『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第15号(2016年6月)2. LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
第15号/2016年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
司書名鑑 No.11
山崎博樹(前・秋田県立図書館副館長)
連載 嶋田学
図書館資料の選び方・私論 ∼その2∼
総特集 鎌倉幸子/ふじたまさえ
これが図書館の広報だ!
総特集 鎌倉幸子/ふじたまさえ
これが図書館の広報だ!
マガジン航 Pick Up Vol.4
博物館をネット上にひらく試み[仲俣暁生]
5. LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第15号/2016年 春号
巻頭言
実りのある学びに向けて[岡本真]
総特集
これが図書館の広報だ![鎌倉幸子]
図書館 100 連発に学ぶ!
小さな工夫で伝わる PR を[ふじたまさえ]
マガジン航 Pick Up Vol.4
博物館をネット上にひらく試み[仲俣暁生](「マガジン航」編集人)
連載
図書館資料の選び方・私論 ∼その 2∼[嶋田学]
司書名鑑 No.11
山崎博樹(前・秋田県立図書館副館長)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
…………………………………………………………… 002
………………………………………………………… 005
………………………………………………… 097
……………………… 118
……………………………………… 124
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………………………………………………………………………………………………… 159
7. 006 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
はじめに
2014年、武雄市図書館が「経済効果は広告換算だけで20億円」と発表しました。
広告換算とは聞きなれない言葉かもしれませんが、それでも20億円という数字
で驚かれた方もいるのではないでしょうか。
武雄市図書館と自分の図書館を比べたときに違うことは何でしょうか。図書館
サービスについては引けを取らない、いやそれ以上のことをやっていると思うの
に、広告換算にして20億円を生み出していますかと問われると、委縮してしま
うのではないでしょうか。
「広告換算」とは、活動がメディアに取り上げられたインパクトを指します。広
報担当は取り上げられた新聞の記事の面積を測ったり、テレビに出た場合、何分
何秒、出たかを記録したりして、そのサイズや時間を、広告記事やCMを流した
場合にかかる費用と重ねて割り出しています。つまり武雄市図書館とあなたの図
書館の違いはサービスや活動の量や質の差にあるのではなく、メディアへの露出
の差にあるのです。
図書館の活動は、目立てばよいというものではないと思う方も多くいるかもし
れません。もちろん露出することに力を入れすぎて、活動がおろそかになっては
これが図書館の広報だ!
青森県弘前市生まれ。アメリカ・バーモント州のSchool
for International Training で異文化経営学修士。1999 年
~ 2015年まで公益社団法人シャンティ国際ボランティ
ア会に勤務し、カンボジア事務所図書館事業課コーディ
ネーター、東日本大震災図書館事業アドバイザー、広報
課長を務める。2016年からアカデミック・リソース・
ガイドのプロジェクトマネージャー。
鎌倉幸子(かまくら・さちこ)
本稿は、JSPS科学研究費補助金(課題番号26280120、研究代表者:九州大学附属図書
館 准教授 渡邊由紀子)の助成、ならびにInformation Literacy Instruction ライブラリアン
育成事業の一環として開発された大学図書館員向け広報教材「大学図書館が活きる効果
的な広報」をもとに、加筆修正したものです。
9. 008 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
1. 図書館における広報・PR とは?
図書館における広報・PRと聞いて、何を想像されるでしょうか。住民に図書
館を知ってもらうこと、そのために新聞などのメディアで取り上げてもらうこと、
チラシをつくること、ウェブサイトを充実させることなどの声が上げられるかも
しれません。イベントのときに「広報する」というと、「集客する」という意味とし
て使われていますが、実際にはもっと広い領域をカバーしています。
まずは、「広報・PR」を正しく定義していきましょう。
1.1 広報・PRとは
広報は英語でいうとPublic Relations(PR)となります。Relationsが示す通り「関
係性づくり」がキーワードです。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協
会が出している『広報・PR概論』では、広報・PRは、「企業、行政、学校、NPO
等あらゆる組織体が、その組織を取り巻く多様な人々との間に継続的な“信頼関
係”を築いていくための考え方と行動のあり方である」と定義されています。
