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企業行動論第5講「価値を動かすマグマ：企業発展と企業者的姿勢」
- 2. 第5講のもくじ 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 1. 考える前提としての企業発展 2. 衝動としての企業者的姿勢 / 企業者職能 3. 企業者とは 4. 企業発展と企業者的ダイナミクス ［08］ ［08b］ 講義noteの№ 2
- 5. 今回のキーワード 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 企業発展 ☞ 複雑で変動的な社会経済的環境のなかで、ステイクホル ダーの欲望や期待を動的に充たしつづけることができて いる状態。 企業者的姿勢 / 企業者職能（entrepreneurship） ☞ 自らをとりまく環境をイメージしながら、そこで自分た ちはどんなことができるのかを構想していくこと、そし てそのために必要な関係性の総体を織りなしていくこと。 5
- 6. 0. 前回の簡単なおさらい 価値創造過程 / 価値交換関係 / ビジネス・リーダーシップ＆マネジメント。 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 6
- 9. 派生的経営としての企業 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 9 ニックリッシュ （Nicklisch, H.） 企 業： 他者の欲望や期待を充たすことで、 自らも成果を獲得しようとする（＝価値創造をめざす） 派生的経営 / 協働体系 価値創造を共有目的とする協働体系（派生的経営） 当然ながら、企業も社会経済を構成する一つのアクター
- 10. 動態的で複雑な社会経済 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 10 将来を完全に予測することは不可能 ①欲 望は拡大・成長・展開（量的 / 質的）の可能性を持つ 個 人 企 業 社会経済全体 つねに動いている ＝動態的 さまざまな可能性がある＝複雑（複合的）
- 11. 成長と発展 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 11 ①欲 望は拡大・成長・展開（量的 / 質的）の可能性を持つ 量的な拡大＝② 成 長 質的な展開＝③ 発 展：物量規模では縮小しても、 価値レベルでは大きくなる可能性も 【語源的豆知識】 develop：開発する / 発展させる ☞「包みを開く」 envelop：包む ☞ envelope：封筒
- 14. ④複雑で動きの激しい社会経済的環境のなかで、 企業がステイクホルダーの欲望や期待を 動的に充たし続けることができている状態。 企業を発展させるということ。 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） この講義のキー概念 企業発展 14 ⑤価値創造の成 就 自然に実現されるわけではない＝人間による意思的活動が必要 ビジネス・リーダーシップ / マネジメントの起点としての 企業者的姿勢 / 企業者職能（entrepreneurship）
- 15. 2. 衝動としての 企業者的姿勢 / 企業者職能 価値を動かすマグマ。 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 15
- 17. 衝動としての企業者的姿勢：マザーハウスの山口絵理子さん 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 17 〈衝動〉といっても、 瞬間だけのものではない ☞ それをどうやって持続＆展開させ るかがビジネス・リーダーシップ ＆マネジメント 「○○○○という価値（具体化すると効用）を、誰かにもたらそう / もたらしたい！」 という衝動（impulse）なしには、価値創造なんてありえない！
- 21. ビジネス・リーダーとしての企業者：マーシャル 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 21 ⑥ 価値創造的側面（創造的側面） ☞ 「生産と消費の広範な動向を予想する力をもち、真の 欲求に応えることができる新しい商品を提供する機会 がどこに存在し、また古い商品を生産する方法を改善 する機会がどこに存在するかを発見」すること ⑦ 価値交換的側面（協働的側面） ☞ 「助力者を正しく選び」、彼らとのあいだの相互信頼関係を構 築することによって、助力者のなかにある「企業心と想像力を 引き出す」能力をもち、発揮すること
- 22. 新結合としてのイノベーション：シュンペーター 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 22 企業者： ☞ ⑧イノベーション＝新結合の遂行をみずからの 機能（役割）とし、その遂行に当って能動的要素 となるような経済主体のこと。 ① 新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現 ② 新しい生産方法の導入 ③ 工業の新しい組織の創出 ④ 新しい販売市場の開拓 ⑤ 新しい調達先の開拓
