シンギュラリティサロン@大手町サンケイプラザ
13:30-15:00 20190608
自由エネルギー原理
と視覚的意識
生理学研究所
認知行動発達研究部門
助教 吉田 正俊
本日の構成
前半:
自由エネルギー原理(FEP)について、
単純な例を用いて「最小限の数理的な説明」を行う。
後半: (こっちがメイン)
FEPが視覚的意識経験の理論となりうることを示す。
この理論がフッサール現象学と
整合的であることを示す。
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
エルンスト・マッハ
「感覚の分析」より
https://publicdomainreview.org/
collections/self-portrait-by-ernst-
mach-1886/
我々の視覚は視野の中心以外はぼやけてる
我々の視覚は視野の中心以外はぼやけてる
https://upload.wikimedia.org/
wikipedia/commons/thumb/2/27/
AcuityHumanEye.svg/724px-
AcuityHumanEye.svg.png
親指の幅 = 1cm
視野角にして1度
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
エルンスト・マッハ
「感覚の分析」より
https://publicdomainreview.org/
collections/self-portrait-by-ernst-
mach-1886/
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
我々は絶えず視線を移動しながら視覚シーンを構成している。
我々の視覚経験そのものってどんなかんじ?
Active vision
LAND, M. F.
Eye movements and the control of actions in everyday life.
Prog Retin Eye Res 25, 296–324 (2006).
Yarbus, A. L. (1967). Eye movements and vision,
Plenum Press, New York
視覚とは受け身での表象形成ではなくて、
行動(例えば眼球運動)によって
主体が視覚情報をサンプルすることである。
図は省略
図は省略
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
Free energy, value, and attractors. Friston K, Ao P. Comput
Math Methods Med. 2012;2012:937860. (CC BY 3.0)
FEP is concerned with a sensorimotor loop!
自由エネルギー原理 (FEP)
「いかなる自己組織化されたシステムでも、
環境内で平衡状態でありつづけるためには、
そのシステムの(情報的)自由エネルギーを
最小化しなくてはならない」
「適応的なシステムが無秩序へ向かう自然的な傾向
に抗して持続的に存在しつづけるために必要な条件」
自由エネルギー原理 (FEP)とはなにか
Friston, K. (2010). The free-energy principle: a
unified brain theory?
Nature Reviews Neuroscience, 11(2), 127–138.
知覚と行動選択と学習を統一的に説明する原理
自由エネルギー「原理」である意義
• FEPは脳についての理論を
統一的に理解するための「原理」。
• これまでの理論を置き換えることは
目的としていない。
(=>それって反証可能?)
Friston, K. (2010). The free-energy principle: a
unified brain theory?
Nature Reviews Neuroscience, 11(2), 127–138.
を元に作成
このあたりについては
乾敏郎先生の講演にて
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
目の前になにかい
る。よく見たら
蝶がいることに
気づいた。
+: 視線
(1/3) 知覚
この簡略化された
世界では、
蛾がいる可能性
もあった。
つまり
「蝶だ」という認識
=(蛾という他の
可能性を排除した)
「ほかでもない蝶だ」
という選択
= 表象
(1/3) 知覚
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
外界 Agent
隠れ値
内部
状態
• 「外界の状態」の場合の
数は2つだけ。
• Agentは「外界の状態」
に直接アクセスできな
• 「感覚入力」=光センサー
の場合の数は2つだけ。
• 「感覚sensation」は
「知覚perception」と別。
• Agentは「感覚入力」を元
にして「外界の状態」を推
定する=「知覚」
(1/3) 知覚
感覚入力
観測データ
a
b
生成過程
生成
モデル
生成モデル
の逆変換
隠れ値
内部
状態
• 生成過程: 因果関係=物理
• 例:「外界の状態:蝶がいる」=>「感覚入力:a」
「外界の状態:蛾がいる」=>「感覚入力:b」
• Agentは生成過程についての脳内モデルである
「生成モデル」を学習によって獲得している。
• Agentは現在の「感覚入力」から、
生成モデルの逆変換を使うことで
「外界の状態」を推定する。
• 例:「感覚入力:a」を観測した=>
「外界の状態:蝶がいる」だろう
100%
0%
(1/3) 知覚
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
感覚入力
観測データ
a
b
生成過程
生成
モデル
生成モデル
の逆変換
隠れ値
内部
状態
• 生成モデルはふつうもっと確率的
• 例: もし「蝶がいる」なら
90%の確率で「感覚入力a」を観測
• 推測も確率的になる
• 例: 「感覚入力a」を観測したから
90%の確率で「蝶がいる」
生成モデルの逆変換=ベイズの定理
90%
10%
(1/3) 知覚
知覚の過程をベイズの定理を使った確率的推論と捉える
=「ベイズ脳仮説」≠自由エネルギー原理
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
感覚入力
観測データ
a
b
生成過程
生成モデル
による予測
予測誤差
隠れ値
内部
状態
• 生成モデルの逆変換の代わりに生成モデルを使った予測を作る
50%
50%
知覚 = 現在の「外界の状態」のよりよい推定
• 現在の外界の状態の推測から生成モデルから感覚入力の予測を作る。
• これと実際の感覚入力との予測誤差を最小にする。
=> 変分自由エネルギーの最小化 => ベイズ脳の実現
(1/3) 知覚
90%
10%
予測
誤差
大
予測
誤差
最小
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