近年「その組織を取り巻く多様な人々」は、ステークホルダー(利害関係者)と
呼ばれています。ステークホルダーから信頼関係を得るためにどうすればよいの
かを常に問うのが広報・PRです。ステークホルダーについては後で詳しく述べ
ますが、公共図書館の場合では、ステークホルダーとして考えられる利用者、行
政の執行部、議員、他の図書館と、どのようにコミュニケーションを取ると信頼
関係を構築できるのかを考えます。
信頼関係の構築と聞くと大掛かりなことだと思いがちですが、自分自身の日々
の生活を思い出しましょう。話をしやすい人、信頼できる人、逆にとっつきづら
い人、信頼できない人が周りにいるのではないでしょうか。なぜそう感じるのか、
なぜその人を信頼できるのか、できないのかを考えてみましょう。
1.2 広報・PRの4つの理念
1967年に東京大学社会科学研究所から出された『行政広報論』の中で、著者の
井
い
出
で
嘉
よし
憲
のり
は広報・PRの4つの理念を唱えました。だいぶ昔に出版された本ですが、
その4つの理念は今でも広報・PRに関わる人は考慮すべきといわれています。
一つ目は「事実に基づいた正しい情報を提供する」こと。二つ目は「ツーウェ
イ・コミュニケーションを確保する」こと。三つ目は、「人間的アプローチを基本
11. 010 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
年、有斐閣、新版増補版)によると、宣伝とは「多数の人々の態度や行動に影響を
与え、一定の方向に操作しようとする意図的・組織的企てのこと」と定義されて
います。情報を発信するという手法は似ているところもありますが、目的は広
報・PRとは全く反対です。広報・PRは意見を聞く受け皿を用意し、積極的な対
話を行います。そして相手の意見が正しければ、自分たちの活動を修正していく
という点において、一方的に情報を発信する宣伝と異なります。
宣伝・広告は、商品、サービス、企業の情報をメディアへの広告出稿などを
通じて発信するので費用も発生します。一方、広報・PRは、業界、企業、製品、
サービスなどに関する情報を発信し、イメージや売上げの向上、一般的な企業イ
メージの確立・維持を行います。プレスリリースなどを通じて情報を発信すれば、
共感してくれた記者によって、記事として取り上げられることもあるでしょう。
また記事にしてもらうためには取材を受けるなどの直接のやり取りも発生します。
ツーウェイ・コミュニケーションを通じて記事ができていきます。
三つ目の「人間的アプローチを基本とする」は、インターネットが普及し、顔を
見合わせながらのコミュニケーションが減っていることから、人間的アプローチ
をすることで情報を受け取った側の気持ちをつかむことが重要です。人となりが
感じられるコミュニケーションとは何か、人となりが想像できるような伝え方と
は何かを日々、自問自答しながら、情報の発信・受信をしていきましょう。
四つ目は「公共の利益と一致させる」です。組織の中には、組織自体の維持に目
が向いてしまい、顧客などの外部のステークホルダーよりも「自分の利益」を追っ
てしまうところもあります。常に顧客を含めた公共の利益を念頭に置くことが、
広報・PR 宣伝・広告
掲載方法 記事・報道 広告・CM
掲載決定権 メディア 企業(広告主)
情報の特性 客観的 主観的
メディアに支払う掲載費 無料 有料
メディア側の担当者 記者・編集者 広告部・広告局
参照:広報・PRと広告の違い http://www.anety.biz/pr/about/difference/
13. 012 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
部において「黒雲を見つける」ことであり、問題の芽が大きくなる前に摘み取る必
要があります。良心としての役割を果たすことは、継続的な信頼関係を築くため
に欠かせない事柄です。
❸ コミュニケーターとしての役割
社外のみならず、社内でのコミュニケーションの要です。社内で起きているこ
とや職員に期待されていることを、全職員に理解してもらうためのハブの役割を
果たします。次項「1.4 広報の活動形態」で詳しく述べますが、図書館であれば、
図書館スタッフと利用者との間のコミュニケーションを円滑に進める役割を超え
て、館内のスタッフ同士が円滑に仕事をするためのコミュニケーターとしての役
割も担います。館長や行政などの方針をスタッフにわかるように伝えるのも、広
報担当者の仕事となります。
❹ モニターとしての役割
行っていることが社会の期待に応えているのかを確かめるモニタリングを行い
ます。図書館であれば、図書館についてのアンケートを実施し、その結果をまと
めることができます。TwitterやFacebookなどを活用している場合、そこに投稿
されたコメントを見ながら、図書館についてどのような印象を持たれているかを
分析することができます。このように図書館のインパクトをモニタリングしま
しょう。WebサイトであればGoogle Analyticsなどのアクセス解析サービスを活
用すると、利用者がWebサイトにアクセスした際の検索ワードや、よくアクセ
スされるページなどがわかります。
そこから、人々が図書館に向けて何を求めてアクセスしているのかを読み取り、
図書館に求められていることが見えることもあります。それをモニターとして上