- 23. 魅力的な機会の発見と愉快な驚き：カーズナー 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 23 「どこにどんな魅力的な機会が存在するのかを いち早く発見する能力」 ＝⑨ 企業者的機敏性 「魅力的な機会を発見することは、 つねにかなり愉快な⑩ 驚 きをあらわす」 カーズナーの関心は収益の獲得に置かれているが、 考え方としては、“美”に接したときの驚きと近いものがある ☞ ベッカー「芸術家の冒険性」
- 24. 真の不確実性：ナイト 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 24 2種類の不確実性： 確率で測定できる不確実性＝リスク 測定不可能な不確実性 ＝真の不確実性 ナイトの企業者像： ⑪将来をイメージ（構想）し、真の不確実性から所得を獲得していくこと ナイトの“真の不確実性” の概念を、企業者の行動に即して捉えようとするのが、 ⑫ エフェクチュエーションという考え方（サラスバシー）
- 25. 将来への構想描出と新しい生産的サービスの創造：ペンローズ 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 25 企業発展が可能になる要因 ① 自ら（企業）をとりまく世界をどのように認識するか ＝⑬ 環境の描き出し ② 自ら（企業）が何をしたいのかという将来像を、どのように描き出 すのか ＝⑭ 主観的事業機会の構想 企業が持つ未利用の資源によってもたらされる能力を最大限活用して、 ⑮ 新しい生産的サービスを創造することが重要
- 26. 想像力、解釈、意味づけ：ラッハマン 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 26 企業者の役割： ① 期待の形成 ② 計画の策定 ③ 資本結合体の構築 ④ 計画の評価 直接的な関係性はないが、 あとで採りあげるベルガンティの〈意味のイノベーション〉と内容的にかかわる 企業者による“⑯ 想像力” ⬅解釈と意味づけによってなされる
- 27. 知識の成長と反証的企業者：ハーパー 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 27 「失敗から学習する」＝反証プロセスを重視 ➡ 知識の成長によって、よりよく企業者職能を発揮できる
- 28. ステイクホルダーとの協働：ハーシュマン、シュミット 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 28 ハーシュマン： 発展途上国における企業者職能 ➡ さまざまなステイクホルダーとの協働なしには 発揮できない シュミット： 企業用具説 ➡ 企業を「⑱ステイクホルダーが自らの欲望や期 待を充たすための用具」として捉える ⑰“資源動員の創造的正当化”という考え方につながる ステイクホルダーの欲望や期待の実現と 企業の維持・発展の両立をめざす
- 29. 意味のイノベーション：ベルガンティ 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 29 享受者の内側に価値を創造するためには、 その価値判断 / 評価の基準である⑲ 意 味 を 生み出す / イノベートすることがポイントになる！ 意 味：ある主体にとっての、そのモノやコトなどと の関係性（関連性 / 有意性 / 重要性：Relevance） ⇨ Gift（その人に贈りたいモノやコト）としての価値提案
- 30. 企業者とは何者か？ 2019/10/10 比較経営論（山縣）2019 30 ☞特定の人物をさすこともあるけれども、〈企業者〉として の役割を果たす人物のことをいう。 価値創造＆価値交換を方向づける（マーシャル） 新結合を通じて、新たな価値提案をおこなう（シュンペーター） 環境の描き出し＆主観的事業機会の構想（ペンローズ） 想像力や期待でもって将来を構想する（シャックル、ラッハマン） ステイクホルダーからの貢献獲得 / 資源動員（ハーシュマン、シュミット）
- 33. ［変化する要請への対応＝進化としての企業発展］ 企業に対する内部環境や外部環境からの要請や可能性のなかで、いかにして経済志向的な社会シス テムとしての企業が進化するのかにかかわる時間的現象（Vgl. Bleicher, K.［2004］S. 498） ☞ 「この進化は、戦略的成果獲得ポテンシャルを準備・活用することを通じて、比較対象となっ ている他の競争相手が提示するよりも高いレベルの効用を提供できるかどうかで決まる」（Vgl. Bleicher, K.［2004］S. 498） 企業発展と企業者的ダイナミクス 2020/6/9 企業行動論2020（山縣） 33 企業者的姿勢 / 企業者職能： ⑳ 自らをとりまく環境をイメージしながら、そこで自分たちはどんなことが できるのか / どんなことをしたいのかを構想していくこと、そしてそのた めに必要な関係性の総体を織りなしていくこと