感覚入力
観測データ
a
b
自由エネルギー原理 (FEP)とはなにか
1) 知覚 = 現在の「外界の状態」のよりよい推定
http://img5.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/4c/74/hotmilk_tow/folder/1565140/img_1565140_22673428_1?1191290046
これは正しくない
(=>マッハの例)
(2/3) 行動選択
左下に視線があるとき、
右上にあるものは
ぼんやりしていて
なんだかわからない。
(2/3) 行動選択
視線を右上に向けると、
これが蝶であること
が判明した。
(2/3) 行動選択
感覚入力
行動選択
右上見る
左下見る
(2/3) 行動選択
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
a
b
• 外界の状態は「蝶がいる」「蝶がいない」の二通り。
• 感覚入力はaとbの二通り。
• 行動選択「左下見る」「右上見る」はこの場合、感覚入力だけを変
え、外界の状態そのものは変えない。
• もし行動選択「蝶がいそうなところに手を伸ばす」が可能であれば、行動
選択は外界の状態を変えうる。
感覚入力
生成モデルからの
予測
生成モデル
生成過程
行動選択
右上見る
左下見る
• Agentは生成モデルとして、行動とその結果の感覚入力の関係を学習している。
• 例: 行動選択「左下見る」=>感覚入力aをサンプルする
「右上見る」=>感覚入力bをサンプルする
(2/3) 行動選択
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
a
b
感覚入力
生成モデルからの
予測
生成モデル
生成過程
行動選択
右上見る
左下見る
(2/3) 行動選択
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
a
b
生成モデルからの
予測
• Agentは生成モデルとして、行動とその結果の外界の状態の関係を学習している。
• 例: 行動選択「左下見る」=>感覚入力a => 蝶がいる(60%)
「右上見る」=>感覚入力b => 蝶がいる(90%)
60%
40%
90%
10%
左下 右上
• 外界の状態の推定がより正確になる行動選択をする
=> 変分自由エネルギーを下げる
自由エネルギー原理 (FEP)とはなにか
1) 知覚 = 現在の「外界の状態」のよりよい推定
2) 行動選択 = 未来の「外界の状態」のよりよい推定
感覚入力
生成モデルからの
予測
生成モデル
生成過程
行動選択
右上見る
左下見る
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
a
b
生成モデルからの
予測
• Agentははじめから正確な生成モデルを持っていたわけではない。
• Agentは生成過程をより正確に反映した生成モデルを学習した。
• このためには世界への介入を繰り返して、生成過程からの答えを得る必要がある
60%
40%
90%
10%
左下 右上
• 学習 = 外界の状態の推定がより正確になるように生成モデルを更新する
=> 変分自由エネルギーを下げる
(3/3) 学習
自由エネルギー原理 (FEP)とはなにか
1) 知覚 = 現在の「外界の状態」のよりよい推定
2) 行動選択 = 未来の「外界の状態」のよりよい推定
3) 学習 = (未来の「外界の状態」のよりよい推定のための)
生成モデルの構築、更新
知覚と行動選択と学習を統一的に説明する原理
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
Level 1: Perception (perceptual inference)
Level 2: + Action (active inference)
Level 3: + 反実仮想
Level 1: Perception (perceptual inference)
Level 2: + Action (active inference)
Level 3: + 反実仮想
目の前になにかい
る。よく見たら
蝶がいることに
気づいた。
+: 視線
(1/3) 知覚
この簡略化された
世界では、
蛾がいる可能性
もあった。
つまり
「蝶だ」という認識
=(蛾という他の
可能性を排除した)
「ほかでもない蝶だ」
という選択
= 表象
(1/3) 知覚
生成過程
知覚のモデル1: (フル)ベイズ
p̄(s|x)
p̄(x)
p̄(x, s) = p̄(x)p̄(s|x) p(x|s) =
p(s|x)p(x)
∑x
p(s|x)p(x)
事前分布 観測過程
生成モデル
p(s|x)
p(x)
p(x, s) = p(x)p(s|x)
事前分布 観測モデル
ベイズの公式
事前分布
観測モデル
事後分布
周辺尤度
観測データから隠れ値を推測
結果 原因
p(x)p(s|x) があればいい
外界 Agent
感覚入力
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
観測データ, 結果
隠れ値, 原因 内部状態
x = 1
x = 0
x
s
p(x|s)
x = 1
x = 0
s = 1
s = 0
0.9
0.1
0.9
0.1
0.5
0.5
外界 Agent
感覚入力
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
観測データ, 結果
隠れ値, 原因 内部状態
x = 1
x = 0
x
s
p(x|s)
x = 1
x = 0
s = 1
s = 0
0.9
0.1
0.9
0.1
0.5
0.5
知覚のモデル1: (フル)ベイズ
ベイズの公式
事後分布
=
[
0.9 0.1
0.1 0.9]
x = 1 x = 0
s = 1
s = 0
p(x|s) =
p(x, s)
∑x
p(x, s)
生成モデル
p(s|x)
p(x)
p(x, s)
事前分布 観測モデル
[
0.9 0.1
0.1 0.9]
[0.5 0.5]
[
0.45 0.05
0.05 0.45]
x = 1 x = 0
s = 1
s = 0
外界 Agent
感覚入力
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
観測データ, 結果
隠れ値, 原因 内部状態
x = 1
x = 0
x
s
p(x|s)
x = 1
x = 0
s = 1
s = 0
0.9
0.1
0.9
0.1
0.5
0.5
知覚のモデル1: (フル)ベイズ
ベイズの公式
事後分布
=
[
0.9 0.1
0.1 0.9]
x = 1 x = 0
s = 1
s = 0
90%
10%
「s=1」
を観測
p(x|s) =
p(x, s)
∑x
p(x, s)
外界 Agent
感覚入力
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