司のみならずスタッフに共有する機会をつくりましょう。そのような対話を通じ
て、図書館のあり方を考えるきっかけとなります。
図書館の広報・PR担当者は、図書館の活動のみならず、地域社会の動きなど
を把握、分析して、上司、館内はもちろん関係者に提案したり、情報を伝えたり
していく役割を担っているのです。
15. 014 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
・館内からの情報を受信
広報・PR担当は、その図書館が目指している方向、館長や行政の考え、ス
タッフの思いなど、館内のあらゆる情報に通じている必要があります。企業では
広報の責任者は経営会議などに出席し、社内の重要な情報を得るようにしていま
す。かつて私が広報課長だったときは、経営者会議、理事会、各課の会議に出席
し情報の収集を行いました。
プレスリリースの作成やFacebookでの情報発信の際に、担当が一番困るのは
「情報がないこと」だと聞いたことがあります。日ごろから図書館内のスタッフや
関係者とコミュニケーションを取ることで、情報を集約できる仕組みをつくりま
しょう。そのためにも先ほど述べた「館外からの情報を館内へ発信」をすることで
内部の信頼を得られ、情報の提供がなされるでしょう。
・館内からの情報を館内へ発信
企業でいう社内広報も広報・PR担当の大切な役割です。館内からの情報の受
信を行い、共有すべきものは、共有していきましょう。組織の潤滑油としての役
割を果たしましょう。広報・PRの理念にある「事実に基づいた正しい情報を提供
する」ことを徹底します。
・館内からの情報を館外へ発信
館内から情報収集をすると、社会的意義に満ち、多くの人に知ってもらいたい
「宝」である情報がたくさん見つかるかと思います。それを発信していきましょう。
気をつけるべきは「図書館中心で発信しないこと」です。あくまでステークホル
ダーのニーズに合わせて発信する必要があります。それは自己満足の発信なのか、
それとも世の中の人が興味・関心、ニーズがあり、知りたいと願っている情報な
のかを評価した上で発信しましょう。関心やニーズを知るためにも図書館を飛び
出し、色々なステークホルダーと対話をする機会を持つようにしましょう。
1.5 広報担当者に必要とされる知識とスキル
アメリカのパブリックリレーションズ協会が発表した「パブリックリレーショ
ンズに関する公式声明」には、「パブリックリレーションズの専門的実務に要求さ
れる知識は、コミュニケーション技術や心理学、社会心理学、社会学、政治学、
経済学、およびマネジメントと倫理の原則などが挙げられる。また、世論調査や
17. 016 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
最初の課題は、「ステークホルダーの特定」です。ステークホルダーごとに、
使っている言葉や関心が異なります。それに合わせて、メッセージの内容やデザ
インも変えていく必要があります。
また「ツールの選び方」があります。近年では、広報の際にチラシやポスターの
紙媒体のほかに、TwitterやFacebook、LINEなどのソーシャルメディアもツール
として使われるようになりました。ステークホルダーはどこから情報を入手して
いるかを考え、それを踏まえた上で、使う道具すなわち「ツール」を決めていく必
要があります。図書館によってはガイドラインがあり、ソーシャルメディアを使
えず、紙媒体のみというところもあるかもしれません。紙媒体しか使えないので
あれば、情報がいきわたるチャンネルを考えましょう。誰に情報をわたせば伝達
されるのか。川上にいる人に情報を渡して、口コミを起こしてもらいましょう。
学生の図書館サポーターを組織している大学図書館もあります。また公共図書館
も友の会の活動が活発なところもあります。広報も図書館サポーターの大切な仕
事として、図書館で行われるイベントなどの情報を広めてもらうようにしましょ
う。図書館内の限られたマンパワーでは、すべてのことをやれないかもしれませ
ん。周りにいるサポーターの手を借りて進めていきましょう。
2. 広報の目的とステークホルダー
ここまで述べた広報・PRの定義、理念、役割は、すべての機関・施設におい
て共通するものですが、機関によって目的が異なり実際に取り組む際の視点に違
いがあります。ここではまず、大学や行政における広報の目的を中心に見ていき
ましょう。
2.1 大学の広報
大学広報は、目的の異なる3つの広報活動が行われているといわれています。
そしてその目的ごとにステークホルダーがいます。
第一は「入試広報」です。これは入学志願者、保護者、高校教員を意識して行わ
れていましたが、近年は社会人入学も一般的になってきたため、多様化していま
す。またメディアを通じた広報のみならず、関心のある人たちに直接アプローチ
するオープンキャンパスを行う大学も増えました。
オープンキャンパスのときに、大学図書館ツアーを行うところもあります。教
19. 018 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
中にいた人」です。このように、どちらにも関わっているステークホルダーもい
ます。
2.2 行政の広報
行政のステークホルダーは幅広いです。市民はもちろん行政職員、その地域に
関わりのある企業、商店、農家、学校、NPO、公共機関がステークホルダーとな
