ISSN 2187-4115
LRGライブラリー・リソース・ガイド 第9号/2014年 秋号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
特別収録 第2回 OpenGLAM JAPANシンポジウム
オープンデータ化がもたらす
アーカイブの未来
生貝直人・日下九八・高野明彦
司書名鑑 No.5 大向一輝(国立情報学研究所)
特集 嶋田綾子 図書館100連発 3
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
第9号/2014年 秋号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別収録
第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム
オープンデータ化がもたらす
アーカイブの未来
生貝直人・日下九八・高野明彦
特集 嶋田綾子
図書館100連発 3
司書名鑑 No.5 大向一輝
(国立情報学研究所)
2 巻頭言  ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 4 年 秋号
さまざまな出来事があった 2014 年の年の瀬に、『ライブラリー・リソース・
ガイド』の第 9 号を刊行します。2014 年は前回の第 8 号で特集したように教育
委員会の制度改革が法制化されるなど、図書館をめぐる状況にも重要な変化が
押し寄せています。また、学校図書館をめぐっては図書館利用を促進すると思
われる法制化が実現した点も記憶に新しいところです。新しく始まる 2015 年
は図書館、ひいては情報と知識をめぐる環境はどうなっていくのか、本誌とし
ても注視しつつ、また継続的な刊行を通した誌面による問題提起を図っていき
たいと思います。
さて、今回は、
● 第2回OpenGLAM JAPANシンポジウム
  オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来
  生貝直人×日下九八×高野明彦
● 特集 図書館100連発3
● 羊の図書館めぐり第3回「京都府立総合資料館」水知せり
● 司書名鑑No. 5「大向一輝」(国立情報学研究所)
という構成となっています。
「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」は、2014 年 9 月 27 日(土)
に開催された第 2 回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム(主催:OpenGLAM JAPAN、
協力:アカデミック・リソース・ガイド株式会社)の内容をベースに登壇者であ
る生貝直人さん(東京大学大学院情報学環特任講師/東京藝術大学総合芸術アー
カイブセンター特別研究員)、日下九八さん(Wikipedia 日本語版管理者・編集者
/ User:Ks aka 98)、高野明彦さん(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系教授)
が手を加えて記事にしたものです。
巻頭言
変化の中で、未来を見つめるライブラリー雑誌
3巻 頭 言     ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
昨今ほうぼうで聞かれるようになったオープンデータやオープンガバメント
という言葉の、文化芸術方面でのあり方について重要な示唆が得られるでしょ
う。なお、OpenGLAM JAPAN シンポジウムはその後、2014 年に第 3 回が開催され、
2015 年も複数回の開催が見込まれていることを書き添えておきます。
特集「図書館 100 連発 3」(嶋田綾子)は、これで 3 回目の掲載となる本誌の代
表的コンテンツです。「図書館 100 連発」は、これまで創刊号(2012 年 11 月発行)、
第 4 号(2013 年 8 月発行)に掲載してきましたが、今回は 1 年ぶりの特集となり
ます。この間、本誌スタッフは数百の図書館を見学し、また数々の事例もお寄せ
いただきました。特に今回は、2014 年 11 月に、秋田県の市町村図書館・公民館
図書室職員研修会で行われた秋田版の図書館 100 連発をつくるという取り組み
から数多くの事例を採用しています。
本誌が日本各地の図書館における良い事例やその手法を「図書館 100 連発」で
紹介し、提案することで、さまざまな図書館でも真似をしてもらい、そこから新
たな良い事例が生まれ、「図書館 100 連発」が何百連発にも連鎖していくことを
願っています。
連載 5 回目を迎える司書名鑑では、国立情報学研究所(NII)の准教授であり、
論文検索エンジンである CiNii の企画・開発・運用にもあたる大向一輝さんにご
登場いただきました。大向さんは、いわゆる図書館で働く司書ではありませんが、
むしろ現代における司書のありようの一つを示す存在ではないかと思います。大
向さんのメッセージにぜひ耳を傾けてください。
最後は、恒例のお願いです。本誌は少なくともオンリーワンの存在として一定
の価値を発揮しているという自負はあります。しかし、その自負もやはり一定部
数の購読による編集・発行のための経済的基盤の確立があってこそ、維持できる
ものです。引き続き、本誌のご購読をお願い申し上げます。
編集兼発行人:岡本真
資料提供の工夫 …………………………… 40
[File201] 本の帯のコンテスト
[File202] 積ん読大賞
[File203] 青空文庫の表紙コンテスト
[File204] サンタのおたのしみ袋
[File205] 誰も読んでいない本フェア
[File206] 新入学生向け富山ビギナー講座
[File207] おすすめ本を利用者から募集し、ポスターに
[File208] 書庫の本を「蔵出し」で展示
[File209] 全国読書川柳コンクール
[File210] シリーズ本はPOPでも案内
[File211] 新聞コーナーでオンラインも案内
[File212] 被災前の住宅地図を案内
[File213] 英語の本にシールで難易度を表示
[File214] 学習室に辞書や大学案内などを配架
[File215] 別置ラベルの説明を掲示
[File216] 行政とのコラボ企画展示
[File217] 全国地方紙正月特集号を展示
[File218] 配架資料に合わせた装飾や現物展示
[File219] 硬軟取り混ぜた行政資料展示
[File220] 大型絵本の見本に小型絵本をまとめて展示
[File221] 「よい絵本」の選定絵本をまとめて展示
[File222] 全集は開架に1冊、1巻目以降は書庫へ
[File223] 図書紹介コーナーのPOP。貸出時にも対応
[File224] 展示資料を地域の団体に貸出
[File225] CiNii停止時に、ほかの検索サービスを案内
[File226] 例規のウェブ版を紹介
[File227] 入り口に観光パンフレット
[File228] 貸出時の図書情報展示
巻 頭 言 変化の中で、未来を見つめるライブラリー雑誌[岡本真] …………………………… 2
第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム
オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来[生貝直人×日下九八×高野明彦]……………… 7
特  集 図書館100連発 3[嶋田綾子] …………………………………………………………… 39
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第9号/2014年 秋号
南相馬市立中央図書館(File218)
撮影:嶋田綾子 撮影日:2014年3月4日
[File229] 色分けによる区政行政情報コーナー
[File230] ライトノベルと知識本を同じコーナーに
[File231] 市役所職員のスキルアップになる資料提示
[File232] 地域資料を地図で案内
[File233] 図書館で調べよう!を開架に
[File234] 町の歴史を年表で掲示
[File235] 読みたい本、面白かった本に投票
[File236] 全国津々浦々、図書館の本棚数珠つなぎ
[File237] 高校生による読書活動アシスト
[File238] 職場体験生が本の紹介
[File239] 吟行コーディネート
[File240] 読み語り隊
[File241] ぬいぐるみのおとまり会を実況中継
[File242] ひだまりの小さな図書室
資料収集の工夫 ………………………… 82
[File243] 新聞の地域情報を利用者に
[File244] カタログでの選書会
[File245] 自治体誌を交換で収集
[File246] 人生の記念日に図書館へ本を
[File247] 各国大使館などにパンフレット寄贈のお願い
[File248] 通信制大学の参考図書をまとめて提供
[File249] 機内誌、車内誌を所蔵
[File250] 借りぐらしBOOKS
環境の改善 ………………………………… 90
[File251] カゴを使って文庫本を整理
[File252] 椅子コンテスト
[File253] スクール・サービスデイ
[File254] 貸切図書館
[File255] 梱包材を返却ポストで提供
[File256] これいいね!学校図書館の工夫
[File257] 学校図書館100連発
[File258] 返却ポスト用ドライブスルー
[File259] しきりを外すとグループで使用できるキャレル
[File260] ブラックライトで星空を演出
[File261] 別置ラベルと合わせた掲示
[File262] 天井から有線LANを配線
[File263] 薄い本はラベルをタテ貼り
[File264] 一輪挿し運動
[File265] 床に目的地への案内を掲示
[File266] 地元学校の寄贈作品を使用
[File267] 新着図書に栞を挟んで目印に
[File268] PCのデスクトップに伝えたいこと
[File269] チラシを吊して提供
[File270] 寄付による袋を提供
PRの工夫 ………………………………… 125
[File286] 作業用ブックトラックでPR
[File287] キャラクター普及のための取り組み
[File288] コミュニティバスで図書館案内
[File289] 図書館クイズラリー
[File290] 図書館探検ツアーすごろく
[File291] 図書館の活動をファイリングして展示
[File292] サービスの案内を要所要所に掲示
[File293] 新館計画を館内で掲示
[File294] 図書館ミッションのPR
[File295] 視覚障害者サービスの一般向けポスター
[File296] 「図書館の自由宣言」の詳細パネル
[File297] オンラインに誘導するレファレンスコーナー
[File298] オンラインデータベースの案内をPCの壁紙に
[File299] テーマ展示に大きなポスター
[File300] レファレンス事例を展示
司書名鑑 No.5 大向一輝(国立情報学研究所)
羊の図書館めぐり 第3回 京都府立総合資料館[水知せり]
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
………………………………………………… 140
…………………………………… 146
…………………………………… 148
………………………………………………………………… 153
……………………………………………………………………………………………… 154
[File271] 書庫内での避難指示を床に
[File272] 床の傷つき音防止にテニスボール
[File273] デスク横にミニ本棚
[File274] 閲覧中の雑誌もフォロー
[File275] 目録架を展示架として活用
[File276] 子ども用のブックバスケット
[File277] ポスターの下に持ち帰り用フライヤー
[File278] 簡単な掲示で貸し借りをスムーズに
[File279] 名称の工夫
[File280] CD・DVD付属の資料にラベルを貼り付け
[File281] 美しく、分かりやすいチラシの掲示
[File282] 整然とした張りもの管理
[File283] 廃棄した新聞でブックカバー
[File284] 新聞エコバッグで福袋
[File285] 自動貸出機の分かりやすい説明
第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム
オープンデータ化がもたらす
アーカイブの未来
生貝直人×日下九八×高野明彦
生貝直人(いけがい・なおと)
1982年生まれ。博士(社会情報学)。慶應義塾大学総合政策学部卒業、
東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。東京大学附属図書館新
図書館計画推進室・大学院情報学環特任講師。東京藝術大学総合芸
術アーカイブセンター特別研究員、科学技術振興機構さきがけ研究
員(兼任)など。専門分野は日米欧の情報政策(著作権、プライバシー、
セキュリティ、表現の自由、イノベーション)、文化芸術政策(デジタ
ルアーカイブ、電子図書館)。単著に『情報社会と共同規制』(勁草書
房)など。
日下九八(User:Ks aka 98=くさか・きゅうはち)
ウィキペディア日本語版の参加者。管理者、ビューロクラット、チェック
ユーザー、オーバーサイト、OTRSメンバー。ウィキメディア・ジャパン・
カンファレンスのスタッフ。本業は非公開。
高野明彦(たかの・あきひこ)
東京大学数学科卒。博士(理学)。電機メーカーに20年間勤務の後、
2001年より国立情報学研究所。2002年より東京大学大学院コン
ピュータ科学専攻教授併任。NPO連想出版理事長。専門は関数プロ
グラミング、プログラム変換、連想情報学。研究成果を活用して、
Webcat Plus、新書マップ、想-IMAGINE Book Search、Book Town
じんぼう、文化遺産オンライン、闘病記ライブラリーなどの公開
サービスを展開する。
8 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
岡本:OpenGLAM JAPAN の事務局長で、アカデミック・リソース・ガイド株式
会社の岡本真です。OpenGLAM JAPAN は、2013 年に横浜で開催された第 15 回図
書館総合展内のシンポジウムで結成されました。 文化機関が拓く、文化機関を拓
く をミッションにしています。どういうことか端的にいいますと、ギャラリー
やライブラリー、アーカイブやミュージアムといった文化機関をオープンにして
いくということです。日米の比較論が必ずしも意味をもつわけではありませんが、
欧米に行くと文化機関のオープンさにおいて、日本とは温度差を感じます。例え
ば、海外の博物館や美術館では写真撮影が大抵の場合は許されており、それをブ
ログなどで使うのも基本的には自由です。日本ではなかなかそういう環境は実現
していません。
私たちとしては、まず文化機関の方自身の意識を尊重しながら、環境を拓いて
いくプロセスをお手伝いしていきたいと考えています。そのときに博物館や美術
館、図書館、あるいは日本の場合は公民館も含まれると思いますが、それらの機
関が足並みを揃えて何かをしていくのは極めて難しい。この際に有効なのが、良
い事例を積み上げていくということだろうと思います。一つの良い事例が風穴と
第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム
オープンデータ化がもたらす
アーカイブの未来
生貝直人 × 日下九八 × 高野明彦
[いけがい なおと]        [くさか きゅうはち]      [たかの あきひこ]
司会:岡本真
そ の 動 向 が 世 界 的 に 期 待 さ れ、 注 目 さ れ る GLAM(Galleries、Libraries、
Archives、Museums)のオープンデータ化は、いまどのような状況にあるのか。実
践から、思考から、日本における OpenGLAM の最前線で活躍する 3 人の登壇者が、
その展望と提案、GLAM がもたらす社会の可能性を議論する。
GLAMのデジタルアーカイブの状況──日本から、世界から
9第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
なって大きな動きにつながっていくということは、この世の中で少なからず存在
します。
OpenGLAM は、「自分もこの活動に参画します」とコミットしていただければ、
順次、メンバーとして名を連ねていただけます。現在、参加表明をしてくださっ
ている方は、例えばリンクト・オープン・データ・イニシアティブや国立情報学
研究所の方々といった研究者や技術者のほか、これからご登壇いただく日下九八
さんのようなウィキペディア編集者もいますし、私のような民間企業の人間も
います。また図書館、博物館、資料館といった文化機関で働いている方も参画し
ているのが大きな特徴かと思います。また、法人の協賛を 3 社頂戴しております。
一社がまず、本日この会場を提供してくださった株式会社リクルートテクノロ
ジーズ様です。そして、資料のデジタル化などで皆さんご存知かと思いますが株
式会社国際マイクロ写真工業社様、最後に私が経営しますアカデミック・リソー
ス・ガイド株式会社も名を連ねさせていただいております。私たちは、この活動
に組織の単位でコミットしていただくことを歓迎しております。文化機関、ある
いは大学という単位でも構いませんが、組織的に OpenGLAM にコミットしたい
左から岡本真、日下九八、生貝直人、高野明彦 撮影:嶋田綾子
10 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
方がいらっしゃれば、私どものところまで、ぜひご相談ください。
では、さっそくシンポジウムに入りたいと思います。まず、ウィキペディア日
本語版の編集者・日下九八さんから、オープンという言葉の概念整理、論点整理
をしていただきたいと思います。
日下:ウィキペディア日本語版の編集者の日下です。日下という名前はアカウン
ト名の Ks aka 98 から付けたもので、そのアカウントで全ての原語版、全てのプ
ロジェクトに参加できます。ウィキペディアというのは、自由にテキストや写真
を使っていい、つまりオープンコンテントの百科事典です。ウィキペディアには
色々な言語版があって、言語ごとに百科事典以外にもプロジェクトがあるのです
が、僕は日本語版ウィキペディアで、管理者ほか幾つかの権限をもっていて、い
ろんなことができます。そうした権限は、立候補してコミュニティの信任を得る
仕組みで、職員ではなく、ボランティアです。ただ、権限をもっているからといっ
て、コミュニティ内で決定権があるわけではなく、代表する立場にあるわけでも
ありません。
僕はウィキペディアに参加して 7、8 年ほどですが、ウィキペディアというの
は オープンコンテントの百科事典 ということでつくっているので、当然、オー
プンについて、いろいろなフェーズで議論が起こります。今日はそうした議論を
通して培った経験なり知識なりで、昨今の GLAM におけるオープンアクセスとか、
オープンデータについて話す役回りになるかと思います。
では、オープンという言葉の概念整理ということでお話すると、もともとフ
リーという言葉がありました。リチャード・ストールマン(1953 ∼ アメリカ合衆国
のプログラマー、フリーソフトウェア活動家)のオープンソフトウェア運動というのが
あって、これは開発者側のところから生まれた言葉です。プログラムなどに対し
て使われる言葉でした。そのうちに、自由なのか無料なのかという言葉の曖昧さ
や、ストールマンのキャラクターへの反発もあって、フリーはオープンという言
葉に変わります。やがてフリーであったり、オープンであったりするものは、プ
ログラムだけではなくて、テキストとか写真などに広がっていきます。こうした
動きに関わる人は、自発的なボランティアやクリエイターで、その中で主に創作
的な作品についてクリエイターが「自分がつくったものを、条件を事前に示して、
それを守るなら自由に使ってもよい」とあらかじめ提示するライセンスであるク
11第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
リエイティブ・コモンズが生まれてきました。ところが、学術論文を対象とした
オープンアクセスや、主に公共データを対象としたオープンデータになると、そ
こに関わる人たちは、それまでのプログラマー、ボランティア、クリエイターと
は価値観がだいぶ違うし、オープンの対象とするものの創作性の強さも違います。
そういったところで複雑な議論が起こっているわけです。
こうした流れの中でオープンという言葉はただ開放する、公開するというのと
は違う意味になっています。 オープンデータのオープンというのは、一種の専門
用語みたいなもので定義もありますが、それとは別に、文化的、社会的な情報や
知識、体験を全ての人に分け隔てなく公開していくという思想的な立場として使
われる場合もあります。オープンの概念というのは、使い方や捉え方で混同され
ているように思います。例えばオープンアクセスという言葉があります。日本で
は論文などの学術情報を公開してアクセスできればオープンアクセスといわれて
いますが、ブタペスト宣言(オープンアクセスの定義を述べ、その後の OA 運動の方向性を
示したと位置づけられている宣言)で確認されたのは、再利用まで含めた意味だったは
ずです。日本で胸を張ってオープンアクセスにしている、といえる大学図書館の
レボジトリというのは、僕が知る限りでは CC BY(著作権者表示、改変時は改変内容の
明記を条件として、改変や商用も含めた複製や再配布の事前許諾)でライセンスしている九
州女子短期大学の紀要だけです。「非営利のみ」とか「改変禁止」のライセンスを
付けているところは幾つかありますが、それらはオープンと呼ばないほうがいい。
一方、オープンガバメント、オープンデータの文脈では、国や地方自治体の行
政の透明性を高め、公的機関の情報を市民や民間企業が活用できるようにするこ
とで経済的な効果を期待して、情報を公開し、自由に使えるようにしようという
動きがあります。この文脈では、オープン・ナレッジ・ファウンデーション(OKF)
による「オープンの定義」があります *1
。もう一回配ってもいいとか、もう一回
使ってもいいとか、改変してもいいとか、使う人を差別してはいけないとか、そ
ういうものを全て守らないとオープンではないということになっています。
今日、私たちがオープンというとき、著作権者、あるいはデジタル化をした人
がクリエイティブ・コモンズでいうところの CC BY のライセンスを付けたもの
をオープンと言いましょう。そして、追加で「そのほかの制約を課さない」という
条件を付けましょう。それが、今日、僕が言いたいことです。オープン化について
は機械可読性、コンピューターで扱いやすいようにすることも大事とされている
12 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
んですが、とりあえずは、そのようなライセンスを付けて、ネットで公開すると
ころまでアクセシビリティを上げましょう。
美術館や博物館などの学や産がもっているコンテンツに意識が向けられるよう
になったのは、オープンアクセスの流れにおいてです。やや重なりますが、オー
プンガバメントやオープンデータの流れからも、地域の公文書や歴史資料もオー
プンになったほうがいいんじゃないかという話になってきました。そして、オー
プンになった資料を利活用する入口として公共図書館や学校図書館、それから大
学図書館などラーニングコモンズ的なものが、OpenGLAM の動きに加わるかた
ちになっています。公共図書館や学校図書館は、地域資料などをもつところもあ
ますが、独自の、自前のコンテンツをもっているとは限らないですよね。もって
いる図書というのは、自分たちでどうこうできるような権利をもっているわけで
はないのですが、そういう意味で、同じ図書館であっても、機関リポジトリを運
用して紀要などを公開する大学図書館とは役回りが変わってきています。
国会図書館では、近代デジタルライブラリーで古い時代の図書・雑誌などの画
像を公開していますが、以前はそれを利用する場合、許諾を得る必要がありまし
た。つまり著作権上は権利が切れているのに、国会図書館に許諾をとらなければ
いけない条件になっていた。そうなると「表示 - 継承」(CC BY-SA)というライセン
スに取り込めないので、ウィキペディアでその画像を使うことができないんで
す。これが今年 2014 年になってから「著作権の保護期間が切れているものは許
諾なしに使ってよい」と変わった。ここで初めてオープンになったんですね。また、
CiNii の総合目録データベースが CC BY による公開となりました。
また、慶應大学は 42 行聖書をデジタル化しています。グーテンベルクによる
活版印刷術の発明により刷られた聖書ですね。歴史的な価値がある。しかし慶應
はオープンにしていません。一方、ウィキペディアのウィキペディア・コモンズ
という画像レボジトリには、42 行聖書の画像があって、誰でも自由に使えるよう
になっている。あと、これも今年になってからだと思いますが、オーストラリア
連邦化学産業研究機構がもっている化学に関する写真が全部だったかどうかは覚
えていないのですが、ウィキペディア・コモンズにアップロードされて、オープ
ンになりました。
北摂アーカイブス(豊中市と箕面市による地域の映像情報を収集するアーカイブサイト)
13第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
などは、インターネットでの公開という意味ではとても早い段階からデジタル
アーカイブで検索して使えるようにしてくれていたのですが、今日使われる意味
でのオープンにはなっていませんでした。これを CC BY にして、改変禁止とか非
営利とかいう条件を外してもらえると、オープンになる。そっちに向かいましょ
うよ、と言っているわけです。
では OpenGLAM で何ができるか、GLAM でオープンに、というのはどういう
ことかというと、一つは目録やカタログのオープンデータ化です。それから、所
蔵品のデジタルアーカイブ化が一番分かりやすいと思います。それからオープ
ンガバメント的な意味では、 自分たちのこと をオープンにするということも
可能だと思います。例えば、神奈川県立近代美術館が取り壊しになるという話が
出ていますが、取り壊しをされたら、この歴史的建物の外観が撮れなくなる。
Google で調べるといろいろな写真が出てくるので写真はあると思いますが、再
利用が許可された画像ということで制限をかけると、この建物の画像はほとん
どない。撮影者を探して許諾を得なければ、使えない写真ばっかりなんです。オ
フィシャルなかたちで自分の館、自分の機関のものだけでも写真をオープンにし
てくれれば、将来にわたって使える写真が残っていくということになります。ま
た武雄市図書館を問題視する皆さんが情報公開で引き出した分類別蔵書統計表と
いう資料があります。こういう内部資料があるのなら、最初からオープンにして
もらえると、透明性も高まるし、おもしろい統計もとれるかもしれない。
こういうものをオープンにしましょうと言うと、「かつて部落差別があった地
名の入っている古地図をオープンにしていいのか」とか、美術館の方だと「全ての
作品について、作家にコンタクトして許諾を取るのは無理です」といった話にな
るのですが、そういうのはとりあえず考えずに、できるものからやっていこうと
いうことで、保護期間が切れた資料、それから自分たちで許諾を出せる著作物に
ついて考えることにすればいい。まずは、そこから始めましょう。
岡本:オープンという言葉が、かなり多義的に使われているということが分かっ
たと思います。どれが正しいと今すぐいうよりは、同じ言葉でも多義的に使われ
ていることを踏まえて聞き進めていただければと思います。次の登壇者は多方面
でご活躍の方ですが、最近では東京大学の新図書館の準備にも携わっている生貝
直人さんです。文化芸術方面のアーカイブ政策に関しては、注目の若手中堅の一
人ではないかと思います。
14 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
生貝:今日は僕の目下の研究テーマでもある、「日本版ヨーロピアナをつくるた
めには何が必要か」ということを、主に法制度や公共政策の観点からお話させて
いただきます。論点は大きく 2 つです。まず日本における全ての GLAM のデータ
を連結させ、それを統合的なポータル・プラットフォームで閲覧・利用できるよ
うするためには何が必要か。次にそれを使って、どのような価値が創出できるか
を考えることです。
ヨーロピアナは、ゴッホでもモネでもターナーでも、あるいは 70 年くらい前
に亡くなったミュシャでも、全欧州 2,300 以上の文化施設が提供する 3,000 万件
以上のデジタルオブジェクトを統合的に検索することのできるポータルです。さ
らにそれらのデジタルオブジェクトの多くは、著作権保護の有無やクリエイティ
ブ・コモンズなどのパブリック・ライセンスがメタデータ(文学作品をデータと考
えた場合、例えば作者名、刊行日時、ページ数、ジャンル、要約、さらにクリエイティブ・コモン
ズなどの補助的な内容のこと)として付記してあるので、オープンに再利用可能かど
うか、検索結果から一括で確認することができます。日本でもここ十年来デジタ
ルアーカイブの構築は進んできており、例えば文化庁の文化遺産オンラインでは
10 万点以上の作品を見ることができ、国立国会図書館のデジタルコレクション
では一般公開されているものだけでも 30 万冊以上、NDL 東日本大震災アーカイ
ブでは様々なメディアを集めて、震災のアーカイブを統合的に検索できるように
しています。さらに例えば、私の勤務先の東京大学には図書館だけで 30 館以上
あって、それぞれがデジタルアーカイブをつくって個別に公開していますし、兼
務先の東京藝術大学でも総合芸術アーカイブセンターでオーケストラの映像など
を次々と公開し始めています。また、今や日本の文化の中核ともいうべきマンガ
やアニメなどについても、絶版になった作品をネットで公開する絶版マンガ図書
館などの新たな構想も出てきていますが、そういうものをヨーロピアナのように
つなげられないかなと思うのです。
しかしアーカイブというのは、公開してつなげて見られるようにしても、上手
く使われないと寂しいです。そこで考えたいのが、アーカイブの利活用です。例
えばヨーロピアナとアメリカの DPLA(Digital Public Library of America 米国各地の図書
館・博物館・文書館などが有するデジタルコンテンツを統合的に検索することができる電子図
書館ポータルサイト)は、それぞれに登録された数千万のコンテンツを組み合わせて
キュレーションした共同エキシビジョンをつくったりしています。ヨーロピアナ
でクリエイティブ・コモンズの条件で公開されたアーカイブを使ったアプリケー
15第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
ションや教育コンテンツなども、多く生みだされ始めています。また Google では、
Google Cultural Institute(世界の美術館、博物館、オンラインアーカイブなどから集めた数
百万もの遺物、文化遺産を公開するバーチャルの美術館、博物館)という文化施設向けのデ
ジタルアーカイブ・プログラムを提供しており、ヨーロピアナもここに参加して
第一次大戦 100 周年のエキシビジョンを公開しています。それから大学でも、最
近の MOOCs(大規模オープンオンライン講座)の拡大の中で、さまざまなアーカイブ
