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オンラインでの研究会となった2019年度の「地方大学におけるビジネス教育研究会」での報告スライドです。一部、編集しています。
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1.
2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 1 2019年度
地方大学におけるビジネス教育研究会 価値創造の実装原理としての サービスデザイン 山 縣 正 幸 近畿大学経営学部 yamagata_mas@bus.kindai.ac.jp
2.
今日の内容 1. 自己紹介 2. 価値創造デザインPJ2019:概要 3.
2019年度の知見 4. 方法的基礎としてのサービスデザインと意味のイ ノベーション(報告では、ほぼ割愛) 5. 2020年度の予定(一部スライドをカット) 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 2
3.
1. 自己紹介 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
3 そもそも、おまえはなにものだ
4.
自己紹介 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 4 【研究領域】 ✓
経営学。ただし、いわゆる戦略論や実証研究ではなく、経営をめぐる原理的考察。価値創造や 価値循環がキーワード。 ✓ 経営学史(特に、ドイツ語圏の理論展開に関心)が基本アプローチ。 ☞ これまでに展開されてきた経営学の理論(経営者の実践思想も含む)の特質を明らかにし、 現代に活かしうる点を汲み出す。 ✓ 最近はサービスデザイン / 意味のイノベーションにも関心 ✓ 哲学・美学・文芸学(詩学)が、ほんとは好き。
5.
2. 価値創造デザインPJ2019 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
5 5つのプロジェクトの概要
6.
近畿大学経営学部山縣ゼミ 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 6 山縣の研究領域:
「企業とは、いかなる存在か」といった原理的な問いの探究 経営学における理論や学説の歴史的研究 価値創造や価値循環といった概念にもとづく新しい経営のありよ うの探究 ⇨ ゼミでは〈価値創造デザインプロジェクト(Design for Value Creation / DVC)〉として、企業などと連携し、商品企画や プロモーション、理論的提言などを展開。
7.
新しい〈生活世界〉を描き出そう! ⇨どんなワクワクを生み出したい? ⇨そのワクワクは誰に経験してもらいたい? ⇨それはどうやったら実現する? ⇨それは誰とやったら実現する? ⇨そのワクワクは、ずっと生み出し続けることができる? 価値創造デザインPJで学生に求めている点 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 7 こういうことを考えながら実践するのが価値創造デザイン!
8.
いとへんuniverse 展示会 「生きている布展~カスリ科~」 の企画開催 木村石鹸工業 新しい“サービス”としての アプリ提案 大阪タオル工業組合 新製品 「life style」 の企画販売 サイクルリビングラボ 丹後地域における 活性化のためのリサーチと提案 株式会社友安製作所 新製品 「鉄総掛」 の企画販売 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
8 2019年度 展開プロジェクト
9.
株式会社友安製作所 新製品 「鉄総掛(アイアンマルチハンガー)」 の企画販売 思い付きではない 商品企画⇨販売 このプロセスでは、 意見のぶつかり合いも。 A B Cコンフリクトの 創造的克服としての止揚 (Aufheben):弁証法 【止揚のための「そもそも」】 そもそも、友安製作所という企業は何をめざ して活動しているのか?
そもそも、自分たちが提案しようとしている 商品はどんな価値をもたらすものなのか? 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 9
10.
いとへんuniverse 展示会 「生きている布展~カスリ科~」 の企画開催 “伝統工芸”としての 西陣絣の現代的可能性 そもそも現代生活において “西陣絣”は いかなる意味を持ちうるのか? 展示をしたということ以上に、展示会を通じて 新たな可能性への途を拓いたということが重要 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 10
11.
Service-dominant ロジック (S-Dロジック) いいもの / おもしろいものを つくれば売れる =Goods-dominantロジック (G-Dロジック) 挫
折。 ※ この挫折が、ものすごく重要。 そもそも、 ユーザーはなぜ木村石鹸の 商品を使うのか? 製品そのもの、そしてその製品を可能にする技術は 言うまでもなく重要。しかし、それはユーザーに とって、関係ないっちゃ関係ない。 ⇨ ユーザーの利用シーンに「入り込む」ことが要諦 木村石鹸工業 価値創造のための 新しい論理の提案 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 11
12.
