ライブラリー・リソース・ガイド
第15号/2016年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
司書名鑑 No.11 山崎博樹(前・秋田県立図書館副館長)
連載 嶋田学 図書館資料の選び方・私論 ∼その2∼
総特集 鎌倉幸子/ふじたまさえ
これが図書館の広報だ!
総特集 鎌倉幸子/ふじたまさえ
これが図書館の広報だ!
マガジン航 Pick Up Vol.4 博物館をネット上にひらく試み[仲俣暁生]
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
第15号/2016年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
司書名鑑 No.11
山崎博樹(前・秋田県立図書館副館長)
連載 嶋田学
図書館資料の選び方・私論 ∼その2∼
総特集 鎌倉幸子/ふじたまさえ
これが図書館の広報だ!
総特集 鎌倉幸子/ふじたまさえ
これが図書館の広報だ!
マガジン航 Pick Up Vol.4
博物館をネット上にひらく試み[仲俣暁生]
図書館の業界と付き合ってきて、正直、思うところがある。と書き出すと、日
頃からあちこちで手厳しい発言をしているだけに、「今度はなんだ⁉」と思われる
かもしれません。しかし、ここで言いたいことはシンプルです。それは「理論と
実践の両面で鍛えられたスタンダードが、あまり確立されていない」ということ
です。そして、それゆえでしょうか、よその業界からすれば、ちょっと違和感を
受ける珍説奇説が意外と信頼を集めています。これは図書館の主たる目的や役割
を語る言説にではなく、その周辺を語る言説に少なからず見受けられるように
思っています。
本誌では、私たちARGスタッフが感じるそういった素朴な疑問を記事というか
たちに変えて提示しています。そのとき、イソップ寓話に「北風と太陽」という話
があるように、「よりよい」(と思われるもの)を具体的に示すとこと、そこに大
きな意義を感じています。これまで14回発行してきた本誌のいずれにもその考
えは宿っていますし、今号にも宿っています。読了した後に、そんな編集・発行
サイドの意図がじんわりと伝わりましたら、それ以上に嬉しいことはありません。
さて、今号では、本年2016年1月1日から弊社に加わった鎌倉幸子による「こ
れが図書館の広報だ!」を、総特集で掲げています。鎌倉には、これまでも本誌
に何度か寄稿してもらっていますが、今回は彼女自身のライフワークともいう
べき「広報」について、出し惜しみなく書き下ろしてもらいました。国内外のあ
りとあらゆるシチュエーションで「結果」を出すことが常に求められるという環
境──まあ、当たり前といえば当たり前ですが──での彼女の実践と経験、また
その表裏一体である理論を味わってください。そして、その技を自分のものとし、
読者の皆さん自身の日々の実践の中で、結果となるように生かしてほしいと思っ
ています。これは筆者である鎌倉にとっても切なる願いでしょう。
巻頭言 実りのある学びに向けて
002 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
巻頭言
なお、あわせて、先の第14号から本誌の責任編集の任に就いたふじたまさえ
による、本特集に付した事例集も理解の参考となるでしょう。ふじたは弊社ス
タッフであると同時に、「図書館をもっと楽しく」を掲げて多彩に活動する株式会
社カーリルのマーケティング担当役員でもあります。広報・マーケティング面で
のカーリルの巧みさはいうまでもありません。その経験と実績を有するふじたの
眼で選び抜いた事例もぜひ参考にしてください。
特集の他には、定番のコーナーである司書名鑑、「図書館資料の選び方・私論、
マガジン航Pick Up、弊社コーポレートレポートというラインナップになってい
ます。
司書名鑑には私が司会する能力において、この方にはかなわないと心底思う山
崎博樹さんを迎えました。秋田県立図書館を日本トップクラスの県立図書館に引
き上げたその手腕と心持ちを、多くの方々に知っていただければと思います。連
載「図書館資料の選び方・私論」は第2回となります。ちなみに、筆者である嶋田
学さんが準備を進めてきた瀬戸内市民図書館がついにこの6月に開館します。こ
の連載で語られていることが新図書館にどのように反映されているのか、現地を
訪ねる楽しみにもなるのではないでしょうか。マガジン航Pick Upでは、春先に
行われたウィキペディアタウンの取り組みについての仲俣暁生さんによるレポー
トを再録しています。当日の様子がリアルに味わえるはずです。
そして、今回からコーポレートレポートをA面とB面に分け、オフィシャルな
弊社の活動報告に加えて、弊社スタッフによるカジュアルな個人レポートが登場
しています。本誌をつくっている弊社スタッフを少しでも身近に感じていただけ
れば幸いです。
編集兼発行人:岡本真
003ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
巻頭言
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第15号/2016年 春号
巻頭言 
実りのある学びに向けて[岡本真]
総特集 
これが図書館の広報だ![鎌倉幸子]
図書館 100 連発に学ぶ! 
小さな工夫で伝わる PR を[ふじたまさえ]
マガジン航 Pick Up Vol.4 
博物館をネット上にひらく試み[仲俣暁生](「マガジン航」編集人)
連載 
図書館資料の選び方・私論 ∼その 2∼[嶋田学]
司書名鑑 No.11 
山崎博樹(前・秋田県立図書館副館長)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
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総特集
これが図書館の広報だ!
鎌倉幸子/ふじたまさえ
006 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
はじめに
2014年、武雄市図書館が「経済効果は広告換算だけで20億円」と発表しました。
広告換算とは聞きなれない言葉かもしれませんが、それでも20億円という数字
で驚かれた方もいるのではないでしょうか。
武雄市図書館と自分の図書館を比べたときに違うことは何でしょうか。図書館
サービスについては引けを取らない、いやそれ以上のことをやっていると思うの
に、広告換算にして20億円を生み出していますかと問われると、委縮してしま
うのではないでしょうか。
「広告換算」とは、活動がメディアに取り上げられたインパクトを指します。広
報担当は取り上げられた新聞の記事の面積を測ったり、テレビに出た場合、何分
何秒、出たかを記録したりして、そのサイズや時間を、広告記事やCMを流した
場合にかかる費用と重ねて割り出しています。つまり武雄市図書館とあなたの図
書館の違いはサービスや活動の量や質の差にあるのではなく、メディアへの露出
の差にあるのです。
図書館の活動は、目立てばよいというものではないと思う方も多くいるかもし
れません。もちろん露出することに力を入れすぎて、活動がおろそかになっては
これが図書館の広報だ!
青森県弘前市生まれ。アメリカ・バーモント州のSchool
for International Training で異文化経営学修士。1999 年
~ 2015年まで公益社団法人シャンティ国際ボランティ
ア会に勤務し、カンボジア事務所図書館事業課コーディ
ネーター、東日本大震災図書館事業アドバイザー、広報
課長を務める。2016年からアカデミック・リソース・
ガイドのプロジェクトマネージャー。
鎌倉幸子(かまくら・さちこ)
本稿は、JSPS科学研究費補助金(課題番号26280120、研究代表者:九州大学附属図書
館 准教授 渡邊由紀子)の助成、ならびにInformation Literacy Instruction ライブラリアン
育成事業の一環として開発された大学図書館員向け広報教材「大学図書館が活きる効果
的な広報」をもとに、加筆修正したものです。
007ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
本末転倒です。ただ、日々の暮らしにおいて課題を抱えた人たちが、図書館がそ
の解決のために役立つ施設であることを知り、問題を解決できるとしたら、まず
はその「存在」を知ってもらうことに、とても重要な意味があります。
広報・PRをすることは、図書館のためではありません。すべての人たちの学
習や暮らしを支えるためなのです。
前職の国際協力NGOで、私は広報とファンドレイジング(資金調達)の担当
だったこともあり、NPOやNGO向けのセミナーで講師をする機会をいただいて
いました。2013年になると、図書館がメディアに取り上げられるケースが増え
てきたためか、公共図書館でも広報・PRについて学びたいというリクエストが
寄せられるようになりました。東京都立中央図書館での都内の図書館職員向けの
研修会、佐賀県立図書館、調布市立中央図書館、目黒区八雲中央図書館、高知市
民図書館などで、「図書館と広報」のワークショップを実施しました。しかし限ら
れた時間での講義と実践では、とても全体をカバーしきれません。
また2015年度に、図書館の広報教材をつくる担当をしました。広報・PRと聞
くと、チラシやポスターをつくる、ソーシャルメディアを活用するなどの活動に
目がいきがちです。これからこの論考で述べるように、広報・PRは単なるモノ
づくりではありません。広報・PRの基本を押さえた上で広報媒体をつくること
が重要です。そうすれば、「なぜそれをつくるのか」という理由づけがきちんとな
されるはずだからです。それは自分が広報をする活動に対して納得をすることで
あり、上司や議会などから質問をされたときにきちんと返答できることにもなり
ます。
図書館の運営に関する本はたくさん出ていますが、図書館の広報に特化したも
のは数が限られています。同時に企業向けの広報関連の本では、公共施設や大学
についての記述も限られています。
この特集では、広報・PRとは何かという基礎から実践事例まで紹介し、図書
館の広報担当者が押さえるべき事柄を網羅します。ぜひ「図書館の広報担当に任
命された」と想像しながら、読んでいただければ幸いです。公共図書館はすべて
の人の生涯学習のために、大学図書館は教員の教育研究や学生の学習のために大
切な機関です。広報・PR活動を通じて、図書館の持っている価値を伝え、たく
さんの人に利用してもらいましょう。
008 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
1. 図書館における広報・PR とは?
図書館における広報・PRと聞いて、何を想像されるでしょうか。住民に図書
館を知ってもらうこと、そのために新聞などのメディアで取り上げてもらうこと、
チラシをつくること、ウェブサイトを充実させることなどの声が上げられるかも
しれません。イベントのときに「広報する」というと、「集客する」という意味とし
て使われていますが、実際にはもっと広い領域をカバーしています。
まずは、「広報・PR」を正しく定義していきましょう。
1.1 広報・PRとは
広報は英語でいうとPublic Relations(PR)となります。Relationsが示す通り「関
係性づくり」がキーワードです。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協
会が出している『広報・PR概論』では、広報・PRは、「企業、行政、学校、NPO
等あらゆる組織体が、その組織を取り巻く多様な人々との間に継続的な“信頼関
係”を築いていくための考え方と行動のあり方である」と定義されています。
近年「その組織を取り巻く多様な人々」は、ステークホルダー(利害関係者)と
呼ばれています。ステークホルダーから信頼関係を得るためにどうすればよいの
かを常に問うのが広報・PRです。ステークホルダーについては後で詳しく述べ
ますが、公共図書館の場合では、ステークホルダーとして考えられる利用者、行
政の執行部、議員、他の図書館と、どのようにコミュニケーションを取ると信頼
関係を構築できるのかを考えます。
信頼関係の構築と聞くと大掛かりなことだと思いがちですが、自分自身の日々
の生活を思い出しましょう。話をしやすい人、信頼できる人、逆にとっつきづら
い人、信頼できない人が周りにいるのではないでしょうか。なぜそう感じるのか、
なぜその人を信頼できるのか、できないのかを考えてみましょう。
1.2 広報・PRの4つの理念
1967年に東京大学社会科学研究所から出された『行政広報論』の中で、著者の
井
い
出
で
嘉
よし
憲
のり
は広報・PRの4つの理念を唱えました。だいぶ昔に出版された本ですが、
その4つの理念は今でも広報・PRに関わる人は考慮すべきといわれています。
一つ目は「事実に基づいた正しい情報を提供する」こと。二つ目は「ツーウェ
イ・コミュニケーションを確保する」こと。三つ目は、「人間的アプローチを基本
009ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
とする」こと。そして最後の四つ目は「公共の利益と一致させること」となってい
ます。一つずつ説明をしていきましょう。
一つ目の「事実に基づいた正しい情報を提供する」ことは、広報の大原則です。
事実を隠蔽してはいけません。取材が入った時、広報担当としても情報を持って
いない場合があります。その際には、思いつきでものを言うのではなく、事実確
認してから返答をするようにしましょう。聞かれた質問内容について正確には把
握していないことを正直に伝え、調べた後、回答するようにしましょう。
二つ目の「ツーウェイ・コミュニケーションを確保する」は、広報・PRの定
義にある「継続的な“信頼関係”を築いていくための考え方と行動のあり方であ
る」に直結します。出会って名刺交換をしてから、コミュニケーション・対話を
してお互いを知ることが、信頼関係を築く最初の一歩です。対話の「対」が示す
ように、相手と自分がいてできることです。インターネットが普及し、ブログ、
FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが台頭してきました。ソーシャル
メディアは簡単にコメントをしたり、返信ができる媒体です。インターネット上
でもツーウェイ・コミュニケーションが取れる時代になりました。
ここで混乱してしまうのが「宣伝・広告」と「広報・PR」との違いです。社会学
者で東京学芸大学名誉教授の濱嶋朗、他2人で編集された『社会学小辞典』(2005
010 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
年、有斐閣、新版増補版)によると、宣伝とは「多数の人々の態度や行動に影響を
与え、一定の方向に操作しようとする意図的・組織的企てのこと」と定義されて
います。情報を発信するという手法は似ているところもありますが、目的は広
報・PRとは全く反対です。広報・PRは意見を聞く受け皿を用意し、積極的な対
話を行います。そして相手の意見が正しければ、自分たちの活動を修正していく
という点において、一方的に情報を発信する宣伝と異なります。
宣伝・広告は、商品、サービス、企業の情報をメディアへの広告出稿などを
通じて発信するので費用も発生します。一方、広報・PRは、業界、企業、製品、
サービスなどに関する情報を発信し、イメージや売上げの向上、一般的な企業イ
メージの確立・維持を行います。プレスリリースなどを通じて情報を発信すれば、
共感してくれた記者によって、記事として取り上げられることもあるでしょう。
また記事にしてもらうためには取材を受けるなどの直接のやり取りも発生します。
ツーウェイ・コミュニケーションを通じて記事ができていきます。
三つ目の「人間的アプローチを基本とする」は、インターネットが普及し、顔を
見合わせながらのコミュニケーションが減っていることから、人間的アプローチ
をすることで情報を受け取った側の気持ちをつかむことが重要です。人となりが
感じられるコミュニケーションとは何か、人となりが想像できるような伝え方と
は何かを日々、自問自答しながら、情報の発信・受信をしていきましょう。
四つ目は「公共の利益と一致させる」です。組織の中には、組織自体の維持に目
が向いてしまい、顧客などの外部のステークホルダーよりも「自分の利益」を追っ
てしまうところもあります。常に顧客を含めた公共の利益を念頭に置くことが、
広報・PR 宣伝・広告
掲載方法 記事・報道 広告・CM
掲載決定権 メディア 企業(広告主)
情報の特性 客観的 主観的
メディアに支払う掲載費 無料 有料
メディア側の担当者 記者・編集者 広告部・広告局
参照:広報・PRと広告の違い http://www.anety.biz/pr/about/difference/
011ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
長期的に見ると「自分の利益」として返ってくることになるでしょう。図書館は公
共のために存在しますから、自分の利益を追求するということはないと思います
が、守秘義務など倫理に反する情報の発信は避けるようにします。
1.3 広報・PRの4つの役割
広報・PRの担当者の仕事は、発信することと思うかもしれません。それだけ
ではないのが広報・PRの仕事です。アメリカのPR会社、バーソン・マーステラ
の創業者で名誉会長のハロルド・バーソン氏は、4つの役割があると述べていま
す。
❶ センサーとしての役割
センサーとは社会の変化を感知し、経営陣に対しその予兆を説明し、ビジネス
や業務に打撃を与えるかどうかを説明する役割を担います。センサーとしての役
割といわれて思い出すのが議会図書室でしょう。地方自治法第100条19項に基
づき、自治体には議会図書室の設置が行われています。そして、議会図書室の司
書は関係部局と協力しながら、議会で討議される予定の資料を揃え、展示をした
り、資料としてまとめたりしています。たとえば三重県議会図書室は、議会事務
局の企画法務課が政務自主調査を行う際、それに関する資料の取りまとめを行っ
ています。それらの資料には社会の動きなどが載っています。まさに政策づくり
のためのセンサーを議会図書室が担っています。
公共図書館が住民に開かれた施設であれば、住民に関係すると予想される社会
の動きを感知して、それに基づいて資料を揃え、また提示していく必要がありま
す。
広報・PRは、遠くに浮かぶ黒雲を見つける仕事ともいわれています。資料へ
の知識はもちろん、今後影響すると思われる事柄を察知する能力も求められます。
そのためには、外へアンテナを張り、常に情報を受信する体制であることが大切
です。
❷ 組織の良心としての役割
誰よりも倫理的で道徳観念を強く持つ立場にいなければいけません。図書館で
あれば、「公共の利益と一致させる」ことなく、自分たちの利益だけを追求する動
きがみられたら、それを止めるように促すのも広報担当者の役割です。それは内
012 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
部において「黒雲を見つける」ことであり、問題の芽が大きくなる前に摘み取る必
要があります。良心としての役割を果たすことは、継続的な信頼関係を築くため
に欠かせない事柄です。
❸ コミュニケーターとしての役割
社外のみならず、社内でのコミュニケーションの要です。社内で起きているこ
とや職員に期待されていることを、全職員に理解してもらうためのハブの役割を
果たします。次項「1.4 広報の活動形態」で詳しく述べますが、図書館であれば、
図書館スタッフと利用者との間のコミュニケーションを円滑に進める役割を超え
て、館内のスタッフ同士が円滑に仕事をするためのコミュニケーターとしての役
割も担います。館長や行政などの方針をスタッフにわかるように伝えるのも、広
報担当者の仕事となります。
❹ モニターとしての役割
行っていることが社会の期待に応えているのかを確かめるモニタリングを行い
ます。図書館であれば、図書館についてのアンケートを実施し、その結果をまと
めることができます。TwitterやFacebookなどを活用している場合、そこに投稿
されたコメントを見ながら、図書館についてどのような印象を持たれているかを
分析することができます。このように図書館のインパクトをモニタリングしま
しょう。WebサイトであればGoogle Analyticsなどのアクセス解析サービスを活
用すると、利用者がWebサイトにアクセスした際の検索ワードや、よくアクセ
スされるページなどがわかります。
そこから、人々が図書館に向けて何を求めてアクセスしているのかを読み取り、
図書館に求められていることが見えることもあります。それをモニターとして上
司のみならずスタッフに共有する機会をつくりましょう。そのような対話を通じ
て、図書館のあり方を考えるきっかけとなります。
図書館の広報・PR担当者は、図書館の活動のみならず、地域社会の動きなど
を把握、分析して、上司、館内はもちろん関係者に提案したり、情報を伝えたり
していく役割を担っているのです。
013ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
1.4 広報の活動形態
先ほど述べた通り、広報の情報発信は外のみならず、内にいるスタッフにも行
います。図書館における広報の情報発信の形態についてまとめます。
・館外からの情報を受信
ツーウェイ・コミュニケーションを確立することが理念の広報・PR業務の中
で、まずは「受信」をきちんと行うことが大切です。利用者、行政職員などさまざ
まな声を広聴し、それぞれの思いを知ることが最初の一歩となります。同じ業界
の人とばかり話をしていると、そこで話されたことが常識となりがちですが、社
会の常識ではないかもしれません。またステークホルダーごとに異なる意見もあ
るかもしれません。広く社会の声を聞くことが大切です。
・館外からの情報を館内へ発信
館外から得た情報の中でも重要と思われることは、館長などトップを始め、館
内に発信する必要があります。「1.3 広報・PRの4つの役割」で述べた通り、セ
ンサーやモニターとしての役割が求められます。
014 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
・館内からの情報を受信
広報・PR担当は、その図書館が目指している方向、館長や行政の考え、ス
タッフの思いなど、館内のあらゆる情報に通じている必要があります。企業では
広報の責任者は経営会議などに出席し、社内の重要な情報を得るようにしていま
す。かつて私が広報課長だったときは、経営者会議、理事会、各課の会議に出席
し情報の収集を行いました。
プレスリリースの作成やFacebookでの情報発信の際に、担当が一番困るのは
「情報がないこと」だと聞いたことがあります。日ごろから図書館内のスタッフや
関係者とコミュニケーションを取ることで、情報を集約できる仕組みをつくりま
しょう。そのためにも先ほど述べた「館外からの情報を館内へ発信」をすることで
内部の信頼を得られ、情報の提供がなされるでしょう。
・館内からの情報を館内へ発信
企業でいう社内広報も広報・PR担当の大切な役割です。館内からの情報の受
信を行い、共有すべきものは、共有していきましょう。組織の潤滑油としての役
割を果たしましょう。広報・PRの理念にある「事実に基づいた正しい情報を提供
する」ことを徹底します。
・館内からの情報を館外へ発信
館内から情報収集をすると、社会的意義に満ち、多くの人に知ってもらいたい
「宝」である情報がたくさん見つかるかと思います。それを発信していきましょう。
気をつけるべきは「図書館中心で発信しないこと」です。あくまでステークホル
ダーのニーズに合わせて発信する必要があります。それは自己満足の発信なのか、
それとも世の中の人が興味・関心、ニーズがあり、知りたいと願っている情報な
のかを評価した上で発信しましょう。関心やニーズを知るためにも図書館を飛び
出し、色々なステークホルダーと対話をする機会を持つようにしましょう。
1.5 広報担当者に必要とされる知識とスキル
アメリカのパブリックリレーションズ協会が発表した「パブリックリレーショ
ンズに関する公式声明」には、「パブリックリレーションズの専門的実務に要求さ
れる知識は、コミュニケーション技術や心理学、社会心理学、社会学、政治学、
経済学、およびマネジメントと倫理の原則などが挙げられる。また、世論調査や
015ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
社会問題の分析、メディアリレーションズ、ダイレクトメール、企業広告、印刷
物、フィルムビデオ制作、特別イベント、スピーチ、プレゼンテーションに関す
る手法上の知識とスキルも要求される」とあります。
すべてのスキルをすぐに取得するのは難しいですが、常に意識をして能力向上
に努めましょう。広報・PR担当になれば、広くスキルアップできるチャンスで
もあるのです。
1.6 なぜ広報がうまくいかないのか
「がんばっているのに広報がうまくいかない!」と思うとストレスを感じるもの
です。限られた人員体制の中で、レファレンス・サービスなどの通常業務をこな
しながらの広報業務は、ときに負担を感じることもあるかもしれません。専属の
広報担当者を置けない図書館が大多数の中で、「全員広報体制」では、結局、何を
やっていいのかわからなくなることもあるのではないでしょうか。
つまり、実は一番の前提条件は、広報に対する「内部の理解の度合い」だという
ことです。広報は重要ではないと大多数の人たちが思っていたら、館内の情報収
集なども「めんどくさい」と思われかねません。スタッフや行政の関係者内で、「図
書館の広報・PRの重要性の共有」がされているかがポイントです。
もしかしたら図書館のスタッフ同士でも温度差があるかもしれません。一人が
イベントのアレンジやチラシづくりなどをがんばり、周りのスタッフは遠くで見
ながら「本業以外の仕事をやっている」などとコソコソ言うといった環境では、や
る気があったスタッフも広報に力が入らなくなってしまいます。
広報がうまくいっている状態とは、「誰に、何の目的を持って、どんな内容の
メッセージを送るのかを明確にした上で、受け取る側が情報源として使っている
ツールを使い発信した情報を、受け取った側が理解し、納得をしてくれた状態」
を指します。メッセージを届けたい人に届けたいメッセージがきちんと伝わり、
納得してもらえたら、それは成功といえます。
うまくいっていない広報はその逆の状態です。つまり「ステークホルダーの分
析を行わずに、これだけは抑えてもらいたいというゴールを明確にせず、メッ
セージ力の低い言葉で発信。受け取る側が情報源として使用していないツールを
使ったため、情報が届いてすらいない」状態です。では、うまくいかないケース
は、どこにその課題があるのか具体的に考えてみましょう。
016 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
最初の課題は、「ステークホルダーの特定」です。ステークホルダーごとに、
使っている言葉や関心が異なります。それに合わせて、メッセージの内容やデザ
インも変えていく必要があります。
また「ツールの選び方」があります。近年では、広報の際にチラシやポスターの
紙媒体のほかに、TwitterやFacebook、LINEなどのソーシャルメディアもツール
として使われるようになりました。ステークホルダーはどこから情報を入手して
いるかを考え、それを踏まえた上で、使う道具すなわち「ツール」を決めていく必
要があります。図書館によってはガイドラインがあり、ソーシャルメディアを使
えず、紙媒体のみというところもあるかもしれません。紙媒体しか使えないので
あれば、情報がいきわたるチャンネルを考えましょう。誰に情報をわたせば伝達
されるのか。川上にいる人に情報を渡して、口コミを起こしてもらいましょう。
学生の図書館サポーターを組織している大学図書館もあります。また公共図書館
も友の会の活動が活発なところもあります。広報も図書館サポーターの大切な仕
事として、図書館で行われるイベントなどの情報を広めてもらうようにしましょ
う。図書館内の限られたマンパワーでは、すべてのことをやれないかもしれませ
ん。周りにいるサポーターの手を借りて進めていきましょう。
2. 広報の目的とステークホルダー
ここまで述べた広報・PRの定義、理念、役割は、すべての機関・施設におい
て共通するものですが、機関によって目的が異なり実際に取り組む際の視点に違
いがあります。ここではまず、大学や行政における広報の目的を中心に見ていき
ましょう。
2.1 大学の広報
大学広報は、目的の異なる3つの広報活動が行われているといわれています。
そしてその目的ごとにステークホルダーがいます。
第一は「入試広報」です。これは入学志願者、保護者、高校教員を意識して行わ
れていましたが、近年は社会人入学も一般的になってきたため、多様化していま
す。またメディアを通じた広報のみならず、関心のある人たちに直接アプローチ
するオープンキャンパスを行う大学も増えました。
オープンキャンパスのときに、大学図書館ツアーを行うところもあります。教
017ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
員の著書を展示して、大学の研究成果を知ることができるコーナーや、大学に
入った後の生活をサポートする本を揃えるなど、大学に親しみを持ってもらう取
り組みは、図書館が行っている入試広報の一つです。たとえば、2013年、鹿児
島大学附属図書館では、オープンキャンパスの中で、図書館内マップに沿って
チェックポイントのクイズに答えながら図書館探検をする館内ウォークラリーを
開催しました。また島津家が所蔵していた『源氏物語』のほか、江戸から昭和初期
の古地図を展示・公開しました。入学志願者が楽しむだけではなく、保護者が関
心を寄せるであろう資料を揃えた企画です。
またビブリオバトルなどのイベントを大学図書館で行うことで、キャンパスに
足を運んでもらうようにしている大学もあります。オープンキャンパスでキャン
パス内を歩き疲れた参加者のために、大学図書館を休憩所として開放している大
学もあります。このように貴重な資料やスペースを持っている大学図書館は、大
学における入試広報においても強みとなります。
第二は「法人広報」です。大学という法人として、地域社会、自治体、文部科学
省を意識し、大学理念や社会的特徴、ブランドメッセージを継続的に発信する広
報活動となります。
大学で出している広報誌は、地域社会、自治体を意識しているのが大半です。
九州大学の「九大広報」は、「主に周辺地域の自治体、高校、企業など学外の方、
また九州大学の教職員、学生を対象とした広報誌です」としています。
第三に「教学広報」があります。これは大学の研究活動や研究機関について、教
員が企業や行政などへ広く伝える広報活動です。近年、大学を取り巻く社会状況
の変化や大学間競争の激化に伴い、大学と企業の産学連携や自治体との地域連携
の期待も強まり、教学広報に力を入れる大学が増えました。そして、大学図書館
は研究活動の成果を蓄積・発信する貴重な機関です。たとえば、明治大学は「平
成23年度未来経営戦略推進経費(経営基盤強化に貢献する先進的取組)採択事業」
として、教学広報の強化を一つの目的とした広報戦略本部を設置するなど、組織
全体として取り組む大学も増えています。
では、あらためて大学図書館のステークホルダーを考えてみましょう。
大学の中には学生、教員、事務局職員などがいます。また入試広報を考えると、
保護者、高校生や社会人の入学志願者がいます。外部には一般市民、企業、行政、
他の大学の人々などが考えられます。卒業生は外部の人ですが、以前は「大学の
018 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
中にいた人」です。このように、どちらにも関わっているステークホルダーもい
ます。
2.2 行政の広報
行政のステークホルダーは幅広いです。市民はもちろん行政職員、その地域に
関わりのある企業、商店、農家、学校、NPO、公共機関がステークホルダーとな
ります。また国や都道府県、外郭団体など関係のある機関もステークホルダーと
なりえます。
また一人の市民も企業で働くワーカーであり、子どもを持つ親であり、ボラ
ンティアでNPOに関わっているなど、一人で何役も担っている人たちもいます。
このような複雑な関係性が絡み合う中で、行政の広報は進められていきます。
1995年1月に起きた阪神・淡路大震災以降、住民の意識が変化していきます。
ボランティア元年といわれるように、1998年には特定非営利活動推進法(NPO法)
が施行され、NPOも自治体の広報に欠くことのできないステークホルダーとな
りました。また2000年には地方分権推進一括法が成立し、自治体は国からの機
関委任事務から法定受託事務を処理することとなり、地域の個性と主体性の発揮
を促していく方向に移行していきました。
この時期に「協働」の動きが出てきました。市民やNPO、企業を単体として見
るのではなく、協働していくことで地域の活動を盛り上げていくスタイルが取ら
れるようになったのです。現在、このような動きに合わせて、行政は広報のスタ
イルを模索している段階にあります。
自治体職員も、かつてのように広報誌を作成したり、ウェブサイトを更新した
り、住民からの苦情に耳を傾けるだけではなく、協働を行うために、組織を越え
て人と情報を結びつけていく力が必要となってきました。そのためには住民が必
要としている情報を得る必要があります。そのときに、公共図書館が持っている
情報の提供は強みであり、その実施のために役場との連携を制度化したり、役場
の中に図書室を設けたりしている公共図書館もあります。
たとえば横浜市中央図書館では、1999年から全国でも先駆けて、図書館によ
る行政サービス「庁内情報拠点化事業」を開始しました。これは市職員への業務支
援が市民の支援につながるよう、市役所内の各部署を対象に日常業務や新たな事
業の企画立案などのために必要な情報調査や資料提供を行う取り組みです。他の
019ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
都市の事例調査や、業務分野に関する最新の動向調査など、より専門的なレファ
レンスにも応えています。
この取り組みは現在も続けられており「横浜市の図書館2015」によると、横浜
市中央図書館は、市職員向けに庁内情報拠点化事業活用研修を実施したり、庁内
ネットワーク上でビジネス誌の最新号の特集記事の紹介をしたりするほか、「め
ざせ☆調査の星」と題したコラムを定期的に更新し、「図書館とのコラボレーショ
ン!~協力講演会・イベントのご紹介」「初めての庁内情報拠点化事業」「仕事で
使おう!ビジネス雑誌」といった、市役所職員が仕事に役立つ情報や、図書館活
用法、調べ方のヒントを紹介しています。
役場の中に図書室を置いている例としては、日野市立図書館が挙げられます。
日野市役所の中に市政図書室を置き、自治体の行政業務の支援と市民に対する情
報公開を行っています。
2.3 ステークホルダー別戦略の作成
ステークホルダーごとに関心は異なります。あらゆるステークホルダーの関心
を均等にカバーするのは難しいかもしれません。そこで、その時の経営戦略や行
政の計画の中で挙げられる重点項目により、多少の優先順位をつけることが必要
になります。また図書館で行われる企画によっても、ステークホルダーが変わっ
てくるかもしれません。
アメリカ図書館協会は、Everyday Advocacyという子ども向けの読書活動の充
実化を進めていくためのアドボカシーキャンペーンを行っています。そのキャン
ペーンサイトの中で、「鍵となるステークホルダーの識別化」というページを設け
ています。ステークホルダーも二層にわかれ、直接的ステーホルダーとして、す
べての年齢の子どもたち、両親、里親などで子どもの保護者となっている人、学
校、教員、デイケアセンターなどの教育関係者、学童保育やボーイスカウトなど
の組織を挙げています。また移民の子どもたちや障害がある子どもやその家族、
LGBTの子どもや両親にも考慮するとしています。間接的ステークホルダーとし
て政治家など影響力のある人たち、自治体や児童に関係する部局の職員、地元企
業、図書館を支援してくれるグループ、資金提供者や組織を挙げています。この
ように誰がキャンペーンに関わってほしいのかを明確にして、アプローチ方法を
考えていきましょう。
020 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
「ステークホルダー別戦略の作成」の際には、6W2Hに沿って考えていきます。
・ステークホルダーとの対話のテーマ[What]
・ステークホルダーの中でも特に対話したい相手[to Whom]
・対話に適切な広報手段や場所[How to、Where]
・適切な時期(タイミング)[When]
・費用対効果を考えた予算[How much]
・連携してほしい他部門の活動[with Whom]
・なぜそれをそのステークホルダーに伝えたいか・目的[Why]
たとえば「対話のテーマ」を「乳がん検診について広く知ってもらう」ことを挙
げましょう。これをテーマに企画展や勉強会を図書館で開くことを計画します。
まず、「特に対話をしたい相手」を考えます。乳がんは30代後半から増え始める
のが特徴でした。しかし近年では食事の欧米化などが影響していると考えられ、
20代など低い年齢層でも発症率が高まっています。今回は20代、30代の女性を
「特に対話したい相手」としました。
「対話に適切な広報手段」を考えたときに、この世代がどこから情報を得ている
021ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
かを考える必要があります。世代別の情報源についてさまざまな調査がされてい
ます。なかには自治体で調査を行っているところもあります。町田市は2012年
度に「『広報活動』に関する意識調査」を市内に在住する満15歳以上85歳未満の男
女3,000人を対象に調査を行いました。それによると20代女性の情報源のトッ
プはテレビで84.4%、次に高いのは家族・友人・地域の住民・職場や学校の人と
の会話、口コミで67.2%、3位のインターネットは65.6%となっています。一番
低いのは「地域の掲示板や回覧板」で9.4%にとどまっています。掲示板・回覧板
を情報源にしている層は50代女性で42.6%、60代女性の60.9%となっています。
家族からの口コミを期待するならば、掲示板・回覧板向けのチラシは母親層に届
くメッセージを書くのがよいでしょう。ダイレクトに伝えるならインターネット
を通じた広報が必要不可欠です。職場の口コミを考えると、地元企業に向けてお
知らせするのも一つの手段です。
「適切なタイミング」は、日本でも浸透してきた乳がんについて正しい知識を得
てもらうための世界的キャンペーン・ピンクリボンが行われる10月第3週の金
曜日の3週間前からとします。「予算」は、関連資料や展示のための装飾に必要な
備品を購入する費用が挙げられるでしょう。「連携してほしい他の部門」は地元の
医師会、企業、自治体の関連部門などが挙げられるでしょう。「目的」は、女性の
がんの発症率として一番多いのが乳がんであることを知ってもらうこと、そして
早期発見であれば命が助かる率も高いため、正しい情報を提供することが挙げら
れるでしょう。
このように6W2Hに企画を当てはめていくと、漏れのない企画書をつくること
ができます。
3. 伝える工夫と情報の見せ方
2015年まで勤務していたシャンティ国際ボランティア会で私が広報担当をし
ていたときに苦労したのが予算です。次年度の予算づくりの際に目をつけられる
のは、実体のわかりづらい広報費でした。もちろん広報がうまくいけば、ファン
ドレイジング(資金調達)も円滑に進む可能性が高くなるため、利益に直結する部
門ではあるのですが、いずれにせよ、予算編成の際にはいつもせめぎ合いをして
いました。そのときに思ったことは「自分でつくり出す言葉はタダ」ということで
す。それから言葉づくりには気合を入れるようになりました。
022 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
当時、私が担当したコピー、「いわてを走る!移動図書館プロジェクト」は、
2011年の東日本大震災後、図書館が大きな被害を受けた岩手県の沿岸部で行っ
ている移動図書館活動のネーミングです。移動図書館自体が車で走る活動であっ
たことと、震災を経験した岩手県の方たちが少しでも前に向かって進むためのお
手伝いをするイメージの単語を考え「走る!」としました。その町の復興という
ゴールまで走り続けないといけないのは東北の人たち自身です。復興は長いマラ
ソンのようです。「走る!」主体は東北の方たちです。シャンティは伴走しながら
皆さんの復興を応援していきたいと考えました。
武永勉の『こうだったのかNPOの広報』★1
には、「広報とは、団体自身や団体の
活動を『他人』に説明し理解してもらい共感や協力を得ること 」と書かれています。
これを読んでわかるように、私たちは全く知らない他人に、メッセージを伝えて
いかねばなりません。岡本欣也の『「売り言葉」と「買い言葉」心を動かすコピーの
発想』★2
では、相手とは誰かを考え、伝わる「ことば」を選ぶことの重要性が書か
れています 。
前出の項目「ステークホルダー別戦略の作成」では、ステークホルダーとの対
話のテーマについて触れましたが、「対話のテーマ」は同じでも、目的や見せ方
を変えたほうがよいケースもあります。ここでは大学図書館を事例に見てみま
しょう。
【事例】
大学図書館内で、大学の教員が行ってきた研究活動の資料を企画展示すること
になりました。入試志願者、企業、大学事務局に向けて、どのような目的で、ど
のように見せていけばよいでしょうか。
入試志願者に向けた広報・PRの目的は「大学に関心を持ち、受験してもらうこ
と」です。研究活動の資料とともに何を展示すれば、この層に関心を持ってもら
えるのでしょうか。たとえば、「この先生から学びたい」と思わせる人となりがわ
かるメッセージや、「大学で学べること」を知ってもらうことでしょう。となれば、
研究活動の資料と一緒に、教員の顔写真と入試志願者に向けたメッセージが書か
れたPOPや、入学志願者やその保護者にもわかりやすく説明した研究の内容を
展示することが有効なはずです。
企業に対しては、「大学との産学連携先としての関係づくりやその強化」などが
023ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
考えられます。研究活動の資料をきちんと保存・提供していることで、知の拠点
としての図書館として認識されるでしょう。企業と大学の産学連携の企画展を大
学図書館で行うとしたら、社会的インパクトや経済効果を数字やストーリーで展
示すると信頼度が高まるでしょう。
大学事務局に対しては、大学図書館の学内での存在価値を認めてもらうことで、
「活動への理解促進や予算を得ること」が広報の目的となるのではないでしょうか。
オープンキャンパスなどのイベントのときには図書館での取り組みに来てもらう
など、図書館に足を運んでもらうようにお願いしましょう。とはいえ、声をかけ
ても毎回、事務局が参加できるわけではありません。その際には、イベントや展
示会の感想や来場者数をまとめた報告書を送って、図書館のインパクトを常に伝
えていきましょう。そのためにもアンケートで参加者の声を集めるなど、情報の
収集も一緒に考えたパッケージをつくることが大切です。
広報・PR担当は常にステークホルダーは「何に共感するか」、「どのような情報
を得たら信頼してくれるのか」という、「共感メッセージ」を考えて企画の見せ方
を決めていきます。
3.1 ACTIONフレームワーク
共感メッセージをつくろうと思っても、どんな切り口で見せていけばよいの
か悩むこともあるでしょう。そんなときに思考の整理に使えるACTIONフレーム
ワークを紹介します。	
・A=Attention(注目)
情報があふれるこの社会では、キャッチコピーや思わず振り向いてしまう写真
など、相手が気にかける何かを仕掛ける必要があります。キャッチコピーでいう
と、流行している言葉を入れてみたり、学生が使う言葉で書いてみたり、届けた
いステークホルダーが使っている言葉を意識してつくってみましょう。写真は人
物が写っていると、思わず見てしまう傾向があります。
・C=Change(変化)
人は変化を見たいし、変化をしたい生き物です。「大学図書館に行ったら、ど
んな変化が自分に起こるのだろう」と期待している学生に答えを提示するような
キャッチコピーをつくりましょう。社会で活躍する卒業生に学生時代の図書館の
024 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
思い出をインタビューして「図書館があるから、今の僕がある」というような言葉
