと言えます。「 ナショナル」な視角のオルタナティブは、そ
れとは逆の方向、すなわち記号のピラミッド( D・ブーニュー)で言うならばさ
らなる象徴化を求めるのではなく、リアルな現実との関係性を構築するインデキ
シカルなダイクシス(「あれ」「これ」といった指示詞が機能する空間)を想定す
ることにあったと考えるべきだったのです。ちなみにこの転回は、「 ポータル」
から「ソーシャル・メディア」への志向の変化にも対応します。
ところがこの転回は、インターネットの普及に先んじるかたちで、「 テレビ」
「 新聞」といった既存のマス・メディアに対するオルタナティブを求める動き
の中に、1990年代後半から表れていました。ケーブルテレビやコミュニティ
FMをベースとした「 地域」とその担い手である「 市民」によるメディア実践
は、マス・メディアの肌理の粗さを補完する可能性を持ったものとして、研究者
たちの注目を集めていました。僕自身もそうした活動を、かつての「 放送」が
理想とする民主主義的公共圏の実現に向けたベクトル上にあるものとして見なし、
関心を寄せていました。当然そこでは「 誰が」「 どんな目的で」それを行うかは、
極めて重要な意味を持ちます。
その中で2005年に出会ったのが、鹿児島県鹿屋市を中心に大隅半島の自治体
を結ぶNPO法人によるラジオ局( おおすみFMネットワーク)設立の話でした。
地上波(AM)の中継局が廃止となり、電波が届かなくなることに危機意識をもっ
た人々が、文字通り「 手作り」の放送局を作る――この取り組み自体がまさに
オルタナティブな動きであり、僕はそれの応援団の一人として2006年の夏、訪
33ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
問することになりました。鹿屋といえば、現在も海上自衛隊の航空基地があり、
かつては「 特攻隊出撃」の記憶と記録が残された町でもあります。偶然といえ
ば偶然ですが、この土地で2つの関心が出会ったわけです。
鹿屋には、航空基地史料館というオフィシャルな「記録」の保管庫だけでなく、
多くの戦争の遺構が遍在していました。しかし「 そこに基地がある」にも関わ
らず、「 よそ者」の僕には、その記憶の影は薄いように感じられました。資料館
に所属する「 語り部」の話を聴き、街あるきをする中でも、鹿屋の「 現在」の
風景と、ややステレオタイプ化された「特攻隊」や「地域空襲」、「占領軍上陸」
の物語との間には、どうも認識フレームのずれがあるように思われたのです。
そんなある日、ラジオ局を支える地元の女性たちの集まりがありました。そこ
に招かれた僕は、不思議な経験をしました。その会は、そもそもはその仲間の
一人である地元の朗読サークル「 ポエム」の中西久美子の「 語り」を聴こうと
いう目的の集まりだったのです。その日、中西が「 そら」で語ったものこそが、
僕がこの地で「 発掘」研究を行うに至ったきっかけとなった物語、竹之井敏作
『 冬の波』でした。昭和19年( 1944年)2月6日、おおすみ半島の入口である垂
水港と鹿児島市を結ぶ地域の大動脈「 垂水航路」で、「 第六垂水丸遭難事件」と
呼ばれる沈没事故が起こりました。それは海難審判所( 元・高等海難審判庁)
の記録によれば、死者464名という一般船舶の事故としては史上二番目に数え
られる大規模な事故でした( 高等海難審判庁『 海難審判制度100年史』1997年、
p.109)。物語は、その犠牲者にまつわるものだったのです。中西の話は、初め
て聞いた僕の胸に深く沁みるものでした。
しかし驚いたことは、その「 地元地域」の物語を、そこに暮らす人のほとん
どが知らなかったのです。物語というよりも、その事実そのものが、地域の人々
の「記憶」から消えてしまっていたのです。ちょうど2005年8月の戦争番組の「私
的アーカイブ化」を進めていた僕には、この物語と人々の反応が、奇妙なコント
ラストに映りました。「 口承」という古典的な伝達方法、「 記憶」が失われると
いう現実、昭和19年2月という時期、そして「 あくまで個人的に語られる<死>
の理不尽さ」という物語内容自体も含め、ここで出会ったことがらはテレビやマ
ス・メディアを通じて言わば刷り込まれてきた「 戦争の記憶」とは、激しく異
質なものに思えたのです。
この段階では、まだそれは「 研究的関心」というには程遠いおぼろげなもの
に過ぎませんでした。しかしこれまで前提としていた、マス・メディアを支える
34 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
東京を中心とした時空間から遠く離れたこの「 おおすみ」という地域と、この
「 記憶」をめぐる状況にはなんらかの関係があるように思えたのです。実際こ
の地域は基地だけでなく、ハンセン氏病の医療機関など、ある種僕たちの日常か
ら遠ざけられたものや、国立の体育大学、あるいは( 少し離れていますが)内
之浦の宇宙空間観測所など国費が投入された施設が置かれています。それは僕た
ちの常識の中にある「 地方」ではなく、「 ローカル」の中に「 ナショナル」が挿
入されたいびつな風景に見えました。
この印象が、僕に「 そもそも、地域とは何か」という問いを芽生えさせたの
です。それは「 ナショナル」は、マス・メディアの原理( 時間的統制)に従っ
て作られた空間イメージであり、「 ローカル」はナショナルを補完するするため
の、あるいは下位概念的に置かれた空間イメージに過ぎない――すなわち、積極
的に定義されてこなかったのではないか、という現実に、はたと気づかせてくれ
ました。
「 地域社会の崩壊」「 地方の疲弊」といったことがらが、近年しばしば論議の対
象となります。しかしその実態は、人口の流出、産業拠点の撤退、地域経済の空
洞化から起こっているもので、それは「ローカル」(地域)に閉じた問題ではなく、
「 ナショナル」に依存することによって成立していた「 ローカル」という、そ
の従属関係に入った亀裂、すなわち「 マス社会」のメカニズムの行きづまりが
もたらした現象だったのです。テレビ時代の黄昏自体も、この「 マスの自壊」
の文脈にあります。そう考えると、この空間の秩序をトップダウンではない方法
でどのように措定しうるかは、「 オルタナティブ」な社会システムの構想の核心
に近いところにあることがわかります。 
4-2 第六垂水丸遭難事件が提起する「記憶システム」の問題
ところで僕たちは、「 社会」が「 記憶システム」として形成されているという
ことを前提にしてきました。ところが「 第六垂水丸遭難事件」という出来事を
きっかけに、いざこの地域の人々の「 記憶」に関する聞き取り調査を始めてみ
ると、それ自体が極めて「不確かなもの」として立ち現れてきたのです。
まずは、この事件が起こった昭和19年という年に注目しました。それは同時期、
「 戦争番組」の分析を並行して行っていたことと深く関係しています。既に述
べてきたように、テレビ番組の主題においては「被爆」「終戦」あるいは「空襲」
35ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
といった出来事には特別なポジションが与えられ、それらを中心に「あの時代」
のイメージを<想起>させるようにデザイン( 編成)が施されています。これ
は「8月ジャーナリズム」と呼ぶべきイデオロギーにもつながっています。
しかし、少し引いた位置から歴史を見るならば、「 かの戦争」には満州事変を
端緒とする「 15年戦争」というフレームを与えることもできますし、さらに言
えば日清・日露以降一貫して築かれていった対外政策の最終局面として考えるこ
ともできます。にもかかわらず、この戦争のイメージを、「昭和20年8月」の「本
土における出来事」に集中させるということになれば、そこからは様々なことが
らが「 抜け落ちてしまう」弊害が生じてしまいます。例えば加害の問題、沖縄
のこと、旧日本領有・統治地域で何が行われていたのかという問い、アメリカ及
び大陸以外の諸国との関係、戦争を支えた経済など――これらは特に2005年以降、
NHKが力を入れてきたテーマではありますが、それでも全体から見れば周縁的な
題材たらざるをえません。
では、実際の昭和19年、特に「 第六垂水丸」が遭難した2月とは、どんな状況
だったのでしょうか。当時の新聞を見ると、既に前年( 18年)2月のガダルカナ
ル撤退以来、戦局は後退期に入り、同年9月には「 絶対防衛圏」の設定を発表し
ます。19年に入り、2月にはマーシャル諸島、ラバウルが主戦場となり、前線で
は極めて危機的な状況が誰の目にも明らかになっていきます。にもかかわらず、
ちょうど「 遭難事故」が起こる前日の5日、帝国議会では「 必勝決議案」が可決
され、これにより国家総動員体制が加速します。すなわち産業・生活の全てが戦
局に巻き込まれていく流れが決定的になるのです。それは、昭和20年の悲惨な
状況に向けて転がり落ちていく現実と、ひたすら「 勇ましい」言葉を連ね続け
るメディアとの乖離が激しくなる契機だったといえるでしょう。全体に高揚感が
強く、切迫感に乏しい――この論調は、中央紙も地方紙にも同様に見られました。
当初僕は、「 垂水丸遭難事件」
の忘却は、こうしたメディア状況
の中で、いわゆる「 言論統制」
の影響を受け「 消された」もの
と考えていました。そう考えた
理由は、県紙「 南日本新聞」が、
この事故から40年後( 昭和59年2
月6日)に掲載した記者( 木場隆 第六垂水丸
36 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
亮)のコラムでも、戦時下におけるメディア操作の影響について記されていたか
らです。しかしその先入観は、あっという間に崩れました。実際にマイクロフィ
ルムを確認してみると、「南日本新聞」の前身である戦前の県紙「鹿児島日報」は、
事故後ほぼ1週間にわたって刻々と捜索状況や事故関連の記事を掲載し続け、中
には伏せるどころか、この出来事をむしろ積極的に戦意高揚に結びつけようとし
ていた事実がわかったのです。  
プロの記者の記憶すらも書き換えられてしまう――しかも、戦後において――
それはどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。僕たちは、現地で聞き取り
調査を行うことにしました。応援するFMラジオ局の協力を得ながら、その濃淡
に限らず、この事故を記憶している人を「 人づて」に探していきました。その
結果、戦後生まれのほとんどが、「 知らない」と答えるなか、以下の19名がイン
タビューに答えてくださり、僕たちはそれを映像に収めました。
◎乗船・生存者 (性・住所・生年)
 NR(F・垂水市・S6)、KE(F・鹿屋市・T15)、US2(M・鹿屋市・T11)
◎遺族
 KM1(M・垂水市・S7)、WN(F・鹿屋市・S7)、WN の弟
 ST(F・鹿屋市・S3)、US1(F・鹿屋市・S5)、FK(F・鹿屋市・T9)、
 MS(M・鹿屋市・S5)
◎郷土史家・記者
 NN(M・垂水市・T15)、NT(M・垂水市・T15)、TT(F・肝付町・T15)
◎目撃者・その他
 SS 夫妻(MF・垂水市・T15、S4)、KM2(M・鹿屋市・S5)、
 TX(M・垂水市・S8)
◎次世代・当事者の子
 OH(F・鹿屋市・S33)、MK(F・垂水市・S29)、NK(F・鹿屋市・S21)
37ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
僕はまずこの聞き取り調査の中で、彼らが「 昭和19年」という年をどのよう
に記憶しているのか尋ねました。ところがほとんどの人からは、その答えが得ら
れません。戦時下の生活で思い出すことを尋ねても、その言葉が指し示すものは、
彼らの地域にも空襲や食料難などの危機が直接的に感じられるようになった、昭
和20年になってからのことなのです。しかもそこには「 おおすみ」という地域
特有のことがらは少なく、その多くはどこかで聞いたステレオタイプのものでし
た。記憶の「昭和20年」への集中は、メディアの中だけでなく、市井に生きる人々
の心の中でも生じていたのです。
ところが彼らの「第六垂水丸遭難事故」に関する記憶は、こうした「隠蔽記憶」
とは独立して存在していました。質問の冒頭から勢いよく語り始める人もいれば、
おぼろげな記憶を一つずつ確認しながら語る人もいましたが、例え後者でも、記
憶を呼び覚ます「スイッチ」のようなものがあるのか、ある時点――例えば「そ
の場所」に立つこと、あるいは「 写真」など資料を提示したことがきっかけに
なって、それ以降はまるで「 昨日起こったこと」のように、ディテールが溢れ
出したのです。
すると不思議なことに、それからの彼らの語りは、その「 出来事」からまる
でリンクを辿るようにいろいろな話題に展開し始めます。「 事故に至るプロセス、
事故後何があったか」「 事故に対する印象」「 身近な死に対する思い」など、事故
をとりまくことがらから始まり、「 当時の生活」「 当時の価値観」「 家族・社会関
係」など背景事情、そして「なぜそれをこれまで語らずにきたか/あるいは語っ
てきたか」「 その出来事、あるいは語ってきたこと/こなかったことの現在から
見た評価・解釈」などメタレベルの内容まで、その話題・記憶の開示は広がって
いきました。
このことから、このようなタイプの記憶の一つの特徴が浮かびあがってきまし
た。それはあくまで「 主観」を
中心として記憶は編まれていると
いう、「 あたりまえ」といわれれ
ばその通りの事実です。つまり彼
らが「 昭和19年の記憶は」と問
われても答えられなかったのは、
その記憶は必ずしもこうした「客
観的な指標」を参照軸として、イ 『冬の波̶第六垂水丸遭難とおおすみの記憶』より
38 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
ンデキシングされているわけではな
いからなのです。
このインタビューでは、可能な限
り対象者から強引に答えを引き出す
ことを避け( 質問は、最小限に止
め)、語り手が自らの言葉に触発さ
れ、記憶が開かれていく様子を観察
していきました。もちろんこの出来
事との距離や、その人の「 出来事
以降」の事情から、記憶には濃淡があり、全てのインタビュイーの話には、異な
るトーン、展開がありました。しかしスムーズに記憶が語られるか否かに注目し
てみると、そこには「 これまでこの出来事を、誰かに語ってきたか」が大きく
関わっていることがわかってきました。記憶がなかなか開かれていかない人の多
くは、長い間、この経験を言葉にしてこなかったのです。
この点に注目しつつさらに話を聴いてみると、その「 語りの経験の亡失」は、
誰かに強いられたものではなく、その体験の悲惨さ、衝撃の大きさから、自ら口
を封じてきたことがわかってきました。特に狭い地域コミュニティの中で、多く
の事故の当事者がいる環境では、言葉にすることが憚られる雰囲気があったと言
います。また特に、この事故後急速に悪化していく時局の中では、一層のことそ
うであったでしょう。語られなければ当然、事故を直接知らない世代には伝わり
ませんし、その当事者が言葉にしないことで、さらにその記憶を言語化していく
ことは困難になっていきます。
一方、インタビューの対象者の中には、敢えて「 語ってきた」人もいました。
そうした人にはある共通の特徴がありました。それは「 教職にあった」、あるい
は郷土史、小説など「 書く」という言語使用を日常的に行っていた人々でした。
ある種客観化可能な言葉を、意識的に使うことができる人(『 冬の波』の作者で
ある竹之井敏もその一人)が同じ地域にありながら、日常的な言語行為と異なる
次元で残した「 記録」は、確かに存在していました。しかしそれは、「 言葉を封
じた」人々と、60年以上も出会うことがなかったのです。
『冬の波̶第六垂水丸遭難とおおすみの記憶』より
39ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
4-3 語ることと「記憶」の関係
「 記憶」は言葉の周りにオートポイテーティック( 有機生命体的)に組織され
ている――それが、この「おおすみ」における調査から僕が得た結論です。
結果的に、僕たちが行った調査は、長い間言葉にすることのなかった人々の記
憶が、再び紡がれていくきっかけとなりました。その調査の成果よりもむしろ、
インタビューを介した65年前の出来事と人々の出会いが、新たな「 語り」の場
を求め、かたちづくりはじめたのです。長い間、事故があった旧桟橋近くの草む
らに放置されていた慰霊碑は、桜島を背にした垂水港の旧フェリー乗り場の目立
つ場所に移され、垂水市元教育長であり自身も友人と母親をこの事故で亡くした
川井田稔の呼びかけで、2009年には遺族会が立ち上がりました。
遺族会は、地域のNPO法人「 まちづくりたるみず」と協力し、遺族の消息と
資料、そしてそれらの人々の「 語り」を集める活動を始めました。そうした資
料は、同NPOが運営する資料館「 文行館」が現在管理し、展示をしている他、
2013年の70回忌まで、毎年2月6日の法要に併せ、その年新しく見い出されたこ
の出来事にまつわる「 物語」を紹介する会を行ってきました。また「 書かれた
物語」も数多く発掘され、その中の一つ、田島和子「雲の文字」(『賢いお殿様』
自費出版、2006)は、垂水市の小学校で読み聞かせ授業に取り上げられている
そうです。
言葉は、それを語る人ひとりの記憶をかたち作るものとしても機能しますが、
当然、複数の人の言葉が重なることによってその記憶は「 集合的」に形成され
ていきます。おそらく60数年という時間の経過が( 他の戦時記憶と同じように)、
言語化を阻むハードルを低くしたであろうことは想像できます。しかしこの「お
おすみ」の出来事の場合は、「 証言者がいなくなる」という危機感に迫られたも
のというよりも、当事者たちが個々人の心に閉じていたイメージから脱し、地域
コミュニティに共有されうる記憶という空間的な枠に身を置いたときに、時間の
経過=その出来事からの距離感を自分のものにした、という現象のように見えま
した。
したがってこの「 記憶」は、所謂一般的な戦時記憶と一線を画すトーンを有
しています。物語『 冬の波』にも描かれた、鹿児島市の西部18部隊への面会に
向かった人々のエピソードは、確かに戦時期の出来事ではあるものの、身近な人
への思いといった通時的、日常に横たわる普遍的な心情を訴え、それ故に涙をさ
そいます。そのことはもちろん「 かの戦争」を支えてきた家父長主義的イデオ
40 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
ロギーを肯定するものではありません。むしろ、それよりももっと原初的なヒト
とヒトの身体的な関係性を、想起させるもののように思えるのです※14
。
もう一つ、この新たに生じた言葉の重なり合いが、気づかせてくれたことがあ
ります。実は遺族会が活動を始めた直後、ちょっとした問題が生じました。幾つ
もの「 事故」そのものに関する証言が集まった結果、「 何が真実か」をめぐって
主張が食い違い、場にやや緊張が走るといったことがあったのです。その雰囲気
は、回を重ねる中で次第に落ち着いていきましたが、どうもやはりその時は「証
言」の重さに拙速に「 客観」「 正確さ」求めるテレビ的な感覚が、ここでも首を
もたげてきたように思いました。
「記憶」は、極めて主観的な印象に言葉が重ねられて「創られていくもの」です。
しかし「 ひとりの目」によって切り取られる世界は、基本的に限定的なもので
あり、したがってそれは容易に書き換えられ、また常に忘却に晒される、極めて
安定性を欠いたものでしかありません。ですから、「 記憶」の開示に当たっては、
その言説としての「正確さ」を求めても、あまり意味のあることではないのです。
それよりも複数の「 語り」が重なることによって、その多声性の根拠となる時
空間イメージを人々が共有しうるということに、その果たすべき機能があるので
はないでしょうか。
まさにその「 不確かさ」こそが、僕たちの生きる「 日常」という時空間を作
り出しているものであり、記憶と忘却の間の一線を引くことができない、グレー
な意識構造の中の営なみなのだと思います。記憶システムとしての社会が、この
ようなつかみどころのないものの総体として存在するのならば、それを理解する
必要が生じたときには、近似的にでも推論を構築するための導きの糸が求められ
ます。それこそが「アーカイブ」の存在意義なのではないかと思います。
終戦の一年半前に起った「 おおすみ」の悲劇は、65年後、インタビューを編
集した一つの映像作品と、その制作のための資料による「 アーカイブ」として、
文行館のほか、垂水、鹿屋両市の図書館に残されることになりました。「 アーカ
イブ」の構築は、「 誰の」「 何のために」という問いと切り離して行われるもの
ではないと言いましたが、まさにここでは「 地域の人々による」「 地域のアイデ
ンティティの育成」のために、用いられることが強く意識されています。僕は
2009年以降毎年、2月6日の慰霊祭には手を合わせに伺いますが、いまアーカイ
ブの運営主体は、完全に地域の手にわたり、僕は単にそのきっかけを作った一人
となっています。
41ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
システム的な基盤もなく、ただそれでは資料を集めただけといわれるかもし
れません。しかし、インタビューの声を集め、それを「 この地で、この戦時下
の記憶はなぜ失われたか」というメタ主題の下に編集された映像記録の集積体
は、確実に特定の秩序をもって、活用イメージからボトムアップに積み上げられ
た「 小さなアーカイブ」といえるのではないかと考えています。2005年8月の戦
争番組群とはさまざまな意味で対極の位置にありますが、これは準拠する空間を
「 テレビ」から「 地域」に転換していくことによって、「 歴史軸」を取り返して
いくという、以降の様々なプロジェクトの基点となる経験になりました。
5-1「夕張」に行く――「地域」そのものの亡失の危機から
「 出会い」は、続けざまにやってきます。僕は2007年の夏、「 おおすみ」に赴
くきっかけを与えてくれた「 市民メディア全国交流集会」が札幌で開催された
のに合わせて、そのオプション企画に参加する形で、財政再建団体への転落が話
題となっていた北海道夕張市を訪ねる機会を得ました。
はじめての夕張では、見聞きするあらゆることが衝撃でした。その中でも翌
年廃校となる小学校でメディアリテラシーに取り組む若い先生が語った「 夕張
の人々はテレビが嫌い」という話は、胸に響きました。「 破綻」が発表されると、
それまでこの街に見向きもしなかった取材陣がどっと押し寄せました。彼らは、
この街に「 不幸」のレッテルをはり、それを象徴する「 可哀そうな」絵ばかり
を探しに来たと言います。そうしたクルーと、地元の人々との間には、精神的な
溝が生まれ、実際に小さな衝突も起こったといいます。財政破綻はしても、この
街に暮す人には日々の幸せはあるし、笑顔もある。特に子どもたちには――先生
は、そのような思いから、自分たちの「 心」を自分たちの力で表現する教育に
取り組むようになったと言いました。
これは外から「 地域」を見る目と、「 地域」を内側から捉える目の対立である
と言えます。僕は彼らの話を聞く中で、それはメディア表象の次元に止まるもの
ではなく、この街の成立そのものに関わる問題であるということを、理解するよ
5. あらためて「集団的記憶」とは何か――
 「テレビから地域へ」向かう幾つかの省察
42 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
うになってきました。約120年前の石炭層発見と共に始まった街の歴史――それ
まで、先住民ですら積極的に分け入ることがなかった険しい峡谷に、人々が街を
築くようになったのは、この国の近代化を支えるエネルギー資源があったからこ
そでした。それは戦前・戦中においては軍事力を支え、戦後は復興と高度経済成
長を牽引します。しかし国は1960年代に入るとグローバル経済における軋轢を
まともに受け、それまでただひたすら称揚してきた石炭政策をスクラップ&ビル
ド、そしてやがて撤退へと急転回させます。
それに追い打ちをかけたのが「 事故」でした。1970∼80年代、合理化を要求
された炭鉱企業( 夕張の場合、北炭と三菱)は、それまで分散していた事業地
を集約し、出炭効率のアップを図るため大規模かつ最新鋭技術を導入した「 ビ
ルド鉱」に生き残りを懸けることになりました。しかしまさにその期待の対象で
大事故が立て続けにおこったのです、1981年10月の北炭夕張新炭鉱ガス突出事
故( 死者93名)、1985年5月の三菱南大夕張炭鉱ガス爆発事故( 死者62名)――
この2つの事故で、まさに「炭都」としての夕張の歴史は止めを刺されます。
その後はリゾートブームに乗り、中田鉄治市長の「 炭鉱から観光へ」の掛け
声のもと、この街は補償金を足がかりに借入投資を重ね、シフトチェンジを図
ります。しかしそれは長年「 炭鉱の街」としてそこに暮した人々の「 生きられ
る環境」ではありませんでした。人口は流出を続け、企業誘致も成功せず、期待
の観光業も十分な集客実績を上げられないまま、膨れ上がった借金の大きさを支
えられなくなり2007年3月を以て、財政再建団体に指定され、事実上破綻します。
まさに「 国策」という、地域の外からの風に翻弄された歴史であると言うこと
ができましょう。
夕張は、こうして「 2度のリセットボタン」が押され、街まるごとが消失する
危機に見舞われることになりました。「 リセットボタン」は、物理的な意味での
環境を一変させます。一度目には「 炭鉱の街」としての生活基盤を失い、そし
て2度目は、借金返済以外のあらゆる活動にストップがかかることで、例えて言
うならば「 街の生命活動」そのものが停止レベルにまで追い込まれることにな
りました。人口流出はさらに加速し、残った人も身動きが取れなくなる――しか
しそのような状況であるからこそ、「地域」の中にいる人々が、これからの街の姿、
その再生をどのように主体的に考えていくかは、極めて重要な課題であると言え
ます。
その中で、僕が出会った希望の光が「 街の記録」です。元・石炭博物館館長
43ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
の青木隆夫( 現・夕張地域史研
究調査資料室長)は、1980年の
博物館開館以来、各種の映像資料
を収集、また当時の「 ニューメ
ディア」であったビデオデッキで、
炭鉱に関わるテレビ番組を私的に
録画し続けていました。その数は
おおよそVHSで500本。僕は青木
と話を重ねる中で、雨漏りが危惧
される博物館の資料室に放置され
ていたこれらの映像を、デジタ
ル・ダビングし保存を図ることを
思いつきました。2008年秋、僕
は大学院生とともに、ダビング用
のデッキを夕張のホテルに持ち込
み、泊まり込みでダビングをしま
した。その結果、重複および視聴
不能なものを除く413本の資料群
――ここでも「私的アーカイブ」
ができたのです。
それからの僕は、まさに「アーカイブ」を介して「夕張の街の歴史と出会う」
という体験をしていったことになります。青木コレクションは、アーカイブとし
て極めて魅力的な「 塊」を成していました。413本の映像は、その約2/3がテレ
ビ番組の録画、その他は35mm、16mm、9.5mmなどのフィルムからのダビング
映像を含む( 最も古いものは、1916年「 三井八郎右衛門視察記録映像」)公式
映像や個人映像群によって構成されています。一見雑多なコレクションに見えて、
そこにはたしかに「 アーカイブ」を成すに値する、一つの秩序が備わっていま
した――それは、この炭鉱の街で歴史的な節目を体験してきた「 ひとりの当事
者」の「観察の記録」であったと言えます。
1980年∼90年代前半に「 波」のピークを持ち、その前後の時間軸に沿って広
くすそ野をもつこのアーカイブは、テレビ番組では「 事故」「 閉山」映像、その
他では「 PR映像」「 記録映像」といった地元自治体や炭鉱企業による公式映像
夕張実践 2010年9月
44 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
や個人映像が中心としての
「 塊」を成しています。こ
れ は そ の ま ま、「 ナ シ ョ ナ
ル」なメディアネットワーク
が生み出す眼差しと、「 ロー
カル」な当事者の意識のコン
トラストの表れであると言え
ます。すなわちこの時代の夕
張は( というよりも、これ
以来ずっと)、そのポリティ
クスの渦中で一種のアイデン
ティティの危機に直面してい
たということを、このアーカ
イブからは読み取ることがで
きるのです。
社会は記憶システムであ
るという前提に立つならば、
「国策」と「地域の自意識」
の間で揺さぶられ、生活環境
自体が激変し、さらには街そ
のものの消失の危機にまで至ったということは、「 記憶が消され続けた」歴史で
あるとさえ言うことができます。そのように考えると、地域の再生に向けたプロ
ジェクトは、まずその記憶の再構築から始めなければならないでしょう。そこで
僕と青木は、できるところから映像アーカイブを介して、それに取り組んでいく
ことにしました。それが「 ゆうばりアーカイブ」と称したゆうばり国際ファン
タスティック映画祭における上映企画を核に、地域の人々がコミュニケーション
の循環を作り出そうとした試みです※15
。
記憶は言葉の周りに組織されていくということを考えるならば、映像が語りの
対象となる位置に置かれるような設えが必要になります。そのために映画祭にお
ける上映会では、2009年の第1回以来、青木と僕の「 掛け合い」を常に行いなが
ら、また2011年10月16日の北炭夕張新炭鉱ガス突出事故から30年という節目の
タイミングで開いた上映会では、『 地底の葬列』( 1983年北海道放送)、『 地の底
夕張実践 2011年2月
45ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
への精霊歌』( 1993年、NHK)の制作者である後藤篤志、田畑智博、今野勉を招
き討論を行いました。
また年次は前後しますが、2010年夏は東海大学生16名と教員、それに地元の
方々を交え、アーカイブ映像を題材に、そこで写されている場所の現在の姿を撮
影し重ね合わせるワークショップを開催しました。この実践は、秋・冬と続き、
新たな映像作品『 夕張はいま…消え続ける街、生き続けるもの』として編集し
直し、2011年2月の映画祭で上映しました。先に挙げた2011年10月の上映・討論
会に先立ち、9月にアーカイブ映像数本を再編集し、討論材料にするというワー
クショップも開催しています。
こうした数々の活動は、アーカイブを「 フリーズした資料の蓄積体」と考え
るのではなく、コミュニケーションを媒介するもの、あるいはアーカイブそれ自
体を動的に変化し更新されうるものと捉え、活用する試みとして総括することが
できます。アーカイブが単に「 地域の再生」という課題に対して、参照すべき
素材としてあるというのではなく、それ自体が直接的に運動体の一部になり得る
という発見は、「 おおすみ」の実践から「 ゆうばり」に確実に継承された知見で
あると言えましょう。「 地域( コミュニティ)」の本質は、コミュニケーション
行為にある――アーカイブはまさに、その会話のダイクシス( 指示代名詞を活
性化する環境)として機能するのです。
さらにそれに加えて、「 私的にテレビ番組を録画する」というデジタルメディ
ア時代のありふれた日常行為を、最も身近に存在するアーカイブ実践として位置
づけた――このことにより、アーカイブの概念は「 公文書館」的権威から解放
され、新しいパブリック( 公共)の創造に資する可能性に一歩踏み出したと言
えます。このことはトップダウンに形成される社会のオルタナティブに、アーカ
イブが寄与しうることを示しているのです。
5-2「三陸」と出会う――「津波」は何を押し流したのか
それは突然やってきました。2011年3月11日――誰も経験したことのない震災
と津波そして原発事故。あれから二年以上が経過しているにも関わらず、僕たち
は、この出来事にどのように向き合うべきかというメタ次元において逡巡し続け
ています。
とはいうものの、この震災以降、数多くの人が「 映像アーカイブ」の必要性
46 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
を強く意識しました。実際にそれに関わるプロジェクトが、震災からほどなくし
て幾つも誕生しています。いまだ進行中の事態が、将来これの出来事をしっかり
振り返ることと、そのための資料の大切さに気付かせてくれたのだと思います。
せんだいメディアテークが開設した『 3がつ11にちをわすれないためにセンター
(略称;わすれん)』、独立行政法人・防災科学技術研究所が中心となった『311
まるごとアーカイブス』――もちろん東北大学による『 みちのく震録伝』を代表
とするトップダウンの取り組みもありますが、市民参加をベースに、映像の収集
( 制作)・保存・公開( 活用)の「 開かれた仕組み」を構築していこうというア
プローチが目立つように思います※16
。
恥ずかしながら僕はといえば、震災直後は、ある意味自分の無力さに打ちのめ
され、軽い思考停止状態に陥っていました。そこから立ち直るきっかけを与えて
くれたのが、まさにアーカイブへの関心だったのです――が、それはここに挙げ
たような「 震災そのものに関するアーカイブ」にではなく、「 夕張」との共通点、
すなわち街の姿が失われたという現実へのそれでした。
津波被害のトラウマティックな映像を見続けてきた僕には、次第にその残酷さ
に添えられたクリシェ( 常套句)に違和感を覚えるようになってきました。そ
れは「 津波が、一瞬にして全てを押し流した」という台詞でした。確かに僕ら
は、もはや押し流されたものを取り戻すことはできません。しかしそれは本当に
「 一瞬にして、全てを」消したのでしょうか。「 夕張」をアーカイブ体験した僕
は、かの街の消失の危機が2度の「 リセットボタン」を介して、おおよそ30∼40
年をかけてゆっくり進行していった様を見てきました。その僕にとって、このク
リシェにはとてもイデオロギー的なものを感じたのです。
もう一つ、三陸が夕張と重ね合わせられたのは、「 膨大なテレビ映像( 群)
と短期間に出会う」という「 アーカイブ的」体験でした。この震災以前は、テ
レビはどれくらいこれらの街を記録してきたのだろう。そこには夕張と同様の、
「地域」をめぐる「外と内」の眼差しの攻防はあるのだろうか――「ゆうばりアー
カイブ」を構成する映像の中心が「 テレビ映像」にあったことを踏まえ、僕は
NHKアーカイブスの中に、どれだけこの「 地域の残像」があるか探索してみよ
うと考えました。そこで2年前の2011年からスタートしていた「 NHKアーカイブ
ス学術トライアル研究」の審査に「 三陸の津波被災地の風景の消失を考える―
「 景観史」として還元される地域の肖像―」というタイトルでエントリーした
のです。 
47ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
ここに掲げた「 景観」――この言葉を僕は、研究を通じて徐々に「 風景」と言
い換えるようになります。「 風景」と「 景観」を概念として区別するようになっ
たことが、夕張から三陸に引き継がれた大切な知見だと考えています。この2つ
の言葉を隔てるものは、その対象と、それを眼差す主体との距離、すなわち地域
を取り巻く環境イメージを「 風景」と言うか「 景観」と言うかの間には、その
地域を「 生きられる世界」として認識しているか、あるいは一つの「 絵」とし
て認識しているかの違いがあるのです※17
。
地域が「 生きる」ということと強く結びついたときに、環境は生態系として
知覚されます。「 風景」とはその認識を成立させる「 まとまり」、所謂「 ゲシュ
タルト」であるということができます。夕張も三陸も( 特に今後のアーカイブ
実践の一つの拠点として設定した気仙沼市を例に挙げると)その「 地域」はか
つて( 特に戦後の復興期に)基幹産業によってまとめられて、かたち作られて
きました。その点で言えば「 夕張の石炭」「 気仙沼の漁業」は、街の機能の中核
的アクターとしては対称の位置にあります。そこを基点に、プレイヤーとしての
炭鉱マン VS. 船乗り、街の歴史を刻む「 外圧( 国策/グローバル経済的要因)」
として、石炭/リゾート政策 VS. 200海里問題を並べてみると、これらは2つの
「 地域」をつなぐ問題は対照を成し、両者を相似形と見なすことが可能になり
ます。ここまで行くと、「 地域」は具体的なあれこれの土地名を離れ、一つの概
念として浮上してきます。
津波の被災地は、広大なエリアにわたっています。僕たちが当初途方に暮れた
のも、その認識不可能なほどの規模に圧倒されたという側面がありますし、マ
ス・メディアもそれをカバーしきれないことに由来する混乱があったと思います。
逆に「地域」は、認識可能な生活規模を表す空間の基本単位であると仮定すれば、
一つの「 地域」の映像は、他の「 地域」に対する類推を支え、また地域間の関
係を考える手がかりを与えてくれます。
しかし今回、具体的な検討対象「 地域」を気仙沼に絞ったのは、このような
積極的な意味からではありませんでした。実は、改めてNHKアーカイブを探索し
た結果わかったのは、東北太平洋沿岸地域の震災前映像の、愕然とするほどの少
なさだったのです。
48 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
「 地域」をめぐる眼差しの「 内と外」の攻防をある程度「 量的」に考えるため
の映像群の存在が自治体単位で確保できない――すなわち、「 この地域の表象自
体が乏しい」という現実。そこで僕たちは、幾つかの過程をここで踏んでから
「分析」に向かうことにしました。第一に、行政単位としての自治体の概念(既
に述べたような、仮説としての認識単位である)と地域の概念を峻別し、後者の
典型となる「 地域」を設定すること。第二に、それ自体が「 アーカイブ性」を
有し、かつ他の番組とリンクする関係性を内包した、ハブ番組を代表として探す
こと。その結果、「 地域」としての対象を石巻と気仙沼に絞り、その中で10本程
度の番組を選ぶことができました。さらにその中で、今回の津波災害と、それ以
前の街の「風景」とを媒介するハブ番組として見い出されたのが『嵐の気仙沼』
(NHK、2009年)だったのです。
『 嵐の気仙沼』は、先に2005年の戦争関連番組で挙げた『 ZONE』や『 ヒロシ
マ』と同じ意味で「 ハブ番組」だったわけではありません。むしろこの2つの番
組の特徴である、引用映像はほとんどなく、また震災から1年以上前の放送とい
うこともあり、当然ながらそこにはこの事態を予兆させるものは全くありません。
『 嵐の気仙沼』は、2010年の第36回放送文化基金賞テレビドキュメンタリー部
門本賞受賞作でした。「 平和で何事も起こらないドキュメンタリー作品に、今回
は本賞が贈られることになった」(『第36回放送文化基金賞贈呈式カタログ』公益
財団法人放送文化基金、2010年)と評され、地方局制作番組としての受賞は異
例ずくめだったといいます。しかしこうした評価とは別のところに、実はこの番
組の核心はありました。「 港町の特別な一日」という副題がそれを表していたの
岩手県田野畑村 13 宮城県気仙沼市 40 福島県新地町  0
福島県広野町 1 岩手県宮古市 34 宮城県南三陸町 13
福島県南相馬市 14 岩手県山田町 7 宮城県石巻市 57
福島県浪江町 12 岩手県大槌町 5 宮城県女川町 13
福島県双葉町 3 岩手県釜石市 19 宮城県東松島市 6
福島県大熊町 3 岩手県大船渡市 25 宮城県名取市 16
福島県富岡町 2 岩手県陸前高田市 19 宮城県山元町 0
福島県楢葉町 1
計303(重複含)
※NHKクロニクル保存番組検索(http://www.nhk.or.jp/chronicle/ 2011年5月5日時点)
49ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
です。台風によって、沖から様々な地方に所属する船が港に集まってくるという
ここで描かれた情景は、先の講評とは逆に決して「 日常」の風景などではなく、
むしろ漁業の町としての「 日常」が失われていることのネガとしての「 特別な
一日」だったのです。
そこで僕たちは、この街の日常の「 記憶の痕跡」を探すために映像と向き合
う作業を始めました――一瞬復活する「 特別な時間」を手がかりに。その意味
で言えば、この番組は極めて奇妙な構造性を持っていました。時刻表示のスー
パーとともに刻まれる数々のシーンには、ほとんど「 風景」らしい「 風景」は
映されておらず、船員たちが汗を流す風呂屋も、コンテナ車を改造した雑貨店も、
夜のグラブも、点の連なりに見えました。しかしそのいずれもの点が、かつて栄
えていたこの街の「 一時代」を指し示すインデックス( 指示詞)だったのです。
言い換えれば『 嵐の気仙沼』には、僕たちが認識すべきこの街の歴史が、圧縮
体として存在していたのです。
こうした特徴は、『 ZONE』が抱え込んだ問題――核に対する未規定性を告発
するために用いた表現に、極めて類似した手法を呼びこみます。それが同じモ
チーフ・イメージを(『 ZONE』の場合は「 きのこ雲」)反復することによる象
徴化です。『 嵐の気仙沼』の場合、それは「 船」でした。まるで水鳥の群れのよ
うに隊列を組んで港に入ることから一日が始まり、そして同じように隊列を組ん
で出港するシーンで終わる。ほかにも随所に表れる「 船」――それは、本来無機
的であるはずの物体を生き物であるかのように描くことによって、この街の生態
系を象徴化する役割を担っていたのです。
こうした「船」の姿は、気仙沼、石巻を舞台とした番組に共通して、かつ様々
な横顔を見せながら埋め込まれていました。ある時は前景となって「 生と死」
を表現し、ある時は背景となって、人間関係や時空間を逆照射する。その多様性
は、「 船」という存在がまた、この地域に対する外からの眼差しと、内からの意
識を交差させる位置にあることも表しています。「 船の生態系」として港町を描
くことから、この地域の失われた記憶をよみがえらせていく――『嵐の気仙沼』
はそうした意味で、三陸の複数の地域を結ぶ「ハブ番組」たりえるのです。
ところで『 嵐の気仙沼』が描いていないものが( 当然ではありますが)、もう
一つあります。それは津波です。ところがこれは極めて偶然的なことではなかっ
たのですが、事後的にその役割は実現することになりました。『 嵐の気仙沼』を
制作したチームは、震災・津波の2ヶ月後から、2009年の当時に取材した人々の
50 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
消息を追い、2011年9月、続編『 がれきを踏みしめて∼気仙沼 港町の絆∼』を
放送しました。さらにこの定点観測は、現在も続々編を生み出し続けています。
『嵐の気仙沼』は、この街の過去だけでなく、津波後も積み重ねられる「現在」
も一本の時間の糸としてつないでいるのです※18
。
僕は震災・津波から時間が経つほどに、トライアル研究応募の動機となった
「違和感」に立ち返る必要を感じるようになりました。あの時はあまりの衝撃・
絶望に、「 津波が全てを押し流した」という言葉自体が、それを受け入れる免罪
符のように見えたのかもしれません。しかし『 嵐の気仙沼』を中心に幾つかの
映像を見るうちに、「 街は、決して一瞬にして消えたのではない」ことがわかっ
てきました。夕張と同様、三陸の町々も、1970年代以降、高度成長を超えたと
ころで、グローバル経済と出会ってからの「 舵取り」に悩んだ歴史を共有して
いるのです。つまり、津波は決して一瞬にして全てを押し流したのではなく、街
は徐々に「 いまのかたち」になっていったのです。言い換えれば「 津波」が消
したものは、それに至る時の流れ、あるいはその痕跡だったのです。
物理的に街を津波が押し流すことと、それが「 記憶」を消してしまうことは、
必ずしもぴったり対応しているわけではありません。しかし「 戦争」「 破綻」や
「 巨大災害」といったカタストロフィーが生活環境の崩壊である以上、それが
時間の流れを止め、それが思考停止や隠蔽記憶を介入させてしまう契機になって
しまうことは、否定できません。とはいえ一方で、淡々と流れ続ける日常には、
「 昭和19年」のように意識化されないグレーな時間を作り出すという反対の性
格もあります。「垂水丸」が教えてくれたように、「記憶」が組織されるためには、
節目は必要なのです。ただその衝撃が大き過ぎると、それは言葉を失わせ、記憶
を封じこめてしまいます。
僕たちが「 出来事」を自らのものとして、記憶にとどめるためには、その地
域ごとの歴史軸につなぎとめるための言葉が必要なのです。津波被災地を訪ね
ると、いま最も不足しているのが、この「 言葉」であるということを実感しま
す。ある自治体の方が、「 時間が経つほどに、人々の意識の格差が大きくなって
いる」と語ってくれました。復興スピードのもどかしさは、物理的な意味だけで
なく、人々から生きられる土地を奪い、孤独に追い込み、バラバラに引き裂いて
いるようです。それを再び結び付けていく言葉を、どうやって作り出していくの
か――そのために映像記録に何ができるのか。いよいよ「三陸」プロジェクトは、
研究・分析の段階から、「実践」に飛躍すべき段階に至ったと言えます。
51ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
5-3 NHKアーカイブスの地域公開という課題
夕張の青木コレクションは、その2/3が私的に録画された放送番組でした。アー
カイブを単なる研究対象ではなく、実践素材として用いようと考えたとき、その
ことが壁として立ちはだかります。番組を取り巻く諸権利、特に著作権と肖像
権は、テレビ放送が「 同時性」に支えられるメディアであるというその性質上、
その「時間」において認められたものという大前提があります。
これまでの放送番組のアーカイブ化は、この諸権利関係の制約に対して再許諾
の手続きを踏むことによって進められてきました。当然、誰でも想像できること
ですが、それは大変な作業です。約80万本を数えるNHKアーカイブスの番組ス
トックのうち、この手続きをクリアして公開ライブラリーに移すことができたも
のは、2003年のアーカイブ事業を開始してからまだ約8500本。約1%という全
体に占める割合は一向に詰まる気配はありません。むしろかつてのような集中
的に権利処理を行う(「 平和アーカイブス」のような)特別企画が活発でない今、
壁はむしろ一層高くなっているように思われます。
夕張で行ってきた上映会も、基本的には自治体や地元の個人が撮影した映像を
中心に行い、テレビ番組を用いる場合も、その作品の制作者を交えた討論・研究
集会という「 例外規定」の範囲内で行うしかありませんでした。しかし僕たち
これまで、映像を見ることによって失われた「 記憶」、それを再生させるきっか
けとなる「 言葉」を紡ぐ可能性が開かれることを、確認してきました。とする
ならば「 例外規定」に頼るのではなく、実際の「 それを必要としている人々の
中で活用できるように」どうやったらこの壁を切り崩していくことができるか、
それに立ち向かうことが避けられないという場面にいよいよ至ったと言えます。
気仙沼の映像を対象とした研究は、実は最初からそれを意識したものでした―
―以下は、僕がNHKアーカイブス学術トライアル研究に応募した際に「 研究概
要」です。
3月11日の津波は東北地方太平洋沿岸に壊滅的な打撃を与えた。その復興への
道筋について、現在多くの議論が交わされているが、本研究はその過程に映像記
録を活かすための、実践的方法を模索するものである。応募者は2007年以降財
政破綻に陥った北海道夕張市に入り、風景の消失が地域の記憶に及ぼす影響と、
映像体験がそれを補綴する可能性を探求してきた。その成果を踏まえて、今回は
より切実な状況への適用を検討する。復興政策がお仕着せに陥ってしまう危惧を
52 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
払拭するには、その土地を生活圏とする人々の目線に立った討議がなされること
が必須である。このコミュニケーション学的課題に資するアジェンダ素材を、震
災以前の平時の地域映像から抽出することが、本研究の第一の目標となる。応募
者は「地域の肖像権」という概念を提起し、アーカイブ映像の地域還元を構想し
てきた。郷愁に止まらない、過去の景観受容の意味論的可能性を開いていきたい。
ここに掲げた「 地域の肖像権」という概念こそが、その突破口になると僕は
考えていました※19
。映像公開の壁となっている肖像権は、実はあまり知られて
いませんが、成文法に基づいて設けられた制限ではなく、判例を積み上げるなか
で固まってきた、非常に解釈が難しい概念です。この概念に関する法的、あるい
は規範論的議論については、詳しくは別の機会に譲りますが( 知的資源イニシ
アティブ編『 アーカイブのつくりかた―構築と活用入門』( 勉誠出版、2012)の
中で、僕は若干詳しく書いています)、注目すべきは、それが基本的に「パブリッ
ク」に対する「個人」による「拒否権」に基づく要求であるという点にあります。
僕は法律家の意見を参考に、それに抵抗する方法を考えてみることにしました。
成文法に基づく概念でないのなら、その積み上がった判例と逆のアプローチが、
社会に浸透していくような流れが起せないだろうか( これもまた、実際は気が
遠くなるような話ですが……)と思ったのです。 
映像の中には、本来地域の中に残されていたはずの「 風景」があります。そ
れは、単なる視覚対象ではなく、「 その土地に生きる人々」にとっては、生態系
的認識を支えるゲシュタルトであると、これまで述べてきました。この発想が生
まれるきっかけとなった「 夕張」では、2度も「 リセットボタン」が押され、そ
れが現実空間においては失われ
てしまっていました。指をさし
ても、そこには何もない。それ
では、「 地域」を語る言葉は生
まれません。しかし、映像の中
には残されているのです。
映像の中の「 風景」は、も
ともとは「 地域」から写しと
られた像( 写像)です。それ
を別の場所のアーカイブ( こ 仙台ワークショップ 2012 年 12 月
53ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
の場合、NHKアーカイブス)
に閉じ込めておくのではなく、
もとあった地域に取り戻そう
――これが「地域の肖像権」
の発想です。これは、これま
での肖像権とは全く逆のアプ
ローチで、要求の主体は個人
ではなく、「 地域住民」とい
う集団であり、拒否権ではな
く「 請求権」であるという
特徴を持ちます。パブリックに対抗する立ち位置ではなく、「地域」というコミュ
ナルな小さな共同性にもとづき公共圏を作っていこうというボトムアップの運動
概念なのです( これに類するものとしては、景観権や環境権といった権利概念
が既に知られています)。
さらに言えば、これは先に確認したアーカイブの機能的本質――空間規定をす
ることから時間認識を創造する、という性格をまさに具現化するものであると言
えます。「地域」という空間を具体的に定めることによって、初めてその「地域」
にとっての大切な時間( 節目となる出来事を中心に組織される感覚)が見えて
くるのです。NHKの番組をまるごとアーカイブ化することの困難は、その空間規
定にありました。しかもいきなり「 ナショナル」レベルでそれを行うと、それ
は一種の「 公権力」を優先するイデオロギーを呼びこむ隙を与えてしまいます。
僕は、実は夕張でのアーカイブ・プロジェクトから、このステップに上がって
いくことを考えていました。しかし、それは簡単ではありませんでした。夕張に
保存された放送番組の映像が、私的に録画されたものであったということが、そ
こでは壁になっていたのです。だとすれば正面から「 NHKアーカイブスの中に
保存されている映像から、取り出していく」手続きを踏もう――ちょうど( と
いう言い方も不謹慎かもしれませんが)、震災があり、夕張に関する「 請求」の
扉を開く目途が立たなくなっていた折、NHKの組織内における「 被災地支援」
活動の文脈に合わせることができるようになったのです。
こうしてNHKの公式の活動としての『 嵐の気仙沼』の上映会とワークショッ
プは、2012年12月23日にせんだいメディアテークで実施されました。ワーク
ショップには気仙沼のNPOの方々をお招きしたほか、この地域に一定の思いがあ
仙台ワークショップ 2012 年 12 月
54 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
る人――かつて気仙沼に住んでいた方や、もっと広い範囲で東北地方の映像資料
を残そうとしている人などが参加して、「 見て話し合う」方法を採りました。そ
もそも放送番組はその地域を外からの目で切り取って作られたもの。そうした外
部の目を意識しながら、自分たちの記憶の欠損と映像の隙間を一緒に埋めていく
作業は、二重の意味で、「 復興」に向かうアイデンティティを支えていくことに
なるのではないかと考えたのです。
例えば、「 漁業の町」という少々ステレオタイプ的な描写に対して、地元の人
は最初やや抵抗を感じることもあります。しかし徐々に外からの目を受け入れ、
それに向き合うように映像に残ってない隙間を言葉で埋めていく――そこに実際
の街の姿と、そこで生きてきた自分たちの関係が、立体的に蘇ってくるというプ
ロセスが生まれます。このワークショップでは、それが確認できました。
この成果は年が明けて3月14日、恒例の「 NHK放送文化研究所春の研究発表と
シンポジウム:3.11震災アーカイブ活用の可能性∼防災・減災、復興にいかすた
めに∼」のセッションの中で発表されました。厳密に言えば僕が扱ったものは震
災前の平時の映像であり、このシンポジウムのテーマである「震災アーカイブ」
という言葉が直接的に与えるイメージとは異なります。しかし敢えて、そこに位
置づけることが重要であると考えました。物理的な復興の中でつい見落とされて
しまいがちになる「この町はいったいどんな街だったか。この街の人はどうやっ
て生きてきたか」という問い。それはこれからの「 復興」プロセスの中におけ
る自分たちの立ち位置を再確認することにつながる。それこそが「 心の復興」
を支えていくことになるのだと。
実際に僕は、このワークショップとシンポジウムの後、気仙沼市の人々とこれ
からこの街で始まる震災アーカイブ構築の活動と、このNHKの映像公開の試みを
「 つなげていく」構想について相談を始めています。「 震災・津波」という出来
事は、あくまで一続きの歴史軸の中の「 節目」でなくてはいけません。それよ
り前の過去を失うならば、それは隠蔽記憶として働き、それより後の時間が積
み上げられなければ、それは単なるノスタルジーに回収されてしまうでしょう。
「 津波」の前後を、映像でつなぐこと――そこから、この記憶を「 生きる/生
かしていく」活動を深められれば、と考えています。
55ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
「 社会は記憶システムである」との仮説のもとに、ここまで僕自身の「 記憶」
と「記録」に関わる試行錯誤について、お話をしてきました。その意味で言えば、
「 社会」はアプリオリにそこにあるのではなく、「 記憶」が「 生きたもの」とし
て時間を紡ぎ、その結果として再帰的に生産されていくものが「社会」なのです。
この認識は、現代ができあがった「 社会」のフリをしつつ、しかしそれは全く
形骸化したただの空箱に過ぎないかもしれない、そんな疑いの中にあることを示
唆してくれます。
「 記憶」の出発点は、あくまで個人( ヒト)にあり、またその個人の手の届
く生活圏( 地域)が、その「 記憶」を育む環境であります。そうであるならば、
社会が「記憶システム」であるために、その環境を意識的にサポートする組織・
機関が、そこではデザインされていかなければなりません。映像アーカイブは言
葉とイメージをつなぐという意味でも、その重要な一機能であると言えます。今
回、僕が展開した議論の中では、一般の常識からはやや逸脱していたかもしれま
せんが、私的な録画映像の集積体にも、敢えて「アーカイブ」という名を与えて、
むしろそこに原基的価値を見い出すようにしてきました。それはやはり「記憶」
が「個人」と切り離して存在することができないとの考えがあったからです。
しかしその一方で、NHKアーカイブスやさらに言えば国立公文書館のような、
巨大なナショナルレベルの空間、あるいはインターネットの世界が前提とするグ
ローバルなメディア空間にもとづくアーカイブ的な仕組を否定するわけではあり
ません。むしろそうしたものを「 可能に」するために、もっと「 地域」といっ
た身近な空間を大切にすべきではないかと思うのです。
MLA(美術館・博物館(Museum)、図書館(Library)、公文書館(Archives))
連携の必要性が叫ばれるようになってきました。こうした地域単位で運営され得
る公共機関は、「 記憶」を「 社会」に紡いでいくための重要な中間項として機能
するのだという認識に立って、その運動が広がっていくことを僕は願っています。
今回お話した僕のプロジェクトにおいても、各地で図書館、博物館、資料館との
協力関係があってこそ活動ができたという実感があります。むしろ僕は「地域」
をかき回す「 よそ者、ばか者( もはや若者ではない)」の一人にすぎず、こうし
た機関やそれを支える人々が主役であるとの感覚が、ますます強まっています
(垂水市のプロジェクトは既に完全に僕の手から離れています)。
6. おわりに――社会組織とヒトとアーカイブ
56 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
さらにMLA連携は、「 地域」と「 地域」が結びついていく契機になります。三
陸の活動ではその課題は既に明らかであり、おそらく今後、夕張でもそれは具体
的な動きになっていくでしょう。NHKアーカイブスのような大きな組織も、その
「 地域」と「 地域」を結ぶブリッジになっていく可能性があります。実際、気
仙沼で少しだけ開いた扉をもとに、NHKアーカイブスの地域公開は、どうしたら
横展開が可能かという議論も始まっています。
僕はといえばこうした「 連携」「 展開」が、単に物理的、形式的な組織・機関
のつながりを作るだけでなく、「 その中身」つまり何がそこから生まれる言葉の
ネットワーク・ハブになっていくのかを探求していきたいと考えています。「 風
景」という概念をそれぞれの地域でもっと人々の心に「 ストン」と落ちるとこ
ろまで、その構成素を分析していくこと――例えば夕張における「 炭鉱」、三陸
における「 船」といった眼差しの交差点が、過去を理解するだけでなく、どの
ように「 未来」の創造に、言い換えれば「 生きた記憶」として意味を持つよう
になるのか、など。
これからも、さまざまな次元での「アーカイブ実践」は続きます。
57ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
脚注(用語解説)
※1 テレビ60年と「記憶」
1953 年 2 月 1 日に NHK が、半年後(8 月 28 日)に日本テレビがテレビ放送を開始――さま
ざまなメディア、研究者がそれを振り返る試みを行っているが、その中でも萩原滋編『テレビ
という記憶―テレビ視聴の社会史』(新曜社、2013 年)は本論のテーマである「集合的記憶」
に焦点を当てたという意味で、注目の一冊。
※2 テレビの時空間
テレビはあくまで「いま・ここ」を映し、かつそれを生産するメディアである――この秩序認
識に基づき、「地デジ化」の本質とはその組み換えであると提起した。水島久光『テレビジョン・
クライシス―視聴率・デジタル化・公共圏』(せりか書房、2008 年)第二章。
※3 初期テレビ・ドキュメンタリー
60 ∼ 70 年代のテレビ・ドキュメンタリーは今日では考えられないほど作家性に富んでいた。
それは作品を通じて「テレビとは何か」を問う営為だったとも言える。東野真らによるシリー
ズ「制作者研究<テレビ・ドキュメンタリーを創った人々>」(『放送研究と調査』に 2012 年
2 月から 6 回にわたり掲載)で詳細に論じられている。
※4 クリシェ(常套句)
「決まり文句」は言葉だけではなく、あるパターンをなす映像などにもその機能を確認するこ
とができる。クリシェはしかし、ステレオタイプを形成するだけでなく、反復されることで
そこからの逸脱の契機にもなり得る。そのあたりはドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社、
1968=1992 年)のテーマとも重なる。
※5 技術論的パースペクティブ
ブーニュー『コミュニケーション学講義―メディオロジーから情報社会へ』(書籍工房早山、
2002=2010)から引いた言葉だが、この操作者=主体・対象=客体として固定する西欧近代主
義や科学主義に対する批判的視点は、ルジャンドル『同一性の謎』(以文社、2012 年)、ラトゥー
ル『科学論の実在』(産業図書、2007 年)などにも共有されている。
※6 公共性
メディアと公共性の関係を論じる出発点をハーバーマスに求めることについて異論はないが、
その理性主義を乗り越えるために、齋藤純一の定義(publicness は、official と common と
open によって構成される)を参照することは有効。齋藤純一『公共性』(岩波書店、2000 年)
※7 アーカイブの秩序性・統御性
フーコーもデリダもアーカイブとアルケオロジー(考古学)の類語関係に注目し、「時間秩序
を内包する」前提に立ち返ることから議論をスタートさせる。デリダ『アーカイブの病』(法
政大学出版局、1995=2010 年)は、その無意識性に切り込む。
58 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
※8 サーチとディレクトリー
検索を使いこなすハードルの高さは、いずれもユーザーに語彙や分類に対する「想像力」を要
求したことによるもの。サーチエンジンとは何かについては、石田英敬編『知のデジタル・シ
フト』(弘文堂、2006)の拙論、そもそも分類するとはどういう行為なのかについては、吉田
政幸『分類学からの出発』(中公新書、1993 年)参照。
※9 アーカイブとネットワーク
メディアのデジタル化に伴う諸現象に対して、この二つを主たる対概念装置として用いる有効
性は、前者が「集合的記憶」、後者が「集合知」の問題とつながっていることが端的に示して
います。西垣通『集合知とは何か』(中公新書、2013 年)。
※10 ハブ番組
もともとは桜井均の言葉。「デジタル・テクノロジーに支援されたテレビ研究―タイムライン
とアーカイブの利用可能性について」(『NHK 放送文化研究所年報』第 54 輯、2010 年)参照。
※11 トランジション
映画研究から借用した分析概念。特に意味の発生を考える点で重要な「映像のつなぎ」の部分。
このパターンを分類し八つの大きな連辞型をモデルとして抽出したのが C・メッツ(『映画に
おける意味作用に関する試論』水声社、2005 年)。「インサート(補足、強調のために挿入さ
れる)」「ファスト・カット(間隔短く、次々画面が変わる)」「フラッシュバック(同時進行す
る別の場の出来事をつなぐ)」などの手法があり、言外に意味が与えられる。
※12 記号のピラミッド
類像、指標、象徴というパースの基本的な記号分類の序列を読み替えたブーニューの「コミュ
ニケーション学」の核心。指標性を記号過程の基底に据えることによって、意味を、ピラミッ
ドを上昇/下降するものとして動的捉えられる。『コミュニケーション学講義』第三章。
※13 パレオTV/ネオTV
U・エーコの 1983 年に書かれたテレビ論「TV:失われた透明性」(水島久光・西兼志『窓ある
いは鏡―ネオ TV 的日常生活批判』慶応義塾大学出版会、2008 年所収)の中心概念。テレビ表
象が外部参照性を失い、自閉に転ずるさまを評した。
※14 物語『冬の波』と映像作品『冬の波』
映像作品(水島久光、五嶋正治『冬の波―第六垂水丸遭難とおおすみの記憶』56 分、非売品)
は、19 人のインタビューと資料を、中西久美子の「語り」を軸に構成。現地上映のみを目的
に制作したもの。竹之井敏の許しを得て、タイトルを『冬の波』とした。
※15「ゆうばりアーカイブ」
映像群そのものと上映会、アーカイブ実践を含めた活動の総称として用いている。資料分析の
一端は、水島久光「テレビ番組における風景の位相―映像アーカイブと日常の亡失に関する一
考察(前編:夕張の場合)」(『東海大学紀要文学部』第 96 輯、2012 年)にまとめている。
59ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
※16 震災アーカイブ・プロジェクト
『3 がつ 11 にちをわすれないためにセンター』http://recorder311.smt.jp/、『311 まるごとアー
カイブス』http://311archives.jp/(長坂俊成『記憶と記録―311 まるごとアーカイブス』岩波書店、
2012 年 参照)、『みちのく震録伝』http://shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/、渡邉英徳がインター
フェイスを開発した『東日本大震災アーカイブ』http://shinsai.mapping.jp/ など。
※17 認識論的概念としての「風景」
水島久光・兼古勝史・小河原あや「テレビ番組における風景の位相―映像アーカイブと日常の
亡失に関する一考察(後編:三陸の場合)」(『東海大学紀要文学部』第 97 輯、2012 年)では、
木岡伸夫『風景の論理―沈黙から語りへ』(世界思想社、2007 年)の概念「基本風景・原風景・
表現的風景」について、絵画論から引いた「遠景・中景・近景」さらに「記号のピラミッド」
と重ねて、機能を分析した。
※18 続編の制作
夕張におけるハブ番組『地底の葬列』にも、事故の 10 年後に『過ぎてゆく風景』(1991 年)
という続編が制作されている。「ハブ番組」は、過去に対するインデックスだけでなく、現在
進行形で「記録」を積み上げていくフレームでもある。
※19「地域の肖像権」
根拠は憲法 13 条「幸福追求権」。初めてこの構想を文字にしたのは、水島久光「アーカイブ
時代の地域と放送―地域イメージの還流/コミュニケーションの再生」(NHK 放送文化研究所
『放送メディア研究』No.7、2010 所収)。肖像権そのものの問題に言及したのは、水島久光「『記録』
と『記憶』と『約束ごと』―デジタル映像アーカイブをめぐる規範と権利」(知的資源イニシアティ
ブ編『アーカイブのつくりかた』勉誠出版、2012 年所収)。
60 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イ ブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
No 日 開始 終了 局 タイトル
001 8/2 21:00 23:24 日テレ 終戦60年特別ドラマ 二十四の瞳
002 8/3 2:43 3:38 フジ NONFIX「シリーズ終戦60年企画「海軍最年少兵士が過ごしたシベリア強制収容所」
003 8/3 21:15 21:58 総合 その時歴史が動いた「シリーズ終戦60年ソ連参戦の衝撃∼満蒙開拓民はなぜ取り残された∼」
004 8/5 3:10 4:04 総合 ふるさと発シリーズ被爆60年「はだしのゲン 誕生の軌跡」
005 〃 〃 〃 〃 ふるさと発シリーズ被爆60年「わたしのサダコを伝えたい」
006 8/5 18:55 21:48 TBS TBSテレビ放送50周年記念 戦後60年特別企画『ヒロシマ』
007 8/6 2:40 3:57 総合 ふるさと発シリーズ被爆60年「強がるしかなかった∼被爆と戦いつづけたプロ野球人・張本勲」
008 〃 〃 〃 〃 ふるさと発シリーズ被爆61年「あの日の記憶を確かめたい∼被爆建物・旧日銀広島支店」
009 〃 〃 〃 〃 ふるさと発シリーズ被爆62年「父が奏でたかったヒロシマ∼ある被爆2世の旅」
010 8/6 8:00 8:55 衛星2 平成十七年広島平和祈念式典
011 8/6 21:00 22:15 総合 NHKスペシャル 被爆60年企画被爆者命の記録∼放射線と闘う人々の60年
012 8/7 14:00 15:25 朝日 スクープスペシャル 終戦60年特別企画 検証!核兵器の真実∼それは人体実験だった
013 8/7 16:00 18:00 衛星2 あなたと作る時代の記録 映像の戦後60年
014 8/7 21:00 23:15 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 ZONE・核と人間
015 8/7 22:10 24:00 衛星1 地獄 沖縄戦・最後の33日間
016 8/7 23:25 24:45 総合 平和アーカイブス 語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第一夜 原爆投下・その時何が
017 8/8 21:00 21:58 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 追跡 核の闇市場∼放置された巨大ネットワーク
018 8/8 23:00 24:00 総合 平和アーカイブス 語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第二夜 被爆者たちの60年
019 8/8 23:10 24:00 衛星1 BSドキュメンタリー 祖国を奪われた人々 中南米日系人・強制連行の記録 第一部
020 8/9 10:40 11:40 総合 平成十七年長崎平和祈念式典
021 8/9 19:30 21:00 衛星2 被爆60年 平和巡礼2005
022 8/9 21:00 21:53 総合 NHKスペシャル 被爆60年企画 赤い背中 ∼原爆を背負い続けた60年∼
023 8/9 23:10 24:00 衛星1 BSドキュメンタリー 祖国を奪われた人々 中南米日系人・強制連行の記録 第二部
024 8/9 24:15 25:35 総合 平和アーカイブス 語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第三夜 伝えたし、されど
025 8/9 26:28 27:23 フジ NONFIX「シリーズ終戦60年企画「アロハ桜∼ハワイ日系二世からの贈り物」
026 8/10 21:00 21:58 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 コソボ・隣人たちの戦争“憎しみの通り”の6年
027 8/10 24:45 25:30 総合 九州沖縄スペシャル 火の雨が降った日 福岡大空襲60年
028 8/11 21:00 21:58 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 そして日本は焦土となった ∼都市爆撃の真実∼
029 8/11 24:45 25:30 総合 甲府空襲60年目の記録
030 8/12 19:10 21:00 衛星1 BSドキュメンタリー カウラの大脱走 オーストラリア日本兵捕虜・60年目の証言
031 8/12 19:30 20:45 総合 NHKスペシャル 終戦60年関連企画 ドラマ「象列車がやってきた」
032 8/12 23:00 23:45 総合 にんげんドキュメント 最後の一枚 ∼戦没画学生・いのちの軌跡∼
033 8/13 10:50 11:45 朝日 戦争童話集 『ぼくの防空壕』
034 8/13 21:00 23:09 フジ 終戦60周年記念スペシャルドラマ 遅すぎた帰還 実録・小野田少尉
035 8/13 21:15 22:13 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 靖国神社 ∼占領下の知られざる攻防∼
2005 年 8 月の戦争関連テレビリスト
61ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
No 日 開始 終了 局 タイトル
036 8/13 23:10 24:00 衛星 1 BSドキュメンタリー 「大地の子になった日本人 中国残留孤児60年の決断」
037 8/13 23:10 24:00 衛星 1 ドキュメントスポーツ大陸 日本が沸いたあの時 スポーツ戦後60年第二集 東洋の魔女∼鬼の大松 コートの絆∼
038 8/14 14:00 15:25 朝日 終戦記念日特番“敗戦から60年 私たちは間違っていたのか”
039 8/14 19:30 21:00 衛星 2 特集・あの日昭和20年の記憶
040 8/14 20:00 21:48 TX 日曜ビッグバラエティー 沸いた!泣いた!笑った!思い出の昭和 大特集
041 8/14 21:00 22:45 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 戦後60年 靖国問題を考える
042 8/14 22:10 24:00 衛星1 BS特集 「一瞬の戦後史∼スチール写真が記録した世界の60年」
043 8/15 9:00 10:30 教育 終戦の日アニメスペシャル 「象のいない動物園」
044 8/15 11:49 12:05 総合 中継 全国戦没者追悼式
045 8/15 17:10 18:20 総合 日本のこれから 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本 第一部
046 8/15 19:30 21:30 総合 日本のこれから 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本 第二部
047 8/15 20:10 21:00 衛星 1 ドキュメントスポーツ大陸 日本が沸いたあの時 スポーツ戦後60年第三集 両雄並び立つ 大鵬と柏戸
048 8/15 21:00 22:54 TBS 終戦の日スペシャル「覚悟 戦場ジャーナリスト 橋田信介物語 イラクに散った不屈の魂」
049 8/15 22:30 24:00 総合 日本のこれから 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本 第三部
050 8/15 23:10 24:00 衛星1 ドキュメンタリー 「二人の伝道師 淵田美津雄とドゥリトル隊爆撃兵の物語」
051 8/16 19:10 20:00 衛星 1 ドキュメントスポーツ大陸 日本が沸いたあの時 スポーツ戦後60年第三集 だから負けなかった 巨人栄光のVロード
060 8/16 19:30 21:58 総合 第三十七回思い出のメロディー
061 8/16 22:10 24:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 ベトナム戦争 サイゴン陥落・最後の58日間(再)
062 8/16 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 1大量虐殺への道
063 8/16 26:43 27:38 フジ NONFIX シリーズ終戦60年企画「行ってみよう 見てみよう! 歴史をめぐる日韓交流記」
064 8/17 22:10 23:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 フォークランド紛争 兵器の実験場(再)
065 8/17 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 2死の工場
066 8/17 23:10 24:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 ハンガリー動乱 ブタペスト13日間の記憶(再)
067 8/18 22:10 23:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 映画「元PKO部隊司令官が語るルワンダ虐殺」
068 8/18 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 3収容所の番人たち