観測データ, 結果
隠れ値, 原因 内部状態
x = 1
x = 0
x
s
p(x|s)
x = 1
x = 0
s = 1
s = 0
0.9
0.1
0.9
0.1
0.5
0.5
知覚のモデル1: (フル)ベイズ
ベイズの公式
事後分布
=
[
0.9 0.1
0.1 0.9]
x = 1 x = 0
s = 1
s = 0
90%
10%
「s=1」
を観測
p(x|s) =
p(x, s)
∑x
p(x, s)
知覚とは
生成モデルと感覚入力に基づいて
外界の状態の事後分布を
計算(確率的に推定)すること => ベイズ脳仮説
事後分布を計算するには
生成モデル(これまでの経験)
と感覚入力(イマココでの観測)
があればいい
知覚のモデル2: 変分ベイズ
ベイズの公式
事後分布
周辺尤度の計算は
すべてのxで和を取るのが大変
=> 周辺尤度の近似をする
周辺尤度
p(s) =
∑
x
p(x, s)
−ln p(s) ≤
∑
x
{q(x)ln
q(x)
p(x, s)
} = F
p(x|s) =
p(x, s)
∑x
p(x, s)
変分自由エネルギーF
脳は推測q(x)を動かしてFを最小にする
=>周辺尤度p(s)の近似=>事後分布の近似
これが変分ベイズ推定。
知覚のモデル2: 変分ベイズ推定
F(p, q, s) =
∑
x
{q(x)ln
q(x)
p(x, s)
}
変分自由エネルギーF
Fは以下の3つの関数。
p: 生成モデル(事前分布と事後分布のマトリクス)
q: 推測(x=0,1についての確率分布)
s: 感覚入力(観測データ)
(外界の状態x の関数ではない。xの総和をとると消えるので)
推測q(x)と
生成モデルp(x,s)だけで計算できる
知覚のモデル2: 変分ベイズ推定
F(q) =
∑
x
{q(x)ln
q(x)
p(x, s)
}
変分自由エネルギーF
今は知覚のことだけ考えているので
p: 生成モデル は固定
s: 感覚入力(観測データ) は固定
q: 推測だけの関数
推測q(x)と
生成モデルp(x,s)だけで計算できる
知覚のモデル2: 変分ベイズ推定
では、q(x)= [1,0]~[0,1]の範囲でFをプロットしてみよう
F(q) =
∑
x
{q(x)ln
q(x)
p(x, s)
}
= DKL(q(x)∥p(x|s)) −ln p(s)
周辺尤度
事後分布
KLD
変分自由エネルギーF
推測
KLD: 推測q(x)と事後分布p(x|s)のKL距離。
KL 距離: 2つの確率分布間の類似度(>=0)
DKL(A(x)kB(x))
=
X
i
A(xi) log
A(xi)
B(xi)
3.22
(bit)
0.29 0.00
A B
x
F(q) = −ln p(s)
推測q(x)が事後分布p(x|s)を完全に近似できたとき、KLD=0が成り立つので
知覚のモデル2: 変分ベイズ推定
(bits)
q(x = 1)
0.9
0.5
F(q)
−ln p(s)
s = 1「蝶っぽい画像」
を観測した場合
q(x = 1) = 0
q(x = 0) = 1
q(x = 1) = 1
q(x = 0) = 0
「蛾がいる」
という確信
「蝶がいる」
という確信
q(x = 1)
初期状態では
= p(x = 1) = 0.5
(事前分布を採用)
AgentはFが下がる方向に
q(x)を変化させる
事後分布を近似できている
Fの傾き=0になったとき
≒ Fを最小化したとき
q(x = 1) = 0.9
= p(x|s = 1)
p(x|s) =
[
0.9 0.1
0.1 0.9]
x = 1 x = 0
s = 1
s = 0
F(q)
−ln p(s)
知覚のモデル2: 変分ベイズ推定
(bits)
q(x = 1)
0.5
s = 1「蝶っぽい画像」
を観測した場合
q(x = 1) = 0
q(x = 0) = 1
q(x = 1) = 1
q(x = 0) = 0
「蛾がいる」
という確信
「蝶がいる」
という確信
AgentはFを計算する必要がない。
Fの傾きで充分。
dF
dq
= ln{
p(x = 0,s)q(x = 1)
p(x = 1,s)q(x = 0)
}
これは統計で言うオッズ比。
脳がオッズ比を計算している
という証拠はあり。
生成モデルp 推測q
A neural implementation of Wald's sequential
probability ratio test.
Kira S, Yang T, Shadlen MN.
Neuron. 2015 Feb 18;85(4):861-73.
0.9
知覚 = Perceptual inferenceまとめ
近似的推測q(x)を変えて
事後分布(最適解) p(x|s)
と完全に一致したとき、
KLD=0となり、
Fは最小化する。
KLD (定数)
F(q) = DKL(q(x)kp(x|s)) log p(s)
事後分布
(最適解)
p(x|s)
感覚入力s1
KLD
F(q)
近似的
推測
q(x)
s1
0.73 0.00
2.05 1.32
PI
s1
Level 1: Perception (perceptual inference)
Level 2: + Action (active inference)
Level 3: + 反実仮想
左下に視線があるとき、
右上にあるものは
ぼんやりしていて
なんだかわからない。
(2/3) 行動選択
視線を右上に向けると、
これが蝶であること
が判明した。
(2/3) 行動選択
F(p, q, s) =
∑
x
{q(x)ln
q(x)
p(x, s)
}
変分自由エネルギーF
p: 生成モデル(事前分布と事後分布)
q: 推測(x=0,1についての確率分布)
s: 感覚入力(観測データ)
自由エネルギーを下げる3つの方法
F(q) = DKL(q(x)∥p(x|s)) −ln p(s)
周辺尤度(定
KLD
1) 知覚: 推測q(x)を変える
pとsを固定
qだけ動かす
2) 行動選択: 行動aによって感覚入力sを変える
pとqを固定
sだけ動かす
F(s) =
∑
x
{−q(x) * ln(p(s|x))} + DKL(q(x)∥p(x))
Uncertainty Bayesian surprise (定数)
3) 学習: 生成モデルpを変える
F(p) =
∑
x
{−q(x) * ln(p(x, s))} + H(q(x))
Energy Entropy (定数)
qとsを固定
pだけ動かす
行動選択のモデル
(bits)
q(x = 1)
0.6
0.5
F(q)
−ln p(s)
s = 2「左下を見ている
ときの画像」
q(x = 1) = 0
q(x = 0) = 1
q(x = 1) = 1
q(x = 0) = 0
「蛾がいる」
という確信
「蝶がいる」
という確信
q(x = 1)
初期状態では
= p(x = 1) = 0.5
(事前分布を採用)
AgentはFが下がる方向に
q(x)を変化させる
Fの傾き=0になったとき
≒ Fを最小化したとき
q(x = 1) = 0.6
もっと正確に外界を推定する
にはどうすればいい?