サイクルリビングラボ 丹後地域における 活性化のためのリサーチと提案 【メインアプローチ】 定性的(質的)調査 ⇨ 抽象化 /
概念化 ※ ここのアプローチの難しさを痛感したPJ。 そもそも、その地域の人にとっての〈地域活性化〉とは何なのか? ⇨ ここにたどり着きかけているのは成果。ただ、まだ道半ば。継続。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 12
13.
“タオル”の現代生活における意味の再創造 今の若い人にとって、そもそもタオルって? 大阪タオル工業組合 新製品 「life style」 の企画販売 機能的な意味しか認識されていなかった泉州タオル ⇨ “みせる(見せる
/ 魅せる)”タオルという意味の再創造 ⇨ 意味の創造 / イノベーション ☞その人と“タオル”の関係性を新構築 or 再構築 ☞それによって、使い手の主観的交換価値=WTPの向上 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 13
14.
プロジェクトの基本方針と山縣からみた到達度 1. 自律的に考え、動けるように方向づける ⇨ 個人差はあるが、山縣の指示を待つという事態はほとんどなかった 2.
事前学習・思索 ⇨ 当日ワーク ⇨ 事後振り返り ⇨ 理論的な側面の蓄積・鍛錬が、かなり不十分 3. 思索プロセスの表出化 ⇨ やっていなかったわけではないが、山縣の目からすると不十分さがかな り残った / これはつねにやらないと、鍛えられない 4. つねに受け手を意識した思索と表出,実践 ⇨ このプロジェクトを遂行することで、誰にどんな価値を提供するのか、 ここに関しては意識できていた 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 14
15.
3. 2019年度の知見 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
15 とりわけ〈能動的そもそも論〉と 意味のイノベーションをめぐって
16.
価値創造デザインプロジェクトとは? 【2019年度の方法論的特徴】 ✓ 意味のイノベーション&S-Dロジック ☞ 生活のシーンから問い直す:“能動的そもそも論” ☞
サービスデザイン&S-Dロジック ☞ 質的 / 定性的調査・分析 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 16
17.
「なぜ」と「そもそも」 「なぜ」の重要性は、さかんに指摘されている ☞ たとえば、Purpose(存在意義)の重要性再認識。 自分たちは、そもそも何者なのか
自分たちは、そもそもいかなる価値をもたらそうと しているのか 能動的そもそも論が大事!! 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 17
18.
能動的そもそも論とアフォーダンスの探究 存在そのものがもつ可能性(ありうる関係性としてのア フォーダンス)は、存在そのものの特性に規定されるも のの、主体がそれを知悉することは困難。 ある主体は、対象となる存在と何らかの関係性において 接する。このとき、対象となる存在のアフォーダンスが “発現”する。
この“何らかの関係性”が主体にとっての意味として顕在化 する。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 18
19.
価値と意味 価 値:ある主体が顕在的・潜在的に抱いている欲望 や期待の“充たされ度合” ⇨欲望充足の主観的強度 意 味:ある主体にとってのモノやコトなどのかかわ りあい(関連性
/ 有意性 / 重要性:Relevance) ⇨価値評価の基準 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 19
20.
「なぜ」と「そもそも」の違い(私見) 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 20 な
ぜ 直線的因果関係を導出しがち そもそも 多様な可能性 / 潜在性の探索 往還が重要! ☟特定の関係性 ☝関係性の可能性
21.
なぜ能動的そもそも論が大事なのか 自らを問うことは、他者との関係性を問うことでもある。 社会は、それぞれの活動主体が何かをすることで動的に変 化する。つまり、単に受動的な存在などいない。
「そもそも」を否定のために問うても意味はない。いった ん否定するとしても、それは生まれ変わるため。 「そもそも」を問うことで、「なぜ」「何を」「どのよう に」がより明確になる。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 21
22.