069 8/18 23:10 24:00 衛星 1 BSドキュメンタリー 「引き裂かれた家族 旧日本兵とベトナムの60年」
070 8/19 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 4加速する虐殺
071 8/19 24:15 25:00 総合 アウシュビッツの真実 5解放と復讐
072 8/21 15:10 16:00 衛星 1 帰還を待つ家族 アーカンソー州兵 イラク駐留(再)
073 8/23 26:28 27:23 フジ NONFIX シリーズ終戦60年企画「ナトコ映画に描かれた民主主義 GHQの日本再教育へ」
074 8/26 25:20 28:20 朝日 朝まで生テレビ 「激論! 小泉純一郎にこれからの日本を任せるのか??」
075 8/22 19:00 21:48 TX 昭和歌謡大全集 昭和の名曲は、平成に変わっても色あせない。“戦後60年”をテーマで名曲の数々を披露。
076 8/29 18:10 19:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 チェチェン混迷の11年 紛争とテロの背景(再)
077 8/29 21:00 23:24 TBS TBSテレビ放送プロジェクト 広島―昭和20年8月6日
078 8/30 26:28 27:23 フジ NONFIX シリーズ終戦60年企画「幻の特攻基地 戦いはいまだ終わらず」
図書館 おける
(ファンドレイジング)
に
資 調達金
嶋田綾子・岡本真
64 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
図書館の資金源といえば、親組織( 公共図書館においては自治体、大学図書
館においては大学など)の予算が第一だろう。しかし、この予算が減ってきてい
るのが現状である。全国の図書館費の状況は2010年度の決算額で、公共図書館
では1209億671万円( 都道府県立図書館:102億8796万円、市区立図書館:1008
億1737万円、町村立図書館:95億9380万円、私立図書館:2億704万円)である。
大学図書館では2011年度の決算額で991億4534万円( 国立大学:251億9615万円、
公立大学:51億9365万円、私立大学:670億4947万円、短期大学:13億119万
円、高等専門学校:4億488万円)である(『日本の図書館2012』日本図書館協会、
2012より http://www.jla.or.jp/library/statistics/tabid/94/Default.aspx )。
これをそれぞれ前年度と比較すると、公共図書館は2009年度の決算額が1220
億1695万円であり、1館当たりの決算額でみると8.5%の減額である。大学図書館
は2010年度の決算額が1000億4102万円であり、1館当たりの決算額でみると1.5%
の減額である。
こうした状況のなか、通常予算にプラスして、外部からの資金を調達しようと
する図書館が現れてきている。それは寄付などで直接的に現金を集めたり、広告
を募って広告収入を得たり、図書や雑誌の寄贈を受け入れたりするなど、さまざ
まな方法がある。
2009年度
0
50
■私立図書館
■広域市町村圏
■町村立図書館
■市区立図書館
■都道府県立図書館
100
150
200
250
300
(百万)
2010年度
0
50
100
150
200
250
(百万)
2010年度 2011年度
■私立大学
■公立大学
■高等専門学校
■短期大学
■国立大学
公共図書館費の決算額(1館あたり) 大学図書館費の決算額(1館あたり)
65ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
今回の特集では、図書館の資金調達の方法を「寄付・寄贈」「広告」「販売」「交
付金・助成金」に分類し、個々の図書館における実践の事例を紹介する。特集の
最後にはそれらの方法を組み合わせた実践を「 さまざまな手法を組み合わせた
資金調達」として紹介する。いま、図書館は資金を得るためにどのような実践を
しているのか。これから資金を得ようと考えている図書館が参考できるような
グッドプラクティスを紹介していく。
2011年度の、日本の個人による年間寄付総額は、約1兆1182億円であった。こ
の年は、東日本大震災が発生した年であり、日本で寄付意識が変化し、寄付額が
跳ね上がった年である。実際、寄付金額のうち、約6000億円は震災関連に寄付
されたものであり、震災以外への寄付は、5182億円( 46.1%)である(『 寄付白
書 2012』日本ファンドレイジング協会、2013年)。
企業による寄付額は、7兆1679億9000万円( 会社標本調査2011年度 http://
www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon/top.htm)である。しかしこの総
額のうち、図書館の資金にあてられた額がわかる統計はない。
「寄付・寄贈」篇の寄付では、地方自治体に対するふるさと納税(正式名称「ふ
るさと寄付金」)を取り上げる。多くの場合、ふるさと納税を利用する寄付では、
寄付金の用途を指定することができないが、自治体によってはふるさと納税の寄
付メニューに「 図書館設備」を用意しているため、寄付者はその用途として図
書館を指定することができる。
大学などの自治体以外が運営する図書館では、自ら寄付を募っている。公共図
書館でも千葉市図書館や鎌倉市立図書館では、図書館内に募金箱を設置して寄付
を募る試みをしている。
「 寄付・寄贈」篇の図書の寄贈は、図書館に対する最も身近な寄付の方法であ
る。図書館へ本を寄贈したいというニーズはかなりある。図書館も寄付された本
は、そのまま蔵書にできる。しかし図書館が必要としている本のニーズと寄贈さ
れる本のミスマッチも多く、マッチングを行う事業を行うところも現れてきてお
り、こうした取り組みも紹介する。
寄付・寄贈
66 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
「 広告」篇では、図書館が企業広告を取り入れる事例を紹介する。現在、多く
の図書館が自館の公式サイト上に企業のバナー広告を掲載している。また本の貸
出時のレシートや貸出用バッグ、移動図書館車の車体など、さまざまな場所に広
告を掲載している。そのほか図書館に限定される試みではないが、コピー用紙の
裏を広告スペースにして、コピー代を無料にするという取り組みも行われている。
また寄贈と広告の合わせ技としては、図書館が必要とする資料を企業などが代
わりに購入し、図書館へ提供するスポンサー制度も広く取り入れられている。購
入する対象はほとんどが雑誌であることから、「 雑誌スポンサー制度」と呼ばれ
ている。これは企業などが図書館に雑誌を寄贈し、寄贈者である企業などの広告
をその雑誌のカバーに貼り付けるという取り組みである。このように図書館だけ
ではなく、図書館に資金を提供する側にもメリットが生まれる取り組みが行われ
ている。
「 販売」篇では図書館が作成した資料やグッズを販売して、収益を得る事業を
紹介する。販売はまだ多くの図書館で行われているとは言い難い。しかし図書館
が生み出したものに、わずかでも対価を得ようとする取り組みは、図書館を設置
する自治体や大学などからの図書館への評価にもつながるだろう。
図書館で販売されるものの多くは、商業出版では出版されないような地域に関
する図書や、図書館が不要とした蔵書や寄贈本である。これらは多くの図書館で
は無料配布し、閲覧・貸出するものだが、一部の図書館では販売し、新たな蔵書
のための資金源にしている。図書館で制作した図書は、図書館内で売るだけでは
なく、書店でや図書館内の本屋やショップなどで販売する場合もある。
そのほか書店などで委託販売する例など、図書館が間接的に収入を得ている例
も紹介する。
広告
販売
67ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
「 交付金・助成金」篇は、国や都道府県、財団などが特定の事業やサービス、
研究などに資金を与えるもので、用途が指定されていないものもある。
自治体が使えるもので、近年、金額の大きかったものは、「 住民生活に光をそ
そぐ交付金」である。これは2010年度予算で1000億円が計上された。このうち
「 知に基づく地域づくり」の活用例として、図書館が挙げられ、実際に図書館
に多額の予算が執行された。
また図書館が直接使うのではなく、図書館の一事業に限定して使えるもの、図
書館にかかわる団体・個人が使える助成金などもある。それらを一覧にして紹介
する。
上記で取り上げたさまざまな方法を組み合わせ、積極的な資金調達を行ってい
る図書館の実践を紹介する。
交付金・助成金
さまざまな方法を組み合わせた資金調達
篇・寄 寄
贈付
70 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
「ふるさと納税」を利用する
多くの自治体がふるさと納税制度を取り入れている。ふるさと納税とは、2008
年に「 地方税法等の一部を改正する法律」が成立・公布されたことにより、個
人住民税に対する寄付金税制が大幅に拡充され開始した制度である。納税と名が
ついているが実際には寄付金であり、寄付額によって住民税が控除される。「 ふ
るさと」に厳密な定義はなく、寄付者の出身地やお世話になった自治体など、寄
付者が自由に選べる。自治体に寄付された金額は、112億6286万4000円(「 平成
23年度( 2011年度)寄附金税額控除に関する調」総務省 http://www.soumu.go.jp/
main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/xls/J51-11-20.xls )である。
寄付をすると、寄付額に合わせて住民税、所得税が控除される。また自治体に
よってはプレゼントがあるなど、寄付者にメリットをもたらすものとなっている。
自治体によっては寄付メニューを用意しており、寄付者は応援する自治体の、
期待する政策に寄付ができる。寄付メニューのなかには図書館の整備や図書の購
入を挙げている自治体もある。寄付額が高額となる場合は、基金を設ける例もあ
る。また図書館への寄付をメニューとして持たなくても、結果的に図書館の整備
にあてられる例もある。
ふるさと納税では、寄付者に対してお礼をしている自治体もあるが、ほとんど
の自治体では、図書館から特にお礼はしていない。しかし一部の図書館ではふる
さと納税者へのお礼として図書館の利用カードを発行し、その自治体の在住・在
勤者でなくとも利用できるようにしている。
寄付者に対してお礼をしていない図書館でも、館内にふるさと納税コーナーを
設けて、ふるさと納税で購入した資料をアピールするなど、謝意を表わしている。
71ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
鳥取県ではふるさと納税の寄付メニューに「 鳥取県こども未来基金」を設け
ており、この基金によって鳥取県立図書館の児童書が整備されている。
鳥取県立図書館内にはこの基金による「ふるさと納税文庫」が設けられており、
誰もが自由に利用できる。また市町村立図書館や学校図書館が児童書を選ぶ際の
参考になるように、マンガなどの一部資料を除いた、刊行から1年以内の新刊児
童書を全点購入している。鳥取県こども未来基金は、児童書の整備のほかに子ど
ものスポーツ活動の支援にあてられている。
鳥取県へのふるさと納税額は、全体で1412万4160円あった( 2011年度)。こ
のうち鳥取県こども未来基金へは1134万8500円であり( 2011年度)、これは鳥
取県におけるふるさと納税額の80.3%を占める。そのなかから592万4250円( ふ
るさと納税の41.9%)が、児童書関連の購入・整備にあてられている。
撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 10 月 24 日
■鳥取県立図書館
http://www.library.pref.tottori.jp/
鳥取県鳥取市尚徳町 101
Tel: 0857-26-8155 
Fax: 0857-22-2996
000 鳥取県立図書館(鳥取県鳥取市)
Case
01
ふるさと納税で、児童書を整備
■参考資料
1. 児童図書室の「ふるさと納税文庫」をご存じですか
 http://www.library.pref.tottori.jp/hp/menu000001900/hpg000001811.htm
2. 鳥取県こども未来基金
 http://www.pref.tottori.lg.jp/kodomomiraikikin/
72 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
滋賀県野洲( やす)市にある野洲図書では、在住・在勤・在学者のほか広域
利用協定により草津市・守山市・栗東市の在住者に対して図書館利用カードを発
行しているが、ふるさと納税者に対しても「 ふるさと納税としょかんカード」
と称して、図書館の利用カードを発行している。これはふるさと納税を利用して
野洲を応援する人への、恩返しと言えるだろう。
図書館がふるさと納税者に対してお礼をしている事例は、ほとんどない。特産
物を贈るようなお礼をしなくても、図書館利用カードの発行は、図書館ならでは
のお礼の仕方ではないだろうか。野洲市では、ふるさと納税の寄付メニューに図
書館を支援する項目はないが、町ぐるみで図書館を盛り上げる姿勢がみえる。
撮影:岡本真 撮影日:2013 年 2 月 1 日
000 野洲(やす)図書館(滋賀県野洲市)
Case
02
納税者に「としょかんカード」の発行
■参考資料
1.「ふるさと納税としょかんカード」のお知らせ 
  http://www.library.hohoemi-yasu.jp/furusato.html
■野洲図書館
http://www.library.hohoemi-yasu.jp/
滋賀県野洲市辻町 410
Tel: 077-586-0218 Fax: 077-587-5976
73ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
出典:鷹栖町公式サイト
ふるさと納税と同様の取り組みとして、有効期限の切れたポイントカードのポ
イントを町に納め、そのポイントの換算金額を児童書の購入にあてるというユニー
クな取り組みを行っている町がある。いわばふるさと納税のポイント版である。
鷹栖町は、買い物時にポイントがつくカードを発行している。「 たかすサポー
ターズカード」と呼ばれるこのポイントカードの加盟店は全国各地にあり、加盟
店で買い物をすれば、100円に対して1ポイントがつく。このポイントは通常は1
ポイント=1円として使用できるが、有効期限が切れたポイントは町に寄付され、
児童書の購入にあてられている。
このたかすサポーターズカードは、全国共通のポイントカードを発行している
株式会社サイモンズのサイモンズカードを採用しており、社会貢献を主とする団
体へ寄贈する仕組みのサイモンズ・ネットワークは、鷹栖町以外にも全国に広
がっている。2012年の末に失効したポイントによって鷹栖町に寄付されたのは、
31万7297ポイントである。
■鷹栖町公民館図書室(鷹栖地区住民センター)
http://www.town.takasu.hokkaido.jp/guide/
00-index/28-shisetu/shisetu01.html
北海道上川郡鷹栖町北 1-3-2-5
Tel: 0166-87-2028 Fax: 0166-87-2850
鷹栖(たかす)町公民館図書室(北海道鷹栖町)
Case
03
失効したポイントを利用する
■参考資料
1. たかすサポーターズカードのお申し込み
  http://www.town.takasu.hokkaido.jp/intro/card.html
2.「全国初のふるさと納税ポイント版 北海道鷹栖町、図書購入に」
  共同通信、2009 年 10 月 27 日
  http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102701000517.html
3. 広報たかす No.699、2009 年 12 月
  http://town.takasu.hokkaido.jp/kouhou_back/kouhou_200912/takasu0912.pdf
74 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
和歌山県立図書館は2008年11月に、匿名の個人からふるさと納税による1000
万円の寄付を受けた。和歌山県は2008年度からふるさと納税を行っており、和
歌山県立図書館への1000万円の寄付は、初年度の出来事である。和歌山県への
ふるさと納税額は、2008年から2011年の集計で449名、1億965万4560円となって
いる。このうち用途として「 学校図書館や県立図書館の蔵書の充実」を指定し
た寄付が60件、6333万1000円( 全体の57.7%)である。図書館から積極的に寄
付を求めるアピールをしているわけではないが、1000万円の寄付を筆頭に、図
書館に対する寄付が相次いでいる。
先の1000万円の寄付を受けて、和歌山県立図書館では3043冊の本を購入し、
「ふるさと夢文庫」を設置した。寄付金の半分は、大活字本や世界遺産関係(「紀
伊山地の霊場と参詣道」関連)、児童書などの購入にあて、残りの半分は学校支
援用の図書を購入している。
また2011年度には故・木下秀雄氏からの3672万円の寄付により、1万7899冊の
本を購入し、「 きのくに虹文庫」を設置している。この文庫も大活字本や児童書、
学校支援用の図書が中心である。それぞれの文庫は、図書館内に特設コーナーと
して設置されている。
000 和歌山県立図書館(和歌山県和歌山市)
Case
04
寄付された1000万円で、3043冊を購入
■参考資料
1.「『ふるさと和歌山応援寄附』の集計」和歌山県
  http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/furusato/shukei.html
2.「『ふるさと夢文庫』を開設しました。」和歌山県立図書館ニュース、2009 年 4 月 28 日
  https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/mt/2009/04/post-1.html
3.「故・木下さんの寄付で誕生『きのくに虹文庫』」和歌山新報、2011 年 10 月 16 日
  http://www.wakayamashimpo.co.jp/news/11/10/111016_12050.html
4.「『きのくに虹文庫』を開設しました。」和歌山県立図書館ニュース、2011 年 10 月 21 日
  https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/mt/2011/10/post-61.html
■和歌山県立図書館 
https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/
和歌山県和歌山市西高松 1-7-38 
Tel: 073-436-9500 Fax: 073-436-9501
75ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
出典:和歌山県立図書館公式ブログ
76 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
佐賀県が実施する「 ふるさと納税制度」には、寄付メニューに「 くぅーりっ
ぱか佐賀っ子づくり!」があり、このメニューが指定された寄付金の一部は、佐
賀県立図書館の児童書を購入するための費用にあてられている。
佐賀県立図書館ではこの制度によって受入した本を年に数回、館内に特設コー
ナーを設けて展示している。常設コーナーも設けられ、そこには「 子どもたち
への本の贈りもの」とのメッセージが掲げられている。特設・常設コーナーとも
に、ふるさと納税についての解説が掲示され、本制度へのPRにもなっている。
2011年度には「 くぅーりっぱか佐賀っ子づくり!」は、佐賀県のふるさと納
税制度の寄付メニューのなかで、寄付額が2248万円と最多となった( 総額3962
万円のうち、56.7%を占める)。このうち32万4375円が、県立図書館の児童書の
購入やデジタル民話の作成といった同館による児童サービス関連係にあてられた。
「 くぅーりっぱか佐賀っ子づくり!」は、県内の学校の設備充実や奨学金など
にもあてられている。
撮影:岡本真 撮影日:2013 年 5 月 7 日
佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市)
Case
05
寄付金で、児童書の購入やデジタル民話を作成
■参考資料
1.「くぅーりっぱか佐賀っ子づくり!」佐賀県
  http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/zeikin/kifubosyuu/_10137.html#kyouiku
2.「ふるさと納税だより(平成 24 年度(2012 年度)版)」佐賀県、2012 年 10 月 15 日
  http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/zeikin/kifubosyuu/_62453.html
■佐賀県立図書館 http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/
佐賀県佐賀市城内 2-1-4 
Tel: 0952-24-2900 Fax: 0952-25-7049 E-mail: saga-kentosyo@pref.saga.lg.jp
77ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
図書館へ寄付をするルートには2つあり、1つは自治体が行うふるさと納税制
度や大学図書館が運営する大学への寄付を通じて、「 間接的に」図書館に寄付し
てもらうのである。もう1つは、図書館が自分たちの事業に対して、「直接的に」
寄付金を募る場合である。ここでは後者をとりあげる。
図書館への間接的な寄付の場合、寄付金が図書館の事業に回されないこともあ
る。ただし自治体でのふるさと納税では、寄付メニューに図書館の整備を挙げて
いる自治体も多い。またふるさと納税にあたって、使途に図書館の事業を指定で
きない場合でも、自治体の政策により、図書館のための財源にあてられることも
ある。もちろん図書館への寄付が寄付メニューにない場合、確実に図書館にあて
られるとは限らない。
図書館への直接的な寄付の場合、その寄付金は確実に図書館の予算にあてられ
る。図書館側も寄付を募る際には、用途を明確に表明しているので、寄付者は寄
付金が何に使われるのかを知ったうえで寄付ができる。これは寄付する側のモチ
ベーションの向上にもつながるだろう。
図書館が行う寄付の募り方はさまざまだ。銀行振り込みや、クレジットカード
でのオンライン決済、館内に設置した募金箱へのお願いなどである。
しかし、現金での寄付を受け付けている図書館は少ない。現金で受け付けてし
まうと、自治体の雑収入として一般会計に入ってしまい、図書館の収入にならな
いことがあるからだ。現金での寄付を図書館の収入にするためには、基金を創設
するなど条例を改正する必要がある。一方で、物納で本の寄贈を受け付けている
図書館は多い。物納であれば、金銭的な事務手続きの必要がないため、図書館の
蔵書にしやすいからだ。しかし寄贈本の場合、図書館が必要としない本が寄贈さ
れるなど、ニーズとのミスマッチによる問題も起こりうる。そのためニーズの
マッチングサービスや、ニーズにマッチしなかった寄贈本を頒布する取り組みも
行われている。
寄付を募る
78 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
千葉市図書館では、児童書を中心とした蔵書を充実させるために寄付を募金箱
に募っている。その方法は2つある。1つは、図書館内に設置した募金箱に寄付
をしてもらうものであり、もう1つは、ふるさと納税を利用して寄付をしてもら
うものだ。図書館内に設置された募金箱は、誰でも気軽に募金できる。
ふるさと納税による寄付を受け付ける窓口も、市役所だけではなく図書館にも
設置し、利用者にとって身近な場所で寄付できるようにしている。また除籍資料
のリサイクル時などに館内に募金箱を設置することで、資料を持ち帰る利用者に
も募金を促している。
募金・寄付金の報告はFacebookページで随時行い、その月の募金・寄付額と
累積での寄付額、寄付者名を記載し、寄付者への謝意と図書館の成果が端的に
公表されている。2012年度には募金29万4207円、寄付金32万1252円の合計61万
5459円が寄せられた。この寄付へのお礼と入館者1000万人達成記念とを合わせて、
感謝イベントも行われた。
このように積極的な寄付の募集と報告によって、図書館への募金・寄付を身近
なものにしている。図書館内での募金箱の設置は、千葉市図書館のほかにも鎌倉
市立図書館( 神奈川県鎌倉市)や二宮町図書館( 神奈川県二宮町)などでも行
われている。
000 千葉市図書館(千葉県千葉市)
Case
06
館内に募金箱を設置
■参考資料
1. 千葉市図書館 Facebook ページ
  http://www.facebook.com/Chiba.City.Central.Library
2. 所属長メッセージ(中央図書館長) 
  http://www.city.chiba.jp/kyoiku/shogaigakushu/chuotoshokan/kanri/message.html
■千葉市図書館
http://www.library.city.chiba.jp/
千葉県千葉市中央区弁天 3-7-7 
Tel: 043-287-3980 Fax: 043-287-4074
79ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
出典:千葉市図書館 Facebook ページ 
提供:千葉市中央図書館
80 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
慶應義塾図書館が募る寄付の目的は、書庫の整備である。慶應義塾図書館(三
田メディアセンター)には2012年に開館100年を迎えた旧館、1982年に開館した
新館のほか南館図書室、研究室棟地下書庫の4つの建物があるが、書庫の狭隘化
が問題になっている。そこで寄付を募り、書庫を整備しようというのだ。
寄付者は税制上の控除措置が受けられる。また慶應義塾の機関紙「三田評論」
と図書館サイトへ氏名が掲載される。
寄付額は2013年4月5日現在で、312万1000円である。図書館への指定寄付のほ
か、慶應義塾大学への支援として、「 慶應義塾維持会」や「 教育振興基金」など
がある。大学のほかの事業への指定寄付もある。
000 慶應義塾図書館(東京都港区)
Case
07
書庫設備のために寄付を募る
■参考資料
1. 図書館施設整備指定寄付金のお願い 
  http://www.mita.lib.keio.ac.jp/guide/donation.html
2.「図書館施設整備指定寄付金」申込者芳名
  http://www.mita.lib.keio.ac.jp/guide/Contributor.html
3. 慶應義塾へのご支援をお考えの皆様 
  http://www.kikin.keio.ac.jp/
■慶應義塾図書館(三田メディアセンター)
http://www.mita.lib.keio.ac.jp/
東京都港区三田 2-15-45 
Tel: 03-5841-2646 Fax: 03-5841-2611
出典:慶應義塾図書館公式サイト
81ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
広島大学図書館では、活動助成金を募っている。これは図書館の学術資料や地
域住民へのサービスの充実を図るためのものだ。
この助成金に寄付をすると、税法上の寄付金控除の対象になり、1万円以上の
寄付をすると、1年間有効の「広島大学図書館フレンドリー利用証」が発行される。
この利用証を持つと、広島大学の学生と同様のサービスが図書館で受けられるほ
か、企画展示の案内やメールマガジンの購読、地域・国際交流プラザの優先申込
が受けられる。この利用証を持たない一般学外利用者でも、貸出などのサービス
を受けられるが、書庫に入庫できないなどの制限がある。
寄付をしてくれた人への利用証の発行が、図書館利用の対価ととられる懸念に
対しては、あくまでも寄付のお礼として利用証を発行し、利用証を持つことで受
けられる図書館サービスについては学部生と同等程度、それに図書館からのお知
らせと地域貢献事業をプラスしたものとして制度設計がされている。
000 広島大学図書館(広島県東広島市) 
Case
08
寄付者に、フレンドリー利用証を発行
■参考資料
1.「広島大学図書館は活動助成金(図書館への寄附)を募っています。」
  広島大学図書館
  http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/friendly_annai/pamphlet.html
2.「広島大学図書館の社会貢献事業 :『図書館フレンドリー利用証』と『地域交流プラザ』」
 板谷茂、大学図書館研究 no.76、15-20、2006 年 3 月
 http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00021552
■広島大学図書館
http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/
広島県東広島市鏡山 1-2-2 
Tel: 082-424-6214 Fax: 082-424-6204
E-mail: tosho-fukyu-floor@office.hiroshima-u.ac.jp
82 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
東京大学総合図書館では、図書館建て替えのために寄付金を募っている。この
募集では、どのような図書館を作るのかが「 アカデミック・コモンズ」計画と
して明確に示され募集金額、募集時期も明示されている。
また、寄付金額によって特典がある。たとえば10万円の寄付で、図書館の銘板
へ名前が掲示され、30万円以上の寄付で、書庫入庫や開架資料の貸出を受けられ
る「 総合図書館特別利用証」( 3年間有効)が発行される。東京大学総合図書館で
は、学外利用者でも手続きをすれば閲覧はできるが、貸出はできない。もちろん
書庫へは入れない。これらが利用できる特別利用証が発行されるのである。300
万円以上の寄付で、この特別利用証の有効期限が終身となる。
また、新図書館計画に関する専用のFacebookページも開設されている。図書館
サイトでの詳細な情報提供と、Facebookによるリアルタイムな情報提供により、
積極的な情報発信が行われている。
000 東京大学総合図書館(東京都文京区)
Case
09
300万以上の寄付で終身の特別利用証を発行
■参考資料
1. 東京大学新図書館「アカデミック・コモンズ」計画 
  http://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt31.html
2.「東京大学新図書館計画アカデミック・コモンズ寄附のお願い」
  新パンフレット[PDF 版・2013 年 4 月] 
  http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/koho/ac/pamphlet.pdf
3. 東京大学学内広報第 1434 号:特集「新図書館計画」全貌現る 
  http://www.u-tokyo.ac.jp/gen03/kouhou/1434/02features.html
4. 東京大学新図書館計画 Facebook ページ 
  http://www.facebook.com/TodaiNewLibrary
■東京大学総合図書館
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/sogoto/
東京都文京区本郷 7-3-1 
Tel: 03-5841-2646 Fax: 03-5841-2611
83ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
新しく建設されるスペース「ライブラリー・プラザ」の建築イメージの模型             提供:東京大学
84 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
船橋市図書館では、東日本大震災で被災した西図書館の建て替えを検討して
いる。その西図書館建築を支援するために、市民から3000万円の寄付があった。
これは船橋図書館に対する寄付ではなく、あくまで船橋市西図書館を建て直す、
その建設費として寄付されたものだ。
船橋市図書館では、その寄付金を元に「船橋市西図書館整備基金」を設置した。
これは上記の寄付をそのまま受け取ると、自治体の一般会計に繰り入れられるの
で、寄付者の意思を尊重できないからである。
船橋市西図書館は、現在は一時的に移転して開館しているが、移転先も手狭な
ため、図書館の建て替えが検討されている。この寄付金は、その建て替えに生か
してほしいと寄付されたものだ。東日本大震災で被災した図書館へは、さまざま
な支援が行われているが、これもその一事例である。
000 船橋市図書館(千葉県船橋市)
Case
10
基金で、被災した図書館の建て替えを目指す
■参考資料
1.「「船橋市西図書館整備基金」を設置しました」船橋市、2012 年 10 月 5 日
  http://www.city.funabashi.chiba.jp/kurashi/study/0001/p023031.html
2.「 新図書館に 3000 万円 匿名市民が船橋市に寄付」千葉日報、2012 年 9 月 4 日
  http://www.chibanippo.co.jp/c/news/local/99367
3. 船橋市西図書館整備基金条例、2012 年 10 月 2 日
  http://www.city.funabashi.chiba.jp/reiki_int/reiki_honbun/ag00509881.html
■船橋市図書館
http://www.city.funabashi.chiba.jp/shisetsu/toshokankominkan/0001/0005/0001/library.html
千葉県船橋市本町 4-38-28 
Tel: 047-460-1311 Fax: 047-421-3230
被災した旧・船橋西図書館
撮影:高梨涼子 撮影日:2013 年 5 月 22 日
85ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
恵那市中央図書館(岐阜県恵那市)
Case
11
図書館まるごと寄贈を受ける
恵那市中央図書館は、財団法人伊藤青少年育成奨学会から、図書館施設に対す
る総事業費10億円と2万3000冊の資料の寄贈を受けて、2007年7月7日に開館した。
伊藤青少年育成奨学会は、恵那市内に本社を置くスーパーマーケットとホームセ
ンターを中心に事業を展開している株式会社バローの創業者である伊藤喜美氏の
個人資産の一部を基本資産とした財団だ。同会は、青少年の健全育成や地域社会
の活性化に寄与するために事業を行っており、恵那市中央図書館の寄付のほか、
奨学金やスポーツ活動への資金提供も行っている。
同館では開館後も「 恵那市図書館基金」を設置し、広く寄付・寄贈を受け付
けている。現金での寄付は、恵那市が行っているふるさと納税制度「 ふるさと
えな応援寄付金制度」を通しても行える。継続して寄付・寄贈を受け付けている
ことで、2011年度には個人・団体から80万円の寄付があった。これらの寄付は、
図書館の蔵書の充実や運営費にあてられている。
■参考資料
1.「図書館の概要」恵那市中央図書館 http://library.city.ena.lg.jp/information/outline/
2.「平成 24 年度(2012 年度)図書館要覧」恵那市中央図書館、2012 年 6 月 
  http://library.city.ena.lg.jp/index.php/download_file/172/289/
3. 趣意書、財団法人伊藤青少年育成奨学会、2006 年 4 月 11 日
  http://library.city.ena.lg.jp/index.php/download_file/44/108/
4. 財団法人伊藤青少年育成奨学会 http://www.ito-zaidan.or.jp/
5. 株式会社バロー http://www.valor.co.jp/vghp/
6.「ふるさとえな応援寄付金制度」恵那市
 http://www.city.ena.lg.jp/shisei/administration/finance/furusato/
■恵那市中央図書館 http://library.city.ena.lg.jp/
岐阜県恵那市長島町中野 2-2-5 Tel: 0573-25-5120 Fax: 0573-25-7036
撮影:岡本真 撮影日:2011 年 6 月 11 日
86 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
尾鷲(おわせ)市立図書館(三重県尾鷲市)
Case
12
地域の風習と寄付を組み合わせる
尾鷲( おわせ)市立図書館では、地域の風習であるまき銭や厄祝いを簡素に
し、浮いた費用を図書館への寄付を促す「寿文庫」という取り組みを行っている。
まき銭とはこの地域の風習で、厄年の人が神社へ厄落としのお参りに行った帰り
に、道にお金をまき、そのお金を拾った人がお金を使うことで厄を落とす、とい
うものである。厄祝いも同様に、厄年の人が宴会などでお金を使うと厄が落ちる、
という風習だ。
「 寿文庫」は1966年( 昭和41年)から行われており、47年間で2035万円の寄
付があった。この寄付は、図書館が事務局となり住民と一緒に運営している寿文
庫運営委員会によって実施されており、寄付金は利用者からのリクエスト本の購
入や、ふだん買うことが難しい高額本、運営委員会がお薦めする本などの購入に
あてられている。
寿文庫は常設ではなく、厄落としの期間にのみ寄付が集められている。その期
間中は図書館内にも特設コーナーが設けられ、地元の高校の協力のもと、ポス
ター展も行われている。期間が終わると、寿文庫で購入された本は通常の書架に
納められるが、ラベルが貼られて寿文庫の本であることがわかるようになってい
る。地域の風習を大切にしながら寄付を募るこの取り組みが、図書館と住民の恊
働による地域に根付いた活動として、50年近くも続けられているということは、
賞賛に値する。
■参考資料
1.「図書館だよりつみくさ 2013 年 1 月号」尾鷲市立図書館 
  http://www.city.owase.lg.jp/cmsfiles/contents/0000008/8798/tumikusa1.pdf
2.「図書館だよりつみくさ 2013 年 4 月号」尾鷲市立図書館
  http://www.city.owase.lg.jp/cmsfiles/contents/0000009/9168/tsumikusa4.pdf
■尾鷲市立図書館
http://www.city.owase.lg.jp/soshiki_view.php?so_cd1=4&so_cd2=3&so_cd3=3&so_cd4=0&so_cd5=0
三重県尾鷲市中村町 10-41
Tel: 0597-23-8282 Fax: 0597-23-8283 E-mail: tosyokan@city.owase.lg.jp
87ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
提供:尾鷲市立図書館
提供:紀勢新聞
88 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
佐賀県立図書館では、2007年10月より「メモリアルブック制度」を行っている。
この制度は、結婚・子どもの誕生・入学・定年といった人生の節目や、企業や団
体の記念事業の際に、図書館への寄付を促すものだ。寄付額は、個人は1口2000
円以上、企業・団体は1口5000円以上となっている。この寄付は税法上の控除対
象となる。
この制度では寄付をする際に、図書館に購入してほしい本のジャンルを指定す
ることができる。図書館は指定されたジャンルの本を購入し、一定期間、新着資
料のコーナーの一角に展示をする。またこの制度により購入された本には、蔵書
印とは別にメモリアルブックの印が押されており、展示期間が過ぎて書架に入っ
た本でも、メモリアルブックで購入された本であることがわかるようになってい
る。この制度の特徴は、図書館への寄付にメモリアルな側面を持たせたことで、
寄付という行為へのモチベーションを高めていることである。
提供:佐賀県立図書館
佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市)
Case
13
人生の節目に寄付を提案
■参考資料
1.「県立図書館メモリアルブック制度」佐賀県立図書館 
  http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/s-memory.html
2.「平成 23 年度(2011 年度)佐賀県立図書館年報」佐賀県立図書館、2012 年 7 月 
  http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/toshokan/nenpou/!H23.pdf
3.「『メモリアルブック』制度がスタートしました」佐賀県立図書館、県立図書館広報誌
 「くすかぜ」 2008 冬号 512 号、2008 年 
  http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/kusukaze/2008-512/kusukaze512.html
■佐賀県立図書館 http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/
佐賀県佐賀市城内 2-1-4 
Tel: 0952-24-2900 Fax: 0952-25-7049 E-mail: saga-kentosyo@pref.saga.lg.jp
89ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
市立小樽図書館では、図書館内に設置した自動販売機の売り上げの一部を、自
動販売機設置業者より寄付されている。この取り組みは北海道コカ・コーラボト
リング株式会社からの提案で2010年6月から実施され、2012年度からは北海道キ
リンビバレッジサービス株式会社からも実施されている。
各社は、図書館内に設置している自動販売機の売り上げから、1本につき10円
を1年間分まとめて図書館へ寄付している。寄付金は図書館の資料購入費にあて
られている。これは自動販売機を設置するにあたり、各社は場所代と電気代のみ
を図書館へ納め、売り上げは全て利益としているため、販売利益の一部分を図書
館へ還元する目的で寄付が行われているのである。
寄付金で購入された本には、特にそれとわかる印は押されていないが、寄付で
購入した本のリストを作成し、利用者にわかるようにしている。また自動販売機
にはこの取り組みが明記され、企業と図書館が協力していることをPRしている。
市立小樽図書館(北海道小樽市)
Case
14
館内に設置した自販機の売上げを寄付
■参考資料
1.「地域に愛される図書館運営を応援! 市立小樽図書館へ寄付 ∼ 40 冊の本が仲間入り
  しました∼」北海道コカ・コーラボトリング株式会社、2012 年 6 月 8 日 
  http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/pdf/2012/cola_12061201.pdf
■市立小樽図書館
http://www.city.otaru.lg.jp/simin/sisetu/toshokan/
北海道小樽市花園 5-1-1 
Tel: 0134-22-7726 Fax: 0134-34-0733 E-mail: tosyo-kan@city.otaru.lg.jp
提供:市立小樽図書館
90 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
公益財団法人松竹大谷図書館(東京都中央区)
Case
15
クラウドファンディングに図書館ならではの引換券
公益財団法人松竹大谷図書館は、株式会社松竹の創業者のひとりである大谷竹
次郎によって1956年に創設され、1959年に開館した専門図書館だ。ここでは松
竹が製作した演劇・映画・日本舞踊・テレビなどを中心にした台本・図書・雑
誌・写真・プログラム・ポスターなどの資料を収集・保存している。
このような歴史と高い専門性を持つ図書館ではあるが、現在は運営が厳しい
状態である。そこで運営資金を得るために、クラウドファンディングによる資
金調達を行った。クラウドファンディングとは、企業や個人が不特定多数の人
から資金を集める仕組みであり、主にインターネットを使って、不特定多数の
人に比較的少額の資金提供を呼び掛け、必要とする金額が集まった時点で支援
が実施される。松竹大谷図書館が利用したクラウドファンディングサービス
「 READYFOR?」では、特定の特典に対する引換券として支援額が設定されてお
り、支援者は支援したい金額の引換券を購入することで支援を行う。ただし、引
換券の購入金額が目標金額に達成しない場合には、支援は行われない。
松竹大谷図書館で行ったクラウドファンディングによる資金調達は、当初200
万円を集めることを目標に2012年9月3日に始まり、最終的に支援者272名、達成
金額357万9000円で資金調達に成功した。
このプロジェクトが成功した秘訣は、専門図書館ならではの引換券を設定した
ことだろう。同館は引換券として、オリジナルの台本カバーへの支援者名の記載
や、ふだんは立ち入りができない書庫内を含めた図書館見学会を設定している。
またREADYFOR?では、プロジェクトページで情報を発信し、TwitterやFacebook
で拡散しやすくしている。この結果、新聞などのメディアで取り上げられ、さら
にプロジェクトが広く知られるようになり、この図書館を知らなかった人たちの
関心も高まった。結果として支援を集めるだけではなく、社会に松竹大谷図書館
の存在を高める広報にもつながり、認知度が高まった。
91ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考資料
1.「歌舞伎や『寅さん』、大切な日本の文化の宝箱を守る。」READYFOR?、2012 年 9 月 3 日
  https://readyfor.jp/projects/ootanitosyokan
2.「演劇・映画専門の図書館、松竹大谷図書館が支援プロジェクト開始」ぴあ映画生活館
  http://cinema.pia.co.jp/news/5754/47901/
3.「蔵書 43 万点以上の演劇・映画専門「大谷図書館」、運営費募る」銀座経済新聞、2012 年 9 月 25 日
  http://ginza.keizai.biz/headline/2071/
■松竹大谷図書館
http://www.shochiku.co.jp/shochiku-otani-toshokan/
東京都中央区築地 1-13-1 ADK 松竹スクエア 3F
Tel: 03-5550-1694
出典:「READYFOR ?」プロジェクトページより
92 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
図書館が寄贈の受け入れを公けにしていなくても、図書館に本を寄贈したいと
いう利用者のニーズは多い。蔵書を買うための資料費が年々減りつつある図書館
にとって、本の寄贈は資料費をかけずに蔵書を構築する手段として活用できるが、
集まった本を選別する労力と覚悟も必要である。図書館のニーズにマッチしない
寄贈本も数多く集まるからだ。
そこでミスマッチを防ぐために刊行年の新しい本、予約が多数ある本に寄贈を
限定する事例も多い。なかには本のタイトルを指定して、寄贈を募集している例
もある。そのほかにも地域資料などジャンルを指定し、市販されていない資料や
絶版などで入手が困難な資料の寄贈を募る事例がある。これらは購入では入手で
きない資料群である。この場合、寄贈が図書館の蔵書コレクション構築の要に
なっているのである。
図書館のニーズと実際に寄贈される本とのミスマッチを防ぐために、寄贈を受
けたい図書館と、寄贈したい人のマッチングを手掛ける事業も行われているが、
その取り組みはまだごく一部のものである。
図書館でマッチしなかった本を無駄にしないための取り組みとしては、学校図
書館などの他の施設に譲ったり、無料または有償で利用者に頒布して再活用する
取り組みもある。とはいえこうした本の頒布が、地元の書店や古書店などの営業
に影響する可能性もあるため、あくまで図書館の資料費や蔵書を補うことを目的
として、本の寄贈を募集することが望ましい。販売によって得た収益金で本を購
入するときも、地元書店を利用するなど地元経済への配慮が必要である。
本の寄贈を募る
93ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
東京都立図書館では、2009年5月から多摩図書館に「 東京マガジンバンク」を
設置している。これは約1万6000誌という多種多様な雑誌を収集・分類・保存し、
閲覧に供しているものである。
東京マガジンバンクは、雑誌コレクションの中で所蔵できていない号を補うた
めに、寄贈を募っている。雑誌は次の号が刊行されると、バックナンバーの入手
が難しくなりがちだ。なんらかの理由で欠号になってしまうと、あとから購入す
るのは難しいものである。そのために、その号を持っている人へ寄贈を呼びかけ
ているのだ。
寄贈は資金調達とは、直接は結びつかない。しかし本来であれば購入に資金が
必要だった部分を補う意味で、寄贈もまた資金調達の一手段である。また特色の
あるコレクションを構築していくためには、重要な取り組みでもある。
また東京都立中央図書館、多摩図書館とも、雑誌は寄贈されるケースがかなり
多い。中央図書館では受け入れている雑誌のうち62.5%が寄贈によるもの、多摩
図書館でも48.9%が寄贈によるものである(「 東京都立図書館平成21年度( 2009
年度)統計」より)。このようにもともとのコレクションから、かなりの部分が
寄贈によってまかなわれており、資料の効果的な収集にひと役買っている。 
東京都立多摩図書館(東京都立川市)
Case
16
所蔵できない雑誌の号を寄贈で募る
■参考資料
1.「東京マガジンバンク所蔵雑誌欠号寄贈のお願い」東京都立多摩図書館、2012 年 7 月
  http://www.library.metro.tokyo.jp/about_us/syusyu_hozon/tabid/2096/Default.aspx
  東京都港区三田 2-15-45 
  Tel: 03-5841-2646 Fax: 03-5841-2611
■東京都立多摩図書館
http://www.library.metro.tokyo.jp/Default.aspx
東京都立川市錦町 6-3-1 
Tel: 042-524-7186
提供:東京都立多摩図書館 東京マガジンバンク
94 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
神奈川県立川崎図書館では、社史をコレクションしている。このコレクショ
ンは約1万6000点という全国有数の規模を誇る。しかし社史は一般の書籍と違い、
書籍の流通経路には乗らないため入手が難しい。
そこで川崎図書館では、企業や団体に社史の寄贈を募っている。図書館のサイ
トにも寄贈のお願いを掲載しているが、それだけではなく日頃から社史の刊行情
報をチェックし、寄贈依頼を行っている。その積極的な姿勢が全国有数のコレク
ション構築につながっているのだ。
また社史コレクションのPRのために広報誌も発行している。そこにも寄贈の
お願いが掲載されている。どのような資料があるのか、どのような活用ができる
のか、どのように収集しているのかがわかり、社史を身近に感じられる。
寄贈を受けるということは、寄贈された本の価格分の寄付金を受けるのと同等
といえる。まして非売品である社史は、金銭では測りきれない価値がある。この
ようなコレクションが図書館の価値を生むといえるだろう。
神奈川県立川崎図書館(神奈川県川崎市)
Case
17
全国有数の社史コレクションを寄贈で作る
■参考資料
1.「新たに社史を刊行されました皆様に、資料のご寄贈をお願い申し上げます。」
  http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/information/osirase08008.htm
2. 社楽(社史室情報誌)、神奈川県立川崎図書館
  http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku.htm
3.「【連載】県立図書館「廃止」を問う(6)=二重行政批判の矢面に大阪・中之島/神奈川」
  神奈川新聞、2013 年 2 月 4 日
  http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1302040011/
■神奈川県立川崎図書館
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/
神奈川県川崎市川崎区富士見 2-1-4
Tel: 044-233-4537 Fax: 044-210-1146
撮影:岡本真 撮影日:2010 年 2 月 10 日
95ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
横浜市港北図書館は、市民と恊働することで図書館の蔵書の充実をはかる仕組
みがある。その仕組みとは、まず友の会が寄贈本を集め、そのうち図書館が必要
とするものは寄贈し、それ以外の本は古本市を開いて販売。販売して得た収益金
は、図書館に寄贈するための本の購入にあてる、というものだ。
このサイクルにより、友の会は2012年10月1日∼10日までに、市民から約6400
冊の本を集めた。そのうち1700冊が図書館へ寄贈され、残りの本は、10月28日
に古本市で販売された。その売り上げの約4万円分は、図書館と相談したうえで、
図書館が必要とする本を友の会が購入し寄贈している。
横浜市港北図書館における年間の資料受入数は、約9100冊である( このうち、
購入は約5400冊)。これを補うものとして、友の会が募った1700冊はかなりの割
合を占める。図書館が自らの活動で資金を集めるのではなく、友の会が本と資金
を集めて図書館をサポートするという横浜市港北図書館の試みは、市民と図書館
の協働の一例といえる。
横浜市港北図書館(神奈川県横浜市)
Case
18
友の会が寄贈本を集め販売
■参考資料
1.「図書寄贈のお礼」横浜市港北図書館、港北図書館からのお知らせ 
  http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/chiiki/kohoku/
2.「蔵書支援プロジェクト」港北図書館友の会  
  https://sites.google.com/site/kouhokutosyokan/oshirase/morebooks
■横浜市港北図書館
http://www.city.yokohama.lg.jp/
kyoiku/library/chiiki/kohoku/
神奈川県横浜市港北区菊名 6-18-10 
Tel: 045-421-1211 Fax: 045-431-5212
提供:横浜市港北図書館
96 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
矢祭もったいない図書館は、2006年に本の寄贈を全国に呼びかけて開館した
図書館である。呼びかけから1年で約40万冊を寄贈で集めた。その成果を受けて
2007年1月、ほぼ寄贈本だけを所蔵する図書館として開館した。
矢祭町にはもともと図書館がなかったが、住民アンケートで図書館を求める要
望が第1位になり、図書館を作る話が持ち上がった。しかし年間予算が30億円の
町に新しい図書館を作るのは難しい。そこで持ち上がったのが、寄贈による図書
館づくりだったのだ。
しかし寄贈で本を集めれば、図書館を作れるわけではない。図書館を作るため
には、蔵書として管理しなければならない。40万冊もの本が全国から集まった
矢祭町では、町の助役から住民まで、町全体が一丸となって本を整理した。全国
に本の寄贈を求めるアピール力、町が一丸となって図書館を作り上げる覚悟と労
力が、矢祭町の図書館を作り上げたといえるだろう。
それでも全く課題がないわけではない。寄贈本には重複がたくさんあるので、
40万冊集めたといっても、重複を考えれば実質のタイトル数はもっと少ないは
ずだ。また収蔵能力を超えたため、現在は新規の寄贈受入を制限している。今は
比較的新しい本もあるが、将来的には新しい本のない図書館になってしまう可能
性もある。
だが、そこは改善していけばいいことである。実際、図書館に集まった本を元
に、2007年10月には「 もったいない文庫」を各地区の集会所など25ヶ所開設し、
町内会全域でサービスしている。また、学校図書館への配本も始めている。いわ
ば町中が図書館になり始めているのである。さらに子ども司書を養成するなど、
子どもへの読書活動を推進するための試みが活発に行われている。寄贈による図
書館という話題性だけではなく、次なる展開へ歩み始めているのだ。
矢祭もったいない図書館(福島県矢祭町)
Case
19
寄贈本だけを所蔵する図書館
97ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考資料
1.「矢祭もったいない図書館運営委員会」福島県
  http://www.pref.fukushima.jp/jinji/omg/bunschool/PDF/kennan01.pdf
2.「『矢祭もったいない文庫』概要」矢祭町
  http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/view.rbz?cd=75
3.「40 万冊のご寄贈を頂きありがとうございました。」矢祭町 
  http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/view.rbz?cd=68
4.「報告・矢祭町から「矢祭もったいない図書館」開館す !!」
 齊藤守保、みんなの図書館(362)、57-61、2007 年 6 月
5.「自治体の経営戦略と図書館のあり方−福島県矢祭町の事例を通じて考える」
  山本順一、図書館評論(48)、1-14、2007 年 7 月
6.「矢祭もったいない図書館を訪ねて」
  中沢孝之、図書館評論(48)、15-23、2007 年 7 月
■矢祭もったいない図書館
http://mottainai-toshokan.com/
福島県矢祭町大字東舘字石田 25 
Tel: 0247-46-4646 Fax: 0247-46-4646 
E-mail: mottainai@educet01.plala.or.jp
提供:横浜市港北図書館
98 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
東松島市図書館は、Amazonのほしい物リストを使って寄贈本を募集している。
市民による寄贈をただ受け身で待つのではなく、図書館が必要としている本を積
極的に公表し、寄贈を求めているのである。
Amazonのほしい物リストとは、ほしい物をリストにして公表し、そのリスト
を見た人が代わりに購入し、Amazonがリストの公開者まで届けるという、言わ
ばほしい物をプレゼントしてもらうというサービスである。
図書館が蔵書の不足を寄贈で補うのはよく行われているが、多くの場合、寄贈
してほしい本を指定せず、寄贈された本の中から受入する本を選び出している。
しかし寄贈される本のなかには図書館が不要とする本も多く、せっかくの寄贈が
無駄になってしまうことも多い。それを防ぐためにも、あらかじめ寄贈してほし
い本を公表しているのだ。東松山市図書館場合は、この公表先がAmazonであり、
寄贈してほしい本の公表と購入手段の提供を一緒に行っているのである。
同様にAmazonのほしい物リストを使って寄贈本を集めている図書館として、
南三陸町図書館(宮城県南三陸町)がある。
東松島市図書館(宮城県東松島市)
Case
20
「Amazonほしい物リスト」を活用した寄贈
■参考資料
1.「Code4Lib JAPAN2011 年 8 月選定」Code4Lib JAPAN、2011 年 8 月 31 日
  http://www.code4lib.jp/selection/
2. たすけあおう Nippon 東日本大震災ほしい物リスト、Amazon
  http://www.amazon.co.jp/wishlist/2PZIMTSXH8VUO
3.「本の支援ありがとうございます!」東松島市立図書館
  http://www.lib-city-hm.jp/lib/2012.top/010.help%20school/help%20school.html
4.「東日本大震災に図書館はどう向き合うか」岡本真、東京都図書館協会報 No.92、 
  2012 年 6 月 http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/15/pdf/tla92.pdf
■東松島市図書館
http://www.lib-city-hm.jp/lib/2011y-library%20top/
宮城県東松島市矢本字大溜 1-1
Tel: 0225-82-1120 Fax: 0225-82-1121
99ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
出典:Amazon ほしい物リスト 東松島市図書館のページ
100 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
大阪市立図書館(大阪府大阪市)
Case
21
寄贈本にメッセージ
大阪市立図書館では寄贈本を受け付ける際に、寄贈者からのコメントをもらっ
ている。コメントはその本にまつわる思い出や感想で、寄せられたコメントのう
ち公開可能なものは、図書館の公式サイトで公開される。公開はサイト上のみで、
館内での掲示などでは特に行わない。
この取り組みにより、寄贈者は寄贈する本の思いを図書館に伝えることができ
る。またコメントを公開することで、ほかの利用者が本を選ぶときの参考にもな
る。図書館としても選書の参考になるため、寄せられたコメントには全て目を通
している。利用者の本への想いを掬いとることで、図書館が提供できるサービス
をより豊かなものへとつなげている。
出典:大阪市立図書館公式サイト
■参考資料
1.「大阪市立図書館から図書寄贈のお願い」大阪市立図書館
  http://www.oml.city.osaka.jp/kizou/kizoutop.html
2.「私の一冊(これまでいただいたコメント)」大阪市立図書館
  http://www.oml.city.osaka.jp/kizou/my1book.html
■大阪市立図書館
http://www.oml.city.osaka.jp/
大阪府大阪市西区北堀江 4-3-2 
Tel: 06-6539-3300(インフォメーション) Fax: 06-6539-3335
101ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
「 ほんぞうネット」とは、学校や幼稚園の本を増やすために、兵庫県教育委員
会が開設したサイトである。
ほんぞうネットでは兵庫県内の公立の各幼稚園、小学校、中学校、高校、特別
支援学校などが寄贈を求める本を登録している。本を寄贈したい人は、このサイ
トから必要とされている寄贈本や寄贈先を探し、各施設に連絡して本を送るとい
う仕組みだ。本を送る方法は、寄贈者と受け入れ施設が話し合って決める。この
仕組みを利用して、2008年度には5万1270冊の寄贈があった。
この仕組みを利用することで、寄贈を希望する施設は不要な寄贈を防ぎ、ほし
い本を寄贈してもらえる。本を寄贈したい人も、寄贈したい本を無駄にすること
なく、寄贈を希望する施設へ本を届けられる。このような仕組みによって、ニー
ズのミスマッチを防ぎ、寄贈本を有効活用している。
出典:ほんぞうネット公式サイト
ほんぞうネット(兵庫県教育委員会)
Case
22
寄贈者と図書館をマッチング(1)
■ほんぞうネット http://book.hyogo-c.ed.jp/
兵庫県神戸市中央区下山手通 5-10-1 兵庫県教育委員会義務教育課中学校教育係
Tel: 078-341-7711(内線 5725) Fax: 078-362-4286 
E-mail: gimu_tosho@pref.hyogo.jp
102 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
「 みんなの本ネット」とは、大分県立図書館が提供する寄贈本のマッチング
サービスである。本サイトには大分県内の公立の各小学校、中学校、高校、特別
支援学校、公共図書館などが寄贈を必要としている本と、市民などからの寄贈可
能な本が登録されている。
この仕組みによって本を寄贈したい人は、必要とされている本とその受け入れ
先といった具体的な情報を検索によって知ることができ、施設側も寄贈可能な本
をリアルタイムで知ることができる。寄贈する側、受け入れる側の双方が必要と
する情報をリアルタイムで入手することで、寄贈のニーズを無駄なくマッチング
できる。
大分県立図書館は寄贈本の情報を提供するプラットフォームのみを提供してい
るので、寄贈のニーズがマッチした後、本のやり取りを直接するのは、寄贈者と
寄贈を希望する施設である。
出典:みんなの本ネット公式サイト
みんなの本ネット(大分県立図書館)
Case
23
寄贈者と図書館をマッチング(2)
■みんなの本ネット
https://www.minnanohon.net/
大分県大分市大字駄原 587-1 大分県立図書館 
Tel: 097-546-9972(代表) Fax: 097-546-9985
篇広告
104 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
雑誌スポンサー制度を利用する
「 雑誌スポンサー制度」とは、図書館が購読・提供している雑誌の購入を企業
や団体が肩代わりすることで、その雑誌にかけるカバーなどに企業の広告を掲載
する制度である。全国的には雑誌スポンサー制度と呼んでいる図書館が多いが、
野洲( やす)図書館( 滋賀県野洲市)、美唄( びばい)市立図書館( 北海道美
唄市)など一部の図書館自治体では「雑誌オーナー制度」と呼んでいる。
図書館にとっては、雑誌の購入費を負担してもらえるというメリットがある。
スポンサーになった広告主は、図書館の中でも利用頻度の高い雑誌に広告を出せ
るというメリットがある。
図書館のサイト上で確認できる雑誌スポンサー制度の導入自治体は、108自治
体である。導入開始時期が一番早いのは、確認できたところで徳島県立図書館
( 徳島県徳島市)の2009年10月からである。広告主( スポンサー)は企業や団
体・商店に限定している館が多いが、阪南市立図書館( 大阪府阪南市)など個
人でも広告主として参加できる図書館もある。
スポンサーの募集方法や館内での広告の掲示方法は、多少の違いはあるものの、
全国でほぼ共通している。スポンサーの募集方法としては、図書館が直接スポン
サーを募る例がほとんどである。川越市立図書館( 埼玉県川越市)など一部の
自治体では地元のNPOが仲介し、スポンサーはそのNPOと契約、広告は図書館
へNPOが納品する、という形式をとっている。
広告の掲示方法は、最新号の雑誌のカバー表・裏だけではなく、雑誌架にも広
告を貼るスペースを設ける図書館や、スポンサー企業の紹介のパンフレットなど
の配布場所を用意している図書館もある。また雑誌そのものを寄贈するのではな
く、広告掲載料という形でスポンサーを募集している図書館もある。ただし、広
告掲載料という形でスポンサーを募集しているのは、ごくわずかの図書館である。
105ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■関連情報
1.「図書館に雑誌スポンサー費用負担、表紙に企業名」47NEWS、2010年6月4日
  http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010060401000030.html
2.「 雑誌スポンサー半減 県立図書館の財政難に追い打ち」徳島新聞社、2012年5月
20日
  http://www.topics.or.jp/localNews/news/2012/05/2012_133749229543.html
3.「県立図書館、雑誌カバー広告 条件緩和 : 徳島 : 地域」読売新聞、2012年7月11日
  http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokushima/news/20120710-OYT8T01452.htm
4.「『雑誌オーナー制度』の導入について」藤井亜希子、大阪府立中之島図書館図書
  館職員スキルアップ研修「連携しよう!」、2012年3月8日
  http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/event/skillup2011.html
■雑誌スポンサー制度・雑誌オーナー制度 実施図書館(2013年4月28日現在 108自治体)
※導入時期は募集開始か、実際にスタートした日のどちらかとしている。
・一宮市立図書館(愛知県一宮市)導入時期:2013年1月
・尾張旭市立図書館(愛知県尾張旭市)導入時期:2013年3月
・北名古屋市図書館(愛知県北名古屋市)導入時期:2011年11月
・江南市立図書館(愛知県江南市)導入時期:2011年2月
・東郷町立図書館(愛知県東郷町)導入時期:2012年12月
・豊明市立図書館(愛知県豊明市)導入時期:2013年1月
・長久手市立中央図書館(愛知県長久手市)導入時期:2013年3月
・西尾市立図書館(愛知県西尾市)導入時期:2011年6月
・日進市立図書館(愛知県日進市)導入時期:2012年4月
・八戸市立図書館(青森県八戸市)導入時期:2012年7月
・秋田県立図書館(秋田県)導入時期:2012年3月
・横手市立図書館(秋田県横手市)導入時期:2012年10月
・潮来市立図書館(茨城県潮来市)導入時期:2012年11月
・笠間市立図書館(茨城県笠間市)導入時期:2012年4月
・土浦市立図書館(茨城県土浦市)導入時期:2012年4月
・取手市立図書館(茨城県取手市)導入時期:2012年2月
・久慈市立図書館(岩手県久慈市)導入時期:2012年6月
・宇和島市立図書館(愛媛県宇和島市)導入時期:2013年4月
・新居浜市立図書館(愛媛県新居浜市)導入時期:2012年7月
・松山市立図書館(愛媛県松山市)導入時期:2012年12月
・大分市民図書館(大分県大分市)導入時期:2012年4月
・和泉市立図書館(大阪府和泉市)導入時期:2012年8月
・岸和田市立図書館(大阪府岸和田市)導入時期:2011年度
・熊取町立図書館(大阪府熊取町)導入時期:2011年度
106 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
・羽曳野市立図書館(大阪府羽曳野市)導入時期:2011年6月
・阪南市立図書館(大阪府阪南市)導入時期:不明
・岡山県立図書館(岡山県)導入時期:2012年4月
・赤磐市立図書館(岡山県赤磐市)導入時期:2012年12月
・浦添市立図書館(沖縄県浦添市)導入時期:2013年2月
・豊見城市立中央図書館(沖縄県豊見城市)導入時期:不明
・高松市図書館(香川県高松市)導入時期:2013年3月
・錦江町中央公民館(鹿児島県錦江町)導入時期:2011年7月
・厚木市立中央図書館(神奈川県厚木市)導入時期:不明
・伊勢原市立図書館(神奈川県伊勢原市)導入時期:不明
・小田原市立図書館(神奈川県小田原市)導入時期:2011年4月
・鎌倉市立図書館(神奈川県鎌倉市)導入時期:2013年1月
・相模原市立図書館(神奈川県相模原市)導入時期:不明
・平塚市立図書館(神奈川県平塚市)導入時期:2012年3月
・横浜市立図書館(神奈川県横浜市)導入時期:不明
・岐阜県図書館(岐阜県)導入時期:2010年5月
・各務原市立中央図書館(岐阜県各務原市)導入時期:2011年9月
・岐南町図書館(岐阜県岐南町)導入時期:2012年6月
・山県市立図書館(岐阜県山県市)導入時期:2013年4月
・木津川市立図書館(京都府木津川市)導入時期:2012年6月
・城陽市立図書館(京都府城陽市)導入時期:2013年2月
・上尾市立図書館(埼玉県上尾市)導入時期:2011年10月
・朝霞市立図書館(埼玉県朝霞市)導入時期:2012年6月
・春日部市立図書館(埼玉県春日部市)導入時期:2011年1月
・川越市立図書館(埼玉県川越市)導入時期:2012年1月
・行田市立図書館(埼玉県行田市)導入時期:2013年4月
・鴻巣市立図書館(埼玉県鴻巣市)導入時期:2011年4月
・さいたま市立図書館(埼玉県さいたま市)導入時期:2011年1月
・坂戸市立図書館(埼玉県坂戸市)導入時期:不明
・幸手市立図書館(埼玉県幸手市)導入時期:2012年10月
・白岡市立図書館(埼玉県白岡市)導入時期:2012年5月
・杉戸町立図書館(埼玉県杉戸町)導入時期:2011年5月
・所沢市立図書館(埼玉県所沢市)導入時期:2013年4月
・新座市立図書館(埼玉県新座市)導入時期:2012年2月
・蓮田市図書館(埼玉県蓮田市)導入時期:2012年4月
・深谷市立図書館(埼玉県深谷市)導入時期:不明
・ふじみ野市立上福岡図書館(埼玉県ふじみ野市)導入時期:2012年5月
・三芳町立図書館(埼玉県三芳町)導入時期:不明
・佐賀県立図書館(佐賀県)導入時期:2011年度
・佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市)導入時期:不明
・多賀町立図書館(滋賀県多賀町)導入時期:2012年6月
・米原市立図書館(滋賀県米原市)導入時期:2012年3月
107ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
・野洲市立図書館(滋賀県野洲市)導入時期:2010年度
・栗東市立図書館(滋賀県栗東市)導入時期:2011年4月
・磐田市立図書館(静岡県磐田市)導入時期:2011年6月
・掛川市立図書館(静岡県掛川市)導入時期:2011年9月
・島田市立図書館(静岡県島田市)導入時期:2011年4月
・袋井市立図書館(静岡県袋井市)導入時期:2012年4月
・富士市立図書館(静岡県富士市)導入時期:2012年7月
・牧之原市立図書館(静岡県牧之原市)導入時期:2012年10月
・森町立図書館(静岡県森町)導入時期:2013年4月
・焼津市立図書館(静岡県焼津市)導入時期:2012年4月
・浜田市立図書館(島根県浜田市)導入時期:2012年9月
・野田市立図書館(千葉県野田市)導入時期:2012年10月
・松戸市立図書館(千葉県松戸市)導入時期:2010年12月
・稲城市立図書館(東京都稲城市)導入時期:2013年1月