ります。また国や都道府県、外郭団体など関係のある機関もステークホルダーと
なりえます。
また一人の市民も企業で働くワーカーであり、子どもを持つ親であり、ボラ
ンティアでNPOに関わっているなど、一人で何役も担っている人たちもいます。
このような複雑な関係性が絡み合う中で、行政の広報は進められていきます。
1995年1月に起きた阪神・淡路大震災以降、住民の意識が変化していきます。
ボランティア元年といわれるように、1998年には特定非営利活動推進法(NPO法)
が施行され、NPOも自治体の広報に欠くことのできないステークホルダーとな
りました。また2000年には地方分権推進一括法が成立し、自治体は国からの機
関委任事務から法定受託事務を処理することとなり、地域の個性と主体性の発揮
を促していく方向に移行していきました。
この時期に「協働」の動きが出てきました。市民やNPO、企業を単体として見
るのではなく、協働していくことで地域の活動を盛り上げていくスタイルが取ら
れるようになったのです。現在、このような動きに合わせて、行政は広報のスタ
イルを模索している段階にあります。
自治体職員も、かつてのように広報誌を作成したり、ウェブサイトを更新した
り、住民からの苦情に耳を傾けるだけではなく、協働を行うために、組織を越え
て人と情報を結びつけていく力が必要となってきました。そのためには住民が必
要としている情報を得る必要があります。そのときに、公共図書館が持っている
情報の提供は強みであり、その実施のために役場との連携を制度化したり、役場
の中に図書室を設けたりしている公共図書館もあります。
たとえば横浜市中央図書館では、1999年から全国でも先駆けて、図書館によ
る行政サービス「庁内情報拠点化事業」を開始しました。これは市職員への業務支
援が市民の支援につながるよう、市役所内の各部署を対象に日常業務や新たな事
業の企画立案などのために必要な情報調査や資料提供を行う取り組みです。他の
21. 020 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
「ステークホルダー別戦略の作成」の際には、6W2Hに沿って考えていきます。
・ステークホルダーとの対話のテーマ[What]
・ステークホルダーの中でも特に対話したい相手[to Whom]
・対話に適切な広報手段や場所[How to、Where]
・適切な時期(タイミング)[When]
・費用対効果を考えた予算[How much]
・連携してほしい他部門の活動[with Whom]
・なぜそれをそのステークホルダーに伝えたいか・目的[Why]
たとえば「対話のテーマ」を「乳がん検診について広く知ってもらう」ことを挙
げましょう。これをテーマに企画展や勉強会を図書館で開くことを計画します。
まず、「特に対話をしたい相手」を考えます。乳がんは30代後半から増え始める
のが特徴でした。しかし近年では食事の欧米化などが影響していると考えられ、
20代など低い年齢層でも発症率が高まっています。今回は20代、30代の女性を
「特に対話したい相手」としました。
「対話に適切な広報手段」を考えたときに、この世代がどこから情報を得ている
23. 022 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
当時、私が担当したコピー、「いわてを走る!移動図書館プロジェクト」は、
2011年の東日本大震災後、図書館が大きな被害を受けた岩手県の沿岸部で行っ
ている移動図書館活動のネーミングです。移動図書館自体が車で走る活動であっ
たことと、震災を経験した岩手県の方たちが少しでも前に向かって進むためのお
手伝いをするイメージの単語を考え「走る!」としました。その町の復興という
ゴールまで走り続けないといけないのは東北の人たち自身です。復興は長いマラ
ソンのようです。「走る!」主体は東北の方たちです。シャンティは伴走しながら
皆さんの復興を応援していきたいと考えました。
武永勉の『こうだったのかNPOの広報』★1
には、「広報とは、団体自身や団体の
活動を『他人』に説明し理解してもらい共感や協力を得ること 」と書かれています。
これを読んでわかるように、私たちは全く知らない他人に、メッセージを伝えて
いかねばなりません。岡本欣也の『「売り言葉」と「買い言葉」心を動かすコピーの
発想』★2
では、相手とは誰かを考え、伝わる「ことば」を選ぶことの重要性が書か
れています 。
前出の項目「ステークホルダー別戦略の作成」では、ステークホルダーとの対
話のテーマについて触れましたが、「対話のテーマ」は同じでも、目的や見せ方
を変えたほうがよいケースもあります。ここでは大学図書館を事例に見てみま
しょう。
【事例】
大学図書館内で、大学の教員が行ってきた研究活動の資料を企画展示すること
になりました。入試志願者、企業、大学事務局に向けて、どのような目的で、ど
のように見せていけばよいでしょうか。
入試志願者に向けた広報・PRの目的は「大学に関心を持ち、受験してもらうこ
と」です。研究活動の資料とともに何を展示すれば、この層に関心を持ってもら
えるのでしょうか。たとえば、「この先生から学びたい」と思わせる人となりがわ
かるメッセージや、「大学で学べること」を知ってもらうことでしょう。となれば、
研究活動の資料と一緒に、教員の顔写真と入試志願者に向けたメッセージが書か