をつくれたら、在学生も未来の自分を想像するかもしれません。どんな変化をも
たらすかを言葉にしましょう。
・T=Trust(信頼)
どういった情報を見たら信頼してもらえるのかについて考える必要があります。
企業や省庁は研究成果の数字や大学の歴史に重きを置くでしょう。数字よりも、
ストーリーに感動する人もいます。展示やイベントの告知の際、ターゲットとし
たステークホルダーを意識して見せ方を決めていきます。
・I=Imagination(想像)
物語が、イメージを湧かせやすくします。Changeにも関係しますが、成功体
験や思わず伝えたくなる、嬉しいストーリーを物語や詩として見せていく方法も
あります。
・O=Only One(オンリーワン)
大学や大学図書館の「オンリーワンのポイント」を伝えましょう。コレクション
025ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
だったり、名物館長だったり、自分たちのウリとなっていることを言葉にしてい
きましょう。
・N=Network(ネットワーク)
図書館に来たら本や人とつながれる、知識がひろがる、情報とつながれるなど、
図書館に来ると得られる「つながりやひろがり」を感じさせる言葉は、目にした人
に希望を与えてくれます。
C=Changeの事例として、私がプロジェクトの構築とプロモーションを担当し、
クラウドファンディング の「READYFOR」で挑戦したプロジェクトでの経験をご
紹介します。このプロジェクトは、シャンティ国際ボランティア会が運営する陸
前高田市の仮設住宅団地の集会場にある図書室に置く書籍や本棚の購入費を集め
るというプロジェクトでした。この試みにどのようなプロジェクト名をつけるか。
READYFORはプロジェトタイトルの文字数が30文字以内と決まっています。言
葉を生み出すにあたり、私たちが考えたのは以下のポイントです。
1)どこで(陸前高田市で)
2)今どのような状態で(図書室はあるが空っぽ)
3)あなたが支援をしてくれたら、どんな状態に生まれ変わるか(本でいっぱい
になる)。
こうして、プロジェクトタイトルを「陸前高田市の空っぽの図書館を本でいっ
ぱいにしようプロジェクト」と名づけました。
BeforeとAfterを見せ、支援した後のことをイメージしやすいようにしたネー
ミングが功を奏したのか、目標額200万円のところ800万円を超える資金調達を
実現しました。
言葉づくりに迷ったら、このACTIONを切り口に考えてみるとヒントを得られ
るかもしれません。また一人でキャッチコピーをつくるよりも、何人かでワイワ
イと話し合いながら紙に書いていくと、思わぬ言葉が生まれることもあります。
まずは身構えずに、楽しんで言葉づくりをしてください。
026 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
4. ブランディング
ブランドは、経営やマーケティングにとって非常に重要なものとして認識され
るようになってきました。「ブランド(brand)」の語源は、「焼き印(burned)」から
といわれています。放牧する牛を識別するために施された焼き印ですが、ブラン
ドを考える時「識別」がキーワードとなります。
ブランドへの関心が高まってきたのは、アメリカでは1980年代終わり頃から
といわれています。アメリカでは自社の価値を高めることを目的としたM&A(合
併と買収)が行われるようになりました。また競合他社がいる中で、よく知られ
たブランドは消費者からの指名買いが行われたため、取引が有利に展開できると
いうメリットが認識されました。1990年代後半、バブル経済の崩壊で危機に立
たされた日本の企業はアメリカのトレンドを知り、ブランドに関心を高めました。
アメリカ・マーケティング協会によると、ブランドとは「個別の売り手もしく
は売り手集団の財やサービスを識別させ、競合他社の財やサービスと区別するた
めの名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたも
の★3
」と定義されます。
行政もシティプロモーションを行い、他の市町村との差別化を図っています。
また一番危機に立たされているのが少子化の影響を受けている大学です。近年、
大学ではユニバーシティ・アイデンティティを確立させて、他の大学との差別化
を図り、入試志願者を増やすための施策が取られています。
Elisabeth Doucettが2009年に出版した”Creating Your Library Brand”(American
Library Association)では、ブランディングの重要性について以下のような記述が
あります。
“Branding is important for every type of library [especially] public libraries that
have to continuously justify their existence in ways that and academic or special
library might not have to. However in an era when so much is available for free
on the internet it makes sense for every library to articulate its reason for being
in terms that are absolutely clear to both users and funders.★4
”
「ブランディングはすべての図書館において重要な事柄です。大学や専門図書
館が必ずしも行う必要がないと思われる、自分たちの存在を継続的に正当化する
027ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
作業は、特に公共図書館は行う必要があるといえます。インターネット上で無料
で多くのことが得られる時代において、利用者と資金提供者に、存在理由を明瞭
に表現していくことは、どの図書館にとっても意味があることなのです」
(翻訳:著者)
専門図書館は施設の専門性が明確です。逆に公共図書館は特徴がつけづらい施
設かもしれませんが、行っているサービスやその土地ならではの資料など、ほか
とは違う特徴が必ずあるはずです。それを説明することで他の公共施設や図書館
と識別化、差別化をするブランディングが成立するのです。社会教育、生涯学習
の拠点としての存在意義をしっかりと発信していきましょう。
4.1 自治体のブランディング~島根県海士町
2014年にLibrary of the Yearの優秀賞に輝いた海士町の取り組みを記憶してい
る人は多いのではないでしょうか。海士町は1950年代の7,000人をピークに人
口が減少。現在は2,400人が暮らしています。数字だけ見ると地方の過疎を絵に
描いたような離島だと思われるかもしれません。しかし人口の内訳を見れば、1
割強の361人がIターンで、それも20 ~ 30代が大半を占めます。「なくてもよい」
と「大事なことはすべてここにある」という2つの意味を持つ「ないものはない」を
キャッチコピーに島おこしをしています。
島の中央図書館と島にある保育園から高校までの学校を中心に、地区公民館や
港、診療所などの人が集まる場所を「図書分館」としてネットワーク化することで、
島全体を一つの「図書館」とする「島まるごと図書館構想」というユニークな取り組
みが行われています。2014年のLibrary of the Year授賞式で海士町教育長の佃稔
さん(当時)は、図書館を軸にした人づくりの推進を引き続き進めるとともに、「個
人が人間性を高める手段として、図書館サービスの充実は、離島でも都会に勝て
る一要素」と述べていました。「ないものはない」の精神のもと、図書館は居住者
を増やす施策の一つとなっています。実際、Iターン者や子育ての世代の人たち
が「あってよかった」、「ここを見て移住を決めた」と図書館に訪れ、コメントをし
ています。
海士町のウェブサイト(http://www.town.ama.shimane.jp/)を見ると、トップペー
ジにある「PR」のところに海士町中央図書館のバナーが貼られており、図書館が
島のブランディングにひと役を担っているケースとなっていることがわかります。
028 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
4.2 大学のブランディング〜近畿大学
2000年以降、日本における大学進学率は50%を超え、規制緩和のもとで大学
の新規参入が相次ぎました。大学の数は増えたのに18歳人口が大幅に減少する
「2018年問題」に直面し、日本の大学はかつてない危機に立たされています。す
でに少子化などを背景に、大学の定員割れや志願者減少が見受けられます。
しかし近畿大学のように、2015年度の受験志願者数は11万3,704人と、前年
度より7,814人も増加した大学もあります★5
。近畿大学では「マグロと教員」を
資産としたブランディングを展開しています★6
。世界初の完全養殖マグロ「近大
マグロ」は有名です。さらに「教員」も資産と考えた近畿大学は、在籍する教員約
1,200人のプロフィールや研究分野、顔写真などを掲載した「近畿大学教員名鑑」
をメディア向けに制作し、配布しました。教員にも協力してもらい、積極的なメ
ディアへの露出を促しています。
魅力ある大学として受験者を増やすために、どのようなコミュニケーション活
動を行えばいいのか、他の大学との識別化、差別化を図るために、ブランディン
グに力を入れる大学が増えています。ブランドイメージ戦略が、大学が差別化を
図る一つの方法として期待されているのです。
そのために、「自分たちの大学は何もので、何のために存在しているのか」とい
う自身の個性や存在意義を問い直し、「これからどうありたいと願うのか」という
理念を整理・再編する作業を行い、識別化や差別化のポイントを見つけ出してい
く必要があります。
4.3 公共図書館の中長期計画
「ブランド」もしくは「ブランディング」と「図書館」をキーワードに検索をしても
公共図書館はヒットされません。そもそもブランディングという言葉が公共図書
館で使われていないのがその理由として考えられます。その代わり、中長期計画
の中に「ミッション」として、組み込まれるケースが多いようです。京都府立図書
館が2016年3月に発表した「京都府立図書館サービス計画平成28年~ 32年」に、
広報・PRについての記述があります★7
。
「府立図書館の見える化の推進」の一環として、
・府立図書館のミッションの周知と事業の効果的な打ち出し
・SNS等の多様な広報媒体の活用
029ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
 ここで言及されているミッションこそ識別化、差別化された京都府立図書館の
ブランディングであり、その周知を行うことが認知を促進することにつながりま
す。
 ここで、ミッションがブランドになる例を、私の経験から書きましょう。シャ
ンティ国際ボランティア会は、5 年ごとに中期計画をつくります。2014 年~
2018年の中期計画は2013年に1年かけて海外の事務所を含め議論を交わしなが
ら目指すべき方向を確認し、作成していきました。中期計画を、スタッフや理事
など内部関係者だけではなく、広く外部の人にも知っていただき、ファンを増や
したいと考え広報計画を策定しました。まず行ったのは5年間の目標を言葉で表
すことです。その際に考えたポイントは下記の通りです。
1)団体が行う活動内容に合致していること
2)他の団体とは違う特異性があること
3)どう見られたいかというイメージと合致すること
 シャンティは主にアジアで図書館の設置や図書の出版、移動図書館の運営を
行っています。活動を通して文字を覚え、知識を吸収し、人の喜びや悲しみを理
解する人になってもらいたいという願いがありました。そこで生まれたのが「本
の力を、生きる力に。」という言葉です。またその言葉の浸透のためにロゴの作成、
名刺・リーフレット・Webサイトのデザインの変更、スタッフ内での理解の促
進のための取り組みを行いました。
4.4 ガイドラインの順守の重要性〜大学のブランディングを中心に
ブランド化の推進と同時に、広報の戦略も話し合われるケースが多くありま
す。その際に、ブランドの定義の中にある「使用する名称、言葉、記号、シンボ
ル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの」が確立されます。
図書館の広報誌やチラシなどで大学のブランドマークを使用する場合、使用方
法について、ブランドガイドラインがあれば、それを順守しましょう。ブランド
ガイドラインには主に以下のことが含まれます。
・ブランドマーク
未来に向けたメッセージや強みをシンボル化したブランドマークがあります。
こちらを使用する際には、縦と横の比率を変えるなど手を加えずに使用しましょ
う。JPGやイラストレーターのデータになっていますのでそれを使用して、印刷
030 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
物をつくります。またガイドラインの中には、好ましくない使われ方も示されて
います。確認した上で使用しましょう。たとえば、中央大学ではブランドマーク
とユニバーシティメッセージとの組み合わせる場合、「左右幅30mm未満でのブ
ランドマーク使用は禁止」と規定があります。
・ブランドステートメントやスローガン
その組織の全体を表すキャッチコピーが、ブランドステートメントです。ロゴ、
ブランドマーク、ブラインドステートメントには、それができるに至った背景が
あります。たとえば龍谷大学のスローガンは「You, Unlimited」です。その背景と
して「龍谷大学が提供する知識や様々な経験を通じて、学生一人ひとりが無限の
可能性を追求し、自らの未来を切り開いてほしいという意味と、直接的に“You”
と呼び掛けることで、学生たち一人ひとりと真摯に向き合う龍谷大学の姿勢を表
現しています」とあります。
また龍谷大学は、“Ryukoku Brand Navi”というブランドを浸透させるための
特設サイトを公開しています。活躍している学生や教職員の取り組みを紹介す
る「People, Unlimited」、様々な教育への挑戦を紹介する「Education, Unlimited」、
そしてグローバルな活動を取り上げた「World, Unlimited」の3つのテーマで大学
のブランド力向上に向けたメッセージを発信しています。
・スクールカラー
ブランドマークとともにスクールカラーも決まっています。目で見て「多分こ
の色」と自分で判断せずに、CMYKの割合を確認しましょう。CMYKは色の表現法
の一種でシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四成分のことです。これらを
何パーセント配合するかが事細かく決まっています。印刷所にこの割合を伝えれ
ば、注文に沿った色を使ってくれます。
東京農工大学は「ブランドマーク・校章」のウェブページに色指定についても表
記しています。
・デザインマニュアル
印刷物ごとにデザインマニュアルがあります。デザイン例に示してある位置や
色を変えることはできません。名刺、封筒、レターヘッド、パワーポイント、ペ
ナントなどテンプレート化されているものもありますので、それを使うようにし
031ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
てください。
スクールカラーのところでも例を挙げた東京農工大学は、ウェブサイトに名刺、
レターヘッド、パワーポイントのデザインの指定を掲載しています。
4.5 ブランドとの調和と推進~龍谷大学を例に
大学のブランディングを推進し、ロゴなどを含めたシンボルができても、使用
されなければ意味をなしません。またブランディングを推進する目標は、大学が
他と識別、差別化された状態で社会に認知してもらうことです。そのためにも積
極的な発信が不可欠となっています。龍谷大学では2010年から2019年までの第
5次長期計画「龍谷2020」が策定されました。その中に広報活動の基盤となる広報
基本戦略が定められ、広報に関する事項が書かれています★8
。
・新ブランド構築に向け、その原動力となる学内構成員(教職員・在学生)・卒
業生への浸透活動を行う。
・学内外へのブランド浸透は、メディアを取り巻く環境変化を考慮し、既存メ
ディアに加えて、ソーシャルメディア等から、最も有効なものを活用情報発
信する。
・新ブランドデザインを様々な広報物等に導入し、社会において蓄積された 本
学のイメージを新たにする。併せて、学内構成員のブランドへの理解・共感
を促進する。
・今後制作する広報物において、新ブランドのイメージを統一するため、指針
や模範となるデザインサンプルの開発や、制作指示等を記載したガイドライ
ンを整備し、長期的にブランドイメージを維持できる仕組みを構築する。
・ブランド浸透の推進にあたっては、学生および部局横断的な教職員をメン
バーとするブランド浸透プロジェクトチームを設置し、多様な意見を取り入
れつつ、施策の検討を進め、浸透活動に取り組む。
これを読んでわかるように、教職員や在学生、卒業生への浸透活動が最初のス
テップとなります。また制作する広報物において新ブランドのイメージを統一す
るため、デザインサンプルを開発していく記述があります。
ロゴなどを管理する部局と話し合い、広報物と広報戦略との統一化などについ
て話し合いの時間を持ち、方針を決めていきましょう。
032 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
多くの学生が集まる大学図書館だからこそ、ユニバーシティ・アイデンティ
ティの浸透のためにできることがあります。ガイドラインを順守しながら、チラ
シなどの印刷物にロゴなどを使うことはもちろん、コーポレートカラーを意識し
たサインをつくる、ロゴ入りの栞などのグッズをつくり学生に配布するなど、広
報・PRのサポートを行いましょう。
このように大学のブランディングの取り組みは大変参考になります。ブラン
ディングガイドラインなどをインターネットで公開している大学も多いので、
チェックしてみてください。
5. オンラインとオフラインを融合して見せる
オンラインとはインターネットに接続されている状態です。オフラインはその
逆で、インターネットに接続されていない状態のことをいいます。オンライン、
オフラインという切り口で広報ツールを考えてみましょう。
いままでは、掲示板、パンフレット、チラシなどオフラインの広報媒体が中心
でした。近年では、インターネットが普及しウェブサイト、Facebook、Twitter、
LINEなどオンラインメディアが台頭し、スマートフォンが広まるなかで、ちょっ
とした待ち時間や電車の中でもPCを開くことなく、インターネットにアクセス
できるようになりました。特に顕著なのが10代、20代です。たとえばマイナビ
が2015年3月に大学を卒業予定の学生を対象に行ったライフスタイル調査によ
ると、大学生のスマートフォン保有率は93.1%で、ほとんどの学生がスマート
フォンを保有しているという結果がでました★9
。2012年卒の学生のスマートフォ
ンの保有率は16.4%だったので、この3年間で急激に数字が伸びていることがわ
かります。また、日本労働組合総連合会(連合)の調査によると、大学生・大学院
生・専門学生の56%がソーシャルメディアを、29.3%がまとめサイト・ニュース
アプリを主な情報源であると返答しています★10
。
このように、人々のライフスタイルが変化しているなか、大学図書館はもちろ
ん公共図書館もそれにあった広報の仕方を考える時期にきているといえます。
ではオフラインの媒体から見ていきましょう。
5.1 オフラインの媒体
オフラインはインターネットに接続されていない状態と説明しました。つまり
033ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
オフラインの媒体は、ステークホルダーが直接、目にし、手にしたりできる媒体
です。
5.1.1 利用案内
図書館には多くの種類のオフラインの媒体が用意されているかと思います。ま
ずは図書館の利用案内のパンフレットが挙げられます。利用案内の中には、アク
セスマップ、住所や電話番号などの連絡先、開館時間、休館日、利用登録条件、
貸出と返却の方法、予約の方法、レファレンス・サービスの受け方、コピー機な
どの設備の利用、閲覧室や学習席などの施設の利用など、基本的な情報を漏れな
く載せるようにしましょう。
大学図書館の場合、資料の貸出や閲覧ができる協定校があれば、その大学名も
載せるとよいかもしれません。学習院大学図書館のパンフレットには、國學院大
學、明治学院大学など山手線沿線の大学でつくる「山手線沿線私立大学図書館コ
ンソーシアム」協定校の情報が載っています。
地域によっては、外国籍の住民が多い自治体の図書館もあるでしょう。埼玉県
川口市は2016年の統計によると人口565,043人中、外国人が27,641人と人口の
約5%が外国籍です。川口市のように外国人人口の多い自治体は、日本語のみな
らずそこに暮らしている外国人に合わせた利用案内を用意しているケースが見ら
れます。また郷土資料、AVコーナーなど、施設のコーナーごとに使い方を説明
した利用案内をつくっているところもあります。
大学図書館を見てみると、利用案内をステークホルダーごとにつくっている大
学があります。帝京大学メディアライブラリーセンターは「学生版」、「大学院生
版」、「教職員版」はもちろん、利用資格のある八王子市、日野市など近隣地域の
満18歳以上の社会人と卒業生や退職した教職員用の「地域利用・校友版」の4種
類を用意しています★11
。
学生版は「気分にあわせて、スタイルにあわせて」、「充実のメディア利用環境」
などのキャッチコピーが書かれており、まずは気軽に大学図書館に来てみてくだ
さい、という雰囲気を出しています。図書館内のマップには基礎図書コーナー、
AVコーナー、PCステーション、新聞・一般雑誌などが示されています。基本図
書コーナーには「コミックもある!」、AVコーナーには「映画・音楽が楽しめる」、
PCステーションは「レポート作成からインターネットまで」というコピーが入っ
034 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ており、大学図書館の楽しみ方が表現されています。
大学院生版は蔵書検索、オンラインデーターベース、学位論文閲覧、大学図書
館に資料がない場合の他機関の利用方法、研究のための資料検索についての情報
が中心に書かれています。地図にも「情報検索を強力サポート」利用相談デスク、
「静かな環境で研究や読書ができます」という言葉を添えて院生・研究者閲覧室の
紹介がされています。
教職員版には資料の選書と購入、研究費などについての情報が書かれています。
またマップにも、「各5席の静かな環境です」という説明書きとともに、教員閲覧
室が示されています。地域利用・校友版には、利用資格の説明、利用登録の仕方
や貸出・返却について書かれています。来館できない場合は、簡易書留や宅配便
での返却ができることを案内しています。もちろん着払いができないことについ
ても記載しています。
このようにステークホルダーによって知りたい情報、知ったほうがよい情報は
異なります。帝京大学メディアライブラリーセンターの利用者案内は、それを考
慮したものとなっています。
5.1.2 広報誌
他のオフラインメディアとして、図書館報のような広報誌が挙げられます。職
員が自分たちでつくっているものから、外注に出し、雑誌のように仕上げている
ものまでさまざまです。札幌市立大学附属図書館の広報誌「のほほん」では、デザ
イン学部・大学院デザイン研究科の学生が図書館のイラストや表紙のデザインを
担当するなど、学生の専門性を生かしたかたちで参加をしてもらうケースも見ら
れます。
利用者案内と同様に広報誌をステークホルダー別につくっているところがあり
ます。西宮市立図書館では一般向けに広報誌「まつぼっくり」、児童向けに「しゃ
ぼん玉」を発行・配布しています。
名古屋市図書館ではティーンズ向けに広報誌「ごちゃっと」を発行しています。
名古屋市図書館に限らずティーンズ向けの広報誌をつくるときには、地元の中学
生や高校生が参加して企画から編集まで行うケースが見られます。
広報誌の企画を立てるためには、やはりターゲットを誰にするかを明確にする
ことが大切です。また、読まれないと意味をなさないために、配布方法も考慮す
る必要があります。時代のニーズを読み、それに合致した編集方針のもとで発行
035ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
広報誌の制作のステップを考えてみましょう。まずは企画です。このときに目
的、ターゲット、校正、デザイン・イメージを話し合います。デザインのイメージ
では自分たちのブランディングガイドラインを確認し、また図書館がターゲットに
どのように見られたいかを話し合いましょう。「やわらかい」「固い」「活発的な」「静
かな」など、自分たちの図書館がこう見られたいという思いとともに言葉を出し合
うと、イメージが固まってきます。
次に原稿制作です。企画の際に決まった構成に基づいて記事を書いたり、集めた
りしていきます。自分で執筆することもあれば、関係する外部への原稿依頼や、イ
ンタビュー取材を行う場合もあるでしょう。原稿が集まったら、編集・レイアウト
に入ります。デザイナーを抱えている印刷所の場合、編集・レイアウトから印刷ま
で一括してお願いすることができます。外注せずに図書館の職員がつくっている場
合も多いでしょう。いずれにせよ、原稿をもとに、適した写真やイラストを組み入
れていく作業となります。編集・レイアウトが終わったら、データを入稿して印刷
に入ります。
つくった原稿がそのまま印刷にかかり、納品されるわけではありません。正しく
印刷されるかを確認する「校正作業」を行います。最初の校正刷は初校と呼ばれてい
ます。原稿との引き合わせ作業や素
す よ
読みの作業を行います。間違いなどあれば赤字
で示していきます。印刷所に初校の原稿を戻すと、印刷所は二度目の校正刷を作成
します。それが再校となります。通常でしたら、初校、再校、3度目の確認作業の
三校、色指定に対し正しく印刷されるか確認する色校、印刷しても差し支えない状
態か確認する校了とチェックを行っていきます。
初校は記事を書いた人、インタビューを受けた人にも確認してもらうと、間違っ
た表現で載せてしまったがために、お詫びと訂正の紙を用意して挟み込む作業や、
最悪、印刷が終わったのに配布できないということが防げます。印刷された広報誌
が手元に届いたら終わりではありません。企画の時点で決めたターゲットに届け
て、本来の目的が達成されます。「図書館は楽しいよ」というメッセージを発信する
ことで、あまり利用していない学生や住民に来てもらうことを目標に掲げながら、
広報誌を図書館だけに置いていては意味がありません。すでに図書館に来ている人
が手に取ることになるからです。大学図書館であれば学食やラウンジなど、学生が
集まっている場所、公共図書館なら市役所や市が主催するイベントでも置かせても
らうなどの配布計画も企画段階から決めておきましょう。
広報誌をつくってみようColumn
036 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
する必要があります。発行側のメッセージだけを一方的に送っているものはメッ
セージ誌であり、広報誌ではありません。受け取る側が何を欲しているかを考慮
する必要があります。広報誌は、行っている活動の内容を多角的にメッセージす
るメディアであり、読みものとしても、ビジュアルにおいても、編集方針づくり
や企画段階での創意と工夫が求められます。
図書館と図書館にかかわる人たちのサイト「Jcross」の「コレクション」に、公共
図書館、学校図書館、大学図書館の「図書館便り」として図書館広報誌のリスト
が、集められています★12
。見てみると、「○○図書館だより」というタイトルの
ものが多いのですが、中には岩手県立図書館のフリーペーパー「PECCO(ぺっ
こ)」など地元発の言葉を広報誌のタイトルに採用し、県のブランディングの推進
と、図書館の広報・PRが融合したものもあります。また埼玉県寄
よ り い
居町立図書館
の「KIZZY通信」は寄居町の鳥、"雉(きじ)"にちなんでいます。町内外の人たちに、
町について知ってもらう機会となるのではないでしょうか。
そのほかにも龍谷大学図書館の「来
らい
・ぶらり」、学習院大学図書館の「来
らい
ぶらり」、
創価大学附属図書館のニュースレター「ほっ TOSHOKAN」のように図書館をも
じったものもあります。  
また、図書館を使うことでこうなってもらいたいというイメージの言葉を、館
報のタイトルにしている図書館もあります。南山大学図書館はギリシャ語で「力」、
「可能性」を意味する「デュナミス」を、大阪府立大学学術情報センター図書館はギ
リシャ語で「明日」を意味する言葉「アウリオン」を館報のタイトルとして掲げてい
ます。
筑波大学附属図書館は「全国の大学図書館報」のリンク集★13
をつくっています。
近隣の図書館以外の図書館報は、あまり目にできないかと思います。先ほど紹介
した「Jcross」やこちらを参考にデザインや内容などをチェックして、自分たちの
広報誌の企画の充実を図りましょう。
5.1.3 チラシ
本やイベントなどを紹介するA4一枚、もしくは両面を使ったチラシをつくる
図書館も多いでしょう。オンライン、オフラインの媒体という切り口でみると、
紙媒体はオフラインのダイレクトメディアでもあります。印刷メディアは手元に
残して置ける、保存性がある、相手と一対一の感覚でメッセージを伝えられると
いうメリットもあります。オンラインではソーシャルメディアを通じて、たくさ
037ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
んの情報を受け取っている気になりますが、タイムラインが流れると、興味・関
心を持ったことも、数分したらその情報が見られなくなることもあるでしょう。
「あれ、これ面白そう」と手にしたチラシのほうが、長期的に手にした人が触れる
情報源になる可能性もあります。そのためには、手に取ってもらうチラシをつく
るときに考慮すべきことがあります。キーワードは「インパクト」です。特に「書
き出しの一行」で決まるといわれています。その言葉を見た人に「それは自分のこ
とだ」と気がついてもらうことです。
では就職活動を例に取って考えてみましょう。就活は学生にとって人生の大
きなイベントです。就活に関するイベントや企画を図書館でするときは、学生
が「何を基準にして就職先を選んでいるのだろう」、「就活で直面している悩みは
何だろう」という視点から考えてみましょう。マイナビが2015年6月に発表した
「2016年卒マイナビ大学生就職意識調査★14
」の結果によると、「絶対に大手企業
がよい」と回答した学生は6.9%、「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手
企業がよい」の36.0%を越えて数値が高いのが、「やりがいのある仕事であれば
中堅・中小企業でもよい」の42.6%となっています。しかし大手企業に比べて中
堅・中小企業の情報は入手が難しいかもしれません。
法政大学図書館は、データベースを活用して就活を応援するセミナーを開催
しました。このような取り組みは全国的にされていますが、チラシにあるこの
企画のタイトルは「データを制して運命の企業と出会う」でした。「データを制す
る」という図書館の強みと、中堅・中小企業にも目を向けた学生が「運命の企業
と出会う」ことができるかもしれないという期待が感じられるタイトルになって
います。
その他にもチラシをつくる際に考慮すべき点を挙げます。それは「写真やイラ
ストは小さくてもインパクトは強い」ということです。何かを文字で説明すると
相当の文字数が必要なことも、画像が一つあるだけでイメージが湧くことがあり
ます。「疑問形を使う」というのも一つのテクニックです。「やりがいがある仕事
が見つかる」という企画よりも、「やりがいがある仕事はどうやったら見つかる
の?」と疑問形にしたほうが、悩んでいる学生にとっては自分ごととして捉える
可能性が高いのです。
038 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
名古屋市図書館が発行するティーンズ向け広報誌「ごちゃっと」の展示の様子。撮影:岡本真
紫波マルシェの売り場で紫波町図書館が料理本をPOPで紹介。オガール紫波株式会社ホームページより
039ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
水戸市立西部図書館のInstagram。館内の写真以外にも、さまざまなテーマで紹介している。
https://www.instagram.com/seibu_library/
投書箱に入れられた質問を、ネット上で回答する京都大学吉田南総合図書館のウェブサイト「SUGGESTION[投書箱]」。
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/yoshidasouthlib/news/suggestion.html
040 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
5.1.4 展示・本の紹介
町を歩いていると、デパートやセレクトショップのディスプレイが目に飛び込
んできます。その各店舗が、商品の紹介をしながらも、店に入ってきてもらうた
めのアレンジをしています。銀座のシャネルは建物全体が電光掲示板となってお
り、1階の通りのみならず、ビル全体を使いアピールをしています。高級ブラン
ド激戦地では、気合の入ったディスプレイが見られます。展示自体がダイレクト
メディアとなります。
大学図書館の場合、何気なく目に飛び込んできた展示の棚に関心を持ち、図書
館の中に入る学生もいるかもしれません。これらは棚自体が「掲示板」となります。
またイベントのチラシと違い、イベント開催日までの「間が空く時間」もありませ
ん。関心を持てばその場で手にして、貸出を受けるなどのアクションに結びつけ
られます。
そのためにも図書館の外にいても目につく場所に棚をつくる、文字を大きくし
た看板を置き外から見えるようにするなど、気にかけてもらうための工夫が必要
です。
その他にも栞、入り口に置く黒板、ポスター、サインなどさまざまなオフライ
ンの媒体があります。どの媒体も、誰に何を伝えたいのかというステークホル
ダーと目的の分析をして企画をつくりましょう。
さてディスプレイをしても、建物の中のみで行っていたら、図書館に来る人に
しか目に留まりません。それを解消するためにも他の部署と連携して図書館の外
で展示などを行うとよいでしょう。岩手県紫
し わ
波町の紫波町図書館は、農業支援の
一環として、紫波の農畜産物や加工品を中心に生鮮三品(青果・肉・魚)が毎日豊
富に並ぶ紫波マルシェの売り場に、図書館おすすめの料理本の紹介POPを置い
ています。その本は図書館で貸出を受けることができます。
次はウェブサイトやソーシャルメディアなど、オンラインの媒体について考え
ていきましょう。
5.2 オンラインの媒体
インターネットの普及によって、情報の即時的公開が行われるようになりまし
た。それまでは公開可能な情報を体系的に探すことが困難でしたが、ウェブサイ
トを見れば公開情報が体系的にまとまったかたちで見られるようになりました。
企業のウェブサイトを見てみると商品の案内だけではなく、会社の情報、専門的
041ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
な財務情報、CSR活動など多様な情報が載っています。
またソーシャルメディアの台頭で、コメントをする、拡散するなど、情報の出
し手と受け手が気軽にコンタクトを取れる時代になりました。それゆえに誹謗中
傷されるなどのリスクもあるため、情報の出し方に細心の注意を払う必要もあり
ます。
スマートフォンが普及しているいま、オンラインの媒体は無視ができなくなっ
ています。特徴を知り、ガイドラインを整えながら、活用していきましょう。
5.2.1 オンライン媒体の3つの特徴
オンライン媒体を用いた広報・PRの特徴は3つあります。一つ目は「情報の即
時性」。ウェブサイトも、お知らせやイベントページなど簡単に更新できるよう
に構築されたものが増えてきました。また講演会などでTwitter中継をし、話の内
容を即時に外部に伝えることも可能となりました。また動画中継を用いると、リ
アルタイムで同じイベントをPCやスマートフォンで見ることも可能になりました。
二つ目は「双方向性」です。ブログ、Twitter、Facebookに代表されるソーシャ
ルメディアの発達により、コメントを書く、リツイートする、双方向のコミュニ
ケーションがウェブ上で取られるようになりました。利用者からの質問・意見・
要望を紙に書いてもらう「投書箱」を置いている図書館もありますが、ソーシャル
メディアを使用すると、どこにいても質問・意見などを伝えることができます。
三つ目は「ボーダレス」です。先ほど「どこにいても」と述べましたが、外国
にいてもインターネットに接続できれば日本の情報を受け取れる時代です。
Facebookを見ていても、研修会などで知り合った図書館員同士が、Facebookで
友達申請をして、お互いの図書館での活動にコメントを残しているのが見られま
す。大学図書館でも、保護者が自分の子どもが通っている大学のウェブサイトを
見て、行われているイベントなどがわかるようになりました。チラシなどのオフ
ライン媒体は、大量に印刷しない限りは大学の中だけで消費されています。魅
力的なイベントも、大学のキャンパスの中でしか情報を入手できませんでした。
ウェブサイトやソーシャルメディアで見せることにより、受験を考えている高校
生や保護者が見つけて関心を持ってくれるかもしれません。「ボーダレス」である
ことは、外部の人たちに図書館について知ってもらえるチャンスでもあります。
それまでは訪問したり、資料を取り寄せたりしなければ情報が得られなかった他
の図書館について、オンラインで検索すればすぐに見られる時代になりました。
042 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
メディアには情報を貯蓄するストック型と情報が流れていくフロー型の2種類
があります。もちろん、フロー型の情報も貴重な情報であることには間違いあ
りません。ウェブサイトにFacebookやTwitterのアイコンを置く、もしくは書き
込みが表示されるように埋め込んで、フロー型の情報もウェブサイトで貯蓄して
いきましょう。ソーシャルメディアを活用している図書館のウェブサイトでは、
トップページにFacebook、Twitter、アイコンやバナーが置かれています。この
ようにソーシャルメディアで書かれたものを、ウェブサイトからリンクで飛んで
見ることができるようにしましょう。
5.2.2 ウェブサイト 
ほとんどの図書館がウェブサイトを持っています。きちんとしたウェブサイト
があることが信頼につながります。そのためにも、ウェブサイトは図書館につい
ての情報が漏れなく組み込まれていることが大切です。
そしてこの点はオフラインの場合と同じく、誰が読むのかを考慮してデザイン
をしましょう。江東区立図書館は、通常のウェブサイトのほかに、「こうとうく
りつとしょかんこどものページ」、「TEENのページ」を用意しています。子どもの
ページは、漢字にひらがなでフリガナがふられ、子どもが自分で読んで図書館の
利用の仕方を学び、新しく入った本を手軽に知ることができるようになっていま
す。
また年代だけではなく、外国籍の住民や障害者に配慮している図書館も多くあ
ります。2015年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
(障害者差別解消法)が施行され、図書館もそれを配慮していく必要が出てきま
した。大阪市立図書館のウェブサイトのトップページの右上に、「音声読みあげ、
文字拡大、色を変更」のバナーがあります。そこをクリックすると下にパレット
が出てきて、自分でウェブサイトの文字や色などを調整したり、音声で聞いたり
することができます。
また同館のウェブサイトでは、同じくトップページの右上に日本語、英語の他
に中国語、韓国語に対応する言語切替のリンクを設けています。他の言語を用い
る人で英語、中国語、韓国語を解さない人は日本語で読むしかありません。「や
さしいにほんご」を入れるのは、そうした人への配慮となっています。
次にソーシャルメディアについて見ていきましょう。ソーシャルメディアは
043ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
「ウェブ上で広がる社会的会話」ともいわれています。まさに特徴にあった「双方
向性」が生み出される場でもあります。私たちも会話をしやすい人、しづらい人
が存在するかと思います。それはウェブ上でも同じです。思わず話しかけたくな
る書き込みとは何かを考えていきましょう。
ソーシャルメディアの例としてブログ、Facebook、Twitter、LINEを例に挙げ
ますが、各自特徴があります。それを押さえていきましょう。
ブログは記録・レコーディングに優れています。Twitterはタイムラインに情
報がどんどん流れていきます。ただリツイートされたり、ハッシュタグを活用す
ると情報が拡散されるなどの特徴があります。FacebookもTwitterのようにシェ
アされると情報が拡散されますが、基本的に友達同士・コミュニティ内でのやり
とりになります。Twitterはオープンな媒体ですが、LINEは友達になった人との
やり取りとクローズドです。
Facebookを活用している人も多いと思います。コメントや「いいね!」がたく
さんつき一見盛り上がっているように見えますが、上記で述べた通り、知り合い
のコミュニティの中でのやり取りです。外へのアンテナを立てるためにはオープ
ンな媒体であるブログやTwitterに書き込み、反応を見るのがよいでしょう。
友達が読んで喜ぶ文章と、オープンに色々な人の目に止まる文章は、書き方や
書く内容も変わってきます。それを意識しましょう。
情報鮮度 情報の広がり 情報の公共性
ブログ レコーディング 貯蓄/ロングテール オープン
Twitter リアルタイム 拡散 オープン
Facebook レコーディング/リアルタイム 拡散/貯蓄 クローズド
LINE リアルタイム 拡散 クローズド
*LINEは厳密にはSNSとは異なりますが、「友だち」になることにより、個々のやりとりをまとめて手軽に
できるという特性を重視してSNSと同等のものとして扱っています。
044 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
5.2.3 ブログ
ブログは文字制限もなく、写真も入れることができます。近年、Facebookや
Twitterなどで短い文章を書くのに慣れてしまった人にとって、ブログを書くの
は億劫になるかもしれません。ただしっかりとしたメッセージや活動の記録を貯
蓄するにはブログが最適です。
ブログの特徴として記事をカテゴリーにわけて保存できます。カテゴリーが
表示できるので、関心に合わせて関連の記事を読むことができます。鶴見大学
図書館では、図書館のサービスや業務内容をお知らせする「鶴見大学図書館ブロ
グ」を更新しています。「企画展」「図書館ガイダンス」「図書館広報」「学生選書
ツアー」「授業支援」「貴重書の紹介」「業務紹介」など、15のカテゴリーにわか
れています。
上記にも述べた通り、短い文章に適したツールに慣れると、ブログを書くの
が億劫になってしまい、更新が止まってしまうケースも見られます。その中で
きちんと更新をされているのが、大阪狭山市立図書館(http://blog.goo.ne.jp/
sayamatrc)、豊橋市図書館(http://ameblo.jp/toyohashi-city-library/)、鯖江市図
書館(http://ameblo.jp/sabaeto/)などです。豊橋市図書館や鯖江市図書館のブロ
グでは、書いた人のニックネームが書かれています。一人のスタッフではなく、
いろいろなスタッフがローテーションで書いていることがわかります。またほぼ
毎日新しい記事が書かれています。また、鯖江市図書館のブログの名前は、図書
館の名前を略した「さばと(【鯖】【図】)」をもじった「さばとごはん」。思わず突っ
込みたくなるタイトルです。
図書館でのイベント紹介のみならず、その町の歴史や見どころを丁寧に紹介し
ているのが桑名市立中央図書館スタッフのブログ「ブックとラック」(http://kcl.