・台東区立図書館(東京都台東区)導入時期:2013年2月
・徳島県立図書館(徳島県)導入時期:2009年10月
・三好市立図書館(徳島県三好市)導入時期:2010年11月
・宇都宮市立図書館(栃木県宇都宮市)導入時期:2011年8月
・小山市立中央図書館(栃木県小山市)導入時期:2010年12月
・栃木市立大平図書館(栃木県栃木市)導入時期:2012年5月
・高岡市立図書館(富山県高岡市)導入時期:2013年4月
・富山市立図書館(富山県富山市)導入時期:2011年5月
・県立長野図書館(長野県)導入時期:2012年1月
・奈良県立図書情報館(奈良県)導入時期:2010年11月
・橿原市立図書館(奈良県橿原市)導入時期:2012年4月
・田原本町立図書館(奈良県田原本町)導入時期:2012年5月
・姫路市立図書館(兵庫県姫路市)導入時期:2013年4月
・広島市立図書館(広島県広島市)導入時期:不明
・越前市立図書館(福井県越前市)導入時期:不明
・遠賀町立図書館(福岡県遠賀町)導入時期:不明
・筑後市立図書館(福岡県筑後市)導入時期:不明
・宗像市民図書館(福岡県宗像市)導入時期:2013年2月
・旭川市図書館(北海道旭川市)導入時期:2012年4月
・帯広市図書館(北海道帯広市)導入時期:2012年5月
・市立釧路図書館(北海道釧路市)導入時期:2010年10月
・苫小牧市立中央図書館(北海道苫小牧市)導入時期:2011年4月
・美唄市立図書館(北海道美唄市)導入時期:2011年3月
・伊勢市立図書館(三重県伊勢市)導入時期:2010年10月
・菰野町立図書館(三重県菰野町)導入時期:2011年1月
・宇部市立図書館(山口県宇部市)導入時期:2011年6月
・萩市立図書館(山口県萩市)導入時期:2012年3月
・有田川町図書館(和歌山県有田川町)導入時期:不明
108 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
伊勢市立図書館では、伊勢図書館と小俣図書館の2館で2010年10月より雑誌ス
ポンサー制度を導入している。2012年8月現在、図書館が受入を対象としている
雑誌65タイトルのうち10タイトル13誌( 複数冊は寄贈されているタイトルがあ
るため)にスポンサーがついている。
雑誌スポンサー制度は、図書館が所蔵する雑誌を企業・団体( 以下、スポン
サー)が寄贈し、スポンサーは雑誌を寄贈する代わりに雑誌のカバーなどに広告
を掲示する制度である。スポンサーは雑誌の購読料を負担するだけで、図書館に
広告を掲示できる。広告の掲示箇所は、雑誌の最新号のカバーの表面と裏面、そ
の雑誌を配架している雑誌架の3ヶ所である。
雑誌は図書館の中でも利用の多い資料だ。また最新号は貸出をしないため、常
に雑誌架にあり、利用者の目にとまりやすい。たとえスポンサーが寄贈した雑誌
が閲覧中であっても、雑誌架にも広告が掲示されているため、閲覧者以外の目に
もとまる。また雑誌はテーマが決まっているので、それを読む人はそのテーマに
関心が高い可能性がある。その雑誌に事業内容の近いスポンサーの広告があれば、
それだけ効果が見込める。このように雑誌スポンサーになることは、ターゲット
を絞って広告を打つことが可能になるというメリットがあるのだ。
伊勢市立図書館(三重県伊勢市)
Case
24
ベーシックな雑誌スポンサー制度導入館
撮影:嶋田綾子 撮影日:2013 年 4 月 14 日
109ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考資料
1.「雑誌スポンサー制度の導入」伊勢市、2010 年 10 月 13 日 
  http://www.city.ise.mie.jp/secure/6718/2210_01.pdf
2.「伊勢市広告事業のご案内」伊勢市  http://www.city.ise.mie.jp/3193.htm
3.「市立図書館雑誌スポンサー募集」伊勢市 http://www.city.ise.mie.jp/4265.htm
■伊勢市立伊勢図書館 
http://iselib.city.ise.mie.jp/
三重県伊勢市八日市場町 13-35 
Tel: 0596-21-0077 Fax: 0596-21-0078 
E-mail: tosyokan@iselib-mie.jp
■伊勢市立小俣図書館 
http://iselib.city.ise.mie.jp/
三重県伊勢市小俣町本町 2 
Tel: 0596-29-3900 Fax: 0596-29-3902 
E-mail:obatalib@amigo2.ne.jp
110 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
雑誌スポンサー制度の基本形は、図書館が購読する雑誌の購入を企業などが肩
代わりし、その対価としてその雑誌のカバーに広告を掲載するというものである。
このような従来の雑誌スポンサー制度とは異なり、佐賀県立図書館では雑誌の寄
贈を受け入れるのではなく、雑誌のカバーに表示する広告の掲載料をとるという
ユニークなものなのである。この取り組みは2011年度から行われている。
広告の掲載対象となる雑誌は、購入雑誌だけではない。対象雑誌の一覧表を見
ると、もともと寄贈で受入している雑誌も、広告掲載の対象なのだ。また、未所
蔵の雑誌であっても、場合によっては受入されることになる。その場合は、スポ
ンサーは図書館と雑誌を採用するかどうかを協議したうえで、雑誌の購入費か広
告掲載料のどちらか高い方の金額を納めるのだ。
佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市)
Case
25
雑誌への広告掲載料をとるモデル
■参考資料
1.「雑誌のカバーに広告を出しませんか∼高校生・中学生に企業の PR をしませんか?∼」
  佐賀県立図書館
  http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/zassi-sponsor/
2.「雑誌スポンサーに取り組んでいます」佐賀県立図書館、
 「I Love SAGA! ∼佐賀県立図 書館の創造と発信∼」、2013 年 1 月 1 日 
  http://sagakentosyo.sagafan.jp/e499687.html
■佐賀県立図書館 
http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/
佐賀県佐賀市城内 2-1-41 
Tel: 0952-24-2900 Fax: 0952-25-7049
E-mail:saga-kentosyo@pref.saga.lg.jp
撮影:岡本真 撮影日:2013 年 5 月 7 日
111ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
川越市立図書館(埼玉県川越市)
Case
26
NPOが仲介する雑誌スポンサー制度
川越市立図書館では、2012年1月から雑誌スポンサー制度を導入している。川
越市の雑誌スポンサー制度は、図書館と雑誌を寄贈する企業・団体が直接やり取
りをするのではなく、川越市を拠点するNPO法人地域活性化プラザが仲介して、
手続きを行っている。
企業・団体がスポンサーとなるきっかけは、図書館が声をかけるほか、NPO
から声をかける場合、企業・団体側が制度を知って図書館に声をかけてくる場合
などさまざまである。寄贈を募集する雑誌は図書館と企業が話し合って決め、寄
贈によって発生する金銭のやり取りなどの事務手続きはNPOが行うので、図書
館へは雑誌の現物を受入するだけとなる。
このように図書館がスポンサーと直接やり取りをするのではなく、NPOが仲
介する雑誌スポンサー制度を導入している事例は全国的に珍しく、埼玉県内だけ
の取り組みである。埼玉県内では雑誌スポンサー制度を導入している17自治体
のうち、8自治体(47.1%)がこのNPO仲介方式を採用している。
川越市立図書館がこの方式を採用した経緯は、雑誌スポンサー制度が市議会で
話題になり、図書館で導入を検討することになった際に、さいたま市と坂戸市が
この方式を採用したことによる。また、このNPOが川越市を拠点としているこ
とや、通常のスポンサー制度よりも効果が大きいと判断されたことも大きい。
■参考資料
1. NPO 法人地域活性化プラザ http://www.npo-lap.org/
2.「『雑誌スポンサー制度』を実施しております。」川越市立図書館
  http://www.lib.city.kawagoe.saitama.jp/hp/topic250401.html
3.「図書館への図書・定期刊行物寄贈サポート事業マニュアル策定∼報告∼」
  NPO 法人地域活性化プラザ、2011 年 3 月 18 日
  http://www.saitamaken-npo.net/html/H23chiiki.pdf
■川越市立図書館 
http://www.lib.city.kawagoe.saitama.jp/hp/
埼玉県川越市三久保町 2-9 
Tel: 049-222-0559 Fax: 049-224-7822 
E-mail: toshokan@city.kawagoe.saitama.jp
112 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
図書館の配布物に、企業などの広告を載せる例が目立つようになってきた。図
書館における広告掲載の事例としてよくみられるのは、図書館サイトでのバナー
広告である。図書館サイトの一角に広告スペースを設け、そこに企業の広告を掲
載するのである。ほかには貸出用レシート、図書館カレンダー、しおり、図書館
報、利用案内、貸出用バッグ、玄関マット、移動図書館車の側面や後方、図書館
内の壁面、パンフレットコーナー、雑誌にかけるカバーなどに掲載する事例が挙
げられる。
貸出用レシートを利用した広告は、レシートを印字するたびに貸出情報ととも
に広告が印刷される方式と、事前にレシートの裏面に広告を刷り込んだ感熱紙を
納品し、それに貸出情報を印刷する方式がある。
図書館カレンダーやしおり、図書館報、利用案内などを利用した広告は、利用
者に配るこれらの印刷物に広告を刷り込んで配布する方式である。図書館で広告
を印刷する場合と、広告主が広告を刷り込んだ状態で印刷物として納品する場合
がある。これらは図書館への広告付き寄付といえる。また移動図書館車の側面や
後方、図書館内の壁面に広告を掲載したり、館内に企業紹介のパンフレットコー
ナーを設置し、広告スペースを提供する方式もある。
広告掲載する雑誌を寄贈してもらう代わりに、広告を掲載する場所の提供する
雑誌スポンサー制度については別に項を立てて、紹介している。
効果的に広告を得られれば、横浜市のように年間で1000万円以上の収入・経
費節減効果となる例もある( 2010年度)。中小規模の図書館にとっては年間の資
料費に匹敵する額が、横浜市立図書館では広告収入・経費削減効果で得られてい
る。公共図書館は、市民利用施設のなかでも利用者数の多い施設のため、広告掲
載箇所などに工夫をすることで、実績を伸ばすことができる。本項では、実績を
あげている図書館の事例を紹介していく。
■参考資料
1.「横浜市立図書館の新たな財源創出の試み−図書館における広告事業の取組−」
  文部科学省、「これからの図書館像−実践事例集−」、2008 年 3 月  
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06040715/020.htm
広告を募る
113ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
出典:豊中市立図書館公式サイト
豊中市立岡町図書館では、地元の岡町・桜塚商店街で2009年10月から第1金曜
日に行われている「初金市」の日に、岡町図書館で本を借りた人の貸出用レシー
トにクーポンを印字している。クーポンの印字箇所は、貸出用レシートの上部で
ある。クーポンに続いて、利用者の本の利用状況が印字される。このクーポンは
商店街で買い物をした1店舗分のレシートとして扱われ、3店舗分のクーポンを
集めると抽選会に参加できる。
図書館では現在、クーポン発行のほかに、貸出用レシートへの広告印字を継続
的に行っている。広告掲載費用として、広告主がレシート用紙を図書館へ物納す
るため、図書館はレシート用紙の購入費を広告収入から賄える。本事業の目的は
広告収入だけではなく、地域の広告を載せることで地域情報の発信も兼ねている。
豊中市立岡町図書館(大阪府豊中市)
Case
27
貸出用レシートにクーポンを印字
■参考情報
1.「レシート用紙を使い岡町図書館で岡町の商店街『初金市』のクーポン等の広告事業
  をしています。」豊中市立図書館
  http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/information/hatsukin_3.html
2.「豊中市立図書館の広告事業について∼第一金曜の『初金市』広告スタート∼」
  西口光夫、「大阪府立中之島図書館 図書館職員スキルアップ研修『連携しよう!』」、
  2012 年 3 月 8 日 http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/event/skillup2011.html
3.「大阪・豊中市立岡町図書館、図書の貸出票に商店街のクーポンを印刷」
  カレントアウェアネス、2009 年 10 月 28 日 http://current.ndl.go.jp/node/15078
■豊中市立岡町図書館 http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/guide/library/okamachi_2.html
大阪府豊中市岡町北 3-4-2 
Tel: 06-6843-4553 Fax: 06-6841-3493 E-mail: okamachito@city.toyonaka.osaka.jp
114 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
横浜市立図書館は、図書館サイトでのバナー広告の掲載を2005年に始めて以来、
さまざまなスペースを活用して広告掲載を行っている。掲載箇所は図書館サイト
のバナー広告を始め、雑誌架や雑誌最新号のカバーなどである。またすでにある
サービスに広告を掲載するのではなく、広告を掲載した物品を「広告付き寄付」
として納入することで、図書館の経費を削減する取り組みも行われている。この
例として広告付き玄関マット、図書館カレンダー、貸出用手提げ袋、自動体外式
除細動機(AED)を内蔵した広告モニター付きAEDスタンドが挙げられる。さら
に図書の寄贈をしてくれた企業へのお礼として、企業名の入ったシールを図書に
貼るなどしている。
これらの取り組みによって、2011年度には年間1000万円以上の広告収入と経
費の削減効果があった。横浜市では2010年度の予算が14億6533万4000円なので、
広告収入・経費削減効果が予算の0.7%を占めている。横浜市では図書館の予算
額が多いので、大きな数字には見えないが、中小規模の図書館では年間の資料費
に匹敵する額が、広告収入・経費削減効果で得られている。広告収入は特別財源
として次年度の予算に繰り込まれ、反映された図書館の予算は、図書館カードや
広報印刷物などの作成費用にあてられている。これは横浜市の規定により、広告
収入は事業を行う担当部局の当該事業や、関連事業に役立てることを目的にして
横浜市立図書館(神奈川県横浜市)
Case
28
図書館への広告掲載事業
撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 10 月 6 日
広告掲載と物品の提供によるライブラリーカフェの実施
115ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考資料
1.「横浜市立図書館は積極的に広告事業を行っています!」
  横浜市立図書館、2011 年 1 月 18 日  
  http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201101/images/phpfzkptl.pdf
2.「広告事業のご案内」横浜市立図書館
  http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/ad/
3.「横浜市立図書館の新たな財源創出の試み−図書館における広告事業の取組−」
  文部科学省、「これからの図書館像−実践事例集−」、2008 年 3 月
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06040715/020.htm
4.「平成 19 年度市町村図書館等職員研修<図書館経営>報告」
  神奈川県立図書館、2009 年 7 月 1 日
  http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/coa/e_coa/coa_back/coaweb_m231/report/repo.htm
■横浜市立中央図書館
http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/
神奈川県横浜市西区老松町 1 
Tel: 045-262-0050 Fax: 045-262-0052
いるからである。
図書館は公共施設の中でも利用が多く、またリピーターが多いことから、広告
効果が高いことを企業へ積極的にアピールした結果、このような多額の効果を得
ている。
篇販売
118 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
多くの図書館では、保管期限が切れた雑誌や発行から年月がたち、利用者の貸
出しが少なくなったなどの理由で除籍した本や、受入されなかった寄贈図書など
を利用者へ頒布している。多くの場合、図書館はこれらを無償で配布するが、有
償で頒布している図書館もある。値段設定は廃棄の際に必要となる費用を賄う1
冊10円程度から、利益を考慮して1冊100円程度に設定するなどさまざまだ。
下図のように、除籍資料の頒布は図書館から直接、学校や利用者に寄贈または
頒布される事例だけではなく、友の会などが仲介して販売する事例がある。販売
を行うことが難しい図書館でも、この方法であれば、直接的に除籍資料から利益
を得られなくても、除籍資料を再活用して新しい本に還元できる。
また無償で頒布を実施する際、寄付を募る事例や、図書館が除籍する資料だけ
を頒布するのではなく、頒布会にあわせて市民から募った寄贈本を頒布している
事例もある。
除籍資料の頒布は、図書館が持つ資料を無償で利用者に頒布する前に、学校図
書館など関連する施設に寄贈しているケースが多い。図書館が不要とする資料で
も、ほかの施設での活用がなされているのである。
資料の廃棄にも費用がかかる。そのため廃棄にかかる費用が節約できることを
考慮すれば、手間賃・工数等で人件費はかかるものの、図書館は間接的に無償頒
布から利益を得ていることになる。
図
書
館
除籍資料
友の会など
利益を寄贈本として還元
寄贈
頒布
頒布
学校など
利用者
除籍資料を販売する
119ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
香川大学図書館( 中央館)では、2013年1月に開催した第2回古本市( ブック
リユース)で除籍資料を1冊100円で販売した。これは書庫の資料5万冊のうち、
重複している辞書や専門書、2万冊を整理したものである。香川大学図書館の蔵
書数は、62万2282冊( 中央館所蔵分のみ)である。ブックリユース市はただ本
を廃棄するのではなく、高額の専門書を買えない学生や退職してから勉強を再び
始める地域の人のために、除籍資料を学習に役立ててもらおうと始められたもの
だ。購入に冊数制限はなく、誰でも購入できる。
廃棄資料の配布を行っている多くの図書館では、除籍資料を無償で配布してい
る。香川大学図書館( 中央館)でも、第1回のブックリユースでは、無償配布を
していた。しかし第2回以降は、資料の価値を見定めて、有償配布することになっ
たのだ。また有償配布するための準備には、学生ボランティアを募集し、ボラン
ティアの力を借りて、ブックリース市を運営している。
香川大学図書館(中央館)(香川県高松市)
Case
29
除籍資料を1冊、100円で有償配布
■参考資料
1.「2 万冊お値打ち古本市…香川大図書館」読売新聞、2013 年 1 月 24 日
  http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20130123-OYT8T00823.htm
2.「香川大学図書館古本市(ブックリユース)開催について」香川大学、2013 年 1 月 8 日
  http://www.kagawa-u.ac.jp/articles/000/010/694/
3.「図書館学生ボランティアの募集について」
 香川大学図書館中央館活動ブログ、2011 年 5 月 11 日
  http://kagawaunivlibrary.blogspot.jp/2011/05/blog-post.html
■香川大学図書館(中央館)
http://www.lib.kagawa-u.ac.jp/
香川県高松市幸町1番1号
Tel: 087-832-1245
出典:香川大学図書館中央館活動ブログ
120 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
撮影:岡本真 撮影日:2011 年 7 月 24 日
田原市中央図書館では、図書館の隣に設置されたフリースペースの一角に、リ
サイクルブックオフィスを設けて、除籍本や図書館で受入をしなかった寄贈本を
販売している。リサイクルブックオフィスは、NPOたはら広場と任意団体図書
館フレンズ田原が協力して運営している。
リサイクルブックオフィスの仕組みはこうだ。利用者からの寄贈本のうち図書
館が必要とする本は、図書館で受入される。図書館の除籍本と図書館で受入され
なかった寄贈本のうち、学校図書館が必要とする本は学校図書館で受入され、こ
の結果、残った本がリサイクルブックオフィスにおいて1冊50円で販売される。
そして、収益金で本を購入し、図書館に寄贈する。
図書館の除籍資料は、「 田原市図書館資料除籍基準」( 2004年4月1日施行)第5
条に、
図書館は、除籍を決定した不要資料を、次の各号に掲げるとおり取り扱うもの
とする。
(1)リサイクルブックオフィスへの提供
(2)小中学校等公共施設の図書室への提供
(3)その他館長が必要と認めるものへの提供
と定められており、これによってリサイクルブックオフィスの運営が行われて
田原市中央図書館(愛知県田原市)
Case
30
NPOが、除籍本を販売
121ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考情報
1. 図書館フレンズ田原 
  http://www.taharahiroba.or.jp/hasshin_group.html
2.「経済拠点としての図書館の可能性−田原市中央図書館」
  岡本真、本のある時間、2011 年 10 月 21 日  
  http://www.timewithbooks.com/monthly_special/06okamoto/vol43/p01/p01.html
3.「田原市図書館除籍基準」田原市図書館、『田原市の図書館 図書館事業年報
 (平成 23 年版)』、2012 年 7 月 
  http://www.city.tahara.aichi.jp/section/library/pdf/nenpo/2011nenpo.pdf
■田原市図書館
http://www.city.tahara.aichi.jp/section/library/
愛知県田原市田原町汐見 5 
Tel: 0531-23-4946 Fax: 0531-23-4646 E-mail: tosho@city.tahara.aichi.jp
いる。
図書館で本を販売することが難しくとも、このように友の会などのサポート組
織を通した販売は可能である。そしてその収益金は、新たな本として図書館へ還
元される。そのような仕組みを作って、図書館が間接的に資金を得ることが可能
なのである。
122 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
豊中市立庄内図書館(大阪府豊中市)
Case
31
常設コーナーで、除籍資料を販売
豊中市立庄内図書館では、館内3階に除籍資料の販売コーナーを設けている。
このコーナーでの販売は、地元の任意団体しょうないREKが行っている。販売は
図書館の休館日を除く毎週火曜日に行われており、また地域のイベント開催時に
出張販売も行っている。
しょうないREKが販売する本は、豊中市立図書館で除籍されたものだ。2011
年度には8502冊の売り上げがあった。しょうないREKが行っている除籍本の販
売で特徴的なのは、販売する本を常設で展示していることだ。他館が行っている
除籍本の販売では、古本市などのイベント時にたくさんの本の中から短時間で持
ち帰る本を選ばなければならない。庄内図書館のように販売コーナーを常設する
ことで、週1回の開催日に限定はされるが、利用者は都合のよい時間に本を存分
に選ぶことができる。このことにより必要としていた本との出会いが実現され、
廃棄資料が無駄になりにくいのである。
しょうないREKでは除籍資料の販売だけではなく、庄内図書館を拠点とした子
ども向けイベントの実施や、会のお知らせと地域情報の発信を兼ねた会報の発行
など、さまざまな事業を行っている。これらの事業を実施するための費用として、
除籍資料の売り上げが使われているのである。
提供:豊中市立庄内図書館
■参考情報
1. しょうない REK http://www.facebook.com/ShounaiREK
2.『豊中市の図書館活動 平成 23 年度(2011 年度)版 統計・資料編』豊中市立図書館
  http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/management/toyo_toshokan_katudou/toukei_2011_2.html
3.「しょうない REK ってなあに?」しょうない REK、2008 年 2 月 20 日 
  http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/data/open/cnt/3/1095/1/REK_K_008.pdf
■豊中市立庄内図書館 
http://www.lib.toyonaka.osaka.jp
/guide/library/syounai_2.html
大阪府豊中市三和町 3-2-1 
Tel: 06-6334-1261
123ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
図書館では、大は年報類といった冊子のものから、小は一枚もののカレンダー
や、しおりなどが「 無料で」配布されることが多い。これは図書館法に規定さ
れた図書館の無料原則への配慮があるのだろうが、図書館の利用や閲覧に対して
対価を求めない限り、受益者負担として許容できると考えられるだろう。コスト
をかけた制作物の頒布に対価を求めるのは、一般的には当然のことであり、図書
館においても違和感はない。
図書館における物販サービスには、郷土の研究家が自費出版の形で出版するな
ど、一般書として出版されることの少ないジャンルである郷土の本を、図書館の
利用者や図書館員が資料を使って調べ、冊子にまとめたものを出版・有償配布し
たり、図書館の業務内容をまとめた事例集を冊子にして販売するほか、書籍、文
具、図書館オリジナルのライブラリー・グッズの販売などがある。こうした物販
サービスによる売上は、図書館の直接の収入源になる場合と、自治体の一般会計
に繰り入れられる場合がある。直接の収入にならない場合でも、自治体全体で見
れば、収入増につながっている。このような金銭的な利益のほかにも、図書館の
存在をPRする機会となるだろう。
しかし図書館が自ら販売まで行うには、出納係の設置が必要となったり、施設
の目的外利用になるなどクリアすべき問題も生じる。施設の目的外利用は条例を
改正することにより、可能になる。国庫補助金を使って作られた図書館でも、手
続きを踏むことで財産区分を変更できる。また一部の図書館では、書店や友の会
が本を販売したり、友の会がグッズを販売するといった委託販売が行われており、
このような取組みも紹介する。
■参考資料
1.「ライブラリー・グッズの可能性−ミュージアム、米・英の国立図書館の事例を通して」
  渡辺由利子、カレントアウェアネス No.307、2011 年 3 月 20 日 
  http://current.ndl.go.jp/ca1742
2.「ライブラリー・グッズの調査・研究と企画・開発」図書館サービス・ツール研究会、
  2010 年 2 月 23 日 http://library-tools.blogspot.jp/2010/02/21.html
3.「公立社会教育施設の有効活用【A0803】」構造改革特区推進本部 
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiikisaisei/kouhyou/070427/070427manyu.html
図書館が作成したものを販売する
124 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
高岡市立中央図書館(富山県高岡市)
Case
32
図書館で作成したレファレンス資料の販売
高岡市立中央図書館では、図書館が作成したレファレンス事例集を1冊500円
で販売するほか、図書館が作成した地域資料なども販売している。
レファレンス事例集は多くの図書館が冊子として刊行しているが、無料配布さ
れることが多い。また図書館の関係者のみに配布されることも多く、一般の利用
者が目にするのは図書館の蔵書となってからである。
それを高岡市立中央図書館では、利用者向けに販売している。いわば図書館の
事業によって生み出された成果物である資料を販売しているのである。一般的な
市場では、作成物を配布する際にコストを回収するための対価をとるのは当然で
ある。しかし図書館では、これまであまり取り組まれてこなかったため、このよ
うな事例は珍しいのである。また流通しない非売品の本では、一般利用者には入
手が困難だが、このように少しでも対価をとってでも販売してくれたほうが、入
手がしやすいだろう。
■高岡市立中央図書館
http://www.city.takaoka.toyama.jp/library/chuo/
富山県高岡市末広町 1-7 
Tel: 0766-20-1818 Fax: 0766-20-1819 E-mail: t-chuo@city.takaoka.lg.jp
撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 8 月 9 日 
125ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
小布施町立図書館「まちとしょテラソ」(長野県小布施町)
Case
33
図書館内でのオリジナルグッズの販売
小布施町立図書館「 まちとしょテラソ」では、館内に販売コーナーを設けて、
オリジナルグッズや本を販売している。目的は図書館で利益を上げることだが、
現在は試験的に行っている。トートバックやクリアホルダー、図書館を撮影した
ポストカードなどをオリジナルグッズとして販売している。また地元の出版社が
刊行した本や、小布施町立図書館や小布施町に関連した本、文具なども扱ってい
る。
オリジナルグッズは日常でも使えるものでもあるが、小布施町立図書館の場合、
全国から視察や見学が多いことから、図書館を訪れたことを記念するお土産にも
なっている。オリジナルグッズは、販売して利益を得るのと同時に、図書館を
PRする広報グッズでもあるのだ。
小布施町立図書館における物販の収益は、町の雑収入になり、図書館の直接の
収入にはならない。図書館で得た利益であっても、自治体の収入に繰り入れられ
るためだ。しかし、自治体の収入にする際に、特定財源化して図書館の予算へ還
元するように制度設計することは可能である。また図書館が販売せずに、友の会
や企業に図書館内の一部スペースを貸し出し、そこで販売委託するかたちが取ら
れることも多い。 
■小布施町立図書館「まちとしょテラソ」
http://machitoshoterrasow.com/
長野県小布施町小布施 1491-2 Tel: 026-247-2747 Fax: 026-247-4504
撮影:嶋田綾子 撮影日:2013 年 3 月 16 日
126 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
図書館サイトの検索システムから、オンライン書店にリンクを貼ることは、ご
く一部の図書館で行われている。オンライン書店と連携する最大のメリットとし
て多くの図書館が挙げるのは、オンライン書店が提供する表紙画像を、図書館サ
イトの検索結果に表示できることだ。そのほかに挙げられるメリットは、オンラ
イン書店での本の情報が入手できること、アフィリエイトによる収入である。
公共図書館での導入事例では、Amazonのデータとアフィリエイトの仕組みを
利用している事例が多い。過去に導入していた図書館まで含めると、honto(旧:
bk1)のシステムを利用している図書館も多い。これはhontoが図書館流通セン
ターの関連企業であるため、TRC MARCの番号でリンクできるなどhontoのデー
タと図書館がシステムの親和性の高さも理由だろう。またアフェリエイトが現金
で還元されると自治体の一般会計に入ってしまうが、hontoの還元方式が1ポイン
ト=1円扱いで本が購入できるポイント制であったということも、連携先に選ば
れる理由としては大きい。公共図書館において、ポイントによる還元は現在でも
オンライン書店連携の選択肢として重視されている。
しかし、オンライン書店と連携する公共図書館は少なく、すでに連携を止めて
いる図書館もある。公共性という観点で、一部のオンライン書店だけと連携する
ことに批判があるのだ。また地元書店を使わずに、オンライン書店と連携するこ
とも批判の対象となる。ただ地元書店とのオンラインの連携は難しくとも、特定
企業だけを利用しているという問題に関しては、複数のオンライン書店へのリン
クを貼ることである程度回避できる。また複数のオンライン書店へのリンクが
あった方が、利用者にとっても選択の幅が広がり、利便性が高くなる。
一方、アフィリエイトよりも、表紙画像の表示に重点を置いたオンライン書店
との連携は、大学図書館を中心にかなり進んでいる。大学図書館の場合、紀伊國
屋書店のデータを利用していることが多い。Google Booksから表紙画像を得るこ
とも、一部の図書館では行われている。
以前は図書館システムをカスタマイズしないと、オンライン書店と連携するこ
とは難しかった。現在では、オンライン書店と連携する機能を持っている図書館
システムも多く、システム上は連携しやすくなっている。
オンライン書店と連携する
127ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考情報
1.「本の表紙画像を表示します」豊中市立図書館 
  http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/information/hyoushi_link.html
2.「豊中市立図書館、オンライン書店と提携し蔵書検索結果から表紙画像を提供」
  カレントアウェアネス、2009年10月8日 
  http://current.ndl.go.jp/node/14796
豊中市立図書館のWebOPACには、図書館サイトの検索システムにオンライン
書店にリンク貼ってある。これにより利用者は検索した本について、図書館が提
供する文字情報だけではなく、オンライン書店での本の情報を1クリックで確認
できる。この取組みは2009年8月から実施されている。導入時には表紙画像も表
示されていたが、現在はオンライン書店へのリンクのみとなっている。このリン
ク先で利用者が本を購入すると、図書館へポイントが還元される。その実績の一
部は図書館サイトにて、購入した本のリストとして報告されている。
検索結果からのリンクは、オンライン書店honto( 旧:Bk1)との提携で成り
立っている。検索結果からリンクすることで、オンライン書店の該当本へアクセ
スできる。また、このリンク先で利用者が本を購入すると、購入者に本の代金の
1%、図書館に本の代金の3%がポイントとして還元される。図書館はこのポイン
トを元に、新しく本を購入している。
利用者にとっては、探している本を図書館で借りるという選択肢のほかに、オ
ンライン書店で購入するという選択肢にもつながる。図書館としては利用者にメ
リットを提供しつつ、リンク先で本が購入されれば、図書館の利益にもつながる。
図書館と利用者、双方にメリットがあるサービスなのである。
豊中市立図書館(大阪府豊中市)
Case
34
検索結果を、オンライン書店に誘導
■豊中市立図書館 
http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/
大阪府豊中市岡町北 3-4-2
Tel: 06-6843-4553
出典:豊中市立図書館公式サイト
128 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
那覇市立図書館のオンライン蔵書検索( WebOPAC)では、検索結果にオンラ
イン書店へのリンクが貼られている。リンク先はAmazonと楽天ブックスで、表
紙画像はAmazonのものを使用している。
アフィリエイトと呼ばれるこの仕組みを利用することで、オンライン書店が提
供する本の詳細なデータ情報が表示できる。また図書館サイトの検索システムか
ら誘導された利用者がリンク先で本を購入すれば、図書館へ紹介料が還元される。
しかし那覇市立図書館でこのサービスが導入された2013年1月以降、還元の実績
はまだない。
利用者のメリットは、検索結果にオンライン書店が提供する書籍のデータベー
スが表示されることと、オンライン書店への購入が容易になることである。図書
館の検索システムの結果は文字情報のみなので、表紙画像があることで本の情報
がよりわかりやすくなり、またリンク先のオンライン書店の情報により本の情報
がより多く得られる。利用者にとって、情報入手の選択肢が広がるのである。
■参考情報
1.「本の表紙画像の表示と外部サイト連携について」
 那覇市立図書館、2013 年 2 月 1 日   
  http://www.edu.city.naha.okinawa.jp/lib/n-informationlist201302012.html
■那覇市立図書館
http://www.edu.city.naha.okinawa.jp/lib/
沖縄県那覇市寄宮 1-2-15 Tel: 098-917-3449 Fax: 098-835-2158
那覇市立図書館(沖縄県那覇市)
Case
35
アフィリエイトの利用
出典:豊中市立図書館公式サイト
129ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
篇・金付
交
金成助
130 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
地域活性化交付金とは、2010年度の補正予算で創設された交付金である。総
額で3500億円が計上された。これは2種類の交付金事業に分けられ、1つが「 き
め細やかな交付金事業」として2500億円計上され、もう1つが「 住民生活に光を
そそぐ交付金事業( 光交付金)」と呼ばれており1000億円が計上された。光交付
金には下記のようなメニューが示され、そのうち「 知の地域づくり」の具体例
として図書館の整備が挙げられている。
 住民生活に光をそそぐ交付金の取り組み分野
 ▶地方消費者行政
 ▶ DV 対策・自殺予防等の弱者対策・自立支援
 ▶知の地域づくり
自治体への交付は、自治体が策定する実施計画にもとづき、実施に必要な額を
支給するという形式が取られた。2010年度には、総額で約1060億円が予算計上
され、そのうち図書館、図書館同種施設、学校図書館の充実に対して400億1700
万円という光交付金全体の予算のうち、図書館関係に計上された予算が全体の
39.6%を占める結果となった。この交付金は2011年度以降も継続し、2011年度に
は300億円、2012年度には350億円が予算計上された。
活用事例としては、たとえば島根県立図書館(島根県松江市)では、2012年度
に4937万6000円が交付され、臨時職員1名の雇用のほか、大活字図書やDAISY図
書の購入、「ねぇ!この本読んで。」乳幼児への読書普及事業などを行っている。
村山市立図書館( 山形県村山市)では移動図書館の更新、公立小学校の学校
図書館の電算化などがこの交付金を使って実施された。
神戸市立図書館( 兵庫県神戸市)では、2010年度に1000万円の予算を計上し
て資料を購入したほか、書架の新規購入や更新、外部データベース利用のPCの
増設、改修工事などが行われている。
これらは、図書館の事業に対して交付されたなかの一部の事例にすぎない。ほ
かの図書館でも蔵書管理のICタグ化や資料のデジタル化、施設の修繕などがこ
の交付金を使って実施された。
住民生活に光をそそぐ交付金事業
Case
36
図書館に臨時予算がついた地域活性化交付金
131ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
島根県立図書館「ねぇ!この本読んで。」の事業関連図書コーナー
撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 10 月 27 日 提供:中津川市立図書館
中津川市立図書館の光交付金で購入した図書コーナー
■参考資料
1.「地域活性化交付金の創設について」首相官邸、地域活性化統合本部会合、
  2010 年 12 月 3 日 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/pdf/101203koufukin_gaiyo.pdf
2.「『住民生活に光をそそぐ交付金』で図書館整備を(日本)」
  国際子ども図書館、2011 年 1 月 18 日  
  http://www.kodomo.go.jp/info/child/2011/2011-005.html
3.「片山総務大臣閣議後記者会見の概要」総務省、2010 年 10 月 26 日 
  http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/36590.html
4.「『住民生活に光をそそぐ交付金』交付対象経費の分野別内訳」内閣府
  平成 23 年度 第 1 回全国自殺対策主管課長等会議配布資料、2011 年 7 月 8 日
  http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/local/shukan/k-10/pdf/s15.pdf
5.「北海道東神楽町:住民生活に光をそそぐ交付金による図書運営の充実」内閣府 
  http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110708_4.html
6.「村山市:『読書シティ宣言』と図書館・読書活動の推進(事例 No.10)」内閣府 
  http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110909_3.html
7.「竹原市:市立図書館による学校支援の強化(事例 No.11)」内閣府 
  http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110909_4.html
8.「CA1755 −研究文献レビュー:学校図書館をめぐる連携と支援:その現状と意義」
  岩崎れい、カレントアウェアネス、2011 年 9 月 20 日 
  http://current.ndl.go.jp/ca1755
9.「北海道東川町:図書館による知の地域づくり(事例 No.9)」内閣府 
  http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110815_5.html
10.「真岡市:分館図書館および学校図書館における図書購入(事例 No.15)」内閣府 
  http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/111209_5.html
11.『島根県立図書館要覧 平成 24 年度(2012 年度)版』島根県立図書館、2012 年 6 月   
  http://www.lib-shimane.jp/gaiyou/youran.html
12.「書燈(神戸市立図書館報)No.30」神戸市立図書館、2012 年 7 月
  http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/shotou/ 
132 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
科研費は( 正式名称「 科学研究費助成事業( 学術研究助成基金助成金/科学
研究費補助金)」)文部科学省が行っている助成事業だ。人文・社会科学から自
然科学までの全ての分野をカバーし、基礎から応用までのあらゆる学術研究を対
象としている唯一の助成金である。研究者や団体を助成の対象としているが、大
学に所属する研究者だけではなく研究機関や民間企業、財団などに所属する研究
者も対象となる。
神戸大学附属図書館は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の資料を収
集・保存し提供するため、震災文庫を1995年10月に開設・公開した。1998年度
に同館の館長を研究代表者に据え、震災文庫で保存するデータベース「 阪神・
淡路大震災マルチメディア・アーカイブズ」を構築するため5ヶ年の科研費を申
請し、5年間で計約1億1千万円の資金を得た。この助成金により、1枚ものの資
料や録音資料のデジタル化が行われた。
事業を図書館だけのものととらえずに、研究環境の構築や研究対象として多角
的にとらえ同僚や教員の協力を得ることが、助成金を得る秘訣である。実際、震
災文庫だけではなくほかの図書館でも、資料のデジタル化やデータベース構築に
科研費の助成を受けている事業がある。
科学研究費助成事業
Case
37
図書館設備などに利用できる、研究者向けの助成制度
■参考資料
1. 『阪神・淡路大震災と図書館活動』稲葉洋子、人と情報を結ぶ WE プロデュース、 
  2005 年 3 月 19 日
2. 「行動するライブラリアンをめざして:図書館資源を活かすライブラリーマネジメント」
  稲葉洋子、情報の科学と技術 59(10)、486-491、2009 年 10 月 1 日 
  http://ci.nii.ac.jp/naid/110007358589 
■科学研究費助成事業
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/main5_a5.htm
東京都千代田区霞が関3-2-2 文部科学省研究振興局学術研究助成課 Tel: 03-5253-4111(代表)
■ KAKEN: 科学研究費助成事業データベース http://kaken.nii.ac.jp/
東京都千代田区一ツ橋 2-1-2 国立情報学研究所 学術基盤推進部 学術コンテンツ課 
Tel: 03-4212-2000(代表) E-mail: kaken_fdbk@nii.ac.jp
■神戸大学附属図書館震災文庫 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/eqb/
兵庫県神戸市灘区六甲台町 2-1 Tel: 078-803-7342
133ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
科学技術コミュニケーション推進事業とは、国民の科学技術についての興味や
関心、理解をよりいっそう深めていくための活動を活性化させるため、それら
を実践する団体や機関の活動を支援する事業である。支援のメニューとしては、
「 ネットワーク形成地域型」「 ネットワーク形成先進的科学館連携型」「 リスク
に関する科学技術コミュニケーションのネットワーク形成支援プログラム」「 機
関活動支援」がある。これらの活動に対して、活動にかかる費用が最大で年間
2000万円支給される。それぞれのメニューの概要は以下のとおりである。
▶ネットワーク形成地域型…地域における科学コミュニケーション活動を活性化
させるため、自治体、大学、高専、公的研究機関を中核として、地域の機関
や個人など様々な活動主体が、情報を共有し、相互に連携する地域ネットワー
クを構築するための支援を行う
▶ネットワーク形成先進的科学館連携型…全国各地に最先端の科学技術やその社
会・将来との関係性を分かりやすく伝え考える場が構築されることを目指す
ものであり、最先端の科学技術という新しい知を社会とつなぐ新たな科学コ
ミュニケーション活動に挑戦し、地域の拠点として活動しうる科学館の取組
を支援する
▶リスクに関する科学技術コミュニケーションのネットワーク形成支援プログ
ラム…日本全国の大学や科学館等の活動主体がネットワークを形成し、連携
しながら、リスクに関する科学技術コミュニケーション活動の普及・展開や、
効果的な活動手法の開発・共有を図り、個々の活動の質を高め、新たな活動
を創出することを狙いとした取組を支援する
▶機関活動支援…科学館、科学系博物館、大学、研究機関、地方自治体等が、そ
の特徴や実績を活かし、地域の児童生徒や住民を対象として実施する、身近
な場で行われる体験型・対話型の科学コミュニケーション活動を支援する
 (科学技術コミュニケーション推進事業サイトより)
このうち、図書館が関わった事業への支援には、2012年に採択された「 ネッ
トワーク形成地域型」による「 科学系博物館・図書館の連携による実物科学教
科学技術コミュニケーション推進事業
Case
38
図書館における科学教育事業に利用できる助成金
134 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
「みるかがみあそぶかがみ」開催時の写真
育の推進∼CISE( Community for Intermediation of Science Education)ネットの構
築∼」(北海道大学)と、2012年に採択された「 活動実施支援」( 今年度は「 機関
活動支援」に名称変更している)による「 よもう!あそぼう!かがくの本」( 東
久留米市立図書館)がある。
「科学系博物館・図書館の連携による実物科学教育の推進∼CISE(Community
for Intermediation of Science Education)ネットの構築∼」は北海道大学総合博物
館が中心機関となり、札幌市中央図書館、札幌市円山動物園、札幌市青少年科学
館など15機関が連携して行っている事業である。その内容は、同一のテーマを博
物館資料や図書館資料などそれぞれの機関が持つ資料の特性を生かした複数の視
点から学び、成果を資料としてまとめている。また、協同して効果的に教育を行
うために、教材プログラムの開発も進めている。この事業については、3年間の
事業について資金が支給されており、今年度は1000万円が支給される予定である。
東久留米市立図書館の「 よもう!あそぼう!かがくの本」は、もともと地元
の任意団体ほんとほんとと協力して行ってきた事業である。ふだんは子どもへの
科学絵本の読み聞かせや実験など、図書館でできる科学に親しむイベントを毎
月1回行っている。それを10周年という節目の年に、子どもへのイベントとして
だけではなく、大人に対して「 科学読み物の活用」という観点で実践講座や作
家の講演会を行ったものだ。この事業に対して114万5000円が科学技術コミュニ
ケーション推進事業から支給された。
このようにして、科学を身近なものにする取り組みに限定はされているが、図
書館の事業へも利用できる支援となっている。
提供:札幌市中央図書館 提供:東久留米市立図書館
135ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
■参考情報
1.「科学系博物館・図書館の連携による実物科学教育の推進∼ CISE(Community for  
  Intermediation of Science Education)ネットの構築∼」北海道大学総合博物館 
  http://www.museum.hokudai.ac.jp/cise/
2.「CISE ネット始動」北海道大学総合博物館、総合博物館ニュース 26 号、
  2012 年 12 月 25 日  
  http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/51008
3.「科学技術コミュニケーション推進事業『活動実施支援』平成 24 年度(2012 年)
  新規採択企画 一覧」科学技術振興機構 
  http://www.jst.go.jp/pr/info/info878/besshi.html
4.「第 9 回教育委員会定例会会議録」東久留米市教育委員会、2012 年 9 月 4 日  
  http://110.50.207.49/kyoiku/004/004con/kaigiroku/pdf/2012/d9_teirei.pdf
5.「平成 24 年(2012 年)予算特別委員会(第 2 日)」東久留米市議会、
  2012 年 9 月 18 日 
  http://asp.db-search.com/higashikurume-c/dsweb.cgi/documentframe!1!guest01!!24990!1!1!1,- 
  1,1!1330!131944!1,-1,1!1330!131944!4,3,2!2!3!129086!187!1?Template=DocAllFrame
6. 東久留米市平成 24 年度(2012 年度)主要事業一覧
  http://www.city.higashikurume.lg.jp/kensaku/sisei/zaisei/h24zaisei/h24_jigyouitiran.pdf
7.「児童向けサービス」東久留米市立図書館 
  http://www.lib.city.higashikurume.lg.jp/kodomo/kodomo.html
8. 科学の本の読み聞かせの会ほんとほんと 
  http://honto-honto.blogspot.jp/
■科学技術コミュニケーション推進事業
http://sciencecommunication.jst.go.jp/
科学技術振興機構 東京都千代田区四番町 5-3 サイエンスプラザ 
Tel: 03-5214-7493 Fax: 03-5214-8088 E-mail: katsudo@jst.go.jp
■札幌市中央図書館
http://www.city.sapporo.jp/toshokan/sisetu/chuo/chuo.html
北海道札幌市中央区南 22 条西 13-1-1 
Tel: 011-512-7320 Fax: 011-512-5783
■東久留米市立図書館
https://www.lib.city.higashikurume.lg.jp/
東京都東久留米市中央町 2-6-23 
Tel: 042-475-4646
136 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
地域情報化アドバイザーとは、地域情報化に関する課題に対してICTの専門知
識をアドバイスするため、総務省から委嘱を受けたアドバイザーを派遣する事業
である。アドバイザーは2012年には72名、1団体が委嘱されている。この事業は
2007年度から実施されており、2011年度までで259件の派遣実績がある。
派遣事業では、派遣を希望する自治体に対して、講演形式であれば年度内1回、
個別アドバイスであれば年度3回まで、自治体の金銭的負担なしに派遣を受けら
れる。この派遣事業では、ICTを活用した地域情報化に対するアドバイスが中心
となるため、各アドバイザーの得意分野もICT活用に特化している。
アドバイザーが主として得意分野にしているのは、以下のとおりである。
●地域情報化全般、業務効率化 ●新事業創出 ●産業振興(地場産業・農業等)
●地域情報発信、観光 ●防災、防犯 ●教育、子育て ●医療/福祉
●地域コミュニティ、SNS ● ICT 人材育成 ●その他
*地域情報化アドバイザーのサイトより
図書館関係では、岡本真氏( アカデミック・リソース・ガイド株式会社)、高
野明彦氏( 国立情報学研究所)、山崎博樹氏( 秋田県立図書館)の3名が委嘱さ
れている。主なアドバイス分野は、図書館でのデジタルアーカイブや電子書籍事
業などであるが、ほかにも図書館からの情報発信などもアドバイス内容となって
いる。
図書館関係への派遣実績としては、北海道立図書館( 北海道江別市)、静岡
県立図書館( 静岡県静岡市)、新潟市立図書館( 新潟県新潟市)、岐阜県図書館
( 岐阜県岐阜市)、恩納村教育委員会( 沖縄県恩納村)がある。派遣でのアドバ
イス内容としては、「 観光情報と図書館」「 図書館の持つ資料のデジタルアーカイ
ブ化」「 図書館での電子書籍の対応」などである。実際には、たとえば岐阜県図
書館では2012年10月10日に岐阜県図書館職員を対象に「 図書館における情報化
に関して」をテーマにして山崎博樹氏( 秋田県立図書館)による講演と質疑応
答が行われ、恩納村図書館準備室では2013年2月25日に一般と行政関係者を対象
に「地域の情報拠点としての図書館」をテーマとして岡本真氏(アカデミック・
地域情報化アドバイザー
Case
39
図書館の情報化を推進するための助成制度
137ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
リソース・ガイド株式会社)による講演が行われた。
これらの内容を自治体が独自に行おうとすると、交通費や講師料で決して安く
はない金額が必要となる。しかしこの制度を利用すれば、自治体が費用を負担す
ることなく、専門家の講演やアドバイスを受けられる。無料で派遣を受ける回数
には制限があるが、この制度を使わずに自治体が各アドバイザーと直接交渉・費
用負担をして、アドバイスを受ける方法もある。
提供:恩納村文化情報センター(図書館)準備室 提供:岐阜県図書館
■参考情報
1.「地域情報化アドバイザー/ ICT 地域マネージャー派遣制度」総務省 
  http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/manager.html
2.「平成 24 年度(2012 年度)『地域情報化アドバイザー会議』の提言の公表」
 総務省、2013 年 2 月 6 日
  http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000025.html
■地域情報化アドバイザー
http://www.applic.or.jp/prom/chiiki_adviser/
全国地域情報化推進協会 東京都港区虎ノ門 2-9-14 郵政福祉虎ノ門第一ビル 3F 
Tel: 03-5251-0311 Fax: 03-5251-0317 E-mail: info@applic.or.jp
■岐阜県図書館 http://www.library.pref.gifu.lg.jp/
岐阜県岐阜市宇佐 4-2-1 
Tel: 058-275-5111 Fax: 058-275-5115 E-mail: library@library.pref.gifu.jp
■恩納村文化情報センター(図書館)準備室 http://www.vill.onna.okinawa.jp/799.html
沖縄県国頭郡恩納村字恩納 2451 恩納村教育委員会社会教育課 恩納村文化情報センター
(図書館)準備室
Tel: 098-966-1259
138 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
 これまで個別の事例として紹介してきた交付金や助成金のほかにも、図書館が使える
ものがある。それらの一例を紹介する。
◆地方公共団体に対して支給されるもの
 ▶新学校図書館図書整備 5 ヶ年計画
 交付実施母体:文部科学省
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1318154.htm
 交付概要:学校図書館の図書整備、新聞配備のために 2012 年度より 5 ヶ年計画で総  
 額 1075 億円が交付される普通地方交付税。使途が指定されていないため、各地方公
 共団体で予算化する必要がある。
 ▶学校図書館担当職員の配置のための措置
 交付実施母体:文部科学省 
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1318154.htm
 交付概要:学校図書館に担当職員を配置するために措置された普通地方交付税で 2012 
 年度に 150 億円があてられた。使途が指定されていないため、各地方公共団体で予算 
 化する必要がある。
 ▶学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業
 助成実施母体:文部科学省 http://manabi-mirai.mext.go.jp/other/revive.html
 助成概要:図書館や公民館などで地域における学びとコミュニティづくりを支援する 
 コーディネーターを配置するための資金として措置されている。2013 年度は 11 億
 9572 万 7000 円が予算化された。この事業を実施する地方公共団体が応募する。
 ▶確かな学力の育成に係る実践的調査研究/学校図書館担当職員の効果的な活用方策 
 と求められる資質・能力に関する調査研究
 助成実施母体:文部科学省 
 http://www-gpo3.mext.go.jp/MextKoboHP/list/kpdispDT.asp?id=KK0004199
 助成概要:都道府県教育委員会および政令指定都市の教育委員会、付属学校を持つ国 
 立大学、学校法人等に委嘱され、域内の学校を研究指定校にしたり地域を推進地域に
 指定したりして、学校図書館担当職員に対する実践的な調査研究を行うものである。
 ▶社会資本整備総合交付金
 交付実施母体:国土交通省 http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_000213.html
 交付概要:国土交通省所管の地方公共団体向け個別補助金を 1 つの交付金に原則一括 
図書館事業に役立つ、交付金・助成金制度
139ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
 し、地方公共団体にとって自由度が高い交付金として創設されている。市街地の活性
 化のため、図書館などの公共施設をまちなかに設置する等に使用できる。
 ▶雇用創出の基金による事業(ふるさと雇用再生特別基金事業/緊急雇用事業/重点 
 分野雇用創造事業)
 助成実施母体:厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/chiiki-koyou3/
 助成概要:地方公共団体が直接行う事業や地方公共団体が民間事業者に委託して行う 
 事業に対して、新規採用者の雇用経費が支払われるもの。事業分野に「教育・文化分野」 
 があり、図書館の事業はそれにあてはまる。都道府県ごとに緊急雇用創出事業臨時特 
 例基金を創設して対応する必要がある。
 ▶共同調査研究事業
 助成実施母体:財団法人地方自治センター 
 https://www.lasdec.or.jp/cms/9,0,25.html
 助成概要:地方自治センターの会員である地方自治体同士が研究グループを組み、共 
 同で地方自治体のコンピュータ利用および住民サービスの向上に資する調査研究につ
 いて、助成される。調査研究にかかる経費について 200 万円を上限に支給されるほか、 
 地方自治センターから IT アドバイザーの派遣・助言を受けられる。
◆地方公共団体/団体ほかに対して支給されるもの
 ▶コミュニティ助成事業
 助成実施母体:財団法人自治総合センター 
 http://www.jichi-sogo.jp/lottery/comunity
 助成概要:地域のコミュニティ活性化のための活動に対する助成事業である。助成対 
 象は、市区町村やコミュニティ組織、広域連合、一部事務組合、指定管理者などであ
 るが、事業によって助成を受けられる団体は異なる。事業によって金額は異なるが最 
 大で 1000 万円が助成される。
 ▶振興助成事業
 助成実施母体:財団法人図書館振興財団 
 http://www.toshokan.or.jp/shinko_josei.php
 助成概要:地方公共団体、教育機関、非営利団体、個人を対象に、図書館振興事業に 
 関与する機関・人材の育成、図書館の設立・運営に対して助成を行っており、1 事業
 あたり最大で 1000 万円が助成される。
◆大学に対して支給されるもの
 ▶私立大学教育研究活性化設備整備事業
 助成実施母体:文部科学省
140 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1323178.htm
 助成概要:私立大学の教育研究施設の整備事業に対して助成される。過去の実績では、 
 ラーニングコモンズの設置に対して助成を受けている事例が多い。
◆大学/個人に対して支給されるもの
 ▶私立大学図書館協会研究助成
 助成実施母体:私立大学図書館協会 http://www.jaspul.org/collegium/cat2/
 助成概要:個人/共同/機関研究、課題研究、海外図書館事情調査の助成区分があり、 
 私立大学図書館協会に所属する図書館や図書館員が応募できる。図書館が直面する課
 題を解決するための調査研究に対して、単年度で 60 万円を上限に助成される。
 ▶田嶋記念大学図書館振興財団助成事業
 助成実施母体:特例財団法人田嶋記念大学図書館振興財団(サイト無し)
 助成概要:大学図書館の整備事業に対して助成する。また、大学図書館の資料管理シ 
 ステムに関する研究者または研究団体へも助成事業を行っている。
◆民間団体に対して支給されるもの
 ▶子どもゆめ基金
 助成実施母体:独立行政法人国立青少年教育振興機構 
 http://yumekikin.niye.go.jp/jyosei/
 助成概要:子どもの読書活動振興を図る活動を行う団体に対して援助する助成金。対 
 象団体は、国や地方公共団体を除く一般社団法人など各種法人や任意団体である。読 
 み聞かせ活動や子どもの読書振興にかかわるフォーラムの開催などの費用が助成され 
 る。助成額は対象となる地域の規模によるが、市区町村規模の活動の場合、100 万円
 を限度して助成される。
◆民間団体/個人に対して支給されるもの
 ▶子ども文庫助成事業
 助成実施母体:公益財団法人伊藤忠記念財団 http://itc-zaidan.or.jp/support.html
 助成概要:子どもの読書啓発活動にかかわるボランティア団体や個人を対象とし家庭
 文庫や地域文庫などの文庫活動や読み聞かせ活動、病院施設で子どもに対する読書活 
 動に対して助成される。助成額は 1 事業あたり 30 万円である。
◆個人に対して支給されるもの
 ▶三田図書館・情報学会研究助成金
 助成実施母体:三田図書館・情報学会 http://www.mslis.jp/grant.html
141ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
 助成概要:三田図書館・情報学会の個人会員を対象に、図書館・情報学の研究の発展
 のために行われる調査・研究に対して、必要な資金の一部が助成される。
 ▶日本医学図書館協会研究助成
 助成実施母体:特定非営利法人日本医学図書館協会 
 http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/josei/
 助成概要:日本医学図書館協会の会員施設に所属する個人または個人会員本人に対し 
 て、保健・医療その他関連領域の図書館事業や情報の流通に関する個人が行う研究ま 
 たは共同研究に助成される。
 ▶石井桃子基金奨学研修助成
 成実施母体:公益財団法人東京子ども図書館 
 http://www.tcl.or.jp/training2.html#training3
 助成概要:子どもと本にかかわる職業や活動に従事している個人や、その職業に就く 
 ことを志して勉強している学生に対して、研修会の参加や大学・大学院での勉学、自 
 主研究などの費用に対して助成される。
 
 上記のほかにも、特定条件に該当する地方自治体が使える「合併特例債」や「過疎対
策事業債」「電源立地地域対策交付金」なども存在する。また、東京都図書館協会や三
重県と図書館協会など、各都道府県の図書館協会で独自に助成制度を行っているところ
もある。
■参考資料
1.「行動するライブラリアンをめざして : 図書館資源を活かすライブラリーマネジメント」
  稲葉洋子、情報の科学と技術 59(10)、486-491、2009 年 10 月 1 日 
  http://ci.nii.ac.jp/naid/110007358589
2.「CA1755 −研究文献レビュー:学校図書館をめぐる連携と支援:その現状と意義」 
  岩崎れい、 カレントアウェアネス No.309、2011 年 9 月 20 日 
  http://current.ndl.go.jp/ca1755 
ま まさ ざ な を
組み合わせた
資
方法
金調達
144 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
図書館
寄 付
寄 贈
広 告
事業・運営状況の
公開・報告
物 販
運営をサポートする
ボランティア
本特集では「寄付・寄贈」「広告」「販売」「助成金・交付金」の方法から、特徴
的な資金調達を行っている図書館の事例を紹介してきた。
最後にこれらの方法を複数を取り入れて、運営資金を調達している図書館の事
例を紹介する。これらの図書館の多くは公的資金に頼らず、自分たちが調達する
資金によって運営する民間の図書館である。図書館の事業・運営状態を積極的に
公開し、寄付者・寄贈者や運営をサポートするボランティアに対しては、一緒に
運営に参加する、一緒にサポートする仲間という思いで支援を受け、図書館を運
営している。
資金調達が切実な問題であるこれらの図書館の、積極的な試みを、ぜひ参考に
してほしい。
  民間の図書館における実践
145ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
 saveMLAK とは、2011 年に発生した東日本大震災で被災した美術館・博物館
(Museum)、図書館(Library)、文書館(Archives)、公民館(Kominkan)の情報
を取りまとめ、支援するために始まったボランティアによる活動である。現在で
は、東北地方だけではなく、全国各地の施設における自然災害による被災状況を
カバーしており、参加者数は 294 人(メーリングリスト登録アカウント数)、登
録施設ページ数は 2 万 5644 ページとなっている(2013 年 5 月現在)。
 saveMLAK は直接的な支援は行わず、情報の集約と共有、支援者の派遣仲介な
どを行っている。その活動のための資金源は、主として寄付とグッズの販売に
よる売り上げである。寄付は個人や企業・団体から常時受け付けており、MLAK
関連のイベント開催時にも寄付の呼びかけを行っている。グッズも MLAK に関
連するイベント開催時を中心にブースを設けるなどして販売を行っている。グッ
ズは、重要な収入源になると同時に、saveMLAK の存在・活動を PR する広報ツー
ルにもなっている。
撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 7 月 1 日
■参考資料
1.「saveMLAK の活動と課題、そして図書館への支援を巡って」
  岡本真、情報管理 54(12)、808-818、2012 年 
  http://ci.nii.ac.jp/naid/130001856046
2. saveMLAK ニュースレター第 16 号、saveMLAK、2013 年 5 月 17 日 
  http://savemlak.jp/wiki/saveMLAK:Newsletter
■ saveMLAK http://savemlak.jp/
神奈川県横浜市中区相生町 3-61 泰生ビル 2F さくら WORKS <関内>
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 内 saveMLAK プロジェクト
Tel: 070-5467-7032 E-mail: pr@savemlak.jp
saveMLAK
Case
40
寄付やグッズ販売で、活動資金を調達する
146 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会では、2011年に発生した東日本
大震災による東北支援のために、被災地に移動図書館を運行させる「 いわてを
走る移動図書館プロジェクト」を2011年7月より開始したのを皮切りに「 みやぎ
を走る移動図書館プロジェクト」「 ふくしまを走る移動図書館プロジェクト」を
行っている。
震災後、図書館や仮設住宅などに本を送ることで支援を行った個人・団体も多
いが、シャンティ国際ボランティア会では、本を直接送るのではなく、移動図書
館車で沿岸被災地の仮設住宅を回り、本を届ける活動を行っているのだ。この活
動を行うための資金源は、寄付・寄贈によって賄われている。
寄付の具体的な内容は、クレジットカードや銀行振り込みによる寄付などの直
接的な寄付のほか、中古書店BOOKOFFへ本を送るとBOOKOFFからシャンティ
国際ボランティア会へ寄付される仕組み、クラウドファンディングの活用などが
ある。またイベントや報告会を開催し、そのときに寄付を募ることも行われてい
る。寄贈の具体的な内容には、オフィス家具や移動図書館車の寄贈など、大型
の寄贈もある。クラウドファンディングを使った寄付では、「 陸前高田市の空っ
ぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」への200万円の募集に対して、
支持者862名によって824万5000円の寄付が集まった。
このように、運営・活動を続けための資金調達をさまざまな手段・手法で展開
することで、様々な立ち位置にいる支援者の寄付を促しやすい仕組みづくりを考
えている。
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
Case
41
支援者の立ち位置に寄り添った支援調達
147ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
提供:シャンティ国際ボランティア会
■参考資料
1. いわてを走る移動図書館プロジェクト
  http://www.facebook.com/SVA.Mobile.Library.for.Iwate
2. みやぎを走る移動図書館プロジェクト[宮城県山元発] 
  http://www.facebook.com/miyagiwohashiru
3. ふくしまを走る移動図書館プロジェクト[南相馬へ!] 