4. 方法的基礎としての サービスデザイン& 意味のイノベーション 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
22
23.
a. UXデザイン /
サービスデザインの 基本的な考え方 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 23
24.
そもそも、デザインとは? 「つくり手がつくり出すものごとのみを解として 求めるのではなく、使い手の活動をもそこにつく り出すこと」 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 24 「使い手の活動とは何かを問うことと、活動の可能性を想像 すること」 須永健司[2019]『デザインの知恵:情報デザインから社会のかたちづくりへ』フィルムアート社、19頁。
25.
サービスデザインとは? 顧客に対して、より魅力的な価値をビジネスとして創造的 にデザインすること(情報デザインフォーラム[2014]50頁) 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 25 顧客視点で事業を全体的に見直す=再構築 (reframing)するための方法論(長谷川敦士[2014])
26.
サービスデザインとは? ① 顧客となってくれるであろう人が抱く「欲望や期待を充たす」「問 題を解決する」「新しい意味を提示する」ような価値提案を構想& 実現する=事業として成り立つ最重要前提 ② 従業員や協力企業など、価値創造に参画してくれるステイクホル ダー
/ アクターにとっても持続的にメリットをもたらすように事業 全体をデザインする ③ 新しい / 今まで気づかれていなかった意味を提示することで、新し い生活世界を描き出す 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 26
27.
サービスデザインの6つの原則 (1)人間を中心に据える ☞ サービスによって影響をうけるすべての人の経験(experience)を考慮せよ。 (2)協働的である ☞ さまざまな背景や役割をもつステイクホルダーが、サービスデザインプロ セスに能動的に参画するべきである。 (3)反復的である ☞
サービスデザインは実装に向けておこなわれる探索、改善、実験の反復的 アプローチである。 (Stickdorn, Lawrence, Hormess, and Schneider[2017]p.27, 訳書57頁) 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 27
28.
サービスデザインの6つの原則 (4)連続的である ☞ サービスは、相互に関係しあう活動の連続的生起(sequence)として可視化 され、統合的に組織化される(be visualized
and orchestrated)必要がある。 (5)リアルである ☞ 現実(reality)にあるニーズを調査し、現実に根ざしたアイデアのプロトタ イプをつくり、無形の価値は物的あるいはデジタルな実体を持つものと して、その存在を明らかにする必要がある。 (6)全体として描き出される ☞ サービスはすべてのステイクホルダーのニーズに、一揃いのサービスと ビジネスの全体を通して、持続的に対応するものでなければならない。 (Stickdorn, Lawrence, Hormess, and Schneider[2017]p.27 , 訳書57頁) 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 28
29.
サービスデザインの基礎としてのS-Dロジック サービスデザイン(UXデザインを含む)の特徴 ⇨ ユーザー /
享受者によって知覚・認識される“価値”に焦点を当てる =価値の主観主義的な理解に立脚 ⇨ 実体 / デジタルなアーティファクトや決済システムなどの組み合わ せとしての価値提案 =製品やサービスは、代替可能な提案でしかない ⇨ エコシステムにおける / を通じた価値創造 / 価値循環 =享受者を含む複数のアクターの協働によって価値創造が成就する 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 29
30.
b. 意味のイノベーションの 基本的な考え方 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
30 2019年6月21日前後に ワールドカフェスタイルで輪読。 ☜ noteに書きました。
31.
価値と意味 価 値:ある主体が顕在的・潜在的に抱いている欲望 や期待の“充たされ度合” ⇨欲望充足の主観的強度 意 味:ある主体にとってのモノやコトなどのかかわ りあい(関連性
/ 有意性 / 重要性:Relevance) ⇨価値評価の基準 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 31 受け手になってもらいたい人にとって、 提案するモノやコトが〈意味のある〉 モノやコトになるかどうかが重要!