を利用した文化・歴史分野のオンライン講義などもつくり始めています。こうい
うときに GLAM のもっているアーカイブを利用できるとありがたいのですが、実
際にやろうとすると、保有する機関から再利用の許諾を取るだけでもすごく大変
な場合が多く存在します。こうしたデジタルアーカイブを利用した価値創出のた
めの取り組みを、個人やベンチャー起業などが含めた幅広い主体が行えるように
するためにも、なんとかして GLAM のオープン化を進めていきたいところです。
こういう利活用モデルをつくっていかないと、アーカイブを構築・公開してもそ
の価値は十分に発揮されないような気がします。
では、なぜ日本版ヨーロピアナ、つまり全国的なデジタルアーカイブの基盤が
必要なのかということを考えてみます。その理由として一つに、若者が iPhone
や Google、Facebook といったデジタルツールでしか文化的な生活を送らなく
なっていることがあります。今後さらに逼迫する経済状況を生きる若い世代に、
美術館や博物館、図書館を税金で維持していくことの必要性をどう説得するのか。
これは大学で教えていても、相当な難しさを感じるわけです。そんな時に、それ
らが所蔵する膨大な文化資源がどこからでもネットで統合的に見られるというの
は、文化施設の価値を次の世代に伝えていく上での前提的な基盤になってくると
思います。二つ目に、文化施設に来られない人たちにも役に立つということです。
現在、東京オリンピックに数千万人が来るという想定のもと、彼ら向けにどうい
う文化プログラム、イベントなどをやるかという検討が国や自治体でも進められ
ていますが、本当に目を向けなければいけないのは、2020 年にネットを通じて日
本の文化に興味を抱いてくれる 80 億人なのです。そんなときに、横山大観や葛
飾北斎といった日本文化のキーワードを Google で探して、分散したアーカイブ
にたどり着くしかないという状況が続いていたら寂しいですよね。このような状
況を 2020 年までになんとかしたい。またデジタルアーカイブになれば、美術館
や博物館に行くのが難しい歩行困難者でも作品を見ることができ、視覚障害者で
16 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
も音声読み上げで本を読むことができるという点も極めて重要です。
その実現のために何が必要かというと、オープンデータをある程度法律で義務
づけることが根幹になると思うのです。EU では 2013 年の指令改正から、公的な
MLA もほかの公的機関と同じく税金で運営されていることには変わりないので、
公開されたデータは原則として再利用可能にしないといけないことになり *2
、現
在 EU 加盟各国で国内法化作業が進められています。ヨーロピアナとしてもそう
いう流れの中で、現在のデジタルアーカイブ閲覧のためのポータルから、再利用・
創造的利用のためのプラットフォームになっていくことに、非常に力を入れてい
ます。
米国オバマ政権でもオープンデータのアクションプランで、税金で運営してい
る連邦立の文化施設もオープンデータにしていくということで、スミソニアン機
構の文化施設もその対象に含まれることになりました *3
。このような世界的な流
れが日本に押し寄せているなか、僕は文化施設のオープン化のための基盤法制を
そろそろ整備しなければならないと考えているのですが、実際にオープンを法律
で定めようとすると、文化施設独自の色々な事情をよく考える必要が出てきます。
まず図書館でも、美術館でも、博物館でも、所蔵している作品は自分たちでつ
くったものではありません。著作権法は、原則として著作者の死後 50 年間、勝手
に再利用することを禁止していますが、著作権保護期間が満了したからといって、
文化施設の側が作品をデータ化して誰でも自由に二次利用していいと許諾するこ
とは、果たしてなんの権限に基づいて言えるのだろうと、実際の文化施設の方た
ちは違和感をもつこともあると思います。僕たちは法の規則だけではなく、価値
観や道徳によっても動いているわけですから、そこに照らし合わせながら 現実
的なオープンとは何か を考えていかないと、オープン化は進んでいかないので
す。例えば、東寺百合文書 Web(京都府立総合資料館による、京都の東寺に伝えられた日本
中世の古文書を公開するインターネット上の電子資料館)の完全な CC BY 化はすばらしい
例ですが、同文書は元々公的な性質が強く、時期的にもかなり昔のもので、こう
なると倫理的、道徳的な問題が発生しづらい部分もあると思います。こうした資
料の特性なども考えながら、ヨーロピアナ水準のオープン化を徐々に目指してい
く道筋をつくる必要があると思います。
もう一つ重要な論点としては、文化施設の運営やデジタルアーカイブの構築に
はお金がかかるということです。当然、公的な文化施設というのは、そもそも税
17第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
金で運営されているのですが、日本はもとより、欧米でも非営利な学術利用は無
償利用を許す一方、営利利用については許諾や対価が必要な場合が多いです。こ
れは日下さんのいうところのオープンとは違いますよね。
この点、例えば日本の図書館法 17 条では、お金を取ってはいけないとなって
いる一方 *4
、博物館法 23 条では、入場料をとってもいいとされています *5
。公的
な文化施設がどこまで無償であるべきかは難しい問題ですが、美術館や博物館な
どの入場料等を通じた財源確保の努力こそが、豊かで多様なキュレーションを生
みだす部分はあるでしょうし、なによりもキュレーションというのは表現行為で
す。全てを公的な資金に頼り、いちいち国に「このキュレーションをやってもい
いですか」と聞かなくてはならないとしたら、表現の自由としては危ういのです。
デジタルアーカイブでも、自主財源というのは、公的文化施設が国家からの距離
を保つという意味で必要な側面かと思います。
とはいえ、それでも文化施設のデジタルアーカイブはオープンにしていかざる
を得ないと思うのです。その一つの象徴的な事例が、2013 年に起こった国立国会
図書館の大蔵経問題をめぐる一連の動きだったと思います *6
。この問題は、著作
権が切れた作品であっても、それによって商業的な利益を得ている運営主体がい
る限り、無償でのデジタル公開は避けられるべきなのか否かという議論を呼び起
こしたものです。この議論はとてもセンシティブなのですが、特にデジタル時代
の文化施設というのは、著作権が切れた作品が自由に利用可能であることを本質
的に必要とするのです。ですが実際には、多くの日本の美術館、博物館、図書館が、
著作権が切れた作品のデータを自分自身で再利用不可能にしてしまっているのは、
論理的な整合性の問題としてよく考えなくてはならないと思います。この点、国
立国会図書館は翌 2014 年 5 月から、近代デジタルライブラリーなどの著作権が
切れた 26 万冊を利用許諾不要としましたが、これは大蔵経問題と直接的な関係
性のある出来事ではないながら、「著作権保護期間が満了した作品は自由に利用
できるべきか」という問題設定から見れば、文化施設としての論理必然的な、適
切な対応だと考えています。以上簡単ですが、文化施設のアーカイブをオープン
にするというのはどういうことかについてお話をさせていただきました。
岡本:生貝さんのお話で、諸外国の事例というのも見えてきたのではないかと思
います。次にお話いただく高野明彦さんは、文化庁が行っている文化資源のデジ
タルアーカイブである文化遺産オンラインやいわゆる連想検索のエンジンで、皆
18 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
さんよくご存知かと思います。
高野:高野です。先月、いま話題に出ていたヨーロピアナ本部や、ドイツ、フラン
スの国立図書館を訪問して最新状況を聞いてきました。日本から見ると、ヨーロ
ピアナは理想的に進んでいるような印象ですが、実際はそうでもないことが分か
りました。今日は海外の話を評論するのはやめて、われわれの関係しているプロ
ジェクトをご紹介することで、日本の現状を考えることにつながればと思ってい
ます。
昨年 3 月までの 7 年間、国立情報学研究所(NII)内に連想情報学研究開発セン
ターを立てて活動してきましたが、そのセンターのホームページに書いてある活
動のコンセプトが、僕のテーマでもあります。つまり文化的な記録を預かる組織
が蓄えてきた記憶を一般に開いていくということです。このときいきなりオープ
ンになることはまずないので、まずは小さい範囲でもいいので開いてもらう、そ
のお手伝いをずっとしてきました。
20 年ほど勤めた日立製作所から国立情報学研究所に私が移動したのが 2001
年ですが、まず立ち上げたのが、Webcat Plus(江戸期前から現代までに出版された膨大
な書物を対象に、そこに記憶された知の集積を自由に探索できる情報サービス)です。Webcat
Plus には、僕たちが研究している連想検索の機能を付けています。連想検索とい
うのは、文書と文書の言葉の重なり具合をもとに、ある文書(検索条件)に近い文書
(検索結果)を探しだす検索技術のことで、例えば興味のある本を何冊か指定すると、
その興味に近い本を探してくれます。これがそれなりに評判になって外部の研
究ファンドも取れたので、新書マップと文化遺産オンラインをつくりました。文
化遺産オンラインは文化庁の依頼でつくったもので、今も維持しています。それ
から神保町古書店連盟から声が掛かり、神田神保町のオフィシャルサイト、Book
Town じんぼうをつくりました。
連想の仕組みを付けた検索システムが幾つかできたところで、それらを束ねた
横断検索がしたいということでつくったのが、想 -IMAGINE(さまざまなジャンルの情
報源から関連する情報を連想計算で収集して一覧表示する書籍検索サイト)です。単なる横断
検索ではなく、束ねた情報源が互いに影響し合って新しい情報源ができるという
のが特徴です。
ここまでやってそれぞれのサイトで PV は増えたのですが、果たしてユーザに
本当に喜んでもらっているのか実感がなかったので、できるだけ現場に出て行く
19第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
ことにしました。例えば神保町の真ん中に「本と街の案内所」というのを常設し
て、65 インチ液晶タッチパネルやパソコンで、僕たちがつくった検索システムを
使えるようにしました。バイトの子が使い方を教えたり、PC が苦手な人には代わ
りに調べてあげたりもします。神保町に来るのが楽しみのような人には、ウェブ
なんて使ったこともないという人も多いので、これも一つの開き方だと思います。
それから 2007 年に千代田図書館がリニューアルオープンしたときには、オン
ラインの検索システムである新書マップと想 -IMAGINE が利用できるレファレン
スコーナーをつくりました。新書を 3,000 冊並べた書棚をつくって、利用者が興
味のある新書を数冊選んで専用の書見台に置くと、それに関連した本や古書店や
観光地情報を教えてくれるというものです。それを見た小布施町のまちとしょテ
ラソの花井裕一郎館長(当時)が「うちでもこういうものをやりたい」と声を掛け
てくれて、今もテラソでは同じシステムが動いています。 残念ながら千代田図書
館はメンテナンス費の問題があって、引き上げてしまいました。
文化遺産オンラインではそれなりにデータは集まったのですが、増えれば増え
るほどどうでもいいデータも増えてくるのです。これはヨーロピアナが直面して
いる困難でもあります。本当に見たいものを見つけるのがどんどん難しくなって
いくのです。そこでキュレーションした結果を提供する方法を考えようというこ
とで、文化遺産オンラインの素材の中から、常設展というかたちでは美術館があ
まり見せることのない作品を整理して、仮想のリーフレットとして見せる仕組み
(遊歩館)をつくったりもしました。
さきほど紹介した小布施は歴史的な遺産を生かした町づくりをしていますが、
江戸末期の文化人・高井鴻山が生まれた地ということで記念館があったり、地域
にゆかりの日本画家・中島千波さんの作品を集めたミュージアムなどがあります。
このような小布施の文化や芸術を横断的に紹介できるサイトがほしいという依頼
を受けて、小布施正倉というサイトをつくりました。僕はこれもオープン化だろ
うと思うわけです。例えば、小布施正倉で公開している中島千波さんの高画質の
作品は、文化庁から文化遺産オンラインに掲載したいとお願いしても、なかなか
提供されないものです。しかし、「小布施が盛り上がるのなら」ということで許諾
していただきました。こういう活動は非常に重要で、中央でお金を使って無理矢
理に進めるよりは、権利をもっている人と信頼関係にある人や組織が主体的に進
めていくほうが自然だと思うのです。
20 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
文化遺産オンラインでは、文化財情報を「時代から見る」「分野から見る」「地図
から見る」というカテゴリーから検索できます。 例えば「時代から見る」のカテ
ゴリーから「安土・桃山時代」を選ぶと、安土桃山の作品が見られます。一覧で見
ると遺跡とか屏風とか様々なものがランダムに出てきますが、その中から「お面」
が気になり画像をクリックすると、そのお面の情報を眺められます。情報の中に
「有形文化財登録」とあるので、これは文化庁の登録情報から取ってきたものだと
分かりますね。大きい写真や、違う角度からの写真が提供されている場合もあり
ますが、この情報だけで研究ができる品質ではありません。まずはどこにどのよ
うなものがあるのか、それが分かるようにしておく。そうすれば、そこに足を運ぶ
ことにつながります。こういうサイトの存在意義はそこにあるだろうと思います。
さて、文化遺産オンラインへの登録件数はまだ 10 万件くらいです。なぜか国
立博物館などはこういう公開に消極的で、結果的にはバランスを欠いたコレク
ションになっています。でも、こうしたインフラのプレゼンスが高まって、考え
の異なる人も「このぐらいは出してもいいか」と少しづつでも情報が集まってく
る場をうまくデザインできれば、生貝さんが仰っていた日本版ヨーロピアナみた
いなものが実現できるのではないかと期待しています。
岡本:では、これからパネル討論に入る前に、OpenGLAM という活動の社会的な
背景についてお話します。2013 年の G8 サミットで、首脳宣言にオープンデータ
の推進が盛り込まれ、行政がもっているあらゆる情報をオープン化していくこと
が合意されています *7
。ここでいうオープンとは機械で可読可能なかたち、要す
るにコンピュータ処理ができるようなかたちにし、二次利用に関する敷居を極限
まで下げる、営利も含めて、活発な利用を促進していくということで、厳密に定
義されています。こういう背景の中で、文化機関がもっているデータも行政情報
とみなして積極的な活用を進めていこうという流れがアメリカ、EU 諸国におい
て出てきています。
これからのセッションではまず、このような世界的なオープンデータ時代にお
いて、文化機関が果たすべき役割とは何か、皆さんのお考えをうかがいたいと思
います。ご経験やお立場によってお三方とも考え方に差があろうかと思います。
GLAMはいかにして拓かれるべきか
21第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
結論はまだ現時点において一つでなくていいと思うのですが、いかがでしょうか。
日下:一つは、今を生きるわれわれと未来の人々に向けて、文化機関がもってい
る財産を保存するというのが大きい役割だと思います。でも保存するだけで、そ
れが見られない状態ではおそらく問題があるので、現物でなくていい、写真でい
いので、多少見せてもらえないだろうかと思っています。ネットに上げてもらえ
れば仕事が終わった後でも見られますし、高解像度でなくてもいので、できれば
無料で見せてほしい。厳密な意味での「オープンにする、しない」という以前に、
少なくとも公費でデジタル化されて公開されているパブリックドメインになった
資料はパブリックドメインとして使いたい。
あと、もう一つ文化機関が果たしていくべき役割でいうと、それこそ足が弱っ
たお年寄りの方でも、例えば病院のベッドの上からでも見られるようにしてほし
い。どのような状況下にある人でも、興味をもったときに、それを確認できる環
境がつくられるようになったらいいなと思っています。
生貝:文化機関が果たすべき役割について、幾つか問題提起をさせていただ
きます。一つは、文化施設というときに抜け落ちがちなのが大学で、僕自身は大
学もしっかりとオープン化を進めていくべきだと考えています。大学は著作権法
35条で自由に著作物を使わせてほしいと言うわりには、自らの情報や研究成果
をしっかりとオープンにできていない現状があります。社会や政府、文化施設に
オープンを求めるならば、自分たちの情報をオープンにしていかなければ何も変
わらないと思います。さらに重要なのは、文化施設が公開するデジタルアーカイ
ブの利活用のモデルをつくることだと思います。資料を利用して研究・教育する
ことを本来的な使命にしてきた大学のようなところが、オープンなデジタルアー
カイブを利用した価値創出の仕組みを継続的につくる役割を果たしていかないと、
OpenGLAMの価値はなかなか社会に伝わっていかないのではないかと思います。
もう一つはライブラリーの役割です。図書館法 2 条には、「資料を収集し、整理
し、保存して、一般公衆の利用に供」するという図書館の役割が書かれていますが、
今のデジタル社会においては、資料を収集する、提供するというような言葉の意
味をもう一度再定義していく必要があると思います。今までは本を購入して集め、
それを体系的に整理して提供することが重要でしたが、物理的な本という形態以
外のデジタル知識が加速度的に増大している現代では、「デジタルで公開される
22 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
世界中の様々な知識を整理して、利用者が使えるようにしていくこと」が図書館
にとって非常に重要になってくるはずです。自分たちで物理的に知識を もつ
必要がなくなってきている時代の、知識の収集と提供のあり方を考えることこそ
が、僕は OpenGLAM における「L」の役割ではないかと思っています。
高野:今日、僕は L や M の代表みたいな顔で来ていますが、普段、僕はたぶん日
下さんのような立場です。つまり各機関の個別の事情はあまり考えずに、技術的
な合理性を優先してサービスをつくっていかざるを得ないので、文化機関からは
嫌われる側なんです。僕たちが Webcat Plus を立ち上げたとき、目次と概要を本
の情報に追加したのですが、こういうものは図書館の専門家からすれば書誌では
ないのだそうです。そんなものを国立情報学研究所、もと学情(国立情報学研究所の
前身となる学術情報センターの略称)ともあろうものが提供するのはいかがなものかと
いう議論があったのですが、僕たちの研究している連想の仕組みは、言葉の重な
りで近さを判定するので、タイトルや著者名が似ているということだけで、本の
近さを計っても意味がないのです。それで強引に目次や概要を入れることにしま
した。
また、Webcat Plus では書影も出していますが、著作権法上、完璧に OK などと
いう書影のセットはこの世の中に存在しないと思います。マンガやタレントの写
真が載っていたらやめたほうがいいというような世界なわけで、クレームが来た
ときに適切に対応するということで割り切ってやっています。ですから NII の事
業部としては危なっかしくて責任をもてないということもあり、Webcat Plus は
今年の 4 月から、私の研究室が運営するサービスになりました。さきほど「まず
は小さい範囲でも開かせることをずっとやってきた」なんて、バランスを取りな
がら慎重に進めてきたような言い方をしましたが、かなり冒険的に進めてきたの
です。このぐらいのことをやっても既存の M とか L とか A からはまともに相手
にされないというのが現状だと思います。
たまたま小布施の図書館や千代田図書館を企画した方々が「面白いことをや
りたい」と声を掛けてくださったので、「ではいい事例をつくりましょう」とい
うことで協力を惜しまずにやってきました。でも、歴史あるメモリーインスティ
チュートの人たちが、自分たちの組織が預かってきた情報を社会へ拓いていくこ
とを本気で考えているとは僕は思っていません。岡本さんが全国を行脚されてい
23第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
るのも、まさに啓蒙活動かと思いますが、最初は「お金がついたから、仕方がない
からやる」ということでもいいので、少しづつ前に進めることが必要かなと思い
ます。
ヨーロピアナは 5 年間で、メタデータとはいえもう 3,000 万件が集まっていま
す。一方、文化遺産オンラインは 10 年やっても 10 万件です。先日、話を聞いた
ときに「どうしてそんなに集められたのですか」と聞いたら、彼らは「お金です」
と答えていました。EU は非常に戦略的です。「ヨーロピアナに協力するプロジェ
クトにはファンディングしますよ」ということをヨーロッパ全土に対して呼び掛
けています。ですから日本でも、上手く回るところまでいくには、政策的な努力
も必要だろうと思います。
岡本:今のデジタルアーカイブのブームは、電子書籍ブームと同じくらい繰り返
されてきていて、また収束するというある種のシナリオも感じざるをえない部分
もあります。ただ期待するのは、冒頭でも言いましたが、オープンデータという
ある種の大合唱が強くなってきている部分ですね。 国際的な公約に近いような
かたちで国の政策として銘打たれています。また、政権に対する賛否はそれぞれ
お考えがあると思いますが、現実的な問題として、今の内閣はそれなりに強いだ
ろうと。総理大臣が変わると、全てやり直しというのがこの国の行政制度ですの
で、そういう意味では風が吹いているといえるでしょう。風が吹いているという
認識も、ビュービューなのか、そよそよなのかは、それぞれの立ち位置から感じ
方が違うと思いますが、少なくとも無風ではない。それを前提とした上で、これ
から先の話を進めたいと思います。
高野さんが仰ったように、開いていこうとしないメモリーインスティチュート
がたくさんあるというのはそのとおりだと思うのですが、それらを拓いていく
として、その場合の方法論というのはどういうアプローチであるべきでしょう
か。日下さんは、オープンデータの定義を明確にして進めるべきであるという考
え方ですね。これは決して悪い考え方だとは思いません。曖昧さが物事の進展を
遅らせたり、進展させたくない派へのエクスキューズを与えることになるからで
す。ただ一方で、段階的に一歩ずつ踏み出していくほうが現実的じゃないかとい
う考えも当然あるでしょう。この判断は、おそらく結果論でしかないと思います
が、そう言ってしまうと虚無的になってしまうので、それぞれお立場からお考え
をお話いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
24 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
日下:先ほど説明したような意味でのオープンにしなければならない、という
ことではないです。オープンデータ、オープンアクセスという文脈でオープンと
いう言葉を使うのであれば、国内でそれに深く関わっている人、あるいは国際的
に決められた用法があるので、明確にしたほうがいいと言っているのです。以前、
東京メトロがオープンデータ活用コンテストというのを開催するということで、
オープンデータ界隈で話題になりました。しかし、コンテストで使われるデータ
は、「オープン」なものではなかった。オープンデータと銘打たなければ、段階的
な第一歩を踏み出したことを良い試みですねと言えたのに、それは違うと言わな
ければいけなくなってしまう。見過ごせないわけです。ですから、そういう言葉の
使い方はちゃんとしましょうと言っている。また、すでにそのデータやコンテン
ツがある機関の運営に重要な収入になっているものや、自分たちでお金なり名誉
なり、実績なりに変えていけているものは、オープンにしなくても、適切な対応に
よって、できるだけ使えるようにしてくれているのならそれでいいと思います。
ただ、所蔵機関では手に負えないものもあるのですね。古い写真の中には、い
つ頃のもので、何が写っているのかを調べようと思ったら、すごく手間がかかる。
そういうのは公開して情報を集めたほうがいい。ただし、どこまでは公開したほ
うがよく、どこからがいけないのか、その境目というのは、具体的な取り組みの
中で考え、事例が増えていく中でつかんでいくことになります。なので、無理に
でもすぐやりましょうというような考えは、僕はもっていません。
それから、さきほど高野先生がかなり振り切って進めているというニュアンス
のことを仰ってましたが、ウィキペディアはものすごく慎重にやっていて、プラ
イバシーに関わる記述だとか、著作権侵害にあたるものなど、何万件と削除して
いますし、以前のメディアウィキの仕様の都合で、100k の侵害のないテキスト
が巻き込まれて吹き飛ぶようなこともありました。僕たちは、ここまでならたぶ
ん大丈夫というだいぶ前のところで削除のラインをつくっているんです。ですか
らオープン化において現実的にやっていく、つまり抑えながら進んでいく方向で
も、僕はそんなに文句を言う立場ではない。オープンの定義にうるさく、ウィキ
ペディアに参加していることで、急進的な意見が期待されているところもありそ
うなんですが、たぶん僕はすごく逆の位置にいるような気がしてきました。
生貝:僕自身はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンを運営してきたこともあり、
もともとオープン性を強く重視する立場なので、オープンの定義をリジットにす
25第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
べきということには基本的に賛成です。ただあまりに本来の定義を強調しすぎる
ことは、僕たちが、GLAM という歴史的な存在をオープンなものに変えていこう
とすることと、少なからず矛盾してくる部分があるのではないかとも考えていま
す。GLAM のそれぞれの主体、つまり美術館や図書館、文書館、博物館では、何百
年もの間、その本来的なミッションとして守り続けてきたものがあります。それ
と同様に、ここでいう「オープン」にしてもこの数十年間、その概念で守ってきた
ものがあり、いずれもその正統的な立場から逸脱することはおいそれとは受け入
れがたい。でも、概念というのは、定義の進化の繰り返しの中でこそ強くなると
思います。営利企業が新しくオープンの世界に参入しようとすると、非営利中心
で育てられてきたオープンの概念とは異なる部分が出てくることはどうしても避
けられませんが、だからといって「それは正統的なオープンとは異なる」として
排除的に見てしまうことには、僕はどうしても躊躇を覚えます。GLAM もオープ
ンも、本来の意味を大事にしながらも、変動する環境の中で少しずつ異質なもの
を受け入れ、定義を進化させ続けなくてはならない。進化というのは、優れたも
のが生き残るのではなく、もっとも環境に適応したものが生き残るのです。僕た
ちは、その概念の進化を止めてはいけないと考えています。
日下:図書館法という規定や、何千年という図書館の歴史を理解した上で、これ
からの図書館はこうだと戦うならかまいませんが、そうした歴史を無視して、俺
はこの定義で図書館をやるんだと言っても、普通は通用しないでしょう。オープ
ンの定義はバージョン 2 が出て、邦訳も下訳が出てきています。それはオープン
の定義について、これまで一生懸命考えてきた人が考えたものです。それに対し
てオープンの定義を変えたいのなら、それこそその伝統と戦わないといけない。
それだけの話です。
それと、アーカイブスの方がいらしたら、「文書」という言葉は似ているかもし
れません。オープンという言葉は日常で普通に使われるものなので、それに特別
な意味を付与させすぎというのはあります。だからこそオープンデータに関わる
人たちは、オープンの意味を何度でも説明しないと現実的には通用しない。僕は
Facebook で、公共オープンデータに取り組む人たちに、何度も、何度もオープン
の定義を説明しています。
高野:僕は言葉の定義にはあんまり興味がないです。僕が図書館の定義をしたら
26 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
大変なことになるだろうし、分かっているはずもないのですが、ユーザー側、あ
るいはユーザーにサービスを提供する側にいる立場としては、図書館が大切に
守ってきた価値を、違うかたちでも使うことができるんじゃないかと思うわけな
のです。ただ、こういうことを図書館の中の人に求めるは、たぶん今は酷なんで
すね。図書館のミッション・ステートメントから外れるし、そうしたトレーニン
グを受けてない人が雇われているのだし、あるシステムを外注したくても世界相
場の 3 倍くらいは払わないと、日本だと満足につくってもらえないというような
状況がある。だから、NII みたいなところがそれをする。私たちのミッションはそ
こです。彼らの予算や中の人の自由度ではできない事例をつくってあげることで、
それを指して、「ああいうものがうちの図書館にもできたらいいのにね」と言って
もらうこと。そこから少しずつ変わっていくのではないかと思います。 変えてい
きたいというユーザー視点をもった中の人でも、組織の中でのオフィシャルプロ
ジェクトだけではなくて、少し柔軟に外との関係性の中で良い事例をつくってい
くこともできるはずです。
日下:旧弊的な図書館みたいな内側があるとして、その外側に高野先生みたいな
組織があるとします。すると僕たちウィキペディアだとか、オープンストリート
マップというのは、そこよりもっと外側にいるんです。もし、僕たちがいなくて
もすでに 100 万項目あるような、オープンな百科事典を誰かがつくってくれてい
たら、別にウィキペディアはなくてもいい。内側と外側ではできないものがある
ので、さらに外側の人たちがいる。一番外側にいる人は、内側の人と直接交渉す
るのは難しくて、いろいろな壁があります。オープンな百科事典をつくってくだ
さいと、どこに言ったらいいのか分からない。そこでオープンの概念が生まれて、
まだできていないことを、みんなで可能にしようとしているという、そういう流
れだと思うのです。
高野:ウィキペディアの中の人というのは、オープンデータなり GLAM のプロ
ジェクトなりが望んでいるというのを話されるのに、NIIのナントカ教授よりはよ
ほど説得力や交渉能力があると僕は思いますよ。ですから僕たちが開かせるとき
は、オープンの定義を守らないと僕らはピックアップしませんというのではなく、
自分たちがセレクティブなポジションにいるということを自覚しつつ、僕たちだ
からこそ、その突破口を開けるようなものもあるんじゃないかと思っています。
27第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
生貝:確立した定義や伝統を再考するにあたって、歴史を知ることが重要だとい
う点には完全に賛同します。歴史を勉強しさえすれば、歴史ある概念にも挑戦で
きる。僕はそういう挑戦のためのアクセシブルな知識基盤こそが、デジタルアー
カイブだと思っているんです。そういう物事の歴史を、世界中の誰もが意欲さえ
あれば勉強できるようにするためにこそ、OpenGLAM の取り組み、そしてそれに
基づくオープンなデジタルアーカイブの構築は重要だと考えています。