  http://www.facebook.com/fukushimawohashiru
4. BOOKS TO THE PEOPLE 2012-2013 プロジェクト(BOOKOFF)
  http://www.bookoff.co.jp/btp/2012/
5. 本を売って被災地の移動図書館を応援しよう(BOOKOFF) 
  http://www.bookoffonline.co.jp/files/guide/vehicular_library_eq2011.html
■走れ東北!移動図書館プロジェクト
http://sva.or.jp/tohoku/
シャンティ国際ボランティア会東京事務所 東京都新宿区大京町 31 慈母会館 2・3F
Tel: 03-5360-1233(大代表)
148 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
 大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」は、公益財団法人大阪社会運動協
会が運営する、労働に関する専門図書館だ。2008 年に大阪府からの委託金や大
阪府・大阪市からの補助金が打ち切られ、現在は会費、寄付、広告や古本のバザー
収益金で運営をしている。
 エル・ライブラリーの主な資金源は、下記の通りである。
▶ 1 口 5000 円(年額)の一般会員費(ほかにも会員区分あり)
▶寄付金の受け付け
▶古本、中古 CD、雑貨などを集めて、常時販売することによる売上金
▶ Amazon アフィリエイトやはてなポイントなど、Web サービスの利用による収益
▶書き損じハガキを集めて、新品と交換
▶その他の現物寄贈
 このように、エル・ライブラリーは寄付・寄贈で運営が賄われている。また、
労働資料や社会科学系図書の寄贈や、一緒に支えてくれるボランティアスタッフ
も募集している。
 しかし、ただ寄付・寄贈を待つのではなく、自館の事業やサービス、運営状態
を積極的に公表し訴えていくことで、寄付を得ている。また不用品を集めて販売
し、そこから収益を得るなど、実際に「稼ぐ」という行為も行われている。エル・
ライブラリーは自らの事業を行うために、積極的に資金調達を行い、また、多く
の人々に支えられて運営されているのである。
大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」
Case
42
寄付金や物販で「稼ぐ」図書館
149ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
撮影:岡本真 撮影日:2010 年 12 月 11 日
■参考資料
1. エル・ライブラリー 大阪産業労働資料館ブログ 
  http://d.hatena.ne.jp/l-library/
2. エル・ライブラリー〈レアもの〉資料紹介ブログ 
  http://d.hatena.ne.jp/shaunkyo/
3. エル・ライブラリー Facebook ページ 
  http://www.facebook.com/l.library
4.「浪速のおばちゃんが切り盛りする新しい形−大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)」   
  岡本真、本のある時間、2011 年 1 月 28 日 
  http://www.timewithbooks.com/monthly_special/06okamoto/vol27/p01/p01.html
■大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」
http://shaunkyo.jp/
大阪府大阪市中央区北浜東 3-14 エル・おおさか(府立労働センター)4F 
Tel: 06-6947-7722 Fax: 06-6809-2299 E-mail: lib@shaunkyo.jp
150 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
 NPO 法人情報ステーションは、2006 年 5 月に開設した「ふなばし駅前図書
館」をはじめとして、蔵書のすべてを寄贈で賄う民間の図書館を 2013 年 5 月現在、
千葉県船橋市を中心に、全国に 15 館、開設・運営している。地域の活性化と交
流の場として作られた図書館は、民間運営だが、誰もが利用できる公共図書館で
ある。
 寄贈によって蔵書を構築することは、寄贈者が自ら参加し図書館を育てるとい
う意識につながり、ボランティアとして誰もが気軽に図書館の運営に参加でき
る。寄贈された本は図書館の蔵書として活用するほか、ほかの施設へ寄贈したり、
Amazon マーケットプレイスなどで販売するなどしている。
 この図書館で貸し出される本には、企業の広告が入ったカバーがかけられてい
る。この広告と、図書館の公式サイトでの企業広告掲載費、イベント開催の収益、
個人や企業・団体からの寄付が運営費にあてられている。
 また、運営費を稼ぐ新たな試みとして、2013 年 6 月から株式会社フューチャー
リンクネットワーク(FLN)が運営する地域共通ポイントサービス「まいぷれ
ポイント」を活用して、寄付を受ける取り組みを始めた。まいぷれポイントと
は、千葉県船橋市内を中心に、商店での買い物や地域活動でポイントが発行され
るサービスで、発行された 1 ポイント= 1 円として使える。サービス利用者は、
加盟している商店や団体にポイントを寄付することもできる。また、まいぷれポ
イントを運営している FLN が、まいぷれポイントの収益の一部を社会活動に寄
付してもいる。
 情報ステーションはこの取り組みを活用し、図書館への本の寄贈やイベント参
加の際にポイントを発行したり、ポイントの寄付を受け付けている。また FNL は、
図書館の支援者登録をしたポイント利用者が貯めたポイントの 10% 相当の金額
を、情報ステーションへ寄付している。
NPO法人情報ステーション
Case
43
ボランティアと「寄付・寄贈」で運営
151ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
提供:NPO 法人情報ステーション
■参考資料
1. NPO 法人情報ステーション 
  http://www.infosta.org/
2.「図書館を作りませんか?」NPO 法人情報ステーション 
  http://www.infosta.org/campaign/makelibrary/
3.「地域共通ポイントサービス『まいぷれポイント』を活用して、NPO 団体の活動を
  支援する新しい取り組みを開始します!」
  株式会社フューチャーリンクネットワーク、2013 年 5 月 9 日  
  http://www.futurelink.co.jp/news/130509_nr.html
4.「まいぷれポイント(まいポ)って?」まいぷれ 
  http://funabashi.mypl.net/mp/mppoint_funabashi/
■ふなばし駅前図書館
http://www.infosta.org/library/ekimae.html
千葉県船橋市本町 1-3-1 船橋フェイス 2F 
Tel: 047-419-4377 Fax: 047-767-8313 E-mail: office@infosta.org
152 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
高知こどもの図書館は、全国初のNPO法人によって設立・運営される民間の
図書館であり、1999年に開館している。民間の図書館ではあるが、誰もが無料
で利用できる公共図書館である。建物と光熱費は高知県から提供を受けているが、
人件費や資料費など図書館運営に必要な資金は、活動に賛同したNPO会員の年
会費、寄付金、講座実施ほかによる事業活動の収益などで賄っている。年によ
り変動はあるが、運営費のうち6割から7割がNPO会員の会費と寄付金でである。
2011年度では876万1171円の運営費のうちNPO会員の会費と寄付金からの556万
7988円の収入により賄われている。
高知こどもの図書館の資金の大まかな内訳は、下記の通りある。
▶ NPO 会員の会費(一般正会員 1 口/ 1 万円(年額)など)
▶寄付
▶買い物レシートでの寄付(イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン、
 エースワン/エーマックスのレシート)
▶ポイントカードのポイントによる寄付(ハーティポイントカード)
▶講座実施ほかによる事業活動の収益
▶としょかんバザー/ほんのバザー開催による不用品販売の売り上げ
▶助成金
寄贈では、寄贈者が企業や団体の場合には、蔵書印のほかに寄贈者の印も押し、
どこからの寄贈なのかがわかるようになっている。また資料費を寄付してもらっ
た場合は、本の受入処理後に寄贈者に連絡し、図書館の蔵書になったことを報告
している。そのほかNPO会員には、会報を発行し、図書館の運営状況を報告し
ている。このように支援者に対して図書館の活動や運営状況などを報告していく
ことで、支援者を大事にし、次の支援につなげているのである。
また、買い物レシートやポイントカードによるポイントなどを利用した寄付も
行われている。レシートでの寄付は「 エースワン」「 エーマックス」というスー
パーマーケットを展開する株式会社エースワンと、スーパーマーケットを中心と
した総合小売業を展開するイオン株式会社の2社が行っている。買い物客が買い
物したレシートを指定の場所に提出すると、買い物金額の一部が、企業から図書
NPO法人高知こともの図書館
Case
44
支援者と協力して、図書館を運営
153ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)
提供:NPO 法人高知こどもの図書館
ほんのバザー会場風景
館に寄付されるというものである。
ポイントカードのポイントによる寄付は、ポイントカードの利用者がポイント
の還元先に図書館を選ぶと、カード会社から図書館へ寄付が行われるというもの
だ。このように身近な方法で気軽に寄付できるような仕組みも導入されているの
である。高知こどもの図書館は活動を継続するために、さまざまな資金源、多く
の人々の協力によって運営されているのである。
■参考資料
1.「NPO 法人の詳細情報:特定非営利活動法人高知こどもの図書館」
  内閣府、NPO 法人ポータルサイト、2012 年 3 月 30 日 
  https://www.npo-homepage.go.jp/portalsite.html
2.「NPO による図書館運営 : 高知県・高知こどもの図書館」穂岐山禮、情報の科学と技 
  術 51(7)、 381-385、2001 年 7 月 1 日  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002828960
3.「寄附・会員集めの ABC(1)第一回『高知こどもの図書館』大原寿美さん」
  NPOWEB http://www.npoweb.jp/modules/feature/index.php?content_id=31
4.「小規模図書館奮戦記(その 190)NPO 法人高知こどもの図書館 子どもにとって最
  善の利益を:日本で最初の NPO 法人図書館の 13 年」古川佳代子、図書館雑誌 106
 (12)、837、2012 年 12 月
5.「イオンイエローレシートキャンペーン」高知こどもの図書館、ほんとあそぶ、
  2012 年 5 月 25 日 http://kodomonotoshokan.blog66.fc2.com/blog-entry-173.html
6.「イオン 幸せの黄色いレシートキャンペーン」イオン株式会社
  http://www.aeon.info/environment/social/aeonday/yellow_receipt.html
7. イオン株式会社 http://www.aeon.info/
8. 株式会社エースワン http://www.ace1.co.jp/
■ NPO 法人高知こどもの図書館
http://wwwa.pikara.ne.jp/kodomonotoshokan/
高知県高知市永国寺町 6-16 
Tel: 088-820-8250 Fax: 088-820-8251 E メール : kodomo@mg.pikara.ne.jp
154 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春 号
1. 「CA1392 −米国の大学図書館における資金調達活動」山田邦夫、カレントアウェアネス No.261、
2001 年 5 月 20 日 http://current.ndl.go.jp/ca1392
2. 「図書館財務 : その理論的枠組と今後の課題」柳与志夫、日本図書館情報学会誌 47(2)、81-93、2001
年 11 月 30 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001818880
3. 「アメリカの図書館におけるファンドレイジング」福田 都代、図書館界 56(5)、274-292、2005 年 1
月 1 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007985446
4. 「CA1392 −米国の大学図書館における資金調達活動」山田邦夫、カレントアウェアネス No.261、
2001 年 5 月 20 日 http://current.ndl.go.jp/ca1392
5. 「24 時間テレビチャリティー委員会による障害者サービス用機器類の寄贈事業について」佐藤 聖一、
図書館雑誌 102(7)、478-479、2008 年 7 月
6. 「図書館財政と資金調達の最新動向」福田都代、情報の科学と技術 58(10)、486-491、2008 年 10 月 1 日 
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950941
7. 「米国公共図書館の経営と資金調達」依田紀久、情報の科学と技術 58(10)、492-498、2008 年 10 月 1 日 
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950942
8. 「米国公共図書館の資金調達動向について」竹内秀樹、情報の科学と技術 58(10)、499-504、2008 年
10 月 1 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950943
9. 「アメリカの助成財団と公共図書館」金谷信子、情報の科学と技術 58(10)、505-510、2008 年 10 月 1 日 
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950944
10. 「アメリカの大学図書館における資金調達」梅澤貴典、情報の科学と技術 58(10)、511-516、2008 年
10 月 1 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950945
11. 「図書館ファンドレイジングの動向」福田都代、『米国の図書館事情 2007 − 2006 年度 国立国会図書
館調査研究報告書』、2008 年 10 月 http://current.ndl.go.jp/node/14437
12. 「図書館とフィランソロピー」井上靖代、『米国の図書館事情 2007 − 2006 年度 国立国会図書館調査
研究報告書』、2008 年 10 月 http://current.ndl.go.jp/node/14441
13. 「E845 −環境にも,財布にも嬉しい図書館資料除籍法(米国)」カレントアウェアネス− E No.137、
2008 年 10 月 15 日 http://current.ndl.go.jp/e845
14. 「機器で始まる障害者サービス --24 時間テレビチャリティ委員会による障害者サービス用機器寄贈事業
の概要と図書館への影響」佐藤聖一、みんなの図書館(401)、2-5、2010 年 9 月
15. 「E1102 −財政難の状況下での公共図書館における有料サービス(米国)」カレントアウェアネス− E
No.180、2010 年 10 月 7 日 http://current.ndl.go.jp/e1102
16. 「CA1742 −動向レビュー:ライブラリー・グッズの可能性−ミュージアム、米・英の国立図書館の
事例を通して」渡辺由利子、カレントアウェアネス No.307、2011 年 3 月 20 日 http://current.ndl.
go.jp/ca1742
17. 「究極の司書業務 !? : たどり着いたのが寄贈依頼」田中智子、看護と情報 : 看護図書館協議会会誌 18、
26-29、2011 年 3 月 31 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110008899138
参考文献
156 ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春号
■写真展「大槌の宝箱」横浜展の開催
主催:大槌みらい新聞
協力:アカデミック・リソース・ガイド株式会社ほか
日時:2013 年 3 月 13 日(水)∼21日(水)
会場:さくら WORKS <関内>
来場数:累計 600 名
内容:被災地のメディア「大槌みらい新聞」が主催した
写真ワークショップ。地元のおばあちゃん、おじいちゃんたちが撮影した「宝物」の写真を展示しま
した。弊社では、写真展の運営と、同時開催のトークイベント、ワークショップをプロデュースしました。
■ライブラリーキャンプ in おぶせの開催
主催:ライブラリーキャンプ実行委員会
企画:運営:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
日時:2013 年 3 月 16 日(土)∼ 17 日(日)
会場:小布施町立図書館「まちとしょテラソ」ほか
参加者:20 名
内容:議題を事前に定めないワークショップ
「アンカンファレンス」を実施したほか、小布施町立図書館「まちとしょテラソ」の見学や前館長・
花井裕一郎さんによるトークセッションと、おぶせまち歩きなどを実施しました。ライブラリーキャ
ンプは年 4 回開催で次回は 2013 年 6 月 9 日(日)∼ 10 日(月)にかけて、淡路島で開催予定です。
■第 4 回ニコニコ学会βシンポジウムの開催
主催:ニコニコ学会β実行委員会
事務局:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
日時:2013 年 4 月 28 日(土)∼29 日(日)
会場:幕張メッセ
(「ニコニコ超会議 2」併催イベントとして開催)
視聴者:約 8 万名
内容:第 4 回目となる「ニコニコ学会βシンポジウム」ではものづくり、データ分析、昆虫の生態、
『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・ガイド株式会社の
最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめています。
各種業務依頼はお気軽にご相談ください。
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
業務実績 定期報告
157ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春号 ARG 業務実績 定期報告 
各地の FabLab、ハードウェアベンチャーの立ち上げなど合計 8セッションを実施しました。弊社では、
2011 年 12 月開催の第 1 回から事務局を担当しており、今回は事務局業務のほかに、グッズプロデュー
スも担当しました。
■「ソトコト」
図書館特集への協力ソーシャル&エコ・マガジン「ソトコト」(木楽舎)の
2013 年 5 月号は、「おすすめの図書館」特集でした。弊社では、同誌の編集
に協力したほか、代表の岡本真が Q&A 記事に登場しています。
■ ARG 第 2 回 Web インテリジェンスとインタラクション研究会の開催
主催:アカデミック・リソース・ガイド(ARG)Web インテリジェンスとインタラクション研究会
事務局:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
日時:2013 年 5 月 19 日(日)∼20 日(月)
会場:大阪大学 豊中キャンパス基礎工学部シグマホール
来場者:約 100 名
内容:細馬宏通さん(滋賀県立大学)による招待講演「漫才のボケに対するツッコミ動作の時間構造」
を含め、合計 20 本の研究発表が行われました。弊社では、Web インテリジェンスとインタラクショ
ン研究会(WI2 研究会)をホスティングしています。
■人文情報学月報、ラーコモラボ通信の編集・発行
一般財団法人人文情報学研究所と弊社で共同編集しているメールマガジン「人文情報学月報」、任
意団体「ラーニングコモンズラボラトリ」名義で発行しているメールマガジン「ラーコモラボ通信」
の編集・発行を担当しました。現在、前者は約 330 部、後者は約 150 部の発行です。どなたでも
無料でお読みいただけます。
■「東日本大震災アーカイブ」基盤構築プロジェクト ラウンドテーブルへの参加
総務省による「東日本大震災アーカイブ」基盤構築プロジェクト ラウンドテーブルに弊社代表取締
役/プロデューサーの岡本真が構成員として参加し、震災関連デジタルアーカイブ構築・運用のた
めのガイドラインの策定等に関わりました。
弊社業務問合せ先
info@arg-corp.jp 070-5467-7032(岡本)
LRG
「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」は
アカデミック・リソース・ガイド株式会社が、2012年11月に創刊した、
新しい図書館系専門雑誌です。
さまざまな分野で活躍する著者による特別寄稿と、図書館に関する事例や
状況を取り上げる特集の2本立てで展開していきます。
バックナンバーは、第2号のみの販売です。
創刊号は、在庫稀少のため、定期購読のみのお取り扱いとなります。
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
● 誌 名:
● 発 行:
● ISSN:
ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
2187-4115
1年4号分の定期購読を受付中です。最新号からでも、創刊号からでも、好きな号からの
お申し込みができます。
バ ック ナ ン バ ー
問い合わせ先:090-8052-0087(嶋田)/ lrg@arg-corp.jp
定 期 購 読
みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために
         ─何から始めればよいのか」
第2号・2013年冬号(2013年2月発行)
特別寄稿
嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル)
「図書館システムの現在」
特 集
長尾真「未来の図書館を作るとは」
創刊号・2012年秋号(2012年11月発行)
特別寄稿
嶋田綾子「図書館100連発」特 集
2号 2013年冬号(2013年2月発行刊号 2012年秋号(2012年11月発行
在庫
稀少
● 刊 期:
● 定 価:
● 詳細・入手先:
季刊(年4回)
2,500円+税
   http://www.facebook.com/LRGjp
LRG
LRG 4号 2013年8月 発行予定
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
次回予告
LRGライブラリー・リソース・ガイド
定価(本体価格2,500円+税)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別寄稿
特 集
第3号に引き続き、「資金調達(ファンドレイジング)」を
テーマに、今度はサービス提供者側から語ります。
「図書館100連発(2)」
普通の図書館のきらりと光る取り組みを紹介します。
LRG
ライブラリー・リソース・ガイド
第3号/2013年 春号
無断転載を禁ず
発 行 日
発 行 人
編 集 人
責任編集
編  集
デザイン
発  行
2013年5月31日
岡本真
岡本真
嶋田綾子
大谷薫子
アルファデザイン(佐藤理樹 + 小野寺志保)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Academic Resource Guide, Inc.
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61
泰生ビル2F さくらWORKS<関内>
http://www.arg.ne.jp/
ISSN 2187-4115
1 段目 左から 「シャンティ国際ボランティア会の東北を走る移動図書館車」(Case41)
        「千葉市中央図書館の館内にある募金箱」(Case06)
        「東久留米市立図書館の「よもう!あそぼう!かがくの本」イベント風景」(Case38)
2 段目 左から 「佐賀県立図書館ふるさと納税コーナー」(Case05)
        「東京都立多摩図書館 東京マガジンバンク」(Case16)
3 段目 左から 「市立小樽図書館の自動販売機の売り上げを図書館へ寄付」(Case14)
4 段目 左から 「ふなばし駅前図書館館内風景」(Case43)「saveMLAK グッズ販売」(Case40)
        「横浜市港北図書館蔵書支援プロジェクト イベント風景」(Case18)
表紙写真
定価(本体価格2,500円+税)
Library Resource Guide
第3号/2013年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
ISSN 2187-4115
LRGライブラリー・リソース・ガイド

『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第3号(2013年5月)

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    LRGライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 LibraryResource Guide ISSN 2187-4115 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 特集 嶋田綾子・岡本真 特別寄稿 水島久光 記憶を失うことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
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    LRG Library ResourceGuide ライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 特集 嶋田綾子・岡本真 特別寄稿 水島久光 記憶を失うことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践
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    2 巻頭言 ライブラリー・リソース ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号 当初の心積もりよりやや遅くなったものの、『 ライブラリー・リソース・ガイド』 第3号ができあがりました。特に今回は各地の図書館関係者に編集のご協力を賜り ました。心から御礼を申し上げます。 少しだけ内情を申しますと、「 図書館システム」を特集した第2号の売れ行きがあ まりよくなく、この第3号の売れ行き次第では、『 ライブラリー・リソース・ガイド』 は進退きわまる事態になるかもしれません。本誌をご評価いただけるようでしたら、 この第3号に加え、第2号もお買い求めいただけますと幸いです。 さて、この第3号は、創刊号や第2号と同様、  ●特別寄稿  「記憶を失うことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践」(水島久光)  ●特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」  という2本立てとなっています。 水島久光さんは、メディア論などを専門とする研究者です。『 閉じつつ開かれる 世界』(勁草書房、2004年)、『テレビジョン・クライシス』(せりか書房、2008年) などのご著書をお読みになられた方もいらっしゃることでしょう。水島さんのライフ ワークの一つが、論考の副題にもある「アーカイブ」です。夕張、鹿児島、東北と、 3つの地域を背景とした議論は、皆さまに様々な示唆を与えてくれるでしょう。アー カイブ論の画期の一つとなる論考であると、私どもは自負しています。 巻頭言 実践する図書館のために
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    3ラ イ ブラ リ ー ・リソース・ガイド 2013 年 春 号 巻頭言 また、水島さんは本誌発行元であるアカデミック・リソース・ガイド株式会社が 入居するシェアオフィス「 さくらWORKS<関内>」の入居者でもあります。編集、 執筆、デザインのすべてをこの共同オフィスの入居者でまかなってきましたが、つ いに寄稿者まで得ることができたことをひそかに喜んでいます。日常的に議論し合 える関係という、文字通りの「協働」が生み出したという背景にもご注目ください。 特集「 図書館における資金調達( ファンドレイジング)」は、本誌の創刊時から 必ず実施すると考えてきたものです。資金調達(ファンドレイジング)の重要性は、 図書館業界の関係者の誰もがうなずくところでしょう。しかし、その重要性にも関わ らず、網羅的かつ体系的な特集が、図書館関係の雑誌で組まれたことはありませ ん。その理由をここでは問いませんが、手前味噌を承知で、言うなれば幻の企画 が本誌で実現できたことを素直に喜んでいます。 せひ、紹介する事例とその事例にみられるノウハウを引き出し、自らも資金を調 達できる図書館が増えていく一助となれば幸いです。 編集兼発行人:岡本真 責任編集者:嶋田綾子
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    巻 頭 言 実践する図書館のために[岡本真]………………………………………………………2 特別寄稿 「記憶を失う」ことをめぐって     アーカイブと地域を結びつける実践[水島久光 ]…………………………………… 5 特  集 図書館における資金調達(ファンドレイジング)[嶋田綾子・岡本真]………………… 63 LRG CONTENTS Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号 「ふるさと納税」を利用する  [Case01] ふるさと納税で、児童書を整備  [Case02] 納税者に「としょかんカード」の発行  [Case03] 失効したポイントを利用する  [Case04] 寄付された1000万円で、3043冊を購入  [Case05] 寄付金で、児童書の購入やデジタル民話を作成 寄付を募る  [Case06] 館内に募金箱を設置  [Case07] 書庫整備のために寄付を募る  [Case08] 寄付者に、フレンドリー利用証を発行  [Case09] 300万以上の寄付で終身の特別利用証を発行  [Case10] 基金で、被災した図書館の建て替えを目指す  [Case11] 図書館まるごと寄贈を受ける  [Case12] 地域の風習と寄付を組み合わせる  [Case13] 人生の節目に寄付を提案  [Case14] 館内に設置した自販機の売上げを寄付  [Case15] クラウドファンディングに図書館ならではの引換券 本の寄贈を募る  [Case16] 所蔵できない雑誌の号を寄贈で募る  [Case17] 全国有数の社史コレクションを寄贈で作る  [Case18] 友の会が寄贈本を集め販売  [Case19] 寄贈本だけを所蔵する図書館  [Case20] 「Amazonほしい物リスト」を活用した寄贈  [Case21] 寄贈本にメッセージ  [Case22] 寄贈者と図書館をマッチング(1)  [Case23] 寄贈者と図書館をマッチング(2) 雑誌スポンサー制度を利用する  [Case24] ベーシックな雑誌スポンサー制度導入館  [Case25] 雑誌への広告掲載料をとるモデル  [Case26] NPOが仲介する雑誌スポンサー制度 広告を募る  [Case27] 貸出用レシートにクーポンを印字  [Case28] 図書館への広告掲載事業 ………………………… 70 ………………………………… 77 …………………………………… 92 ………………… 104 ……………………………………… 112 ……………………………… 118 ……………… 123 ……………………… 126 …… 138 寄付・寄贈篇 ………………………………… 69 広告篇 ………………………………………… 103 販売篇……………………………………………117 交付金・助成金篇……………………………129 さまざまな方法を 組み合わせた資金調達 ……………………………143 ………………………144 除籍資料を販売する  [Case29] 除籍資料を1冊、100円で有償配布  [Case30] NPOが、除籍本を販売  [Case31] 常設コーナーで、除籍資料を販売 図書館が作成したものを販売する  [Case32] 図書館で作成したレファレンス資料の販売  [Case33] 図書館内でのオリジナルグッズの販売 オンライン書店と連携する  [Case34] 検索結果を、オンライン書店に誘導  [Case35] アフィリエイトの利用  [Case36] 住民生活に光をそそぐ交付金事業  [Case37] 科学研究費助成事業  [Case38] 科学技術コミュニケーション推進事業  [Case39] 地域情報化アドバイザー  図書館事業に役立つ、交付金・助成金制度     民間の図書館における実践  [Case40] 寄付やグッズ販売で、活動資金を調達する  [Case41] 支援者の立ち位置に寄り添った支援調達  [Case42] 寄付金や物販で「稼ぐ」図書館  [Case43] ボランティアと「寄付・寄贈」で運営  [Case44] 支援者と協力して、図書館を運営 参考文献 ………………………………………… 154 アカデミック・リソース・ガイド株式会社       業務実績 定期報告 ………………………………… 156 定期購読のご案内 ………………………………… 158 次号予告…………………………………………… 159
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    6 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 これから申し上げるのは、「 記憶は、どうやって失われるか」ということに関 するお話です。とはいっても「 記憶喪失」という言葉で語られるような、症状 や障害のことではありません。「 個々人」単位で起こるこうした現象は、主に精 神病理学的に扱われますが、今回のお話は、それは往々にして「 集団的」ある いは「 社会的」、もっと突っ込んだ言い方をするなら「 歴史的」に生じうるとい うことに焦点を当てたものです。 それは決して珍しいことではありません。というよりむしろ「 人間は忘却の 生き物である」といわれるように、忘れることの方があたりまえで、記憶を維持 し続けることの難しさはみんなが知っています。だから、私たちは子どもの頃か ら一所懸命「 記憶」する技術を学び、ときに「 記録」することで、補完しよう としてきました。でも天邪鬼な僕は、ある日不思議に思ったのです。本当に、忘 れることは自然なことなのだろうか、と。 1. はじめに 東海大学文学部教授。広告会社、インターネット企業を経て、2003 年に着任。メディアのデジタル化が主な研究テーマ。「映像アーカイ ブ」に関係する実践を多数行っている。著書に『閉じつつ開かれる 世界』(勁草書房、2004年)『テレビジョン・クライシス』(せりか書房、 2008年)、『窓あるいは鏡』(慶應出版会、2008年、共著)、監訳書に 『コミュニケーション学講義』(D.ブーニュー著、書籍工房早山、2010 年)がある。BPO放送倫理検証委員。 アーカイブと地域を結びつける実践 水島久光(東海大学文学部) 記憶を失う ことを めぐって
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    7ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 一方で集団を成す生き物である人間は、この忘却を他者との関係によってカ バーする術を磨いてきました。「 社会」はすなわち、記憶の集積によって築かれ ると言ってもいいかもしれません。世界中の様々な民族が固有の神話を持ってい ることが、社会と記憶の密接な関係を表しています。記憶を集団的に構築してい くためには、その組み立てを組織的に行う必要があります。そこには当然、権力 装置が不可欠であり、「 選ばれる記憶」と「 捨てられる記憶」の区別が設けられ ていきます――これまで「 集団的」な記憶喪失は、こうした権力装置による統 制の結果として、また政治学的なカテゴリーにおいて語られてきました。 しかし、それだけで「 集団的」に記憶を失うという現象を語り尽くすことは できるのでしょうか。統制はむしろ、生来、人間にそなわった忘却のメカニズム に乗じて、人々の記憶への介入、操作を企図したものではないのでしょうか。僕 たちは統制の強制力を意識することができます。ゆえにそれに対するストレスが 原因となって、逆に記憶を内面において強化するということも、少なからず経験 してきているでしょう。つまり「 覚えている」「 忘れてしまう」という現象は複 雑で、そう簡単に説明できることではないのです。 20世紀はマス・メディアの時代だったといわれます。新聞、ラジオ、テレビ といった強力な記録・伝播システムが、この100年間で一気に日常生活を覆い 尽くしました。その間に2つの世界大戦があり、その後は数々の地域紛争が勃発 し、グローバル経済の発展があり、そしてバブル経済の崩壊がありました。ざっ と振り返ってみるだけでも、僕たちの記憶と忘却に関わる環境変化は、このよう な世界の「マス」化をめぐる攻防との関係で考える必要があることがわかります。 記憶や忘却の集団性は政治、経済、文化を横断するような社会システムの変化に 媒介されているのです。 その文脈で言えば、前世紀末から畳み掛けるように起こっている政治、経済、 文化の変化、そしてそれを支えるメディアの動きは、この20世紀型の「 マス」 化とは異なるベクトルで、新たな秩序が形成され始めていることを予感させてく れます。「 国家」という枠組みの再考と再編、財政破綻と金融危機、現在進行形 で語られるこれらのアジェンダの背景には、各社会システムを通底するテクノロ ジーの総デジタル化があります。 いま僕たちは数百年に一度の「変化」に直面しているのです。その中で「情報」 になんらかの関わりを持つ仕事をするということは、どんな意味を持つのか―― なんだか、一気に話が大仰になってきたように感じられるかもしれませんが、そ
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    8 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 れは「 社会」が「 記憶システム」である以上、避けることができない問いでは ないかと思います。大事なことはその「 社会」が、一人ひとりから成り立って いるということ。こういう時だからこそ、個人的な記憶/忘却が集団的な記憶/ 忘却に結びつくプロセスや、顕在化した社会システムおよび統制の後景にあるメ カニズムに、接近する努力を怠ってはいけないように思います。 僕はここ数年、この難しい問題に具体的な「 地域」に生きる人々の具体的な 「 トピック」からアプローチしてきました。最近、ようやくその問題の輪郭が 見え始めたような気がしています。この原稿を書こうと考えたのも、この時期だ からこそ書けるデッサンを、肌理の粗い筆致かもしれないが残しておこうと思っ たからです――僕自身の「 記憶」と「 忘却」を素材に自問自答することは、そ れこそ「 この時代の当事者」として、「 情報」に関わる仕事の意味を問い直す作 業につながるのではないかと。 2-1 テレビ・システムと社会システム 僕はもともと放送研究をなりわいにしてきました。番組を記号論的に分析して 論文を書く一方で、この巨大メディアのデジタル化に興味をもち、その全体の動 向を解釈すべく、変化の兆候に目を凝らす作業を続けていました。 かつてテレビは「 集団的な記憶装置」たることによって、20世紀の僕たちの 生活を覆うことに成功したといわれています。実際、1961年生まれの僕は、ま さに自らの記憶を構成するイメージの多くがテレビのモニターに依存しているこ とを自覚しています。しかしそれは物質的な、あるいは技術的なカテゴリーとし てのテレビの機能に依存しているというよりも( それ自体が記憶システムであ るところの)、「 社会」が、その生成原理をテレビに委ねていたことの表れとい えます※1 。 テレビがどのようにして「 社会化」を担ってきたか――それはこのメディア が特にかたち作ってきた時間と空間との関係に支えられてきました。地上波の物 性と戦後民主主義の要請は、生活の実時間を参照軸に番組を編成し、同心円的に ナショナルな空間を覆う系列の秩序化を促しました。その結果私たちは同じ時間 2. 導きの糸―テレビから、ポスト・テレビ時代へ
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    9ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 と空間を共有するヴァーチャル感覚を身につけ、それを媒介に「 社会」を認識 するようになったのです。 実際、テレビは意識的あるいは無意識的に、60年間そのシステムの再生産に 努めてきたと言えます。U・エーコが「 ネオTV」と命名したように、1980年代 以降、特に顕著にテレビは、自己言及的に組織構築していく運動体へと純化して いきました。矛盾めいた言い方をしますが、僕はそのことがテレビ自身の手に よってテレビ時代の黄昏を生み出す契機となったと考えています※2 。 テレビ・システムの純化が進む一方で、それとカップリング関係にあった「社 会」も、自己組織的に、少しずつその形を変えていきました。資本主義の原理で ある拡大再生産( マス)モードは、時空間秩序に準拠した物理的限界まで広が り尽くすと、今度はその秩序自体を崩すことで、「 情報」という目に見えないモ ノの増殖を促し、それによって自己保存を図る方向にシフトしていきました。既 に僕たちの社会は、地理的には一部の独裁政権を除き、24時間、360度の全てが 「市場」に覆い尽くされています。 旧来のテレビ・システムの限界は、こうした社会環境の変質との関係で考える ことができるでしょう。デジタルメディアの普及、あるいはあらゆるメディアの デジタル化は、「 拡張」が物理対象の地平から離陸し、別の( 数理的)次元にそ の主戦場を求めていった結果なのです。しかしそうなると、本論の主題である 「記憶」の問題は、どう考えたらよいのでしょうか。「社会」が「記憶システム」 として成立するという前提を踏まえるなら、それが「 情報」として、物理的現 実から離れていこうとしているという事態に、僕たちはどのように向き合うこと ができるのでしょう。 少し具体的な事柄に引きつけて、このことを考えてみましょう。それは「 戦 争の記憶」という問題です。日本のテレビにとって( 特に公共放送たるNHKに とって)、ずっと「 戦争」は特別なアジェンダでした。それはこの国の放送の歴 史と深く関わっています。かつて政治の支配下に置かれたメディアは、戦後民主 主義体制の構築過程の中でリ・デザインされ、テレビ放送は( 沖縄を除く)日 本の主権回復の翌年に、それを支えるものとしてスタートを切りました。した がって、戦争・戦後というワードは、このメディアのレゾン・デ・トルと深く結 びついているのです。 ここでいう「 戦争」は、もちろん一義的には、かの満州事変に始まるアジア 太平洋15年戦争のことを指します。しかしテレビは、必ずしも直接的にその「記
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    10 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 憶」を指し示していたわけではありません。 桜井均は『 テレビは戦争をどう描いてきたか 映像と記憶のアーカイブス』( 岩 波書店、2005年)でこのことを指摘していますが、彼が言うところの戦後およ そ40年あたりまで繰り返される戦争言説の「 モノローグ性」は、「 記憶」への向 き合い難さに対する的確な表現ではないかと思います。生々しい「 印象」を言 語化することもできず、また特に戦後すぐは、それを助けてくれる資料も多くが 公開されないままの状態にあったわけで、戦後の人々の「 戦争の記憶」は、長 らく「近くにあれども、語り難い」対象であったのです。 テレビはそうした人々の心性を映し出す「鏡」であったと言えます。NHKの『日 本の素顔』から『 現代の映像』『 ある人生』へと続く初期テレビ・ドキュメンタ リー、あるいは民放( TBS)で村木良彦や萩元晴彦が行った新しいテレビの可能 性を問う実践番組でも、「 私、あなた」と「 いま」という直接的な言及対象を介 して、影絵のように、戦争という「過去」と、それをもって個を圧迫した「社会」 を思い描くアプローチが採られていました。それが徐々に「 過去」に遠ざかり、 資料が開示されるとともに記憶が社会的に組織され、他者性を帯びていく――こ の変化について、僕たちはもう少し自覚的であってもよかったように思います※3 。 2-2「2005 年」はなぜ振り返るべき節目となったのか その点では2005年、「 かの戦争」の終結から60年という節目は、最も戦争の記 憶に関する言説が「 多声的( ポリフォニック)」な様相を呈した年ではなかった かと思います。それまでも日本人は、10年単位でメモリアル・イヤーを設定し、 戦争を振り返ることをしてきました。しかしそれは先の桜井の指摘にあるように 心理的にも、資料的にも、また研究としても十分に「開かれたもの」ではなかっ たことは確かなようです。坪井秀人も文学研究の立場から、著作『 戦争の記憶 をさかのぼる』(ちくま新書、2005年)でそのことを検証しています。 しかし2005年はさまざまな条件が重なり、「 かの戦争」を振り返る言説がメ ディア上に溢れかえりました。天皇崩御から16年が経過し「 昭和」という時代 に一定の距離をとることが可能になったこともあるでしょう。同時に東西冷戦 の終結からほぼ同じだけの時が流れ、世界的に「 戦争」や「 紛争」を問い直す ムードが出てきたことも見逃せません。しかし何よりも大きな影響を与えたのは、 2000年に米国で「 日本帝国政府情報公開法」が成立し、アメリカ国立公文書記
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    11ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 録管理局などが保管していた戦時下の日本に関する記録が、一気に機密指定から 外れたことでしょう。それまで明るみに出ていなかった様々な事実が、検証可能 になりました。 それに併せてもう一つ、決定的な変化が起こり始めていました。それは戦争体 験者の老化という避けがたい事実と、それに対する体験者自身および、彼らを取 り巻く人々の心の変化です。気がつけば60年という時の流れの中で、既に「 戦 争」を自らの言葉で語りうる多くの人は鬼籍に入り、ドキュメントの軸足は「記 憶」から「 記録」に移り始めていました。存命の人でも、当時既に成人に達し ていた人は80歳を超え、特に戦地の過酷な経験を持ち、口をつぐんでいた兵士 や在外者の中には、やがて訪れる「 自らの死」に向き合う意識から、言葉を発 し始める人々が現れ始めたのです。 また「 かの戦争」に対して高い意識を持つ戦後世代、特にジャーナリストた ちは、この記憶と記録を媒介する「 証言」という行為に注目をし始めました。 体験者を潜在的証言者として位置づけ、その希少化から言葉を拾うことに群がる 一種の「 証言ブーム」が、この年を契機に加速し始めます。それはそれで大事 なことなのですが、この「 大量生産」は証言に対する無批判性を生み出すよう になっていきます。記録に残さねばならないという使命感が集合的実態を伴うよ うになってくると、その「証言」の数の大きさがポジティブな雰囲気を醸し出し、 その内容の多様さに対する関心を相対的に薄れさせるのです。 実際、「 記憶」とは極めて複雑で、不確かなものです。それまで口にすること を躊躇っていたことがらでも、人は思い出すこと自体を完全に封じ込められるわ けではありません。おそらくその個人の脳裏においては、ことあるごとに何度も それは想起( recall)され、そのたびに「 更新」されてきたはずです。その意味 で「 記憶」とは、決してその対象である出来事との最初の出会いから、フリー ズしたまま時を超えて運ばれるものではないと言えます。「 言葉」は、その更新 に大きな役割を果たします。頭の中に止まってきたイメージが言語化され外化さ れるとき、記憶にはその時々の様々な「 いま」が絡み付き、新たな文脈の中で 再生されることになります。 その中でも、「 証言」は語る行為と語られる内容の時制が交錯するという意味 で、特異な表現態であるといえます。すなわち「 証言」は、それ自体の形式に おいて「 記録」として扱われうる必然性は備わっておらず( オーラル・ヒスト リーの作法においても、それが「 記録」と見なされるのは、「 筆記者」によって
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    12 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 書きとめられる限りにおいてである)、その語りの対象内容と、聞き手との関係 の間にあって、偶然的にそうであるにすぎません。 その意味で戦後60年というタイミングは、戦争という「 対象」と、聞き手 ( ジャーナリストたち)の「 ニーズ」が重なり、体験者たちの過去に関する語 りを貴重な「 証言」として記録化するフレームとなったと言えます。それにさ らに重なったのが、先に述べたような元機密資料の公開です。こうして「証言」 と「 資料」の出会いが、この時期のドキュメンタリーの中に「 新たに発見され た資料をもとに、寄せられた証言とともに過去の出来事を検証する」という宣言 をクリシェ(常套句)として生み出していったのです※4 。 専ら「 いま」を描くメディアとして君臨してきたテレビが、「 過去」を主題と することは、様々な困難をその中に抱え込むことを意味します。「 検証」はもち ろん、その時間の隔たりを埋めるための一つのアプローチですが、しかしそれは よく考えれば、決して簡単なことではありません。しかし、かのクリシェは、特 に形式化が進んだテレビ・ドキュメンタリーのアバンタイトル( タイトル前の 概要紹介シーン)の中に、そもそもそれが番組の自明の目的であるかのように挿 入されています。 この年から数年の間、戦争に関するドキュメンタリーは、その前後と比較して も積極的に制作されたように思います。しかしそれらは本当にアバンタイトルの 「 宣言」どおり、あの過去の出来事の「 検証」をしたのでしょうか。そもそも 「 検証」とは、何をする行為なのでしょうか。それは「 記録」と「 証言」をた だ「棚卸し」し「陳列」することと、どこが違うのでしょうか――2013年の「い ま」、2005年を振り返るべき節目と考えることは、一つのメモリアル・イヤーで あることを超えた、大きな問題がその時期に実は提起されていたということ、そ して「 同時代的感覚において」その問題を見落としていたことを( 遅ればせな がらではあっても)確認するということに他なりません。まさにミネルヴァの梟 のような話ではありますが。 2-3 時空間認識のパラドックス とりあえず議論を先に進めるために、まず「 ざっくり」と、2005年を境に僕 たちをとりまいている「 メディア」と「 社会」のカップリングの仕方に、何ら かの変化があったのではないか、という仮説を立ててみようと思います。
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    13ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 それはおそらく、「 事実」に対する感覚に表れていると言えましょう。僕たち は日常会話レベルでは、結構ナイーブに「 事実」という言葉を使っていますが、 よくよく考えてみればそれは極めて危うい扱いの難しい概念です。「 事実」は多 くの判断を支える根拠として求められる一方で、それ自身は常に「 媒介的」に しか立ち現れることができません。 「 ありのままの事実なんてものはない」「 それは必ずどこかの視点からの『 見 え』でしかない」――これらはジャーナリズムやメディア論の基本中の基本の テーゼであり、社会認識の出発点とされてきたことでした。それは科学的認識に 関しても、大きな違いはありません。常識とされてきた知識も、その多くは「人 間」と「 自然」との対立関係を前提とした、技術論的パースペクティブの下に あることは、今や多くの人々が認めるところです※5 。西欧中心主義やデカルト的 な近代意識の超克といった議論は、多かれ少なかれ、20世紀における認識批判 によって導かれたものと言えます。まあ、その行き過ぎたものとして、「ポスト・ モダン」的相対主義に陥る場合もありましたが。 ところが昨今まわりを見回すと、いつの間にか再び、かのナイーブな「事実」 主義(「 事実」なるものへの無批判性)が広がってきているように思えます。東 日本大震災以降、それはさらに加速して、「 マス・メディアは嘘をつく」「 政府・ 官僚・学者は事実を隠ぺいする」と声を荒げ、糾弾する人々を日常的に目にする ようになりました。「 事実」は認識し得て当然、もしそれができない場合、そこ には何らかの悪意が存在するという決めつけに走るこの極論、安易さには、むし ろ20世紀以前の状態への回帰というよりも、何か未曾有の事態の到来を感じず にいられません。 この「 事実」に対する認識の急転回は、社会全般の「 不寛容さ」の増大と結 びついています。「 本音」を晒すことが、さも潔いかのごとく、言葉を選ばずに 他者を攻撃する人々が、このように白昼堂々、往来を闊歩するような時代が来る とは、正直思ってもみませんでした。それは無邪気に迷彩服を着て、戦車に乗り 込みポーズをとるような人が、一国の首相なのですから、「 さもありなん」とい うことなのかもしれません。この「 右翼的思想」の広がりだけでなく、レイシ ズムも反レイシズムも、双方が視野狭窄に陥っているようなこの状態をみると、 あの認識批判の時代は、どこにいってしまったんだろうと不思議に思います。 それは「 事実」に対する意識的な絶対視というよりも、むしろ逆に短絡、す なわちその透明性を生み出す技術に対する無自覚が生じているように僕には思え
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    14 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 ます。既存の「 目に見える対象」をとりあえず肯定するが、仮に確からしきも のがそこに「 見えない」ときには、反射的苛立ちが抑えられないといった衝動 が剥き出しになった状態――つまりそこでは「 何が」見えているのか、その対 象の内容には関心がなく、とりあえず「何かが」見えているという「メタ状況」 にあることが大事なのです。 それは自らの存在の確かさが失われた状態であり、その病理は遠近感を失った、 「 生きられる世界」に対する感覚機能の劣化に求めることができます。僕たち の遠近感の基本は時空間認識であり、過去と未来の間に現在を、HereとThereの 間に距離を設定する能力にあります。いま、多くの人々が次々に存在の不安を直 接/間接に訴え、そこにいつの間にか68年前に終わったはずの「 戦争」の姿が 亡霊のように現れ、不安を不安で相克しあうようなオカルト的世界が展開し始め ているという現実は、時空間認識が崩れた極めて危険な状況であるとしか言いよ うがありません。 この「 事実」に対する麻痺、あるいは痙攣的な無感覚状態は、しかしながら よく考えてみれば、「 情報化社会」においてよく見られる「 日常の風景」の範列 の一つとも言えます。何かを考える前に(考えるという回路を避け)、指はスマー トフォンを、ゲーム機をさわり、その微かな触感と、送り届けられる微細な視聴 覚的変化に心を研ぎ澄ます毎日。「存在への不安」(メディアへの埋没)と「意味 に対する背走」( 社会への埋没)というカップリングから、無時間・無空間的世 界において、反射的行動を繰り返す――ここに誕生した「 新しい人間」は、ま るで「認識すること自体を放棄した」かのように見えます。 かつて「情報化社会」は、「情報量が拡大する社会」と言い換えられていました。 この文脈において「情報」は、あくまで僕たちが「知りうる対象」としてイメー ジされていました。つまりそれは、仮にそれがメディア上に溢れるようになった としても、検索サービスを使えば常に「 可能的」に手にすることができるもの であり、したがってそれを利用「 できる/できない」は、個人のリテラシーに 還元されるものとみなされるようになりました――これは、例の「自己責任論」 と同じ構造です。 この「 先取り感」( 一種の全能感)こそが、遠近感の喪失の表れであり、今日 の時空間認識の乱れそのものとは言えないでしょうか。何でも知っている( 知 り得る)かのような傲慢さと、自らをまとい、守るものを何も持っていないかの ような臆病な振る舞いの同居。そうした人々の姿は、この「 社会」が機能不全
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    15ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 に陥っている証であり、それはまさに拡大した「 情報量」に対する、認識シス テムの相対的敗北であると僕には映るのです。 なんだかすごく大仰な話を聞かされていると思われるかもしれませんが( 繰 り返しますが)、これが本論の主題です。「 社会」が「 記憶システム」であると いうことは、その「 記憶」こそが、実は僕たちの身を守る「 衣服」であったの です。たとえ話的に言うならば、それはテレビ・システムからの衣替えの季節を、 僕たちはきちんと整理整頓しながら、越えることができるのか( これまで、そ うしてきたか)という問いになるでしょう。 テレビとともに作り出された時空間の代わりに、どのような時空間認識がデザ インできるのか。そこにおいて「 記憶」と「 記録」の関係は、どのように定義 されるのか。そしてかつてテレビにとって「戦争」が特別な対象であったように、 僕たちの生存を脅かすようなカタストロフィーをどのように位置づけるのか―― ポスト・テレビ時代が、絶望と社会的「 記憶喪失」の時代にならないようにし たい――ここから少しずつお話ししていくことは、そうした新たな歴史記述に関 わる試みの一部です。ちなみに僕はそれを「 アーカイブ実践」と呼んでいるの です。 3-1 2005 年 8 月の『戦争』関連番組という「映像群」との出会い 「 2005年8月に放送される『 戦争』に関する番組を、一通り録画してみよう」 ――最初にそれを思いついたときには、本論でここまで述べてきたような構想は 当然ありませんでした。むしろ恥ずかしながら、「 デジタル機器による大量録画 ができるようになったのだから、やってみよう」というぐらいの技術的好奇心に 促された軽い気持ちで、その対象を探したような側面の方が強かったように思い ます。この年の8月1日から31日までの1ヶ月間に録画した番組は、地上波と衛星 放送( ハイビジョン除く)を合わせて計110番組に上りました。そのうち不完全 な録画や、重複( 期間内再放送)などを除くと78番組。これが、僕の手元に構 築された最初の「私的アーカイブ」ということになります。 とはいうもののこの時の僕には、「 アーカイブを作る」という意識はあまりあ 3.「私的」にアーカイブを構築することについて
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    16 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 りませんでした。分析の対象として、複数の番組を録画しようとしていただけで、 「 番組」が群として存在することにこれといった「 意味」を感じてはいなかっ たのです。もちろん、「 アーカイブ」という言葉は知っていましたし、2003年か ら「 NHKアーカイブス」の事業が本格的に開始されていましたから、それも頭 にはありました。しかし、アーカイブといえば大規模な公共設備の事業イメージ がありましたし、一方でPC用語にも「 アーカイブ」はありましたが、概念的に それらを結び付けようという考えもありませんでした。 ですから僕の「 アーカイブ論」は、定義づけや理論的考察よりも、ある意味、 体験に先導された感が強かったといえるでしょう。それはまず「 情報が群れと なって、押し寄せてくる」感覚として表れました。それに気がついたのは、録画 した78番組のリストを作成している最中だったと思います。録画は、対象とし た各局をまんべんなく行ったのに、( 当たり前のことではありますが)それは決 して均等ではなく、「波」あるいは「塊」として「記録」されていったのです。 「 NHK」はその中で、最も大きな「 塊」を成していたと言えます。なにしろ録 画番組中の約7割( 54本)を占めていたのですから、この年8月のNHKの番組編 成は、いかに『 戦争』を中心に組み立てられていたかがわかります。うち33番 組が地上波。当時、衛星放送は三波ありましたが、それはあくまで地上波の補完 的な位置づけで、中心はあくまで総合・教育( 現・Eテレ)にありました。NHK =公共放送という存在そのものに、いかに「 戦争」が刻みつけられてきたかに ついては( 簡単ではありますが)既に述べた通りですが、そのことはこの国の 公共性( Publicness)の概念が、この「 記憶」を想起することと深く結びついて いることを表しています※6 。 その中心に「 塊」としてあるのが「 NHKスペシャル」です。NHKの番組制作 史のメインストリームとして扱われるこの番組枠は、今日でこそ多様なテーマ、 ジャンルに開かれてはいますが、そもそもは『 日本の素顔』『 現代の映像』に始 まるテレビ・ドキュメンタリーの系譜を正統に継承する流れに位置づけられます。 特筆すべきは、通常は日曜21時を中心に( シリーズ企画などは他の曜日にも) 放送されてきたこの番組が、2005年の8月は、6日から14日まで連続9日間「 戦 争」を題材にした異なるテーマの番組を放送し続けたという事実です。これだけ 連続して、しかも異なる形式・主題の番組を「 スペシャル」の名の下に放送し 続けたということは、極めて異例であることは言うまでもないでしょう。  
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    17ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 6日:被爆60年企画   被爆者命の記録 ∼放射線と闘う人々の60年∼(21:00-22:15) 7日:終戦60年企画   ZONE・核と人間(21:00-23:15) 8日:終戦60年企画   追跡 核の闇市場 ∼放置された巨大ネットワーク(21:00-21:58) 9日:被爆60年企画   赤い背中 ∼原爆を背負い続けた60年∼(21:00-21:53) 10日:終戦60年企画   コソボ・隣人たちの戦争 憎しみの通り の6年(21:00-21:58) 11日:終戦60年企画   そして日本は焦土となった ∼都市爆撃の真実∼(21:00-21:58) 12日:終戦60年関連企画 ドラマ「象列車がやってきた」(19:30-20:45) 13日:終戦60年企画   靖国神社 ∼占領下の知られざる攻防∼(21:00-22:13) 14日:終戦60年企画   戦後60年 靖国問題を考える(21:00-22:45) 15日:日本のこれから  戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本            (第1部:17:10-18:20、第2部:19:30-21:30、第3部:22:30-24:00) これらの番組群には、いずれも「終戦」あるいは「被爆」60年企画という冠が つけられていることから、「 一連のもの」として視聴されることを想定して、ラ インナップが組まれたことがわかります。また「 NHKスペシャル」の枠ではあ りませんが、7日から9日の3夜連続で「平和アーカイブス」と題して、「NHKアー カイブス」の特番が放送され、この枠以外にも幾つかの再放送番組も含めて、戦 争に関する過去の映像と向き合い、知識を更新する機会が時系列で積み重ねられ ていく編成になっています。 <平和アーカイブス> 7日:語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第一夜 原爆投下・その時何が(23:25-24:45) 8日:語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第二夜 被爆者たちの60年(23:00-24:00) 9日:語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第三夜 伝えたし、されど(24:15-25:35) ★「平和アーカイブス」以降、「環境アーカイブス」(2006)、「にっぽんくらしの記憶」(2007) とこのアーカイブス特別企画は続くが、「ともに、いきる」(2008)以降「教育アーカ イブス∼学び、伝え、はぐくむ」(2009)「女性のためのアーカイブ」(2010)と次第にトー ンダウンし、NHK スペシャルとの番組連動も少なくなる。 そしてこの一連の番組郡のピーク=「 波」は、15日の特別番組「 日本のこれ から 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本( 第1部:17:10-18:20、第
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    18 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 2部:19:30-21:30、第3部:22:30-24:00)」に持ってくるように、デザインされて いることに気づかされます。つまり「 戦争」をテーマにしつつも、各番組の眼 差しは「 当時の( 被爆に代表されるような)ナショナルなアジェンダ」に囚わ れないように現代の「 核」問題や「 国際紛争」、あるいは国内では地方の都市爆 撃に焦点を当てるなど、さまざまな論点に目が行くように編成に心を配り、それ が「 討議」に集約されていくように、大きな流れが「 設計」されているのです。 この、まるでハーバーマス的「 議論する公衆」を意識したような、押し寄せ てくる番組群のうねりには、一種の公共放送NHKの正統的な自意識の表れを見て とることができます。しかし、ここまで「 あからさま」にその「 目論見」が表 れた年は、後にも先にもありません。その意味でも2005年という年は特別であっ たと言うことができます。 ところで2005年8月の1ヶ月を通じてコンスタントに「 戦争」関連番組が放送 され続けたといえども、さすがにこの年も終戦記念日というピークを超えると数 は減り始めます。そしてそれとともに、テーマも変化します。それは「 日本人 の体験」を超えて、「 戦争」一般を問うシリーズに広がり、さらに「 戦後60年・ 歴史を変えた戦場」( 衛星第一)、「 アウシュビッツの真実」( 総合)といった番組 へ――すなわち「 8月15日以後」は、かなり意識的に、「 戦争」と「 現代社会」 の関係を問いかけるべく視野を広げようとしたのだと思います。 一方、民間放送もこの年は相当「 力」を入れました。例年、8月の被爆・終戦 企画にはドラマが多いのですが、大型特番だけでなく通常枠を使いながらドキュ メンタリーをシリーズ化し、あるいは娯楽番組の中に「戦後」「昭和」などのキー ワードを入れ込むなど、かなり丁寧な編成の跡を見ることができます。さらに民 放ならではのタレントを活用した情報番組的構成も、ヘビーな題材に対する視聴 者のハードルを下げる効果を発揮し、NHKの番組編成を補完する絶妙な役割を果 たした感があります。 こうして僕は、この年の「 戦争関連番組」78本のリストを作成し、その全体像 に向き合う経験を通じて、もはやそれが単に個別コンテンツの集積に止まるもの ではないことを知るに至りました。すなわちそれは、全体が一つの「 群」とし て表れ、特有の時間・空間軸との参照関係の中で、見る者に「波」あるいは「塊」 としてそのコンテクストを突き付けてくる、小さいながら「 意味を持った」集 合体として認識されたのです。 そもそもアーカイブとは何か。それは「 データベース」や「 ライブラリー」
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    19ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 といった類似概念と何が異なるのか――それまでも何度か、こうした議論に参加 したことはありました。そんな中で今も僕のベースを成しているのは、ミッシェ ル・フーコーを引いた「 ひとつの時代、ひとつの社会、ひとつの文化において、 <言われること>・<書かれること>の存在論的なステータスを具体的に統御し ているシステムのこと」( 小林康夫他編『 フーコー・ガイドブック』ちくま学芸 文庫、2006年、p.63)という定義です。それに従えば、アーカイブとは決して 普遍的なものではなく、特定の社会・文化との関係の中に置かれる( システム を成立させる)「秩序を備えたもの」ということになります。この2005年8月の録 画体験は、ある意味、この定義に具体的な実感を与えるものだったと言えます※7 。 3-2 情報秩序=出会い方を制御する/テレビとインターネット しかしこれまで述べてきたような「 秩序・統御」感は、この「 戦争番組群」 の場合、「 アーカイブ」として形成されたものというよりもむしろ「 テレビジョ ン」というシステムに備わっていたものであり、そこからある「 塊」を抜き出 したことによって顕在化したもの、ということもできます。果たしてこれらの 「 群」の意味は、そこに止まるものなのか、それとも「 アーカイブ化する」と いう行為によって、新しい「 何か」が加わる可能性があるのか――僕の興味は、 次第にそこに移っていきました。つまりアーカイブの秩序は、この場合2005年 8月のタイムテーブル( 時空間編成)を外したところに本来見えてくるもの―― 「 アーカイブ的」な人々との出会い方( メディア・コンタクト)とは何か、を 考えることに向かっていったのです。 手がかりは「 デジタル化」の中にありました。例えばインターネットを介し た情報サービスに目を移してみましょう。その「 情報」との出会いは、どのよ うにかたち作られているでしょうか。最近は、スマートフォンやタブレットPC をメイン端末としたアプリケーション・ベースのプラットフォームが若い人たち を中心に広まっていますが、ちょっと前まで( Windows95以来のこの十数年) は「検索」がその「出会い」を集約するスタートページの役割を担ってきました。 そのいわゆる「 ポータル・サイト」といわれてきたものが、どのような機能を もっていたのか――それは一度整理をしておいた方がいいかもしれません。なぜ ならばそこに、「 データベース」と「 アーカイブ」を分節する要素が散りばめら れている、と考えることができるからです。
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    20 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 1996年から2001年の春まで、ポータル・サイトの運営に携わっていたことも あって(当時は、あまり学問的な裏付けもなく、ですが)、人々がいかにして「知 識」と出会うかについて、経験則も含め、幾つか可能なパターンを考え、それを サービスとして実装するといったことを仕事にしていました。その時に気づいた ことは、「 人は、自分が既に知っていることとの関係において、新しい知識と出 会う」ということです。この「 既知」とは何かが結構厄介で、そこには様々な レベルがある――「 ポータル・サイト」の設計のキモは、要はそれをどう定め るかにあったわけです。 「 検索」サービスが最も日常的に用いる機能は、キーワードによる探索ですが、 実はインターネット初期、これを使いこなせる人は意外に多くありませんでし た。それは「そもそもどんな言葉を選んだらいいか」を考えることに、高いハー ドルがあったからです。キーワードが具体的に思い浮かぶということは、もう既 にその段階で、求める情報とそのキーワードとの関連性が、相当レベルでイメー ジできていることを示しています。従ってよく言われる「検索」の精度の実態は、 事前に形成されるイメージと検索結果とのマッチングの程度である、と言うこと ができます。 しかし(既に述べたように)ここには様々なレベルがあります。例えば「ポー タル・サイト」の「 キーワード検索」に並ぶ主機能に「 ディレクトリ」があり ます。これは、内包に対する外延というか、探索対象を言葉同士の関係に求める のではなく、カテゴリーという次元の違う意味集合から階層的に絞り込んでいく アプローチです。「ディレクトリ」はものごとを概念化、あるいは「分類」「整理」 して捉える発想を持つ人に適合する出会い方で、常に対象を集合の要素としてイ メージする習慣がある人に適しています。未知な対象についても、既知のカテゴ リーのリストと対照させることによって範列的に理解し、その理解によってカテ ゴリーを豊かにしていく作業を通じて、認識世界を広げていく人、と言ってもい いかもしれませんが、これは全ての人、全ての対象に当てはまるものではありま せん※8 。 初期( 1990年代)のインターネットへのゲートウエイは、「 キーワード検索 ( サーチ)」と「 ディレクトリ」の2つの機能で十分と思われていました。しか しそれはある意味、積極的に情報に向き合う人に限られていました。それが徐々 にメディアとしてのすそ野が広がるに従って、いわゆるマス・メディア的機能が ネットに求められるようになり、その結果、2000年代のポータルには「 コミュ