れたPOPや、入学志願者やその保護者にもわかりやすく説明した研究の内容を
展示することが有効なはずです。
企業に対しては、「大学との産学連携先としての関係づくりやその強化」などが
25. 024 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
思い出をインタビューして「図書館があるから、今の僕がある」というような言葉
をつくれたら、在学生も未来の自分を想像するかもしれません。どんな変化をも
たらすかを言葉にしましょう。
・T=Trust(信頼)
どういった情報を見たら信頼してもらえるのかについて考える必要があります。
企業や省庁は研究成果の数字や大学の歴史に重きを置くでしょう。数字よりも、
ストーリーに感動する人もいます。展示やイベントの告知の際、ターゲットとし
たステークホルダーを意識して見せ方を決めていきます。
・I=Imagination(想像)
物語が、イメージを湧かせやすくします。Changeにも関係しますが、成功体
験や思わず伝えたくなる、嬉しいストーリーを物語や詩として見せていく方法も
あります。
・O=Only One(オンリーワン)
大学や大学図書館の「オンリーワンのポイント」を伝えましょう。コレクション
27. 026 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
4. ブランディング
ブランドは、経営やマーケティングにとって非常に重要なものとして認識され
るようになってきました。「ブランド(brand)」の語源は、「焼き印(burned)」から
といわれています。放牧する牛を識別するために施された焼き印ですが、ブラン
ドを考える時「識別」がキーワードとなります。
ブランドへの関心が高まってきたのは、アメリカでは1980年代終わり頃から
といわれています。アメリカでは自社の価値を高めることを目的としたM&A(合
併と買収)が行われるようになりました。また競合他社がいる中で、よく知られ
たブランドは消費者からの指名買いが行われたため、取引が有利に展開できると
いうメリットが認識されました。1990年代後半、バブル経済の崩壊で危機に立
たされた日本の企業はアメリカのトレンドを知り、ブランドに関心を高めました。
アメリカ・マーケティング協会によると、ブランドとは「個別の売り手もしく
は売り手集団の財やサービスを識別させ、競合他社の財やサービスと区別するた
めの名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたも
の★3
」と定義されます。
行政もシティプロモーションを行い、他の市町村との差別化を図っています。
また一番危機に立たされているのが少子化の影響を受けている大学です。近年、
大学ではユニバーシティ・アイデンティティを確立させて、他の大学との差別化
を図り、入試志願者を増やすための施策が取られています。
Elisabeth Doucettが2009年に出版した”Creating Your Library Brand”(American
Library Association)では、ブランディングの重要性について以下のような記述が
あります。
“Branding is important for every type of library [especially] public libraries that
have to continuously justify their existence in ways that and academic or special
library might not have to. However in an era when so much is available for free
on the internet it makes sense for every library to articulate its reason for being
in terms that are absolutely clear to both users and funders.★4
”
「ブランディングはすべての図書館において重要な事柄です。大学や専門図書
館が必ずしも行う必要がないと思われる、自分たちの存在を継続的に正当化する
29. 028 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
4.2 大学のブランディング〜近畿大学
2000年以降、日本における大学進学率は50%を超え、規制緩和のもとで大学
の新規参入が相次ぎました。大学の数は増えたのに18歳人口が大幅に減少する
「2018年問題」に直面し、日本の大学はかつてない危機に立たされています。す
でに少子化などを背景に、大学の定員割れや志願者減少が見受けられます。
しかし近畿大学のように、2015年度の受験志願者数は11万3,704人と、前年
度より7,814人も増加した大学もあります★5
。近畿大学では「マグロと教員」を
資産としたブランディングを展開しています★6
。世界初の完全養殖マグロ「近大
マグロ」は有名です。さらに「教員」も資産と考えた近畿大学は、在籍する教員約
1,200人のプロフィールや研究分野、顔写真などを掲載した「近畿大学教員名鑑」
をメディア向けに制作し、配布しました。教員にも協力してもらい、積極的なメ
ディアへの露出を促しています。