kuwana-library.jp/blog/)です。2016年5月現在までに桑名・三重について121の
記事が更新されています。桑名城やお祭り、桑名市博物館が所蔵している木簡に
ついてたくさんの記事が書かれています。ブログの記事の最後には、関連する資
料の紹介やウェブサイトもリンクしており、さらに調べてみたい人たちが参考に
できるようになっています。桑名市の観光や研究にも役立つ情報満載のブログは、
資料を扱う図書館員だから書ける記事でしょう。
またブログの中には、本に関係するサイトのブログパーツを貼りつけている
ものもあります。栃木市大平図書館のブログ(http://lib-ohira.blogspot.jp/)には、
045ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ウェブ本棚サービス「ブクログ」のブログパーツを使い、図書館の本が表示される
ようにしています。
公共図書館の友の会のメンバーが、図書館で行うイベントなどの取り組みに
ついて書いているブログもあります。田原市図書館サポーターズ「おおきなか
ぶ」(http://okinakabu.dosugoi.net/)、小平図書館友の会ブログ(http://yamaoji.
cocolog-nifty.com/kltomonokai/)などが挙げられます。図書館の広報・PRは図
書館だけではなく、図書館を応援してくれるステークホルダーにもお願いして進
めていきましょう。「ACTIONフレームワーク」(p.024)にあったように「ネットワー
ク(つながりや、ひろがり)」を感じてもらうことが大切です。ひと気のない公園
に入るのはためらいますが、人の声が聞こえる公園のほうが入りやすいのと一緒
です。図書館員はもちろん利用者の存在が感じられる場所にこそ、入りやすさを
感じるのではないでしょうか。
5.2.4 Facebook
Facebookは手軽に記事をアップできるので重宝されている媒体です。コメン
トを書く、返信することが楽にできます。Facebookページを見て共感し、続け
て情報をもらいたいという人が「いいね!」ボタンを押すと、そのFacebookペー
ジのファンとなります。記事を更新すると、「いいね!」を押した人たちのタイム
ラインに情報が流れる仕組みになっています。ただFacebookページは原則「い
いね!」を押している人に情報を届ける媒体です。ファンになってくれた人との
関係性を深めるには適したツールですが、まずは「いいね!」を押してもらうため
に、ウェブサイトのトップページやブログにFacebookのアイコンを置くなどし
てその存在を知ってもらうようにしましょう。
熊本学園大学付属図書館のウェブサイトには、トップページにFacebookのバ
ナーとTwitterのタイムラインが埋め込み表示されています。Facebookを見ると
展示のお知らせだけでなく、高校生の大学訪問や蔵書点検の様子などバラエティ
豊かな記事が投稿されています。コメントにも返信しており、ツーウェイ・コ
ミュニケーションの確立がなされています。
Facebookの運用ポリシーをウェブサイトで公開しているのが東京都立図書館
です。東京都立図書館のトップページにある「Facebook」のバナーをクリックす
ると、まず運用ポリシーが書かれたページに飛ぶようになっています。運用ポ
リシーには、1.目的、2.内容(どのような記事を書くか)、3.返信等への対応、
046 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
4.知的財産権、5.注意事項、6.免責事項、7.運用ポリシーの変更について
の7項目が書かれています。運用ポリシーをまだ文章化していない図書館があり
ましたら参考になるサイトです。
5.2.5 Twitter
Twitterはきわめてシンプルなコミュニケーションツールです。開館時間、お
ススメ本、講演会の中継、忘れ物の案内などTwitterを使って行っている図書館
もあります。
「もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図
書館へいらっしゃい」という Twitter のつぶやきで有名になった鎌倉市図書館
(https://twitter.com/kamakura_tosyok)のように、140字の中に込めたメッセー
ジが拡散され、社会現象になることもあります。鎌倉市図書館はゴールデン
ウィークの観光ラッシュを前に「天気が良ければてくてく♪徒歩が一番効率的で
早いかも。レンタサイクルって手もありますが、鎌倉は道が狭いので、十分気を
つけてくださいまし。安全第一、賢く楽しい鎌倉の休日を☆」と観光客への情報
も提供しています。また館内には「今日は何の日」という展示スペースを毎日つ
くっており、それが写真と一緒に紹介されています。2016年4月21日には、『免
疫の意味論』の多田富雄の忌日として、「免疫力」関連の本の展示をされていました。
メジャーな記念日のみならず、あまり知られていない日を紹介することで、新た
な気づきをもたらしてくれます。
ちなみに2016年4月21日のツイートには「『笑い』が免疫力を高めるともいわれ
ていることから、笑いの本も集めてみました。「笑う門には福来たる」の通り、お
腹を抱えて笑っていると、病気のほうも遠ざかっていくのでしょうか?」という
つぶやきも書かれていました。短い中にも企画の内容や意図が伝わる書きぶりを
いつもされている図書館です。
Twitterは気軽に書き込める分、デメリットとしてはタイムラインからすぐに
流れてしまうこともあります。残したい情報はブログにも書くようにしましょう。
Twitter経由で届けられた質問や要望に返信するかどうかなどの運用ポリシー
は、プロフィールに書くと親切です。
九州大学附属図書館は「図書館に関する情報提供や、非常時の情報発信、簡単
なご質問への回答をおこないます。※2013年1月から、フォロー・リプライを
始めました。」とレスポンスすることをプロフィールに明記しています。
047ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
九州大学附属図書館
https://twitter.com/qlib_info
返信について代替案を示しているのが筑波大学附属図書館です。「筑波大学附
属図書館からのお知らせを随時ツイートいたします。なお、このアカウントにコ
メント頂いてもお返事いたしかねる場合がありますので、筑波大学附属図書館へ
のご意見・ご質問は図書館Webページ『お問い合わせ』→『図書館へのご意見(受
付フォーム)』からお願いいたします。」とTwitterでは返信できないので、図書館
の公式ページにある受付フォームへの記入を呼び掛けています。
筑波大学附属図書館
https://twitter.com/tsukubauniv_lib
なかには「質問や要望への返信は行いません」としているところがあります。
ソーシャルメディアは「ウェブ上で広がる社会的会話」であり、広報の理念として
「ツーウェイ・コミュニケーションを確保する」が挙げられています。返信をしな
いのは、話し掛けられているのに無視することと同様です。人員体制の問題など
で難しい場合もあるかと思いますが、ツーウェイ・コミュニケーションを取られ
るようになって初めて「広報」を行っているということなります。全てのコメント
に返信することは難しいことは断りを入れた上で、ソーシャルメディアの機能を
フル活用して広報に役立てていく姿勢を見せましょう。
5.2.6 LINEをはじめとした新しいメディア
大学生の約8割が、LINEをコミュニケーションツールとして使っているという
調査結果があります★15
。そのトレンドもあり、LINEアカウントを運用する大学
図書館もあります。
北海道大学附属図書館は、2014年12月1日より公式のLINEアカウントを開設
しました。LINEの情報を受け取るには「友だち」になる必要があります。附属図
書館では、LINE経由で大学図書館の情報を得るために、どのような手順を踏め
ばよいのかウェブサイトなどで伝えています。
http://www.lib.hokudai.ac.jp/2014/12/22/30535/
Twitterと同様に、LINEのプロフィールに運用のルールを書きましょう。共立
048 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
女子大学・短期大学図書館はLINE@を活用して、開館時間のお知らせを流すだ
けではなく、1週間に一度「図書館クイズ」を届けています。2016年4月25日のメッ
セージでは「今週で終了する学生図書委員会の展示のテーマは、「建学の精神と3
つの○○」(2文字で答えてね)」とあります。また「答えがわかったらメッセージ
で送信してください。正解すると招待券がもらえるクーポンが配信されます」と
メッセージを受け取るメリットとなる取り組みとともに活用しています。問題の
FacebookやTwitterは簡単な登録ですぐに始められます。ただ運用管理者用ルー
ルを策定してから始めるようにしてください。事前に決めておくとよい項目を書き
出します。
・管理責任者
・どんな内容を投稿していくか?
・投稿担当者は? 名前は名乗るか? 顔は出すか? キャラクターを使うか?
・緊急時の対応ルールは?
・タイムラインの監視体制や第三者からの不適切な投稿に対する削除方針は?
・控えるべき内容・使用禁止語句は?
・タイムラインへの投稿ルールは?
・投稿内容のチェックは行うか?
・投稿頻度は?
・投稿するタイミングは?
・コメントや問い合わせの返信、対応は?
・メッセージは受け付けるか?
以上の項目は文章化して、関係者と共有しましょう。「第三者からの不適切な投
稿に対する削除方針」についてですが、ネガティブなコメントを書き込まれた記事
を記事ごと削除したら、それがさらに火種となり炎上することがあります。こちら
が誤った情報を発信していたなら、それをお詫びして記事を修正する。あちらが誤
解しているなら、説明をしたほうがよい場合もあります。逃げるのではなく、きち
んと向き合い迅速かつ誠実に対応したほうが、ソーシャルメディアはオープンなの
でそのやり取りを見ている人から評価、応援されます。
ソーシャルメディアの運用マニュアルColumn
049ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
答えは、1週間後、新しいクイズとともに先週の回答が届きます。ちなみに4月
25日のクイズの答えは「徳目」でした。
公共図書館でもLINEを活用しているところがあります。下妻市立図書館では
図書館で行われる各種イベント情報を中心にLINEで情報を伝えています。
LINEのスタンプは公式のものとクリエーターズスタンプの2種類があり、クリ
エーターズスタンプは、個人がデザインしたものを申請し、それが承諾されれば
サイトで販売できるようになり、Apple、Googleなどの手数料30%を除いた売
上の50%がクリエイターに分配されます。この仕組みを用いて図書館のファン
ドレイジングを実施しているのが、鹿
か づ の
角市立図書館です。図書館のキャラクター
のはなわんこ・トワダックをLINEスタンプにして販売し、その売り上げを図書
購入費に充てる取り組みです。
その他にInstagramなど新しいメディアも生まれています。 Instagramとは、
写真を撮影、加工、共有できるスマートフォン向けアプリです。 SNSとして
の機能も備えており、撮った写真をFacebookやTwitterに簡単に共有できます。
Instagramを利用している図書館の例として挙げるのは、映画「図書館戦争」のロ
ケ地にもなった水戸市立西部図書館です。水戸市立西部図書館のプロフィールは
次のようになっています。
「西部図書館でInstagramを始めました。図書館でInstagram? という印象を持
たれた方もいるかと思いますが、西部図書館は、外観では、楕円の廻廊や円形
ドーム型の建物など、また、館内も映画『図書館戦争』のロケ地として使われる
など写真的な魅力がいっぱいです。ブログもご覧ください。 http://seibu-library-
mito.blogspot.jp/」とすかさずブログへの誘導も行っています。
Instagramは海外の図書館ではFacebookやTwitterと同様に、広く使われてい
ます。アメリカのイェール大学図書館(https://www.instagram.com/yalelibrary/)
やニューヨーク公共図書館(https://www.instagram.com/nypl/)、フランス国立
図書館(https://www.instagram.com/bibliothequebnf/)など、その国の言葉がわ
からなくても写真を見るだけで、建物や企画展に関心が惹かれます。日本語を理
解する人が少ないなか、写真だけで伝えることも海外からの観光客誘致のための
手助けになるのではないでしょうか。
新しいソーシャルメディアは、これからも増えることが予想されます。すべて
取り入れるのは負担が大きく現実的ではありませんが、ステークホルダーの情報
050 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
源となっているメディアは何かを意識して、どれを取り入れるべきかを考えてい
きましょう。
5.3 オンラインとオフラインを融合させた発信とは
オンラインが注目されがちですが、前にも述べた通り、ダイレクトに届くオフ
ラインのメリットもあります。これら両方を融合させた発信が求められています。
ここでは、オンラインとオフラインを融合させた発信について見ていきましょう。
5.3.1 展示やイベントのチラシをオンラインでアーカイブする
チラシなどの紙媒体のほうが、タイムラインで情報が流れていくソーシャルメ
ディアなどより保存性があります。しかし、イベントが終わり捨てられてしまえ
ば、残らないというのも紙の広報物の特徴です。
ブログやウェブサイトのイベントページは、告知だけではなく、記録としても
活用できます。イベントページにチラシの画像やPDFになったチラシのリンクを
貼り、記録を資料として残す図書館だからこそ、図書館のウェブサイトで、過去
の取り組みも記録して残すことを意識していきましょう。
愛知県図書館では実施済みのイベントは、サイトから削除せずに「過去に行わ
れたイベント(https://websv.aichi-pref-library.jp/event1.html)」として保存してい
ます。イベントのタイトル、開催日時、内容、講師、場所、定員の情報とともに
チラシのPDFが開けるようになっています。このように保存をしておくと、数年
たっても、過去に行ったイベントのチラシのデザインを見て参考にすることがで
きるなど、新しく加わったスタッフの参考資料としても活用できます。
5.3.2 投書箱
図書館の中には、利用者の質問や要望を書いてもらう投書箱を設置していると
ころも多いでしょう。質問と回答を掲示板に貼り出したり、クリアフォルダーに
入れて見てもらったりしているケースもよく見られます。しかし、投書される質
問の中には、似かよった内容のものが届く場合もあるのではないでしょうか。
京 都 大 学 吉 田 南 総 合 図 書 館 で は、 投 書 箱 に 入 れ ら れ た 質 問 の 回 答 を
SUGGESTION[投書箱]として、ウェブサイト(http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/
yoshidasouthlib/news/suggestion.html)で公開しています。「よくある質問」
「FAQ」のように、回答を公開することで投書箱に入れなくてもここで回答を見て
051ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
もらえば、利用者の質問を解決し、質問をする手間を省くことができるのです。
また特定の大学図書館や公共図書館に限らず、利用者の抱える課題には似たよう
なものがあるのではないでしょうか。ウェブで公開することで、わざわざ図書館
に行って回答を確認する必要がなく、利用者の時間の負担を減らす取り組みと
なっています。
公共図書館では、大阪市立図書館が質問と回答をウェブ上で公開しています。
またすでに回答がまだ掲載されている内容かもしれないため、サイトはキーワー
ドで検索ができるようになっています。
http://www.oml.city.osaka.lg.jp/?page_id=214
5.3.3 企画展の本棚
図書館ではさまざまな企画のもとに本棚がつくられています。Facebookや
Twitterでその企画展を知る度に、「どんな本が置かれているんだろう」と気にな
るものです。
はこだて未来大学は、ウェブサイトのトップページに「今月のA5棚」という月
次企画の棚(http://library.fun.ac.jp/)を見せています。クリックすると本のリスト
が出てきます。本のリストが見られると、自分の職場や家の近くにある図書館に
行って、その本を借りたり、書店で本を買ったりするかもしれません。本棚を
ウェブサイトで公開することで、ボーダレスで本が動く仕組みをつくれます。
また他の図書館の企画展の内容や置かれている本を知ることで、それがヒント
になり自館の企画の充実を図ることもできるでしょう。
野田市立図書館はウェブサイトのトップに「在架なう」というコーナー(https://
www.library-noda.jp/)を置き、返却されて戻ってきた本をスライドで表示してい
ます。このようにリアルタイムで図書館にある本を見せていくと、利用者と本の
思わぬ出会いを生み出すこともできます。
5.3.4 利用案内
紙で利用案内をもらっても、実際どのようにすればよいのか、そこから読み取
れないこともあります。そこで大学図書館の中には、利用案内に動画を活用して
いるところもあります。
052 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
東京都市大学図書館では、利用案内を動画にして公開しています(http://
library.tcu.ac.jp/?page_id=308)。「図書館へ入館するときは」、「本を探す」、「本
を借りる・予約する」、「本を返す・貸出期限を延長する」などが動画になってい
ます。
岐阜女子大学はウェブ上に「岐阜女子大学バーチャル図書館」をつくり、スライ
ド形式で図書館の利用方法を案内しています。
http://libwww.gijodai.ac.jp/newhomepage/virtual%20lib/start.html
このように近年、オフラインだけではなくオンラインのメディアと両方を利用
し発信していくケースが増えています。
ただ、どのメディアを使っても、届けるべき人に届かないと意味をなしません。
大学図書館単独の発信では、学生や教員に情報が届きにくいかもしれません。学
生や教員が情報を得るために、見ているウェブサイトは何かを考えてみましょう。
大学からのお知らせや休講情報が載っている学生ポータルサイトは、学生が頻繁
に見るものです。九州大学附属図書館は、このポータルサイトに情報を載せてい
ます。大学の事務局と協力して、情報を届けていきましょう。公共図書館も役場
のサイトにバナーを置いてもらうなど、流入を図りましょう。
近年、新着図書をソーシャルメディアで紹介するなど、さまざまな情報発信の
仕方が可能となってきました。多くの人たちに図書館のよさをアピールできる機
会でもあります。メディアの強み、弱みを把握しながら、それをさまざまメディ
アで補いつつ、広報・PRを行っていきましょう。
6. 講習会やイベントの広報
図書館の主催でさまざまな講習会やイベントが行われています。ホールを借り
た大きな講習会から、図書館の中にある会議室で行う勉強会まで大小さまざまで
す。
外部の講師を呼ぶ場合もあれば、5人くらいで行う読書会もあります。近年は、
ブックトークやビブリオバトルなどのイベントが活発に図書館を会場にして行わ
れています。ここでは、イベント・講習会の企画、広報や集客、そして報告の仕
方をお伝えします。
053ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
6.1 参加性と話題性
イベントならではの特性が2つあります。まずは「参加性」です。同じ時間と
空間を共有しながら、双方向・直接のコミュニケーションを取ることができま
す。同じ関心を持つ人たちが集まるイベントを通じて、コミュニティ形成にもつ
ながります。次は「話題性」です。参加者が口コミで図書館のことを周囲に伝える、
TwitterやFacebookに書き込むと、その情報が拡散していきます。
対面だからこそ、強く印象に刻まれるのが講習会・イベントです。半面、アレ
ンジに大きなミスがあったり、事故などのネガティブなことが起きるとそれだけ
悪い印象を深く与えてしまいます。そのためにも万全の準備をして臨みましょう。
6.2 ステークホルダーと企画の目的
図書館の年間計画や予算に合わせて、開催する回数や規模もある程度決まって
いることが多いかと思います。公共図書館でしたら季節や記念日に合わせた企画、
大学図書館なら春はオリエンテーション、就活が始まるタイミングをみながら企
業研究に役立つデータベースの使い方講座、卒業研究が始まる時期に合わせて卒
論・修論のための情報リテラシー講座など、季節やタイミングに基づいて組まれ
るケースが多く見られます。
イベントや講習会を企画する際に、決めなければいけない事項があります。そ
れは、
・セミナー主旨
・参加対象者
・セミナータイトル
・開催日時
・開催場所
・参加費
・定員
・主催/共催/協力
・登壇者候補
・プログラム
・申し込み方法
・予算の確認
054 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
です。「セミナーの主旨」と「参加対象者」は対になっています。私たちは、その
企画は何を目的としていて、誰のために、何をするのか、という順番で考えてい
く必要があります。そして対象者の都合のよい時期とアクセスのよい場所を確保
するのが原則です。
6.3 広報の仕方
企画と一緒に広報の準備もしていきましょう。登壇者の写真と略歴、会場まで
の地図のデータなどチラシ、ポスター、ウェブページを作成するために必要と思
われる素材は早めに入手しましょう。
イベントのタイトルのつけ方は「ACTIONフレームワーク」(p.024)や本特集の
特別付録「秘伝の10ケ条・追加の6ケ条」(p.081)を参考にしてください。
イベントの主催者の中には、チラシをそのまま拡大しポスターにして掲示して
いる方もいます。人手不足からそうならざるを得ないかもしれませんが、チラシ
とポスターには違いがあります。ポスターは「見られるもの」で、チラシは「手に
取られるもの」です。ポスターは、通りがかった人の注目を引くデザインにする
必要があります。あまり細かい説明は書かずに、タイトルと、キャッチコピー、
登壇者、日時と会場がわかるようにデザインをしましょう。
人は長い時間、ポスターの前に立ち止まることはありません。相当な関心がな
い限りポスターの内容をメモする人も少ないでしょう。
立ち止まった人の次の行動を促すためには、詳細情報を書いたチラシを持って
いってもらうようにするとよいでしょう。チラシはポスターの横にポケットをつ
くるか、直下に机やラックを設置してそこに置いておくと効果的です。
どのタイミングで告知をスタートするのか、対象とした人たちにイベントを
知ってもらうにはどのようにすればいいのか、どの広報媒体を使うのか、集客の
ための施策を練りましょう。
集客のためのツールとして、告知用のチラシ、ポスター、ウェブサイトのイ
ベントページを活用しましょう。図書館が運用していたらFacebookやTwitter、
LINEなどでも呼び掛けましょう。一つの媒体のみを使うのではなく、オンライ
ンとオフラインを融合させて発信しましょう。
図書館に来たことがない人に来てもらいたいと言いながら、チラシを図書館に
しか置かないのは本末転倒です。新聞などメディアへのお知らせも、自治体や大
055ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
学の広報課と協力しながら行いましょう。著名人の講習会だと取材を希望するメ
ディアもいるはずです。著名人の講習会ではなくても、イベントに「価値」を持た
せればメディアが関心を持ってくれるかもしれません。たとえば、普段は公開し
ていない貴重書の見学会についてプレスリリースを書く場合、その本が歴史的・
学術的にどれだけ価値のある物かを説明しましょう。
また数字だけではなく、「人の声や顔」を見せると、読んでいる側にも親しみを
持ってもらえます。たとえば図書館長の意気込みや、企画をしたスタッフの思い
に読んでいる側が感動や共感してくれることもあります。人の声を入れることは、
冒頭で書いた広報の理念である「人間的アプローチ」の実践です。人となりがわか
る発信をしていきましょう。
岐阜県図書館の「図書館長ミズノによる図書館活用講座」と題したイベントでは、
チラシに館長の写真と「図書館を上手に活用する方法、教えます! 図書館の使い
方や調べ方のコツなどを、具体的な事例を取り上げてわかりやすく解説します」
と、館長が話しかけているような言葉をキャッチコピーとして使っています。写
真も証明写真のようなものではなく、語りかけているような写真にすることで親
近感が湧くものとなっています。
告知文がメディアに載ると、それを見て関心を持った「図書館に来たことがな
い人」が来てくれるかもしれません。
6.4 生中継
イベントをTwitterや動画中継など、ソーシャルメディアを用いて生中継を行
うことも可能となりました。ソーシャルメディアでイベントの内容を見せてしま
うと、集客が減るのではないかという心配もあるかもしれません。でも逆にこの
イベントに参加したかったけれど、どうしても来られなかったという人たちのた
めに記録を残すことができれば、後々感謝されるでしょう。
ボーダレスで情報が見られるので、他の都道府県に住んでいる人が、「この図
書館はおもしろい取り組みをしている」と認識し評価してくれるかもしれません。
生中継を行う際には、イベントの参加者に中継をする旨を伝えて、許可を得ま
しょう。写真は記録としてだけ撮るのか、Facebookやブログにも載せるのかそ
の使途も伝える必要があります。顔が映ってもよいかどうかの確認も取るように
しましょう。
056 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
もちろん講演者にも許諾をもらう必要があります。動画中継など動画はだめで
もTwitterで文字のみの配信だったら可能など、条件があるかと思います。でき
れば、当日ではなく、事前に問い合わせておくと失礼はないでしょう。
6.5 終了後に行うこと
イベントの終了後に行うタスクです。
・回収したアンケートのまとめ
・出欠の状況を反映し、参加者リストのアップデート
・自由参加だった場合は、参加者の数を報告
・中継をした場合はソーシャルメディアでの反応をチェック
・精算
・反省会を行い、よかったこと、課題を話し合い
などがあります。改善点を振り返り、次のイベントに生かしましょう。
また告知には力を入れても、終わった後の報告がされないと、関心を持ってい
たけれど参加できなかった人はがっかりしてしまうかもしれません。ウェブサイ
トのお知らせや、ブログ、Facebookで報告をすることで、参加者の振り返りに
なるのと同時に、参加できなかった人にとっては次への期待となります。
東京大学附属図書館では、進行中の新図書館計画に関連するイベントシリーズ
でTwitterを有効活用しています。イベント中にトークの概要をツイートで実況
し、それを後日まとめてホームページに載せて、レポートとして公開しています。
さらにオンラインでの生中継や、学内の動画配信サービスも組み合わせて、イベ
ントに足を運べなかった人たちにも図書館の活動を届ける工夫をしています。実
際のイベントに来た人数の何十倍もの人に読まれるつぶやきもあるそうです。
名
な よ ろ
寄市立大学図書館では、Facebookページに学生が行ったビブリオバトル
の動画をアップしています。ウェブサイトに動画を載せるページがない場合は、
Facebookを活用するとも可能な例です。
6.6 イベント・企画の例
ここでは千葉大学と北海道の単科大学の連携の事例を挙げます。地元の人材、
057ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ステークホルダーを講師としてセミナーを開催する例は、鳥取県立図書館やくま
もと森都心プラザのプラザ図書館など公共図書館でも見られます。また姉妹都市
提携をしている市町村の図書館同士が観光に役立つ情報など、関連情報を企画展
示するケースも見られます。千葉県流山市は1977年に福島県相馬市と姉妹都市
の盟約をしました。東日本大震災の影響で規模を縮小した伝統行事の相馬野馬追
に関して「姉妹都市・相馬野馬追展」を行い、相馬・南相馬方面を観光の側面から
応援しました。
当日慌てないためにも、マニュアル作成や打ち合わせの日程決めなど手配を進め
ていきましょう。
・シフト表を作成し、スタッフやボランティアを配置
・事前打ち合せを設定
・来場者用のアンケートを作成
・会場下見
・備品の手配
・当日の配布物を準備
・外部から講師が来る場合、交通手段の手配
・謝金の手配
シフト表の内容としては、下記の担当が挙げられます。
・司会
・タイムキーパー
・撮影
・報告書作成
・受け付け
・音響
 動画やTwitterで中継をする場合、その担当者も配置する必要があります。
イベント準備で押さえるべき、チェック項目はこれ!Column
058 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
6.6.1 ステークホルダーが講師
千葉大学では2011年4月に附属図書館、総合メディア基盤センター、普遍教
育センターが協力し「生涯学び続ける基礎的な能力」「知識活用能力」を持つ「考
える学生」を育成するためにアカデミック・リンク・センターを立ち上げました。
アカデミック・リンク・センターは「アクティブ・ラーニング・スペース」、「コ
ンテンツ・ラボ」、「ティーチング・ハブ」の3つの機能を備えています。
千葉大学アカデミック・リンク・センターは、授業期間の毎週火曜日と金曜日
の12時10分から12時40分に、図書館内のプレゼンテーションスペースで事前
申込不要、出入り自由のイベント「1210あかりんアワー」を行っています。内容
としては下記のようにさまざまです。
・教員が研究の楽しさを語り、関連する図書の紹介をする会
・職員が大学生活の楽しみ方、留学やボランティア活動への参加などを伝える
「キャンパスライフ入門」
・図書館で学習相談を担当する大学院生によるレポートの書き方の案内
・千葉大学出身で、産業経済界で働く卒業生が、現在の仕事や学生時代の過ご
し方について話す「千葉大学経済人倶楽部『絆』」
 2014年度はこのイベントの58回目が開催されました★16
。このイベントの注目す
べきは、実施回数もさることながら、教員だけではなく職員、学生、卒業生など
様々なステークホルダーが講師として登壇していることです。このように大学の持
つ人的リソースを最大限に生かしながら、学生たちの学びの場を提供しています。
6.6.2 「蔵書の交換展示会」をキャッチーなコピーで紹介
大学が設置している学部によって、充実している蔵書の分野も変わってくるで
しょう。北海道では道内単科大学同士の「蔵書の交換展示会」が行われています。
2011年度、小樽商科大学と旭川医科大学が蔵書の交換展示会を始めました。小
樽商科大学は、経営学の蔵書は充実していますが、医学・医療分野の蔵書は少な
い状態です。そこで、旭川医科大学図書館から医学、医療、闘病記の本を借りて