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    21ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 ニティ」「 コンテンツ」「 ニュース」サービスの充実が求められるようになったの です。 ポータル・サイトは当時、テレビとは異なる意味で「 パブリックな情報サー ビス」を目指していました。「 異なる」というよりも、アプローチは「 真逆」で あったといえるかもしれません。テレビは、同時的中央集権的( =同心円的) な情報の流れを作ることで、ナショナルな認識共同体を作ることに成功しました。 しかしそれがうまくいったのは、戦後のこの国の社会的なモードが、そのシステ ムと相補的な関係が築けたからです。しかしポスト・バブル期と、情報の流れの 多様化は、テレビが自らのシステムを成立させるために犠牲にしてきた「 それ 以外の情報接触のあり方」の可能性を開く場を求めました――その期待が生み出 したのが「ポータル・サイト」だったと言えます。 先ほどのアーカイブの概念に従って振り返るならば、「 ポータル・サイト」の システムは特定の統御の仕方を内包するものではなく、様々な「 出会い」に開 かれることを志向していました。今では、「 ポータル・サイト」も一定の役割を 終え、「 ソーシャル・メディア」なるものが、新たな期待の受け皿になっていま す。「 ポータル・サイト」が、その理想を実現させることができたか否かを評価 することは簡単ではありませんが、「情報との出会い方」に注目するならば、「テ レビ」→「ポータル」→「ソーシャル」という展開は、再び特定の統御の仕方に、 パブリックなメディアの原理を委ねる流れに戻ってきているように映ります。具 体的に言うならば、同時的中央集権的から多時間的島宇宙的秩序(コミュニティ 的秩序)へ、と言ったらいいでしょうか。 秩序を内包するという意味で「テレビ」も「ソーシャル・メディア」も、「アー カイブ的」であると言えます――とりわけその「 コンテンツの集積」という側 面に光を当てるならば( 一方、この論点に照らすならば、「 ポータル」は「 デー タベース的」であったといえましょう)。しかしそれでも「テレビ」も「ソーシャ ル・メディア」も厳密な意味で「 アーカイブ」であるとは言えないのは、時間 と空間の参照関係において、それはむしろ秩序本質が「 ネットワーク」性にあ るからでしょう※9 。 仮説的に定義するならば、「 ネットワーク」は時間を統御することによって利 用者の空間認識を作り出すのに対し、「 アーカイブ」は逆に空間を統御すること によって時間に対する認識を促す、システム概念であると言えましょう。さら に言えばこの定義が、「 アーカイブ」と「 ライブラリー」の間に一線を引くヒ
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    22 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 ントを与えてくれます。「 ライブラリー」は、その空間秩序自体の再生産装置で あるといえます。ポータルのディレクトリが実体化したものとしての「 ライブ ラリー」は、「 分類」という知的営みそのものに奉仕する機能に特化していま す。その点で、具体的な生きられる世界と僕たちの認識との関係で考えるならば、 「 ライブラリー」は「 データベース」に近いポジションに置くことができるで しょう。 3-3 過去と現在、そして未来が出会う――アーカイブの秩序原理 少し寄り道をしながら面倒な思考実験をしてみたのは、2005年8月の戦争関連 番組の録画とその整理作業をしながら僕が初めて感じた「 アーカイブ体験」と は何かを、はっきりさせたかったからです。 アーカイブが秩序性を内包すること、空間の統御が時間に対する認識を促すこ と――テレビの独特の編成から「 切り取って」アーカイブを作るということは、 すなわちその固有の秩序性を逆転させることに他なりません。テレビが「戦争」 を題材にして、同時的映像体験から創造を促す空間認識は、「 ナショナル」とい うフレームであるといえるでしょう。それが、戦後のこの国に誕生したメディア の「 パブリック」の次元における使命であり、だからこそこのテーマには、特 権的ポジションが与えられ続けてきたのです。 それを「 アーカイブ化」するということは、そこに別の秩序を与えることを 意味します――実はこのアプローチは、僕が始めたとか、偉そうに言えるもの ではなく、先行する取り組みがあったからこそ気づいたのですが――桜井均の 『テレビは戦争をどう描いてきたか』(岩波書店、2005年)が、まさにそうでした。 NHKのプロデューサーであった桜井は、実務を介して個人的に保管していた映像 データを素材に( 公式のNHKアーカイブスのプロジェクトとは全く別に)「 私的 アーカイブ」の構築を既に行っていました。この本は、まさにその「 テレビ」 の「アーカイブ化」の記録だったのです。 桜井がその作業を通じて発見した「 秩序」は、「 戦争を語ること」の時間的変 遷でした。「 モノローグからポリローグ、そしてさらなる閉塞へ」という流れは、 まさにその時々刻々移り変わる社会的コミュンケーションのかたちと、NHKの制 作者たちの意識( あるいは無意識)の構造的カップリングの様相を明らかにし たもので、この「 戦争」表象の集積体は、まさしくテレビが「 介入」し続けて
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    23ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 きた戦後の「歴史化の鳥瞰図」であったと言えます。 僕は翌年、光栄にもこの本のレビューを書かせていただく機会をいただきまし た。そこでうっかり筆が滑った僕は、こんな批判的な一文を書いてしまうのです ――「 この作業はもちろん、桜井自身が、ドキュメンタリー制作者であるが故 に成し遂げられたものである――しかし、一方で我々は、この作品が抱え込んだ もう一つの『閉鎖性』に気づかずにはいられない。すなわち、この作品自体が『制 作者の自意識』を辿る遍路(モノローグ)なのである」(『東京大学大学院情報学 環紀要 情報学研究』No.70、2007年)。つまりこの桜井の仕事は、テレビ制作者 の空間を設定したからこそできたものだと。 これは決して否定的な意味ではなく、むしろそのことによって僕は「 アーカ イブ性」とは何かという問いに答える一歩が踏み出せました――実際その後の多 くの「 思考実験」の背後には、これをきっかけに開かれた、桜井との対話的実 践があったということを、触れておかずにはいられません。 すなわち「 テレビ番組のアーカイブ化」とは、制作者−視聴者( 送り手−受 け手)の分断によって形成された空間秩序を乗り越えることと僕たちは考えまし た。桜井はその映像を素材ごとに細かく見つめ、そこに写されている対象を拾い 出し再編集することを通じて、すなわち映像制作そのものを「アーカイブ実践」 として、制作者空間の無意識の中にある「 時代」をあぶり出す方法を提示しま しました。一方、僕はテレビ番組を見る者が、それを通じてどのような時間体験 をするのか、を分析するアプローチを選択しました。 テレビを見る者は、常に「 現在」の位置にいます。しかしその者がテレビの モニターを介して出会う映像は、必ずしも「 現在」のものとは言えません。す なわちその地点は、「 いま」と多様な時間( 特に「 過去」)が遭遇するインター フェイスであると言えます。その観点から、2005年8月の「 戦争番組群」の時間 表現を分析していきました。するとそこには4つのパターンが浮かび上がってき たのです。それはドキュメンタリーだけでなく、ドラマや情報番組を含むジャン ルの枠を越えて表れていました。 Ⅰ <再現> 現在を消し、超越的な位置から、過去を再構成する。 Ⅱ <検証> 現在の位置から、過去の経緯、妥当性、因果性を問い、評価する。 Ⅲ <想起> 個人の記憶のレベルで思い出し、語る。記録映像は妥当性の保証。 Ⅳ <参照> 常に主題は現在を定位する。記録映像はその「現在」に意味を付与する。
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    24 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 <再現><検証><想起>は、「 過去」を作り出す行為です。ただし、<再現 >は過去によって過去を作り出すのに対し、<検証><想起>は、その立ち位置 は現在にあります。一方<参照>は逆に、過去によって<現在>の意味を保証す る作業であり、<検証>の対極にあります。<想起>は常に個人の立場で行わ れるのに対して、他の3つは、その個人の立ち位置を超越する、あるいは客観的、 集団的認識の地平を作り出します。 <再現>は主にドラマの形式を要求します。手元にない「 過去」の資料を、 想像=創造の力を借りて、イメージとして作り出すのです。すなわち単に過去の 位置にとどまっているのではなく、見る者の個人的な印象の力を借りている―― その意味では、<想起>の対極にあるといえるかもしれません。一方<検証>に は資料映像、<想起>は個人の声( 証言や語り)が主に用いられます。それに 対し<参照>は現在のルポ映像が前景化し、資料や証言が後景でそれを支える関 係で組み合せられます。 番組はこのように多様な方法で、あるいは時に特定「 過去」と「 現在」の映 像と見る者のイメージを結びつけ、そこに「 印象」を生み出します。それが< 再現> ‐ <想起>の軸を中心に構成されればそれはドラマになり、<検証> ‐ <参照>の軸を中心に構成されればドキュメンタリーとなります。昨今の、「 戦 争」をテーマにドキュメンタリーとドラマの形式を併せもったドキュ・ドラマの 手法が多く用いられるといった現象も、それが「 過去」の映像や「 証言」が乏 しくなった現実の鏡である一方で、客観化の困難を<個人>の想像の強さで補お うという制作者の意識/無意識がそこに働いている、ということから説明可能に なります。 また、一つの番組内に上記の多様な要素が織り込まれればそれは、バラエティ 的になります。情報番組の場合には、それを構成するバラバラのシークエンスは、 MCの語りでつながれていくことになりますが、現在のこれらの番組の多くには、 客観化されたナレーションではなく、MCのパーソナリティが前景化した「 個人 の声」が用いられています。これは<想起>が、様々なモードを束ねるというか たちで、一段上の(メタな)機能を果たしているということを示しています。 このように「 過去」を「 現在」に描く番組の中で、<想起>や<再現>が強 化されているということは、「 記憶」の活性化があくまで個人のベースに止まり、 社会化しにくい現状を表しているといえます。 一方、2005年8月の「戦争番組群」の中で大きな「波」を形成していた「NHK
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    25ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 スペシャル」の基本形式は、( 12日のドラマ『 象列車がやってきた』は除く)< 検証>と<参照>を基本パターンとしたドキュメンタリーにあります。しかしそ の中にも、個人のレベルにおける「 印象操作」ともいえる技法が多用されてい ました。それはスチール( 静止画像)や主題に直結するショット、効果音の反 復的使用です。これらは「 印象」の「 象徴化」を促し、記念碑的な像を、見る 者の心の中に刻みこみます。 本来、記憶の社会化を促すべきこれらのジャンル表現の中で、こうした手法が 多用されるということ、すなわちイメージの反復の力を借りて象徴化が促進され るということは、それ自身が「 シンボル」として機能しづらくなっていること のメタ次元での表現であり、むしろそれは象徴の負の側面である具体的な現実、 リアル世界との関係の疎遠さを強く表してしまう危険性を示しています。 フロイトはこうした機能に「隠蔽記憶」(リアルな経験の想起に蓋をする:『フ ロイト著作集6』)と名づけました。このショットあるいは効果音が、「 沈黙を作 り出す」ことに働きかけていること自体がまさに「象徴的」であるといえましょ う。例えば、昨今の社会を覆う「 右傾化」の意識を、この「 象徴化」の負の部 分が過剰となった結果と捉えるのは、行きすぎた解釈でしょうか。 3-4 ネットワーク化する番組 こうした番組を介した「 過去」と「 現在」の出会いのパターンは、決して単 体の番組に閉じているわけではありません。むしろそこにこそ「アーカイブ化」 の意味が表れてくる――例えば、<想起><検証><参照>に表れる、「 過去」 と「 現在」の往還は、「 見る」という行為が常に現在に縛り付けられているとい う避けがたい現実によって、番組の殻を破って、複数の映像や声を結びつけます。 「アーカイブ」的視聴、すなわち番組に「群(むれ)」として出会うということは、 テレビが与えたリアルな時空間秩序を超えて、これらのパターンを顕勢化、意識 化する機会を与えてくれるのです。 2005年8月の番組編成についても、制作者たちはこうした番組を超えた関係 性を意識していたことは容易に想定できます。そして一種の「 集合体」として、 これら番組群と向き合うとき、そこには明らかに他の番組との関係自体を主題化 した、さらに言えば、他の番組の要素を折りたたみその中にインデックスとして 取り込んだような特別な番組の存在が浮かび上がってきます。桜井はこうした番
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    26 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 組のことを、「 ハブ番組」と呼びました。そこを基点に、様々な番組との間に関 係の糸が結ばれていく、それ自身が「アーカイブ」的でありかつ、「アーカイブ」 に探索に入る入口の役割を担う番組です※10 。 僕はこの年の番組群の中に、それを2つ見つけました。一つは、NHKスペシャ ル『 終戦60年企画 ZONE・核と人間』( 7日21:00-23:15)。もう一つは、TBS放送 50周年記念 戦後60年特別企画『ヒロシマ』(5日18:55-21:48)です。 『 ZONE・核と人間』は、極めて高い象徴性を持った番組でした。ZONEとは放 射能に汚染され、立入禁止となった区域のこと。この番組は、かの戦争における 原爆投下以来、世界中に数えきれないほどに広がった「 ZONE」を訪ね、それを 結びつけていきます。すなわちこの番組では広島・長崎から現代へ、広島・長崎 から世界へという時空間の拡張そのものが企図されているのです。従ってそこに は外観が与えられていきます。その点で言えば、これははっきりと「 2005年的 現在」における「 核」に対する認識を統御する「 設計・デザイン」が意識的に 施された番組でした。 その特徴は、以下の様に整理することができます。 第一に、「 資料映像」は構成の主役を担っている点。この番組はインタビュー や現在の取材映像よりもはるかに大量の、過去の番組・作品からの引用によって 作られています。しかも特徴的なのは、それらを素材として結合する際に、音楽 の「 シンコペーション」、フランス語の「 リエゾン」のように連続性やリズム感 覚が意図的に乱される特殊な記述的連辞( C・メッツ)が用いられ、また「 イン サート」「 ファスト・カット」「 フラッシュバック」など、結合対象間の意味関係 を崩すトランジションも目立つことです※11 。この個々の映像が、番組の内外に 張り巡らされるリンクのノードであることを感じさせる仕掛けは、僕たちの視線 をわざと振り回し、常套句的な象徴性を「 追い払う」かのようです。それはこ の番組「 ZONE」の主題が、未規定のままこの「 戦後」史の中で放置され続けて きた「 核の意味」の空虚さを、確信犯的に「 告発」することにあると読むこと もできます。 もう一つは、番組の中における時間の経過に関する特徴です。リニアさは消去 され、むしろここでは、中盤の折り返し点を境に、前後半が対照を成すように組 み立てられています。この時間が空間にように構造づけられる方法によって、前 半「ZONEが生成されるプロセス」の各点が、後半の「ZONEの現在性(共時性)」 に対称的に/対照づけられるのです。その「 折り返し点」の役割を引き受ける
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    27ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 のは、沢山の爆発のきのこ雲。この典型的な「 戦争」の象徴映像が、逆にこの シンメトリカルな構造によって、現実世界に引き戻され、番組を見ることによっ て、記号のピラミッド(D・ブーニュー)の上昇/下降の「連続する記号過程」 の体験が促されるようにデザインされています※12 。 このきわめてコラージュ的かつ、幾何学的に配置された映像構成は、「 フクシ マ」を経験した2013年の現在に見直すとき、さらに新しい「 印象」を僕たちに 呼び覚まします。すなわち『ZONE』は、(2005年も、いまも同じく)現在進行形、 あるいはリニアな時の流れから逸脱した、もう一つのメタ時間の可能性を、僕ら に開いて見せているのだろうと思います。 『 ヒロシマ』は、同様に「 ハブ番組」と言いましたが、どちらかといえば「 作 品的」である『ZONE』とは全く異なる、きわめて「テレビ的」に作られた「番組」 であると言えます。筑紫哲也と綾瀬はるかという2人のナビゲーターが、テレビ スタジオに模した「 原爆ドーム」前の広場で様々な映像を繋ぎ進行していく大 型番組。TBSのオフィシャルサイトでは「 原爆開発や投下決定に関わった当事者、 被爆者の方々の貴重な新証言、膨大な数の史料を集めたドキュメント、さらに証 言から忠実に制作した再現映像やCGなどによって、60年目に初めて明らかにな る事実から人類最大の悲劇の『全体像』を描いていく」と紹介されています。 制作者たちはこの番組を「 ドキュメンタリー」と明言していますが、その形 式はまさにジャンルの混交の極みという意味でバラエティ的であり、かつ<再 現><検証><想起><参照>の4つのモードが複雑に入り乱れつつ、ナビゲー ターの語りの現在性(「 いま・ここ」)に回収されるという、まさに「 時間性」 そのものが、意識されないうちに主題化されていく「アーカイブ的」構成になっ ています。 しかし『 ZONE』では意図して「 散文的」に素材の結合が仕立てられたのに対 し、『 ヒロシマ』はナマの「 語り」による直線的な流れの幹に、各コーナーが枝 葉のように絡み付く構造になっており、その意味では一見「ふつう」のネオTV的 ( U・エーコ)な閉じた予定調和的番組ではあります。ところがそれは、最終場 面に仕掛けられた偶然性によって反転します。「 ハロルド・アグニュー( 原爆投 下機に搭乗していた)と、被爆者の当事者同士の対話」が、かみ合わず、決裂す る瞬間に、一気に(『 ZONE』とは異なった手法によって)それまでの番組が与 えてきた意味は宙に浮き、結論なき不安な状態に見る者は陥れられるのです※13 。 『 ZONE』の未規定性、『 ヒロシマ』の用意された大団円の決裂は、少し引いて
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    28 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 見るならば、意味の「 開かれ」に他ならず、時間的なパースペクティブでいう ならば、結論の先送り=未来の解釈者を招き入れる作りであると考えることもで きます。これらが「 ハブ番組」であることの意味は、それは「 過去」に対して だけでなく、「 現在」を介して「 未来」のアーカイブ実践( 再編集、視聴など) への可能性を担保していることにも、見ることができるでしょう。 その意味の「 開かれ」についてさらに掘り下げるならば、『 ヒロシマ』はか なりわかりやすく、また番組内外とのリンク関係についての可能性を示した、 チャレンジングなプロジェクトであったと言うことができます。まず冒頭20分 の、まるで映画の予告編を思わせるイントロダクション。この映像は、その大 半が本編のどこかで使われた映像であり、出現順や語りとの対応関係は、必ず しも本編の文脈に従ったものではないものの、あたかも3時間の番組の中に短縮 版と本編というコンテクストが異にする2つの「 ヒロシマ」が収められているか のように作られています。また再現シーンの多くが、実はBBCが制作した別番組 『 Hiroshima』からの( 共同制作関係を結んだ上での)利用であるという点にも 驚かされました。さらには別の目的で制作されたCGが、あたかもこの番組の意 図に従って用意されたものであるかのように任意に組み込まれるという特徴も見 られます。 こうした各素材に備わった関係性のノードとしての性質は、作品として非自律 的であることを隠さないことで『 ZONE』に近い役割を果たしているという点で、 「ハブ」的役割を果たしているとは言えるものの、それは「過去」と「現在」(あ るいは「 未来」)の軸よりも、共時的な関係に重心があるようにも見えます。特 に(2005年当時、この点についてははっきりとした言及はありませんでしたが) 同じ8月に同じ局で放送されたドラマ『 広島』( 29日21:00-23:24)とは、明らか にその対照を意識した配置がなされており、そこでは番組間の「ネットワーク」 性が意識されていたことは間違いないでしょう。 「 ハブ」番組の存在は、かつてのテレビ・システムにおける時空間編成を超え た、「秩序」の可能性を示唆してくれます。それは一方では「過去」と「現在」(あ るいは「 未来」)との関係を開き、他方では「 現在」において様々に並列しうる 表現を結びつけます。「 アーカイブ」と「 ネットワーク」――この段階で、デジ タル時代( ないしはポスト・テレビ時代)について何かを言うことは早過ぎか もしれませんが、少なくとも「 テレビ」ではないメディアによる公共性の実現 を考える足がかりを、2005年というこの年に見ることはできると思います。
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    29ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 3-5 2006年以降――そして徐々に「戦争」は消えていく 戦争関連番組は2005年以降も、数の上では及ばないにせよ( それ以前よりも はっきりと)意識して作られ続けます。もちろんそこには( 特にNHKにとって は)重要な制作環境上の背景事情があったのですが、それ以上に「 60年」を契 機に問題が明確に示され、それを継承していく流れができたということの意味は 大きかったといえます。 特に8月前半は、より明確な問いを「 編成」の核に据えるようになりました。 2005年の「 ピーク」に(『 靖国神社』などによって)提起された「 戦後処理」 の問題が、特に15日に向けて主題化されるようになったのです。 ● 2005 年 8 月放送 ▶ NHK スペシャル「靖国神社∼占領下の知られざる攻防」(13 日) ▶ NHK スペシャル「戦後 60 年∼靖国問題を考える」(14 日) ▶ 日本の、これから「アジアの中の日本∼戦後 60 年・互いの理解をどう深めるのか」  (15 日) ● 2006 年 8 月放送 ▶ NHK スペシャル「日中戦争∼なぜ戦争は拡大したのか」(13 日) ▶ NHK スペシャル「日中は歴史にどう向き合えばいいのか」(14 日) ▶ 日本の、これから「もう一度話そう、アジアの中の日本」(15 日) ● 2007 年 8 月放送 ▶ NHK スペシャル「A 級戦犯は何を語ったのか∼東京裁判・尋問調書より」(13 日) ▶ NHK スペシャル「パール判事は何を問いかけたのか∼東京裁判・知られざる攻防」  (14 日) ▶ 日本の、これから「考えてみませんか?憲法 9 条」(15 日) 「 靖国」「 日中関係」「 東京裁判」は、いずれもこの60年間議論し尽くされてこ なかった「 戦後」処理を代表する問題で、13日からの3日間、2005年から2007 年の間、ほぼ同じスタイルで( ドキュメンタリーから、15日の一般視聴者を交
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    30 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 えた討論番組につないでいく)特別編成が採用されたことは注目に値します。特 に13日のドキュメンタリーに用いられた「 知られざる攻防」という言葉は、そ の当時の対立項を明示するという意味で、<検証>的アプローチを宣言するもの であり、それを徐々に同時代的問題に軸足を移す<参照>のモードに移行させて いくという流れを作り出しました。それは、もはや一方向的なテレビ・システム の情報の流れを超えて、「 コミュニケーション・デザイン」的な試みであったと さえいえましょう。 また戦争体験者の高齢化に伴う切実な問題として提起された「 証言者がいな くなる」ことへの危機意識はさらに煽られていきます。それを受けて2007年に は、放送した戦争関連番組を一覧表示したWebサイト「 Sengo62」と「 証言記 録」を蓄積していくプロジェクトが進みました。こうした動きは2005年以前には、 10年刻みのメモリアル・イヤーにおいても全く見られなかったことです。その 意味で、「 60年」を機とした戦争関連番組の大量生産は、テレビ的なアプローチ からアーカイブ的なそれへと、「 戦争」を問うかたちの変化を促す契機になった と言えます。 こうして2005年を契機に生まれた「 過去」と「 現在」との出会いの芽は、し かし残念ながら、翌2008年を境にして徐々にトーンダウンしていきます。その きっかけは北京オリンピックにあります。4年に一度開かれるこの「 祭」は、夏 季のテレビ番組の編成を乱し、前後との連続性を途絶えさせます。実際3年間続 いた編成パターンは崩れ、「 戦争証言プロジェクト」などWebをベースとしたも のを除いて、縮小されていきます。しかし8月以外での戦争関連番組のオンエア が増えるなど、テレビと戦争のこれまでの定型的な向き合い方に変化を与える きっかけにもなったと言えます。 2008年の空白以降、「 証言の希少化」の危機はさらに切実なものになり、その 一方で「 新たな資料の発見」が「 過去」との出会いを開くケースの中心となっ ていきます。ところが当然ながら「 資料」だけで映像を埋めることの困難は大 きく、事実2009年8月9日から11日まで放送された NHKスペシャル『 日本海軍 400時間の証言』、10日の『 最後の赤紙配達人∼悲劇の 召集令状 64年目の真 実』( TBS)などは、ともに埋もれていた資料の発見を契機に作られ、事実の凄味 を認識させる良質な企画ではありましたが、<再現>ドラマに頼らなければなら ない苦しさを露わにしました。 2010年からは、直接の証言を得ることがさらに難しくなり、番組数の減少に
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    31ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 加え、戦争経験の次の世代にフォーカスを当てるか、あるいは「 記録」から< 検証>へ向かうプロセス自体を取り上げるといった比較的地味な印象が否めなく なりました。そして2011年――震災後の最初の夏は原発事故と、かの戦争にお ける被爆との関係を問う企画が中心となり、2012年のロンドンオリンピックで、 「夏=被爆・終戦の季節」といった印象は消えていきます。 この原稿を書いている2013年春現在、この先「 戦争」をテレビがどう描いて いくのかについて、断定的なことは何も言えません。しかし少なくともその対象 との距離は今後も開く一方であることは間違いなく、「 過去」にしっかり出会う ことができない僕たちが、具体性を欠いたイメージに頼って、何か誤った判断を してしまう危険性は一層高まるでしょう。その点において、2005年から数年に わたる、まさにテレビ・システムからアーカイブ的な視聴体験への移行が、その 後やや途切れ気味に見える現状は、大いに気になる事態です。 4-1 「戦争」的パースペクティブの死角 既に述べたように僕は、2005年8月に放送しされた戦争関連番組の録画による 「私的アーカイブ」構築作業を通じて、テレビ・システムが有する秩序とは、「同 時かつ一方向性」という時間の統制によってナショナルな空間を創造するもので あることを確認するに至りました。そしてその番組群の主題は分析を進めるに 従って、徹底的に国家・国民的パースペクティブ自身への問いを志向しているこ とを実感していったのです。 それは確かに戦後のテレビ的公共圏におけるアジェンダとしては、適合的で あったといえるかもしれません。しかし今、「テレビ」から「ソーシャル・メディ ア」へとメディアの重心がシフトしていく社会の中で( そして「 戦争」という 「 過去」が遠ざかる中で)、果たしてそれに縛られていることが必然であるかど うか、それ自体が問われるべき課題になりつつあるとも言えます。 この問い直しは、幾つかのステップに分かれます。まず、かつてのテレビ時代 における「 戦争」への問いに死角はなかったか。それは、被爆・終戦∼戦後処 理がナショナルなアジェンダとして特権的に扱われていた一方で、「 消えて行っ 4.「地域」という空間枠の設定――アーカイブ的秩序原理へ
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    32 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 た過去」はなかったのかという問いです。これこそまさに、本論の主題である 「 集団的( 社会的)に記憶を失う現象」に対する検証であり、テレビが作り出 した象徴が、隠蔽記憶として働いていなかったかを考えることでもあります。 「 アーカイブ」的な秩序原理がテレビとは反対に、空間の規定から時間認識の 創造へ向かうとするならば、ここで必要になるのが、「 ナショナル」に代わる空 間枠の再設定です。移行期の端緒( 2005年)において「 ハブ番組」が試みたそ の組み換えは、「 ナショナル→グローバル」という視角の拡大でした。『 ZONE』 はその典型であるといえますが、結果そこでできたことは、「 きのこ雲」という 象徴の異化、意味の宙吊りに止まるもの――残念ながら、僕たちはそれに新たな 意味を与えることができませんでした。それは『 ZONE』の表現と、それを受け 止める主体のリアリティとの間にずれがあったからではないかと思います。 「 グローバル」な死角は、ある意味「 ポータル」の無規定性を要求した時代に 対応するものだったと言えます。「 ナショナル」な視角のオルタナティブは、そ れとは逆の方向、すなわち記号のピラミッド( D・ブーニュー)で言うならばさ らなる象徴化を求めるのではなく、リアルな現実との関係性を構築するインデキ シカルなダイクシス(「あれ」「これ」といった指示詞が機能する空間)を想定す ることにあったと考えるべきだったのです。ちなみにこの転回は、「 ポータル」 から「ソーシャル・メディア」への志向の変化にも対応します。 ところがこの転回は、インターネットの普及に先んじるかたちで、「 テレビ」 「 新聞」といった既存のマス・メディアに対するオルタナティブを求める動き の中に、1990年代後半から表れていました。ケーブルテレビやコミュニティ FMをベースとした「 地域」とその担い手である「 市民」によるメディア実践 は、マス・メディアの肌理の粗さを補完する可能性を持ったものとして、研究者 たちの注目を集めていました。僕自身もそうした活動を、かつての「 放送」が 理想とする民主主義的公共圏の実現に向けたベクトル上にあるものとして見なし、 関心を寄せていました。当然そこでは「 誰が」「 どんな目的で」それを行うかは、 極めて重要な意味を持ちます。 その中で2005年に出会ったのが、鹿児島県鹿屋市を中心に大隅半島の自治体 を結ぶNPO法人によるラジオ局( おおすみFMネットワーク)設立の話でした。 地上波(AM)の中継局が廃止となり、電波が届かなくなることに危機意識をもっ た人々が、文字通り「 手作り」の放送局を作る――この取り組み自体がまさに オルタナティブな動きであり、僕はそれの応援団の一人として2006年の夏、訪
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    33ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 問することになりました。鹿屋といえば、現在も海上自衛隊の航空基地があり、 かつては「 特攻隊出撃」の記憶と記録が残された町でもあります。偶然といえ ば偶然ですが、この土地で2つの関心が出会ったわけです。 鹿屋には、航空基地史料館というオフィシャルな「記録」の保管庫だけでなく、 多くの戦争の遺構が遍在していました。しかし「 そこに基地がある」にも関わ らず、「 よそ者」の僕には、その記憶の影は薄いように感じられました。資料館 に所属する「 語り部」の話を聴き、街あるきをする中でも、鹿屋の「 現在」の 風景と、ややステレオタイプ化された「特攻隊」や「地域空襲」、「占領軍上陸」 の物語との間には、どうも認識フレームのずれがあるように思われたのです。 そんなある日、ラジオ局を支える地元の女性たちの集まりがありました。そこ に招かれた僕は、不思議な経験をしました。その会は、そもそもはその仲間の 一人である地元の朗読サークル「 ポエム」の中西久美子の「 語り」を聴こうと いう目的の集まりだったのです。その日、中西が「 そら」で語ったものこそが、 僕がこの地で「 発掘」研究を行うに至ったきっかけとなった物語、竹之井敏作 『 冬の波』でした。昭和19年( 1944年)2月6日、おおすみ半島の入口である垂 水港と鹿児島市を結ぶ地域の大動脈「 垂水航路」で、「 第六垂水丸遭難事件」と 呼ばれる沈没事故が起こりました。それは海難審判所( 元・高等海難審判庁) の記録によれば、死者464名という一般船舶の事故としては史上二番目に数え られる大規模な事故でした( 高等海難審判庁『 海難審判制度100年史』1997年、 p.109)。物語は、その犠牲者にまつわるものだったのです。中西の話は、初め て聞いた僕の胸に深く沁みるものでした。 しかし驚いたことは、その「 地元地域」の物語を、そこに暮らす人のほとん どが知らなかったのです。物語というよりも、その事実そのものが、地域の人々 の「記憶」から消えてしまっていたのです。ちょうど2005年8月の戦争番組の「私 的アーカイブ化」を進めていた僕には、この物語と人々の反応が、奇妙なコント ラストに映りました。「 口承」という古典的な伝達方法、「 記憶」が失われると いう現実、昭和19年2月という時期、そして「 あくまで個人的に語られる<死> の理不尽さ」という物語内容自体も含め、ここで出会ったことがらはテレビやマ ス・メディアを通じて言わば刷り込まれてきた「 戦争の記憶」とは、激しく異 質なものに思えたのです。 この段階では、まだそれは「 研究的関心」というには程遠いおぼろげなもの に過ぎませんでした。しかしこれまで前提としていた、マス・メディアを支える
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    34 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 東京を中心とした時空間から遠く離れたこの「 おおすみ」という地域と、この 「 記憶」をめぐる状況にはなんらかの関係があるように思えたのです。実際こ の地域は基地だけでなく、ハンセン氏病の医療機関など、ある種僕たちの日常か ら遠ざけられたものや、国立の体育大学、あるいは( 少し離れていますが)内 之浦の宇宙空間観測所など国費が投入された施設が置かれています。それは僕た ちの常識の中にある「 地方」ではなく、「 ローカル」の中に「 ナショナル」が挿 入されたいびつな風景に見えました。 この印象が、僕に「 そもそも、地域とは何か」という問いを芽生えさせたの です。それは「 ナショナル」は、マス・メディアの原理( 時間的統制)に従っ て作られた空間イメージであり、「 ローカル」はナショナルを補完するするため の、あるいは下位概念的に置かれた空間イメージに過ぎない――すなわち、積極 的に定義されてこなかったのではないか、という現実に、はたと気づかせてくれ ました。 「 地域社会の崩壊」「 地方の疲弊」といったことがらが、近年しばしば論議の対 象となります。しかしその実態は、人口の流出、産業拠点の撤退、地域経済の空 洞化から起こっているもので、それは「ローカル」(地域)に閉じた問題ではなく、 「 ナショナル」に依存することによって成立していた「 ローカル」という、そ の従属関係に入った亀裂、すなわち「 マス社会」のメカニズムの行きづまりが もたらした現象だったのです。テレビ時代の黄昏自体も、この「 マスの自壊」 の文脈にあります。そう考えると、この空間の秩序をトップダウンではない方法 でどのように措定しうるかは、「 オルタナティブ」な社会システムの構想の核心 に近いところにあることがわかります。  4-2 第六垂水丸遭難事件が提起する「記憶システム」の問題 ところで僕たちは、「 社会」が「 記憶システム」として形成されているという ことを前提にしてきました。ところが「 第六垂水丸遭難事件」という出来事を きっかけに、いざこの地域の人々の「 記憶」に関する聞き取り調査を始めてみ ると、それ自体が極めて「不確かなもの」として立ち現れてきたのです。 まずは、この事件が起こった昭和19年という年に注目しました。それは同時期、 「 戦争番組」の分析を並行して行っていたことと深く関係しています。既に述 べてきたように、テレビ番組の主題においては「被爆」「終戦」あるいは「空襲」
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    35ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 といった出来事には特別なポジションが与えられ、それらを中心に「あの時代」 のイメージを<想起>させるようにデザイン( 編成)が施されています。これ は「8月ジャーナリズム」と呼ぶべきイデオロギーにもつながっています。 しかし、少し引いた位置から歴史を見るならば、「 かの戦争」には満州事変を 端緒とする「 15年戦争」というフレームを与えることもできますし、さらに言 えば日清・日露以降一貫して築かれていった対外政策の最終局面として考えるこ ともできます。にもかかわらず、この戦争のイメージを、「昭和20年8月」の「本 土における出来事」に集中させるということになれば、そこからは様々なことが らが「 抜け落ちてしまう」弊害が生じてしまいます。例えば加害の問題、沖縄 のこと、旧日本領有・統治地域で何が行われていたのかという問い、アメリカ及 び大陸以外の諸国との関係、戦争を支えた経済など――これらは特に2005年以降、 NHKが力を入れてきたテーマではありますが、それでも全体から見れば周縁的な 題材たらざるをえません。 では、実際の昭和19年、特に「 第六垂水丸」が遭難した2月とは、どんな状況 だったのでしょうか。当時の新聞を見ると、既に前年( 18年)2月のガダルカナ ル撤退以来、戦局は後退期に入り、同年9月には「 絶対防衛圏」の設定を発表し ます。19年に入り、2月にはマーシャル諸島、ラバウルが主戦場となり、前線で は極めて危機的な状況が誰の目にも明らかになっていきます。にもかかわらず、 ちょうど「 遭難事故」が起こる前日の5日、帝国議会では「 必勝決議案」が可決 され、これにより国家総動員体制が加速します。すなわち産業・生活の全てが戦 局に巻き込まれていく流れが決定的になるのです。それは、昭和20年の悲惨な 状況に向けて転がり落ちていく現実と、ひたすら「 勇ましい」言葉を連ね続け るメディアとの乖離が激しくなる契機だったといえるでしょう。全体に高揚感が 強く、切迫感に乏しい――この論調は、中央紙も地方紙にも同様に見られました。 当初僕は、「 垂水丸遭難事件」 の忘却は、こうしたメディア状況 の中で、いわゆる「 言論統制」 の影響を受け「 消された」もの と考えていました。そう考えた 理由は、県紙「 南日本新聞」が、 この事故から40年後( 昭和59年2 月6日)に掲載した記者( 木場隆 第六垂水丸
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    36 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 亮)のコラムでも、戦時下におけるメディア操作の影響について記されていたか らです。しかしその先入観は、あっという間に崩れました。実際にマイクロフィ ルムを確認してみると、「南日本新聞」の前身である戦前の県紙「鹿児島日報」は、 事故後ほぼ1週間にわたって刻々と捜索状況や事故関連の記事を掲載し続け、中 には伏せるどころか、この出来事をむしろ積極的に戦意高揚に結びつけようとし ていた事実がわかったのです。   プロの記者の記憶すらも書き換えられてしまう――しかも、戦後において―― それはどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。僕たちは、現地で聞き取り 調査を行うことにしました。応援するFMラジオ局の協力を得ながら、その濃淡 に限らず、この事故を記憶している人を「 人づて」に探していきました。その 結果、戦後生まれのほとんどが、「 知らない」と答えるなか、以下の19名がイン タビューに答えてくださり、僕たちはそれを映像に収めました。 ◎乗船・生存者 (性・住所・生年)  NR(F・垂水市・S6)、KE(F・鹿屋市・T15)、US2(M・鹿屋市・T11) ◎遺族  KM1(M・垂水市・S7)、WN(F・鹿屋市・S7)、WN の弟  ST(F・鹿屋市・S3)、US1(F・鹿屋市・S5)、FK(F・鹿屋市・T9)、  MS(M・鹿屋市・S5) ◎郷土史家・記者  NN(M・垂水市・T15)、NT(M・垂水市・T15)、TT(F・肝付町・T15) ◎目撃者・その他  SS 夫妻(MF・垂水市・T15、S4)、KM2(M・鹿屋市・S5)、  TX(M・垂水市・S8) ◎次世代・当事者の子  OH(F・鹿屋市・S33)、MK(F・垂水市・S29)、NK(F・鹿屋市・S21)
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    37ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 僕はまずこの聞き取り調査の中で、彼らが「 昭和19年」という年をどのよう に記憶しているのか尋ねました。ところがほとんどの人からは、その答えが得ら れません。戦時下の生活で思い出すことを尋ねても、その言葉が指し示すものは、 彼らの地域にも空襲や食料難などの危機が直接的に感じられるようになった、昭 和20年になってからのことなのです。しかもそこには「 おおすみ」という地域 特有のことがらは少なく、その多くはどこかで聞いたステレオタイプのものでし た。記憶の「昭和20年」への集中は、メディアの中だけでなく、市井に生きる人々 の心の中でも生じていたのです。 ところが彼らの「第六垂水丸遭難事故」に関する記憶は、こうした「隠蔽記憶」 とは独立して存在していました。質問の冒頭から勢いよく語り始める人もいれば、 おぼろげな記憶を一つずつ確認しながら語る人もいましたが、例え後者でも、記 憶を呼び覚ます「スイッチ」のようなものがあるのか、ある時点――例えば「そ の場所」に立つこと、あるいは「 写真」など資料を提示したことがきっかけに なって、それ以降はまるで「 昨日起こったこと」のように、ディテールが溢れ 出したのです。 すると不思議なことに、それからの彼らの語りは、その「 出来事」からまる でリンクを辿るようにいろいろな話題に展開し始めます。「 事故に至るプロセス、 事故後何があったか」「 事故に対する印象」「 身近な死に対する思い」など、事故 をとりまくことがらから始まり、「 当時の生活」「 当時の価値観」「 家族・社会関 係」など背景事情、そして「なぜそれをこれまで語らずにきたか/あるいは語っ てきたか」「 その出来事、あるいは語ってきたこと/こなかったことの現在から 見た評価・解釈」などメタレベルの内容まで、その話題・記憶の開示は広がって いきました。 このことから、このようなタイプの記憶の一つの特徴が浮かびあがってきまし た。それはあくまで「 主観」を 中心として記憶は編まれていると いう、「 あたりまえ」といわれれ ばその通りの事実です。つまり彼 らが「 昭和19年の記憶は」と問 われても答えられなかったのは、 その記憶は必ずしもこうした「客 観的な指標」を参照軸として、イ 『冬の波̶第六垂水丸遭難とおおすみの記憶』より
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    38 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 ンデキシングされているわけではな いからなのです。 このインタビューでは、可能な限 り対象者から強引に答えを引き出す ことを避け( 質問は、最小限に止 め)、語り手が自らの言葉に触発さ れ、記憶が開かれていく様子を観察 していきました。もちろんこの出来 事との距離や、その人の「 出来事 以降」の事情から、記憶には濃淡があり、全てのインタビュイーの話には、異な るトーン、展開がありました。しかしスムーズに記憶が語られるか否かに注目し てみると、そこには「 これまでこの出来事を、誰かに語ってきたか」が大きく 関わっていることがわかってきました。記憶がなかなか開かれていかない人の多 くは、長い間、この経験を言葉にしてこなかったのです。 この点に注目しつつさらに話を聴いてみると、その「 語りの経験の亡失」は、 誰かに強いられたものではなく、その体験の悲惨さ、衝撃の大きさから、自ら口 を封じてきたことがわかってきました。特に狭い地域コミュニティの中で、多く の事故の当事者がいる環境では、言葉にすることが憚られる雰囲気があったと言 います。また特に、この事故後急速に悪化していく時局の中では、一層のことそ うであったでしょう。語られなければ当然、事故を直接知らない世代には伝わり ませんし、その当事者が言葉にしないことで、さらにその記憶を言語化していく ことは困難になっていきます。 一方、インタビューの対象者の中には、敢えて「 語ってきた」人もいました。 そうした人にはある共通の特徴がありました。それは「 教職にあった」、あるい は郷土史、小説など「 書く」という言語使用を日常的に行っていた人々でした。 ある種客観化可能な言葉を、意識的に使うことができる人(『 冬の波』の作者で ある竹之井敏もその一人)が同じ地域にありながら、日常的な言語行為と異なる 次元で残した「 記録」は、確かに存在していました。しかしそれは、「 言葉を封 じた」人々と、60年以上も出会うことがなかったのです。 『冬の波̶第六垂水丸遭難とおおすみの記憶』より
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    39ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 4-3 語ることと「記憶」の関係 「 記憶」は言葉の周りにオートポイテーティック( 有機生命体的)に組織され ている――それが、この「おおすみ」における調査から僕が得た結論です。 結果的に、僕たちが行った調査は、長い間言葉にすることのなかった人々の記 憶が、再び紡がれていくきっかけとなりました。その調査の成果よりもむしろ、 インタビューを介した65年前の出来事と人々の出会いが、新たな「 語り」の場 を求め、かたちづくりはじめたのです。長い間、事故があった旧桟橋近くの草む らに放置されていた慰霊碑は、桜島を背にした垂水港の旧フェリー乗り場の目立 つ場所に移され、垂水市元教育長であり自身も友人と母親をこの事故で亡くした 川井田稔の呼びかけで、2009年には遺族会が立ち上がりました。 遺族会は、地域のNPO法人「 まちづくりたるみず」と協力し、遺族の消息と 資料、そしてそれらの人々の「 語り」を集める活動を始めました。そうした資 料は、同NPOが運営する資料館「 文行館」が現在管理し、展示をしている他、 2013年の70回忌まで、毎年2月6日の法要に併せ、その年新しく見い出されたこ の出来事にまつわる「 物語」を紹介する会を行ってきました。また「 書かれた 物語」も数多く発掘され、その中の一つ、田島和子「雲の文字」(『賢いお殿様』 自費出版、2006)は、垂水市の小学校で読み聞かせ授業に取り上げられている そうです。 言葉は、それを語る人ひとりの記憶をかたち作るものとしても機能しますが、 当然、複数の人の言葉が重なることによってその記憶は「 集合的」に形成され ていきます。おそらく60数年という時間の経過が( 他の戦時記憶と同じように)、 言語化を阻むハードルを低くしたであろうことは想像できます。しかしこの「お おすみ」の出来事の場合は、「 証言者がいなくなる」という危機感に迫られたも のというよりも、当事者たちが個々人の心に閉じていたイメージから脱し、地域 コミュニティに共有されうる記憶という空間的な枠に身を置いたときに、時間の 経過=その出来事からの距離感を自分のものにした、という現象のように見えま した。 したがってこの「 記憶」は、所謂一般的な戦時記憶と一線を画すトーンを有 しています。物語『 冬の波』にも描かれた、鹿児島市の西部18部隊への面会に 向かった人々のエピソードは、確かに戦時期の出来事ではあるものの、身近な人 への思いといった通時的、日常に横たわる普遍的な心情を訴え、それ故に涙をさ そいます。そのことはもちろん「 かの戦争」を支えてきた家父長主義的イデオ
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    40 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 ロギーを肯定するものではありません。むしろ、それよりももっと原初的なヒト とヒトの身体的な関係性を、想起させるもののように思えるのです※14 。 もう一つ、この新たに生じた言葉の重なり合いが、気づかせてくれたことがあ ります。実は遺族会が活動を始めた直後、ちょっとした問題が生じました。幾つ もの「 事故」そのものに関する証言が集まった結果、「 何が真実か」をめぐって 主張が食い違い、場にやや緊張が走るといったことがあったのです。その雰囲気 は、回を重ねる中で次第に落ち着いていきましたが、どうもやはりその時は「証 言」の重さに拙速に「 客観」「 正確さ」求めるテレビ的な感覚が、ここでも首を もたげてきたように思いました。 「記憶」は、極めて主観的な印象に言葉が重ねられて「創られていくもの」です。 しかし「 ひとりの目」によって切り取られる世界は、基本的に限定的なもので あり、したがってそれは容易に書き換えられ、また常に忘却に晒される、極めて 安定性を欠いたものでしかありません。ですから、「 記憶」の開示に当たっては、 その言説としての「正確さ」を求めても、あまり意味のあることではないのです。 それよりも複数の「 語り」が重なることによって、その多声性の根拠となる時 空間イメージを人々が共有しうるということに、その果たすべき機能があるので はないでしょうか。 まさにその「 不確かさ」こそが、僕たちの生きる「 日常」という時空間を作 り出しているものであり、記憶と忘却の間の一線を引くことができない、グレー な意識構造の中の営なみなのだと思います。記憶システムとしての社会が、この ようなつかみどころのないものの総体として存在するのならば、それを理解する 必要が生じたときには、近似的にでも推論を構築するための導きの糸が求められ ます。それこそが「アーカイブ」の存在意義なのではないかと思います。 終戦の一年半前に起った「 おおすみ」の悲劇は、65年後、インタビューを編 集した一つの映像作品と、その制作のための資料による「 アーカイブ」として、 文行館のほか、垂水、鹿屋両市の図書館に残されることになりました。「 アーカ イブ」の構築は、「 誰の」「 何のために」という問いと切り離して行われるもの ではないと言いましたが、まさにここでは「 地域の人々による」「 地域のアイデ ンティティの育成」のために、用いられることが強く意識されています。僕は 2009年以降毎年、2月6日の慰霊祭には手を合わせに伺いますが、いまアーカイ ブの運営主体は、完全に地域の手にわたり、僕は単にそのきっかけを作った一人 となっています。
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    41ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 システム的な基盤もなく、ただそれでは資料を集めただけといわれるかもし れません。しかし、インタビューの声を集め、それを「 この地で、この戦時下 の記憶はなぜ失われたか」というメタ主題の下に編集された映像記録の集積体 は、確実に特定の秩序をもって、活用イメージからボトムアップに積み上げられ た「 小さなアーカイブ」といえるのではないかと考えています。2005年8月の戦 争番組群とはさまざまな意味で対極の位置にありますが、これは準拠する空間を 「 テレビ」から「 地域」に転換していくことによって、「 歴史軸」を取り返して いくという、以降の様々なプロジェクトの基点となる経験になりました。 5-1「夕張」に行く――「地域」そのものの亡失の危機から 「 出会い」は、続けざまにやってきます。僕は2007年の夏、「 おおすみ」に赴 くきっかけを与えてくれた「 市民メディア全国交流集会」が札幌で開催された のに合わせて、そのオプション企画に参加する形で、財政再建団体への転落が話 題となっていた北海道夕張市を訪ねる機会を得ました。 はじめての夕張では、見聞きするあらゆることが衝撃でした。その中でも翌 年廃校となる小学校でメディアリテラシーに取り組む若い先生が語った「 夕張 の人々はテレビが嫌い」という話は、胸に響きました。「 破綻」が発表されると、 それまでこの街に見向きもしなかった取材陣がどっと押し寄せました。彼らは、 この街に「 不幸」のレッテルをはり、それを象徴する「 可哀そうな」絵ばかり を探しに来たと言います。そうしたクルーと、地元の人々との間には、精神的な 溝が生まれ、実際に小さな衝突も起こったといいます。財政破綻はしても、この 街に暮す人には日々の幸せはあるし、笑顔もある。特に子どもたちには――先生 は、そのような思いから、自分たちの「 心」を自分たちの力で表現する教育に 取り組むようになったと言いました。 これは外から「 地域」を見る目と、「 地域」を内側から捉える目の対立である と言えます。僕は彼らの話を聞く中で、それはメディア表象の次元に止まるもの ではなく、この街の成立そのものに関わる問題であるということを、理解するよ 5. あらためて「集団的記憶」とは何か――  「テレビから地域へ」向かう幾つかの省察
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    42 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 うになってきました。約120年前の石炭層発見と共に始まった街の歴史――それ まで、先住民ですら積極的に分け入ることがなかった険しい峡谷に、人々が街を 築くようになったのは、この国の近代化を支えるエネルギー資源があったからこ そでした。それは戦前・戦中においては軍事力を支え、戦後は復興と高度経済成 長を牽引します。しかし国は1960年代に入るとグローバル経済における軋轢を まともに受け、それまでただひたすら称揚してきた石炭政策をスクラップ&ビル ド、そしてやがて撤退へと急転回させます。 それに追い打ちをかけたのが「 事故」でした。1970∼80年代、合理化を要求 された炭鉱企業( 夕張の場合、北炭と三菱)は、それまで分散していた事業地 を集約し、出炭効率のアップを図るため大規模かつ最新鋭技術を導入した「 ビ ルド鉱」に生き残りを懸けることになりました。しかしまさにその期待の対象で 大事故が立て続けにおこったのです、1981年10月の北炭夕張新炭鉱ガス突出事 故( 死者93名)、1985年5月の三菱南大夕張炭鉱ガス爆発事故( 死者62名)―― この2つの事故で、まさに「炭都」としての夕張の歴史は止めを刺されます。 その後はリゾートブームに乗り、中田鉄治市長の「 炭鉱から観光へ」の掛け 声のもと、この街は補償金を足がかりに借入投資を重ね、シフトチェンジを図 ります。しかしそれは長年「 炭鉱の街」としてそこに暮した人々の「 生きられ る環境」ではありませんでした。人口は流出を続け、企業誘致も成功せず、期待 の観光業も十分な集客実績を上げられないまま、膨れ上がった借金の大きさを支 えられなくなり2007年3月を以て、財政再建団体に指定され、事実上破綻します。 まさに「 国策」という、地域の外からの風に翻弄された歴史であると言うこと ができましょう。 夕張は、こうして「 2度のリセットボタン」が押され、街まるごとが消失する 危機に見舞われることになりました。「 リセットボタン」は、物理的な意味での 環境を一変させます。一度目には「 炭鉱の街」としての生活基盤を失い、そし て2度目は、借金返済以外のあらゆる活動にストップがかかることで、例えて言 うならば「 街の生命活動」そのものが停止レベルにまで追い込まれることにな りました。人口流出はさらに加速し、残った人も身動きが取れなくなる――しか しそのような状況であるからこそ、「地域」の中にいる人々が、これからの街の姿、 その再生をどのように主体的に考えていくかは、極めて重要な課題であると言え ます。 その中で、僕が出会った希望の光が「 街の記録」です。元・石炭博物館館長
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    43ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 の青木隆夫( 現・夕張地域史研 究調査資料室長)は、1980年の 博物館開館以来、各種の映像資料 を収集、また当時の「 ニューメ ディア」であったビデオデッキで、 炭鉱に関わるテレビ番組を私的に 録画し続けていました。その数は おおよそVHSで500本。僕は青木 と話を重ねる中で、雨漏りが危惧 される博物館の資料室に放置され ていたこれらの映像を、デジタ ル・ダビングし保存を図ることを 思いつきました。2008年秋、僕 は大学院生とともに、ダビング用 のデッキを夕張のホテルに持ち込 み、泊まり込みでダビングをしま した。その結果、重複および視聴 不能なものを除く413本の資料群 ――ここでも「私的アーカイブ」 ができたのです。 それからの僕は、まさに「アーカイブ」を介して「夕張の街の歴史と出会う」 という体験をしていったことになります。青木コレクションは、アーカイブとし て極めて魅力的な「 塊」を成していました。413本の映像は、その約2/3がテレ ビ番組の録画、その他は35mm、16mm、9.5mmなどのフィルムからのダビング 映像を含む( 最も古いものは、1916年「 三井八郎右衛門視察記録映像」)公式 映像や個人映像群によって構成されています。一見雑多なコレクションに見えて、 そこにはたしかに「 アーカイブ」を成すに値する、一つの秩序が備わっていま した――それは、この炭鉱の街で歴史的な節目を体験してきた「 ひとりの当事 者」の「観察の記録」であったと言えます。 1980年∼90年代前半に「 波」のピークを持ち、その前後の時間軸に沿って広 くすそ野をもつこのアーカイブは、テレビ番組では「 事故」「 閉山」映像、その 他では「 PR映像」「 記録映像」といった地元自治体や炭鉱企業による公式映像 夕張実践 2010年9月
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    44 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 や個人映像が中心としての 「 塊」を成しています。こ れ は そ の ま ま、「 ナ シ ョ ナ ル」なメディアネットワーク が生み出す眼差しと、「 ロー カル」な当事者の意識のコン トラストの表れであると言え ます。すなわちこの時代の夕 張は( というよりも、これ 以来ずっと)、そのポリティ クスの渦中で一種のアイデン ティティの危機に直面してい たということを、このアーカ イブからは読み取ることがで きるのです。 社会は記憶システムであ るという前提に立つならば、 「国策」と「地域の自意識」 の間で揺さぶられ、生活環境 自体が激変し、さらには街そ のものの消失の危機にまで至ったということは、「 記憶が消され続けた」歴史で あるとさえ言うことができます。そのように考えると、地域の再生に向けたプロ ジェクトは、まずその記憶の再構築から始めなければならないでしょう。そこで 僕と青木は、できるところから映像アーカイブを介して、それに取り組んでいく ことにしました。それが「 ゆうばりアーカイブ」と称したゆうばり国際ファン タスティック映画祭における上映企画を核に、地域の人々がコミュニケーション の循環を作り出そうとした試みです※15 。 記憶は言葉の周りに組織されていくということを考えるならば、映像が語りの 対象となる位置に置かれるような設えが必要になります。そのために映画祭にお ける上映会では、2009年の第1回以来、青木と僕の「 掛け合い」を常に行いなが ら、また2011年10月16日の北炭夕張新炭鉱ガス突出事故から30年という節目の タイミングで開いた上映会では、『 地底の葬列』( 1983年北海道放送)、『 地の底 夕張実践 2011年2月
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    45ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 への精霊歌』( 1993年、NHK)の制作者である後藤篤志、田畑智博、今野勉を招 き討論を行いました。 また年次は前後しますが、2010年夏は東海大学生16名と教員、それに地元の 方々を交え、アーカイブ映像を題材に、そこで写されている場所の現在の姿を撮 影し重ね合わせるワークショップを開催しました。この実践は、秋・冬と続き、 新たな映像作品『 夕張はいま…消え続ける街、生き続けるもの』として編集し 直し、2011年2月の映画祭で上映しました。先に挙げた2011年10月の上映・討論 会に先立ち、9月にアーカイブ映像数本を再編集し、討論材料にするというワー クショップも開催しています。 こうした数々の活動は、アーカイブを「 フリーズした資料の蓄積体」と考え るのではなく、コミュニケーションを媒介するもの、あるいはアーカイブそれ自 体を動的に変化し更新されうるものと捉え、活用する試みとして総括することが できます。アーカイブが単に「 地域の再生」という課題に対して、参照すべき 素材としてあるというのではなく、それ自体が直接的に運動体の一部になり得る という発見は、「 おおすみ」の実践から「 ゆうばり」に確実に継承された知見で あると言えましょう。「 地域( コミュニティ)」の本質は、コミュニケーション 行為にある――アーカイブはまさに、その会話のダイクシス( 指示代名詞を活 性化する環境)として機能するのです。 さらにそれに加えて、「 私的にテレビ番組を録画する」というデジタルメディ ア時代のありふれた日常行為を、最も身近に存在するアーカイブ実践として位置 づけた――このことにより、アーカイブの概念は「 公文書館」的権威から解放 され、新しいパブリック( 公共)の創造に資する可能性に一歩踏み出したと言 えます。このことはトップダウンに形成される社会のオルタナティブに、アーカ イブが寄与しうることを示しているのです。 5-2「三陸」と出会う――「津波」は何を押し流したのか それは突然やってきました。2011年3月11日――誰も経験したことのない震災 と津波そして原発事故。あれから二年以上が経過しているにも関わらず、僕たち は、この出来事にどのように向き合うべきかというメタ次元において逡巡し続け ています。 とはいうものの、この震災以降、数多くの人が「 映像アーカイブ」の必要性
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    46 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 を強く意識しました。実際にそれに関わるプロジェクトが、震災からほどなくし て幾つも誕生しています。いまだ進行中の事態が、将来これの出来事をしっかり 振り返ることと、そのための資料の大切さに気付かせてくれたのだと思います。 せんだいメディアテークが開設した『 3がつ11にちをわすれないためにセンター (略称;わすれん)』、独立行政法人・防災科学技術研究所が中心となった『311 まるごとアーカイブス』――もちろん東北大学による『 みちのく震録伝』を代表 とするトップダウンの取り組みもありますが、市民参加をベースに、映像の収集 ( 制作)・保存・公開( 活用)の「 開かれた仕組み」を構築していこうというア プローチが目立つように思います※16 。 恥ずかしながら僕はといえば、震災直後は、ある意味自分の無力さに打ちのめ され、軽い思考停止状態に陥っていました。そこから立ち直るきっかけを与えて くれたのが、まさにアーカイブへの関心だったのです――が、それはここに挙げ たような「 震災そのものに関するアーカイブ」にではなく、「 夕張」との共通点、 すなわち街の姿が失われたという現実へのそれでした。 津波被害のトラウマティックな映像を見続けてきた僕には、次第にその残酷さ に添えられたクリシェ( 常套句)に違和感を覚えるようになってきました。そ れは「 津波が、一瞬にして全てを押し流した」という台詞でした。確かに僕ら は、もはや押し流されたものを取り戻すことはできません。しかしそれは本当に 「 一瞬にして、全てを」消したのでしょうか。「 夕張」をアーカイブ体験した僕 は、かの街の消失の危機が2度の「 リセットボタン」を介して、おおよそ30∼40 年をかけてゆっくり進行していった様を見てきました。その僕にとって、このク リシェにはとてもイデオロギー的なものを感じたのです。 もう一つ、三陸が夕張と重ね合わせられたのは、「 膨大なテレビ映像( 群) と短期間に出会う」という「 アーカイブ的」体験でした。この震災以前は、テ レビはどれくらいこれらの街を記録してきたのだろう。そこには夕張と同様の、 「地域」をめぐる「外と内」の眼差しの攻防はあるのだろうか――「ゆうばりアー カイブ」を構成する映像の中心が「 テレビ映像」にあったことを踏まえ、僕は NHKアーカイブスの中に、どれだけこの「 地域の残像」があるか探索してみよ うと考えました。そこで2年前の2011年からスタートしていた「 NHKアーカイブ ス学術トライアル研究」の審査に「 三陸の津波被災地の風景の消失を考える― 「 景観史」として還元される地域の肖像―」というタイトルでエントリーした のです。 
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    47ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 ここに掲げた「 景観」――この言葉を僕は、研究を通じて徐々に「 風景」と言 い換えるようになります。「 風景」と「 景観」を概念として区別するようになっ たことが、夕張から三陸に引き継がれた大切な知見だと考えています。この2つ の言葉を隔てるものは、その対象と、それを眼差す主体との距離、すなわち地域 を取り巻く環境イメージを「 風景」と言うか「 景観」と言うかの間には、その 地域を「 生きられる世界」として認識しているか、あるいは一つの「 絵」とし て認識しているかの違いがあるのです※17 。 地域が「 生きる」ということと強く結びついたときに、環境は生態系として 知覚されます。「 風景」とはその認識を成立させる「 まとまり」、所謂「 ゲシュ タルト」であるということができます。夕張も三陸も( 特に今後のアーカイブ 実践の一つの拠点として設定した気仙沼市を例に挙げると)その「 地域」はか つて( 特に戦後の復興期に)基幹産業によってまとめられて、かたち作られて きました。その点で言えば「 夕張の石炭」「 気仙沼の漁業」は、街の機能の中核 的アクターとしては対称の位置にあります。そこを基点に、プレイヤーとしての 炭鉱マン VS. 船乗り、街の歴史を刻む「 外圧( 国策/グローバル経済的要因)」 として、石炭/リゾート政策 VS. 200海里問題を並べてみると、これらは2つの 「 地域」をつなぐ問題は対照を成し、両者を相似形と見なすことが可能になり ます。ここまで行くと、「 地域」は具体的なあれこれの土地名を離れ、一つの概 念として浮上してきます。 津波の被災地は、広大なエリアにわたっています。僕たちが当初途方に暮れた のも、その認識不可能なほどの規模に圧倒されたという側面がありますし、マ ス・メディアもそれをカバーしきれないことに由来する混乱があったと思います。 逆に「地域」は、認識可能な生活規模を表す空間の基本単位であると仮定すれば、 一つの「 地域」の映像は、他の「 地域」に対する類推を支え、また地域間の関 係を考える手がかりを与えてくれます。 しかし今回、具体的な検討対象「 地域」を気仙沼に絞ったのは、このような 積極的な意味からではありませんでした。実は、改めてNHKアーカイブを探索し た結果わかったのは、東北太平洋沿岸地域の震災前映像の、愕然とするほどの少 なさだったのです。
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    48 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 「 地域」をめぐる眼差しの「 内と外」の攻防をある程度「 量的」に考えるため の映像群の存在が自治体単位で確保できない――すなわち、「 この地域の表象自 体が乏しい」という現実。そこで僕たちは、幾つかの過程をここで踏んでから 「分析」に向かうことにしました。第一に、行政単位としての自治体の概念(既 に述べたような、仮説としての認識単位である)と地域の概念を峻別し、後者の 典型となる「 地域」を設定すること。第二に、それ自体が「 アーカイブ性」を 有し、かつ他の番組とリンクする関係性を内包した、ハブ番組を代表として探す こと。その結果、「 地域」としての対象を石巻と気仙沼に絞り、その中で10本程 度の番組を選ぶことができました。さらにその中で、今回の津波災害と、それ以 前の街の「風景」とを媒介するハブ番組として見い出されたのが『嵐の気仙沼』 (NHK、2009年)だったのです。 『 嵐の気仙沼』は、先に2005年の戦争関連番組で挙げた『 ZONE』や『 ヒロシ マ』と同じ意味で「 ハブ番組」だったわけではありません。むしろこの2つの番 組の特徴である、引用映像はほとんどなく、また震災から1年以上前の放送とい うこともあり、当然ながらそこにはこの事態を予兆させるものは全くありません。 『 嵐の気仙沼』は、2010年の第36回放送文化基金賞テレビドキュメンタリー部 門本賞受賞作でした。「 平和で何事も起こらないドキュメンタリー作品に、今回 は本賞が贈られることになった」(『第36回放送文化基金賞贈呈式カタログ』公益 財団法人放送文化基金、2010年)と評され、地方局制作番組としての受賞は異 例ずくめだったといいます。しかしこうした評価とは別のところに、実はこの番 組の核心はありました。「 港町の特別な一日」という副題がそれを表していたの 岩手県田野畑村 13 宮城県気仙沼市 40 福島県新地町  0 福島県広野町 1 岩手県宮古市 34 宮城県南三陸町 13 福島県南相馬市 14 岩手県山田町 7 宮城県石巻市 57 福島県浪江町 12 岩手県大槌町 5 宮城県女川町 13 福島県双葉町 3 岩手県釜石市 19 宮城県東松島市 6 福島県大熊町 3 岩手県大船渡市 25 宮城県名取市 16 福島県富岡町 2 岩手県陸前高田市 19 宮城県山元町 0 福島県楢葉町 1 計303(重複含) ※NHKクロニクル保存番組検索(http://www.nhk.or.jp/chronicle/ 2011年5月5日時点)
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    49ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 です。台風によって、沖から様々な地方に所属する船が港に集まってくるという ここで描かれた情景は、先の講評とは逆に決して「 日常」の風景などではなく、 むしろ漁業の町としての「 日常」が失われていることのネガとしての「 特別な 一日」だったのです。 そこで僕たちは、この街の日常の「 記憶の痕跡」を探すために映像と向き合 う作業を始めました――一瞬復活する「 特別な時間」を手がかりに。その意味 で言えば、この番組は極めて奇妙な構造性を持っていました。時刻表示のスー パーとともに刻まれる数々のシーンには、ほとんど「 風景」らしい「 風景」は 映されておらず、船員たちが汗を流す風呂屋も、コンテナ車を改造した雑貨店も、 夜のグラブも、点の連なりに見えました。しかしそのいずれもの点が、かつて栄 えていたこの街の「 一時代」を指し示すインデックス( 指示詞)だったのです。 言い換えれば『 嵐の気仙沼』には、僕たちが認識すべきこの街の歴史が、圧縮 体として存在していたのです。 こうした特徴は、『 ZONE』が抱え込んだ問題――核に対する未規定性を告発 するために用いた表現に、極めて類似した手法を呼びこみます。それが同じモ チーフ・イメージを(『 ZONE』の場合は「 きのこ雲」)反復することによる象 徴化です。『 嵐の気仙沼』の場合、それは「 船」でした。まるで水鳥の群れのよ うに隊列を組んで港に入ることから一日が始まり、そして同じように隊列を組ん で出港するシーンで終わる。ほかにも随所に表れる「 船」――それは、本来無機 的であるはずの物体を生き物であるかのように描くことによって、この街の生態 系を象徴化する役割を担っていたのです。 こうした「船」の姿は、気仙沼、石巻を舞台とした番組に共通して、かつ様々 な横顔を見せながら埋め込まれていました。ある時は前景となって「 生と死」 を表現し、ある時は背景となって、人間関係や時空間を逆照射する。その多様性 は、「 船」という存在がまた、この地域に対する外からの眼差しと、内からの意 識を交差させる位置にあることも表しています。「 船の生態系」として港町を描 くことから、この地域の失われた記憶をよみがえらせていく――『嵐の気仙沼』 はそうした意味で、三陸の複数の地域を結ぶ「ハブ番組」たりえるのです。 ところで『 嵐の気仙沼』が描いていないものが( 当然ではありますが)、もう 一つあります。それは津波です。ところがこれは極めて偶然的なことではなかっ たのですが、事後的にその役割は実現することになりました。『 嵐の気仙沼』を 制作したチームは、震災・津波の2ヶ月後から、2009年の当時に取材した人々の