岡本:知を再生するプロセスに誰もが参画でき、オープンデータの構築に関わっ
ていけるという面で、ウィキペディアというのは非常に大きな功績があると思い
ます。しかし、ウィキペディアって役に立つけど、信用に欠けるので授業とかで
は認めてなくて……という状態だとこの先の議論的に困るので、ウィキペディア
の編纂過程やウィキペディアタウンのような試みを知っていただきたく、日下さ
んからのショートプレゼンテーションをお願いします。
日下:2 年前のインターナショナルオープンデータデイで、ウィキペディアタウ
ンというイベントを、横浜市中央図書館を拠点にしてやりました。 町歩きをし
て横浜の歴史的建造物をめぐった後、図書館に帰ってきて、その建物について調
べてウィキペディアの記事にするんです。今日はそのときの資料をそのままお見
せします。まずウィキペディアの説明をしました。誰でも編集できるということ。
自分が著作権者であるかぎり、そのテキストをどう扱うか決められるので、それ
ぞれの投稿者が、誰でも自由に編集できるライセンスに同意して、オープンな百
科事典をつくっています。信頼性について、ウィキペディアには検証可能性とい
う方針があって、何を見て書いたかを書かなくてはいけません。ウィキペディア
なんて信用できないものを鵜呑みにしてはいけませんから、ウィキの参考文献を
見てパブリッシュされている情報にたどり着くことができる仕組みとなっていま
す *8
。こうした文献を提供してもらう環境というのがウィキペディアの編集者に
とって、図書館であったり、美術館であったり、博物館であったり、大学図書館で
あったり、機関リポジトリであったりということになります。
ウィキペディアは、自由に使っていいことになっているので、データとして落
として、統計処理もできますし、項目間のリンク構造を使って、グラフィックス
日本におけるOpenGLAM その課題と提案
28 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
にしている方もいます。Google で検索したときに右側に出てくる情報はウィキ
ペディアからのものが多いです。著作権を気にしなくていいから、圧倒的に使い
やすい。それから、例えば横浜の記事を書いて、それを翻訳すれば、その翻訳した
言語版ができます。こちらでやらなくても、興味をもった人がいれば、写真や図な
ど翻訳しなくていいものだけでも、とりあえず項目ができます。スウェーデン語
版のチューリップの写真は、僕が家族で遊びに行った公園で撮ったもので、ロシ
ア語版ほかでも使われています。こういう写真でもオープンにすると、どんどん
広まっていくんですよね。
日本ではウィキペディアタウンが定着しつつありますが、海外では GLAM-WIKI
という言葉が使って、GLAM の皆さんとのコミュニケーションがされています。
また、自分たちの町の写真を撮って提供する Wikipedia takes[your city]というプ
ロジェクトも立ち上がっています。図書館や博物館、美術館などの場所で、だれ
それが所蔵している作品についてみんなで記事を書いて一気に編集するエディッ
トソンというのも、海外では事例があります。バックステージで学芸員や司書の
説明を聞きながら、それを記事に反映させていくというようなことをやっている
ところもあります。横浜でも、横浜能楽堂に入れてもらって、舞台などの写真を
撮らせていただきました。
GLAM が出した資料をどういうふうに使うのがいいのかということも今日、こ
れから議論されるべきことだと思いますが、その一つの答えとして、ウィキペ
ディアの記事で取り上げることができます。例えばウィキペディアで「地方病」
という言葉を検索すると、ものすごい量の資料が使われています。資料を公開し、
オープンにしていただけると、こういうふうに使われるようになる。
ウィキペディアタウンはこれまで横浜で 3 回、二子玉川で 2 回、京都が 3 回、
山中湖で 1 回、これから自分たちのところでも開催したいという話が僕の耳に届
いているところであと 5 ヶ所くらいあります。地域ごとでやりやすいというのが
皆さんに興味をもって頂ける理由だと思いますが、文化資源の活用、あるいはそ
の施設からつながるコミュニティということで、ウィキペディアタウンという試
みを知っていただければ幸いです。
岡本:日下さん、ありがとうございます。ではこれまでの話をふまえ、オープン
データや OpenGLAM を促進していくために、何ができるのかを考えていきます。
その前に、先日 NHK のクローズアップ現代が「公共データは宝の山 ∼ 社会を変
29第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
えるか?オープンデータ∼」(2014 年 9 月 17 日放送)と題してオープンデータのいま
を特集していたのですがご覧になった方はいらっしゃいますか。番組の放映後、
とあるネットのメディアサイトで「海外に比べて、日本は本当に遅れている」と
いうトーンの記事が反響としてありましたが、何事につけても海外に参照基準を
置く日本のメディアらしい捉え方だと思いました。私は決して日本の取り組みが
遅れていると思っていません。現実社会に対する法律の適用面など、ある角度に
おいては、後れをとっている部分はあるでしょう。しかし一方で、国立国会図書
館がこの数年にわたり進めてきた大規模な書籍の電子化は、それがすぐにオープ
ンと呼べるものでなくても、その素地になりうるものとして、日本はかなり先を
行っているといえます。あるいは国宝の 1,000 年間分の文書を一気に電子化して、
かつCC BYで提供した京都府立総合資料館が実施した東寺百合文書Webも、大き
なインパクトをもっています。ですから進んでいる、遅れているではなく、日本
で課題となっているのはどの部分なのかということを明確にしながら、これから
望まれる取り組みについて議論を進めていければと思います。
生貝:分野による違いも大きでしょうし、一概に進んでいるか遅れているかを評
価するのは慎重でなければなりませんが、もし日本の公的な GLAM のオープン化
が遅れているとしたら、それはなぜなのか。制度学者であれば、制度的配置環境
がそうなっているからと答えます。僕たちは制度が変わらないことにも、変わる
ことにも理由があると考えています。なぜなら一つの制度というのは、相互に関
係し合うさまざまな制度の全体的な配置の中でもっとも適合したかたちが選ばれ
ているからです。というふうに考えたとき、日本はアメリカや EU と比べてやは
り制度的配置が違うと思います。例えばアメリカは、日本とくらべて若年層人口
が比較的多い。しかも Google や Facebook など、若年層が立ち上げたデジタル企
業が経済的にも社会的にも影響力をかなりもち始めているので、美術館や博物館
がプレゼンスを上げていこうと思ったら、オープン化していく必要が広い意味で
の制度の中に強く存在するんです。一方でヨーロッパでは、ギリシャやイタリア
の経済状況を見るまでもなく、このままでは公的な文化施設の継続自体が危うい
という危機感があると同時に、Google が情報社会の文化・情報の覇権を握る中
で、西洋言語世界への圧力がものすごくかかっているのです。そしてその圧力こ
そが、ヨーロピアナの原動力になったというのは、元フランス国立図書館長の書
いた『Google との闘いーー文化の多様性を守るために』(2007 年、岩波書店)とい
30 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
う本にも詳しく書かれています。
こうした内在的・外在的なオープン化の要因が、日本ではまだ相対的に少ない
状況にあるといえます。このような背景を踏まえた上で、日本で GLAM をオープ
ンにしていくための道筋を考えなくてはならないのですが、僕はある程度悠長に
考えている部分があります。今の若い人たちは明らかにオープンなインターネッ
トの世界に文化的生活の舞台を移しているなか、その傾向は時間をへるにつれ今
後も強まり続けることは間違いありません。そういった人々が日本社会の大勢を
占めるようになってくれば、遅かれ早かれ日本の GLAM はデジタルに、オープン
に変わってくるはずです。制度的環境の変化というのは時代に任せるしかない部
分が大きい。その変化がいつ本格化するかは定かではありませんが、今から考え
ておけば、来るべき時が来たときに困らないのではないかというのが僕の考えで
す。
岡本:高野先生に今までの経験に基づいてうかがいます。例えば日本版のヨーロ
ピアナを想像した場合、もちろん NDL サーチというような仕組みもありますが、
NDL サーチというのはいわばメタなサーチの仕組みにすぎない一面があります。
そのときに、先生がお取り組みになられている文化遺産オンラインには、日本を
代表するような文化遺産、文化資源が集まっていると思うのですが、それを開い
ていくことが可能だとした場合、ここでいう 拓く というのはオープンデータの
形式にするということですが、何がネックになるのでしょうか。またそのネック
を解消するには、何がインセンティブとして有効に機能するとお考えでしょうか。
高野:文化庁というのは縦割りで、隣の課と連携するようなことは予算のレベル
で分断されているので、横断的なプロジェクトをするのは非常に難しい。そうい
う構造の中で文化遺産オンラインは幾つかの課が協力して維持しているので稀有
な例ですが、結局は伝統文化課が主たる予算を取り、その範囲内でやることになっ
ています。例えば県立の美術館群に呼び掛けるのでも教育委員会を経由しなけれ
ばならないとか、役所から各文化組織へいたる伝達経路が非常に複雑怪奇なんで
す。現場の人たちが集まる会に行くと、「そんなシステムがあるんですか。知りま
せんでした。館長のところで止まっているのですかね」というような話になって
います。そもそもの協力要請が上手く現場に届かない。届いたとしても予算もつ
かないのに、自分たちの仕事を増やすような協力要請をピックアップしたくない
31第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
ということで、特別にお願いしたところを除いては、非常に難しい状況です。
また文化庁がフォーマルに集める情報ですから、違うかたちで公開をするため
には、集める際の許諾利用同意書のルールを完全に見直して、許諾も含めて取り
直す必要があります。こういうのでがんじがらめになって、ここ 5 年間くらいは
あまりデータも増えないというような状況だったのです。文化庁がもっている
データは追加できるので、文化庁がもっている何万件かのデータを追加すること
で件数を増やすということもやってきました。でも限界があるし、ちっとも日本
を代表するようなものでないことも多い。
こうした実践を踏まえた上で、文化遺産オンラインを仕切り直すべきだろうと
いう議論が文化庁の中で上がっていて、有識者会議をやっています。文化庁とし
てはマンガやアニメなども集めたデジタルアーカイブをしていますし、今後はデ
ザインのアーカイブもしようとしていますので、文化遺産オンラインを一度リ
セットして、そういう情報がより多く集まるプラットフォーム、倉庫のようなも
のをつくりましょうというような再定義に向かっています。デジタルのデータ
を預けたい人は預けることもできますと。文化庁が預かりきれないものは、今後、
国会図書館の協力が得られるようになれば、大きいデータを送ってもらって構い
ませんというようなことです。キュレーションの機能を充実させて、共通プラッ
トフォームの上にそれぞれのジャンルを発信するポータルをつくってもらう。で
も、下支えしている仕組みは一つという状況をつくりたいと考えています。
そのときに文化遺産オンラインの失敗を踏まえ、データを集めるときに、オー
プンに向かう条件を踏まえた許諾をもらう知恵をつけることですね。少なくとも
ヨーロピアナにはその知恵がある。こうした収集の手順を踏まえて、ファインダ
ビリティを保証するためにどんな情報を集めればいいかを考えなくてはならない。
同時に文化機関には、彼らの財産を文化庁が吸い上げるようなことはしませんと
いう説得をし続けないといけません。
さて、岡本さんの問い掛けの答えとしては……いま公開できるものはない! 
ほとんどないのです。文化遺産オンラインのメタデータはまだまだ発信して維持
していくクオリティではありません。例えば著者名みたいなものも精査されてい
ないし、典拠ファイルのようなものすらないのですから。それでもよければ一部
使ってもらってもたぶん構わないのですが、発信するクオリティになっていない
だろうという内部の判断で、許諾を認めていないのだと思います。ただそれにつ
32 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
いては、今後 2、3 年以内に公開する方向で努力を続けると思いますし、僕が関
わっている間はそれをやり続けようと思います。
日下:震災のときに、いろいろなところが写真を集めましたよね。あの時も似た
ような 失敗 がありました。いわゆるまとめサイト、自治体などが集めたものも、
許諾を取ってないと権利的には再利用できない。yahoo! は二次使用まで意識した
独自のライセンスで集めましたが、あのやり方だと、非営利や学術目的というの
は曖昧なものなので、自分たちで提供していいかどうか判断しないといけなくな
る難しさがあります。結局、再許諾を取りにいくか、提供を受けた機関がキュレー
ションから展示まで全部しないといけなくなってしまいます。それは今後、市民
のような、後からもう一度、許諾を取り直すことが難しくなるところから情報や
コンテンツを集めるときは大変になってくると思います。
ところで生貝さんに聞きたいのですが、文化遺産オンラインのメタデータを
ネットから引き抜いて勝手に使うってできないのですか?
生貝:再利用ポリシーも存在しないようなので、明確なことは言いがたいのが現
状です。一方、ヨーロピアナには現在 2,300 くらいの文化施設が参加しています
が、参加の際にメタデータには CC0 というマークを適用して、完全に権利を放棄
するというデータ共有協定を交わしています。同じく DPLA にも 1,000 くらいの
文化施設が参加していますが、最初からメタデータは完全に権利放棄することを
条件にしています。作品データ自体のオープン化に関しては、まだ議論があると
思うのですが、メタデータの完全な権利放棄に関しては、相当程度国際的に共有
された規範になりつつあると理解しています。
日下:いや、聞きたいのは、文化庁が許諾していなくても、文化遺産オンライン
のファクトデータセットを引っこ抜いて使って訴えられたら、<俺たちは絶対負
けるのか?>ということなんですが。
生貝:そこは極めて難しい問題です。いわゆるデータベース権を独立して保護す
るEUなどとは異なり、日本では基本的にファクトデータ、事実情報には著作権な
どの権利が発生しないと考えられます。ただひと言でメタデータといっても、著
作権が発生しうるような凝ったメタデータも少なからず存在するかもしれず、そ
33第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
ういうリスクをどう考えるかという問題があるというのが一つ。さらに、著作権
が発生しなかったとしても、利用規約で再利用を禁止しているウェブサイトのメ
タデータを勝手に使ったときに法律的にどう解釈されるかは、その規約への利用
者の同意の取り方にも依存するため、各分野の業界慣行的な部分を含め、かなり
複雑な問題になってきます。
日下:ありがとうございます。
生貝:やはりそろそろ、この OpenGLAM のような集まりにおいては、具体的な戦
略、政策提言を考えなくてはならないと思うのです。先ほど僕は悠長に世代が変
わるのを待てばいいというようなことを言ったのですが、今は色々な意味でチャ
ンスなのも事実です。一つにはやはりオリンピックは大きいです。日本に来る
1,000 万人だけではなく、色々な理由で日本に来ない、来られない、しかしオリン
ピックを契機に日本に関心をもってくれるであろう 80 億人に、オープンなデジ
タルアーカイブというかたちで日本の文化を伝える基盤をつくることは、これか
らのソフトパワーなどの政策課題の中で極めて高い価値をもつはずです。こうし
た価値を、文化庁や経産省にしっかりと具体的な提言として伝えていく必要があ
ります。
二つ目に、先ほど若い人が増えればオープンな GLAM が増えるのではないか
というシンプルなお話をしましたけれど、これからの高齢化社会、歩いて美術館
や博物館に行けなくなる人、視力が落ちて紙の本を読めなくなる人たちは、僕達
全員を含めて確実に増えてきます。そういう人たちが文化的生活から遠ざけられ
ないようにするためにも、GLAM のオープン化が重要だということを、厚生労働
省などに届ける議論をしていかなくてはいけない。3 つ目としては、やはりオー
プンデータの法制度化です。これはこれまで培ってきた文化施設の生態系との兼
ね合いを含めて、これからしっかりと OpenGLAM JAPAN で議論してもらいたい
というのが僕の要望の一つであります。現実的な話として、地域の文化施設とい
うのはどうしても保守的な部分はありますし、なぜうちだけが先立ってオープン
化をしていかなければいけないのですか、という部分も現状ではあると思うので
すよね。そこで法律のスタンダードとしてメタデータをつけましょう、CC BY か、
あるいはせめて CC BY-NC(非営利のみ)は付けましょうといった共通のルールをつ
くったほうが、現場の人たちにとってもやりやすいはずです。このようなことを、
34 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
広く政策的な働きかけも含めて議論していきましょうというのが、岡本さんを始
め皆さんへのお願いです。
岡本:政策的な提言を出していくことは非常に重要です。そして提言をしてい
くときに重要になっていくのが、ある種の経済性をもたせる議論だと思います。
オープンデータにすることでどうハッピーになるのかという話ですね。私はオー
プンデータ、オープンガバメントと言い出した側ではかなり早いときから、その
立ち位置で話をしていました。オープンガバメントは民主主義のために大切なの
だといくらいっても、そこに呼応してくる議員はほとんどいないのです。日本で
比較的最初にオープンデータやオープンガバメントに関心をもったのはみんなの
党です。それはある意味、弱小集団だからこそ飛びついてくれた部分があったわ
けです。でも世の中のムーブメントになったのは、自民党がそれを政策課題に取
り入れだしてからです。そういう意味でエスタブリッシュメントな層に響くよう
な提言をするには、それが何がしかの経済効果をもちうるのだというところまで
提言をしていく必要があるのでしょう。
例えばそれは、百合文書 Web が公開してくれたものの中から、経済性がある
ものをつくり出すということです。あの文書文の中には、織田信長の天下布武と
いう有名な印が含まれています。京都府立総合資料館でこの百合文書 Web をつ
くった立役者のお一人である福島幸宏さんは常々、誰かそれを T シャツにしてく
れと、そして売りまくってくれと言っていました(会場笑)。そうすればみんな意識
が変わるだろうと。そこからオープンデータやあるいは OpenGLAM というもの
が進んでいく余地があると私は考えています。さて、会場の方のご意見もうかが
いたいと思いますが、どなたかいかがでしょうか。
質問者 A:最後に岡本さんから経済性のお話がでました。このオープン化、CC ラ
イセンスの話が出るたびに、なぜ宣伝効果の話がでないのかというのを私も常々
思っておりました。今やヨーロピアナも DPLA も、文化をオープンライセンスに
してコピー自由にするということで大々的に売り出しているわけですよね。私は
ウィキペディアを書いているのですが、ウィキペディアの英語版であったり、ロ
シア語版では、売りだしたコンテツをあちこちで活かして、大々的に宣伝してい
GLAMを拓く、さまざまな戦略
35第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
るわけです。一方、日本語版を見るとないのですよ。国宝の記事にせよ、文化財の
記事にせよ、文字も写真もない。画質は低くてもいいので、宣伝材料としてぜひ
開放してほしいというようなことは、前から思っていたところであります。これ
だけたくさん博物館の方などの集まられる機会であったので、ちょっとここは言
いたいなと思っておりました。
高野:岡本さんの話で出た福島さんのコメントが全てを表していると思うのです。
つまり百合文書を公開したことで、ウィキペディアのそれ関連の項目が激変した
かということなのです。公開したことでそれをウィキペディアに書く人が増え
ましたとか、関連商品がたくさん出ましたとか、そういうことが一番説得力をも
つのですね。これはウィキペディアの人を責める気は全くなくて、そういうムー
ブメントが起きると、いろんな人が巻き込まれていって、仕事の負担になるけど
やってみようというふうに変わってくるんです。東寺に明らかに観光客が集まれ
ば隣もやりだすし、そういうのをシリーズ化する T シャツ屋さんが全国展開にな
るかもしれないですよね。
日下:百合文書については、ウィキに書こうと思ったのですが、記事はけっこう
まとまっていて、僕はその時代について詳しくないので手がつけられなかった
んです。すぐに書こうという人がいなかった。書ける人がいれば書ける。だから、
ウィキペディアに参加している側からいうと、この場にいる皆さんもぜひ参加し
てほしい。図書館や博物館などに勤めている方は、強い関心をもつ研究対象があ
るはずです。書くことでそれが宣伝になって、何か効果を生むこともあるんです。
あなたが書かなければならないようなことは、ほかの人は興味をもってないか
ら、いつまでたっても書かれないかもしれない。オープンにしてあれば、誰かがい
つか興味をもったときに、書きやすい。シーベルトやベクレルといったウィキペ
ディアの記事は3.11の前から存在していましたが、原発事故がなければ、多くの
人には見られないまま、今に至っていたと思うんですね。でも、あの日を境にして
何百万人という人が見ました。書いた人は、そんなことになるとは思ってなかっ
たと思うんですけど。そういうところを知って参加していただきたいと思います。
質問者 B:アカデミズムはアカデミズムの中で循環していくということに関して
は非常にいいのですが、商業的だとか経済という言葉を聞いた瞬間に、それはけ
36 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
しからん! だとか、そもそも原始は国民の税金であるみたいな、問いをめぐって
しまうところを、どうすれば一点突破できると思われますか。どなたか良いアイ
ディアがありましたらお願い致します。
日下:岡本さんの経済性の話は、基本的に政治家向け、企業家向けの発言だと思
います。経済的なところだけに目を配れば、例えば戸籍情報というのをオープ
ンデータということで公開したら、すごく経済効果があると思いますが、それは
やっちゃだめですよね。いろんな要因があって、民主主義のためにということで
は公開しない人が多いのなら、経済という言葉を使ってもいい。民主主義とか知
識の共有とか、そういうことで公開する方に向かうモチベーションが強いのであ
れば、もちろんそっちで突破していけばいいと思います。
生貝:大学も最近は産学連携や独自財源の確保を求められ、積極的に外からお金
をもってこないと、デジタルアーカイブのような新しい取り組みは進められませ
ん。しかしわれわれには、営利とは離れた使命を保守的に守らなければいけない
部分も強くあります。さきほどの問いに対する直接の答えにはならないと思うの
ですが、今日の全体の話にも通じることとして、「混ぜない、でもつなげる」こと
が重要だと思うのです。どういうことかというと、非営利の文化施設と営利企業
との連携を進めようとするとき、あるいは GLAM 間の連携を進めようとするとき
に、そこに対して少なからず警戒感が出てきてしまうのは、もともとそれぞれが
個別に守ってきた価値を無視してごちゃ混ぜにしようとしているのではないかと
いう警戒心だと思うのです。僕はその警戒は極めてまっとうだと思います。でも
一方で、われわれは元々の価値を未来に継承し続けるためにこそ、異なる考えを
もった主体とつながっていかないといけないのですよね。お互いの考えの違いを
しっかり認識すること、尊重し合うこと、そして連携の目的を明確化した上でつ
ながっていくことが必要だと思います。営利的な企業と、非営利な GLAM の世界
が協力し合う上でのキーワードは、「混ぜない、でもつなげる」だと考えています。
日下:アカデミック内で回る、回らないという話の関連でいうと、僕、オープン
周りの法律、著作権周りの知識は、たぶんそれなりにあると自負しています。そ
れは裁判所の判例がフリーだったり、法律に関するかなりの論文が紀要というか
たちで、CiNii で読めるようになっているからというのはすごく大きいんです。今
37第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの運営母体であるNPO法人コモンスフィ
アの常務理事をされている渡辺智暁さんも法律の専門じゃないのですが、自分で
判例を調べて知識を蓄えて、オープンライセンスにすごく詳しい。なぜそういう
ことになるかというと、ウィキペディアの現場では、オープンライセンスについ
ての知識は不可欠なんですが、アカデミズムからのアウトプットでは足りなかっ
たんですね。でも、必死になって調べていると、アカデミズムの中で生まれ、オー
プン、パブリックになったものにアクセスできた。そこで得た知識をオープンラ
イセンスに適用して、自分なりに理解したことを、こうして話している。そうい
うふうに、内と外を行き来するようなことは、現実として存在します。たぶん医
療系なんかは、同じようなことが起こっているんじゃないでしょうか。
高野:アカデミズムは商業主義に対しても強いアレルギーがあるし、ウィキペ
ディアに対しても同じようなアレルギーがあるかもしれません。なぜなら彼らは
アカデミズムがその質を守ってきた情報と、ボランティアが書いている情報には
差があるだろうと思っているからです。ウィキペディアが勝っているような情
報も間違いなくあるので、一概にその善し悪しはいえない。だからもっと両者の
接点をつくることが大切だと思うんです。シリアスに物調べをする人は、その両
方の情報を調べて何かを得ているので、そういうプラットフォームをつくろうと
いうことで、ここ 3、4 年前から Webcat Plus にウィキペディアを取り込むことに
しました。Webcat Plus では何を引いても関連ウィキペディア項目が出てくるの
で、ウィキペディアの項目から、本の文献を引くということもできます。ウィキ
ペディア項目の内容を質問文として、関連書を連想検索できます。そうやって接
点をつくることによっていろんなプラス効果もあって、例えば著者からの指摘で
ウィキの情報が正しく直された例も、僕が知っているだけでもそれなりにありま
す。そういうことがまずは重要なのではないのでしょうか。
それからコマーシャルといったときに、大学図書館はかなり大口スポンサー
です。ですからビッグスポンサーとしての大学図書館としては、サービス会社が
もってきたのを買ってあげるとか、タダで置いておいたものをなぜ営利で使っ
ているのかと抗議するというような付き合い方ではなく、次の知のかたちとか、
その利活用モデルをプロトタイピングしながら商業者を動かして、ここにビジ
ネスチャンスがあるよということをドライブする意識でやられたらいいかなと
思います。
38 第2回 OpenGLAM JAPAN シンポジウム「オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来」 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
岡本:最後に私から一つだけ申し上げます。自治体の方がデジタルアーカイブを
つくる際などには、私は「商用利用禁止は、極力やめたほうがいい」と基本的には
アドバイスしています。それは単純な話で、何をもって商用となすかの規定が難
しすぎるんです。デジタルアーカイブの写真をシールとかステッカーとかにして
売るのは勘弁してほしいというのは、人の気持としては分かります。でもそれ以
外に使うとしても、グレーゾーンが発生してくるのですね。ですから、そのとき
自治体の方に言うのは、訴えられてもいいのですか? ということです。自由利用
を認めておいて、趣旨に反しているというものに対してクレームを入れるやり方
の方が、マネジメントとしては正しいのではないかと思っています。瀬戸内市の
デジタルアーカイブは私が助言していますが、そういうかたちで分かるように出
しています。さて、時間となりました。今日は大変、盛り上がってよかったと思い
ます。日下さん、生貝さん、高野さんに大きな拍手をお願い致します。
*1「オープンの定義」<http://opendefinition.org/od/1.1/ja/>
*2「国立情報学研究所 生貝直人氏に聞く:オープンデータ政策と文化芸術デジタルアーカイブ─
─EU「公共セクター情報の再利用指令」改正を受けて:デジタルアーカイブスタディ|美術館・
アート情報 artscape<http://artscape.jp/study/digital-achive/10090205_1958.html>
*3「米国政府のオープンデータアクションプランが公開 ¦ カレントアウェアネス・ポータル」<
http://current.ndl.go.jp/node/26112>
*4 図書館法17条(入館料等)公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対
価をも徴収してはならない。
*5 博物館法 23 条(入館料等)公立博物館は、入館料その他持物館資料の利用に対する対価を徴収
してはならない。但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対
価を徴収することができる。
*6 著作権の切れた書籍『大正新脩大蔵経』(全 88 巻)、『南伝大蔵経』(全 70 巻)の、近代デジタル
ライブラリーでの無料公開に対して受けた版元から抗議に対する国会図書館の対処をめぐり
一連の議論が起きた問題。
*7 参考URL「G8 首脳コミュニケにオープンデータ推進を明記、国別行動計画を 2013年末までに
策定」<http://okfn.jp/2013/06/19/2013-lough-erne-g8-leaders-communique/>
*8 参考URL「Wikipedia: ガイドブック」<http://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:ガイドブック>
注記:本記事は、2014 年 9 月 27 日(土)に、リクルートテクノロジーズ「アカデミーホール」(グ
ラントウキョウサウスタワー 41F)で開催された第 2 回 OpenGLAM シンポジウムを記事に
したものです。
嶋田綾子
100 3連
発
館
資
料
提
供
の
工
夫
資
料
収
集
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工
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善
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工
夫
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
撮影:嶋田綾子 2013年10月18日 撮影:嶋田綾子 2013年10月18日
伊丹市立図書館ことば蔵では、利用者に帯を書いてもらうコンテスト「帯ワン