大学図書館に展示をし、学生や教員へ貸出を行っています。逆に旭川医科大学図
書館は、蔵書が少ない経営学の本を小樽商科大学から借り受けました。2012年
度に帯広畜産大学が、2013年度に北見工業大学が加わり、4館で実施され、お互
059ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
いの弱みを協力体制でカバーする取り組みとなっています。
この展示会には愛称があり「ややや!○○大学から100冊の本がやってきた」と
なっています。たとえば「ややや!旭川医科大学の100冊がやって来た」、「やや
や!小樽商科大学の100冊がやって来た」と展示タイトルを合わせることで、大
学同士の連携を感じさせるものとなっています。
このように大学図書館が協働して行っている取り組みは各地で見られます。ま
たお互いが情報の発信することで、人の目に留まる、連動した広報・PRが可能
となります。
イベント・講習会を成功させるコツは、その企画にはどのような価値があるの
かをとことん考え抜くこと、そして終わった後、きちんと振り返り改善点を洗い
出し次回に生かしていくことです。とりあえず企画して、とりあえずやって、で
はなく一つ一つの企画を時間はかかりますが丁寧に行っていきましょう。
7. メディア対応
ここではメディア対応についてお伝えします。大学の場合、原則として取材の
受け入れは大学事務局の広報課などの担当部署が窓口となり進められます。公共
図書館の場合は、自治体の広報課から連絡があることもあれば、館長決裁によっ
て進めていくところもあるかと思います。
広報課を通して取材を受けることになったにせよ、実際に現場で取材を受ける
のは図書館のスタッフです。
また自分の図書館の魅力はスタッフが一番知っています。その魅力を広報課に
話題提供しプレスリリースとして発信してもらい、図書館の社会的認知を広める
取り組みを行いましょう。
7.1 メディア対応とは
メディア対応と聞くと、そのターゲットは新聞や雑誌、ウェブ媒体などの記者
とのやり取りのことを想像されると思います。
でも本当のターゲットはメディアの記者ではなく、記者が書いた記事を読む読者
です。「ステークホルダー」や図書館に関心を持つかもしれない見込み顧客に情報
を届けるために、その間にいるメディアに向けてどのような情報を発信し、コンタ
060 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
クトを取ってくれた記者にどのように対応するのか、その方法を考えてみましょう。
その前に、メディアの種類についてお話します。まずは新聞です。新聞は一般
紙と業界紙にわかれ、一般誌には3種類があり、読売新聞や朝日新聞などの「全
国紙」、そして「地方紙」、取材した記事を新聞社・放送局・雑誌社などに提供す
る「通信社」があります。日本には通信社として共同通信と時事通信があります。
新聞は部数こそ減りつつありますが、しっかりとした取材体制のもと書かれた記
事はテレビ、雑誌の記者や編集者も一次情報として参考にすることが多いです。
業界紙は名前の通り、特定の分野に特化した新聞です。本に関していうと出版
業界唯一の専門紙である「新文化」やメディア産業の総合専門紙「文化通信」が有名
です。ビジネス、小説、学術書の書評やおすすめ書籍をご案内している「読書人」
も、図書館スタッフは参考になる業界紙ではないでしょうか。
地方紙は、名前の通り特定の地方を販売対象とする新聞です。ほとんどの地
域において全国紙よりも地方紙のほうが購読されています★17
。また47都道府県
に存在する図書館は、地方紙との相性がよいです。Googleの「図書館」と入れて
ニュース検索すると図書館に関する記事が出てきます。地方の図書館についての
記事が地方紙にどのように取り上げられているかを確認できます。
テレビは、目と耳から情報が入ってくるメディアな分、強いインパクトを与え
ます。いいニュースとして取り上げられた場合はよいのですが、不祥事などネガ
ティブな報道は大きな負のインパクトをもたらします。また不祥事の記者会見な
ど、何度も映像で流されることで、人々の記憶にも残りやすくなってしまうとい
う特徴もあります。
雑誌は、近年廃刊が相次ぎ、また残っているものも大きく部数を下げているな
ど苦しい状況にあります。ただし、読書がセグメントされており、また専門性の
高いものも存在しています。そこに掲載されることで、質の高い、狙ったター
ゲットに情報が届けられる可能性を含んでいます。
ラジオは、車で移動するのが通常の地方では、運転中にラジオを聞いている人
も多くいます。食事をつくっている最中、ラジオをつけている人もいるでしょう。
ラジオ局によってはコアなファンを持つところも多くあります。
近年ではインターネットメディアが台頭し、その中には新聞社が配信するネッ
トメディアも増えてきました。「みんなの経済新聞」のように、地域のビジネス&
カルチャーニュースを配信する各地の情報サイトも現れました。
インターネットメディアの普及で、記者の情報の取り方も多様化してきました。
061ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
近年では、記者がTwitterやブログの記事に関心をよせ、そこから新聞やテレビ
で取り上げられ、拡散状態が巻き起こるケースも見られます。国際基督教大学
(ICU)の「誰も借りてくれない本フェア」は、図書館職員がTwitterで広めたところ、
「ユニークな企画」として話題となり、のちにNHKニュースや朝日新聞で取り上
げられました★18
。
人々の関心を引くニュースは、多数の媒体をまたいで紹介されるようになって
いることは、注目すべきでしょう。そして考慮すべきは図書館で発信しようとし
ているニュースは、外部の人たちが「関心を引く」ものかどうかです。
7.2 記者との接触
記者との接触のときに留意する点は、「記者は基本的に素人である」ということ
です。特に新聞は、近年、特定の業界に癒着させないため、最近では1年から2
年で担当が変わるケースも見られます。図書館について記者が、全く知らないこ
とを前提に「極力わかりやすい表現」を使って説明をするように心がけましょう。
有名な大企業を除けば、日々の継続的で積極的なメディアへの接触やアプロー
チが取材につながります。「記者は基本的に素人」と最初に書きましたが、それで
もその分野の担当になったので勉強しようとか、図書館に関心を持ち、積極的に
記事として取り上げようという高い意識を持った記者もいます。
そのような記者と出会うために図書館を飛び出し、こちらから会いに行きま
しょう。他の図書館や文化施設のイベントに参加すると、取材をしている記者と
出会えるかもしれません。その記者と名刺交換をして、自分の図書館で行う企画
をその記者にピンポイントでお知らせしてはいかがでしょうか。情報を日々探す
努力をしている記者にとって、情報提供は感謝されるでしょう。
次に、こちらから記者に向けて発信していく手段として、有効なプレスリリー
スについてまとめます。
7.3 プレスリリースを書く前に行う情報の整理
プレスリリースを書く前に、情報の収集と整理をする必要があります。
「5W5H」(p.064)をフレームワークとして考えましょう。5W5Hすべてを入れる
必要がないニュースもあるかもしれませんが、いずれの場合でも5W5Hにまずは
照らし合わせてみましょう。プレスリリースを配信する前にチェックすれば、情
報が漏れていないかの確認ができます。
062 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
プレスリリース作成の3大原則があります。一つ目、プレスリリースは、横書
き・A4一枚、縦使用で書くようにしましょう。追加資料として添付資料を2 ~ 3
枚つけてもよいですが、大切な情報は1枚目に入れてください。時間に追われてい
る記者は1枚目を数秒見て取材をするかどうか判断するからです。二つ目は文体を
「ですます調」にすることです。「である調」は日本の場合、記者の反感を招きやすい
といわれています。そして三つ目は、一つのプレスリリースに書くのは1テーマの
みにするのが原則です。その月に行われる企画をすべて羅列するのではく、1企画
につき1つのプレスリリースを書くようにします。プレスリリースの基本書式とし
て、自治体や大学ごとにプレスリリースのフォーマットがあると思います。広報課
に尋ねてプレスリリースを見せてもらうとよいかもしれません。基本書式として、
レターヘッド、タイトル、リード、本文、連絡先の5点の記載が原則です。
●レターヘッド
「報道関係者各位」「プレスリリース」「日付」「発行者名」を記入します。またロ
ゴがあれば掲載しましょう。レターヘッドのデザインは固定させます。プレスリ
リースごとにデザインを変えないようにしましょう。プレスリリースを受け取る記
者も何度か目にすると、そのデザインを覚えて気にかけてくれるかもしれません。
●タイトル
一番大切なのがタイトルです。本文を読んでもらえるかどうかは、タイトルを見
た記者が関心を持ってもらえるかどうかにかかっています。考え抜き、わかりやす
いタイトルをつけるようにしましょう。
●リード
リードは要約文です。プレスリリースの一番重要なポイントはどこかという要素
をリードに書きましょう。結論を先に持ってきて、重要な事柄から書くというスタ
イルは、新聞記事の書き方の基本でもあります。リードにそれが書かれていると、
記者が取材をすべきかどうか判断しやすくなります。イベントの場合はリードに開
催日と場所、イベントをなぜ企画したかなどひと目でわかるようにします。
●本文
リードで書かれたものをさらに詳しく説明しましょう。5W5Hで整理した情報を
プレスリリースの書き方Column
063ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
もとに、本文に組み入れましょう。私が広報担当をしていたときに、イベントの詳
細のプログラムを知りたいという連絡が記者から入ることがありました。それから
イベントのプログラムも、プレスリリースの本文に書くようになりました。講演会
の場合は講師のプロフィールをここに書きます。
●連絡先
「問い合わせ先」を記載します。図書館名、担当者の氏名、電話番号、ファックス
番号、メールアドレス、URLを必ず記載しましょう。プレスリリースが複数枚にな
ることもあるので、Wordのフッターの機能を使い、そこに連絡先を書くようにし
ています。どのページにも連絡先が記載されるようにしましょう。1枚目には連絡
先を入れているのに、それ以降は入っていないプレスリリースもあります。ファッ
クスで送ったときに、わからなくなってしまう可能性もあります。レターヘッドに
入れるロゴもWordのヘッダーに貼りつけておくとよいです。
●ニュース性をもり込む
プレスリリースを作成するにあたり一番鍵となるのが「ニュース性」があるかどう
かです。ニュース性のある記事とは、新しさのある情報を伝えているものです。「県
内初」「県内で一番」というように「初めて」や「一番」のものに注目が集まります。こ
の他に社会的に意義があるもの、話題性、地域性があるものなどが挙げられます。
また春なら卒業や入学に関係した企画など、季節を感じる内容であることも重要な
ポイントです。ビジネス支援サービス、健康・医療情報支援サービスなどは図書館
が行っている社会性の高い取り組みです。メディアに取り上げられて広く知っても
らうことで、救われる人もいるはずです。積極的に発信をしていきましょう。
●記者が使う言葉を知る
「サンドイッチ」と「サンドウィッチ」、プレスリリースを書くとしたら、どちらを
使いますか。表現に悩んだら、共同通信社の『記者ハンドブック』や朝日新聞社の
『朝日新聞の用語の手引き』を見てチェックをしましょう。『記者ハンドブック』に
よると「サンドイッチ」と表記することになっています。つまり新聞記者は「サンド
イッチ」のほうを使うのです。
覚えるまでは、自分が正しいと思っている固有名詞もハンドブックを見て確認を
するようにしています。こちらから「記者が使っている用語」を理解する、その姿勢
がメディアとの関係づくりの際にも大切になります。
064 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
7.4 プレスリリースの配信の例
プレスリリースは、実際に書かれたものを見るのが一番勉強になります。プレ
ス向けに配信されているリリースを公開している図書館があります。千代田区立
図書館(http://www.library.chiyoda.tokyo.jp/about/press-release/)と日比谷図書
文化館(http://hibiyal.jp/hibiya/PR.html)はその一例です。PDF形式になったプレ
スリリースという実際に記者が手にするものが見られます。
図書館独自にプレスリリースを配信せず、自治体の広報課が発信している場合
が大半ではないでしょうか。その場合、自治体のプレスリリースのサイトで図書
館に関するものが見られるケースもあります。最近であれば、長野県のウェブサ
イトにある「発表資料(プレスリリース)」(http://www.pref.nagano.lg.jp/kensei/
koho/pressreleases/)に、「長野県立図書館では図書館記念日(4月30日)にあわせ
て『信州のとしょかんマップ』を公開します」というタイトルのプレスリリースが
掲載されています。
プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのサイトの中には、そのサ
イトを使って配信されたプレスリリースを見られるものもあります。私がよく
参考にするのは「PR TIMES」です。PR TIMES では企業、団体、大学などさまざ
まなセクターから発信されたプレスリリースを見ることができます。同サイト
に検索窓があり、そこに「図書館」と打ち込むと、関連するプレスリリースを見
ることができます。たとえば2016年4月27日に株式会社ドトールコーヒーが
配信したプレスリリース「公立図書館施設内に初出店 ドトールコーヒーショッ
5W 5H
Who 誰が How どのように
What 何を How much お金(価格、売上目標など)
When いつ How many 数(参加者目標など)
Where どこで How long 時(いつからいつまでなどキャンペーン期間)
Why なぜ How in future 将来(今後の方針など)
065ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
プ千葉市中央図書館・生涯学習センター店がオープン!」(http://prtimes.jp/
main/html/rd/p/000000083.000008784.html)や日本の産業用ドローン専門メー
カー PRODRONEが2016年4月12日に出した「ドローンによる学校図書輸送の
実証実験を仙北市およびNICTと共同で実施」(http://prtimes.jp/main/html/rd/
p/000000005.000014359.html)を見ることができます。図書館に関係する企業
(もしくは一見関連しないと思っていた企業)がどのように図書館と協力している
のかがわかります。プレスリリースを配信したからといって記事になるかどうか
はわかりません。面白い取り組みでも、そのときに自然災害や大きな事件・事故
が起きると紙面はそれに割かれることもあります。プレスリリースを読むことは、
記事になってはいないがニュース性が高いと企業、組織、自治体が判断し発信し
た情報に触れることになります。プレスリリースを見ることで社会のトレンドを
先取りしてキャッチできるのです。
プレスリリースの作成や配信は、自治体や大学の広報課の担当者が行うケース
がほとんどで、図書館が独自で配信しているケースは少ないかもしれません。た
だ図書館としてリリースの原則ルールやニュースとなる話題の特性を理解し、関
係者へ話題提供していきましょう。これも社内広報の一つです。
7.5 取材の依頼が来たら確認すべきこと
取材を受けたときに確認すべき事項があります。誰に、何について、いつ、ど
れくらいの時間をかけて取材を行うのか、どの媒体に、いつ掲載されるのか、と
いう基本的な項目を記録し、ファックスやメールで確認しましょう。電話だけだ
と記録が残らず、のちにトラブルの原因となる可能性もあります。取材の受け入
れの際に確認すべき事項をまとめた様式があれば利用しましょう。直接図書館に
電話がかかってきた際に、広報の担当部署に回すかどうかの基準をつくっておく
ようにしましょう。
7.6 取材後の対応
取材対応をした後のフォローも発生する可能性があります。取材後の対応こそ、
メディアと継続的な関係性を築けるかどうかが決まってきます。関係性を築くた
めの3原則があります。
一つ目は「スピーディーな対応」を心がけること。記者に
とって締め切りを守ることはもっとも重要なものです。急な対応を求められるこ
ともあるかと思いますが、スピーディーな対応を心がけると感謝されます。二つ
066 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
目は「誠実、正直であること」です。事実を隠す、嘘をつくことはしてはいけませ
ん。記者から聞かれた質問に、即座に回答できないこともあるかと思います。そ
のときには、知らないことは知らないと言い、回答できる日を伝え、その日まで
にお伝えするようにしましょう。最後は「公平な情報公開」です。有名なメディア
か否かを問わず、コンタクトがあったら平等に接するようにしましょう。
7.7 危機管理広報
マスコミが取り上げるのは楽しいニュースだけではありません。逆にネガティ
ブな報道こそ取り上げられることが多いかもしれません。危機管理広報について
考えてみましょう。
地震が起き、倒壊してきた本棚にぶつかり利用者がけがをした、火災が起きた
など図書館で起こりうるリスクは図書館だけの問題ではなく、自治体や大学全体
で考える事柄です。何かが起きて取材が殺到した時、求められるのが迅速な意思
決定とそれに伴う行動、また事実にもとづいた情報開示です。平時にこそ、部署
を越えて「起きたらどう対応するか」を話し合いマニュアル化しましょう。
7.7.1 視覚的な情報を大切にする
テレビに映し出される記者会見を思い出してください。「あの人は誠実に解決
に向けて取り組んでくれそう」とか、「何かまだ隠しているのでは」と私たちが思
うのは、話の内容よりも視覚・聴覚情報からくる印象から判断していることが多
いです。トップにも危機管理広報の重要性を認識してもらい、平時にメディアト
レーニングを行う企業もあります。不祥事が起きるとメディアの前に出るのは、
自治体や大学のトップです。事態の説明は関係者として館長が行うことになるで
しょう。そのためにも平時から企業が行っているメディアトレーニングを参考に、
マニュアル化などを進めていきましょう。
7.7.2 危機管理広報の5つのポイント
問題が発生した後、マスコミへ情報を発信する際、記者が原稿を書くのに必要
な情報を伝えることが大切です。
1. 謝罪
067ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
2. 事実関係・経緯
5W1Hを時系列ごとにきちんと伝えましょう。
3. 原因
なぜそれが起こったのかを伝えます。ただ刑事事件に発展しそうな場合は、原
因は警察などの当局が特定します。そのため組織としては当局に全面的に協力す
るという立場を取るようにします。
4. 対策・再発防止
再発防止策を策定することが求められます。
5. 責任・処分
事態の重大性に応じて、トップの結果責任が問われることもある。それが決
まったら、公表する。
この5点がすべて同じタイミングでマスコミに流せるわけではありません。推
移に応じて随時、情報を公開していきましょう。
不祥事が起きると、いちスタッフが待ち構えていた記者にインタビューを受ける
こともあります。事態の全体像が把握していないスタッフが自分の思いや憶測の
情報を伝えてしまったがために混乱をきたすこともあります。緊急時には外部と
のやり取りをするスタッフを決め、取材側にはその担当のスタッフの名前を伝え、
その人とやり取りをしてもらうようにお願いするなど窓口の一本化も必要です。
危機管理広報は、広報担当者が最後に行きつく領域といわれています。突如と
して事件・事故が起き、限られた時間で正しい情報を収集・把握し、発信してい
く作業は緊張も伴います。危機管理広報だからこそ、定期的な訓練を全体で行っ
ていく必要があります。
8. 広報戦略
戦略という言葉をよく聞くようになりました。それに伴い広報戦略も作成しよ
うという動きもあります。では広報「戦略」は「計画書づくり」とどう違うのでしょ
うか。
068 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
広報戦略を立てるためには状況分析を行う必要があります。「業務上で今、何
が問題か」「その問題の原因は何か」の2点を明確にした上で、やるべきことを見
定め、それを目標として設定していく作業が求められます。このトピックでは、
広報戦略の立て方から実行、評価の仕方についてお話をします。
8.1 広報戦略策定のための4つのステップ
アメリカの広報学者スコット・M・カトリップは、戦略的な広報活動を行うた
めの4つのステップを提唱しました。
第1ステップは「状況分析」です。ステークホルダーとの間にどのようなコミュ
ニケーション上の問題が生じているのか、その状況を分析し、課題を明確化する
ことがポイントです。
第2のステップが「戦略」です。現状分析から得られた情報をもとに、戦略を
作っていきます。このときに、コミュニケーションの対象は誰か、その人たちに
何を、どのコミュニケーション手段を使って伝えるべきかなど具体的な行動や日
程、人員・予算を決定していきます。
第3のステップは「実践」です。立案された計画を実施する段階です。ここでは
どのようにステークホルダーに、いつ、どこで、どのようなメッセージを届けた
のかが問われます。報告書として残していきましょう。
第4のステップは、成果を測定し「評価」する段階です。ここでは実践時に書か
れた報告書、メディアの露出があったら新聞のクリッピングなどの各種記録をも
とに、準備から実行に至る実践の結果を評価します。広報戦略の評価をもとに話
し合われた改善点をもとに、新たな戦略づくりがなされます。このサイクルを回
しながら、広報戦略の精度を高めていきます。
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 ステップを繰り
返すことによって、業務を継続的に改善するPDCAサイクルという概念がありま
す。戦略づくりはPDCAの前に本質的課題の洗い出しと分析の作業が必要です。
本質的問題の発見なくして解決はありません。
8.2 状況分析(問題の明確化)
第1のステップにある「状況分析」のやり方を考えていきましょう。状況分析と
聞くと、何から手をつけていいのかわからなくなるかもしれません。まずは図書
館の中にある資料から見ていきましょう。
069ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
8.2.1 図書館の中にある資料
すでにある図書館の広報活動に関する書類やデータには、さまざまな声が載っ
ています。たとえば、
・図書館内や関係部局との会議の議事録や討議資料
・図書館スタッフの日報や月報
・利用者からの質問メモ
・投書箱に届いた意見、要望
が挙げられます。
会議の議事録や図書館職員の日報には、広報・PRについての報告のみならず
直面した課題の内容も触れられていれば、それを抽出していきましょう。すでに
着手して解決済みのものもあれば、未解決のものもあるかと思います。未解決の
もの、再発しそうな課題をリスト化していきましょう。
投書箱に届いた意見や要望はもちろん、図書館スタッフが利用者から聞かれた
質問などもメモに残っていたらそれは貴重な情報となります。これらの意見、要
望、質問は、「広報・PR」で解決できるものもあるはずです。
070 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
8.2.2 インタビューやアンケート調査
図書館の内部にある資料を見るだけではなく、ステークホルダーにインタ
ビューやアンケートを行い、生の声を収集していきましょう。
・利用者へのインタビューやアンケート調査
・図書館スタッフへのインタビュー調査
・生涯学習課など各部署へのインタビュー調査
・首長や大学の経営陣へのインタビュー調査
が考えられます。
他者からの評価から、図書館に対し予想外の認識やイメージが発見されたり、
自分たちが気づいていなかった問題点の指摘がなされたりすることもあります。
インタビューを通じて聞かれた図書館に期待する声のうち、「まだ行われてい
ない」ものをどうするかは、図書館の経営戦略の中に組み入れるかの判断となり
ます。
8.2.3 報道状況調査
図書館がメディアでどう報道されたかを確認しましょう。そのためには日々新
聞、雑誌、TV、ネットなどの報道で図書館が取り上げられたものをクリッピン
グする必要があります。企業だと同業他社の記事もクリッピングをして、自社と
の比較をするところもあります。
テレビやラジオなど外部のメディアのみならず、大学図書館の場合、学生が出
しているフリーペーパー、大学の広報誌なども確認しましょう。公共図書館も、
タウン誌や市町村が出している広報誌なども確認するようにしてください。その
ためにも取材を受けた場合は発行後、必ず図書館に届けてもらうようにしましょ
う。このように、情報の集約も仕組み化していくようにしましょう。
報道状況調査で見る4つの視点があります。まずは「報道件数」です。メディア
別に何件取り上げられたかを確認します。次は「報道量」です。新聞や雑誌のどれ
くらいのスペースを取れたか、何行書いてもらえたか、放映時間は何分何秒かを
記録します。3番目に挙げられるのは「報道における扱い」です。自分の図書館の
報道がメインでされているか、複数の図書館と一緒に紹介されているものかで読
071ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
み手のインパクトも変わってきます。報道件数を増やしたいのであれば、そのた
めの施策を組んでいきます。外部のメディア掲載を増やしたいのであれば、自治
体や大学の広報課に話題提供し、プレスリリースを書いてもらうことを仕組み化
するなど、具体的な施策に落とし込んでいきましょう。
最後に挙げるのが「好感度評価」です。この好感度評価が特に重要です。記事の
内容は好意的なものか、逆に批判的なものかで読み手の図書館への評価が変わっ
てきます。企業が不祥事を起こすと新聞や雑誌が記事を量産しますが、すべてネ
ガティブなものであれば報道件数は多いが、好感度評価は低くなります。放送件
数は少なくても、好意的な記事を書いてもらうことが大切です。
好感度評価は3段階、もしくは5段階評価が一般的です。3段階の場合、明ら
かに図書館の評価を高めるものを+1とします。ストレートニュースとして客観
的な事実報道である場合はプラスマイナス0(ゼロ)。明らかに図書館の評価を
損なうものは-1にします。こうした分析を通じて、外部の第三者の代表ともい
えるメディアが見た図書館の姿が明らかになってきます。
8.2.4 広報活動調査
広報活動調査とは、各ステークホルダーを対象とした広報・PR ツールや、
行ってきた広報活動が適当かを検証するものです。
まず、ステークホルダーと広報・PRのツールとして出されたものをすべて列
挙します。それをマトリックスにあてはめていきます(p.072)。横軸にステーク
ホルダーを、そして縦軸に広報・PRツールを書き出します。誰に情報を届ける
ために、何をつくったのかを確認します。
大学図書館を例に挙げます。ステークホルダーとしては学生、保護者、教職員、
メディアなどが挙げられるでしょう。学生を学部生と大学院生に分けるなど、細
分化させても構いません。できるだけ具体的に書き出しましょう。
ツールとしては、パンフレット、チラシ、館内報、ニュースレターなどが挙げ
られるでしょう。こちらもステークホルダーと同様にあるものをすべて書き出し
てみてください。
このマトリックスを見ながら、ツールの妥当性の検証と漏れがないかの確認を
します。ツールの妥当性について検証する具体的なポイントは下記の通りです。
072 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
・メッセージの的確性・正確性、わかりやすさや表現力
・配布方法
・配布のタイミングの妥当性
・デザイン性
特に大切なのはメッセージ性で、「届けたい人に届けたいメッセージがきちん
と届いているか」という視点が基本となります。ツール一つひとつをその視点を
持って見ていきましょう。
作成したツールについては、自分たちで適切な評価がしづらいものです。その
ようなときは、第三者から客観的に評価してもらいましょう。
ステークホルダーにインタビューをしたり、座談会をしたりしながら声を拾っ
ていく方法もあります。学生を対象に図書館だよりをつくっているのであれば、
その感想を聞いてみましょう。
ステークホルダーに届けるべきツールで、届けられていないツールがないかとい
う「漏れの確認」も必要です。メディアを見てみましょう(p.073)。メディアの関係
者にはプレスリリースを送り、ウェブサイトを見てもらうだけで充分なのでしょ
うか。記者は、「その大学図書館を知らない人向けに記事を書く」視点を持って取
材に臨みます。大学図書館主催の講演会の取材に来たとしても、講演会のことの
みを書くのではなく、主催者である大学図書館についても触れてくるはずです。
学生 保護者 教職員 メディア ・・・
パンフレット ● ●
オープンキャンパス資料 ● ●
年次報告書 ●
図書館だより ● ●
プレスリリース ●
栞 ●
ウェブサイト ● ● ● ●
・・・
073ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
年間利用者数、貸出冊数、
大学図書館の姿勢、講演会は
定期的に行われているかなど、
記者が全体の情報を把握した
いと情報提供を求めてきた際、
それに応える資料が必要です。
それが「年次報告」にあたると
したら、メディアの欄に年次
報告も○(まる)をつけ、対応
するようにしましょう。
企業では自社の情報のみで
なく、経営環境や市場動向、
業界の歴史などが書かれた
ファクトブックをメディア向
けに用意しています。このマ
トリックスを見て「ファクトブック」が入っていないのでつくるかどうかは、ニー
ズから判断するしかありません。限られた人員の中で、新しいツールの作成が難
しければ、すでにあるもので代用できるものがないかを考えていきましょう。
また行ったイベントも同じように検証していきましょう。対象とした人たちに
その企画が届いたのか、参加者の数とともにアンケートを取っていれば、その結
果から導き出されたよかった点や改善点を見てみましょう。
8.2.5 図書館の経営理念・戦略の把握
図書館の広報戦略の立案のために、まずは設置母体である大学や行政の経営理
念・戦略のどこに図書館が位置づけられているのかを把握しましょう。
たとえば大学の経営理念の中の「教育・研究・社会貢献活動を支える情報基盤
について整備・充実を図る」施設として大学図書館が位置づけられているならば、
その理念達成のために大学図書館は資料の提供、企画展開催、研究を支えるため
のサービス提供などさまざまな活動を行っているはずです。
図書館の広報戦略は、単体でつくられるものではなく、組織全体の経営理念・
戦略の中にどのように位置づけられているかを再確認し、そこから戦略の目標設
メディア ・・・
パンフレット
オープンキャンパス資料
年次報告書 ○
図書館だより
プレスリリース ●
栞
ウェブサイト ●
ファクトブック ?