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    50 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 消息を追い、2011年9月、続編『 がれきを踏みしめて∼気仙沼 港町の絆∼』を 放送しました。さらにこの定点観測は、現在も続々編を生み出し続けています。 『嵐の気仙沼』は、この街の過去だけでなく、津波後も積み重ねられる「現在」 も一本の時間の糸としてつないでいるのです※18 。 僕は震災・津波から時間が経つほどに、トライアル研究応募の動機となった 「違和感」に立ち返る必要を感じるようになりました。あの時はあまりの衝撃・ 絶望に、「 津波が全てを押し流した」という言葉自体が、それを受け入れる免罪 符のように見えたのかもしれません。しかし『 嵐の気仙沼』を中心に幾つかの 映像を見るうちに、「 街は、決して一瞬にして消えたのではない」ことがわかっ てきました。夕張と同様、三陸の町々も、1970年代以降、高度成長を超えたと ころで、グローバル経済と出会ってからの「 舵取り」に悩んだ歴史を共有して いるのです。つまり、津波は決して一瞬にして全てを押し流したのではなく、街 は徐々に「 いまのかたち」になっていったのです。言い換えれば「 津波」が消 したものは、それに至る時の流れ、あるいはその痕跡だったのです。 物理的に街を津波が押し流すことと、それが「 記憶」を消してしまうことは、 必ずしもぴったり対応しているわけではありません。しかし「 戦争」「 破綻」や 「 巨大災害」といったカタストロフィーが生活環境の崩壊である以上、それが 時間の流れを止め、それが思考停止や隠蔽記憶を介入させてしまう契機になって しまうことは、否定できません。とはいえ一方で、淡々と流れ続ける日常には、 「 昭和19年」のように意識化されないグレーな時間を作り出すという反対の性 格もあります。「垂水丸」が教えてくれたように、「記憶」が組織されるためには、 節目は必要なのです。ただその衝撃が大き過ぎると、それは言葉を失わせ、記憶 を封じこめてしまいます。 僕たちが「 出来事」を自らのものとして、記憶にとどめるためには、その地 域ごとの歴史軸につなぎとめるための言葉が必要なのです。津波被災地を訪ね ると、いま最も不足しているのが、この「 言葉」であるということを実感しま す。ある自治体の方が、「 時間が経つほどに、人々の意識の格差が大きくなって いる」と語ってくれました。復興スピードのもどかしさは、物理的な意味だけで なく、人々から生きられる土地を奪い、孤独に追い込み、バラバラに引き裂いて いるようです。それを再び結び付けていく言葉を、どうやって作り出していくの か――そのために映像記録に何ができるのか。いよいよ「三陸」プロジェクトは、 研究・分析の段階から、「実践」に飛躍すべき段階に至ったと言えます。
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    51ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 5-3 NHKアーカイブスの地域公開という課題 夕張の青木コレクションは、その2/3が私的に録画された放送番組でした。アー カイブを単なる研究対象ではなく、実践素材として用いようと考えたとき、その ことが壁として立ちはだかります。番組を取り巻く諸権利、特に著作権と肖像 権は、テレビ放送が「 同時性」に支えられるメディアであるというその性質上、 その「時間」において認められたものという大前提があります。 これまでの放送番組のアーカイブ化は、この諸権利関係の制約に対して再許諾 の手続きを踏むことによって進められてきました。当然、誰でも想像できること ですが、それは大変な作業です。約80万本を数えるNHKアーカイブスの番組ス トックのうち、この手続きをクリアして公開ライブラリーに移すことができたも のは、2003年のアーカイブ事業を開始してからまだ約8500本。約1%という全 体に占める割合は一向に詰まる気配はありません。むしろかつてのような集中 的に権利処理を行う(「 平和アーカイブス」のような)特別企画が活発でない今、 壁はむしろ一層高くなっているように思われます。 夕張で行ってきた上映会も、基本的には自治体や地元の個人が撮影した映像を 中心に行い、テレビ番組を用いる場合も、その作品の制作者を交えた討論・研究 集会という「 例外規定」の範囲内で行うしかありませんでした。しかし僕たち これまで、映像を見ることによって失われた「 記憶」、それを再生させるきっか けとなる「 言葉」を紡ぐ可能性が開かれることを、確認してきました。とする ならば「 例外規定」に頼るのではなく、実際の「 それを必要としている人々の 中で活用できるように」どうやったらこの壁を切り崩していくことができるか、 それに立ち向かうことが避けられないという場面にいよいよ至ったと言えます。 気仙沼の映像を対象とした研究は、実は最初からそれを意識したものでした― ―以下は、僕がNHKアーカイブス学術トライアル研究に応募した際に「 研究概 要」です。 3月11日の津波は東北地方太平洋沿岸に壊滅的な打撃を与えた。その復興への 道筋について、現在多くの議論が交わされているが、本研究はその過程に映像記 録を活かすための、実践的方法を模索するものである。応募者は2007年以降財 政破綻に陥った北海道夕張市に入り、風景の消失が地域の記憶に及ぼす影響と、 映像体験がそれを補綴する可能性を探求してきた。その成果を踏まえて、今回は より切実な状況への適用を検討する。復興政策がお仕着せに陥ってしまう危惧を
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    52 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 払拭するには、その土地を生活圏とする人々の目線に立った討議がなされること が必須である。このコミュニケーション学的課題に資するアジェンダ素材を、震 災以前の平時の地域映像から抽出することが、本研究の第一の目標となる。応募 者は「地域の肖像権」という概念を提起し、アーカイブ映像の地域還元を構想し てきた。郷愁に止まらない、過去の景観受容の意味論的可能性を開いていきたい。 ここに掲げた「 地域の肖像権」という概念こそが、その突破口になると僕は 考えていました※19 。映像公開の壁となっている肖像権は、実はあまり知られて いませんが、成文法に基づいて設けられた制限ではなく、判例を積み上げるなか で固まってきた、非常に解釈が難しい概念です。この概念に関する法的、あるい は規範論的議論については、詳しくは別の機会に譲りますが( 知的資源イニシ アティブ編『 アーカイブのつくりかた―構築と活用入門』( 勉誠出版、2012)の 中で、僕は若干詳しく書いています)、注目すべきは、それが基本的に「パブリッ ク」に対する「個人」による「拒否権」に基づく要求であるという点にあります。 僕は法律家の意見を参考に、それに抵抗する方法を考えてみることにしました。 成文法に基づく概念でないのなら、その積み上がった判例と逆のアプローチが、 社会に浸透していくような流れが起せないだろうか( これもまた、実際は気が 遠くなるような話ですが……)と思ったのです。  映像の中には、本来地域の中に残されていたはずの「 風景」があります。そ れは、単なる視覚対象ではなく、「 その土地に生きる人々」にとっては、生態系 的認識を支えるゲシュタルトであると、これまで述べてきました。この発想が生 まれるきっかけとなった「 夕張」では、2度も「 リセットボタン」が押され、そ れが現実空間においては失われ てしまっていました。指をさし ても、そこには何もない。それ では、「 地域」を語る言葉は生 まれません。しかし、映像の中 には残されているのです。 映像の中の「 風景」は、も ともとは「 地域」から写しと られた像( 写像)です。それ を別の場所のアーカイブ( こ 仙台ワークショップ 2012 年 12 月
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    53ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 の場合、NHKアーカイブス) に閉じ込めておくのではなく、 もとあった地域に取り戻そう ――これが「地域の肖像権」 の発想です。これは、これま での肖像権とは全く逆のアプ ローチで、要求の主体は個人 ではなく、「 地域住民」とい う集団であり、拒否権ではな く「 請求権」であるという 特徴を持ちます。パブリックに対抗する立ち位置ではなく、「地域」というコミュ ナルな小さな共同性にもとづき公共圏を作っていこうというボトムアップの運動 概念なのです( これに類するものとしては、景観権や環境権といった権利概念 が既に知られています)。 さらに言えば、これは先に確認したアーカイブの機能的本質――空間規定をす ることから時間認識を創造する、という性格をまさに具現化するものであると言 えます。「地域」という空間を具体的に定めることによって、初めてその「地域」 にとっての大切な時間( 節目となる出来事を中心に組織される感覚)が見えて くるのです。NHKの番組をまるごとアーカイブ化することの困難は、その空間規 定にありました。しかもいきなり「 ナショナル」レベルでそれを行うと、それ は一種の「 公権力」を優先するイデオロギーを呼びこむ隙を与えてしまいます。 僕は、実は夕張でのアーカイブ・プロジェクトから、このステップに上がって いくことを考えていました。しかし、それは簡単ではありませんでした。夕張に 保存された放送番組の映像が、私的に録画されたものであったということが、そ こでは壁になっていたのです。だとすれば正面から「 NHKアーカイブスの中に 保存されている映像から、取り出していく」手続きを踏もう――ちょうど( と いう言い方も不謹慎かもしれませんが)、震災があり、夕張に関する「 請求」の 扉を開く目途が立たなくなっていた折、NHKの組織内における「 被災地支援」 活動の文脈に合わせることができるようになったのです。 こうしてNHKの公式の活動としての『 嵐の気仙沼』の上映会とワークショッ プは、2012年12月23日にせんだいメディアテークで実施されました。ワーク ショップには気仙沼のNPOの方々をお招きしたほか、この地域に一定の思いがあ 仙台ワークショップ 2012 年 12 月
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    54 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 る人――かつて気仙沼に住んでいた方や、もっと広い範囲で東北地方の映像資料 を残そうとしている人などが参加して、「 見て話し合う」方法を採りました。そ もそも放送番組はその地域を外からの目で切り取って作られたもの。そうした外 部の目を意識しながら、自分たちの記憶の欠損と映像の隙間を一緒に埋めていく 作業は、二重の意味で、「 復興」に向かうアイデンティティを支えていくことに なるのではないかと考えたのです。 例えば、「 漁業の町」という少々ステレオタイプ的な描写に対して、地元の人 は最初やや抵抗を感じることもあります。しかし徐々に外からの目を受け入れ、 それに向き合うように映像に残ってない隙間を言葉で埋めていく――そこに実際 の街の姿と、そこで生きてきた自分たちの関係が、立体的に蘇ってくるというプ ロセスが生まれます。このワークショップでは、それが確認できました。 この成果は年が明けて3月14日、恒例の「 NHK放送文化研究所春の研究発表と シンポジウム:3.11震災アーカイブ活用の可能性∼防災・減災、復興にいかすた めに∼」のセッションの中で発表されました。厳密に言えば僕が扱ったものは震 災前の平時の映像であり、このシンポジウムのテーマである「震災アーカイブ」 という言葉が直接的に与えるイメージとは異なります。しかし敢えて、そこに位 置づけることが重要であると考えました。物理的な復興の中でつい見落とされて しまいがちになる「この町はいったいどんな街だったか。この街の人はどうやっ て生きてきたか」という問い。それはこれからの「 復興」プロセスの中におけ る自分たちの立ち位置を再確認することにつながる。それこそが「 心の復興」 を支えていくことになるのだと。 実際に僕は、このワークショップとシンポジウムの後、気仙沼市の人々とこれ からこの街で始まる震災アーカイブ構築の活動と、このNHKの映像公開の試みを 「 つなげていく」構想について相談を始めています。「 震災・津波」という出来 事は、あくまで一続きの歴史軸の中の「 節目」でなくてはいけません。それよ り前の過去を失うならば、それは隠蔽記憶として働き、それより後の時間が積 み上げられなければ、それは単なるノスタルジーに回収されてしまうでしょう。 「 津波」の前後を、映像でつなぐこと――そこから、この記憶を「 生きる/生 かしていく」活動を深められれば、と考えています。
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    55ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 「 社会は記憶システムである」との仮説のもとに、ここまで僕自身の「 記憶」 と「記録」に関わる試行錯誤について、お話をしてきました。その意味で言えば、 「 社会」はアプリオリにそこにあるのではなく、「 記憶」が「 生きたもの」とし て時間を紡ぎ、その結果として再帰的に生産されていくものが「社会」なのです。 この認識は、現代ができあがった「 社会」のフリをしつつ、しかしそれは全く 形骸化したただの空箱に過ぎないかもしれない、そんな疑いの中にあることを示 唆してくれます。 「 記憶」の出発点は、あくまで個人( ヒト)にあり、またその個人の手の届 く生活圏( 地域)が、その「 記憶」を育む環境であります。そうであるならば、 社会が「記憶システム」であるために、その環境を意識的にサポートする組織・ 機関が、そこではデザインされていかなければなりません。映像アーカイブは言 葉とイメージをつなぐという意味でも、その重要な一機能であると言えます。今 回、僕が展開した議論の中では、一般の常識からはやや逸脱していたかもしれま せんが、私的な録画映像の集積体にも、敢えて「アーカイブ」という名を与えて、 むしろそこに原基的価値を見い出すようにしてきました。それはやはり「記憶」 が「個人」と切り離して存在することができないとの考えがあったからです。 しかしその一方で、NHKアーカイブスやさらに言えば国立公文書館のような、 巨大なナショナルレベルの空間、あるいはインターネットの世界が前提とするグ ローバルなメディア空間にもとづくアーカイブ的な仕組を否定するわけではあり ません。むしろそうしたものを「 可能に」するために、もっと「 地域」といっ た身近な空間を大切にすべきではないかと思うのです。 MLA(美術館・博物館(Museum)、図書館(Library)、公文書館(Archives)) 連携の必要性が叫ばれるようになってきました。こうした地域単位で運営され得 る公共機関は、「 記憶」を「 社会」に紡いでいくための重要な中間項として機能 するのだという認識に立って、その運動が広がっていくことを僕は願っています。 今回お話した僕のプロジェクトにおいても、各地で図書館、博物館、資料館との 協力関係があってこそ活動ができたという実感があります。むしろ僕は「地域」 をかき回す「 よそ者、ばか者( もはや若者ではない)」の一人にすぎず、こうし た機関やそれを支える人々が主役であるとの感覚が、ますます強まっています (垂水市のプロジェクトは既に完全に僕の手から離れています)。 6. おわりに――社会組織とヒトとアーカイブ
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    56 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 さらにMLA連携は、「 地域」と「 地域」が結びついていく契機になります。三 陸の活動ではその課題は既に明らかであり、おそらく今後、夕張でもそれは具体 的な動きになっていくでしょう。NHKアーカイブスのような大きな組織も、その 「 地域」と「 地域」を結ぶブリッジになっていく可能性があります。実際、気 仙沼で少しだけ開いた扉をもとに、NHKアーカイブスの地域公開は、どうしたら 横展開が可能かという議論も始まっています。 僕はといえばこうした「 連携」「 展開」が、単に物理的、形式的な組織・機関 のつながりを作るだけでなく、「 その中身」つまり何がそこから生まれる言葉の ネットワーク・ハブになっていくのかを探求していきたいと考えています。「 風 景」という概念をそれぞれの地域でもっと人々の心に「 ストン」と落ちるとこ ろまで、その構成素を分析していくこと――例えば夕張における「 炭鉱」、三陸 における「 船」といった眼差しの交差点が、過去を理解するだけでなく、どの ように「 未来」の創造に、言い換えれば「 生きた記憶」として意味を持つよう になるのか、など。 これからも、さまざまな次元での「アーカイブ実践」は続きます。
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    57ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 脚注(用語解説) ※1 テレビ60年と「記憶」 1953 年 2 月 1 日に NHK が、半年後(8 月 28 日)に日本テレビがテレビ放送を開始――さま ざまなメディア、研究者がそれを振り返る試みを行っているが、その中でも萩原滋編『テレビ という記憶―テレビ視聴の社会史』(新曜社、2013 年)は本論のテーマである「集合的記憶」 に焦点を当てたという意味で、注目の一冊。 ※2 テレビの時空間 テレビはあくまで「いま・ここ」を映し、かつそれを生産するメディアである――この秩序認 識に基づき、「地デジ化」の本質とはその組み換えであると提起した。水島久光『テレビジョン・ クライシス―視聴率・デジタル化・公共圏』(せりか書房、2008 年)第二章。 ※3 初期テレビ・ドキュメンタリー 60 ∼ 70 年代のテレビ・ドキュメンタリーは今日では考えられないほど作家性に富んでいた。 それは作品を通じて「テレビとは何か」を問う営為だったとも言える。東野真らによるシリー ズ「制作者研究<テレビ・ドキュメンタリーを創った人々>」(『放送研究と調査』に 2012 年 2 月から 6 回にわたり掲載)で詳細に論じられている。 ※4 クリシェ(常套句) 「決まり文句」は言葉だけではなく、あるパターンをなす映像などにもその機能を確認するこ とができる。クリシェはしかし、ステレオタイプを形成するだけでなく、反復されることで そこからの逸脱の契機にもなり得る。そのあたりはドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社、 1968=1992 年)のテーマとも重なる。 ※5 技術論的パースペクティブ ブーニュー『コミュニケーション学講義―メディオロジーから情報社会へ』(書籍工房早山、 2002=2010)から引いた言葉だが、この操作者=主体・対象=客体として固定する西欧近代主 義や科学主義に対する批判的視点は、ルジャンドル『同一性の謎』(以文社、2012 年)、ラトゥー ル『科学論の実在』(産業図書、2007 年)などにも共有されている。 ※6 公共性 メディアと公共性の関係を論じる出発点をハーバーマスに求めることについて異論はないが、 その理性主義を乗り越えるために、齋藤純一の定義(publicness は、official と common と open によって構成される)を参照することは有効。齋藤純一『公共性』(岩波書店、2000 年) ※7 アーカイブの秩序性・統御性 フーコーもデリダもアーカイブとアルケオロジー(考古学)の類語関係に注目し、「時間秩序 を内包する」前提に立ち返ることから議論をスタートさせる。デリダ『アーカイブの病』(法 政大学出版局、1995=2010 年)は、その無意識性に切り込む。
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    58 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 ※8 サーチとディレクトリー 検索を使いこなすハードルの高さは、いずれもユーザーに語彙や分類に対する「想像力」を要 求したことによるもの。サーチエンジンとは何かについては、石田英敬編『知のデジタル・シ フト』(弘文堂、2006)の拙論、そもそも分類するとはどういう行為なのかについては、吉田 政幸『分類学からの出発』(中公新書、1993 年)参照。 ※9 アーカイブとネットワーク メディアのデジタル化に伴う諸現象に対して、この二つを主たる対概念装置として用いる有効 性は、前者が「集合的記憶」、後者が「集合知」の問題とつながっていることが端的に示して います。西垣通『集合知とは何か』(中公新書、2013 年)。 ※10 ハブ番組 もともとは桜井均の言葉。「デジタル・テクノロジーに支援されたテレビ研究―タイムライン とアーカイブの利用可能性について」(『NHK 放送文化研究所年報』第 54 輯、2010 年)参照。 ※11 トランジション 映画研究から借用した分析概念。特に意味の発生を考える点で重要な「映像のつなぎ」の部分。 このパターンを分類し八つの大きな連辞型をモデルとして抽出したのが C・メッツ(『映画に おける意味作用に関する試論』水声社、2005 年)。「インサート(補足、強調のために挿入さ れる)」「ファスト・カット(間隔短く、次々画面が変わる)」「フラッシュバック(同時進行す る別の場の出来事をつなぐ)」などの手法があり、言外に意味が与えられる。 ※12 記号のピラミッド 類像、指標、象徴というパースの基本的な記号分類の序列を読み替えたブーニューの「コミュ ニケーション学」の核心。指標性を記号過程の基底に据えることによって、意味を、ピラミッ ドを上昇/下降するものとして動的捉えられる。『コミュニケーション学講義』第三章。 ※13 パレオTV/ネオTV U・エーコの 1983 年に書かれたテレビ論「TV:失われた透明性」(水島久光・西兼志『窓ある いは鏡―ネオ TV 的日常生活批判』慶応義塾大学出版会、2008 年所収)の中心概念。テレビ表 象が外部参照性を失い、自閉に転ずるさまを評した。 ※14 物語『冬の波』と映像作品『冬の波』 映像作品(水島久光、五嶋正治『冬の波―第六垂水丸遭難とおおすみの記憶』56 分、非売品) は、19 人のインタビューと資料を、中西久美子の「語り」を軸に構成。現地上映のみを目的 に制作したもの。竹之井敏の許しを得て、タイトルを『冬の波』とした。 ※15「ゆうばりアーカイブ」 映像群そのものと上映会、アーカイブ実践を含めた活動の総称として用いている。資料分析の 一端は、水島久光「テレビ番組における風景の位相―映像アーカイブと日常の亡失に関する一 考察(前編:夕張の場合)」(『東海大学紀要文学部』第 96 輯、2012 年)にまとめている。
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    59ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 ※16 震災アーカイブ・プロジェクト 『3 がつ 11 にちをわすれないためにセンター』http://recorder311.smt.jp/、『311 まるごとアー カイブス』http://311archives.jp/(長坂俊成『記憶と記録―311 まるごとアーカイブス』岩波書店、 2012 年 参照)、『みちのく震録伝』http://shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/、渡邉英徳がインター フェイスを開発した『東日本大震災アーカイブ』http://shinsai.mapping.jp/ など。 ※17 認識論的概念としての「風景」 水島久光・兼古勝史・小河原あや「テレビ番組における風景の位相―映像アーカイブと日常の 亡失に関する一考察(後編:三陸の場合)」(『東海大学紀要文学部』第 97 輯、2012 年)では、 木岡伸夫『風景の論理―沈黙から語りへ』(世界思想社、2007 年)の概念「基本風景・原風景・ 表現的風景」について、絵画論から引いた「遠景・中景・近景」さらに「記号のピラミッド」 と重ねて、機能を分析した。 ※18 続編の制作 夕張におけるハブ番組『地底の葬列』にも、事故の 10 年後に『過ぎてゆく風景』(1991 年) という続編が制作されている。「ハブ番組」は、過去に対するインデックスだけでなく、現在 進行形で「記録」を積み上げていくフレームでもある。 ※19「地域の肖像権」 根拠は憲法 13 条「幸福追求権」。初めてこの構想を文字にしたのは、水島久光「アーカイブ 時代の地域と放送―地域イメージの還流/コミュニケーションの再生」(NHK 放送文化研究所 『放送メディア研究』No.7、2010 所収)。肖像権そのものの問題に言及したのは、水島久光「『記録』 と『記憶』と『約束ごと』―デジタル映像アーカイブをめぐる規範と権利」(知的資源イニシアティ ブ編『アーカイブのつくりかた』勉誠出版、2012 年所収)。
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    60 「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践  ラ イブ ラ リー・リソース・ガイド 2013 年 春 号 No 日 開始 終了 局 タイトル 001 8/2 21:00 23:24 日テレ 終戦60年特別ドラマ 二十四の瞳 002 8/3 2:43 3:38 フジ NONFIX「シリーズ終戦60年企画「海軍最年少兵士が過ごしたシベリア強制収容所」 003 8/3 21:15 21:58 総合 その時歴史が動いた「シリーズ終戦60年ソ連参戦の衝撃∼満蒙開拓民はなぜ取り残された∼」 004 8/5 3:10 4:04 総合 ふるさと発シリーズ被爆60年「はだしのゲン 誕生の軌跡」 005 〃 〃 〃 〃 ふるさと発シリーズ被爆60年「わたしのサダコを伝えたい」 006 8/5 18:55 21:48 TBS TBSテレビ放送50周年記念 戦後60年特別企画『ヒロシマ』 007 8/6 2:40 3:57 総合 ふるさと発シリーズ被爆60年「強がるしかなかった∼被爆と戦いつづけたプロ野球人・張本勲」 008 〃 〃 〃 〃 ふるさと発シリーズ被爆61年「あの日の記憶を確かめたい∼被爆建物・旧日銀広島支店」 009 〃 〃 〃 〃 ふるさと発シリーズ被爆62年「父が奏でたかったヒロシマ∼ある被爆2世の旅」 010 8/6 8:00 8:55 衛星2 平成十七年広島平和祈念式典 011 8/6 21:00 22:15 総合 NHKスペシャル 被爆60年企画被爆者命の記録∼放射線と闘う人々の60年 012 8/7 14:00 15:25 朝日 スクープスペシャル 終戦60年特別企画 検証!核兵器の真実∼それは人体実験だった 013 8/7 16:00 18:00 衛星2 あなたと作る時代の記録 映像の戦後60年 014 8/7 21:00 23:15 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 ZONE・核と人間 015 8/7 22:10 24:00 衛星1 地獄 沖縄戦・最後の33日間 016 8/7 23:25 24:45 総合 平和アーカイブス 語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第一夜 原爆投下・その時何が 017 8/8 21:00 21:58 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 追跡 核の闇市場∼放置された巨大ネットワーク 018 8/8 23:00 24:00 総合 平和アーカイブス 語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第二夜 被爆者たちの60年 019 8/8 23:10 24:00 衛星1 BSドキュメンタリー 祖国を奪われた人々 中南米日系人・強制連行の記録 第一部 020 8/9 10:40 11:40 総合 平成十七年長崎平和祈念式典 021 8/9 19:30 21:00 衛星2 被爆60年 平和巡礼2005 022 8/9 21:00 21:53 総合 NHKスペシャル 被爆60年企画 赤い背中 ∼原爆を背負い続けた60年∼ 023 8/9 23:10 24:00 衛星1 BSドキュメンタリー 祖国を奪われた人々 中南米日系人・強制連行の記録 第二部 024 8/9 24:15 25:35 総合 平和アーカイブス 語り伝えるヒロシマ・ナガサキ 第三夜 伝えたし、されど 025 8/9 26:28 27:23 フジ NONFIX「シリーズ終戦60年企画「アロハ桜∼ハワイ日系二世からの贈り物」 026 8/10 21:00 21:58 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 コソボ・隣人たちの戦争“憎しみの通り”の6年 027 8/10 24:45 25:30 総合 九州沖縄スペシャル 火の雨が降った日 福岡大空襲60年 028 8/11 21:00 21:58 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 そして日本は焦土となった ∼都市爆撃の真実∼ 029 8/11 24:45 25:30 総合 甲府空襲60年目の記録 030 8/12 19:10 21:00 衛星1 BSドキュメンタリー カウラの大脱走 オーストラリア日本兵捕虜・60年目の証言 031 8/12 19:30 20:45 総合 NHKスペシャル 終戦60年関連企画 ドラマ「象列車がやってきた」 032 8/12 23:00 23:45 総合 にんげんドキュメント 最後の一枚 ∼戦没画学生・いのちの軌跡∼ 033 8/13 10:50 11:45 朝日 戦争童話集 『ぼくの防空壕』 034 8/13 21:00 23:09 フジ 終戦60周年記念スペシャルドラマ 遅すぎた帰還 実録・小野田少尉 035 8/13 21:15 22:13 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 靖国神社 ∼占領下の知られざる攻防∼ 2005 年 8 月の戦争関連テレビリスト
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    61ライブラリー・リソー ス ・ガ イ ド 2 0 1 3 年 春 号  「記憶を失う」ことをめぐって アーカイブと地域を結びつける実践 No 日 開始 終了 局 タイトル 036 8/13 23:10 24:00 衛星 1 BSドキュメンタリー 「大地の子になった日本人 中国残留孤児60年の決断」 037 8/13 23:10 24:00 衛星 1 ドキュメントスポーツ大陸 日本が沸いたあの時 スポーツ戦後60年第二集 東洋の魔女∼鬼の大松 コートの絆∼ 038 8/14 14:00 15:25 朝日 終戦記念日特番“敗戦から60年 私たちは間違っていたのか” 039 8/14 19:30 21:00 衛星 2 特集・あの日昭和20年の記憶 040 8/14 20:00 21:48 TX 日曜ビッグバラエティー 沸いた!泣いた!笑った!思い出の昭和 大特集 041 8/14 21:00 22:45 総合 NHKスペシャル 終戦60年企画 戦後60年 靖国問題を考える 042 8/14 22:10 24:00 衛星1 BS特集 「一瞬の戦後史∼スチール写真が記録した世界の60年」 043 8/15 9:00 10:30 教育 終戦の日アニメスペシャル 「象のいない動物園」 044 8/15 11:49 12:05 総合 中継 全国戦没者追悼式 045 8/15 17:10 18:20 総合 日本のこれから 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本 第一部 046 8/15 19:30 21:30 総合 日本のこれから 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本 第二部 047 8/15 20:10 21:00 衛星 1 ドキュメントスポーツ大陸 日本が沸いたあの時 スポーツ戦後60年第三集 両雄並び立つ 大鵬と柏戸 048 8/15 21:00 22:54 TBS 終戦の日スペシャル「覚悟 戦場ジャーナリスト 橋田信介物語 イラクに散った不屈の魂」 049 8/15 22:30 24:00 総合 日本のこれから 戦後60年 じっくり話そう アジアの中の日本 第三部 050 8/15 23:10 24:00 衛星1 ドキュメンタリー 「二人の伝道師 淵田美津雄とドゥリトル隊爆撃兵の物語」 051 8/16 19:10 20:00 衛星 1 ドキュメントスポーツ大陸 日本が沸いたあの時 スポーツ戦後60年第三集 だから負けなかった 巨人栄光のVロード 060 8/16 19:30 21:58 総合 第三十七回思い出のメロディー 061 8/16 22:10 24:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 ベトナム戦争 サイゴン陥落・最後の58日間(再) 062 8/16 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 1大量虐殺への道 063 8/16 26:43 27:38 フジ NONFIX シリーズ終戦60年企画「行ってみよう 見てみよう! 歴史をめぐる日韓交流記」 064 8/17 22:10 23:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 フォークランド紛争 兵器の実験場(再) 065 8/17 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 2死の工場 066 8/17 23:10 24:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 ハンガリー動乱 ブタペスト13日間の記憶(再) 067 8/18 22:10 23:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 映画「元PKO部隊司令官が語るルワンダ虐殺」 068 8/18 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 3収容所の番人たち 069 8/18 23:10 24:00 衛星 1 BSドキュメンタリー 「引き裂かれた家族 旧日本兵とベトナムの60年」 070 8/19 23:00 23:55 総合 アウシュビッツの真実 4加速する虐殺 071 8/19 24:15 25:00 総合 アウシュビッツの真実 5解放と復讐 072 8/21 15:10 16:00 衛星 1 帰還を待つ家族 アーカンソー州兵 イラク駐留(再) 073 8/23 26:28 27:23 フジ NONFIX シリーズ終戦60年企画「ナトコ映画に描かれた民主主義 GHQの日本再教育へ」 074 8/26 25:20 28:20 朝日 朝まで生テレビ 「激論! 小泉純一郎にこれからの日本を任せるのか??」 075 8/22 19:00 21:48 TX 昭和歌謡大全集 昭和の名曲は、平成に変わっても色あせない。“戦後60年”をテーマで名曲の数々を披露。 076 8/29 18:10 19:00 衛星 1 戦後60年・歴史を変えた戦場 チェチェン混迷の11年 紛争とテロの背景(再) 077 8/29 21:00 23:24 TBS TBSテレビ放送プロジェクト 広島―昭和20年8月6日 078 8/30 26:28 27:23 フジ NONFIX シリーズ終戦60年企画「幻の特攻基地 戦いはいまだ終わらず」
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    64 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 図書館の資金源といえば、親組織( 公共図書館においては自治体、大学図書 館においては大学など)の予算が第一だろう。しかし、この予算が減ってきてい るのが現状である。全国の図書館費の状況は2010年度の決算額で、公共図書館 では1209億671万円( 都道府県立図書館:102億8796万円、市区立図書館:1008 億1737万円、町村立図書館:95億9380万円、私立図書館:2億704万円)である。 大学図書館では2011年度の決算額で991億4534万円( 国立大学:251億9615万円、 公立大学:51億9365万円、私立大学:670億4947万円、短期大学:13億119万 円、高等専門学校:4億488万円)である(『日本の図書館2012』日本図書館協会、 2012より http://www.jla.or.jp/library/statistics/tabid/94/Default.aspx )。 これをそれぞれ前年度と比較すると、公共図書館は2009年度の決算額が1220 億1695万円であり、1館当たりの決算額でみると8.5%の減額である。大学図書館 は2010年度の決算額が1000億4102万円であり、1館当たりの決算額でみると1.5% の減額である。 こうした状況のなか、通常予算にプラスして、外部からの資金を調達しようと する図書館が現れてきている。それは寄付などで直接的に現金を集めたり、広告 を募って広告収入を得たり、図書や雑誌の寄贈を受け入れたりするなど、さまざ まな方法がある。 2009年度 0 50 ■私立図書館 ■広域市町村圏 ■町村立図書館 ■市区立図書館 ■都道府県立図書館 100 150 200 250 300 (百万) 2010年度 0 50 100 150 200 250 (百万) 2010年度 2011年度 ■私立大学 ■公立大学 ■高等専門学校 ■短期大学 ■国立大学 公共図書館費の決算額(1館あたり) 大学図書館費の決算額(1館あたり)
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    65ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 今回の特集では、図書館の資金調達の方法を「寄付・寄贈」「広告」「販売」「交 付金・助成金」に分類し、個々の図書館における実践の事例を紹介する。特集の 最後にはそれらの方法を組み合わせた実践を「 さまざまな手法を組み合わせた 資金調達」として紹介する。いま、図書館は資金を得るためにどのような実践を しているのか。これから資金を得ようと考えている図書館が参考できるような グッドプラクティスを紹介していく。 2011年度の、日本の個人による年間寄付総額は、約1兆1182億円であった。こ の年は、東日本大震災が発生した年であり、日本で寄付意識が変化し、寄付額が 跳ね上がった年である。実際、寄付金額のうち、約6000億円は震災関連に寄付 されたものであり、震災以外への寄付は、5182億円( 46.1%)である(『 寄付白 書 2012』日本ファンドレイジング協会、2013年)。 企業による寄付額は、7兆1679億9000万円( 会社標本調査2011年度 http:// www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon/top.htm)である。しかしこの総 額のうち、図書館の資金にあてられた額がわかる統計はない。 「寄付・寄贈」篇の寄付では、地方自治体に対するふるさと納税(正式名称「ふ るさと寄付金」)を取り上げる。多くの場合、ふるさと納税を利用する寄付では、 寄付金の用途を指定することができないが、自治体によってはふるさと納税の寄 付メニューに「 図書館設備」を用意しているため、寄付者はその用途として図 書館を指定することができる。 大学などの自治体以外が運営する図書館では、自ら寄付を募っている。公共図 書館でも千葉市図書館や鎌倉市立図書館では、図書館内に募金箱を設置して寄付 を募る試みをしている。 「 寄付・寄贈」篇の図書の寄贈は、図書館に対する最も身近な寄付の方法であ る。図書館へ本を寄贈したいというニーズはかなりある。図書館も寄付された本 は、そのまま蔵書にできる。しかし図書館が必要としている本のニーズと寄贈さ れる本のミスマッチも多く、マッチングを行う事業を行うところも現れてきてお り、こうした取り組みも紹介する。 寄付・寄贈
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    66 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 「 広告」篇では、図書館が企業広告を取り入れる事例を紹介する。現在、多く の図書館が自館の公式サイト上に企業のバナー広告を掲載している。また本の貸 出時のレシートや貸出用バッグ、移動図書館車の車体など、さまざまな場所に広 告を掲載している。そのほか図書館に限定される試みではないが、コピー用紙の 裏を広告スペースにして、コピー代を無料にするという取り組みも行われている。 また寄贈と広告の合わせ技としては、図書館が必要とする資料を企業などが代 わりに購入し、図書館へ提供するスポンサー制度も広く取り入れられている。購 入する対象はほとんどが雑誌であることから、「 雑誌スポンサー制度」と呼ばれ ている。これは企業などが図書館に雑誌を寄贈し、寄贈者である企業などの広告 をその雑誌のカバーに貼り付けるという取り組みである。このように図書館だけ ではなく、図書館に資金を提供する側にもメリットが生まれる取り組みが行われ ている。 「 販売」篇では図書館が作成した資料やグッズを販売して、収益を得る事業を 紹介する。販売はまだ多くの図書館で行われているとは言い難い。しかし図書館 が生み出したものに、わずかでも対価を得ようとする取り組みは、図書館を設置 する自治体や大学などからの図書館への評価にもつながるだろう。 図書館で販売されるものの多くは、商業出版では出版されないような地域に関 する図書や、図書館が不要とした蔵書や寄贈本である。これらは多くの図書館で は無料配布し、閲覧・貸出するものだが、一部の図書館では販売し、新たな蔵書 のための資金源にしている。図書館で制作した図書は、図書館内で売るだけでは なく、書店でや図書館内の本屋やショップなどで販売する場合もある。 そのほか書店などで委託販売する例など、図書館が間接的に収入を得ている例 も紹介する。 広告 販売
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    67ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 「 交付金・助成金」篇は、国や都道府県、財団などが特定の事業やサービス、 研究などに資金を与えるもので、用途が指定されていないものもある。 自治体が使えるもので、近年、金額の大きかったものは、「 住民生活に光をそ そぐ交付金」である。これは2010年度予算で1000億円が計上された。このうち 「 知に基づく地域づくり」の活用例として、図書館が挙げられ、実際に図書館 に多額の予算が執行された。 また図書館が直接使うのではなく、図書館の一事業に限定して使えるもの、図 書館にかかわる団体・個人が使える助成金などもある。それらを一覧にして紹介 する。 上記で取り上げたさまざまな方法を組み合わせ、積極的な資金調達を行ってい る図書館の実践を紹介する。 交付金・助成金 さまざまな方法を組み合わせた資金調達
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    70 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 「ふるさと納税」を利用する 多くの自治体がふるさと納税制度を取り入れている。ふるさと納税とは、2008 年に「 地方税法等の一部を改正する法律」が成立・公布されたことにより、個 人住民税に対する寄付金税制が大幅に拡充され開始した制度である。納税と名が ついているが実際には寄付金であり、寄付額によって住民税が控除される。「 ふ るさと」に厳密な定義はなく、寄付者の出身地やお世話になった自治体など、寄 付者が自由に選べる。自治体に寄付された金額は、112億6286万4000円(「 平成 23年度( 2011年度)寄附金税額控除に関する調」総務省 http://www.soumu.go.jp/ main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/xls/J51-11-20.xls )である。 寄付をすると、寄付額に合わせて住民税、所得税が控除される。また自治体に よってはプレゼントがあるなど、寄付者にメリットをもたらすものとなっている。 自治体によっては寄付メニューを用意しており、寄付者は応援する自治体の、 期待する政策に寄付ができる。寄付メニューのなかには図書館の整備や図書の購 入を挙げている自治体もある。寄付額が高額となる場合は、基金を設ける例もあ る。また図書館への寄付をメニューとして持たなくても、結果的に図書館の整備 にあてられる例もある。 ふるさと納税では、寄付者に対してお礼をしている自治体もあるが、ほとんど の自治体では、図書館から特にお礼はしていない。しかし一部の図書館ではふる さと納税者へのお礼として図書館の利用カードを発行し、その自治体の在住・在 勤者でなくとも利用できるようにしている。 寄付者に対してお礼をしていない図書館でも、館内にふるさと納税コーナーを 設けて、ふるさと納税で購入した資料をアピールするなど、謝意を表わしている。
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    71ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 鳥取県ではふるさと納税の寄付メニューに「 鳥取県こども未来基金」を設け ており、この基金によって鳥取県立図書館の児童書が整備されている。 鳥取県立図書館内にはこの基金による「ふるさと納税文庫」が設けられており、 誰もが自由に利用できる。また市町村立図書館や学校図書館が児童書を選ぶ際の 参考になるように、マンガなどの一部資料を除いた、刊行から1年以内の新刊児 童書を全点購入している。鳥取県こども未来基金は、児童書の整備のほかに子ど ものスポーツ活動の支援にあてられている。 鳥取県へのふるさと納税額は、全体で1412万4160円あった( 2011年度)。こ のうち鳥取県こども未来基金へは1134万8500円であり( 2011年度)、これは鳥 取県におけるふるさと納税額の80.3%を占める。そのなかから592万4250円( ふ るさと納税の41.9%)が、児童書関連の購入・整備にあてられている。 撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 10 月 24 日 ■鳥取県立図書館 http://www.library.pref.tottori.jp/ 鳥取県鳥取市尚徳町 101 Tel: 0857-26-8155  Fax: 0857-22-2996 000 鳥取県立図書館(鳥取県鳥取市) Case 01 ふるさと納税で、児童書を整備 ■参考資料 1. 児童図書室の「ふるさと納税文庫」をご存じですか  http://www.library.pref.tottori.jp/hp/menu000001900/hpg000001811.htm 2. 鳥取県こども未来基金  http://www.pref.tottori.lg.jp/kodomomiraikikin/
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    72 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 滋賀県野洲( やす)市にある野洲図書では、在住・在勤・在学者のほか広域 利用協定により草津市・守山市・栗東市の在住者に対して図書館利用カードを発 行しているが、ふるさと納税者に対しても「 ふるさと納税としょかんカード」 と称して、図書館の利用カードを発行している。これはふるさと納税を利用して 野洲を応援する人への、恩返しと言えるだろう。 図書館がふるさと納税者に対してお礼をしている事例は、ほとんどない。特産 物を贈るようなお礼をしなくても、図書館利用カードの発行は、図書館ならでは のお礼の仕方ではないだろうか。野洲市では、ふるさと納税の寄付メニューに図 書館を支援する項目はないが、町ぐるみで図書館を盛り上げる姿勢がみえる。 撮影:岡本真 撮影日:2013 年 2 月 1 日 000 野洲(やす)図書館(滋賀県野洲市) Case 02 納税者に「としょかんカード」の発行 ■参考資料 1.「ふるさと納税としょかんカード」のお知らせ    http://www.library.hohoemi-yasu.jp/furusato.html ■野洲図書館 http://www.library.hohoemi-yasu.jp/ 滋賀県野洲市辻町 410 Tel: 077-586-0218 Fax: 077-587-5976
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    73ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 出典:鷹栖町公式サイト ふるさと納税と同様の取り組みとして、有効期限の切れたポイントカードのポ イントを町に納め、そのポイントの換算金額を児童書の購入にあてるというユニー クな取り組みを行っている町がある。いわばふるさと納税のポイント版である。 鷹栖町は、買い物時にポイントがつくカードを発行している。「 たかすサポー ターズカード」と呼ばれるこのポイントカードの加盟店は全国各地にあり、加盟 店で買い物をすれば、100円に対して1ポイントがつく。このポイントは通常は1 ポイント=1円として使用できるが、有効期限が切れたポイントは町に寄付され、 児童書の購入にあてられている。 このたかすサポーターズカードは、全国共通のポイントカードを発行している 株式会社サイモンズのサイモンズカードを採用しており、社会貢献を主とする団 体へ寄贈する仕組みのサイモンズ・ネットワークは、鷹栖町以外にも全国に広 がっている。2012年の末に失効したポイントによって鷹栖町に寄付されたのは、 31万7297ポイントである。 ■鷹栖町公民館図書室(鷹栖地区住民センター) http://www.town.takasu.hokkaido.jp/guide/ 00-index/28-shisetu/shisetu01.html 北海道上川郡鷹栖町北 1-3-2-5 Tel: 0166-87-2028 Fax: 0166-87-2850 鷹栖(たかす)町公民館図書室(北海道鷹栖町) Case 03 失効したポイントを利用する ■参考資料 1. たかすサポーターズカードのお申し込み   http://www.town.takasu.hokkaido.jp/intro/card.html 2.「全国初のふるさと納税ポイント版 北海道鷹栖町、図書購入に」   共同通信、2009 年 10 月 27 日   http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102701000517.html 3. 広報たかす No.699、2009 年 12 月   http://town.takasu.hokkaido.jp/kouhou_back/kouhou_200912/takasu0912.pdf
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    74 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 和歌山県立図書館は2008年11月に、匿名の個人からふるさと納税による1000 万円の寄付を受けた。和歌山県は2008年度からふるさと納税を行っており、和 歌山県立図書館への1000万円の寄付は、初年度の出来事である。和歌山県への ふるさと納税額は、2008年から2011年の集計で449名、1億965万4560円となって いる。このうち用途として「 学校図書館や県立図書館の蔵書の充実」を指定し た寄付が60件、6333万1000円( 全体の57.7%)である。図書館から積極的に寄 付を求めるアピールをしているわけではないが、1000万円の寄付を筆頭に、図 書館に対する寄付が相次いでいる。 先の1000万円の寄付を受けて、和歌山県立図書館では3043冊の本を購入し、 「ふるさと夢文庫」を設置した。寄付金の半分は、大活字本や世界遺産関係(「紀 伊山地の霊場と参詣道」関連)、児童書などの購入にあて、残りの半分は学校支 援用の図書を購入している。 また2011年度には故・木下秀雄氏からの3672万円の寄付により、1万7899冊の 本を購入し、「 きのくに虹文庫」を設置している。この文庫も大活字本や児童書、 学校支援用の図書が中心である。それぞれの文庫は、図書館内に特設コーナーと して設置されている。 000 和歌山県立図書館(和歌山県和歌山市) Case 04 寄付された1000万円で、3043冊を購入 ■参考資料 1.「『ふるさと和歌山応援寄附』の集計」和歌山県   http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/furusato/shukei.html 2.「『ふるさと夢文庫』を開設しました。」和歌山県立図書館ニュース、2009 年 4 月 28 日   https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/mt/2009/04/post-1.html 3.「故・木下さんの寄付で誕生『きのくに虹文庫』」和歌山新報、2011 年 10 月 16 日   http://www.wakayamashimpo.co.jp/news/11/10/111016_12050.html 4.「『きのくに虹文庫』を開設しました。」和歌山県立図書館ニュース、2011 年 10 月 21 日   https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/mt/2011/10/post-61.html ■和歌山県立図書館  https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/ 和歌山県和歌山市西高松 1-7-38  Tel: 073-436-9500 Fax: 073-436-9501
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    75ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 出典:和歌山県立図書館公式ブログ
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    76 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 佐賀県が実施する「 ふるさと納税制度」には、寄付メニューに「 くぅーりっ ぱか佐賀っ子づくり!」があり、このメニューが指定された寄付金の一部は、佐 賀県立図書館の児童書を購入するための費用にあてられている。 佐賀県立図書館ではこの制度によって受入した本を年に数回、館内に特設コー ナーを設けて展示している。常設コーナーも設けられ、そこには「 子どもたち への本の贈りもの」とのメッセージが掲げられている。特設・常設コーナーとも に、ふるさと納税についての解説が掲示され、本制度へのPRにもなっている。 2011年度には「 くぅーりっぱか佐賀っ子づくり!」は、佐賀県のふるさと納 税制度の寄付メニューのなかで、寄付額が2248万円と最多となった( 総額3962 万円のうち、56.7%を占める)。このうち32万4375円が、県立図書館の児童書の 購入やデジタル民話の作成といった同館による児童サービス関連係にあてられた。 「 くぅーりっぱか佐賀っ子づくり!」は、県内の学校の設備充実や奨学金など にもあてられている。 撮影:岡本真 撮影日:2013 年 5 月 7 日 佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市) Case 05 寄付金で、児童書の購入やデジタル民話を作成 ■参考資料 1.「くぅーりっぱか佐賀っ子づくり!」佐賀県   http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/zeikin/kifubosyuu/_10137.html#kyouiku 2.「ふるさと納税だより(平成 24 年度(2012 年度)版)」佐賀県、2012 年 10 月 15 日   http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/zeikin/kifubosyuu/_62453.html ■佐賀県立図書館 http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/ 佐賀県佐賀市城内 2-1-4  Tel: 0952-24-2900 Fax: 0952-25-7049 E-mail: saga-kentosyo@pref.saga.lg.jp
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    77ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 図書館へ寄付をするルートには2つあり、1つは自治体が行うふるさと納税制 度や大学図書館が運営する大学への寄付を通じて、「 間接的に」図書館に寄付し てもらうのである。もう1つは、図書館が自分たちの事業に対して、「直接的に」 寄付金を募る場合である。ここでは後者をとりあげる。 図書館への間接的な寄付の場合、寄付金が図書館の事業に回されないこともあ る。ただし自治体でのふるさと納税では、寄付メニューに図書館の整備を挙げて いる自治体も多い。またふるさと納税にあたって、使途に図書館の事業を指定で きない場合でも、自治体の政策により、図書館のための財源にあてられることも ある。もちろん図書館への寄付が寄付メニューにない場合、確実に図書館にあて られるとは限らない。 図書館への直接的な寄付の場合、その寄付金は確実に図書館の予算にあてられ る。図書館側も寄付を募る際には、用途を明確に表明しているので、寄付者は寄 付金が何に使われるのかを知ったうえで寄付ができる。これは寄付する側のモチ ベーションの向上にもつながるだろう。 図書館が行う寄付の募り方はさまざまだ。銀行振り込みや、クレジットカード でのオンライン決済、館内に設置した募金箱へのお願いなどである。 しかし、現金での寄付を受け付けている図書館は少ない。現金で受け付けてし まうと、自治体の雑収入として一般会計に入ってしまい、図書館の収入にならな いことがあるからだ。現金での寄付を図書館の収入にするためには、基金を創設 するなど条例を改正する必要がある。一方で、物納で本の寄贈を受け付けている 図書館は多い。物納であれば、金銭的な事務手続きの必要がないため、図書館の 蔵書にしやすいからだ。しかし寄贈本の場合、図書館が必要としない本が寄贈さ れるなど、ニーズとのミスマッチによる問題も起こりうる。そのためニーズの マッチングサービスや、ニーズにマッチしなかった寄贈本を頒布する取り組みも 行われている。 寄付を募る
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    78 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 千葉市図書館では、児童書を中心とした蔵書を充実させるために寄付を募金箱 に募っている。その方法は2つある。1つは、図書館内に設置した募金箱に寄付 をしてもらうものであり、もう1つは、ふるさと納税を利用して寄付をしてもら うものだ。図書館内に設置された募金箱は、誰でも気軽に募金できる。 ふるさと納税による寄付を受け付ける窓口も、市役所だけではなく図書館にも 設置し、利用者にとって身近な場所で寄付できるようにしている。また除籍資料 のリサイクル時などに館内に募金箱を設置することで、資料を持ち帰る利用者に も募金を促している。 募金・寄付金の報告はFacebookページで随時行い、その月の募金・寄付額と 累積での寄付額、寄付者名を記載し、寄付者への謝意と図書館の成果が端的に 公表されている。2012年度には募金29万4207円、寄付金32万1252円の合計61万 5459円が寄せられた。この寄付へのお礼と入館者1000万人達成記念とを合わせて、 感謝イベントも行われた。 このように積極的な寄付の募集と報告によって、図書館への募金・寄付を身近 なものにしている。図書館内での募金箱の設置は、千葉市図書館のほかにも鎌倉 市立図書館( 神奈川県鎌倉市)や二宮町図書館( 神奈川県二宮町)などでも行 われている。 000 千葉市図書館(千葉県千葉市) Case 06 館内に募金箱を設置 ■参考資料 1. 千葉市図書館 Facebook ページ   http://www.facebook.com/Chiba.City.Central.Library 2. 所属長メッセージ(中央図書館長)    http://www.city.chiba.jp/kyoiku/shogaigakushu/chuotoshokan/kanri/message.html ■千葉市図書館 http://www.library.city.chiba.jp/ 千葉県千葉市中央区弁天 3-7-7  Tel: 043-287-3980 Fax: 043-287-4074
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    79ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 出典:千葉市図書館 Facebook ページ  提供:千葉市中央図書館
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    80 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 慶應義塾図書館が募る寄付の目的は、書庫の整備である。慶應義塾図書館(三 田メディアセンター)には2012年に開館100年を迎えた旧館、1982年に開館した 新館のほか南館図書室、研究室棟地下書庫の4つの建物があるが、書庫の狭隘化 が問題になっている。そこで寄付を募り、書庫を整備しようというのだ。 寄付者は税制上の控除措置が受けられる。また慶應義塾の機関紙「三田評論」 と図書館サイトへ氏名が掲載される。 寄付額は2013年4月5日現在で、312万1000円である。図書館への指定寄付のほ か、慶應義塾大学への支援として、「 慶應義塾維持会」や「 教育振興基金」など がある。大学のほかの事業への指定寄付もある。 000 慶應義塾図書館(東京都港区) Case 07 書庫設備のために寄付を募る ■参考資料 1. 図書館施設整備指定寄付金のお願い    http://www.mita.lib.keio.ac.jp/guide/donation.html 2.「図書館施設整備指定寄付金」申込者芳名   http://www.mita.lib.keio.ac.jp/guide/Contributor.html 3. 慶應義塾へのご支援をお考えの皆様    http://www.kikin.keio.ac.jp/ ■慶應義塾図書館(三田メディアセンター) http://www.mita.lib.keio.ac.jp/ 東京都港区三田 2-15-45  Tel: 03-5841-2646 Fax: 03-5841-2611 出典:慶應義塾図書館公式サイト
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    81ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 広島大学図書館では、活動助成金を募っている。これは図書館の学術資料や地 域住民へのサービスの充実を図るためのものだ。 この助成金に寄付をすると、税法上の寄付金控除の対象になり、1万円以上の 寄付をすると、1年間有効の「広島大学図書館フレンドリー利用証」が発行される。 この利用証を持つと、広島大学の学生と同様のサービスが図書館で受けられるほ か、企画展示の案内やメールマガジンの購読、地域・国際交流プラザの優先申込 が受けられる。この利用証を持たない一般学外利用者でも、貸出などのサービス を受けられるが、書庫に入庫できないなどの制限がある。 寄付をしてくれた人への利用証の発行が、図書館利用の対価ととられる懸念に 対しては、あくまでも寄付のお礼として利用証を発行し、利用証を持つことで受 けられる図書館サービスについては学部生と同等程度、それに図書館からのお知 らせと地域貢献事業をプラスしたものとして制度設計がされている。 000 広島大学図書館(広島県東広島市)  Case 08 寄付者に、フレンドリー利用証を発行 ■参考資料 1.「広島大学図書館は活動助成金(図書館への寄附)を募っています。」   広島大学図書館   http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/friendly_annai/pamphlet.html 2.「広島大学図書館の社会貢献事業 :『図書館フレンドリー利用証』と『地域交流プラザ』」  板谷茂、大学図書館研究 no.76、15-20、2006 年 3 月  http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00021552 ■広島大学図書館 http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/ 広島県東広島市鏡山 1-2-2  Tel: 082-424-6214 Fax: 082-424-6204 E-mail: tosho-fukyu-floor@office.hiroshima-u.ac.jp
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    82 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 東京大学総合図書館では、図書館建て替えのために寄付金を募っている。この 募集では、どのような図書館を作るのかが「 アカデミック・コモンズ」計画と して明確に示され募集金額、募集時期も明示されている。 また、寄付金額によって特典がある。たとえば10万円の寄付で、図書館の銘板 へ名前が掲示され、30万円以上の寄付で、書庫入庫や開架資料の貸出を受けられ る「 総合図書館特別利用証」( 3年間有効)が発行される。東京大学総合図書館で は、学外利用者でも手続きをすれば閲覧はできるが、貸出はできない。もちろん 書庫へは入れない。これらが利用できる特別利用証が発行されるのである。300 万円以上の寄付で、この特別利用証の有効期限が終身となる。 また、新図書館計画に関する専用のFacebookページも開設されている。図書館 サイトでの詳細な情報提供と、Facebookによるリアルタイムな情報提供により、 積極的な情報発信が行われている。 000 東京大学総合図書館(東京都文京区) Case 09 300万以上の寄付で終身の特別利用証を発行 ■参考資料 1. 東京大学新図書館「アカデミック・コモンズ」計画    http://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt31.html 2.「東京大学新図書館計画アカデミック・コモンズ寄附のお願い」   新パンフレット[PDF 版・2013 年 4 月]    http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/koho/ac/pamphlet.pdf 3. 東京大学学内広報第 1434 号:特集「新図書館計画」全貌現る    http://www.u-tokyo.ac.jp/gen03/kouhou/1434/02features.html 4. 東京大学新図書館計画 Facebook ページ    http://www.facebook.com/TodaiNewLibrary ■東京大学総合図書館 http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/sogoto/ 東京都文京区本郷 7-3-1  Tel: 03-5841-2646 Fax: 03-5841-2611
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    83ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 新しく建設されるスペース「ライブラリー・プラザ」の建築イメージの模型             提供:東京大学
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    84 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 船橋市図書館では、東日本大震災で被災した西図書館の建て替えを検討して いる。その西図書館建築を支援するために、市民から3000万円の寄付があった。 これは船橋図書館に対する寄付ではなく、あくまで船橋市西図書館を建て直す、 その建設費として寄付されたものだ。 船橋市図書館では、その寄付金を元に「船橋市西図書館整備基金」を設置した。 これは上記の寄付をそのまま受け取ると、自治体の一般会計に繰り入れられるの で、寄付者の意思を尊重できないからである。 船橋市西図書館は、現在は一時的に移転して開館しているが、移転先も手狭な ため、図書館の建て替えが検討されている。この寄付金は、その建て替えに生か してほしいと寄付されたものだ。東日本大震災で被災した図書館へは、さまざま な支援が行われているが、これもその一事例である。 000 船橋市図書館(千葉県船橋市) Case 10 基金で、被災した図書館の建て替えを目指す ■参考資料 1.「「船橋市西図書館整備基金」を設置しました」船橋市、2012 年 10 月 5 日   http://www.city.funabashi.chiba.jp/kurashi/study/0001/p023031.html 2.「 新図書館に 3000 万円 匿名市民が船橋市に寄付」千葉日報、2012 年 9 月 4 日   http://www.chibanippo.co.jp/c/news/local/99367 3. 船橋市西図書館整備基金条例、2012 年 10 月 2 日   http://www.city.funabashi.chiba.jp/reiki_int/reiki_honbun/ag00509881.html ■船橋市図書館 http://www.city.funabashi.chiba.jp/shisetsu/toshokankominkan/0001/0005/0001/library.html 千葉県船橋市本町 4-38-28  Tel: 047-460-1311 Fax: 047-421-3230 被災した旧・船橋西図書館 撮影:高梨涼子 撮影日:2013 年 5 月 22 日
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    85ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 恵那市中央図書館(岐阜県恵那市) Case 11 図書館まるごと寄贈を受ける 恵那市中央図書館は、財団法人伊藤青少年育成奨学会から、図書館施設に対す る総事業費10億円と2万3000冊の資料の寄贈を受けて、2007年7月7日に開館した。 伊藤青少年育成奨学会は、恵那市内に本社を置くスーパーマーケットとホームセ ンターを中心に事業を展開している株式会社バローの創業者である伊藤喜美氏の 個人資産の一部を基本資産とした財団だ。同会は、青少年の健全育成や地域社会 の活性化に寄与するために事業を行っており、恵那市中央図書館の寄付のほか、 奨学金やスポーツ活動への資金提供も行っている。 同館では開館後も「 恵那市図書館基金」を設置し、広く寄付・寄贈を受け付 けている。現金での寄付は、恵那市が行っているふるさと納税制度「 ふるさと えな応援寄付金制度」を通しても行える。継続して寄付・寄贈を受け付けている ことで、2011年度には個人・団体から80万円の寄付があった。これらの寄付は、 図書館の蔵書の充実や運営費にあてられている。 ■参考資料 1.「図書館の概要」恵那市中央図書館 http://library.city.ena.lg.jp/information/outline/ 2.「平成 24 年度(2012 年度)図書館要覧」恵那市中央図書館、2012 年 6 月    http://library.city.ena.lg.jp/index.php/download_file/172/289/ 3. 趣意書、財団法人伊藤青少年育成奨学会、2006 年 4 月 11 日   http://library.city.ena.lg.jp/index.php/download_file/44/108/ 4. 財団法人伊藤青少年育成奨学会 http://www.ito-zaidan.or.jp/ 5. 株式会社バロー http://www.valor.co.jp/vghp/ 6.「ふるさとえな応援寄付金制度」恵那市  http://www.city.ena.lg.jp/shisei/administration/finance/furusato/ ■恵那市中央図書館 http://library.city.ena.lg.jp/ 岐阜県恵那市長島町中野 2-2-5 Tel: 0573-25-5120 Fax: 0573-25-7036 撮影:岡本真 撮影日:2011 年 6 月 11 日