=> sを変える
行動選択のモデル
(bits)
q(x = 1)
0.6 0.9
F(q, s)
s = 1「右上を見ている
ときの画像」
q(x = 1) = 0
q(x = 0) = 1
q(x = 1) = 1
q(x = 0) = 0
「蛾がいる」
という確信
「蝶がいる」
という確信
行動選択「右上を見る」
によって
s=1をサンプルするように
なった
これによって
さらにFを小さくする
ことに成功した。
s = 1
s = 2
まとめ: FEP = PI + AI
Perceptual inference
とactive inferenceを
組み合わせることに
よってFの最小化を
実現している。
(1) Perceptual inference: 認識
(2) Active inference: 行動 F(s) =
∑
x
{−q(x) * log(p(s|x))} + DKL(q(x)∥p(x))
KLD(q) (定数)
F(q) = DKL(q(x)kp(x|s)) log p(s)
Accuracy(s) (定数)
Visionの目的は
画像の再構成
ではなくて
外部状態xの推定。
KLD(q) 0.00 0.00
0.02 0.44
Accuracy(s) -2.30 -1.75
F(s,q) 2.32 1.32
2.35 1.77
事後分布
(最適解)
s2
s1
s2
s1
p(x|s)
感覚入力s2
行動a 感覚入力s1
0
1
近似的
推測
AI
PI PI
q(x) 0
1
Active vision
LAND, M. F.
Eye movements and the control of actions in everyday life.
Prog Retin Eye Res 25, 296–324 (2006).
Yarbus, A. L. (1967). Eye movements and vision,
Plenum Press, New York
視覚とは受け身での表象形成ではなく
て、行動(例えば眼球運動)によって主体
が視覚情報をサンプルすることである。
FEPはactive visonをPI-AIを組み合わせて
外界の原因xを推測する過程として整合的に説明している
図は省略
図は省略
「行動する理由は
周りの世界を知りたいから」
学者の欲望に忠実な世界観だな!
自由エネルギー原理 (FEP)
Level 1: Perception (perceptual inference)
Level 2: + Action (active inference)
Level 3: + 反実仮想
感覚入力s2
感覚入力s1
視線を右上に向けて
みたら、蝶だった。
感覚入力s1
行動は常に けである
行動aの結果が
必ずしも蝶だとは
限らない。
感覚入力s1
行動は常に けである
視線を右上に向けてみ
たら、じつは蛾x2だっ
た(s3をサンプルした)こ
とも起こる。
感覚入力s3
行動は常に けである
FEPは期待値でのみ成立する
Agentは将来平均的にFを下げることが期待される行動aを選択する。
反実仮想: まだ実現していない行動aによって蝶という原因を期待する。
この意味でFEPは変分原理そのものではない。
F(s,q) 2.32 1.32
2.35 1.77
感覚入力s1
行動a 感覚入力s2
F(s,q) 2.32 1.32
2.35 2.40
感覚入力s1
行動a 感覚入力s3
E(F(s,q)) 2.32 1.32
2.35 2.02
s2をサンプルした場合(x = x1(蝶)という仮説を支持)、Fは低下する。
s3をサンプルした場合(x = x1(蝶)という仮説を反証)、Fは上昇する。
反実仮想的な予測が未来を先取りする
反実仮想的な未来の予測q(xt+1)を生成することで
脳状態は未来を先取りしている。
生成モデル
からの予測
s1
s2
s1
p(x|s)
感覚入力s1
行動a 感覚入力s2
0
1
Relative
entropy
0.00
0.02 0.00
Accuracy -2.30
E(F(s,q)) 2.32 2.02
2.35 1.32
現在の
推測
AI
PI
q(x) 0
1
生成モデル
からの予測
s1
s1
s2
p(s|x) 0
1
事後分布
(最適解)
p(x|s)
近似的
推測
q(x)
生成
モデル
p(s|x)
Uncertainty
KLD
グラフィカルモデルによる表現
xt xt+ 1
st st+ 1
at
at−
1
xt−
1
st−
1
t
t −1 t + 1
時間
行動
外界の状態
感覚入力
: 観測データ
: 潜在変数
t
a
x
s
: 因果的関係
行動選択 (active inference)
隠れマルコフモデル(HMM)
x
s
外界の状態
感覚入力
: 観測データ
: 潜在変数
x
s
: 因果的関係
知覚
(perceptual inference)
反実仮想的な未来の予測
q(xt+1)を生成している。
What is FEP?
FEPにおける3つのプロセス
1) Perceptual inference
2) Active inference
3) 反実仮想
自由エネルギー原理 (FEP)は本当はもっと複雑
吉田のwebサイト
http://pooneil.sakura.ne.jp/
日本神経回路学会誌
2018年9月号
(出版後1年後以降はフリーアクセス)
このあたりから読んでみてください
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
「いかなる自己組織化されたシステムでも、
環境内で平衡状態でありつづけるためには、
そのシステムの(情報的)自由エネルギーを
最小化しなくてはならない」
「適応的なシステムが無秩序へ向かう自然的な傾向
に抗して持続的に存在しつづけるために必要な条件」
自由エネルギー原理 (FEP)とはなにか
Friston, K. (2010). The free-energy principle: a
unified brain theory?