グランプリ」を 2013 年から開催している。このグランプリは市民から自作の帯を
募集し、応募作品を伊丹市立図書館ことば蔵の交流フロアで展示した後、「伊丹本
屋大賞」「市長賞」「教育長賞」「ことば蔵賞」を選ぶ。また「伊丹本屋大賞」の受賞
作品は同市の書店「ブックランドフレンズ」と連携しており、実際の本に巻かれ
店頭に並ぶ。
帯は書店における読者とのファーストコンタクト。図書館に並ぶ本は帯と無縁
でありがちだが、本を紹介するツールとして図書館でも積極的に利用していいだ
ろう。本誌創刊号では、利用者に POP を書いてもらうことで、本を紹介する山武
市立図書館の取り組みを紹介している[File016]。
File
201 伊丹市立図書館ことば蔵(兵庫県)
本の帯のコンテスト
■伊丹市立図書館ことば蔵
http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/EDSHOGAI/EDLIB/
兵庫県伊丹市宮ノ前3-7-4
Tel:072-784-8170 Fax:072-784-8169
41
資
料
提
供
の
工
夫
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
飛騨市図書館では、年末にその年の新刊本の中から人気書や話題書を 200 冊集
め、館内の目立つ場所で展示する「積ん読大賞」を開催している。積ん読というの
は「買ったまま、読まずに置かれている本」を指す俗語だ。話題書というのは、世
間で騒がれているうちに読みたくなるのが人心。それゆえ話題書は、騒がれてい
る時は予約が一斉に入るが、すぐに読めないならと予約を諦めているうちに存在
が忘れられがちだ。
「積ん読大賞」はそんなもったいない状況を受けて、忘れられてしまった本をも
う一度アピールするきっかけづくりにする企画である。同館では、刊行時には予
約多数だった本や、新着本コーナーにあった時には借りられなかったような本の
中から、積ん読になっていたと思われる本を集めてこのコーナーをつくっている。
年末に行われることで、その年にどんな本が注目されていたかを振り返るきっか
けにもなり、利用者からは好評を博している。
File
202 飛騨市図書館(岐阜県)
積ん読大賞
提供:飛騨市図書館
■飛騨市図書館
http://hida-lib.jp/
岐阜県飛騨市古川町本町2-22
Tel:0577-73-5600 Fax:0577-73-0202 
E-mail:hidashi-tosho@hida-lib.jp
42
資
料
提
供
の
工
夫
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
提供:仁愛女子短期大学附属図書館
青空文庫とは、日本において著作権保護期間が過ぎた作品を、オンラインで提
供する電子図書館である。収集された作品は、ボランティアによって打ち込まれ
た文字ファイルとして青空文庫のサイトに上げられ、利用者はダウンロードして
読むことができる。非常に有意義な活動であるが、その存在を知らない利用者も
いるだろう。
そこで仁愛女子短期大学附属図書館では、ウェブサイト「青空文庫」を読んでも
らった人に、「その作品を読んでみたくなるような表紙イラストを作成する」とい
うコンセプトで作品を募っている。青空文庫を知ってもらうきっかけをつくるだ
けではなく、自分がつくった作品が広報媒体になるという表現の機会をも生みだ
しているのだ。なお、優秀作品は印刷製本し、文庫として同館の蔵書としている。
File
203 仁愛女子短期大学附属図書館(福井県)
青空文庫の表紙コンテスト
■仁愛女子短期大学附属図書館
http://www.jin-ai.ac.jp/lib/
福井県福井市天池町43-1-1
Tel:050-3532-9034 Fax:0776-56-8651 
E-mail:flib@jin-ai.ac.jp
43
資
料
提
供
の
工
夫
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
おすすめの本を集め、外側から見えないように袋に詰めて貸出す「福袋」イベ
ント。自分ではなかなか手に取らないような本との出会いのきっかけにもなり、
多くの館で好評を得ている企画だ。
伊丹市立図書館ではこの企画を元にして、12月限定で「サンタのおたのしみ袋」
というイベントを開催している。袋には、中身のヒントになるようなテーマが書
かれており、利用者は気になったテーマの袋を選ぶことができる。2013 年のお楽
しみ袋では、「ドキドキしたい!」「おふろでほっこりいいきもち」「手作りのクリ
スマス」といったテーマでプレゼント感あふれる袋が用意され、先着 50 袋が貸出
された。好評を受け、2014 年度は 150 個の袋が用意されている。福袋というと年
始のイベントのようだが、企画の切り口を変えると、年始だけではなく 1 年中さ
まざまなタイミングで実施することができるだろう。
File
204 伊丹市立図書館ことば蔵(兵庫県) 
サンタのおたのしみ袋
■伊丹市立図書館ことば蔵
http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/EDSHOGAI/EDLIB/
兵庫県伊丹市宮ノ前3-7-4
Tel:072-784-8170 Fax:072-784-8169
提供:伊丹市立図書館ことば蔵 提供:伊丹市立図書館ことば蔵
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
苫小牧市立中央図書館 では、2013 年の 12 月から 2014 年 1 月まで、「誰も読ん
でいない本フェア」を行っている。このフェアは名前のとおり、誰も借りていな
い本を集めて展示をすることで、これまで人気がなかった本に注目してもらおう
と企画された。一度も貸出がない新書 150 冊が集められ、なかには約 30 年間、貸
出がなかった図書まで含まれていたとのこと。
このフェアは北海道新聞で掲載され(北海道新聞、2014 年 1 月 8 日付)、この
新聞記事を見た南城市立図書館佐敷分館(沖縄県)も同じ内容のフェアを企画し
ている。また 2014 年 6 月から 7 月、国際基督教大学図書館(東京都)が実施し、
職員が同館の Facebook ページで紹介したところ、テレビなどのメディアが取り
上げ大反響となった。同館でのフェアでは、図書館職員が 学生が興味をもちそう
な新書を 1 冊以上選び、自ら考えたキャッチコピーとともに約 100 冊を書棚に並
べている。その後、山形県立図書館でも同様のフェアを行っている。
File
205 苫小牧市立中央図書館(北海道)・国際基督教大学図書館(東京都)
誰も読んでいない本フェア
■苫小牧市立中央図書館
http://www.tomakomai-lib.jp/
北海道苫小牧市末広町3-1-15
Tel:0144-35-0511 Fax:0144-35-0519 
E-mail:info@tomakomai-lib.jp
■国際基督教大学図書館
http://www-lib.icu.ac.jp/
東京都三鷹市大沢 3-10-2
Tel:0422-33-3668 
E-mail:library@icu.ac.jp
国際基督教大学図書館 撮影:岡本真 2014年6月26日
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
提供:富山大学附属図書館
富山大学附属図書館では富山大学に入学した一年生、院生など、入学を機に富
山県に引っ越してきた人を対象として、富山県内で生活していくために必要な知
識を提供する講座「富山ビギナー講座」を開催している。講師は県立図書館の司書
が出張し、あらかじめ集められた疑問(富山県の方言や環境、食、生活習慣など)
に答えながら、富山に関する基礎知識や生活のお役立ち情報も紹介している。
図書館は地域の情報を豊富に収集しており、アメリカでは「引っ越したら、まず
図書館へ」といわれるほど生活のあらゆるシーンと図書館が密接しているが、そ
れを地で行く日本での取り組みといえる。
File
206 富山大学附属図書館(富山県)
新入学生向け富山ビギナー講座
■富山大学附属図書館
http://www.lib.u-toyama.ac.jp/
富山県富山市五福3190
Tel:076-445-6898 Fax:076-445-6902 
E-mail:chuolib@adm.u-toyama.ac.jp
提供:富山大学附属図書館
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
潟上市図書館では、利用者におすすめ本をカードに書いてもらい、集まった
カードを印刷してポスターにし、館内だけでなく市内の市庁舎や市関係施設・学
校・県内の図書館に送付し、掲示している。おすすめ本を利用者に募り、その結
果を掲示する事例はさほど珍しくないが、それをポスターにまでして、市内のみ
ならず県内までに広く配る事例は珍しい。もちろん、館内ではポスターの掲示と
一緒に紹介された本も展示している。
自分のおすすめした本が多くの人の目にふれるきっかけになるので、推薦者に
とってもうれしい工夫だろう。また普段は図書館に来ない層でも応募できるよう
に、市内の小中学校に応募カードを送るなどの工夫もされている。
File
207 潟上市図書館(秋田県)
おすすめ本を利用者から募集し、ポスターに
提供:潟上市図書館
■潟上市図書館
http://library.city.katagami.akita.jp/
秋田県潟上市天王字御休下1-1
Tel:018-878-6688 Fax:018-878-6678
E-mail:library@city.katagami.lg.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
開架にあった資料は書庫に入ると、ぐっと貸出が減ってしまうもの。そこで多
治見市図書館では、書庫にしまった本を特定のテーマで集め、一定期間、展示し
ている。利用機会の少ない書庫の本に、改めて光を当てるのが狙いだ。展示には
「蔵出し」という表現を使い、利用者にレア感を演出している。さらに展示した本
をリストアップし配布することで、展示終了後も気軽に本が借りられる配慮をし
ている。2014 年 9 月に始まったこの取り組みは、漫画やライトノベルを始め、さ
まざまな切り口で順次、実施されている。
File
208 多治見市図書館(岐阜県)
書庫の本を「蔵出し」で展示
撮影:岡本真 2014年10月31日
■多治見市図書館
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/
岐阜県多治見市豊岡町1-55
Tel:0572-22-1047 Fax:0572-24-6351 
E-mail:toshokan@tajimi-bunka.or.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
読書に重点をおいた町づくりをしている村山市立図書館は、図書館や読書に親
しみをもってもらうために「全国読書川柳コンクール」を創設している。2014 年
で 5 回目 となるこのコンクールでは「読むテーマむかし恋愛いま健康」「あの本
のあのひと ことに背を押され」「としょかんでわたしはせかいりょこうちゅう」
などの川柳 が大賞をとっている。
なお、同館ではこのコンクールを開催するにあたり、川柳のステップアップ教
室を図書館の事業として実施し、レベルの高い川柳をつくるためのバックアップ
講座を開催している。
File
209 村山市立図書館(山形県)
全国読書川柳コンクール
■村山市立図書館
http://www.shoyo-plaza.jp/library/
山形県村山市楯岡五日町14-20
Tel:0237-55-2833 Fax:0237-55-7251
撮影:嶋田綾子 2013年11月28日
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
書架に並べたシリーズ本は、借りられると歯抜けになる。そのため、次の利用
者は書架に残っているシリーズのタイトルしか知ることができない。そこで仙台
市民図書館では、シリーズ作品が置かれる書架に、シリーズのタイトル一覧を書
いた POP をクリップで止めている。このようにすれば、利用者は書架にないタイ
トルがすぐに分かるうえに、人気のあるシリーズが置かれている要所要所の書架
に止めれば、利用者を誘導する案内板の役割にもなるだろう。
File
210 仙台市民図書館(宮城県)
シリーズ本はPOPでも案内
■仙台市民図書館
http://lib-www.smt.city.sendai.jp/
宮城県仙台市青葉区春日町2-1
Tel:022-261-1585 Fax:022-213-3524
E-mail:tosyokan@smt.city.sendai.jp
撮影:嶋田綾子 2013年11月28日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
仙台市民図書館では、新聞を配架しているラックの上に A4 サイズの案内板を
掲げ、その新聞社が提供している有料のオンラインデータベースを紹介している。
利用者がその案内に従ってカウンターに申し込みをすると、朝日新聞の「聞蔵」、
読売新聞の「ヨミダス」などオンラインデータベースを使って、過去の新聞記事
に館内の端末を使うことでアクセスすることができる。
オンラインのサービスは実体がないために利用者に認知されづらいが、関連資
料の配架場所に案内を掲示することで認知されやすくなる。同様の試みは、岡山
県奈義町立図書館でも行われている。
File
211 仙台市民図書館(宮城県)・奈義町立図書館(岡山県)
新聞コーナーでオンラインも案内
■仙台市民図書館
http://lib-www.smt.city.sendai.jp/
宮城県仙台市青葉区春日町2-1
Tel:022-261-1585 Fax:022-213-3524
E-mail:tosyokan@smt.city.sendai.jp
■奈義町立図書館
http://www.town.nagi.okayama.jp/library/
岡山県奈義町豊沢441
Tel:0868-36-5811 Fax:0868-36-5855
仙台市民図書館  撮影:嶋田綾子 2013年11月28日 奈義町立図書館
撮影:嶋田綾子 2014年5月17日
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
東日本大震災の被災地となった仙台市にある仙台市民図書館には、「3.11 震災
文庫」として震災に関する書籍や新聞、行政資料、さらに震災発生当時から現在
までのさまざまな資料を収集し、震災情報を一元的に集めて提供している。これ
は震災を振り返るだけではなく、現在もさまざまなフェーズで復興過程にある
人々の生活に役立てもらうための取り組みだが、今回、特に紹介したいのが「被
災前の住宅地図」の提供である。
これは津波によって、住んでいた場所が更地になってしまったケースなどで、
かつて住んでいた場所の区画などを振り返ることができるように用意しているも
のだ。震災のアーカイブは、被災後の被災状況を収集することに意識が向きがち
だが、町並みを一変させるような大災害においては、このような震災前の資料も
震災情報として役に立つのである。
File
212 仙台市民図書館(宮城県)
被災前の住宅地図を案内
■仙台市民図書館
http://lib-www.smt.city.sendai.jp/
宮城県仙台市青葉区春日町2-1
Tel:022-261-1585 Fax:022-213-3524 
E-mail:tosyokan@smt.city.sendai.jp
仙台市民図書館 撮影:嶋田綾子 2013年11月28日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
英語の小説や学術書は、貸出を増やすのが難しい分野の一つだ。そこで岩倉図
書館では、段階ごとに読んでいく「段階的多読法」というメソッドをもとに、語彙
数などからそれぞれの本を中学校初級から大学生レベルまでの 9 段階に分類。読
みやすさで本をランク付けし、段階ごとに色分けしたシールを張ることで、ひと
目で難易度が分かるように工夫している。
この工夫によって、利用者は自分の語学レベルに合わせて本をチョイスするこ
とができるようになり、複数予約が増えたという。要望に合わせて蔵書を増やし、
現在、同館は絵本から文芸書まで 1,500 冊以上の英語の本を揃えている。
File
213 京都市岩倉図書館(京都府) 
英語の本にシールで難易度を表示
■京都市岩倉図書館
http://www2.kyotocitylib.jp/
京都府京都市左京区岩倉下在地町16
Tel:075-702-8510
提供:京都市岩倉図書館 提供:京都市岩倉図書館
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
学生や資格取得のための勉強中の社会人などが集まる学習室。机やイス以外の
設備は置かないのが普通だが、長岡市立互尊文庫では学習用図書を集めた棚を用
意し、辞書を中心に大学案内や進学・就職案内など学習の手助けになる本を提供
している。そのほかにも、長岡市内の講座案内といった知的好奇心や学習意欲を
刺激する情報を提供し、利用者の潜在的な需要に応えている。学習者が多く集ま
る場所に、学習に関する資料を配架することで、利用者への情報提供の便宜を図
り、図書館の蔵書を利用者にアピールする役割も担っている。
File
214 長岡市立互尊文庫(新潟県)
学習室に辞書や大学案内などを配架
撮影:嶋田綾子 2014年5月3日
■長岡市立互尊文庫
https://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市坂之上町3-1-20
Tel:0258-35-7981 Fax:0258-35-7982 
E-mail: lib-goson@nct9.ne.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
NDC による所定の分類棚ではない棚に本を置く際に貼られる別置ラベル。こ
の別置ラベルの色分けは、現場の決まり事として図書館員だけにしか分からない
場合が多い。
しかし、奈義町立図書館では、ラベルの色がどのような分類に従って貼られて
いるのかが分かる表をつくり、案内として置いている。このようにすることで所
定の分類棚に置かれない本でも、利用者がひと目で探せるような工夫をしている
のだ。
File
215 奈義町立図書館(岡山県)
別置ラベルの説明を掲示
撮影:嶋田綾子 2014年5月17日
■奈義町立図書館
http://www.town.nagi.okayama.jp/library/
岡山県奈義町豊沢441
Tel:0868-36-5811 Fax:0868-36-5855
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
周 南 市立中央図書館では行政や他機関と連携し、共催企画を行っている。図書
館の情報発信拠点としての機能を充実させるとともに、図書館活用について広く
PR するのが狙いだ。多くの市民が利用する図書館で企画展示がなされることで、
事業実施主体は広報がやりやすくなり、図書館側も関係図書の展示を通して、充
実した情報提供や広報が図れる。これまでに健康増進課とのコラボ企画として自
殺防止展示「ちゃんと眠れちょる?」、人権推進課とのコラボ企画「男女共同参画
社会展」、本誌取材時は健康増進課とのコラボで「野菜レシピコンクール」が開催
されていた。こういった企画は普段は図書館を利用しない層が、足を運ぶきっか
けになることも期待できるだろう。
File
016 周南市立中央図書館(山口県) 
行政とのコラボ企画展示
撮影:岡本真 2014年11月18日
■周南市立中央図書館
https://library.city.shunan.lg.jp/
山口県周南市岐山通20-7
Tel:0834-22-8689 Fax:0834-27-1466 
E-mail:toshokan@city.shunan.lg.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
山梨県立図書館では、指定管理事業者の自主事業として 2014 年の正月に、正
月特集号というテーマのもと、普段は収集していない全国の地方新聞 50 紙を集
めて展示している。この展示は山梨日日新聞社と連携し、地方紙の紙面を通じて、
各地の文化に親しんでもらおうと企画されたものだという。
このような展示は、図書館における新聞展示にアイディアをくれるだろう。例
えば時事的なニュースなどをテーマにして各社の新聞を展示することで、家庭で
は一紙しか購読していなくても各新聞の論調を読み比べることもできる。多数の
新聞を収集する図書館ならではの取り組みとして、また図書館資料の活用として
参考になる事例である。地域協働の取り組みとしても注目できる。
File
217 山梨県立図書館(山梨県)
全国地方紙正月特集号を展示
提供:山梨県立図書館
■山梨県立図書館
https://www.lib.pref.yamanashi.jp/
山梨県甲府市北口2-8-1
Tel:055-255-1040(代表) Fax:055-255-1042
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
南相馬市立図書館では配架資料に合わせた装飾や現物展示を行い、利用者の目
を引いている。例えば車関連の本を置く棚には車のプラモデルやポスター、絵画
の棚には複製画といったように各棚の特徴を際立たせ、利用者の目を引くような
配慮をしているのだ。見た目も華やかで、どのような本が置いてあるのかが分か
りやすい書架は、図書館を利用し慣れていない人にも使いやすく、親しみやすい
だろう。ちなみに同館では、複製画や名画ポスターの個人への貸出も行い、図書
館機能に目を向けてもらう取り組みをしている。
File
218 南相馬市立中央図書館(福島県) 
配架資料に合わせた装飾や現物展示
撮影:嶋田綾子 2014年3月4日 撮影:嶋田綾子 2014年3月4日
■南相馬市立中央図書館
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/23,html
福島県南相馬市原町区旭町2-7-1
Tel:0244-23-7789 Fax:0244-24-6986 
E-mail:toshokan@city.minamisoma.lg.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
利用者がいつでも見ることができるように、図書館で収集している資料の一つ
に行政資料がある。行政資料とは自治体による地域資料であり、知る権利として
市民に保障されるべき重要な情報だが、一般の利用者には馴染みが薄く、その存
在すら知らない人もいるかもしれない。そこで岡山県立図書館では『統計年報』
や『県議会会議録』など、県や関連機関が発行した 200 冊を展示。また、戦後の歴
代知事を紹介するパネルも展示するなど、行政資料を使った展示を行うことで、
身近な存在として知ってもらう取り組みをしている。
なお富山市立図書館本館でも同じような取り組みをしているが、同館では行政
資料がまちあるきに利用できることなど、地域での暮らしを楽しむためのガイド
的なツールとしても使えることを紹介している。知ってもらうだけではなく、そ
の先の利活用までフォローする取り組みである。
File
219 岡山県立図書館(岡山県)・富山市立図書館本館(富山県)
硬軟取り混ぜた行政資料展示
■岡山県立図書館
http://www.libnet.pref.okayama.jp/
岡山県岡山市北区丸の内2-6-30
Tel:086-224-1286(代表)
■富山市立図書館本館
https://www.library.toyama.toyama.jp/
富山県富山市丸の内1-4-50
Tel:076-432-7272(代表)
富山市立図書館本館 撮影:嶋田綾子 2014年4月30日
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
絵本などの「読み聞かせ」は全国に定着し、さまざまな団体によって行われる
ようになった。そんな昨今、需要が高いのが読み聞かせ用の大型絵本(ビッグブッ
ク)だ。しかし大型絵本は展示にスペースが必要だったり、破損しやすかったり、
高額なので、普段は書庫にしまい、要請があったときだけ利用者に貸出す館が多
い。しかし書庫にしまうと、利用者はどのような大型本があるのか、手にとって
知ることができない。
そこで豊後高田市立図書館では、同館が所蔵している大型絵本の見本として、
通常サイズの絵本を絵本コーナーにまとめて置いている。大型絵本のリストや書
誌情報だけで概要や見栄えを想像するよりも、サイズ違いとはいえ、より分かり
やすく大型絵本を選ぶことができるだろう。
File
220 豊後高田市立図書館(大分県)
大型絵本の見本に小型絵本をまとめて展示
撮影:嶋田綾子 2014年1月13日
■豊後高田市立図書館
http://www.lib-bungotakada.oita.jp/
大分県豊後高田市御玉101-1
Tel:0978-25-5115 Fax:0978-24-3344
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
全国学校図書館協議会によって選出され、現在、250 冊を超える絵本が選定さ
れている「よい絵本」。このキャンペーンでは、その回の選定図書の書影を全てポ
スターに印刷して配布している。
江別市情報図書館大麻分館では、このポスターを有効的に使っている。ポス
ターに掲載されている絵本のうち、所蔵のあるものにシールで印を付け、またこ
のポスターの掲示下に、その所蔵本をブックトラックにまとめているのだ。選定
図書はノンフィクションや写真絵本など、科学や社会のコーナーに置かれている
ものも多く、通常はコーナーが分かれているが、一ヶ所にまとめて展示すること
で、大量の選定図書が気軽に手に取れる。書架で埋もれがちなノンフィクション
絵本などに目が向くきっかけにもなっている。
File
221 江別市情報図書館大麻分館(北海道)
「よい絵本」の選定絵本をまとめて展示
提供:江別市情報図書館大麻分館
■江別市情報図書館大麻分館
https://www.lib.city.ebetsu.hokkaido.jp/
北海道江別市大麻中町26-7大麻公民館内
Tel:011-387-1634 Fax:011-387-1634
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
単行本にならない作品も収録する全集は貴重な資料であるが、展示スペースを
とるために、配架の仕方に悩む図書館が多いかもしれない。そこで伊丹市立図書
館での工夫を紹介したい。同館では開架に置くのは 1 巻のみにし、その代わりに
全集全巻の目次を入力してプリントアウトしたものを再利用のブックケースの中
に入れて書架に並べている。こうすることで場所をとらずに、全集の存在とその
中身をワンストップで提供しているのだ。さらに全集をただ並べるよりも、どの
巻にどの作品が収録されているかも分かりやすい。
本紙 4 号では巻数の多い百科辞書の 1 巻のみ書架に置き、2 巻目以降を書庫に
入れて館内スペースを確保している与那原町立図書館の事例[File151]も紹介し
ている。
File
222 伊丹市立図書館ことば蔵(兵庫県)
全集は開架に1冊、1巻目以降は書庫へ
■伊丹市立図書館ことば蔵
http://www.itami-library.jp/
兵庫県伊丹市宮ノ前3-7-4
Tel:072-783-2775 Fax:072-784-8091
撮影:嶋田綾子 2013年10月18日 撮影:嶋田綾子 2013年10月18日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
特集展示の際は、本を 1 冊ずつ面陳で見せて置く館が多い。しかし書店と違っ
て、図書館では本が借りられると展示に穴が空いてしまう。そこで金武町立図書
館では、大きめの POP に書誌情報と予約を促す言葉を入れて設置し、本が借りら
れてしまっても、利用者に情報提供ができるように配慮している。
同館の POP は、書影にその本のおすすめポイントなどのコメントを添えるなど、
丁寧につくっているが、特集展示ではさらに予約を促す文言も入れ、利用・予約
につながる可能性をアップさせている。
File
223 金武町立図書館(沖縄県)
図書紹介コーナーのPOP。貸出時にも対応
撮影:岡本真 2014年9月24日
■金武町立図書館
http://kin-lib.town.kin.okinawa.jp/
沖縄県金武町字金武1827
Tel:098-968-5004 Fax:098-968-5032
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
図書館で行われる地域の歴史の特集展示は、町の航空写真や地域行事の際の記
録写真など、地域の人々にとって大切な思い出となるものも多い。そこで多治見
市図書館では、特集展示で使った資料やパネルを地域の団体などに貸出している。
図書館のイベントで完結させずに、商店街や老人介護施設で利用してもらうこと
で、さらに幅広い地域資料の活用につなげているのだ。老人介護施設で、回想認
知療法の手助けとしても活用された例もあるという。市史編纂室を郷土資料室と
して引き継いでいる多治見市図書館。パネルは資料室が保管する紙焼き写真をス
キャナーで取り込み拡大してパネル張りした手づくりである。自館の強みを生か
し、それを地域に還元している試みである。
File
224 多治見市図書館 郷土資料室(岐阜県) 
展示資料を地域の団体に貸出
■多治見市図書館 郷土資料室
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/
岐阜県多治見市豊岡町1-55まなびパークたじみ4階
Tel:0572-23-3783
撮影:岡本真 2014年10月31日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
CiNii は、国立情報学研究所が運営している学術情報のデータベースで、雑誌、
図書、論文などのタイトルが統合的に検索できる。学生にとっても非常に便利な
データベースだが、CiNii は年に数回、メンテナンスのためにサービスが停止す
ることがある。そこで神戸大学附属図書館では、同館のサイトに「CiNii Articles
停止時の文献探索代替ツールリスト」として、CiNii が統合している個別のデータ
ベースをリストにして提供している。普段、一括で検索しているとその恩恵に気
づきづらいが、いざ停止するととても不便なものだ。ふだん提供しているサービ
スが停止しているときでも、できる限り情報が入手できるように案内を出すのも、
図書館として重要な仕事である。
File
225 神戸大学附属図書館(兵庫県)
CiNii停止時に、ほかの検索サービスを案内
■神戸大学附属図書館
http://lib.kobe-u.ac.jp/
兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1
Tel:078-803-7315
E-mail:www-admin@lib.kobe-u.ac.jp
神戸大学附属図書館(公式サイトより)
■参考情報
・CiNii Articles停止時の文献探索代替ツールリスト〈http://lib.kobe-u.ac.jp/page296〉
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