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    86 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 尾鷲(おわせ)市立図書館(三重県尾鷲市) Case 12 地域の風習と寄付を組み合わせる 尾鷲( おわせ)市立図書館では、地域の風習であるまき銭や厄祝いを簡素に し、浮いた費用を図書館への寄付を促す「寿文庫」という取り組みを行っている。 まき銭とはこの地域の風習で、厄年の人が神社へ厄落としのお参りに行った帰り に、道にお金をまき、そのお金を拾った人がお金を使うことで厄を落とす、とい うものである。厄祝いも同様に、厄年の人が宴会などでお金を使うと厄が落ちる、 という風習だ。 「 寿文庫」は1966年( 昭和41年)から行われており、47年間で2035万円の寄 付があった。この寄付は、図書館が事務局となり住民と一緒に運営している寿文 庫運営委員会によって実施されており、寄付金は利用者からのリクエスト本の購 入や、ふだん買うことが難しい高額本、運営委員会がお薦めする本などの購入に あてられている。 寿文庫は常設ではなく、厄落としの期間にのみ寄付が集められている。その期 間中は図書館内にも特設コーナーが設けられ、地元の高校の協力のもと、ポス ター展も行われている。期間が終わると、寿文庫で購入された本は通常の書架に 納められるが、ラベルが貼られて寿文庫の本であることがわかるようになってい る。地域の風習を大切にしながら寄付を募るこの取り組みが、図書館と住民の恊 働による地域に根付いた活動として、50年近くも続けられているということは、 賞賛に値する。 ■参考資料 1.「図書館だよりつみくさ 2013 年 1 月号」尾鷲市立図書館    http://www.city.owase.lg.jp/cmsfiles/contents/0000008/8798/tumikusa1.pdf 2.「図書館だよりつみくさ 2013 年 4 月号」尾鷲市立図書館   http://www.city.owase.lg.jp/cmsfiles/contents/0000009/9168/tsumikusa4.pdf ■尾鷲市立図書館 http://www.city.owase.lg.jp/soshiki_view.php?so_cd1=4&so_cd2=3&so_cd3=3&so_cd4=0&so_cd5=0 三重県尾鷲市中村町 10-41 Tel: 0597-23-8282 Fax: 0597-23-8283 E-mail: tosyokan@city.owase.lg.jp
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    87ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 提供:尾鷲市立図書館 提供:紀勢新聞
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    88 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 佐賀県立図書館では、2007年10月より「メモリアルブック制度」を行っている。 この制度は、結婚・子どもの誕生・入学・定年といった人生の節目や、企業や団 体の記念事業の際に、図書館への寄付を促すものだ。寄付額は、個人は1口2000 円以上、企業・団体は1口5000円以上となっている。この寄付は税法上の控除対 象となる。 この制度では寄付をする際に、図書館に購入してほしい本のジャンルを指定す ることができる。図書館は指定されたジャンルの本を購入し、一定期間、新着資 料のコーナーの一角に展示をする。またこの制度により購入された本には、蔵書 印とは別にメモリアルブックの印が押されており、展示期間が過ぎて書架に入っ た本でも、メモリアルブックで購入された本であることがわかるようになってい る。この制度の特徴は、図書館への寄付にメモリアルな側面を持たせたことで、 寄付という行為へのモチベーションを高めていることである。 提供:佐賀県立図書館 佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市) Case 13 人生の節目に寄付を提案 ■参考資料 1.「県立図書館メモリアルブック制度」佐賀県立図書館    http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/s-memory.html 2.「平成 23 年度(2011 年度)佐賀県立図書館年報」佐賀県立図書館、2012 年 7 月    http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/toshokan/nenpou/!H23.pdf 3.「『メモリアルブック』制度がスタートしました」佐賀県立図書館、県立図書館広報誌  「くすかぜ」 2008 冬号 512 号、2008 年    http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/kusukaze/2008-512/kusukaze512.html ■佐賀県立図書館 http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/ 佐賀県佐賀市城内 2-1-4  Tel: 0952-24-2900 Fax: 0952-25-7049 E-mail: saga-kentosyo@pref.saga.lg.jp
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    89ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 市立小樽図書館では、図書館内に設置した自動販売機の売り上げの一部を、自 動販売機設置業者より寄付されている。この取り組みは北海道コカ・コーラボト リング株式会社からの提案で2010年6月から実施され、2012年度からは北海道キ リンビバレッジサービス株式会社からも実施されている。 各社は、図書館内に設置している自動販売機の売り上げから、1本につき10円 を1年間分まとめて図書館へ寄付している。寄付金は図書館の資料購入費にあて られている。これは自動販売機を設置するにあたり、各社は場所代と電気代のみ を図書館へ納め、売り上げは全て利益としているため、販売利益の一部分を図書 館へ還元する目的で寄付が行われているのである。 寄付金で購入された本には、特にそれとわかる印は押されていないが、寄付で 購入した本のリストを作成し、利用者にわかるようにしている。また自動販売機 にはこの取り組みが明記され、企業と図書館が協力していることをPRしている。 市立小樽図書館(北海道小樽市) Case 14 館内に設置した自販機の売上げを寄付 ■参考資料 1.「地域に愛される図書館運営を応援! 市立小樽図書館へ寄付 ∼ 40 冊の本が仲間入り   しました∼」北海道コカ・コーラボトリング株式会社、2012 年 6 月 8 日    http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/pdf/2012/cola_12061201.pdf ■市立小樽図書館 http://www.city.otaru.lg.jp/simin/sisetu/toshokan/ 北海道小樽市花園 5-1-1  Tel: 0134-22-7726 Fax: 0134-34-0733 E-mail: tosyo-kan@city.otaru.lg.jp 提供:市立小樽図書館
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    90 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 公益財団法人松竹大谷図書館(東京都中央区) Case 15 クラウドファンディングに図書館ならではの引換券 公益財団法人松竹大谷図書館は、株式会社松竹の創業者のひとりである大谷竹 次郎によって1956年に創設され、1959年に開館した専門図書館だ。ここでは松 竹が製作した演劇・映画・日本舞踊・テレビなどを中心にした台本・図書・雑 誌・写真・プログラム・ポスターなどの資料を収集・保存している。 このような歴史と高い専門性を持つ図書館ではあるが、現在は運営が厳しい 状態である。そこで運営資金を得るために、クラウドファンディングによる資 金調達を行った。クラウドファンディングとは、企業や個人が不特定多数の人 から資金を集める仕組みであり、主にインターネットを使って、不特定多数の 人に比較的少額の資金提供を呼び掛け、必要とする金額が集まった時点で支援 が実施される。松竹大谷図書館が利用したクラウドファンディングサービス 「 READYFOR?」では、特定の特典に対する引換券として支援額が設定されてお り、支援者は支援したい金額の引換券を購入することで支援を行う。ただし、引 換券の購入金額が目標金額に達成しない場合には、支援は行われない。 松竹大谷図書館で行ったクラウドファンディングによる資金調達は、当初200 万円を集めることを目標に2012年9月3日に始まり、最終的に支援者272名、達成 金額357万9000円で資金調達に成功した。 このプロジェクトが成功した秘訣は、専門図書館ならではの引換券を設定した ことだろう。同館は引換券として、オリジナルの台本カバーへの支援者名の記載 や、ふだんは立ち入りができない書庫内を含めた図書館見学会を設定している。 またREADYFOR?では、プロジェクトページで情報を発信し、TwitterやFacebook で拡散しやすくしている。この結果、新聞などのメディアで取り上げられ、さら にプロジェクトが広く知られるようになり、この図書館を知らなかった人たちの 関心も高まった。結果として支援を集めるだけではなく、社会に松竹大谷図書館 の存在を高める広報にもつながり、認知度が高まった。
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    91ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考資料 1.「歌舞伎や『寅さん』、大切な日本の文化の宝箱を守る。」READYFOR?、2012 年 9 月 3 日   https://readyfor.jp/projects/ootanitosyokan 2.「演劇・映画専門の図書館、松竹大谷図書館が支援プロジェクト開始」ぴあ映画生活館   http://cinema.pia.co.jp/news/5754/47901/ 3.「蔵書 43 万点以上の演劇・映画専門「大谷図書館」、運営費募る」銀座経済新聞、2012 年 9 月 25 日   http://ginza.keizai.biz/headline/2071/ ■松竹大谷図書館 http://www.shochiku.co.jp/shochiku-otani-toshokan/ 東京都中央区築地 1-13-1 ADK 松竹スクエア 3F Tel: 03-5550-1694 出典:「READYFOR ?」プロジェクトページより
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    92 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 図書館が寄贈の受け入れを公けにしていなくても、図書館に本を寄贈したいと いう利用者のニーズは多い。蔵書を買うための資料費が年々減りつつある図書館 にとって、本の寄贈は資料費をかけずに蔵書を構築する手段として活用できるが、 集まった本を選別する労力と覚悟も必要である。図書館のニーズにマッチしない 寄贈本も数多く集まるからだ。 そこでミスマッチを防ぐために刊行年の新しい本、予約が多数ある本に寄贈を 限定する事例も多い。なかには本のタイトルを指定して、寄贈を募集している例 もある。そのほかにも地域資料などジャンルを指定し、市販されていない資料や 絶版などで入手が困難な資料の寄贈を募る事例がある。これらは購入では入手で きない資料群である。この場合、寄贈が図書館の蔵書コレクション構築の要に なっているのである。 図書館のニーズと実際に寄贈される本とのミスマッチを防ぐために、寄贈を受 けたい図書館と、寄贈したい人のマッチングを手掛ける事業も行われているが、 その取り組みはまだごく一部のものである。 図書館でマッチしなかった本を無駄にしないための取り組みとしては、学校図 書館などの他の施設に譲ったり、無料または有償で利用者に頒布して再活用する 取り組みもある。とはいえこうした本の頒布が、地元の書店や古書店などの営業 に影響する可能性もあるため、あくまで図書館の資料費や蔵書を補うことを目的 として、本の寄贈を募集することが望ましい。販売によって得た収益金で本を購 入するときも、地元書店を利用するなど地元経済への配慮が必要である。 本の寄贈を募る
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    93ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 東京都立図書館では、2009年5月から多摩図書館に「 東京マガジンバンク」を 設置している。これは約1万6000誌という多種多様な雑誌を収集・分類・保存し、 閲覧に供しているものである。 東京マガジンバンクは、雑誌コレクションの中で所蔵できていない号を補うた めに、寄贈を募っている。雑誌は次の号が刊行されると、バックナンバーの入手 が難しくなりがちだ。なんらかの理由で欠号になってしまうと、あとから購入す るのは難しいものである。そのために、その号を持っている人へ寄贈を呼びかけ ているのだ。 寄贈は資金調達とは、直接は結びつかない。しかし本来であれば購入に資金が 必要だった部分を補う意味で、寄贈もまた資金調達の一手段である。また特色の あるコレクションを構築していくためには、重要な取り組みでもある。 また東京都立中央図書館、多摩図書館とも、雑誌は寄贈されるケースがかなり 多い。中央図書館では受け入れている雑誌のうち62.5%が寄贈によるもの、多摩 図書館でも48.9%が寄贈によるものである(「 東京都立図書館平成21年度( 2009 年度)統計」より)。このようにもともとのコレクションから、かなりの部分が 寄贈によってまかなわれており、資料の効果的な収集にひと役買っている。  東京都立多摩図書館(東京都立川市) Case 16 所蔵できない雑誌の号を寄贈で募る ■参考資料 1.「東京マガジンバンク所蔵雑誌欠号寄贈のお願い」東京都立多摩図書館、2012 年 7 月   http://www.library.metro.tokyo.jp/about_us/syusyu_hozon/tabid/2096/Default.aspx   東京都港区三田 2-15-45    Tel: 03-5841-2646 Fax: 03-5841-2611 ■東京都立多摩図書館 http://www.library.metro.tokyo.jp/Default.aspx 東京都立川市錦町 6-3-1  Tel: 042-524-7186 提供:東京都立多摩図書館 東京マガジンバンク
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    94 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 神奈川県立川崎図書館では、社史をコレクションしている。このコレクショ ンは約1万6000点という全国有数の規模を誇る。しかし社史は一般の書籍と違い、 書籍の流通経路には乗らないため入手が難しい。 そこで川崎図書館では、企業や団体に社史の寄贈を募っている。図書館のサイ トにも寄贈のお願いを掲載しているが、それだけではなく日頃から社史の刊行情 報をチェックし、寄贈依頼を行っている。その積極的な姿勢が全国有数のコレク ション構築につながっているのだ。 また社史コレクションのPRのために広報誌も発行している。そこにも寄贈の お願いが掲載されている。どのような資料があるのか、どのような活用ができる のか、どのように収集しているのかがわかり、社史を身近に感じられる。 寄贈を受けるということは、寄贈された本の価格分の寄付金を受けるのと同等 といえる。まして非売品である社史は、金銭では測りきれない価値がある。この ようなコレクションが図書館の価値を生むといえるだろう。 神奈川県立川崎図書館(神奈川県川崎市) Case 17 全国有数の社史コレクションを寄贈で作る ■参考資料 1.「新たに社史を刊行されました皆様に、資料のご寄贈をお願い申し上げます。」   http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/information/osirase08008.htm 2. 社楽(社史室情報誌)、神奈川県立川崎図書館   http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku.htm 3.「【連載】県立図書館「廃止」を問う(6)=二重行政批判の矢面に大阪・中之島/神奈川」   神奈川新聞、2013 年 2 月 4 日   http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1302040011/ ■神奈川県立川崎図書館 http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/ 神奈川県川崎市川崎区富士見 2-1-4 Tel: 044-233-4537 Fax: 044-210-1146 撮影:岡本真 撮影日:2010 年 2 月 10 日
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    95ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 横浜市港北図書館は、市民と恊働することで図書館の蔵書の充実をはかる仕組 みがある。その仕組みとは、まず友の会が寄贈本を集め、そのうち図書館が必要 とするものは寄贈し、それ以外の本は古本市を開いて販売。販売して得た収益金 は、図書館に寄贈するための本の購入にあてる、というものだ。 このサイクルにより、友の会は2012年10月1日∼10日までに、市民から約6400 冊の本を集めた。そのうち1700冊が図書館へ寄贈され、残りの本は、10月28日 に古本市で販売された。その売り上げの約4万円分は、図書館と相談したうえで、 図書館が必要とする本を友の会が購入し寄贈している。 横浜市港北図書館における年間の資料受入数は、約9100冊である( このうち、 購入は約5400冊)。これを補うものとして、友の会が募った1700冊はかなりの割 合を占める。図書館が自らの活動で資金を集めるのではなく、友の会が本と資金 を集めて図書館をサポートするという横浜市港北図書館の試みは、市民と図書館 の協働の一例といえる。 横浜市港北図書館(神奈川県横浜市) Case 18 友の会が寄贈本を集め販売 ■参考資料 1.「図書寄贈のお礼」横浜市港北図書館、港北図書館からのお知らせ    http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/chiiki/kohoku/ 2.「蔵書支援プロジェクト」港北図書館友の会     https://sites.google.com/site/kouhokutosyokan/oshirase/morebooks ■横浜市港北図書館 http://www.city.yokohama.lg.jp/ kyoiku/library/chiiki/kohoku/ 神奈川県横浜市港北区菊名 6-18-10  Tel: 045-421-1211 Fax: 045-431-5212 提供:横浜市港北図書館
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    96 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 矢祭もったいない図書館は、2006年に本の寄贈を全国に呼びかけて開館した 図書館である。呼びかけから1年で約40万冊を寄贈で集めた。その成果を受けて 2007年1月、ほぼ寄贈本だけを所蔵する図書館として開館した。 矢祭町にはもともと図書館がなかったが、住民アンケートで図書館を求める要 望が第1位になり、図書館を作る話が持ち上がった。しかし年間予算が30億円の 町に新しい図書館を作るのは難しい。そこで持ち上がったのが、寄贈による図書 館づくりだったのだ。 しかし寄贈で本を集めれば、図書館を作れるわけではない。図書館を作るため には、蔵書として管理しなければならない。40万冊もの本が全国から集まった 矢祭町では、町の助役から住民まで、町全体が一丸となって本を整理した。全国 に本の寄贈を求めるアピール力、町が一丸となって図書館を作り上げる覚悟と労 力が、矢祭町の図書館を作り上げたといえるだろう。 それでも全く課題がないわけではない。寄贈本には重複がたくさんあるので、 40万冊集めたといっても、重複を考えれば実質のタイトル数はもっと少ないは ずだ。また収蔵能力を超えたため、現在は新規の寄贈受入を制限している。今は 比較的新しい本もあるが、将来的には新しい本のない図書館になってしまう可能 性もある。 だが、そこは改善していけばいいことである。実際、図書館に集まった本を元 に、2007年10月には「 もったいない文庫」を各地区の集会所など25ヶ所開設し、 町内会全域でサービスしている。また、学校図書館への配本も始めている。いわ ば町中が図書館になり始めているのである。さらに子ども司書を養成するなど、 子どもへの読書活動を推進するための試みが活発に行われている。寄贈による図 書館という話題性だけではなく、次なる展開へ歩み始めているのだ。 矢祭もったいない図書館(福島県矢祭町) Case 19 寄贈本だけを所蔵する図書館
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    97ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考資料 1.「矢祭もったいない図書館運営委員会」福島県   http://www.pref.fukushima.jp/jinji/omg/bunschool/PDF/kennan01.pdf 2.「『矢祭もったいない文庫』概要」矢祭町   http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/view.rbz?cd=75 3.「40 万冊のご寄贈を頂きありがとうございました。」矢祭町    http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/view.rbz?cd=68 4.「報告・矢祭町から「矢祭もったいない図書館」開館す !!」  齊藤守保、みんなの図書館(362)、57-61、2007 年 6 月 5.「自治体の経営戦略と図書館のあり方−福島県矢祭町の事例を通じて考える」   山本順一、図書館評論(48)、1-14、2007 年 7 月 6.「矢祭もったいない図書館を訪ねて」   中沢孝之、図書館評論(48)、15-23、2007 年 7 月 ■矢祭もったいない図書館 http://mottainai-toshokan.com/ 福島県矢祭町大字東舘字石田 25  Tel: 0247-46-4646 Fax: 0247-46-4646  E-mail: mottainai@educet01.plala.or.jp 提供:横浜市港北図書館
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    98 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 東松島市図書館は、Amazonのほしい物リストを使って寄贈本を募集している。 市民による寄贈をただ受け身で待つのではなく、図書館が必要としている本を積 極的に公表し、寄贈を求めているのである。 Amazonのほしい物リストとは、ほしい物をリストにして公表し、そのリスト を見た人が代わりに購入し、Amazonがリストの公開者まで届けるという、言わ ばほしい物をプレゼントしてもらうというサービスである。 図書館が蔵書の不足を寄贈で補うのはよく行われているが、多くの場合、寄贈 してほしい本を指定せず、寄贈された本の中から受入する本を選び出している。 しかし寄贈される本のなかには図書館が不要とする本も多く、せっかくの寄贈が 無駄になってしまうことも多い。それを防ぐためにも、あらかじめ寄贈してほし い本を公表しているのだ。東松山市図書館場合は、この公表先がAmazonであり、 寄贈してほしい本の公表と購入手段の提供を一緒に行っているのである。 同様にAmazonのほしい物リストを使って寄贈本を集めている図書館として、 南三陸町図書館(宮城県南三陸町)がある。 東松島市図書館(宮城県東松島市) Case 20 「Amazonほしい物リスト」を活用した寄贈 ■参考資料 1.「Code4Lib JAPAN2011 年 8 月選定」Code4Lib JAPAN、2011 年 8 月 31 日   http://www.code4lib.jp/selection/ 2. たすけあおう Nippon 東日本大震災ほしい物リスト、Amazon   http://www.amazon.co.jp/wishlist/2PZIMTSXH8VUO 3.「本の支援ありがとうございます!」東松島市立図書館   http://www.lib-city-hm.jp/lib/2012.top/010.help%20school/help%20school.html 4.「東日本大震災に図書館はどう向き合うか」岡本真、東京都図書館協会報 No.92、    2012 年 6 月 http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/15/pdf/tla92.pdf ■東松島市図書館 http://www.lib-city-hm.jp/lib/2011y-library%20top/ 宮城県東松島市矢本字大溜 1-1 Tel: 0225-82-1120 Fax: 0225-82-1121
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    99ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 出典:Amazon ほしい物リスト 東松島市図書館のページ
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    100 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 大阪市立図書館(大阪府大阪市) Case 21 寄贈本にメッセージ 大阪市立図書館では寄贈本を受け付ける際に、寄贈者からのコメントをもらっ ている。コメントはその本にまつわる思い出や感想で、寄せられたコメントのう ち公開可能なものは、図書館の公式サイトで公開される。公開はサイト上のみで、 館内での掲示などでは特に行わない。 この取り組みにより、寄贈者は寄贈する本の思いを図書館に伝えることができ る。またコメントを公開することで、ほかの利用者が本を選ぶときの参考にもな る。図書館としても選書の参考になるため、寄せられたコメントには全て目を通 している。利用者の本への想いを掬いとることで、図書館が提供できるサービス をより豊かなものへとつなげている。 出典:大阪市立図書館公式サイト ■参考資料 1.「大阪市立図書館から図書寄贈のお願い」大阪市立図書館   http://www.oml.city.osaka.jp/kizou/kizoutop.html 2.「私の一冊(これまでいただいたコメント)」大阪市立図書館   http://www.oml.city.osaka.jp/kizou/my1book.html ■大阪市立図書館 http://www.oml.city.osaka.jp/ 大阪府大阪市西区北堀江 4-3-2  Tel: 06-6539-3300(インフォメーション) Fax: 06-6539-3335
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    101ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 「 ほんぞうネット」とは、学校や幼稚園の本を増やすために、兵庫県教育委員 会が開設したサイトである。 ほんぞうネットでは兵庫県内の公立の各幼稚園、小学校、中学校、高校、特別 支援学校などが寄贈を求める本を登録している。本を寄贈したい人は、このサイ トから必要とされている寄贈本や寄贈先を探し、各施設に連絡して本を送るとい う仕組みだ。本を送る方法は、寄贈者と受け入れ施設が話し合って決める。この 仕組みを利用して、2008年度には5万1270冊の寄贈があった。 この仕組みを利用することで、寄贈を希望する施設は不要な寄贈を防ぎ、ほし い本を寄贈してもらえる。本を寄贈したい人も、寄贈したい本を無駄にすること なく、寄贈を希望する施設へ本を届けられる。このような仕組みによって、ニー ズのミスマッチを防ぎ、寄贈本を有効活用している。 出典:ほんぞうネット公式サイト ほんぞうネット(兵庫県教育委員会) Case 22 寄贈者と図書館をマッチング(1) ■ほんぞうネット http://book.hyogo-c.ed.jp/ 兵庫県神戸市中央区下山手通 5-10-1 兵庫県教育委員会義務教育課中学校教育係 Tel: 078-341-7711(内線 5725) Fax: 078-362-4286  E-mail: gimu_tosho@pref.hyogo.jp
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    102 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 「 みんなの本ネット」とは、大分県立図書館が提供する寄贈本のマッチング サービスである。本サイトには大分県内の公立の各小学校、中学校、高校、特別 支援学校、公共図書館などが寄贈を必要としている本と、市民などからの寄贈可 能な本が登録されている。 この仕組みによって本を寄贈したい人は、必要とされている本とその受け入れ 先といった具体的な情報を検索によって知ることができ、施設側も寄贈可能な本 をリアルタイムで知ることができる。寄贈する側、受け入れる側の双方が必要と する情報をリアルタイムで入手することで、寄贈のニーズを無駄なくマッチング できる。 大分県立図書館は寄贈本の情報を提供するプラットフォームのみを提供してい るので、寄贈のニーズがマッチした後、本のやり取りを直接するのは、寄贈者と 寄贈を希望する施設である。 出典:みんなの本ネット公式サイト みんなの本ネット(大分県立図書館) Case 23 寄贈者と図書館をマッチング(2) ■みんなの本ネット https://www.minnanohon.net/ 大分県大分市大字駄原 587-1 大分県立図書館  Tel: 097-546-9972(代表) Fax: 097-546-9985
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    104 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 雑誌スポンサー制度を利用する 「 雑誌スポンサー制度」とは、図書館が購読・提供している雑誌の購入を企業 や団体が肩代わりすることで、その雑誌にかけるカバーなどに企業の広告を掲載 する制度である。全国的には雑誌スポンサー制度と呼んでいる図書館が多いが、 野洲( やす)図書館( 滋賀県野洲市)、美唄( びばい)市立図書館( 北海道美 唄市)など一部の図書館自治体では「雑誌オーナー制度」と呼んでいる。 図書館にとっては、雑誌の購入費を負担してもらえるというメリットがある。 スポンサーになった広告主は、図書館の中でも利用頻度の高い雑誌に広告を出せ るというメリットがある。 図書館のサイト上で確認できる雑誌スポンサー制度の導入自治体は、108自治 体である。導入開始時期が一番早いのは、確認できたところで徳島県立図書館 ( 徳島県徳島市)の2009年10月からである。広告主( スポンサー)は企業や団 体・商店に限定している館が多いが、阪南市立図書館( 大阪府阪南市)など個 人でも広告主として参加できる図書館もある。 スポンサーの募集方法や館内での広告の掲示方法は、多少の違いはあるものの、 全国でほぼ共通している。スポンサーの募集方法としては、図書館が直接スポン サーを募る例がほとんどである。川越市立図書館( 埼玉県川越市)など一部の 自治体では地元のNPOが仲介し、スポンサーはそのNPOと契約、広告は図書館 へNPOが納品する、という形式をとっている。 広告の掲示方法は、最新号の雑誌のカバー表・裏だけではなく、雑誌架にも広 告を貼るスペースを設ける図書館や、スポンサー企業の紹介のパンフレットなど の配布場所を用意している図書館もある。また雑誌そのものを寄贈するのではな く、広告掲載料という形でスポンサーを募集している図書館もある。ただし、広 告掲載料という形でスポンサーを募集しているのは、ごくわずかの図書館である。
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    105ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■関連情報 1.「図書館に雑誌スポンサー費用負担、表紙に企業名」47NEWS、2010年6月4日   http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010060401000030.html 2.「 雑誌スポンサー半減 県立図書館の財政難に追い打ち」徳島新聞社、2012年5月 20日   http://www.topics.or.jp/localNews/news/2012/05/2012_133749229543.html 3.「県立図書館、雑誌カバー広告 条件緩和 : 徳島 : 地域」読売新聞、2012年7月11日   http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokushima/news/20120710-OYT8T01452.htm 4.「『雑誌オーナー制度』の導入について」藤井亜希子、大阪府立中之島図書館図書   館職員スキルアップ研修「連携しよう!」、2012年3月8日   http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/event/skillup2011.html ■雑誌スポンサー制度・雑誌オーナー制度 実施図書館(2013年4月28日現在 108自治体) ※導入時期は募集開始か、実際にスタートした日のどちらかとしている。 ・一宮市立図書館(愛知県一宮市)導入時期:2013年1月 ・尾張旭市立図書館(愛知県尾張旭市)導入時期:2013年3月 ・北名古屋市図書館(愛知県北名古屋市)導入時期:2011年11月 ・江南市立図書館(愛知県江南市)導入時期:2011年2月 ・東郷町立図書館(愛知県東郷町)導入時期:2012年12月 ・豊明市立図書館(愛知県豊明市)導入時期:2013年1月 ・長久手市立中央図書館(愛知県長久手市)導入時期:2013年3月 ・西尾市立図書館(愛知県西尾市)導入時期:2011年6月 ・日進市立図書館(愛知県日進市)導入時期:2012年4月 ・八戸市立図書館(青森県八戸市)導入時期:2012年7月 ・秋田県立図書館(秋田県)導入時期:2012年3月 ・横手市立図書館(秋田県横手市)導入時期:2012年10月 ・潮来市立図書館(茨城県潮来市)導入時期:2012年11月 ・笠間市立図書館(茨城県笠間市)導入時期:2012年4月 ・土浦市立図書館(茨城県土浦市)導入時期:2012年4月 ・取手市立図書館(茨城県取手市)導入時期:2012年2月 ・久慈市立図書館(岩手県久慈市)導入時期:2012年6月 ・宇和島市立図書館(愛媛県宇和島市)導入時期:2013年4月 ・新居浜市立図書館(愛媛県新居浜市)導入時期:2012年7月 ・松山市立図書館(愛媛県松山市)導入時期:2012年12月 ・大分市民図書館(大分県大分市)導入時期:2012年4月 ・和泉市立図書館(大阪府和泉市)導入時期:2012年8月 ・岸和田市立図書館(大阪府岸和田市)導入時期:2011年度 ・熊取町立図書館(大阪府熊取町)導入時期:2011年度
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    106 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 ・羽曳野市立図書館(大阪府羽曳野市)導入時期:2011年6月 ・阪南市立図書館(大阪府阪南市)導入時期:不明 ・岡山県立図書館(岡山県)導入時期:2012年4月 ・赤磐市立図書館(岡山県赤磐市)導入時期:2012年12月 ・浦添市立図書館(沖縄県浦添市)導入時期:2013年2月 ・豊見城市立中央図書館(沖縄県豊見城市)導入時期:不明 ・高松市図書館(香川県高松市)導入時期:2013年3月 ・錦江町中央公民館(鹿児島県錦江町)導入時期:2011年7月 ・厚木市立中央図書館(神奈川県厚木市)導入時期:不明 ・伊勢原市立図書館(神奈川県伊勢原市)導入時期:不明 ・小田原市立図書館(神奈川県小田原市)導入時期:2011年4月 ・鎌倉市立図書館(神奈川県鎌倉市)導入時期:2013年1月 ・相模原市立図書館(神奈川県相模原市)導入時期:不明 ・平塚市立図書館(神奈川県平塚市)導入時期:2012年3月 ・横浜市立図書館(神奈川県横浜市)導入時期:不明 ・岐阜県図書館(岐阜県)導入時期:2010年5月 ・各務原市立中央図書館(岐阜県各務原市)導入時期:2011年9月 ・岐南町図書館(岐阜県岐南町)導入時期:2012年6月 ・山県市立図書館(岐阜県山県市)導入時期:2013年4月 ・木津川市立図書館(京都府木津川市)導入時期:2012年6月 ・城陽市立図書館(京都府城陽市)導入時期:2013年2月 ・上尾市立図書館(埼玉県上尾市)導入時期:2011年10月 ・朝霞市立図書館(埼玉県朝霞市)導入時期:2012年6月 ・春日部市立図書館(埼玉県春日部市)導入時期:2011年1月 ・川越市立図書館(埼玉県川越市)導入時期:2012年1月 ・行田市立図書館(埼玉県行田市)導入時期:2013年4月 ・鴻巣市立図書館(埼玉県鴻巣市)導入時期:2011年4月 ・さいたま市立図書館(埼玉県さいたま市)導入時期:2011年1月 ・坂戸市立図書館(埼玉県坂戸市)導入時期:不明 ・幸手市立図書館(埼玉県幸手市)導入時期:2012年10月 ・白岡市立図書館(埼玉県白岡市)導入時期:2012年5月 ・杉戸町立図書館(埼玉県杉戸町)導入時期:2011年5月 ・所沢市立図書館(埼玉県所沢市)導入時期:2013年4月 ・新座市立図書館(埼玉県新座市)導入時期:2012年2月 ・蓮田市図書館(埼玉県蓮田市)導入時期:2012年4月 ・深谷市立図書館(埼玉県深谷市)導入時期:不明 ・ふじみ野市立上福岡図書館(埼玉県ふじみ野市)導入時期:2012年5月 ・三芳町立図書館(埼玉県三芳町)導入時期:不明 ・佐賀県立図書館(佐賀県)導入時期:2011年度 ・佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市)導入時期:不明 ・多賀町立図書館(滋賀県多賀町)導入時期:2012年6月 ・米原市立図書館(滋賀県米原市)導入時期:2012年3月
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    107ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ・野洲市立図書館(滋賀県野洲市)導入時期:2010年度 ・栗東市立図書館(滋賀県栗東市)導入時期:2011年4月 ・磐田市立図書館(静岡県磐田市)導入時期:2011年6月 ・掛川市立図書館(静岡県掛川市)導入時期:2011年9月 ・島田市立図書館(静岡県島田市)導入時期:2011年4月 ・袋井市立図書館(静岡県袋井市)導入時期:2012年4月 ・富士市立図書館(静岡県富士市)導入時期:2012年7月 ・牧之原市立図書館(静岡県牧之原市)導入時期:2012年10月 ・森町立図書館(静岡県森町)導入時期:2013年4月 ・焼津市立図書館(静岡県焼津市)導入時期:2012年4月 ・浜田市立図書館(島根県浜田市)導入時期:2012年9月 ・野田市立図書館(千葉県野田市)導入時期:2012年10月 ・松戸市立図書館(千葉県松戸市)導入時期:2010年12月 ・稲城市立図書館(東京都稲城市)導入時期:2013年1月 ・台東区立図書館(東京都台東区)導入時期:2013年2月 ・徳島県立図書館(徳島県)導入時期:2009年10月 ・三好市立図書館(徳島県三好市)導入時期:2010年11月 ・宇都宮市立図書館(栃木県宇都宮市)導入時期:2011年8月 ・小山市立中央図書館(栃木県小山市)導入時期:2010年12月 ・栃木市立大平図書館(栃木県栃木市)導入時期:2012年5月 ・高岡市立図書館(富山県高岡市)導入時期:2013年4月 ・富山市立図書館(富山県富山市)導入時期:2011年5月 ・県立長野図書館(長野県)導入時期:2012年1月 ・奈良県立図書情報館(奈良県)導入時期:2010年11月 ・橿原市立図書館(奈良県橿原市)導入時期:2012年4月 ・田原本町立図書館(奈良県田原本町)導入時期:2012年5月 ・姫路市立図書館(兵庫県姫路市)導入時期:2013年4月 ・広島市立図書館(広島県広島市)導入時期:不明 ・越前市立図書館(福井県越前市)導入時期:不明 ・遠賀町立図書館(福岡県遠賀町)導入時期:不明 ・筑後市立図書館(福岡県筑後市)導入時期:不明 ・宗像市民図書館(福岡県宗像市)導入時期:2013年2月 ・旭川市図書館(北海道旭川市)導入時期:2012年4月 ・帯広市図書館(北海道帯広市)導入時期:2012年5月 ・市立釧路図書館(北海道釧路市)導入時期:2010年10月 ・苫小牧市立中央図書館(北海道苫小牧市)導入時期:2011年4月 ・美唄市立図書館(北海道美唄市)導入時期:2011年3月 ・伊勢市立図書館(三重県伊勢市)導入時期:2010年10月 ・菰野町立図書館(三重県菰野町)導入時期:2011年1月 ・宇部市立図書館(山口県宇部市)導入時期:2011年6月 ・萩市立図書館(山口県萩市)導入時期:2012年3月 ・有田川町図書館(和歌山県有田川町)導入時期:不明
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    108 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 伊勢市立図書館では、伊勢図書館と小俣図書館の2館で2010年10月より雑誌ス ポンサー制度を導入している。2012年8月現在、図書館が受入を対象としている 雑誌65タイトルのうち10タイトル13誌( 複数冊は寄贈されているタイトルがあ るため)にスポンサーがついている。 雑誌スポンサー制度は、図書館が所蔵する雑誌を企業・団体( 以下、スポン サー)が寄贈し、スポンサーは雑誌を寄贈する代わりに雑誌のカバーなどに広告 を掲示する制度である。スポンサーは雑誌の購読料を負担するだけで、図書館に 広告を掲示できる。広告の掲示箇所は、雑誌の最新号のカバーの表面と裏面、そ の雑誌を配架している雑誌架の3ヶ所である。 雑誌は図書館の中でも利用の多い資料だ。また最新号は貸出をしないため、常 に雑誌架にあり、利用者の目にとまりやすい。たとえスポンサーが寄贈した雑誌 が閲覧中であっても、雑誌架にも広告が掲示されているため、閲覧者以外の目に もとまる。また雑誌はテーマが決まっているので、それを読む人はそのテーマに 関心が高い可能性がある。その雑誌に事業内容の近いスポンサーの広告があれば、 それだけ効果が見込める。このように雑誌スポンサーになることは、ターゲット を絞って広告を打つことが可能になるというメリットがあるのだ。 伊勢市立図書館(三重県伊勢市) Case 24 ベーシックな雑誌スポンサー制度導入館 撮影:嶋田綾子 撮影日:2013 年 4 月 14 日
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    109ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考資料 1.「雑誌スポンサー制度の導入」伊勢市、2010 年 10 月 13 日    http://www.city.ise.mie.jp/secure/6718/2210_01.pdf 2.「伊勢市広告事業のご案内」伊勢市  http://www.city.ise.mie.jp/3193.htm 3.「市立図書館雑誌スポンサー募集」伊勢市 http://www.city.ise.mie.jp/4265.htm ■伊勢市立伊勢図書館  http://iselib.city.ise.mie.jp/ 三重県伊勢市八日市場町 13-35  Tel: 0596-21-0077 Fax: 0596-21-0078  E-mail: tosyokan@iselib-mie.jp ■伊勢市立小俣図書館  http://iselib.city.ise.mie.jp/ 三重県伊勢市小俣町本町 2  Tel: 0596-29-3900 Fax: 0596-29-3902  E-mail:obatalib@amigo2.ne.jp
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    110 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 雑誌スポンサー制度の基本形は、図書館が購読する雑誌の購入を企業などが肩 代わりし、その対価としてその雑誌のカバーに広告を掲載するというものである。 このような従来の雑誌スポンサー制度とは異なり、佐賀県立図書館では雑誌の寄 贈を受け入れるのではなく、雑誌のカバーに表示する広告の掲載料をとるという ユニークなものなのである。この取り組みは2011年度から行われている。 広告の掲載対象となる雑誌は、購入雑誌だけではない。対象雑誌の一覧表を見 ると、もともと寄贈で受入している雑誌も、広告掲載の対象なのだ。また、未所 蔵の雑誌であっても、場合によっては受入されることになる。その場合は、スポ ンサーは図書館と雑誌を採用するかどうかを協議したうえで、雑誌の購入費か広 告掲載料のどちらか高い方の金額を納めるのだ。 佐賀県立図書館(佐賀県佐賀市) Case 25 雑誌への広告掲載料をとるモデル ■参考資料 1.「雑誌のカバーに広告を出しませんか∼高校生・中学生に企業の PR をしませんか?∼」   佐賀県立図書館   http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/zassi-sponsor/ 2.「雑誌スポンサーに取り組んでいます」佐賀県立図書館、  「I Love SAGA! ∼佐賀県立図 書館の創造と発信∼」、2013 年 1 月 1 日    http://sagakentosyo.sagafan.jp/e499687.html ■佐賀県立図書館  http://www.tosyo-saga.jp/kentosyo/ 佐賀県佐賀市城内 2-1-41  Tel: 0952-24-2900 Fax: 0952-25-7049 E-mail:saga-kentosyo@pref.saga.lg.jp 撮影:岡本真 撮影日:2013 年 5 月 7 日
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    111ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 川越市立図書館(埼玉県川越市) Case 26 NPOが仲介する雑誌スポンサー制度 川越市立図書館では、2012年1月から雑誌スポンサー制度を導入している。川 越市の雑誌スポンサー制度は、図書館と雑誌を寄贈する企業・団体が直接やり取 りをするのではなく、川越市を拠点するNPO法人地域活性化プラザが仲介して、 手続きを行っている。 企業・団体がスポンサーとなるきっかけは、図書館が声をかけるほか、NPO から声をかける場合、企業・団体側が制度を知って図書館に声をかけてくる場合 などさまざまである。寄贈を募集する雑誌は図書館と企業が話し合って決め、寄 贈によって発生する金銭のやり取りなどの事務手続きはNPOが行うので、図書 館へは雑誌の現物を受入するだけとなる。 このように図書館がスポンサーと直接やり取りをするのではなく、NPOが仲 介する雑誌スポンサー制度を導入している事例は全国的に珍しく、埼玉県内だけ の取り組みである。埼玉県内では雑誌スポンサー制度を導入している17自治体 のうち、8自治体(47.1%)がこのNPO仲介方式を採用している。 川越市立図書館がこの方式を採用した経緯は、雑誌スポンサー制度が市議会で 話題になり、図書館で導入を検討することになった際に、さいたま市と坂戸市が この方式を採用したことによる。また、このNPOが川越市を拠点としているこ とや、通常のスポンサー制度よりも効果が大きいと判断されたことも大きい。 ■参考資料 1. NPO 法人地域活性化プラザ http://www.npo-lap.org/ 2.「『雑誌スポンサー制度』を実施しております。」川越市立図書館   http://www.lib.city.kawagoe.saitama.jp/hp/topic250401.html 3.「図書館への図書・定期刊行物寄贈サポート事業マニュアル策定∼報告∼」   NPO 法人地域活性化プラザ、2011 年 3 月 18 日   http://www.saitamaken-npo.net/html/H23chiiki.pdf ■川越市立図書館  http://www.lib.city.kawagoe.saitama.jp/hp/ 埼玉県川越市三久保町 2-9  Tel: 049-222-0559 Fax: 049-224-7822  E-mail: toshokan@city.kawagoe.saitama.jp
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    112 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 図書館の配布物に、企業などの広告を載せる例が目立つようになってきた。図 書館における広告掲載の事例としてよくみられるのは、図書館サイトでのバナー 広告である。図書館サイトの一角に広告スペースを設け、そこに企業の広告を掲 載するのである。ほかには貸出用レシート、図書館カレンダー、しおり、図書館 報、利用案内、貸出用バッグ、玄関マット、移動図書館車の側面や後方、図書館 内の壁面、パンフレットコーナー、雑誌にかけるカバーなどに掲載する事例が挙 げられる。 貸出用レシートを利用した広告は、レシートを印字するたびに貸出情報ととも に広告が印刷される方式と、事前にレシートの裏面に広告を刷り込んだ感熱紙を 納品し、それに貸出情報を印刷する方式がある。 図書館カレンダーやしおり、図書館報、利用案内などを利用した広告は、利用 者に配るこれらの印刷物に広告を刷り込んで配布する方式である。図書館で広告 を印刷する場合と、広告主が広告を刷り込んだ状態で印刷物として納品する場合 がある。これらは図書館への広告付き寄付といえる。また移動図書館車の側面や 後方、図書館内の壁面に広告を掲載したり、館内に企業紹介のパンフレットコー ナーを設置し、広告スペースを提供する方式もある。 広告掲載する雑誌を寄贈してもらう代わりに、広告を掲載する場所の提供する 雑誌スポンサー制度については別に項を立てて、紹介している。 効果的に広告を得られれば、横浜市のように年間で1000万円以上の収入・経 費節減効果となる例もある( 2010年度)。中小規模の図書館にとっては年間の資 料費に匹敵する額が、横浜市立図書館では広告収入・経費削減効果で得られてい る。公共図書館は、市民利用施設のなかでも利用者数の多い施設のため、広告掲 載箇所などに工夫をすることで、実績を伸ばすことができる。本項では、実績を あげている図書館の事例を紹介していく。 ■参考資料 1.「横浜市立図書館の新たな財源創出の試み−図書館における広告事業の取組−」   文部科学省、「これからの図書館像−実践事例集−」、2008 年 3 月     http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06040715/020.htm 広告を募る
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    113ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 出典:豊中市立図書館公式サイト 豊中市立岡町図書館では、地元の岡町・桜塚商店街で2009年10月から第1金曜 日に行われている「初金市」の日に、岡町図書館で本を借りた人の貸出用レシー トにクーポンを印字している。クーポンの印字箇所は、貸出用レシートの上部で ある。クーポンに続いて、利用者の本の利用状況が印字される。このクーポンは 商店街で買い物をした1店舗分のレシートとして扱われ、3店舗分のクーポンを 集めると抽選会に参加できる。 図書館では現在、クーポン発行のほかに、貸出用レシートへの広告印字を継続 的に行っている。広告掲載費用として、広告主がレシート用紙を図書館へ物納す るため、図書館はレシート用紙の購入費を広告収入から賄える。本事業の目的は 広告収入だけではなく、地域の広告を載せることで地域情報の発信も兼ねている。 豊中市立岡町図書館(大阪府豊中市) Case 27 貸出用レシートにクーポンを印字 ■参考情報 1.「レシート用紙を使い岡町図書館で岡町の商店街『初金市』のクーポン等の広告事業   をしています。」豊中市立図書館   http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/information/hatsukin_3.html 2.「豊中市立図書館の広告事業について∼第一金曜の『初金市』広告スタート∼」   西口光夫、「大阪府立中之島図書館 図書館職員スキルアップ研修『連携しよう!』」、   2012 年 3 月 8 日 http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/event/skillup2011.html 3.「大阪・豊中市立岡町図書館、図書の貸出票に商店街のクーポンを印刷」   カレントアウェアネス、2009 年 10 月 28 日 http://current.ndl.go.jp/node/15078 ■豊中市立岡町図書館 http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/guide/library/okamachi_2.html 大阪府豊中市岡町北 3-4-2  Tel: 06-6843-4553 Fax: 06-6841-3493 E-mail: okamachito@city.toyonaka.osaka.jp
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    114 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 横浜市立図書館は、図書館サイトでのバナー広告の掲載を2005年に始めて以来、 さまざまなスペースを活用して広告掲載を行っている。掲載箇所は図書館サイト のバナー広告を始め、雑誌架や雑誌最新号のカバーなどである。またすでにある サービスに広告を掲載するのではなく、広告を掲載した物品を「広告付き寄付」 として納入することで、図書館の経費を削減する取り組みも行われている。この 例として広告付き玄関マット、図書館カレンダー、貸出用手提げ袋、自動体外式 除細動機(AED)を内蔵した広告モニター付きAEDスタンドが挙げられる。さら に図書の寄贈をしてくれた企業へのお礼として、企業名の入ったシールを図書に 貼るなどしている。 これらの取り組みによって、2011年度には年間1000万円以上の広告収入と経 費の削減効果があった。横浜市では2010年度の予算が14億6533万4000円なので、 広告収入・経費削減効果が予算の0.7%を占めている。横浜市では図書館の予算 額が多いので、大きな数字には見えないが、中小規模の図書館では年間の資料費 に匹敵する額が、広告収入・経費削減効果で得られている。広告収入は特別財源 として次年度の予算に繰り込まれ、反映された図書館の予算は、図書館カードや 広報印刷物などの作成費用にあてられている。これは横浜市の規定により、広告 収入は事業を行う担当部局の当該事業や、関連事業に役立てることを目的にして 横浜市立図書館(神奈川県横浜市) Case 28 図書館への広告掲載事業 撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 10 月 6 日 広告掲載と物品の提供によるライブラリーカフェの実施
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    115ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考資料 1.「横浜市立図書館は積極的に広告事業を行っています!」   横浜市立図書館、2011 年 1 月 18 日     http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201101/images/phpfzkptl.pdf 2.「広告事業のご案内」横浜市立図書館   http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/ad/ 3.「横浜市立図書館の新たな財源創出の試み−図書館における広告事業の取組−」   文部科学省、「これからの図書館像−実践事例集−」、2008 年 3 月   http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06040715/020.htm 4.「平成 19 年度市町村図書館等職員研修<図書館経営>報告」   神奈川県立図書館、2009 年 7 月 1 日   http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/coa/e_coa/coa_back/coaweb_m231/report/repo.htm ■横浜市立中央図書館 http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/ 神奈川県横浜市西区老松町 1  Tel: 045-262-0050 Fax: 045-262-0052 いるからである。 図書館は公共施設の中でも利用が多く、またリピーターが多いことから、広告 効果が高いことを企業へ積極的にアピールした結果、このような多額の効果を得 ている。
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    118 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 多くの図書館では、保管期限が切れた雑誌や発行から年月がたち、利用者の貸 出しが少なくなったなどの理由で除籍した本や、受入されなかった寄贈図書など を利用者へ頒布している。多くの場合、図書館はこれらを無償で配布するが、有 償で頒布している図書館もある。値段設定は廃棄の際に必要となる費用を賄う1 冊10円程度から、利益を考慮して1冊100円程度に設定するなどさまざまだ。 下図のように、除籍資料の頒布は図書館から直接、学校や利用者に寄贈または 頒布される事例だけではなく、友の会などが仲介して販売する事例がある。販売 を行うことが難しい図書館でも、この方法であれば、直接的に除籍資料から利益 を得られなくても、除籍資料を再活用して新しい本に還元できる。 また無償で頒布を実施する際、寄付を募る事例や、図書館が除籍する資料だけ を頒布するのではなく、頒布会にあわせて市民から募った寄贈本を頒布している 事例もある。 除籍資料の頒布は、図書館が持つ資料を無償で利用者に頒布する前に、学校図 書館など関連する施設に寄贈しているケースが多い。図書館が不要とする資料で も、ほかの施設での活用がなされているのである。 資料の廃棄にも費用がかかる。そのため廃棄にかかる費用が節約できることを 考慮すれば、手間賃・工数等で人件費はかかるものの、図書館は間接的に無償頒 布から利益を得ていることになる。 図 書 館 除籍資料 友の会など 利益を寄贈本として還元 寄贈 頒布 頒布 学校など 利用者 除籍資料を販売する
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    119ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 香川大学図書館( 中央館)では、2013年1月に開催した第2回古本市( ブック リユース)で除籍資料を1冊100円で販売した。これは書庫の資料5万冊のうち、 重複している辞書や専門書、2万冊を整理したものである。香川大学図書館の蔵 書数は、62万2282冊( 中央館所蔵分のみ)である。ブックリユース市はただ本 を廃棄するのではなく、高額の専門書を買えない学生や退職してから勉強を再び 始める地域の人のために、除籍資料を学習に役立ててもらおうと始められたもの だ。購入に冊数制限はなく、誰でも購入できる。 廃棄資料の配布を行っている多くの図書館では、除籍資料を無償で配布してい る。香川大学図書館( 中央館)でも、第1回のブックリユースでは、無償配布を していた。しかし第2回以降は、資料の価値を見定めて、有償配布することになっ たのだ。また有償配布するための準備には、学生ボランティアを募集し、ボラン ティアの力を借りて、ブックリース市を運営している。 香川大学図書館(中央館)(香川県高松市) Case 29 除籍資料を1冊、100円で有償配布 ■参考資料 1.「2 万冊お値打ち古本市…香川大図書館」読売新聞、2013 年 1 月 24 日   http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20130123-OYT8T00823.htm 2.「香川大学図書館古本市(ブックリユース)開催について」香川大学、2013 年 1 月 8 日   http://www.kagawa-u.ac.jp/articles/000/010/694/ 3.「図書館学生ボランティアの募集について」  香川大学図書館中央館活動ブログ、2011 年 5 月 11 日   http://kagawaunivlibrary.blogspot.jp/2011/05/blog-post.html ■香川大学図書館(中央館) http://www.lib.kagawa-u.ac.jp/ 香川県高松市幸町1番1号 Tel: 087-832-1245 出典:香川大学図書館中央館活動ブログ
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    120 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 撮影:岡本真 撮影日:2011 年 7 月 24 日 田原市中央図書館では、図書館の隣に設置されたフリースペースの一角に、リ サイクルブックオフィスを設けて、除籍本や図書館で受入をしなかった寄贈本を 販売している。リサイクルブックオフィスは、NPOたはら広場と任意団体図書 館フレンズ田原が協力して運営している。 リサイクルブックオフィスの仕組みはこうだ。利用者からの寄贈本のうち図書 館が必要とする本は、図書館で受入される。図書館の除籍本と図書館で受入され なかった寄贈本のうち、学校図書館が必要とする本は学校図書館で受入され、こ の結果、残った本がリサイクルブックオフィスにおいて1冊50円で販売される。 そして、収益金で本を購入し、図書館に寄贈する。 図書館の除籍資料は、「 田原市図書館資料除籍基準」( 2004年4月1日施行)第5 条に、 図書館は、除籍を決定した不要資料を、次の各号に掲げるとおり取り扱うもの とする。 (1)リサイクルブックオフィスへの提供 (2)小中学校等公共施設の図書室への提供 (3)その他館長が必要と認めるものへの提供 と定められており、これによってリサイクルブックオフィスの運営が行われて 田原市中央図書館(愛知県田原市) Case 30 NPOが、除籍本を販売
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    121ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考情報 1. 図書館フレンズ田原    http://www.taharahiroba.or.jp/hasshin_group.html 2.「経済拠点としての図書館の可能性−田原市中央図書館」   岡本真、本のある時間、2011 年 10 月 21 日     http://www.timewithbooks.com/monthly_special/06okamoto/vol43/p01/p01.html 3.「田原市図書館除籍基準」田原市図書館、『田原市の図書館 図書館事業年報  (平成 23 年版)』、2012 年 7 月    http://www.city.tahara.aichi.jp/section/library/pdf/nenpo/2011nenpo.pdf ■田原市図書館 http://www.city.tahara.aichi.jp/section/library/ 愛知県田原市田原町汐見 5  Tel: 0531-23-4946 Fax: 0531-23-4646 E-mail: tosho@city.tahara.aichi.jp いる。 図書館で本を販売することが難しくとも、このように友の会などのサポート組 織を通した販売は可能である。そしてその収益金は、新たな本として図書館へ還 元される。そのような仕組みを作って、図書館が間接的に資金を得ることが可能 なのである。
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    122 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 豊中市立庄内図書館(大阪府豊中市) Case 31 常設コーナーで、除籍資料を販売 豊中市立庄内図書館では、館内3階に除籍資料の販売コーナーを設けている。 このコーナーでの販売は、地元の任意団体しょうないREKが行っている。販売は 図書館の休館日を除く毎週火曜日に行われており、また地域のイベント開催時に 出張販売も行っている。 しょうないREKが販売する本は、豊中市立図書館で除籍されたものだ。2011 年度には8502冊の売り上げがあった。しょうないREKが行っている除籍本の販 売で特徴的なのは、販売する本を常設で展示していることだ。他館が行っている 除籍本の販売では、古本市などのイベント時にたくさんの本の中から短時間で持 ち帰る本を選ばなければならない。庄内図書館のように販売コーナーを常設する ことで、週1回の開催日に限定はされるが、利用者は都合のよい時間に本を存分 に選ぶことができる。このことにより必要としていた本との出会いが実現され、 廃棄資料が無駄になりにくいのである。 しょうないREKでは除籍資料の販売だけではなく、庄内図書館を拠点とした子 ども向けイベントの実施や、会のお知らせと地域情報の発信を兼ねた会報の発行 など、さまざまな事業を行っている。これらの事業を実施するための費用として、 除籍資料の売り上げが使われているのである。 提供:豊中市立庄内図書館 ■参考情報 1. しょうない REK http://www.facebook.com/ShounaiREK 2.『豊中市の図書館活動 平成 23 年度(2011 年度)版 統計・資料編』豊中市立図書館   http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/management/toyo_toshokan_katudou/toukei_2011_2.html 3.「しょうない REK ってなあに?」しょうない REK、2008 年 2 月 20 日    http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/data/open/cnt/3/1095/1/REK_K_008.pdf ■豊中市立庄内図書館  http://www.lib.toyonaka.osaka.jp /guide/library/syounai_2.html 大阪府豊中市三和町 3-2-1  Tel: 06-6334-1261
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    123ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 図書館では、大は年報類といった冊子のものから、小は一枚もののカレンダー や、しおりなどが「 無料で」配布されることが多い。これは図書館法に規定さ れた図書館の無料原則への配慮があるのだろうが、図書館の利用や閲覧に対して 対価を求めない限り、受益者負担として許容できると考えられるだろう。コスト をかけた制作物の頒布に対価を求めるのは、一般的には当然のことであり、図書 館においても違和感はない。 図書館における物販サービスには、郷土の研究家が自費出版の形で出版するな ど、一般書として出版されることの少ないジャンルである郷土の本を、図書館の 利用者や図書館員が資料を使って調べ、冊子にまとめたものを出版・有償配布し たり、図書館の業務内容をまとめた事例集を冊子にして販売するほか、書籍、文 具、図書館オリジナルのライブラリー・グッズの販売などがある。こうした物販 サービスによる売上は、図書館の直接の収入源になる場合と、自治体の一般会計 に繰り入れられる場合がある。直接の収入にならない場合でも、自治体全体で見 れば、収入増につながっている。このような金銭的な利益のほかにも、図書館の 存在をPRする機会となるだろう。 しかし図書館が自ら販売まで行うには、出納係の設置が必要となったり、施設 の目的外利用になるなどクリアすべき問題も生じる。施設の目的外利用は条例を 改正することにより、可能になる。国庫補助金を使って作られた図書館でも、手 続きを踏むことで財産区分を変更できる。また一部の図書館では、書店や友の会 が本を販売したり、友の会がグッズを販売するといった委託販売が行われており、 このような取組みも紹介する。 ■参考資料 1.「ライブラリー・グッズの可能性−ミュージアム、米・英の国立図書館の事例を通して」   渡辺由利子、カレントアウェアネス No.307、2011 年 3 月 20 日    http://current.ndl.go.jp/ca1742 2.「ライブラリー・グッズの調査・研究と企画・開発」図書館サービス・ツール研究会、   2010 年 2 月 23 日 http://library-tools.blogspot.jp/2010/02/21.html 3.「公立社会教育施設の有効活用【A0803】」構造改革特区推進本部    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiikisaisei/kouhyou/070427/070427manyu.html 図書館が作成したものを販売する
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    124 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 高岡市立中央図書館(富山県高岡市) Case 32 図書館で作成したレファレンス資料の販売 高岡市立中央図書館では、図書館が作成したレファレンス事例集を1冊500円 で販売するほか、図書館が作成した地域資料なども販売している。 レファレンス事例集は多くの図書館が冊子として刊行しているが、無料配布さ れることが多い。また図書館の関係者のみに配布されることも多く、一般の利用 者が目にするのは図書館の蔵書となってからである。 それを高岡市立中央図書館では、利用者向けに販売している。いわば図書館の 事業によって生み出された成果物である資料を販売しているのである。一般的な 市場では、作成物を配布する際にコストを回収するための対価をとるのは当然で ある。しかし図書館では、これまであまり取り組まれてこなかったため、このよ うな事例は珍しいのである。また流通しない非売品の本では、一般利用者には入 手が困難だが、このように少しでも対価をとってでも販売してくれたほうが、入 手がしやすいだろう。 ■高岡市立中央図書館 http://www.city.takaoka.toyama.jp/library/chuo/ 富山県高岡市末広町 1-7  Tel: 0766-20-1818 Fax: 0766-20-1819 E-mail: t-chuo@city.takaoka.lg.jp 撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 8 月 9 日 