・・・
074 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
定がなされなければいけません。
「教育・研究・社会貢献活動を支える情報基盤について整備・充実を図る」こと
が経営理念だった場合、「教育・研究・社会貢献活動を支える情報基盤としての
大学図書館であるという認知がなされること」が大前提となり、それが大学図書
館の広報戦略目標になります。この広報戦略目標を達成するために、立てていく
のが広報・PR計画です。
公共図書館も自治体が出している運営方針や基本方針があれば、それを踏まえ
て図書館としてやるべきことを考えます。そこから戦略の目標設定がなされます。
大学の経営戦略や自治体の基本方針をもとにした図書館の位置づけから立てた
広報戦略の目標設定や状況分析から導き出されるデータは、図書館の存在価値を
示す説得材料にもなります。
8.3 戦略(計画立案とプログラム作成)
次のステップは、「広報・PR計画」です。広報・PRの計画作成にはさまざまな
種類があります。今回は、ステークホルダーを切り口としてつくられる戦略づく
りのプロセスをお伝えします。
8.3.1 カテゴリー分け
前述の「状況分析」から多くの課題が出てきたのではないでしょうか。すべての
課題を見ると、どれから手をつけていいのかわからなくなります。まずは課題を
カテゴリーに分類することをお勧めします。課題が少なければそれぞれの課題ご
とにまとめてもよいですが、ステークホルダーごとにまとめるのも一つの方法で
す。2つのステークホルダーに共通する課題が見られることがあります。たとえ
ば、「大学生」と「地域住民」がともに、「大学図書館についてわかりやすいパンフ
レットがない」という課題を挙げていたとします。パンフレットというツールは
一緒ですが、知りたいことが異なるステークホルダーに応じて、パンフレット
の内容を変えないといけないかもしれません。広報・PR計画は、ステークホル
ダーの目線で立てていくとよいでしょう。
8.3.2 目標の設定で注意すべき点
状況分析で出た課題に対して、「我々は何を実行し、何を伝えるべきか」を考え
ていきましょう。目標設定のときに、活動と目標が混ざらないようにしましょう。
075ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
「パンフレットがないから、パンフレットをつくる」は活動であり、目標ではあり
ません。「なぜ、パンフレットをつくる必要があるのか」「パンフレットをつくれ
ば、何の課題が解決できるのか」を問いましょう。
8.3.3 「ありたい姿」─「現状の姿」=やるべきこと
8.2.5で例に挙げた「教育・研究・社会貢献活動を支える情報基盤としての大
学図書館であると認知されること」というのは、大学図書館の「ありたい姿」です。
このありたい姿こそ、目指すべき方向であり、目標となります。
状況分析で見えたのは「現状の姿」です。「教育・研究・社会貢献活動を支える
情報基盤としての大学図書館であると認知されること」が目標なのに、「メディア
掲載がない」という現状の姿があるとしたら、やるべきことは「メディアに掲載さ
れる」ことになります。ここから活動に落とし込みます。メディアに掲載される
ためには何をすればいいのか考えていきます。大学の広報課に情報提供をする、
新聞や雑誌を見て、情報の送り先を確認して連絡を取るなどの「活動」が考えつき
ます。このように、「ありたい姿」から「現状の姿」を引くと「やるべきこと」がわ
かってきます。この「やるべきこと」が広報計画となります。大きな目標から具体
的な広報計画をつくるための考え方ではありますが、すべての計画策定のプロセ
スに応用できます。
また「こんな本やDVDを置いてほしい」というリクエストが投書箱に入ってい
たとします。リクエストは本来「学生購入希望」の用紙に記入して提出してもらう
ものです。投書箱用の紙に書くものではありません。つまり課題は「学生購入希
望制度」が把握されていなかったところにあります。「ありたい姿」は、学生が「学
生購入希望」の用紙を使い、大学図書館にリクエストを出すことです。しかし「現
状の姿」は「投書箱にリクエストを入れると本を購入してもらえる」と学生が思っ
ていることです。学生に学生購入希望制度を知ってもらうために「やるべきこと」
を考えていきます。
投書箱の前に「本やDVDなどの資料の購入を希望の場合は、学生購入希望用紙
に書いてカウンターまでお願いします」と書いたサインを置く、学生用のパンフ
レットの文章を見直す、ウェブサイトのQ&Aコーナーに載せる、オリエンテー
ションのプログラムで触れるようにする、教員へお知らせし授業でアナウンスし
てもらうなどさまざまな「やるべきこと」が出てきます。
このように「ありたい姿」「現状の姿」「やるべきこと」を念頭に置きながら考え
076 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ていくと、計画書に入れ込む具体的な活動が明確になります。この思考のプロセ
スを使って、計画立案(戦略づくり)をしていきましょう。
8.3.4 測定・評価の項目づくり
定量的な目標設定が行われていないと効果測定ができません。各課題に対して
立案された計画に数値目標を立てていきましょう。メディアに取り上げられた記
事の件数などの目標を設定しやすいものから、ステークホルダーの行動変化とい
うように数にはしづらいものもあります。その際にはアンケート、インタビュー
などの手法を用いて得られた質的なデータで分析しましょう。
計画の段階で測定・評価の項目を定め、それに基づいて日報や月報の中に入れ
る項目の見直しをしたり、必要によっては新しいフォームを作成したりするよう
にしましょう。日々のデータの積み上げが、評価の際に大切になってきます。
8.3.5 広報戦略の企画書
現状分析、ステークホルダー分析、それを基にした活動計画や評価方法がまと
まったら、企画書に落としていきましょう。目標、課題、計画などきちんと文面
にして、関係者に配布をしましょう。企画書を定期的に確認し、活動が目的から
ずれてきていないか、活動が計画通りにされているか確認しながら活動を進めま
しょう。
企画書のフォーマットは、指定のものがあればそれを使い、フォーマットがな
ければ独自で作成することになります。その際には以下の項目に沿って書いてい
きましょう。
・はじめに
・理念・戦略、基本方針の中にある図書館
・現状分析から見えた課題
・ステークホルダー分析
・課題解決のために行う活動
・測定・評価の方法
・カレンダー
・人員体制
・予算
077ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
書いた企画書は図書館のスタッフにはもちろん、関連部署などに配布をしま
しょう。図書館広報戦略の説明会を開き、ステークホルダーにその内容を知って
もらうと事業の透明性が高まり、またステークホルダー自身が課題を理解するこ
とで、解決に向けて自ら動き出してくれるといったメリットが得られます。
8.4 実践
企画書を日々意識し業務を行っていく実施フェーズですが、常に振り返りを行
いましょう。戦略目標からずれていないか、活動が予定通りに進んでいるかを確
認し、ずれがあれば軌道修正をしましょう。
広報・PR活動を実施する際の5つの行動原理があります。この原理を紹介し
ます。一つ目は「問題意識の共有」です。まだ現状に問題があり、その解決に取り
組むのが広報「戦略」です。この現状にある問題は図書館職員や関係者全体できち
んと把握、共有するようにしましょう。「何のためにこれをやっているのか」とい
う方向性を見失わないためにも役立てられます。
二つ目は「ステークホルダーの特定」です。ステークホルダー分析などを行い計
画が立てられていますが、ステークホルダーの関心や利害は多岐にわたります。
思いがけない発見が実施期間中にあるかもしれません。常にステークホルダーの
考えや行動を見ながら、メッセージやキャッチコピーの内容などを変えていくよ
うにしましょう。
三つ目は「柔軟な業務推進体制」です。先ほど述べたように実施中に思いがけな
い発見があり、計画を変更することもあるでしょう。対応するためには、ある
程度柔軟な業務推進体制が組まれ、臨機応変に動けるようにすることが大切で
す。四つ目は「日常業務のシステム化」です。日々の業務の中、ルーティンで回る
ものはマニュアルをつくり、だれでもできるようにシステム化しましょう。最
後に「スピーディな報告と定期的な報告」です。職員はもちろん関係する事務局や
トップに定期的に報告することを制度化しましょう。それにより大きな問題が起
きる前に未然に防止するだけではなく、図書館の活動へのトップの理解が高まる
でしょう。
このように広報戦略の達成のためにはステークホルダー、特に内部の関係者の
理解が不可欠です。進捗や問題が起きたらすぐに報告しましょう。
078 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
8.5 評価
広報戦略の企画を実践した後は評価をして、次の企画につなげていきます。評
価を行うためには企画の段階で「測定・評価の方法」を確立し、それがわかるデー
タを日々の業務で取っていくようにしましょう。
広報・PRの評価は「準備評価」「実施評価」「効果評価」の3つのレベルにわか
れています。
8.51 準備評価
広報戦略の企画自体が妥当だったのかを判断する評価が準備評価となります。
事業のベースとなった背景情報の妥当性、事業(活動)内容の適切さ、事業(活動)
の品質を見ていきます。状況調査とそこから見られた課題をもとに広報戦略がつ
くられていきますが、課題分析が妥当だったのか見ていきます。また、課題の解
決のために行われたものは適切だったのか、別の活動のほうがよかったのかを見
定めます。課題解決のために適切な活動だったが、質に問題があり思うように効
果に結びつかなかったものがあれば、その点を指摘するようにします。質につい
ては改善することが可能なので、評価の中に「教訓」や次に向けた「提言」でその改
善案を示していきます。
8.5.2 実施評価
実行された活動の数、その活動に参加した人の数を出していきます。イベン
トであれば参加者数、メディア掲載であれば記事の数、企画展示であれば本の
貸出数、来館者数などを出していきます。単年度だとその数字がよい結果を示
すものなのか、判断しづらいのが現状です。単年度で終わらず、戦略的取り組
みは複数年続けて、数字の変化を追っていくことが求められます。そして前年
度と比べて、今年度はこれくらい伸ばしていくというように数値目標を設定し
ていきましょう。
8.5.3 効果評価
効果評価とは、実践された活動に参加した人たちの考え方・行動の変化を問う
ものです。スコット・M・カトリップと他2名の著書『体系パブリック・リレー
ションズ』(2008年、ピアソンエデュケーション)には、効果測定として「メッ
セージ内容を受容した人数」「従来からの考え方・意見を変更した人数」「従来か
079ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
らの態度変更を行った人数」「事業目的に適合して行動した人数」「継続的に行動
を行った人数」「社会的・文化的変化」が項目として挙げられています。
「図書館のあり方を理解し、行動に変化が起きた人の数」を把握するのは困難で
すが、グループインタビューやアンケートを実施するなどして声を拾っていきま
しょう。変化が見られた人をインタビューし、ケーススタディとしてまとめるの
も一つの手法です。
効果評価については、日本でもまだ手法が確立されていないといわれています。
ただ、広報戦略の最終的なゴールは、人々の行動に変化を生み出すことです。ま
ずは少人数でもよいので、変化した人の声を残していきましょう。
9. 最後に
図書館の広報・PRに役に立つトピックをひと通りお伝えしました。企業でし
たらインベスターリレーションズ、エンプロイーリレーションズ、国際広報、コ
ンプライアンス、CSRへの取り組みなども広報の仕事として行われています。
今回お伝えした中でも、もっと掘り下げられるものもあります。たとえば危
機管理広報でしたら記者会見のセッティングの仕方、ウェブサイトへの掲載の
タイミングと書き方、入り口から会場まで記者をご案内することを徹底する(勝
手に会社の中を歩き回らせないため)、記者会見に臨む経営陣のファッション
の注意点など、テクニカルなことも広報が気をつけながらセッティングします。
このように広報・PRは幅広いものです。だからこそやりがいがある仕事でもあ
ります。
高齢化社会から人口減少へと向かい、これからどの図書館も予算取りが厳しく
なってくるのではないでしょうか。危機に直面してから、図書館のことを知って
もらおうと思っても遅いかもしれません。いま、このタイミングで、ぜひ図書館
の存在価値をステークホルダーに伝えてください。利用者はもちろん、利用して
いない方にこそ、図書館のことを知ってもらうために足を運んでもらえるように
メディアへの露出を図りましょう。また首長や議員にも図書館の役割を認識して
もらうためのアドボカシーにも取り組みましょう。図書館の経営陣にあたるこれ
らの層と地域住民とツーウェイ・コミュニケーションが取れれば、地域の活性化
の大きな強みとなります。
080 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
図書館にも一般企業向けの広報・PRの本が所蔵されています。この特集を読
んで関心を持った方は、ぜひ自分たちの図書館の資料を使って図書館をパワー
アップさせてください。
★1 『こうだったのかNPOの広報』武永勉著、社会福祉法人大阪ボランティア協会、2010年
★2 『「売り言葉」と「買い言葉」心を動かすコピーの発想』岡本欣也著、NHK出版新書、2013年
★3 日本パブリックリレーションズ協会(2011年)「広報・PR実務」同友社、148ページ
★4 Elisabeth Doucett”Creating Your Library Brand” American Library Association
★5 山下柚実「近畿大学が志願者数2年連続日本一に『下剋上』の理由を分析」 http://www.huffingtonpost.jp/
yumi-yamashita/kinki_b_6875156.html
★6 宣伝会議『資産は「マグロに教員」、近大ブランディング』. http://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201401/
university-branding/001194.php
★7 龍谷大学.『龍谷2020』.http://www.ryukoku.ac.jp/2020/ryukoku_cs/
★8 京都府立図書館.「京都府立図書館サービス計画平成28年~ 32年」(http://www.library.pref.kyoto.jp/wp/wp-
content/uploads/2016/03/KPL_service-plan_2016.pdf)
★9 マイナビ「2015年卒 マイナビ大学生 マイナビ大学生のライフスタイル のライフスタイル調査」(https://
saponet.mynavi.jp/enq_gakusei/lifestyle/data/lifestyle_2015.pdf)
★10 IT Media「ニュースの情報源、若者は「新聞」よりも『ソーシャルメディア』」http://www.itmedia.co.jp/
business/articles/1508/05/news140.html
★11 https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/tos7.html
★12 Jcross「公共図書館の『図書館便り』」http://www.jcross.com/collection/cat-2/list.html
★13 http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/ja/dbinfo/lib-letters
★14 マイナビ「2016年卒マイナビ大学生就職意識調査」http://saponet.mynavi.jp/enq_gakusei/ishiki/data/
ishiki_2016.pdf
★15 マイナビ学生の窓口「LINEは8割、インスタ1割……大学生のSNS利用状況ってどんな感じ?」https://
gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/28095
★16 http://alc.chiba-u.jp/akarin.html
★17「地域経済ラボラトリ『新聞シェアの都道府県』一覧」 http://www.region-labo.com/archives/list/list-718/
★18 http://www.icu.ac.jp/news/20140618.html
081ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
特別付録
秘伝の10ケ条と
追加の6ケ条
082 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
私の広報ワークショップでは「ACTIONフレームワーク」(p.020)と一緒に、「秘
伝の10ケ条と追加の6ケ条」を紹介していますが、これは株式会社電通で特命顧
問を務め2015年に退任された白土謙二氏がNPOのためのコミュニケーション力
アッププロジェクト「伝えるコツ」のセミナーのときに配布されたものです。
このセミナー以来、私が言葉をつくるときにいつも参考にしている資料です。
図書館員向けに紹介してもよいか白土氏に聞いたところ、ご快諾をいただき使わ
せていただいております。
【秘伝の10ケ条】
1. 記憶に残る幕の内弁当はない
2. プッシュ(押す)でいくか?プル(引く)でいくか?
3. 書き出しの1行で決まる
4. あえて物議を醸す
5. 目印をつくろう
6. パッとパ行で明るく
7. 迷ったら短い方を採用
8. 漢字・ひらがな・カタカナ・英語をちりばめ上手に
9. 改行こそ、最大のサービス
10. 「実話」より強い物はない
【追加の6ケ条】
1. 言葉は書くより、拾うほうが早い
2. 同じ事を言うなら疑問形
3. 得するところは何処? 楽しいところは何処?
4. 写真は小さくても強いと知る
5. それ、読む物? 触る物?
6. 娘へ、お母さんへ 大切な誰かへの手紙は泣ける
実際の事例も織り交ぜて見てみましょう。
特別付録
秘伝の10ケ条と追加の6ケ条
083ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
【秘伝の10ケ条】
1. 記憶に残る幕の内弁当はない
皆さん、食べて思い出に残っている駅弁は何ですか? まだ食べてはいないけ
ど、気になっている駅弁はありますか? ちなみに私は昨日、東北新幹線に乗っ
ていたので、仙台駅で牛タン弁当を買いました。米沢名物牛丼弁当「牛肉どまん
中」や岩手県久慈市の三陸リアス亭「うに弁当」も気になっており、機会があった
らいただきたいと思っています。
ここでなぜ「幕の内弁当」は私の中で選ばれなかったのでしょうか。もちろん幕
の内弁当の味がまずいわけではないのです。なんとなく、というものよりも、特
徴のある物のほうが私の記憶に残っているからです。
すべての人に扉を開いている公共図書館だからこそ、「幕の内弁当」的な見せ方
になりがちです。それが悪いわけではないのですが、結局は誰にも届かないもの
になっていませんか?
20代、30代の保護者に向けたおはなし会のお知らせと、60代、70代の方たち
に向けた古文書を読む会のチラシのトーンが一緒ということはありませんか。相
手が誰かを考え、伝わる「ことば」を選ぶことは、スペシャルなお弁当をつくるこ
とと同様です。時間が掛かるかもしれませんが、ステークホルダーごとに見せ方、
出し方、伝え方を変えていきましょう。
2. プッシュ(押す)でいくか? プル(引く)でいくか?
プッシュとプルは広告業界で使われている用語です。プッシュは、売り手の目
線で書かれたもの。プルは買い手の目線で書かれたものです。プルは買い手の気
持ちを表現し「その気持ち、わかるかも」と共感を生み出す言葉です。
プッシュの事例として、「ベンザエースを買ってください。(武田薬品工業)」、「ゴ
ホン!といえば龍角散(龍角散)」、「そうだ 京都、行こう(JR東海)」などが挙げ
られます。風邪をひいて病院に行くまでではないと判断し、薬局で薬を買うこと
もあるでしょう。「ベンザエースを買ってください」は、風邪を引いたらベンザ
エースしかないでしょうと思わせるようなストレートなプッシュ型のメッセージ
です。「そうだ 京都、行こう」もやさしい言い回しながらプッシュ型です。「ど
084 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
こか行きたいな」と思った人に「京都、行こう」と京都へ誘導しています。図書館
もあれこれ悩むよりは「図書館で待っている」とか「この本、借りてください」とい
うストレートな言い回しのほうが伝わるかもしれません。
プルは直接商品を売り込むことはしません。駅ビル型ショッピングセンターの
ルミネを例に挙げましょう。ルミネが龍角散のように「服を買いたきゃルミネ」と
いうような言い回しはしていません。こちらはステークホルダーを考慮した施策
かもしれません。ルミネのターゲットはF1層(20 ~ 34歳の女性)です★1
。株式
会社博報堂の尾形真理子氏が、その世代の女性が共感するルミネのキャッチコ
ピーをつくっています。
・あしたの服を悩むのは、あしたを夢みるからなんだ。
・試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
・可愛くならなきゃって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。
・忘れられない年の忘れたくないクリスマス。
・恋は奇跡。愛は意思。
尾形氏は、言葉をつくる際に「生活に近い言葉」を使うこと、「この洋服いいな、
買いたいな」と思ったときに、「刺激」と「励まし」の言葉を添えることを心掛けて
いるそうです★2
。「あしたの服を悩むのは、あしたを夢みるからなんだ」という
キャッチコピーも、明日に向かって走り出す女性がイメージできるものとなって
います。
また JT が出している「Roots AROMA BLACK」も働いている 30 代、40 代の男
性の「それ俺のこと !?」と思わずうなってしまう言葉をポスターや CM にしてい
ます。
・大抜擢だと言われた。いけにえだと思った。ルーツは今日も甘い香りがした。
・風当たりが強い、心当たりはない。ルーツは今日も甘い香りがした。
・「部長をバカにするわけではありませんが」その前置きがすでに侮辱であろう。
ルーツは今日も甘い香りがした。
・「御社の責任です」上司が言いきった。御社と弊社を間違えたまま。ルーツは
今日も甘い香りがした。
085ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
バリバリ働きながらも修羅場に巻き込まれ、ちょっと落ち着いた時間の合間に
何か飲もうかと思ったとき、「あ、Roots AROMA BLACKだよね」と思い出させる
コピーです。
ちなみに団塊の世代向けといえば「恋は、遠い日の花火ではない。(サントリー
オールド)」というキャッチコピー。この言葉にぐっときたという男性陣の声を聞
きました。恋の思い出に浸りつつ、サントリーオールドを口にする……。甘い思
い出を、ほろ苦いサントリーオールドとともにいただくシーンが思い浮かびます。
・お父さんが読んでいた本、ここで再会するなんて
・次は私が、読む番です
キャッチコピーに正解はありません。上は私が30代の女性を思いながらつ
くったキャッチコピーです。情景を想像しながらどんどんつくっていきましょう。
3. 書き出しの1行で決まる
初対面で人が会うとき、第一印象は3 ~ 5秒で決まるといわれています。ポス
ターなどもしかりです。思わず、振り返ってしまうコピーや写真を見せるように
しましょう。
書き出しの一行に渾身の力をこめましょう。
4. あえて物議を醸す
「国会議事堂は、解体」、「生年月日を捨てましょう」という、いつも物議を醸す
キャッチコピーをつくっているのが株式会社宝島社です。2016年は樹木希林さ
んを起用し、「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という広告を打ちました。
このような、思わずぎょっとするメッセージにもきちんと意図はあります。「死
ぬときぐらい好きにさせてよ」は「日本の平均寿命は年々更新され、今や世界一。
いかに長く生きるかばかりに注目し、いかに死ぬかという視点が抜け落ちている
ように思います。いかに死ぬかは、いかに生きるかと同じであり、それゆえ、個
人の考え方、死生観がもっと尊重されてもいいのではないか、という視点から、
問いかけています。」とそのメッセージの意図を述べています★3
。
086 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
何を伝えたいかというメッセージとストーリーがあってこそ、言葉がつくられ
ます。
物議を醸すキャッチコピーは図書館には向いていないかもしれませんが、メッ
セージとストーリーがきちんと整い、その上でつくるのであればよいのではない
でしょうか。
5. 目印をつくろう
古くは商店の屋号や看板も、文字の読めない人までひと目で何が得られるのか
を伝えるための工夫でした。文字で伝えることもそうですが、目印(シンボル)を
使って表現するのも一つの手段です。
「秘伝の10ケ条」を教えてくれた白土氏から、こんなメールをいただきました
ので抜粋します。
「利用者が何かを書くようなイベントがあったとすると、そのシンボルは、エ
ンピツがいいでしょう。もしも、その鉛筆が15センチではなく、2メールあった
としたら、それがみんなの集まるシンボルにもなり、たのしくやろうというメッ
セージにもなるはずです。
また、グーグルで「ほじょ犬」と打ち込んでみてください。かわいい犬のイラス
トが出てきます。これは、介助犬をお店に入れてもらうための活動なのですが、
このかわいい犬のアイコン(目印=シンボル)を、電通の若いデザイナーがデザイ
ンして、厚労省に無償提供して、サイトにアップしたところ、いろんなお店や、
施設が、勝手に貼ってくれています(その理由は、この絵がかわいくて、よくわ
かるからだそうです)。
そいうものを、団体やプログラムやイベントやスペースが持っていることは、
じぶんたちのことを目立たせながら、すばやく伝えるために、とても役立つので
す。」
このように、ひと目見てわかる目印(シンボル)は、言葉以上の力を持つことも
あります。イラストが得意なスタッフや手伝ってくれるデザイナーの図書館サ
087ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ポーターと一緒に目印をつくっていきましょう。そしてほじょ犬のようにいいも
のは、他の図書館にも使ってもらえるようにシェアしてもらえればありがたいで
す。
6. パッとパ行で明るく
パピプぺポという破裂音から始まる言葉は、はずむような明るい印象を与えて
くれます。「ピピッとコンロ」(東京ガス)がその例です。ピピッとガスをつけて
ささっと料理する、そんな活発なイメージを感じます。
特に子ども向けの商品は、パ行のものが多いのも特徴です。お菓子でいうと江
崎グリコはパピコ、ポッキー、プリッツといったロングセラーのものはパ行から
始まっています。
楽しく、動き回るようなイベントの場合、パ行を意識した言葉をつくるのも手
です。
7. 迷ったら短いほうを採用
図書館員向けの広報ワークショップで皆さんから挙げられる悩みの一つに、「ど
うしても長い文章になってしまう」ということがあります。これはしっかり説明
をしなければいけないという思いからきているようです。
企画展や講演会の中には、しっかりと説明をしなければいけないものもあるか
と思います。でもチラシのオモテ面に文字がぎっしりだったら、手にも取られな
いかもしれません。説明を書く必要があるときは、チラシのウラ面を使いましょ
う。
オモテ面は短い言葉で表されているほうを採用しましょう。最終的に誰のため
かというと、チラシを手に取る利用者のためです。短い文章で表現されたもので、
利用者が即時に判断して、参加の有無を決めたとします。それは利用者にとって
も時間の節約につながります。ただあまりにも削りすぎると、結局、何を伝えた
いのかわからなくなってしまうこともあるのが事実です。究極まで短くした文章
を見て、文章の意図がわかるかどうかを同僚にチェックしてもらいましょう。言
葉は一人でつくると、迷走してしまうこともあります。常に誰かにチェックをし
てもいながら進めましょう。
088 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
もう一つ広報ワークショップのときに「著名な先生に講演会のプロフィールを
もらったところ、A4一枚にびっしり書かれていた。無下にもできないし困って
いる」という質問をいただきました。私がお話した答えは「ステークホルダーがど
う思うか」です。A4一枚にびっしり書かれた先生のプロフィールが、ステークホ
ルダーのためになるかどうかです。逆にある程度絞ったりまとめたりしたほうが
すっきりして見やすくなり、読み手もすんなり頭に入るかもしれません。先生の
ための講演会ではなく、図書館の利用者の皆さまへの講演会と考えると、どちら
がよいでしょうか。その視点で考えましょう。
私はコピーをつくるときは、15字以内に収めるように心掛けています。これ
は人がひと目で判断できる文字数が、15字程度といわれているからです。さら
にマニアックなテクニックでいうと13.5字に収められるようにしています。こ
れは「Yahoo!トピックス」を狙いたいときにテクニックでもあります。Yahoo! の
記事タイトルの最大文字数は13.5字。たとえば本日(2016年4月24日)のトップ
にきているニュース「九州道 月内に全線復旧見通し」が13.5字です。0.5は何を表
すかというと半角のスペースです。プレスリリースでウェブメディアを狙うとき
は、Yahoo! への掲載を視野に入れ(心から願い)タイトルを13.5字にしています。
このようにあえて文字制限をかけて、その中に収める訓練をしましょう。
8. 漢字・ひらがな・カタカナ・英語をちりばめ上手に
共同通信社から出されている『記者ハンドブック』によると、ひらがな書きを主
体とするものは以下の通りです。
・代名詞、連体詞、接続詞、感動詞、助詞、助動詞、補助用語、形容詞は、ひ
らがなを主体とし、副詞はひらがなと漢字を使いわける
・接頭語、接尾語は原則としてひらがな(例:ご結婚、10年ぶり)
・漢字本来の意味がずれて使われている語(例:幸せいっぱい)
・当て字に類するものは原則としてひらがな(例:無茶苦茶→むちゃくちゃ)
・表外字、表外字音訓を含む道具、器具類などの名称(例:薬缶→やかん)
新聞は上記の基準で書かれています。
089ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ステークホルダーによって、このバランスが微妙に違ってきます。また同じ世
代だからといって、その層にいるステークホルダーがすべて同じ考えや言葉遣い
をしているとは限りません。ステークホルダーの中でも年齢や地域、職業といっ
た特性に合わせたセグメンテーションが必要です。
セグメンテーションにおける漢字・ひらがな・カタカナ・英語のちりばめ方に
ついて私は雑誌を見て研究しています。
たとえば、小さいお子さんを持つ女性を対象に言葉をつくろうと考えます。年
齢層は20代後半から30代半ばくらいと想定しました。そう設定した後、その世
代をターゲットにした雑誌を読みます。
この世代の女性が読む雑誌で「すてきな奥さん」(主婦と生活社)と「VERY」(光
文社)があります。同じ月に出されていた両方の雑誌の目次を見てみましょう。
すてきな奥さん(主婦と生活社)
2014年2月号
VERY(光文社)
2014年3月号
【目次抜粋】
・コレは使える!あったかテク&グッズ
・家族と、親せきと、年始はおいしい料理
を囲もう!み~んなで食べたい“お正月”
ごちそうレシピ
・味だめしCLUB 東洋水産 マルちゃん
焼きそば 3人前
・達人主婦・あな吉さんと 目標達成シー
ト作りました!
【目次抜粋】
・この春トライしたい新しいカジュアルは「
デニムONデニム」
・関西・美脚投資家は「JETのパンツを選
びます♥」
・義父母を招く初節句の食卓、いい嫁プレ
ゼンマニュアル
・VERY読者の寄せ書きに、大先輩・林真
理子さんが喝!ママだって野心を持って
いい!
すてきな奥さん(主婦と生活社) VERY(光文社)
年齢:20代~ 30代
系統:家事・生活・節約
紹介:節約術やお料理レシピなど、若い主婦
向け情報満載です!
年齢:30代中心
系統:コンサバ・カジュアル
紹介:私のキレイが家族の幸せ!基盤のある
女性は、強く、優しく、美しい。
090 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
「すてきな奥さん」は漢字が少なめで「あったか」、「み~んなと」というように、
ほっこりするひらがなが使われています。またこの特集のアイコン的キャラク
ターとして、達人主婦であり、ゆるベジ料理&手帳術研究家の浅倉ユキ(あな吉)
が登場しています。
「VERY」はカタカナ、漢字、英語が目立ちます。「デニムONデニム」はファッ
ション業界では使われる言葉です。なかには「デニム・オン・デニム」とONをカ
タカナにしているところもありますが、「VERY」はデニムという英語のカタカナ
の間にONという英語を入れるスタイルを取っています。また「投資家」、「プレ
ゼンマニュアル」など、家庭感のない用語を使っています。また登場する著名人
は、あな吉さんではなく、林真理子さん。それもあな吉さんのように、読者と同
じ目線に立って目標達成シートをつくりに来たわけではなく、「VERY読者の寄せ
書き」が甘かったのか、喝をいれに来たわけです。
編集方針は以下の通りです。
同じ世代でもセグメンテーションをする必要があります。図書館の広報の場合
で考えると、細かくしたセグメンテーションごとに媒体を用意しなければいけな
いのかと悩んでしまうかもしれません。ただ企画やイベントについては、ここで
分析したようにある程度セグメンテーションをして使う言葉を考えてみてはいか
がでしょうか。
9. 改行こそ、最大のサービス
7の「迷ったら短い方を採用」にも関係するのですが、改行をしてスペースを
つくることは読み手への最大のサービスです。また重要な部分は色を変えたり、
太字にしたりするなどして、「面白い情報はここですよ」と示してあげるのも親
切です。
10.「実話」より強い物はない
通常業務をキャッチコピーにしたのが、帝国ホテルです。帝国ホテルでは、
部屋から出たごみをすぐに捨てずに一日取っておきます。電話のメモや領収書
など無意識に捨ててしまったものに重要な情報が書かれていたり、仕事で発生
091ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
した経費の領収書だったりするかもしれません。それを帝国ホテルでは、以下
のようなキャッチコピーとキャッチコピーを詳しく説明するボディーコピーを
つくりました。
紙クズは もう一泊します。
たとえ、お客さまが大切なメモを
あやまってゴミ箱に捨ててしまっても、
問い合わせに対応できるように、
紙クズはもう一泊します。
これはコピーをつくるためにやっていることではなく、帝国ホテルの通常業務
です。これと同じシリーズで帝国ホテルは「シェフが育てた、しみ抜きの達人た
ち。」、「エレベーターも『客室』です。」というキャッチコピーをつくりました。
ホテルのスタッフからしたら当たり前のことかもしれませんが、宿泊客にとっ
ては「安心できる」「信頼できる」「思いやりがある」と捉えられるでしょう。通常
業務として実際やっていることは、自分たちにとって当たり前でも利用者にとっ
たら新鮮で驚きと感動をもたらすものかもしれません。
帝国ホテルのこのキャッチコピーを見たときに、図書館と親和性があるのでは
ないかと思いました。
・蔵書点検の達人たち
・レファレンスは、知りたいに応えます
など業務ごとに言葉をつくっていくことで、図書館の業務を理解してもらう
きっかけとなるのではないでしょうか。
【追加の6ケ条】
1. 言葉は書くより、拾うほうが早い
言葉をつくるのは大変時間の掛かる作業です。すぐにひらめくこともあれば、
雑誌を開いてもラジオを聞いてもネットサーフィンをしても何一つ浮かんでこな
092 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
いこともあります。言葉は自分でつくって書くよりも、拾うのも手段の一つです。
前職で海外の子ども図書館に関する報告会を開催することになりました。上
がってきた報告会のタイトルの案は「ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ図書館事
業報告会」でした。活動をすでに知っている人にとっては問題ないのでしょうが、
固いイメージがぬぐえず、また報告会に参加したら楽しい情報を得られるのかイ
メージがつけづらいタイトルだと感じました。
報告会のタイトルの修正をする際に、現場の報告書を読んでいたら、図書館に
通う男の子のインタビューが載っていました。その男の子が「どうか図書館が 
ぼくのそばから なくなりませんように、ぼくの未来を創る場所だから」という
文章がありました。それにビビッときて報告会のタイトルを「どうか図書館が 
ぼくのそばから なくなりませんように」としました。
「図書館がなくなるってどういうこと?」「 図書館がなくならないようにって、
小さい子が願っている状況ってどういうこと?」と図書館のスタッフや関係者か
ら反響があり、おかげさまで満員御礼の報告会になりました。
このように何気なく目にしたつもりでも、忘れられない言葉があります。また
日報や月報などに書かれている言葉の中にも、感動をするものがあるかもしれま
せん。特定の人物がわかるような見せ方はしてはいけませんが、感動した言葉を
そのままイベントや企画展のタイトルにすることもできます。
リアルな言葉だけに、人の心に入りやすいというメリットがあります。
2. 同じことを言うなら疑問形
人は質問されたら返答せねばと思うものです。日清食品のカップヌードルの
「hungry?」に、小さい頃は「Yes」と答えてしまう私がいました。
近年出版されている本のタイトルに、疑問形を使うものが増えています。その
先駆けとなったのが『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(山田真哉、2005年、光
文社新書)ではないでしょうか。疑問形で聞かれると、一瞬、人は立ち止まって
考えます。そして「なんで潰れないんだろう」と気になってくるものです。
プッシュが直球ストレートとすれば、疑問形はカーブです。目にした人の
「ん?」を引き出しましょう。
093ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
3. 得するところはどこ? 楽しいところはどこ?
自分の時間を使って参加する以上、何かしら得をしたい、楽しみたいと思うの
が人の常です。これに参加したら得られるメリットについても、きちんと表現し
ましょう。古文書を読んで町のこんな歴史がさらに深く知れるなど、「なんだか
面白いことを知れるかも」ということを織り交ぜましょう。ただ誇大広告になら
ないように気をつけましょう。
4. 写真は小さくても強いと知る
文字で表すと数行必要ですが、写真一枚で伝わるものがあります。前に述べた
目印と同じですが、ビジュアルも使用しながらチラシをつくっていきましょう。
5. それ、読む物?触わる物?
チラシがすごろくになっていたり、塗り絵になっていたり、点線にそっておれ
ば折り紙になったりと、読むものと触わるものを融合しているものを手にしたこ
とはないでしょうか。ひと手間加えるだけで、そのチラシに触れる時間を伸ばす
ことができます。工作が得意な人が多い図書館スタッフだからこそ、ひとひねり
あるチラシをつくることができるはずです。
6. 娘へ、お母さんへ 大切な誰かへの手紙は泣ける
両親や子どもたちにあてた手紙が広告になっているケースもあります。大手総
合建設会社 大成建設はよくその手法を使っています。企業が取り組んできたこ
と、その思いを誰かの声に乗せてメッセージとして伝えていく方法です。感情に
訴え掛けるものです。私も広報ワークショップで紹介するのですが、声を出して
読んでいるうちに泣けてきます。
「トンネルで、帰ろう。」
また、会えるよね。きっと、会えるよね。
お父さんの転勤で、東京の友達とさよならするのは悲しかったけれど、
094 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
青函連絡船にゆられているうちに、気持ちがだんだん静かになってきました。
あの時、海を見ながら、お父さんは教えてくれましたね。
「お父さんはこれから、この海の底でトンネルを掘るんだよ。」その言葉を風が
びゅんとどこかへさらってゆきました。
わぁ、すごいなぁ。私なんかプールで足がたたない所まで行くのだってだめな
のに、お父さんは、怖くないのかなぁ。
それから、いっぱい質問しましたね。どうして、トンネルはつぶれてしまわな
いの。掘った土はどうなるの。
お父さんは、そのひとつひとつに、ニコニコしながら答えてくれました。そし
て、最後に言いましたね。 
ここができあがったら、そうだな、おまえがお嫁さんになる頃になるかな、そ
したら、地図帳を開いてみてごらん。このトンネルがのっているはずだよ。順子、
トンネルがどうして点線でかかれているか判るかな。
それはね、たくさんの人たちがうんと長い間がんばって流した汗の跡だからな
んだよ。
私は小さく頷いて、もう一度、海をのぞき込みました。
不思議ですね、お父さんが言った通りになりましたね。トンネルができた年に、
東京に嫁ぐことになるなんて。
あのときは、新しい街でうまくやっていけるかどうか不安だったけれど、お父
さんのトンネルを通っているうちに、なんだか勇気がわいてきたんです。ゴトン
ゴトンという電車の音が、お父さんの鼓動に聞こえてきて。 
お父さんの14年間をたった40分で電車は駆け抜けてゆきました。
ほんのわずかな間だったけれど、深い深い海の底で必死で働いてきたお父さん
の日々が、がんばれよ、がんばれよってはげましてくれているみたいでした。
子どもができて、里帰りするときは、トンネルを通って戻りたいと思います。
ここはね、おじいちゃんがつくったんだよと話してやりたいと思います。
もうすぐ、おじいちゃんになる、お父さん。私は、この街で元気でやってい
ます。
地図に残る仕事。 TAISEI 
大成建設「トンネルで、帰ろう。」(1993年)
095ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
また弁当チェーン店「ほっともっと」も、お客さまに手紙を宛てるかたちでの広
告を打ちました。
幸福は、
ごはんが炊かれる場所にある。
食事をする時、人は幸せでいてほしい。私たちは、心からそう考えています。
ひとりの時も。あわただしく食べる時も。仕事をたっぷりかかえている時も。
もちろん大好きな人と一緒にいる時も。だって、食べることは、人が生きてゆく
ためにいちばん大切なことなのですから。
私たちが、創業以来、お弁当のあたたかさにこだわってきたのはそのためです。
お米のおいしさにこだわってきたのも、その土地その土地の新鮮な食材にこだ
わってきたのも、そのためなのです。
お店でごはんを炊く時、ふと、こんなにうれしい仕事はないのではないか。そ
う思うことがあります。私たちのやっていることは、ずっと昔から、この日本の
すべての家庭で繰り返されてきた風景と同じだからです。愛する人がいて、その
人を想いながら、その人の目の前でつくり、それをあたたかいまま差し出す。毎
日をいっしょうけんめい生きている家族の、そのもっと基本になる姿が、そのま
ま、私たちの仕事の中にある。そう思えてならないのです。
日本はこれからますます忙しくなります。少人数家庭もふえることでしょう。
お弁当が活躍するシーンはどんどんふえると思うのです。
お弁当ががんばれば、日本はもっとあたたかくなる。
私たち「ほっともっと」にご期待ください。
ほっともっと「幸福は、ごはんが炊かれる場所にある。」(2008年)
手紙というスタイルで表現する場合、大切なのが「起承転結」です。大成建設の
例では「不思議ですね、お父さんが言った通りになりましたね。トンネルができ
た年に、東京に嫁ぐことになるなんて」、ほっともっとは「日本はこれからますま
す忙しくなります。少人数家庭もふえることでしょう」が転となります。それま
096 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
これが図書館の広報だ!