Nature Reviews Neuroscience, 11(2), 127–138.
FEPは適応的システムについての理論。
情報理論的な意味での変分原理?
変分原理: 光の屈折の例
変分原理は物事がどの方向に変化するかを決める。
FEPもagentがどの方向に変化するかを決める。
PからQまでの
移動時間
を最小化する
最小作用の原理
https://en.wikipedia.org/wiki/
Fermat%27s_principle#/media/
File:Snells_law.svg
P
Q
O
interface
interface
normal
normal
θ1
θ2
2
n
1
n
2
v
1
v
index
velocity
統計物理の自由エネルギーとの関連
島崎秀昭(2018). 認識と行動の適応原
理. 日本神経回路学会誌 25(3), p.86-103
変分自由エネルギーF
F(p, q, s) = DKL(q(x)∥p(x|s)) −ln p(s)
周辺尤度
KLD
変分自由エネルギーFは統計物理の自由エネルギーとは異なる。
変分下限(ELBO)*(-1)もしくは周辺尤度下限と呼ばれる。
ギブス自由エネルギー G(α, β)
G(α = 1, β = 1) = −ln p(s)
周辺尤度=分配関数
α = 1, β = 1 の特別の場合が周辺尤度。
変分自由エネルギー F(p, q, s) は
ギブス自由エネルギー G(α = 1, β = 1)の上
α, β ボルツマン分布
での逆温度
α
β
刺激に関連する脳活動
自発的な脳活動
変分自由エネルギーFの最小化は
ギブス自由エネルギーの特別なときの最小化になって
統計物理の自由エネルギーとの関連
変分自由エネルギーFよりも
周辺尤度(= sensory surprisal = ギブス自由エネルギー)
のほうがよりfundamental。
変分自由エネルギーF
F(p, q, s) = DKL(q(x)∥p(x|s)) −ln p(s)
周辺尤度
KLD
ひとことで言えばFEPとは:
「脳は変分ベイズをしている」
自由エネルギー原理 (FEP)とはなにか
ベイズ脳仮説 Fの最小化による実現
(そのために)
F(or 周辺尤度)の最小化 ベイズ脳の実現
(結果として)
ベイズ脳仮説
自由エネルギー原理
Agentは感覚入力から外界を確率的に推定する
目的論、just-so-story
進化による(あたかも)デザイン
というよりは
(作動原理としての)
前半部
1. アクティブビジョン
2. 自由エネルギー原理(FEP)とはなにか
3. FEPについて数式を使わないで説明
4. 変分自由エネルギーについて説明
5. 変分原理としてのFEP
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
5. Active inference説の今後の課題
FEPにおけるどのプロセスが意識には必要?
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
FEPにおける3つのプロセス
1) Perceptual inference
2) Active inference
3) 反実仮想
Active inference説 (我々の立場)
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
5. Active inference説の今後の課題
現象学者との共同研究
北海道大学 文学部 田口茂教授
日本神経回路学会誌で共同執筆
北大サマーインスティチュート
(2019夏)にて共同で講義予定
たとえば私が身体を右に動かせば、眼前のサイコロのこれまで
見えていなかった右側の側面が見えてくる。別の仕方で身体を
動かせば、同じサイコロのまた別の側面が見えてくる。
われわれが見ているものは、つねに自分の身体の運動可能性と
結びつけられる仕方で経験されている。
田口茂「現象学という思考」筑摩書房
フッサール現象学での視覚論
=> Active inferenceや反実仮想の考えに近い。
「われわれにとっての視覚経験は一般に、身体の運動可能性の
システムに相関する仕方で、「こうすればこうなる」という現
われのシステマティックな変化によって成立している。」
「身体をもった主体が環境に働きかけ(介入し)、そこに予測
→確認→修正→予測→……というループが形作られるとき、視
覚経験に対応するものが立ち現われる。」
フッサール現象学での視覚論
田口茂「現象学という思考」筑摩書房
=> ベイズ的考えとよく似ている!
フッサール現象学での視覚論
田口茂「現象学という思考」筑摩書房
意識に
与えられて
いるもの
(感覚)
志向的に乗り越える
志向的
対象
裏もある立方体として
のサイコロの経験
経験は今与えられている感覚を絶えず志向的に乗り越える仕方で
客観的現実の意識を生み出す。
感覚sか?
推測q(x)か?
ソファーからの眺
め、という意識経験
意識に
与えられて
いるもの
(感覚)
志向的に乗り越える
志向的
対象
フッサール現象学での視覚論
感覚sか?
推測q(x)か?
感覚運動随伴性 Sensorimotor contingency (SMC)
表象説 SMC 説
「見る」とは
感覚運動随伴性の習熟に媒介
された探索的活動である
吉田正俊, 田口茂 (2018) 自由エネルギー原理と視覚的意識.
日本神経回路学会誌 25 (3), 53-70
「見る」とは
内的表象を
作ることである
感覚運動随伴性 Sensorimotor contingency (SMC)
無意識的推論 SMC 説
「見る」とは
感覚運動随伴性の習熟に媒介
された探索的活動である
吉田正俊, 田口茂 (2018) 自由エネルギー原理と視覚的意識.
日本神経回路学会誌 25 (3), 53-70
「見る」とは
外界の状態を
推定すること
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
5. Active inference説の今後の課題
表象説 SMC 説
「見る」とは
感覚運動随伴性の習熟に媒介
された探索的活動である
吉田正俊, 田口茂 (2018) 自由エネルギー原理と視覚的意識.