魅力ある大学として受験者を増やすために、どのようなコミュニケーション活
動を行えばいいのか、他の大学との識別化、差別化を図るために、ブランディン
グに力を入れる大学が増えています。ブランドイメージ戦略が、大学が差別化を
図る一つの方法として期待されているのです。
そのために、「自分たちの大学は何もので、何のために存在しているのか」とい
う自身の個性や存在意義を問い直し、「これからどうありたいと願うのか」という
理念を整理・再編する作業を行い、識別化や差別化のポイントを見つけ出してい
く必要があります。
4.3 公共図書館の中長期計画
「ブランド」もしくは「ブランディング」と「図書館」をキーワードに検索をしても
公共図書館はヒットされません。そもそもブランディングという言葉が公共図書
館で使われていないのがその理由として考えられます。その代わり、中長期計画
の中に「ミッション」として、組み込まれるケースが多いようです。京都府立図書
館が2016年3月に発表した「京都府立図書館サービス計画平成28年~ 32年」に、
広報・PRについての記述があります★7
。
「府立図書館の見える化の推進」の一環として、
・府立図書館のミッションの周知と事業の効果的な打ち出し
・SNS等の多様な広報媒体の活用
30. 029ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ここで言及されているミッションこそ識別化、差別化された京都府立図書館の
ブランディングであり、その周知を行うことが認知を促進することにつながりま
す。
ここで、ミッションがブランドになる例を、私の経験から書きましょう。シャ
ンティ国際ボランティア会は、5 年ごとに中期計画をつくります。2014 年~
2018年の中期計画は2013年に1年かけて海外の事務所を含め議論を交わしなが
ら目指すべき方向を確認し、作成していきました。中期計画を、スタッフや理事
など内部関係者だけではなく、広く外部の人にも知っていただき、ファンを増や
したいと考え広報計画を策定しました。まず行ったのは5年間の目標を言葉で表
すことです。その際に考えたポイントは下記の通りです。
1)団体が行う活動内容に合致していること
2)他の団体とは違う特異性があること
3)どう見られたいかというイメージと合致すること
シャンティは主にアジアで図書館の設置や図書の出版、移動図書館の運営を
行っています。活動を通して文字を覚え、知識を吸収し、人の喜びや悲しみを理
解する人になってもらいたいという願いがありました。そこで生まれたのが「本
の力を、生きる力に。」という言葉です。またその言葉の浸透のためにロゴの作成、
名刺・リーフレット・Webサイトのデザインの変更、スタッフ内での理解の促
進のための取り組みを行いました。
4.4 ガイドラインの順守の重要性〜大学のブランディングを中心に
ブランド化の推進と同時に、広報の戦略も話し合われるケースが多くありま
す。その際に、ブランドの定義の中にある「使用する名称、言葉、記号、シンボ
ル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの」が確立されます。
図書館の広報誌やチラシなどで大学のブランドマークを使用する場合、使用方
法について、ブランドガイドラインがあれば、それを順守しましょう。ブランド
ガイドラインには主に以下のことが含まれます。
・ブランドマーク
未来に向けたメッセージや強みをシンボル化したブランドマークがあります。
こちらを使用する際には、縦と横の比率を変えるなど手を加えずに使用しましょ
う。JPGやイラストレーターのデータになっていますのでそれを使用して、印刷
31. 030 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
物をつくります。またガイドラインの中には、好ましくない使われ方も示されて
います。確認した上で使用しましょう。たとえば、中央大学ではブランドマーク
とユニバーシティメッセージとの組み合わせる場合、「左右幅30mm未満でのブ
ランドマーク使用は禁止」と規定があります。
・ブランドステートメントやスローガン
その組織の全体を表すキャッチコピーが、ブランドステートメントです。ロゴ、
ブランドマーク、ブラインドステートメントには、それができるに至った背景が
あります。たとえば龍谷大学のスローガンは「You, Unlimited」です。その背景と
して「龍谷大学が提供する知識や様々な経験を通じて、学生一人ひとりが無限の
可能性を追求し、自らの未来を切り開いてほしいという意味と、直接的に“You”
と呼び掛けることで、学生たち一人ひとりと真摯に向き合う龍谷大学の姿勢を表
現しています」とあります。
また龍谷大学は、“Ryukoku Brand Navi”というブランドを浸透させるための
特設サイトを公開しています。活躍している学生や教職員の取り組みを紹介す
る「People, Unlimited」、様々な教育への挑戦を紹介する「Education, Unlimited」、
そしてグローバルな活動を取り上げた「World, Unlimited」の3つのテーマで大学
のブランド力向上に向けたメッセージを発信しています。
・スクールカラー
ブランドマークとともにスクールカラーも決まっています。目で見て「多分こ
の色」と自分で判断せずに、CMYKの割合を確認しましょう。CMYKは色の表現法