条例、規則、要綱などの例規をオンラインで提供している自治体は多いが、そ
のサービスを知らない人がほとんどかもしれない。そこで高山市図書館「煥章館」
では、行政資料を配架している書架の一角に手製のボードを作成し、「高山市ホー
ムページ」→「高山市行政情報」→「高山市例規集・要綱集」と、その情報に辿り
着くまでのサイト名を、矢印を使ってシンプルにアナウンスしている。
行政資料を保存していくことは図書館の重要な仕事ではあるが、印刷資料はど
うしても情報の提供が遅くなる。最新の情報を提供できるインターネットなど、
さまざまな方法で情報を得ることができるいま、ハイブリットを意識した案内は
非常に大切である。
File
226 高山市図書館「煥章館」(岐阜県)
例規のウェブ版を紹介
■高山市図書館「煥章館」
http://www.library.takayama.gifu.jp/
岐阜県高山市馬場町2-115
Tel:0577-32-3096 Fax:0577-32-3098
E-mail:library@library.takayama.gifu.jp
撮影:岡本真 2014年9月11日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
江戸時代の城下町・商家町の町並みが残されている高山市の図書館「 煥章館 」は、
明治初期に建てられた洋風木造建築である高山煥章小学校の当時の姿を 2004 年
に再現して建てられた図書館である。
フランス風木造建築の美しい佇まいに惹かれ、館内に立ち寄る観光客も多いと
いう。そこで同館では、エントランスに市内の観光スポットを多言語で案内した
パンフレットを置いて街の魅力を広く PR している。観光地にある図書館として、
外に向けた視野の広いサービスを提供している事例といえるだろう。
File
227 高山市図書館「煥章館」(岐阜県)
入り口に観光パンフレット
■高山市図書館「煥章館」
http://www.library.takayama.gifu.jp/
岐阜県高山市馬場町2-115
Tel:0577-32-3096 Fax:0577-32-3098 
E-mail:library@library.takayama.gifu.jp
撮影:岡本真 2014年9月11日
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
南大隅町根占図書館では貸出カウンター付近に POP を付けた話題書を置き、
カウンターで手続きをする利用者の興味を引くことで、貸出につなげる展示づ
くりをしている。図書館における展示は、テーマの内容や見せ方なども大切だが、
利用者の導線を意識するなど展示場所を考えることも重要だ。またこの展示では、
POP に展示する本の表紙コピーを使うことで、貸出された後にもどのような本が
紹介されていたのかが分かる工夫をしている。
File
228 南大隅町根占図書館(鹿児島)
貸出時の図書情報展示
撮影:岡本真 2014年8月17日
■南大隅町立根占図書館
http://www.town.minamiosumi.lg.jp/minami05/minami36.asp
鹿児島県南大隅町根占川北226
Tel:0994-24-3164(教育委員会教育振興課) Fax:0994-24-3270
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
中央図書館は市内全ての区の行政資料を取り集めているが、行政区の多い政令
指定都市における中央図書館では、その展示の仕方に悩むかもしれない。そのま
ま棚に置くだけでは雑然としてしまい、手にとりにくいからだ。
そこで 10 区からなるさいたま市の中央図書館では、各区に制定されている区
の色を戦略的に使って、行政資料の展示をしている。区名を記したパネル、ファ
イルの色やラベルの色などを、各区の色でまとめているのだ。こうすることで、
資料がどの区の情報なのかが一目瞭然である。なおパネルデザインも非常にアイ
キャッチで、ひと目で分かるものになっていることにも注目したい。
File
229 さいたま市中央図書館(埼玉県)
色分けによる区政行政情報コーナー
撮影:岡本真 2014年5月29日
■さいたま市中央図書館
http://www.lib.city.saitama.jp/
埼玉県さいたま市浦和区東高砂町11-1
Tel:048-871-2100(代表) Fax:048-884-5500
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
中学生・高校生といった児童文学を卒業した若者向けの本を指す「ヤングアダ
ルト」。通常、ヤングアダルトコーナーと呼ばれる特設コーナーには、ライトノベ
ルを中心とした若者向けの小説が置かれることが多いが、秋田市立中央図書館明
徳館では、ライトノベルのテーマとも親和性の高い SF 辞典や、ライトな小説を
書いてみたくなった中高生向けに向けて「小説の書き方」といった実用書なども
置いている。こうすることで、普段は手にすることのないジャンルの本に、興味
をもってもらう機会を増やしているという。
また、特設コーナーという目立つ場所にこのような本を置くことで、中高生も
手にとることがあるという。中高生向けの実用書は、イラストもあり、大きな文
字で分かりやすく書かれているため、中高年向けにもなるのだ。棚の構成を見直
したことが、幅広い年齢層の利用者を増やすきっかけになっているようだ。
File
230 秋田市立中央図書館明徳館(秋田県) 
ライトノベルと知識本を同じコーナーに
■秋田市立中央図書館明徳館
http://www.lib.city.akita.akita.jp/
秋田県秋田市千秋明徳町4-4
Tel:018-832-9220 Fax:018-832-6660
E-mail:ro-edml@city.akita.akita.jp
提供:秋田市立中央図書館明徳館提供:秋田市立中央図書館明徳館
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
議員の調査研究を助けるために置かれる議会図書館のような役割は、公立の図
書館でも重要だろう。市役所の隣に建つ大仙市立大 曲図書館はその立地を意識
し、市役所職員のスキルアップになるような選書を心がけて行っている。ビジネ
ス書やまちづくりの本など、収集された資料はリスト化され、市役所職員向けの
案内とともに職員に配布されて展示の PR が計られている。その結果、熱心に図
書館に通う市役所の職員も増えているという。一見、一般の利用者からは遠くに
あるよう見える試みだが、巡り巡って、よりよい市民生活をつくるためのバック
アップをしている重要な取組である。
File
231 大仙市立大曲図書館 
市役所職員のスキルアップになる資料提示
■大仙市立大曲図書館
http://www.city.daisen.akita.jp/soshiki/Library Administration/
秋田県大仙市大曲上栄町2-16
Tel:0187-62-1012
提供:大仙市立大曲図書館
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
播磨町立図書館の地域資料コーナーでは、各自治体の資料を置くにあたり、東
播磨町の地図をボックス状の表面に張ったものを、仕切り板の代わりにしている。
こうすれば、引っ越したばかりの人や、近隣自治体の場所があやふやな人でも、
その位置関係が明確に分かるだろう。
ちょっとした工夫だが、地図の掲示と合せて行政資料を置くと、自分が住んで
いる場所との位置関係も分かり、なんとなくその土地に興味が沸くはずだ。なか
なか手にとることが少ないはずの行政資料だが、利用も促進されるのではないだ
ろうか。また、ボックス状の仕切りは、アイキャッチにもなり、遠くからでも興味
を引くだろう。
File
232 播磨町立図書館(兵庫県)
地域資料を地図で案内
提供:播磨町立図書館
■播磨町立図書館
https://www.library.harima.hyogo.jp/
兵庫県播磨町東本荘1-5-55
Tel:079-437-4500 Fax:079-437-5362 
E-mail:harima18-toshokan06t@library.harima.hyogo.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
調べ物をする際に役立てもらうためのパスファインダーは、たとえ司書が一生
懸命につくってもカウンターの横などに置くだけでは、利用者の目線にすら入ら
ない場合もある。そこで防府市立防府図書館では、分野ごとに色分けした紙に刷
りだした 16 種類のパスファインダーをウォールポケットに入れて、さらに「図書
館で調べよう!」と掲示して配布している。
このようにすれば、利用者の目に付きやすく、活用されやすいだろう。ただサー
ビスを提供するのではなく、どうのように提供するかが考えられている取り組み
である。
File
233 防府市立防府図書館(山口県)
図書館で調べよう!を開架に
撮影:岡本真 2014年11月19日
■防府市立防府図書館
http://www.library.hofu.yamaguchi.jp/
山口県防府市栄町1-5-1 ルルサス防府3階
Tel:0835-22-0780 Fax:0835-22-9916 
E-mail:info@library.hofu.yamaguchi.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
郷土資料の収集・保存は図書館における使命の一つであると同時に、収集した
それらの資料を「いかに地域の人々に周知し、活用してもらうか」も、図書館に課
せられた役割である。
久米南町図書館では、郷土資料コーナー付近の天井に街の歴史を書いた大きな
手づくりの年表を掲示することで利用者の興味をひき、それをきっかけにして目
の前にある郷土資料コーナーの本を手にとってもらうように誘導する展示を行っ
ている。
年表の中の事件は国家単位からすると小さなものだが、久米南町にとって重要
な出来事を中心に記載しており、年表そのものが地域資料の活用例といえるだろ
う。
File
234 久米南町図書館(岡山県)
町の歴史を年表で掲示
■久米南町図書館
http://library.town.kumenan.okayama.jp/
岡山県久米郡久米南町下弓削515-1
Tel:086-728-4322 Fax:086-728-4323 
E-mail:library@town.kumenan.okayama.jp
撮影:岡本真 2013年12月4日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
伊丹市立図書館では、新刊紹介の掲示板にその本の帯を張りだして紹介してい
る。その際に、それぞれの帯の横に投票スペースを設け、すでにその本を読んで
面白かったという人、これから読んでみたいと思う人がいたら、そのスペースに
マグネットで投票してもらうように呼び掛けている。投票対象になる本は、小説
など文芸書が中心である。投票の際に「面白かった本・読みたいと思った本」と
しているのは、本を読んでいない利用者でも、気軽に投票に参加してもらうため
の工夫である。Facebook の「いいね!」ボタンを押す感覚に近いかもしれない。利
用者が新着図書に注目してくれる効果はもちろん、通常は廃棄される帯を、この
ようなかたちで見直せるのも面白い工夫だ。
File
235 伊丹市立図書館ことば蔵(兵庫県)
読みたい本、面白かった本に投票
撮影:嶋田綾子 2013年10月18日撮影:嶋田綾子 2013年10月18日
■伊丹市立図書館ことば蔵
http://www.itami-library.jp/
兵庫県伊丹市宮ノ前3-7-4
Tel:072-783-2775 Fax:072-784-8091
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
図書館員によるおすすめ本の紹介企画は数多いが、全国を横断して展開する
「全国津々浦々図書館の本棚数珠つなぎ」は傑出している。図書館員がお友達紹介
的にバトンを手渡し、バトンを渡された人はおすすめ本を 3 冊紹介するというリ
レー形式の企画だ。瀬戸内市立図書館による企画で、2013 年 4 月のスタート以来、
同館のサイトで毎月更新している。また、館内では紹介文と合わせて展示を行っ
ている。
誰にバトンを渡すかは、参加者の裁量に任されているので、意外なところにバ
トンが渡るのが面白い。紹介する本に制限はないが、結果として地域の特色が透
けて見える選書が多くなっており、利用者にとっては地域の図書館に思いをはせ
るきっかけになるだろう。図書館員の推薦コメントも思いのこもったものが多く、
読み応えのある企画になっている。
File
236 瀬戸内市立図書館(岡山県) 
全国津々浦々、図書館の本棚数珠つなぎ
■瀬戸内市立図書館
http://lib.city.setouchi.lg.jp/
岡山県瀬戸内市邑久町尾張465-1
Tel:0869-22-3761
提供:瀬戸内市立図書館
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
提供:青森県立図書館
青森県立図書館では、児童書の展示ディスプレイを、県内の高校生に協力を呼
び掛けて飾り付けてもらっている。児童書のディスプレイは本と子どもたちの出
会いの橋渡しをする大切な仕事。美術部の生徒など、主に創作が好きな生徒たち
の手によるディスプレイは、完成度が高く、大人たちの目も引くでき映えである。
なお同館のサイトではこの活動の記録集を紹介し、ディスプレイ風景のほか、
同館職員からのコメント「ちょこっとエピソード」なども紹介している。図書館
を活躍のステージに──。「場」としての図書館の魅力を生みだしている好事例で
ある。
File
237 青森県立図書館(青森県)
高校生による読書活動アシスト
■青森県立図書館
http://www.plib.pref.aomori.lg.jp/
青森県青森市荒川藤戸119-7
Tel:017-739-4211 Fax:017-739-8353
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
小中学生に向けた図書館の職場体験では、「貸出」「配架」「補修作業」といった
仕事がメインになることが多い。子どもたちにとっては有意義な体験になるはず
だが、それだけでは成果物がないため、子どもたちの記憶に残りにくいかもしれ
ない。
そこで潮来市立図書館では、子どもたちに好きな本の POP を書いてもらう試
みをしている。POP は随時、その本と一緒に館内で展示し、ウェブでも紹介して
いる。自分で紹介した本を誰かが借りてくれる喜びも、重要な図書館職場体験で
あろう。なお、展示は館内の奥まった場所で行われているため、入り口付近の館
内案内図に展示場所を示すサインをつけることで、PR の工夫も行っている。
File
238 潮来市立図書館(茨城県)
職場体験生が本の紹介
提供:潮来市立図書館
■潮来市立図書館
https://lib.itako.ed.jp/
茨城県潮来市牛堀289
Tel:0299-80-3311 Fax:0299-64-5880 
E-mail:lib@itako.ed.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
多数の俳句関連資料を所持し、句集、歳時記、論文集の編纂と出版も手掛ける
にぬふぁ星図書館。同館では、その豊かな資料群を生かし、吟行コーディネート
という試みを導入している。歌碑や句が詠まれた場所、あるいは俳句を詠むのに
適した場所を紹介するという、俳句に特化したレファレンスだ。
ガイドブックには載ってない穴場史跡を巡る吟行や、沖縄の自然を観察する吟
行など、同館がもつ豊富な資料と知識を生かした特別な吟行コースも用意されて、
観光案内としても役立つ。
吟行というのは俳句資料の充実した同館ならではだが、通常のレファレンスを
発展させ、文学散歩や町歩きといった観光案内にまで結びつけるという試みは、
全国どの館でも実施できるはずだ。
File
239 にぬふぁ星図書館(沖縄県)
吟行コーディネート
■にぬふぁ星図書館
http://ninufa-bushi.com/
沖縄県島尻郡与那原町字板良敷741
Tel:098-946-3532 Fax:098-894-3551
提供:にぬふぁ星図書館
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
鹿島市民図書館では、10 月末から 11 月始めの読書週間に合わせて、シニア向
けのイベント「読み語り隊」を実施している。 このイベントでは、図書館司書が
デイケアサービスなどに絵本や紙芝居をもって訪問して読み語りを行うほか、唱
歌を一緒に歌ったり、大正や昭和の小学校の教科書などを展示したりしている。
また、ただ読み聞かせをするだけではなく、高齢者の若かりし頃の時代に合わせ
た写真集などを図書館の蔵書からセレクトし持参することで、懐かしさにひたれ
る演出もしている。図書館がもつアーカイブ機能を生かした取り組みだといえる
だろう。子ども向けの読み聞かせは多くあるが、このような高齢者向けのサービ
スはあまりなく、そのニーズから注目されはじめて、一部の図書館で実施されて
いる。
File
240 鹿島市民図書館(佐賀県)
読み語り隊
提供:鹿島市民図書館
■鹿島市民図書館
https://www.library.city.kashima.saga.jp/
佐賀県鹿島市納富分2700-1(鹿島市生涯学習センター エイブル1階)
Tel:0954-63-4343 Fax:0954-63-2217 
E-mail:kashimal@theia.ocn.ne.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
アメリカの公共図書館で始まった「ぬいぐるみのおとまり会」は、子どもたち
が大切にしているぬいぐるみが体験したことを、子どもたちが疑似体験すること
で、図書館に親しみをもってもらおうというイベントだが、日本でも 2010 年か
ら各地で導入され人気を博している。
同イベントでは、図書館で絵本を読んだりして一夜を過ごしたぬいぐるみの様
子を図書館員がアルバムにし、後日、そのアルバムとともにぬいぐるみが読んだ
絵本を貸出すというのが一般的だが、柏原市立国分図書館では「おとまり会」の
夜、その様子を Twitter で実況中継するという演出を施している。子どもたちは
Twitter の向こうに、ぬいぐるみたちの様子をライブで想像できるので、スリリン
グで忘れられない体験となるだろう。また、リアルタイムに流れる「おとまり会」
の実況 TL は、図書館の活動を広く印象付ける PR にもなっている。
また「おとまり会」を記録したアルバムは、写真の撮影も細かに演出してあり、
絵本のようにもなっている。
File
241 柏原市立国分図書館(大阪府) 
ぬいぐるみのおとまり会を実況中継
■参考情報
・9/27柏原市立図書館 #ぬいぐるみおとまり会 #図書館 
http://togetter.com/li/715959
公式Twitterより<https://twitter.com/kashiwara_lib/status/515837910017265666>
■柏原市立国分図書館
http://library.city.kashiwara.osaka.jp/
大阪府柏原市田辺1-3-7
Tel:072-975-1212 Fax:072-975-1055
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
真庭市立久世図書館は、チラシに「広場でゆったりと寝転びながら読書を楽し
んでください」という言葉を添えて、屋外での読書を推進する「ひだまりの小さ
な図書室」というイベントを開催した。これは図書館がレジャーシートと 3 冊の
本を貸出し、図書館前の広場で読書を楽しむというもの。図書館から貸出される
3 冊の本はカゴに入れられ、それぞれに「写真集って楽しい!」「今日の晩ごはん」
などのテーマが決まっている。貸出票に記載をすれば図書館カードがなくとも借
りることができ、当日は子ども 10 名、大人 6 名の利用があったという。屋外でく
つろいだ気持ちになって読むことで、新鮮な気持ちで読書に向き合えたのではな
いだろうか。
File
242 真庭市立久世図書館(岡山県)
ひだまりの小さな図書室
提供:真庭市立久世図書館
■真庭市立久世図書館
http://lib.city.maniwa.lg.jp/
岡山県真庭市鍋屋17-1
Tel:0867-42-7203 Fax:0867-42-7204 
E-mail:toshokan_ks@city.maniwa.lg.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
撮影:嶋田綾子 2013年9月15日 撮影:嶋田綾子 2013年9月15日
地域情報のファイリングは図書館員の重要な通常業務だが、時間と人手を要す
る業務だ。東松島市図書館では、新聞コーナーに「新聞記事お探し隊」というラッ
クをもうけ、利用者に「新聞で見つけた地域情報に付箋を貼ってください」と呼
び掛けている。いわば図書館員の業務を手伝ってもらうわけだが、利用者にとっ
ても記事を精読したり、普段は目を向けないような記事を読むきっかけになるの
ではないか。このようにして集めた地域情報のファイリングブックは、「新聞記事
お探し隊」のラックに展示している。郷土資料コーナー以外の場所に地域資料を
置く点も目新しく、図書館がもつ「地域情報の保管」という機能に目を向ける一
助となっている。
File
243 東松島市図書館(宮城県)
新聞の地域情報を利用者に
■東松島市図書館
http://www.lib-city-hm.jp/lib/
宮城県東松島市矢本字大溜1-1
Tel:0225-82-1120 Fax:0225-82-1121 
E-mail: tosyokan@city.higashimatsushima.miyagi.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
提供:東北大学附属北青葉山分館
図書館員が利用者とともに書店に行き、図書館に入れてほしい本を選書するこ
とで、図書館の蔵書をともにつくっていく「選書ツアー」は、大学図書館を中心に
じわじわと広まってきている。
しかし、書店の本棚から選書する「選書ツアー」は、近隣に大規模な書店がない
と実施が難しい。また実施できる日時も限られてしまう。そこで東北大学附属図
書館北青葉山分館では、各書店のカタログ(和書・洋書)を展示し、そのカタログ
使って学生に選書をしてもらう「カタログ選書祭」を行っている。実際の本を手
にとって選書することができない難点はあるが、展示に際し、図書館員がカタロ
グを網羅的に用意することで、普段はなかなか目にすることのないコアな専門書
を紹介することもできる。また、図書館の選書に参加する機会を得ることで、自
分が選んだ本が蔵書となる喜びが味わえるだろう。
File
244 東北大学附属図書館北青葉山分館(宮城県)
カタログでの選書会
■東北大学附属図書館北青葉山分館
http://tul.library.tohoku.ac.jp/
宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
Tel:022-795-6372 
E-mail:klib-s@library.tohoku.ac.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
地域の歴史資料として貴重な資料である自治体誌。多くの図書館が、自分たち
自治体誌だけではなく、近隣の自治体や歴史上つながりのある自治体の自治体誌
も収集している。
しかし原村図書館はそこからさらに一歩進み、近隣のみならず県内の多様な自
治体を知ると同時に、また自分たちの自治体のことも知ってもらうため、村誌交
換の取り組みをしている。定石に沿って行いがちな収集方法も工夫次第という好
例である。地域資料の収集や展開の工夫としては、本誌 4 号でゆかりのある地域
の郷土史も展示している鳥羽市立図書館の事例[File122]を紹介している。
File
245 原村図書館(長野県)
自治体誌を交換で収集
提供:原村図書館
■原村図書館
http://www.vill.hara.nagano.jp/www/section/detail.jsp?id=73
長野県諏訪郡原村12079-1
Tel:0266-70-1500 Fax:0266-79-7000
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
鳥取県書店商業組合では「マイ・メモリアルブックキャンペーン」と名付け、「人
生の記念日に、図書館へ本を贈ろう」という取り組みを行っている。これは財政
難による図書購入費の削減により、蔵書を増やせない市町村図書館の窮地を少し
でも打開しようと同組合が始めたキャンペーンだ。
書店が仲介して、一般の人から図書館に本を寄贈してもらうための仕組みで、
寄贈者は寄贈したい図書館を指定し(県内の市町立図書館と日吉津村中央公民館
図書室の 30 ヶ所が対象)、寄贈額を決めて書店に申し込むと、書店がその申し出
を受けて、指定された図書館に連絡し、図書館が購入したい本をヒアリングして
書店から発送するという流れ。図書館が、寄贈本を直接募る取り組みはよくある
が、書店がキャンペーンを行うのは珍しい。書店との関係を大切にしつつ、寄贈
で本を集める方法としてよい事例だ。なお、本誌第 3 号「図書館における資金調
達(ファンドレイジング)では、さまざまな寄贈本の集め方を紹介している。
File
246 鳥取県書店商業組合(鳥取県)
人生の記念日に図書館へ本を
提供:鳥取県書店商業組合
■鳥取県書店商業組合
http://www.tottori-books.jp/
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
予算の範囲内で各国の地域資料を広く集めたい時に取り入れたいのが、南相馬
市立図書館の取り組みだ。各国の在日大使館などに、そこで発行しているガイド
ブックやパンフレットの寄贈をお願いするという地道な取り組みだが、各国ある
いは各協会などが発行する資料を集めることで、市販のガイドブックではカバー
しきれない多様な情報を利用者に提供することができる。小さな国の情報や、特
定分野に特化した情報などは商業ベースでの出版が難しいからだ。同館では地域
の観光協会にも同様のアプローチをし、地域資料の充実を図っている。
また複数部数ある資料については持ち帰れるようにし、パンフレット類などの
ペラ物はファイリングして保存に努めている。
File
247 南相馬市立中央図書館(福島県)
各国大使館などにパンフレット寄贈のお願い
撮影:嶋田綾子 2014年3月4日 撮影:嶋田綾子 2014年3月4日
■南相馬市立中央図書館
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/23,html
福島県南相馬市原町区旭町2-7-1
Tel:0244-23-7789 Fax:0244-24-6986
E-mail:toshokan@city.minamisoma.lg.jp
87
資
料
収
集
の
工
夫
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
通信制の大学で学ぶ学生は、学習のための参考資料を得ようとすると苦労が伴
う。一般大学では大学図書館に参考図書が用意されているが、通信制では大学図
書館が日常的に利用できないからだ。特に法学や理系の参考図書は高額なものも
多く、学生にとって大きな金銭的負担になるだろう。こうした教育の穴場をケア
することも、地域の図書館にとって重要な機能である。
北見市立中央図書館では、このような状況を受けて具体的なアクションを起こ
している。中央大学と連携を取り、法学系や理系の参考図書を寄贈してもらい「中
央大学通信教育」として図書館の入り口に書架をつくり、通信制大学で学ぶ学生
のために、参考図書をまとめて提供しているのだ。地域に住む学生たちの学びを
具体的にサポートしている好例である。
File
248 北見市立中央図書館(北海道)
通信制大学の参考図書をまとめて提供
撮影:嶋田綾子 2014年10月23日
■北見市立中央図書館
https://lib.city.kitami.lg.jp/
北海道北見市常盤町2-1-67
Tel:0157-23-2074
88
資
料
収
集
の
工
夫
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
飛行機の機内誌や新幹線の車内誌は、全国の観光情報や各地の耳より情報など
が掲載されているほか、著名な作家の連載などもあり密かなファンも多いはずだ
が、市販されていないため、なかなか手にとることができない場合が多い。
そこで長崎市立図書館では機内誌や車内誌、そのほかさまざまなフリーペー
パーの中から継続して所蔵したいものを選定し、航空会社や交通会社などに依頼
して寄贈を受け、保管・展示している。制作した側でも保存していないことがあ
るため、資料の保存という意味でも価値のある試みといえる。
File
249 長崎市立図書館(長崎県)
機内誌、車内誌を所蔵
■長崎市立図書館
http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/
長崎県長崎市興善町1-1
Tel:095-829-4946 Fax:095-829-4948
E-mail:info@lib.city.nagasaki.nagasaki.jp
撮影:岡本真 2014年6月13日
89
資
料
収
集
の
工
夫
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
小さな図書館分館は蔵書数が少ないため、図書館によく足を運ぶ利用者は新し
い本との出会いを感じられず、マンネリ感を抱いてしまう恐れがある。
そこで横手市立平鹿図書館では蔵書の補強として、中央図書館や市内の分館か
ら 1 度に 150 冊を借り受けて、「借りぐらし BOOKS」というコーナーを設置して
いる。150 冊の選書は、平鹿図書館の職員がその都度現地に行き、9 分類(文学)
の本の中から特にテーマは設定せずに、自館で借りられそうな本や貸出回数など
を考慮して行っているという。借り受けの期間は 3 ヶ月間で、期間限定の配架に
なるため急いで借りる利用者も多く、目新しい資料ということもあり、試みは好
評である。
File
250 横手市立平鹿図書館(秋田県)
借りぐらしBOOKS
■横手市立平鹿図書館
http://www.city.yokote.lg.jp/sub01/cat100168.html
秋田県横手市平鹿町浅舞字覚町後138
Tel:0182-24-3281 Fax:0182-24-3335
E-mail:hirakatoshokan@city.yokote.lg.jp
提供:横手市立平鹿図書館 提供:横手市立平鹿図書館
90
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
鎌倉市中央図書館 
撮影:嶋田綾子 2013年7月28日
山中湖情報創造館 提供:山中湖情報創造館
ヤングアダルト向けのライトノベルはシリーズごとの巻数が多く、整理に悩む
図書館は多いのではないだろうか。鎌倉市中央図書館では、このお悩みをちょっ
とした工夫で解決している。ライトノベルを 1 タイトルごとに、100 円均一のカ
ゴにまとめて展示しているのだ。こうすればカゴごとにタイトルがまとまるので
利用者としても探しやすく、図書館としても整理しやすい。また面を重ねて配架