日本神経回路学会誌 25 (3), 53-70
「見る」とは
内的表象を
作ることである
FEPはSMC説と整合的
主体
外部世界
感覚入力
s
行動
a
感覚入力の
原因 x
p(x,s)
現在の推測
q(x)
生成モデル
推測
例: 網膜の
神経活動
直接は
アクセス
不可能
例: 目を向ける
例: 蝶
脳活動
b
例: 蝶だ!
• FEPにおける
• 生成モデル p(x,s): 世界についての知識 (観察モデル*事前分布)
• 近似的推測q(x): イマココでの推測
• SMCにおける感覚運動的知識への習熟とは
生成モデルの確立、維持と表現できる。
FEPはSMC説と整合的
表象説 SMC 説
「見る」とは
感覚運動随伴性の習熟に媒介
された探索的活動である
吉田正俊, 田口茂 (2018) 自由エネルギー原理と視覚的意識.
日本神経回路学会誌 25 (3), 53-70
「見る」とは
内的表象を
作ることである
FEPは表象説とも整合的
主体
外部世界
感覚入力
s
行動
a
感覚入力の
原因 x
p(x,s)
現在の推測
q(x)
生成モデル
推測
例: 網膜の
神経活動
直接は
アクセス
不可能
例: 目を向ける
例: 蝶
脳活動
b
例: 蝶だ!
• FEPにおける
• 生成モデル p(x,s): 世界についての知識
• 近似的推測 q(x): イマココの志向的対象 - 世界についての表象
表象主義のうち、外的な刺激をそっくり写しとることを要請しな
いもの(ヘルムホルツ的視覚観含む)はFEPと整合的
FEPは表象説とも整合的
主体
外部世界
感覚入力
s
行動
a
感覚入力の
原因 x
p(x,s)
現在の推測
q(x)
生成モデル
推測
例: 網膜の
神経活動
直接は
アクセス
不可能
例: 目を向ける
例: 蝶
脳活動
b
例: 蝶だ!
FEPにおける
• 生成モデル p(x,s): 世界についての知識 (観察モデル*事前分布)
= 環境と主体の相互作用のダイナミクスを記述したSMC
• 近似的推測q(x): イマココでの世界の推測 = 本来的表象
視覚にはSMCと表象の両方が必要。
FEPはSMC説と表象説を発展的に統一する
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
5. Active inference説の今後の課題
意識の理論を作るには?
意識の理論 <=> 知覚perceptionの理論
(意識の内容contentの理論を作りたいわけではない)
意識経験の構造を考慮する
=> (フッサール以降の)現象学
第一人称的立場から
意識に直接与えられたものに基づいて、理論構成
現象学による意識の構造
1)が意識: 表象説 <=> 3)が意識: SMC説
現象学では1), 2), 3)を一つの構造と捉える。
1) 注意を向けられている対象
2) 注意を向けては居ないが目に写ってい
ると思われるような周辺視
3) 視覚世界を成り立たせている前提条件
が互いに緊密に結びついた構造
1)はFEPでの「イマココの推測q(x) 」
3)は「世界のモデルp(x,s) 」
2)は両者の相互浸透。どちらか片方だけで
説明できるようなものではない。
「FEPと現象学に基づいた意識理論」
意識とは、イマココの推測q(x)と世界のモデルp(x,s)
が一体となって知覚のたびに
オンラインで照合され続けるprocessである。
イマココの推測q(x)と生成モデルp(x, s)との間の差異
こそが意識を生き生きと成り立たせている。
この差異がなくなったら、主体は環境と
単に地続きとなり、意識も消滅してしまう。
吉田正俊、田口茂 (2018) 「自由エネルギー原理と視覚的意識」
日本神経回路学会誌
ソファーからの眺
め、という意識経験
意識に
与えられて
いるもの
(感覚)
志向的に乗り越える
フッサール現象学での視覚論
感覚sか?
推測q(x)か?
志向的
対象
ソファーからの眺
め、という意識経験
意識に
与えられて
いるもの
(感覚)
志向的に乗り越える
志向的
対象
フッサール現象学での視覚論
感覚s
イマココの推測q(x)
と生成モデルp(x, s)
との間の差異
「FEPと現象学に
基づいた意識理
論」
a b
B1
B2
B3
脳の state
C1
C2
C3
意識の state
B1
B2
B3
脳の state
C1
C2
意識の
process
time time
FEP説とハードプロブレム
• 表象説では「意識とはstateである」とすることで二元論の問題に直面する
• FEP説は「意識とはprocessである」することによってこの問題を回避する
表象説 (NCC, IIT) FEP説
吉田正俊, 田口茂 (2018) 自由エネルギー原理と視覚的意識.
日本神経回路学会誌 25 (3), 53-70
Active inference説 (我々の立場)
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
吉田+田口
• Agentにとって世界を自分に関係のあるものとする(groundedなも
のとする)ためには、agentによる世界への介入が必要。
• 生成モデルは、active inferenceによる世界への介入の結果として成
立、維持されたものでなければ、一人称的な性質を持ちえない。
• 帰結: カエルは世界への介入が可能なので、最小限の意識を持つ。
感覚入力
生成モデルからの
予測
生成モデル
生成過程
行動選択
右上見る
左下見る
蝶がいる
外界の状態
蛾がいる
「外界の状
態」の推測
蝶がいる
蛾がいる
a
b
「水槽の脳」を外に出すためには、
脳内の生成モデルだけでなく、生成過程が必須。
これは外界への介入によってのみ可能。
Active inference説は
意識に「介入」が必須であることを主張する
Agentは自らの介入によって世界を操作することで、
1) SMCという技能を獲得する。
これによって、世界を自分に関係あるもの(grounded)
とする。
このことが「カエルの意識(=なにかあるかんじ)」とい
う原始的な意識経験を可能にする。
2) 反実仮想に基づく因果推論をできるようになる。
これによって、イマココにないものも含めた世界の推
定(=表象)をもつようになる。
これがfull-fledgeな意識経験を持つことを可能にする。
「介入することで
世界はリアルになる」
実験家の欲望に忠実な世界観だな!