の一種でシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四成分のことです。これらを
何パーセント配合するかが事細かく決まっています。印刷所にこの割合を伝えれ
ば、注文に沿った色を使ってくれます。
東京農工大学は「ブランドマーク・校章」のウェブページに色指定についても表
記しています。
・デザインマニュアル
印刷物ごとにデザインマニュアルがあります。デザイン例に示してある位置や
色を変えることはできません。名刺、封筒、レターヘッド、パワーポイント、ペ
ナントなどテンプレート化されているものもありますので、それを使うようにし
33. 032 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
多くの学生が集まる大学図書館だからこそ、ユニバーシティ・アイデンティ
ティの浸透のためにできることがあります。ガイドラインを順守しながら、チラ
シなどの印刷物にロゴなどを使うことはもちろん、コーポレートカラーを意識し
たサインをつくる、ロゴ入りの栞などのグッズをつくり学生に配布するなど、広
報・PRのサポートを行いましょう。
このように大学のブランディングの取り組みは大変参考になります。ブラン
ディングガイドラインなどをインターネットで公開している大学も多いので、
チェックしてみてください。
5. オンラインとオフラインを融合して見せる
オンラインとはインターネットに接続されている状態です。オフラインはその
逆で、インターネットに接続されていない状態のことをいいます。オンライン、
オフラインという切り口で広報ツールを考えてみましょう。
いままでは、掲示板、パンフレット、チラシなどオフラインの広報媒体が中心
でした。近年では、インターネットが普及しウェブサイト、Facebook、Twitter、
LINEなどオンラインメディアが台頭し、スマートフォンが広まるなかで、ちょっ
とした待ち時間や電車の中でもPCを開くことなく、インターネットにアクセス
できるようになりました。特に顕著なのが10代、20代です。たとえばマイナビ
が2015年3月に大学を卒業予定の学生を対象に行ったライフスタイル調査によ
ると、大学生のスマートフォン保有率は93.1%で、ほとんどの学生がスマート
フォンを保有しているという結果がでました★9
。2012年卒の学生のスマートフォ
ンの保有率は16.4%だったので、この3年間で急激に数字が伸びていることがわ
かります。また、日本労働組合総連合会(連合)の調査によると、大学生・大学院
生・専門学生の56%がソーシャルメディアを、29.3%がまとめサイト・ニュース
アプリを主な情報源であると返答しています★10
。
このように、人々のライフスタイルが変化しているなか、大学図書館はもちろ
ん公共図書館もそれにあった広報の仕方を考える時期にきているといえます。
ではオフラインの媒体から見ていきましょう。
5.1 オフラインの媒体
オフラインはインターネットに接続されていない状態と説明しました。つまり
35. 034 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ており、大学図書館の楽しみ方が表現されています。
大学院生版は蔵書検索、オンラインデーターベース、学位論文閲覧、大学図書
館に資料がない場合の他機関の利用方法、研究のための資料検索についての情報
が中心に書かれています。地図にも「情報検索を強力サポート」利用相談デスク、
「静かな環境で研究や読書ができます」という言葉を添えて院生・研究者閲覧室の
紹介がされています。
教職員版には資料の選書と購入、研究費などについての情報が書かれています。
またマップにも、「各5席の静かな環境です」という説明書きとともに、教員閲覧
室が示されています。地域利用・校友版には、利用資格の説明、利用登録の仕方
や貸出・返却について書かれています。来館できない場合は、簡易書留や宅配便
での返却ができることを案内しています。もちろん着払いができないことについ
ても記載しています。
このようにステークホルダーによって知りたい情報、知ったほうがよい情報は
異なります。帝京大学メディアライブラリーセンターの利用者案内は、それを考
慮したものとなっています。
5.1.2 広報誌
他のオフラインメディアとして、図書館報のような広報誌が挙げられます。職
員が自分たちでつくっているものから、外注に出し、雑誌のように仕上げている
ものまでさまざまです。札幌市立大学附属図書館の広報誌「のほほん」では、デザ
イン学部・大学院デザイン研究科の学生が図書館のイラストや表紙のデザインを
担当するなど、学生の専門性を生かしたかたちで参加をしてもらうケースも見ら
れます。
利用者案内と同様に広報誌をステークホルダー別につくっているところがあり
ます。西宮市立図書館では一般向けに広報誌「まつぼっくり」、児童向けに「しゃ
ぼん玉」を発行・配布しています。
名古屋市図書館ではティーンズ向けに広報誌「ごちゃっと」を発行しています。
名古屋市図書館に限らずティーンズ向けの広報誌をつくるときには、地元の中学
生や高校生が参加して企画から編集まで行うケースが見られます。
広報誌の企画を立てるためには、やはりターゲットを誰にするかを明確にする
ことが大切です。また、読まれないと意味をなさないために、配布方法も考慮す