できるため、巻数の多い本を整理するのに都合のよい仕様になる。
なお、本誌の公式 Facebook ページでこの工夫を紹介したところ、山中湖情報創
造館が取り入れ、ライトノベルの整理に役立てている。その際にユニークなのが、
創造館に職場体験に来た中学生に手伝ってもらい、箱の正面にタイトルを入れて
いることだ。帯のようになって、非常に見やすい。この工夫は赤川次郎など多作
の作家の作品や、大人向けの時代小説などでも応用できるはずである。
File
251 鎌倉市中央図書館(神奈川県)・山中湖情報創造館(山梨県)
カゴを使って文庫本を整理
■鎌倉市中央図書館
https://lib.city.kamakura.kanagawa.jp/
神奈川県鎌倉市御成町20-35
Tel:0467-25-2611 
E-mail:kama-lib@city.kamakura.kanagawa.jp
■山中湖情報創造館
http://www.lib-yamanakako.jp/
山梨県南都留郡山中湖村平野506-296
Tel:0555-20-2727 Fax:0555-62-4000 
E-mail:info@lib-yamanakako.jp
91
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
佐久市立望月図書館では開館記念に「読書に心地よい椅子コンテスト」を行い、
図書館にあったらいい椅子の製作を一般に応募している。同コンテストは、実際
に製作応募された 22 作品について館内で展示し(2014 年 7 月 26 日∼ 9 月 28 日)、
利用者に実際に見て、触って、座ってみてもらい、心地よい椅子、図書館にあった
らいいなと感じる椅子を選び、投票してもらうというもの。グランプリは、総投
票数 2,287 票のうち 291 票を獲得した『図書館のための椅子』が受賞。入賞した 5
作品は、さらにもう一脚製作してもらい、計 10 脚を佐久市が購入し、望月図書館
に納入するという。提供された環境を享受するのではなく、市民も協力して館内
の空間を一緒につくり上げる取り組みだ。
File
252 佐久市立望月図書館(長野県)
椅子コンテスト
提供:佐久市立中央図書館
■佐久市立望月図書館
http://tosyo.city.saku.nagano.jp/
長野県佐久市望月263
Tel:0267-53-0230 Fax:0267-53-0231
92
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
学習指導要領には図書館を活用した教育について記載がある。そのため教育機
関においては、学校図書館だけではなく公共図書館もニーズがあるのだが、子ど
もたちが集団で図書館に来るとどうしても騒がしくなり、ほかの利用者の迷惑に
なるケースが出てくる。
そこで大分県立図書館では、月曜の休館日に「スクール・サービスデイ」として、
県内の小中学校、高等学校の児童生徒を対象に図書館を開放し、集団でも自由に
調べ学習ができるように便宜をはかっているのだ。このサービスは常時、自館の
サイトで呼び掛けている。子どもたちが気兼ねなく図書館で学習し、図書館の使
い方を学んでいくことができる、配慮のある工夫だろう。なお村山市立図書館で
も同じような取り組みを行っている[File254]。
File
253 大分県立図書館(大分県)
スクール・サービスデイ
提供:大分県立図書館
■大分県立図書館
http://library.pref.oita.jp/
大分県大分市王子西町14-1
Tel:097-546-9972(代表) Fax:097-546-9985
93
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
提供:村山市立図書館
村山市立図書館では、平日の開館前や閉館後の時間、1階のフロアを無料で貸
切にできるプランを予約制で提案している。プランは午前 9 時から 10 時までの
1 時間と、午後 7 時から 9 時までの 2 時間。大分県立図書館の事例[File253]とは
違い、対象者は決めていないが、今のところ利用が多いのは学校だという。 要望
があれば、職員が読み聞かせや図書館の利用に関するレクチャーも行う。
グループでの利用は、ほかの利用者に気を使うことも多い。このようなかたち
で図書館を貸切にして利用することができれば、誰にも気兼ねなく、じっくりと
図書館を使うことができる。また大人の利用者にとっても、図書館を独り占めで
きる特別な機会となるだろう。
File
254 村山市立図書館(山形県)
貸切図書館
■村山市立図書館
http://www.shoyo-plaza.jp/library/
山形県村山市楯岡五日町14-20
Tel:0237-55-2833 Fax:0237-55-7251
94
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
返却ポストによる返却では、ポスト内で落下する衝撃で、特に視聴覚資料は痛
む危険性が高く、場合によっては破損にいたることがある。そのため多くの図書
館では、視聴覚資料や CD・DVD 付録の本をポストに返却することを禁止して
いる。図書館側としては致し方ないお願いだが、休館日に返却に来た利用者には
不便であろう。そこで茨城県立図書館では、返却ポストに梱包材を設置し利用を
促すことで、視聴覚資料や CD・DVD 付録の本でもポストで返却できるように
している。
この取り組みは、本誌創刊号でも山中湖情報創造館の事例を紹介したが
[File072]、山中湖の場合は返却ポストが屋内にある事例であった。今回の茨城県
立図書館では、返却ポストが屋外にある場合でも行われている事例である。
File
255 茨城県立図書館(茨城県)
梱包材を返却ポストで提供 
■茨城県立図書館
http://www.lib.pref.ibaraki.jp/
茨城県水戸市三の丸1-5-38
Tel:029-221-5569(代表) Fax:029-228-3583(事務室)
E-mail:info@lib.pref.ibaraki.jp
撮影:嶋田綾子 2013年12月5日
95
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
新潟市の教育委員会は「新潟市教育ビジョン」および「新潟市子ども読書活動
推進計画」に基づいて、2008 年度に学校図書館支援センターを設置している。同
センターでは、学校図書館を訪問して現場の悩みや課題を聞くほか、図書・雑誌・
紙芝居などの資料提供や研究会の開催を行い、全市の小・中学校図書館の活用の
推進にひと役買っている。
今回、同センターの取り組みから特に紹介したいのが、各学校図書館で見つけ
たよい事例をウェブサイト「これいいね!学校図書館の工夫」で紹介する取り組
みだ。このサイトでは「分類表示」「資料展示」「館内展示」ごとにカテゴリー分け
をして、写真と簡単なキャプションをつけて紹介をしている。よい工夫を一元的
に提供することでほかの図書館の参考にしてもらい、全市を上げて図書館を育て
ているのだ。
File
256 新潟市学校図書館支援センター(新潟県)
これいいね!学校図書館の工夫
■新潟市学校図書館支援センター
http://www.niigatacitylib.jp/modules/tinyd3/
新潟県新潟市中央区明石2-1-10 新潟市立中央図書館内
Tel:025-246-7700 Fax:025-246-7722 
E-mail:chuo.cl@city.niigata.lg.jp
新潟市学校図書館支援センター(公式サイトより)
96
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
本誌のオリジナル企画「図書館 100 連発」。神奈川県内の高校図書館員からなる
神奈川県学校図書館員研究会では、本誌の「図書館 100 連発」を参考に、「学校図
書館 100 連発」という企画を実施し、横浜市南地区の 14 校から 239 の事例を収
集し、これらを小冊子にまとめた。2013 年度の研究会では、この中から 100 事例
を発表している。その際、参加者からさらに新しい事例を収集した。
ここでは事例が共有されることで、刺激を受けた側から新たな事例が発表され、
また共有されるという好ましい循環が生じている。また、公共図書館の事例を中
心とした本誌と違い、「対職員」のための項目があるなど、学校図書館ならではの
事例も多く発表されているのが興味深い。
File
257 神奈川県学校図書館員研究会(神奈川県) 
学校図書館100連発
撮影:嶋田綾子 2014年1月26日
■神奈川県学校図書館員研究会
http://www.kastanet.pen-kanagawa.ed.jp/
97
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
乗用車が生活に欠かせない東北地方では、図書館に駐車場があることは必須で
ある。福島県にある南相馬市立中央図書館にも有料の駐車場が併設され、図書館
利用者には 2 時間を無料にするサービスを行っているが、図書館が休みで、本を
返却ポストに入れたい場合はこのサービスが利用できない。そのため、同館では
あらかじめ返却ポスト用のドライブスルーを設置することで、この問題を解決
している。返却ポスト用にドライブスルーがあることで、駐車場を使わなくても、
路上駐車をしなくても、雨や雪に濡れることなく本が返せる。東北地方ならでは
のハードウェア面でのアイデアといえるだろう。
File
258 南相馬市立中央図書館(福島県)
返却ポスト用ドライブスルー
撮影:嶋田綾子 2014年3月4日 撮影:嶋田綾子 2014年3月4日
■南相馬市立中央図書館
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/23,html
福島県南相馬市原町区旭町2-7-1
Tel:0244-23-7789 Fax:0244-24-6986 
E-mail:toshokan@city.minamisoma.lg.jp
98
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
南相馬市立中央図書館の閲覧机は、キャレル(個人閲覧席)用のしきりを取り
払うことで、複数人が同時に使用できる大机となる。普段は個人での閲覧机とし
て利用されているが、小中学校での集団利用などで机が必要になった時や、グ
ループで机を使用したい時などに仕切りを外すことで対応できる。本誌 4 号で
は、普段は仕切りのない机にキャレル用の仕切りを貸出している白河市立図書館
[File159]のケースを紹介している。
個人用として提供していくか、グループ用として提供していくか──どちらを
優先するかは個々の図書館の事情によるが、大きな机を用意しても、個人利用が
多い現状を鑑みれば、普段は個人用、しきりを外せばグループ用で対応という仕
立ては、什器の有効活用につながるものである。
File
259 南相馬市立中央図書館(福島県)
しきりを外すとグループで使用できるキャレル
■南相馬市立中央図書館
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/23,html
福島県南相馬市原町区旭町2-7-1
Tel:0244-23-7789 Fax:0244-24-6986
E-mail:toshokan@city.minamisoma.lg.jp
撮影:嶋田綾子 2014年3月4日
99
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
子どもたちがお話に没入できるように、おはなし会での空間づくりに工夫を凝
らす図書館や団体は多い。部屋の電気を消したり、登場するキャラクターのぬい
ぐるみを置いたりと、ちょっとした非日常を演出するだけで、子どもたちの気持
ちもぐんと盛り上がる。
南相馬市立中央図書館では、特殊な塗料を利用して「おはなしの部屋」に星空
をつくりだした。専用のインクで壁に絵を描き、ブラックライトで照らすと暗闇
に星空が浮かび上がるのだ。同館のように壁そのものに絵を描いたり、天井に星
空のライトを仕込むのは難しくとも、絵を布に描いて壁に垂らすなど、さまざま
に応用できそうだ。
File
260 南相馬市立中央図書館(福島県)
ブラックライトで星空を演出
■南相馬市立中央図書館
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/23,html
福島県南相馬市原町区旭町2-7-1
Tel:0244-23-7789 Fax:0244-24-6986 
E-mail:toshokan@city.minamisoma.lg.jp
撮影:嶋田綾子 2014年3月4日
100
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
長岡市立中央図書館では「ビジネス支援」や「健康情報」といったニーズの高い
テーマごとに別置の書架を置き、そのテーマでコーナーをつくっているが、その
コーナーのつくり方が秀逸である。テーマごとに抜き出された本の背に貼られる
別置ラベルの色と、書架に貼られたコーナー名を掲示するサインの色を揃えるこ
とで、利用者がひと目でそのコーナーの本であることを分かるようにしているの
だ。また、別置ラベルを拡大して模したものを、コーナー名の横にアイコンにな
るように貼ってある。もちろんこれも同じ色に統一してある。色と形を戦略的に
使った実用的な工夫といえる。
File
261 長岡市立中央図書館(新潟県)
別置ラベルと合わせた掲示
■長岡市立中央図書館
https://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市学校町1-2-2
Tel:0258-32-0658 Fax:0258-32-0664 
E-mail:lib@city.nagaoka.niigata.jp
撮影:嶋田綾子 2014年5月3日
101
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
南大隅町根占図書館は、インターネットの接続環境を提供するにあたり、配線
の仕方に工夫をしている。有線でのネット環境の場合、机に有線 LAN の差し込
み口があり、そこにコンセントを入れて利用することが多いが、同館は閲覧室の
机を固定していないため、配線を床に這わせると、それに合わせて机の配置が決
まってしまう。そこで天井から有線 LAN ケーブルを垂らすことで、閲覧室スペー
スの自由度を確保しているのだ。利用者にとってよりよい図書館環境つくりだそ
うとする、職員の気概を感じさせる取り組みだ。
File
262 南大隅町根占図書館(鹿児島県)
天井から有線LANを配線
■南大隅町立根占図書館
http://www.town.minamiosumi.lg.jp/minami05/minami36.asp
鹿児島県南大隅町根占川北226
Tel:0994-24-3164(教育委員会教育振興課) Fax:0994-24-3270
撮影:岡本真 2014年8月17日
102
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
図書館にある本の背表紙の下部に貼ってある請求記号。この請求記号は図書館
の規模によって 3 桁から 5 桁程度の数字が記載されている。請求記号を記載した
ラベルは多くの場合、横書きのフォーマットに従って貼られるが、背の厚さが薄
い本になると記号が背の厚さに収まりきらず、見えなくなってしまう。そこで白
河市立図書館では、背の薄い本にはラベルをタテに貼ることによって、記号に対
する視認性を高める取り組みをしている。このようにすれば全ての記号が目に入
り、図書館員にとっては整理しやすく、利用者にとっても必要な資料が探しやす
くなる。
File
263 白河市立図書館(福島県)
薄い本はラベルをタテ貼り
■白河市立図書館
http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/info.rbz?nd=265&ik=1
福島県白河市道場小路96-5
Tel:0248-23-3250 
E-mail:toshokan@city.shirakawa.fukushima.jp
提供:白河市立図書館
103
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
本誌創刊号では、地域で活動する華道クラブに花を生けてもらい、館内を彩る
取り組みをしている横芝光町立図書館の事例[File043]を紹介しているが、青森
市民図書館では華道ほど敷居を上げず、一輪挿し運動を市民に呼び掛けている。
この運動は同館サイトで常時呼び掛けており、呼び掛け文には「ご自分で育てた
花をお持ちください」としている。ひとり一人のささやかな思いやりを提供して
もらう隙間をつくることで、利用者の満足度を高めるとともに、図書館の環境も
ぐっとよくなる。細やかながらも豊かな取り組みだ。
File
264 青森市民図書館(青森)
一輪挿し運動
■青森市民図書館
https://www.library.city.aomori.aomori.jp/
青森県青森市新町1-3-7
Tel:017-776-2455 Fax:017-776-2400
E-mail:info@library.city.aomori.aomori.jp
提供:青森市民図書館
104
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
図書館の「どこに行けば、何があるのか」を利用者に分かりやすく掲示するの
は非常に重要なことだ。図書館の利便性はここに大きく左右されるといっても過
言ではない。そこで豊橋市中央図書館では、ガムテープを利用して床に案内の印
をつくっている。目的地が床に分かりやすく提示されるので、天井にあるサイン
に目線がいかない利用者をサポートしている。サインの内容は「電話帳・住宅地
図」「CD・DVD ネット端末」「学習室・会議室 3 階」など。目的地の確認で呼び止
められることが減るので、職員が作業に集中できるという利点もある。グレーの
床に濃いピンクの案内が、とても目立つ。
File
265 豊橋市中央図書館(愛知県)
床に目的地への案内を掲示
■豊橋市中央図書館
http://www.library.toyohashi.aichi.jp/
愛知県豊橋市羽根井町48
Tel:0532-31-3131 Fax:0532-31-4254 
E-mail:admin@library.toyohashi.aichi.jp
撮影:嶋田綾子 2014年10月30日 撮影:嶋田綾子 2014年10月30日
105
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
遠軽町図書館では、地元の学校が授業の一環で製作した本棚や木製ブックスタ
ンドの寄贈を受け、実際に館内で活用している。コスト減に苦しむ図書館として
はありがたい寄贈であり、生徒にとっても作成したものが大勢の目に触れる場所
で実際に使われるという喜びがある。作品を通して、町民や学生が図書館に親し
みを感じてくれるという効果も期待できる。手づくりの作品独特の柔らかい雰囲
気が、図書館になじんでいる。
File
266 遠軽町図書館(北海道)
地元学校の寄贈作品を使用
撮影:嶋田綾子 2014年10月24日撮影:嶋田綾子 2014年10月24日
■遠軽町図書館
北海道遠軽町大通南4-1-20
Tel:0158-42-3632 Fax:0158-49-2102 
E-mail:tosyokan@engaru.jp
106
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
佐呂間町図書館では、新着図書コーナーで展示をしている本に栞を入れて、新
しく入った本であることを PR している。栞は目につきやすい黄色で、次の人の
ためになるべく早い返却を促す文言が書かれている。なお、同館では特集展示の
本にも栞を入れており、こちらは利用者から返却された際に、特集展示の棚に戻
す本であることを図書館員がひと目で分かる目印となっている。
File
267 佐呂間町図書館(北海道)
新着図書に栞を挟んで目印に
撮影:嶋田綾子 2014年10月23日
■佐呂間町図書館
https://www.town.saroma.hokkaido.jp/shisetsu/library/
北海道佐呂間町字永代町166-2
Tel:01587-2-2215
107
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
名古屋大学附属図書館では PC の使い方に慣れてない人のために、館内の蔵書
検索用 PC にちょっとした工夫をしている。「OPAC を使うには、デスクトップの
インターネットエクスプローラーのアイコンをダブルクリックしてください」と
書かれたものを壁紙に設定しているのだ。こうすることで、前の利用者がブラウ
ザを閉じて PC を去ったとしても、次の利用者に向けた最初のアクションを壁紙
で伝えることができる。PC の横に注意書きを置く方法もあるが、分かりやすさ
ではこの工夫のほうが上であろう。
File
268 名古屋大学附属図書館(愛知県) 
PCのデスクトップに伝えたいこと
撮影:嶋田綾子 2014年10月7日
■名古屋大学附属図書館
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/
愛知県名古屋市千種区不老町
Tel:052-789-3678  Fax:052-789-3694
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環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
図書館のチラシ置き場は地域の情報が集約する貴重な場所だが、日々さまざま
な団体から送られてくるチラシは、整理を怠るとすぐに散らかってしまい、利用
者の目に止まりづらくなる。そこで鯖江市図書館では、チラシにパンチで穴を開
け、フックに吊って整理をしている。ラックでの陳列に比べ、スペースの省力化
が図れると同時に、利用者にとっても見やすい。また、チラシ置き場を「図書館か
らのお知らせ」「鯖江市からのお知らせ」「福井県からのお知らせ」ごとに分けたこ
とも、見やすさの向上にひと役買っている。
File
269 鯖江市図書館「文化の館」(福井県)
チラシを吊して提供
撮影:嶋田綾子 2014年9月7日
■鯖江市図書館「文化の館」
http://www.city.sabae.fukui.jp/pageview.html?id=458
福井県鯖江市水落町2-25-28
Tel:0778-52-0089 
E-mail:s-lib@si.ttn.ne.jp
109
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
新潟県立図書館では、資料持ち帰り用の手提げ袋を提供しているが、その際、
図書館で用意をするのではなく、家庭で眠ったままになっているナイロン製のエ
コバックを寄付してもらっている。コストをかけずに図書館のサービスを向上し、
また利用者にとっても不要なものを有効活用できる嬉しい取り組みだ。
File
270 新潟県立図書館(新潟県)
寄付による袋を提供
撮影:嶋田綾子 2014年5月2日 撮影:嶋田綾子 2014年5月2日
■新潟県立図書館
http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/
新潟県新潟市中央区女池南3-1-2
Tel:025-284-6001(代表) Fax:025-284-6832
110
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
膨大な数の本が、狭いスペースに収められる書庫は、地震などの災害時、倒れ
た書架や書架から落ちた本の下敷きになるなど、大きな被害を生む危険性がある。
普段からその危険性を承知した図書館員が出入りするだけであれば対策もとれる
が、学生など、その危険性を意識しない利用者が出入りする場合、注意が必要で
ある。
そこで愛媛大学図書館では、書庫の床に避難場所をマーキングし、書庫に入る
職員や学生に向けて、常に避難の意識を喚起している。阪神淡路大震災や東日本
大震災の教訓もある。多くの図書館で取り入れてほしい工夫だ。
File
271 愛媛大学図書館(愛媛県)
書庫内での避難指示を床に
撮影:岡本真 2014年10月15日 撮影:岡本真 2014年10月15日
■愛媛大学図書館
http://www.lib.ehime-u.ac.jp/
愛媛県松山市文京町3
Tel:089-927-8845 Fax:089-927-8847
E-mail:soumu@lib.ehime-u.ac.jp
111
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
名護市立中央図書館では、イスの脚にテニスボールをはかせることでフローリ
ングの傷付きや足音を防止している。綺麗なフローリングや静かな館内環境を守
るために、「足音を立てないで」「傷を付けないで」など注意書きが張りだされて
いる図書館は少なくない。しかし、過度に注意を呼び掛けて利用者に窮屈な印象
を与えるよりは、そういった注意が不要な環境を整えるのが最善の策ではないか。
テニスボールの足は、居心地の良い図書館にしたいという意識の表れともいえる
だろう。
File
272 名護市立中央図書館(沖縄県)
床の傷つき音防止にテニスボール
■名護市立中央図書館
http://www.city.nago.okinawa.jp/5/4144.html
沖縄県名護市宮里5-6-1
Tel:0980-53-7246 Fax:0980-52-2607 
E-mail:tosyokan-info@city.nago.okinawa.jp
撮影:岡本真 2014年9月24日
112
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
名護市立中央図書館では、学習デスクの横にレファレンスブック専用のミニ本
棚を用意している。設置される本は広辞苑、国語辞典、漢和辞典などの辞書類が
中心だ。
自主学習には欠かせない辞書だが、必ずしも学習デスクの側に辞書コーナーが
あるとは限らない。このような工夫をすることで、普段は手にしない広辞苑のよ
うな重量のものも含め、辞書の利用を促しているのだ。
File
273 名護市立中央図書館(沖縄県)
デスク横にミニ本棚
撮影:岡本真 2014年9月24日
■名護市立中央図書館
http://www.city.nago.okinawa.jp/5/4144.html
沖縄県名護市宮里5-6-1
Tel:0980-53-7246 Fax:0980-52-2607 
E-mail:tosyokan-info@city.nago.okinawa.jp
113
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
東北大学附属図書館では、雑誌の最新号を誰かが閲覧していても、そこに配架
されていた雑誌が分かるように、雑誌の表紙をカラーコピーしたものを書架に置
いている。書架に雑誌名を掲示するよりも、内容もひと目で分かりやすいだろう。
なお、写真の左側の書影は現物、右側はコピーである。
File
274 東北大学附属図書館(宮城県)
閲覧中の雑誌もフォロー
■東北大学附属図書館
http://tul.library.tohoku.ac.jp/
宮城県仙台市青葉区川内27-1
Tel:022-795-5943 
E-mail:main-counter@library.tohoku.ac.jp
撮影:岡本真 2014年10月24日
114
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
コンピューター管理が当たり前になり、いまや図書館の検索における一線から
しりぞいた目録架。多くの館が廃棄するなかで、妙高市図書館では目録架をラッ
クとして再利用し、甦らせている。棚の部分を少し引き出し、本を立てかけたり
して面陳ラックとして使っているのだ。
目録架のラックは、通常の棚やラックとは違ったなんともいえない素朴さを醸
し出している。また学校図書館では理科教育の際にダーウィンの引き出しとして
使われることもある。かつての図書館を支えた功労者を、新たに図書館の日常の
中に組み込んでいるといえる。なお、沖縄市立図書館では目録架を記入台に転用
している。
File
275 妙高市図書館(新潟県)
目録架を展示架として活用
撮影:岡本真 2013年12月12日
■妙高市図書館
http://www.city.myoko.niigata.jp/introliblary/35.html
新潟県妙高市上町9-2
Tel:0255-72-9415 Fax:0255-72-9415 
E-mail:myoko_lib@extra.ocn.ne.jp
115
環
境
の
改
善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
書架から選んだ本を入れるためのブックバスケットを用意している図書館は多
い。 バスケットがあれば、たくさんの本を選んでも館内を快適に持ち運ぶことが
できる。このバスケット、多くの図書館がスーパーにあるものと同じものを用意
しているが、一つ難点がある。子どもが持つには大きすぎるのだ。
そこで多治見市図書館では、子ども用に小さなブックバスケットを用意してい
る。子ども用のブックバスケットは、子どもたちが本を選びに最も行くであろう
場所、「絵本コーナー」の付近に置くことで、選んだ本をすぐに入れて持ち運べる
ように配慮している。 小さなバスケットがあれば、子どもたち自身で本を選び、
借りることができる。小さな取り組みだが、図書館における子どもたちの自発的
な本との向き合い方を養っているともいえるだろう。
File
276 多治見市図書館(岐阜県)
子ども用のブックバスケット
撮影:岡本真 2014年10月31日
■多治見市図書館
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/
岐阜県多治見市豊岡町1-55
Tel:0572-22-1047 Fax:0572-24-6351
E-mail:toshokan@tajimi-bunka.or.jp
116
環
境
の
改
善
図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
地域の展覧会やイベントを知らせる華やかなポスターは、図書館に彩りを添え、
利用者の好奇心を刺激する。こういったイベントの広報には、ポスターと一緒に
チラシが用意されていることが多いが、館内ではポスターの掲示場所とチラシ
の配布場所が別々な場合が多い。しかし真庭市立図書館では、ポスターの下に封
筒の口を切ってつくった袋を貼り付け、そこにチラシを入れている。こうすれば、
ポスターで関心をもった利用者が、チラシを持ち帰ることができる。チラシ置き
場が散らからず、スペースの省力化が図れるという利点もあるだろう。
File
277 真庭市立久世図書館(岡山県)
ポスターの下に持ち帰り用フライヤー
撮影:岡本真 2014年5月19日
■真庭市立久世図書館
http://lib.city.maniwa.lg.jp/
岡山県真庭市鍋屋17-1
Tel:0867-42-7203 Fax:0867-42-7204 
E-mail:toshokan_ks@city.maniwa.lg.jp
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環
境
の