「FEPと現象学に基づいた意識理論」
= 意識の「介入」理論
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
5. Active inference説の今後の課題
FEPにおけるどのプロセスが意識には必要?
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
FEPにおける3つのプロセス
1) Perceptual inference
2) Active inference
3) Counter-factual prediction
Perceptual inference 説
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
VAE (変分自己符号器):
x
s s
q(x|s) p(s|x)
生成
推論
渡辺正峰(『脳の意識 機械の意識』):
生成モデルを持つことが意識の充分条件
金井良太(Araya):
機能としての意識はFEPで決まり、
情報統合(IIT)の度合いによって
意識があるかどうかが決まる
帰結: VAEでも意識は持ちうる https://qiita.com/kenmatsu4/items/b029d697e9995d93aa24
反実仮想説
• Friston and Seth:
"At what point do we invoke consciousness? ... the
mind comes into being when self-evidencing has a
temporal thickness or counterfactual depth, which
grounds the inferences it can make about the
consequences of future actions.”
Seth, A.K. (2015). The cybernetic Bayesian brain: from interoceptive
inference to sensorimotor contingencies. In Open MIND, eds. T.
Metzinger & J. Windt. Frankfurt a.M., GER: MIND group
Friston K. (2018) Am I Self-Conscious? (Or Does
Self-Organization Entail Self-Consciousness?).
Front Psychol. 24;9:579.
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
Active inference説 (我々の立場)
意識の充分条件 ヒト カエル VAE
Perceptual
inference説
生成モデルを持つこと ✔ ✔ ✔
Active
inference説
介入によって作り上げた
生成モデルを持つこと
✔ ✔
反実仮想説
未来の行動の結果
についての推測を持つこと
✔
吉田+田口
• Agentにとって世界を自分に関係のあるものとする(groundedなも
のとする)ためには、agentによる世界への介入が必要。
• 生成モデルは、active inferenceによる世界への介入の結果として成
立、維持されたものでなければ、一人称的な性質を持ちえない。
• 帰結: カエルは世界への介入が可能なので、最小限の意識を持つ。
Kirchhoff and Froeseの分類
Kirchhoff, M.D.; Froese, T. Where There is Life There is Mind: In
Support of a Strong Life-Mind Continuity Thesis. Entropy 2017, 19, 169.
生命と心
は連続
Life-mind
continuity
生命と心
は独立
Cognitivism
認知主義
Embodied
enactivism
認知+身体性の折衷案
進化の過程で認知が加わる
内在主義
表象の計算的操作
Autopoietic
enactivism
Overly generous
rife-mind view
自己組織化するものに心はある
汎心論、一元論
生命あるところに心はある
Kirhihoff and Froeseの分類
Kirchhoff, M.D.; Froese, T. Where There is Life There is Mind: In
Support of a Strong Life-Mind Continuity Thesis. Entropy 2017, 19, 169.
生命と心
は連続
Life-mind
continuity
生命と心
は独立
Cognitivism
認知主義
Hohwy 金井良太
渡辺正峰
Embodied
enactivism
Andy Clark
認知+身体性の折衷案
進化の過程で認知が加わる
内在主義
表象の計算的操作
Autopoietic
enactivism
Overly generous
life-mind view
自己組織化するものに心はある
汎心論、一元論
Friston
(life as we know it)
Varela Froese
生命あるところに心はある
Friston (w/Kirchhoff)
Friston
(Am I Self-Conscious?)
Anil Seth
Active
inference説
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
4’ Fristonの2つの立場 + 「時間」の問題
Kirhihoff and Froeseの分類
Kirchhoff, M.D.; Froese, T. Where There is Life There is Mind: In
Support of a Strong Life-Mind Continuity Thesis. Entropy 2017, 19, 169.
生命と心
は連続
Life-mind
continuity
生命と心
は独立
Cognitivism
認知主義
Hohwy 金井良太
渡辺正峰
Embodied
enactivism
Andy Clark
認知+身体性の折衷案
進化の過程で認知が加わる
内在主義
表象の計算的操作
Autopoietic
enactivism
Overly generous
life-mind view
自己組織化するものに心はある
汎心論、一元論
Friston
(life as we know it)
Varela Froese
生命あるところに心はある
Friston (w/Kirchhoff)
Friston
(Am I Self-Conscious?)
Anil Seth
Active
inference説
オートポイエーシスとしてのFEP (Friston)
Friston K. (2013) Life as we know it.
J R Soc Interface. 10(86):20130475.
マルコフブランケットによって
外部内部を切り分けた
オートポイエーシスのシステム
オートポイエーシスとしてのFEP (Friston)
Friston K. (2013) Life as we know it.
J R Soc Interface. 10(86):20130475.
マルコフブランケットによって
外部内部を切り分けた
オートポイエーシスのシステム
Patterns of life: intertwining identity and cognition.
Varela FJ.
Brain Cogn. 1997 Jun;34(1):72-87.
Kirhihoff and Froeseの分類
Kirchhoff, M.D.; Froese, T. Where There is Life There is Mind: In
Support of a Strong Life-Mind Continuity Thesis. Entropy 2017, 19, 169.
生命と心
は連続
Life-mind
continuity
生命と心
は独立
Cognitivism
認知主義
Hohwy 金井良太
渡辺正峰
Embodied
enactivism
Andy Clark
認知+身体性の折衷案
進化の過程で認知が加わる
内在主義
表象の計算的操作
Autopoietic
enactivism
Overly generous
life-mind view
自己組織化するものに心はある
汎心論、一元論
Friston
(life as we know it)
Varela Froese
生命あるところに心はある
Friston (w/Kirchhoff)
Friston
(Am I Self-Conscious?)