ではほんわかしていたトーンが場面転換しています。ここで読んでいる人が「あ
れ?」と思い、最後まで読み進めるのです。
図書館員向けの広報ワークショップをしたときに、この手紙というスタイルで
書いてこられた方がいらっしゃいました。テーマは「本の汚破損をやめてくださ
い」だったのですが、本の気持ちを見事に表現されていました。
以上、「秘伝の10ケ条と追加の6ケ条」を使って、誰かを動かす言葉を生み出
していってください。
★1 特集「1.5極化」と多様化の時代に成長を続けるルミネ(2010年11月25日)(http://www.buaiso.net/business/
economy/4537/)
★2「恋は奇跡。愛は意思。」コピーライター尾形真理子さんに聞く、言葉のつくりかた(2015年05月12日)(http://
www.huffingtonpost.jp/2015/05/12/ogata-mariko-copywriter1_n_7262576.html)
★3 企業広告2016、宝島社(http://tkj.jp/company/ad/2016/)
図書館100連発に学ぶ!
小さな工夫で伝わるPRを
ふじたまさえ
 総特集「これが図書館の広報だ!」を読んで、「よし、明日からうちでもやってみ
よう!」という気持ちになった方のために、その行動をよりスムースに後押しする
ための事例を紹介するので、ぜひ読んでいただきたい。
 紹介している事例は、これまでLRGの「図書館100連発」で取り上げたものだ。ど
の事例も、一つの物事に対してどれだけ多くの視点を持つことができるかが、絶対
の正解がない広報・PRの世界において、重要なポイントとなっている。
 また、本事例集では広報のツールとしてひろく導入されているSNSの代表格で
あるFacebookとTwitterの導入状況について、全国の図書館を対象に調査を行う
とともに、知っておいてほしいポイントをまとめた。これから導入したいと考えて
いる図書館の皆さんにとっては、SNSについての理解を深める補足資料として役
立つだろう。導入済の皆さんにとっては、その効果を計るための一つの参考資料と
して活用いただければ幸いである。
098 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
“広報・PR”というと、自分たちの図書館を知ってもらいたいという思いから、
目線が外に向きがちだが、まずは図書館の中──館内の掲示物から再検証しては
どうだろうか? 
館内のステークホルダーは、図書館利用者と図書館の職員の2つに大きくわけ
られるが、さらに細かく見ていくと、男性と女性、高齢者と社会人、学生、児童、
幼児というように、さまざまな層にわかれる。このような異なる立場の目線か
ら、場所と場合に応じて多角的に自館の掲示物を見てみることが肝要だが、一つ
のツール(掲示物)であらゆるステークホルダーに等しく伝えることは難しいため、
ある程度ターゲットを絞ってツールを使いわける必要がある。どの層にも共通し
ていえるのは、言葉を多用せずに、ビジュアルでシンプルにデザインされている
ほうが、伝わりやすいということだ。
たとえば「ハイレベルな手製のサイン」(創刊号、File015)で紹介したよう
に、掲示物の色合いやフォントを統一するだけでも雰囲気はガラリと変わる。ま
た、定期的に貼り替えるイベント案内のポスターの横で、色あせた掲示物が貼
りっぱなしになっていないだろうか?「館内掲示物の頻繁な貼り替え」(創刊号、
File056)は、気持ちのよい空間をつくり出す第一歩だ。
まずは館内の掲示物から見直そう
市立釧路図書館の館内案内。黄緑色をベースに統一されている。 撮影日:2011年11月27日 撮影:岡本真
099ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
図書館は、大学のように全国にライバルがいるわけではないが、図書館が何を
目指しているのか、そのコンセプトを明示することで、地域における図書館の立
場を確立し、行政における図書館のあり方を示すことは非常に重要である。
図書館自体の基本理念は「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会)を拠
り所にしているところも多いが、これを大前提にしつつ、それぞれの図書館が地
域に根ざしたコンセプトを掲げることで、行政や地域産業、地域住民との間で価
値観を共有し、連携しやすくなるというメリットもある。
「図書館の方針を常に明示する」(第4号、File132)で紹介したのは、熱海市立
図書館と指
いぶすき
宿市立指宿図書館の2館の事例だ。特に熱海市のコンセプトは図書館
の館外、館内、公式サイトにも掲げられている。内容いかんではなく、そのコン
セプトを図書館職員も利用者も、常に目につくところで明示するという姿勢が重
要なのだ。
自分たちのいる図書館のコンセプトは何だろうか? 指定管理など図書館の運
営形態は多様化しているが、あくまで自治体が運営する図書館として、自治体が
掲げているコンセプトを知るところから始めよう。自分たちの自治体の魅力は何
か? いま、自治体が一眼となって取り組んでいることは何か? その魅力や取
り組みに対して、図書館の立場でできることを考えてみよう。
 
図書館のコンセプト
熱海市立図書館館内での掲示 撮影日:2013年3月28日 撮影:岡本真
100 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
図書館内で利用者向けにイベントをPRする際、効果的な方法がある。それは、
利用者の動きや目線に合わせた場所でPRすることだ。「イベント案内を手紙で」
(第14号、File379)のように、思わず手にとってしまうデザインや仕掛け、ストー
リーがあれば完璧だ。予算があれば、印刷物の素材を工夫してもよい。使い慣れ
た利用者にとっては、貸出や返却の際に目に入る場所で配布されていれば手に取
りやすい。
だが一方で、カウンターに立ち寄らない利用者にはどうやって届けたらよいだ
ろうか? ここで提案したいのは、学習席や新聞、喫茶コーナーなど、利用者の
動きをなるべく思いつく限り書き出して、分類してみることだ。一人でやっても
いいが、複数人でやることをお勧めする。世代や性別の違う数名でやってみれば、
さまざまな視点があることに気づくだろう。
館内のエリアや提供している資料の種類ごとに、利用者の動き、目線、どうい
うシチュエーションなのか、といった切り口で利用者の実態や傾向を把握しよう。
たとえば、スマートフォンをマナーモードへ切り替えよう、と呼び掛けるならば、
エントランスでPRすべきだ、というように自ずと答えが導き出される場合も多
い。利用者の年齢や職業などの属性によって、印刷物の内容を工夫する必要もあ
るが、まずはそれを手に取ってもらうことから始めよう。
イベント案内のPRにストーリーを
101ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
筑西市立中央図書館の学習席で
のイベント案内
撮影日:2015年11月5日 
撮影:岡本真
102 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
言葉で伝えようとしてうまく伝わらないことも、イラストや色を効果的に使う
ことで直感的に伝えることができる。典型的なものは、トイレを表すピクトグラ
ムだろう。ピクトグラムとは、シンプルなデザインを使ってトイレやエレベー
ターなどの施設や設備を表したもので、公共施設や交通機関で広く使われている。
「伝えたい人に合わせた館内サイン」(第4号、File149)では誘導サインを、「禁
止事項すらも楽しく発信する館内サイン」(第4号、File155)では禁止事項を言葉
でなくデザイン性の高い記号で伝えている事例を紹介した。
どういう場面で、どういうイラストや色が適切かという判断は、デザイン性や
美観といったセンスも必要となるので、感性を磨くために事例をたくさん見るの
が一番だ。生活のあらゆるシーンで目にするサインのデザイン性はもちろん、色
や目線といった部分について気に掛けてみてはどうだろうか? 図書館に所蔵さ
れている本で参考になるものも多いはずだ。
言葉に頼らない館内サイン
桑名市立中央図書館の児童書コーナー 土足禁止とわかりやすい 撮影日:2013年4月14日 撮影:岡本真
103ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
この特集を読んで、自分の図書館が取り組んでいることをうまく広報したいと
思った人も多いだろう。それなら、とにかくプレスリリースを書いてみることだ。
その下準備として、自治体が出しているプレスリリースを集めてみてはどうだろ
うか? 「自治体のプレスリリースを収集、テーマに沿って分類、ファイリング」
(第4号、File123)で紹介したように、属する行政の動きを単にアーカイブするだ
けでなく、図書と同じように分類して探しやすくしておくことは、図書館が本領
発揮するところではないだろうか。
分類するために、たくさんのプレスリリースを見ることで、自分たちの図書館
がプレスリリースを出す際の参考にもなる。
事例で紹介した長野県の場合は、県の公式サイトにもプレスリリースを一覧す
るページがあるが、完全に各課のページでのみ発信しているケースもある。これ
を一覧できるようにファイリングしておくだけでも使いやすい情報となりそうだ。
プレスリリースはメディアに載る前の段階の最先端の情報だ。自分たちのまち
が取り組んでいることを、いち早く察知できる地域資料ともいえる。たとえ図書
館が教育委員会の出先機関であっても、行政組織の一員には変わりない。取り組
んで損はないはずだ。
県立長野図書館 郷土資料コーナーに県のプレス
リリースを配架
撮影日:2013年3月16日 撮影:岡本真
プレスリリースも地域資料!?
104 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
自治体が出しているプレスリリースを集めると、自分たちの自治体が取り組ん
でいる政策についての情報も自ずと集まってくるだろう。そうなってきたら、政
策に関するテーマ展示を図書館で行えば、「自治体の政策を図書館がPR協力」(第
4号、File138)することが可能ではないだろうか? 
この事例で紹介したポイントは、展示する際、関連する資料をすでにある蔵書
からピックアップして紹介するという点にあったが、それだけでなく、政策内容
についてのわかりやすい説明をパネルやポスター、その他の資料をまとめて補足
できれば完璧だろう。また、「行政資料の一覧リストを提供」(第14号、File340)
することも、自治体の施策をわかりやすくPRするための足掛かりとなる。
行政が取り組んでいる政策は一つとは限らない。ここでどういったテーマを取
り上げるかは、図書館に関わるステークホルダーの興味関心をリサーチして選択
すれば、市民のニーズに合うだろう。テーマによっては、図書館に馴染みのない
利用者を開拓することもできる
はずだ。
見落としがちなのは、こう
いった取り組みを行う際に、「ど
うしてこのテーマを選んだの
か?」という視点を伝えること
だ。テーマの理由や背景にある
ストーリーがわかりやすいもの
は共感を呼び、受け入れられや
すい。この視点もぜひ忘れずに
取り入れてみてほしい。
図書館でできる自治体PR
萩市立萩図書館の行政資料コーナーでは
「行政資料一覧」を掲示 
撮影日:2015年12月25日 撮影:岡本真
105ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
では、そろそろ外部との連携に目を向けてみてはいかがだろうか? 行政のプ
レスリリースを集め、政策に関するテーマ展示を行っている図書館の活動が利用
者にも認知し始めたら、行政側にも伝えてコラボレーションを働きかけてもいい
頃合いだ。同じ行政の一機関とはいえ別の組織なので、まずはお互いの現状認識
を共有し、共に解決したいと考えている共通の目的や、お互いがWIN-WINにな
るように落としどころを探る必要がある。
「行政とのコラボ企画展示」(第9号、File216)では、図書館と行政の各課が共
催で企画展示に取り組んでいる事例を紹介した。図書館にとってのメリットは、
情報発信拠点としての図書館機能の充実や新しい利用者の開拓が主だったものに
なる。一方で行政側が、何を求めているかはプレスリリースに盛り込まれている
はずだ。
行政の中での図書館の位置づけによっては、担当課レベルで連携するのがよい
のか、あるいは部局レベルで連携するのがよいのか、幾つかのケースがあるだろ
う。ただし、連携ありきで進めてしまっては、得られるメリットが少ないにもか
かわらずコストばかりかかってしまう事態を招きかねないことに気をつけてほし
い。連携という試み中で、何を、どこまで自分たちがやるのか、人権費などの費
用面でかけられるコストの範囲をおおよそ見積もっておき、随時判断する必要が
ある。
コラボ企画展示を始めよう!
周南市立図書館
健康増進課とのコラボ企画
「野菜レシピコンクール」
撮影日:2014年11月18日
撮影:岡本真
106 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
自治体内での連携ができたら、もっと外部へと目を向けてみよう。「自治体を
越えた連携から生まれるサービス」(第4号、File172)では、自治体の広域連携(定
住自立圏)にあわせて、相互利用を推進するネットワークがつくられている。こ
の事例の広域連携は「中海圏域定住自立圏共生ビジョン」という名称で図書館以
外の分野でも連携する具体的な内容が設定されており、2014年10月に更新され
2018年度まで継続することが決まっている。
特に県境に位置する自治体の場合は、住民の生活圏が県域をまたいでも、距離
が近い場合は他県に出て行くことはよくあることだ。隣り合う自治体同士が同じ
規模で、図書館も同じように整備されているならば連携もしやすいだろう。
広域連携の有無にかかわらずどの自治体でも取り組めるのは、友好都市・姉妹
都市との連携だ。「友好都市、その理由も図書館で」(第4号、File106)や「友好都
市の広報誌を展示」(第14号、File303)、「友好都市のプロフィールをひと言紹
介」(第14号、File376)で紹介したように、まずは連携したい相手について知る
ところから取り組むとよいだろう。何事もスモールスタートで、無理のない範囲
で徐々に広げていく戦略ならば、お互いに歩調を合わせやすいはずだ。
自治体を越えた連携のあり方
白河市立図書館の姉妹都市に関する資料は郷土資料コーナーにあって、白河市の資料と並んで配架されている
撮影日:2016年1月16日 撮影:岡本真
107ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
ふだん図書館を使わない住民に向けて、図書館の外でどのように自分たち
の存在をPRしているだろうか? 「コミュニティバスで図書館案内」(第9号、
File288)の事例では、千葉県浦安市のケースを取り上げた。同様に路線バスのバ
ス停が図書館の近くにあるなら、路線バスの車内で図書館のPRができるのでは
ないだろうか。その他の公共交通機関ではどうだろう。それぞれの交通手段で図
書館を目指す場合、路上でわかりやすいところに図書館への案内があるだろうか。
今号のウラ表紙に掲載した「やくばとしょかん ちかみち」の看板は、長野県箕
輪町のものだが、「ここまで来たら、このルートからが近いですよ」と、正規ルー
トではないルートも利用者に後押しするよいツールだ。
大事なのは、図書館を使っていない人に向けてどのようなPRが効果的かとい
う視点だ。インセンティブをつけて興味をもってもらう、キャッチコピーや目を
ひく写真を使ったポスターを使うといった工夫があるが、いずれにせよ相手に
とっての「わかりやすさ」を重視することが最適解であろう。
図書館へのアクセスのしやすさを検証することは、老若男女を問わず、どんな
人たちにも拓かれた図書館としての自覚を新たにする、よい機会であるはずだ。
図書館の外でのPR
浦安市内を走るコミュニティバス車内での図書館の案内ポスター
撮影日:2013年10月11日 撮影:嶋田綾子
108 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
図書館の職場体験では、「貸出」や「配架」といった仕事がメインになりがちだが、
もっと記憶に残る職場体験を提供することはできないだろうか。
「職場体験生が本の紹介」(第9号、File238)は、ポップなどを書いてもらうなど、
職場体験生に本の紹介をしてもらことで、記憶に残る職場体験を生み出し、図書
館の職場体験が抱える「成果物が残らない」という課題点をクリアしている。
子供たち自身の想像力や自発性を必要とするこのような仕事は、上手にできて
自信となる場合がある反面、もしかすると子供たちに「うまくできなかった」「難
しかった」など、ネガティブな気持ちも与えてしまうかもしれない。しかし「失
敗」体験ほど記憶に残り、子どもたちはその失敗を次の経験につなげていくので
はないだろうか。
また職場体験は、まだ図書館を利用する習慣のない学生に向けて、自分たちが
取り組んでいることを直接、説明できる数少ないチャンスだ。図書館の職場体験
が、図書館のファンの一票につながる取り組みになれば、お互いにとって素晴ら
しい機会になることは間違いない。
未来の司書を育ているつもりで職場体験を実施し、図書館のことを好きになっ
てもらうことも、リアルな図書館の広報活動といえるだろう。
職場体験で未来の司書をつくる
潮来市立図書館の職場体験生オススメの本 提供:潮来市立図書館
109ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
図書館発の企画ではないが、どんな人でも記憶に残す企画がある。それは、「人
生の記念日に図書館へ本を」(第9号、File246)で紹介した「マイメモリアルブック・
キャンペーン」だ。ひと言で言ってしまえば、予算削減に苦しむ図書館を書店が
サポートする仕組みである。
通常の寄贈ならば、個人が手持ちの本を寄贈することになり、内容によっては
図書館側とのマッチングがうまくいかない場合も多いが、このキャンペーンでは、
個人と図書館の間に書店が入り、図書館が寄贈を希望する本をヒアリングするこ
とで、両者にとって無駄のない、最適な寄贈の受け渡しができる仕組みとなって
いる。
「あなたの人生の記念日に本を寄贈しませんか? あなたの記念日に贈られた
本が地域の図書館で蔵書充実に役立ちます。あなたの本が地域文化に貢献しま
す。」「あなたの記念日が、地域の図書館を元気にします」、これはこのキャンペー
ンを周知するためのパンフレットのリード文だが、この売り文句も素晴らしい。
このキャンペーンの発案は、鳥取県書店商業組合に所属する書店の書店員だそ
うだが、地元の書店との関係をよくするために、図書館側から企画を持ちかけて
も申し分ないWIN-WINの関係づくりに役立つ仕組みだ。
図書館向けふるさと納税
提供:鳥取県書店商業組合
110 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
鳥取県庁内には県職員向けの図書室がある。鳥取県立図書館の分室として県職員のための情報提供、情報発信、情報リテ
ラシーの向上支援と県庁内の資料の組織化を目的に2005年から設置されている。
撮影日:2015年4月14日 撮影:岡本真
111ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
希望の本を集めた「子ども読書パック」や調べ学習のための「学習パック」を載せて、鎌倉市内の学校や幼稚園を巡る配送
車「ブックン」。この軽自動車の寄贈や愛称の決定までの経緯はつぶやきまとめサービスtogetterでまとめられている。
http://togetter.com/li/676801 撮影日:2016年1月16日 撮影:岡本真
調布市立中央図書館の館内に貼り出された案内。「禁止」という言葉を使わずに、ピクトグラムを使って撮影禁止を促す。
撮影日:2016年4月8日 撮影=岡本真
112 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
これまで紙媒体だった雑誌が電子化され、雑誌コーナーから姿を消すケー
スが大学図書館では増えている。「デジタルとアナログつなぐ本棚」(第4号、
File200)では、雑誌が電子化されたことをPRするために、それまで雑誌が置か
れていた棚で電子化された旨と、電子化されたことによるメリットをわかりや
すく案内している事例を紹介した。また、「Twitterと図書館内の連携」(創刊号、
File002)や「サービスの案内を要所要所に掲示」(第9号、File292)は、Facebook
やTwitterなどのオンラインでの活動を、館内でどのようにPRするとよいかが参
考になる事例だ。
オンラインとオフラインの関係は、実は開架と閉架の関係によく似ていること
から、ふだん利用者の目につかない閉架書庫にも資料があることをPRすること
にも応用できる。
さらに「レファレンス事例を館内に掲示」(創刊号、File061)は、図書館の中心
サービスであるレファレンスを、どのようにPRするとよいかの示唆になる事例
だ。館内で行われた活動を記録し、その事例集を冊子にしたり、ウェブで公開す
るのはもはや当たり前になっている。これまでに使っていなかった方法でさらに
利用者に働きかけ、利用を促すPR
の工夫が求められている。広報活動
調査で使ったマトリックスの考え方
で、図書館内でのサービスのPR状
況を分析してみると、今後、取り組
むべきPRの手段があぶり出される
はずだ。
オンラインとオフラインの融合
熊本学園大学付属図書館 撮影日:2013年1月28日
撮影者:岡本真
113ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
FacebookページやTwitterアカウントを運用している図書館がどれくらいか、
すべての図書館のサイトを手作業で調査するのは大変だ。そこで機械的に、全国
の図書館の公式サイトのトップページにFacebook、Twitterへのリンクがあるか
どうかをチェックした(2016年5月15日現在)。今回の方法では、図書館の公式
サイトのトップページから、FacebookやTwitterへリンクしているものを機械的
に収集し、チェックすべき図書館を絞り込んだ。
ただし47都道府県立図書館については、念のためすべて目視によって確認作
業を行った。その際に、FacebookとTwitterだけでなく、ブログやメールマガジ
ンを運用しているかどうかもチェックした。結果をまとめるとFacebookページ
は13館、Twitterアカウントも13館で運用されている(そのうち両方を運用して
いるのは6館なので、47都道府県中20館でいずれかを活用しているといえる)。
【Facebook】
47都道府県立図書館の中でFacebookページを設置しているのは、兵庫県立図
書館、大分県立図書館、山形県立図書館、佐賀県立図書館、県立長野図書館、宮
崎県立図書館、新潟県立図書館、鳥取県立図書館、福井県立図書館、石川県立図
書館、奈良県立図書情報館、岡山県立図書館、東京都立図書館の13館であった
(両方を運営している図書館は太字)。
【Twitter】
Twitterアカウントを運用しているのは、北海道立図書館、岩手県立図書館、
三重県立図書館、大阪府立図書館、愛知県図書館、宮城県図書館、神奈川県立図
書館、鳥取県立図書館、福井県立図書館、石川県立図書館、奈良県立図書情報館、
岡山県立図書館、東京都立図書館の13館だ。偶然にもFacebookページを設置し
ているのと同じ数字となった(両方を運営している図書館は太字)。
【公共図書館での導入状況】
同じ要領で、公共図書館についてもデータを収集し、集まったデータについて
精査したところ、Facebookページは90館、Twitterは62館で確認できた(そのう
SNSでの情報発信の状況
114 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
ち両方を運用しているのは19館)。今回のカウントには除外してあるが、3館ほ
どの図書館で自治体が運営しているFacebookページをPRしている例も見られた。
【使いこなし術】
両者に共通する使い方としては、テキストや写真、動画を使ってブログのよう
なオリジナルのコンテンツを作って発信しているところもあれば、コンテンツは
図書館のサイト上につくり、そこへリンクで誘導するやり方もある。また、時報
のように、時刻にあわせて開館、学習席の混雑状況、閉館といったアナウンスを
淡々と続けている場合もある。Facebookページは大人向け、Twitterはティーン
ズ向けというような使いわけも見られた。
【これだけはやるべし】
アカウントのアイコンやアカウント紹介用ページの背景画像を設定できている
かを確認してほしい。またFacebookページのURLは25人以上の「いいね!」が集
まれば、1度だけオリジナルのものに設定できる。
【SNSはコミュニケーションツール】
前述の調査を通じてわかったのは、本来の機能であるコミュニケーションをせ
ずに一方的に発信しているだけでは、やはりファンは増えていかないだろうとい
うことだ。コメントに対して必ず返信するというのは業務量としても厳しいだろ
うが、最近ではTwitterにも「いいね」ボタンが追加され、手軽に相手にこちらの
意思を伝えることができるようになったので活用したい。一方で、図書館ならで
はの知識や情報といった付加価値を追加することで、評判を呼び拡散されること
も期待できるということも忘れないでほしい。
【今後に向けて】
今回の調査では、冒頭でも述べたように、図書館公式サイトのトップページか
ら、両サービスへのリンクが入っているかどうかで絞り込みを行ったので、トッ
プページからリンクしていないケースは拾えていない。さまざまな事情により、
公式サイトにリンクが追加できない場合もあるだろうが、一般の利用者から見れ
ば、どれが図書館公式なのかは公式サイトからリンクされていることが一番の目
印になる。今回はどれくらい漏れがあるかは把握できていないが、追って詳細を
115ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
調査していきたい。
【ブログ・メールマガジン・ほか】
本誌の発行元であるアカデミック・リソース・ガイドの原点はメールマガジン
(以下、メルマガ)だ。都道府県立図書館だけではあるが、その発行状況について
もまとめてみる。奇しくも、ちょうど10年前の全国の状況は、弊社代表の岡本
が自らまとめているので、本特集の最後に紹介する。広報の視点でみても、参考
になるヒントが多いのでぜひご覧いただきたい。
10年前と比較すると、鳥取県立図書館と秋田県立図書館のメルマガが廃止さ
れており、その一方で新しく5館がメルマガを発行している。2016年5月現在、
全国でメルマガを発行しているのは47都道府県中12館だ。
メルマガを発行している都道府県立図書館一覧(2016年5月現在)
・静岡県立中央図書館(独自システムにて、2003年4月開始)
・岩手県立図書館(独自システムにて、2004年1月開始)
・和歌山県立図書館(独自システムにて、2004年2月開始)
・奈良県立図書情報館(まぐまぐより、2005年7月開始)
・岡山県立図書館(独自システムにて、2005年7月開始)
・大阪府立図書館(独自システムにて、2005年9月開始)
・県立長野図書館(まぐまぐより、2006年2月開始)
・東京都立図書館(独自システムにて、2007年10月開始)
・山口県立山口図書館(まぐまぐより、2009年9月開始)
・島根県立図書館(独自システムにて、2013年1月開始)
・福井県立図書館(独自システム、2010年6月開始)
・新潟県立図書館(独自システム、2011年2月開始)
10年以上前から変わらずメルマガを発行し続けている7館も素晴らしい。
総じて、47都道府県中FacebookあるいはTwitter、メルマガのいずれかで情報
発信を行っている図書館は27となり半数を超えた。
災害時などの危機管理の文脈においては、情報をすべて公式サイト上に集約す
るだけでは事足りない。システムメンテナンスのお知らせをメンテナンス中に止
まってしまう公式サイト上に掲載していてはまったく意味がないのと同じことだ。
何かあった時に備えて、公式サイト以外のツールを使って情報発信しておくこと
が、危機管理体制を整えるための一歩にもつながるはずである。
116 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
都道府県立図書館のメールマガジン発行状況
47都道府県すべてに都道府県立の図書館があり、ようやく全都道府県の図
書館がサイトを持つようになっているが、そのうち9館がメールマガジンを発
行している。詳しいデータは以下にまとめておくが、概要は以下の通り。
・名称
9誌とも図書館名+メールマガジン。直接的でわかりやすくはあるが、一工
夫ほしいところではある。たとえば、図書館名+メールマガジンを副題として
扱い、図書館名+メールマガジン「○○○○○」としてはどうだろうか。
・歴史
最古は静岡県図書館メールマガジン。2003年4月16日創刊。最新は県立
長野図書館メールマガジン。2006 年 2月15日創刊。2003 年の創刊が 1 誌、
2004年の創刊が4誌、2005年の創刊が3誌、2006年の創刊が1誌となり、約
半数は2004年に創刊され、以降毎年、創刊数は微減しながらも全体では増加
傾向にある。
・部数
部数を明記しているメールマガジンはなく、各誌がどの程度配信されている
のかは不明。一律に比較できるものではないが、部数は公開してよい情報で
はないか。
・発行システム
9誌中7誌が独自構築のシステムを利用し、2誌が「まぐまぐ」を利用してい
る。独自構築の場合、システムの保守・運用のコストに加え、メールアドレス
など、配信登録者の個人情報に類するものの管理が必要となってくる。定評の
ある「まぐまぐ」を利用するほうが賢明ではないか。
117ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
図書館 100 連発に学ぶ! 小さな工夫で伝わる PR を
・バックナンバー
全誌がバックナンバーを公開している。ただし、バックナンバーの公開が遅
れ気味のメールマガジンも散見される。発行システムと同様、運用コストを考
えると、バックナンバーの公開機能がある「まぐまぐ」を利用するほうが賢明で
はないか。
・内容
新着図書の紹介やイベントの案内、コラムが主流。
総評としては、現在ある9誌はメールマガジンとしてのキャラクターづけが不
十分に思える。わざわざサイトにみにいかなくても手許に届くというメールマ
ガジンの特性をまず生かすべきだろう。
その意味では、まず新着図書やイベント情報を含めた図書館の新着情報を
配信してほしい。同時に、図書館サイトの新着情報も忘れずに盛り込んでほし
い。
また、読み物に力を入れることはよいが、メールマガジン独自の記事にこだ
わる必要はないだろう。サイトにはメールマガジンに転用できる記事がたくさ
んある。レファレンスの最新事例や新規サービスの案内などをバランスよく配
置すれば、記事に事欠くことはないのではないか。
要望を書き連ねたが、既存の9誌(9館)は残りの38館を思えば、むしろ讃え
られるべき存在であることを最後に確認しておきたい。もちろんメールマガジ
ンがないよりは、あったほうがいい。図書館に関する情報を利用する選択肢が
それだけ増えることになるからだ。メールマガジンに取り組むことがすべてで
はないが、残りの38館には、それぞれの特性に応じた情報の発信をより充実
させてほしい。
arg 投稿日時:2006/05/15(月)01:31
http://www.arg.ne.jp/node/1464
118 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
マガジン航 Pick Up Vol.4
2016年3月21日に東京工業大学博物館で開催された、第7回OpenGLAM JAPAN
シンポジウム「博物館をひらく−東京工業大学博物館編」に午後から参加してきまし
た。東京工業大学博物館は同大の大岡山キャンパス百年記念館とすずかけ台キャン
パスすずかけ台分館にある付属の博物館で、今回のシンポジウムは前者で行われま
した。
大学博物館を見学すること自体、今回が初めての経験だったため、まずその所
蔵品の面白さに目を瞠りました。同博物館の所蔵品は、貴重な自然科学の実物資
料(展示室「地球史」)から、産業遺産ともいえる工業製品(展示室「電気〜光/通信
の先端研究史」)、建築模型や美術品(展示室「百年記念館/篠原一男」)まで多岐
にわたります。「工業大学」という名称から連想するものよりはるかに幅が広いこ
とに、率直な驚きを感じました。
この博物館の1階にはT-POT(ティーポット)と名付けられた共有スペースが
あり、今回のシンポジウムはそこで約30名の参加者を集めて開催されました。
OpenGLAMとはなにか?
今回のシンポジウムのテーマである OpenGLAM の「GLAM」とは、Gallery、
Library、Archives、Museumの頭文字です。つまりOpenGLAMとは、図書館・美
術館・博物館・文書館といったいわゆる「文化施設」の所蔵品をインターネット上
などで公開し、自由に閲覧や二次利用ができるようにするための国際的な取り組
みのことです。日本でもOpenGLAM JAPANが設立され(2013年)、文化施設が所
博物館をネット上にひらく試み
1964 年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。『シティロード』『ワイアード日本版』の編集、『季
刊・本とコンピュータ』編集長を経て、現在はフリーの編集者、文筆家、批評家。09 年 に株式会社
ボイジャーと出版の未来を考えるWeb メディア「マガジン航」を創刊、15 年より編集発行人を務める。
著書に『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、『〈ことば〉の仕事』(原書房)等、編著『ブッ
クビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)など。
仲俣暁生(なかまた・あきお)
マガジン航Pick Up Vol.4
119ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
マガジン航 Pick Up Vol.4
東京工業大学博物館の2階展示室「百年記念館/篠原一男」では、主に百年記念館の紹介とその設計者・篠原一男の建築作
品の模型が展示されている。 撮影=仲俣暁生
東京工業大学博物館の2階展示室「地球史」では、同館収蔵の地質資料や地球史教育研究活動の成果が紹介・展示されて
いる。 撮影=仲俣暁生 
120 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
マガジン航 Pick Up Vol.4
蔵する文化資源のオープンデータ化に向けたシンポジウムなどを重ねてきました。
今回のシンポジウムはその7回目にあたり、私は聞くことができなかったので
すが、午前中には福島幸宏氏(京都府立図書館)による「歴史資料を拓く〜制度と
慣例のあいだ」と南山泰之氏(情報・システム研究機構国立極地研究所情報図書
室)による「研究・観測データを拓く〜国立極地研究所の取組み」という二つの講
演がありました。福島氏は東寺百合文書を、南山氏は南極資料をオープン・ライ
センスで「ひらく」主導的な役割を果たした方々です。
昼休みの休憩を挟んだ午後は、東京工業大学博物館の阿
あ こ
児雄
たかゆき
之氏と日
く さ か
下 九
きゅうはち
八
氏(東京ウィキメディアン会)のモデレーションのもとで、東京工業大学博物館お
よび関連項目Wikipediaページをその場で作成・編集し、さらに同博物館の所蔵
品をオープンデータ化してウィキメディア・コモンズ(クリエイティブコモンズ
など、自由に利用できる画像などのファイルをストックするデータベース)で公
開するというワークショップが行われました。
ワークショップに先立つ日下九八氏のガイダンスでは、「OpenGLAMとは何か」
が以下のように整理されていました。
・所蔵目録のオープンデータ化(含むメタデータ整備)
・所蔵品のデジタルな複製のオープンコンテンツ化(デジタル化+オープン化)
・職員が作成した著作物、資料などのオープン化
・自機関の「文書」のオープン化
・「オープン化」の活用、サポート
さらにこれらを現実的にサポートする仕組みの一つとして、Wikipediaを運
営するウィキメディア財団が手掛ける「ウィキメディア・コモンズ(Wikimedia
Commons)」についての解説がなされました。
リアルタイムで「百科事典」が執筆されていく
これを受けて午後のワークショップでは参加者が博物館内を見学したのち、
Wikipedia上にどのような項目を作成するかが議論され、東京工業大学博物館と
その関連項目(フェライト、ETAシステムズ、ゴットフリード・ワグネルなど)の
121ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
マガジン航 Pick Up Vol.4
Wikipediaの項目執筆のために用意された資料。 撮影=仲俣暁生 
東京工業大学博物館で行われたワークショップでは、同博物館のWikipediaページをその場で作成・編集し、さらに博物
館の所蔵品をウィキメディア・コモンズで公開するところまで行われた。 撮影=仲俣暁生
122 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
マガジン航 Pick Up Vol.4
作成・編集・増補が行われました。同博物館ではもともと所蔵品の撮影を制限し
ておらず、撮影した写真を自由に使うことができます。これらの所蔵品の多くが
撮影され、写真がウィキメディア・コモンズに公開されました。すべての写真が
記事に活用されているわけではありませんが、誰でも活用することができます。
約2時間半にわたるグループワークの時間内で、それぞれの項目を担当した
チームが資料をもとにWikipediaの執筆・増補にあたり、画像チームは展示物の撮
影とメタデータ付与、ウィキメディアへのアップロードなどを進めていきました。
参加者のなかには司書や学芸員、編集者といった専門技能をもった方もいれば、
学生や一般の社会人もいました。これまでにもウィキペディアタウン(本誌12号
のマガジン航Pick Up Vol.2「ウィキペディアを通じてわがまちを知る」も参照の
こと)など、同様のワークショップに参加した経験のある者がリーダーシップを
とりつつ、分担作業でテキパキと「百科事典の項目作成」が共同作業で進んでいく
様子は、ながらく編集の仕事をしてきた私にとって感動的なものでした。
Wikipediaは「読む」だけでなく、自分で「つくる」ものでもある
今回のシンポジウムとワークショップは、東京工業大学博物館の項目が
Wikipedia上にないことを逆手にとって、それを実際に作成することを通じて、
博物館の存在と特徴を知ってもらおうという意味合いがあったようです。
Wikipediaというと、一般的な受け止め方は「タダで読める百科事典」であり、
そのかわり内容的にはやや、信頼できないものもある、といったところでしょ
う。Wikipediaの記述の信頼度には、項目によりバラツキが大きく、すべてをそ
のまま信頼するわけにはいきません。ただし、もしある項目に明らかな間違いが
みつかった場合は、それを発見した者がただちに修正または削除することが可能
です。紙に印刷され定着してしまった百科事典に情報の修正やアップデートが
必要な場合は、膨大な予算をかけて新版や増補版を発行するしかありませんが、
Wikipediaの場合は個人によっても、あるいはこうしたワークショップによって
も、必要な増補・修正が随時可能なのです。
ただし、Wikipediaの項目がどのような人たちによって、どのようなかたちで作
成されているのかは、こうした公開型のワークショップでもない限り、目にする
機会はありませんでした。その意味で、今回のシンポジウムおよびワークショッ
123ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
マガジン航 Pick Up Vol.4
プへの参加は、私にとっては目からウロコが落ちるような体験だったのです。
Wikipediaには、「アメリカ同時多発テロ事件」「イラク戦争」「東日本大震災」など、
近年に起こった大事件が、紙の百科事典にまとめられる前に、いち早く項目とし
てまとめられています。一方で、膨大な数に及ぶ「過去の事物」の項目も、すさま
じいペースで編集が進められています。Wikipediaはたんなる「フリー百科事典」
ではなく、分散型で執筆・編集が行われる新しいタイプの「出版物」としての特徴
をもっています。またウィキメディア・コモンズに集められた図版や写真は、著
作権の切れたパブリックドメインのコンテンツや、クリエイティブ・コモンズな
どで二次利用のためのライセンスが示されているコンテンツと並んで、新たな
「出版物」を生み出すための豊かな素材となりつつあります。
今回は文化施設(GLAM)を対象とするイベントでしたが、ウィキペディアタウ
ンのように地域を対象としたり、企業や学校、あるいは「メディア」そのものに対
しても、同様の試みが可能だと感じます。Wikipediaをたんに利用するだけに留
めず、それがどのようにつくられているのかを知り、興味と関心のある部分につ
いては、その作成・編集にも関与してみることで、この世界最大の百科事典に対
して、新しい見方が拓かれるかもしれません。
*本稿は、ウェブ媒体「マガジン航」で掲載された「博物館をネット上にひらく試み」(2016年3月31日)を著
者の了解を得て転載しました。
博物館の所蔵物の写真が公開されたウィキメディア・コモンズ。 撮影=仲俣暁生 
124 ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
はじめに
連載「図書館資料の選び方・私論〜その2 〜」は、「選書をめぐる論争」と題し、
図書館における選書のあり方をめぐる論争を通して、その本質や構造を立体的に
お示しするのが本稿の狙いです。正直に申し上げて、ハードルの高い目標設定で
すが、そこは「私論」という枠組みに甘えて、できるだけフランクに語らせていた
だくことをご容赦ください。
1.選書の何が問題にされたのか?