る必要があります。時代のニーズを読み、それに合致した編集方針のもとで発行
37. 036 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
する必要があります。発行側のメッセージだけを一方的に送っているものはメッ
セージ誌であり、広報誌ではありません。受け取る側が何を欲しているかを考慮
する必要があります。広報誌は、行っている活動の内容を多角的にメッセージす
るメディアであり、読みものとしても、ビジュアルにおいても、編集方針づくり
や企画段階での創意と工夫が求められます。
図書館と図書館にかかわる人たちのサイト「Jcross」の「コレクション」に、公共
図書館、学校図書館、大学図書館の「図書館便り」として図書館広報誌のリスト
が、集められています★12
。見てみると、「○○図書館だより」というタイトルの
ものが多いのですが、中には岩手県立図書館のフリーペーパー「PECCO(ぺっ
こ)」など地元発の言葉を広報誌のタイトルに採用し、県のブランディングの推進
と、図書館の広報・PRが融合したものもあります。また埼玉県寄
よ り い
居町立図書館
の「KIZZY通信」は寄居町の鳥、"雉(きじ)"にちなんでいます。町内外の人たちに、
町について知ってもらう機会となるのではないでしょうか。
そのほかにも龍谷大学図書館の「来
らい
・ぶらり」、学習院大学図書館の「来
らい
ぶらり」、
創価大学附属図書館のニュースレター「ほっ TOSHOKAN」のように図書館をも
じったものもあります。
また、図書館を使うことでこうなってもらいたいというイメージの言葉を、館
報のタイトルにしている図書館もあります。南山大学図書館はギリシャ語で「力」、
「可能性」を意味する「デュナミス」を、大阪府立大学学術情報センター図書館はギ
リシャ語で「明日」を意味する言葉「アウリオン」を館報のタイトルとして掲げてい
ます。
筑波大学附属図書館は「全国の大学図書館報」のリンク集★13
をつくっています。
近隣の図書館以外の図書館報は、あまり目にできないかと思います。先ほど紹介
した「Jcross」やこちらを参考にデザインや内容などをチェックして、自分たちの
広報誌の企画の充実を図りましょう。
5.1.3 チラシ
本やイベントなどを紹介するA4一枚、もしくは両面を使ったチラシをつくる
図書館も多いでしょう。オンライン、オフラインの媒体という切り口でみると、
紙媒体はオフラインのダイレクトメディアでもあります。印刷メディアは手元に
残して置ける、保存性がある、相手と一対一の感覚でメッセージを伝えられると
いうメリットもあります。オンラインではソーシャルメディアを通じて、たくさ
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これが図書館の広報だ!
名古屋市図書館が発行するティーンズ向け広報誌「ごちゃっと」の展示の様子。撮影:岡本真
紫波マルシェの売り場で紫波町図書館が料理本をPOPで紹介。オガール紫波株式会社ホームページより
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これが図書館の広報だ!
5.1.4 展示・本の紹介
町を歩いていると、デパートやセレクトショップのディスプレイが目に飛び込
んできます。その各店舗が、商品の紹介をしながらも、店に入ってきてもらうた
めのアレンジをしています。銀座のシャネルは建物全体が電光掲示板となってお
り、1階の通りのみならず、ビル全体を使いアピールをしています。高級ブラン
ド激戦地では、気合の入ったディスプレイが見られます。展示自体がダイレクト
メディアとなります。
大学図書館の場合、何気なく目に飛び込んできた展示の棚に関心を持ち、図書
館の中に入る学生もいるかもしれません。これらは棚自体が「掲示板」となります。
またイベントのチラシと違い、イベント開催日までの「間が空く時間」もありませ
ん。関心を持てばその場で手にして、貸出を受けるなどのアクションに結びつけ
られます。
そのためにも図書館の外にいても目につく場所に棚をつくる、文字を大きくし
た看板を置き外から見えるようにするなど、気にかけてもらうための工夫が必要
です。
その他にも栞、入り口に置く黒板、ポスター、サインなどさまざまなオフライ
ンの媒体があります。どの媒体も、誰に何を伝えたいのかというステークホル
ダーと目的の分析をして企画をつくりましょう。
さてディスプレイをしても、建物の中のみで行っていたら、図書館に来る人に
しか目に留まりません。それを解消するためにも他の部署と連携して図書館の外
で展示などを行うとよいでしょう。岩手県紫
し わ
波町の紫波町図書館は、農業支援の
一環として、紫波の農畜産物や加工品を中心に生鮮三品(青果・肉・魚)が毎日豊
富に並ぶ紫波マルシェの売り場に、図書館おすすめの料理本の紹介POPを置い
ています。その本は図書館で貸出を受けることができます。
次はウェブサイトやソーシャルメディアなど、オンラインの媒体について考え
ていきましょう。
5.2 オンラインの媒体
インターネットの普及によって、情報の即時的公開が行われるようになりまし
た。それまでは公開可能な情報を体系的に探すことが困難でしたが、ウェブサイ
トを見れば公開情報が体系的にまとまったかたちで見られるようになりました。
企業のウェブサイトを見てみると商品の案内だけではなく、会社の情報、専門的