Anil Seth
Active
inference説
FEPにおける「時間」の取り扱い
xt xt+ 1
st st+ 1
at
at−
1
xt−
1
st−
1
t
t −1 t + 1
時間
行動
外界の状態
感覚入力
: 観測データ
: 潜在変数
t
a
x
s
: 因果的関係
隠れマルコフモデル(HMM)
による時間を含んだ表現
x
s
外界の状態
感覚入力
: 観測データ
: 潜在変数
x
s
: 因果的関係
グラフィカルモデル
による表現
s1 s2 st+ 1 sT
感覚
入力 s
x1 x2 xt+ 1 xT
a1 a2 at at+ 1 aT−
1
t + 1
時刻
行動
外界の
状態
a
x
t T
T −1
1 2
st
at−
1
t −1
xt
st
xt
Schwobel et. al. Neural Comput. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29949461
Predicted free energy
q(x, s̃, a) 潜在変数全部の推定
s1 s2 st+ 1 sT
感覚
入力 s
x1 x2 xt+ 1 xT
a1 a2 at at+ 1 aT−
1
t + 1
時刻
行動
外界の
状態
a
x
t T
T −1
1 2
st
at−
1
t −1
xt
st
xt
Schwobel et. al. Neural Comput. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29949461
Predicted free energy
q(x, s̃, a)
F(q) = DKL(q∥p(x, s̃, a|s))
KLD(q)
+ −ln p(s)
Surprisal
潜在変数全部の推定
一生のすべての期間についての推測
s1 s2 st+ 1 sT
感覚
入力
s
x1 x2 xt+ 1 xT
a1 a2 at at+ 1 aT−
1
t + 1
時刻
行動
外界の
状態
a
x
t T
T −1
1 2
(A)
(B)
st
at−
1
t −1
xt
時刻 t
時刻 t + 1
s1 s2 st+ 1 sT
感覚
入力
s
x1 x2 xt+ 1 xT
a1 a2 at at+ 1 aT−
1
t + 1
時刻
行動
外界の
状態
a
x
t T
T −1
1 2
st
xt
q(xt−
1, xt, x′
t+ 1)
q(xt, xt+ 1, x′
t+ 2)
st
xt
at−
1
t −1
st
xt
Predicted free energy
Schwobel et. al. Neural Comput. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29949461
(A) 未来(Counter-factual prediction)と過去(post-diction)
q(xt+ 1)
q(xt) q(x′
t+ 1)
q(xt−
1) q(x′
t)
q(xt−
1)
q(xt)
t −1
t
t + 1 q(x′
t+ 2)
時刻
時刻
時刻
(B) 「今」だけを生きる
q(xt+ 1)
q(xt)
q(xt−
1)
t −1
t
t + 1
時刻
時刻
時刻
q(xt−
2)
Counter-factual depth (Friston)
「時間」の問題
「脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の 」p.13,
ディーン・ブオノマーノ 翻訳:村上郁也, 出版社:森北出版
Michael Silberstein, W. M. Stuckey, and Timothy
McDevitt. (2018) Beyond the Dynamical Universe.
Oxford: Oxford University Press
4Dブロック世界
現在主義
永遠主義
動きではなくて「世界線」
• あなたの人生の物語(テッド・チャン)
ヘプタポッド
• スローターハウス5 (ヴォネガット)
トラルファマドール星人
図は省略
図は省略
図は省略
現在主義
永遠主義
Michael Silberstein, W. M. Stuckey, and Timothy McDevitt. (2018)
Beyond the Dynamical Universe. Oxford: Oxford University Press
ニュートン形式:
ラグランジュ形式:
運動方程式
m
d2
x
dt2
= −
∂U
∂x
ポテンシャルエネルギーU
d
dt
∂L
∂·
x
−
∂L
∂x
= 0
ラグランジアンL = T-U
運動エネルギー T
Dynamicalな説明 vs. adynamicalな説明
時間についての見方
dynamical
=mechanical
adynamical
=teleological
一次元空間x
図は省略
図は省略
s1 s2 st+ 1 sT
感覚
入力 s
x1 x2 xt+ 1 xT
a1 a2 at at+ 1 aT−
1
t + 1
時刻
行動
外界の
状態
a
x
t T
T −1
1 2
st
at−
1
t −1
xt
st
xt
Schwobel et. al. Neural Comput. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29949461
Predicted free energy
潜在変数全部の推定
q(x, s̃, a)
F(q) = DKL(q∥p(x, s̃, a|s))
KLD(q)
+ −ln p(s)
Surprisal
こちらがadynamical?
s1 s2 st+ 1 sT
感覚
入力 s
x1 x2 xt+ 1 xT
a1 a2 at at+ 1 aT−
1
t + 1
時刻
行動
外界の
状態
a
x
t T
T −1
1 2
st
at−
1
t −1
xt
st
xt
Schwobel et. al. Neural Comput. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29949461
Predicted free energy
q(x, s̃, a)
F(q) = DKL(q∥p(x, s̃, a|s))
KLD(q)
+ −ln p(s)
Surprisal
= Observed FE + Expected FE
こちらがadynamical?
こちらがdynamical?
こちらだけcounter-factualがある
=> 意識があるのはこっちだけ?
現在と過去 未来
後半部
1. フッサール現象学での視覚論
2. FEPから見た視覚
3. FEP的な視覚的意識の理論
4. 他の理論との比較
5. さいごに
物理世界の中でどうやって世界を分節するのか、そして「分節し
た別のものを同じものとみなす」という確率的扱いがいかにして
可能なのかという問題はまったく解決していない
FEPに基づくすべての意識理論の根本的問題
=> 人工知能、
人工生命的
アプローチが必要
End

自由エネルギー原理と視覚的意識 2019-06-08