選書は、「図書館をどのようなものとして捉えるか」という、図書館思想を体現
する営為だと論ぜられることがよくあります。選書に関する議論は、つまりは
「どんな図書館を創り、経営するのか」という思想と経営論を抜きには語れないも
のだと私も考えています。
戦後の公共図書館づくりは、戦時の図書館が、「国家の思想善導に加担した」と
いう反省を踏まえ、1947年5月3日に施行された新憲法がめざした民主主義社会
の建設に寄与するものとして始まりました。敗戦の年から5年を経て制定された
「図書館法」(1950年)の目的は、以下のように綴られています。
第1条 この法律は、社会教育法(昭和24年法律第207号)の精神に基き、図書
館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国
民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。
選書をめぐる論争
1963年、大阪生まれ。1987年、豊中市立図書館、1998年、滋賀県旧永源寺町
で図書館開設準備を経て、2000年に永源寺町立図書館、2006年から合併後の東
近江市立八日市図書館、能登川図書館などでの勤務後、2011年、瀬戸内市新図
書館開設準備担当。2009年から2010年まで、京都学園大学司書課程非常勤講師、
同志社大学政策学部嘱託講師を兼業。2008年、政策科学修士(同志社大学)。
嶋田学(しまだ・まなぶ)[瀬戸内市民図書館もみわ広場館長]
連載 図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
125ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
社会教育法は教育基本法の任務を明らかにするものとして、そして、教育基本
法は日本国憲法の精神にのっとり制定されています。「日本国憲法三大要素」とし
ての、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の実現と整合するかたちで、
図書館法は成り立っています。
しかし、図書館法の制定により、日本の公共図書館が直ちに国民にとって身近
な社会教育施設になったかというと、残念ながらそうではありませんでした。都
道府県立図書館に代表される中央図書館論、つまり大図書館の整備が図書館政策
においてまず優先され、市町村立図書館を整備し、身近な読書と学びの環境整備
を展開するということにはならなかったのです。今ではちょっと信じられないか
もしれませんが、戦後の公共図書館においても、入館料を徴収されたり、貸出利
用登録をするのに保証人が求められるという事案が珍しくありませんでした。
こうした時代の図書館は、利用者の要求を聞き、それに応える選書をするとい
うような常識はまだありませんでした。現在のような公共図書館のモデルが登場
するのは、1960年代後半になってからのことです。
 
1-1 資料提供こそが図書館の使命
上記のような沿革を辿ったこともあり、公共図書館は国民に拓かれたものとし
て、「利用者が求める資料」をまずは提供することがその使命であり、図書館はそ
れ以上でもそれ以下でもない、というポリシーが多くの図書館員に共有されまし
た。
こうした図書館運動を駆動したのが、1963年に公刊された『中小都市における
公共図書館の運営』の理念と政策であり、これを体現した東京都日野市立図書館
の活動、そして、その活動をいきいきと活写した1970年の『市民の図書館★1
』と
いう実践書でした。
1970年代の公共図書館の国民一人当たりの貸出冊数は、1冊を切っていました
(現在は、5.4冊)。ですから『市民の図書館』では、「われわれは、少なくとも日本
の市立図書館が平均で人口の2倍の貸出しをするまで、そしてわれわれ自身の図
書館がこの平均より高いサービスをするまで、質だ量だという議論はやめようで
はないか」、と呼び掛けられていました。
しかし、『中小都市における公共図書館の運営★2
』が公表され、その理念に基づ
く運営をしていた日野市立図書館など東京都多摩地区の図書館活動に対しては、
すでに貸出を重視したサービスへの異論が起こり始めていました。
126 ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
こうした住民に拓かれた貸出図書館の成功は、高度経済成長期に続いたインフ
ラ整備が落ち着いた時期と重なり、図書館整備への追い風を受けてさらに展開さ
れることになりました。1980年代には市区の図書館設置率は80%を超え、バブ
ル景気を受けて町村立図書館の整備も進展していきます。
一方で、このような流れと同時に、日本専売公社、日本国有鉄道および日本電
信電話公社の三公社を民営化させた中曽根内閣による、いわゆる構造改革が準備
されていました。1990年代になると東京では、公共図書館の窓口業務を民間委
託する動きが出てきます。
とはいえ、大都市で成功した住民による公共図書館設置運動は地方に広がりを
見せ、『市民の図書館』を教科書とする図書館経営は、まだまだ有効でした。その
典型例となるのが滋賀県の図書館でした。1980年代から、日野市立図書館長だっ
た前川恒雄氏を県立図書館長として迎え、当時、図書館設置率が下から2番目
だった滋賀県内の図書館振興を行い、今では県民一人当たりの貸出冊数が全国1
位という実績を長年続けています。
このように90年代の後半になっても、公共図書館における価値の裏づけとし
て、貸出冊数を重視する図書館経営は自明視されており、より利用される図書を
より多く選択することが、最も適切な選書であるという評価軸が支配的でした。
それは、戦前の図書館が、国民が求めもしない本を啓蒙的に提供していたという
禍根が、まだ色褪せず図書館員に残存してあったからでした。住民が求める、利
用される資料を収集し提供することは、ごく当たり前のことだったのです。そし
て、それは現在も決して間違ってはいないと思います。しかし、課題はありまし
た。
1-2 読まれない本は本ではない?
2000年以後、小泉内閣による構造改革路線は、公設公営の公共施設運営とい
う規定路線から大きく舵を切りました。「民でできることは民で」というスローガ
ンのもと公共サービスの民営化が始まり、2003年9月施行の地方自治法の一部
改正によって「指定管理者制度」による「公の施設」の運営が可能になるに至って、
その流れは現在まで続いています。
何のために、何をするために、公共施設あるいは、公共サービスはあるのか、
という本質的な議論を抜きに、既得権益を破壊するという政策のもと、あらゆる
社会構造をいわゆるニューパブリックマネジメント(NPM)の価値観と手法で改
127ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
革することが、もっとも重要な国家課題となり、それは総務省を通して地方自治
体にも容赦なく迫られることになりました。
公務員司書が住民との良好な関係の中で、求めに応じて図書館資料を提供する
ことにより、民主主義社会の建設に寄与するという理想は、その経営基盤のあり
方から根こそぎ否定され、民間による効率的で功利的な公共サービスを展開する
ことが、クールな地方行政の管理手法として静かに広がっていきました。
同時期に、こうした政策マターとは別の文脈で、公共図書館の現状と今後の展
望について象徴的な論説が公表されました。『図書館雑誌』(1998年5月号、日
本図書館協会)に掲載された編集者、津野海太郎による「市民図書館という理想の
ゆくえ」がそれです。少し長いですが、私なりに津野の論旨を以下にまとめてみ
ました。
1970年代の市民図書館運動によって、図書館は市民の読書要求を支える存在
となった。しかし、市民の求める本を提供する姿勢は「読まれない本は本ではな
い」という主張を生み出した。しかし、「読まれない本は本ではない」という主張は、
苛烈な競争原理に基づいて「いますぐ売れる本」だけを再優先する本の商業主義、
「売れない本は本ではない」という市場至上主義を支える主張にもなりうる。こう
した商品としての本の生命はみじかい。他方、公共財としての本の生命はながい。
そして公共財としての本の生命を維持するのが、税金で賄われる公共機関として
の図書館の使命ではないか。その図書館までもが、「読まれない本は本ではない」
という主張の正しさにたてこもっていると、本の文化の多様性は失われるのでは
ないか。また、一方で図書館は、市場で「売れない本」が電子化されていく動きや、
ニーズが高いはずのマンガについては冷淡なままである。「親切な無料貸本屋さ
ん」という暴言をあえてするのは、あたらしい市民図書館像をかためて、それを
積極的に外の世界にアピールしてゆかないと、図書館は国や行政の冷酷なあしら
いから身を守ることすらできなくなってしまうのではないかという思いからであ
る。 
この記事は、当然多くの公共図書館員からの批判に晒されました。なかには、
図書館員の職能集団である日本図書館協会の機関誌が、図書館に否定的なこのよ
うな論文を掲載すること自体を批判する論評もありました。
しかし、日本の公共図書館が「読まれない本は本ではない」として、そういった
128 ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
本ばかりを購入していたかどうかはさておき、図書館の内向的な姿勢、図書館機
能を外部にアピールしないことの危惧は、当時の時代状況を捉えた的確なもので
あったと私は見ています。
1-3 何のための選書か
さて、ここに及んでようやく、公共図書館は何のために存在するのか、そして、
その選書は何のためになされるのか、という問いが立ち上がりました。
1970年代以降の公共図書館の成功から続く図書館の台頭の中にあって、私自
身が1987年からその当事者となった実感をもってしても、やはり貸出冊数が多
いということが、公共図書館の価値においてもっとも重要な成果指標であったこ
とは否定できません。
図書館員の皆さんにお尋ねしたいのですが、選書会議で呟かれたであろう次の
ようなフレーズに心当たりはないでしょうか。
「いい本なんだけど、あんまり出ないんだろうな……」
そうです。本としての価値を認めながら、多くの貸出が見込めない本は、選書
から漏れるのです。なぜなら図書館の価値を左右する貸出統計に貢献しないから
です。財政が豊かで資料費が豊富にある基礎自治体、あるいは都道府県立図書館
には当てはまらない議論かもしれません。しかし、『市民の図書館』をお手本にし
た多くの公共図書館で、こうした呟きは日常茶飯事だったはずです。
しかし、図書館法に定められた「国民の教育と文化の発展に寄与する」には、主
題分野も難易度も多様な資料が用意されていないとおぼつかないでしょう。蔵書
を構成する選定基準における決して低くはない要素に「出るか出ないか」という価
値判断があり、議論はそこで停止します。
「どうしたら出るかあるいは、利用の可能性を調査する」という方法論には議論
が広がりませんでした。何のために、この本が必要で、この本は不必要かという
議論は、「貸出に出るから必要」という自明の論が潜在的にあり、「何のために」は、
深く議論されることはありませんでした。
これが、1987年から2000年手前ぐらいまでの私の実感です。
1-4 誰のための選書か
誤解のないように申し添えれば、利用される本を選定することは極めて重要で
す。図書館、あるいは図書館員の見栄や体裁で、利用見込みや当該自治体での必
129ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
要性を問わず、主題分野と難易度の多様性を確保するためだけに、選書をするこ
とは適切ではありません。
しかし同時に、当該自治体での必要性や、主題分野と難易度の多様性確保など
の検討を行わず、利用見込みのみで選書をすることが、全面的に正しいとは思わ
ない、という立場を私は取ります。
ここで今度は、「誰のための選書か」という問いが立ち上がります。
利用されている資料をベースに、新たな資料を選んでいると、その主題範囲を
超えることは容易ではありません。もちろん、利用者の現在のニーズやリクエス
トの主題範囲を超えて、社会のトレンドを映す図書の購入によって、蔵書主題が
広がることは考えられます。
しかし、今、図書館に来ていない住民、来ているけれど、需要が顕在化してい
ない分野の資料は、図書館サイドが何らかの働き掛けによって資料を選ばなけれ
ば、蔵書に加えられることは難しいでしょう。
「今、利用している人だけ
4 4
のための図書館」でいいかどうか、が問われると思い
ます。インドの図書館学博士のランガナタンは、『図書館学の五法則』の第二法則
に、「いずれの人にもすべて、その人の本を。(Every reader, His or Her book)」と
主張しました。
当該自治体が運営する公共図書館が、その住民を「いずれの人にもすべて」と提
起するならば、来館者をベースに「利用される本」だけを選書基準においたのでは、
仕事としては不十分でしょう。
2.選書をめぐる論争
2-1 津野論文が開いた本質的な選書論争
前述した津野の批判には、若干の事実誤認も含まれてはいます。これについて
日野市立図書館の鬼倉正敏は、多くのニーズがあるベストセラーへの要求を満た
すためには複本を購入せざるを得ないこと、図書館はベストセラーだけでなく、
予約などのサービスを広めることで、多様な読書ニーズに応えているなどの具体
例を示して、図書館が蔵書の多様性の確保に努めていることを主張しています。
さて、この津野に続く公共図書館の選書批判としては、少し矮小化されたもの
になっていきますが、林
はやしのぞむ
望が『文藝春秋』(2000年12月号)に発表した「図書館は
130 ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
『無料貸本屋』か~ベストセラーの“ただ読み機関”では本末転倒だ~」を発表しラ
ジカルな図書館批判を展開して以来、出版社や作家などから図書館バッシングが
相次いだことは鮮明に記憶されていることと思います。しかし、私が拙稿で注目
したいのは、こうしたいわゆる文化人による公共図書館の「無料貸本屋」論争では
なく、図書館員の中に古くからある、図書館のあり方を踏まえた選書論争のほう
です。つまりは、利用者の要求を拠りどころとした選書を重視する「要求論」と、
図書そのものの評価を拠りどころとした選書を重視する「価値論」という議論です。
こうした議論は、1960年代から『市民の図書館』以降、図書館員、図書館学研
究者の間で議論が重ねられてきました。選書の実際を図書館現場から実証的にま
とめた好著に『本をどう選ぶか~公立図書館の蔵書構成~★3
』があります。著者で
ある伊藤昭治は、神戸市立図書館での利用分析を素材に、開架資料がどのように
利用されるかを精緻に分析し、利用される資料群の特性、そして、利用されない
資料群の諸相を描き出しました。こうした実証的な分析を踏まえて、図書館の独
善的な選書を批判し、要求に応える蔵書構成の重要性を主張しています。
たとえば、高価な本より価格帯の安い本のほうがよく利用されていること、子
どもの本におけるいわゆる良書リストに基づく資料と、実際に借りられている資
料とにずれがあること、あるいは、あまり利用されない主題とはどのような分野
であるかを析出しています。ちなみに、ここで「利用される」というのは、貸出さ
れる資料のことを示しています。
津野論文をきっかけに、図書館に「無理貸本屋」というレッテルが貼られ、出版
界や著者に経済的損失をもたらしているという批判が展開されたことは誠に残念
なことでした。しかし、それを契機に、図書館の蔵書はどのようにあるべきかと
いう議論を通して、図書館は社会に対してどのような価値や役割を提供すべきか、
という議論が図書館界にもたらされたことはよかったと思います。
選書論としても次項で説明する「目的論」と呼ばれる論点が注目されることとな
りました。
2-2 「要求論 VS 価値論」から「目的論」へ
選書のあり方をめぐる議論では、河井弘志『蔵書構成と図書選択』(1983年、
日本図書館協会)が、要求論と価値論の対立から図書館の目的に至り、単純な要
求充足よりも、図書館が果たすべき目的を実現させるものとしての選書、蔵書構
成の意義を説いています。ただ、では図書館の目的とはどのようなものなのかに
131ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
ついては、明確に述べられていません。
その後、2000年代の構造改革路線が明確になるなかで、いかに図書館の意義
や政策的な優位性をアピールすべきかという議論が、「課題解決型図書館」論とし
て議論されるようになりました。
たとえば、『図書館界』(日本図書館研究会)では2004年から2007年の5回に
わたって、これまで概観してきたような論争を整理し、これからの図書館の在り
方についての議論を喚起する主旨で、《誌上討論》「現代社会において公立図書館
の果たすべき役割は何か★4
」を企画、連載しました。編集委員会は今般の諸論争
を、1.『市民の図書館』の歴史的評価、2.貸出中心のサービスへの考え方、3.資料
購入のあり方、の3つに整理し、図書館員、市民、図書館情報学研究者などの議
論を紹介しました。
この誌上討論は、「貸出」サービスを基調とする『市民の図書館』を支持する主張
と、貸出だけでなくレファレンスサービスの充実のために情報フロー(時間軸が
重要となる情報)から情報ストック(テーマ・内容が重要となる情報)重視への転
換をはかり、公共性の原理に即した資料選択により「地域の情報拠点」として機能
させるべく「課題解決型」図書館を目指すべき、と主張する論者との白熱した討論
が展開されました。
根本彰は、図書館未設置地域での最初のサービスを行うノウハウにおいては、
『市民の図書館』がきわめて有効であるとしながら、予約や読書案内まで含めた貸
出サービスが図書館サービスの中心と主張することは、他のサービス発展の可能
性を阻害することになると主張しています。また、市民の資料要求に対して価値
判断を行わず提供する「要求論」は、高度経済成長期の消費主義と同じであり、図
書館コレクションのあり方は、それらと一線を画した公共性の原則を組み立てた
上で決定すべきであると批判しています。
糸
い と が ま さ る
賀雅児は、『市民の図書館』が刊行された1970年代初頭においては「貸出」に
重点をおいた戦略は正しかったとしながらも、貸出を重視するあまり『市民の図
書館』における「貸出」論が本来もっていたはずの図書館機能全体への豊かな広が
りを見せることなく、「貸出処理」という作業と同一視されることとなったとし、
それは司書の働きがわかりやすいレファレンスサービスが十分浸透していないこ
とが背景にあると述べています。その上で、「地域の情報拠点」として発展するた
めに、図書館資料にさまざまな付加価値を付け広範な利用者への情報発信を進め
るべきだと主張し、「課題解決型図書館」の定着のためにも『市民の図書館』から脱
132 ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
却すべきであると主張しています。
これに対して、田
た い か く お
井郁久雄は、「市民が日常生活の問題解決に図書館を使う(レ
ファレンスサービスを受ける)という常識は現在非常に薄い」という『市民の図書
館』の記述を紹介し、そうした利用目的は図書館が貸出によって利用者の身近な
存在になることで可能であるということ、「問題解決のための図書館利用」は、実
は貸出そのものによってもなされているという事実を紹介し、その脱却によって
「課題解決型図書館」を実現させるという論理に疑問を呈しています。
また、鈴木由美子は利用者の立場から、リクエスト図書をカウンター越しに見
て、市民の関心領域の多様さを知ることはあっても、大衆消費社会的な軽薄さを
感じたことはないとして実証的な研究を呼び掛けるとともに、経済状況やその影
響下にある行革の結果をもとに図書館の施策が方向づけられるなら、図書館学は
官僚を神として信奉する宗教になってしまうと批判しています 。
討論の最終回で編集委員の山口源治郎は、多くの論点や課題が浮かび上がった
ものの、全体として「貸出サービス」論争にとどまった観があるとして、「『現在社
会』をどう捉え、それと公立図書館の関係、そこでの公立図書館の役割、サービ
スのあり方をどう考えるかといった方向へと討論をさらに深めることが必要では
なかったか」と述べています。
ここに至って、選書論としての「要求論」と「価値論」の対立、これを乗り越える
オルタナティブとしての「目的論」は、そもそも選書は、図書館が外部に対してい
かに機能し、その存在をどのように示していくかという、政策論のレベルで議論
されるようになりました。 
ちなみに、先の伊藤、河井をはじめとした議論やアメリカにおける図書選択論
も踏まえた詳細な議論を紹介している好著に、安井一徳の『図書館は本をどう選
ぶか★5
』があります。
しかし、2006年に出版された本書は、理論のレビューとしては優れたもので
すが、著者も断っているように、具体的な選書の現実に基づく理論の整理はなさ
れておらず、また選書の背景にある図書館経営論などに射程は伸びていません。
それは著者の意図するところではなかったと思いますが、ぜひ続編を読みたいと、
ここでラブコールを送らせていただきます。
133ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
3.今、語られるべき選書論と図書館評価
2013年にリニューアルした佐賀県武雄市図書館の蔵書をめぐる問題は、公共
図書館の新たな選書問題を浮き上がらせています。指定管理者である蔦屋書店を
展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、「CCC」)が、系列
企業の新古書店から、出版年の古い図書や地域性のずれた資料を大量に購入して
蔵書にしたなどとして問題となりました。それ以来、選書は購入前に市教委が
チェックするという体制を取るとし、同じく2館目としてオープンした神奈川県
海老名市立図書館でも、教育長が承認したものしか購入しないとする見解を出す
など、図書館の教育機関としての独自性、「図書館の自由宣言」に基づく、「図書
館は資料収集の自由を有する」という理念が形骸化する事態が生じています。
こうした状況では、公共図書館がまちづくりや地方自治といった文脈で、ある
いは個人の自立を支え、民主的な社会の建設にいかに役立つかという政策論は語
られず、「まちのにぎわい」創出手段として取り組まれた指定管理者による図書館
経営を、いかに適切にコントロールするかという行政管理論に矮小化されていま
す。
報道では、しきりに選書の問題点が指摘され、CCCや行政サイドの対応が紹介
されていますが、選書はどのようにあるべきかや、その選書を基盤として、公共
図書館はいかにあるべきかという本質的な議論はほとんどなされていません。
3-1 二元的な観察点と評価軸からの選書、図書館評価を
これまで見てきた選書における要求論や価値論、これらの限界を昇華させるよ
うな目的論も、それぞれに意義があると思います。実践的には、これらの理論を
バランスよく取り入れ、最も効果的な選書実務を行うためのスキームと評価基準
を持つことが、図書館自体の経営を目指すべき地点に連れていってくれるものと
思います。
まず、選書の観察点として、①顕在化しているニーズ、②地域や社会状況によ
り個人に内在しているニーズ(潜在的ニーズ)、③過去において存在し、そのこと
で未来においても生じうるニーズ、あるいは現在からみて将来起こり得るニーズ、
という三つの観察点を提起したいと思います。
 
潜在的なニーズ、すなわち見えていない情報要求に応えるには、推測、仮説が
134 ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
必要ですが、その前提として観察が求められます。その一つのヒントになるのは、
統計の分析です。一つ例をお話しましょう。
以前の勤務地で異動した図書館の利用状況を知るために、分類別の貸出統計を
取ったところ、工業系の資料の利用が多いことがわかりました。しかし、ニーズ
が強いにもかかわらず、当該分野の蔵書数がそれほど多くなく、また出版年もそ
れほど新しくありませんでした。これは、図書館内で起こっている状況の観察で
す。次に、このニーズの背景を探るべく、行政統計で産業種別就業人口を調べて
みました。すると、当該地域は製造業が比較的多いことがわかりました。そして、
町の様子を見てみると、単身者向けの住宅がここ数年で増加してきているという
事もわかりました。
ここまでの観察で、次のような仮説を立てることができました。製造業系の資
料をもう少し充実させれば、さらに利用が増加し、利用者層の拡大を図ることが
できるかもしれない、という仮説です。
この図書館では、人文科学、社会科学系の資料は充実していましたが、産業系
の資料はあまり充実していませんでした。それは、開館当時の町の見立てが、農
村地域に広がった、京都、大阪のベッドタウンで、本好きな地元住民に加え、ホ
ワイトカラーを中心とする新住民を主な顧客と捉えていたからだと思います。
また、過去から現在、そして未来の情報ニーズを探る手立てとしては、地域の
歴史に学ぶことでしょう。たとえば、美しく豊かな水源の恩恵を受けてきた地域
で古くからコメづくりや日本酒づくりが盛んであった地域では、水を活かした産
業に関する情報が未来においても求められるかもしれません。たとえばそれは、
パンづくりやワインづくり、あるいは水質の高い水を多く必要とする精密機器製
造業の進出につながるかもしれません。そうした営みに関係する団体、個人が、
「まだ見ぬ利用者」として、すでにその町に住んでいるかもしれませんし、近い将
来住人となるかもしれません。
いってみれば、共時性と通時性の観点から、個人や地域の情報ニーズを探って
みることが、選書をより効果的なものにする基本的な姿勢ではないかと思います。
そして、いうまでもないことですが、現在利用している利用者の満足度を上げる
ことをないがしろにしてまで、潜在的な利用の開拓に力を注ぐことはよい結果に
結びつかないと思います。現在の利用者が図書館を信頼していれば、知人、友人
にその有益性を伝えてくれるかもしれません。そうした評判を耳にした「まだ見
ぬ利用者」が、図書館がまだ提供できていない分野の資料を要求してくるかもし
135ライブラリー・リソース・ガイド 2016 年 春号
図書館資料の選び方・私論 ~その2 〜
れません。
また、分析は机上の論ではないと思います。そのヒントは、今の図書館の中に、
あるいは地域社会や現代性という状況の中に潜んでいるはずです。外国のトレン
ドをそのまま模倣しても、話題づくりにはなるでしょうが、真に住民の糧となる
情報提供にはならないでしょう。
ただ、「基本を大切に」とか、「貸出に力を入れる」という抽象的な言説で、結果
的には顕在的な要求にしか応えない図書館活動に未来はないと思います。
選書、そしてその営為の積み重ねとして蔵書を構築する仕事は、図書館がどの
ようにして個人の自立、あるいは社会的な要請に応えるかという俯瞰的な視野が
ないとできないと思います。
まとめ
「選書をめぐる論争」と題して、その背景にある課題、そして、そもそもその課
題の根本にある図書館のあるべき姿の考え方について、思うところを書いてみま
した。
次回は、「蔵書構成は図書館政策、そして地域政策でもある」と題して、これま
での議論をさらに具体的に、私の体験をベースに綴らせていただきたいと思いま
す。
★1 日本図書館協会『市民の図書館』、日本図書館協会、1970年
★2 中小公共図書館運営基準委員会『中小都市における公共図書館の運営』、日本図書館協会、1963年
★3 伊藤昭治、山本昭和『本をどう選ぶか-公立図書館の蔵書構成-』、日本図書館協会、1992年
★4 《誌上討論》「現代社会において公立図書館の果たすべき役割は何か」、『図書館界』、(第1回)56巻(3号)、
2004年9月、(第2回)56巻(6号)、2005年3月、(第3回)57巻(4号)、2005年11月、(投稿:単独掲載)
58巻(1号)、2006年5月、(第4回)58巻(5号)、2007年1月、(第5回・最終回)59巻(4号)、2007年11
★5 安井一徳、『図書館は本をどう選ぶか』、勁草書房、2006年
136 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
行政職員から図書館職員へ
もともと秋田県教育委員会の事務職員だったのですが、新図書館を担当する
職員として1992年に県立図書館に配属されました。当時の副館長が、私がコン
ピュータに詳しいことを知っていて、ひっぱられたといいますか……当時はまだ
コンピュータを扱える人が少なかったんですね。図書館システムの初導入と、新
図書館建設というミッションが与えられました。総務担当にいて予算要望をしな
がら、新図書館と図書館システムの両方の仕事で関わりだしたのが、私の図書館
員としてのスタートです。その時は、いずれ本庁のどこかの部署に戻るのかなと、
漠然と思っていたのですが、その後20年以上も図書館に居続けることになりま
した。
1993年に無事に新館がオープンして、それから2年は県内の市町村とのネッ
トワークづくりをしていたんですが、3年ほどたった頃に、当時の館長から「図
書館に残ったらどうですか?」というお話をいただきました。ちょうど図書館の
仕事に興味を持ってきていて、これは一生の仕事にしてもいいかなという思いが
湧いてきた頃だったので、それならと1997年に司書資格を取りました。
司書資格を取ってからは、カウンターでの対応やレファレンス・サービスにも
携わるようになりました。自分でいうのもなんですが、仕事は性に合っていて、
人と話したり資料を調べることが好きだったので、毎日の仕事が楽しかったです
ね。
2015年に10周年を迎えた「レファレンス協同データベー
ス」の生みの親である秋田県立図書館・前副館長の山崎
博樹さんにインタビューした。意外にも「いい加減さ」を
武器に常に新しいことに挑戦し続ける姿勢は、県立図書
館職員という立場を退いても変わらないだろう。
司書名鑑 No.11
山崎博樹(前・秋田県立図書館副館長)
137ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
誰も見たことがない、新しい図書館の仕組みづくりに挑戦
秋田県立図書館には古い資料がたくさんありますが、実物を見てもらう機会が
あまりなかったんです。それでデジタル化すれば見てもらう機会ができると思っ
て、1997年にデジタルライブラリーを立ち上げました。よくわからないながら
資料のデジタル化を進め、秋田大学のサーバーから発信を始めたんです。これは
日本の公共図書館で初めてのデジタルライブラリーといわれています。
1998年に秋田県で行われた全国図書館大会の準備に2年ほど携わったのですが、
この準備と並行して、文科省の社会教育施設情報化活性化事業の委嘱を1997年
から受けました。全国規模のデジタルアーカイブをつくれるというチャンスだっ
たのですが、いま、秋田県デジタルアーカイブで公開しているデータはその時に
つくったものが多いのです。秋田県以外には岩手県、静岡県、京都府の図書館が
この事業を受けていました。この事業を3年間担当し、デジタルアーカイブの知
識を得て、かなりの経験を積むことができました。このあたりから、いろんな方
Directory of librarian
第17回図書館総合展で開催されたビジネス支援図書館推進協議会のパネルディスカッションの様子。
写真提供=山崎博樹
138 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
に会う機会が増えたんですが、ひつじ書房の松本功さんという方が、私の書いた
文章を見て秋田に訪ねてきたんです。松本さんからは「図書館がビジネスを支援
できないか」という提案を受けたんです。それからは菅谷明子さんの講演を聞い
たりしながら、2001年12月から今度はデジタル化に加えて“ビジネス支援サー
ビス”にも関わることになりました。その時、いまのビジネス支援図書館推進協
議会のコアメンバーが徐々に集まっきて、現在も活動を続けているわけです。通
常の仕事に加えてデジタルとビジネスの立ち上げを同時進行で取り組んでいたた
め、非常に忙しかった時期ですね。
2003年からは、2年間の出向で国立国会図書館(NDL)に行くことになりました。
NDLで取り組んだのは、いまの「レファレンス協同データベース事業」です。国
立国会図書館総合目録ネットワーク“ゆにかねっと”の前身である「総合目録」の
委員たちが集まった横浜での反省会で、私が「総合目録の次はレファレンス記録
の全国版ですね」と口火を切ったところ、周りの賛同もあって当時のNDL電子図
書館課長で、後に副館長になった田屋裕之さん(故人)が奮闘され、NDLの事業
として予算化してくれました。2003年にプロトタイプを立ち上げ、2004年に実
験システムを稼働させ、次の年には秋田県立図書館に戻りましたが、本格実施事
業となり、多くの関係者の尽力により、昨年2015年に10周年を迎えたわけです。
このころ手掛けた全国プロジェクトは、デジタルライブラリー、ビジネス支
援サービス、レファレンス協同データベース事業の3つ。いずれも黎明期から関
わって、いまでもコアに関わっている大事なテーマです。これらの開設時はどれ
もいままで誰もやったことのないことでしたから、当然、関係者から理解しても
らうのは大変なことでしたが、私の勉強にもなりました。たぶん、新しいことに
取り組むことに理解のある上司や図書館員が私の周りに多かったのも幸いしたか
もしれませんね。時代の流れにうまく乗れたというのもあります。
プロジェクトを成功に導くために必要なこと
プロジェクトの中で一番大変だったのは、やはり最初に取り組んだデジタルラ
イブラリーでした。その当時、デジタルライブラリーは誰も見たことがないし、
139ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
説明しても誰もぴんとこないものですから、なかなか周りの賛同が得られません
でした。それでも最初は個人レベルで始めて、それが図書館の仕事になっていく
までに多くの時間をかけました。途中から国の事業として予算がついたことであ
る意味、認められたといえますが、やはり同僚の協力や理解は不可欠です。仕事
が終わってから1時間から2時間かけて職員に話をして、徐々に理解してもらっ
たことを憶えています。
当時は、「誰もやってないじゃないか」とよく言われましたね。「どこもやって
ないことを、なんでうちがやるんだ?」と。でも、私は「3年後を見てください」
といつも言っていました。「3年経ったらみんな始めますよ」と。「水面下でみん
な動いていくわけだから、表面化するまでには時間がかかるんだ」と説得したり
しました。
事業を始める時には説明したり、協力を求める相手がたくさんいますが、まず
は館内の同僚、上司、次にその周囲にいる人たち、その次に図書館を利用しても
らう住民という順番になります。いまは、携わってきたこれらの事業を全国の図
書館員や住民に広げるのが私の仕事になってきましたが、それはとても難しく、
やりがいのある挑戦で、もはやライフワークとなっていますね。
これからは、技術的な知識だけでなく、戦略や意欲的なマインドを持った人材
が求められます。新事業は継続的な仕事にならないまま、イベントのようにバー
ンとやって終わってしまうことも多い。たとえば国の補助金があるときだけやる、
ということもあります。しかし、それでは意味がない。新しい事業をルーチン的
な仕事に落とし込んでいきながら、毎年予算も獲得して進化を続けていくという
戦略性が必要なんです。また、新しいことを始めたり、進化する技術に対応する
には、その時々にくじけず推進したり、学ぶ姿勢を持った職員のマインドが不可
欠です。これはどの業界でも同じですが、待遇とかお金のことで文句を言ってい
るうちは、たいていダメなんですよ(笑)。そんなことを言う前にやはり行動を起
こして、新しい展開に持っていかなければいけない。お金や人がなくてもやって
いるところがあるということは、「やはりマインドが違うんだ」ということしかい
えないわけです。もちろん、お金も人もいて、やれるところもある。でも、ある
意味それはそれで大変。当然、成果をもたくさん求められるわけですからね。逆
Directory of librarian
140 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
にお金も人もない中でやれたら、少しの成果でも大きな評価を得られやすいので
すから、私はむしろやりやすいのではないかと思っています。
学校図書館の面白さ
秋田県教育委員会が2008年に策定した「第二次県民の読書活動推進計画」を受
けて、秋田県立図書館では小中学校図書館への支援を始めたのですが、このタイ
ミングで私が学校図書館に関われたことは、とてもラッキーなことでした。
学校図書館には公立図書館にはない面白さがあって、それは利用するのが学校
の児童・生徒ですから反応が早いところと、それが授業や学力にも直接、反映す
るというところですね。学校図書館にずっと関わってきた人たちからみれば、そ
れは当たり前のことかもしれませんが、私にとっては新鮮で本当に興味深かった
です。県立図書館が県内で実施している研修に「学校図書館ビフォー&アフター」
というのがあるのですが、学校に行って職員や父兄たちと一緒に書架の配置や
展示をつくるなどの改善を短時間のワークショップで行うと、最後に校長先生
秋田県立図書館による「学校図書館ビフォー&アフター」での研修の様子 写真提供=山崎博樹
141ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
が「こんなよい本が自分の図書館にあったのか」と必ず仰るんです。私は「前から
あったんですよ」と必ず言います(笑)。
つまり、私たちが学校図書館でやったことは「そこにあるものを可視化する」と
いうことなんです。これがなかなかできていないということですね。こうしたこ
とは学校図書館では特に必要性があることだと思います。公立図書館でも同じで、
公務員、とりわけ図書館員は、民間企業に比べて「どう見せるか」というところは
あまり上手ではないようです。私にとっては学校図書館に携わったことが、広報
技術やマーケティングに興味を持つ機会になりました。
図書館員は常に新しいステージに挑戦すべき
図書館の人は、図書館は絶対に必要だって言いますよね。私自身はそんなふう
に思えなくなってきていて、必要なければなくなるんだと思っているんです。情
報の取得が他の組織、あるいはネットでいいじゃないか、とみんなが考えたら、
図書館は存続できません。多くの人に図書館サービスを理解してもらい、図書館