32.
意味のイノベーションとは? 相手の生活にとって、今までに気づかれていなかった意味=新しいか かわりあい / 生への関連性(Relevance)をもたらすこと。 しかも、その意味が「その人にとってなくてはならない」ものと感じ られるとき、意味のイノベーションの度合いはきわめて高いといえる。 2020年3月2日
地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 32 進むべき方向 / 判断のものさしを変化させること (ベルガンティ,R.[2016=2017]『突破するイノベーション』29頁)
33.
意味のイノベーションにおけるポイント ① どんな状態=生活世界を提案・創出したいのかを、とことんまで考 え抜く。 ② それを言語や図、モノなどを通じて表出し、最初はペアで、最終的 にはその範囲を広げて、創造的な批判(ケチをつけるのではなく、その 背後にある意味を明らかにしつつ、それを実現するような磨き上げを重ねるこ と)によって具体化していく。 ③
その際には、機能的な側面や経済的な側面ももちろん大事だが、感 性的(審美的 ästhetisch)な側面がすごく重要になる。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 33
34.
5. 2020年度の予定 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣
34 価値創造デザインPJと意味のイノベーションPJ
35.
来年度に向けた改善予定点 ✓ サービスデザインの手法をもっと徹底して習得・活用 ☞ 観察=現象に対して“問い”をもって観る=観て取る姿勢 の徹底:問題意識や関心の源になる ☞
サービスデザインの型を習得することで、いずれは型を 破れるようになってもらいたい。 ☞ 構造化シナリオ法などを駆使して、シーンの具体化にも 注力。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 35
36.
来年度に向けた改善予定点 ✓ 能動的そもそも論と意味のイノベーション ☞ あえて「そもそも」を問うことで、これからの生活に とっての意味を徹底的に考える。 ☞
意味とは、あるモノやコトとその人との関係性。 ☞ 意味をいかにして創造できるか。ここに挑む。 ☞ そのベースとしての〈アフォーダンス〉と〈生活世界〉 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 36
37.
来年度に向けた改善予定点 (来年度、というよりもっと根本的な) ✓ 日常からの感性の磨きと、その言語化 ✓ 社会課題への“感性” ✓
技術動向のキャッチ でも、いちばん大事なのは そのひとの生活世界 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 37
38.
来年度に向けた改善予定点 ✓ リサーチ・メソッドの習得と活用 ☞ 定量的方法&定性的方法の習得と活用。 ☞
そのための問いの言語化。 ✓ 理論的思考トレーニング ☞ 付け焼刃にならないような理論 / 思考枠組の習得。 ☞ ここが2019年度は弱かったので、強化する。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 38
39.
来年度に向けた改善予定点 ✓ 感性的知覚と悟性的認識の両立 ☞ 感性的な知覚をできるだけ鋭敏なものに。 ☞
それを言語化することで関係づけできるように。 ✓ 基本的な姿勢 ☞ スケジュールデザインの徹底。 ☞ 相手の期待をちゃんと理解する姿勢の徹底。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 39
40.
来年度に向けて ☆ チーム制×縦断型PJ ☞ 今までの3回生チーム制PJは、もちろん継続。 ☞
これまで懸案だった学年縦断型PJを導入予定。 ☞ したがって、複数のPJを担うケースも。 ☞ 教えあい、学びあうしくみを具体化したい。 ☞ ただし、もたれあいではない。 ☞ 当然、複数でも、一つひとつすべてガチで。 2020年3月2日 地方大学におけるビジネス教育研究会_山縣 40
Editor's Notes
高橋直志[2013]「ハーシュマン理論の再解釈に向けて」『名古屋外国語大学外国語学部紀要』第44号,211-231頁。 ここでは,ハーシュマンをオーストリア学派の影響を色濃く受けた学者として位置づけている。
There are a much of definitions of service design. In the many definitions, by Mager is well known.
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