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
豊橋市中央図書館では、貸し借りをスムーズに行うために、貸出カウンターの
すぐ前に机を置き、その机の上面に貸出手続きの際の案内を張っている。案内
の内容は「バーコードのある面を表にして渡してほしい」という簡単なものだが、
利用者にとっても、図書館員にとっても時間の短縮になる。また貸出カウンター
の前に机を置くことで、貸出を待つ列を整理する導線ともなっている。利用者が
本をバッグに詰め、荷物を整理するのに便利だろう。小さなアナウンスにより手
早く貸し借りができ、スムーズに荷物を整理して帰れるという気持ちのよい流れ
がつくられている。
File
278 豊橋市中央図書館(愛知県)
簡単な掲示で貸し借りをスムーズに
撮影:嶋田綾子 2014年10月30日
■豊橋市中央図書館
http://www.library.toyohashi.aichi.jp/
愛知県豊橋市羽根井町48
Tel:0532-31-3131 Fax:0532-31-4254 
E-mail:admin@library.toyohashi.aichi.jp
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環
境
の
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
コーナー展示をする際に悩みのタネとなるのがネーミングだ。難しそう、深刻そう、
当事者と思われたくないといったイメージで、利用者が無関心にならないように、新
しい言葉で置き換えたり、軟らかい表現に置き換えたりといった工夫が大切になる
のだ。そこで幾つかの図書館での事例をまとめて紹介したい。
さいたま市立中央図書館では、障害者向けの本(点字図書・大活字本など)やパ
ンフレットを集めたコーナーを「バリアフリーサービス」に。由利本荘市立由利図
書館では、主に 10 代の若者をさす業界用語で、あらぬ方向に勘違いされやすい「ヤ
ングアダルト」を「U-20」に。横手市立横手図書館では、シニア向け情報(定年退職
後・セカンドライフ、年金生活のやりくり・介護の本・遺言書の書き方など)を集
めたコーナーを「悠々コーナー」に。にかほ市立図書館仁賀保分館では、メンタルや
体が疲れた時に読んでほしい本を集めたコーナーを「こころのビタミン」と名付け
ている。それぞれの館が、柔らかい名称に置き換えることで、利用者が立ち寄りや
すいコーナーになるよう配慮している。
File
279 さいたま市立中央図書館(埼玉県)ほか
名称の工夫
■さいたま市中央図書館 
http://www.lib.city.saitama.jp/
埼玉県さいたま市浦和区東高砂町11-1 
Tel:048-871-2100(代表) Fax:048-884-5500
さいたま市中央図書館 撮影:岡本真 2014年5月29日
119
環
境
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
音楽関連書籍や語学関連書籍には、音声資料として CD や DVD 付録のものが
増えている。特に語学分野では、音声資料の有無を、借りる際のポイントにして
いる人も多いという。そこで由利本荘市中央図書館では、このようなニーズに応
え、背表紙の下部分に「CD 付」もしくは「DVD 付」というラベルを貼っている。
こうすれば棚ざしの状態でも、その本が音声資料のある本かどうか、ひと目で分
かるだろう。もともとは現場の図書館員が分かるようにバーコードの脇に貼って
いたが、利用者の声から背表紙に張るように変更したという。 ラベルの位置を一
定の場所に揃えているのも、利用者目線に立ったひと手間である。
File
280 由利本荘市中央図書館(秋田県)
CD・DVD付属の資料にラベルを貼り付け
提供:由利本荘市中央図書館
■由利本荘市中央図書館
http://www.city.yurihonjo.akita.jp/honjo/tosyo/index.htm
秋田県由利本荘市東町15
Tel:0184-22-4900 Fax:0184-22-2505
E-mail:hon-tosyo@city.yurihonjo.akita.jp
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環
境
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
図書館は地域で行われるイベントなど催事の情報を掲示する場として重宝され
るが、その分、チラシ置き場は常に大量のチラシがところ狭しと置かれ、結果、利
用者の目に止まらないケースもある。そこで津山市立図書館では、チラシの上部
に穴を開け、フックを通してポスターのように掲示している。このようにすれば
見た目も美しく、スペースの省力化も図れるうえに、どんなチラシがあるかがひ
と目で分かるだろう。
File
281 津山市立図書館(岡山県) 
美しく、分かりやすいチラシの掲示
撮影:岡本真 2013年12月4日
■津山市立図書館
http://tsuyamalib.tvt.ne.jp/
岡山県津山市新魚町 アルネ津山4階
Tel:0868-24-2919 Fax:0868-24-3529 
E-mail:toshokan@tvt.ne.jp
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環
境
の
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
地域の展覧会ポスターから行政の広報ポスターまで、さまざまな掲示物が図
書館には集まる。これらの掲示物を利用者の目に届く場所に張り、情報提供を行
うのも図書館の大切な仕事の一つだ。丁寧で整然とした掲示は情報に対する関
心を高め、図書館そのものを華やかにみせる効果がある。多治見市図書館の掲示
は、ポスターの頭や余白を丁寧に揃え、美しい壁面をつくりだしている。何気な
いことだが、こういった管理を徹底させることで、ポスターの情報が見やすくな
り、図書館全体に整然とした印象を与えることができるのだ。
File
282 多治見市図書館(岐阜県)
整然とした張りもの管理
提供:多治見市図書館
■多治見市図書館
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/
岐阜県多治見市豊岡町1-55
Tel:0572-22-1047 Fax:0572-24-6351
E-mail:toshokan@tajimi-bunka.or.jp
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環
境
の
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
身延町立図書館では、保存期間の切れた英字新聞をブックカバーとして再活用
し、利用者にプレゼントしている。簡単につくれるブックカバーだが、ちょっと
した工夫がされている。新聞の印刷面がこすれて本を汚さないように、トレーシ
ングペーパーを重ねているのだ。古新聞の活用法としては、多治見市図書館の事
例[File084]のエコバッグをつくる事例を紹介したが、この試みも手軽でおしゃ
れな気の利いたサービスである。
File
283 身延町立図書館(山梨県)
廃棄した新聞でブックカバー
■身延町立図書館
http://www3.town.minobu.lg.jp/lib/
山梨県身延町波木井407
Tel:0556-62-2141 Fax:0556-62-3343 
E-mail:toshokan@town.minobu.lg.jp
提供:身延町立図書館
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環
境
の
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善
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
福袋に本を入れ、タイトルが分からない状態で利用者に本を貸出す「図書館福
袋」は、普段は手に取らないような本との出会いを生みだせるため、幾つかの図
書館で行われている。本誌創刊号では、その年の話題書を福袋に詰めた蔵王町立
図書館での事例[File065]を紹介したが、今回、紹介する多治見市図書館の事例で
注目したいのは、福袋のほうである。
同館では、館内での保存期間が終了した新聞を使ってエコバッグをつくり、そ
のバッグを福袋にしているのだ。廃棄される新聞を図書館が率先して再利用する
ことで、市民の環境へのリテラシーを上げることにもつながるだろう。なお、新
聞エコバッグのつくり方は同館の所蔵資料にあり、「図書館福袋」の際に展示して
いる。
File
284 多治見市図書館(岐阜県)
新聞エコバッグで福袋
■多治見市図書館
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/
岐阜県多治見市豊岡町1-55
Tel:0572-22-1047 Fax:0572-24-6351
E-mail:toshokan@tajimi-bunka.or.jp
提供:多治見市図書館
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環
境
の
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
IC タグシステムの活用が進み、導入の機会が増えている自動貸出装置。津山市
立図書館でも 2010 年に行ったリニューアルオープンの際に、IC タグシステムを
導入しているが、使い方が分からないままの利用者も少なくない。そこで津山市
立図書館では、貸出機の側に細かな説明展示を張りだしているのだが、その説明
展示が非常に明快である。利用手順ごとに写真で撮影し、その写真にキャプショ
ンを付けて使い方を説明しているのだ。このような説明は、デザイン的には工夫
の余地があるが、ファイルに手順書入れて説明するよりも分かりやすく、利用の
ハードルを下げるものとなっている。
File
285 津山市立図書館(岡山県)
自動貸出機の分かりやすい説明
撮影:岡本真 2013年12月4日
■津山市立図書館
http://tsuyamalib.tvt.ne.jp/
岡山県津山市新魚町 アルネ津山4階
Tel:0868-24-2919 Fax:0868-24-3529 
E-mail:toshokan@tvt.ne.jp
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工
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
撮影:嶋田綾子 2013年7月27日
図書館員の仕事ぶりが直に見られるためなのか、それともめぼしい本を見つけ
たいという好奇心からか、意外に利用者の目線が集中するのが作業用ブックト
ラックだ。横浜市泉図書館では、このようなブックトラックへの注目を利用して、
その側面に「図書館からのお知らせ」を掲示している。どの館でも館内の掲示板
には告知を張っているが、利用者の中には掲示板など一切見ない層も多いだろう。
そこで移動式のブックトラックに告知を掲示することで、普段は掲示板を見ない
層にもアピールが可能となった。
また、子どものために絵本を借りに来た親が、絵本コーナーに置かれた作業用
ブックトラックを見て文学講座の開催に気づくなど、掲示板とは違った意外な出
会いも期待できる。同館ではキャンペーンやイベントがあるごとに掲示内容を張
り替え、利用者を飽きさせないように工夫している。
File
286 横浜市泉図書館(神奈川県)
作業用ブックトラックでPR
■横浜市泉図書館
http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/
神奈川県横浜市泉区和泉町6207-5
Tel:045-801-2251 Fax:045-801-2256 
E-mail: ky-libkocho17@city.yokohama.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
炭坑の町・飯塚のぼた山をイメージした飯塚市立飯塚図書館のマスコットキャ
ラクター「ぼたぼん」は、その出自が町の歴史を表現しているゆるキャラだ。利
用者投票で決定したぼたぼんは、とにかく愛されている。図書館職員お手製のぼ
たぼんのぬいぐるみを使った展示や、子どもたちに親しんでもらうための絵描き
歌、オリジナルグッズ、そして図書館での配布物には全て「ぼたぼん」をプリント
し、ぼたぼんのお誕生日は利用者と一緒にお祝いまでしている。
マスコットキャラクターをつくったものの、その後の活用にいたってない館も
多いなか、愛情のある図書館ブランディングを感じさせてくれる事例だ。
File
287 飯塚市立飯塚図書館(福岡県) 
キャラクター普及のための取り組み
撮影:岡本真 2013年7月27日撮影:岡本真 2013年7月27日
■飯塚市立飯塚図書館
http://www.iizuka-library.jp/
福岡県飯塚市飯塚14-67 飯塚コミュニティセンター1階
Tel:0948-22-5552 Fax:0948-22-5770 
E-mail:info@iizuka-library.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
路線バスや電車などが通らない地域の交通を補うコミュニティバスは、病院や
市役所など公共性の高い施設を巡回する地域の足ともいうべき存在だ。浦安市
立図書館では、そんな市民の生活に寄り添うコミュニティバスの車内に PR ポス
ターを張り、図書館の利用を促している。ポスターには分館も含めた 4 館の図書
館が紹介されており、どの停留所で降りれば各図書館にたどり着けるのかを知ら
せている。
「おさんぽバス」と名付けられた浦安市のコミュニティバスの巡回ルートには、
停車場に「中央図書館」があり、下車 1 分で中央図書館に着く。また、利用者が車
内のポスターを見たことを伝えると、図書館からプレゼントがもらえるという
サービスも行っている。自分の足で図書館に行くのが難しい利用者層に向けたよ
いアピールである。
File
288 浦安市立中央図書館(千葉県)
コミュニティバスで図書館案内
撮影:嶋田綾子 2013年10月11日
■浦安市立中央図書館
http://library.city.urayasu.chiba.jp/
千葉県浦安市猫実1-2-1
Tel:047-352-4646
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
岩手県立図書館では子どもたちの夏休みなどに合わせて、図書館クイズラリー
を実施している。図書館員が作成したクイズラリーでは、クイズの答えやヒント
を探しながら館内にある各コーナーを回ることで、図書館のことを知ることがで
きる仕立てになっている。クイズには「雑誌コーナーにある動物の表紙の雑誌名
はなんでしょう?」といった、子どもたちが普段は足を踏み入れることのない一
般書コーナーにも行けるような質問も積極的に用意されている。またこのクイズ
ラリーは、子どもたち単独ではなく、保護者も一緒に回るケースが多いため、大
人側にも新たな発見があるようだ。
File
289 岩手県立図書館(岩手県)
図書館クイズラリー
提供:岩手県立図書館
■岩手県立図書館
https://www.library.pref.iwate.jp/
岩手県盛岡市盛岡駅西通1-7-1
Tel:019-606-1730 Fax:019-606-1731
E-mail:homepage@library.pref.iwate.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
神奈川県立川崎図書館(公式サイトより)
神奈川県立川崎図書館では、利用者に遊び心をもって図書館のことを知っても
らうために、図書館を探検するためのすごろくを作成し、配布している。名付け
て「図書館探検ツアーすごろく」は司書の手でつくられており、各コマで館内にあ
るコーナーやサービスの解説をしているほか、Tips(豆知識)も提供しており、す
ごろくを楽しみながら図書館のことを知ることができるように工夫がされている。
なお名古屋大学附属図書館でも「ツアーすごろく」が行われているが、同館の
すごろくは近隣の図書館を案内するものとなっており、近隣の図書館を普段から
知ってもらうことで、探している資料が大学図書館で見つからなかった際に足を
伸ばしてもらうための取り組みだ。このような図書館を使ったすごろくは配布の
みで行われているが、図書館のイベントとして実施しても面白いだろう。
File
290 神奈川県立川崎図書館(神奈川県)
図書館探検ツアーすごろく
■神奈川県立川崎図書館
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/
神奈川県川崎市川崎区富士見2-1-4
Tel:044-233-4537(代表) Fax:044-210-1146
■参考情報
・SiL 34号〈http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki../materials/lib_news34.pdf〉
・KANTO No.9〈 http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/koho/kanto/newsletter9.pdf〉
■名古屋大学附属図書館
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/
愛知県名古屋市千種区不老町
Tel:052-789-3678 Fax:052-789-3694
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
撮影:岡本真 2013年8月28日 撮影:岡本真 2013年8月28日
図書館で行われるイベントは、そのイベントが終わると、開催されたことすら
知られないケースも多い。そこで、神埼市立図書館では、イベントの様子を撮影
し、写真をファイリングして館内で展示するという取り組みをしている。自館の
イベントをコンテンツとしてアーカイブしていくことも重要であるが、アーカイ
ブされたイベントの情報を見ることで、図書館のイベントに興味をもってもらう
ことができる。定期的に開催しているイベントであれば、過去のイベントの様子
を知ることで、次の機会には参加したいという利用者の思いにつなげる PR にも
つながるだろう。
File
291 神埼市立図書館(佐賀県)
図書館の活動をファイリングして展示
■神埼市立図書館
http://library.kanzaki.ed.jp/
佐賀県神埼市神埼町鶴3388-5
Tel:0952-53-2325 
E-mail:library01@kanzaki.ed.jp
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夫
図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
撮影:嶋田綾子 2014年10月30日 撮影:嶋田綾子 2014年10月30日
豊橋市中央図書館では、利用者の目線の高さにくる書架スペースに「閉架書庫
のこと」としたお知らせを置いている。こうすることで書庫の存在を知らせ、探
している本がない場合でもカウンターに問い合わせてもらうことを促しているの
だ。
また館内にあるチラシ台には、図書館の最新情報が公式ブログや Twitter で手
に入ることを知らせる案内を置くなど、自館で行っているサービスを館内の要所
要所に張りだしている。図書館が行っているさまざまなサービスは、カウンター
に利用案内を置くだけでは伝わりにくい。この事例のように PR の露出を高める
工夫が重要である。
File
292 豊橋市中央図書館(愛知県)
サービスの案内を要所要所に掲示
■豊橋市中央図書館
http://www.library.toyohashi.aichi.jp/
愛知県豊橋市羽根井町48
Tel:0532-31-3131 Fax:0532-31-4254
E-mail:admin@library.toyohashi.aichi.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
新館建設中の北見市立中央図書館では、図書館の入り口に「中央図書館が新し
くなります」というキャプションとともに、新館の図面を掲示している。さらに
図面を掲示しているすぐ側に、建設事業計画の事業概要などの計画書をファイリ
ングし、利用者が目を通すことができる状態で置いている。事前告知を徹底する
ことで、新しい図書館への期待を高め、利用を促す試みだ。新館が開館するにあ
たり、現図書館は移転準備のために長期にわたり休館する。入念な告知には、事
前に新図書館について知ってもらうことで、休館に対して理解を求めるという意
図もあるのだろう。
File
293 北見市立中央図書館(北海道)
新館計画を館内で掲示
■北見市立中央図書館
https://lib.city.kitami.lg.jp/
北海道北見市常盤町2-1-67
Tel:0157-23-2074
撮影:嶋田綾子 2014年10月23日撮影:嶋田綾子 2014年10月23日
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
長岡市立中央図書館では、図書館の条例や運営規則が記された行政資料を、利
用者が閲覧しやすいようにファイリングし、エントランスのすぐ側に置いている。
こういった行政資料は、通常はほかの地域資料と同様に書架に置かれ、利用者が
すぐ目に付くようなところには置かれていない。
同館があえて利用者の目に止まる場所に置いているのは、図書館のミッション
を利用者に PR する取り組みとして意義深い。また長岡市では分館を民間会社が
運営しているため、図書館のミッションを市民に説明するという義務は、中央図
書館が一手に担っている。そのため同館の積極的な情報提供は、市民への説明責
任をはたす意味でも重要な取り組みである。
File
294 長岡市立中央図書館(新潟県)
図書館ミッションのPR
撮影:嶋田綾子 2014年5月3日
■長岡市立中央図書館
https://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市学校町1-2-2
Tel:0258-32-0658 Fax:0258-32-0664 
E-mail:lib@city.nagaoka.niigata.jp
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
視覚と密接に関わる読書だが、視覚に障害があっても点字図書や録音図書、対
面読書などさまざな方法で読書を楽しむことができる。図書館でもこのような
サービスを行っていることが多いが、なかなか知られていな場合が多い。そこで
多治見市図書館では、図書館で提供している視覚障害者向けサービスをポスター
にして、館内だけではなく市内の眼科待合室や患者図書室、福祉センターなどで
掲示し、当事者はもちろん、介護者にとって目に付きやすい場所に張りだすこと
で認知を図っている。このポスターは、白黒反転にし、イラストを使うなど遠目
にもすぐ分かるように工夫している。
File
295 多治見市図書館(岐阜県)
視覚障害者サービスの一般向けポスター
撮影:岡本真 2014年10月31日
■多治見市図書館
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/
岐阜県多治見市豊岡町1-55
Tel:0572-22-1047 Fax:0572-24-6351 
E-mail:toshokan@tajimi-bunka.or.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
有川浩の『図書館戦争』(2006年、メディアワークス)で広く知られることになっ
た「図書館の自由に関する宣言」は、日本における検閲の歴史と深く結びついて
いる。かつて図書館には利用者がどの本を読んだのか、その貸出の記録をとる閲
覧証というものが存在したが、豊橋市図書館(当時・豊橋市立図書館)では、こ
の閲覧証の提出を警察から求められた際、図書館はどう対応すべきかをめぐって
議論が起きたという。そして「図書館の自由に関する宣言」は、この議論が社会に
広ったことによって生まれた宣言なのだという。
そこで同館では、自分たちの図書館とゆかりの深いその宣言の経緯と精神を掲
げる詳細なパネルととともに、この宣言にインスピレーションをうけて生まれた
作品『図書館戦争』を館内に掲示し、利用者の目に触れるようにしている。このよ
うな取り組みは、民主主義における図書館の重要な役割について市民に喚起し続
けるだろう。
File
296 豊橋市中央図書館(愛知県)
「図書館の自由宣言」の詳細パネル
撮影:岡本真 2014年10月30日
■豊橋市中央図書館
http://www.library.toyohashi.aichi.jp/
愛知県豊橋市羽根井町48
Tel:0532-31-3131 Fax:0532-31-4254
E-mail:admin@library.toyohashi.aichi.jp
■参考情報
・映画「図書館戦争」タイアップ企画コーナー「図書館と自由」 
http://www.library.toyohashi.aichi.jp/oshirase/sonota/h25tosyokansensou.htm
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
さいたま市中央図書館のレファレンスコーナーには、オンラインで使える有益
な情報源として、判例や法令を調べるためのデータベースの案内を張りだしてい
る。調べ物をしに来た利用者に、紙だけではなくオンラインも有効的に使っても
らうための、時代に即した工夫といえる。
図書館というと紙のイメージが強いため、インターネットに慣れた利用者でも、
図書館に来ると本の資料にあたってしまうことが多い。そこでレファレンス資料
を配架している場所に、関連するオンラインデータベースの案内を掲示すること
で、積極的な情報提供を行っているのだ。
仙台市民図書館では、図書館で使えるオンラインサービスや、そのサービスで
得られる情報を記したポスターを館内に掲げて紹介している。
File
297 さいたま市中央図書館(埼玉県)・仙台市民図書館(宮城県)
オンラインに誘導するレファレンスコーナー
仙台市民図書館
撮影:嶋田綾子 2013年11月28日
さいたま市中央図書館
撮影:岡本真 2014年5月29日
■さいたま市中央図書館
http://www.lib.city.saitama.jp/
埼玉県さいたま市浦和区東高砂町11-1
Tel:048-871-2100(代表) Fax:048-884-5500
■仙台市民図書館
http://lib-www.smt.city.sendai.jp/
宮城県仙台市青葉区春日町2-1
Tel:022-261-1585 Fax:022-213-3524 
E-mail:tosyokan@smt.city.sendai.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
名古屋大学附属図書館の取り組み[File268]と同様に、紫波町図書館では PC の
壁紙にちょっとした工夫をしている。実体が見えないため認知の機会が低いオン
ラインデータベースの案内を PC の壁紙にすることで、PR するとともに、利用を
促しているのだ。
壁紙の案内どおりにカウンターに申し込みをすると、その PC で案内されてい
るデータベースが利用でき、農業関係の雑誌記事、新聞記事、資料などにアクセ
スすることができる。利用者に有用であろうサービスを、まずは知ってもらうた
めの努力が感じられる取り組みである。
File
298 紫波町図書館(岩手県)
オンラインデータベースの案内をPCの壁紙に
■紫波町図書館
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/
岩手県紫波郡紫波町紫波中央駅前2-3-3オガールプラザ中央棟1階
Tel:019-671-3746 Fax:019-672-3618
撮影:岡本真 2014年4月16日
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図書館100連発3  ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
展示を告知するポスターは通常は A4、大きくても A3 サイズのものを自館で印
刷するのが一般的だ。しかし長岡市立中央図書館では、大型ポスターをその都度
作成している。大きなポスターを使うことで利用者の注目を集め、図書館全体の
雰囲気を華やかなものにしている。
大きなポスターをつくる設備・費用がないという館も多いだろうが、市役所な
どの行政施設が大型プリントが可能な設備を保有していることもある。諦めるま
えに問い合わせて、利用の可否について聞いてみてもよいのではないだろうか。
施設によっては気軽に使わせてくれるところもあるはずだ。
File
299 長岡市立中央図書館(新潟県)
テーマ展示に大きなポスター
撮影:岡本真 2014年5月3日
■長岡市立中央図書館
https://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/
新潟県長岡市学校町1-2-2
Tel:0258-32-0658 Fax:0258-32-0664 
E-mail:lib@city.nagaoka.niigata.jp
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図書館100連発3 ライブラリー・リソース・ガイド 2014年 秋号
提供:宮崎県立図書館
図書館のレファレンスコーナーは、デスクで利用者からの問い合わせを待つこ
とが多いが、待っているだけでは利用者はなかなか来ないものである。そこで宮
崎県立図書館では、レファレンスをテーマにした展示を行い、レファレンスサー
ビスを PR している。
地域に関することや生活の疑問など、過去に利用者から寄せられた疑問を張り
だし、その疑問に答えるために職員が使った資料も展示している。このような展
示は、図書館が地域の疑問に答えられるサービス機関であることをアピールす
ると同時に、普段は目にしない資料群をいかに活用するか、その方法も提案する。
攻めのサービスに転換するよい事例である。
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300 宮崎県立図書館(宮崎県)
レファレンス事例を展示
■宮崎県立図書館
http://www.lib.pref.miyazaki.jp/
宮崎県宮崎市船塚3-210-1
Tel:0985-29-2911(代表) 
E-mail:ryokuin@lib.pref.miyazaki.lg.jp
140 司書名鑑 No.5  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
僕は京都の出身です。同志社大学の工学部でコンピュータサイエンスを研究するとこ
ろに入って、修士までいました。そのあと国立情報学研究所(NII)に博士課程(総合研究
大学院大学・情報学専攻)ができたばかりのタイミングで進学しました。
学部 4 年生の時は、アルゴリズムの研究をしていました。コンピュータ上に擬似的な
生物を発生させ、競争して勝ち残ったものを掛け合わせるというような進化論に基づい