の必要性を示しながら、図書館員は新しいステージにも挑戦していかなければな
らない。その逆のスタンスでは、すぐに立ちゆかなくなるわけです。相手がわ
かってくれるだろうと思って、何も外に示さず新しいことに挑戦しないのであれ
ば、図書館は必要なくなると思います。
図書館員は、図書館が必要であることはわかっている。ただ、一般の人にはそ
れがわかっていない。多くは表面的なことしか見えないんですから。でも私の意
見としては、その表面的なことしか見ないということで、相手に批判を向けるの
ではなく、その批判は自分たちにこそ向けるべきものです。そして図書館を上手
にアピールするための方法を考えなければいけないし、時代にあったサービスを
考える必要があると思います。
公貸権の話が出た時、図書館と出版社、著者との議論がありましたね。どちら
も言っていることは正しいと思いました。ただ、私はさっき言ったような考え方
に立っているので、出版社から「新しい本を図書館は貸すべきではない」と言われ
てしまうということは、図書館の責任なのだと考えています。
Directory of librarian
142 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
出版側の主張は、図書館員からみればある意味、誤解です。ところが出版側の
人からみれば、それは正しい。これも図書館員からの説明が足りないということ
が原因なんです。図書館側はあの場で問題ないということを必死に抗弁していま
したが、それだけではなく、「図書館の役割」を違った面から、もっと説明しなけ
ればいけない。図書館の活動は出版の売上に影響を与えませんということを数字
を示して説明しても、何年か後にまた同じ議論が繰り返されています。必要なの
は、全般的な図書館への理解を進めることだと思います。
私が思う能力の高い人は、幾つもの視点を同時に持っていて、そこから考えて
いける人です。これはとても重要です。昔はよく児童ライブラリアンになるなら、
子どもの目線で部屋に入っていきなさい、そうすれば見えてくる問題が変わって
くるよと先輩からいわれました。でも、それは物理的な視点です。本当に必要な
のは物理的な視点だけではない。たとえば他の行政職員や一般利用者のつもりで
閲覧室に入っていく、ある時には、管理職や館長として仕事を考えてみる。そう
すると違った発想が得られるわけです。同じものを見ても、自分とは違ったもの
を利用者や関係者は見ているということです。それに対して、自分の視点だけで
考えてしまうと、「なんであんなことを言うんだろう」とか、「われわれのことを
理解していない」というふうになってしまう。そうではなく、相手側の視点に立
ち直して物事を見てみれば、「あ、なるほど」と思うこともあれば、自分たちの足
りなかったところも見えてくるということです。それは先程の図書館と出版側の
関係と同じことです。
私の場合は、時々、いまあるものやサービスを根底から否定したくなるんです。
否定ばかりではよくないのですが、みんながそれでいいと思っていることでも、
何か足りないと思い、その改善策を複数の視点から考えるようにすると、それが
新しいことに挑戦する自分のモチベーションにつながっていくという経験は、本
当にたくさんありました。
3つのこと
いろいろな機会でお話するときにいつも、新しいことに挑戦するときに必要な
143ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
テーマが3つありますと紹介しています。それを説明するために「フェラーリ」と
いう車と野球選手の「清原」、メーテルリンクの『青い鳥』を例えにしています。
まず、イタリアの自動車メーカーの「フェラーリ」。このブランドは、ターゲッ
ティングを絞ることによって付加価値を生み出していますよね。私はこれからの
サービスも、ターゲッティングを細かくしていかないと、付加価値を見い出すこ
とが難しくなってきていると思っています。近年、図書館の課題解決支援サービ
スも、まさしくターゲッティング・サービスの一種といえます。
それから「清原」。彼は、いまは課題がありますが、現役時代は思い切り空振り
して、三振記録を持ちながら同時に数々の打撃タイトルを獲っています。無謀な
ことでも、振ってみる、やってみなければ、前には進まないということです。見
逃し三振はいけないのです。
3つめの『青い鳥』というのは、足元にヒントや強みがあるということです。自
分たちの中に強みは必ずあるはずなのに、見い出せないことがある。自分の図書
館の強みは何だろうか、といつも考えているべきです。中にいるとこれが見えな
くなってしまって、そのままでは外からの理解も得られないんです。その責任を
外に転嫁してわかってもらえないと嘆くのは、自分の強みを発見できていないと
いうことにすぎないなんじゃないかと思うんです。自分たちに内在したものを見
つけて、それを外に示していくということが必要だと思います。
この3つのことは、私が常に心掛けてやってきたことで、そうしていると愚痴
を言っている暇なんて、なくなるんですね。
本当の学びとは
私が講師をする研修会に参加された方にいつも「この時間を無駄にしないでく
ださいね」と言います。というのは、研修を受けただけではなんにもならない、
ということです。お金も時間もかけて研修を受けているのですから、学んだこと
を自分の図書館に還元しなければ、結局、研修を受けた時間はあなたにとっても
図書館にとっても、無駄なことになってしまうということです。現場に戻ったら
すぐに行動に移して、得たものをすぐに活用することをしなければいけない。そ
Directory of librarian
144 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
司書名鑑 No.11
の時、個人によって仕事に吐き出せる量が違うと思います。でも、それはそれで
構わないことです。立場や経験というのは、それぞれ違いますから。でも、それ
がすぐに活用できないのであれば、その人は永久に実行できないでしょうね。厳
しくいえば、単なる「勉強マニア」ということです。研修で学んだからと調子に
乗ってすぐに実行すると、ひょっとしたら上司から叱られてしまうかもしれませ
ん。ただ、こういう人は結局、能力が向上していきます。これからの図書館は、
失敗を恐れずにいろいろやってみることができる人が必要と思っています。要は
「歩きながら考えられる、学べる」姿勢が必要なのかなぁ。私自身は走り出してか
ら考えるいい加減なタイプなので、走っている最中はとにかく目の前のことに必
死でしたが、長い間やっていると、ある時それが系統化したり、理論化されてい
く瞬間がありました。
いま、世の中が変わりつつあって、図書館でも、民間企業など外部とのコラボ
レーションがあたり前になってきている、またそれが求められています。そうな
ると自分たちの仕事がなくなってしまうこともあるわけです。ですから、アドボ
カシーといってもいいかもしれませんが、自分の仕事をアピールする能力が必要
です。その時に、いまの図書館員に足りない能力は、コミュニケーションスキル
です。徐々に変わっているかもしれませんが、多くの図書館員は未だルーチン的
な仕事を好む傾向があります。しかしこのままであれば、日本の図書館は変化に
対応できなくなって終わってしまうのが目に見えています。外とコミュニケート
して、いろんな機関とか、いろんな人とやり取りしながら図書館をアピールした
り、図書館に役立つヒントを得るといったことがいま、本当に必要なんです。そ
れを実践し始めている人たちはたくさんいらっしゃいますが、まだまだ少ない。
みんながそういう能力をもったら、確実に日本の図書館は変わると思います。
(インタビュー・構成:ふじたまさえ)
秋田市生まれ。岩手大学工学部卒。1992年から秋田県立図書館勤務、2016年3月副館長で退職し現在は秋
田県図書館協会顧問。秋田大学非常勤講師、日本図書館協会代議員、同認定司書、ビジネス支援図書館推進
協議会副理事長、レファレンス協同データベース企画協力員、知的資源イニシアティブ理事、総務省地域情
報化アドバイザー、紫波町図書館専門アドバイザー。
山崎博樹(やまざき・ひろき)
145ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
ARG 業務実績 定期報告
須賀川市(仮称)市民交流センター整備関連事業を引き続き支援
須賀川市(仮称)市民交流センター整備のプロジェクトは実施設計を終えて、
いよいよ建設の現場が始まりました。これから一気にハード(建物)が進んでい
きますが、並行してソフト(機能・サービス)のデザインもより加速してきてい
ます。施設全体の配架計画から展示・交流スペース(特撮監督・円谷英二を顕彰
するミュージアム)のキュレーションまで、単なる複合施設ではなく有機的な融
合施設をつくるために、須賀川市や設計事務所の皆さまと共に取り組んでいま
す。
図書館Wi-Fi推進協議会を設立
2016 年 3 月に図書館 Wi-Fi 推進協議会が立ち上がりました。全国の公共図書
館での Wi-Fi インターネット接続サービスがより普及するよう、弊社ではこの
協議会の業務を支援しています。なお、協議会の公式サイトでは、図書館サイ
トの実見調査に基づく日本全国の Wi-Fi 導入済み図書館のリストを公開してい
ます。
『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・
ガイド株式会社の最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめてい
ます。各種業務依頼は、お気軽にご相談ください。
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
146 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
ARG 業務実績 定期報告
図書館総合展2016フォーラム in 仙台の開催を支援
2016年3月5日(土)、東北大学川内北キャンパスで実施された図書館総合展
2016フォーラムin仙台の開催を支援しました。第2部「学校図書館は教育の変化
にどう対応してゆくか」の司会を代表の岡本真が、第3部「公共図書館の新たな
形」の司会をプロジェクトマネージャーの鎌倉幸子が務めました。
シンポジウム「新市庁舎の市会図書室を考える」の開催を支援
147ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
ARG 業務実績 定期報告
弊社業務問合せ先(メールが確実です)
自由民主党が主催して2016年3月20日(日)に横浜で行われたシンポジウム「新
市庁舎の市会図書室を考える」の開催支援をしました。当日は弊社代表の岡本真
が横浜市会の自由民主党から委託を受けて実施した「横浜市新市庁舎における議
会図書室整備のための予備調査」の概要を報告しました。
なお、この調査結果はなんらかのかたちで公開される予定です。
春合宿2016を開催
弊社の恒例企画である春合宿を2016年3月31日(木)から4月3日(日)にかけて、
青森県で開催しました。青森県は弊社パートナースタッフ・鎌倉幸子の故郷でも
あります。
合宿の舞台は南津軽郡大鰐町の「正観湯温泉旅館」。弊社が考える理想の図書館
とは何かをワークショップ形式で熱く議論を交わしました。この成果はオンライ
ンとオフラインでの公開を予定しています。
● mail:info@arg-corp.jp ● 全般:070-5467-7032(岡本) ● LRG関係:045-550-3553(ふじた)
	 ※移動中・会議中なことが多いので留守電にメッセージを残してください。
日々の弊社からの情報発信をお確かめいただくには?
● 公式メールマガジン:http://www.arg.ne.jp/ ● 公式Facebookページ:https://www.facebook.com/ARGjp/
 その人に初めてお会いし
たのは、真夏の特にその日は
暑い、暑い日でした。
 滴る汗と3分おきに格闘す
るその人は、底知れない英知を覆い隠し、この世
のものとも思われない深く優しい声で、質問に応
える私に「ふむ」とお応えになるのでした。
 あ ∼あれから何ヶ月経ったことか。あいも変わ
らず深く優しい声で、「∼さん、これ」と差し出して
くださる領収書の数々、「はい、ありがとうござい
ます」の私。
 「∼さん、これ」「承知しました」毎回繰り返され
る饒舌ともいえないだろうなーな会話で成り立っ
ている社長と私の関係。
 散らかす社長、ものを置いておく社長、いつもい
らっしゃらない社長、なんでも片付ける私、床も机
もまっさらにする喜びにひたる私、追いかけごっ
このような関係だなあ。
 でも昨日見てしまった、流しにあった社員全員
分のコーヒーカップを黙々と洗っている真っ黒い
大きなまあるい背中を。
 長期出張でいつもいらっしゃらなくても、その
大きなまあるい背中がオフィスの中を見守ってい
る。(小谷田)
Staff
Voice
2016年5月現在、ARGには新卒の20代から人生経験豊富な60代
までの個性豊かなスタッフがいます。本コーナーは、編集後記とは
ちょっと違い、ARGの日々の業務と格闘する彼ら、彼女らの日常から
生まれる、ゆる∼い文章をお届けするまとまりのないコーナーです。
ほっこりする話題から社長のありがたいお言葉まで、
各種取り えております(笑)
くまモン
 ARG春合宿2016
が 私の故 郷・青森県
で開催されました。初
日の3月31日(木)は
夕食後、皆は弘前市内のホテル、私は実家
に泊まることになっていました。実家に戻っ
たら、「幸子、これを明日からの合宿で持っ
ていきなさい」と母から差し出されたのは
段ボール。
 合宿ではワークショップを行い意見の出
し合いすると母に伝えていました。そんな
母は現役時代、学校の先生でした。筆記用
具などワークショップグッズがつまってい
る箱だと思い中を見ると、入っていたもの
は日本酒の一升瓶。1月からパートナーをし
ているARGのことを両親にじっくり話をす
る時間がなかったはずが、どうして日本酒
が好きなスタッフが多いことがばれたので
しょうか!?ちなみに、母が用意してくれた
お酒は弘前市の酒蔵・三浦酒造の「豊盃」で
す。あまりにも愛しすぎてカンボジア駐在
の時はリュックに豊盃の一升瓶を入れてカ
ンボジアに戻ったものです。なんだ、結局私
が飲みたかっただけか……。(鎌倉)
合宿と母
 須賀川市図書館は2015年にめでたく開館100周年を迎えました。ARGスタッフも
記念式典に参列したのですが、代表の岡本は残念ながらこの日は別件が……。せめ
て祝電を贈りたいと言うので、電報サービスを検索していたら、「ウルトラマン レリー
フ」という須賀川市にぴったりのものを発見してしまいました(須賀川市はウルトラ
マンの生みの親、円谷英二監督の故郷です)。最近はいろんな電報があるんですね。
科学特捜隊の流星エンブレムをデザインした台紙の他に、ブロンズ像を模したウル
トラマンの胸像の盾がついてくるのです。
 冗談半分で社長へメール。「こんな祝電見つけたけど、当然普通のやつにしますよ
ね。普通の祝電の10倍くらいのお値段するし」
 「いや、ウルトラマンでいくよ!」
 ……はい? マジですか、と思いながらおそるおそる発注。幸い図書館のみなさん
は喜んでくださったようで、式典会場の目立つ場所に飾られていました。そして式典
後には、図書館のウルトラマン関係資料が集められたコーナーに移り、今もなお展示
され続けています。ああ、ありがたや。(野原)
ウルトラマンの祝電を送るだと?
148 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
ARG 業務実績 定期報告
 英国留学より帰国後、
新卒フリーランスとして
ARGで働き始めて2ヶ月。
早くも「ジャパニーズ・年
度末」の修羅場を体験す
る機会を頂戴し、ARG社
訓「気合いと根性」を叩き
込まれました。
 未だ新人気分だった横
面をひっぱたかれるような仕事量と、押し迫る
3月31日の締め切り日。しかし、忙しい時に限っ
て思いがけないトラブルがあれこれ噴出し、こ
れが年度末マジックか……と、意識が遠のきか
けることもしばしば。ヘルプを頼もうにも、ふと
気がつけば、社内の誰もがジャパニーズ・年度
末の超ビッグウェーブに乗り、これはもう誰に
もお願いなんてできません……。「探さないで
ください」と一筆書きたい衝動を抑え、気合い
と根性、そしてなけなしの意地のみで業務をこ
なしながら迎えた3月下旬。最終的には社長と
スタッフの方々に支えられながら、無事業務を
完遂し、よろよろと新年度を迎えることができ
ました。
 直後のARG青森合宿を病欠するかたちで修
羅場を乗り越えた平成27年度末。初の確定申
告を控えた今年度末も、また同じタイトルで記
事を書くことになるのでは……、と早くも一抹
の不安を抱えております。未来の自分にほどほ
どに期待しながら、新年度も心機一転、張り
切ってまいります。(下吹越)
修羅場を乗り越えてみた
 4月1日からARGにお
世話になっています岡崎
有彩(あい)です。
 30日までは前職の引
継ぎでバタバタバタバタ
……気づいたら青森にい
ました。青森に行ったの
は、他でもないARG春合
宿のためです。合宿は3月
31日∼4月3日だったため、満開の桜は見ること
が出来なかったのが唯一の心残り……あれ?
 今回の合宿の目的の1つは、ARG理想の図
書館像を確立すること。
 私の行きたくなる図書館ってなんだろう、
あったら良いものってなんだろう、そんなこと
を考えながら図書館の知識を詰め込んでいま
した。
 ARGといえば、やはりお酒をイメージする方
が多いかと思います。合宿で利用した宿のお
父さんがお酒好きということもあり、お酒の差
し入れが。OさんやNさん、Kさんの胃にみるみ
るお酒が流れ込んでいく姿は、まさに圧巻で
す。私も負けずにKさんとワインを1本空けた
のは良い思い出。
 今後私は、図書館コンサル以外にもARGの
提供サービスの1つである産学連携コンサル
もやっていきます。
今年の私の抱負は「チャレンジの年」!何事も
当たって砕けて頑張ります!よろしくお願いし
ます!(岡崎)
合宿に参加してみた
 楽しいことはすぐにやる。自分が楽しいんだから、早くしないと他に先をこされてし
まうかも。筋が良くないものは、どんなに手をかけたものでも捨て去って、方向転換。
 できないことはない、やればできる。だけど、どんな手順で何をやるべきか頭のな
かで設計してからコードをかかないとうまくいかない。だから、何もしていないように
見えるけれど考える時間が必要。
 毎日隣にいるエンジニアの仕事の仕方はこんな感じです。コードを書いている時間よりも考えていて何
もせずにぐうたら過ごしている時間が多く見えます。非エンジニアの私ができることといえば、車の運転と
か、三食ちゃんと食べさせて、夜は寝て朝は起きるっていう規則正しい生活を提供することくらい。
 なぜここにカーリルの社長の日常がでてくるかというと、私がARGのパートナーとしてお仕事させてい
ただいていられるのはこの人がいるから。もちろん、ARGの社長の心の広さにもお世話になっています。こ
のダブルワーク体制がいつまで続くかは、この二人の社長にかかっている……、いや、自分次第ですかね!
まだまだがんばるぞーおー!(ふじた)
カーリル吉本の日常と私
149ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
ARG 業務実績 定期報告
 え?と思う方もいるかもしれませんが、大事なことなのでクリアーにしておきま
しょう。うちの会社は役員1名の社員1名というのが経営実態です。大事なことなので
2度言います。役員社員各1名計2名がARGの雇用面の現実です。「え?」と思います
よね。はい、弊社の場合、主要なスタッフは全員業務契約を交わした個人事業主や法
人の代表となります。なんでそういう組織形態をとっているかについては別の機会に
でも語りましょう。ですが、それなりの理由があってこうなっています。
 さて、今回はその理由ではなく、業務契約を結ぶ相手、弊社でいうところのパートナーは、果たしてどのよ
うな観点で決まっていくのでしょうか。ちょこっとだけその話をしておきます。現在のパートナーは6名です。
2名は法人契約で4名は個人事業主としての契約。そして、うち3名は今年になって契約を結んだニュー
フェースです。
 さて、このパートナーの開拓は基本的には「知り合い」のなかから候補者リストをつくって進めています。
ですから、もし奇特にも弊社のパートナーになりたいという方がいらっしゃったら、まずは私と個人的に知
り合ってください。話はそこからだったりします。
 そして、実際に契約締結に至るうえでは、いくつかのポイントがあります。一つはよくある話ですが、「一
緒に仕事ができそうか、ほかのスタッフとうまくやっていけそうか」です。これは基本中の基本ですね。その
次の2点目は、「きちんとコミュニケーションできるか」。別に立て板に水のような話芸を期待するわけでは
ないのですが、特に私に対して物怖じせずに言葉を発せるかどうかは大事です。社長である私は口八丁の
人間なので、そんな私に言葉で立ち向かえないと、当然ながらお客様と相対できないですからね。そして、
最後の3点目は、要するに「飲めるか」。ARGのAは「アルコール」と誤解されることも多い弊社だけに、飲む
というライフスタイルをとれるかは決定的に重要です。まあ、こう書くといかにもオールドファッションな
会社っぽいですが、「飲む」ことが大事で、「アルコール」を飲むことは二の次です(とはいえ、飲む人はけっこ
う飲む)。ちなみに、体質的にアルコールを受け付けないけれど、宴会ではいちばん盛り上がるのが弊社の
デザイナーだったりします。
 と、まあこんな会社ですが、ゆるやかに拡大しています。もし、ご関心ある方がいれば、まずは私と仲良く
なっていただければ!(岡本)
パートナーを決める条件
 ええ、今までで一番長く付き合ってきたんです……。出会ったのが2008年初頭で
すので、8年間付き合ったことになります、私たち。
 2008年といえば、北京オリンピックが開催され、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、
長友佑都らそうそうたるメンバーで臨んだサッカーU-23日本代表が3戦全敗でグ
ループリーグ敗退した年です。麻生太郎が第92代首相に就任し、小林誠・益川敏英・
南部陽一郎の3名がノーベル物理学賞を受賞した年です。『ダークナイト』が上映さ
れ、ももクロが活動を開始し代々木公園で路上ライブを重ねていた年です。そして、
リーマンショックが起きたのも2008年です。
 何を言っているのかわからないかもしれませんが、要は2008年がけっこう前だっ
てことが言いたかっただけです。
 そんな長い間、わたしたちはずっと一緒でした。片時も離れたことはありません。ライブラリーキャンプと
いう図書館界で最も過酷なキャンプでも共に苦難を乗り越えましたし、ドルトムントでの1ヶ月間の現場
監督の日々でも私を支えてくれました。そんな日常がいつまでも続くと思っていましたが、あまりにも唐突
にその日は訪れました。彼女の命の灯火は、いつのまにか儚く頼りないものになっていたのです。
 2016年3月25日、私は名古屋栄のアップルストアで彼女を見送りました。あふれる涙を抑えきれずに
別れを惜しむ私の手には、13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデルがキラリと光っていまし
た。(李)
さよなら……8年間ありがとう。
150 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
ARG 業務実績 定期報告
LRGLibrary Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 定期購読・バックナンバーのご案内
定 期 購 読● 誌名:ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG) 
● 発行:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
● 刊期:季刊(年4回)  
● 定価:2,500円(税別) 
● ISSN:2187-4115
● 詳細・入手先:http://fujisan.co.jp/pc/lrg
「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」はアカデミック・リソース・ガイド株式会社が、
2012年11月に創刊した、新しい図書館系専門雑誌です。さまざまな分野で活躍する著者に
よる特別寄稿と、図書館に関する事例や状況を取り上げる特集の2本立てで展開していき
ます。第5号からは「司書名鑑」も連載を開始しました。最新情報は公式Facebookページで
お知らせしています。 【公式Facebookページ:https://www.facebook.com/LRGjp】
1年4号分の定期購読を受付中です。
好きな号からのお申し込みができます。
定   価:10,000円(税別)
問い合せ先:045-550-3553(ふじた)
      lrg@arg-corp.jp
特別寄稿は、数多くの名講演をされている梅澤貴典さんが、ライブラリアンの講演術と
して、そのノウハウを徹底公開。講演をする全ての人に有用である。特集「離島の情報
環境」では、同テーマのもとで行った日本初の悉皆調査として、歴史的な内容となって
いる。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
長尾真「未来の図書館を作るとは」
嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
特別寄稿では、社会的に弱い立場とされる人々の知識・情報へのアクセス状況を概観し、
知のセーフティーネットであるべき公共図書館の役目を考える。特集では、株式会社カー
リルの協力により、全国の図書館における資料管理用のシステムの導入の実態を分析
する、これまでにないものとなっている。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために──何から始めればよいのか」
嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル)「図書館システムの現在」
第2号・2013年冬号(2013年2月発行)
東海大学の水島久光さんによる特別寄稿は、夕張・鹿児島・東北の地域の記憶と記録
を巡って、地域アーカイブの役割と重要性を論じている。特集は「図書館における資金
調達(ファンドレイジング)」の取り組みを紹介。さまざまな手段を講じて資金を集め、
事業を行っていこうとする図書館の取り組みを集めた。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
水島久光「『記憶を失う』ことをめぐって∼アーカイブと地域を結びつける実践∼」
嶋田綾子・岡本真「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」
第3号・2013年春号(2013年5月発行)
創刊号・2012年秋号(2012年11月発行) ※品切れ
残り
210冊
SOLD OUT
完売
間近!
156 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
定期購読・バックナンバー・次号予告
特別寄稿は、本屋「B&B」を運営するnumabooks代表の内沼晋太郎さん、自宅を開放
する「住み開き」の提唱者のアサダワタルさん、「ビブリオバトル」を考案した立命館大学
の谷口忠大さんの3名にお話をいただく。特集は、図書館で行われている、本と人とを
つなぐさまざまな取り組みについて紹介する。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
内  容/
内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」
嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
第5号・2013年秋号(2013年11月発行)
残り
190冊
東日本大震災による図書館の被害状況と復興の歩みと図書館の支援のあり方を、宮城
県図書館の熊谷慎一郎さんが論じる。特集では災害の記録を伝える図書館や、地域防
災について啓発活動を行う図書館などの取り組みについて紹介する。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
内  容/
熊谷慎一郎「東日本大震災と図書館─図書館を支援するかたち」
嶋田綾子「図書館で学ぶ防災・災害」
No.2 谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館
「エル・ライブラリー」)
第6号・2014年冬号(2014年2月発行)
残り
270冊
創刊号に掲載した長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」に触発され、未来の図書館
を議論する座談会を収録。特集では、執筆に猪谷千香さんを迎え、コモンズとしての図
書館のあり方を、図書館だけにとどまらない実例を挙げて紹介する。
特別座談会/
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司「未来の図書館をつくる」
猪谷千香「コモンズとしての図書館」
No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
    第1回 大阪府立中之島図書館
第7号・2014年春号(2014年6月発行)
残り
270冊
巻頭では2014年7月2日に開催した菅谷明子×猪谷千香クロストークを収録。ジャー
ナリストから見た日米の図書館とは。特集では、2014年6月に法改正がなされた教育
委員会制度について、インタビューや調査を元に図書館への影響をまとめた。
第2回 LRGフォーラム 菅谷明子×猪谷千香クロストーク
          社会インフラとしての図書館─日本から、アメリカから
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
 
猪谷千香「教育委員会制度の改革」
No.4 嶋田学(瀬戸内市新図書館開設準備室) 
    第2回 旅の図書館
第8号・2014年夏号(2014年9月発行)
残り
310冊
特別寄稿は、第3号での特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」を受けて、
実際に資金調達を行っている組織からの視点、資金調達のサービスを提供する事業者
からの視点と、より理論的に図書館での資金調達に迫る。特集は、創刊号で大きな反
響を呼んだ「図書館100連発」の第2弾。
特別寄稿/
特  集/
内  容/
岡本真・鎌倉幸子・米良はるか「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」
嶋田綾子「図書館100連発 2」
第4号・2013年夏号(2013年8月発行)
残り
90冊
157ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
定期購読・バックナンバー・次号予告
特別寄稿は、数多くの名講演をされている梅澤貴典さんが、ライブラリアンの講演術と
して、そのノウハウを徹底公開。講演をする全ての人に有用である。特集「離島の情報
環境」では、同テーマのもとで行った日本初の悉皆調査として、歴史的な内容となって
いる。
特別寄稿/
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
ライブラリアンの講演術─ 伝える力 の向上を目指して[梅澤貴典]
離島の情報環境[編集部]
No.6 磯谷奈緒子(海士町中央図書館)
    第4回「男木島図書館」
第10号・2015年冬号(2015年3月刊行)
残り
160冊
特別寄稿では、ARG代表の岡本真が自身の活動である「神奈川の県立図書館を考える会」
を通じて、行政にその重要性を伝える「アドボカシー」について解説。特集では、「アー
カイブサミット2015」をテーマに、シンポジウムを特別収録。
特別寄稿/
特  集/
マガジン航 Pick Up Vol.1/
司書名鑑/
内  容/
ライブラリーアドボカシーの重要性とその実践
─「神奈川の県立図書館を考える会」の活動から[岡本真]
「アーカイブサミット2015」を総括する[LRG編集部]
       貧困から図書館について考える[伊達文]
No.7 柳与志夫(東京文化資源会議事務局長)
第11号・2015年春号(2015年6月刊行)
情報発信のために必要なことはなにか? 広報のコツを鎌倉幸子さん、取材のツボを
猪谷千香さんが語る。特集では、「図書館×カフェ」をテーマに全国の事例を類型化、
野原海明さんが取材しつつ、その在り方について論じた。
特別寄稿/
特  集/
マガジン航 Pick Up Vol.1/
司書名鑑/
内  容/
図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ[鎌倉幸子、猪谷千香]
図書館×カフェ[野原海明]
       ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生]
No.8 是住久美子(京都府立図書館)
10 年を迎えた Library of the Year(Loy)。過去の受賞館の関係者にインタビューをし、
その軌跡をふりかえりながらLoyの選考基準や狙い、これからの図書館のあり方につい
て考える。第17回図書館総合展 ARGブースで行われたLoy2015の直前トークセッショ
ンほか、10年間の全受賞館リストも掲載。
総 特 集/
マガジン航 Pick Up Vol.3/
司書名鑑/
内  容/
Library of the Year の軌跡とこれからの図書館[福林靖博、岡野裕行]
       私設雑誌アーカイブ「大宅文庫」の危機[ツカダマスヒロ]
No.9 平賀研也(県立長野図書館館長)
第12号・2015年夏号(2015年9月刊行)
残り
300冊
第13号・2015年秋号(2015年12月刊行)
巻頭では、世界的に動向が注目されるGLAMのオープンデータ化について、その第一
人者たちが白熱の議論を交わした第2回OpenGLAMのシンポジウムを特別収録。
特集では恒例企画「図書館100連発」の第3弾。
第2回 OpenGLAM JAPANシンポジウム 生貝直人・日下九八・高野明彦
   オープンデータ化がもたらすアーカイブの未来
特  集/
司書名鑑/
羊の図書館めぐり/
内  容/
 
嶋田綾子「図書館100連発3」
No.5 大向一輝(国立情報学研究所) 
    第3回 京都府立総合資料館
第9号・2015年秋号(2015年12月発行)
残り
320冊
好評
発売中!
残り
330冊
158 ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
定期購読・バックナンバー・次号予告
特別寄稿は岡部晋典さんによる大学図書館の記録の活用という視点から、「図書館の
自由宣言」の歴史的変遷をひもとく大論考。特集は恒例の「図書館 100 連発」第 4 弾。
嶋田学さんのコレクション論が連載スタート。
特別寄稿/
特  集/
連  載/
司書名鑑/
内  容/
図書館は「利用者の秘密を守る」その原点と変遷 [岡部晋典]
図書館100連発4[ふじたまさえ]
図書館資料の選び方・私論 ∼その1∼[嶋田学]
No.10 佐藤潔(図書館総合展運営委員長)
第14号・2016年冬号(2016年2月刊行)
LRG
LRG 第16号 2016年8月 発行予定
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
次回予告
LRG ライブラリー・リソース・ガイド
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 定価(本体価格2,500円+税)
特別寄稿
新連載も
開始予定!
いがやちか「図書館エスノグラフィー」(仮)
連 載 嶋田学「選書論・コレクション論」Vol.3
司書名鑑 ほか
「認知症と図書館」(仮)
現代社会において高齢者だけにとどまらない問題となってい
る「認知症」について、まずは知るところからスタートしよう。
まちづくりの流れから見えてきた「認知症と図書館」を通して、
今後の図書館がどのように向き合うかを探ります。
好評
発売中!
159ライブラリー・リソース・ガイド 2016年 春号
定期購読・バックナンバー・次号予告
LRG
ライブラリー・リソース・ガイド
https://www.facebook.com/LRGjp
第15号/2016年 春号
無断転載を禁ず
発 行 日
発 行 人
編 集 人
責任編集
編  集
デザイン
発  行
2016年6月7日
岡本真
岡本真、ふじたまさえ
ふじたまさえ
大谷薫子(モ・クシュラ株式会社)
佐藤理樹(アルファデザイン)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Academic Resource Guide, Inc.
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61
泰生ビル さくらWORKS<関内> 408
Tel 045-550-3553(ふじた)
http://www.arg.ne.jp/
lrg@arg-corp.jp
ISSN 2187-4115
ISBN 978-4-908515-14-9
写真
表 紙:弘前城の桜 撮影:鎌倉幸子
裏表紙:辰野町立辰野図書館へのちかみち 撮影:岡本真
これまでに訪問した図書館等の施設の写真は原則的にすべて
公開しています。以下のURLでご覧になれます。
https://www.flickr.com/photos/argeditor/collections/
72157625468181915/
※本誌刊行にあわせて、本誌Facebookページでも上記URLを
紹介します。
定価(本体価格2,500円+税)
Library Resource Guide
第15号/2016年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
LRGライブラリー・リソース・ガイド
ISSN 2187-4115

『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第15号(2016年6月)