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    125ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 小布施町立図書館「まちとしょテラソ」(長野県小布施町) Case 33 図書館内でのオリジナルグッズの販売 小布施町立図書館「 まちとしょテラソ」では、館内に販売コーナーを設けて、 オリジナルグッズや本を販売している。目的は図書館で利益を上げることだが、 現在は試験的に行っている。トートバックやクリアホルダー、図書館を撮影した ポストカードなどをオリジナルグッズとして販売している。また地元の出版社が 刊行した本や、小布施町立図書館や小布施町に関連した本、文具なども扱ってい る。 オリジナルグッズは日常でも使えるものでもあるが、小布施町立図書館の場合、 全国から視察や見学が多いことから、図書館を訪れたことを記念するお土産にも なっている。オリジナルグッズは、販売して利益を得るのと同時に、図書館を PRする広報グッズでもあるのだ。 小布施町立図書館における物販の収益は、町の雑収入になり、図書館の直接の 収入にはならない。図書館で得た利益であっても、自治体の収入に繰り入れられ るためだ。しかし、自治体の収入にする際に、特定財源化して図書館の予算へ還 元するように制度設計することは可能である。また図書館が販売せずに、友の会 や企業に図書館内の一部スペースを貸し出し、そこで販売委託するかたちが取ら れることも多い。  ■小布施町立図書館「まちとしょテラソ」 http://machitoshoterrasow.com/ 長野県小布施町小布施 1491-2 Tel: 026-247-2747 Fax: 026-247-4504 撮影:嶋田綾子 撮影日:2013 年 3 月 16 日
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    126 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 図書館サイトの検索システムから、オンライン書店にリンクを貼ることは、ご く一部の図書館で行われている。オンライン書店と連携する最大のメリットとし て多くの図書館が挙げるのは、オンライン書店が提供する表紙画像を、図書館サ イトの検索結果に表示できることだ。そのほかに挙げられるメリットは、オンラ イン書店での本の情報が入手できること、アフィリエイトによる収入である。 公共図書館での導入事例では、Amazonのデータとアフィリエイトの仕組みを 利用している事例が多い。過去に導入していた図書館まで含めると、honto(旧: bk1)のシステムを利用している図書館も多い。これはhontoが図書館流通セン ターの関連企業であるため、TRC MARCの番号でリンクできるなどhontoのデー タと図書館がシステムの親和性の高さも理由だろう。またアフェリエイトが現金 で還元されると自治体の一般会計に入ってしまうが、hontoの還元方式が1ポイン ト=1円扱いで本が購入できるポイント制であったということも、連携先に選ば れる理由としては大きい。公共図書館において、ポイントによる還元は現在でも オンライン書店連携の選択肢として重視されている。 しかし、オンライン書店と連携する公共図書館は少なく、すでに連携を止めて いる図書館もある。公共性という観点で、一部のオンライン書店だけと連携する ことに批判があるのだ。また地元書店を使わずに、オンライン書店と連携するこ とも批判の対象となる。ただ地元書店とのオンラインの連携は難しくとも、特定 企業だけを利用しているという問題に関しては、複数のオンライン書店へのリン クを貼ることである程度回避できる。また複数のオンライン書店へのリンクが あった方が、利用者にとっても選択の幅が広がり、利便性が高くなる。 一方、アフィリエイトよりも、表紙画像の表示に重点を置いたオンライン書店 との連携は、大学図書館を中心にかなり進んでいる。大学図書館の場合、紀伊國 屋書店のデータを利用していることが多い。Google Booksから表紙画像を得るこ とも、一部の図書館では行われている。 以前は図書館システムをカスタマイズしないと、オンライン書店と連携するこ とは難しかった。現在では、オンライン書店と連携する機能を持っている図書館 システムも多く、システム上は連携しやすくなっている。 オンライン書店と連携する
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    127ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考情報 1.「本の表紙画像を表示します」豊中市立図書館    http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/information/hyoushi_link.html 2.「豊中市立図書館、オンライン書店と提携し蔵書検索結果から表紙画像を提供」   カレントアウェアネス、2009年10月8日    http://current.ndl.go.jp/node/14796 豊中市立図書館のWebOPACには、図書館サイトの検索システムにオンライン 書店にリンク貼ってある。これにより利用者は検索した本について、図書館が提 供する文字情報だけではなく、オンライン書店での本の情報を1クリックで確認 できる。この取組みは2009年8月から実施されている。導入時には表紙画像も表 示されていたが、現在はオンライン書店へのリンクのみとなっている。このリン ク先で利用者が本を購入すると、図書館へポイントが還元される。その実績の一 部は図書館サイトにて、購入した本のリストとして報告されている。 検索結果からのリンクは、オンライン書店honto( 旧:Bk1)との提携で成り 立っている。検索結果からリンクすることで、オンライン書店の該当本へアクセ スできる。また、このリンク先で利用者が本を購入すると、購入者に本の代金の 1%、図書館に本の代金の3%がポイントとして還元される。図書館はこのポイン トを元に、新しく本を購入している。 利用者にとっては、探している本を図書館で借りるという選択肢のほかに、オ ンライン書店で購入するという選択肢にもつながる。図書館としては利用者にメ リットを提供しつつ、リンク先で本が購入されれば、図書館の利益にもつながる。 図書館と利用者、双方にメリットがあるサービスなのである。 豊中市立図書館(大阪府豊中市) Case 34 検索結果を、オンライン書店に誘導 ■豊中市立図書館  http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/ 大阪府豊中市岡町北 3-4-2 Tel: 06-6843-4553 出典:豊中市立図書館公式サイト
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    128 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 那覇市立図書館のオンライン蔵書検索( WebOPAC)では、検索結果にオンラ イン書店へのリンクが貼られている。リンク先はAmazonと楽天ブックスで、表 紙画像はAmazonのものを使用している。 アフィリエイトと呼ばれるこの仕組みを利用することで、オンライン書店が提 供する本の詳細なデータ情報が表示できる。また図書館サイトの検索システムか ら誘導された利用者がリンク先で本を購入すれば、図書館へ紹介料が還元される。 しかし那覇市立図書館でこのサービスが導入された2013年1月以降、還元の実績 はまだない。 利用者のメリットは、検索結果にオンライン書店が提供する書籍のデータベー スが表示されることと、オンライン書店への購入が容易になることである。図書 館の検索システムの結果は文字情報のみなので、表紙画像があることで本の情報 がよりわかりやすくなり、またリンク先のオンライン書店の情報により本の情報 がより多く得られる。利用者にとって、情報入手の選択肢が広がるのである。 ■参考情報 1.「本の表紙画像の表示と外部サイト連携について」  那覇市立図書館、2013 年 2 月 1 日      http://www.edu.city.naha.okinawa.jp/lib/n-informationlist201302012.html ■那覇市立図書館 http://www.edu.city.naha.okinawa.jp/lib/ 沖縄県那覇市寄宮 1-2-15 Tel: 098-917-3449 Fax: 098-835-2158 那覇市立図書館(沖縄県那覇市) Case 35 アフィリエイトの利用 出典:豊中市立図書館公式サイト
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    129ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 篇・金付 交 金成助
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    130 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 地域活性化交付金とは、2010年度の補正予算で創設された交付金である。総 額で3500億円が計上された。これは2種類の交付金事業に分けられ、1つが「 き め細やかな交付金事業」として2500億円計上され、もう1つが「 住民生活に光を そそぐ交付金事業( 光交付金)」と呼ばれており1000億円が計上された。光交付 金には下記のようなメニューが示され、そのうち「 知の地域づくり」の具体例 として図書館の整備が挙げられている。  住民生活に光をそそぐ交付金の取り組み分野  ▶地方消費者行政  ▶ DV 対策・自殺予防等の弱者対策・自立支援  ▶知の地域づくり 自治体への交付は、自治体が策定する実施計画にもとづき、実施に必要な額を 支給するという形式が取られた。2010年度には、総額で約1060億円が予算計上 され、そのうち図書館、図書館同種施設、学校図書館の充実に対して400億1700 万円という光交付金全体の予算のうち、図書館関係に計上された予算が全体の 39.6%を占める結果となった。この交付金は2011年度以降も継続し、2011年度に は300億円、2012年度には350億円が予算計上された。 活用事例としては、たとえば島根県立図書館(島根県松江市)では、2012年度 に4937万6000円が交付され、臨時職員1名の雇用のほか、大活字図書やDAISY図 書の購入、「ねぇ!この本読んで。」乳幼児への読書普及事業などを行っている。 村山市立図書館( 山形県村山市)では移動図書館の更新、公立小学校の学校 図書館の電算化などがこの交付金を使って実施された。 神戸市立図書館( 兵庫県神戸市)では、2010年度に1000万円の予算を計上し て資料を購入したほか、書架の新規購入や更新、外部データベース利用のPCの 増設、改修工事などが行われている。 これらは、図書館の事業に対して交付されたなかの一部の事例にすぎない。ほ かの図書館でも蔵書管理のICタグ化や資料のデジタル化、施設の修繕などがこ の交付金を使って実施された。 住民生活に光をそそぐ交付金事業 Case 36 図書館に臨時予算がついた地域活性化交付金
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    131ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 島根県立図書館「ねぇ!この本読んで。」の事業関連図書コーナー 撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 10 月 27 日 提供:中津川市立図書館 中津川市立図書館の光交付金で購入した図書コーナー ■参考資料 1.「地域活性化交付金の創設について」首相官邸、地域活性化統合本部会合、   2010 年 12 月 3 日 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/pdf/101203koufukin_gaiyo.pdf 2.「『住民生活に光をそそぐ交付金』で図書館整備を(日本)」   国際子ども図書館、2011 年 1 月 18 日     http://www.kodomo.go.jp/info/child/2011/2011-005.html 3.「片山総務大臣閣議後記者会見の概要」総務省、2010 年 10 月 26 日    http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/36590.html 4.「『住民生活に光をそそぐ交付金』交付対象経費の分野別内訳」内閣府   平成 23 年度 第 1 回全国自殺対策主管課長等会議配布資料、2011 年 7 月 8 日   http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/local/shukan/k-10/pdf/s15.pdf 5.「北海道東神楽町:住民生活に光をそそぐ交付金による図書運営の充実」内閣府    http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110708_4.html 6.「村山市:『読書シティ宣言』と図書館・読書活動の推進(事例 No.10)」内閣府    http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110909_3.html 7.「竹原市:市立図書館による学校支援の強化(事例 No.11)」内閣府    http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110909_4.html 8.「CA1755 −研究文献レビュー:学校図書館をめぐる連携と支援:その現状と意義」   岩崎れい、カレントアウェアネス、2011 年 9 月 20 日    http://current.ndl.go.jp/ca1755 9.「北海道東川町:図書館による知の地域づくり(事例 No.9)」内閣府    http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/110815_5.html 10.「真岡市:分館図書館および学校図書館における図書購入(事例 No.15)」内閣府    http://www.chiiki-info.go.jp/backnumber/local/detail/111209_5.html 11.『島根県立図書館要覧 平成 24 年度(2012 年度)版』島根県立図書館、2012 年 6 月      http://www.lib-shimane.jp/gaiyou/youran.html 12.「書燈(神戸市立図書館報)No.30」神戸市立図書館、2012 年 7 月   http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/shotou/ 
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    132 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 科研費は( 正式名称「 科学研究費助成事業( 学術研究助成基金助成金/科学 研究費補助金)」)文部科学省が行っている助成事業だ。人文・社会科学から自 然科学までの全ての分野をカバーし、基礎から応用までのあらゆる学術研究を対 象としている唯一の助成金である。研究者や団体を助成の対象としているが、大 学に所属する研究者だけではなく研究機関や民間企業、財団などに所属する研究 者も対象となる。 神戸大学附属図書館は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の資料を収 集・保存し提供するため、震災文庫を1995年10月に開設・公開した。1998年度 に同館の館長を研究代表者に据え、震災文庫で保存するデータベース「 阪神・ 淡路大震災マルチメディア・アーカイブズ」を構築するため5ヶ年の科研費を申 請し、5年間で計約1億1千万円の資金を得た。この助成金により、1枚ものの資 料や録音資料のデジタル化が行われた。 事業を図書館だけのものととらえずに、研究環境の構築や研究対象として多角 的にとらえ同僚や教員の協力を得ることが、助成金を得る秘訣である。実際、震 災文庫だけではなくほかの図書館でも、資料のデジタル化やデータベース構築に 科研費の助成を受けている事業がある。 科学研究費助成事業 Case 37 図書館設備などに利用できる、研究者向けの助成制度 ■参考資料 1. 『阪神・淡路大震災と図書館活動』稲葉洋子、人と情報を結ぶ WE プロデュース、    2005 年 3 月 19 日 2. 「行動するライブラリアンをめざして:図書館資源を活かすライブラリーマネジメント」   稲葉洋子、情報の科学と技術 59(10)、486-491、2009 年 10 月 1 日    http://ci.nii.ac.jp/naid/110007358589  ■科学研究費助成事業 http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/main5_a5.htm 東京都千代田区霞が関3-2-2 文部科学省研究振興局学術研究助成課 Tel: 03-5253-4111(代表) ■ KAKEN: 科学研究費助成事業データベース http://kaken.nii.ac.jp/ 東京都千代田区一ツ橋 2-1-2 国立情報学研究所 学術基盤推進部 学術コンテンツ課  Tel: 03-4212-2000(代表) E-mail: kaken_fdbk@nii.ac.jp ■神戸大学附属図書館震災文庫 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/eqb/ 兵庫県神戸市灘区六甲台町 2-1 Tel: 078-803-7342
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    133ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 科学技術コミュニケーション推進事業とは、国民の科学技術についての興味や 関心、理解をよりいっそう深めていくための活動を活性化させるため、それら を実践する団体や機関の活動を支援する事業である。支援のメニューとしては、 「 ネットワーク形成地域型」「 ネットワーク形成先進的科学館連携型」「 リスク に関する科学技術コミュニケーションのネットワーク形成支援プログラム」「 機 関活動支援」がある。これらの活動に対して、活動にかかる費用が最大で年間 2000万円支給される。それぞれのメニューの概要は以下のとおりである。 ▶ネットワーク形成地域型…地域における科学コミュニケーション活動を活性化 させるため、自治体、大学、高専、公的研究機関を中核として、地域の機関 や個人など様々な活動主体が、情報を共有し、相互に連携する地域ネットワー クを構築するための支援を行う ▶ネットワーク形成先進的科学館連携型…全国各地に最先端の科学技術やその社 会・将来との関係性を分かりやすく伝え考える場が構築されることを目指す ものであり、最先端の科学技術という新しい知を社会とつなぐ新たな科学コ ミュニケーション活動に挑戦し、地域の拠点として活動しうる科学館の取組 を支援する ▶リスクに関する科学技術コミュニケーションのネットワーク形成支援プログ ラム…日本全国の大学や科学館等の活動主体がネットワークを形成し、連携 しながら、リスクに関する科学技術コミュニケーション活動の普及・展開や、 効果的な活動手法の開発・共有を図り、個々の活動の質を高め、新たな活動 を創出することを狙いとした取組を支援する ▶機関活動支援…科学館、科学系博物館、大学、研究機関、地方自治体等が、そ の特徴や実績を活かし、地域の児童生徒や住民を対象として実施する、身近 な場で行われる体験型・対話型の科学コミュニケーション活動を支援する  (科学技術コミュニケーション推進事業サイトより) このうち、図書館が関わった事業への支援には、2012年に採択された「 ネッ トワーク形成地域型」による「 科学系博物館・図書館の連携による実物科学教 科学技術コミュニケーション推進事業 Case 38 図書館における科学教育事業に利用できる助成金
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    134 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 「みるかがみあそぶかがみ」開催時の写真 育の推進∼CISE( Community for Intermediation of Science Education)ネットの構 築∼」(北海道大学)と、2012年に採択された「 活動実施支援」( 今年度は「 機関 活動支援」に名称変更している)による「 よもう!あそぼう!かがくの本」( 東 久留米市立図書館)がある。 「科学系博物館・図書館の連携による実物科学教育の推進∼CISE(Community for Intermediation of Science Education)ネットの構築∼」は北海道大学総合博物 館が中心機関となり、札幌市中央図書館、札幌市円山動物園、札幌市青少年科学 館など15機関が連携して行っている事業である。その内容は、同一のテーマを博 物館資料や図書館資料などそれぞれの機関が持つ資料の特性を生かした複数の視 点から学び、成果を資料としてまとめている。また、協同して効果的に教育を行 うために、教材プログラムの開発も進めている。この事業については、3年間の 事業について資金が支給されており、今年度は1000万円が支給される予定である。 東久留米市立図書館の「 よもう!あそぼう!かがくの本」は、もともと地元 の任意団体ほんとほんとと協力して行ってきた事業である。ふだんは子どもへの 科学絵本の読み聞かせや実験など、図書館でできる科学に親しむイベントを毎 月1回行っている。それを10周年という節目の年に、子どもへのイベントとして だけではなく、大人に対して「 科学読み物の活用」という観点で実践講座や作 家の講演会を行ったものだ。この事業に対して114万5000円が科学技術コミュニ ケーション推進事業から支給された。 このようにして、科学を身近なものにする取り組みに限定はされているが、図 書館の事業へも利用できる支援となっている。 提供:札幌市中央図書館 提供:東久留米市立図書館
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    135ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ■参考情報 1.「科学系博物館・図書館の連携による実物科学教育の推進∼ CISE(Community for     Intermediation of Science Education)ネットの構築∼」北海道大学総合博物館    http://www.museum.hokudai.ac.jp/cise/ 2.「CISE ネット始動」北海道大学総合博物館、総合博物館ニュース 26 号、   2012 年 12 月 25 日     http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/51008 3.「科学技術コミュニケーション推進事業『活動実施支援』平成 24 年度(2012 年)   新規採択企画 一覧」科学技術振興機構    http://www.jst.go.jp/pr/info/info878/besshi.html 4.「第 9 回教育委員会定例会会議録」東久留米市教育委員会、2012 年 9 月 4 日     http://110.50.207.49/kyoiku/004/004con/kaigiroku/pdf/2012/d9_teirei.pdf 5.「平成 24 年(2012 年)予算特別委員会(第 2 日)」東久留米市議会、   2012 年 9 月 18 日    http://asp.db-search.com/higashikurume-c/dsweb.cgi/documentframe!1!guest01!!24990!1!1!1,-    1,1!1330!131944!1,-1,1!1330!131944!4,3,2!2!3!129086!187!1?Template=DocAllFrame 6. 東久留米市平成 24 年度(2012 年度)主要事業一覧   http://www.city.higashikurume.lg.jp/kensaku/sisei/zaisei/h24zaisei/h24_jigyouitiran.pdf 7.「児童向けサービス」東久留米市立図書館    http://www.lib.city.higashikurume.lg.jp/kodomo/kodomo.html 8. 科学の本の読み聞かせの会ほんとほんと    http://honto-honto.blogspot.jp/ ■科学技術コミュニケーション推進事業 http://sciencecommunication.jst.go.jp/ 科学技術振興機構 東京都千代田区四番町 5-3 サイエンスプラザ  Tel: 03-5214-7493 Fax: 03-5214-8088 E-mail: katsudo@jst.go.jp ■札幌市中央図書館 http://www.city.sapporo.jp/toshokan/sisetu/chuo/chuo.html 北海道札幌市中央区南 22 条西 13-1-1  Tel: 011-512-7320 Fax: 011-512-5783 ■東久留米市立図書館 https://www.lib.city.higashikurume.lg.jp/ 東京都東久留米市中央町 2-6-23  Tel: 042-475-4646
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    136 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 地域情報化アドバイザーとは、地域情報化に関する課題に対してICTの専門知 識をアドバイスするため、総務省から委嘱を受けたアドバイザーを派遣する事業 である。アドバイザーは2012年には72名、1団体が委嘱されている。この事業は 2007年度から実施されており、2011年度までで259件の派遣実績がある。 派遣事業では、派遣を希望する自治体に対して、講演形式であれば年度内1回、 個別アドバイスであれば年度3回まで、自治体の金銭的負担なしに派遣を受けら れる。この派遣事業では、ICTを活用した地域情報化に対するアドバイスが中心 となるため、各アドバイザーの得意分野もICT活用に特化している。 アドバイザーが主として得意分野にしているのは、以下のとおりである。 ●地域情報化全般、業務効率化 ●新事業創出 ●産業振興(地場産業・農業等) ●地域情報発信、観光 ●防災、防犯 ●教育、子育て ●医療/福祉 ●地域コミュニティ、SNS ● ICT 人材育成 ●その他 *地域情報化アドバイザーのサイトより 図書館関係では、岡本真氏( アカデミック・リソース・ガイド株式会社)、高 野明彦氏( 国立情報学研究所)、山崎博樹氏( 秋田県立図書館)の3名が委嘱さ れている。主なアドバイス分野は、図書館でのデジタルアーカイブや電子書籍事 業などであるが、ほかにも図書館からの情報発信などもアドバイス内容となって いる。 図書館関係への派遣実績としては、北海道立図書館( 北海道江別市)、静岡 県立図書館( 静岡県静岡市)、新潟市立図書館( 新潟県新潟市)、岐阜県図書館 ( 岐阜県岐阜市)、恩納村教育委員会( 沖縄県恩納村)がある。派遣でのアドバ イス内容としては、「 観光情報と図書館」「 図書館の持つ資料のデジタルアーカイ ブ化」「 図書館での電子書籍の対応」などである。実際には、たとえば岐阜県図 書館では2012年10月10日に岐阜県図書館職員を対象に「 図書館における情報化 に関して」をテーマにして山崎博樹氏( 秋田県立図書館)による講演と質疑応 答が行われ、恩納村図書館準備室では2013年2月25日に一般と行政関係者を対象 に「地域の情報拠点としての図書館」をテーマとして岡本真氏(アカデミック・ 地域情報化アドバイザー Case 39 図書館の情報化を推進するための助成制度
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    137ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) リソース・ガイド株式会社)による講演が行われた。 これらの内容を自治体が独自に行おうとすると、交通費や講師料で決して安く はない金額が必要となる。しかしこの制度を利用すれば、自治体が費用を負担す ることなく、専門家の講演やアドバイスを受けられる。無料で派遣を受ける回数 には制限があるが、この制度を使わずに自治体が各アドバイザーと直接交渉・費 用負担をして、アドバイスを受ける方法もある。 提供:恩納村文化情報センター(図書館)準備室 提供:岐阜県図書館 ■参考情報 1.「地域情報化アドバイザー/ ICT 地域マネージャー派遣制度」総務省    http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/manager.html 2.「平成 24 年度(2012 年度)『地域情報化アドバイザー会議』の提言の公表」  総務省、2013 年 2 月 6 日   http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000025.html ■地域情報化アドバイザー http://www.applic.or.jp/prom/chiiki_adviser/ 全国地域情報化推進協会 東京都港区虎ノ門 2-9-14 郵政福祉虎ノ門第一ビル 3F  Tel: 03-5251-0311 Fax: 03-5251-0317 E-mail: info@applic.or.jp ■岐阜県図書館 http://www.library.pref.gifu.lg.jp/ 岐阜県岐阜市宇佐 4-2-1  Tel: 058-275-5111 Fax: 058-275-5115 E-mail: library@library.pref.gifu.jp ■恩納村文化情報センター(図書館)準備室 http://www.vill.onna.okinawa.jp/799.html 沖縄県国頭郡恩納村字恩納 2451 恩納村教育委員会社会教育課 恩納村文化情報センター (図書館)準備室 Tel: 098-966-1259
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    138 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号  これまで個別の事例として紹介してきた交付金や助成金のほかにも、図書館が使える ものがある。それらの一例を紹介する。 ◆地方公共団体に対して支給されるもの  ▶新学校図書館図書整備 5 ヶ年計画  交付実施母体:文部科学省  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1318154.htm  交付概要:学校図書館の図書整備、新聞配備のために 2012 年度より 5 ヶ年計画で総    額 1075 億円が交付される普通地方交付税。使途が指定されていないため、各地方公  共団体で予算化する必要がある。  ▶学校図書館担当職員の配置のための措置  交付実施母体:文部科学省   http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1318154.htm  交付概要:学校図書館に担当職員を配置するために措置された普通地方交付税で 2012   年度に 150 億円があてられた。使途が指定されていないため、各地方公共団体で予算   化する必要がある。  ▶学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業  助成実施母体:文部科学省 http://manabi-mirai.mext.go.jp/other/revive.html  助成概要:図書館や公民館などで地域における学びとコミュニティづくりを支援する   コーディネーターを配置するための資金として措置されている。2013 年度は 11 億  9572 万 7000 円が予算化された。この事業を実施する地方公共団体が応募する。  ▶確かな学力の育成に係る実践的調査研究/学校図書館担当職員の効果的な活用方策   と求められる資質・能力に関する調査研究  助成実施母体:文部科学省   http://www-gpo3.mext.go.jp/MextKoboHP/list/kpdispDT.asp?id=KK0004199  助成概要:都道府県教育委員会および政令指定都市の教育委員会、付属学校を持つ国   立大学、学校法人等に委嘱され、域内の学校を研究指定校にしたり地域を推進地域に  指定したりして、学校図書館担当職員に対する実践的な調査研究を行うものである。  ▶社会資本整備総合交付金  交付実施母体:国土交通省 http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_000213.html  交付概要:国土交通省所管の地方公共団体向け個別補助金を 1 つの交付金に原則一括  図書館事業に役立つ、交付金・助成金制度
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    139ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)  し、地方公共団体にとって自由度が高い交付金として創設されている。市街地の活性  化のため、図書館などの公共施設をまちなかに設置する等に使用できる。  ▶雇用創出の基金による事業(ふるさと雇用再生特別基金事業/緊急雇用事業/重点   分野雇用創造事業)  助成実施母体:厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/chiiki-koyou3/  助成概要:地方公共団体が直接行う事業や地方公共団体が民間事業者に委託して行う   事業に対して、新規採用者の雇用経費が支払われるもの。事業分野に「教育・文化分野」   があり、図書館の事業はそれにあてはまる。都道府県ごとに緊急雇用創出事業臨時特   例基金を創設して対応する必要がある。  ▶共同調査研究事業  助成実施母体:財団法人地方自治センター   https://www.lasdec.or.jp/cms/9,0,25.html  助成概要:地方自治センターの会員である地方自治体同士が研究グループを組み、共   同で地方自治体のコンピュータ利用および住民サービスの向上に資する調査研究につ  いて、助成される。調査研究にかかる経費について 200 万円を上限に支給されるほか、   地方自治センターから IT アドバイザーの派遣・助言を受けられる。 ◆地方公共団体/団体ほかに対して支給されるもの  ▶コミュニティ助成事業  助成実施母体:財団法人自治総合センター   http://www.jichi-sogo.jp/lottery/comunity  助成概要:地域のコミュニティ活性化のための活動に対する助成事業である。助成対   象は、市区町村やコミュニティ組織、広域連合、一部事務組合、指定管理者などであ  るが、事業によって助成を受けられる団体は異なる。事業によって金額は異なるが最   大で 1000 万円が助成される。  ▶振興助成事業  助成実施母体:財団法人図書館振興財団   http://www.toshokan.or.jp/shinko_josei.php  助成概要:地方公共団体、教育機関、非営利団体、個人を対象に、図書館振興事業に   関与する機関・人材の育成、図書館の設立・運営に対して助成を行っており、1 事業  あたり最大で 1000 万円が助成される。 ◆大学に対して支給されるもの  ▶私立大学教育研究活性化設備整備事業  助成実施母体:文部科学省
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    140 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号  http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1323178.htm  助成概要:私立大学の教育研究施設の整備事業に対して助成される。過去の実績では、   ラーニングコモンズの設置に対して助成を受けている事例が多い。 ◆大学/個人に対して支給されるもの  ▶私立大学図書館協会研究助成  助成実施母体:私立大学図書館協会 http://www.jaspul.org/collegium/cat2/  助成概要:個人/共同/機関研究、課題研究、海外図書館事情調査の助成区分があり、   私立大学図書館協会に所属する図書館や図書館員が応募できる。図書館が直面する課  題を解決するための調査研究に対して、単年度で 60 万円を上限に助成される。  ▶田嶋記念大学図書館振興財団助成事業  助成実施母体:特例財団法人田嶋記念大学図書館振興財団(サイト無し)  助成概要:大学図書館の整備事業に対して助成する。また、大学図書館の資料管理シ   ステムに関する研究者または研究団体へも助成事業を行っている。 ◆民間団体に対して支給されるもの  ▶子どもゆめ基金  助成実施母体:独立行政法人国立青少年教育振興機構   http://yumekikin.niye.go.jp/jyosei/  助成概要:子どもの読書活動振興を図る活動を行う団体に対して援助する助成金。対   象団体は、国や地方公共団体を除く一般社団法人など各種法人や任意団体である。読   み聞かせ活動や子どもの読書振興にかかわるフォーラムの開催などの費用が助成され   る。助成額は対象となる地域の規模によるが、市区町村規模の活動の場合、100 万円  を限度して助成される。 ◆民間団体/個人に対して支給されるもの  ▶子ども文庫助成事業  助成実施母体:公益財団法人伊藤忠記念財団 http://itc-zaidan.or.jp/support.html  助成概要:子どもの読書啓発活動にかかわるボランティア団体や個人を対象とし家庭  文庫や地域文庫などの文庫活動や読み聞かせ活動、病院施設で子どもに対する読書活   動に対して助成される。助成額は 1 事業あたり 30 万円である。 ◆個人に対して支給されるもの  ▶三田図書館・情報学会研究助成金  助成実施母体:三田図書館・情報学会 http://www.mslis.jp/grant.html
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    141ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)  助成概要:三田図書館・情報学会の個人会員を対象に、図書館・情報学の研究の発展  のために行われる調査・研究に対して、必要な資金の一部が助成される。  ▶日本医学図書館協会研究助成  助成実施母体:特定非営利法人日本医学図書館協会   http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/josei/  助成概要:日本医学図書館協会の会員施設に所属する個人または個人会員本人に対し   て、保健・医療その他関連領域の図書館事業や情報の流通に関する個人が行う研究ま   たは共同研究に助成される。  ▶石井桃子基金奨学研修助成  成実施母体:公益財団法人東京子ども図書館   http://www.tcl.or.jp/training2.html#training3  助成概要:子どもと本にかかわる職業や活動に従事している個人や、その職業に就く   ことを志して勉強している学生に対して、研修会の参加や大学・大学院での勉学、自   主研究などの費用に対して助成される。    上記のほかにも、特定条件に該当する地方自治体が使える「合併特例債」や「過疎対 策事業債」「電源立地地域対策交付金」なども存在する。また、東京都図書館協会や三 重県と図書館協会など、各都道府県の図書館協会で独自に助成制度を行っているところ もある。 ■参考資料 1.「行動するライブラリアンをめざして : 図書館資源を活かすライブラリーマネジメント」   稲葉洋子、情報の科学と技術 59(10)、486-491、2009 年 10 月 1 日    http://ci.nii.ac.jp/naid/110007358589 2.「CA1755 −研究文献レビュー:学校図書館をめぐる連携と支援:その現状と意義」    岩崎れい、 カレントアウェアネス No.309、2011 年 9 月 20 日    http://current.ndl.go.jp/ca1755 
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    ま まさ ざな を 組み合わせた 資 方法 金調達
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    144 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 図書館 寄 付 寄 贈 広 告 事業・運営状況の 公開・報告 物 販 運営をサポートする ボランティア 本特集では「寄付・寄贈」「広告」「販売」「助成金・交付金」の方法から、特徴 的な資金調達を行っている図書館の事例を紹介してきた。 最後にこれらの方法を複数を取り入れて、運営資金を調達している図書館の事 例を紹介する。これらの図書館の多くは公的資金に頼らず、自分たちが調達する 資金によって運営する民間の図書館である。図書館の事業・運営状態を積極的に 公開し、寄付者・寄贈者や運営をサポートするボランティアに対しては、一緒に 運営に参加する、一緒にサポートする仲間という思いで支援を受け、図書館を運 営している。 資金調達が切実な問題であるこれらの図書館の、積極的な試みを、ぜひ参考に してほしい。   民間の図書館における実践
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    145ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング)  saveMLAK とは、2011 年に発生した東日本大震災で被災した美術館・博物館 (Museum)、図書館(Library)、文書館(Archives)、公民館(Kominkan)の情報 を取りまとめ、支援するために始まったボランティアによる活動である。現在で は、東北地方だけではなく、全国各地の施設における自然災害による被災状況を カバーしており、参加者数は 294 人(メーリングリスト登録アカウント数)、登 録施設ページ数は 2 万 5644 ページとなっている(2013 年 5 月現在)。  saveMLAK は直接的な支援は行わず、情報の集約と共有、支援者の派遣仲介な どを行っている。その活動のための資金源は、主として寄付とグッズの販売に よる売り上げである。寄付は個人や企業・団体から常時受け付けており、MLAK 関連のイベント開催時にも寄付の呼びかけを行っている。グッズも MLAK に関 連するイベント開催時を中心にブースを設けるなどして販売を行っている。グッ ズは、重要な収入源になると同時に、saveMLAK の存在・活動を PR する広報ツー ルにもなっている。 撮影:嶋田綾子 撮影日:2012 年 7 月 1 日 ■参考資料 1.「saveMLAK の活動と課題、そして図書館への支援を巡って」   岡本真、情報管理 54(12)、808-818、2012 年    http://ci.nii.ac.jp/naid/130001856046 2. saveMLAK ニュースレター第 16 号、saveMLAK、2013 年 5 月 17 日    http://savemlak.jp/wiki/saveMLAK:Newsletter ■ saveMLAK http://savemlak.jp/ 神奈川県横浜市中区相生町 3-61 泰生ビル 2F さくら WORKS <関内> アカデミック・リソース・ガイド株式会社 内 saveMLAK プロジェクト Tel: 070-5467-7032 E-mail: pr@savemlak.jp saveMLAK Case 40 寄付やグッズ販売で、活動資金を調達する
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    146 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会では、2011年に発生した東日本 大震災による東北支援のために、被災地に移動図書館を運行させる「 いわてを 走る移動図書館プロジェクト」を2011年7月より開始したのを皮切りに「 みやぎ を走る移動図書館プロジェクト」「 ふくしまを走る移動図書館プロジェクト」を 行っている。 震災後、図書館や仮設住宅などに本を送ることで支援を行った個人・団体も多 いが、シャンティ国際ボランティア会では、本を直接送るのではなく、移動図書 館車で沿岸被災地の仮設住宅を回り、本を届ける活動を行っているのだ。この活 動を行うための資金源は、寄付・寄贈によって賄われている。 寄付の具体的な内容は、クレジットカードや銀行振り込みによる寄付などの直 接的な寄付のほか、中古書店BOOKOFFへ本を送るとBOOKOFFからシャンティ 国際ボランティア会へ寄付される仕組み、クラウドファンディングの活用などが ある。またイベントや報告会を開催し、そのときに寄付を募ることも行われてい る。寄贈の具体的な内容には、オフィス家具や移動図書館車の寄贈など、大型 の寄贈もある。クラウドファンディングを使った寄付では、「 陸前高田市の空っ ぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」への200万円の募集に対して、 支持者862名によって824万5000円の寄付が集まった。 このように、運営・活動を続けための資金調達をさまざまな手段・手法で展開 することで、様々な立ち位置にいる支援者の寄付を促しやすい仕組みづくりを考 えている。 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 Case 41 支援者の立ち位置に寄り添った支援調達
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    147ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 提供:シャンティ国際ボランティア会 ■参考資料 1. いわてを走る移動図書館プロジェクト   http://www.facebook.com/SVA.Mobile.Library.for.Iwate 2. みやぎを走る移動図書館プロジェクト[宮城県山元発]    http://www.facebook.com/miyagiwohashiru 3. ふくしまを走る移動図書館プロジェクト[南相馬へ!]    http://www.facebook.com/fukushimawohashiru 4. BOOKS TO THE PEOPLE 2012-2013 プロジェクト(BOOKOFF)   http://www.bookoff.co.jp/btp/2012/ 5. 本を売って被災地の移動図書館を応援しよう(BOOKOFF)    http://www.bookoffonline.co.jp/files/guide/vehicular_library_eq2011.html ■走れ東北!移動図書館プロジェクト http://sva.or.jp/tohoku/ シャンティ国際ボランティア会東京事務所 東京都新宿区大京町 31 慈母会館 2・3F Tel: 03-5360-1233(大代表)
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    148 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号  大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」は、公益財団法人大阪社会運動協 会が運営する、労働に関する専門図書館だ。2008 年に大阪府からの委託金や大 阪府・大阪市からの補助金が打ち切られ、現在は会費、寄付、広告や古本のバザー 収益金で運営をしている。  エル・ライブラリーの主な資金源は、下記の通りである。 ▶ 1 口 5000 円(年額)の一般会員費(ほかにも会員区分あり) ▶寄付金の受け付け ▶古本、中古 CD、雑貨などを集めて、常時販売することによる売上金 ▶ Amazon アフィリエイトやはてなポイントなど、Web サービスの利用による収益 ▶書き損じハガキを集めて、新品と交換 ▶その他の現物寄贈  このように、エル・ライブラリーは寄付・寄贈で運営が賄われている。また、 労働資料や社会科学系図書の寄贈や、一緒に支えてくれるボランティアスタッフ も募集している。  しかし、ただ寄付・寄贈を待つのではなく、自館の事業やサービス、運営状態 を積極的に公表し訴えていくことで、寄付を得ている。また不用品を集めて販売 し、そこから収益を得るなど、実際に「稼ぐ」という行為も行われている。エル・ ライブラリーは自らの事業を行うために、積極的に資金調達を行い、また、多く の人々に支えられて運営されているのである。 大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」 Case 42 寄付金や物販で「稼ぐ」図書館
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    149ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 撮影:岡本真 撮影日:2010 年 12 月 11 日 ■参考資料 1. エル・ライブラリー 大阪産業労働資料館ブログ    http://d.hatena.ne.jp/l-library/ 2. エル・ライブラリー〈レアもの〉資料紹介ブログ    http://d.hatena.ne.jp/shaunkyo/ 3. エル・ライブラリー Facebook ページ    http://www.facebook.com/l.library 4.「浪速のおばちゃんが切り盛りする新しい形−大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)」      岡本真、本のある時間、2011 年 1 月 28 日    http://www.timewithbooks.com/monthly_special/06okamoto/vol27/p01/p01.html ■大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」 http://shaunkyo.jp/ 大阪府大阪市中央区北浜東 3-14 エル・おおさか(府立労働センター)4F  Tel: 06-6947-7722 Fax: 06-6809-2299 E-mail: lib@shaunkyo.jp
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    150 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号  NPO 法人情報ステーションは、2006 年 5 月に開設した「ふなばし駅前図書 館」をはじめとして、蔵書のすべてを寄贈で賄う民間の図書館を 2013 年 5 月現在、 千葉県船橋市を中心に、全国に 15 館、開設・運営している。地域の活性化と交 流の場として作られた図書館は、民間運営だが、誰もが利用できる公共図書館で ある。  寄贈によって蔵書を構築することは、寄贈者が自ら参加し図書館を育てるとい う意識につながり、ボランティアとして誰もが気軽に図書館の運営に参加でき る。寄贈された本は図書館の蔵書として活用するほか、ほかの施設へ寄贈したり、 Amazon マーケットプレイスなどで販売するなどしている。  この図書館で貸し出される本には、企業の広告が入ったカバーがかけられてい る。この広告と、図書館の公式サイトでの企業広告掲載費、イベント開催の収益、 個人や企業・団体からの寄付が運営費にあてられている。  また、運営費を稼ぐ新たな試みとして、2013 年 6 月から株式会社フューチャー リンクネットワーク(FLN)が運営する地域共通ポイントサービス「まいぷれ ポイント」を活用して、寄付を受ける取り組みを始めた。まいぷれポイントと は、千葉県船橋市内を中心に、商店での買い物や地域活動でポイントが発行され るサービスで、発行された 1 ポイント= 1 円として使える。サービス利用者は、 加盟している商店や団体にポイントを寄付することもできる。また、まいぷれポ イントを運営している FLN が、まいぷれポイントの収益の一部を社会活動に寄 付してもいる。  情報ステーションはこの取り組みを活用し、図書館への本の寄贈やイベント参 加の際にポイントを発行したり、ポイントの寄付を受け付けている。また FNL は、 図書館の支援者登録をしたポイント利用者が貯めたポイントの 10% 相当の金額 を、情報ステーションへ寄付している。 NPO法人情報ステーション Case 43 ボランティアと「寄付・寄贈」で運営
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    151ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 提供:NPO 法人情報ステーション ■参考資料 1. NPO 法人情報ステーション    http://www.infosta.org/ 2.「図書館を作りませんか?」NPO 法人情報ステーション    http://www.infosta.org/campaign/makelibrary/ 3.「地域共通ポイントサービス『まいぷれポイント』を活用して、NPO 団体の活動を   支援する新しい取り組みを開始します!」   株式会社フューチャーリンクネットワーク、2013 年 5 月 9 日     http://www.futurelink.co.jp/news/130509_nr.html 4.「まいぷれポイント(まいポ)って?」まいぷれ    http://funabashi.mypl.net/mp/mppoint_funabashi/ ■ふなばし駅前図書館 http://www.infosta.org/library/ekimae.html 千葉県船橋市本町 1-3-1 船橋フェイス 2F  Tel: 047-419-4377 Fax: 047-767-8313 E-mail: office@infosta.org
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    152 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 高知こどもの図書館は、全国初のNPO法人によって設立・運営される民間の 図書館であり、1999年に開館している。民間の図書館ではあるが、誰もが無料 で利用できる公共図書館である。建物と光熱費は高知県から提供を受けているが、 人件費や資料費など図書館運営に必要な資金は、活動に賛同したNPO会員の年 会費、寄付金、講座実施ほかによる事業活動の収益などで賄っている。年によ り変動はあるが、運営費のうち6割から7割がNPO会員の会費と寄付金でである。 2011年度では876万1171円の運営費のうちNPO会員の会費と寄付金からの556万 7988円の収入により賄われている。 高知こどもの図書館の資金の大まかな内訳は、下記の通りある。 ▶ NPO 会員の会費(一般正会員 1 口/ 1 万円(年額)など) ▶寄付 ▶買い物レシートでの寄付(イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン、  エースワン/エーマックスのレシート) ▶ポイントカードのポイントによる寄付(ハーティポイントカード) ▶講座実施ほかによる事業活動の収益 ▶としょかんバザー/ほんのバザー開催による不用品販売の売り上げ ▶助成金 寄贈では、寄贈者が企業や団体の場合には、蔵書印のほかに寄贈者の印も押し、 どこからの寄贈なのかがわかるようになっている。また資料費を寄付してもらっ た場合は、本の受入処理後に寄贈者に連絡し、図書館の蔵書になったことを報告 している。そのほかNPO会員には、会報を発行し、図書館の運営状況を報告し ている。このように支援者に対して図書館の活動や運営状況などを報告していく ことで、支援者を大事にし、次の支援につなげているのである。 また、買い物レシートやポイントカードによるポイントなどを利用した寄付も 行われている。レシートでの寄付は「 エースワン」「 エーマックス」というスー パーマーケットを展開する株式会社エースワンと、スーパーマーケットを中心と した総合小売業を展開するイオン株式会社の2社が行っている。買い物客が買い 物したレシートを指定の場所に提出すると、買い物金額の一部が、企業から図書 NPO法人高知こともの図書館 Case 44 支援者と協力して、図書館を運営
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    153ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春 号 図書館における資金調達(ファンドレイジング) 提供:NPO 法人高知こどもの図書館 ほんのバザー会場風景 館に寄付されるというものである。 ポイントカードのポイントによる寄付は、ポイントカードの利用者がポイント の還元先に図書館を選ぶと、カード会社から図書館へ寄付が行われるというもの だ。このように身近な方法で気軽に寄付できるような仕組みも導入されているの である。高知こどもの図書館は活動を継続するために、さまざまな資金源、多く の人々の協力によって運営されているのである。 ■参考資料 1.「NPO 法人の詳細情報:特定非営利活動法人高知こどもの図書館」   内閣府、NPO 法人ポータルサイト、2012 年 3 月 30 日    https://www.npo-homepage.go.jp/portalsite.html 2.「NPO による図書館運営 : 高知県・高知こどもの図書館」穂岐山禮、情報の科学と技    術 51(7)、 381-385、2001 年 7 月 1 日  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002828960 3.「寄附・会員集めの ABC(1)第一回『高知こどもの図書館』大原寿美さん」   NPOWEB http://www.npoweb.jp/modules/feature/index.php?content_id=31 4.「小規模図書館奮戦記(その 190)NPO 法人高知こどもの図書館 子どもにとって最   善の利益を:日本で最初の NPO 法人図書館の 13 年」古川佳代子、図書館雑誌 106  (12)、837、2012 年 12 月 5.「イオンイエローレシートキャンペーン」高知こどもの図書館、ほんとあそぶ、   2012 年 5 月 25 日 http://kodomonotoshokan.blog66.fc2.com/blog-entry-173.html 6.「イオン 幸せの黄色いレシートキャンペーン」イオン株式会社   http://www.aeon.info/environment/social/aeonday/yellow_receipt.html 7. イオン株式会社 http://www.aeon.info/ 8. 株式会社エースワン http://www.ace1.co.jp/ ■ NPO 法人高知こどもの図書館 http://wwwa.pikara.ne.jp/kodomonotoshokan/ 高知県高知市永国寺町 6-16  Tel: 088-820-8250 Fax: 088-820-8251 E メール : kodomo@mg.pikara.ne.jp
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    154 図書館における資金調達(ファンドレイジング) ライブラリー・リソース・ガイド 2013年 春 号 1. 「CA1392 −米国の大学図書館における資金調達活動」山田邦夫、カレントアウェアネス No.261、 2001 年 5 月 20 日 http://current.ndl.go.jp/ca1392 2. 「図書館財務 : その理論的枠組と今後の課題」柳与志夫、日本図書館情報学会誌 47(2)、81-93、2001 年 11 月 30 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001818880 3. 「アメリカの図書館におけるファンドレイジング」福田 都代、図書館界 56(5)、274-292、2005 年 1 月 1 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007985446 4. 「CA1392 −米国の大学図書館における資金調達活動」山田邦夫、カレントアウェアネス No.261、 2001 年 5 月 20 日 http://current.ndl.go.jp/ca1392 5. 「24 時間テレビチャリティー委員会による障害者サービス用機器類の寄贈事業について」佐藤 聖一、 図書館雑誌 102(7)、478-479、2008 年 7 月 6. 「図書館財政と資金調達の最新動向」福田都代、情報の科学と技術 58(10)、486-491、2008 年 10 月 1 日  http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950941 7. 「米国公共図書館の経営と資金調達」依田紀久、情報の科学と技術 58(10)、492-498、2008 年 10 月 1 日  http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950942 8. 「米国公共図書館の資金調達動向について」竹内秀樹、情報の科学と技術 58(10)、499-504、2008 年 10 月 1 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950943 9. 「アメリカの助成財団と公共図書館」金谷信子、情報の科学と技術 58(10)、505-510、2008 年 10 月 1 日  http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950944 10. 「アメリカの大学図書館における資金調達」梅澤貴典、情報の科学と技術 58(10)、511-516、2008 年 10 月 1 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006950945 11. 「図書館ファンドレイジングの動向」福田都代、『米国の図書館事情 2007 − 2006 年度 国立国会図書 館調査研究報告書』、2008 年 10 月 http://current.ndl.go.jp/node/14437 12. 「図書館とフィランソロピー」井上靖代、『米国の図書館事情 2007 − 2006 年度 国立国会図書館調査 研究報告書』、2008 年 10 月 http://current.ndl.go.jp/node/14441 13. 「E845 −環境にも,財布にも嬉しい図書館資料除籍法(米国)」カレントアウェアネス− E No.137、 2008 年 10 月 15 日 http://current.ndl.go.jp/e845 14. 「機器で始まる障害者サービス --24 時間テレビチャリティ委員会による障害者サービス用機器寄贈事業 の概要と図書館への影響」佐藤聖一、みんなの図書館(401)、2-5、2010 年 9 月 15. 「E1102 −財政難の状況下での公共図書館における有料サービス(米国)」カレントアウェアネス− E No.180、2010 年 10 月 7 日 http://current.ndl.go.jp/e1102 16. 「CA1742 −動向レビュー:ライブラリー・グッズの可能性−ミュージアム、米・英の国立図書館の 事例を通して」渡辺由利子、カレントアウェアネス No.307、2011 年 3 月 20 日 http://current.ndl. go.jp/ca1742 17. 「究極の司書業務 !? : たどり着いたのが寄贈依頼」田中智子、看護と情報 : 看護図書館協議会会誌 18、 26-29、2011 年 3 月 31 日 http://ci.nii.ac.jp/naid/110008899138 参考文献
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    156 ARG 業務実績定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 春号 ■写真展「大槌の宝箱」横浜展の開催 主催:大槌みらい新聞 協力:アカデミック・リソース・ガイド株式会社ほか 日時:2013 年 3 月 13 日(水)∼21日(水) 会場:さくら WORKS <関内> 来場数:累計 600 名 内容:被災地のメディア「大槌みらい新聞」が主催した 写真ワークショップ。地元のおばあちゃん、おじいちゃんたちが撮影した「宝物」の写真を展示しま した。弊社では、写真展の運営と、同時開催のトークイベント、ワークショップをプロデュースしました。 ■ライブラリーキャンプ in おぶせの開催 主催:ライブラリーキャンプ実行委員会 企画:運営:アカデミック・リソース・ガイド株式会社 日時:2013 年 3 月 16 日(土)∼ 17 日(日) 会場:小布施町立図書館「まちとしょテラソ」ほか 参加者:20 名 内容:議題を事前に定めないワークショップ 「アンカンファレンス」を実施したほか、小布施町立図書館「まちとしょテラソ」の見学や前館長・ 花井裕一郎さんによるトークセッションと、おぶせまち歩きなどを実施しました。ライブラリーキャ ンプは年 4 回開催で次回は 2013 年 6 月 9 日(日)∼ 10 日(月)にかけて、淡路島で開催予定です。 ■第 4 回ニコニコ学会βシンポジウムの開催 主催:ニコニコ学会β実行委員会 事務局:アカデミック・リソース・ガイド株式会社 日時:2013 年 4 月 28 日(土)∼29 日(日) 会場:幕張メッセ (「ニコニコ超会議 2」併催イベントとして開催) 視聴者:約 8 万名 内容:第 4 回目となる「ニコニコ学会βシンポジウム」ではものづくり、データ分析、昆虫の生態、 『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・ガイド株式会社の 最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめています。 各種業務依頼はお気軽にご相談ください。 アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
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    157ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年春号 ARG 業務実績 定期報告  各地の FabLab、ハードウェアベンチャーの立ち上げなど合計 8セッションを実施しました。弊社では、 2011 年 12 月開催の第 1 回から事務局を担当しており、今回は事務局業務のほかに、グッズプロデュー スも担当しました。 ■「ソトコト」 図書館特集への協力ソーシャル&エコ・マガジン「ソトコト」(木楽舎)の 2013 年 5 月号は、「おすすめの図書館」特集でした。弊社では、同誌の編集 に協力したほか、代表の岡本真が Q&A 記事に登場しています。 ■ ARG 第 2 回 Web インテリジェンスとインタラクション研究会の開催 主催:アカデミック・リソース・ガイド(ARG)Web インテリジェンスとインタラクション研究会 事務局:アカデミック・リソース・ガイド株式会社 日時:2013 年 5 月 19 日(日)∼20 日(月) 会場:大阪大学 豊中キャンパス基礎工学部シグマホール 来場者:約 100 名 内容:細馬宏通さん(滋賀県立大学)による招待講演「漫才のボケに対するツッコミ動作の時間構造」 を含め、合計 20 本の研究発表が行われました。弊社では、Web インテリジェンスとインタラクショ ン研究会(WI2 研究会)をホスティングしています。 ■人文情報学月報、ラーコモラボ通信の編集・発行 一般財団法人人文情報学研究所と弊社で共同編集しているメールマガジン「人文情報学月報」、任 意団体「ラーニングコモンズラボラトリ」名義で発行しているメールマガジン「ラーコモラボ通信」 の編集・発行を担当しました。現在、前者は約 330 部、後者は約 150 部の発行です。どなたでも 無料でお読みいただけます。 ■「東日本大震災アーカイブ」基盤構築プロジェクト ラウンドテーブルへの参加 総務省による「東日本大震災アーカイブ」基盤構築プロジェクト ラウンドテーブルに弊社代表取締 役/プロデューサーの岡本真が構成員として参加し、震災関連デジタルアーカイブ構築・運用のた めのガイドラインの策定等に関わりました。 弊社業務問合せ先 info@arg-corp.jp 070-5467-7032(岡本)
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    LRG 「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」は アカデミック・リソース・ガイド株式会社が、2012年11月に創刊した、 新しい図書館系専門雑誌です。 さまざまな分野で活躍する著者による特別寄稿と、図書館に関する事例や 状況を取り上げる特集の2本立てで展開していきます。 バックナンバーは、第2号のみの販売です。 創刊号は、在庫稀少のため、定期購読のみのお取り扱いとなります。 Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド ●誌 名: ● 発 行: ● ISSN: ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 2187-4115 1年4号分の定期購読を受付中です。最新号からでも、創刊号からでも、好きな号からの お申し込みができます。 バ ック ナ ン バ ー 問い合わせ先:090-8052-0087(嶋田)/ lrg@arg-corp.jp 定 期 購 読 みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために          ─何から始めればよいのか」 第2号・2013年冬号(2013年2月発行) 特別寄稿 嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル) 「図書館システムの現在」 特 集 長尾真「未来の図書館を作るとは」 創刊号・2012年秋号(2012年11月発行) 特別寄稿 嶋田綾子「図書館100連発」特 集 2号 2013年冬号(2013年2月発行刊号 2012年秋号(2012年11月発行 在庫 稀少 ● 刊 期: ● 定 価: ● 詳細・入手先: 季刊(年4回) 2,500円+税    http://www.facebook.com/LRGjp
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    LRG LRG 4号 2013年8月 発行予定 LibraryResource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 次回予告 LRGライブラリー・リソース・ガイド 定価(本体価格2,500円+税) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 特別寄稿 特 集 第3号に引き続き、「資金調達(ファンドレイジング)」を テーマに、今度はサービス提供者側から語ります。 「図書館100連発(2)」 普通の図書館のきらりと光る取り組みを紹介します。
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    LRG ライブラリー・リソース・ガイド 第3号/2013年 春号 無断転載を禁ず 発 行日 発 行 人 編 集 人 責任編集 編  集 デザイン 発  行 2013年5月31日 岡本真 岡本真 嶋田綾子 大谷薫子 アルファデザイン(佐藤理樹 + 小野寺志保) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Academic Resource Guide, Inc. 〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61 泰生ビル2F さくらWORKS<関内> http://www.arg.ne.jp/ ISSN 2187-4115 1 段目 左から 「シャンティ国際ボランティア会の東北を走る移動図書館車」(Case41)         「千葉市中央図書館の館内にある募金箱」(Case06)         「東久留米市立図書館の「よもう!あそぼう!かがくの本」イベント風景」(Case38) 2 段目 左から 「佐賀県立図書館ふるさと納税コーナー」(Case05)         「東京都立多摩図書館 東京マガジンバンク」(Case16) 3 段目 左から 「市立小樽図書館の自動販売機の売り上げを図書館へ寄付」(Case14) 4 段目 左から 「ふなばし駅前図書館館内風景」(Case43)「saveMLAK グッズ販売」(Case40)         「横浜市港北図書館蔵書支援プロジェクト イベント風景」(Case18) 表紙写真
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    定価(本体価格2,500円+税) Library Resource Guide 第3号/2013年春号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 ISSN 2187-4115 LRGライブラリー・リソース・ガイド