て数学的な問題を解く研究をしていたのですが、どうも自分の性には合わない。一点を
突き詰めていくようなことが自分に向いていないと思ったんです。それよりも、新しい
仕掛けをつくって人を巻き込んで世の中を元気にするのがどうも好きなことがだんだん
分かってきました。そこで修士になるときに、日常生活の中でどういう情報を与えると、
その人がよい行動ができるかというテーマに思い切って変えました。これは博士での最
初のテーマとしても継続しています。
博士課程にいたのは 2002 年から 2005 年ですが、その頃はまさに Web が大きく変化
してきた時期です。初期の GREE や mixi のようなソーシャルネットワークが出てきたり、
Web 上で情報を共有し合ったり、コミュニケーションしたりするのが一般的になり始め
たときだったので、ブログや SNS などの道具をうまく使うことによって、どうすれば情
報を簡単に集めたり、発信しやすくするのかといったことを考えたくなったんです。
博士の 2 年目くらいにそういうテーマに絞ろうと考えました。それは Web サービス
やソフトウェアありきのコミュニケーションなので、実際にものをつくれないといけな
い。そこで経済産業省が募集していた未踏ソフトウェア創造事業に応募して、開発資金
をもらって友人とプロジェクトを立ち上げました。ブログ全盛の時代に合っていたのか、
▶Webが人々の生活を変える
司書名鑑 No.5
大向一輝さん
国立情報学研究所
司書名鑑 5 回目となる今回は国立情報学研究所の大向さんをご紹介します。大向さんは、
情報学を専門にご研究される傍ら、図書館の学術情報流通を支えるシステム「CiNii」の
開発に関わっています。学術情報流通と図書館についてお話をうかがいました。
141司書名鑑 No.5  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
Directory of librarian
つくったRSSリーダーはたくさん使ってもらいました。自分たちのテクノロジーが、人々
のコミュニケーションを変えるということが現実に分かってきたこともあり、その結果
を論文にまとめて博士号を取りました。またプロジェクトの成果をもとに会社を立ち上
げ、それは現在も続いています。
博士 3 年目で就活を始めた頃、最初に公募が出た NII を受けました。NII は年に若干名
の採用なので受かる気もしなかったのですが、Web の研究をしていたり、会社をつくっ
て実際にビジネスをしていたことなどの経歴が気に入られたのか、採用されました。
就職しても、今までと同じくブログや SNS の研究を続けることに変わりはないし、今
でもオープンデータの仕事などは、その延長線上にあります。一方で、僕が就職した
2005 年は、CiNii が正式版になった年です。正直にいうと、その時はまだ CiNii について
ほとんど知りませんでした。就職して、会議に出るようになって初めて NII の研究面では
ない、サービス面を知るようになったんですが、ふと思ったのは、外の人は Web の研究
をしている僕が NII にいるのだから、当然サービスにも関わっていると思うはずだろう。
でもそのわりには、NII の Web サービスはあまり格好よく見えないのではないかと。今
なら、その意図も分からなくはないですが、例えば検索ボックスが幾つも並んでいるな
んて、周りの Web サービスが急速に洗練されている中でユーザーに受け入れられないの
ではと思っていました。
僕は Web の研究もしているし、ビジネスもしているので、どうすれば今のユーザーの
行動に合わせることができるのか、常々考えています。そこでシステムとか、デザインに
ついてもトレンドを伝えるなどして、何かと口を挟んでいたら、実際に手を入れる仕事
を頼まれました。ちょうどその頃、Google が NII のサービスを検索対象にしたいと言っ
てきており、それに対してどういう方針を取るのかというのが議論になっていました。
2005、6 年当時の Google というのは、破竹の勢いでしたから、変に取り込まれたくない
といった意見から、保守的な対応を取ろうとまとまりかけていました。でも、僕はそれ
はいくらなんでも違うだろうと思いました。コンテンツをつくっているのは図書館や NII
だし、Google と関わったからといって、そうしたコンテンツの一切が消え去るわけでは
▶NIIに就職して研究者の立場から現場に関わる
142 司書名鑑 No.5  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
ありません。逆にいえば、せっかくつくってきたデータをいろいろな人に見せるための
いいきっかけなのではないかと思ったんです。開かれた Web に向き合わないのはおか
しい、Google とはきちんと連携していくべきだというような内容の檄文を書いたところ、
それを受けて方針が決まり、Google を検索すれば CiNii がヒットするような状況になり
ました。これが 2007 年 4 月からです。
その結果、アクセス数がものすごく増えて、システムが耐えられず、平日の昼 2 時く
らいになると重くなってアクセスできないということが 1、2 年続きました。その頃はま
だシステムの内部には関わっていなくて、サービスとはこうあるべきだ、というような
理念の部分に関わっていたのですが、現場の人たちから見ればとんでもないという状態
だったんじゃないでしょうか。上手くいけばいったなりに苦しいことがありますね。使
われることは正しいのですが、それを裏付けるシステムづくりと併せて足並みが揃わ
ないと、絵に描いた餅になってしまいます。そこで、2009 年のシステム入れ替えに向け、
一から CiNii をつくり直す仕事を任されるようになりました。つくるほうの仕事に関わる
ようになって、限られた予算の中で大量のアクセスに耐えられるシステムの設計、デザ
インの一新、データをたくさん使ってもらうための API など、だいたい 3 本柱くらいで
考えて、2009 年 4 月に新しい CiNii をリリースしました。
よくよく考えると、2005 年に最初の CiNii から 4 年でつくり直したとか、あまりない
話ですね。それなりにリスクのある仕事であったのは確かです。それを Web の研究者で
はあるけれど、大きなシステムをつくった実績のない人に任せたのは偉いな、と今でも
思います。
紙の論文を電子化して Web で提供するという CiNii のコンセプトは、僕が考えたわけ
ではありません。それは当然のことながらこれまでの図書館の人々、NII の人々が考えて
きたことです。僕は単にその考えを引き継いただけで、何か大きなイノベーションを起
こしたわけではなく、「提供の仕方」を変えたにすぎません。だけど、ユーザーの要求す
るものが時とともに変わっていく中で、その提供の仕方がサービスのよしあしを決めて
しまうのもまた確かです。特に 2000 年代半ばから後半は人々の Web に対する考えがガ
ラッと変わり、Web なしには生活できないといったように変わってきた時期です。そう
143司書名鑑 No.5  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
した時期に、自分の考えていたことや研究してきたことをサービスにきちんと投入でき
たら何が起こるのか、個人としても興味がありました。実世界に影響を与えるサービス
をつくる難しさと面白さを知ることができましたね。
難しさというのは、あらゆる分野の文献があると、研究を始めたばかりの学生から
その分野のプロまで、多種多様なユーザーが使うということです。しかし、基本的には
Web サービスのインターフェイスは一つしか持てないので、ユーザーごとの柔軟な対応
はできません。機能を細かくし始めると初心者ユーザーが分からないとか、初心者ユー
ザーにばかり目を向けていると研究の現場で使えないと言われてしまうわけです。そこ
のバランスを最終的には一つの画面にまとめ上げなければなりません。ソフトウェアな
ので選択肢は無限にあるわけですが、「こういう考えのもとに、この画面を提供していま
す」ということはきちんと答えられなければならない。
Web サービスというのは、実際に使っているユーザーの姿を見ることはできません。
ユーザーが何に困っているのか、アクセスログから想像したり、Twitter の意見を観察し
ながら、できるだけ潜在的なニーズにも応えたいと思っています。相異なる要求がある
なかで、できるだけシンプルに、データを多くの人が活用できる自由度を担保する方向
性でサービスを提供しようという方針を決めています。もちろん今はその方向性が正し
かったとしても、時代とともに変わってくるかもしれません。ただ、世の中に受け入れら
れているものをきちんと受け止めながら、先回りしたり、寄り添ったりしていけば、提供
するものは支持され続けるはずだとは思っています。
CiNii に対してはとても楽しく、やりがいをもって関わっていますが、その過程でサー
ビスに必要なデータをどうやってつくるのかといったところに図書館の真髄を見た思い
がします。「図書館の Web サービスはなっていない」とよく言われますが、そのサービス
を提供するためのデータは誰がつくっているかというと、やはり図書館の人たちが長い
年月をかけてつくり上げてきたものです。これからの僕の仕事として、表には出てこな
いデータづくりの仕組みに、どうやって Web とか IT とかの成果をきちんと入れてもの
Directory of librarian
▶サービスをつくる難しさ
144 司書名鑑 No.5  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
ごとをよくしていくかというところまでやらないと、表側の楽しいところだけやってさ
よならというのは無責任すぎるなと思うわけです。それはまさに 2009 年に CiNii を出し
た後の話として、自分の中で全然答えが出せていないけれど、テーマにしていることです。
大前提として、データをきれいにしたり、集めたりという仕事は決してなくなること
はありません。ただ「誰が」「どのように」担うのか、というのはすごい勢いで変わってい
くはずだと思います。今までは図書館がそれを一手に引き受けて、人力でやっていまし
たが、それを自動化していく。自動化の不備をユーザーが指摘して直すような仕組みを
つくる。あるいは、出版社の人などが出版の段階からきれいなデータをつくっていく、と
いうことも増えていきます。図書館員だけがやってきたことが、その点では崩されてい
るようにも見えますが、俯瞰してみれば、複雑化して、なおかつ中身もリッチになる状況
で、しかもユーザーに対しては一定以上のクオリティーを担保しなければならないとき
に、それぞれの役割を持っている人たちを、図書館員は指揮者のように束ねて結果を出
す、というように仕事自体が変わってくるのだと思います。
情報産業というのは、これから数十年単位で成長分野なはずで、図書館としては追い
風だと思って取り組まなければならないと思います。情報に関わる人は今後減るはずが
ないのだから、リーダーシップを取ったり、知識を深めたりということが必要なんじゃ
ないかと思います。そういう意味では、図書館員の未来は明るいと思いますよ。今まで
の図書館がそのまま残り続けるのかというところはよく分からないですが、本が実体を
伴っている間はそれを提供する場所は必要だし、そういう意味では図書館はあり続ける
のでしょう。一方で、本だけではなく、音楽、動画、Web のソーシャルな情報などを広く
捉えることができる人がいたとしたら、多くの人は信頼を寄せるだろうと思います。
今までは知識を伝えていくのに最も効率のよい手段が本であったと思うし、今後も有
力な手段の一つではあると思いますが、これからの社会において、本以外にも専門的な
知識があらゆるかたちで生まれてくるのならば、それらを捉えていく仕事があると思い
ます。本以外の媒体から知識が出てくるときに、それらを積極的に集めていかなければ
▶CiNiiに関わって見えてきたこと
145司書名鑑 No.5  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
ならないし、ファシリテーター役として、多様な専門家コミュニティーを引き合わせる
能力というのも必要になるのではないでしょうか。もちろん、全員がそのスキルを持つ
必要はないけれど、ライブラリアン全体のスキルセットとしては、情報を整理する能力
とか、コミュニティーを引き合わせる能力、新しく出てきた大事そうだけどよく分から
ないものを考えていく能力など、そういういろいろなスキルを持った人が寄り集まって、
「我々はライブラリアンである」と社会に示していくことに対しては、リスペクトが得ら
れるだろうと思います。
Web のおかげで人生の方向が決まった感があり、Web に感謝してもしきれないので、
その感謝の気持ちをどう表すかというときに、自分が関わる対象を「Web っぽくする」
ということをいろいろなところでやってきたいと思います。今だと、図書館とかライブ
ラリーを Web 風にするということですが、政府や自治体をオープンデータで Web 風に
するとか。実際にかたちにして伝えながら、「それはいいね」と言ってもらうように活動
していきたい。研究活動そのものがもっと Web っぽくならないかというのも重要です。
「Web の研究をすること」と、「研究が Web っぽい」のは違う話で、例えば人文科学だっ
てもっと Web っぽいやり方はあると思います。関わったものすべてを Web っぽくする
のが僕のライフワークであって、Web のおかげでいいことがあったと実感してもらえる
ようにしていきたいな、と思っています。
── 図書館の根幹をなすシステムを支える仕事・研究をされている大向さん。情報産業
を支えるライブラリアンの未来は明るいと、力強い言葉をありがとうございました。
(インタビューアー:嶋田綾子)
Directory of librarian
▶個人としての将来
大向一輝(おおむかい・いっき)
国立情報学研究所 
東京都千代田区一ツ橋2-1-2 Tel:03-4212-2000(代表)
146 羊の図書館めぐり  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
147羊の図書館めぐり  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
148 ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・
ガイド株式会社の最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめてい
ます。各種業務依頼はお気軽にご相談ください。
2014 年 11 月 2 日(日)∼ 11 月 8 日(土)にかけて開催された第 16 回図書館総合展
に出展し、同時に運営委員会への参画企業として運営支援を行いました。弊社としては
5 回目となる出展でしたが、今回は「ひろがる図書館−<学び×コミュニケーション>が
つくる新たな環境−」をテーマに、共同ブースを展開し、株式会社アイキューム、株式会
社 ATR Creative、株式会社 NTT ドコモ(gacco)、オーマ株式会社(READYFOR?)、公益社
団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)、株式会社ネットアドバンス、リブライズ
合同会社、特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ(LODI)の
計8社と合同出展しました。また、自社主催フォーラムとして、第2回ARGフォーラム「こ
れからの図書館のつくりかた−新著での議論を軸に」を開催しました。
なお、運営協力委員としては、「神奈川の県立図書館を考える会第 6 回政策提言シンポ
ジウム」「図書館×まちづくり を語ろう!」「共に考える国立国会図書館の未来」「首長が
語る地方行政の現状と図書館への期待 Vol.3」「広がりを見せる図書館総合展地方展開 
日本の図書館は地方が主役」などのフォーラム開催を企画・実施したほか、書店 B&B の
初出展の支援も行いました。
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
業務実績 定期報告
第16回 図書館総合展に出展&運営支援
149ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
弊社が事務局を務める ARG Web インテリジェンスとインタラクション研究会の第 5
回研究会、並びに第 2 回ステージ発表を 2014 年 11 月 21 日(金)∼ 11 月 23 日(日)に
かけて、東京都内で開催しました。招待講演として中山浩太郎・東京大学の知の構造化
センター特任講師に「Deep Learning の実装」と題してレクチャーしていただき、また合
計 25 本の研究発表が行われました。参加者も 100 名以上と過去最高を記録しています。
また、第 2 回ステージ発表の枠内で行われた徹底討論「大学教員から見た『企業と大学
の蜜月な関係』とは?」では、弊社代表の岡本が司会を務めました。なお、次回研究会は
2015 年の 6 月を予定しています。
2014 年 9 月 13 日(土)に東京都内で図書館スタッフ株式会社のリーダー研修を受託
実施しました。本研修では、同社で業務リーダーを務める方々に対して、ミニレクチャー
を行ったうえで、研修の内容をそれぞれの職場に持ち帰り、どのように共有するかにつ
いてブレインライティングシートを用いたワークショップを行いました。
弊社ではこのようなスタッフ研修の受託実施を行っていますので、企画段階からお気
軽にご相談ください。なお、自治体や図書館からのご依頼の場合、ご予算などもフレキシ
ブルに対応いたします。
ARG 第5回Webインテリジェンスとインタラクション研究会を開催
図書館スタッフ株式会社のリーダー研修を受託実施
150 ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
東日本大震災で被災し、現在は仮設の図書館で運営されている宮城県の名取市図書館
が実施した「ライブラリーミーティング・ヤングセッション」の開催を支援しました。現
在、名取市図書館は震災復興の一環として新図書館の整備が進められており、このセッ
ションでは主に高校生が新しい図書館に求める要件を探るためにワークショップを実施
しました。講師としてアイデアプラントの代表であり、ブレインライティングシートの
生みの親である石井力重氏を招き、様々なワークショップ手法を通して、未来の名取市
図書館像を描き出しました。
株式会社ジー・サーチが運営する研究者向け研究助成情報サイト COLABORY(コラボ
リー)のインタビュー記事「研究の現場で聞いてみた !!!」を企画・制作しました。このイ
名取市図書館「ライブラリーミーティング・ヤングセッション」の開催を支援
研究者向け研究助成情報サイトCOLABORYのインタビュー記事を企画・制作
151ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
ンタビューは、研究者や研究支援者に対して、実際に COLABORY をご利用いただき、忌
憚のないご意見を頂戴するものです。弊社では本記事の企画から取材・構成までを一式
担当しました。
WebDB Forum 2014(第 7 回 Web とデータベースに関するフォーラム)に協賛し、協
賛特典として行われる技術報告にて弊社・熊崎が「『オープン』な社会での産学連携モデ
ルの提案−産学連携支援事業の紹介」として発表しました。
  mail:info@arg-corp.jp 
全  般:070-5467-7032(岡本)
LRG関係:090-8052-0087(嶋田)
弊 社 業 務 問 合 せ 先
WebDB Forum 2014に協賛し、技術報告を実施
LRGLibrary Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 定期購読・バックナンバーのご案内
定 期 購 読● 誌名:ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG) 
● 発行:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
● 刊期:季刊(年4回)  
● 定価:2,500円(税別) 
● ISSN:2187-4115
● 詳細・入手先:http://fujisan.co.jp/pc/lrg
「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」はアカデミック・リソース・ガイド株式会社が、2012年11月に
創刊した、新しい図書館系専門雑誌です。さまざまな分野で活躍する著者による特別寄稿と、
図書館に関する事例や状況を取り上げる特集の2本立てで展開していきます。第5号からは
「司書名鑑」も連載を開始しました。最新情報は公式Facebookページでお知らせしています。
公式Facebookページ:https://www.facebook.com/LRGjp
1年4号分の定期購読を受付中です。
好きな号からのお申し込みができます。
定   価:10,000円(税別)
問い合せ先:090-8052-0087(嶋田)
      lrg@arg-corp.jp
SOLD OUT
元国立国会図書館長の長尾真さんの図書館への思いを書き上げた「未来の図書館を作ると
は」を掲載。図書館のこれまでを概観し、電子書籍などこれからの図書館のあり方を論じている。
特集は、「図書館100連発」と題し、どこの図書館でも明日から実践できる、小さいけれどきらり
と光る工夫を100事例集めて紹介している。第4号では、100連発の第2弾として、創刊号で紹
介後に積み上げた100事例を紹介している。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
創刊号・2012年秋号(2012年11月発行) ※品切れ
長尾真「未来の図書館を作るとは」
嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
みわよしこさんによる特別寄稿では、社会的に弱い立場とされる人々の知識・情報へのアクセ
ス状況を概観し、知のセーフティーネットであるべき公共図書館の役目を考える。
特集では、株式会社カーリルの協力により、図書館のシステムの導入状況を分析している。全
国の図書館では、それぞれ資料管理用のシステムを導入しているが、その導入の実態を分析す
る、これまでにないものとなっている。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
第2号・2013年冬号(2013年2月発行)
みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために──何から始めればよいのか」
嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル)「図書館システムの現在」
東海大学の水島久光さんによる特別寄稿は、著者自身の私的アーカイブの試み、夕張・鹿児島・
東北の地域の記憶と記録を巡って、地域アーカイブの役割と重要性を論じている。
特集は「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」として図書館での資金調達の取り組
みを紹介。昨今の自治体財政状況により、図書館の予算も十分とは言い難い。そのなかでさま
ざまな手段を講じて資金を集め、事業を行っていこうとする図書館の取り組みを集めた。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
第3号・2013年春号(2013年5月発行)
水島久光「『記憶を失う』ことをめぐって∼アーカイブと地域を結びつける実践∼」
嶋田綾子・岡本真「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」
残り
150冊
残り
250冊
152 定期購読・バックナンバーのご案内  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
元国立国会図書館長の長尾真さんの図書館への思いを書き上げた「未来の図書館を作ると
は」を掲載。図書館のこれまでを概観し、電子書籍などこれからの図書館のあり方を論じている。
特集は、「図書館100連発」と題し、どこの図書館でも明日から実践できる、小さいけれどきらり
と光る工夫を100事例集めて紹介している。第4号では、100連発の第2弾として、創刊号で紹
介後に積み上げた100事例を紹介している。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
内  容/
第5号・2013年秋号(2013年11月発行)
内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」
嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
東日本大震災は図書館にも大きな被害をもたらした。その被害状況と復興の歩み、そしてそこ
から見えてくる図書館の支援のあり方を、宮城県図書館の熊谷慎一郎さんに論じていただいた。
特集では、地域に残された災害の記録を伝える図書館、災害資料を使い地域防災について啓
発活動を行う図書館などの取り組みについて紹介する。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
内  容/
第6号・2014年冬号(2014年2月発行)
熊谷慎一郎「東日本大震災と図書館─図書館を支援するかたち」
嶋田綾子「図書館で学ぶ防災・災害」
No.2 谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館
「エル・ライブラリー」)
創刊号に掲載した長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」に触発され、未来の図書館を議論す
る座談会を収録。また、特集では、執筆に猪谷千香さんを迎え、コモンズとしての図書館のあり方
を、図書館だけにとどまらない実例を挙げて紹介する。司書名鑑の3回目は、海老名市立中央図
書館の館長であり株式会社図書館流通センター会長でもある谷一文子さん。羊の図書館めぐり
は、LRG初の試みであるマンガによる図書館紹介で、第1回は大阪府立中之島図書館を紹介する。
特別座談会/
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
第7号・2014年春号(2014年6月発行)
 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司「未来の図書館をつくる」
猪谷千香「コモンズとしての図書館」
No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
    第1回 大阪府立中之島図書館
特別寄稿は、前号(第3号)での特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」を受けて、
実際に資金調達を行っている組織からの視点、資金調達のサービスを提供する事業者からの
視点と、より理論的に図書館での資金調達に迫る。第4号が理論編、第3号が実践編という位置
づけであり、2号併せて読むことをお勧めする。
特集は、創刊号で大きな反響を呼んだ「図書館100連発」の第2弾。さまざまな図書館で行われ
ている小さくてもきらりと光る工夫や事業から、創刊号以降の1年で集めた100個を紹介する。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
第4号・2013年夏号(2013年8月発行)
岡本真・鎌倉幸子・米良はるか「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」
嶋田綾子「図書館100連発 2」
巻頭では2014年7月2日に開催した菅谷明子×猪谷千香クロストーク「社会インフラとして
の図書館 ─日本から、アメリカから」を収録。ジャーナリストから見た日米の図書館を論じた。
特集では、2014年6月に法改正がなされた教育委員会制度について、インタビューや調査
を元に、図書館への影響をまとめた。ほか、司書名鑑や羊の図書館めぐり、ARGレポートなど
を掲載。
第2回 LRGフォーラム菅谷明子×猪谷千香クロストーク 社会インフラとしての図書館─日本から、アメリカから
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
第8号・2014年夏号(2014年9月発行)
 
猪谷千香「教育委員会制度の改革」
No.4 嶋田学(瀬戸内市新図書館開設準備室) 
    第2回 旅の図書館
残り
300冊
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350冊
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320冊
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200冊
残り
350冊
153定期購読・バックナンバーのご案内  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 秋号
第 号  年 月 発行予定
ライブラリー・リソース・ガイド
次回予告
ライブラリー・リソース・ガイド
定価(本体価格2,500円+税)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別寄稿
特 集
「離島の情報環境」(仮)
海に囲まれた離島では、図書館がある島、図書館が無く移動図書館車
が巡る島などがあります。離島の情報環境の状況や、情報環境を支える
図書館の取り組みをご紹介します。
「ライブラリアンの講演術」(仮)
図書館のサービスを伝える、情報リテラシー教育を行う、図書館の研修
で講演するなど、ライブラリアンが「伝える」を行うにあたり、講演術は重
要です。講演の哲学やポイントを実例を交えてお伝えします。
LRG
ライブラリー・リソース・ガイド
https://www.facebook.com/LRGjp
第9号/2014年 秋号
無断転載を禁ず
発 行 日
発 行 人
編 集 人
編  集
デザイン
発  行
2014年12月26日
岡本真
岡本真
大谷薫子(モ*クシュラ株式会社)
佐藤理樹(アルファデザイン)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Academic Resource Guide, Inc.
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61
泰生ビル さくらWORKS<関内> 408
Tel.090-8052-0087(嶋田)
http://www.arg.ne.jp/
lrg@arg-corp.jp
ISSN 2187-4115
写真
表紙・裏表紙:鯖江市図書館
撮影=岡本真
定価(本体価格2,500円+税)
Library Resource Guide
第9号/2014年 秋号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
ISSN 2187-4115
LRGライブラリー・リソース・ガイド

『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第9号(2014年12月)